(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048440
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物
(51)【国際特許分類】
A23D 7/00 20060101AFI20240402BHJP
A21D 2/14 20060101ALI20240402BHJP
A21D 2/36 20060101ALI20240402BHJP
A21D 13/00 20170101ALI20240402BHJP
【FI】
A23D7/00 506
A21D2/14
A21D2/36
A21D13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154339
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000227009
【氏名又は名称】日清オイリオグループ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】▲羽▼染 芳宗
(72)【発明者】
【氏名】小林 賢司
(72)【発明者】
【氏名】片岡 直人
【テーマコード(参考)】
4B026
4B032
【Fターム(参考)】
4B026DC01
4B026DC06
4B026DG04
4B026DL03
4B026DL06
4B026DL10
4B026DP01
4B026DP03
4B026DP04
4B032DB01
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK12
4B032DK16
4B032DK18
4B032DK21
4B032DK31
4B032DK41
4B032DK49
4B032DK54
4B032DK70
4B032DL11
(57)【要約】
【課題】
果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感劣化を抑制することができる食感改良剤を提供することにある。
【解決手段】
下記の条件(a)~(c)の条件を満たす、果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物である。
(a)油脂を55質量%以下含有する。
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1~17質量%含有する。
(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有量に対する水分の比が1.5~10.0である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の条件(a)~(c)の条件を満たす、果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物。
(a)油脂を55質量%以下含有する。
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1~17質量%含有する。
(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有量に対する水分の比が1.5~10.0である。
【請求項2】
さらに、下記の条件(d)の条件を満たす、請求項1に記載のフルーツ入りベーカリー食品用水中油型乳化物。
(d)水相の糖度が45%以上である。
【請求項3】
さらに、下記の条件(e)の条件を満たす、請求項1又は請求項2に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物。
(e)水分活性が0.90以下である。
【請求項4】
前記水中油型乳化物が、果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感劣化抑制剤である、請求項1又は請求項2に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物を、練り込んだ、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地。
【請求項6】
請求項5に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地を、焼成した、果実又は野菜を含むベーカリー食品。
【請求項7】
前記果実又は野菜を含むベーカリー食品が、パン類である、請求項6に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品。
【請求項8】
請求項1又は請求項2に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物を、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に添加することによる、果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感劣化を抑制する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感改良剤に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
パン等のベーカリー食品においては、商品を特徴付ける要素の1つとして、食感が挙げられる。近年では、軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を併せ持つパンが、消費者に好まれている。パンにこれらの食感を付与するためには、食感改良剤が使用される場合が多い。パンにこれらの食感を付与するための食感改良剤としては、例えば、特許文献1~4等が提案されている。
【0003】
