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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048125
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】液体を吐出する装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240401BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 301
B41J2/01 307
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154005
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】山下 宏之
(72)【発明者】
【氏名】田中 真也
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056EA23
2C056EC22
2C056EC35
2C056FA13
2C056FB01
2C056HA10
2C056HA46
2C056HA47
2C056JA03
2C056JA06
2C056JA13
2C056JA17
2C056JA21
2C056JA25
2C056JA27
2C056JB01
2C056JB07
(57)【要約】
【課題】装置の大型化や機構の複雑化を招くことなく、キャップを介した汚染やキャップ内部の乾燥を防止可能な液体を吐出する装置を提供する。
【解決手段】液体が吐出されるノズル列11をノズル面12に有する液体吐出ヘッド1と、ノズル面12に当接して覆うキャップ部材21とを備え、被吐出媒体101に対して液体を吐出する装置であって、キャップ部材21は、ノズル面12に対し、ノズル列11の全体を覆う第一の位置、及びノズル列11が露出する第二の位置のいずれかで当接し、キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で印刷を行う。また、液体が吐出される複数のノズル列を有し、キャップ部材21は、ノズル面12に対し、複数のノズル列11の全体を覆う第一の位置、及び少なくとも一つのノズル列11が露出する第二の位置のいずれかで当接し、キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で被吐出媒体101に対して液体を吐出する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体が吐出されるノズル列をノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して覆うキャップ部材とを備え、被吐出媒体に対して前記液体を吐出する装置であって、
前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、前記ノズル列の全体を覆う第一の位置、及び前記ノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、
前記キャップ部材が第二の位置に当接した状態で前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項2】
液体が吐出される複数のノズル列をノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して覆うキャップ部材とを備え、被吐出媒体に対して前記液体を吐出する装置であって、
前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、複数の前記ノズル列の全体を覆う第一の位置、及び少なくとも一つの前記ノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、
前記キャップ部材が第二の位置に当接した状態で前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出することを特徴とする液体を吐出する装置。
【請求項3】
前記キャップ部材は、第一の位置と第二の位置との間を前記ノズル面に当接したまま移動することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項4】
前記液体吐出ヘッドに対して相対移動して前記ノズル面を払拭する払拭部材を備え、
前記キャップ部材が前記ノズル面と当接する第二の位置は、前記払拭部材の払拭方向において第一の位置よりも下流側にあることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項5】
前記ノズル面は、少なくとも一部に水平面に対する傾斜を有し、
前記キャップ部材が前記ノズル面と当接する第一の位置は、第二の位置よりも鉛直方向において高い位置であることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項6】
