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特開2024-48555樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048555
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
   C08L 9/00 20060101AFI20240402BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240402BHJP
   C08K 5/3415 20060101ALI20240402BHJP
   C08J 5/24 20060101ALI20240402BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
C08L9/00
C08K3/013
C08K5/3415
C08J5/24 CEQ
C08J5/24 CER
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154521
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】110002620
【氏名又は名称】弁理士法人大谷特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】谷川 隆雄
(72)【発明者】
【氏名】垣谷 稔
(72)【発明者】
【氏名】福井 将人
(72)【発明者】
【氏名】明比 龍史
(72)【発明者】
【氏名】村田 裕太
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 直義
(72)【発明者】
【氏名】竹口 彩香
【テーマコード(参考)】
4F072
4J002
【Fターム(参考)】
4F072AA04
4F072AA07
4F072AA08
4F072AB04
4F072AB05
4F072AB09
4F072AB22
4F072AB28
4F072AB29
4F072AD02
4F072AD03
4F072AD05
4F072AE02
4F072AE06
4F072AF06
4F072AG03
4F072AL13
4J002AC03W
4J002AC04W
4J002AC06W
4J002AC08X
4J002BB15X
4J002BC04X
4J002BG04X
4J002BP01X
4J002CH07X
4J002CK02X
4J002CL03X
4J002CL09X
4J002CP03X
4J002DE147
4J002DJ017
4J002DJ047
4J002DJ057
4J002EK038
4J002EU026
4J002EU118
4J002FD017
4J002FD050
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD146
4J002FD158
4J002FD170
4J002GF00
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】高周波信号の伝送損失を低減できる誘電特性(高周波特性)に優れ、且つ、常温下での導体との高い接着性及び高温下に晒された後における導体との高い接着性を発現し得る樹脂組成物を提供すること、並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供すること。
【解決手段】(A)マレイミド化合物と、(B)マレイミド変性されていない共役ジエンポリマーと、を含有する樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)マレイミド化合物と、(B)マレイミド変性されていない共役ジエンポリマーと、を含有する樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)成分が、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(B)成分が、未変性共役ジエンポリマーである、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
前記(B)成分が、ビニル基を有する未変性ポリブタジエン及びビニル基を有する未変性ポリイソプレンからなる群から選択される1種以上である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
前記(B)成分の数平均分子量が500~9,000である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記(A)成分と前記(B)成分の含有比率[(A)/(B)]が、質量基準で、50/50~90/10である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
さらに(C)熱可塑性樹脂を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
さらに(D)無機充填材を含有する、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有するプリプレグ。
【請求項10】
請求項1に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルム。
【請求項11】
請求項10に記載の樹脂フィルムと、金属箔と、を有する、樹脂付き金属箔。
【請求項12】
請求項1に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
【請求項13】
請求項1~8のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を有する、プリント配線板。
【請求項14】
請求項13に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピューターなどの電子機器では、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載するプリント配線板の基板材料には、高周波信号の伝送損失を低減できる誘電特性[以下、「高周波特性」と称する場合がある。]、すなわち、低比誘電率及び低誘電正接が求められている(例えば、特許文献1参照)。
近年、上述した電子機器の他にも、自動車、交通システム関連等のITS(Intelligent Transport Systems)分野及び室内の近距離通信分野でも、高周波無線信号を扱う新規システムの実用化又は実用計画が進んでいる。そのため、今後、これらの分野で使用するプリント配線板に対しても、高周波特性に優れる基板材料の必要性が高まると予想される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-058409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
