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特開2024-48622基板クランプ、基板搬送トレイ及び基板搬送装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048622
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】基板クランプ、基板搬送トレイ及び基板搬送装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/677 20060101AFI20240402BHJP
【FI】
H01L21/68 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154640
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000231464
【氏名又は名称】株式会社アルバック
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 傑之
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雄一
(72)【発明者】
【氏名】関原 将行
(72)【発明者】
【氏名】武者 和博
【テーマコード(参考)】
5F131
【Fターム(参考)】
5F131AA03
5F131BA03
5F131BA04
5F131BA19
5F131CA38
5F131CA39
5F131DA02
5F131DA22
5F131DB13
5F131DB15
(57)【要約】
【課題】小型軽量化が可能であり、動作不具合リスクが小さい基板クランプ、基板搬送トレイ及び基板搬送装置を提供すること
【解決手段】本発明に係る基板クランプは、基体と、クランプ機構と、衝撃緩和機構とを具備する。クランプ機構は、第1回転部材と、第1回転部材に固定された基板把持部と、基体に支持された第1回転軸と、基体と第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、外力が印加されると第1回転部材が第1回転軸の周りに回転して閉状態から開状態に遷移すると共に第1弾性体が変形して第1回転部材に反力を印加する。衝撃緩和機構は、第2回転部材と、第2回転部材に固定された基板接触部と、基体に支持された第2回転軸と、基体と第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、基板接触部が側面から押圧されると第2回転部材が第2回転軸の周りに回転すると共に第2弾性体が変形して第2回転部材に反力を印加する。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面、裏面及び側面を有する基板の前記裏面と接触する基板支持部を備える基体と、
第1回転部材と、前記第1回転部材に固定された基板把持部と、前記基体に支持された第1回転軸と、前記基体と前記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、前記基板把持部が前記表面に接触又は近接し、前記基板支持部と共に前記基板を挟む閉状態と、前記基板把持部が前記表面と離間し、前記基板支持部と共に前記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると前記第1回転部材が前記第1回転軸の周りに回転して前記閉状態から前記開状態に遷移すると共に前記第1弾性体が変形して前記第1回転部材に反力を印加するクランプ機構と、
第2回転部材と、前記第2回転部材に固定された基板接触部と、前記基体に支持された第2回転軸と、前記基体と前記第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、前記基板接触部が前記側面から押圧されると前記第2回転部材が前記第2回転軸の周りに回転すると共に前記第2弾性体が変形して前記第2回転部材に反力を印加する衝撃緩和機構と
を具備する基板クランプ。
【請求項2】
請求項1に記載の基板クランプであって、
前記クランプ機構は、前記基体に支持され、前記第1回転軸に平行な第3回転軸と、前記第1回転部材に支持され、前記第1回転軸に平行な第4回転軸をさらに有し、
前記第1弾性体は前記第3回転軸と前記第4回転軸を接続する
基板クランプ。
【請求項3】
請求項1に記載の基板クランプであって、
前記第1弾性体は、前記第1回転部材の回転に伴って引張される引張バネである
基板クランプ。
【請求項4】
請求項1に記載の基板クランプであって、
前記第2弾性体は、前記第2回転部材の回転に伴って圧縮される圧縮バネである
基板クランプ。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の基板クランプであって、
