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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004778
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】レーザ加工装置及びレーザ加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20240110BHJP
   B23K 26/00 20140101ALI20240110BHJP
   B23K 26/351 20140101ALI20240110BHJP
【FI】
H01L21/78 B
B23K26/00 Q
B23K26/00 P
B23K26/351
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104605
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲三
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【弁理士】
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【弁理士】
【氏名又は名称】松浦 憲政
(72)【発明者】
【氏名】岩城 智
【テーマコード(参考)】
4E168
5F063
【Fターム(参考)】
4E168AD02
4E168AD04
4E168AD18
4E168CA03
4E168CA05
4E168CA06
4E168CB02
4E168CB22
4E168CB23
4E168DA04
4E168DA13
4E168DA43
4E168EA05
4E168EA20
5F063AA15
5F063AA48
5F063BA28
5F063CB02
5F063CB06
5F063CC29
5F063DD26
5F063DE12
5F063DE19
5F063DE33
(57)【要約】
【課題】ウェーハのストリートのレーザ加工中に構造物が除去されているか否かを低コストで確認可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供する。
【解決手段】ウェーハ12に対してレーザヘッド24をストリートCに沿った加工送り方向XA,XBに相対移動させつつレーザヘッド24からレーザ光(第1レーザ光L1、第2レーザ光L2)をストリートCに照射することで、ストリートCに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置10において、レーザ加工中に、レーザヘッド24からストリートCに照射されるレーザ光の加工点SP1,SP2を撮影する撮影手段(カラーカメラ45,46A,46B)と、撮影画像D1,D2A,D2Bから加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69の色情報を取得する色情報取得部56と、加工点SP1,SP2の組成を判別する組成判別部60と、を備える。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザ光を出射するレーザ光源、及び前記レーザ光をウェーハのストリートに集光する集光レンズを有するレーザヘッドを備え、前記ウェーハに対して前記レーザヘッドを前記ストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつ前記レーザヘッドから前記レーザ光を前記ストリートに照射することで、前記ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドから前記ストリートに照射される前記レーザ光の加工点を撮影する撮影手段と、
前記撮影手段により撮影された撮影画像から前記加工点で発生するプラズマの色情報を取得する色情報取得部と、
前記色情報取得部が取得した前記色情報に基づき、前記加工点の組成を判別する組成判別部と、
を備えるレーザ加工装置。
【請求項2】
前記組成の種類と、前記組成の種類ごとの前記色情報と、を対応づけた対応情報を予め取得する対応情報取得部を備え、
前記組成判別部が、前記色情報取得部が取得した前記色情報に基づき、前記対応情報取得部が取得した前記対応情報を参照して、前記組成の判別を行う請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項3】
前記色情報取得部が取得した前記加工点の前記色情報と、前記対応情報取得部が取得した前記対応情報と、に基づき、前記レーザ加工の良否を判別する良否判別部を備える請求項2に記載のレーザ加工装置。
【請求項4】
前記レーザヘッドが、前記レーザ光源から出射された前記レーザ光を前記加工送り方向に沿って複数に分岐させる第1分岐光学素子を備え、
前記集光レンズが、前記第1分岐光学素子により分岐された複数の前記レーザ光を前記ストリートに集光し、
前記撮影手段が、前記集光レンズを通して前記レーザ光ごとの前記加工点を撮影し、
前記色情報取得部が、前記撮影画像から前記加工点ごとに前記色情報を取得し、
前記組成判別部が、前記加工点ごとの前記色情報に基づき、前記加工点ごとに前記組成を判別する請求項1に記載のレーザ加工装置。
【請求項5】
前記組成の種類と、前記組成の種類ごとの前記色情報と、を対応づけた対応情報を予め取得する対応情報取得部を備え、
前記組成判別部が、前記色情報取得部が前記加工点ごと取得した前記色情報に基づき、前記対応情報取得部が取得した前記対応情報を参照して、前記加工点ごとに前記組成の判別を行う請求項4に記載のレーザ加工装置。
【請求項6】
前記色情報取得部が取得した前記加工点ごとの前記色情報と、前記対応情報取得部が取得した前記対応情報と、に基づき、前記レーザ加工の良否を判別する良否判別部を備える請求項5に記載のレーザ加工装置。
【請求項7】
前記撮影手段が、前記集光レンズを通して前記レーザヘッドの光軸と同軸で前記加工点の撮影を行う請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項8】
前記レーザ光源から前記集光レンズに至る主光路と、
前記主光路の途中に設けられ、前記主光路の途中から前記撮影手段に至る分岐光路を分岐させる第2分岐光学素子と、
前記分岐光路の途中に設けられ、前記ストリートの材料をプラズマ化させた場合に発生する波長域の光、及び前記ストリートに設けられた構造物の材料をプラズマ化させた場合に発生する波長域の光のみを透過するフィルタと、
を備える請求項7に記載のレーザ加工装置。
【請求項9】
前記ストリートに設けられた構造物の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、
前記撮影手段が、前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づき、前記構造物の前記レーザ加工中にのみ前記加工点の撮影を行う請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項10】
前記ストリートに設けられた構造物の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、
前記撮影手段が、前記位置情報取得部が取得した前記位置情報に基づき、前記構造物の前記レーザ加工の開始前から露光を開始し、前記構造物の前記レーザ加工が完了した後に前記撮影画像を出力する請求項1から6のいずれか1項に記載のレーザ加工装置。
【請求項11】
ウェーハに対してレーザヘッドを前記ウェーハのストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつ前記レーザヘッドからレーザ光を前記ストリートに照射することで、前記ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工方法において、
前記レーザ加工中に、前記レーザヘッドから前記ストリートに照射される前記レーザ光の加工点を撮影手段で撮影する撮影ステップと、
前記撮影手段により撮影された撮影画像から前記加工点で発生するプラズマの色情報を取得する色情報取得ステップと、
前記色情報取得ステップで取得した前記色情報に基づき、前記加工点の組成を判別する組成判別ステップと、
を有するレーザ加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハのレーザ加工を行うレーザ加工装置及びレーザ加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の半導体デバイスの製造分野では、シリコン等の基板の表面にガラス質材料からなる低誘電率絶縁体被膜(Low-k膜)と回路を形成する機能膜とを積層した積層体により複数のデバイスを形成しているウェーハ(半導体ウェーハ)が知られている。このようなウェーハは、複数のデバイスが格子状のストリートによって格子状に区画されており、ウェーハをストリートに沿って分割することにより個々のデバイスが製造される。
【0003】
ウェーハを複数のデバイス(チップ)に分割する方法として、高速回転するブレードを用いる方法、ウェーハの内部にストリートに沿ってレーザ加工領域を形成すると共に強度が低下したストリートに沿って外力を加える方法が知られている。しかしながら、Low-k膜が適用されたウェーハの場合、Low-k膜の素材とウェーハの素材とが異なるため、前者の方法ではブレードによりLow-k膜と基板とを同時に切削することが困難である。また、後者の方法ではストリート上にLow-k膜が存在する場合に良好な品質で個々のデバイスに分割することが困難である。
【0004】
そこで、特許文献1及び特許文献2には、ウェーハに対してレーザ光学系をストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザ光学系からレーザ光をストリートに照射することでストリートに沿って加工溝を形成するレーザ加工(アブレーション溝加工)を行うレーザ加工装置が開示されている。このレーザ加工装置によれば、ストリートに沿って加工溝を形成することでストリート上からLow-k膜等を除去することができる。
【0005】
また、特許文献2に記載のレーザ加工装置は、レーザ光学系によるレーザ加工中にレーザ光の加工点を撮影し、この加工点の撮影画像から加工点で発生するプラズマを検出し、このプラズマの位置と所定の加工予定位置との位置関係を計測する。これにより、特許文献2に記載のレーザ加工装置は、レーザ加工の加工位置を修正することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-093460号公報