前記ノズル面に、前記被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有することを特徴とする請求項5に記載の液体を吐出する装置。
【請求項7】
前記ノズル面は、水平面に対して傾斜して配置され、
前記ノズル面に、前記被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有し、
前記孔部は、前記キャップ部材が前記ノズル面と当接する第二の位置よりも鉛直方向において高い位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【請求項8】
前記ノズル面に、前記被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有し、
前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、前記孔部のみを覆う第三の位置で当接することを特徴とする請求項1または2に記載の液体を吐出する装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体を吐出する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体を吐出する装置として、被吐出媒体にインク等の液体を吐出するインクジェット式の装置(例えば、印刷装置等)が知られている。
液体吐出ヘッドを備える液体を吐出する装置では、ヘッドの状態をメンテナンス(維持、回復)するために、ヘッドのノズル面をキャッピングするキャップ部材や、ヘッドのノズル面を払拭する払拭部材等を有するメンテナンスユニット(維持回復機構)を備えたものが知られている。
【0003】
近年、インクジェット式の装置は、産業機械への展開が進み、インクの吐出(印刷)が長時間にわたることが多くなってきた。一方、様々な被吐出媒体に対応するとともに、環境耐性を向上させるために、吐出されるインクの種類も多様化し、安定した吐出の維持が困難となっている。
【0004】
ノズルの乾燥を防止するためにノズル面を密閉(キャッピング)するキャップ部材は、一般に、印刷中は退避位置にあり、内部が開放された状態となる。そのため、印刷時間が長くなると、内部に付着した液体が乾燥したり、内部に異物が入り込んだりするという問題がある。
この問題に対し、キャップカバーを設ける技術(例えば、特許文献1~3参照)や、キャップ内を湿潤させるための技術(例えば、特許文献4参照)等が提案されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、キャップを保護するための専用の部材を設けることにより、汚れなどが転写され、当該部材を介したさらなる汚染が広がるおそれがある。また、キャップ内を保湿するための機構を設ける場合は、機構の複雑化や装置の大型化を招くおそれがある。
【0006】
そこで本発明は、装置の大型化や機構の複雑化を招くことなく、キャップを介した汚染やキャップ内部の乾燥を防止可能な液体を吐出する装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の液体を吐出する装置は、液体が吐出されるノズル列をノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して覆うキャップ部材とを備え、被吐出媒体に対して前記液体を吐出する装置であって、前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、前記ノズル列の全体を覆う第一の位置、及び前記ノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、前記キャップ部材が第二の位置に当接した状態で前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出することを特徴とする。
また、本発明の液体を吐出する装置は、液体が吐出される複数のノズル列をノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して覆うキャップ部材とを備え、被吐出媒体に対して前記液体を吐出する装置であって、前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、複数の前記ノズル列の全体を覆う第一の位置、及び少なくとも一つの前記ノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、前記キャップ部材が第二の位置に当接した状態で前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、装置の大型化や機構の複雑化を招くことなく、キャップを介した汚染やキャップ内部の乾燥を防止可能な液体を吐出する装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明に係る液体を吐出する装置の一例の概略説明図である。
図2図1の液体付与部のヘッド列を下方から見た説明図である。