前記第2弾性体は、前記基板接触部に前記基板の重量に相当する力が印加されても変形せず、前記基板接触部に前記基板の重量に相当する力を超える力が印加されると変形する
基板クランプ。
【請求項6】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の基板クランプであって、
前記基板支持部及び前記基板接触部はポリイミド樹脂からなる
基板クランプ。
【請求項7】
表面、裏面及び側面を有する基板が載置される開口を囲むトレイフレームと、
前記トレイフレームの前記開口周縁に配置される第1基板クランプと
を具備し、
前記第1基板クランプは、
前記裏面と接触する基板支持部を備える基体と、
第1回転部材と、前記第1回転部材に固定された基板把持部と、前記基体に支持された第1回転軸と、前記基体と前記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、前記基板把持部が前記表面に接触又は近接し、前記基板支持部と共に前記基板を挟む閉状態と、前記基板把持部が前記表面と離間し、前記基板支持部と共に前記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると前記第1回転部材が前記第1回転軸の周りに回転して前記閉状態から前記開状態に遷移すると共に前記第1弾性体が変形して前記第1回転部材に反力を印加するクランプ機構と、
第2回転部材と、前記第2回転部材に固定された基板接触部と、前記基体に支持された第2回転軸と、前記基体と前記第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、前記基板接触部が前記側面から押圧されると前記第2回転部材が前記第2回転軸の周りに回転すると共に前記第2弾性体が変形して前記第2回転部材に反力を印加する衝撃緩和機構と
を備える
基板搬送トレイ。
【請求項8】
請求項7に記載の基板搬送トレイであって、
前記トレイフレームの前記開口周縁に配置される第2基板クランプ
をさらに具備し、
前記第2基板クランプは、
前記裏面と接触する基板支持部を備える基体と、
第1回転部材と、前記第1回転部材に固定された基板把持部と、前記基体に支持された第1回転軸と、前記基体と前記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、前記基板把持部が前記表面に接触又は近接し、前記基板支持部と共に前記基板を挟む閉状態と、前記基板把持部が前記表面と離間し、前記基板支持部と共に前記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると前記第1回転部材が前記第1回転軸の周りに回転して前記閉状態から前記開状態に遷移すると共に前記第1弾性体が変形して前記第1回転部材に反力を印加するクランプ機構と
を備える
基板搬送トレイ。
【請求項9】
請求項8に記載の基板搬送トレイであって、
前記第1基板クランプは前記開口周縁のうち鉛直下方側に配置され、
前記第2基板クランプは前記開口周縁のうち鉛直上方側に配置されている
基板搬送トレイ。
【請求項10】
基板搬送トレイと、
前記基板搬送トレイを移動させる基板搬送機構と
を具備し、
前記基板搬送トレイは、
表面、裏面及び側面を有する基板が載置される開口を囲むトレイフレームと、
前記トレイフレームの前記開口周縁に配置される第1基板クランプと
を具備し、
前記第1基板クランプは、
前記裏面と接触する基板支持部を備える基体と、
第1回転部材と、前記第1回転部材に固定された基板把持部と、前記基体に支持された第1回転軸と、前記基体と前記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、前記基板把持部が前記表面に接触又は近接し、前記基板支持部と共に前記基板を挟む閉状態と、前記基板把持部が前記表面と離間し、前記基板支持部と共に前記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると前記第1回転部材が前記第1回転軸の周りに回転して前記閉状態から前記開状態に遷移すると共に前記第1弾性体が変形して前記第1回転部材に反力を印加するクランプ機構と、
第2回転部材と、前記第2回転部材に固定された基板接触部と、前記基体に支持された第2回転軸と、前記基体と前記第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、前記基板接触部が前記側面から押圧されると前記第2回転部材が前記第2回転軸の周りに回転すると共に前記第2弾性体が変形して前記第2回転部材に反力を印加する衝撃緩和機構と
を備える
基板搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板搬送に利用される基板クランプ、基板搬送トレイ及び基板搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
