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特開2024-48648物品検出装置、キャリブレーション方法、及び物品検出方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048648
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】物品検出装置、キャリブレーション方法、及び物品検出方法
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20240402BHJP
   G06T 7/70 20170101ALI20240402BHJP
【FI】
B66F9/24 P
G06T7/70 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154676
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(74)【代理人】
【識別番号】100162640
【弁理士】
【氏名又は名称】柳 康樹
(72)【発明者】
【氏名】喜多 伸之
(72)【発明者】
【氏名】加藤 拓朗
(72)【発明者】
【氏名】岡部 大輔
(72)【発明者】
【氏名】吉田 英一
(72)【発明者】
【氏名】小出 幸和
(72)【発明者】
【氏名】加藤 紀彦
(72)【発明者】
【氏名】横町 尚也
(72)【発明者】
【氏名】古室 達也
【テーマコード(参考)】
3F333
5L096
【Fターム(参考)】
3F333AA02
3F333AE02
3F333FA05
3F333FD07
3F333FD14
3F333FE05
3F333FE09
5L096AA06
5L096BA08
5L096CA04
5L096DA04
5L096FA67
5L096FA69
5L096GA51
5L096HA08
(57)【要約】
【課題】荷役対象である物品のピッチ角度を容易に取得することができる物品検出装置、キャリブレーション方法、及び物品検出方法を提供する。
【解決手段】物品検出装置100は、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びるパレット61に関するエッジ候補を少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算する演算部104(第2の演算部)を備える。これにより、物品検出装置100は、デプスセンサなどの特別なセンサなどを用いなくとも、周囲画像から容易にパレット61のピッチ角度を演算することが可能となる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷役する物品を検出する物品検出装置であって、
前記物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得部と、
前記周囲画像に基づいて、前記物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成部と、
前記第1の情報画像に基づいて、前記荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算部と、
前記物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成部と、
前記第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる前記物品に関するエッジ候補を前記第1の演算部の演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、前記エッジ候補から、前記物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算部と、を備える、物品検出装置。
【請求項2】
前記第2の情報画像作成部は前記第2の情報画像を作成するにあたり、物品に荷が積まれた第1の場合と、物品に荷が積まれていない第2の場合における第2の情報画像を作成し、
第1の場合において、前記画像取得部の天頂方向を中心軸とした前記第2の情報画像を作成し、
第2の場合において、前記画像取得部の光軸方向を中心軸とした前記第2の情報画像を作成する、請求項1に記載された物品検出装置。
【請求項3】
前記第2の演算部は、前記第2の情報画像から、前記エッジ候補を、荷役対象の横方向の一方側、及び他方側のそれぞれから抽出する、請求項1に記載された物品検出装置。
【請求項4】
前記第2の情報画像作成部は、
前記天頂方向を中心軸とした前記第2の情報画像と、
前記光軸方向を中心軸とした前記第2の情報画像の両方を作成し、
前記第2の演算部は、どちらの第2の情報画像においても有効な結果を得た場合は、前記光軸方向を中心軸とした前記第2の情報画像での結果を採用する、請求項2に記載された物品検出装置。
【請求項5】
前記第2の演算部は、前記第2の情報画像のうち、前記エッジ候補を抽出するための特定領域において、エッジ点のハフ変換を行い、得られた直線の長さが所定以上の場合、前記特定領域内に前記エッジ候補が存在すると判断する、請求項1に記載された物品検出装置。
【請求項6】
物品検出装置で用いる画像取得部のキャリブレーション方法であって、
フォークにキャリブレーション用のパネルを配置するステップと、
前記パネルの中央部とフォーク座標系の原点との位置合わせを行うステップと、
前記パネルの縦横エッジの方向に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成するステップと、
前記第2の情報画像に含まれる、前記パネルの縦エッジの抽出を行うステップと、
前記第2の情報画像に含まれる、前記パネルの横エッジの抽出を行うステップと、を備える、キャリブレーション方法。
【請求項7】
荷役する物品を検出する物品検出方法であって、
物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得ステップと、
前記周囲画像に基づいて、前記物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成ステップと、
前記第1の情報画像に基づいて、前記荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算ステップと、
前記物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成ステップと、
前記第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる前記物品に関するエッジ候補を前記第1の演算ステップの演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、前記エッジ候補から、前記物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算ステップと、を備える、物品検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品検出装置、及び物品検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の物品検出装置としては、例えば特許文献1に記載されている技術が知られている。特許文献1に記載の物品検出装置は、物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得部と、周囲画像に基づいて、物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した情報画像を作成する情報画像作成部と、情報画像に基づいて、荷役対象部位の位置及び姿勢を演算する演算部と、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2020/189154号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術は、物品検出装置が、パレットなどの物品の荷役対象部位の位置及び姿勢を演算することができる。しかしながら、パレットのフォークを挿入する穴部は、前後方向に延びているため、パレットが所定のピッチ角度で傾斜しているとき、穴部に良好にフォークを挿入できない場合がある。よって、物品のピッチ角度を容易に取得することが求められていた。