通常、パンは、生地が老化するため、経時的に食感が劣化しやすい。そのため、パンは、消費期限が比較的短い商品である。特にぶどうパン等の果実や野菜が入ったパンは、水分がパンから果実や野菜に移行しやすいため、経時的により食感が劣化しやすい。一方、近年はフードロスの問題から、食品の消費期限は、長くすることが求められている。したがって、パンにおいては、消費期限を長くするために、食感の経時的な劣化を抑制することが課題となっている。よって、パンの食感改良剤には、食感の経時的な劣化を抑制する機能も求められている。
【0004】
以上のような背景から、果実や野菜が入ったパン等の果実又は野菜を含むベーカリー食品に軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を付与すると共に、果実又は野菜を含むベーカリー食品の経時的な食感の劣化を抑制することができる食感改良剤の開発が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2018-42532号公報
【特許文献2】特開2010-57411号公報
【特許文献3】特開2004-57185号公報
【特許文献4】特開2001-224299号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、果実又は野菜を含むベーカリー食品に軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を付与すると共に、果実又は野菜を含むベーカリー食品の経時的な食感の劣化を抑制することができる食感改良剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究を行った。その結果、水中油型乳化物中にヒドロキシプロピルメチルセルロースを特定量含有させて、水中油型乳化物の組成を特定の組成とすることにより、本課題が解決できることが見いだされた。これにより、本発明が完成するに至った。
【0008】
すなわち、本発明の第1の発明は、下記の条件(a)~(c)の条件を満たす、果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物である。
(a)油脂を55質量%以下含有する。
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1~17質量%含有する。
(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有量に対する水分の比が1.5~10.0である。
本発明の第2の発明は、さらに、下記の条件(d)の条件を満たす、第1の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物である。
(d)水相の糖度が45%以上である。
本発明の第3の発明は、さらに、下記の条件(e)の条件を満たす、第1の発明又は第2の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物である。
(e)水分活性が0.90以下である。
本発明の第4の発明は、前記果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物が、果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感劣化抑制剤である、第1の発明又は第2の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物である。
本発明の第5の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物を、練り込んだ、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地である。
本発明の第6の発明は、第5の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地を、焼成した、果実又は野菜を含むベーカリー食品である。
本発明の第7の発明は、前記果実又は野菜を含むベーカリー食品が、パン類である、第6の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品である。
本発明の第8の発明は、第1の発明又は第2の発明に記載の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物を、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に添加することによる、果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感劣化を抑制する方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、果実又は野菜を含むベーカリー食品に軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を付与すると共に、果実又は野菜を含むベーカリー食品の経時的な食感の劣化を抑制することができる食感改良剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、下記の条件(a)~(c)の条件を満たす果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物である。
(a)油脂を55質量%以下含有する。
(b)ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1~17質量%含有する。
(c)ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有量に対する水分の比が1.5~10.0である。
【0011】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、油脂を55質量%以下含有し、好ましくは20~50質量%含有し、より好ましくは25~47質量%含有する(条件(a))。
