(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047289
(43)【公開日】2024-04-05
(54)【発明の名称】基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/285 20060101AFI20240329BHJP
【FI】
H01L21/285 C
【審査請求】有
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022152830
(22)【出願日】2022-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】栗林 幸永
(72)【発明者】
【氏名】山本 薫
【テーマコード(参考)】
4M104
【Fターム(参考)】
4M104BB02
4M104BB04
4M104BB13
4M104BB14
4M104BB16
4M104BB17
4M104BB18
4M104BB36
4M104DD43
4M104GG16
(57)【要約】
【課題】金属膜の電気的特性を改善することが可能な技術を提供することにある。
【解決手段】本開示の一様態によれば、(a)搬入温度の処理容器内へ基板を搬入する工程と、(b)前記処理容器内を成膜温度にする工程と、(c)前記処理容器内へ処理ガスを供給し、前記基板の表面に金属膜を形成する工程と、(d)前記処理容器内を前記搬入温度よりも低い搬出温度にする工程と、(e)前記基板を前記処理容器内から搬出する工程と、を有する技術が提供される。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)搬入温度の処理容器内へ基板を搬入する工程と、
(b)前記処理容器内を成膜温度にする工程と、
(c)前記処理容器内へ処理ガスを供給し、前記基板の表面に金属膜を形成する工程と、
(d)前記処理容器内を前記搬入温度よりも低い搬出温度にする工程と、
(e)前記基板を前記処理容器内から搬出する工程と、
を有する基板処理方法。
【請求項2】
前記処理ガスは金属含有ガスと還元ガスであり、
(c)では、前記金属含有ガスと前記還元ガスを非同時に前記処理容器内へ供給するサイクルを所定回数実行する、
請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項3】
(b)の少なくとも一部において、前記処理容器内へ還元ガスを供給する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項4】
(b)の少なくとも一部において、前記処理容器内へ高熱伝導ガスを供給する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項5】
(b)の少なくとも一部において、前記処理容器内への前記還元ガスの供給量を増加させる、請求項3に記載の基板処理方法。
【請求項6】
(b)の少なくとも一部において、前記処理容器内への前記高熱伝導ガスの供給量を増加させる、請求項4に記載の基板処理方法。
【請求項7】
(c)において供給される還元ガスは、還元性を持った高熱伝導ガスであり、
(c)の前に、
(f)前記処理容器内へ高熱伝導ガスを供給する工程、
をさらに有する、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項8】
(f)の少なくとも一部において、前記高熱伝導ガスの供給量を増加させる、請求項7に記載の基板処理方法。
【請求項9】
(d)の少なくとも一部において、前記処理容器内を真空状態に保ち、前記処理容器内の温度を変化させる、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項10】
(d)の少なくとも一部において、前記処理容器内へ還元ガスを供給する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項11】
(d)の少なくとも一部において、前記処理容器内へ高熱伝導ガスを供給する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項12】
(d)の前に、
(g)前記処理容器内を保持温度にする工程と、
(h)前記処理容器内を保持温度に保つ工程と、
をさらに有する、請求項1に記載の基板処理方法。
【請求項13】
(g)の少なくとも一部において前記処理容器内を真空状態に保ち、前記処理容器内の温度を前記搬出温度まで低下させる、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項14】
(g)の少なくとも一部において前記処理容器内へ還元ガスを供給する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項15】
(g)の少なくとも一部において前記処理容器内へ高熱伝導ガスを供給する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項16】
(h)の少なくとも一部において、前記処理容器内へ還元ガスを供給する、請求項12に記載の基板処理方法。
【請求項17】
前記還元ガスは還元性を持った高熱伝導ガスである、請求項3、10、14、16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項18】
前記還元ガスは水素含有ガスである、請求項3、10、14、16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項19】
前記還元ガスは重水素含有ガスである、請求項3、10、14、16のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項20】
前記水素含有ガスは水素ガスを含み、
前記水素含有ガスにおける水素ガスの質量分率は70%以上である、請求項18に記載の基板処理方法。
【請求項21】
前記水素含有ガスは水素ガスを含み、
前記水素含有ガスにおける水素ガスの質量分率は90%以上である、請求項18に記載の基板処理方法。
【請求項22】
前記処理容器内のガスのうち少なくとも一部のガス分子がラジカル化または励起状態にある、請求項1、7、12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項23】
前記金属膜はモリブデン膜である、請求項1、7、12のいずれか一項に記載の基板処理方法。
【請求項24】
前記金属含有ガスはハロゲン元素を含む、請求項2に記載の基板処理方法。
【請求項25】
(a)搬入温度の処理容器内へ基板を搬入する工程と、
(b)前記処理容器内を成膜温度にする工程と、
(c)前記処理容器内へ処理ガスを供給し、前記基板の表面に金属膜を形成する工程と、
(d)前記処理容器内を前記搬入温度よりも低い搬出温度にする工程と、
(e)前記基板を前記処理容器内から搬出する工程と、
を有する半導体装置の製造方法。
【請求項26】
内部が搬入温度と、成膜温度と、前記搬入温度よりも低い搬出温度と、に制御され、内部で基板を処理する処理容器と、
前記基板を前記処理容器内へ搬入する、及び前記基板を前記処理容器内から搬出する、搬出入機構と、
前記処理容器内へ処理ガスを供給して前記基板の表面に金属膜を形成する処理ガス供給系と、
を有する基板処理装置。
【請求項27】
(a)搬入温度の処理容器内を有する処理容器内へ基板を搬入する手順と、
(b)前記処理容器内を成膜温度にする手順と、
(c)前記処理容器内へ処理ガスを供給して前記基板の表面に金属膜を形成する手順と、
(d)前記処理容器内を前記搬入温度よりも低い搬出温度にする手順と、
(e)前記基板を前記処理容器内から搬出する手順と、
を有する方法を、コンピュータによって基板処理装置に実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、半導体装置の製造方法、基板処理装置およびプログラムに適用して有効な技術である。
