IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 藤森工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図1
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図2
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図3
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図4
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図5
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図6
  • 特開-包装容器、スパウト、積層体 図7
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024047809
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】包装容器、スパウト、積層体
(51)【国際特許分類】
   B65D 33/38 20060101AFI20240401BHJP
【FI】
B65D33/38 ZAB
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022153506
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000224101
【氏名又は名称】藤森工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【弁理士】
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100155066
【弁理士】
【氏名又は名称】貞廣 知行
(72)【発明者】
【氏名】桑原 弘嗣
【テーマコード(参考)】
3E064
【Fターム(参考)】
3E064AB25
3E064BA24
3E064BA36
3E064BA54
3E064BB03
3E064BC01
3E064EA04
3E064FA03
3E064GA04
3E064HN65
3E064HS04
(57)【要約】
【課題】包装袋にスパウトを接着するときの生産性を向上することが可能な包装容器、スパウト、積層体を提供する。
【解決手段】スパウト10と包装袋20とを有する包装容器であって、スパウト10と包装袋20とが重なり合う領域に配置された接着フィルム30を介して、スパウト10と包装袋20とが接着されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スパウトと包装袋とを有する包装容器であって、前記スパウトと前記包装袋とが重なり合う領域に配置された接着フィルムを介して、前記スパウトと前記包装袋とが接着されていることを特徴とする包装容器。
【請求項2】
前記包装袋は、シーラントを有する積層体から形成され、前記スパウトは、前記シーラントより高融点の樹脂から形成され、前記接着フィルムは、前記スパウトより低融点の樹脂から形成され、前記接着フィルムを介して、前記スパウトと前記包装袋とが溶着されていることを特徴とする請求項1に記載の包装容器。
【請求項3】
前記シーラントはポリエチレン系樹脂から形成され、前記スパウトはポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から形成され、前記接着フィルムはポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項2に記載の包装容器。
【請求項4】
前記包装袋が、複数の樹脂フィルムを含む積層体から形成され、前記積層体に含まれる樹脂フィルムが、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の包装容器。
【請求項5】
スパウトと包装袋とを有する包装容器に用いられるスパウトであって、前記スパウトの前記包装袋と重なり合う領域に、接着フィルムが積層されていることを特徴とするスパウト。
【請求項6】
前記接着フィルムは、前記スパウトより低融点の樹脂から形成されて前記スパウトと溶着されていることを特徴とする請求項5に記載のスパウト。
【請求項7】
前記スパウトはポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から形成され、前記接着フィルムはポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項5または6に記載のスパウト。
【請求項8】
スパウトと包装袋とを有する包装容器の、前記包装袋に用いられる積層体であって、前記積層体の前記スパウトと重なり合う領域に、接着フィルムが積層されていることを特徴とする積層体。
【請求項9】
前記積層体は、ポリエチレン系樹脂から形成されたシーラントを有し、前記接着フィルムはポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする請求項8に記載の積層体。
【請求項10】