【0005】
従って、本発明は、荷役対象である物品のピッチ角度を容易に取得することができる物品検出装置、キャリブレーション方法、及び物品検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る物品検出装置は、荷役する物品を検出する物品検出装置であって、物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得部と、周囲画像に基づいて、物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成部と、第1の情報画像に基づいて、荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算部と、物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成部と、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる物品に関するエッジ候補を第1の演算部の演算結果に基づいて少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算部と、を備える。
【0007】
この物品検出装置は、第1の演算部が、第1の情報画像に基づいて、荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算することができる。また、物品検出装置は、物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成部を備える。ここで、第2の情報画像の中で、特定方向に延びる少なくとも2つのエッジ候補を抽出すれば、特定方向を示す三次元方向ベクトルを演算することができる。また、特定方向を示す三次元方向ベクトルに基づくことで、物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算することができる。従って、物品検出装置は、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる物品に関するエッジ候補を第1の演算部の演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算部を備える。これにより、物品検出装置は、特別なセンサなどを用いなくとも、周囲画像から容易に物品のピッチ角度を演算することが可能となる。以上より、荷役対象である物品のピッチ角度を容易に取得することができる。
【0008】
第2の情報画像作成部は第2の情報画像を作成するにあたり、物品に荷が積まれた第1の場合と、物品に荷が積まれていない第2の場合における第2の情報画像を作成し、第1の場合において、画像取得部の天頂方向を中心軸とした第2の情報画像を作成し、第2の場合において、画像取得部の光軸方向を中心軸とした第2の情報画像を作成してよい。これにより、第2の演算部は、物品に荷が積まれているか否かに関わらず、物品のピッチ角度を演算することが可能となる。
【0009】
第2の演算部は、第2の情報画像から、エッジ候補を、荷役対象の横方向の一方側、及び他方側のそれぞれから抽出してよい。これにより、第2の演算部は、抽出し易い箇所にて、容易にエッジ候補を抽出することができる。
【0010】
第2の情報画像作成部は、天頂方向を中心軸とした第2の情報画像と、光軸方向を中心軸とした第2の情報画像の両方を作成し、第2の演算部は、どちらの第2の情報画像においても有効な結果を得た場合は、光軸方向を中心軸とした第2の情報画像での結果を採用してよい。天頂方向を中心軸とした場合、背景にエッジが多いため、正確性に劣る。従って、第2の演算部は、光軸方向を中心軸とした第2の情報画像での結果を優先的に採用することで、ピッチ角度をより正確に演算することができる。
【0011】
第2の演算部は、第2の情報画像のうち、エッジ候補を抽出するための特定領域において、エッジ点のハフ変換を行い、得られた直線の長さが所定以上の場合、特定領域内にエッジ候補が存在すると判断してよい。これにより、第2の演算部は、エッジ候補が存在するか否かを容易に判断することができる。
【0012】
本発明の一態様に係るキャリブレーション方法は、物品検出装置で用いる画像取得部のキャリブレーション方法であって、フォークにキャリブレーション用のパネルを配置するステップと、パネルの中央部とフォーク座標系の原点との位置合わせを行うステップと、パネルの縦横エッジの方向に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成するステップと、第2の情報画像に含まれる、パネルの縦エッジの抽出を行うステップと、第2の情報画像に含まれる、パネルの横エッジの抽出を行うステップと、を備える。
【0013】
このキャリブレーション方法によれば、フォークにパネルを配置して位置合わせすることで、カメラ座標系の中におけるパネルの位置関係から、フォーク座標系とカメラ座標系との位置関係を把握することが可能となる。また、第2の情報画像からパネルの縦エッジの抽出を行うステップと、第2の情報画像に含まれる、パネルの横エッジの抽出を行うステップとが、実行される。そのため、カメラ座標系の中でのパネルの位置関係をより正確に把握することができる。その結果、カメラ座標系を正確にフォーク座標系へ変換することができる。
【0014】
本発明の一態様に係る物品検出方法は、荷役する物品を検出する物品検出方法であって、物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得ステップと、周囲画像に基づいて、物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成ステップと、第1の情報画像に基づいて、荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算ステップと、物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成ステップと、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる物品に関するエッジ候補を第1の演算部の演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算ステップと、を備える。
【0015】
この物品検出方法によれば、上述の物品検出装置と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、荷役対象である物品のピッチ角度を容易に取得することができる物品検出装置、キャリブレーション方法、及び物品検出方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る物品検出装置を備えるフォークリフトの側面図である。
図2図1に示す物品検出装置及びそれに関わる構成要素を示すブロック構成図である。
図3】フォークリフトが、載置部上のパレットの前面の穴部にフォークを挿入する前段階における様子を示す図である。
図4】周囲画像の一例を示す図である。