高周波特性に優れる基板材料とするためには、(1)基板材料に低極性のポリマーを含有させる方法、及び、(2)銅箔の表面粗さを小さくして低伝送損失化する方法等が考えられる。しかし、(1)の方法を採用すると、低極性であるがゆえに銅箔との接着強度が低下するという問題が生じ、(2)の方法を採用すると、アンカー効果が小さくなるがゆえに銅箔との接着強度が低下するという問題が生じる。そして、(1)と(2)の方法を両方採用すると、銅箔との接着強度の低下がより一層大きくなってしまう。当該問題は、基板材料を含有する積層板が高温下に晒された場合にはさらに顕著なものとなる。
【0005】
本開示は、このような現状に鑑み、高周波信号の伝送損失を低減できる誘電特性(高周波特性)に優れ、且つ、常温下での導体との高い接着性及び高温下に晒された後における導体との高い接着性を発現し得る樹脂組成物を提供すること、並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、本開示の樹脂組成物であれば、前記目的を達成できることを見出した。
【0007】
本開示は、下記[1]~[14]の実施形態を含むものである。
[1](A)マレイミド化合物と、(B)マレイミド変性されていない共役ジエンポリマーと、を含有する樹脂組成物。
[2]前記(A)成分が、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上を含む、上記[1]に記載の樹脂組成物。
[3]前記(B)成分が、未変性共役ジエンポリマーである、上記[1]又は[2]に記載の樹脂組成物。
[4]前記(B)成分が、ビニル基を有する未変性ポリブタジエン及びビニル基を有する未変性ポリイソプレンからなる群から選択される1種以上である、上記[1]~[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5]前記(B)成分の数平均分子量が500~9,000である、上記[1]~[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記(A)成分と前記(B)成分の含有比率[(A)/(B)]が、質量基準で、50/50~90/10である、上記[1]~[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]さらに(C)熱可塑性樹脂を含有する、上記[1]~[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]さらに(D)無機充填材を含有する、上記[1]~[7]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[9]上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有するプリプレグ。
[10]上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルム。
[11]上記[10]に記載の樹脂フィルムと、金属箔と、を有する、樹脂付き金属箔。
[12]上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板。
[13]上記[1]~[8]のいずれかに記載の樹脂組成物の硬化物を有する、プリント配線板。
[14]上記[13]に記載のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0008】
本開示により、高周波信号の伝送損失を低減できる誘電特性(高周波特性)に優れ、且つ、常温下での導体との高い接着性及び高温下に晒された後における導体との高い接着性を発現し得る樹脂組成物を提供すること、並びに、当該樹脂組成物を用いて得られる、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、数値範囲の下限値及び上限値は、それぞれ他の数値範囲の下限値又は上限値と任意に組み合わせられる。数値範囲「AA~BB」という表記においては、両端の数値AA及びBBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。
本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、10及び10を超える数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、10及び10未満の数値を意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
また、本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。本明細書において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
本明細書において、「樹脂成分」とは、樹脂組成物を構成する固形分のうち、後述する無機充填材等の無機化合物を除く、すべての成分のことをいう。
本明細書において、「固形分」とは、後述する有機溶媒以外の樹脂組成物中の成分のことをいう。すなわち、固形分は、25℃付近の室温で固体状のものの他、25℃付近の室温で液状、水飴状又はワックス状のものも含む。
本開示中に記載されている「XXを含有する」という表現は、XXが反応し得る場合にはXXが反応した状態で含有していてもよいし、単にXXをそのまま含有していてもよいし、これら両方の態様が含まれていてもよい。
本明細書における記載事項を任意に組み合わせた態様も本開示及び本実施形態に含まれる。
【0011】
[樹脂組成物]
本実施形態の樹脂組成物は、(A)マレイミド化合物[以下、(A)成分と称することもある]と、(B)マレイミド変性されていない共役ジエンポリマー[以下、(B)成分と称することもある]と、を含有する樹脂組成物である。
本実施形態の樹脂組成物は、前記(A)成分が極性基(マレイミド基)によって導体との高い接着性を有し、前記(B)成分によって高周波特性を確保している。さらに、前記(A)成分が導体と接着する一方で、(A)成分よりも低弾性である前記(B)成分が(A)成分と結合することによって、導体と樹脂組成物との界面に生じる応力が緩和又は分散されることで、たとえ高温条件下に晒されても、導体と樹脂組成物とが引き裂かれ難くなるものと推察する。なお、前記(B)成分の数平均分子量(Mn)を所定値以下(後述の(B)成分の数平均分子量参照)にすることで、(A)成分1分子に結合する(B)成分が多くなり、導体と樹脂組成物との界面に生じる応力がより一層緩和又は分散され易くなるものと推察する。
但し、当該推察が必ずしも正しくなかったとしても、本開示の範囲を制限するものではない。
以下、本実施形態の樹脂組成物が含有する成分について順に詳述する。
【0012】