前記積層体に含まれる樹脂フィルムが、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする請求項8に記載の積層体。
【請求項11】
前記接着フィルムが、ポリエチレン系樹脂を溶融した溶融樹脂フィルムであることを特徴とする請求項8~10のいずれか1項に記載の積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、包装容器、スパウト、積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の包装袋として、二つ折りにされた底部材が一対の胴部材の間に配置された自立性を有するスタンディングパウチが使用されている。特許文献1の段落0010には、ポリエチレン(PE)等のシーラントを最内層とし、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)、ポリプロピレン(PP)等の延伸フィルムを基材としたラミネートフィルムを用いることが記載されている。
【0003】
また、特許文献1の段落0011には、スパウトは少なくとも表面に前記シーラントと溶着可能な熱可塑性樹脂層を有することや、スパウトの材質にポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ナイロン(Ny)等を使用できることが記載されている。
【0004】
また、特許文献2の段落0083~0087には、流路を有する筒状の第1成形体の外周面に、第2成形体が形成されるように、二色成形の注出口を成形することが記載されている。また、第2成形体がポリエチレン系樹脂などのポリオレフィン樹脂から形成されると、注出口を包装袋と接合しやすくなり、取扱性や耐久性にも優れることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-7630号公報
【特許文献2】特開2018-188189号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の包装袋に使用される複合フィルムは、内面に熱接着性樹脂(シーラント)層、外面には、シーラントよりも耐熱性の高い基材が積層されている。複合フィルムを熱接着する際には、シーラントを溶融させて複合フィルムの内面が接合される。しかし、異種の樹脂を含む包装袋は、プラスチック製容器包装としてのリサイクルが難しいという問題がある。
【0007】
近年、リサイクルを容易にするため、単一または同種の樹脂を用いるモノマテリアルの容器包装が提唱されている。例えば、二軸延伸ポリプロピレン(BO-PP)を基材とすることは、特許文献1にも記載されている。しかし、モノマテリアルの包装袋において、スパウトを接着するには、生産性が低下するおそれがある。
【0008】
従来技術に示唆されているように、シーラントと溶着可能な熱可塑性樹脂層をスパウトの表面に積層するため、二色成形を用いることも考えられる。しかし、スパウトの成形にコストがかかり、生産性が低いという問題がある。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、包装袋にスパウトを接着するときの生産性を向上することが可能な包装容器、スパウト、積層体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、下記の態様を含む。
本発明の第1の態様は、スパウトと包装袋とを有する包装容器であって、前記スパウトと前記包装袋とが重なり合う領域に配置された接着フィルムを介して、前記スパウトと前記包装袋とが接着されていることを特徴とする包装容器である。
【0011】
本発明の第2の態様は、前記包装袋は、シーラントを有する積層体から形成され、前記スパウトは、前記シーラントより高融点の樹脂から形成され、前記接着フィルムは、前記スパウトより低融点の樹脂から形成され、前記接着フィルムを介して、前記スパウトと前記包装袋とが溶着されていることを特徴とする第1の態様の包装容器である。
本発明の第3の態様は、前記シーラントはポリエチレン系樹脂から形成され、前記スパウトはポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から形成され、前記接着フィルムはポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする第2の態様の包装容器である。
本発明の第4の態様は、前記包装袋が、複数の樹脂フィルムを含む積層体から形成され、前記積層体に含まれる樹脂フィルムが、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする第1~3のいずれか1の態様の包装容器である。
【0012】
本発明の第5の態様は、スパウトと包装袋とを有する包装容器に用いられるスパウトであって、前記スパウトの前記包装袋と重なり合う領域に、接着フィルムが積層されていることを特徴とするスパウトである。
本発明の第6の態様は、前記接着フィルムは、前記スパウトより低融点の樹脂から形成されて前記スパウトと溶着されていることを特徴とする第5の態様のスパウトである。