図5】(a)は、棚に対して特徴面が設定された様子を示す斜視図であり、(b)は、特徴面と複数の視点V1,V2,V3との位置関係を示す概略平面図である。
図6】特徴面を用いて作成された第1の情報画像を示す。
図7】(a)はパノラマ画像を示し、(b)は傾きを補正したパノラマ画像を示す。
図8】(a)は、検出されたエッジ点列を示し、(b)は、各エッジ点でのハフ変換後のパラメータ空間でのスコアを示す。
図9】(a)はパレットに荷が積載されているときの処理内容を説明するための図であり、(b)はパレットに荷が積載されていないときの処理内容を説明するための図である。
図10】撮影部の天頂方向を中心軸としたパノラマ画像を示す。
図11】撮影部の光軸方向を中心軸としたパノラマ画像を示す。
図12】(a)は、パレットに荷が積まれていないときに、荷が積まれていると想定して処理した場合を示し、(b)は、パレットに荷が積まれているときに、荷が積まれていないと想定して処理した場合を示す。
図13】キャリブレーション方法を行うときのフォークリフトの様子を示す図である。
図14】パネルを検出する第1の情報画像である。
図15】パネルの左右の縦エッジを検出するためのパノラマ画像である。
図16】パネルの前後の横エッジを検出するためのパノラマ画像である。
図17】物品検出方法の処理内容を示すフロー図である。
図18】物品検出方法の処理内容を示すフロー図である。
図19】物品検出方法の処理内容を示すフロー図である。
図20】物品検出方法の処理内容を示すフロー図である。
図21】キャリブレーション方法を示すフロー図である。
図22】パレットの位置姿勢を推定した実験結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る物品検出装置を備える産業車両の側面図である。なお、以降の説明においては「左」「右」を用いて説明するが、これらは車両の後方から前方を見た時を基準としたときの「左」「右」に対応するものとする。図1に示すように、本実施形態では、物品を荷役する産業車両として、フォークリフト50が例示されている。フォークリフト50は、車体51と、撮影部32(画像取得部)と、物品検出装置100と、を備える。フォークリフト50は、移動体2、及び荷役装置3を備える。本実施形態におけるフォークリフト50はリーチ式のフォークリフトで、運転席12に搭乗する運転手による手動運転と、後述する制御部110による自動運転とを切り替え可能である。あるいは、フォークリフト50は制御部110による完全な自動運転が可能なものであってもよい。
【0020】
移動体2は、前方へ延出する左右一対のリーチレグ4を備える。左右の前輪5は、左右のリーチレグ4にそれぞれ回転可能に支持されている。後輪6は、後一輪であって、操舵輪を兼ねた駆動輪である。移動体2の後部は、立席タイプの運転席12となっている。運転席12の前側にあるインストルメントパネル9には、荷役操作のための荷役レバー10、及び前後進操作のためのアクセルレバー11が設けられている。また、インストルメントパネル9の上面にはステアリング13が設けられている。
【0021】
荷役装置3は、移動体2の前側に設けられる。荷役レバー10のうちのリーチレバー操作時には、リーチシリンダ(不図示)が伸縮駆動することによって、荷役装置3がリーチレグ4に沿って所定ストローク範囲内で前後方向に移動する。また、荷役装置3は、2段式のマスト23、リフトシリンダ24、ティルトシリンダ(不図示)及びフォーク25を備える。荷役レバー10のうちのリフトレバー操作時には、リフトシリンダ24が伸縮駆動することによりマスト23が上下方向にスライド伸縮し、これに連動してフォーク25が昇降する。
【0022】
次に、図2を参照して、本実施形態に係るフォークリフト50の物品検出装置100について更に詳細に説明する。図2は、本実施形態に係る物品検出装置100及びそれに関わる構成要素を示すブロック構成図である。図2に示すように、物品検出装置100は、制御部110を備えている。物品検出装置100の制御部110は、荷役駆動系30と、走行駆動系31と接続されており、これらに制御信号を送信する。荷役駆動系30は、荷役装置3を作動させるための駆動力を発生する駆動系である。走行駆動系31は、移動体2を走行させるための駆動力を発生する駆動系である。
【0023】
制御部110は、撮影部32と接続されており、撮影部32で撮影された画像を取得する。撮影部32は、フォークリフト50の車体51の周囲を撮影する。撮影部32は、図1に示す例ではフォーク25のバックレストに設けられているが、車体51の周囲を撮影できる位置であればどこに設けられてもよい。この撮影部32の具体的な構成については、後述する。制御部110は、表示部33と接続されており、各種画像データを表示部33へ出力する。なお、制御部110による完全な自動運転が可能なフォークリフト50の場合は、表示部33や荷役レバー10、アクセルレバー11、ステアリング13は備えなくてもよい。
【0024】
物品検出装置100は、荷役する物品を検出する装置である。また、物品検出装置100の制御部110は、フォークリフト50を自動操縦するための制御を行う。制御部110は、フォークリフト50が荷役する物品に近接する前段階から、物品を検出して、当該物品の荷役対象部位の位置及び姿勢を把握する。また、制御部110は、物品のピッチ角度を把握する。これにより、制御部110は、フォークリフト50が物品をスムーズに荷役できるように、物品に近接し、且つ、フォーク25を荷役対象部位に挿入できるように制御する。
【0025】
図3は、フォークリフト50が、載置部65上のパレット61(物品)の前面61a(荷役対象部位)の穴部61bにフォーク25を挿入する前段階における様子を示す図である。図3に示すように、撮影部32の中心位置にはカメラ座標系X1・Y1・Z1が設定され、一対のフォーク25の先端部における横方向の中央位置にはフォーク座標系X2・Y2・Z2が設定される。また、説明の便宜上、パレット61の前面61aの中央位置にパレット座標系X3・Y3・Z3が設定されるものとして以降の説明を行う。X1軸は、撮影部32の光軸方向に設定される。Y1軸は撮影部32の横方向に設定される。X2軸は、フォークリフト50の前後方向に設定される。Y2軸はフォークリフト50の横方向に設定される。X3軸はパレット61の奥行き方向に設定される。Y3はパレット61の横方向に設定される。Z1軸、Z2軸、及びZ3軸は上下方向に設定される。
【0026】
パレット61の穴部61bにフォーク25を差し込むためには、フォーク25の高さ位置(上下方向の位置)、リーチ位置(前後方向の位置)、及びチルト角度(水平方向に対する傾き)をパレット61の前面61a(穴部61b)の位置、姿勢、及びパレット61のピッチ角度θ1に合わせて制御する必要がある。本明細書では、パレット61の位置とは、パレット座標系X3・Y3・Z3の原点の三次元空間中における位置を意味するものとする。パレット61の姿勢とは、前面61aの鉛直軸周りのヨー姿勢を意味するものとする。パレット61のピッチ角度θ1とは、X3軸の水平方向に対する角度を意味するものとする。物品検出装置100は、撮影部32でパレット61を検出するため、まず、カメラ座標系X1・Y1・Z1におけるパレット61の位置、姿勢、及びピッチ角度θ1を取得する。次に、物品検出装置100は、パレット61の位置、姿勢、及びピッチ角度θ1をフォーク座標系X2・Y2・Z2に変換する。これにより、フォークリフト50は、フォーク25を穴部61bに挿入する直前の状態において、フォーク25の先端部が穴部61bの入口部に配置され、フォーク25のチルト角度をパレット61のピッチ角度θ1と略一致するように制御する。
【0027】