((A)マレイミド化合物)
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分としてマレイミド化合物を含有する。(A)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記マレイミド化合物としては、N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物及びその誘導体からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物は、N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物であることが好ましく、N-置換マレイミド基を2~10個有するマレイミド化合物であることがより好ましく、N-置換マレイミド基を2~5個有するマレイミド化合物であることがさらに好ましく、N-置換マレイミド基を2個有するマレイミド化合物であることが特に好ましい。
また、前記N-置換マレイミド基を2個以上有するマレイミド化合物としては、マレイミド基が有する窒素原子同士が有機基を介して結合している化合物が好ましい。
【0013】
前記N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物としては、特に限定されないが、N-フェニルマレイミド、N-(2-メチルフェニル)マレイミド、N-(4-メチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジメチルフェニル)マレイミド、N-(2,6-ジエチルフェニル)マレイミド、N-(2-メトキシフェニル)マレイミド、N-ベンジルマレイミド等の、好ましくは芳香環に結合する1つのN-置換マレイミド基を有する芳香族マレイミド化合物;4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、インダン環含有芳香族ビスマレイミド等の、好ましくは芳香環に結合する2つのN-置換マレイミド基を有する芳香族ビスマレイミド化合物;ポリフェニルメタンマレイミド、ビフェニルアラルキル型マレイミド等の、好ましくは芳香環に結合する3つ以上のN-置換マレイミド基を有する芳香族ポリマレイミド化合物;N-ドデシルマレイミド、N-イソプロピルマレイミド及びN-シクロヘキシルマレイミド、1,6-ビスマレイミド-(2,2,4-トリメチル)ヘキサン、ピロリロン酸バインダ型長鎖アルキルビスマレイミド等の脂肪族マレイミド化合物などが挙げられる。なお、前記「マレイミド化合物」、前記「N-置換マレイミド基を1個以上有するマレイミド化合物」及び前記「好ましくは芳香環に結合する2つのN-置換マレイミド基を有する芳香族ビスマレイミド化合物」は、インダン環含有芳香族ビスマレイミドを含まなくてもよい。
他の樹脂との相容性、導体との接着性、耐熱性、低熱膨張性、機械特性及び高周波特性の観点から、前記マレイミド化合物は、芳香環に結合する2つのN-置換マレイミド基を有する芳香族ビスマレイミド化合物及び芳香環に結合する3つ以上のN-置換マレイミド基を有する芳香族ポリマレイミド化合物からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。そして、前記芳香環に結合する2つのN-置換マレイミド基を有する芳香族ビスマレイミド化合物が4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド及び2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパンからなる群から選択される1種以上を含むことが好ましく、また、前記芳香環に結合する3つ以上のN-置換マレイミド基を有する芳香族ポリマレイミド化合物がビフェニルアラルキル型マレイミドを含むことが好ましい。
【0014】
前述したマレイミド化合物の「誘導体」としては、前記N-置換マレイミド基を1個以上(好ましくは2個以上)有するマレイミド化合物と、モノアミン化合物、ジアミン化合物等のアミン化合物との付加反応物などが挙げられる。
前記モノアミン化合物としては、o-アミノフェノール、m-アミノフェノール、p-アミノフェノール、o-アミノ安息香酸、m-アミノ安息香酸、p-アミノ安息香酸、o-アミノベンゼンスルホン酸、m-アミノベンゼンスルホン酸、p-アミノベンゼンスルホン酸、3,5-ジヒドロキシアニリン、3,5-ジカルボキシアニリン等の、酸性置換基を有するモノアミン化合物が挙げられる。
前記ジアミン化合物としては、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、2,2’-ビス(4,4’-ジアミノジフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルエタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルチオエーテル、3,3’-ジヒドロキシ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラクロロ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2’,6,6’-テトラブロモ-4,4’-ジアミノジフェニルメタン等の、アミノ基が芳香族炭化水素基に結合している芳香族ジアミン化合物;シロキサンジアミンなどが挙げられる。
【0015】
((A)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物における(A)成分の含有量は、特に限定されないが、耐熱性、導体との接着性及び成形性の観点から、樹脂組成物中の固形分の総和100質量部に対して、1~60質量部が好ましく、3~50質量部がより好ましく、5~40質量部がさらに好ましく、8~35質量部が特に好ましく、10~30質量部が最も好ましい。
【0016】
((B)マレイミド変性されていない共役ジエンポリマー)
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分として、マレイミド変性されていない共役ジエンポリマー(以下、単に「共役ジエンポリマー」と略称することがある。)、つまり、マレイミド基が反応していない共役ジエンポリマーを含有する。(B)成分は、未変性共役ジエンポリマーであることが好ましい。
本開示中、「共役ジエンポリマー」とは、共役ジエン化合物の重合体を意味する。
(B)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
本実施形態の樹脂組成物は、(B)成分を含有することによって、優れた高周波特性、つまり、低い比誘電率(Dk)及び低い誘電正接(Df)が得られ、且つ、導体との接着性を高く維持できる。
【0017】