本発明の第7の態様は、前記スパウトはポリエチレン系樹脂またはポリプロピレン系樹脂から形成され、前記接着フィルムはポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする第5または第6の態様のスパウトである。
【0013】
本発明の第8の態様は、スパウトと包装袋とを有する包装容器の、前記包装袋に用いられる積層体であって、前記積層体の前記スパウトと重なり合う領域に、接着フィルムが積層されていることを特徴とする積層体である。
本発明の第9の態様は、前記積層体は、ポリエチレン系樹脂から形成されたシーラントを有し、前記接着フィルムはポリエチレン系樹脂から形成されていることを特徴とする第8の態様の積層体である。
本発明の第10の態様は、前記積層体に含まれる樹脂フィルムが、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみからなることを特徴とする第8または第9の態様の積層体である。
本発明の第11の態様は、前記接着フィルムが、ポリエチレン系樹脂を溶融した溶融樹脂フィルムであることを特徴とする第8~10のいずれか1の態様の積層体である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、包装袋にスパウトを接着するときの生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施形態によるスパウトと包装袋との接着部を例示する断面図である。
図2図1のII-II線に沿う断面図である。
図3】接着フィルムを積層したスパウトの一例を示す正面図である。
図4】スパウトに接着フィルムを積層する工程の説明図である。
図5】接着フィルムを有する積層体にスパウトを接着する工程の説明図である。
図6】包装容器の第1例を示す正面図である。
図7】包装容器の第2例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、好適な実施形態に基づいて、本発明を説明する。
【0017】
図1に、実施形態によるスパウト10と包装袋20との接着部を例示する。図2は、図1のII-II線に沿う断面図である。スパウト10と包装袋20とが重なり合う領域には接着フィルム30が配置されている。この接着フィルム30を介して、スパウト10と包装袋20とが接着されている。図示例の接着部は、スパウト10と包装袋20とを有する包装容器に用いられる。
【0018】
図示例のスパウト10は、先端に注出口14を有する筒部11と、包装袋20と重なり合う領域を有する基部12とを有する。筒部11は、基部12から突出している。スパウト10の内部には、包装袋20に収容される内容物(図示せず)を注出可能な流路13が形成されている。流路13は、包装袋20の内部を注出口14と連通させている。
【0019】
包装袋20の内容物は、特に限定されないが、液体、粉体、粒体等の流動性を有することが好ましい。内容物が液体を含む場合は、溶液、分散液、乳濁液、懸濁液などの混合物であってもよい。
【0020】
筒部11の形状は特に限定されないが、例えば円筒状、楕円筒状、角筒状などであってもよい。基部12は筒部11より大きい断面形状を有してもよく、基部12が筒部11と同一の断面形状を有してもよい。基部12の断面形状は特に限定されないが、流路13の長さ方向に直交する面上において、例えば円形状、楕円形状、舟形状などが挙げられる。ここで、舟形状は、例えば図2に示すように、長軸2方向が略三角形状に突出し、短軸2方向は略円弧状に湾曲した形状である。
【0021】
スパウト10の内部に形成される流路13の断面形状は、特に限定されないが、長さ方向と直交する面上において、例えば円形状、楕円形状、多角形状等が挙げられる。流路13の内面は、筒部11の外面と同心状であってもよい。流路13の長さ方向の形状は、特に限定されないが、直線状、曲線状、湾曲状、屈曲状などであってもよい。特に図示しないが、同一の流路13から分岐して2以上の注出口14が開口してもよい。
【0022】
包装袋20は、シーラント21を有する積層体23から形成してもよい。複数の積層体23を重ね合わせて包装袋20を形成するときに、シーラント21同士を対向して接着することができる。シーラント21は、溶着可能な樹脂から形成されることが好ましい。溶着可能な樹脂としては、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂が挙げられ、例えば、ポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0023】
シーラント21を形成する材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)等が挙げられる。シーラント21を形成する材料が、1種のポリエチレン系樹脂でもよく、2種以上のポリエチレン系樹脂のブレンドでもよい。シーラント21の厚さは、特に限定されないが、例えば、60~180μm程度が挙げられる。
【0024】
積層体23は、シーラント21とは異なるフィルムとして、少なくとも1層の基材22を有してもよい。基材22の材質は特に限定されず、樹脂、紙、セロファン、金属箔等が挙げられる。基材22の樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル系樹脂、ナイロンなどのポリアミド樹脂等が挙げられる。基材22は、シーラント21を溶着する温度条件で溶融しない、耐熱性を有することが好ましい。
