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特開2024-48241発光アレイ、発光装置、測定装置及び発光アレイの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048241
(43)【公開日】2024-04-08
(54)【発明の名称】発光アレイ、発光装置、測定装置及び発光アレイの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 5/026 20060101AFI20240401BHJP
   H01S 5/42 20060101ALI20240401BHJP
   G01B 11/25 20060101ALI20240401BHJP
【FI】
H01S5/026
H01S5/42
G01B11/25 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154168
(22)【出願日】2022-09-27
(71)【出願人】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士フイルムビジネスイノベーション株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】井口 大介
(72)【発明者】
【氏名】竹山 慶
(72)【発明者】
【氏名】大野 誠治
(72)【発明者】
【氏名】崎田 智明
(72)【発明者】
【氏名】近藤 崇
(72)【発明者】
【氏名】早川 純一朗
【テーマコード(参考)】
2F065
5F173
【Fターム(参考)】
2F065AA04
2F065AA06
2F065AA53
2F065BB05
2F065DD06
2F065FF11
2F065GG04
2F065HH04
2F065JJ03
2F065MM16
2F065PP22
2F065QQ03
2F065QQ21
2F065QQ28
2F065QQ31
2F065UU06
5F173AC35
5F173AC52
5F173AD04
5F173AD30
(57)【要約】
【課題】発光パルスの波形に対する容量の影響を抑制した発光アレイなどを提供する。
【解決手段】発光アレイは、発光ブロックを複数有する発光部と、外部に設けられた基準部から供給される基準電位を基準に動作し、発光させる発光ブロックを選択する選択部と、発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れている間、選択部と基準部との接続を切り離す切り離し部とを備える。
【選択図】図16
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発光ブロックを複数有する発光部と、
外部に設けられた基準部から供給される基準電位を基準に動作し、発光させる前記発光ブロックを選択する選択部と、
前記発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れている間、前記選択部と前記基準部との接続を切り離す切り離し部と
を備える発光アレイ。
【請求項2】
前記切り離し部は、第1サイリスタと抵抗とを含んで構成され、当該第1サイリスタがオンからオフに移行することで、前記接続を切り離すことを特徴とする請求項1に記載の発光アレイ。
【請求項3】
前記選択部は、オン状態が転送される第2サイリスタを複数含み、
前記第2サイリスタと、前記第1サイリスタとは、共通の半導体層を有することを特徴とする請求項2に記載の発光アレイ。
【請求項4】
前記第1サイリスタは、半導体層と、当該半導体層上の極性の異なる2層の半導体層の領域と、当該半導体層上の極性の異なる1層の半導体層の領域とで構成されることを特徴とする請求項2に記載の発光アレイ。
【請求項5】
前記切り離し部は、前記発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れると、オンからオフに移行して、前記接続を切り離すことを特徴とする請求項1に記載の発光アレイ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光アレイと、
オンになることで、前記発光アレイの前記発光部にローサイド駆動により発光電流を流して駆動する駆動部と
を備える発光装置。
【請求項7】
請求項6に記載された発光装置と、
前記発光装置の前記発光部から出射され、被測定物で反射された光を受光する受光部と、を備え、
前記被測定物の三次元形状を測定する測定装置。
【請求項8】
基板上に、発光素子が構成される第1積層半導体層を積層する工程と、
前記第1積層半導体層上に、サイリスタが構成される第2積層半導体層を積層する工程と、
前記第2積層半導体層及び前記第1積層半導体層を加工して、前記発光素子を含む発光ブロックと、発光させる当該発光ブロックを選択する選択部及び外部に設けられ基準電位を供給する基準部との接続を切り離す切り離し部と、を分離する工程と、
前記第2積層半導体層を加工して、前記切り離し部に含まれる第1サイリスタと、前記選択部に含まれる第2サイリスタとを形成する工程と
を含む発光アレイの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光アレイ、発光装置、測定装置及び発光アレイの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、基板と、前記基板上に設けられ、当該基板の表面と交差する方向に光を出射する複数の発光素子と、複数の前記発光素子上にそれぞれが積層され、オン状態になることで、当該発光素子を発光、又は、発光量を増加させるように駆動する複数のサイリスタと、を備え、前記サイリスタは、前記発光素子の当該サイリスタへ向かう光の経路に開口部を有する発光部品が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-57652号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ToF(Time of Flight)法を用いて被測定物の三次元形状を測定する測定装置などでは、Aオーダの発光電流で、数百psオーダの立ち下がり又は及び立ち上がりの発光パルスを発生する発光装置が求められる。しかし、発光装置において、発光パルスを発生する発光アレイに付随する容量(電気容量)に蓄積される電荷により、光パルスの立ち下がり又は及び立ち上がりが遅くなることがある。
本発明は、発光パルスの波形に対する容量の影響を抑制した発光アレイなどを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載の発明は、発光ブロックを複数有する発光部と、外部に設けられた基準部から供給される基準電位を基準に動作し、発光させる前記発光ブロックを選択する選択部と、前記発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れている間、前記選択部と前記基準部との接続を切り離す切り離し部とを備える発光アレイである。
請求項2に記載の発明は、前記切り離し部は、第1サイリスタと抵抗とを含んで構成され、当該第1サイリスタがオンからオフに移行することで、前記接続を切り離すことを特徴とする請求項1に記載の発光アレイである。
請求項3に記載の発明は、前記選択部は、オン状態が転送される第2サイリスタを複数含み、前記第2サイリスタと、前記第1サイリスタとは、共通の半導体層を有することを特徴とする請求項2に記載の発光アレイである。
請求項4に記載の発明は、前記第1サイリスタは、半導体層と、当該半導体層上の極性の異なる2層の半導体層の領域と、当該半導体層上の極性の異なる1層の半導体層の領域とで構成されることを特徴とする請求項2に記載の発光アレイである。
請求項5に記載の発明は、前記切り離し部は、前記発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れると、オンからオフに移行して、前記接続を切り離すことを特徴とする請求項1に記載の発光アレイである。
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の発光アレイと、オンになることで、前記発光アレイの前記発光部にローサイド駆動により発光電流を流して駆動する駆動部とを備える発光装置である。
請求項7に記載の発明は、請求項6に記載された発光装置と、前記発光装置の前記発光部から出射され、被測定物で反射された光を受光する受光部と、を備え、前記被測定物の三次元形状を測定する測定装置である。
請求項8に記載の発明は、基板上に、発光素子が構成される第1積層半導体層を積層する工程と、前記第1積層半導体層上に、サイリスタが構成される第2積層半導体層を積層する工程と、前記第2積層半導体層及び前記第1積層半導体層を加工して、前記発光素子を含む発光ブロックと、発光させる当該発光ブロックを選択する選択部及び外部に設けられ基準電位を供給する基準部との接続を切り離す切り離し部と、を分離する工程と、前記第2積層半導体層を加工して、前記切り離し部に含まれる第1サイリスタと、前記選択部に含まれる第2サイリスタとを形成する工程とを含む発光アレイの製造方法である。
【発明の効果】
【0006】
請求項1に記載の発明によれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制できる。
請求項2に記載の発明によれば、サイリスタの動作で切り離しができる。
請求項3に記載の発明によれば、共通の半導体層を有さない場合に比べ、切り離し部を選択部と一つの半導体部品内に作り込める。
請求項4に記載の発明によれば、積層構造によりモノリシックに構成される。
請求項5に記載の発明によれば、外部からの制御を要しない。
請求項6に記載の発明によれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制できる。
請求項7に記載の発明によれば、三次元形状を測定できる測定装置が提供される。
請求項8に記載の発明によれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制された発光アレイが製造される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】測定装置の構成を説明するブロック図である。
図2】発光装置の発光アレイが光を照射する測距領域を説明する斜視図である。(a)は、本実施の形態が適用される分割照射方式、(b)は、比較のために示す従来の一括照射方式である。
図3】発光アレイの平面図の一例を説明する図である。
図4】発光アレイにおける発光部の点灯方式について説明する図である。(a)は、発光部の発光ブロックを順に点灯させる順次点灯方式、(b)は、発光部の任意の複数の発光ブロックを並行して点灯させる複数点灯方式、(c)は、発光部の全ての発光ブロックを並行して点灯させる全点灯方式である。
図5】本実施の形態が適用される発光装置の等価回路の一例である。
図6】発光アレイの平面レイアウトの一例を説明する図である。
図7】発光アレイの断面の一例を説明する図である。(a)は、図6のVIIA-V11A線での断面、(b)は、図6のVIIB-VIIB線での断面である。
図8】比較例として示す本実施の形態が適用されない発光アレイ(比較例の発光アレイ)を用いた発光装置(比較例の発光装置)の等価回路である。
図9】シフトサイリスタ、結合トランジスタ、発光制御サイリスタ及びVCSELにより、比較例の発光アレイの基本的な動作を説明する図である。(a)は、等価回路、(b)は、シフトサイリスタ及び結合トランジスタの部分における断面である。
図10】発光パルス波形を示す図である。(a)、(b)は、比較例の発光アレイを用いた発光装置による発光パルス波形、(c)は、シフト部を備えない発光アレイを用いた発光装置による発光パルス波形である。
図11】比較例の発光アレイの拡大断面図、及び拡大断面図で示された部分の等価回路である。(a)は、拡大断面図、(b)は、拡大断面図で示された部分の等価回路である。
図12】比較例の発光装置において、PN接合によって構成される容量が発光パルス波形に及ぼす影響を説明する図である。(a)は、ドライバがオンである場合、(b)は、ドライバをオンからオフに移行させた場合、(c)は、ドライバがオフである場合、(d)は、ドライバをオフからオンに移行させた場合である。
図13】PN接合によって構成される容量の影響を評価するシミュレーションに用いた回路モデルである。(a)は、比較例の発光装置の回路モデル、(b)は、シフト部を備えない発光アレイを用いた発光装置(シフト部を備えない発光装置)の回路モデルである。
図14】シミュレーションにより求めた発光パルス波形である。(a)は、図13(a)の比較例の発光装置の場合、(b)は、図13(b)のシフト部を備えない発光アレイを用いた発光装置(シフト部を備えない発光装置)の場合である。
図15】本実施の形態が適用される発光装置の動作を説明する図である。(a)は、ドライバがオンである場合、(b)は、ドライバをオンからオフに移行させた場合、(c)は、ドライバがオフである場合、(d)は、ドライバをオフからオンに移行させた場合である。
図16】本実施の形態が適用される発光アレイにおいて、切り離しサイリスタの構造を説明する断面図である。
図17】本実施の形態が適用される切り離し部の動作をシミュレーションした回路モデルである。(a)は、ドライバがオフである場合、(b)は、ドライバがオンになった瞬間を示す。
図18】シミュレーションにより求めた発光パルス波形である。(a)は、本実施の形態が適用される発光装置の場合、(b)は、シフト部を備えない発光アレイを用いた発光装置の場合である。
図19】本実施の形態が適用される発光アレイの製造方法を説明する工程図である。(a)は、積層半導体層形成工程、(b)は、分離及び電流阻止部形成工程、(c)は、シフト部及び切り離し部における分離工程である。
図20】本実施の形態が適用される発光アレイの製造方法を説明する工程図である。(d)は、n型の半導体層露出工程、(e)は、結合トランジスタ及び切り離しサイリスタ形成工程、(f)は、nオーミック電極、pオーミック電極、及び基板電極形成工程である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
ToF(Time of Flight)法に基づいて、被測定物の三次元形状を測定する測定装置は、光の飛行時間により被測定物の三次元形状を測定する。つまり、ToF法では、発光装置が光を出射したタイミングから、3Dセンサが被測定物で反射した光を受光するタイミングまでの光の飛行時間から、発光装置から被測定物までの距離を算出し、被測定物の三次元形状を求める。被測定物の三次元形状を精度よく測定するには、数Aの発光電流で、数百psの立ち上がり及び立ち下り時間の光パルスが求められる。
【0009】
(測定装置100)
図1は、測定装置1の構成を説明するブロック図である。測定装置1は、発光装置10と、三次元センサ20(以下では、3Dセンサ20と表記する。)とを備える。発光装置10は、発光アレイ100と駆動部200と制御部250とを備える。なお、図1は、測定装置1に加え、測定制御部2を示している。
【0010】