前記共役ジエンポリマーのモノマー成分である共役ジエン化合物としては、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、1,3-ペンタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ヘキサジエン等が挙げられる。
共役ジエンポリマーは、1種の共役ジエン化合物の重合体であってもよく、2種以上の共役ジエン化合物の共重合体であってもよい。
【0018】
前記共役ジエンポリマーとしては、他の樹脂との相容性及び高周波特性の観点から、側鎖にビニル基を有する共役ジエンポリマーが好ましい。
前記共役ジエンポリマーが1分子中に有する側鎖ビニル基の数は、特に限定されないが、他の樹脂との相容性及び高周波特性の観点から、好ましくは2個以上、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。
前記共役ジエンポリマーが1分子中に有する側鎖ビニル基の数の上限は特に限定されないが、例えば、100個以下であってもよく、80個以下であってもよく、60個以下であってもよい。
【0019】
(B)成分の具体例としては、ビニル基を有する未変性ポリブタジエン、ビニル基を有する未変性ポリイソプレン等が挙げられる。高周波特性及び耐熱性の観点から、(B)成分は、ビニル基を有する未変性ポリブタジエン及びビニル基を有する未変性ポリイソプレンからなる群から選択される1種以上が好ましく、ビニル基を有する未変性ポリブタジエンが好ましく、1,3-ブタジエンに由来する1,2-ビニル基を有する未変性ポリブタジエンがより好ましい。また、1,3-ブタジエンに由来する1,2-ビニル基を有する未変性ポリブタジエンとしては、1,3-ブタジエンに由来する1,2-ビニル基を有する未変性ポリブタジエンホモポリマーが好ましい。
共役ジエンポリマーが有する1,3-ブタジエンに由来する1,2-ビニル基とは、下記式(B-1)で表される構造単位に含まれるビニル基である。
【0020】
【化1】
【0021】
(B)成分が1,2-ビニル基を有する未変性ポリブタジエンである場合、ポリブタジエンを構成するブタジエン由来の全構造単位に対して、1,2-ビニル基を有する構造単位の含有量[以下、「ビニル基含有率」と称する場合がある。]は、特に限定されないが、他の樹脂との相容性、高周波特性及び耐熱性の観点から、好ましくは50モル%以上、より好ましくは70モル%以上、さらに好ましくは85モル%以上である。また、ビニル基含有率の上限に特に制限はなく、100モル%以下であってもよく、95モル%以下であってもよく、90モル%以下であってもよい。1,2-ビニル基を有する構造単位としては、上記式(B-1)で表される構造単位が好ましい。
同様の観点から、1,2-ビニル基を有する未変性ポリブタジエンは、未変性1,2-ポリブタジエンホモポリマーであることが好ましい。
【0022】
(B)成分の数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、他の樹脂との相容性、高周波特性及び耐熱性の観点並びに導体との接着性向上の観点から、好ましくは500~9,000、より好ましくは500~7,000、さらに好ましくは500~4,000、特に好ましくは800~4,000であり、1,500~4,000であってもよいし、1,500~3,500であってもよいし、また、800~3,000であってもよい。特に、(B)成分の数平均分子量が7,000以下、さらには4,000以下であると、常温下での導体との接着性向上効果及び高温下に晒された後における導体との接着性向上効果がより一層顕著になる傾向がある。
【0023】
((B)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物において、(B)成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物の固形分の総和100質量部に対して、好ましくは1~35質量部、より好ましくは3~20質量部、さらに好ましくは3~15質量部である。(B)成分の含有量が前記下限値以上であると、高周波特性が良好となり易く、相容性が良好となり、且つ、常温下での導体との高い接着性及び高温下に晒された後における導体との接着性に優れる傾向にある。(B)成分の含有量が前記上限値以下であると、耐熱性、成形性及び加工性が良好となる傾向にある。
【0024】
((A)成分と(B)成分の含有比率)
本実施形態の樹脂組成物において、前記(A)成分と前記(B)成分の含有比率[(A)/(B)]は、特に制限されないが、質量基準で、好ましくは50/50~90/10、より好ましくは55/45~85/15、さらに好ましくは60/40~85/15、特に好ましくは65/35~85/15であり、72/28~90/10であってもよいし、72/28~85/15であってもよい。
【0025】
((C)熱可塑性樹脂)
本実施形態の樹脂組成物は、高周波特性をさらに向上させる観点から、(C)成分として、熱可塑性樹脂を含有してもよい。熱可塑性樹脂は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性樹脂としては、ポリフェニレンエーテル系樹脂;スチレン系熱可塑性エラストマー、オレフィン系熱可塑性エラストマー、ウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、アクリル系熱可塑性エラストマー、シリコーン系熱可塑性エラストマー、その誘導体等の熱可塑性エラストマーなどが挙げられる。(C)成分は、高周波特性及び低熱膨張係数等の基板特性のバランス確保の観点から、スチレン系熱可塑性エラストマーを含むことが好ましい。
【0026】
前記スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、スチレン系化合物由来の構造単位を有するエラストマーであれば特に制限はない。前記スチレン系熱可塑性エラストマーは、下記一般式(C-1)で表されるスチレン由来の構造単位を有するものが好ましい。
【0027】
【化2】

(式中、Rc1は水素原子又は炭素数1~5のアルキル基であり、Rc2は、炭素数1~5のアルキル基である。nc1は、0~5の整数である。)
【0028】
c1及びRc2が表す炭素数1~5のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基等が挙げられる。これらの中でも、炭素数1~3のアルキル基が好ましく、炭素数1又は2のアルキル基がより好ましく、メチル基がさらに好ましい。
c1は、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0又は1、さらに好ましくは0である。
【0029】
スチレン系熱可塑性エラストマーが有するスチレン系化合物由来の構造単位以外の構造単位としては、例えば、ブタジエン由来の構造単位、イソプレン由来の構造単位、マレイン酸由来の構造単位、無水マレイン酸由来の構造単位等が挙げられる。