なお、水中油型乳化物の油脂含有量は、常法で測定することができる。果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の油脂含有量は、例えば、水中油型乳化物から石油エーテル等の溶剤で油脂を抽出し、抽出された油脂の質量から測定することができる。例えば、水中油型乳化物10gから抽出された油脂の質量が4gである場合、水中油型乳化物の油脂含有量は40質量%になる。
【0012】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の製造に使用される油脂は、好ましくは液状油である。なお、本発明で液状油とは、20℃で液状の油脂のことである。
前記液状油の具体例は、大豆油、菜種油、コーン油、ひまわり油、紅花油、ごま油、綿実油、米油、オリーブ油、落花生油、亜麻仁油、パーム油やこれらの油脂の加工油脂(エステル交換油、分別油、硬化油(水素添加油)等)等である。本実施の形態においては、これらから選ばれる1種又は2種以上を混合して使用することができる。
前記液状油は、好ましくは大豆油、菜種油であり、より好ましくは菜種油である。
【0013】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロースを1~17質量%含有し、好ましくは2~15質量%含有し、より好ましくは3~12質量%含有する(条件(b))。以下、ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、HPMCと記載することがある。
前記HPMCは、HPMCを添加する他に、HPMCを含む製剤を添加することでも、水中油型乳化物に配合することもできる。
【0014】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有量に対する水分の比が1.5~10.0であり、好ましくは1.8~6.5であり、より好ましくは2.0~4.0である。
なお、本発明で果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の水分とは、水中油型乳化物に含まれる水分の全てを合わせた全水分のことである。
また、水中油型乳化物の水分は、常法で測定することができる。水中油型乳化物の水分は、例えば、水中油型乳化物を105℃で5時間加熱して乾燥させ、その減量(乾燥によって減少した質量)から測定することができる。例えば、水中油型乳化物10gを105℃で5時間加熱して乾燥させた時の減量が2gである場合、水中油型乳化物の水分は20質量%になる。
【0015】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物が、条件(a)~(c)を満たすと、果実又は野菜を含むベーカリー食品に軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を付与すると共に、果実又は野菜を含むベーカリー食品の経時的な食感の劣化を抑制することができる食感改良剤として使用することができる。
【0016】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、水相の糖度が好ましくは45%以上であり、より好ましくは50~80%であり、さらに好ましくは53~75%であり、最も好ましくは55~73%である(条件(d))。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の水相の糖度が、前記範囲であると、水中油型乳化物は、カビ等の菌類がより発生し難くなり、水中油型乳化物の使用期限がより長くなる。
なお、本発明での糖度とは、糖質の含有割合のことをいう。
【0017】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、水分活性が好ましくは0.90以下であり、より好ましくは0.30~0.90であり、さらに好ましくは0.40~0.88であり、最も好ましくは0.60~0.81である(条件(e))。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の水分活性が、前記範囲であると、水中油型乳化物は、カビ等の菌類がより発生し難くなり、水中油型乳化物の使用期限がより長くなる。
【0018】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、水分が好ましくは5~35質量%であり、より好ましくは7~30質量%であり、さらに好ましくは10~28質量%であり、最も好ましくは12~26質量%である。水中油型乳化物中の水分は、水中油型乳化物に水や液糖(還元水飴等)等を配合することで、調整することができる。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の水分が、前記範囲であると、水中油型乳化物は、カビ等の菌類がより発生し難くなり、水中油型乳化物の使用期限がより長くなる。
【0019】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、糖質の固形分を好ましくは20~65質量%含有し、より好ましくは25~60質量%含有し、さらに好ましくは28~50質量%含有し、最も好ましくは30~45質量%含有する。水中油型乳化物中の糖質の固形分の含有量は、水中油型乳化物に糖質を配合することで、調整することができる。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の糖質の固形分の含有量が、前記範囲であると、水中油型乳化物は、カビ等の菌類がより発生し難くなり、水中油型乳化物の使用期限がより長くなる。
なお、本発明で糖質の固形分は、糖質から水分を除いたもののことである。また、本発明で糖質は、炭水化物から食物繊維を除いたもののことである。また、本発明で糖質は、糖質そのものであり、その他の原材料(例えば、牛乳、粉乳等の乳製品等)に含まれる糖質は含めない。糖質の具体例は、糖類(単糖類、二糖類(ブドウ糖、果糖、ガラクトース、砂糖(ショ糖)、乳糖、麦芽糖等))、糖アルコール(マルチトール、キシリトール、エリスリトール、ソルビトール、ラクチトール、マンニトール、還元水飴等)、でんぷん、オリゴ糖、デキストリン等である。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の製造に使用される糖質は、好ましくは糖アルコールであり、より好ましくは還元水飴、ソルビトールである。