【特許文献2】特開2017-120820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1及び特許文献2に記載のレーザ加工装置によりレーザ加工を行った場合において、ストリート上に金属製の構造物(パターン)が残っていると、その後のブレード加工で目詰まり等が発生し易くなり、切削品質の悪化の原因となってしまう。このため、レーザ加工時には、ストリート上の構造物を確実に除去する必要がある。なお、構造物の残渣が発生しないようにレーザ光の強度を強くしすぎると、ウェーハへの熱ダメージが大きくなりすぎてウェーハの抗折強度に悪影響を及ぼすため、こちらも加工不良の原因となってしまう。
【0008】
上記特許文献1に記載のレーザ加工装置では、レーザ加工中に構造物の残渣があるか否かを推定することができない。また、上記特許文献2に記載のレーザ加工装置では、レーザ加工中に加工点のプラズマの位置を検出することでレーザ加工の加工位置を補正可能ではあるが、構造物の残渣があるか否かを推定することができない。
【0009】
そこで、例えばレーザ加工装置に分光光度計を設け、この分光光度計によりレーザ加工中に発生するプラズマのスペクトル測定を行うことで構造物の残渣があるか否かを推定することが考えられる。しかしながら、この場合には分光光度計をレーザ加工装置に別途設ける必要があるので、レーザ加工装置のコストが増加してしまう。また、レーザ加工装置が複数の加工点で同時にレーザ加工を行っている場合には、分光光度計では加工点ごとのプラズマのスペクトル測定を区別して行うことができないので、どの加工点で構造物の残渣が発生しているのかを判別することができない。
【0010】
また、例えば、レーザ加工後のウェーハのストリートを顕微鏡で観察することで、構造物の残渣があるか否かを確認する方法も考えられるが、この場合には加工溝の底にあるものが構造物であるかそれともウェーハの材料(シリコン)であるのかを判別することは困難である。さらにこの場合には、1枚のウェーハのレーザ加工の完了後に顕微鏡による観察を行うことになるので、構造物の残渣が発生していた場合には不良ウェーハが発生してしまう。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、ウェーハのストリートのレーザ加工中に構造物が除去されているか否かを低コストで確認可能なレーザ加工装置及びレーザ加工方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工装置は、レーザ光を出射するレーザ光源、及びレーザ光をウェーハのストリートに集光する集光レンズを有するレーザヘッドを備え、ウェーハに対してレーザヘッドをストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザヘッドからレーザ光をストリートに照射することで、ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工装置において、レーザ加工中に、レーザヘッドからストリートに照射されるレーザ光の加工点を撮影する撮影手段と、撮影手段により撮影された撮影画像から加工点で発生するプラズマの色情報を取得する色情報取得部と、色情報取得部が取得した色情報に基づき、加工点の組成を判別する組成判別部と、を備える。
【0013】
このレーザ加工装置によれば、分光光度計を用いることなく、レーザ加工中の加工点の組成を判別可能である。
【0014】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、組成の種類と、組成の種類ごとの色情報と、を対応づけた対応情報を予め取得する対応情報取得部を備え、組成判別部が、色情報取得部が取得した色情報に基づき、対応情報取得部が取得した対応情報を参照して、組成の判別を行う。これにより、加工点の組成を精度よく判別可能である。
【0015】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、色情報取得部が取得した加工点の色情報と、対応情報取得部が取得した対応情報と、に基づき、レーザ加工の良否を判別する良否判別部を備える。これにより、レーザ加工中にレーザ加工の良否を簡単に判別可能である。
【0016】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザヘッドが、レーザ光源から出射されたレーザ光を加工送り方向に沿って複数に分岐させる第1分岐光学素子を備え、集光レンズが、第1分岐光学素子により分岐された複数のレーザ光をストリートに集光し、カラーカメラが、集光レンズを通してレーザ光ごとの加工点を撮影し、色情報取得部が、撮影画像から加工点ごとに色情報を取得し、組成判別部が、加工点ごとの色情報に基づき、加工点ごとに組成を判別する。これにより、複数の加工点の組成を判別可能である。
【0017】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、組成の種類と、組成の種類ごとの色情報と、を対応づけた対応情報を予め取得する対応情報取得部を備え、組成判別部が、色情報取得部が加工点ごと取得した色情報に基づき、対応情報取得部が取得した対応情報を参照して、加工点ごとに組成の判別を行う。これにより、各加工点の組成を精度よく判別可能である。
【0018】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、色情報取得部が取得した加工点ごとの色情報と、対応情報取得部が取得した対応情報と、に基づき、レーザ加工の良否を判別する良否判別部を備える。これにより、レーザ加工中にレーザ加工の良否を簡単に判別可能である。
【0019】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、撮影手段が、集光レンズを通してレーザヘッドの光軸と同軸で加工点の撮影を行う。
【0020】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、レーザ光源から集光レンズに至る主光路と、主光路の途中に設けられ、主光路の途中から撮影手段に至る分岐光路を分岐させる第2分岐光学素子と、分岐光路の途中に設けられ、ストリートの材料をプラズマ化させた場合に発生する波長域の光、及びストリートに設けられた構造物の材料をプラズマ化させた場合に発生する波長域の光のみを透過するフィルタと、を備える。
【0021】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、ストリートに設けられた構造物の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、撮影手段が、位置情報取得部が取得した位置情報に基づき、構造物のレーザ加工中にのみ加工点の撮影を行う。これにより、レーザ加工中の不要な撮影及び演算処理を省略することができる。
【0022】
本発明の他の態様に係るレーザ加工装置において、ストリートに設けられた構造物の位置情報を取得する位置情報取得部を備え、撮影手段が、位置情報取得部が取得した位置情報に基づき、構造物のレーザ加工の開始前から露光を開始し、構造物のレーザ加工が完了した後に撮影画像を出力する。これにより、各加工点の撮影を簡単に実行することができる。
【0023】
本発明の目的を達成するためのレーザ加工方法は、ウェーハに対してレーザヘッドをウェーハのストリートに沿った加工送り方向に相対移動させつつレーザヘッドからレーザ光をストリートに照射することで、ストリートに沿ってレーザ加工を行うレーザ加工方法において、レーザ加工中に、レーザヘッドからストリートに照射されるレーザ光の加工点を撮影手段で撮影する撮影ステップと、撮影手段により撮影された撮影画像から加工点で発生するプラズマの色情報を取得する色情報取得ステップと、色情報取得ステップで取得した色情報に基づき、加工点の組成を判別する組成判別ステップと、を有する。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、ウェーハのストリートのレーザ加工中に構造物が除去されているか否かを低コストで確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】第1実施形態のレーザ加工装置の概略図である。
図2】ウェーハの平面図である。
図3】奇数番目のストリートに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
図4】偶数番目のストリートに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
図5】ウェーハに対して往路方向側に相対移動されるレーザヘッドによる縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点の撮影と、を説明するための説明図である。
図6】ウェーハに対して復路方向側に相対移動されるレーザヘッドによる縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点の撮影と、を説明するための説明図である。
図7】第1実施形態の制御装置の機能ブロック図である。
図8】一対の加工点SP1の撮影画像の一例を示した図である。
図9】各加工点SP2の撮影画像の一例を示した図である。
図10】加工良否判別部が中抜き加工を「良好」と判別する場合の一例を示した図である。
図11】加工良否判別部が中抜き加工を「不良」と判別する場合の一例を示した図である。
図12】加工良否判別部が中抜き加工を「不良」と判別する場合の一例を示した図である。
図13】第1実施形態のレーザ加工装置によるウェーハの各ストリートのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
図14図13中の組成判別処理の流れを示すフローチャートである。
図15】第2実施形態のレーザ加工装置のレーザヘッドの要部を示した概略図である。
図16】第3実施形態のレーザ加工装置のブロック図である。
図17】第3実施形態のレーザ加工装置によるウェーハの各ストリートのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。
図18】第4実施形態のレーザ加工装置のカラーカメラの露光制御を説明するための説明図である。
図19】カラーカメラの変形例を説明するための説明図である。
図20】縁切り加工及び中抜き加工で共通のレーザ光源を用いるレーザヘッド24の変形例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[第1実施形態のレーザ加工装置の全体構成]