発光アレイ100は、被測定物に向けてパルス状の光を出射する。駆動部200は、測定制御部2の制御に基づいて発光アレイ100に発光のための電流(以下では、発光電流と表記する。)を供給する。発光アレイに発光電流を供給することを、発光アレイを駆動すると表記する。制御部250は、測定制御部2の制御に基づいて発光アレイ100の発光/消光を制御する。3Dセンサ20は、発光アレイ100が出射し、被測定物で反射された光(反射光)を受光する。そして、3Dセンサ20は、光が出射されたタイミングから反射光を受光するタイミングまでの時間(光の飛行時間)に基づいた、被測定物までの距離に関する情報(距離情報)を出力する。3Dセンサ20は、受光部の一例である。なお、発光アレイ100が出射する光がパルス状であることを示す場合には、発光パルスと表記し、発光パルスの波形を発光パルス波形と表記する。また、発光アレイ100が発光することを点灯すると表記することがある。同様に、発光アレイ100が発光を停止することを消光と表記し、また消灯と表記することがある。つまり、発光と点灯とは同義であり、消光と消灯とは同義である。
【0011】
測定制御部2は、CPU、ROM、RAMなどを含むコンピュータとして構成され、測定装置1を制御するとともに、3Dセンサ20から距離情報を取得し、取得した距離情報に基づいて、被測定物までの距離を算出する。そして、測定制御部2は、算出された被測定物までの距離から被測定物の三次元形状(以下では、3D形状と表記する。)を特定する。被測定物の3D形状を特定することを、三次元測定(三次元計測)、3D測定(3D計測)又は3Dセンシングと表記することがある。なお、測定装置1は、測定制御部2を含むとしてもよい。
【0012】
このような測定装置1は、特定された3D形状から被測定物を認識することに適用される。例えば、測定装置1は、携帯型情報処理装置などに搭載され、アクセスしようとするユーザの認識などに利用される。つまり、測定装置1は、アクセスしたユーザの顔の3D形状を特定し、アクセスすることが許可されているか否かを識別し、アクセスが許可されているユーザであると認識された場合にのみ、自装置(携帯型情報処理装置)の使用を許可する。
また、このような測定装置1は、携帯型情報処理装置以外のパーソナルコンピュータ(PC)などの情報処理装置に適用される。そして、拡張現実(AR:Augmented Reality)など、継続的に被測定物の3D形状を測定する場合にも適用される。
【0013】
(分割照射)
図2は、発光装置10の発光アレイ100が光を照射する測距領域3を説明する斜視図である。図2(a)は、本実施の形態が適用される分割照射方式、図2(b)は、比較のために示す従来の一括照射方式である。測距領域3は、被測定物の3D形状を測定するために、発光アレイ100が出射する光が照射される範囲である。測距領域3に被測定物が存在する場合に、被測定物の3D形状が測定される。
【0014】
図2(a)に示す測距領域3は、複数の測距区画30に分けられている。なお、図2(a)では、測距領域3は、紙面の横方向に4個、縦方向に3個が配列された合計12個の測距区画30を有している。測距区画30をそれぞれ区別する場合は、測距区画30-1、30-2、…、30-12と表記する。そして、発光アレイ100は、測距区画30に対応して、つまり測距区画30毎に光を照射する。例えば、発光装置10は、測距区画30-1、30-2、…の順に光を照射する(後述する図4(a)の順次点灯方式に対応)。同様に、3Dセンサ20は、測距区画30-1、30-2、…の順に測距区画30-1、30-2、…から反射光を受光する。なお、図2(a)では、測距区画30-1に光が照射されているとし、光が照射されていない他の測距区画30に斜線を施している。測距領域3を複数の測距区画30に分割し、測距区画30に対応して光パルスを照射することから、この照射方式を、分割照射方式と表記する。なお、分割照射方式は、上記した順に測距区画30に光が照射される場合の他、複数の測距区画30に並行して光が照射される場合を含む。
【0015】
一方、図2(b)では、測距領域3は、測距区画30に分割されず、発光アレイ100は、測距領域3の全面に一括して光を照射する。そして、3Dセンサ20は、測距領域3の全面から反射光を一括して受光する。この照射方式を、一括照射方式と表記する。
【0016】
分割照射方式では、測距領域3が分割された測距区画30に光を照射する。よって、分割照射方式は、一括照射方式に比べ、発光装置10の単位時間当たりの消費電力が小さくなる。例えば、分割照射方式は、一括照射方式に比べ、発光装置10に流れる電流が小さくなり、発光装置10の発熱が抑制される。さらに、分割照射方式は、発光装置10に流れる電流が小さいことから、一括照射方式に比べ、発光装置10が小型になる。よって、測定装置1が携帯型情報処理装置に適用された場合に、携帯型情報処理装置温度上昇が抑制される。また、携帯型情報処理装置の駆動時間が長くなる。
【0017】
図3は、発光アレイ100の平面図の一例を説明する図である。
発光アレイ100は、一例として、III-V族の化合物半導体で構成された基板(後述する図7(a)、(b)に示すn型の半導体基板80)上にエピタキシャル成長されたIII-V族の化合物半導体層が複数積層された積層半導体層により構成される。つまり、発光アレイ100は、モノリシックに構成される。例えば、発光アレイ100は、一つの半導体部品、さらに言えば1個の半導体チップとして構成される。
【0018】
発光アレイ100は、複数の発光ブロック111を備える発光部110と、シフト部120と、切り離し部130と、端子(φ1端子、φ2端子、VGA端子、VGND端子、VLD端子、V端子)とを備える。図3では、一例として、発光部110は、紙面の横方向(一方向)に4個、紙面の縦方向(一方向と直交する方向)に3個が配列された12個の発光ブロック111を備える。発光ブロック111をそれぞれ区別する場合には、発光ブロック111-1、111-2、…、111-12と表記する。なお、発光ブロック111は、発光領域と表記してもよい。
【0019】
発光ブロック111は、発光/消光(点灯/消灯と表記することがある。)が制御される単位である。一例として、各発光ブロック111は、41個の発光素子を備える。1個の発光ブロック111に含まれる発光素子は、全体として発光/消光が制御される。なお、発光ブロック111は、1個の発光素子を備えるとしてもよいし、41個以外の個数の発光素子を備えてもよい。また、発光ブロック111における発光素子は、互いに隣接する三角形の頂点に配列(図3参照)してもよく、隣接する複数の四角形の頂点に配列するなど、他の方法で配列してもよい。
【0020】
発光素子は、一例として垂直共振器面発光レーザVCSEL(Vertical Cavity Surface Emitting Laser))を備える。以下では、発光素子は、垂直共振器面発光レーザVCSELを備えるとして説明し、VCSELと表記する。
【0021】
発光ブロック111は、図2(a)に示した測距領域3における測距区画30と1:1に対応する。例えば、発光ブロック111-1は、測距区画30-1を照射し、発光ブロック111-2は、測距区画30-2を照射する。以下同様である。なお、発光ブロック111-1が、測距区画30-12を照射するように、発光ブロック111の番号(-以降の番号)と測距区画30の番号(-以降の番号)とが逆順で対応するなど、発光ブロック111と測距区画30との組み合わせは、他の組み合わせであってもよい。
【0022】
シフト部120は、発光部110と接続され、シフト動作により点灯させる発光ブロック111を選択する。シフト部120は、選択部の一例である。切り離し部130は、シフト部120と、後述する制御部250における基準部252との間に設けられ、基準部252とシフト部120との直流的な接続を切り離す。
【0023】
φ1端子、φ2端子、VGA端子、VGND端子、VLD端子は、発光アレイ100の表面側に設けられ、V端子は、発光アレイ100の裏面側(後述する図7(a)、(b)に示すn型の半導体基板80の裏面)に設けられている。後述するように、φ1端子、φ2端子、VGA端子、VGND端子には、シフト部120を動作させる信号又は電位が供給される。VLD端子は、VCSELのpオーミック電極321に接続され、発光部110の表面側を覆うように設けられた基板電極75である(後述する図6図7(a)参照)。VLD端子から、VCSELに発光電流が供給される。
シフト部120、切り離し部130、及び基準部252については、後に詳述する。
【0024】
図4は、発光アレイ100における発光部110の点灯方式について説明する図である。図4(a)は、発光部110の発光ブロック111を順に点灯させる順次点灯方式、図4(b)は、発光部110の任意の複数の発光ブロック111を並行して点灯させる複数点灯方式、図4(c)は、発光部110の全ての発光ブロック111を並行して点灯させる全点灯方式である。なお、図4(a)、(b)において、消灯している発光ブロック111に斜線を付している。
【0025】
図4(a)の順次点灯方式では、例えば、発光ブロック111を発光ブロック111-1、111-2、…の順に点灯させる。つまり、一時には1個の発光ブロック111が点灯し、他の発光ブロック111が消灯した状態である。そして、点灯する発光ブロック111が順に移っていく。
【0026】
図4(b)の複数点灯方式では、予め選択した複数の発光ブロック111を並行して点灯させる。並行して点灯させる発光ブロック111は、任意に選択される。
【0027】
図4(c)の全点灯方式では、発光部110に含まれる全ての発光ブロック111を並行して点灯させる。この方式は、複数点灯方式において、点灯させる発光ブロック111として全ての発光ブロック111を選択した場合である。全点灯方式は、図2(b)に示した一括照射方式に似るが、順次点灯方式又は及び複数点灯方式と組み合わせて用いるとよい。例えば、予め、測距領域3に被測定物が存在するか否かを検知したい場合に、全点灯により測距領域3全面を照射し、被測定物が存在するか否かを判断する。そして、被測定物が存在すると判断される場合に、順次点灯又は複数点灯により、被測定物の3D形状を測定する。この場合、全点灯においては、照射する光の強度を順次点灯又は複数点灯に比べて弱くして、消費電力や温度上昇を抑制してもよい。
【0028】
(発光アレイ100の等価回路)
図5は、本実施の形態が適用される発光装置10の等価回路の一例である。図5では、サイリスタ及びトランジスタを記号で示し、抵抗を長方形で示す。他の場合も同様である。図1に示したように、発光装置10は、発光アレイ100と駆動部200と制御部250ととを備える。なお、発光アレイ100において、紙面の右方向を+x方向とする。
【0029】
(発光アレイ100)
発光アレイ100は、複数の発光ブロック111を有する発光部110と、シフト部120と、切り離し部130と、端子(φ1端子、φ2端子、VGA端子、VGND端子、VLD端子、V端子)とを備える。なお、図5に示す発光アレイ100では、図3で示した配置と異なり、一方側(-x方向側)の端部に端子(φ1端子、φ2端子、VGA端子、VGND端子、VLD端子、V端子)を表記している。そして、紙面の上側にシフト部120を、紙面の下側に発光部110を、VGND端子とシフト部120と間に切り離し部130を表記している。
【0030】
φ1、φ2端子には、シフト部120を動作させるシフト信号φ1、φ2が供給される。VGA端子には、シフト部120を駆動する電位(電源電位VGA)が供給される。VGND端子には、シフト部120に基準電位(ここでは、接地電位GND)が供給される。VLD端子には、発光部110のVCSELに点灯のための電流を供給する電位(発光電位VLD)が供給される。V端子は、発光アレイ100の基板(後述する図7(a)、(b)に示すn型の半導体基板80)の裏面に設けられた裏面電極(基板電極75)である。基板の電位を基板電位Vと表記する。
【0031】
図5では、発光部110の各発光ブロック111は、1個のVCSELと、1個の発光制御サイリスタSとを備えるとして説明する。VCSELと発光制御サイリスタSとは、直列接続されている。なお、図3に示したように、各発光ブロック111が複数のVCSELを備える場合には、VCSELと発光制御サイリスタSとを複数並列接続し、並行してVCSELが点灯する構成とすればよい。
【0032】
図5に示すように、発光ブロック111-1におけるVCSELをVCSEL(1)、発光制御サイリスタSを発光制御サイリスタS(1)、発光ブロック111-2におけるVCSELをVCSEL(2)、発光制御サイリスタSを発光制御サイリスタS(2)と表記する。他の発光ブロック111においても同様とする。そして、図5では、4個の発光ブロック111(発光ブロック111-1~111-4)を示している。つまり、図5では、VCSEL(1)~VCSEL(4)及び発光制御サイリスタS(1)~S(4)を示している。そして、4個のVCSEL及び4個の発光制御サイリスタSは、一方側(-x方向側)から他方側(+x方向側)に向けて配列されている。ここでは、発光素子は、直列接続された発光制御サイリスタSとVCSELとであるとする。しかし、発光素子は、発光制御サイリスタSのようなサイリスタであって、サイリスタにおけるpn接合が発光する素子であってもよい。
【0033】
シフト部120は、前述したように点灯させる発光ブロック111を選択する。ここでは、シフト部120は、シフト動作により順にオン状態がシフトするシフト回路として機能する。シフト部120は、シフトサイリスタTと、結合トランジスタQと、電源線抵抗Rgと、電流制限抵抗RLと、結合抵抗Rcとを各々複数備える。各1個のシフトサイリスタT、結合トランジスタQ、電源線抵抗Rg、電流制限抵抗RL、及び結合抵抗Rcによりシフトユニット121が構成される。図5には、4個のシフトユニット121(シフトユニット121-1~121-4)が一方側(-x方向側)から他方側(+x方向側)に向けて配列されている。シフトユニット121-1におけるシフトサイリスタTをシフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQを結合トランジスタQ(1)、シフトユニット121-2におけるシフトサイリスタTをシフトサイリスタT(2)、結合トランジスタQを結合トランジスタQ(2)と表記する。他のシフトユニット121においても同様とする。つまり、図5では、シフトサイリスタT(1)~T(4)及び結合トランジスタQ(1)~Q(4)を示している。電源線抵抗Rgと、電流制限抵抗RLと、結合抵抗Rcには、番号を付さない。シフト部120は、一方側(-x方向側)の端部に、電源線抵抗Rgと、スタート抵抗Rsとを備える。さらに、シフト部120は、電流制限抵抗R1、R2を備える。シフトサイリスタは、第2サイリスタの一例である。
【0034】
シフトユニット121において、シフトサイリスタTと結合トランジスタQとが接続されている。シフトユニット121における結合トランジスタQは、発光ブロック111の発光制御サイリスタSに接続されている。つまり、( )に示す番号が同じシフトサイリスタTと結合トランジスタQとが接続され、番号が同じ結合トランジスタQと発光制御サイリスタSとが接続されている。
【0035】
切り離し部130は、切り離しサイリスタUと抵抗Ruとを備える。切り離しサイリスタは、第1サイリスタの一例である。
【0036】
次に接続関係を説明する。
