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特開2024-47643ロータリーキルン用ガースギア及びこれを備えたロータリーキルンの操業方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047643
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】ロータリーキルン用ガースギア及びこれを備えたロータリーキルンの操業方法
(51)【国際特許分類】
   F27B 7/26 20060101AFI20240401BHJP
   F16H 55/17 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
F27B7/26
F16H55/17 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153248
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136825
【弁理士】
【氏名又は名称】辻川 典範
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(72)【発明者】
【氏名】近藤 孝史
【テーマコード(参考)】
3J030
4K061
【Fターム(参考)】
3J030AC10
3J030BB02
3J030BB16
3J030BB18
3J030BC02
3J030BD07
4K061AA08
4K061BA12
4K061CA16
4K061DA01
4K061FA02
4K061HA07
(57)【要約】
【課題】 ガースギアを構成する2個の円弧状部材の接合部分の締結ボルトにおいて折損等の問題が生じることのないロータリーキルン用ガースギアを提供する。
【解決手段】ロータリーキルンの円筒状胴体部1の外周部に同芯軸状に設けられ、中心軸Oを含む面に関して二分割可能な互いに面対称の関係にある2個の円弧状部材10A、10Bで構成される略円環状のガースギア4であって、2個の円弧状部材10A、10Bが互いに接合する2箇所の各々には、ロータリーキルンの装入端及び排出端に向って夫々突出する2個の円柱状の突起部12が設けられており、それらの各々は二分割可能であって且つ焼嵌めリング13が外嵌されており、突出部12及び焼嵌めリング13は、それらの先端側の係合部分に全周に亘って開先用の溝部Gが形成されており且つ溝部Gにおいて互いに溶接されている。
【選択図】 図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータリーキルンの円筒状胴体部の外周部に同芯軸状に設けられ、中心軸を含む面に関して二分割可能な互いに面対称の関係にある2個の円弧状部材で構成される略円環状のガースギアであって、前記2個の円弧状部材が互いに接合する2箇所の各々には、前記ロータリーキルンの装入端及び排出端に向って夫々突出する2個の円柱状の突起部が設けられており、これら2個の突起部の各々は、前記面に関して二分割可能であって且つ焼嵌めリングが外嵌されており、これら突出部及び焼嵌めリングは、それらの先端側の係合部分に全周に亘って開先用の溝部が形成されており且つ該溝部において互いに溶接されていることを特徴とするロータリーキルン用ガースギア。
【請求項2】
前記溝部は深さが3mm以上10mm以下であることを特徴とする、請求項1に記載のロータリーキルン用ガースギア。
【請求項3】
前記突出部の先端面には、該先端面の外周部から少なくとも部分的に外側にはみ出して前記焼嵌めリングに係合する円板状又は正多角形状の板状部材が前記突出部に同芯軸状に取り付けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載のロータリーキルン用ガースギア。
【請求項4】
請求項1に記載のガースギアを備えたロータリーキルンに、その内部雰囲気の温度よりも融点の低い物質を含む原料を装入しながら操業することを特徴とするロータリーキルンの操業方法。
【請求項5】
前記原料が亜鉛を含有する鉄系廃棄物であることを特徴とする、請求項4に記載のロータリーキルンの操業方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータリーキルン用ガースギア及び該ガースギアを備えたロータリーキルンの操業方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ロータリーキルンを用いて鉄鋼ダスト、電炉ダスト、亜鉛めっきスラッジ、キュポラダスト等の亜鉛を含有する鉄系廃棄物から還元焙焼により亜鉛を回収するウェルツキルン法が知られている。このプロセスは、鉄系廃棄物をロータリーキルンに装入することで該鉄系廃棄物に含まれる鉄酸化物や亜鉛酸化物を1000~1500℃程度の高温の還元雰囲気下において還元焙焼し、これにより揮発した亜鉛蒸気を冷却及び酸化して微粉末状の酸化亜鉛を生成するものである。生成された微粉末状の酸化亜鉛は、排ガスと共に該ロータリーキルンから排出されるので、粗酸化亜鉛ダストとして集塵機等において回収することができる。なお、回収された粗酸化亜鉛ダストは湿式精製工程においてハロゲン等の不純物が除去された後、乾燥加熱キルンにてカ焼されることで、亜鉛製錬の原料となる粗酸化亜鉛焼鉱が生成される。