【0025】
基材22をポリオレフィン系樹脂から形成する場合の材料の具体例としては、例えば、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。基材22は、延伸樹脂フィルムを含んでもよい。基材22の厚さは、特に限定されないが、例えば、各層厚または総厚として、10~50μm程度が挙げられる。
【0026】
包装袋20を形成する積層体23は、例えばシーラント21や基材22など、複数の樹脂フィルムを含んでもよい。モノマテリアルの包装袋20を形成するには、積層体23に含まれる樹脂フィルムが、ポリオレフィン系樹脂のみであることが好ましく、ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂のみであることがより好ましい。
【0027】
積層体23を形成する複数の樹脂フィルムは、ドライラミネート等により、接着層を介して積層してもよく、共押出、熱ラミネート等により、接着層を省略しながら積層してもよい。各樹脂フィルムの少なくとも片面には、印刷層、蒸着層等を形成してもよい。
【0028】
スパウト10は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂から形成されることが好ましい。スパウト10の形成方法は特に限定されないが、射出成形、押出成形などが挙げられる。二色成形でスパウト10を形成することも可能であるが、コスト面では単一の樹脂を用いてスパウト10を形成することが好ましい。
【0029】
スパウト10をシーラント21より低融点の樹脂から形成すると、積層体23をスパウト10に溶着する際にスパウト10の表面が柔らかくなって、スパウト10の機能を損なうおそれがある。このため、スパウト10は、シーラント21より高融点の樹脂から形成されることが好ましい。例えば、スパウト10が高密度ポリエチレン(HDPE)や中密度ポリエチレン(MDPE)などのポリエチレン系樹脂やポリプロピレン系樹脂の成形体であってもよい。
【0030】
接着フィルム30は、生産性の観点から、スパウト10と包装袋20との接着を短時間で完了させる材料を用いることが好ましく、例えばシーラント樹脂、接着剤等が挙げられる。接着フィルム30の厚さは、特に限定されないが、例えば、1~100μm程度が挙げられる。
【0031】
接着フィルム30をシーラント樹脂から形成する場合は、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂から形成されてもよく、スパウト10より低融点の樹脂から形成されることが好ましく、例えば、低密度ポリエチレン(LDPE)や直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)などのポリエチレン系樹脂が好ましい。
【0032】
接着フィルム30をシーラント21と同様に溶着する場合には、接着フィルム30に用いられる樹脂と、シーラント21に用いられる樹脂との融点差が小さいことが好ましい。例えば、±20℃以下が好ましく、±10℃以下がより好ましい。親和性の観点からは、接着フィルム30とシーラント21との両方にポリエチレン系樹脂を用いることが好ましい。
【0033】
スパウト10を包装袋20に溶着させる場合は、溶融または軟化した樹脂が冷却して固化することで、接着が安定化するため、比較的短時間で接着を完了させることができる。スパウト10を溶着した箇所に冷却用の金型等を接触させて、余剰の熱を吸収させてもよい。
【0034】
接着フィルム30は、接着剤から形成することも可能である。接着剤としては、常温で液状の硬化性接着剤でもよく、加熱溶融で接着させるホットメルト接着剤でもよい。接着フィルム30は、液状化した溶融樹脂の状態で、スパウト10と包装袋20との間の接着箇所に供給して、形成される溶融樹脂フィルムであってもよい。
【0035】
化学反応で硬化させる接着剤を用いる場合は、短時間で硬化反応が完了する接着剤を選択することが好ましく、例えば、シアノアクリレート系接着剤などが挙げられる。
【0036】
ホットメルト接着剤または溶融樹脂フィルムに用いられる溶融可能な樹脂としては、特に限定されないが、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂などのポリオレフィン系樹脂、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー等の熱可塑性エラストマー、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、変性オレフィン系樹脂、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)等が挙げられる。
【0037】
接着フィルム30をスパウト10と包装袋20との間に配置する際の生産性を向上するには、あらかじめ接着フィルム30をスパウト10または包装袋20のいずれか一方の上に積層しておくことが好ましい。これにより、接着フィルム30を接着箇所に供給する時間を短縮することができる。
【0038】