基板搬送に用いられる基板搬送トレイは、基板を把持する基板クランプを備える。基板搬送トレイは軽量であると、搬送速度の向上や搬送機構の低コスト化が可能であるが、基板搬送トレイの軽量化のためには基板クランプの小型軽量化が求められている。従来、基板搬送トレイは、基板の衝撃吸収のための直動ガイドと基板クランプのための回転機構を備えたものが一般的である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-165725号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のような構成では直動ガイドと回転機構を別々に設計しなくてはならないため、小型化に課題があった。また、直動ガイドは小型化のために摩擦係数が小さい樹脂材の滑り軸受が使用されるが、摩耗により滑り軸受の摩擦係数が大きくなり、動作不具合を生じる問題があった。
【0005】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、小型軽量化が可能であり、動作不具合リスクが小さい基板クランプ、基板搬送トレイ及び基板搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る基板クランプは、基体と、クランプ機構と、衝撃緩和機構とを具備する。
上記基体は、表面、裏面及び側面を有する基板の上記裏面と接触する基板支持部を備える。
上記クランプ機構は、第1回転部材と、上記第1回転部材に固定された基板把持部と、上記基体に支持された第1回転軸と、上記基体と上記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、上記基板把持部が上記表面に接触又は近接し、上記基板支持部と共に上記基板を挟む閉状態と、上記基板把持部が上記表面と離間し、上記基板支持部と共に上記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると上記第1回転部材が上記第1回転軸の周りに回転して上記閉状態から上記開状態に遷移すると共に上記第1弾性体が変形して上記第1回転部材に反力を印加する。
上記衝撃緩和機構は、第2回転部材と、上記第2回転部材に固定された基板接触部と、上記基体に支持された第2回転軸と、上記基体と上記第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、上記基板接触部が上記側面から押圧されると上記第2回転部材が上記第2回転軸の周りに回転すると共に上記第2弾性体が変形して上記第2回転部材に反力を印加する。
【0007】
上記クランプ機構は、上記基体に支持され、上記第1回転軸に平行な第3回転軸と、上記第1回転部材に支持され、上記第1回転軸に平行な第4回転軸をさらに有し、
上記第1弾性体は上記第3回転軸と上記第4回転軸を接続してもよい。
【0008】
上記第1弾性体は、上記第1回転部材の回転に伴って引張される引張バネであってもよい。
【0009】
上記第2弾性体は、上記第2回転部材の回転に伴って圧縮される圧縮バネであってもよい。
【0010】
上記第2弾性体は、上記基板接触部に上記基板の重量に相当する力が印加されても変形せず、上記基板接触部に上記基板の重量に相当する力を超える力が印加されると変形してもよい。
【0011】
上記基板支持部及び上記基板接触部はポリイミド樹脂からなるものであってもよい。
【0012】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る基板搬送トレイは、トレイフレームと、第1基板クランプとを具備する。
上記トレイフレームは、表面、裏面及び側面を有する基板が載置される開口を囲む。
上記第1基板クランプは、上記トレイフレームの上記開口周縁に配置され、基体と、クランプ機構と、衝撃緩和機構とを具備する。
上記基体は、上記裏面と接触する基板支持部を備える。
上記クランプ機構は、第1回転部材と、上記第1回転部材に固定された基板把持部と、上記基体に支持された第1回転軸と、上記基体と上記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、上記基板把持部が上記表面に接触又は近接し、上記基板支持部と共に上記基板を挟む閉状態と、上記基板把持部が上記表面と離間し、上記基板支持部と共に上記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると上記第1回転部材が上記第1回転軸の周りに回転して上記閉状態から上記開状態に遷移すると共に上記第1弾性体が変形して上記第1回転部材に反力を印加する。
上記衝撃緩和機構は、第2回転部材と、上記第2回転部材に固定された基板接触部と、上記基体に支持された第2回転軸と、上記基体と上記第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、上記基板接触部が上記側面から押圧されると上記第2回転部材が上記第2回転軸の周りに回転すると共に上記第2弾性体が変形して上記第2回転部材に反力を印加する。