【0020】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース含有量に対する油脂含有量の比が1.2~25.0であり、好ましくは1.5~20.0であり、より好ましくは1.8~15.0であり、最も好ましくは2.0~10.0である。
【0021】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、好ましくは酵素を含有する。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の製造に使用される酵素は、好ましくはαアミラーゼ、マルトジェニックαアミラーゼ、キシラナーゼであり、より好ましくはαアミラーゼである。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物に配合される酵素がαアミラーゼである場合、水中油型乳化物100g中のαアミラーゼの酵素活性が好ましくは0.001~4単位、より好ましくは0.005~1単位、さらに好ましくは0.01~0.5単位、最も好ましくは0.01~0.1単位となるように、αアミラーゼが配合される。
前記酵素は、酵素を添加する他に、酵素を含む製剤を添加することでも、水中油型乳化物に配合することもできる。
【0022】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物には、その他にも、通常、水中油型乳化物の製造に使用される原材料を配合することができる。水中油型乳化物の製造に使用されるその他の原材料の具体例としては、卵白、卵黄、酵素処理卵黄等の卵又は卵加工品、乳蛋白、乳ペプチド等の乳成分、乳化剤、増粘剤、加工澱粉等が挙げられる。
【0023】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物の製造方法は、特に制限されない。本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、従来公知の食品として使用される水中油型乳化物の製造方法で製造することができる。本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、例えば、水、液糖(還元水飴等)等にHPMCを除く水性原料を分散及び/又は溶解させた水相に、油脂(油性成分を分散及び/又は溶解させた油脂)にHPMCを分散及び/又は溶解させた油相を加え、ホモミキサー等を用いて水中油型に乳化させた(乳化工程)後、70~100℃に加熱保持した(加熱工程)後、冷却する(冷却工程)ことにより製造することができる。
【0024】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、好ましくは果実又は野菜を含むベーカリー食品の練り込み用として使用される。また、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、好ましくは果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感改良剤として使用され、より好ましくは果実又は野菜を含むベーカリー食品の食感劣化抑制剤として使用される。
【0025】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物は、果実又は野菜を含むによるベーカリー食品の食感劣化を抑制することができる。
また、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物を、下記果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に添加することで、ベーカリー食品の果実又は野菜を含むによる食感劣化を抑制する方法として使用することができる。
【0026】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物が配合されている。本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、好ましくは本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物が練り込まれている。
なお、本発明で果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、穀粉、油脂組成物、砂糖、乳製品、卵、食塩、水等の原料を捏ね上げることで得られる焼成前の生地のことである。
【0027】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、ベーカリー食品生地に配合される穀粉100質量部に対して、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品用水中油型乳化物が好ましくは1~20質量部配合され、より好ましくは2~15質量部配合され、さらに好ましくは3~10質量部配合される。
なお、本発明で穀粉とは、穀物を挽いて粉状にしたもののことである。穀粉の具体例は、小麦粉(強力粉、中力粉、薄力粉等)、大麦粉、米粉、とうもろこし粉、ライ麦粉、そば粉、大豆粉等である。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される穀粉は、好ましくは小麦粉である。
【0028】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、ベーカリー食品生地に配合される穀粉100質量部に対して、水又は牛乳が好ましくは10~100質量部配合され、より好ましくは30~90質量部配合され、さらに好ましくは50~80質量部配合される。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、通常のベーカリー食品生地より加水することができる。