発光アレイ100において、VGA端子は電源線71に、φ1端子はシフト信号線72-1に、φ2端子はシフト信号線72-2に、VLD端子は発光電位線74に、VGND端子は基準電位線76に接続されている。V端子は基板電極75である。シフトユニット121のシフトサイリスタTのカソードK及び結合トランジスタQのエミッタEは、シフト部基準電位線73に接続されている。なお、図5では、シフト部基準電位線73として線で示しているが、後述する図7(a)、(b)に示すように、シフト部基準電位線73は、n型の半導体層85であって、シフト部120の動作時に電位が基準電位である接地電位GNDに設定される。なお、n型の半導体層85は、p型の半導体層83上にトンネル接合層84を介して設けられている。よって、n型の半導体層85とp型の半導体層83とは同電位になっている。
なお、シフト信号線72-1、72-2をそれぞれ区別しない場合は、シフト信号線72と表記する。
【0037】
後に詳述するが、シフト部基準電位線73(n型の半導体層85)と基板電極75(n型の半導体基板80)との間には、pn接合と、pn接合に付随する容量Cが構成される。シフト部基準電位線73(n型の半導体層85)と基板電極75(n型の半導体基板80)との間のpn接合を、PN接合と表記する。図5では、PN接合及び容量Cを破線で示している。
【0038】
シフトサイリスタT及び発光制御サイリスタSは、npnp構造のサイリスタである。サイリスタは、n型のカソードK(以下では、カソードKと表記する。以下同様とする。)、p型のゲートGp(pゲートGp)、n型のゲートGn(nゲートGn)、p型のアノードA(アノードA)を備える。なお、発光制御サイリスタSは、pゲートGpを制御に用いないため、表記しない。
【0039】
結合トランジスタQは、マルチコレクタのnpnバイポーラトランジスタである。結合トランジスタQは、n型のエミッタE(エミッタE)、p型のベースB(ベースB)、n型のコレクタCf、Cs(コレクタCf、Cs)を備える。
【0040】
VCSELは、pn構造の発光素子であり、p型のアノードA(アノードA)とn型のカソードK(カソードK)とを備える。
なお、上記の符号は、サイリスタ間、結合トランジスタ間において区別しないで用いる。後述するサイリスタを構成するバイポーラトランジスタについても同様とする。ただし、サイリスタは、シングルコレクタのnpnバイポーラトランジスタとpnpバイポーラトランジスタとの組み合わせで構成されている。よって、コレクタをコレクタCと表記する。ただし、図において、上記の符号は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタ(1)、発光制御サイリスタS(1)、VCSEL(1)、切り離しサイリスタUにおいて付し、他については符号を省略することがある。
【0041】
以下では、発光制御サイリスタSを発光制御サイリスタ、シフトサイリスタTをシフトサイリスタ、結合トランジスタQを結合トランジスタと表記することがある。発光制御サイリスタSとシフトサイリスタTとを区別しないで、サイリスタと表記することがある。
【0042】
以下では、シフトユニット121-1において、接続関係を説明する。
シフトサイリスタT(1)のカソードKは、シフト部基準電位線73に接続されている。シフトサイリスタT(1)のアノードAは、シフト信号線72-1に接続されている。シフト信号線72-1は、シフト信号p1が供給されるφ1端子に接続されている。シフトサイリスタT(1)のnゲートGnは、直列接続されたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点に接続されている。スタート抵抗Rsの他方(接続点でない方)は、シフト信号線72-2に接続されている。電源線抵抗Rgの他方(接続点でない方)は、電源線71に接続されている。電源線71は、電源電位VGAが供給されるVGA端子に接続されている。
【0043】
結合トランジスタQ(1)のベースBは、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpに接続されている。結合トランジスタQ(1)のエミッタEは、シフト部基準電位線73に接続されている。結合トランジスタQ(1)のコレクタCfは、直列接続された結合抵抗Rcと電源線抵抗Rgとを介して電源線71に接続されている。結合抵抗Rcと電源線抵抗Rgとの接続点は、シフトサイリスタT(2)のnゲートGnに接続されている。
【0044】
結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、電流制限抵抗RLを介して発光電位線74に接続されている。発光電位線74は、発光電位VLDが供給されるVLD端子に接続されている。
【0045】
なお、シフトサイリスタT(2)のアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。すなわち、奇数番号のシフトサイリスタTのアノードAは、シフト信号線72-1に接続され、偶数番号のシフトサイリスタTのアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフトサイリスタTのシフト信号線72-1、72-2との接続関係を除いて、番号2以上のシフトサイリスタT、結合トランジスタ、発光制御サイリスタS、及びVCSELの接続関係は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)、及びVCSEL(1)と同様である。
【0046】
次に、発光ブロック111-1において、接続関係を説明する。
発光制御サイリスタS(1)のカソードKとVCSEL(1)のアノードAとが接続されている。つまり、発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とは、直列接続されている。発光制御サイリスタS(1)のアノードAは、発光電位線74に接続されている。VCSEL(1)のカソードKは、基板電極75に接続されている。そして、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnは、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsに接続されている。
【0047】
次に、切り離し部130において、接続関係を説明する。
切り離し部130の切り離しサイリスタUは、npnp構造のサイリスタである。切り離しサイリスタUのカソードKは、基準電位線76に接続されている。基準電位線76は、VGND端子に接続されている。切り離しサイリスタUのアノードAは、抵抗Ruを介して、基板電極75に接続されている。切り離しサイリスタUのnゲートGnは、シフト部基準電位線73に接続されている。
【0048】
(駆動部200)
駆動部200は、発光信号pIを発生し、発光部110のVCSELに発光電流を供給してVCSELを発光させる。
駆動部200は、ドライバDrvを備える。ドライバDrvは、例えば、NMOSトランジスタを駆動素子として備える。NMOSトランジスタは、ソースが基準電位である接地電位GNDに接続され、ドレインがV端子(基板電極75)に接続されている。NMOSトランジスタは、ゲートに印加される発光信号pIによりオン又はオフに設定される。発光信号pIがHレベル(「H」と表記することがある。)になると、ドライバDrvがオンになる。すると、NMOSトランジスタのドレインは接地電位GND(0V)となり、発光アレイ100のV端子が接地電位GND(0V)に向かって変化する。発光信号pIがLレベル(「L」と表記することがある。)になると、ドライバDrvがオフになる。NMOSトランジスタは、定電流動作により、VCSELに発光電流を流す。なお、NMOSトランジスタの代わりに、絶縁ゲートバイポーラトランジスタIGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)などの他の素子を用いてもよい。なお、駆動部200が発光信号pIを発生するとしたが、測定制御部2から発光信号pIを受信してもよい。また、駆動部200と測定制御部2とを合わせて駆動部としてもよい。
【0049】
駆動部200は、いわゆるローサイド駆動により、発光アレイ100におけるVCSELを駆動する。なお、ローサイド駆動とは、VCSELなどの駆動対象に対して、電流経路の下流側にMOSトランジスタ等の駆動素子を位置させた構成を言う。ローサイド駆動では、上流側に駆動素子を位置させた構成をハイサイド駆動より、VCSELがより高速に駆動される。
【0050】
(制御部250)
制御部250は、電源/シフト信号部251と、基準部252と、発光電源部253とを備える。
電源/シフト信号部251は、電源電位VGAを生成するとともに、シフト信号p1、p2を生成し、発光アレイ100のシフト部120を制御する。電源/シフト信号部251は、バッファBuf1、Buf2と、電源VS1を備える。電源/シフト信号部251は、シフト信号p1、p2を生成する。バッファBuf1は、シフト信号p1を発光アレイ100のφ1端子に供給する。バッファBuf2は、シフト信号p2を発光アレイ100のφ2端子に供給する。電源VS1は、電源電位VGAを発生し、発光アレイ100のVGA端子に供給する。また、電源VS1は、バッファBuf1、Buf2の電源を兼ねている。すなわち、バッファBuf1、Buf2は、シフト信号p1、p2がHレベルのときは、ほぼ電源VS1の電圧を出力し、シフト信号p1、p2がLレベルのときはほぼ基準電位(接地電位GND(0V))を出力する。なお、バッファBuf1、Buf2の電源は、電源電位VGAとは独立した電源であってもよい。
【0051】
基準部252は、基準電位として接地電位GND(0V)を発光アレイ100のVGND端子に供給する。
発光電源部253は、電源VS2を備える。電源VS2は、発光電位VLDを発生し、発光アレイ100のVLD端子に供給する。
【0052】
なお、電源/シフト信号部251がシフト信号p1、p2を生成するとしたが、測定制御部2からこれらの信号を受信してもよい。また、制御部250と測定制御部2とを合わせて制御部としてもよい。
【0053】
(発光アレイ100の平面レイアウト及び断面構造)
図6は、発光アレイ100の平面レイアウトの一例を説明する図である。図6は、シフトサイリスタT(1)~T(4)、結合トランジスタQ(1)~Q(4)、発光制御サイリスタS(1)~S(4)及びVCSEL(1)~VCSEL(4)を中心に示している。
【0054】
発光アレイ100は、後述する図7(a)、(b)に示すように、n型の半導体基板80上に積層されたn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88により構成されている。そして、シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS、VCSEL、切り離しサイリスタU、抵抗Ruなどは、一部の半導体層がエッチングにより除去されることで、分離された複数のアイランド(島)として構成されている。アイランドはメサと表記されることがあり、アイランド(メサ)を形成するエッチングは、メサエッチングと表記されることがある。
【0055】
発光アレイ100は、シフト部120及び切り離し部130が設けられるアイランド300と、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)が設けられるアイランド301とを備える。
そして、発光アレイ100は、アイランド300上において、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)が設けられるアイランド302と、電流制限抵抗RLが設けられるアイランド303と、結合抵抗Rc及び電源線抵抗Rgが設けられるアイランド304と、スタート抵抗Rs及び電源線抵抗Rgが設けられるアイランド305と、電流制限抵抗R1、R2が設けられるアイランド306、307と、切り離しサイリスタUが設けられるアイランド308(アイランド308A、308B)と、抵抗Ruが設けられるアイランド309とを備える。
【0056】
図7は、発光アレイ100の断面の一例を説明する図である。図7(a)は、図6のVIIA-V11A線での断面、図7(b)は、図6のVIIB-VIIB線での断面である。図7(a)に示すVIIA-VIIAの断面には、発光制御サイリスタS(1)、VCSEL(1)、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、結合抵抗Rc、及び電源線抵抗Rgを示している。図7(b)に示すVIIB-VIIBの断面には、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、結合抵抗Rc、電源線抵抗Rg、及び切り離しサイリスタUの断面を示している。なお、図7(a)と図7(b)とにおいて、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、結合抵抗Rc、及び電源線抵抗Rgの部分は、共通である。
以下では、図7(a)、(b)を参照しつつ、図6の発光アレイ100のアイランドを説明する。
【0057】
発光アレイ100は、前述したように、n型の半導体基板80上に積層されたn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88により構成されている。
アイランド300は、シフト部120が設けられるアイランドであって、n型の半導体基板80上のn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85が除去されないで残されている部分である。
【0058】
図7(a)に示すように、アイランド301には、VCSEL(1)と発光制御サイリスタS(1)とが積層されて設けられている。アイランド301の周囲は、n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83、トンネル接合層84、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。p型の半導体層88上にp型の半導体層とオーミック接触しやすいpオーミック電極321が設けられている。p型の半導体層88の一部を除去して露出させたn型の半導体層87上にn型の半導体層とオーミック接触しやすいnオーミック電極331が設けられている。VCSEL(1)は、n型の半導体層81をカソードK(図5参照)、活性層82を活性層、p型の半導体層83をアノードA(図5参照)とする。発光制御サイリスタS(1)は、n型の半導体層85をカソードK、p型の半導体層86をpゲートGp(pゲート層)、n型の半導体層87をnゲートGn(nゲート層)、p型の半導体層88をアノードAとする。nオーミック電極331は、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnである。
【0059】
つまり、図7(a)に示すように、n型の半導体基板80上に、VCSEL(1)が設けられ、VCSEL(1)上に、トンネル接合層84を介して、発光制御サイリスタS(1)が積層されている。トンネル接合層84は、VCSEL(1)のp型の半導体層83と発光制御サイリスタS(1)のn型の半導体層85とが逆バイアスになって電流が流れにくくなることを抑制する。トンネル接合層84は、n型の不純物を高濃度に添加したn++層と、p型の不純物を高濃度に添加したp++層との接合であって、逆バイアスであってもトンネル効果によって電流が流れる。よって、p型の半導体層83とn型の半導体層85とは、同電位になる。
【0060】