【背景技術】
【0002】
3次元構造のNAND型フラッシュメモリのワード線として金属膜が用いられている。また、金属膜として、例えばモリブデン(Mo)を含有したMo含有膜が用いられることがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、基板上に金属膜を形成する際に、基板を処理室から搬出する際の温度によって、金属膜の電気抵抗(または、抵抗率)が高くなる場合がある。
【0005】
本開示は、金属膜の電気的特性を改善することが可能な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のうち代表的な一態様によれば、(a)搬入温度の処理容器内へ基板を搬入する工程と、(b)前記処理容器内を成膜温度にする工程と、(c)前記処理容器内へ処理ガスを供給し、前記基板の表面に金属膜を形成する工程と、(d)前記処理容器内を前記搬入温度よりも低い搬出温度にする工程と、(e)前記基板を前記処理容器内から搬出する工程と、を有する技術が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本開示は、金属膜の電気的特性を改善することが可能な技術を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の一実施形態における基板処理装置の概略を示す縦断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態における基板処理装置のコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系をブロック図で示す図である。
【
図3】
図3は、本開示の基板処理方法の工程の第1例にかかる半導体装置の製造方法を説明するフロー図である。
【
図4】
図4は、本開示の基板処理方法の工程の第2例にかかる半導体装置の製造方法を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本開示の解釈を限定するものではない。また、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない場合がある。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係、各要素の比率等は必ずしも一致していない場合がある。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
基板処理装置10は、加熱手段(加熱機構、加熱系)としてのヒータ207が設けられた処理炉202を備える。ヒータ207は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース(図示せず)に支持されることにより垂直に据え付けられている。
【0011】
ヒータ207の内側には、ヒータ207と同心円状に反応容器(処理容器)を構成するアウタチューブ203が配設されている。アウタチューブ203は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウタチューブ203の下方には、アウタチューブ203と同心円状に、マニホールド(インレットフランジ)209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス(SUS)などの金属で構成され、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209の上端部と、アウタチューブ203との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベースに支持されることにより、アウタチューブ203は垂直に据え付けられた状態となる。
【0012】
アウタチューブ203の内側には、処理容器を構成するインナチューブ204が配設されている。インナチューブ204は、例えば石英(SiO2)、炭化シリコン(SiC)などの耐熱性材料で構成され、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。主に、アウタチューブ203と、インナチューブ204と、マニホールド209とにより処理容器が構成されている。処理容器の筒中空部(インナチューブ204の内側)には処理室201が形成されている。
【0013】
処理室201は、基板としてのウエハ200を後述するボート217によって水平姿勢で鉛直方向に多段に配列した状態で収容可能に構成されている。
【0014】
処理室201内には、ノズル410,420がマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420には、ガス供給管310,320が、それぞれ接続されている。ただし、本実施形態の処理炉202は上述の形態に限定されない。
【0015】
ガス供給管310,320には上流側から順に流量制御器(流量制御部)であるマスフローコントローラ(MFC)312,322がそれぞれ設けられている。また、ガス供給管310,320には、開閉弁であるバルブ314,324がそれぞれ設けられている。ガス供給管310,320のバルブ314,324の下流側には、不活性ガスを供給するガス供給管510,520がそれぞれ接続されている。ガス供給管510,520には、上流側から順に、流量制御器(流量制御部)であるMFC512,522及び開閉弁であるバルブ514,524がそれぞれ設けられている。
【0016】
ガス供給管310,320の先端部にはノズル410,420がそれぞれ連結接続されている。ノズル410,420は、L字型のノズルとして構成されており、その水平部はマニホールド209の側壁及びインナチューブ204を貫通するように設けられている。ノズル410,420の垂直部は、インナチューブ204の径方向外向きに突出し、かつ鉛直方向に延在するように形成されているチャンネル形状(溝形状)の予備室201aの内部に設けられており、予備室201a内にてインナチューブ204の内壁に沿って上方(ウエハ200の配列方向上方)に向かって設けられている。
【0017】
ノズル410,420は、処理室201の下部領域から処理室201の上部領域まで延在するように設けられており、ウエハ200と対向する位置にそれぞれ複数のガス供給孔410a,420aが設けられている。これにより、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aからそれぞれウエハ200に処理ガスを供給する。このガス供給孔410a,420aは、インナチューブ204の下部から上部にわたって複数設けられ、それぞれ同一の開口面積を有し、さらに同一の開口ピッチで設けられている。ただし、ガス供給孔410a,420aは上述の形態に限定されない。例えば、インナチューブ204の下部から上部に向かって開口面積を徐々に大きくしてもよい。これにより、ガス供給孔410a,420aから供給されるガスの流量をより均一化することが可能となる。
【0018】
ノズル410,420のガス供給孔410a,420aは、後述するボート217の下部から上部までの高さの位置に複数設けられている。そのため、ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給された処理ガスは、ボート217の下部から上部までに収容されたウエハ200の全域に供給される。ノズル410,420は、処理室201の下部領域から上部領域まで延在するように設けられていればよいが、ボート217の天井付近まで延在するように設けられていることが好ましい。
【0019】
ガス供給管310からは、処理ガスとして、原料ガスが、MFC312、バルブ314、ノズル410を介して処理室201内に供給される。
【0020】
ガス供給管320からは、処理ガスとして、還元ガスが、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。
【0021】