図3】第一の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図4】第一の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図5】第二の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図6】第二の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図7】第二及び第三の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図8】第四の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図9】第五の実施形態におけるキャップ部材の当接位置を説明する模式図である。
図10】液体を吐出する装置の一例としての印刷装置の概略説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る液体を吐出する装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0011】
本発明に係る液体を吐出する装置の一例について図1及び図2を参照して説明する。
なお、本実施形態では、液体を吐出する装置が刺繍装置であり、被吐出媒体が糸である例で説明するが、これに限定されるものではない。
また、図1は刺繍装置等の後工程がある装置の例を示しているが、糸などにオンデマンドで染色する染色装置などにも適用できる。
なお、「糸」とは、ガラス繊維糸、ウール糸、綿糸、合成糸、金属糸、ウール、綿、ポリマー、または金属の混合糸、ヤーン、フィラメント、あるいは液体を付与可能な線状部材(連続基材)であり、組紐、平紐なども含む。
【0012】
図1は、液体を吐出する装置100の一例としての、インライン型刺繍装置の概略説明図である。図2は液体付与部103の液体吐出ヘッド1を下方(ノズル面側)から見た説明図である。
【0013】
本実施形態の液体を吐出する装置100は、被吐出媒体(液体を付与する対象)101である糸が巻回された供給リール102と、液体付与部103と、定着部104と、後処理部105と、刺繍ヘッド106とを備えている。
供給リール102から引き出された被吐出媒体101は、ローラ108、109で案内され、刺繍ヘッド106まで連続して這い回されている。
【0014】
液体付与部103は、供給リール102から引き出されて搬送される被吐出媒体101に所要の色の液体を吐出して付与する複数の液体吐出ヘッド1(1a~1d)と、各液体吐出ヘッド1の維持回復を行う複数の維持機構である個別維持ユニット2(2a~2d)とを備えている。液体吐出ヘッド1a~1dは、例えば、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、ブラック(K)の色の液体を吐出する。
【0015】
本実施形態の液体を吐出する装置100において、液体吐出ヘッド1は、図2に示すように、液体を吐出する複数のノズル10を配列したノズル列11が形成されたノズル面12を有している。各液体吐出ヘッド1は、ノズル列方向(ノズル10の配列方向)が被吐出媒体101の搬送方向(移動方向)になるように配置されている。
【0016】
定着部104は、液体付与部103から吐出された液体が付与された被吐出媒体101に対する定着処理(乾燥処理)を行う。定着部104は、例えば赤外線照射手段、温風吹き付け手段などの加熱手段を備え、被吐出媒体101を加熱して乾燥する。
【0017】
後処理部105は、例えば、被吐出媒体101である糸を清掃する清掃手段、糸の張力を調整する張力調整手段、糸の移動量を検出する送り量検出手段、糸の表面に潤滑剤を付与する潤滑剤付与手段などを含む。
【0018】
刺繍ヘッド106は、被吐出媒体101である糸によって例えば布上にパターンを刺繍する。刺繍ヘッド(刺繍部)106の先端部には、針棒が上下動可能に保持され、液体が付与された糸によって例えば布上にパターンを刺繍する。
【0019】
個別維持ユニット2は、液体吐出ヘッド1と対向可能に配置されたキャップ部材21(21a~21d)を備えている。
キャップ部材21は、液体吐出ヘッド1のノズル面12に開口端面が当接し、ノズル面12を被覆(キャッピング)する部材である。
以下の実施形態にて説明するように、キャップ部材21と液体吐出ヘッド1との位置関係は可変である。なお、ノズル面12にキャップ部材21が当接するとき、被吐出媒体101はこれらの当接に干渉しない位置にある。
【0020】
図2(A)及び図2(B)に示すように、キャップ部材21の長手方向は、被吐出媒体101の搬送方向に沿う方向である。キャップ部材21の長手方向は、1つのキャップ部材21でノズル列11の全体を覆うことができるように、搬送方向においてノズル列11よりも長く構成されている。
一方、キャップ部材21の短手方向は、ノズル列11の幅よりも大きくなるように構成されている。
【0021】
(第一の実施形態)
本実施形態の液体を吐出する装置は、液体が吐出されるノズル列11をノズル面12に有する液体吐出ヘッド1と、ノズル面12に当接して覆うキャップ部材21とを備え、被吐出媒体101に対して液体を吐出する装置であって、キャップ部材21は、ノズル面12に対し、ノズル列11の全体を覆う第一の位置(図2(B)参照)、及びノズル列11が露出する第二の位置(図2(A)参照)のいずれかで当接し、キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で被吐出媒体101に対して液体を吐出することができる。