【0003】
上記のウェルツキルン法で使用されるロータリーキルンのように、工業的規模で用いられる大型のロータリーキルンは、その円筒状胴体部のサイズが一般的に外径数メートル程度、長さ数十メートル程度にまで及ぶため、該胴体部の中心軸を水平方向から僅かに傾けた状態で回転可能に支持されているロータリーキルンを該中心軸を回転中心として回転速度0.1~2rpm程度で安定的に回転させるため、該胴体部の外周部にガースギアと称する略円環状の歯車が同軸状に設けられている。このガースギアに噛合するピニオンギアをモーターで回転駆動させることで、該ロータリーキルンを安定的に回転することが可能になる。
【0004】
上記のように、大型のロータリーキルンにガースギアを設ける場合は、その外径はロータリーキルンの円筒状胴体部の外径よりも当然大きくなるので、ガースギアは、その中心軸を含む面に関して分割可能な互いに面対称の関係にある2個の円弧状部材で構成するのが一般的である。例えば特許文献1には、セメント工場、パルプ工場、化学工場等に使用されるロータリーキルンの外周部に複数の板バネを介して取り付けられる二分割構造のガースギアが開示されている。この特許文献1のガースギアを構成する2個の円弧状部材は、各々半円状に曲げ加工された角材の外周側に歯切り加工された噛合歯を有し、内周側に補強リブを有している。更に、概円弧状部材の両端部には方形板からなる連結部材が溶接で取り付けられている。この連結部材には、2個の円弧状部材同士を接続するときの位置決め用キーの嵌入用のキー溝が互いの当接面に設けられており、更に締結ボルトの挿通用のリーマ孔が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平05-177454号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した特許文献1のような構造のガースギアを用いることで、2個の円弧状部材同士の接合の際に正確且つ効率よく位置決めしてボルト・ナットで締結することが可能になる。しかしながら、上記のような二分割構造のガースギアは、その構成要素である2個の円弧状部材の互いの接合部分に断続的な力がかかりやすく、ロータリーキルンを長期に亘って継続して操業しているうちにこの接続部分の締結ボルトが折損する問題が生じることがあった。
【0007】
本発明は、かかる二分割構造のガースギアを備えたロータリーキルンが抱える問題点に鑑みてなされたものであり、二分割構造のガースギアを備えたロータリーキルンを長期に亘って継続して操業しても、該ガースギアを構成する2個の円弧状部材の接合部分の締結ボルトにおいて折損等の問題が生じにくいロータリーキルン用ガースギアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係るロータリーキルン用ガースギアは、ロータリーキルンの円筒状胴体部の外周部に同芯軸状に設けられ、中心軸を含む面に関して二分割可能な互いに面対称の関係にある2個の円弧状部材で構成される略円環状のガースギアであって、前記2個の円弧状部材が互いに接合する2箇所の各々には、前記ロータリーキルンの装入端及び排出端に向って夫々突出する2個の円柱状の突起部が設けられており、これら2個の突起部の各々は、前記面に関して二分割可能であって且つ焼嵌めリングが外嵌されており、これら突出部及び焼嵌めリングは、それらの先端側の係合部分に全周に亘って開先用の溝部が形成されており且つ該溝部において互いに溶接されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、ロータリーキルンを長期に亘って継続して操業しても、該ロータリーキルンに設けたガースギアを構成する2個の円弧状部材の接合部分の締結ボルトにおいて折損等の問題が生じるのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施形態のガースギアが設けられているロータリーキルンの模式的な側面図である。
図2】本発明の実施形態のガースギアの斜視図である。
図3図2のガースギアにおける2個の円弧状部材の接合箇所の部分拡大斜視図である。
図4図3の2個の円弧状部材の接合箇所が離間している状態を示す斜視図である。
図5図3の接合箇所に設けられている円柱状の突起部及び該突起部に外嵌されている焼嵌めリングの縦断面図である。
図6図3の円柱状の突起部の先端面に板状部材を取り付ける状態を示す斜視図である。