アイランド301は、nオーミック電極331が設けられる部分を除いて、円柱状である。pオーミック電極321は、円柱状であるアイランド301のp型の半導体層88上に、円環状に設けられている。そして、エッチングにより露出させたp型の半導体層83(複数の半導体層で構成されている)の一部の層が円柱状の外周部から酸化されることで、円環状に電流が流れにくい電流阻止部βとなっている。一方、酸化されなかった中央部は、電流が流れやすい電流通過部αとなっている。そして、円環状のpオーミック電極321の中央部から光が出射される。なお、電流阻止部βは、p型の半導体層83を構成する複数の半導体層の一部に、AlAs層やAl濃度が高いAlGaAs層を設け、露出した外周部から酸化させて、Alを酸化することで構成される。VCSEL(1)の周辺部は、エッチングに起因した欠陥が多く、非発光再結合が起こりやすい。よって、電流阻止部βを設けることで、非発光再結合に消費される電力が抑制される。電流阻止部βを設けることで、低消費電力化及び光取り出し効率の向上が図れる。なお、光取り出し効率とは、電力当たりに取り出すことができる光量である。
【0061】
VCSEL(1)の光は、発光制御サイリスタS(1)を透過して出射される。なお、発光制御サイリスタS(1)(トンネル接合層84、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88)において、光が透過する部分を除去してもよい。この場合、発光制御サイリスタS(1)は、円筒状になる。このようにすると、VCSEL(1)が出射する光が発光制御サイリスタS(1)で吸収されて光量が低下することが抑制される。
【0062】
アイランド302には、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)が設けられている。アイランド302の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている(図7(a)参照)。p型の半導体層88上にpオーミック電極322が設けられている。pオーミック電極322は、シフトサイリスタT(1)のアノードAの電極(アノードA電極)であって、シフト信号p1(φ1)が供給されるシフト信号線72-1に接続されている。p型の半導体層88を除去して露出させたn型の半導体層87上にnオーミック電極332、333、334が設けられている(図7(a)では、nオーミック電極332を示す。)。nオーミック電極332、334は、結合トランジスタQ(1)のコレクタCs、Cfの電極(コレクタCf、Cs電極)である。なお、pオーミック電極322とnオーミック電極332、334との間において、n型の半導体層87が除去されている(図7(a)参照)。nオーミック電極333は、シフトサイリスタT(1)のnゲートGnの電極(nゲートGn電極)である。
【0063】
アイランド303には、電流制限抵抗RLが設けられている。アイランド303の構成は、次に説明するアイランド304(図7(a)参照)と同様である。つまり、アイランド303の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。さらに、アイランド303では、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。露出されたn型の半導体層87上に、2個のnオーミック電極335、336が設けられている。nオーミック電極335、336間におけるn型の半導体層87が電流制限抵抗RLである。
【0064】
アイランド304には、結合抵抗Rc及び電源線抵抗Rgが設けられている。アイランド304の周囲は、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。さらに、アイランド304では、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。露出させたn型の半導体層87上に、3個のnオーミック電極337、338、339が設けられている。そして、nオーミック電極337、338間におけるn型の半導体層87が結合抵抗Rc、nオーミック電極338、339間におけるn型の半導体層87が電源線抵抗Rgである。
【0065】
アイランド305には、スタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgが設けられている。アイランド305の構成は、アイランド304と同様である。
【0066】
アイランド306、307には、それぞれ電流制限抵抗R1、R2がそれぞれ設けられている。アイランド306、307の構成は、アイランド304と同様である。
【0067】
アイランド308(アイランド308A、308B)には、切り離し部130の切り離しサイリスタUが設けられている。アイランド308(アイランド308A、308B)の周囲は、p型の半導体層88、n型の半導体層87、p型の半導体層86がエッチングにより除去されている。さらに、アイランド308Aでは、p型の半導体層88及びn型の半導体層87がエッチングにより除去されている。そして、露出させたp型の半導体層86上にpオーミック電極323が設けられている。アイランド308Bでは、p型の半導体層88がエッチングにより除去されている。そして、露出させたn型の半導体層87上に、nオーミック電極340が設けられている。切り離しサイリスタUは、アイランド308Aのp型の半導体層86をアノードA、n型の半導体層85をnゲートGn、アイランド308Bのp型の半導体層86をpゲートGp、n型の半導体層87をカソードKとする。つまり、アイランド308Aのpオーミック電極323がアノードA電極、アイランド308Bのnオーミック電極340がカソードK電極である。
【0068】
アイランド309には、切り離し部130の抵抗Ruが設けられている。アイランド309は、アイランド304と同様に構成されている。そして、露出させたn型の半導体層87上に、nオーミック電極341、342が設けられている(図6参照)。nオーミック電極341、342間のn型の半導体層87が抵抗Ruである。
【0069】
露出させたn型の半導体基板80上に、nオーミック電極343が設けられている。n型の半導体基板80の裏面に基板電極75が設けられている。前述したように、基板電極75は、V端子である。V端子の電圧が基板電位Vである。
【0070】
上記では、VCSEL(1)、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)について説明したが、他のVCSEL、シフトサイリスタT、結合トランジスタQについても同様である。
【0071】
次に、接続関係を説明する。なお、図6では、接続に用いられる配線(電源線71、シフト信号線72-1、72-2、発光電位線74)を直線で示している。
アイランド301の発光制御サイリスタS(1)のアノードA電極であるpオーミック電極321は、発光電位線74に接続されている。発光電位線74は、発光電位VLDが供給されるVLD端子に接続されている。
アイランド301の発光制御サイリスタS(1)のnゲートGn電極であるnオーミック電極331は、アイランド302の結合トランジスタQ(1)のコレクタCs電極であるnオーミック電極332に接続されている。nオーミック電極332は、アイランド303の電流制限抵抗RLのnオーミック電極336に接続されている。アイランド303のnオーミック電極335は、発光電位線74に接続されている。
【0072】
アイランド302のシフトサイリスタT(1)のアノードA電極であるpオーミック電極322は、シフト信号線72-1に接続されている。シフト信号線72-1は、アイランド306に設けられた電流制限抵抗R1を介して、シフト信号p1が供給されるφ1端子に接続されている。アイランド302のシフトサイリスタT(1)のnゲートGn電極であるnオーミック電極333は、アイランド305に設けられたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点であるnオーミック電極(符号なし)に接続されている。アイランド302の結合トランジスタQ(1)のコレクタCf電極であるnオーミック電極334は、アイランド304の結合抵抗Rcの一方のnオーミック電極337に接続されている。
【0073】
アイランド304の結合抵抗Rcの他方のnオーミック電極338は、シフトサイリスタT(2)のnゲートGn電極であるnオーミック電極(符号なし)に接続されている。アイランド304の電源線抵抗Rgの他方の電極であるnオーミック電極339は、電源線71に接続されている。電源線71は、電源電位VGAが供給されるVGA端子に接続されている。
【0074】
アイランド305のスタート抵抗Rsの一方のnオーミック電極(符号なし)は、シフト信号線72-2に接続されている。アイランド305の電源線抵抗Rgの他方のnオーミック電極(符号なし)は、電源線71に接続されている。シフト信号線72-2は、アイランド307に設けられた電流制限抵抗R2を介してシフト信号p2(φ2)が供給されるφ2端子に接続されている。
【0075】
なお、シフト信号線72-1は、奇数番号のシフトサイリスタTのアノードA電極であるpオーミック電極(例えば、アイランド302のpオーミック電極322など)に接続され、シフト信号線72-2は、偶数番号のシフトサイリスタTのアノードA電極であるpオーミック電極に接続されている。シフト信号線72-1は、電流制限抵抗R1のアイランド306の一方のnオーミック電極(符号なし)に接続され、アイランド306の他方のnオーミック電極(符号なし)は、φ1端子に接続されている。シフト信号線72-2は、電流制限抵抗R2のアイランド307の一方のnオーミック電極(符号なし)に接続され、アイランド307の他方のnオーミック電極(符号なし)は、φ2端子に接続されている。
【0076】
アイランド308Aのpオーミック電極323は、アイランド309のnオーミック電極341に接続されている。アイランド308Bのnオーミック電極340は、基準電位である接地電位GNDが供給されるVGND端子に接続されている。
アイランド309のnオーミック電極342は、n型の半導体基板80上に設けられたnオーミック電極343に接続されている。
【0077】
図6図7(a)に示すように、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、結合抵抗Rc、電源線抵抗Rgは、アイランド300上に設けられている。また、図6図7(b)に示すように、切り離し部130の切り離しサイリスタUは、アイランド300上に設けられている。
【0078】
アイランド300は、積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)を有している。この積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)は、図7(a)に示したように、VCSELを構成する積層半導体層である。しかし、シフト部120において、積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)は、VCSELとして機能させていない。すなわち、VCSELが構成される積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)を除去することなく、トンネル接合層84を介して、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88が積層されて、シフト部120及び切り離し部130が構成されている。これにより、シフト部120のシフトサイリスタTと発光部110の発光制御サイリスタSとは、同じ積層半導体層(n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88)で構成される。このようにすることで、後述するように、発光アレイ100の製造プロセスが複雑になることが抑制される。ここでは、シフト部120及び切り離し部130が設けられる積層半導体層(n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83)を、VCSEL(発光素子)と等価な構造体と表記することがある。
【0079】
以上説明したように、発光アレイ100は、ひとつの半導体基板(n型の半導体基板80)において、モノリシックに構成された1個の半導体部品、さらに言えば1個の半導体チップとして構成される。
【0080】
なお、図6図7(a)では、pオーミック電極321を円環状に表記したが、図6に示すように、発光ブロック111(図5参照)間において、pオーミック電極321は、発光電位線74で接続されている。そこで、pオーミック電極321の円環状の外周部を互いに接続して、発光部110の表面を覆う電極としてもよい。図3に示すpオーミック電極321は、このようにして構成されている。
【0081】
次に、発光アレイ100の動作を説明する。
まず、比較例として示す発光アレイ100′の動作を説明する。
図8は、比較例として示す本実施の形態が適用されない発光アレイ100′(比較例の発光アレイ100′)を用いた発光装置10′(比較例の発光装置10′)の等価回路である。発光装置10′は、発光アレイ100′と駆動部200と制御部250とを備える。駆動部200及び制御部250は、図5で示した発光装置10と同様である。
【0082】
発光装置10′は、発光装置10の発光アレイ100の代わりに、発光アレイ100′を備える。発光アレイ100′は、発光アレイ100が備える切り離し部130を備えない。そして、シフト部基準電位線73は、基準電位である接地電位GNDが供給されるVGND端子に接続されている。つまり、シフト部基準電位線73は、接地電位GNDになっている。発光アレイ100′の他の構成は、発光アレイ100と同様であるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0083】
(シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、VCSEL及び発光制御サイリスタSの動作)
ここでは、発光アレイ100′の基本的な動作を説明する。
図9は、シフトサイリスタT(1)、結合トランジスタQ(1)、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)により、比較例の発光アレイ100′の基本的な動作を説明する図である。図9(a)は、等価回路、図9(b)は、シフトサイリスタT(1)及び結合トランジスタQ(1)の部分における断面である。図9(a)では、シフトサイリスタT(2)を合わせて示している。
【0084】
シフトサイリスタT、結合トランジスタQ、発光制御サイリスタS及びVCSELは、例えばGaAsなどのIII-V族の化合物半導体で構成されている。ここでは、この化合物半導体の接合の順方向電圧(拡散電位)Vdを1.5Vとし、化合物半導体で構成されるバイポーラトランジスタの飽和電圧Vsatを0.3Vとする。また、接地電位GNDを0V、電源電位VGAを5V、発光電位VLDを7Vとする。シフト信号p1、p2、発光信号pIは、Lレベルが0V(「L」(0V))で、Hレベルが5V(「H」(5V))である信号とする。
【0085】