【0013】
上記基板搬送トレイは、上記トレイフレームの上記開口周縁に配置される第2基板クランプをさらに具備してもよい。上記第2基板クランプは、基体と、クランプ機構とを具備する。
上記基体は、上記裏面と接触する基板支持部を備える。
上記クランプ機構は、第1回転部材と、上記第1回転部材に固定された基板把持部と、上記基体に支持された第1回転軸と、上記基体と上記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、上記基板把持部が上記表面に接触又は近接し、上記基板支持部と共に上記基板を挟む閉状態と、上記基板把持部が上記表面と離間し、上記基板支持部と共に上記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると上記第1回転部材が上記第1回転軸の周りに回転して上記閉状態から上記開状態に遷移すると共に上記第1弾性体が変形して上記第1回転部材に反力を印加する。
【0014】
上記第1基板クランプは上記開口周縁のうち鉛直下方側に配置され、
上記第2基板クランプは上記開口周縁のうち鉛直上方側に配置されていてもよい。
【0015】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る基板搬送装置は、基板搬送トレイと、基板搬送機構とを具備する。
上記基板搬送トレイは、表面、裏面及び側面を有する基板が載置される開口を囲むトレイフレームと、上記トレイフレームの上記開口周縁に配置される第1基板クランプとを具備する。
上記基板搬送機構は、上記基板搬送トレイを移動させる。
上記第1基板クランプは、基体と、クランプ機構と、衝撃緩和機構とを具備する。
上記基体は、上記裏面と接触する基板支持部を備える。
上記クランプ機構は、第1回転部材と、上記第1回転部材に固定された基板把持部と、上記基体に支持された第1回転軸と、上記基体と上記第1回転部材を接続する第1弾性体とを有し、上記基板把持部が上記表面に接触又は近接し、上記基板支持部と共に上記基板を挟む閉状態と、上記基板把持部が上記表面と離間し、上記基板支持部と共に上記基板を挟まない開状態をとり、外力が印加されると上記第1回転部材が上記第1回転軸の周りに回転して上記閉状態から上記開状態に遷移すると共に上記第1弾性体が変形して上記第1回転部材に反力を印加する。
上記衝撃緩和機構は、第2回転部材と、上記第2回転部材に固定された基板接触部と、上記基体に支持された第2回転軸と、上記基体と上記第2回転部材を接続する第2弾性体とを有し、上記基板接触部が上記側面から押圧されると上記第2回転部材が上記第2回転軸の周りに回転すると共に上記第2弾性体が変形して上記第2回転部材に反力を印加する。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明によれば、小型軽量化が可能であり、動作不具合リスクが小さい基板クランプ、基板搬送トレイ及び基板搬送装置を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る基板搬送トレイの斜視図である。
図2】上記基板搬送トレイの平面図である。
図3】基板を搭載した上記基板搬送トレイの斜視図である。
図4】基板を搭載した上記基板搬送トレイの平面図である。
図5】上記基板の平面図である。
図6】上記基板搬送トレイが備える基板クランプの斜視図である。
図7】上記基板クランプの斜視図である。
図8】上記基板クランプの一部構成の斜視図である。
図9】上記基板クランプの一部構成の分解斜視図である。
図10】上記基板クランプの平面図である。
図11】上記基板クランプの断面図である。
図12】上記基板クランプが備えるクランプ機構の閉状態を示す模式図である。
図13】上記基板クランプが備えるクランプ機構の開状態を示す模式図である。
図14】上記基板クランプが備えるクランプ機構の開状態及び基板を示す模式図である。
図15】上記基板クランプが備えるクランプ機構の閉状態及び基板を示す模式図である。
図16】上記基板クランプが備えるクランプ機構の閉状態を示す模式図である。
図17】上記基板クランプが備えるクランプ機構の開く状態を示す模式図である。
図18】上記基板クランプが備える衝撃緩和機構による衝撃緩和を示す模式図である。
図19】上記基板搬送トレイが備える基板支持ステーの平面図である。
図20】本発明の実施形態に係る基板搬送装置の斜視図である。
図21】上記基板搬送装置が備える基板搬送機構の斜視図である。
図22】上記基板搬送装置の模式図である。
図23】上記基板搬送装置が備える基板搬送トレイの底部の斜視図である。
図24】本発明の変形例に係る基板搬送装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0019】