上記ブタジエン由来の構造単位及び上記イソプレン由来の構造単位は、水素添加されていてもよい。水素添加されている場合、ブタジエン由来の構造単位はエチレン単位とブチレン単位とが混合した構造単位となり、イソプレン由来の構造単位はエチレン単位とプロピレン単位とが混合した構造単位となる。
【0030】
スチレン系熱可塑性エラストマーとしては、誘電特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び低熱膨張性の観点から、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS又はSBBS)、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)及びスチレン-無水マレイン酸共重合体(SMA)からなる群から選択される1種以上が好ましく、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEPS)からなる群から選択される1種以上がより好ましく、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物(SEBS)がさらに好ましい。
【0031】
前記SEBSにおいて、スチレン由来の構造単位の含有率[以下、「スチレン含有率」と称する場合がある。]は、特に限定されないが、誘電特性、導体との接着性、耐熱性、ガラス転移温度及び低熱膨張性の観点から、好ましくは5~80質量%、より好ましくは10~75質量%、さらに好ましくは15~70質量%、特に好ましくは20~50質量%である。
前記SEBSのメルトフローレート(MFR)は、特に限定されないが、230℃、荷重2.16kgf(21.2N)の測定条件では、好ましくは0.1~20g/10min、より好ましくは0.3~17g/10min、さらに好ましくは0.5~15g/10minである。
【0032】
(C)成分としては、市販品を使用してもよい。例えば、前記SEBSの市販品としては、例えば、旭化成株式会社製のタフテック(登録商標)Hシリーズ、Mシリーズ、株式会社クラレ製のセプトン(登録商標)シリーズ、クレイトンポリマージャパン株式会社製のクレイトン(登録商標)Gポリマーシリーズ等が挙げられる。
【0033】
(C)成分の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、好ましくは12,000~1,000,000、より好ましくは30,000~500,000、さらに好ましくは50,000~150,000、特に好ましくは70,000~120,000である。本明細書において、重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算にて測定される値であり、詳細には実施例に記載の方法によって測定した値である。
【0034】
((C)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が(C)成分を含有する場合、(C)成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の固形分の総和100質量部に対して、1~55質量部が好ましく、5~50質量部がより好ましく、5~40質量部がさらに好ましく、7~30質量部が特に好ましい。(C)成分の含有量が前記下限値以上であると、高周波特性がより優れる傾向にあり、前記上限値以下であると、良好な耐熱性、成形性、加工性及び難燃性が得られる傾向にある。
【0035】
((D)無機充填材)
本実施形態の樹脂組成物は、(D)成分として無機充填材を含有することで、低熱膨張係数、耐熱性及び難燃性がより一層向上する傾向にある。
(D)成分としては、特に限定されないが、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー(焼成クレー等)、モリブデン酸亜鉛等のモリブデン酸化合物、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。(D)成分は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。これらの中でも、熱膨張係数、耐熱性及び難燃性の観点から、シリカ、アルミナ、マイカ、タルクが好ましく、シリカ、アルミナがより好ましく、シリカがさらに好ましい。シリカとしては、破砕シリカ、フュームドシリカ、溶融シリカ(溶融球状シリカ)等が挙げられる。
【0036】
(D)成分の形状及び粒径は、特に限定されないが、粒径は、好ましくは0.01~20μm、より好ましくは0.1~10μm、さらに好ましく0.2~1μm、特に好ましくは0.3~0.8μmである。ここで、粒径とは、平均粒子径を指し、粒子の全体積を100%として粒子径による累積度数分布曲線を求めたとき、体積50%に相当する点の粒子径のことである。(D)成分の粒径は、レーザ回折散乱法を用いた粒度分布測定装置等で測定することができる。
【0037】
((D)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が(D)成分を含有する場合、(D)成分の含有量は、特に限定されないが、熱膨張係数、耐熱性及び難燃性の観点から、樹脂組成物の固形分の総和100質量部に対して、好ましくは5~70質量部、より好ましくは15~65質量部、さらに好ましくは20~60質量部、特に好ましくは30~55質量部である。
【0038】
また、(D)成分を用いる場合、(D)成分の分散性及び(D)成分と樹脂組成物中の有機成分との密着性を向上させる目的で、必要に応じ、カップリング剤を併用してもよい。該カップリング剤としては特に限定されるものではなく、例えば、シランカップリング剤又はチタネートカップリング剤を適宜選択して用いることができる。カップリング剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、カップリング剤の使用量も特に限定されない。
なお、カップリング剤を用いる場合、樹脂組成物中に(D)成分を配合した後、カップリング剤を添加する、いわゆるインテグラルブレンド処理方式であってもよいが、予め無機充填材にカップリング剤を乾式又は湿式で表面処理した無機充填材を使用する方式が好ましい。この方法を採用することで、より効果的に(D)成分の特長を発現できる。
【0039】
本実施形態において(D)成分を用いる場合、(D)成分の樹脂組成物への分散性を向上させる目的で、必要に応じ、(D)成分を予め有機溶媒中に分散させたスラリーとして用いることができる。有機溶媒としては、後述する有機溶媒と同じものが挙げられる。
【0040】
((E)硬化促進剤)
本実施形態の樹脂組成物は、(E)成分として硬化促進剤を含有していてもよい。