図9(a)では、シフトサイリスタT(1)を、npnバイポーラトランジスタTr1(以下では、npnトランジスタTr1と表記する。)とpnpバイポーラトランジスタTr2(以下では、pnpトランジスタTr2と表記する。)との組み合わせで示している。npnトランジスタTr1のベースBがpnpトランジスタTr2のコレクタCに接続され、npnトランジスタTr1のコレクタCがpnpトランジスタTr2のベースBに接続されている。npnトランジスタTr1のエミッタEがシフトサイリスタT(1)のカソードK、pnpトランジスタTr2のエミッタEがシフトサイリスタT(1)のアノードAである。npnトランジスタTr1のコレクタC(pnpトランジスタTr2のベースB)がシフトサイリスタT(1)のnゲートGn、pnpトランジスタTr2のコレクタC(npnトランジスタTr1のベースB)がシフトサイリスタT(1)のpゲートGpである。
【0086】
シフトサイリスタT(1)におけるnpnトランジスタTr1と、結合トランジスタQ(1)とは、カレントミラー回路を構成する。つまり、npnトランジスタTr1に流れる電流に比例した電流が、結合トランジスタQ(1)に流れる。
【0087】
前述したように、VCSEL(1)と発光制御サイリスタS(1)とは直列接続されている。つまり、VCSEL(1)のアノードAと発光制御サイリスタS(1)のカソードKとが接続されている。発光制御サイリスタS(1)のアノードAは、発光電位線74に接続されている。VCSEL(1)のカソードKは、基板電極75に接続されている。基板電極75は、V端子であって、ドライバDrvに接続されている(図5参照)。
【0088】
シフトサイリスタT(2)のアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフト信号線72-2は、シフト信号p2が供給されるφ2端子に接続されている。以下では、シフト信号p1(φ1)、シフト信号p2(φ2)と表記する場合がある。
【0089】
まず、シフト部120におけるシフトサイリスタT(1)の動作を説明する。
電源線71が電源電位VGA(5V)に、シフト部基準電位線73が接地電位GND(0V)に、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)が「L」(0V)でシフト信号線72-1、72-2が接地電位GND(0V)に、発光信号pIが、「L」(0V)であってドライバDrvはオフであって、基板電極75に電位が設定されていないとする。この状態を、初期状態と表記する。
【0090】
この時、シフトサイリスタT(1)を構成するnpnトランジスタTr1、pnpトランジスタTr2は、オフ状態にある。シフトサイリスタT(1)のnゲートGnは、直列接続されたスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの接続点に接続されている。そして、スタート抵抗Rsの他方(接続点でない方)は、「L」(0V)のシフト信号線72-2に接続され、電源線抵抗Rgの他方(接続点でない方)は、5Vの電源線71に接続されている。よって、nゲートGnは、電圧差(5V)がスタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとで分圧された電圧になる。スタート抵抗Rsと電源線抵抗Rgとの抵抗比を、一例として1:5とすると、nゲートGnは、0.83Vになる。
【0091】
ここで、シフト信号p1(φ1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)のpnpトランジスタTr2のエミッタE(アノードA)(「H」(5V))とベースB(pゲートGp)(0.83V)との電圧差が4.17Vと、順方向電圧Vd(1.5V)以上となる。これにより、エミッタE-ベースB間が順バイアスになって、pnpトランジスタTr2がオフ状態からオン状態に移行する。すると、pnpトランジスタTr2のコレクタC(npnトランジスタTr1のベースB)は、エミッタE(「H」(5V))から飽和電圧Vsat(0.3V)を引いた4.7Vと、順方向電圧Vd(1.5V)以上となる。これにより、エミッタE-ベースB間が順バイアスになり、npnトランジスタTr1がオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタT(1)におけるnpnトランジスタTr1とpnpトランジスタTr2とがオン状態になるので、シフトサイリスタT(1)がオフ状態からオン状態に移行する。シフトサイリスタTがオフ状態からオン状態に移行することを、ターンオンと表記する。なお、シフトサイリスタTがオン状態からオフ状態に移行することを、ターンオフと表記する。
【0092】
つまり、初期状態において、シフト信号p1(φ1)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行するとシフトサイリスタT(1)がターンオンしてオフ状態からオン状態に移行する。ここでは、アノードAが「H」(5V)になるとターンオンするシフトサイリスタTの状態を、オン状態に移行可能な状態であると表記する。他の場合も同様とする。
【0093】
シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフトサイリスタT(1)において、nゲートGnは、飽和電圧Vsatの0.3Vになる。また、アノードAは、順方向電圧Vdと飽和電圧Vsatとを足した電圧(Vd+Vsat)及びシフトサイリスタTの内部抵抗での電圧低下により決まる電圧になる。ここでは、アノードAは、1.9Vになるとする。つまり、シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフト信号線72-1は、5Vから1.9Vに移行する。すると、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpは、1.6Vになる。
【0094】
以上説明したように、シフトサイリスタT(1)は、nゲートGnの電位がアノードAの電位より順方向電圧Vd(1.5V)以上低い電位となれば、ターンオンする。なお、シフトサイリスタT(1)は、シフト信号線72-1の電位(アノードA-カソードK間の電位)が、上記の1.9V未満になると、ターンオフする。例えば、アノードAが「L」(0V)になると、アノードA-カソードK間の電位差が0Vになり、シフトサイリスタT(1)がターンオフする。一方、シフト信号線72-1の電圧(アノードA-カソードK間の電位差)が1.9V以上であれば、シフトサイリスタT(1)のオン状態が保持される。よって、1.9Vを保持電圧と表記する。なお、保持電圧が印加されていても、シフトサイリスタT(1)のオン状態を保持する電流が流れないと、シフトサイリスタT(1)のオン状態は保持されない。オン状態を保持する電流を保持電流と表記する。
【0095】
次に、結合トランジスタQ(1)の動作を説明する。
初期状態では、シフトサイリスタT(1)のnpnトランジスタTr1は、オフ状態である。よって、結合トランジスタQ(1)も、オフ状態である。このとき、結合トランジスタQ(1)のエミッタEは、接地電位GND(0V)のシフト部基準電位線73に接続されている。結合トランジスタQ(1)のコレクタCfは、直列に接続された電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとを介して電源電位VGA(5V)になっている。また、コレクタCsは、電流制限抵抗RLを介して発光電位VLD(7V)になっている。
【0096】
前述したように、シフトサイリスタT(1)がターンオンすると、シフト信号線72-1は1.9Vになる。すると、シフトサイリスタT(1)のpゲートGpは、1.6Vになる。結合トランジスタQ(1)のベースBがシフトサイリスタT(1)のpゲートGpに接続されているので、結合トランジスタQ(1)のエミッタE-ベースB間が順方向電圧Vd(1.5V)以上、つまり順バイアスになる。これにより、結合トランジスタQ(1)は、オフ状態からオン状態に移行する。すると、コレクタCfは飽和電圧Vsat(0.3V)となる(なお、コレクタCsについては後述する。)。電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの接続点(シフトサイリスタT(2)のnゲートGn)は、電源線71の電圧(5V)とコレクタCfの電圧(0.3V)との電圧差(4.7V)が電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとで分圧された電圧となる。電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの抵抗比を一例として5:1とすると、電源線抵抗Rgと結合抵抗Rcとの接続点(シフトサイリスタT(2)のnゲートGn)は、1.08Vとなる。
【0097】
シフトサイリスタT(2)のアノードAは、シフト信号線72-2に接続されている。シフト信号p2(φ2)は「L」(0V)であるので、シフトサイリスタT(2)は、ターンオンしない。しかし、シフト信号p2(φ2)が「L」(0V)から「H」(5V)に移行すると、シフト信号線72-2に接続されたシフトサイリスタT(2)のアノードAが「H」(5V)になる。すると、シフトサイリスタT(2)は、アノードAとnゲートGn(1.08V)との電位差(3.92V)が順方向電圧Vd(1.5V)以上の順バイアスになってターンオンする。このとき、シフトサイリスタT(1)とシフトサイリスタT(2)とが共にオン状態になっている。次に、シフト信号p1(φ1)が「H」(5V)から「L」(0V)に移行すると、シフトサイリスタT(1)のアノードAが接地電位GND(0V)になり、シフトサイリスタT(1)がターンオフする。
【0098】
以上説明したように、初期状態において、シフト信号p1(φ1)を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させると、シフトサイリスタT(1)がターンオンする。シフト信号p1(φ1)が「H」(5V)である間に、シフト信号p2(φ2)を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させると、シフトサイリスタT(2)がターンオンする。その後、シフト信号p1(φ1)を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させるとシフトサイリスタT(1)がターンオフする。図9(a)には図示していないが、シフト信号p2(φ2)が「H」(5V)である間に、シフト信号p1(φ1)を「L」(0V)から「H」(5V)に移行させると、シフトサイリスタT(3)がターンオンする。その後、シフト信号p2(φ2)を「H」(5V)から「L」(0V)に移行させるとシフトサイリスタT(2)がターンオフする。
【0099】
つまり、シフトサイリスタTは、シフト信号p1(φ1)、p2(φ2)を「L」(0V)と「H」(5V)とで、ともに「H」(5V)である期間を設けて、交互に切り替えることで、シフトサイリスタTのオン状態がシフトしていく。このように複数の素子があって、その複数の素子のうちターンオンする素子が次々に移行していく動作がシフト動作である。また、本明細書における実施の形態では、このシフト動作によってターンオンやターンオフさせられる素子がシフト素子である。なお、素子の配列の順序とシフト動作の順序とは同じ方が距離が近いので配線等にも有利である。しかし、素子の配列の順序とシフト動作の順序とが必ずしも同じになるように構成しなくてもよい。
【0100】
上述したように、シフト部120の動作には、シフト部基準電位線73が基準電位である接地電位GND(0V)であることを要する。
【0101】
次に、発光制御サイリスタS(1)及びVCSEL(1)の動作を説明する。
結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnに接続されている。よって、結合トランジスタQ(1)がオフ状態からオン状態に移行すると、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsと同様に、コレクタCsに接続された発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnの電位が0.3Vになる。発光制御サイリスタS(1)のアノードAは、発光電位線74に接続されている。発光電位線74は、VLD端子に接続され、発光電位VLD(7V)が供給されている。よって、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間は、6.7Vとなって、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間のpn接合が順方向バイアスとなる。すると、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、発光電位VLD(7V)から発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間のpn接合を介して電流を引き込む。これにより、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、おおよそ発光電位VLD(7V)から順方向電圧Vd(1.5V)を引いた5.5Vになる。ここで、ドライバDrvがオンになると、V端子(基板電極75)が接地電位GND(0V)に向かって変化する。すると、基板電極75、つまりVCSEL(1)のカソードKが0Vに向かって変化する。これにより、発光制御サイリスタS(1)がターンオンし、直列接続された発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とに電流が流れて、VCSEL(1)が発光する。
【0102】
つまり、結合トランジスタQ(1)がオン状態になり、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnが5.5Vになった状態で、ドライバDrvがオフからオンになると、発光制御サイリスタS(1)がターンオンして、VCSEL(1)が発光する。よって、結合トランジスタQ(1)がオン状態になり、発光制御サイリスタS(1)のアノードA-nゲートGn間が順バイアス(5.5V)になった状態を、VCSEL(1)が発光可能な状態と表記する。発光制御サイリスタSは、nゲートGnの電位によって、VCSELの発光を制御するので、発光制御サイリスタと表記する。
【0103】
ドライバDrvがオンからオフになると、発光制御サイリスタS(1)とVCSEL(1)とに流れていた発光電流が遮断され、VCSEL(1)が消光する。
【0104】
以上説明したように、結合トランジスタQがオン状態である場合に、ドライバDrvがオフからオンになると、結合トランジスタQに接続された発光制御サイリスタSに直列接続されたVCSELが発光する。すなわち、結合トランジスタQがオン状態である場合とは、結合トランジスタQに接続されたシフトサイリスタTがオン状態である場合である。よって、シフトサイリスタTによって、発光させるVCSELが選択される。そして、シフトサイリスタTのオン状態をシフトさせることにより、発光させるVCSEL、つまり発光ブロック111が選択される。順にVCSEL(発光ブロック111)を選択し、発光させれば、図4(a)に示した順次点灯方式となる。
【0105】