制御部110は、装置を統括的に管理するECU[Electronic Control Unit]を備えている。ECUは、CPU[Central Processing Unit]、ROM[Read Only Memory]、RAM[Random Access Memory]、CAN[Controller Area Network]通信回路等を有する電子制御ユニットである。ECUでは、例えば、ROMに記憶されているプログラムをRAMにロードし、RAMにロードされたプログラムをCPUで実行することにより各種の機能を実現する。ECUは、複数の電子ユニットから構成されていてもよい。図2に示すように、制御部110は、画像取得部101と、特徴面設定部102と、情報画像作成部103(第1の情報画像作成部、第2の情報画像作成部)と、演算部104(第1の演算部、第2の演算部)と、調整部106と、運転制御部107と、記憶部108と、を備える。
【0028】
画像取得部101は、フォークリフト50の車体51の周囲を撮影した周囲画像を取得する。
【0029】
周囲画像は、魚眼カメラで取得された画像である。すなわち、撮影部32は、魚眼カメラによって構成されている。魚眼カメラは、一般的な魚眼レンズを有することで、単眼で略180°の広視野で撮影を行うことができるカメラである。図4は、周囲画像の一例を示す図である。周囲画像は広視野で撮影されるため、図4に示すように、縁部に近い部分ほど、大きく湾曲するような画像となる。なお、図4では、パレット61を配置した棚60以外の周囲の構造物は省略されている。また、棚60には中段にパレット61Aのみが配置され、上段にパレット61Bのみが配置されている。ただし、棚60には、多数のパレット61が配置されてよい。また、パレット61A,61B上の荷は省略されている。また、棚60の前面60a及びパレット61の前面61aが写されている。周囲画像中では、棚60及びパレット61は、縁部側に湾曲した状態で表示される。
【0030】
なお、撮影部32を構成するカメラのレンズは魚眼レンズに限定されない。撮影部32は、フォークリフト50が棚60から離れた位置、及び棚60に近接した位置の両方にて、パレット61の画像を取得できる程度の画角を有していればよい。すなわち、撮影部32は、フォークリフト50の前方の様子及び横側の様子を同時に撮影できるような広視野のカメラであればよい。なお、撮影部32は、広視野で画像を撮影できればよく、広角カメラが採用されてもよい。また、撮影部32は、複数方向に向けられた複数のカメラを組み合わせることで、広視野の画像を撮影してもよい。
【0031】
特徴面設定部102は、パレット61の前面61aの特徴が投影される特徴面SF(図5参照)を設定する。
【0032】
情報画像作成部103は、周囲画像に基づいて、パレット61の前面61aに関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する。情報画像作成部103は、特徴面SFを用いて情報画像を作成する。
【0033】
演算部104は、第1の情報画像に基づいて、荷役対象のパレット61を検出する。また、演算部104は、情報画像に基づいて、荷役対象のパレット61の前面61aの位置及び姿勢を演算する。
【0034】
運転制御部107は、演算部104によって演算されたパレット61の前面61aの位置及び姿勢に関する情報に基づいて、車体51の位置や姿勢を制御する。なお、運転制御部107は、物品検出装置100の制御部110とは別個の制御ユニットとして構成されていてもよい。この場合、物品検出装置100の制御部110は、演算結果を運転制御部107の制御ユニットへ出力し、運転制御部107は、物品検出装置100の演算結果に基づいて運転制御を行う。
【0035】
ここで、物品検出装置100は、公知の手法を用いて第1の情報画像の作成、及びパレット61の前面61aの位置及び姿勢の演算を行う。物品検出装置100は、周囲画像からカメラ座標系の任意の位置姿勢に設置した投影面(特徴面SF)に指定した解像度(mm/画素)で投影した画像を生成する公知の手法を用いる。また、物品検出装置100は、パレット61の前面近傍に設置した投影面の第1の情報画像からパレット61を検出し、カメラ座標系におけるおよその位置・姿勢を推定する公知の手法を用いる。また、物品検出装置100は、カメラ座標系におけるおよその位置・姿勢を初期値としてパレットの位置と鉛直軸周りの姿勢(ヨー姿勢)を推定する公知の手法を用いる。なお、これらの公知の手法として、国際公開番号:WO2020/189154A1に記載された手法を用いてよい。
【0036】
図5及び図6を参照して、特徴面SF(投影面)及び第1の情報画像について詳細に説明する。なお、以降の図5及び図6の説明は一実施形態に過ぎず、当該実施形態に限定されるものではない。図5(a)は、棚60に対して特徴面SFが設定された様子を示す斜視図である。図5(b)は、特徴面SFと複数の視点V1,V2,V3との位置関係を示す概略平面図である。図6は、特徴面SFを用いて作成された情報画像を示す。
【0037】
特徴面SFは、情報画像を作成するために三次元空間上に仮想的に設定される平面状の投影面である。なお、特徴面SFに関する位置や姿勢は、設定する段階で既知となっている情報である。情報画像は、周囲画像が取得された位置で取得される情報を、認識し易い状態に変換した画像である。周囲画像が取得された位置で取得される情報は、当該位置から見たときの棚60及びパレット61の各部位の位置や大きさなどの情報を含む。後述の情報画像作成部103は、周囲画像を特徴面SFに投影することによって、情報画像を作成する。
【0038】
特徴面SFは、パレット61の前面61aの特徴が投影される投影面である。従って、特徴面SFは、当該特徴面SFに投影された情報画像の中に、パレット61の前面61aの特徴が示されるように設定される。すなわち、特徴面SFは、パレット61の前面61aの特徴を的確に示すことができるような箇所に設定された投影面である。このように設定された特徴面SFに投影されたパレット61の前面61aの情報画像では、前面61aの特徴を示す情報が、画像認識処理で容易に認識できるような態様で示されることになる。前面61aの特徴とは、画像中において他の物品と区別できるような、前面61aに独特の外観的特徴のことを意味する。前面61aの特徴を示す情報とは、当該前面61aを特定することができる形状情報や寸法情報などである。
【0039】
例えば、パレット61の前面61aは、幅方向に延びる長方形の形状を有し、二つの穴部61bを有するという特徴がある。このようなパレット61の前面61a及び穴部61bは、周囲画像中では歪んで表示されるため(図4参照)、形状を特定し難いことに加え、寸法も把握することが難しく、画像認識処理によって特徴として検出することが困難である。これに対し、特徴面SFに投影された画像では、このようなパレット61の前面61a及び穴部61bの形状が崩れることなく正確に示される。また、特徴面SFに投影された画像では、パレット61の前面61aを特定するためのパレットの幅及び高さ寸法、及び一対の穴部61b間の寸法も測定可能な態様で示されている。特徴面SFに投影された画像中では、パレット61の前面61aの特徴が的確に示されている。すなわち、特徴面SFに投影された画像中では、前面61aの特徴を示す情報が、画像認識処理によって容易に認識できるように変換された形で表示されている。このように、特徴面設定部102は、パレット61の前面61aの特徴を示す情報を認識し易くなるような箇所に、特徴面SFを設定する。
【0040】
ここで、情報画像は、特徴面SFが荷役対象のパレット61の前面61a自体に設定されたときに、最も正確に前面61aの形状的特徴及び寸法的特徴を示すことができる。しかしながら、荷役対象のパレット61を特定できていない段階(物品の状態が未知の場合)では、当該パレット61の前面61a自体に特徴面SFを設定することは出来ない。従って、特徴面設定部102は、パレット61周辺の構造物の部位に対して、特徴面SFを設定する。特徴面設定部102は、図5(a)に示すように、棚60の前面60aに対して特徴面SFを設定する。各パレット61の前面61aは、前面60aに設定された特徴面SFと略一致するか、近接した位置にて略平行な状態で配置される。よって、棚60の前面60aに設定された特徴面SFに投影された情報画像は、各パレット61の前面61aの特徴を十分に示す画像となる。