ガス供給管510,520からは、不活性ガスが、それぞれMFC512,522、バルブ514,524、ノズル410,420を介して処理室201内に供給される。また、不活性ガスは、キャリアガスということもできる。
【0022】
主に、ガス供給管310,320、MFC312,322、バルブ314,324により処理ガス供給系300が構成される。また、ノズル410,420を処理ガス供給系300に含めて考えてもよい。処理ガス供給系300は単にガス供給系と称してもよい。ガス供給管310からMo含有ガスを流す場合、主に、ガス供給管310、MFC312、バルブ314によりMo含有ガス供給系が構成される。また、ノズル410をMo含有ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管320から還元ガスを流す場合、主に、ガス供給管320、MFC322、バルブ324により還元ガス供給系が構成される。また、ノズル420を還元ガス供給系に含めて考えてもよい。また、主に、ガス供給管510,520、MFC512,522、バルブ514,524により不活性ガス供給系が構成される。
【0023】
ガス供給管330からは、高熱伝導ガスが、MFC332、バルブ334、ノズル420を介して処理室201内に供給される。主に、ガス供給管330、MFC332、バルブ334により高熱伝導ガス供給系が構成される。また、ノズル420を高熱伝導ガス供給系に含めて考えてもよい。また、ガス供給管330、MFC332、バルブ334を処理ガス供給系300に含めて考えてもよい。
【0024】
また、ガス供給管320から、還元ガスとして、還元性を持った高熱伝導ガスを流す場合、ガス供給管330、MFC332、バルブ334を省略してもよい。この場合、主にガス供給管320、MFC322、バルブ324によって、還元ガス供給系が構成されるとしてもよく、高熱伝導ガス供給系が構成されるとしてもよく、還元性を持った高熱伝導ガス供給系が構成されるとしてもよい。また、ノズル420を還元性ガス供給系、または高熱伝導ガス供給系、還元性を持った高熱伝導ガス供給系に含めて考えてもよい。還元性を持った高熱伝導ガスを用いることで、還元ガスと高熱伝導ガスとをそれぞれ供給する場合と比較して、供給系を簡略化することができる。
【0025】
本実施形態におけるガス供給の方法は、インナチューブ204の内壁と、複数枚のウエハ200の端部とで定義される円環状の縦長の空間内の予備室201a内に配置したノズル410,420を経由してガスを搬送している。そして、ノズル410,420のウエハと対向する位置に設けられた複数のガス供給孔410a,420aからインナチューブ204内にガスを噴出させている。より詳細には、ノズル410のガス供給孔410a、ノズル420のガス供給孔420aにより、ウエハ200の表面と平行方向に向かって処理ガス等を噴出させている。
【0026】
排気孔(排気口)204aは、インナチューブ204の側壁であってノズル410,420に対向した位置に形成された貫通孔であり、例えば、鉛直方向に細長く開設されたスリット状の貫通孔である。ノズル410,420のガス供給孔410a,420aから処理室201内に供給され、ウエハ200の表面上を流れたガスは、排気孔204aを介してインナチューブ204とアウタチューブ203との間に形成された隙間で構成された排気路206内に流れる。そして、排気路206内へと流れたガスは、排気管231内に流れ、処理炉202外へと排出される。
【0027】
排気孔204aは、複数のウエハ200と対向する位置に設けられており、ガス供給孔410a,420aから処理室201内のウエハ200の近傍に供給されたガスは、水平方向に向かって流れた後、排気孔204aを介して排気路206内へと流れる。排気孔204aはスリット状の貫通孔として構成される場合に限らず、複数個の孔により構成されていてもよい。
【0028】
マニホールド209には、処理室201内の雰囲気を排気する排気管231が設けられている。排気管231には、上流側から順に、処理室201内の圧力を検出する圧力検出器(圧力検出部)としての圧力センサ245,APC(Auto Pressure Controller)バルブ243,真空排気装置としての真空ポンプ246が接続されている。APCバルブ243は、真空ポンプ246を作動させた状態で弁を開閉することで、処理室201内の真空排気及び真空排気停止を行うことができ、更に、真空ポンプ246を作動させた状態で弁開度を調節することで、処理室201内の圧力を調整することができる。主に、排気孔204a,排気路206,排気管231,APCバルブ243及び圧力センサ245により、排気系が構成される。真空ポンプ246を排気系に含めて考えてもよい。
【0029】
マニホールド209の下方には、マニホールド209の下端開口を気密に閉塞可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に鉛直方向下側から当接されるように構成されている。シールキャップ219は、例えばSUS等の金属で構成され、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と当接するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219における処理室201の反対側には、ウエハ200を収容するボート217を回転させる回転機構267が設置されている。回転機構267の回転軸255は、シールキャップ219を貫通してボート217に接続されている。回転機構267は、ボート217を回転させることでウエハ200を回転させるように構成されている。シールキャップ219は、アウタチューブ203の外部に垂直に設置された搬出入機構(昇降機構)としてのボートエレベータ115によって鉛直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115は、シールキャップ219を昇降させることで、ボート217を処理室201内外に搬入及び搬出することが可能なように構成されている。ボートエレベータ115は、ボート217及びボート217に収容されたウエハ200を、処理室201内外に搬送する搬送装置(搬送系)として構成されている。
【0030】
基板支持具としてのボート217は、複数枚、例えば25枚~200枚のウエハ200を、水平姿勢で、かつ、互いに中心を揃えた状態で鉛直方向に間隔を空けて配列させるように構成されている。ボート217は、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される。ボート217の下部には、例えば石英やSiC等の耐熱性材料で構成される断熱板218が水平姿勢で多段(図示せず)に支持されている。この構成により、ヒータ207からの熱がシールキャップ219側に伝わりにくくなっている。ただし、本実施形態は上述の形態に限定されない。例えば、ボート217の下部に断熱板218を設けずに、石英やSiC等の耐熱性材料で構成される筒状の部材として構成された断熱筒を設けてもよい。
【0031】
なお、本開示における「25枚~200枚」のような数値範囲の表記は、下限値および上限値がその範囲に含まれることを意味する。よって、例えば、「25枚~200枚」とは「25枚以上200枚以下」を意味する。他の数値範囲についても同様である。
【0032】
インナチューブ204内には温度検出器としての温度センサ263が設置されており、温度センサ263により検出された温度情報に基づきヒータ207への通電量を調整することで、処理室201内の温度が所望の温度分布となるように構成されている。温度センサ263は、ノズル410,420と同様にL字型に構成されており、インナチューブ204の内壁に沿って設けられている。
【0033】