図7図6の板状部材の取付ボルト同士を金属棒で固定している状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、本発明の実施形態のガースギアが好適に設けられるロータリーキルンの一具体例について、ウェルツキルン法により亜鉛を含む鉄鋼ダストから粗酸化亜鉛を生成する場合を例に挙げて図1を参照しながら説明する。この図1に示すロータリーキルンは、その本体となる円筒状の胴体部1の外周部に2個の環状レール(タイヤとも称する)2が軸方向に互いに離間して設けられており、これらに係合するローラー構造(受けローラーとも称する)3によって中心軸Oを水平方向から僅かに傾けた状態で回転可能に支持されている。この胴体部1の外周部のうち、これら2個の環状レール2の間に本発明の実施形態の略円環状のガースギア4が胴体部1に同芯軸状に設けられている。このガースギア4には、モーター5で回転駆動するピニオンギア6が噛合している。かかる構成により、紙面左側の装入端部に設けられている装入口7からコークス等の還元剤と共に装入された原料の鉄鋼ダストは、モーター駆動のピニオンギア6によって回転するガースギア4に伴って回転するロータリーキルンによって掻き上げられながら、重力により紙面右側の排出端部に向ってロータリーキルン内を徐々に移動する。
【0012】
このようにして、鉄鋼ダストはロータリーキルン内を移動している間に排出端部に設けられているバーナー8の燃料及びコークス等により生成される好ましくは1000~1500℃程度、より好ましくは1100~1200℃程度の高温の還元ガスの雰囲気下で還元焙焼される。この還元焙焼により揮発した亜鉛蒸気は、気相中で酸素により酸化されて微粉末状の粗酸化亜鉛になる。この粗酸化亜鉛の微粉末は、排ガスと共にロータリーキルンの装入端部からダクト9を介して排出され、図示しない電気集塵機等において粗酸化亜鉛ダストとして回収される。一方、上記の鉄鋼ダストの還元焙焼で発生する残渣は、クリンカーとしてロータリーキルンの排出端部から排出される。
【0013】
次に、上記のロータリーキルンの胴体部1の外周部に設けられる本発明の実施形態のガースギア4について詳細に説明する。本発明の実施形態のガースギア4は、図2に示すように、中心軸Oを含む面に関して二分割可能な互いに面対称の関係にある2個の断面が略I字形状の円弧状部材10A、10Bで構成され、全体として略円環状の歯車である。ロータリーキルン用のガースギア4のサイズは、限定するものではないが、例えば外径が4000~6000mm程度、外径と内径の差が800~1600mm程度、幅が300~500mm程度である。なお、ガースギア4は、例えば周方向に等間隔に設けた複数の板バネ11によってロータリーキルンの胴体部1の外周部に取り付けられている。
【0014】
上記の2個の円弧状部材10A、10Bが互いに接合する2箇所の各々には、ロータリーキルンの装入端及び排出端に向って夫々突出する2個の外径100mm程度、高さ50mm程度の円柱状の突起部12が設けられている。これら2個の突起部12の各々は、前述した中心軸Oを含む面に関して二分割可能な互いに面対称の関係にある2個の半円柱体12A、12Bで構成される。また、突起部12とほぼ同じ高さで外径が200mm程度であり、内径が突起部12の外径よりも僅かに小さな焼嵌めリング13が各突起部12に外嵌されている。そして、図3、4に示すように、これら突起部12及び焼嵌めリング13は、それらの先端側の係合部分に全周に亘って開先用の溝部Gが形成されており、この溝部Gにおいて全周に亘って互いに溶接されている。
【0015】
本発明の実施形態のガースギア4は、2個の円弧状部材10同士が接合する上記の2箇所の接合箇所の各々において、更に上記した各突起部12を構成する2個の半円柱体12A、12Bがそれぞれ設けられている互いに対向する1対のリブ14A、14Bにそれぞれ設けたガースギア4の接線方向に延在するボルト孔15A、15Bに、例えばM10の締結ボルト16が挿通されてナット17で締め付けられている。これにより、ロータリーキルンを長期に亘って継続して操業しても、焼嵌めリング13が脱落したり、その影響で締結ボルト16が折損したりする問題を防ぐことができる。
【0016】
すなわち、2個の円弧状部材10を接合させて1個の略円環状のガースギア4を組み立てるとき、上記の2つの半円柱体12A、12Bがそれらの分割面で重なることで円柱状の突起部12になるので、この突起部12に加熱により膨張させた金属製の円環状部材からなる焼嵌めリング13を嵌め込むことで、この焼嵌めリング13がほぼ常温まで冷却されて元のサイズに収縮したときに、上記の2つの半円柱体12A、12Bが相対的に動くことのないように固定できる。しかも、突起部12及び焼嵌めリング13を互いに溶接することで、操業しているうちに焼嵌めリング13が緩んでその内径が突起部12の外径より大きくなっても、容易に突起部12から脱落しなくなる。
【0017】
上記の溶接に際して、突起部12及び焼嵌めリング13の両先端部側の係合部分に設ける開先用の溝部Gの断面形状は特に限定はなく、一般的なV形、レ形、J形、U形等を採用することができる。上記のレ形やJ形の場合は、突起部12側にのみ開先加工してもよいし、焼嵌めリング13側にのみ開先加工してもよい。図5に示すように、上記の溝部Gの深さ(開先深さ)Dは5mm以上10mm以下であることが好ましい。この深さDが5mm未満の場合、溶接量が少なすぎて十分な接合強度を得ることが難しくなりうる。逆にこの深さDが10mmを超えても溶接強度はほとんで変わらず、かえって溶接量が多くなって不経済であるうえ、溶接に要する時間が長くなるので好ましくない。