図1は、第1実施形態のレーザ加工装置10の概略図である。図1に示すように、レーザ加工装置10は、ブレード加工によりウェーハ12を複数のチップ14(図2参照)に分割する前の前工程として、ウェーハ12に対してレーザ加工(アブレーション溝加工)を施す。なお、図中のXYZ方向は互いに直交し、このうちX方向及びY方向は水平方向であり、Z方向は上下方向である。ここで、X方向は本発明の加工送り方向に相当する。
【0027】
図2は、ウェーハ12の平面図である。図2に示すように、ウェーハ12は、シリコン等の基板の表面にLow-k膜と回路を形成する機能膜とを積層した積層体である。ウェーハ12は格子状に配列された複数のストリートCによって複数の領域に区画されている。この区画された各領域にはチップ14を構成するデバイス16が設けられている。
【0028】
また、ストリートC上の一部の領域には、銅など金属材料で形成された金属性の構造物17(金属パターン)が形成されている。なお、構造物17の組成は特に限定はされない。
【0029】
レーザ加工装置10は、図中の括弧付き数字(1)~(4)、・・・に示すように、互いに交差する方向の一方向に沿ったストリートCごとにストリートCに沿って基板上のLow-k膜等を除去するレーザ加工を行う。また、レーザ加工装置10は、一方向に平行な全てのストリートCのレーザ加工が完了すると、ウェーハ12を90°回転させて、他方向に沿ったストリートCごとにストリートCに沿ってLow-k膜等を除去するレーザ加工を行う。
【0030】
この際にレーザ加工装置10は、ウェーハ12のレーザ加工に要するタクトタイムを低減するために、ウェーハ12に対して後述のレーザヘッド24をX方向に相対移動させる際の加工送り方向(相対移動方向)をストリートCごとに交互に切り替える。
【0031】
例えば、図中の括弧付き数字(1),(3)等に示す奇数番目のストリートCに沿ってレーザ加工を行う場合には、ウェーハ12に対して後述のレーザヘッド24をX方向の一方向側である往路方向側XA(図5参照)に相対移動させる。また、図中の括弧付き数字(2),(4)等に示す偶数番目のストリートCに沿ってレーザ加工を行う場合には、ウェーハ12に対してレーザヘッド24をX方向の他方向側である復路方向側XB(図6参照)に相対移動させる。
【0032】
図3は、奇数番目のストリートCに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。図4は、偶数番目のストリートCに沿ったレーザ加工を説明するための説明図である。
【0033】
図3及び図4に示すように、レーザ加工装置10は、レーザ加工として縁切り加工及び中抜き加工を同時に(並行して)実行する。縁切り加工は、ストリートCに沿って互いに平行な2条の縁切り溝18を形成するレーザ加工である。この縁切り加工は、2本の第1レーザ光L1を用いて行う。
【0034】
中抜き加工は、縁切り加工で形成された2条の縁切り溝18の間に中抜き溝19を形成するレーザ加工である。この中抜き加工は、加工送り方向(X方向)に複数分岐された第2レーザ光L2を用いて行う。なお、図中では図面の煩雑化を防止するために、第2レーザ光L2の分岐数が2つであるが3つ以上であってもよい(後述の図10参照)。
【0035】
なお、縁切り加工(2条の縁切り溝18)及び中抜き加工(中抜き溝19)については公知技術(特許文献1参照)であるので、その詳細についての説明は省略する。
【0036】
このようにレーザ加工装置10では、ウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XA(図5参照)に相対移動させたり或いは復路方向側XB(図6参照)に相対移動させたりする場合のいずれにおいても、縁切り加工を中抜き加工よりも先行して行う。
【0037】
図1に戻って、レーザ加工装置10は、ストリートCのレーザ加工と並行して、2本の第1レーザ光L1の加工点SP1の撮影と、各第2レーザ光L2の加工点SP2の撮影と、を行う。
【0038】
レーザ加工装置10は、テーブル20と、レーザヘッド24と、顕微鏡26と、相対移動機構28と、制御装置30と、を備える。
【0039】
テーブル20はウェーハ12を保持する。このテーブル20は、相対移動機構28により加工対象のストリートCに平行な加工送り方向であるX方向に移動されると共に、Z方向に平行なテーブル20の中心軸(回転軸)を中心として回転される。
【0040】
レーザヘッド24(レーザ光学系又はレーザユニットともいう)は、第1レーザ光源22Aと、第2レーザ光源22Bと、第1集光レンズ38と、2個の第2集光レンズ40A,40Bと、を備える。このレーザヘッド24は、2本の第1レーザ光L1を第1集光レンズ38からストリートCに向けて照射する。また、レーザヘッド24は、各第2レーザ光L2を2個の第2集光レンズ40A,40Bから選択的にストリートCに向けて照射する。なお、レーザヘッド24は、後述の相対移動機構28によりY方向及びZ方向に移動される。
【0041】
顕微鏡26は、レーザヘッド24に固定されており、レーザヘッド24と一体に移動する。顕微鏡26は、ウェーハ12に対する縁切り加工及び中抜き加工の前に、ウェーハ12に形成されているアライメント基準を撮影する。なお、アライメント基準は、ストリートC(構造物17)、デバイス16、或いは公知のアライメントマークが用いられる。
【0042】
相対移動機構28は、不図示のXYZアクチュエータ及びモータ等から構成されており、制御装置30の制御の下、テーブル20のX方向の移動及び回転軸を中心とする回転と、レーザヘッド24のY方向及びZ方向の移動と、を行う。これにより、相対移動機構28は、テーブル20及びウェーハ12に対してレーザヘッド24及び顕微鏡26を相対移動させることができる。
【0043】
相対移動機構28を駆動することで、加工対象のストリートCの一端である加工開始位置に対するレーザヘッド24の位置合わせ(アライメント)と、ストリートCに沿った加工送り方向(X方向)のレーザヘッド24の相対移動と、を実行することができる。また、相対移動機構28を駆動して、テーブル20を90°回転させることで、互いに交差する各ストリートCを選択的に加工送り方向(X方向)に平行にすることができる。
【0044】
制御装置30は、レーザヘッド24、顕微鏡26、及び相対移動機構28等のレーザ加工装置10の各部の動作を統括的に制御して、レーザヘッド24のアライメント、ストリートCごとのレーザ加工、各加工点SP1,SP2の撮影、及び詳しくは後述する各加工点SP1,SP2の組成評価等を行う。
【0045】
[レーザヘッド]
図5は、ウェーハ12に対して往路方向側XAに相対移動されるレーザヘッド24による縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点SP1,SP2の撮影と、を説明するための説明図である。図6は、ウェーハ12に対して復路方向側XBに相対移動されるレーザヘッド24による縁切り加工及び中抜き加工と、各加工点SP1,SP2の撮影と、を説明するための説明図である。
【0046】
図5及び図6に示すように、レーザヘッド24は、第1レーザ光源22Aと、第2レーザ光源22Bと、第1光形成素子32と、ビームスプリッタ33と、第2光形成素子34と、ビームスプリッタ35と、分岐光学素子35Aと、接続切替素子36と、ビームスプリッタ37と、第1集光レンズ38と、第2集光レンズ40A,40Bと、照明光源41と、ビームスプリッタ42,43A,43Bと、撮影手段としてのカラーカメラ45,46A,46Bと、第1結像レンズ47と、第2結像レンズ48A,48Bと、を備える。
【0047】
第1レーザ光源22Aは、制御装置30の制御の下、縁切り加工に適した条件(波長、パルス幅、及び繰り返し周波数等)のレーザ光LAを第1光形成素子32へ出射する。第2レーザ光源22Bは、中抜き加工に適した条件(波長、パルス幅、及び繰り返し周波数等)のレーザ光LBを第2光形成素子34へ出射する。なお、本実施形態では、レーザ光LA,LBの波長は例えば355nmである。
【0048】
第1光形成素子32は、例えば回折光学素子(Diffractive Optical Element:DOE)が用いられる。この第1光形成素子32は、第1レーザ光源22Aより入射したレーザ光LAから縁切り加工に対応する2本の第1レーザ光L1を形成し、2本の第1レーザ光L1をビームスプリッタ33に向けて出射する。これにより、2本の第1レーザ光L1の一部がビームスプリッタ33により第1集光レンズ38に向けて反射される。その結果、ストリートC(往路及び復路)上に第1集光レンズ38により2本の第1レーザ光L1が集光され、ストリートC上においてY方向に離間した一対の加工点SP1が形成される。
【0049】
第2光形成素子34は、例えば回折光学素子及びマスク等が用いられる。第2光形成素子34は、第2レーザ光源22Bより入射したレーザ光LBから中抜き加工に対応する第2レーザ光L2を形成する。第2レーザ光L2は、ウェーハ12上において2条の縁切り溝18の間に矩形状(円形状等の他の形状でも可)の加工点SP2を形成する。この加工点SP2のY方向の幅は、2条の縁切り溝18の間隔に合わせて調整されている。そして、第2光形成素子34から出射された第2レーザ光L2は、その一部がビームスプリッタ35により分岐光学素子35Aに向けて反射される。
【0050】
なお、第1光形成素子32をその光軸の軸周り方向に回転させることで一対の加工点SP1のY方向の間隔を調整可能であり、第2光形成素子34をその光軸の軸周り方向に回転させることで加工点SP2のY方向の幅を調整可能である(上記特許文献1参照)。
【0051】
分岐光学素子35Aは、本発明の第1分岐光学素子に相当するものであり、第2光形成素子34から入射した第2レーザ光L2をX方向(加工送り方向)に沿って複数に分岐させる。この分岐光学素子35Aとしては、例えば、回折光学素子、屈折光学素子、プリズム、及びこれらの組み合わせ等が用いられる。そして、分岐光学素子35Aは、分岐した各第2レーザ光L2を接続切替素子36へ出射する。
【0052】
接続切替素子36は、例えば公知の光スイッチである。なお、λ/2板、偏光ビームスプリッタ、ハーフミラー(ビームスプリッタ)、及びシャッタ等を適宜組み合わせて接続切替素子36を構成してもよい。接続切替素子36は、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を第2集光レンズ40A及び第2集光レンズ40Bのいずれか一方に選択的に導く。
【0053】
ビームスプリッタ37は、接続切替素子36から入射した各第2レーザ光L2の一部を第2集光レンズ40Bに向けて反射する。