図2に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ121は、CPU(Central Processing Unit)121a,RAM(Random Access Memory)121b,記憶装置121c,I/Oポート121dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM121b,記憶装置121c,I/Oポート121dは、内部バスを介して、CPU121aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ121には、例えばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0034】
記憶装置121cは、例えばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置121c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラム、後述する半導体装置の製造方法の手順や条件などが記載されたプロセスレシピなどが、読み出し可能に格納されている。プロセスレシピは、後述する半導体装置の製造方法における各工程(各ステップ)をコントローラ121に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピ、制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、プロセスレシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、または、プロセスレシピ及び制御プログラムの組み合わせを含む場合がある。RAM121bは、CPU121aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0035】
I/Oポート121dは、上述のMFC312,322,332,512,522、バルブ314,324,334,514,524、圧力センサ245、APCバルブ243、真空ポンプ246、ヒータ207、温度センサ263、回転機構267、ボートエレベータ115等に接続されている。
【0036】
CPU121aは、記憶装置121cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置122からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置121cからレシピ等を読み出すように構成されている。CPU121aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC312,322,512,522による各種ガスの流量調整動作、バルブ314,324,514,524の開閉動作、APCバルブ243の開閉動作及びAPCバルブ243による圧力センサ245に基づく圧力調整動作、温度センサ263に基づくヒータ207の温度調整動作、真空ポンプ246の起動及び停止、回転機構267によるボート217の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ115によるボート217の昇降動作、ボート217へのウエハ200の収容動作等を制御するように構成されている。
【0037】
コントローラ121は、外部記憶装置(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)123に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置121cや外部記憶装置123は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体は、記憶装置121c単体のみを含む場合、外部記憶装置123単体のみを含む場合、または、その両方を含む場合がある。コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置123を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0038】
(2)基板処理工程
(基板処理方法の工程の第1例)
半導体装置(デバイス)の製造工程の一工程として、金属絶縁膜、すなわち、金属酸化膜としての酸化アルミニウム膜(Al2O3膜、以下、AlO膜とも称する)が形成されたウエハ200上に、金属膜、すなわち、遷移金属元素含有膜であり、第6族元素含有膜であるモリブデン(Mo)を含有するMo含有膜を形成する基板処理方法の工程の一例について、
図3を用いて説明する。
図3では、縦軸に温度、横軸に時間を示している。Mo含有膜を形成する工程は、上述した基板処理装置10の処理炉202を用いて実行される。以下の説明において、基板処理装置10を構成する各部の動作はコントローラ121により制御される。
【0039】
本実施形態による基板処理工程(半導体装置の製造工程)は、例えば、
(a)搬入温度(T1)の処理容器内である処理室201へウエハ200を搬入する工程(搬入工程)と、
(b)処理室201を成膜温度(T2)にする工程(第1温調工程)と、
(c)処理室201内へ処理ガスを供給し、ウエハ200の表面に金属膜を形成する(成膜工程)工程と、
(d)処理室201内を搬入温度(T1)よりも低い搬出温度(T3)にする工程(降温工程)と、
(e)ウエハ200を処理室201内から搬出する工程(搬出工程)と、
を有する。
【0040】
本明細書において「ウエハ」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのもの」を意味する場合や、「ウエハとその表面に形成された所定の層や膜等との積層体」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハの表面」という言葉を用いた場合は、「ウエハそのものの表面」を意味する場合や、「ウエハ上に形成された所定の層や膜等の表面」を意味する場合がある。本明細書において「ウエハ上に所定の層を形成する」と記載した場合は、ウエハそのものの表面上に所定の層を直接形成することを意味する場合や、ウエハ上に形成されている層等の上に所定の層を形成することを意味する場合がある。本明細書において「基板」という言葉を用いた場合も、「ウエハ」という言葉を用いた場合と同義である。
【0041】
本明細書における処理温度とはウエハ200の温度または処理室201(処理容器)内の温度のことを意味し、処理圧力とは処理室201内の圧力のことを意味する。また、処理時間とは、その処理を継続する時間を意味する。これらは、以下の説明においても同様である。
【0042】
(a)搬入工程
複数枚のウエハ200がボート217に装填(ウエハチャージ)されると、
図1に示されているように、複数枚のウエハ200を支持したボート217は、ボートエレベータ115によって持ち上げられて、処理室201内に搬入(ボートロード)され、処理容器に収容される。この状態で、シールキャップ219はOリング220を介してアウタチューブ203の下端開口を閉塞した状態となる。この時、処理室201は、搬入温度T1となるように、ヒータ207によって加熱される。搬入温度T1は、例えば、150℃以上500℃以下であって、好ましくは200℃以上450℃以下、より好ましくは300℃以上450℃以下となるように設定される。
【0043】
(b)第1温調工程(第1温度調整工程)
処理室201内が成膜温度T2となるようにヒータ207によって加熱される。この際、処理室201内が所望の温度分布となるように、温度センサ263が検出した温度情報に基づきヒータ207への通電量がフィードバック制御される(温度調整、または温調)。ヒータ207の温度は、処理室201内の温度、つまり、ウエハ200の温度が、例えば、搬入温度T1から成膜温度T2まで昇温される。成膜温度T2は、例えば、300℃以上600℃以下であって、好ましくは350~550℃、さらに好ましくは400~500℃となるように設定して行う。また、ヒータ207による処理室201内の加熱は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は継続して行われる。