【0018】
本発明の実施形態のガースギア4は、更に各突起部12の先端面に、図6に示すように該先端面の外周部から少なくとも部分的にラジアル方向の外側にはみ出して焼嵌めリング13の先端面に係合する板状部材20が突起部12に同芯軸状に取り付けられていてもよい。これにより、前述したように焼嵌めリング13が緩んでその内径が突起部12の外径より大きくなり、更に突起部12と焼嵌めリング13とを接合する溶接の強度が低下した場合でも、焼嵌めリング13が突起部12から脱落するのをより確実に防ぐことができる。その結果、長期に亘ってロータリーキルンを継続して操業した場合であっても、ガースギア4が操業中に2個の円弧状部材10に分断したり、接合箇所で位置ずれを起こしたりするトラブルをより確実に防ぐことができるうえ、上記のトラブルが生じる前に焼嵌めリング13が緩んでいる状態にあることを容易に見つけることができる。そして、かかる不具合を見つけた際には、例えば緩んだ焼嵌めリング13を新しいものと交換する等の最小限の補修対応することができる。なお、板状部材20は円板状でもよいし、正三角形、正方形、正六角形等の正多角形状でもよい。
【0019】
図6に示すように、板状部材20の厚み方向に穿孔した複数の貫通孔20aに取付ボルト21を挿通して突起部12に予め設けたネジ穴12aにネジ込むことで板状部材20を突起部12に取り付ける場合は、取付ボルト21に回り止め策を講じることが好ましい。この回り止め策としては、例えば上記の複数の取付ボルト21の頭部と板状部材20とを溶接で固定してもよいが、図7に示すように、取付ボルト21の頭部同士を鉄製の棒状片22で溶接するのが好ましい。例えば、外径100mmの突起部12に対して、外径120mm、厚さ12mmの円板状の板状部材20を3本の取付ボルト21で突起部12に取り付ける場合は、これら取付ボルト21の頭部同士を鉄製の棒状片22でトライアングル状に溶接するのが好ましい。
【0020】
以上、説明したように、本発明の実施形態のロータリーキルン用ガースギアは、該ガースギアを構成する2個の円弧状部材の接合箇所にこれら2個の円弧状部材と共に二分割される円柱状の突起部を設け、この突起部に焼嵌めリングを外嵌させたうえで、これら突起部及び焼嵌めリングを互いに溶接しているため、長期に亘って継続して操業しても、上記の接合箇所でずれが生じて締結ボルトが破損する問題を防ぐことができる。
【0021】
また、ロータリーキルンの内部雰囲気の温度よりも融点の低い物質を含む原料を装入しながら操業する場合、特に、前述したウェルツキルン法により還元焙焼を行う場合は、ロータリーキルンの内部雰囲気温度よりも融点の低い物質を含む原料を当該ロータリーキルンで処理するので、該ロータリーキルンの炉内壁に付着物(ベコとも称する)が生じやすく、その結果、一定の回転速度で回転するようにロータリーキルンの運転を試みても、回転速度が急に減速したり加速したりすることがあり、ガースギアに加わる力がその都度変動することになる。
【0022】
例えば内部雰囲気温度1100~1200℃で操業されているロータリーキルンに装入する原料が鉄鋼ダストを含む場合、鉄鋼ダストの融点は1000~1100℃であるので、ロータリーキルン内の最も温度の高い領域で原料の熔解が生じ、その一部はロータリーキルンの炉内壁に付着していわゆるベコになる。このベコは操業を継続するに従って成長していく。しかも、このベコは必ずしもロータリーキルンの炉内壁に均一な厚さで付着したり成長したりする訳ではなく、炉内壁の位置によって厚さに差異が生じる。このため、前述したようにロータリーキルンを一定の回転速度で回転させるのが困難になり、急に減速したり加速したりするのでガースギアにかかる力が変動する。
【0023】
すなわち、ロータリーキルンの炉内壁にベコが不均一に付着したときのガースギアには、ベコが付着していない正常時に比べて回転しているときに円周方向に部分的により大きな負荷がかかったり、反対に部分的により小さな負荷がかかったりすることがある。このとき、上記の円柱状の突起部12を構成する両半円柱体12A、12Bに互いに離間する方向に断続的に力がかかったり、両半円柱体12A、12Bの相互の接合面において断続的にせん断力がかかったりし、これにより焼嵌めリング13が全体的に拡径したり、上記の接合面で僅かに摺動が生じたりして、最終的に焼嵌めリング13が突起部12から離脱するトラブルや締結ボルト15が破断するトラブルが発生することがあった。これに対して、上記した本発明の実施形態のガースギアを用いることで、上記のトラブルの発生を大幅に抑えることが可能になる。
【符号の説明】
【0024】
1 胴体部
2 環状レール
3 ローラー構造
4 ガースギア
5 モーター
6 ピニオンギア
7 装入口
8 バーナー
9 ダクト
10A、10B 円弧状部材
11 板バネ
12 突起部
12A、12B 半円柱体
12a ネジ穴
13 焼嵌めリング
14 リブ
15A、15B ボルト孔
16 締結ボルト
17 ナット
20 板状部材
20a 貫通孔
21 取付ボルト
22 棒状片
G 溝部
O 中心軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7