図3には、接着フィルム30を積層したスパウト10の一例を示す。スパウト10の基部12の上には接着フィルム30が積層されている。スパウト10の筒部11は、包装袋20と重なり合う領域ではないため、筒部11上に接着フィルム30を積層する必要はない。特に図示しないが、筒部11の外周面の少なくとも一部に接着フィルム30が積層されても構わない。
【0039】
筒部11と基部12との間に段差があり、基部12の外周面のみが包装袋20と重なり合う場合は、基部12の外周面のみに接着フィルム30を積層してもよい。接着フィルム30が溶着性の場合、冷却状態ではスパウト10と一体化して接着性を有しないため、製袋機で包装容器の部品として容易に供給することができる。
【0040】
図4に示すように、スパウト10の両側から複数枚の接着フィルム30を貼り合わせてもよい。例えば図2に示すように、基部12の断面形状が舟形状の場合は、短軸2方向の両側で湾曲面に接着フィルム30を貼り合わせることが好ましい。基部12の断面形状が円形状の場合は、1枚の接着フィルム30を基部12の周囲に巻き付けてもよい。
【0041】
基部12に接着フィルム30を貼り合わせる場合は、融点の高い基部12側を加熱溶融させて貼り合わせることが好ましい。接着フィルム30は、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂フィルムであってもよい。例えば、液状の溶融樹脂を基部12の所定の領域に塗布して、溶融樹脂フィルムを形成することも可能である。
【0042】
図5には、包装袋20を形成する前に予め、スパウト10と重なり合う領域に、接着フィルム30が積層されている積層体23を用いて、スパウト10を接着する工程の一例を示す。接着フィルム30は、積層体23のシーラント21上に積層される。断片状に切断した接着フィルム30は、積層体23に接着してもよい。
【0043】
スパウト10に積層体23を貼り合わせる場合は、融点の高いスパウト10の基部12側を加熱溶融させて貼り合わせることが好ましい。接着フィルム30は、ポリエチレン系樹脂などの熱可塑性樹脂を溶融した溶融樹脂フィルムであってもよい。例えば、液状の溶融樹脂を積層体23の片面で所定の領域に塗布して、溶融樹脂フィルムを形成することも可能である。
【0044】
包装袋20の製造工程においては、予め接着フィルム30が積層されている積層体23を2枚重ね合わせて、その間にスパウト10の基部12を配置してもよい。接着フィルム30の位置をスパウト10の基部12に合わせて接着し、それ以外の箇所では、積層体23のシーラント21同士を向かい合わせて接着することにより、図1および図2に示す包装袋20を製造することができる。
【0045】
特に図示しないが、スパウト10側と積層体23側との双方に接着フィルム30を設けて重ね合わせてもよい。具体的には、スパウト10の少なくとも基部12に接着フィルム30を形成するとともに、積層体23の少なくとも基部12と重なり合う領域にも接着フィルム30を形成することができる。この場合は、少なくとも一方の接着フィルム30が溶融樹脂フィルムであってもよい。
【0046】
包装袋20の具体例としては、特に限定されないが、三方シール袋、四方シール袋、ピロー袋、平袋、ガセット袋、スタンディングパウチ等が挙げられる。図6~7に、スタンディングパウチの包装袋20を用いた包装容器31,32の具体例を示す。包装容器31,32に使用される包装袋20は、胴部材24が一対の積層体23からなり、その間に底部材26を挟み込んで形成されている。
【0047】
底部材26は、2つ折りにして胴部材24の下部に配置されている。底部材26より上側では、左右に側シール部25が形成されて、前後の胴部材24が互いに接合されている。底部材26と胴部材24は底シール部27により接合されている。2つ折りにした底部材26の片側は前側の胴部材24と接合され、底部材26のもう片側は後側の胴部材24と接合されている。底部材26を広げると、包装袋20を自立させることができる。
【0048】
胴部材24の上部には、上シール部28が形成されている。上シール部28の一部分では接着フィルム30を介してスパウト10が接着されており、スパウト10以外の箇所では上シール部28を介して前後の胴部材24が接合されている。
【0049】
図6に示すように、第1例の包装容器31の場合は、左右の側シール部25の間を接続した上シール部28の中央部にスパウト10が上向きに接着され、包装袋20の内部が密閉されている。スパウト10を通して内容物を包装袋20に充填してから、キャップ等の蓋(図示せず)を用いてスパウト10を閉鎖することにより、包装袋20を密封することができる。
【0050】
図7に示すように、第2例の包装容器32の場合は、左右の側シール部25のうち一方に接して胴部材24の上部に未シール部からなる開口部29が形成されている。上シール部28の一部は斜めに形成され、スパウト10が斜めに接着されている。開口部29を有する包装袋20の場合、スパウト10を開封することなく、開口部29から内容物を包装袋20に充填することができる。また、内容物を充填した後の包装袋20は、開口部29の未シール部を接合することにより、包装袋20を密封することができる。
【0051】