なお、シフトサイリスタT(1)がオン状態からオフ状態に移行すると、結合トランジスタQ(1)がオン状態からオフ状態に移行する。つまり、結合トランジスタQ(1)のコレクタCsは、5.5Vを維持できない。発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnは、電流制限抵抗RLを介して発光電位VLD(7V)の発光電位線74に接続されている。このため、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnは、発光電位VLD(7V)に向かって上昇する。このとき、発光制御サイリスタS(1)のアノードとnゲートGnとの間の寄生容量Cag(容量をCagとする)が電流制限抵抗RL(抵抗値をRLとする)を介して、RL×Cagの時定数で放電する。一方、発光制御サイリスタS(1)におけるnゲートGnとpゲートGp間の寄生容量Cgg、pゲートGpとカソードKとの間の寄生容量Cg、及びVCSEL(1)における寄生容量Cvのそれぞれに蓄積された電荷は移動できないので、nゲートGnの電位が上昇した分だけ、発光制御サイリスタS(1)のpゲートGp、カソードKの電位が上昇する。
【0106】
ここで、発光信号pIが「L」(0V)から「H」(5V)になって、ドライバDrvが再びオフからオンになると、基板電位Vが急に接地電位GND(0V)に向かって変化する。つまり、基板電極75に接続されたVCSEL(1)のカソードKが急に接地電位GND(0V)に向かって変化する。このため、寄生容量Cag、Cgg、Cgkを貫通する変位電流が流れ、これをしきい電流として発光制御サイリスタS(1)がターンオンし、VCSEL(1)が点灯する。つまり、VCSEL(1)を一度点灯させると、シフトサイリスタT(1)がオン状態でなくとも、ドライバDrvが再びオンになると、VCSEL(1)が再び点灯する。この後も、VCSEL(1)は、点灯と消光とを繰り返し行える。つまり、VCSEL(1)は、複数の発光パルスを連続的に発生させられる。なお、発光制御サイリスタS(1)のカソードKの電位の上昇が小さく、接地電位GNDに近いと、ドライバDrvが再びオンになっても、発光制御サイリスタS(1)は、ターンオンしない。
【0107】
上記の状態は、シフトサイリスタT(1)をオン状態からオフ状態に移行させた場合に加え、シフト部120が動作を停止した状態、つまりオフである場合においても生じる。後述するように、シフト部基準電位線73を接地電位GNDに接続した状態から、接地電位GNDと切り離した状態に移行させると、シフト部120は動作を停止する。しかし、VCSEL(1)を一度点灯させると、この後も、VCSEL(1)は、点灯と消光とを繰り返し行える。つまり、VCSEL(1)は、複数の発光パルスを連続的に発生する。VCSELを再発光が可能な状態にすることを、メモリ効果を発現させると表記する。ここでは、VCSEL(1)で説明したが、他のVCSELでも同様である。
【0108】
以上説明したように、シフト部基準電位線73は、シフトサイリスタTのカソードK、結合トランジスタQのエミッタEに接続されている。よって、シフト部120を動作させる場合には、シフト部基準電位線73は、予め定められた電位(ここでは接地電位GND(0V))に設定されていることを要す。しかし、シフト部120によって選択されたVCSELが一度点灯した後には、シフト部基準電位線73は、接地電位GND(0V)に設定されていることを要しない。
【0109】
図9(b)に示すように、シフトサイリスタT(1)は、n型の半導体層85をカソードK、p型の半導体層86をpゲートGp、n型の半導体層87をnゲートGn、p型の半導体層88をアノードAとする。結合トランジスタQ(1)は、n型の半導体層85をエミッタE、p型の半導体層86をベースB、n型の半導体層87をコレクタCf、Csとする。そして、シフトサイリスタT(1)のカソードKと結合トランジスタQ(1)のエミッタEとは、n型の半導体層85を介して接続されている。シフトサイリスタT(1)のpゲートGpと結合トランジスタQ(1)のベースBとは、p型の半導体層86を介して接続されている。シフトサイリスタT(1)のnゲートGnと結合トランジスタQ(1)のコレクタCf、Csとは、n型の半導体層87が除去されて接続されていない。
【0110】
そして、n型の半導体層85がシフト部基準電位線73になっている。つまり、n型の半導体層85で構成されたシフトサイリスタT(1)のカソードK及び結合トランジスタQ(1)のエミッタEは、シフト部基準電位線73の接地電位GNDになっている。なお、p型の半導体層83とn型の半導体層85とは、トンネル接合層84を介して積層されている。よって、p型の半導体層83とn型の半導体層85とは、同電位になっている。
【0111】
(発光装置10′の発光パルス波形)
発光装置10′と、シフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置(不図示)とによる発光パルスの波形(以下、発光パルス波形と表記する。)について説明する。発光装置10′は、図8に示したように、シフト部120を備えた発光アレイ100′を備える。そして、発光アレイ100′では、前述したように、シフト部基準電位線73を接地電位GND(0V)に設定している。一方、シフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置は、図5(又は、図8)において、直列接続された発光制御サイリスタS及びVCSELのみを備えた発光アレイを備え、外部からの信号により、VCSELに接続された発光制御サイリスタSが制御される。
【0112】
図10は、発光パルス波形を示す図である。図10(a)、(b)は、比較例の発光アレイ100′を用いた発光装置10′による発光パルス波形、図10(c)は、シフト部を備えない発光アレイを用いた発光装置(不図示)による発光パルス波形である。図10(a)、(b)、(c)において、左側に発光パルス波形を、右側に発光パルス波形の模式図を示している。左側に示した発光パルス波形において、横軸は時間で一目盛りが5ns、縦軸は光強度(a.u.)である。
【0113】
図10(c)に示すシフト部を備えない発光アレイを用いた発光装置では、発光パルス波形は、右側の模式図に示すように、立ち上がり及び立ち下がりの傾きが一定である。
【0114】
これに対して、図10(a)に示す発光パルス波形では、右側の模式図に示すように、立ち下がりにおいて傾きが変化している。つまり、立ち下がりは、傾きが異なる2つの部分を有し、矢印γで示す部分(矢印γの部分)に引き続き、傾きが矢印γの部分より緩やかな矢印δで示す部分(矢印δの部分)を有している。ここでは、矢印δで示す部分を、肩(ショルダ)と呼ぶ。発光パルス波形の立ち下がり部分に肩(ショルダ)を有すると、肩(ショルダ)を有しない場合(図10(c)の場合)に比べ、立ち下がり時間が長くなる。
【0115】
また、図10(b)に示す発光パルス波形は、右側の模式図に示すように、矢印εで示す一つ目のピーク(矢印εのピーク)に加え、一つ目のピークの立ち下がり部分に矢印ζで示す二つ目のピーク(矢印ζのピーク)を有している。つまり、発光パルス波形の立ち下がり部分に二つ目のピーク(矢印ζのピーク)があると、二つ目のピークがない場合(図10(c)の場合)に比べ、立ち下がり時間が長くなる。
【0116】
次に、シフト部120を有する発光装置10′において、シフト部基準電位線73が基準電位である接地電位GND(0V)に設定された場合に、発光パルス波形の立ち下がり部分に肩(ショルダ)や二つ目のピークを有する理由について説明する。
【0117】
図11は、比較例の発光アレイ100′の拡大断面図、及び拡大断面図で示された部分の等価回路である。図11(a)は、拡大断面図、図7(b)は、拡大断面図で示された部分の等価回路である。図11(a)では、pn接合の関係を示すために、n型の半導体基板80をn、発光部110において、VCSELにおけるn型の半導体層81をVCSEL nと、VCSELにおけるp型の半導体層83をVCSEL pとし、VCSEL上に発光制御サイリスタSが構成されているとした。なお、活性層82及びトンネル接合層84の記載を省略している。また、シフト部120において、n型の半導体層81をnとし、p型の半導体層83をpとし、p型の半導体層83上にシフトサイリスタT、結合トランジスタQが構成されているとした。なお、活性層82及びトンネル接合層84の記載を省略している。
【0118】
図7(a)、(b)で説明したように、シフト部基準電位線73は、n型の半導体層85である。なお、n型の半導体層85は、トンネル接合層84を介してp型の半導体層83上に設けられている。トンネル接合層84は、n型の半導体層85とp型の半導体層83とが逆バイアスにならないように設けられている。よって、n型の半導体層85とp型の半導体層83とは同電位である。そこで、図11(a)では、VGND端子は、p型の半導体層83に接続されているとして表記している。つまり、シフト部基準電位線73は、n型の半導体層85としてもよく、p型の半導体層83としてもよい。また、シフト部基準電位線73は、p型の半導体層83とn型の半導体層85との積層半導体層としてもよい。
【0119】
そして、ドライバDrvにおけるNMOSトランジスタのドレインは、n型の半導体基板80の裏面に設けられた基板電極75(V端子)に接続されている。NMOSトランジスタのソースは、接地電位GND(0V)に設定されている。基板電極75の電位が基板電位Vである。
【0120】
ドライバDrvがオンであると、発光電位VLD(7V)であるVLD端子から発光制御サイリスタSとVCSELとを介してドライバDrvに向けて電流が流れる。このとき、基板電位Vは、発光部110における内部抵抗(図11(b)に示す抵抗Rv)により、例えば2V程度(~2Vと表記する。)になる。
【0121】
n型の半導体層81は、n型の半導体基板80上に設けられており、n型の半導体基板80と同電位である。n型の半導体基板80の裏面に設けられた基板電極75は、基板電位Vである。よって、n型の半導体層81も基板電位Vになる。一方、p型の半導体層83は、接地電位GND(0V)である。このため、シフト部120において、n型の半導体層81(~2V)とp型の半導体層83(0V)との間のPN接合が逆バイアスになる。このため、PN接合が容量Cを構成し、電荷を蓄積する。つまり、n型の半導体層81とp型の半導体層83との間のPN接合による容量Cに、接地電位GNDと基板電位Vとの差電圧が印加される。すなわち、VCSELをローサイド駆動すると、PN接合が逆バイアスになってしまう。
【0122】
図11(b)に示す等価回路では、発光部110は、直列接続されたVCSEL、発光制御サイリスタS及び内部抵抗Rvと、容量Cとの並列接続で表される。図5に示したように、発光部110は、直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSが複数並列に接続されて構成されている。よって、点灯させるVCSEL(と発光制御サイリスタSとの直列接続)以外のVCSELと発光制御サイリスタSとの直列接続は、発光させるVCSEL(と発光制御サイリスタSとの直列接続)に並列に接続された容量Cとなる。また、内部抵抗Rvは、直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSとを流れる電流に対する抵抗である。内部抵抗Rvは、VCSELと発光制御サイリスタSとの内部に含まれる抵抗であって、外付けで設けられている抵抗ではない。例えば、内部抵抗Rvは、VCSELの電流通過部αが小さく(狭く)なると大きくなる。また、分割照射において、発光ブロック111の数が多くなって、同時に発光させるVCSELの数が少なくなると、内部抵抗Rvは、大きくなる(図3参照)。なお、図11(b)において、VCSELと内部抵抗Rvとの接続点の電位を内部電位Vとする。
【0123】
図11(b)で示すシフト部120には、表記を簡単にするために、シフトサイリスタTのみを示している。なお、シフト部120は、発光パルス波形に関係しない。以下では、シフト部120の記載を省略する。
【0124】
図11(a)に示すように、PN接合は、シフト部120の下部に構成される。よって、発光アレイ100′において、シフト部120の占める面積が大きくなると、PN接合により構成される容量Cが大きくなる。一例として示した、図3に示した発光アレイ100の平面図から分かるように、シフト部120の占める面積は、発光部110に比べて必ずしも小さくない。つまり、シフト部120の容量Cは、発光部110の容量Cに比べて必ずしも小さくなく、発光パルス波形に影響を与える。例えば、容量Cは、200pFである。
【0125】
次に、PN接合により構成される容量Cが発光パルス波形に及ぼす影響を説明する。
図12は、比較例の発光装置10′において、PN接合によって構成される容量Cが発光パルス波形に及ぼす影響を説明する図である。図12(a)は、ドライバDrvがオンである場合、図12(b)は、ドライバDrvをオンからオフに移行させた場合、図12(c)は、ドライバDrvがオフである場合、図12(d)は、ドライバDrvをオフからオンに移行させた場合である。ここでは、発光電位VLDは7Vとする。そして、シフト部基準電位線73は接地電位GND(0V)であるVGND端子に接続されている。図12(a)、(b)、(c)、(d)において、ドライバDrvのオンをON、オフをOFFと表記する。以下同様である。また、発光電流の経路を破線で示す。
【0126】
図12(a)のドライバDrvがオンである場合、発光制御サイリスタSがオン状態で、VCSELが発光する。つまり、発光電位VLD(7V)が供給されているVLD端子から、発光制御サイリスタS、VCSEL、内部抵抗Rv、及びドライバDrvを経由してGNDに向かって電流が流れ、VCSELが発光する。順方向電圧Vdを1.5Vとすると、オン状態の発光制御サイリスタSに印加される電圧が1.5V、発光しているVCSELに印加される電圧が1.5Vとなる。よって、内部電位Vは、4Vになる。つまり、発光制御サイリスタSとVCSELとの直列接続に3Vが印加されている。このとき、基板電位Vは、2Vであるとする。よって、内部抵抗Rvには、2Vが印加されている。
【0127】
図12(b)に示すように、ドライバDrvをオンからオフに移行させると、直列接続された発光制御サイリスタS、VCSEL、及び内部抵抗Rvに流れていた電流は、容量Cと容量Cとの並列容量と、内部抵抗Rvとで決まる時定数(C+C)×Rvで立ち下がる。そして、基板電位Vは、2Vから4Vへ向かって上昇する。基板電位Vが2Vから4Vへ向かって上昇する期間においては、発光制御サイリスタSとVCSELとの直列接続に3Vが印加されているので、発光制御サイリスタSがオン状態であり、VCSELが発光を継続する。
【0128】
図12(c)に示すように、ドライバDrvがオフのとき、基板電位Vが4Vになると、発光制御サイリスタSがオン状態からオフ状態に移行し、VCSELが消光する。そして、基板電位Vの変化が停止する。このとき、内部電位Vは、基板電位Vと同じ4Vになる。
【0129】
図12(d)に示すように、ドライバDrvをオフからオンに移行させると、容量Cと容量Cとの並列容量と、ドライバDrvのオン抵抗とで決まる時定数で発光電流が立ち上がる。ドライバDrvのオン抵抗は、内部抵抗Rvに比べて小さい。よって、発光電流は、立ち下がりより短い時間で立ち上がる(速く立ち上がる)。そして、図12(a)の状態に移行する。
【0130】