【0054】
第1集光レンズ38及び第2集光レンズ40A,40Bは、X方向(加工送り方向)に沿って一列に配置されている。第1集光レンズ38は、第2集光レンズ40Aと第2集光レンズ40Bとの間に配置されている。第2集光レンズ40Aは、第1集光レンズ38に対して復路方向側XBに配置されている。第2集光レンズ40Bは、第1集光レンズ38に対して往路方向側XAに配置されている。
【0055】
第1集光レンズ38は、第1光形成素子32から入射した2本の第1レーザ光L1をストリートC(往路及び復路)上に集光させる。第2集光レンズ40Aは、接続切替素子36から入射した各第2レーザ光L2をストリートC(往路)上に集光させる。第2集光レンズ40Bは、接続切替素子36からビームスプリッタ37を介して入射した各第2レーザ光L2をストリートC(復路)上に集光させる。
【0056】
なお、詳しくは後述するが、本実施形態では各加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69(図8及び図9参照)の色情報に基づき加工点SP1,SP2の組成評価を行うため、第1集光レンズ38及び第2集光レンズ40A,40Bとしては色消しレンズが用いられる。
【0057】
接続切替素子36は、レーザヘッド24がウェーハ12に対して往路方向側XA及び復路方向側XBのいずれか一方向側に相対移動される場合に、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を、第2集光レンズ40A,40Bのうちで第1集光レンズ38に対して往路方向側XA及び復路方向側XBの他方向側に位置するレンズに導く。
【0058】
具体的には接続切替素子36は、レーザヘッド24がウェーハ12に対して往路方向側XAに相対移動される場合には、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Aに導く(図5参照)。これにより、第2集光レンズ40Aにより各第2レーザ光L2がストリートC(往路)上に集光される。その結果、レーザヘッド24の往路方向側XAへの相対移動によりストリートC(往路)に沿って縁切り加工が先行して実行されることで2条の縁切り溝18が形成され、続いて中抜き加工が実行されることで2条の縁切り溝18の間に中抜き溝19が形成される。
【0059】
また、接続切替素子36は、レーザヘッド24がウェーハ12に対して復路方向側XBに相対移動される場合には、第2光形成素子34から出射された各第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Bに導く(図6参照)。これにより、ストリートC(復路)上に第2集光レンズ40Bにより各第2レーザ光L2が集光される。その結果、レーザヘッド24の復路方向側XBへの相対移動によりストリートC(復路)に沿って縁切り加工が先行して実行されることで2条の縁切り溝18が形成され、続いて中抜き加工が実行されることで2条の縁切り溝18の間に中抜き溝19が形成される。
【0060】
照明光源41は、照明光L3を出射する。なお、照明光L3は、第1集光レンズ38及び第2集光レンズ40A,40Bでの収差の影響を抑えるために、レーザ光LA,LBの波長域(約355nm)に近い波長域(約430nm)の光が用いられる。
【0061】
照明光源41から出射された照明光L3は、ビームスプリッタ42,33を介して第1集光レンズ38に入射し、第1集光レンズ38によりウェーハ12の表面上に集光される。これにより、照明光L3によりウェーハ12の表面が照明される。
【0062】
また、照明光源41から出射された照明光L3は、ビームスプリッタ43A,35及び接続切替素子36を介して第2集光レンズ40Aに入射し、第2集光レンズ40Aによりウェーハ12の表面上に集光される。さらに、照明光L3は、ビームスプリッタ43B,37を介して第2集光レンズ40Bに入射し、第2集光レンズ40Bによりウェーハ12の表面上に集光される。これにより、照明光L3によってウェーハ12の表面が照明される。
【0063】
なお、照明光源41は、ストリートC(2条の縁切り溝18及び中抜き溝19)のレーザ加工中には照明光L3の出射を停止する。
【0064】
第1レーザ光源22Aから第1集光レンズ38に至る光路と、照明光源41から第1集光レンズ38に至る光路とによって主光路OP1が構成される。主光路OP1は、ストリートCのレーザ加工中には第1レーザ光L1を第1集光レンズ38まで導く。また、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工中において主光路OP1には、第1レーザ光L1によるレーザ加工により一対の加工点SP1ごとに発生したプラズマ68(図8参照)の発光であるプラズマ発光R1Aと、第1レーザ光L1の反射光である第1レーザ反射光R1Bと、が第1集光レンズ38から入射する。第1レーザ反射光R1Bは、上述のレーザ加工により一対の加工点SP1において発生するプルーム(蒸気)に対して第1レーザ光L1が反射した光である。主光路OP1に入射したプラズマ発光R1A及び第1レーザ反射光R1Bの一部は、ビームスプリッタ33を透過してビームスプリッタ42に入射する。
【0065】
第2レーザ光源22Bから第2集光レンズ40Aに至る光路と、照明光源41から第2集光レンズ40Aに至る光路とによって、主光路OP2が構成される。主光路OP2は、ストリートC(往路)のレーザ加工中には第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Aまで導く。また、ストリートC(往路)のレーザ加工中において主光路OP2には、第2レーザ光L2によるレーザ加工により加工点SP2ごとに発生したプラズマ69(図9参照)の発光であるプラズマ発光R2Aと、第2レーザ光L2の反射光である第2レーザ反射光R2Bと、が第2集光レンズ40Aから入射する。第2レーザ反射光R2Bは、上述のレーザ加工により加工点SP2において発生するプルームに対して第2レーザ光L2が反射した光である。主光路OP2に入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部は、接続切替素子36、分岐光学素子35A、及びビームスプリッタ35を透過してビームスプリッタ43Aに入射する。
【0066】
第2レーザ光源22Bから第2集光レンズ40Bに至る光路と、照明光源41から第2集光レンズ40Bに至る光路とによって、主光路OP3が構成される。主光路OP3は、ストリートC(復路)のレーザ加工中には第2レーザ光L2を第2集光レンズ40Bまで導く。また、ストリートC(復路)のレーザ加工中において主光路OP3には、上述のプラズマ発光R2Aと第2レーザ反射光R2Bとが第2集光レンズ40Bから入射する。主光路OP3に入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部は、ビームスプリッタ37を透過してビームスプリッタ43Bに入射する。
【0067】
ビームスプリッタ42,43A,43Bは、本発明の第2分岐光学素子として機能する。ビームスプリッタ42は、分岐光路BP1を主光路OP1から分岐させる。このビームスプリッタ42は、ビームスプリッタ33から入射したプラズマ発光R1A及び第1レーザ反射光R1Bの一部を分岐光路BP1に向けて反射する。なお、分岐光路BP1に反射された第1レーザ反射光R1Bは、例えばマルチバンドパスフィルタ(後述の図15に示すフィルタ75)により遮光される。
【0068】
ビームスプリッタ43Aは、分岐光路BP2を主光路OP2から分岐させる。このビームスプリッタ43Aは、ビームスプリッタ35から入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部を分岐光路BP2に向けて反射する。なお、分岐光路BP2に反射された第2レーザ反射光R2Bは、例えばマルチバンドパスフィルタ(後述の図15に示すフィルタ76A)により遮光される。
【0069】
ビームスプリッタ43Bは、分岐光路BP3を主光路OP3から分岐させる。このビームスプリッタ43Bは、ビームスプリッタ37から入射したプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bの一部を分岐光路BP3に向けて反射する。なお、分岐光路BP3に反射された第2レーザ反射光R2Bは、例えばマルチバンドパスフィルタ(後述の図15に示すフィルタ76B)により遮光される。
【0070】
第1結像レンズ47は、分岐光路BP1上に配置されており、ビームスプリッタ42から入射したプラズマ発光R1Aをカラーカメラ45に結像させる。第2結像レンズ48Aは、分岐光路BP2上に配置されており、ビームスプリッタ43Aから入射したプラズマ発光R2Aをカラーカメラ46Aに結像させる。第2結像レンズ48Bは、分岐光路BP3上に配置されており、ビームスプリッタ43Bから入射したプラズマ発光R2Aをカラーカメラ46Bに結像させる。
【0071】
なお、既述の通り、本実施形態では加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69(図8及び図9参照)の色情報に基づき加工点SP1,SP2の組成評価を行うため、第1結像レンズ47及び第2結像レンズ48A,48Bごとに色収差補正レンズ(図示は省略)が設けられている。
【0072】
カラーカメラ45,46A,46Bは、不図示の撮影光学系及びカラーフィルタ付の撮像素子(以下、撮像素子と略す)を備え、カラー画像を撮影可能な電子カメラである。カラーカメラ45,46A,46Bは、レーザヘッド24(第1集光レンズ38、第2集光レンズ40A,40B)の同軸で各加工点SP1,SP2の撮影を行う。
【0073】
カラーカメラ45は、分岐光路BP1上に配置されており、第1結像レンズ47を通してプラズマ発光R1Aを撮像する。これにより、カラーカメラ45は、ストリートC(往路及び復路)の縁切り加工が行われている間、第1集光レンズ38を通して、一対の加工点SP1で発生しているプラズマ68(図8参照)を撮影する。カラーカメラ45により撮影された一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影画像D1(画像データ)は、カラーカメラ45から制御装置30へ出力される。
【0074】
カラーカメラ46Aは、分岐光路BP2上に配置されており、第2結像レンズ48Aを通してプラズマ発光R2Aを撮像する。これにより、カラーカメラ46Aは、ストリートC(往路)の中抜き加工が行われている間、第2集光レンズ40Aを通して各加工点SP2で発生しているプラズマ69(図9参照)を撮影する。カラーカメラ46Aにより撮影された各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2A(画像データ)は、カラーカメラ46Aから制御装置30へ出力される。