[基板搬送トレイの構成]
本実施形態に係る基板搬送トレイについて説明する。図1は本実施形態に係る基板搬送トレイ100の斜視図であり、図2は基板搬送トレイ100の平面図である。図3は基板Sが載置された状態の基板搬送トレイ100の斜視図であり、図4は同状態の基板搬送トレイ100の平面図である。図3及び図4に示すように基板Sが載置される側の面を基板搬送トレイ100の正面とし、その反対側の面を背面とする。図1乃至図4はいずれも基板搬送トレイ100を正面側から見た図である。
【0020】
図3及び図4に示すように基板Sは主面が矩形形状を有する基板である。図5は基板Sの各面を示す平面図である。同図に示すように基板Sの正面側を基板表面P1、基板Sの背面側の主面を基板裏面P2、基板表面P1と基板裏面P2の周縁を接続する側面を基板側面P3とする。また、図4に示すように基板Sの4辺をそれぞれ辺Hとする。基板表面P1及び基板裏面P2はX-Z平面に平行であり、基板側面P3はX-Y平面又はY-Z平面に平行である。辺Hは2つがX方向に平行、他の2つがZ方向に平行である。
【0021】
図1及び図2に示すように基板搬送トレイ100は、トレイフレーム101、基板クランプ102及び基板支持ステー103を備える。
【0022】
トレイフレーム101は枠状であり、基板Sが載置される開口104を形成する。図4に示すように開口104は基板Sの外形よりわずかに大きい形状を有する。基板Sは矩形形状の基板表面P1及び基板裏面P2を有するため、開口104も基板Sの基板表面P1及び基板裏面P2に垂直な方向(Y方向)から見て矩形形状を有する。トレイフレーム101と各辺Hの距離は例えば33mmである。
【0023】
基板クランプ102は、基板Sをトレイフレーム101に固定する。図6は基板クランプ102の斜視図である。図2及び図6に示すように基板クランプ102はトレイフレーム101において開口104の周縁に複数が設けられている。図2に示すように、基板クランプ102の数は開口104の鉛直下方(図中、下方)側に19個、左右側にそれぞれ9個、鉛直上方(図中、上方)側に10個とすることができる。また、基板クランプ102の数は適宜変更可能である。
【0024】
図7は基板クランプ102の斜視図であり、図6とは異なる方向から見た斜視図である。図8は基板クランプ102の一部構成の斜視図であり、図9は基板クランプ102の一部構成の分解斜視図である。図10は基板クランプ102の平面図である。図11は基板クランプ102の断面図であり、図10のA-A線での断面図である。これらの図に示すように基板クランプ102は、基体111、クランプ機構112及び衝撃緩和機構113を備える。
【0025】
基体111は、トレイフレーム101に固定され、クランプ機構112及び衝撃緩和機構113を支持する。図7乃至図11に示すように基体111は、第1固定部材121(図8参照)、第2固定部材122(図8参照)、第3固定部材123(図11参照)、基板支持部124(図7参照)及びカバー125(図7参照)を備える。
【0026】
図8に示すように第1固定部材121と第2固定部材122はクランプ機構112及び衝撃緩和機構113を挟んで設けられている。第3固定部材123(図11参照)は第1固定部材121と第2固定部材122の間において衝撃緩和機構113の近傍に設けられている。基板支持部124(図7参照)は基板裏面P2(図5参照)に接触し、基板Sを支持する。基板支持部124は、第1固定部材121と第2固定部材122に1つずつ設けられている。
【0027】
図8に示すように第1固定部材121には孔121aが設けられ、第2固定部材122には孔122aが設けられている。基板支持部124は孔121a及び孔122aにそれぞれ挿入されることにより、第1固定部材121と第2固定部材122に固定される。図9に示すように第1固定部材121には軸穴121b、軸穴121c及び軸穴121dが設けられている。また、図9に示すように第2固定部材122には軸穴122b、軸穴122c及び軸穴122dが設けられている。このうち軸穴121cは第1固定部材121を貫通し、軸穴122dは第2固定部材122を貫通する。
【0028】
カバー125は図7に示すように基体111、クランプ機構112及び衝撃緩和機構113を被覆し、これらへの成膜材料の付着を防止する。カバー125は孔121e及び孔122e(図8参照)に挿通された螺子182により第1固定部材121及び第2固定部材122に固定されている。
【0029】
クランプ機構112は基板Sを把持する。図7乃至図11に示すようにクランプ機構112は、第1回転部材131(図9参照)、基板把持部132(図7参照)、第1回転軸133(図9参照)、第3回転軸134(図9参照)、第4回転軸135(図9参照)、開閉部136(図9参照)及び第1弾性体137(図9参照)を備える。
【0030】