(E)成分としては、アミン系硬化促進剤、イミダゾール系硬化促進剤、リン系硬化促進剤、有機金属塩、酸性触媒、有機過酸化物等が挙げられる。なお、本開示において、イミダゾール系硬化促進剤は、アミン系硬化促進剤に分類しないものとする。硬化促進剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。(E)成分としては、イミダゾール系硬化促進剤及び有機過酸化物からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。
前記イミダゾール系硬化促進剤としては、メチルイミダゾール、フェニルイミダゾール、2-ウンデシルイミダゾール等のイミダゾール化合物;ヘキサメチレンジイソシアネート樹脂と2-エチル-4-メチルイミダゾールの付加反応物等のイソシアネートマスクイミダゾールなどが挙げられる。
前記有機過酸化物としては、ジクミルパーオキサイド、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキシン-3、2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン等が挙げられる。
【0041】
((E)成分の含有量)
本実施形態の樹脂組成物が(E)成分を含有する場合、(E)成分の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の固形分の総和100質量部に対して、0.01~3.5質量部が好ましく、0.05~3.0質量部がより好ましく、0.1~3.0質量部がさらに好ましく、0.1~1.5質量部が特に好ましい。(E)硬化促進剤の含有量が上記範囲内であると、より良好な耐熱性、保存安定性及び成形性が得られる傾向にある。
【0042】
(その他の成分)
本実施形態の樹脂組成物は、その他の成分として、さらに、熱硬化性樹脂(前記(A)成分を除く。)、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、密着性向上剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤及び滑剤からなる群から選択される1種以上を含むことが好ましい。また、前記以外の成分を含有していてもよい。
本実施形態の樹脂組成物がこれらその他の成分(熱硬化性樹脂(前記(A)成分を除く。)、難燃剤、難燃助剤、酸化防止剤、密着性向上剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤、及びこれら以外の成分)を含有する場合、その各々の含有量は、特に限定されないが、樹脂組成物中の樹脂成分の総和100質量部に対して、例えば、0.01質量部以上であってもよく、また、10質量部以下であってもよく、5質量部以下であってもよく、1質量部以下であってもよいし、含有していなくてもよい。
【0043】
(有機溶媒)
本実施形態の樹脂組成物は、取り扱いを容易にするという観点及び後述するプリプレグ又は樹脂フィルムを製造し易くする観点から、有機溶媒を含有した、いわゆる「ワニス」であってもよい。
有機溶媒としては、特に制限されないが、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶媒;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶媒;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶媒;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶媒などが挙げられる。溶解性の観点から、ケトン系溶媒が好ましく、メチルエチルケトンがより好ましい。有機溶媒は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0044】
本実施形態の樹脂組成物をワニスにして使用する場合、固形分濃度を30~90質量%とすることが好ましく、40~80質量%とすることがより好ましく、45~60質量%とすることがさらに好ましい。樹脂組成物の固形分濃度が前記範囲内であると、樹脂組成物の取り扱い性が容易となり、基材への含浸性及び製造されるプリプレグの外観が良好となり、また、樹脂フィルムにするときの塗工性も良好となる。
【0045】
本実施形態の樹脂組成物は、(A)成分及び(B)成分並びに必要に応じて使用し得る前記成分を公知の方法で混合することで製造することができる。この際、各成分は、前記有機溶媒中で撹拌しながら溶解又は分散させてもよい。混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず、任意に設定することができる。
【0046】
[プリプレグ]
本実施形態のプリプレグは、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有するプリプレグである。
本実施形態のプリプレグは、例えば、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物とシート状繊維基材とを含有するものである。該プリプレグは、本実施形態の樹脂組成物又は後述の樹脂フィルムと、シート状繊維基材と、を用いて形成される。例えば、本実施形態の樹脂組成物又は後述の樹脂フィルムをシート状繊維基材に含浸した後、加熱乾燥させて必要に応じて半硬化(Bステージ化)させることによって得ることができる。より具体的には、例えば、乾燥炉中で通常、80~200℃で、1~30分間加熱乾燥して半硬化(Bステージ化)させることによって、本実施形態のプリプレグを製造することができる。ここで、本明細書において、B-ステージ化とは、JIS K6900(1994年)にて定義されるB-ステージの状態にすることである。
樹脂組成物の使用量は、乾燥後のプリプレグ中の樹脂組成物由来の固形分濃度を30~90質量%にするという目的で適宜決定することができる。固形分濃度を上記範囲とすることで、積層板とした際により良好な成形性が得られる傾向にある。
【0047】
プリプレグのシート状繊維基材としては、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のものが用いられる。シート状繊維基材の材質としては、Eガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらのシート状繊維基材は、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット又はサーフェシングマット等の形状を有する。
シート状繊維基材の厚さは、特に限定されないが、1~100μmであってもよいし、3~70μmであってもよいし、5~55μmであってもよいし、15~55μmであってもよいし、25~55μmであってもよい。
【0048】
[樹脂フィルム]
本実施形態の樹脂フィルムは、本実施形態の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含有する樹脂フィルムである。