以上説明したように、発光装置10′において、シフト部基準電位線73を接地電位GND(0V)に設定した場合、ドライバDrvをオンからオフに移行させた際に、発光電流が、容量Cと容量Cとの並列容量と、内部抵抗Rvとで決まる時定数(C+C)×Rvで立ち下がる。前述したように、容量Cは、容量Cに比べて必ずしも小さくない。つまり、容量Cと容量Cとが並列接続された状態(並列接続状態と表記する。)になって発光電流が流れるため、立ち下がりに肩(ショルダ)や二つ目のピークを生じ、立ち下がり特性が劣化する。
【0131】
さらに、PN接合により構成される容量Cが発光パルス波形に及ぼす影響をシミュレーションにより説明する。
図13は、PN接合によって構成される容量Cの影響を評価するシミュレーションに用いた回路モデルである。図13(a)は、比較例の発光装置10′の回路モデル、図13(b)は、シフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置(シフト部を備えない発光装置)の回路モデルである。ここでは、発光制御サイリスタSを省略している。図13(a)では、発光アレイ100′(図13(a)におけるVCSEL、容量C1、C2、PN接合で示されている部分)と発光電位VLDを供給する電源VS2との接続において寄生インダクタンスL1、発光アレイ100′とドライバDrvとの接続において寄生インダクタンスL2、PN接合及び容量Cと接地電位GNDとの接続において寄生インダクタンスL3が存在するとした。なお、これらの接続において抵抗の影響は少ないとした。図13(b)では、シフト部120を備えないことから、PN接合、容量C及び寄生インダクタンスL3は存在しない。なお、図13(a)、13(b)では、接地電位GNDを逆▽で示している。
【0132】
図14は、シミュレーションにより求めた発光パルス波形である。図14(a)は、図13(a)の比較例の発光装置10′の場合、図14(b)は、図13(b)のシフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置(シフト部を備えない発光装置)の場合である。図14(a)、(b)において、横軸は、時間、縦軸は、光強度(a.u.)である。
【0133】
図14(b)に示す、シフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置(シフト部を備えない発光装置)では、発光バルス波形は、立ち上がり及び立ち下りの傾きが一定であり、図10(c)に示した場合と同様である。一方、図14(a)に示す、シフト部120を備える発光アレイ100′を用いた発光装置10′では、発光パルス波形は、立ち上がり及び立ち下りが図14(b)に比べて緩やかになるとともに、光強度が振動する。これは、PN接合(容量C)及び寄生インダクタンスL3の影響による。
【0134】
そこで、本実施の形態が適用される発光装置10では、図5に示したように、切り離し部130を備え、発光パルス波形に対するPN接合(容量C)の影響を抑制するようにしている。
【0135】
図15は、本実施の形態が適用される発光装置10の動作を説明する図である。図15(a)は、ドライバDrvがオンである場合、図15(b)は、ドライバDrvをオンからオフに移行させた場合、図15(c)は、ドライバDrvがオフである場合、図15(d)は、ドライバDrvをオフからオンに移行させた場合である。ここでは、発光電位VLDは7Vであるとする。発光電流の経路を破線で示す。そして、切り離し部130をスイッチで示している。切り離し部130は、一方が基準電位である接地電位GNDが供給されるVGND端子に接続され、他方がPN接合(容量C)のアノードAに接続されている。他の構成は、図12(a)~(d)と同じであるので、同じ符号を付して説明を省略する。
【0136】
図15(a)に示す、ドライバDrvがオンである場合とは、シフト部120を動作させて発光させたいVCSELを選択した直後であるとする。なお、シフト部120を動作させたいVCSELを選択する際には、前述したように、シフト部基準電位線73を接地電位GND(0V)に設定しておくことを要する。よって、シフト部120を動作させて発光させたいVCSELを選択した直後においては、切り離し部130のスイッチはオンであって、シフト部基準電位線73が接地電位GND(0V)になっている。この状態において、ドライバDrvをオンにする。この状態は、図12(a)と同じであって、発光電位VLD(7V)が供給されているVLD端子から、発光制御サイリスタS、VCSEL、内部抵抗Rv、及びドライバDrvを経由して、発光電流が流れる。
【0137】
図15(b)に示すように、ドライバDrvをオンからオフに移行させた際、切り離し部130のスイッチをオフにして、シフト部基準電位線73と接地電位GNDとの接続を切り離す。すると、シフト部基準電位線73を接地電位GND(0V)から浮遊状態(フローティング状態)になる。ここでは、浮遊状態における電位を浮遊電位(Hi-Z)と表記する。つまり、シフト部基準電位線73は、接地電位GND(0V)から浮遊電位(Hi-Z)になる。これにより、発光制御サイリスタS、VCSEL、及び内部抵抗Rvに流れていた発光電流は、容量Cに流れることが阻止され、容量Cに向けて流れる。つまり、発光電流は、容量Cと内部抵抗Rvとで決まる時定数C×Rvで立ち下がる。この時定数は、図12(b)に示した、シフト部基準電位線73が接地電位GND(0V)に設定されていた場合の時定数(C+C)×Rvに比べ小さい。よって、シフト部基準電位線73を接地電位GND(0V)から切り離すと、シフト部基準電位線73を接地電位GND(0V)に設定する場合に比べ、発光パルスの立ち下がりの時間が短縮される(立ち下がりが速くなる)。なお、切り離し部130が切り離すとは、発光アレイ100のシフト部120と、制御部250の基準部252との電気回路上の接続を切り離すことをいう。つまり、切り離し部130のスイッチがオンからオフになると、シフト部120には基準部252が供給する接地電位GNDが供給されなくなる。
【0138】
ここでは、切り離し部130のスイッチをオフにするタイミングは、ドライバDrvをオンからオフに移行させる際としたが、ドライバDrvをオフからオンにした後であればよい。後述するように、VCSELが発光を開始した直後であってよい。
【0139】
図15(c)に示すように、ドライバDrvがオフのとき、基板電位Vが4Vになると、発光制御サイリスタSがオン状態からオフ状態に移行し、VCSELが消光する。この状態は、図12(c)と同様であるが、シフト部基準電位線73は、浮遊電位(Hi-Z)に維持されている。
【0140】
図15(d)に示すように、ドライバDrvをオフからオンに移行させる。このとき、シフト部基準電位線73は、浮遊電位(Hi-Z)に維持されている。すると、容量Cと、ドライバDrvのオン抵抗とで決まる時定数で発光電流が立ち上がる。ドライバDrvのオン抵抗は、内部抵抗Rvに比べて小さい。よって、発光電流は、立ち下がりより速く立ち上がる。この後、ドライバDrvをオンからオフにすると、図15(b)に戻る。
シフト部基準電位線73が浮遊電位(Hi-Z)になると、シフト部120は動作しなくなる。しかし、前述したメモリ効果により、VCSELに繰り返し発光パルスを発生させられる(これを連続発光パルスと表記することがある)。なお、シフト部基準電位線73を浮遊電位(Hi-Z)にすると、シフトサイリスタTのオン状態が維持されなくなる。この場合、次に点灯させる発光ブロック111(ここでは、VCSEL)は、シフト部120においてシフトサイリスタT(1)からシフト動作をやり直して選択すればよい。
【0141】
本実施の形態では、上述した切り離し部130のスイッチとして、切り離しサイリスタUを用いている(図5参照)。
図16は、本実施の形態が適用される発光アレイ100において、切り離しサイリスタUの構造を説明する断面図である。ここでは、図7(b)に示した切り離しサイリスタU、シフトサイリスタT(1)、及び結合トランジスタQ(1)に加え、VCSEL(1)及び発光制御サイリスタS(1)の断面を並べて示している。なお、配置は、図6図7(b)とは異なる。
【0142】
切り離しサイリスタUは、アイランド300上に設けられたアイランド308A、308B及びn型の半導体層85で構成されている。n型の半導体層85がnゲートGn、アイランド308Aのp型の半導体層86がアノードA、アイランド308Bのp型の半導体層86がpゲートGp、n型の半導体層87がカソードKである。そして、アイランド308Aのp型の半導体層86(アノードA)上に設けられたpオーミック電極323がアノードA電極である。アイランド308Bのn型の半導体層87(カソードK)上に設けられたnオーミック電極340がカソードK電極である。そして、pオーミック電極323(アノードA電極)が抵抗Ruを介して、n型の半導体基板80に接続されている。nオーミック電極340(カソードK電極)が、基準電位である接地電位GNDを供給する基準部252に接続されている。なお、nオーミック電極340(カソードK電極)を基準部252に接続する線路には、寄生インダクタンスL4があるとする。
【0143】
図16に示すように、切り離しサイリスタUのアノードA、pゲートGpは、シフト部120のシフトサイリスタT(1)のpゲートGp、結合トランジスタQ(1)のベースBや、発光制御サイリスタS(1)のpゲートGpと同じく、p型の半導体層86で構成されている。切り離しサイリスタUのnゲートGnは、シフト部120のシフトサイリスタT(1)のカソードK、結合トランジスタQ(1)のエミッタEや、発光制御サイリスタS(1)のカソードKと同じく、n型の半導体層85で構成されている。さらに、切り離しサイリスタUのカソードKは、シフト部120のシフトサイリスタT(1)のnゲートGn、結合トランジスタQ(1)のコレクタCf、Csや、発光制御サイリスタS(1)のnゲートGnと同じく、n型の半導体層87で構成されている。すなわち、切り離しサイリスタUのnゲートGnは、シフトサイリスタT(1)のカソードK及び結合トランジスタQ(1)のエミッタEとn型の半導体層85を介して接続されている。
【0144】
そして、切り離し部130の抵抗Ruも、前述したように、n型の半導体層87で構成されている。つまり、切り離し部130は、発光アレイ100を構成する積層半導体層により構成される。このようにして、発光アレイ100が構成される。なお、切り離し部130において、n型の半導体層85は、半導体層の一例であり、p型の半導体層86で構成されたアイランド308Aは、半導体層上の極性の異なる1層の半導体層の領域の一例であり、p型の半導体層86及びn型の半導体層87で構成されたアイランド308Bは、半導体層上の極性の異なる2層の半導体層の領域の一例である。
【0145】
図17は、本実施の形態が適用される切り離し部130の動作をシミュレーションした回路モデルである。図17(a)は、ドライバDrvがオフである場合、図17(b)は、ドライバDrvがオンになった瞬間を示す。ここでは、発光アレイ100(図17(a)、(b)におけるVCSEL、容量C1、C2、PN接合、切り離しサイリスタU、抵抗Ruの部分)と発光電位VLDを供給する電源VS2と接続する線路に生じる寄生インダクタンスL1、発光アレイ100とドライバDrvとを接続する線路に生じる寄生インダクタンスL2に加え、切り離し部130と、接地電位GNDを供給する接地部とを接続する線路に生じる寄生インダクタンスL4を示している。なお、図17(a)、17(b)では、接地電位GNDを逆▽で示している。
【0146】
図17(a)、(b)では、図9(a)と同様に、切り離しサイリスタUを、npnバイポーラトランジスタTr3(以下では、npnトランジスタTr3と表記する。)とpnpバイポーラトランジスタTr4(以下では、pnpトランジスタTr4と表記する。)との組み合わせで示している。そして、npnトランジスタTr3、pnpトランジスタTr4において、エミッタE、ベースB、コレクタCと表記する。
【0147】
切り離しサイリスタUのアノードA(pnpトランジスタTr4のエミッタ)が抵抗Ruの一方の端子に接続されている。抵抗Ruの他方の端子は基板電位V(n型の半導体基板80)に接続されている。切り離しサイリスタUのカソードK(npnトランジスタTr3のエミッタE)は、寄生インダクタンスL4を介して接地電位GNDに接続されている。切り離しサイリスタUのnゲートGn(npnトランジスタTr3のコレクタC及びpnpトランジスタTr4のベースB)は、シフト部基準電位線73と接続されている。npnトランジスタTr3のベースB及びpnpトランジスタTr4のコレクタCが、切り離しサイリスタUのpゲートGpである。ここで、シフト部基準電位線73(切り離しサイリスタUのnゲートGn)を電位V0、切り離しサイリスタUのアノードAを電位V1、切り離しサイリスタUのpゲートGpを電位V2とする。
【0148】
図17(a)に示すドライバDrvがオフである場合には、発光電位VLD>基板電位V>電位V1>電位V2>電位V0となるように設定されている。つまり、切り離しサイリスタUにおいて、アノードAの電位V1が、nゲートGnの電位V0より順方向電圧Vd以上大きく設定され、矢印で示すようにpnpトランジスタTr4にベース電流が流れて、pnpトランジスタTr4がオン状態になっている。そして、npnトランジスタTr3のベースBの電位V2は、電位V1から飽和電圧Vsatを引いた電位であって、nゲートGnの電位V0より順方向電圧Vd以上大きく設定されている。よって、矢印で示すようにnpnトランジスタTr3にベース電流が流れて、npnトランジスタTr3がオン状態になっている。すなわち、ドライバDrvがオフである場合には、切り離しサイリスタUがオン状態にあって、電位V0が接地電位GNDに近い飽和電圧Vsatになっている。つまり、切り離しサイリスタUがオン状態であることにより、シフト部基準電位線73は、接地電位GNDに近い電位に設定される。これにより、シフト部120は、前述したように動作し、発光させたいVCSELを選択する。
【0149】
図17(b)に示すように、ドライバDrvがオンになった瞬間に、ドライバDrvのNMOSトランジスタは、定電流動作により、発光電位VLDからVCSEL経由での電流が流れるだけでなく、瞬間的に抵抗Ruを経由して強制的に駆動電流I(矢印)を引こうとする。すると、電位V1が負電圧になる。電位V1が負の電圧になった瞬間に、電位V1と電位V0との電位差が小さくなって、白抜き矢印で示すように、pnpトランジスタTr4がオン状態からオフ状態に移行する。すると、さらに白抜き矢印で示すように、npnトランジスタTr3のベースBに電流が流れなくなって、npnトランジスタTr3もオン状態からオフ状態に移行する(切り離しサイリスタUがオン状態からオフ状態に移行する)。そして、npnトランジスタTr3がオフ状態になった瞬間に、電位V0、つまりシフト部基準電位線73は、接地電位GND(0V)から浮遊状態(フローティング状態)に移行する。これにより、容量Cが見かけ上見えなくなる。この状態は、ドライバDrvがオフするまで継続する。シフト部120が接地電位GND(0V)を供給する基準部252から切り離されることから、発光パルス波形へのPN接合(容量C)の影響が抑制される。なお、瞬間の具体的な時間は規定されない。
【0150】