【0041】
図5(b)に示すように、特徴面SF上に存在しているものは、どの視点から投影した画像であっても、実際にものが存在する位置に投影される。具体的には、棚60の前面60aの一方の端部P1及び他方の端部P2は、特徴面SF上に存在している。よって、視点V1,V2,V3のいずれの視点から投影しても、情報画像中の端部P1,P2の位置は一定である。それに対し、棚60の後面の端部P3は、視点V1から投影した場合、特徴面SF上の投影点P4の位置に投影される。そして、端部P3は、視点V2から投影した場合、特徴面SF上の投影点P4とは異なる投影点P5の位置に投影される。このように、三次元空間上で特徴面SF上に存在していないものは、情報画像中の位置も、視点によって変化する。一方、三次元空間上で特徴面SF上に存在するものは、視点によらず情報画像中で実際の形状的特徴や寸法的特徴などを維持する。なお、実際の撮影部32は、棚60を通り過ぎた視点V3の位置までは移動しないが、説明のために視点V3を例示した。
【0042】
図6において、ハッチングが示されている箇所は、特徴面SF上、又は特徴面SFに近接する位置に存在する箇所である。当該箇所は、視点が変わったとしても情報画像中での位置は略一定となる。ここでは、棚60の前面60a、及び各パレット61A,61Bの前面61Aa,61Baは、視点によらず、情報画像中で一定の位置及び大きさで示される。ここで、情報画像作成部103は、情報画像に対し、一つの画素に相当する寸法を対応付けている。すなわち、情報画像中の一画素が、実際の寸法としてはどの程度の大きさを示すかが一義的に決められている。よって、棚60の前面60a、及び各パレット61A,61Bの前面61Aa,61Baは、どの視点から投影したときの情報画像であるかに関わらず、情報画像中の大きさが一定となる。その一方、三次元空間上で特徴面SF上に存在していないものは、視点の変化によって情報画像中の位置が変動する。例えば、図6のハッチングを付した以外の箇所のうち、実線で示すものは、視点V1から見た時の様子を示し、一点鎖線は、視点V2から見た時の様子を示し、二点鎖線は、視点V3から見た時の様子を示す。
【0043】
演算部104(図2参照)は、上述のような第1の情報画像の画素とパレット61の前面61aの寸法との関係に基づいて、パレット61に関する演算を行う。すなわち、第1の情報画像中では、一画素に相当する実際の寸法が一義的に決められている。よって、演算部104は、荷役対象のパレット61の前面61aの実寸情報を記憶部108から読み出し、当該実寸情報と適合する物を情報画像中から抽出することで、前面61aを検出することができる。演算部104が情報画像の中で荷役対象のパレット61の前面61aを検出した時、パレット61の前面61aと情報画像を生成した時の特徴面は略一致している。特徴面SFの三次元位置及び姿勢は既知であるため、情報画像中のパレット61の検出位置に基づいてパレット61の三次元位置及び姿勢を演算でき、荷役対象のパレット61の前面61aを特定することができる。
【0044】
調整部106(図2参照)は、第1の情報画像を作成するための条件を調整することで、演算部104での演算精度を向上する。調整部106は、荷役対象のパレット61が検出された後、当該パレット61の前面61aと一致する特徴面SFを求める。具体的には、情報画像を作成した時の三次元面の方程式を構成するパラメータを変動させ、情報画像内のパレット61の前面61aの位置や姿勢を算出し直し、エッジテンプレートとの一致度が最大となる情報画像を与えるパラメータを求める。
【0045】
図2に戻り、物品検出装置100は、パレット61のピッチ角度θ1を演算することができる。そのため、情報画像作成部103は、パレット61のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する。また、演算部104は、第2の情報画像に基づいてパレット61のピッチ角度θ1を演算する。まず、情報画像作成部103及び演算部104がこれらの演算を行うために用いる公知の手法について説明する。
【0046】
情報画像作成部103は、周囲画像をパノラマ(正距円筒)画像に変換する公知の手法を用いることによって、図7(a)に示すようなパノラマ画像を作成する。演算部104は、パノラマ画像からハフ変換により鉛直直線の投影曲線を検出する公知の手法を用いる。また、演算部104は、検出した鉛直直線群のハフ空間上の位置からカメラ座標系における鉛直方向ベクトルを導出する公知の手法を用いる。
【0047】
具体的に、演算部104は、図7(a)のパノラマ画像の中からエッジ点を検出する。例えば、部屋の壁同士の角部CRには、鉛直方向に延びるような三次元直線が確認される。このような三次元直線は、パノラマ画像の中では湾曲曲線として示される。従って、角部CRのエッジ点を検出すると、図8(a)に示すような曲線を描くようなエッジ点列が検出される。図8(a)の横軸はパノラマ画像中の横位置を示し、縦軸はパノラマ画像中の鉛直位置を示す。演算部104は、各エッジ点についてハフ変換を行う。各エッジ点でのハフ変換後のパラメータ空間での投票位置を図8(b)に示す。同一の三次元直線上のエッジ点の投票位置はパラメータ空間上の1点で交わり高いスコアを示す。図8(b)の横軸は三次元直線の水平位置を示し、縦軸は三次元直線が垂直となす傾きを示す。演算部104は、図8(b)のパラメータ空間で高いスコアを示す位置として三次元直線を検出する。さらに、検出した三次元直線の水平位置と垂直となす傾きから三次元直線を含む3次元平面を特定する。角部CRの三次元直線に平行な二本以上の三次元直線が検出できれば、三次元平面の交線として、カメラ座標系における角部CRの三次元直線の方向ベクトルを推定する。このようなパノラマ画像において三次元直線を検出しその方向ベクトルを求める手法は、鉛直直線に限らず、鉛直方向に近い傾きを持つ三次元平行直線群に適用できる。さらに、当該手法においては多数の三次元平行直線群を活用することにより頑健性および精度を向上させたが、原理的には平行な三次元直線を少なくとも二本検出できればカメラ座標系における三次元直線の方向ベクトルを求めることができる。従って、情報画像作成部103及び演算部104は、以降の処理を行うことで、パレット61のピッチ角度θ1を演算する。
【0048】
情報画像作成部103は、第1の情報画像を用いることで検出されたパレット61の周囲の周囲画像に基づいて、第2の情報画像を作成する。情報画像作成部103は第2の情報画像を作成するにあたり、パレット61に荷62が積まれた第1の場合(図9(a)参照)と、パレット61に荷62が積まれていない第2の場合(図9(b)参照)における第2の情報画像を作成する。情報画像作成部103は、第1の場合において、撮影部32の天頂方向CL1(上下方向)を中心軸としたパノラマ画像を第2の情報画像として作成する。当該パノラマ画像を図10に示す。情報画像作成部103は、第2の場合において、撮影部32の光軸方向CL2を中心軸としたパノラマ画像を第2の情報画像として作成する。当該パノラマ画像を図11に示す。
【0049】
演算部104は、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びるパレット61に関するエッジ候補を少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する。また、演算部104は、第2の情報画像から、エッジ候補を、荷役対象の横方向の一方側(左側)、及び他方側(右側)のそれぞれから抽出する。ここでの荷役対象とは、荷62が積まれていないパレット61のみの場合と、荷62が積まれたパレット61及び荷62の組み合わせの場合の両方を含む。