【0075】
カラーカメラ46Bは、分岐光路BP3上に配置されており、第2結像レンズ48Bを通してプラズマ発光R2Aを撮像する。これにより、カラーカメラ46Bは、ストリートC(復路)の中抜き加工が行われている間、第2集光レンズ40Bを通して各加工点SP2で発生しているプラズマ69(図9参照)を撮影する。カラーカメラ46Bにより撮影された各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2B(画像データ)は、カラーカメラ46Bから制御装置30へ出力される。
【0076】
なお、第1実施形態ではレーザ加工中(加工送り中)にカラーカメラ45,46A,46Bによる撮影を行う場合に、撮像素子の露光時間を短くしてストリートCが静止しているような画像を取得する。
【0077】
[第1実施形態の制御装置]
図7は、第1実施形態の制御装置30の機能ブロック図である。図7に示すように、制御装置30は、例えばパーソナルコンピュータのような演算装置により構成され、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、制御装置30の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0078】
制御装置30には、既述の第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、顕微鏡26、相対移動機構28、照明光源41、及びカラーカメラ45,46A,46Bの他に、記憶部31及び操作部49が接続されている。記憶部31には、制御装置30の制御プログラム(図示は省略)の他に、後述の対応情報71が記憶されている。操作部49は、キーボード、マウス、操作パネル、及び操作ボタン等が用いられ、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
【0079】
制御装置30は、記憶部31に記憶されている不図示の制御プログラムを実行することで、アライメント検出部50、レーザ加工制御部52、撮影制御部54、色情報取得部56、対応情報取得部58、組成判別部60、加工良否判別部62、及び報知部64として機能する。なお、制御装置30の「~部」として説明するものは「~回路」、「~装置」、又は「~機器」であってもよい。すなわち、「~部」として説明するものは、ファームウェア、ソフトウェア、及びハードウェアまたはこれらの組み合わせのいずれで構成されていてもよい。
【0080】
アライメント検出部50は、顕微鏡26及び相対移動機構28を制御することで、ウェーハ12上での各ストリートCの位置を検出するアライメント検出を行う。例えばアライメント検出部50は、最初に相対移動機構28を駆動して、ウェーハ12の所定のアライメント基準に対する顕微鏡26の位置調整を実行する。次いで、アライメント検出部50は、顕微鏡26による所定のアライメント基準の撮影を実行させることで、顕微鏡26からアライメント基準の撮影画像を取得する。そして、アライメント検出部50は、アライメント基準の撮影画像に基づき、公知の方法で各ストリートCの位置の検出、すなわちアライメント検出を行う。
【0081】
レーザ加工制御部52は、アライメント検出部50によるアライメント検出結果に基づき、第1レーザ光源22A、第2レーザ光源22B、相対移動機構28、及び接続切替素子36を制御して、ストリートCごとのレーザ加工(縁切り加工、中抜き加工)を実行する。
【0082】
具体的にはレーザ加工制御部52は、アライメント検出部50の検出結果に基づき、相対移動機構28を駆動してストリートC(往路及び復路)の加工開始位置に対するレーザヘッド24の第1集光レンズ38の光軸の位置合わせ(アライメント)を行う。
【0083】
次いで、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して、ストリートC(往路)のレーザ加工を行う場合には第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Aに切り替え、逆にストリートC(復路)のレーザ加工を行う場合には第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Bに切り替える。
【0084】
そして、レーザ加工制御部52は、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bからレーザ光LA,LBを出射させる。また、レーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動して、ストリートC(往路)のレーザ加工を行う場合にはウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させ、ストリートC(復路)のレーザ加工を行う場合にはウェーハ12に対してレーザヘッド24を復路方向側XBに相対移動させる。これにより、縁切り加工による2条の縁切り溝18の形成と中抜き加工による中抜き溝19の形成とが間隔を空けて同時に実行される(図5及び図6参照)。以下、レーザ加工制御部52は、ストリートCごとに上述の処理を繰り返し実行する。
【0085】
撮影制御部54は、カラーカメラ45,46A,46Bを制御して、一対の加工点SP1(プラズマ68、図8参照)及び各加工点SP2(プラズマ69、図9参照)の撮影を制御する。具体的には、撮影制御部54は、ストリートC(往路)のレーザ加工中に、カラーカメラ45による短露光時間でのプラズマ発光R1Aの撮像と、カラーカメラ46Aによる短露光時間でのプラズマ発光R2Aの撮像とを繰り返し行う。これにより、ストリートC(往路)のレーザ加工中に、カラーカメラ45による一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影及び撮影画像D1の出力と、カラーカメラ46Aによる各加工点SP2(プラズマ69)の撮影及び撮影画像D2Aの出力と、が繰り返し実行される。
【0086】
さらに、撮影制御部54は、ストリートC(復路)のレーザ加工中に、カラーカメラ45による短露光時間でのプラズマ発光R1Aの撮像と、カラーカメラ46Bによる短露光時間でのプラズマ発光R2Aの撮像とを継続して行う。これにより、ストリートC(復路)のレーザ加工中に、カラーカメラ45による一対の加工点SP1(プラズマ68、図8参照)の撮影及び撮影画像D1の出力と、カラーカメラ46Bによる各加工点SP2(プラズマ69、図9参照)の撮影及び撮影画像D2Bの出力と、が繰り返し実行される。
【0087】
図8は、一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影画像D1の一例を示した図である。図9は、各加工点SP2(プラズマ69)の撮影画像D2A,D2Bの一例を示した図である。図8に示すように、撮影画像D1には、一対の加工点SP1ごとに発生するプラズマ68の像が含まれる。プラズマ68は、レーザ加工により一対の加工点SP1において発生するプルーム(蒸気)が第1レーザ光L1により加熱されることで発生する。撮影画像D1はカラー画像であるので、撮影画像D1から一対の加工点SP1ごとに発生するプラズマ68の色情報を判別可能である。
【0088】
図9に示すように、撮影画像D2A,D2Bには、複数の加工点SP2ごとに発生するプラズマ69の像が複数含まれる。各プラズマ69は、レーザ加工により加工点SP2にごとに発生するプルームが第2レーザ光L2により加熱されることで発生する。撮影画像D2もカラー画像であるので、撮影画像D2から加工点SP2ごとに発生するプラズマ69の色情報を判別可能である。
【0089】
図7に戻って、色情報取得部56は、ストリートC(往路)のレーザ加工中には、カラーカメラ45から撮影画像D1が出力されるごとに撮影画像D1から一対の加工点SP1ごとにプラズマ68の色情報を取得する。また同時に色情報取得部56は、カラーカメラ46Aから撮影画像D2Aが出力されるごとに撮影画像D2Aから加工点SP2ごとにプラズマ69の色情報を取得する。
【0090】
具体的には色情報取得部56は、撮影画像D1,D2A内の各画素の輝度値を比較して輝度値が所定閾値以上の画素を選択することで撮影画像D1,D2A内からプラズマ68,69の領域を検出する。次いで、色情報取得部56は、検出した領域内の画素の色情報に基づき、プラズマ68,69の色情報を決定する。なお、色情報取得部56は、プラズマ68,69の像内に互いに色が異なる複数の領域が存在している場合には、プラズマ68,69の複数色の色情報を取得する。
【0091】
また、色情報取得部56は、ストリートC(復路)のレーザ加工中には、カラーカメラ45から撮影画像D1が出力されるごとに撮影画像D1から一対の加工点SP1ごとにプラズマ68の色情報を取得し、カラーカメラ46Bから撮影画像D2Bが出力されるごとに撮影画像D2Bから加工点SP2ごとにプラズマ69の色情報を取得する。
【0092】
そして、色情報取得部56は、撮影画像D1,D2A又は撮影画像D1,D2Bからプラズマ68,69の色情報を取得するごとに、プラズマ68,69の色情報を組成判別部60に逐次出力する。
【0093】
対応情報取得部58は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工の開始前に、記憶部31から対応情報71を取得して、この対応情報71を組成判別部60へ出力する。
【0094】
対応情報71は、シリコン及び銅などのウェーハ12(構造物17を含む)の組成の種類と、組成の種類ごとの色情報とを対応付けたものである。ここで、レーザ加工により各加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69のプラズマスペクトルは各加工点SP1,SP2に含まれる元素の種類及び量を示しており、各加工点SP1,SP2の組成に応じてプラズマ68,69の波長ごとの光強度が変化する。その結果、各加工点SP1,SP2の組成に応じてプラズマ68,69の色が変化する。
【0095】
具体的には、各加工点SP1,SP2にシリコンのみしか残っていない場合と、各加工点SP1,SP2に構造物17の残渣が残っている場合とでは、プラズマ68,69の色が異なる。また、構造物17の残渣量に応じてもプラズマ68,69の色が変化する。従って、プラズマ68,69の色情報と、構造物17を含むウェーハ12の組成の種類とを対応付けた対応情報71を予め生成しておくことで、各加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69の色情報から各加工点SP1,SP2の組成を判別(推定)可能である。