【0044】
この時、処理室201内に水素(H)含有ガスである水素(H2)ガスと不活性ガスの少なくとも1つ以上が供給してもよい。例えば、H2ガスのみを供給する場合、不活性ガスのみを供給する場合、その両方を供給する場合、がある。以下、不活性ガスとしてアルゴン(Ar)ガスを用いる例について説明する。この例では、H2ガスは、主にガス供給管320、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給される。また、Arガスは、主にガス供給管520、MFC522、バルブ524、ノズル420を介して処理室201内に供給される。
【0045】
ここで、H2ガスは還元ガスと見なすことができる。つまり、第1温調工程の少なくとも一部において、処理容器内へ還元ガスを供給する。これにより、ウエハ200の表面を還元しながら温調できるため、ウエハ200上に形成される金属膜中の不純物濃度を低減させることができる。ここで、膜中の不純物とは、目的とする膜の化学的組成に含まれない元素を意味する。膜が、金属元素単体の膜である場合は、金属元素以外の元素が不純物になり得る。具体的には、Mo膜の場合は、Mo以外の元素であり、例えば、H、塩素(Cl)や酸素(O)の少なくとも1つ以上が不純物となる。
【0046】
また、H2ガスは高熱伝導ガスと見なすことができる。つまり、第1温調工程の少なくとも一部において、処理容器内へ高熱伝導ガスを供給する。処理室201内に高熱伝導ガスを供給する場合、ヒータ207から処理室201内のガスに伝導する、単位時間当たりの熱量が大きくなる。また、処理室201内に高熱伝導ガスを供給する場合、処理室201内のガスからウエハ200に伝導する、単位時間当たりの熱量が大きくなる。これらのことから、処理室201内のガスの温度及びウエハ200の温度は、高熱伝導ガスを処理室201内に供給しない場合よりも短かい時間で上昇する。すなわち、処理室201内の温調に要する時間が短縮される。
【0047】
また、H2ガスは還元性を持った高熱伝導ガスと見なすことができる。つまり、第1温調工程の少なくとも一部において、処理容器内へ還元性を持った高熱伝導ガスを供給する。これにより、ウエハ200の表面を還元しながら、短時間で処理室201内の温調を行うことができる。
【0048】
また、第1温調工程の少なくとも一部、例えば第1温調工程の後半において、還元ガス(H2ガス)の流量を徐々に増やしてもよい。処理室201内の還元ガスの濃度が高くなることにより、還元反応をさらに促進しつつ、短時間で処理室201内の温調を行うことができる。また、第1温調工程の少なくとも一部、例えば第1温調工程の後半において、徐々に高熱伝導ガスの流量を増加させてもよい。これにより、処理室201内及びウエハ200の温度が急激に変化することを防ぐことができる。したがって、ウエハ200の表面における熱ストレス(熱応力)が低下するため、ウエハ200のパターン倒れが抑制できる。
【0049】
なお、H2ガスを処理室201内に供給して第1温調工程を行う際、処理室内201内の圧力を4000Pa未満とすると温調時間の短縮効果が得られにくくなることがあり、4000Pa以上とすると温調時間の十分に短縮効果を得ることができる。また、6000Pa以上とすると、さらに温調時間の短縮効果を得ることができる。また、13000Paよりも高くするとH2ガスがウエハ200を還元することによって生成した副生成物によって、ウエハ200がエッチングされることがあり、13000Pa以下とすると副生成物によるエッチングを抑制できる。また、11000Pa以下とすると、副生成物によるエッチングを十分に抑制できる。従って、処理室内201内の圧力は4000Pa以上13000Pa以下とすることが好ましく、6000Pa以上11000Pa以下とすることがさらに好ましい。
【0050】
第1温調工程においてH2ガスを供給する場合、昇温中に基板が還元されるため、基板によっては意図しない還元反応によって、基板ごとの還元量に差が生じる可能性がある。このような効果を抑制するために、第1温調工程において不活性ガスのみを供給してもよく、還元性を持たない高熱伝導ガスのみを供給してもよく、その両方を供給するようにしてもよい。
【0051】
また、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。この際、処理室201内の圧力は、圧力センサ245で測定され、この測定された圧力情報に基づき、APCバルブ243がフィードバック制御される(圧力調整)。真空ポンプ246は、少なくともウエハ200に対する処理が完了するまでの間は常時作動させた状態を維持する。
【0052】
(f)成膜準備工程
次に、処理室201内へ高熱伝導ガスを供給する工程(成膜準備工程)を実施してもよい。つまり、処理容器内へ高熱伝導ガスを供給してもよい。高熱伝導ガスとして、例えば、H2ガスを利用することができる。なお、成膜準備工程は、第1温調工程において高熱伝導ガスではないガスを供給した場合に行われることが好ましい。
【0053】
ここで、第1温調工程において、例えばArガスのような、高熱伝導ガスではないガスを供給した後に、後述する成膜工程において、還元ガスとして、還元性を持った高熱伝導ガス(例えば、H2ガス)をウエハ200に供給する場合を考える。この場合、第1温調工程と成膜工程で処理室内201内に供給されるガスの熱伝導率の差によって、ウエハ200の基板温度が急激に変化することがある。これにより、ウエハ200の表面に熱ストレスが発生し、ウエハ200の表面に形成されたパターンが損傷をうける(パターン倒れが発生する)ことがある。成膜準備工程を行うことで、第1温調工程と成膜工程で処理室内201内に供給されるガスの熱伝導率の差を減少させることができる。従って、上述したようなウエハ200の表面における熱ストレスを低減させ、パターン倒れを抑制することができる。
【0054】
また、成膜準備工程の少なくとも一部において、高熱伝導ガスの供給量を増加させてもよい。これにより、ウエハ200の急激な温度変化が抑制され、熱ストレスが低下するため、ウエハ200のパターン倒れが抑制できる。
【0055】
(c)成膜工程
成膜工程では、処理室201内へ処理ガスを供給し、ウエハ200の表面に金属膜を形成する。この時、処理室201内が、成膜温度T2となるように、ヒータ207によって加熱される。成膜温度T2は、搬入温度T1より高い温度に設定されている(T1<T2)。成膜温度T2は、例えば、300℃以上600℃以下の範囲内の温度であって、好ましくは350℃以上550℃以下、より好ましくは400℃以上500℃以下の温度に設定される。
【0056】
成膜工程は、次に説明する、(c1)金属含有ガス供給工程、(c2)残留ガス除去工程、(c3)還元ガス供給工程、(c4)残留ガス除去工程、および、(c5)所定回数実施工程、を含むように行われる。
【0057】
(c1)金属含有ガス供給工程
バルブ314を開き、ガス供給管310内に処理ガスとしての原料ガスである金属含有ガスを流す。以下、金属含有ガスとして、Mo含有ガスを用いる例について説明する。Mo含有ガスは、MFC312により流量調整され、ノズル410のガス供給孔410aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ウエハ200に対してMo含有ガスが供給される。このとき同時にバルブ514を開き、ガス供給管510内にArガスを流す。ガス供給管510内を流れたArガスは、MFC512により流量調整され、Mo含有ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。また、このとき、ノズル420内へのMo含有ガスの侵入を防止するために、バルブ524を開き、ガス供給管520内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管320、ノズル420を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0058】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば、4000Pa~11000Paの範囲内の圧力に設定するのが好ましい。MFC312で制御する金属含有ガスの供給流量は、例えば0.1~1.0slm、好ましくは0.3~0.9slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~20slmの範囲内の流量とする。