第1回転部材131は、図9に示すように同一方向に延伸する第1アーム131a及び第2アーム131bを備える。第1アーム131aの先端には軸穴131cが設けられ、第2アーム131bの先端には軸穴131dが設けられている。軸穴131cは第1アーム131aを貫通し、軸穴131dは第2アーム131bを貫通する。第1回転部材131の軸穴131cとは反対側の端部には2つの孔131eが設けられている。
【0031】
基板把持部132は基板支持部124と共に基板Sを把持する。基板把持部132は図7に示すように板状部材であり、孔131e(図8参照)に挿通された螺子181により第1回転部材131に固定されている。
【0032】
第1回転軸133は第1回転部材131の回転軸である。第1回転軸133は図9に示すように、一端がベアリング141及びスペーサー142を介して軸穴121bに挿入され、第1固定部材121に対して回転可能に支持されている。また、第1回転軸133は図9に示すように、他端がベアリング141及びスペーサー142を介して軸穴122bに挿入され、第2固定部材122に対して回転可能に支持されている。
【0033】
第3回転軸134は第1弾性体137の回転軸であり、第1回転軸133に平行である。第3回転軸134は図9に示すように、一端がベアリング141を介して軸穴121cに挿入され、第1固定部材121に対して回転可能に支持されている。この第3回転軸134の一端は、軸穴121cを貫通して第1固定部材121の外側に突出する。また、第3回転軸134は図9に示すように、他端がベアリング141を介して軸穴122cに挿入され、第2固定部材122に対して回転可能に支持されている。この第3回転軸134の他端は、軸穴122cを貫通して第2固定部材122の外側に突出する。
【0034】
第4回転軸135は第1弾性体137の回転軸であり、第1回転軸133に平行である。第4回転軸135は、図9に示すように、ベアリング141を介して軸穴131c及び軸穴131dに挿入され、第1回転部材131に対して回転可能に支持されている。第4回転軸135の両端は、軸穴131c及び軸穴131dを貫通し、第1アーム131a及び第2アーム131bの外側に突出する。
【0035】
開閉部136は外部から押圧されることで第1回転部材131を回転させる。開閉部136は図9に示すように円板形状を有し、中心部に第4回転軸135が挿通されている。開閉部136は、図7に示すように第1アーム131a及と第2アーム131bの間に配置されている。
【0036】
第1弾性体137は、第1回転部材131に反力を印加する。第1弾性体137は図9に示すように2つが設けられ、クランプ機構112の両側で第3回転軸134と第4回転軸135を接続する。第1弾性体137は引張バネとすることができるが、他の弾性体であってもよい。
【0037】
図12乃至図17はクランプ機構112による基板Sの把持を示す模式図である。図12では基板支持部124と基板把持部132が近接しており、以下この状態を「閉状態」とする。ここで、図13に示すように、押圧機構Rにより外力を印加し、開閉部136を押圧する(図中、矢印A1)。これにより第1回転部材131が第1回転軸133の周りに回転し(図中、矢印A2)、基板支持部124と基板把持部132が離間する。以下、この状態を「開状態」とする。図16及び図17に示すように、第1弾性体137は第1回転部材131の回転に伴って引張され、図17に示すように第4回転軸135に反力F1を印加する。なお、第3回転軸134及び第4回転軸135が回転可能であるため、第1回転部材131の回転による第1弾性体137の断線が防止されている。
【0038】
図14に示すように「開状態」において基板Sを配置し、基板裏面P2を基板支持部124に当接させる。さらに、押圧機構Rを開閉部136から離間させる(図中、矢印A3)と、第1弾性体137からの反力F1によって第1回転部材131の回転が元に戻る(図中、矢印A4)。これにより図15に示すように、クランプ機構112が「閉状態」となり、基板Sが基板支持部124と基板把持部132によって挟まれる。このようにして基板Sはクランプ機構112によって把持される。なお、基板把持部132は「閉状態」において基板Sの基板表面P1に接触してもよく、わずかな隙間を空けて基板表面P1から離間してもよい。
【0039】
衝撃緩和機構113は基板Sから受ける衝撃を緩和する。図7乃至図11に示すように衝撃緩和機構113は、第2回転部材151(図9参照)、基板接触部152(図11参照)、第2回転軸153(図9参照)及び第2弾性体154(図11参照)を備える。
【0040】
第2回転部材151は、図9に示すようにL字型形状を有し、第1部分151aと第2部分151bを有する。第1部分151aには孔151cが設けられている。基板接触部152(図11参照)は基板側面P3に接触する。基板接触部152は孔151cに挿通された螺子183により第2回転部材151に固定されている。
【0041】