【0096】
対応情報71は、レーザ加工装置10により既知のサンプル、例えばシリコンのみ、シリコン及び構造物17、或いは試験用のウェーハ12のストリートCなどをレーザ加工する基準加工を行いながら、各加工点SP1,SP2で発生するプラズマ68,69の色情報を観測することで生成可能である。
【0097】
組成判別部60は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工中に各加工点SP1,SP2の組成を判別(推定)する。組成判別部60は、色情報取得部56から各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の色情報が入力されるごとに、対応情報取得部58から入力された対応情報71を参照して各加工点SP1,SP2の組成を判別する。これにより、レーザ加工中に加工点SP1,SP2の組成の判別を並行して実行可能である。
【0098】
加工良否判別部62は、分岐光学素子35Aにより分岐された複数の第2レーザ光L2を用いて行う中抜き加工(レーザ加工)の良否を判別する。具体的には加工良否判別部62は、加工点SP2ごとのプラズマ69の色情報と、対応情報71とに基づき、中抜き加工の良否を判別する。
【0099】
図10は、加工良否判別部62が中抜き加工を「良好」と判別する場合の一例を示した図である。図11及び図12は、加工良否判別部62が中抜き加工を「不良」と判別する場合の一例を示した図である。なお、図10から図12では、分岐光学素子35Aにより5分岐された第2レーザ光L2よりストリートC(往路)の中抜き加工を行う場合を例に挙げて説明を行う。
【0100】
図10に示すように、加工良否判別部62は、色情報取得部56が取得した加工点SP2ごとのプラズマ69の色情報に基づき、対応情報71を参照して、加工点SP2ごとのプラズマ69の色を比較する。そして、加工良否判別部62は、最も先行(図中左側)する加工点SP2でのプラズマ69の色が構造物17の残渣有を示す色であり、且つ最も後行(図中右側)する加工点SP2でのプラズマ69の色がシリコンのみを示す色であり、さらに前者から後者に向かってプラズマ69の色が次第に変化する場合には、中抜き加工が良好であると判別する。
【0101】
図11に示すように、加工良否判別部62は、最も後行する加工点SP2でのプラズマ69の色が構造物17の残渣有を示す色である場合には、中抜き加工が不良であると判別する。これにより、構造物17の残渣が発生する加工不良を判別可能である。
【0102】
また、図12に示すように、加工良否判別部62は、最も先行する加工点SP2の次の加工点SP2、すなわち図中左側から2番目(3番目でも同様)の加工点SP2でのプラズマ69の色がシリコンのみを示す色である場合にも、中抜き加工が不良であると判別する。これにより、第2レーザ光L2の強度が強すぎることで発生する加工不良(ウェーハ12の抗折強度悪化)を判別可能である。
【0103】
なお、加工良否判別部62により中抜き加工の良否を判別する方法は上述の方法に限定されるものではなく、例えば、上述の組成判別部60による加工点SP2ごとの組成判別結果に基づき中抜き加工の良否を判別してもよい。この場合には加工良否判別部62は、最も先行する加工点SP2から最も後行する加工点SP2に向かって次第に構造物17の残渣量が減少し、且つ最も後行する加工点SP2で構造物17の残渣量がゼロ(略ゼロを含む)になる場合には、中抜き加工が良好であると判別する(図10参照)。また、加工良否判別部62は、最も後行する加工点SP2でも構造物17の残渣が発生している場合(図11参照)、或いは上述の2番目の加工点SP2で構造物17の残渣量がゼロになっている場合には(図12参照)、中抜き加工が不良であると判別する。
【0104】
また、加工良否判別部62は、対応情報71を参照することなく、各加工点SP2のプラズマ69の色(色変化パターン)のみに基づいて中抜き加工の良否を判別することも可能である。例えば、加工良否判別部62は、既述の図10に示したように加工点SP2ごとのプラズマ69の色が次第する場合には中抜き加工が良好であると判定する。一方、加工良否判別部62は、既述の図11に示したように加工点SP2ごとのプラズマ69の色変化が僅かであったり、既述の図12に示したように上述の2番目の加工点SP2でプラズマ69の色が急激に変化したりする場合には、中抜き加工が不良であると判別する。
【0105】
図7に戻って、報知部64は、中抜き加工が不良であると加工良否判別部62が判別した場合に、不図示のモニタに警告情報を表示、不図示のスピーカからの警告情報の音声出力、或いはこれらの組み合わせを実行する。
【0106】
[第1実施形態のレーザ加工装置の作用]
図13は、第1実施形態のレーザ加工装置10によるウェーハ12の各ストリートCのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。図14は、本発明のレーザ加工方法に係る、図13中の組成判別処理の流れを示すフローチャートである。なお、対応情報71については事前に既述の基準加工を行うことで記憶部31に記憶されているものとする。
【0107】
図13に示すように、レーザ加工装置10の電源がONされると、対応情報取得部58が記憶部31から対応情報71を取得して、この対応情報71を組成判別部60へ出力する(ステップS1)。なお、対応情報71の取得タイミングは、後述のステップS5(レーザ加工開始)の前であれば特に限定されない。
【0108】
次いで、加工対象のウェーハ12がテーブル20に保持されると、アライメント検出部50が相対移動機構28を駆動して、ウェーハ12に対して顕微鏡26をウェーハ12のアライメント基準(図示は省略)を撮影可能な位置まで相対移動させた後、顕微鏡26によるアライメント基準の撮影を実行させる。そして、アライメント検出部50は、顕微鏡26により撮影されたアライメント基準の撮影画像に基づき、ウェーハ12の各ストリートCの位置を検出するアライメント検出を行う(ステップS2)。
【0109】
アライメント検出が完了すると、レーザ加工制御部52が、アライメント検出部50の検出結果に基づき相対移動機構28を駆動して、ストリートC(往路)の加工開始位置に対するレーザヘッド24の第1集光レンズ38の光軸の位置合わせ(アライメント)を行う(ステップS3)。
【0110】
また、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して、第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Aに切り替える(ステップS4)。なお、ステップS3及びステップS4については逆の順番で実行或いは同時に実行してもよい。
【0111】
ステップS3,S4が完了すると、レーザ加工制御部52は、ストリートC(往路)のレーザ加工を開始する(ステップS5)。最初にレーザ加工制御部52は、第1レーザ光源22Aからレーザ光LAを出射させる。これにより、第1光形成素子32を経て第1集光レンズ38から2本の第1レーザ光L1が出射され、2本の第1レーザ光L1がストリートC(往路)上の加工開始位置に集光される。
【0112】
次いで、レーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動してウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させると共に、第2集光レンズ40Aの光軸が上述の加工開始位置に到達するのに応じて第2レーザ光源22Bからレーザ光LBを出射させる。これにより、第2光形成素子34、分岐光学素子35A、及び接続切替素子36を経て第2集光レンズ40Aから各第2レーザ光L2が出射され、各第2レーザ光L2が加工開始位置に集光される。
【0113】
引き続きレーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動して、ウェーハ12に対してレーザヘッド24を往路方向側XAに相対移動させる(ステップS6)。これにより、図3及び図5に示したように、ストリートC(往路)に沿って、縁切り加工による2条の縁切り溝18の形成と中抜き加工による中抜き溝19の形成とが間隔を空けて同時に実行される。
【0114】
また、レーザ加工開始に合わせて組成判別処理が開始する(ステップS7)。
【0115】
図14に示すように、撮影制御部54が、カラーカメラ45によるプラズマ発光R1Aの撮像と、カラーカメラ46Aによるプラズマ発光R2Aの撮像と、を開始させる。これにより、レーザ加工中に、カラーカメラ45による一対の加工点SP1(プラズマ68)の撮影と、カラーカメラ46Aによる各加工点SP2(プラズマ69)の撮影と、が実行される(ステップS7A、本発明の撮影ステップに相当)。
【0116】
次いで、色情報取得部56が、カラーカメラ45からの撮影画像D1の取得と、カラーカメラ46Aからの撮影画像D2Aの取得と、を実行する(ステップS7B)。そして、色情報取得部56が、撮影画像D1から一対の加工点SP1ごとにプラズマ68の色情報を取得すると共に、撮影画像D2Aから加工点SP2ごとにプラズマ69の色情報を取得して、プラズマ68,69の色情報を組成判別部60へ出力する(ステップS7C、本発明の色情報取得ステップに相当)。
【0117】
一対の加工点SP1ごとのプラズマ68の色情報及び加工点SP2ごとのプラズマ69の色情報の入力を受けた組成判別部60は、ステップS1で取得した対応情報71を参照して各加工点SP1,SP2の組成を判別する(ステップS7D、本発明の組成判別ステップに相当)。これにより、レーザ加工装置10に分光光度計を設けることなく、既存の設備を利用して、レーザ加工中に各加工点SP1,SP2に構造物17の残渣が存在するか否かを判別可能である。
【0118】
また、加工良否判別部62が、色情報取得部56が取得した加工点SP2ごとのプラズマ69の色情報に基づき、対応情報71を参照して、既述の図10から図12で説明したように中抜き加工の良否を判別する(ステップS7E)。
【0119】
そして、中抜き加工が不良であると加工良否判別部62が判定した場合には(ステップS7FでYES)、報知部64が、不図示のモニタ及びスピーカ等を利用して警告情報の報知を行う(ステップS7G)。これにより、オペレータに対してレーザ加工(中抜き加工)の加工条件の見直しを促すことができるので、ウェーハ12の全体での中抜き加工の不良の発生を防止可能である。
【0120】