被吐出媒体101に対して「液体を吐出する」とは、例えば、被吐出媒体101にインクを吐出して印刷を行うことを意味する。
すなわち、本実施形態の液体を吐出する装置は、キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で印刷を行うことができる。
【0022】
図3は、キャップ部材21がノズル面12に対し、ノズル列11の全体を覆う第一の位置で当接している状態を示す模式的に示した図である。図3(A)は液体吐出ヘッド1の短手方向の断面図、図3(B)は液体吐出ヘッドをノズル面側から見た図である。
図3に示すように、キャップ部材21がノズル列11を被うことにより、吐出動作をしていないノズル列11の乾燥を防止し、次の吐出動作を行う際の吐出不良を予防することができる。
【0023】
図4は、キャップ部材21がノズル面12に対し、ノズル列11が露出する第二の位置で当接している状態を模式的に示した図である。図4(A)は液体吐出ヘッド1の短手方向の断面図、図4(B)は液体吐出ヘッドをノズル面側から見た図である。
キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で液体の吐出(以下、「印刷」という)が行われており、ノズル10からは液体14が吐出されている。
【0024】
図4に示すように、本実施形態の液体を吐出する装置が備える液体吐出ヘッド1のノズル面12には、印刷中にキャップ部材21を当接させる領域が設けられている。これにより、印刷中(液体14の吐出時)はノズル面12の空いたところにキャップ部材21を当接させ、キャップ部材21の内部を密閉することができる。これによりキャップ部材21内部の乾燥や、内部に異物が付着したりするのを防止することができる。
【0025】
なお、図4ではノズル列11の全体が露出する例を示しているが、ノズル列11のうち一部のノズル10が露出する態様であってもよい。例えば、キャップ21の形状を適宜変更し、一部のノズル10のみを露出させる形状とすることも可能である。
【0026】
キャップ部材21は吸引機能を備えていてもよく、内部に吸収体を保持していてもよい。例えば、メンテナンス動作時にノズル10内の液体を吸引し、吸引した液体を吸収体に保持することにより、密閉されたキャップ部材21の内部を湿潤に保つことができる。
【0027】
なお、キャップ部材21がノズル面12に当接する位置を変更する際は、ノズル面12から離間する時間が短いことが好ましく、第一の位置と第二の位置との間をノズル面12に当接したまま移動することがより好ましい。これにより、移動時にキャップ部材21がノズル面12から離間し、内部が開放されることにより湿度が低下してしまうのを防止することができる。
【0028】
一方、キャップ部材21の開口端面に付着した液体がノズル面12との当接部分に付着することがある。
この場合、第一の位置(図3:キャップ状態)から第二の位置(図4:デキャップ状態)への移動時はノズル面12から離間させず、第二の位置(図4:デキャップ状態)から第一の位置(図3:キャップ状態)への移動時は離間させることで、ノズル面12に付着して増粘した液体がノズル10内に入り込んで吐出不良を生じるのを防止することができる。
【0029】
また、キャップ部材21の開口端面に付着した液体がノズル面12との当接部分に付着することがあるため、ノズル面12を払拭する払拭部材を備え、払拭部材により付着した液体を除去することが好ましい。
この場合、キャップ部材21がノズル面12と当接する第二の位置(図4:デキャップ状態)は、払拭部材の払拭方向において第一の位置(図3:キャップ状態)よりも下流側にあることが好ましい。
第二の位置が上流側にあると、払拭部材により除去できなかった増粘インクがノズル内に入り込み、吐出不良をまねくおそれがあるためである。
【0030】
(第二の実施形態)
本実施形態の液体を吐出する装置は、液体が吐出される複数のノズル列11をノズル面12に有する液体吐出ヘッド1と、ノズル面12に当接して覆うキャップ部材21とを備え、被吐出媒体101に対して液体を吐出する装置であって、キャップ部材21は、ノズル面12に対し、複数のノズル列11の全体を覆う第一の位置、及び少なくとも一つのノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で被吐出媒体101に対して液体を吐出することができる。
被吐出媒体101に対して「液体を吐出する」とは、例えば、被吐出媒体101にインクを吐出して印刷を行うことを意味する。
すなわち、本実施形態の液体を吐出する装置は、キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で印刷を行うことができる。
【0031】
本実施形態の例を図5図7に示す。