【0059】
Mo含有ガスの供給により、ウエハ200(表面の下地膜であるAlO膜)上に金属含有層としてMo含有層が形成される。Mo含有層は、ClやO、Hを含むMo層であってもよいし、Mo含有ガスの吸着層であってもよいし、それらの両方を含んでいてもよい。
【0060】
(c2)残留ガス除去工程
Mo含有ガスの供給を開始してから所定時間経過後であって例えば0.01~60秒後に、ガス供給管310のバルブ314を閉じて、Mo含有ガスの供給を停止する。つまり、Mo含有ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~60の範囲内の時間とする。このとき排気管231のAPCバルブ243は開いたままとして、真空ポンプ246により処理室201内を真空排気する。すなわち、処理室201内をパージする。このときバルブ514,524は開いたままとして、Arガスの処理室201内への供給を維持する。Arガスはパージガスとして作用し、処理室201内に残留する未反応もしくは金属含有層形成に寄与した後のMo含有ガスを処理室201内から排除する効果を高めることができる。
【0061】
(c3)還元ガス供給工程
処理室201内の残留ガスを除去した後、バルブ324を開き、ガス供給管320内に、処理ガスとしての還元ガスとしてH2ガスを供給する。H2ガスは、MFC322により流量調整され、ノズル420のガス供給孔420aから処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このときウエハ200に対して、H2ガスが供給される。このとき同時にバルブ524を開き、ガス供給管520内にArガスを流す。ガス供給管520内を流れたArガスは、MFC522により流量調整される。ArガスはH2ガスと一緒に処理室201内に供給され、排気管231から排気される。このとき、ノズル410内へのH2ガスの侵入を防止するために、バルブ514を開き、ガス供給管510内にArガスを流す。Arガスは、ガス供給管310、ノズル410を介して処理室201内に供給され、排気管231から排気される。
【0062】
このときAPCバルブ243を調整して、処理室201内の圧力を、例えば4000Pa~13000Paの範囲内の圧力とする。MFC322で制御するH2ガスの供給流量は、例えば1~60slm、好ましくは15~35slmの範囲内の流量とする。MFC512,522で制御するArガスの供給流量は、それぞれ例えば0.1~30slmの範囲内の流量とする。H2ガスをウエハ200に対して供給する時間は、例えば0.01~600秒の範囲内の時間とする。
【0063】
このとき処理室201内に流しているガスは、H2ガスとArガスのみである。ここで、H2ガスは、金属含有ガス供給工程でウエハ200上に形成されたMo含有層の少なくとも一部と置換反応する。すなわち、Mo含有層中のOや塩素が、H2ガスと反応し、Mo層から脱離して、水蒸気(H2O)や塩化水素(HCl)や塩素(Cl2)等の反応副生成物として処理室201内から排出される。つまり、ウエハ200の表面や形成された膜をH2ガスで還元しながら成膜できるため、金属膜中の不純物濃度を低減させることができる。
【0064】
なお、H2ガスを処理室201内に供給して成膜工程を行う際、処理室内201内の圧力を4000Pa未満とすると、H2ガスによるウエハ200及び金属膜の還元による不純物濃度を低減する効果が得られにくくなることがあり、4000Pa以上とすると還元による効果を得ることができる。6000Pa以上とすると、還元による効果を十分に得ることができる。また、処理室内201内の圧力を13000Paよりも高くすると、H2ガスがウエハ200を還元する際に生成した副生成物によってウエハ200がエッチングされることがあり、13000Pa以下とすると、副生成物によるエッチングを抑制できる。11000Pa以下とすると、副生成物によるエッチングを十分に抑制できる。従って、処理室内201内の圧力は、4000Pa以上13000Pa以下とすることが好ましく、6000Pa以上11000Pa以下とすることがさらに好ましい。
【0065】
(c4)残留ガス除去工程
金属層を形成した後、バルブ324を閉じて、H2ガスの供給を停止する。そして、上述したステップ(c2:残留ガス除去)と同様の処理手順により、処理室201内に残留する未反応もしくは金属層の形成に寄与した後のH2ガスや反応副生成物を処理室201内から排除する。すなわち、処理室201内をパージする。
【0066】
(c5)所定回数実施工程
上記した(c1)~(c4)のステップ(工程)を順に行うサイクルを所定回数(n回、nは1以上の整数)行うことにより、ウエハ200上に、所定の厚さ(例えば0.5~40.0nm)の金属含有膜を形成する。上述のサイクルは、複数回繰り返すことが好ましい。また、(c1)~(c4)のステップの工程をそれぞれ少なくとも1回以上行ってもよい。つまり、金属含有ガスと水素含有ガスを非同時に処理容器内に供給するサイクルを所定回数実行する。
【0067】
(d)降温工程
成膜工程の後、降温工程が実施される。降温工程では、処理室201の温度が、成膜温度T2から搬出温度T3となるように、ヒータ207の加熱が制御される。搬出温度T3は、搬入温度T1より低く温度に設定されている(T3<T1)。例えば、搬出温度T3は、400℃以下の範囲内の温度であって、好ましくは250℃以下、より好ましくは、100℃以下となるような温度に設定される。処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。
【0068】
この時、処理室201へ還元ガスとしてH2ガスを供給する。つまり、降温工程の少なくとも一部において、処理室201内に還元ガスを供給する。これにより、金属膜を還元しながら、処理室201内の温度を下げることができるので、金属膜中の不純物濃度が低減し、金属膜の電気的特性が改善される。ここで、降温工程における不純物とは、例えば、上述の不純物に加えて、窒素(N)を意味する場合がある。
【0069】
また、H2ガスは高熱伝導ガスと見なすことができる。つまり、降温工程の少なくとも一部において、処理室201内へ高熱伝導ガスを供給する。これにより、降温時間が短縮される。さらに、ウエハ200の実温度と処理容器の炉内の温度差が、高熱伝導ガス雰囲気ではない雰囲気中で降温した場合よりも小さくなるため、ウエハ200の基板温度の制御性が向上する。
【0070】
なお、H2ガスを処理室201内に供給して降温工程を行う際、処理室内201内の圧力を4000Pa未満とすると温調時間の短縮効果が得られにくくなることがあり、4000Pa以上とすると温調時間の短縮効果を得ることができる。6000Pa以上とすると、温調時間の短縮効果を十分に得ることができる。また、13000Paよりも高くすると、H2ガスがウエハ200を還元した際に生成する副生成物によってウエハ200がエッチングされることがあり、13000Pa以下とすると副生成物によるエッチングを抑制できる。また、11000Pa以下とすると、副生成物によるエッチングを十分に抑制できる。従って、H2ガスを処理室201内に供給して降温工程を行う際、処理室内201内の圧力は4000Pa以上13000Pa以下とすることが好ましく、6000Pa以上11000Pa以下とすることがさらに好ましい。
【0071】
また、H2ガスは還元性を持った高熱伝導ガスと見なすことができる。つまり、降温工程の少なくとも一部において、処理室201内に還元性を持った高熱伝導ガスを供給する。これにより、金属膜を還元しながら、降温時間を短縮することができる。