【0050】
具体的に、図9(a)に示すように、パレット61に段ボール箱など直方体形状の荷62が積載されている場合、荷62の左右両端のエッジ62a,62bを含む略鉛直方向(特定方向)の三次元平行直線群が存在する。演算部104は、それらのエッジ62a,62bに基づいて得られる特定方向の三次元方向ベクトルVC1からパレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算できる。本実施形態では、エッジ62a,62bは、ピッチ角度検出部位として用いられる。
【0051】
まず、演算部104は、第1の情報画像を用いて、カメラ座標系におけるパレット61の位置及び姿勢を取得できる。従って、演算部104は、パノラマ画像上でのパレット61上の荷62のエッジ62a,62bの出現領域E1A,E2Aを予測できる(図9(a)及び図10参照)。演算部104は、パノラマ画像上の出現領域E1A,E2Aにおいてエッジ62a,62bの三次元直線の投影曲線を検出する。
【0052】
図9(a)に示すように、演算部104は、検出したエッジ62a,62bによる二本(あるいは二本以上)の三次元直線の投影曲線から、特定方向の三次元方向ベクトルVC1を推定する。演算部104は、推定した三次元方向ベクトルVC1から、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算する。三次元方向ベクトルVC2は、穴部61bが延びる方向を示しており、三次元方向ベクトルVC1と垂直であって、パレット61の横方向と垂直な方向である。
【0053】
図9(b)に示すように、荷62が積載されていないパレット61では、パレット61自身の上面の左右のエッジ61c,61dを含む略前後方向(特定方向)の三次元平行直線群が存在する。演算部104は、それらのエッジ61c,61dに基づいて得られる特定方向の三次元方向ベクトルVC1からパレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算できる。本実施形態では、エッジ61c,61dは、ピッチ角度検出部位として用いられる。
【0054】
まず、演算部104は、第1の情報画像を用いて、カメラ座標系におけるパレット61の位置及び姿勢を取得できる。従って、演算部104は、パノラマ画像上でのパレット61の上面のエッジ61c,61dの出現領域E1B,E2Bを予測できる(図9(b)及び図11参照)。演算部104は、図8で説明した手法により、パノラマ画像上の出現領域E1B,E2Bにおいてエッジ61c,61dの三次元直線の投影曲線を検出する。
【0055】
図9(b)に示すように、演算部104は、検出したエッジ61c,61dによる二本(あるいは二本以上)の三次元直線の投影曲線から、特定方向の三次元方向ベクトルVC1を推定する。演算部104は、推定した三次元方向ベクトルVC1から、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算する。三次元方向ベクトルVC2は、穴部61bが延びる方向を示しており、三次元方向ベクトルVC1そのものとなる。
【0056】
ここで、出現領域E1A,E2A,E1B,E2B内のエッジ点をハフ変換したときのスコアは、検出できた二次元投影線の長さに相当する。出現領域E1A,E2A,E1B,E2Bの縦長さが理想とする長さなので、それに対するスコアの比率により、出現領域E1A,E2A,E1B,E2B内にエッジが存在したかどうかを判定できる。よって、演算部104は、第2の情報画像のうち、エッジ候補を抽出するための特定領域において、エッジ点のハフ変換を行い、得られた直線の長さが所定以上の場合、特定領域内にエッジ候補が存在すると判断する。
【0057】
実際にはパレット61に荷62が積まれていないときに、演算部104が、荷62が積まれていると想定して処理した場合、図12(a)に示すように出現領域E1A,E2A内には十分なエッジが存在せず、この比率が小さくなることから、荷62が積まれていないと判定できる。実際には荷62が積まれているときに、荷62が積まれていないと想定して処理した場合、図12(b)のように出現領域E1B,E2B内のパレット61の上面の左右エッジは荷62に隠蔽されて投影曲線は得られずスコアの比率が小さくなり、荷62が積まれていると判定できる。多くの場合、どちらか一方だけが有効な結果を得るので、そちらを採用する。ただし荷62が積まれていると想定した場合のパノラマ画像では背景に多くの縦方向の直線が投影される場合がある。従って、荷62を積んでいないにもかかわらず、出現領域E1A,E2A内に直線が検出されることがある。このときは荷62を積んでないと想定した処理でも直線が得られる。よって両者で有効な結果を得た場合は、荷62がないと想定した処理での結果を採用する。
【0058】
以上より、情報画像作成部103は、天頂方向CL1を中心軸とした第2の情報画像と、光軸方向CL2を中心軸とした第2の情報画像の両方を作成する。また、演算部104は、どちらの第2の情報画像においても有効な結果を得た場合は、光軸方向CL2を中心軸とした第2の情報画像での結果を採用する。
【0059】
演算部104は、第1の情報画像で得たカメラ座標系におけるパレット61の位置及び姿勢と、第2の情報画像で得た穴部61bの方向の情報を、カメラ座標系とフォーク座標系との間のキャリブレーション手法で得た関係により、フォーク座標系に変換する。これにより、演算部104は、フォーク座標系での穴部61bの方向からパレット61のピッチ角度θ1を演算する。
【0060】
ここで、カメラ座標系とフォーク座標系との間のキャリブレーション手法について説明する。図13に示すように、撮影部32は、フォーク25のバックレストに固定されているため、フォーク25の上下方向の移動と共に上下方向へ移動する。これによりフォーク25の移動前後でカメラ座標系とフォーク座標系の関係は変わらない。なお、撮影部32の取り付け位置によってはフォーク25の移動前後でカメラ座標系とフォーク座標系の関係が変わる。この場合は、移動の度にカメラ座標系―フォーク座標系間キャリブレーションを行うか、フォークリフト50の内部センサからフォーク座標系の移動量を得て、カメラ座標系とフォーク座標系の関係を更新する必要がある。
【0061】
本実施形態では、フォークリフト50による作業開始前に、フォーク25に寸法既知の長方形のパネル40を配置する。このとき、前側の横エッジ40aの中央がフォーク座標系の原点に一致し、横エッジ40a,40bがフォーク座標系のY2軸と平行になり、縦エッジ40c,40dがフォーク座標系のX2軸と平行になる。つまりパネル40の中央には、パネル40の位置・姿勢を示すX4・Y4・Z4軸のパネル座標系(図13参照)を設定するが、それらが、フォーク座標系のX2・Y2・Z2軸と平行になる。
【0062】
次に、図14に示すように、情報画像作成部103は、周囲画像に基づいてフォーク25上面近傍に設定した特徴面に基づいて第1の情報画像を作成する。演算部104は、当該第1の情報画像からパネル40を検出し、カメラ座標系におけるパネル40の位置及び姿勢を演算する。このとき、パネル40のX4軸の方向は初期設定のままである。そのため、投影像とパネル40の上面図との間にはずれがある。従って、演算部104は、次の方法でX4軸、及びY4軸のカメラ座標系における方向を推定する。
【0063】
情報画像作成部103は、パレット61の上面の左右エッジの三次元方向ベクトルを求めたのと同様に、撮影部32の光軸方向を疑似的に鉛直方向とみなして周囲画像を図15に示すようなパノラマ画像に変換して第2の情報画像を作成する。また、演算部104は、当該第2の情報画像に基づいて、パネル40の左右の縦エッジ40c,40dのカメラ座標系における縦方向ベクトルを求める。