図5は、キャップ部材21がノズル面12に対し、複数のノズル列(11a、11b)の全体を覆う第一の位置で当接している状態を示す模式的に示した図である。図5(A)は液体吐出ヘッド1の短手方向の断面図、図5(B)は液体吐出ヘッドをノズル面側から見た図である。
【0032】
図5に示すように、キャップ部材21が複数のノズル列11を被うことにより、吐出動作をしていないノズル列11の乾燥を防止し、次の吐出動作を行う際の吐出不良を予防することができる。
【0033】
図6及び図7は、キャップ部材21がノズル面12に対し、少なくとも一つのノズル列が露出する第二の位置で当接している状態を模式的に示した図である。各図の(A)は液体吐出ヘッド1の短手方向の断面図、(B)は液体吐出ヘッドをノズル面側から見た図である。
キャップ部材21が第二の位置に当接した状態で液体の吐出(以下、「印刷」という)が行われており、ノズル10からは液体14が吐出されている。
【0034】
図6はすべてのノズル列(11a及び11b)が露出している。各ノズル列(11a、11b)に同一の液体が供給されている場合には、例えば、一方のノズル列が劣化した後、他方のノズル列に切り換えて印刷を継続することが可能となる。
【0035】
図7は、使用する一方のノズル列11aのみが露出している。使用しないノズル列11bをキャップ部材21で覆うことにより、ノズル列11bの乾燥を防止することができる。
【0036】
(第三の実施形態)
本実施形態の液体を吐出する装置は、ノズル面12に、被吐出媒体101に液体を吐出するノズル列11とともに、被吐出媒体101に吐出する液体とは異なる液体を供給するノズル列11を有している。
「被吐出媒体に吐出する液体とは異なる液体」とは、被吐出媒体へ吐出されない、具体的には印刷には用いられない液体を意味し、例えば、保湿液や洗浄液等の液体が挙げられる。以下、これらの液体を「機能液」ともいう。
保湿液がノズル面12に供給されることにより、ノズル面12周囲及びキャップ部材21内部の雰囲気湿度を高めることができる。洗浄液がノズル面12に供給されることにより、ノズル面12やキャップ部材21に付着した液体等の汚れの除去が容易となる。
【0037】
例えば、図7に示した例において、一方のノズル列11aから印刷のための液体が吐出され、他方のノズル列11bから機能液が吐出される態様であってもよい。
【0038】
本実施形態の液体を吐出する装置は、ノズル面12に、被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有し、キャップ部材21は、ノズル面12に対し、孔部のみを覆う第三の位置で当接することができる。
この場合、図7に示すキャップ部材21の位置が、第三の位置に相当する。
【0039】
図7の例において、キャップ部材21が覆っているノズル列11bが保湿液を吐出する孔部である場合、印刷中にキャップ部材21の内部に保湿液を供給して湿潤な雰囲気とすることができる。
また、図7の例において、キャップ部材21が覆っているノズル列11bが洗浄液を吐出する孔部である場合、印刷中にキャップ部材21の内部を洗浄することができる。
【0040】
(第四の実施形態)
本実施形態の液体を吐出する装置は、図8に示すように、液体吐出ヘッド1のノズル面12が、水平面に対して傾斜して配置されている。
図8(A)に示すように、キャップ部材21がノズル面12と当接する第一の位置(キャップ部材21A、図8(B))は、第二の位置(キャップ部材21B、図8(C))よりも鉛直方向において高い位置である。
【0041】
また、ノズル面12に、被吐出媒体101に吐出する液体14とは異なる液体を供給する孔部13を有している。孔部13からは、被吐出媒体101に吐出する液体14は吐出されない。
本実施形態では、図8(A)に示すように、キャップ部材21の第一の位置は、第二の位置からh2で示す高さの位置にあり、孔部13からh1で示す高さの位置にある。
【0042】
図8(B)に示すように、キャップ部材21が第一の位置にあるとき、キャップ部材21がノズル列11を被うことにより、吐出動作をしていないノズル列11の乾燥を防止し、次の吐出動作を行う際の吐出不良を予防することができる。
【0043】
図8(C)に示すように、キャップ部材21が第二の位置にあるとき、ノズル10から液体14が吐出されて印刷が行われる。
また、孔部13から機能液が吐出されることにより、矢印15で示すように、ノズル面12の勾配にそって機能液がキャップ部材21にも供給される。
例えば、機能液が洗浄液である場合、ノズル面12及びキャップの外周面を洗浄することができる。なお、傾斜した下端側に機能液の回収手段を備えることが好ましい。
【0044】
図8(C)に示すように、印刷と同時に機能液の供給を行うことができ、洗浄等の動作を並行して行うことができるため、生産性を低下させることなくキャップ部材21の清掃を行うことができる。
【0045】
(第五の実施形態)
本実施形態の液体を吐出する装置は、図9(A)に示すように、ノズル面12は、少なくとも一部に水平面に対する傾斜を有し、キャップ部材21がノズル面12と当接する第一の位置(キャップ部材21A、図9(B))は、第二の位置(キャップ部材21B、図9(C))よりも鉛直方向において高い位置である。
また、ノズル面12に、被吐出媒体101に吐出する液体14とは異なる液体を供給する孔部13を有している。孔部13からは、被吐出媒体101に吐出する液体14は吐出されない。