【0072】
また、処理室201内を真空排気した状態を維持したまま、処理室201内の温度を下げてもよい。つまり、降温工程の少なくとも一部において、処理室201を真空状態に保ってもよい。具体的には、処理室201内を1Pa~100Paとした状態で、処理室201内の温度を250℃以下より好ましくは100℃以下まで低下させてもよい。この場合、ウエハ200とその周辺のガスとの熱伝導が起こりにくくなるため、ウエハ200および金属膜の降温速度が低下する。これにより、ウエハ200の温度が高い状態の時間が長くなり、ウエハ200が熱処理される状態となる。この熱処理の結果、金属膜の結晶性が向上する。また、ウエハ200の周囲の圧力が低いことにより、金属膜中の不純物が脱離しやすくなるため、金属膜中の不純物濃度が減少する。以上から、金属膜の電気的特性を改善することができる。なお、処理室201内の圧力を100Paより大きくした場合、ウエハ200とその周辺のガスとの熱伝導が起こりやすくなることがあること、金属膜中の不純物が脱離しにくくなること、の少なくとも一方によって、上述の効果が得られにくくなることがある。
【0073】
(e)搬出工程
降温工程の後、搬出工程が実施される。ガス供給管510,520のそれぞれからArガスを処理室201内へ供給し、処理室201内の雰囲気をArガスに置換(不活性ガス置換)し、処理室201内の圧力を常圧(大気圧)にする(大気圧復帰)。ボートエレベータ115によりシールキャップ219が下降されて、アウタチューブ203の下端が開口される。そして、ウエハ200がボート217に支持された状態でアウタチューブ203の下端からアウタチューブ203の外部に搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済のウエハ200は、ボート217より取り出される(ウエハディスチャージ)。
【0074】
上述したように本開示における基板処理工程では、処理室201内を搬入温度T1よりも低い搬出温度T3(T3<T1)にする工程(降温工程)のあと、ウエハ200を処理室201内から搬出する工程(搬出工程)を行う。つまり、金属膜を形成した後にウエハ200を搬入温度T1より低温の搬出温度T3まで冷却してから、アウタチューブ203の外部に搬出している。これにより、搬出時のウエハ200の温度が低下するため、搬出時の金属膜の変質が抑制される。従って、金属膜の電気的特性が改善される。ここで、搬出工程時に生じる金属膜の変質とは、処理室201内の雰囲気や処理室201外の雰囲気により、例えば、窒化、酸化、の少なくとも1つ以上が、金属膜に生じることを意味する。
【0075】
(基板処理方法の工程の第2例)
図4は、基板処理方法の工程の第2例にかかる半導体装置の製造方法を説明するフロー図である。
図4は、
図3と同様、ウエハ200上にMo含有膜を形成する工程の一例であり、縦軸に温度、横軸に時間を示している。なお、
図4の説明では、
図3の製造工程と異なる部分について主に説明し、
図3で説明した要素と実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0076】
図4が、
図3と主に異なる部分は、成膜工程と降温工程の間に、第2温調工程と保持工程とが追加されている点である。以下、第2温調工程と保持工程とについて説明する。
【0077】
(g)第2温調工程(第2温度調整工程)
成膜工程の後、第2温調工程が実行される。第2温調工程では、処理室201内の温度またはウエハ200の温度を、成膜温度T2から、成膜温度T2より高い保持温度T4(T4>T2)へ昇温させる。第2温調工程では、処理室201内の温度またはウエハ200の温度を、成膜温度T2から保持温度T4へ昇温させる。ここでは、処理室201内の温度が、成膜温度T2から保持温度T4へ昇温されるように、ヒータ207の加熱が制御される。
【0078】
第2温調工程では、例えば、処理室201内、すなわち、ウエハ200が存在する空間が所望の圧力(真空度)となるように真空ポンプ246によって真空排気される。
【0079】
この時、ガス供給管320からは、H2ガスを、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給する。また、ガス供給管520から不活性ガスとしてArガスを、MFC522、バルブ524、ノズル420を介して処理室201内に供給する。
【0080】
ここで、H2ガスは還元ガスとみなすことができる。つまり、第2温調工程の少なくとも一部において、処理室201内へ還元ガスを供給する。これにより、金属膜を還元しながら温調できるため、金属膜中の不純物濃度を低減させることができる。従って、金属膜の電気的特性が改善される。また、H2ガスは高熱伝導ガスと見なすことができる。つまり、第2温調工程の少なくとも一部において、処理室201内へ高熱伝導ガスを供給する。これにより、温調の時間が短縮されることができる。また、H2ガスは還元性を持った高熱伝導ガスと見なすことができる。つまり、第2温調工程の少なくとも一部において、処理容器内へ還元性を持った高熱伝導ガスを供給する。これにより、ウエハ200の表面をH2ガスで還元しながら、短時間で処理室201内の温調を行うことができる。
【0081】
ここで、成膜工程において、還元ガスとして、還元性を持った高熱伝導ガス(例えば、H2ガス)を処理室201に供給する場合を考える。第2温調工程の開始時に処理室201に高熱伝導ガスを供給すると、成膜工程と第2温調工程とで供給されるガスの熱伝導率の差が小さくなるため、ウエハ200の温度変化が減少する。これによって、ウエハ200の表面における熱ストレスを低減し、パターン倒れを抑制できる。
【0082】
なお、H2ガスを処理室201内に供給して第2温調工程を行う際、処理室内201内の圧力を4000Pa未満とすると温調時間の短縮効果が得られにくく、4000Pa以上とすると温調時間の短縮効果を得ることができる。6000Pa以上とすると、温調時間の短縮効果を十分に得ることができる。また、13000Paよりも高くすると、H2ガスがウエハ200を還元することによって生成した副生成物によってウエハ200がエッチングされ、13000Pa以下とすると副生成物によるエッチングを抑制できる。また、11000Pa以下とすると、副生成物によるエッチングを十分に抑制できる。従って、処理室内201内の圧力は4000Pa以上13000Pa以下とし、好ましくは6000Pa以上11000Pa以下とする。
【0083】
なお、処理室201内を真空排気した状態を維持したまま、処理室201内を保持温度にしてもよい。この場合、ウエハ200の周囲の圧力が低いことにより、金属膜中の不純物が脱離しやすくなるため、金属膜中の不純物濃度が減少する。
【0084】
(h)保持工程(アニール工程、熱処理工程)
第2温調工程の後、保持工程が実行される。保持工程は、成膜工程で金属膜が形成されたウエハ200を、成膜温度T3よりも高い保持温度T4(T4>T3)の処理室201内で保持する。つまり、保持温度T4で、ウエハ200に対してアニール(熱処理)を行う。これによって、金属膜を形成する結晶粒子の径(粒径)が増大し、金属膜の電気的特性が改善される。保持温度T4は、例えば、500℃以上650℃以下の範囲の温度であって、好ましくは、550℃以上600℃以下となるような温度に設定される。
【0085】
この時、ガス供給管320からは、還元ガスとしてH2ガスを、MFC322、バルブ324、ノズル420を介して処理室201内に供給する。また、ガス供給管520から不活性ガスとしてArガスを、MFC522、バルブ524、ノズル420を介して処理室201内に供給する。つまり、保持工程の少なくとも一部において、処理室201内に還元ガスを供給する。金属膜を還元しながら熱処理を行うことができるため、金属膜中の不純物濃度を低減させることができるため、金属膜の電気的特性が改善される。
【0086】