【0064】
情報画像作成部103は、パネル40の前後の横エッジ40a,40bの方向ベクトルを求めるために、撮影部32の真横方向を疑似的に鉛直方向とみなして周囲画像を図16に示すようなパノラマ画像に変換して第2の情報画像を作成する。また、演算部104は、当該第2の情報画像に基づいて、パネル40の上下の横エッジ40a,40bのカメラ座標系における横方向ベクトルを求める。
【0065】
演算部104は、パネル40の縦方向ベクトル及び横方向ベクトルから残り1軸の方向ベクトルを求めてカメラ座標系におけるパネルの姿勢を更新する。このように、姿勢が精度よく計測できたので投影像とパネル40の上面図との間のずれを解消することができる。位置推定精度を高めるために、カメラ座標系におけるパネルの姿勢を更新後の姿勢に固定して、情報画像作成部103及び演算部104は、第1の情報画像によるカメラ座標系におけるパネル40の位置を求めなおす。求めたカメラ座標系におけるパネル40の位置・姿勢を示すパネル座標系について、演算部104は、パネル40の中心からフォーク座標系原点へのオフセットを考慮して、カメラ座標系でのフォーク座標系の位置・姿勢を求める。ここでは、パネル座標系をパネル40の縦方向の半分の長さだけオフセットすることで、フォーク座標系に変換することができる。
【0066】
次に、図17図20を参照して、本実施形態に係る物品検出方法の内容について説明する。図17図20は、物品検出方法の処理内容を示すフロー図である。図17図20に示す処理内容は、物品検出装置100の制御部110によって実行される。ただし、図17図20に示す処理内容は一例に過ぎず、これに限定されるものではない。
【0067】
図17に示すように、制御部110の画像取得部101は、車体51の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得ステップを実行する(ステップS1)。特徴面設定部102及び情報画像作成部103は、周囲画像に基づいて、パレット61の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成ステップを実行する(ステップS2)。演算部104及び調整部106は、第1の情報画像に基づいて、パレット61の荷役対象部位の位置及び姿勢を演算する第1の演算ステップを実行する(ステップS3)。次に、情報画像作成部103は、パレット61のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成ステップを実行する(ステップS4)。演算部104は、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びるパレット61に関するエッジ候補を第1の演算ステップS3の演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算することで、ピッチ角度を演算する第2の演算ステップを実行する(ステップS5)。運転制御部107は、演算ステップS3,S5の演算結果に基づいてフォークリフト50の運転制御を行う運転制御ステップを実行する(ステップS6)。
【0068】
次に、図18図20を参照して、第2の情報画像作成ステップS4及び第2の演算ステップS5の詳細な内容について説明する。図18に示すように、情報画像作成部103は、周囲画像を取得する(ステップS10)。情報画像作成部103は、パレット61上に荷62があると想定して撮影部32の天頂方向を中心軸としたパノラマ画像を第2の情報画像として生成する(ステップS20)。演算部104は、パノラマ画像上でのパレット61上の荷62の縦エッジの出現領域E1A,E2A(図9(a)参照)を予測する(ステップS30)。演算部104は、出現領域E1A,E2A内のエッジ点をハフ変換する(ステップS40)。
【0069】
演算部104は、ハフ変換後のスコアが閾値以上か否かを判定する(ステップS50)。ステップS50において、スコアが閾値より小さいと判定された場合、演算部104は、荷有りではないフラグをたて(ステップS60)、図19の処理へ移行する。一方、ステップS50において、スコアが閾値以上であると判定された場合、演算部104は、荷有りフラグをたてる(ステップS70)。次に、演算部104は、出現領域E1A,E2A内の三次元直線の方向ベクトルを推定する(ステップS80)。演算部104は、方向ベクトルをパレット61の穴部61bの方向に変換したものを「G」とする(ステップS90)。
【0070】
図19に示すように、情報画像作成部103は、パレット61上に荷62がないと想定して撮影部32の光軸方向を中心軸としたパノラマ画像を第2の情報画像として生成する(ステップS120)。演算部104は、パノラマ画像上でのパレット61の上面のエッジの出現領域E1B,E2B(図9(b)参照)を予測する(ステップS130)。演算部104は、出現領域E1B,E2B内のエッジ点をハフ変換する(ステップS140)。
【0071】
演算部104は、ハフ変換後のスコアが閾値以上か否かを判定する(ステップS150)。ステップS150において、スコアが閾値より小さいと判定された場合、演算部104は、荷無しではないフラグをたて(ステップS160)、図20の処理へ移行する。一方、ステップS150において、スコアが閾値以上であると判定された場合、演算部104は、荷無しフラグをたてる(ステップS170)。次に、演算部104は、出現領域E1B,E2B内の三次元直線の方向ベクトルを推定する(ステップS180)。演算部104は、方向ベクトルをパレット61の穴部61bの方向に変換したものを「P」とする(ステップS190)。
【0072】
図20に示すように、演算部104は、荷無しフラグがたっているか否かを判定する(ステップS210)。ステップS210において荷無しフラグが立っていると判定された場合、演算部104は、「P」をパレット61の穴部方向Hとする(ステップS220)。一方、ステップS210において荷無しフラグが立っていないと判定された場合、演算部104は、荷有りフラグが立っているか否かを判定する(ステップS230)。ステップS230において荷ありフラグが立っていると判定された場合、演算部104は、「G」をパレットの穴部方向Hとする(ステップS240)。一方、ステップS230において荷有りフラグが立っていないと判定された場合、演算部104は、ピッチ角度計測は失敗であると判定し、図20に示す処理を終了する(ステップS250)。
【0073】
ステップS220,S240の後、演算部104は、カメラ座標系におけるパレット61の位置と姿勢とパレットの穴部方向Hをフォーク座標系に変換する(ステップS260)。これにより、演算部104は、フォーク座標系におけるパレット61の位置、姿勢、ピッチ角度を取得する(ステップS270)。ステップS270の処理が終了すると、図20に示す処理が終了する。
【0074】
次に、物品検出装置100で用いる撮影部32のキャリブレーション方法について、図21を参照して説明する。 まず、フォーク25にキャリブレーション用のパネル40を配置するステップを実行する(ステップS300)。次に、パネル40の中央部とフォーク座標系の原点との位置合わせを行うステップを実行する(ステップS310)。次に、パネル40の縦横エッジの方向に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成するステップを実行する(ステップS320)。なお、縦横エッジとは、無地のパネルの外枠の縦方向の左右2本のエッジと横方向の上下2本のエッジのことである。次に、第2の情報画像に含まれる、横方向へ延びるパネル40の横エッジの抽出を行うステップを実行する(ステップS330)。次に、第2の情報画像に含まれる縦方向に延びるパネル40の縦エッジの抽出を行うステップを実行する(ステップS340)。次に、ステップS330,S340で抽出されたエッジに基づいてカメラ座標系におけるパネル40の位置・姿勢を求め、フォーク座標系へ変換するステップを実行する(ステップS350)。以上により、図21に示す処理が完了する。