図13に戻って、ストリートC(往路)のレーザ加工が完了するまで、既述のステップS6及びステップS7の処理が繰り返し実行される(ステップS8でNO)。これにより、ストリートC(往路)のレーザ加工の間、カラーカメラ45,46Aによる各加工点SP1,SP2(プラズマ68,69)の撮影と、色情報取得部56によるプラズマ68,69の色情報の取得と、組成判別部60による各加工点SP1,SP2の組成判別と、加工良否判別部62による中抜き加工の良否の判別と、が繰り返し実行される。また、中抜き加工に不良が発生した場合には報知部64による警告情報の報知が実行される。
【0121】
レーザ加工制御部52は、一対の加工点SP1がストリートC(往路)の加工終了位置に到達するのに応じて第1レーザ光源22Aからのレーザ光LAの出射を停止させ、次いで各加工点SP2が加工終了位置に到達するのに応じて第2レーザ光源22Bからのレーザ光LBの出射を停止させると共に相対移動機構28の駆動を停止させる。これにより、ストリートC(往路)のレーザ加工が完了する(ステップS8でYES)。
【0122】
レーザ加工制御部52は、ストリートC(往路)のレーザ加工が完了すると、相対移動機構28を駆動して、第1集光レンズ38の光軸と、次のストリートC(復路)の加工開始位置との位置合わせを行う(ステップS9でYES、ステップS3)。また、レーザ加工制御部52は、接続切替素子36を駆動して第2レーザ光L2を出射するレンズを第2集光レンズ40Bに切り替える(ステップS4)。
【0123】
そして、既述のステップS5からステップS8の処理が繰り返し実行される。これにより、ストリートC(復路)のレーザ加工が行われる間、カラーカメラ45,46Bによる各加工点SP1,SP2(プラズマ68,69)の撮影と、色情報取得部56によるプラズマ68,69の色情報の取得と、組成判別部60による各加工点SP1,SP2の組成判別と、加工良否判別部62による中抜き加工の良否の判別と、が繰り返し実行される。また、中抜き加工に不良が発生した場合には報知部64による警告情報の報知が実行される。
【0124】
以下同様に、X方向に平行な全てのストリートC(往路及び復路)ごとに、既述のステップS3からステップS8までの処理が繰り返し実行される。次いで、レーザ加工制御部52は、相対移動機構28を駆動してテーブル20を90°回転させることにより、ウェーハ12上でY方向に平行な残りの各ストリートCをX方向に平行にする。そして、上述の一連の処理が繰り返し実行される。これにより、格子状の各ストリートCに沿ってレーザ加工が実行される(ステップS9でNO)。
【0125】
以上のように第1実施形態では、レーザ加工中に各加工点SP1,SP2の撮影を行い、各加工点SP1,SP2の撮影画像D1,D2A,D2Bから各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の色情報を取得することで、プラズマ68,69の色情報に基づき各加工点SP1,SP2の組成を判別可能である。これにより、レーザ加工装置10に分光光度計を設けることなく、レーザ加工中に各加工点SP1,SP2に構造物17の残渣が存在するか否かを判別可能である。その結果、レーザ加工中に構造物17が除去されているか否かを低コストで確認することができる。
【0126】
また、分光光度計を用いた場合には、加工点SP2ごとにプラズマ69のスペクトルのXY平面分布を検出することができないので、加工点SP2ごとの組成を区別して判別することが困難であるが、第1実施形態では加工点SP2ごとに撮影、及びプラズマ69の色情報の取得を行うため、加工点SP2ごとの組成を個別に判別可能である。
【0127】
[第2実施形態]
図15は、第2実施形態のレーザ加工装置10のレーザヘッド24の要部を示した概略図である。上記第1実施形態で説明したように、カラーカメラ45はプラズマ発光R1A及び第1レーザ反射光R1Bのうちでプラズマ発光R1Aのみを撮像し、カラーカメラ46A,46Bはプラズマ発光R2A及び第2レーザ反射光R2Bのうちでプラズマ発光R2Aのみを撮像することが好ましい。そこで、第2実施形態のレーザ加工装置10では、カラーカメラ45,46A,46Bに入射する光の波長域を制限する。
【0128】
なお、第2実施形態のレーザ加工装置10は、レーザヘッド24の分岐光路BP1の途中にフィルタ75が配置され、分岐光路BP2の途中にフィルタ76Aが配置され、さらに分岐光路BP3の途中にフィルタ76Bが配置されており、上記第1実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記第1実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0129】
フィルタ75,76A,76Bは、ストリートCの材料であるシリコンをプラズマ化させた場合に発生する波長域の光、及び構造物17をプラズマ化させた場合に発生する波長域の光のみを透過する。なお、フィルタ75,76A,76Bとしては、カラーカメラ45,46A,46Bが各加工点SP1,SP2のカラー撮影を行うため、赤色波長域、緑色波長域、及び青色波長域の光を透過可能なマルチバンドパスフィルタが用いられる。
【0130】
このように分岐光路BP1~BP3の途中にフィルタ75,76A,76Bを設けることで、ノイズ光(第1レーザ反射光R1B及び第2レーザ反射光R2B)がフィルタ75,76A,76Bで遮断される。このため、カラーカメラ45,46A,46Bが、構造物17を含むウェーハ12の組成に対応した特定の波長域の光のみを選択的に撮像することができる。その結果、撮影画像D1,D2A,D2Bから取得したプラズマ68,69の色情報から各加工点SP1,SP2の組成を正確に判別することできる。これにより、各加工点SP1,SP2がシリコンのみで構成されているか、或いは構造物17の残渣があるのかを正確に判別可能である。
【0131】
[第3実施形態]
図16は、第3実施形態のレーザ加工装置10のブロック図である。上記各実施形態では、各ストリートCの全領域においてカラーカメラ45,46Bによる各加工点SP1,SP2の撮影と、色情報取得部56によるプラズマ68,69の色情報の取得と、組成判別部60による各加工点SP1,SP2の組成判別と、加工良否判別部62による中抜き加工の良否の判別と、を実行している。この際に、構造物17はストリートCの全領域に亘って形成されてはいない。このため、ストリートCの中で構造物17が形成されていない領域(以下、構造物非形成領域という)では、構造物17の残渣は発生せず、各加工点SP1,SP2の組成判別及び中抜き加工の良否判定を行う必要性は低い。
【0132】
そこで、図16に示すように第3実施形態のレーザ加工装置10では、ストリートCの中で構造物17が形成されている領域(以下、構造物形成領域という)のみで各加工点SP1,SP2の組成判別及び中抜き加工の良否判定を行う。なお、第3実施形態のレーザ加工装置10は、制御装置30が位置情報取得部53として機能し、且つ記憶部31に位置情報78が記憶されている点を除けば上記各実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0133】
位置情報取得部53は、ストリートC(往路及び復路)のレーザ加工の開始前に、記憶部31から位置情報78を取得して、この位置情報78を撮影制御部54へ出力する。
【0134】
位置情報78は、ウェーハ12の各ストリートC上に設けられている構造物17の位置(例えばアライメント基準を原点とする位置座標)を示すものであり、予め各ストリートC上の構造物17の位置を実測して生成される。なお、位置情報78を、ウェーハ12の設計データ、例えばCAD(Computer Aided Design)データに基づき生成してもよい。
【0135】
第3実施形態の撮影制御部54は、位置情報取得部53から取得した位置情報78に基づき、ストリートC上で構造物形成領域のレーザ加工中にのみ、カラーカメラ45,46A,46Bによる短露光時間での各加工点SP1,SP2の撮影を繰り返し実行させる。
【0136】
図17は、第3実施形態のレーザ加工装置10によるウェーハ12の各ストリートCのレーザ加工処理の流れを示すフローチャートである。なお、対応情報71及び位置情報78については事前に記憶部31に記憶されているものとする。
【0137】
図17に示すように、レーザ加工装置10の電源がONされると、対応情報取得部58が記憶部31から対応情報71を取得してこの対応情報71を組成判別部60へ出力すると共に、位置情報取得部53が記憶部31から位置情報78を取得してこの位置情報78を撮影制御部54へ出力する(ステップS1A)。以下、既述の図13に示した第1実施形態と同様にステップS2からステップS6までの処理が実行される。
【0138】
第3実施形態の撮影制御部54は、位置情報取得部53から取得した位置情報78に基づき、ストリートC上の構造物非形成領域のレーザ加工中には、カラーカメラ45,46A,46Bを待機状態にする(ステップS6AでNO)。
【0139】
そして、撮影制御部54は、位置情報78に基づき、ストリートC上の構造物形成領域のレーザ加工が開始されると(ステップS6AでYES)、既述の図14に示したように、カラーカメラ45,46A(46B)による各加工点SP1,SP2の撮影を開始させる(ステップS7A)。次いで、図14に示した第1実施形態と同様に、ステップS7BからステップS7Gまでの処理が実行される。
【0140】
以下、構造物形成領域のレーザ加工中にのみステップS7の処理、すなわち各加工点SP1,SP2(プラズマ68,69)の撮影と、プラズマ68,69の色情報の取得と、各加工点SP1,SP2の組成判別と、中抜き加工の良否の判別と、が繰り返し実行される。また、中抜き加工に不良が発生した場合には報知部64による警告情報の報知が実行される。なお、これ以降の処理の流れは既述の第1実施形態と同じであるので、具体的な説明は省略する。
【0141】
以上のように第3実施形態では、ストリートC上の構造物形成領域のレーザ加工中にのみ各加工点SP1,SP2の組成判別及び中抜き加工の良否判定を行うようにしたので、構造物非形成領域のレーザ加工中には上述の組成判別及び良否判定を省略することができる。これにより、レーザ加工中の不要な撮影及び演算処理を省略することができる。
【0142】
[第4実施形態]
次に、第4実施形態のレーザ加工装置10について説明を行う。上記第3実施形態では、ストリートC上の構造物形成領域のレーザ加工中にのみカラーカメラ45,46A,46Bによる各加工点SP1,SP2(プラズマ68,69)の撮影を実行しているが、カラーカメラ45,46A,46Bの撮像素子の露光時間は短時間に設定されている。このため、第3実施形態では、構造物形成領域が各加工点SP1,SP2に到達するタイミングを正確に検出し、このタイミングでカラーカメラ45,46A,46Bによる各加工点SP1,SP2の撮影を開始させる必要がある。