【0046】
本実施形態では、図9(A)に示すように、キャップ部材21の第一の位置は、第二の位置よりもh3で示す分、高い位置にある。同様にキャップ部材21の第一の位置は、孔部13よりも高い位置にある。
【0047】
図9(B)に示すように、キャップ部材21が第一の位置にあるとき、キャップ部材21がノズル列11を被うことにより、吐出動作をしていないノズル列11の乾燥を防止し、次の吐出動作を行う際の吐出不良を予防することができる。
【0048】
図9(C)に示すように、キャップ部材21が第二の位置にあるとき、ノズル列11から液体14が吐出されて印刷が行われる。
また、液体14が吐出されるノズル列11は孔部13よりも高い位置にあるため、機能液がノズル列11に流れこむことがない。
孔部13から機能液が吐出されることにより、ノズル面12にそって機能液がキャップ部材21にも供給される。
例えば、機能液が洗浄液である場合、ノズル面12及びキャップの外周面を洗浄することができる。
【0049】
以上のように、本発明に係る液体を吐出する装置は、液体吐出ヘッド1のノズル面12が、印刷動作時に使用するノズル列11(ノズル10)を露出させた状態においてキャップ部材21を当接させる領域を備えているため、別途部材や機構を設けることなくキャップ部材21の内部を密閉することができ、乾燥を防止することができる。
また、ノズル面12を払拭する部材によるクリーニングによって、ノズル面12に転写した液体等の汚れを除去することができるため、キャップ部材21のための部材や機構を設ける必要がない。
すなわち、装置の大型化や機構の複雑化を招くことなく、キャップを介した汚染やキャップ内部の乾燥を防止することができる。
【0050】
また、複数のノズル列を有する態様においては、印刷時に必要なノズル列のみをキャップ部材21により選択的に覆うことができるため、使用しないノズル列の乾燥とキャップ部材21の内部の乾燥を同時に防止することができる。
【0051】
機能液を供給する孔部13を備える態様においては、キャップ部材21のノズル面12との当接部へ機能液を供給することができる。また、機能液として洗浄液を供給する態様においては、孔部13の配設位置を調整することにより、キャップ部材21の外周面の汚れを清掃することも可能となる。キャップ部材21とノズル面12との当接部の内外の清浄度を長期にわたって維持することができる。
【0052】
また、キャップ部材21の移動はノズル面12上に限定され、ノズル列11の近傍において行われるため、液体吐出ヘッド1に対する相対移動量が小さくてすむ。
【0053】
キャップ部材21の内部に残留した液体の乾燥を防止し、吸引性能の維持、キャップ部材21を湿潤化するためのクリーニング回数を低減することができ、クリーニングの簡略化、吸引不良等の防止につながり、生産性向上も実現することができる。
【0054】
次に、本発明を適用することができる液体を吐出する装置の他の例について図10を参照して説明する。
図10は液体を吐出する装置の一例としての印刷装置の概略説明図である。
【0055】
この液体を吐出する装置である印刷装置500は、連続体510を搬入する搬入手段501と、搬入手段501から搬入された連帳紙、シート材などの連続体510を印刷手段505に案内搬送する案内搬送手段503と、連続体510に対して液体を吐出して画像を形成する印刷を行う印刷手段505と、連続体510を乾燥する乾燥手段507と、連続体510を搬出する搬出手段509などを備えている。
連続体510は搬入手段501の元巻きローラ511から送り出され、搬入手段501、案内搬送手段503、乾燥手段507、搬出手段509の各ローラによって案内、搬送されて、搬出手段509の巻取りローラ591にて巻き取られる。
【0056】
この連続体510は、印刷手段505において、搬送ガイド部材559上をヘッドユニット550及びヘッドユニット555に対向して搬送され、ヘッドユニット550から吐出される液体によって画像が形成され、ヘッドユニット555から吐出される処理液で後処理が行われる。
【0057】
ここで、ヘッドユニット550には、例えば、搬送方向上流側から、4色分のヘッドアレイ551A、551B、551C、551D(以下、色の区別しないときは「ヘッドアレイ551」という。)が配置されている。
各ヘッドアレイ551は、それぞれ、搬送される連続体510に対してブラックK,シアンC、マゼンタM、イエローYの液体を吐出する。なお、色の種類及び数はこれに限るものではない。
【0058】
ヘッドユニット550は、メンテナンス手段として液体吐出ヘッド1のノズル面に当接してノズル面を覆う図示しないキャップ部材を備えている。
キャップ部材は、ノズル面に対し、ノズル列の全体を覆う第一の位置、及びノズル列の少なくとも一部が露出する第二の位置で当接し、キャップ部材が第二の位置に当接した状態で印刷を行うことができる。
【0059】
上述した液体を吐出する装置の例は、一実施形態を示すものであり、これらに限るものではない。
「液体を吐出する装置」は、液体吐出ヘッドを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置のことであり、液体が付着可能なものに対して液体を吐出することが可能な装置である。