なお、本発明で果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される水は、水そのものであり、その他の原材料(例えば、全卵、牛乳等)に含まれる水は含めない。
【0029】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される穀粉100質量部に対して、油脂組成物が好ましくは0~50質量部配合され、より好ましくは2~30質量部配合され、さらに好ましくは4~20質量部配合され、最も好ましくは7~10質量部配合される。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される油脂組成物は、好ましくはマーガリン、ファットスプレッド、バター、ショートニングである。なお、マーガリン、ファットスプレッド及びバターは油中水型乳化物であり、ショートニングは水相を含まない油脂組成物である。
【0030】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される油脂組成物は、好ましくは酵素を含有する油脂組成物であり、より好ましくは酵素を含有するマーガリンである。
前記酵素を含有する油脂組成物の製造に使用される酵素は、好ましくはαアミラーゼ、マルトジェニックαアミラーゼ、キシラナーゼであり、より好ましくはαアミラーゼ
及び/またはマルトジェニックαアミラーゼである。
前記酵素を含有する油脂組成物に配合される酵素がαアミラーゼである場合、油脂組成物100g中のαアミラーゼの酵素活性が好ましくは8~8850単位、より好ましくは8~4425単位、さらに好ましくは60~885単位、最も好ましくは100~300単位となるように、αアミラーゼが配合される。また、前記酵素を含有する油脂組成物に配合される酵素がマルトジェニックαアミラーゼである場合、油脂組成物100g中のマルトジェニックαアミラーゼの酵素活性が好ましくは40~41000単位、より好ましくは400~20500単位、さらに好ましくは600~6150単位、最も好ましくは800~1500単位となるように、αアミラーゼが配合される。
【0031】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される穀粉100質量部に対して、卵類が好ましくは0~50質量部配合され、より好ましくは0~30質量部配合され、さらに好ましくは0~20質量部配合され、最も好ましくは5~18質量部配合される。
なお、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地の製造に使用される卵類は、全卵、液卵、卵黄、卵白やこれらの凍結品等であり、好ましくは全卵である。
【0032】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される穀粉100質量部に対して、糖質が好ましくは0~50質量部配合され、より好ましくは2~30質量部配合され、さらに好ましくは5~20質量部配合される。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される糖質は、好ましくは糖類であり、より好ましくは砂糖である。
【0033】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される穀粉100質量部に対して、果実又は野菜が好ましくは5~200質量部配合され、より好ましくは10~100質量部配合され、さらに好ましくは15~80質量部配合される。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地に配合される果実又は野菜は、好ましくは乾燥果実(ドライフルーツ、セミドライフルーツ)、乾燥野菜であり、より好ましくはレーズン(干しぶどう)である。
【0034】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地には、その他の原料として、通常、ベーカリー食品生地に配合される原料(活性グルテン、セルロース粉末、大豆蛋白等の粉類、イースト、イーストフード、酵素、食塩、脱脂粉乳等)を、通常量配合することができる。
【0035】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、好ましくはパン類生地である。
【0036】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地の製造方法は、特に制限されるものではなく、公知のベーカリー食品生地の製造条件及び製造方法を適用できる。本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地は、例えば、直捏法(ストレート法)、中種法、発酵種法、液種法、オールインミックス法等で製造することができる。また、直捏法の場合、ミキシング、一次発酵、分割、ベンチタイム、成形、最終発酵(ホイロ)の工程を経て、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地を製造することができる。また、中種法の場合、中種生地のミキシング、中種生地の一次発酵、本捏生地のミキシング、本捏生地の一次発酵、分割、ベンチタイム、成形、最終発酵(ホイロ)の工程を経て、果実又は野菜を含むベーカリー食品生地を製造することができる。
【0037】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品は、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品生地を焼成することで得られる。
また、本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品は、好ましくは電子レンジで加熱されたベーカリー食品である。