なお、ドライバDrvがオフになると、切り離しサイリスタUは、オフ状態からオン状態に移行する。しかし、すぐにドライバDrvがオンになる前の状態(シフト部120が動作していた状態)に戻らない。すなわち、容量Cは充電されていない状態からの復帰になるので、VCSELに流れる電流は、容量Cの影響を受けない。つまり、ドライバDrvがオフになった時の発光パルス波形は、容量Cの影響を受けない。このようにして、ドライバDrvがオンしている間のみ、容量Cの影響がなくなる。
【0151】
以上説明したように、切り離しサイリスタUは、ドライバDrvがオンになった瞬間にオン状態からオフ状態に移行する。このオフ状態は、ドライバDrvが再びオフになるまで継続する。ドライバDrvがオフになると、再びオフ状態からオン状態に移行する。つまり、切り離しサイリスタUは、ドライバDrvの動作に伴って、自動的にオン状態とオフ状態とが切り替わる。
【0152】
図18は、シミュレーションにより求めた発光パルス波形である。図18(a)は、本実施の形態が適用される発光装置10の場合、図18(b)は、シフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置の場合である。図18(b)は、図14(b)と同じである。図18(a)に示す発光パルス波形は、図17(a)、(b)に示した回路モデルにより求めた。
【0153】
図18(a)に示す発光装置10の発光パルス波形は、図18(b)に示すシフト部120を備えない発光アレイを用いた発光装置の発光パルス波形とほぼ同じである。つまり、切り離しサイリスタUを備える切り離し部130を設けた発光アレイ100を用いることにより、PN接合(容量C)が発光パルス波形に及ぼす影響が抑制される。
【0154】
なお、シフト部基準電位線73の電位を制御する方法として、基準部252にスイッチを設け、シフト部120を動作させる場合にシフト部基準電位線73を接地電位GNDに、VCSELの発光時にシフト部基準電位線73を浮遊状態に設定することが考えられる。この場合、信号によってスイッチを制御することになる。これに対し、本実施の形態が適用される発光アレイ100では、切り離し部130の切り離しサイリスタUは、ドライバDrvがオンになって発光電流が流れると(具体的には流れ始めた瞬間に)、オン状態からオフ状態に移行する。つまり、切り離しサイリスタUは、ドライバDrvの動作に伴って、自ら動作する。つまり、切り離しサイリスタUをオン状態からオフ状態に移行させる信号を要しない。よって、制御部250(図5参照)又は測定制御部2(図1参照)が複雑になることが抑制される。
【0155】
(発光アレイ100の製造方法)
図19、20は、発光アレイ100の製造方法を説明する工程図である。図19(a)は、積層半導体層形成工程、図19(b)は、分離及び電流阻止部形成工程、図19(c)は、シフト部及び切り離し部における分離工程、図20(d)は、n型の半導体層露出工程、図20(e)は、結合トランジスタ及び切り離しサイリスタ形成工程、図20(f)は、nオーミック電極、pオーミック電極、及び基板電極形成工程である。ここでは、紙面の右側にVCSEL及び発光制御サイリスタS、紙面の左端から右側に向かって、切り離しサイリスタU、電源線抵抗Rg、結合抵抗Rc、シフトサイリスタT、結合トランジスタQを示している。以下順に説明する。なお、配置は、図6図7(b)とは異なる。
【0156】
図19(a)に示す積層半導体層形成工程では、n型の半導体基板80上にn型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83を積層し、次いで、トンネル接合層84を積層し、さらに、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、p型の半導体層88を積層する。前述したように、n型の半導体層81、活性層82、p型の半導体層83によりVCSELが構成される。よって、n型の半導体層81、活性層82、及びp型の半導体層83は、発光素子が構成される第1積層半導体層の一例であり、n型の半導体層81、活性層82、及びp型の半導体層83を積層する工程が、第1積層半導体層を積層する工程の一例である。また、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88により、発光制御サイリスタS、シフトサイリスタTが構成される。よって、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88が、サイリスタが構成される第2積層半導体層の一例であり、n型の半導体層85、p型の半導体層86、n型の半導体層87、及びp型の半導体層88を積層する工程が、第2積層半導体層を積層する工程の一例である。なお、トンネル接合層84は、第1積層半導体層又は第2積層半導体層のいずれかに含まれているとする。
【0157】
図19(b)に示す分離及び電流阻止部形成工程では、第1積層半導体層及び第2積層半導体をn型の半導体基板80に到達するまでエッチングして、発光部110が構成されるアイランド301と、シフト部120及び切り離し部130が構成されるアイランド300とに分離する。そして、露出したp型の半導体層83の側面から、p型の半導体層83を構成する複数の半導体層の内における半導体層を酸化して、電流阻止部βを形成する。分離及び電流阻止部形成工程のうち、分離工程が、第2積層半導体層及び第1積層半導体層を加工して、発光素子を含む発光ブロックと、発光させる発光ブロックを選択する選択部及び外部に設けられ基準電位を供給する基準部との接続を切り離す切り離し部と、を分離する工程の一例である。
【0158】
図19(c)に示すシフト部及び切り離し部における分離工程では、シフトサイリスタT及び結合トランジスタQが構成されるアイランド302、電源線抵抗Rg及び結合抵抗Rcが構成されるアイランド304、及び切り離しサイリスタUが構成されるアイランド308(アイランド308A、308B)を形成する。
【0159】
図20(d)に示すn型の半導体層露出工程では、アイランド301、302において最上層のp型の半導体層88の一部をエッチングにより除去してn型の半導体層87を露出させる。また、アイランド304、308A、308Bにおいて、最上層のp型の半導体層88をエッチングにより除去する。シフト部及び切り離し部における分離工程及びn型の半導体層露出工程は、第2積層半導体層を加工して、切り離し部に含まれる第1サイリスタと、選択部に含まれる第2サイリスタとを形成する工程の一例である。
【0160】
図20(e)に示す結合トランジスタ及び切り離しサイリスタ形成工程では、アイランド302において、n型の半導体層87の一部をエッチングにより除去してp型の半導体層86の表面を露出させる。また、アイランド308Aにおいて、n型の半導体層87をエッチングにより除去する。
【0161】
図20(f)に示すnオーミック電極、pオーミック電極、及び基板電極形成工程では、アイランド301のp型の半導体層88上にpオーミック電極321、アイランド302のp型の半導体層88上にpオーミック電極322を形成し、アイランド301のn型の半導体層87上に、nオーミック電極331、アイランド302のn型の半導体層87上にnオーミック電極332を形成し、アイランド304のn型の半導体層87上にnオーミック電極335、336、337を形成し、アイランド308Aのp型の半導体層86上にpオーミック電極323、アイランド308Bのn型の半導体層87上にnオーミック電極340を形成する。さらに、n型の半導体基板80の裏面に、基板電極75を形成する。
【0162】
この後、表面上に絶縁層(絶縁膜)を形成し、上記のnオーミック電極、pオーミック電極上の絶縁層(絶縁膜)にスルーホールを設け、配線(電源線71、シフト信号線72-1、72-2、発光電位線74など)を形成する。このようにして、発光アレイ100が製造される。
【0163】
なお、電流制限抵抗RLが構成されるアイランド303、スタート抵抗Rs及び電源線抵抗Rgが構成されるアイランド305、切り離し部130の抵抗Ruが構成されるアイランド309は、アイランド304と同様に形成される。
【0164】
上記における図19(b)に示す分離及び電流阻止部形成工程では、第1積層半導体層及び第2積層半導体をn型の半導体基板80に到達するまでエッチングしたが、第1積層半導体層のn型の半導体層81に到達するまでエッチングすればよい。
【0165】
以上においては、発光ブロック111は、1個の発光素子(直列接続された1個のVCSELと1個の発光制御サイリスタS)で構成されているとして説明した。発光ブロック111が複数の発光素子を複数含む場合には、直列接続されたVCSELと発光制御サイリスタSとを複数並列接続して配列すればよい。また、複数のVCSELを含む発光ブロック111を構成するために、半導体基板上に積層した第1積層半導体層と第2積層半導体層とに半導体基板まで到達する穴(トレンチ)設け、電流阻止部で囲まれた部分が電流通過部となるように穴から酸化して、分離された複数のVCSELを形成し、それらのVCSEL上の第2積層半導体層を共通の発光制御サイリスタとしてもよい(図3参照)。
【0166】
本発明の実施の形態では、シフト部120は、隣接するシフトサイリスタT間を結合トランジスタQで接続したが、ダイオード又は抵抗で接続していてもよい。
また、ここでは詳述しないが、シフト部120に、発光させる発光ブロック111を“1”、発光させない(消光させたままとする)発光ブロック111を“0”として、シフト部120に“101011…”などの信号を送信し、発光させる発光ブロック111が選択された後に、選択された発光ブロック111を並行に発光させるように構成してもよい。このようにすることで、図4(b)に示した複数点灯方式、図4(c)に示した全点灯方式が実現される。なお、図4(a)に示した順次点灯方式、図4(b)に示した複数点灯方式、図4(c)に示した全点灯方式以外にも、発光部の1つずつの発光ブロックをランダムに点灯させるランダム点灯方式など他の点灯方式で構成してもよい。
【0167】
本実施の形態では、n型の半導体基板を用いた例を説明したが、p型の半導体基板を用いて構成してもよい。この場合、極性を逆にすればよい。
【0168】
また、本実施の形態では、選択部の一例としてシフト部120を説明したが、アイランド300上に設けた論理回路などにより発光させる発光ブロック111を選択してもよい。
【0169】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、本発明の要旨を変更しない範囲内で、上記の実施の形態の構成要素の一部を省くことや変更することが可能である。
【0170】
(付記)
(((1)))
発光ブロックを複数有する発光部と、
外部に設けられた基準部から供給される基準電位を基準に動作し、発光させる前記発光ブロックを選択する選択部と、
前記発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れている間、前記選択部と前記基準部との接続を切り離す切り離し部と
を備える発光アレイ。
(((2)))
前記切り離し部は、第1サイリスタと抵抗とを含んで構成され、当該第1サイリスタがオンからオフに移行することで、前記接続を切り離すことを特徴とする(((1)))に記載の発光アレイ。
(((3)))
前記選択部は、オン状態が転送される第2サイリスタを複数含み、
前記第2サイリスタと、前記第1サイリスタとは、共通の半導体層を有することを特徴とする(((2)))に記載の発光アレイ。
(((4)))
前記第1サイリスタは、半導体層と、当該半導体層上の極性の異なる2層の半導体層の領域と、当該半導体層上の極性の異なる1層の半導体層の領域とで構成されることを特徴とする(((2)))に記載の発光アレイ。
(((5)))
前記切り離し部は、前記発光ブロックにローサイド駆動による発光電流が流れると、オンからオフに移行して、前記接続を切り離すことを特徴とする(((1)))に記載の発光アレイ。
(((6)))
(((1)))乃至(((5)))のいずれかに記載の発光アレイと、
オンになることで、前記発光アレイの前記発光部にローサイド駆動により発光電流を流して駆動する駆動部と
を備える発光装置。
(((7)))
(((6)))に記載された発光装置と、
前記発光装置の前記発光部から出射され、被測定物で反射された光を受光する受光部と、を備え、
前記被測定物の三次元形状を測定する測定装置。
(((8)))
基板上に、発光素子が構成される第1積層半導体層を積層する工程と、
前記第1積層半導体層上に、サイリスタが構成される第2積層半導体層を積層する工程と、
前記第2積層半導体層及び前記第1積層半導体層を加工して、前記発光素子を含む発光ブロックと、発光させる当該発光ブロックを選択する選択部及び外部に設けられ基準電位を供給する基準部との接続を切り離す切り離し部と、を分離する工程と、
前記第2積層半導体層を加工して、前記切り離し部に含まれる第1サイリスタと、前記選択部に含まれる第2サイリスタとを形成する工程と
を含む発光アレイの製造方法。
【0171】
(((1)))に記載の発光アレイによれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制できる。
(((2)))に記載の発光アレイによれば、サイリスタの動作で切り離しができる。
(((3)))に記載の発光アレイによれば、共通の半導体層を有さない場合に比べ、切り離し部を選択部と一つの半導体部品内に作り込める。
(((4)))に記載の発光アレイによれば、積層構造によりモノリシックに構成される。
(((5)))に記載の発光アレイによれば、外部からの制御を要しない。
(((6)))に記載の発光装置によれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制できる。
(((7)))に記載の測定装置によれば、三次元形状を測定できる測定装置が提供される。
(((8)))に記載の発光アレイの製造方法によれば、発光パルスの波形に対する容量の影響が抑制された発光アレイが製造される。
【符号の説明】
【0172】
1…測定装置、2…測定制御部、3…測距領域、10、10′…発光装置、20…三次元センサ(3Dセンサ)、30…測距区画、71…電源線、72、72-1、72-2…シフト信号線、73…シフト部基準電位線、74…発光電位線、75…基板電極、76…基準電位線、80…n型の半導体基板、81、85、87…n型の半導体層、82…活性層、83、86、88…p型の半導体層、84…トンネル接合層、100、100′…発光アレイ、110…発光部、111…発光ブロック、120…シフト部、121…シフトユニット、130…切り離し部、200…駆動部、250…制御部、251…電源/シフト信号部、252…基準部、253…発光電源部、α…電流通過部、β…電流阻止部、C、C…容量、Drv…ドライバ、GND…基準電位(接地電位)、I…駆動電流、L1、L2、L3、L4…寄生インダクタンス、p1、p2…シフト信号、Q…結合トランジスタ、R1、R2、RL…電流制限抵抗、Rc…結合抵抗、Rg…電源線抵抗、Rs…スタート抵抗、Ru…抵抗、Rv…内部抵抗、S…発光制御サイリスタ、T…シフトサイリスタ、U…切り離しサイリスタ、VCSEL…垂直共振器面発光レーザ、VGA…電源電位、V…基板電位、VLD…発光電位、VS1、VS2…電源、Vd…順方向電圧(拡散電位)、Vsat…飽和電圧、pI…発光信号
図1
図2
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図4
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