本実施形態の樹脂フィルムは、例えば、有機溶媒を含有する樹脂組成物、つまりワニスを支持体へ塗布し、加熱乾燥して必要に応じて半硬化(B-ステージ化)させることによって製造することができる。樹脂フィルムの厚さは、特に限定されないが、好ましくは1~100μm、より好ましくは3~80μm、さらに好ましくは10~80μm、特に好ましくは20~70μmである。
支持体としては、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙などが挙げられる。
乾燥温度及び乾燥時間は、有機溶媒の使用量、及び使用する有機溶媒の沸点等に応じて適宜決定すればよいが、50~200℃で1~10分間程度乾燥させることによって、樹脂フィルムを好適に形成することができる。
【0049】
[樹脂付き金属箔]
本実施形態の樹脂付き金属箔は、本実施形態の樹脂フィルムと金属箔とを有するものであって、換言すると、金属箔上に本実施形態の樹脂組成物の層を有するものである。
当該樹脂付き金属箔は、本実施形態の樹脂組成物を金属箔上に塗布し、乾燥炉中で樹脂組成物を半硬化(Bステージ化)させることにより製造することができる。乾燥条件は、特に限定されないが、乾燥温度は、好ましくは80~180℃、より好ましくは110~160℃である。塗工する方法に特に制限はなく、例えば、ダイコーター、コンマコーター、バーコーター、キスコーター、ロールコーター等の公知の塗工機を用いることができる。
樹脂付き金属箔の金属箔としては、例えば、銅箔、アルミニウム箔等が挙げられるが、その他の金属箔を使用することもできる。これらの中でも、銅箔が好ましい。
また、本実施形態の樹脂付き金属箔は、樹脂組成物の層とは反対側の金属箔上にキャリア箔を有していてもよい。さらに、前記金属箔と前記キャリア箔との間に剥離層を有していてもよい。キャリア箔としては、銅箔、アルミニム箔、ニッケル箔等が挙げられる。
【0050】
[積層板]
本実施形態の積層板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物と、金属箔と、を有する積層板である。
本実施形態の積層板は、例えば、本実施形態のプリプレグ1枚の片面もしくは両面に金属箔を配置するか、又は本実施形態のプリプレグを2枚以上重ねて得られる積層物の片面もしくは両面に金属箔を配置し、次いで加熱加圧成形することによって製造することができる。
別の積層板の製造方法としては、本実施形態のプリプレグもしくはそれ以外のプリプレグの両面又は片面に本実施形態の樹脂付き金属箔を樹脂面がプリプレグと対向するように重ねた後、加熱加圧する方法が挙げられる。この場合、前記プリプレグとしては、プリプレグ1枚を用いてもよいし、プリプレグ2枚以上を積層して用いてもよい。プリプレグ2枚以上を積層して用いる場合、異なるプリプレグを組み合わせて積層してもよい。
前記金属箔の金属としては、特に限定されないが、導電性の観点から、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、又はこれらの金属元素を1種以上含有する合金であってもよく、銅、アルミニウムが好ましく、銅がより好ましい。
加熱加圧成形の実施方法としては、特に限定されないが、例えば、温度が100~300℃、圧力が0.2~10MPa、時間が0.1~5時間の条件で実施することができる。また、加熱加圧成形は、真空プレス等を用いて真空状態を0.5~5時間保持する方法を採用できる。
以上の製造方法により得られる積層板において、本実施形態のプリプレグはC-ステージ化されている。本明細書において、C-ステージ化とは、JIS K6900(1994年)にて定義されるC-ステージの状態にすることである。なお、金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
【0051】
[プリント配線板]
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の樹脂組成物の硬化物を有するものである。また、本実施形態のプリント配線板は、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物、本実施形態のプリプレグの硬化物及び本実施形態の積層板からなる群から選択される1種以上を有するプリント配線板であるということもできる。
本実施形態のプリント配線板は、本実施形態のプリプレグ、本実施形態の樹脂フィルム、本実施形態の樹脂付き金属箔及び本実施形態の積層板からなる群から選択される1種以上を用いて、公知の方法によって、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等による回路形成加工を行うことで製造することができる。また、さらに必要に応じて多層化接着加工を行うことによって、多層プリント配線板を製造することもできる。
本実施形態のプリント配線板において、本実施形態のプリプレグ、本実施形態の樹脂フィルム、及び本実施形態の樹脂付き金属箔中の樹脂フィルムは、C-ステージ化されている。
【0052】
[半導体パッケージ]
本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板と、半導体素子と、を有する半導体パッケージである。本実施形態の半導体パッケージは、本実施形態のプリント配線板の所定の位置に、半導体チップ、メモリ等の半導体素子を搭載し、封止樹脂等によって半導体素子を封止することによって製造することができる。
【0053】
本実施形態の樹脂組成物、プリプレグ、樹脂フィルム、樹脂付き金属箔、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージは、10GHz以上の高周波信号を扱う電子機器に好適に用いることができる。特に、プリント配線板は、ミリ波レーダー用プリント配線板として有用である。
【0054】
以上、好適な実施形態を説明したが、これらは本開示の説明のための例示であり、本開示の範囲をこれらの実施形態にのみ限定する趣旨ではない。本開示は、その要旨を逸脱しない範囲で、前記実施形態とは異なる種々の態様も含まれる。
【実施例0055】
以下、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明する。ただし、本実施形態は以下の実施例に限定されるものではない。
【0056】
なお、各例において、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は以下の方法によって測定した。
(重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)の測定方法)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-1、F-2、F-4、F-10、F-20、F-40)[東ソー株式会社製、商品名]を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:
ポンプ:L-6200型[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
検出器:L-3300型RI[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラムオーブン:L-655A-52[株式会社日立ハイテクノロジーズ製]
カラム:ガードカラム;TSK Guardcolumn HHR-L+カラム;TSKgel G4000HHR+TSKgel G2000HHR(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:6.0×40mm(ガードカラム)、7.8×300mm(カラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:30mg/5mL
注入量:20μL
流量:1.00mL/分
測定温度:40℃
【0057】
[実施例1~10、比較例1~3]
表1に記載の各成分を表1に記載の配合量に従って、メチルエチルケトンと共に、室温で混合及び撹拌することによって、固形分濃度55質量%の樹脂組成物(ワニス)を調製した。
上記で得たワニスを、コンマコーターを用いて、支持基材として厚さ38μmのPETフィルム(G2-38、帝人株式会社製)上に塗工し130℃で5分間加熱乾燥することによって、膜厚50μmのPETフィルム付き樹脂フィルムを作製した。このPETフィルム付き樹脂フィルムをラミネートによりPETを除く樹脂フィルムを6枚重ね合わせた積層物の上下に、厚さ18μmのロープロファイル銅箔(BF-ANP-18、Circuit Foil社製)を、M面(マット面)が樹脂フィルムに接するように配置した後、温度190℃、圧力2.0MPa、80分間の条件で加熱加圧成形することによって、両面銅張積層板(厚さ:1mm)を作製した。
各例で得た両面銅張積層板を用いて、下記方法に従って各評価を行った。結果を表1に示す。
【0058】
[両面銅張積層板の評価]
(1.比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)の測定)
各例で得た両面銅張積層板の外層銅箔を、銅エッチング液(過硫酸アンモニウムの10質量%溶液、三菱ガス化学株式会社製)に浸漬することにより除去し、長さ60mm、幅2mmに切り出したものを試験片として、空洞共振器摂動法によって比誘電率(Dk)及び誘電正接(Df)を測定した。なお、測定器にはアジレントテクノロジー社製のベクトル型ネットワークアナライザ「N5222B」、空洞共振器には株式会社関東電子応用開発製の「CP129」(10GHz帯共振器)、測定プログラムには「CPMA-V2」をそれぞれ使用した。また、測定は、周波数10GHz、測定温度25℃の条件下で行った。
【0059】
(2.導体との接着性の評価(常温及びリフロー後))
各例で得た両面銅張積層板の銅箔をエッチングにより3mm幅の直線ラインに加工した後、105℃で1時間乾燥したものを試験片とした。次いで、小型卓上試験機(株式会社島津製作所製、商品名:EZ-Test)を用いて、上記試験片の直線ラインである銅箔を、25℃で、50mm/minの速度で90°方向に引き剥がす際の強度(ピール強度)を測定し、導体との接着性の指標とした。
また、各例で得た両面銅張積層板を260℃のリフロー処理(IPC/JEDEC J-STD-020D)した後、得られた両面銅張積層板について、上記同様にしてピール強度を測定した。
【0060】
(3.熱膨張係数の測定)
熱膨張係数(板厚方向、温度範囲:30~120℃)は、各例で得た両面銅張積層板の両面の銅箔をエッチングした5mm角の試験片を用いて、熱機械測定装置(TMA)[ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン株式会社製、Q400(型番)]により、IPC(The Institute for Interconnecting and Packaging Electronic Circuits)規格に準拠して測定した。
【0061】
(4.耐熱性の評価)
各例で得た両面銅張積層板を3枚にカットして、これらを耐熱性評価用のサンプルとした。当該サンプルを用いて、JPCA-UB-01 7.5.5.1に従ってはんだ浴温度288℃で試験を行った。試験終了後のサンプルの外観を目視で観察し、下記基準に従って評価した。
A:全サンプル(3枚)においてふくれ無し
B:1枚はふくれが有り、2枚はふくれ無し
C:2枚以上にふくれが有り
【表1】
【0062】
表1中に記載の各成分の詳細は以下の通りである。
[(A)熱硬化性樹脂]
・マレイミド化合物1:4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド
・マレイミド化合物2:2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン
・マレイミド化合物3:3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド
・マレイミド化合物4:ビフェニルアラルキル型マレイミド(日本化薬株式会社製、商品名「MIR-3000」)
【0063】
[(B)マレイミド変性されていない共役ジエンポリマー]
・共役ジエンポリマー1:未変性ホモポリブタジエン、Mn=1,200
・共役ジエンポリマー2:未変性ホモポリブタジエン、Mn=2,100
・共役ジエンポリマー3:未変性ホモポリブタジエン、Mn=2,500
・共役ジエンポリマー4:未変性ホモポリブタジエン、Mn=3,200
・共役ジエンポリマー5:未変性ホモポリブタジエン、Mn=8,000
【0064】
[(C)熱可塑性樹脂]
・熱可塑性樹脂1:スチレン-(エチレン/ブチレン)-スチレンブロック共重合体、スチレン含有率42質量%、重量平均分子量(Mw)=90,000、スチレン系熱可塑性エラストマー
・熱可塑性樹脂2:スチレン-(エチレン/ブチレン)-スチレンブロック共重合体、スチレン含有率30質量%、重量平均分子量(Mw)=110,000、スチレン系熱可塑性エラストマー
【0065】
[(D)無機充填材]
・無機充填材1:溶融球状シリカ、平均粒子径=0.5μm
【0066】
[(E)硬化促進剤]
・硬化促進剤1:ジクミルパーオキシド
[その他]
・難燃剤1:トリジエチルホスフィン酸アルミニウム
【0067】
表1において、各実施例の銅張積層板は高周波特性が良好であり、且つ、常温下での導体との高い接着性及び高温下に晒された後における導体との高い接着性を有することが分かる。また、実施例では熱膨張係数を低く抑えることができており、別途評価した耐熱性についても優れていた。
一方、(A)成分及び(B)成分のいずれか一方を含まない比較例1~3の銅張積層板は、高周波特性、常温下での導体との接着性及び高温下に晒された後における導体との接着性のうちの1つ以上が低下しており、比較例1~2においては耐熱性が大幅に低下したことが分かる。