【0038】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品は、ビスケット、クッキー、クラッカー、乾パン、プレッツェル、カットパン、ウェハース、サブレ、ラングドシャ、マカロン、タルト等の焼き菓子、パウンドケーキ、フルーツケーキ、マドレーヌ、バウムクーヘン、チーズケーキ、カステラ等のバターケーキ、ショートケーキ、ロールケーキ、トルテ、デコレーションケーキ、シフォンケーキ等のスポンジケーキ、ガトーショコラ、蒸しケーキ、シュー菓子、発酵菓子、パイ、ワッフル等の菓子類、ドーナツ等の揚げ菓子、食パン、塩パン、コッペパン、バンズ、菓子パン、ロールパン、フランスパン、シュトーレン、パネトーネ、ブリオッシュ、マフィン、フォカッチャ、ベーグル、デニッシュ、クロワッサン等のパン類である。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品は、好ましくはパン類であり、より好ましくはコッペパン、ロールパンであり、さらに好ましくはコッペパンである。
【0039】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品の焼成方法(製造方法)は、特に制限されるものではなく、従来公知のベーカリー食品と同様の焼成方法(製造方法)により焼成することができる。焼成方法の具体例は、オーブン加熱、直焼き、高周波加熱(電子レンジ加熱)等である。
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品の焼成方法は、好ましくはオーブン加熱である。オーブン加熱は、加熱温度が好ましくは160~230℃であり、加熱時間が好ましくは5~70分間である。
【0040】
本発明の実施の形態の果実又は野菜を含むベーカリー食品は、軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を有し、経時的な食感の劣化も小さいベーカリー食品である。
【実施例0041】
次に実施例により本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0042】
水分は、試料を105℃で5時間加熱して乾燥させ、その減量から測定した。
油脂含有量は、試料から石油エーテルで油脂を抽出し、抽出された油脂の質量から測定した。
【0043】
HPMC製剤は、以下に示したものを使用した。
HPMC製剤(HPMC含有量:64.5質量%、酵素含有量:0質量%)
【0044】
〔水分活性の測定〕
25℃の試料について、LabMaster-aw(Novasina社)を用いて、水分活性を測定した。
【0045】
〔食感改良剤の製造〕
表1の配合に従って、下記工程に従って、乳化させることで、水中油型乳化物である実施例1~3の食感改良剤を製造した。また、表での配合及び含有量の単位は質量%である(質量比の単位はなし。)。
工程1(油相調製工程):タンク1に菜種油を入れる。
工程2(水相調製工程):タンク2に残りの原材料を入れて、混合撹拌する。
工程3(乳化工程):タンク1の油相を、タンク2に加え、ホモミキサーで混合撹拌して、乳化させる。
工程4(加熱工程):タンク2を80℃以上で30分間加熱保持する。
工程5(冷却工程):タンク2を50℃まで冷却する。
【0046】
【0047】
〔レーズン入りコッペパンの製造及び評価〕
表2~3の配合で、直捏法により、下記工程1~6に従って、各食感改良剤を練り込み、レーズン入りコッペパン生地を製造した。全ての実施例のレーズン入りコッペパン生地は、生地調製時の作業性が良好であった。なお、表の配合の単位は、質量部である。
得られたレーズン入りコッペパン生地を下記工程7の条件で焼成することでレーズン入りコッペパンを製造した。
得られたレーズン入りコッペパンの食感を、以下の方法に従って評価した。結果を表4~7に示した。
焼成後、室温で1日、2日及び3日保存した後コッペパンの食感を、以下の方法に従って評価した。結果を表2~3に示した。
工程1(ミキシング工程):油脂組成物以外の全ての原料を混合し、生地をまとめた後、油脂組成物を入れ、さらに混合する。生地がまとまったら、レーズンを入れ、生地中に均一に分散するよう、さらに低速で混合する。(捏上温度28℃) 工程2(一次発酵工程):生地を、温度28℃、湿度80%の条件下、60分間発酵させる。
工程3(分割工程):発酵させた生地を、50gずつに分割する。
工程4(ベンチタイム工程):分割した生地を、温度28℃、湿度80%の条件下、20分間休ませる。
工程5(成形工程):生地を、コッペパンの形状に成形する。
工程6(二次発酵工程):成形した生地を、温度38℃、湿度85%の条件下、60分間発酵させる。
工程7(焼成工程):発酵させた生地を、上火温度200℃、下火温度200℃、条件下、オーブンで10分間焼成する。
【0048】
〔食感の評価〕
焼成後、室温で1日、2日及び3日保存した後の各パンを、5名の専門パネルが食し、1~4点の4段階で採点した。採点は、点数が高いほど、軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を併せ持ち、総合的に良好な食感を有するとした。各パネルの採点結果の平均点を算出し、以下の基準に従って評価した。評価結果は、◎又は○の場合、良好な食感を有すると判断した。なお、各パンの食感を評価した専門パネルは、食品の食感等の官能評価の訓練を定期的に受けており、食品の食感等の官能評価結果に個人差が少ない。
<平均点>
◎:3.5点以上
○:2.5点以上3.5点未満
△:1.5点以上2.5点未満
×:1.5点未満
【0049】
【0050】
【0051】
表2~3から分かるように、実施例の食感改良剤を使用して製造した実施例のレーズン入りコッペパンは、軟らかい食感、しっとりした食感及びふんわりした食感を併せて持っており、食感が総合的に良好で、経時的な食感の劣化も小さかった。
一方、表3から分かるように、食感改良剤を使用せずに製造した比較例のレーズン入りコッペパンは、経時的にパンの老化が進み、食感が悪くなる傾向だった。