包装袋20の寸法は、特に限定されるものではないが、例えば詰め替え容器の用途では、上下方向の高さが100~500mm程度、左右方向の幅が70~300mm程度、充填量としては100cm~5000cm程度が挙げられる。内容物の状態としては、液体、粉体、粒体等の流体、あるいは物品等の固形物が挙げられる。内容物の種類としては、特に限定されないが、洗剤、薬剤、化粧品、医薬品、飲料、調味料、インキ、塗料、燃料等が挙げられる。
【0052】
スパウト10および/または包装袋20に用いられるポリエチレン系樹脂は、エチレンの単独重合体(ホモポリマー)でもよく、エチレンを主体とする共重合体(コポリマー)でもよい。エチレン以外のモノマー(コモノマー)としては、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、ノルボルネン等の環状オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリエチレン系樹脂が、酢酸ビニル等のエステル基を有するモノマーを共重合している場合は、エステル基の一部がケン化されて、ビニルアルコールを含む共重合体となっていてもよい。
【0053】
前記ポリエチレン系樹脂の構成モノマーにおけるエチレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。エチレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリエチレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリエチレン系樹脂のみでもよい。ポリエチレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリエチレン系樹脂を含んでもよい。
【0054】
スパウト10および/または包装袋20に用いられるポリプロピレン系樹脂は、プロピレンの単独重合体(ホモPP)でもよく、プロピレン-エチレン共重合体等におけるランダム共重合体(ランダムPP)またはブロック共重合体(ブロックPP)でもよい。プロピレン以外のモノマー(コモノマー)としては、エチレン、1-ブテン、1-ヘキセン、1-オクテン等のα-オレフィン、酢酸ビニル、塩化ビニル、アクリル酸等のビニル系モノマー等の1種または2種以上が挙げられる。ポリプロピレン系樹脂にコモノマーを用いる場合は、コモノマーが1種でも、2種以上でもよい。
【0055】
前記ポリプロピレン系樹脂の構成モノマーにおけるプロピレンの割合は、50重量%以上が好ましく、例えば、80~100重量%でもよい。プロピレンまたはコモノマーは、石油等の化石資源に由来する化合物でもよく、植物等のバイオマスに由来する化合物でもよい。ポリプロピレン系樹脂層に含まれる樹脂が、ポリプロピレン系樹脂のみでもよい。ポリプロピレン系樹脂の少なくとも一部が、リサイクルされたポリプロピレン系樹脂を含んでもよい。
【0056】
スパウト10および/または包装袋20に用いられるポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂)は、適宜の範囲で他の樹脂および/または添加剤を含有してもよい。添加剤としては、特に限定されないが、例えば、酸化防止剤、滑剤、アンチブロッキング剤、難燃剤、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、着色剤、架橋剤等が挙げられる。添加剤は、樹脂に相溶する成分でもよく、樹脂に相溶しない成分でもよい。
【0057】
包装袋20がポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂またはポリエチレン系樹脂)によるモノマテリアルの容器包装とする場合、積層体23の全重量に対し、ポリオレフィン系樹脂の合計が80重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、積層体23に他の樹脂、添加剤、接着剤等が使用されていても、ポリオレフィン系樹脂のモノマテリアル材料を実現することができる。
【0058】
スパウト10および包装袋20を備える包装容器31,32によるモノマテリアルの容器包装とする場合、スパウト10および包装袋20を合計した包装容器31,32の全重量に対し、ポリオレフィン系樹脂の合計が80重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が20重量%以下であることが好ましく、ポリオレフィン系樹脂の合計が90重量%以上であり、ポリオレフィン系樹脂以外の材料の合計が10重量%以下であることがより好ましい。これにより、スパウト10と包装袋20とを分離しなくても、全体がモノマテリアルの包装容器31,32を実現することができる。
【0059】
以上、本発明を好適な実施形態に基づいて説明してきたが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。改変としては、構成要素の追加、置換、省略、その他の変更が挙げられる。
【符号の説明】
【0060】
10…スパウト、11…筒部、12…基部、13…流路、14…注出口、20…包装袋、21…シーラント、22…基材、23…積層体、24…胴部材、25…側シール部、26…底部材、27…底シール部、28…上シール部、29…開口部、30…接着フィルム、31,32…包装容器。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7