【0143】
そこで、第4実施形態のレーザ加工装置10では、カラーカメラ45,46A,46Bの露光制御(露光時間)を第3実施形態とは異ならせることで、上述のタイミングを正確に検出することを不要にしている。以下、カラーカメラ45,46A,46Bの中で加工点SP2ごとのプラズマ69を撮影するカラーカメラ46A,46Bの露光制御を例に挙げて具体的に説明する。
【0144】
なお、第4実施形態のレーザ加工装置10は、撮影制御部54によるカラーカメラ45,46A,46Bの露光制御が異なる点を除けば、上記第3実施形態のレーザ加工装置10と基本的に同じ構成である。このため、上記各実施形態と機能又は構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0145】
図18は、第4実施形態のレーザ加工装置10のカラーカメラ46A,46Bの露光制御を説明するための説明図である。図18に示すように、第4実施形態の撮影制御部54は、位置情報取得部53が取得した位置情報78に基づき、少なくともストリートC上の構造物形成領域が各加工点SP2を通過する間、カラーカメラ46A,46B(撮像素子)の露光が継続するようにカラーカメラ46A,46Bの露光時間を長く設定する。
【0146】
具体的には撮影制御部54は、位置情報78に基づき、ストリートC上の構造物形成領域のレーザ加工前、すなわち構造物形成領域が各加工点SP2に到達するよりも前のタイミング(図中の矢印E1参照)でカラーカメラ46A,46Bの撮像素子の露光を開始させる。そして、撮影制御部54は、位置情報78に基づき、構造物形成領域のレーザ加工後、すなわち構造物形成領域が各加工点SP2を通過した後のタイミング(図中の矢印E2参照)でカラーカメラ46A,46Bの撮像素子による撮像、すなわち撮影画像D2A,D2Bの出力を実行させる。
【0147】
カラーカメラ46A,46Bの露光時間を長く設定することで、少なくとも構造物形成領域が各加工点SP2を通過する間の加工点SP2ごとのプラズマ69の色情報はカラーカメラ46A,46Bの撮像素子に蓄積される。このため、撮影画像D2A,D2B内の加工点SP2ごとのプラズマ69の色は、構造物形成領域のレーザ加工中の加工点SP2ごとの組成を反映した色となり、さらに、加工点SP2ごとの組成が異なれば互いに異なる色になる。これにより、上記各実施形態と同様に、色情報取得部56が撮影画像D2A,D2Bから取得した各加工点SP2のプラズマ69の色情報に基づき、組成判別部60が加工点SP2ごとの組成判別を行ったり、加工良否判別部62が中抜き加工の良否判別を行ったりすることができる。
【0148】
なお、図18では、カラーカメラ46A,46Bの露光制御について説明したが、カラーカメラ45の露光制御についても同様である。撮影制御部54は、少なくともストリートC上の構造物形成領域が一対の加工点SP1を通過する間、カラーカメラ45の露光が継続するようにカラーカメラ45の露光時間を長く設定する。
【0149】
以上のように第4実施形態では、カラーカメラ45,46A,46Bの露光時間を長くすることで、上記第3実施形態にように構造物形成領域が各加工点SP1,SP2に到達するタイミングを正確に検出してこのタイミングで各加工点SP1,SP2の撮影を行う必要がなくなる。その結果、第4実施形態では、第3実施形態よりも各加工点SP1,SP2の撮影を簡単に実行することができる。
【0150】
[その他]
図19は、カラーカメラ45,46A,46Bの変形例を説明するための説明図である。上記各実施形態では、カラーカメラ45,46A,46Bとして単板式カラーカメラ(例えばベイヤー式カラーカメラ)を例に挙げて説明したが、図19に示すように、カラーカメラ45,46A,46Bとして3板式カラーカメラを用いてよい。この場合にカラーカメラ45,46A,46Bは、ダイクロイックミラー90,92(ダイクロイックプリズムでも可)、及びモノクロカメラ94R,94G,94Bにより構成される。
【0151】
ダイクロイックミラー90は、例えば、赤色波長域の光を反射し、他の波長域の光を透過する。ダイクロイックミラー92は、例えば、緑色波長域の光を反射し、他の波長域の光を透過する。
【0152】
モノクロカメラ94Rは、ダイクロイックミラー90により反射された赤色波長域の光を撮像する。モノクロカメラ94Gは、ダイクロイックミラー92により反射された緑色波長域の光を撮像する。モノクロカメラ94Bは、ダイクロイックミラー92を透過した光、すなわち青色波長域の光を撮像する。そして、不図示の画像処理部が、各モノクロカメラ94R,94G,94Bによりそれぞれ撮影されたモノクロ撮影画像に基づき、既述のカラーの撮影画像D1,D2A,D2Bを生成する。なお、本発明の加工点SP1及びSP2の撮影手段は、撮影画像D1,D2A,D2Bの色情報を判別可能に取得できればいかなる形態のものであっても良い。
【0153】
図20は、縁切り加工及び中抜き加工で共通のレーザ光源22を用いるレーザヘッド24の変形例を示した図である。上記各実施形態のレーザヘッド24には縁切り加工用の第1レーザ光源22A及び中抜き加工用の第2レーザ光源22Bが設けられているが、図20に示すように、第1レーザ光源22A及び第2レーザ光源22Bの代わりに、レーザ光源22及び分岐素子100をレーザヘッド24に設けてもよい。
【0154】
レーザ光源22は、縁切り加工及び中抜き加工の双方に適した条件(波長、パルス幅、及び繰り返し周波数等)のレーザ光L0を分岐素子100に向けて出射する。
【0155】
分岐素子100は、例えばビームスプリッタ等が用いられる。分岐素子100は、レーザ光源22から出射されたレーザ光L0を2分岐させて、2分岐したレーザ光L0の一方を第1光形成素子32へ出射すると共にレーザ光L0の他方を第2光形成素子34へ出射する。これにより、上記各実施形態と同様に第1光形成素子32から2本の第1レーザ光L1が出射され、且つ第2光形成素子34から第2レーザ光L2が出射される。1種類のレーザ光源22を設けるだけでよいのでレーザヘッド24の小型化及び低コスト化が図れる。
【0156】
上記各実施形態では、第2レーザ光L2のみを加工送り方向(X方向)に複数分岐させているが、2本の第1レーザ光L1も加工送り方向(X方向)に複数分岐させてもよい。この場合に加工良否判別部62は、中抜き加工の良否判別の方法と同様の方法を用いて、縁切り加工の良否判別を行う。
【0157】
上記各実施形態では、ストリートC(往路及び復路)に対してレーザヘッド24を加工送り方向に沿って1回だけ相対移動させながらレーザ加工を行っているが、ストリートCに対してレーザヘッド24を相対的に1回以上往復移動させながらレーザ加工を行ってもよい。この場合には加工良否判別部62は、レーザヘッド24による1回の加工送り方向(往路、復路)に沿ったレーザ加工が行われるごと、或いは1往復動作のレーザ加工が行われるごとの各加工点SP1,SP2のプラズマ68,69の色情報を比較した結果に基づき、縁切り加工及び中抜き加工の良否を判別する。
【0158】
例えば加工良否判別部62は、レーザヘッド24の加工送り方向に沿ったレーザ加工が行われるごとに各加工点SP1,SP2のプラズマ68,69の色が次第に変化し、所定回数のレーザ加工後に各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の色がシリコンのみを示す色になった場合には、縁切り加工及び中抜き加工が良好であると判定する。また、加工良否判別部62は、所定回数のレーザ加工後の各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の色変化が僅かであったり、逆に各加工点SP1,SP2でのプラズマ68,69の色が急激に変化したりした場合には、縁切り加工及び中抜き加工が良好であると判定する。この場合には各レーザ光L1,L2を加工送り方向に分岐させることなく、加工良否判別部62による判別を行うことができる。
【0159】
上記各実施形態では、ストリートC上の構造物形成領域では、そのY方向の全域に亘って構造物17が形成されているが、Y方向の一部の領域のみに構造物17が形成されていてもよい。この場合に色情報取得部56は、各加工点SP1,SP2のプラズマ68,69の色情報として複数色の色情報を取得する。
【0160】
上記各実施形態では、ストリートCに対するレーザ加工として縁切り加工及び中抜き加工を実施しているが、通常の1種類のレーザ加工を行うレーザ加工装置(上記特許文献2参照)にも本発明を適用可能である。また、本発明のレーザ加工装置は、シリコン等の基板の表面にLow-k膜が形成されているウェーハ12を加工対象とするものに限定されず、公知の各種ウェーハを加工対象とするものに適用可能である。
【符号の説明】
【0161】
10 レーザ加工装置
12 ウェーハ
14 チップ
16 デバイス
17 構造物
18 縁切り溝
19 中抜き溝
20 テーブル
22 レーザ光源
22A 第1レーザ光源
22B 第2レーザ光源
24 レーザヘッド
26 顕微鏡
28 相対移動機構
30 制御装置
31 記憶部
32 第1光形成素子
33 ビームスプリッタ
34 第2光形成素子
35 ビームスプリッタ
35A 分岐光学素子
36 接続切替素子
37 ビームスプリッタ
38 第1集光レンズ
40A 第2集光レンズ
40B 第2集光レンズ
41 照明光源
42,43A,43B ビームスプリッタ
45,46A,46B カラーカメラ(撮影手段)
47 第1結像レンズ
48A,48B 第2結像レンズ
49 操作部
50 アライメント検出部
52 レーザ加工制御部
53 位置情報取得部
54 撮影制御部
56 色情報取得部
58 対応情報取得部
60 組成判別部
62 加工良否判別部
64 報知部
68,69 プラズマ
71 対応情報
75 フィルタ
76A,76B フィルタ
78 位置情報
90,92 ダイクロイックミラー
94B,94G,94R モノクロカメラ
100 分岐素子
BP1,BP2,BP3 分岐光路
C ストリート
D1,D2A,D2B 撮影画像
L0 レーザ光
L1 第1レーザ光
L2 第2レーザ光
L3 照明光
LA,LB レーザ光
OP1,OP2,OP3 主光路
R1A プラズマ発光
R1B 第1レーザ反射光
R2A プラズマ発光
R2B 第2レーザ反射光
SP1,SP2 加工点
XA 往路方向側
XB 復路方向側
図1
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