【0060】
「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するもの等を意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、糸、布等の被記録媒体、電子基板、圧電素子等の電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セル等の媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0061】
「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等、液体が一時的でも付着可能であればよい。
また、「液体」は、インク、処理液、DNA試料、レジスト、パターン材料、結着剤、造形液、又は、アミノ酸、たんぱく質、カルシウムを含む溶液及び分散液等も含まれる。
【0062】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1> 液体が吐出されるノズル列をノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して覆うキャップ部材とを備え、被吐出媒体に対して前記液体を吐出する装置であって、
前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、前記ノズル列の全体を覆う第一の位置、及び前記ノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、
前記キャップ部材が第二の位置に当接した状態で前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出することを特徴とする液体を吐出する装置である。
<2> 液体が吐出される複数のノズル列をノズル面に有する液体吐出ヘッドと、前記ノズル面に当接して覆うキャップ部材とを備え、被吐出媒体に対して前記液体を吐出する装置であって、
前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、複数の前記ノズル列の全体を覆う第一の位置、及び少なくとも一つの前記ノズル列が露出する第二の位置のいずれかで当接し、
前記キャップ部材が第二の位置に当接した状態で前記被吐出媒体に対して前記液体を吐出することを特徴とする液体を吐出する装置である。
<3> 前記キャップ部材は、第一の位置と第二の位置との間を前記ノズル面に当接したまま移動することを特徴とする前記<1>または<2>に記載の液体を吐出する装置である。
<4> 前記液体吐出ヘッドに対して相対移動して前記ノズル面を払拭する払拭部材を備え、
前記キャップ部材が前記ノズル面と当接する第二の位置は、前記払拭部材の払拭方向において第一の位置よりも下流側にあることを特徴とする前記<1>から<3>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<5> 前記ノズル面は、少なくとも一部に水平面に対する傾斜を有し、
前記キャップ部材が前記ノズル面と当接する第一の位置は、第二の位置よりも鉛直方向において高い位置であることを特徴とする前記<1>から<4>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<6> 前記ノズル面に、前記被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有することを特徴とする前記<5>に記載の液体を吐出する装置である。
<7> 前記ノズル面は、水平面に対して傾斜して配置され、
前記ノズル面に、前記被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有し、
前記孔部は、前記キャップ部材が前記ノズル面と当接する第二の位置よりも鉛直方向において高い位置にあることを特徴とする前記<1>から<6>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
<8> 前記ノズル面に、前記被吐出媒体に吐出する前記液体とは異なる液体を供給する孔部を有し、
前記キャップ部材は、前記ノズル面に対し、前記孔部のみを覆う第三の位置で当接することを特徴とする前記<1>から<7>のいずれかに記載の液体を吐出する装置である。
【符号の説明】
【0063】
1 液体吐出ヘッド
2 個別維持ユニット
10 ノズル
11 ノズル列
12 ノズル面
13 孔部
14 液体
15 機能液
21 キャップ部材
101 被吐出媒体
103 液体付与部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0064】
【特許文献1】特開平11-291509号公報
【特許文献2】特開2002-316421号公報
【特許文献3】特許第6683153号公報
【特許文献4】特許第5929266号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10