第2回転軸153は第2回転部材151の回転軸である。第2回転軸153は図9に示すように、一端がベアリング141及びスペーサー142を介して軸穴121dに挿入され、第1固定部材121に対して回転可能に支持されている。また、第2回転軸153は図9に示すように、他端がベアリング141及びスペーサー142を介して軸穴122dに挿入され、第2固定部材122に対して回転可能に支持されている。
【0042】
第2弾性体154は、第2回転部材151に反力を印加する。第2弾性体154は図11に示すように第2部分151bと第3固定部材123の間に配置される。第2弾性体154は圧縮バネとすることができるが、他の弾性体であってもよい。
【0043】
図18は衝撃緩和機構113による衝撃緩和を示す模式図である。上述のように基板Sはクランプ機構112によって把持されるが、基板Sの配置時に基板Sに位置ズレが生じ、図18に示すように基板Sの基板側面P3が基板接触部152に衝突する場合がある。また、基板Sの把持後、基板搬送トレイ100の搬送中に基板搬送トレイ100になんらかかの衝撃が加わった場合も、基板Sが基板接触部152に衝突する場合がある。
【0044】
この場合、基板接触部152が基板Sから押圧され、第2回転部材151は第2回転軸153の周りに回転する(図中、矢印A5)。第2弾性体154は第2回転部材151の回転に伴って圧縮され、図18に示すように第2回転部材151に反力F2を印加する。これにより基板Sは本来の位置に戻る。基板Sの基板接触部152に対する衝突の衝撃は、第2弾性体154の圧縮によって吸収され、緩和される。
【0045】
なお、第2弾性体154は、基板接触部152に基板Sの重量に相当する力が印加されても変形せず、基板接触部152に基板Sの重量に相当する力を超える力が印加されると変形するように構成されていてもよい。基板クランプ102は上述のように開口104の鉛直下方(図2参照)側にも配置されるが、その場合、基板接触部152に基板Sの重量に相当する力が印加される。
【0046】
なお、基板Sの「重量に相当する力」は、基板Sの重量を、開口104の鉛直下方側に配置される基板クランプ102の数で除した力である。第2弾性体154を上記構成とすることにより、基板クランプ102に基板Sが静置された場合には第2回転部材151は回転せず、衝撃が加わった場合のみ第2回転部材151を回転させて衝撃を緩和させることができる。具体的には第2弾性体154が圧縮バネの場合、そのバネ定数の調整によって上記構成を実現することができる。
【0047】
基板クランプ102は以上のような構成を有する。基板クランプ102の材料は特に限定されないが、基板支持部124及び基板接触部152はポリイミド等の樹脂からなるものとすることができる。それ以外の各部はアルミニウム等の金属からなるものとすることができる。
【0048】
基板支持ステー103は、図2に示すように開口104を介してトレイフレーム101の間を接続し、基板Sを支持する。図19は基板支持ステー103の平面図である。同図図に示すように基板支持ステー103は第1支持部161、第2支持部162、軸部163及び基板支持ピン164を備える。
【0049】
第1支持部161は、トレイフレーム101と軸部163を接続する。第1支持部161は基板クランプ102との干渉を避けるため、U字型形状を有する。第2支持部162は、第1支持部161とは反対側においてトレイフレーム101と軸部163を接続する。第2支持部162は第1支持部161と同様にU字型形状を有する。
【0050】
軸部163は、一方向(Z方向)に延伸する棒状であり、第1支持部161と第2支持部162を接続する。基板支持ピン164は軸部163において所定間隔で複数が設けられ、基板Sの裏面に当接する。基板支持ピン164の先端は樹脂等からなるものとすることができる。第1支持部161、第2支持部162及び軸部163はアルミニウム等の金属からなるものとすることができる。
【0051】
[基板搬送トレイの効果]
基板搬送トレイ100では上述のように、基板クランプ102はクランプ機構112と衝撃緩和機構113を備えるため、基板Sの把持と基板Sへの衝撃緩和を基板クランプ102によって実現することができる。このため、基板搬送トレイにクランプ機構と衝撃緩和機構を別々に設ける場合に比べて基板搬送トレイの小型軽量化が可能である。また、基板クランプ102は滑り軸受け等の摩擦係数変化を生じる構成を備えるものではなく、動作不具合リスクが小さい。
【0052】
[基板搬送装置について]
上述した基板搬送トレイ100を利用した基板搬送装置について説明する。図20は基板搬送トレイ100を備える基板搬送装置200の模式図であり、図21は基板搬送装置200の一部構成の拡大図、図22は基板搬送装置200の模式図である。これらの図に示すように基板搬送装置200は、基板搬送トレイ100及び基板搬送機構210を備える。
【0053】