なお、H2ガスを処理室201内に供給して保持工程を行う際、処理室内201内の圧力を4000Pa未満とするとウエハ200及び金属膜の還元による不純物濃度を低減する効果が得られにくくなることがあり、4000Pa以上とすると還元による効果を得ることができる。6000Pa以上とすると、温調時間の短縮効果を十分に得ることができる。また、13000Paよりも高くすると、H2ガスがウエハ200を還元した際に生成する副生成物によってウエハ200がエッチングされることがあり、13000Pa以下とすると副生成物によるエッチングを抑制できる。また、11000Pa以下とすると、副生成物によるエッチングを十分に抑制できる。従って、処理室内201内の圧力は4000Pa以上13000Pa以下とすることが好ましく、6000Pa以上11000Pa以下とすることがさらに好ましい。
【0087】
実施の形態例2によれば、上述の第2温調工程による効果と、保持工程による効果と、に加えて、実施の形態1と同様な効果を得ることができる。
【0088】
以下、ガスについて説明する。
【0089】
不活性ガスとしては、基板処理工程において形成される金属膜と反応しにくいガスを用いることが好ましい。例えば、ヘリウム(He)ガス、ネオン(Ne)アルゴン(Ar)ガス、ガス、キセノン(Xe)ガス等の希ガスや窒素(N2)ガスから、適宜選択して用いてもよい。なお、形成する膜によっては、N2ガスにより変質する場合がある。その場合には、N2ガス以外のガスを用いる。例えば、金属膜としてMo膜を形成する場合、Mo膜がN2ガスによって変質してしまうため、N2ガス以外の不活性ガスを用いることが好ましい。
【0090】
還元ガスとしては、例えば、H2ガス,重水素(D2)ガス,ボラン(BH3)ガス,ジボラン(B2H6)ガス,一酸化炭素(CO)ガス,アンモニア(NH3)ガス,モノシラン(SiH4)ガス,ジシラン(Si2H6)ガス,トリシラン(Si3H8)ガス,モノゲルマン(GeH4)ガス,ジゲルマン(Ge2H6)が利用できる。
【0091】
本開示における高熱伝導ガスとは、不活性ガスとして用いられるガスよりも熱伝導率が高いガスである。ここで、ガスの熱伝導率は、ガスを主に構成する分子(ガス分子)の分子量が小さいほど高い。従って、例えば、不活性ガスとしてArガスを用いる場合、高熱伝導ガスとして、Arよりも分子量が小さいガスである、H2ガス,D2ガス、Heガス、BH3ガス、B2H6ガス、NH3ガス、N2ガス、Neガス、SiH4ガス、COガスを用いてもよい。また、例えば、不活性ガスとしてN2ガスを用いる場合、N2よりも分子量が小さいガスである、H2ガス,D2ガス、Heガス、BH3ガス、Neガスを用いてもよい。また、例えば、不活性ガスとしてHeガスを用いる場合、Heよりも分子量が小さいガスである、H2ガス,D2ガス、を用いてもよい。
【0092】
本開示における還元性を持った高熱伝導ガスとは、上述した還元ガス及び高熱伝導ガスの両方に属するガスである。従って、例えば、不活性ガスとしてArガスを用いる場合、還元性を持った高熱伝導ガスとして、H2ガス,D2ガス、BH3ガス、B2H6ガス、NH3ガス、SiH4ガス、COガスを用いることができる。なお、還元性を持った高熱伝導ガスとしては、H2ガスまたはD2ガスを用いることが好ましい。
【0093】
D2はH2よりも活性が高いため、D2ガスはH2ガスよりも還元作用による効果が大きい。従って、還元ガスとしてD2ガスを用いた場合、H2ガスよりもさらに金属膜中の不純物濃度を低減することができる。
【0094】
還元性ガスまたは高熱伝導ガス、還元性を持った高熱伝導ガスとしてのH2ガスを、H2と他のガスとの混合ガスとして処理室201内に供給する場合、その混合ガスにおけるH2の質量分率を70%未満とすると、還元作用が十分に得られなくなることがあり、金属膜の電気抵抗を目標値に到達させることができなくなることがある。その混合ガスにおけるH2の質量分率を70%以上とすることにより、還元作用が十分に得られるようになり、金属膜の電気抵抗を目標値に到達させることができるようになる。また、その混合ガスにおけるH2の質量分率を90%以上とすることにより、金属膜の電気抵抗を目標値以上に改善できる。言い換えると、目標値を超える電気的特性を有する金属膜を得ることができる。これらのことから、その混合ガスにおけるH2の質量分率を70%以上とすることが好ましく、90%以上とすることがより好ましい。なお、その混合ガスは水素を含むことから、その混合ガスを水素含有ガスと称することもできる。
【0095】
ここで、処理室201内にするガス分子のうち少なくとも一部が、
図1に図示しないプラズマ生成部によってラジカル化または励起状態にされていてもよい。このようにプラズマにより活性化されたガスを利用することで、金属膜中の不純物を除去することができる。
【0096】
なお、本開示における金属膜とは、金属元素を主元素として含む膜である。金属元素は、好ましくは遷移金属元素である。遷移金属元素としては、ジルコニウム(Zr)、ハフニウム(Hf)、チタン(Ti)等の第4族元素が挙げられる。また、Mo、タングステン(W)等の第6族元素、ルテニウム(Ru)等の8族元素がある。また、バナジウム(V)、ニオブ(Nb)、タンタル(Ta)等の5族元素が挙げられる。また、遷移金属以外では、第13族元素である、アルミニウム(Al)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、等の元素が挙げられる。
【0097】
金属含有ガスとして、例えば、上述した金属元素を含有するガスを用いることができる。金属含有ガスとして、例えば、上述した金属元素と、ハロゲン元素(例えば、フッ素(F)、Cl、臭素(Br)、ヨウ素(I))と、を含んだハロゲン系の金属含有ガスを用いることができる。また、ハロゲン系の金属含有ガスとして、例えば、遷移金属元素を含むハロゲン系の遷移金属含有ガスを用いることができる。また、ハロゲン系の遷移金属含有ガスとして、例えば、Moを含んだハロゲン元素含有Mo含有ガスを用いることができる。また、ハロゲン元素含有Mo含有ガスとしては、例えば、二酸化二塩化モリブデン(MoO2Cl2)ガス、四塩化酸化モリブデン(MoOCl4)ガス、五塩化モリブデン(MoCl5)などを用いることができる。ハロゲン元素は金属膜中に不純物として残存しにくいため、ハロゲン元素を含む金属含有ガスを用いて金属膜を形成することで、金属膜の電気的特性(例えば、電気抵抗)の悪化を抑制可能である。また、MoCl5ガスのようなO非含有な金属含有ガス(Mo含有ガス)を用いた場合、ウエハ200や金属膜の酸化を抑制することができるため、金属膜の電気的特性の悪化を抑制することができる。
【0098】
上述の態様では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、例えば、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。また、上述の態様では、ホットウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する例について説明した。本開示は上述の態様に限定されず、コールドウォール型の処理炉を有する基板処理装置を用いて膜を形成する場合にも、好適に適用することができる。 これらの基板処理装置を用いる場合においても、上述の態様や変形例と同様な処理手順、処理条件にて各処理を行うことができ、上述の態様や変形例と同様の効果が得られる。
【0099】
以上、本開示者によってなされた開示を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本開示は、上記実施の形態に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。また、上述の態様や変形例は、適宜組み合わせて用いることができる。このときの処理手順、処理条件は、例えば、上述の態様や変形例の処理手順、処理条件と同様とすることができる。
【符号の説明】
【0100】
10:基板処理装置
200:基板(ウエハ)
204:処理容器(インナチューブ)
115:搬出入機構(ボートエレベータ)
300:処理ガス供給系