基板搬送機構210はリニアモータユニット211、ガイドローラ212、下部ガイドレール213及び上部ガイドレール214を備え、基板搬送トレイ100を移動させる。図21は基板搬送機構210のうちリニアモータユニット211、ガイドローラ212及び下部ガイドレール213を拡大して示す。
【0054】
リニアモータユニット211は基板搬送トレイ100の搬送ラインに沿って配設され、同ラインに沿って基板搬送トレイ100を推進させる。リニアモータユニット211には電磁石215が配置されている。図23は、基板搬送トレイ100の底面を示す斜視図である。同図に示すように基板搬送トレイ100の底面には磁石216が配置されている。電磁石215と磁石216の間で磁力が作用することにより、基板搬送トレイ100に推力が印加される。
【0055】
ガイドローラ212はリニアモータユニット211の前後に配置され、基板搬送トレイ100に当接する。ガイドローラ212は回転することにより基板搬送トレイ100の移動をガイドする。
【0056】
下部ガイドレール213は基板搬送トレイ100の搬送ラインに沿って配設され、基板搬送トレイ100の移動をガイドする。図21及び図22に示すように下部ガイドレール213には磁石217が配列されており、基板搬送トレイ100の底部に配列された磁石218と磁石217が吸引し合う(図22中、矢印B)ことにより基板搬送トレイ100の重量の一部が相殺される。
【0057】
上部ガイドレール214は基板搬送トレイ100の搬送ラインに沿って配設され、基板搬送トレイ100の移動をガイドする。図22に示すように上部ガイドレール214には磁石219が配列されており、基板搬送トレイ100の上部に配列された磁石220と磁石219が吸引し合う(図22中、矢印C)ことにより基板搬送トレイ100の重量の一部が相殺される。
【0058】
基板搬送装置200は以上のような構成を有する。基板搬送装置200では、基板搬送トレイ100が軽量であるため、基板搬送トレイ100の迅速な搬送が可能である。なお、基板搬送機構210はリニアモータ以外の機構により基板搬送トレイ100を推進させるものであってもよく、例えば磁気螺子を用いたものであってもよい。また、基板搬送機構210はガイドローラ212をモータによって回転させることによって基板搬送トレイ100を推進させるものであってもよい。
【0059】
[変形例]
基板搬送トレイ100の変形例について説明する。図24は本発明の変形例に係る基板搬送トレイ300の平面図である。同図に示すように基板搬送トレイ300ではトレイフレーム101、基板クランプ102、基板支持ステー103及び基板クランプ301を備える。トレイフレーム101、基板クランプ102、基板支持ステー103は上述の構成を有する。基板クランプ301は基板クランプ102のうち衝撃緩和機構113(図9参照)を備えない構成を有する。
【0060】
図24に示すように、開口104の鉛直下方(図中、下方)側には基板クランプ102が配置され、開口104の鉛直上方(図中、上方)側には基板クランプ301が配置されるものとすることができる。さらに、開口104の左右側には基板クランプ102と基板クランプ301が交互に配置されるものとすることができる。基板搬送トレイ300の鉛直上方側には基板Sの重量が掛からないため衝撃緩和機構113を備えない基板クランプ301を用いることが可能である。なお、開口104の鉛直上方側において基板クランプ301と基板クランプ102の両方を配置してもよい。また、開口104の左右側では基板クランプ301のみを配置してもよく、基板クランプ102のみを配置してもよい。
【0061】
[本発明の実施形態について]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。上述の実施形態において説明した特徴部分のうち、少なくとも2つの特徴部分を任意に組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0062】
100、300…基板搬送トレイ
101…トレイフレーム
102…基板クランプ
103…基板支持ステー
104…開口
111…基体
112…クランプ機構
113…衝撃緩和機構
121…第1固定部材
122…第2固定部材
123…第3固定部材
124…基板支持部
131…第1回転部材
132…基板把持部
133…第1回転軸
134…第3回転軸
135…第4回転軸
136…開閉部
137…第1弾性体
151…第2回転部材
152…基板接触部
153…第2回転軸
154…第2弾性体
200…基板搬送装置
210…基板搬送機構
301…基板クランプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
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図11
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