【0075】
次に、本実施形態に係る物品検出装置100、物品検出方法、及びキャリブレーション方法の作用・効果について説明する。
【0076】
本実施形態に係る物品検出装置100は、演算部104(第1の演算部)が、第1の情報画像に基づいて、荷役対象部位であるパレット61の前面61aの位置及び姿勢を演算することができる。また、物品検出装置100は、演算部104の演算結果に基づいて、パレット61のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する情報画像作成部103(第2の情報画像作成部)を備える。このため、情報画像作成部103は、パレット61のピッチ角度を演算するのに適した第2の情報画像を作成することができる。ここで、図9に示すように、第2の情報画像の中で、パレット61の前面61aの位置及び姿勢に基づいて、少なくとも2つのエッジ候補を抽出すれば、特定方向を示す三次元方向ベクトルVC1を演算することができる。また、特定方向を示す三次元方向ベクトルVC1に基づくことで、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算することができる。従って、物品検出装置100は、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びるパレット61に関するエッジ候補を少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、パレット61のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルVC2を演算する演算部104(第2の演算部)を備える。これにより、物品検出装置100は、デプスセンサなどの特別なセンサなどを用いなくとも、周囲画像から容易にパレット61のピッチ角度を演算することが可能となる。以上より、荷役対象であるパレット61のピッチ角度を容易に取得することができる。
【0077】
情報画像作成部103は第2の情報画像を作成するにあたり、物品に荷が積まれた第1の場合と、物品に荷が積まれていない第2の場合における第2の情報画像を作成し、第1の場合において、撮影部32の天頂方向CL1を中心軸とした第2の情報画像を作成し、第2の場合において、撮影部32の光軸方向CL2を中心軸とした第2の情報画像を作成してよい(図9参照)。これにより、演算部104は、パレット61に荷62が積まれているか否かに関わらず、パレット61のピッチ角度を演算することが可能となる。
【0078】
演算部104は、第2の情報画像から、エッジ候補を、荷役対象の横方向の一方側、及び他方側のそれぞれから抽出してよい。これにより、演算部104は、荷62の左右のエッジやパレット61の上面の左右のエッジなどの抽出し易い箇所にて、容易にエッジ候補を抽出することができる。
【0079】
情報画像作成部103は、天頂方向CL1を中心軸とした第2の情報画像と、光軸方向CL2を中心軸とした第2の情報画像の両方を作成し、演算部104は、どちらの第2の情報画像においても有効な結果を得た場合は、光軸方向CL2を中心軸とした第2の情報画像での結果を採用してよい。天頂方向CL1を中心軸とした場合、背景にエッジが多いため、正確性に劣る。従って、演算部104は、光軸方向CL2を中心軸とした第2の情報画像での結果を優先的に採用することで、ピッチ角度をより正確に演算することができる。
【0080】
演算部104は、第2の情報画像のうち、エッジ候補を抽出するための出現領域E1A,E2A,E1B,E2B(特定領域)において、エッジ点のハフ変換を行い、得られた直線の長さが所定以上の場合、出現領域E1A,E2A,E1B,E2B内にエッジ候補が存在すると判断してよい。これにより、演算部104は、エッジ候補が存在するか否かを容易に判断することができる。
【0081】
本実施形態に係るキャリブレーション方法は、物品検出装置100で用いる撮影部32のキャリブレーション方法であって、フォーク25にキャリブレーション用のパネル40を配置するステップと、パネル40の中央部とフォーク座標系の原点との位置合わせを行うステップと、パネル40の縦横エッジの方向に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成するステップと、第2の情報画像に含まれる、パネル40の縦エッジ40c,40dの抽出を行うステップと、第2の情報画像に含まれる、パネルの横エッジ40a,40bの抽出を行うステップと、を備える。
【0082】
このキャリブレーション方法によれば、フォーク25にパネル40を配置して位置合わせすることで、カメラ座標系の中におけるパネル40の位置関係から、フォーク座標系とカメラ座標系との位置関係を把握することが可能となる。また、第2の情報画像からパネル40の縦エッジ40c,40dの抽出を行うステップと、第2の情報画像からパネル40の横エッジ40a,40bの抽出を行うステップとが、実行される。そのため、カメラ座標系の中でのパネル40の位置関係をより正確に把握することができる。その結果、カメラ座標系を正確にフォーク座標系へ変換することができる。
【0083】
本実施形態に係る物品検出方法は、荷役する物品を検出する物品検出方法であって、物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得ステップS1と、周囲画像に基づいて、物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成ステップS2と、第1の情報画像に基づいて、荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算ステップS3と、物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成ステップS4と、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる物品に関するエッジ候補を第1の演算ステップS3の演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、エッジ候補から、物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算ステップS5と、を備える。
【0084】
この物品検出方法によれば、上述の物品検出装置100と同趣旨の作用・効果を得ることができる。
【0085】
本実施形態の効果を確認するための実験を行った。当該実験は、実験スペースにおいてリーチ型フォークリフトのバックレスト上端中央に固定した全方位カメラ(Ricoh ThetaV)で取得した周囲画像をノートPC(Thinkpad X1Extreme)により処理した。
【0086】
図18図20に示すような処理を行い、ピッチ傾斜したパレットのフォーク座標系における位置姿勢の画像計測実験を行った。実験スペースにて 「荷有無:2種×フォーク高さ;3種×パレット傾き:3種」という合計18枚の周囲画像を取得し、これらの周囲画像に基づいてパレットの位置姿勢を推定した。推定した値に基づいてフォークを制御したときに、フォークを安全にパレットの穴に差し込めるかを評価した結果を図22に示す。図22の四角形は、フォークを安全にパレットの穴に差し込めるための計測誤差の許容範囲AEを示す。図22に示すように、荷ありの2例(パレット検出に失敗)を除く16枚の周囲画像の全ての推定値(図中のドット)にてエラーが許容範囲AE内に収まり、良好な推定結果を得られた。
【0087】
本発明は、上述の実施形態に限定されるものではない。
【0088】
例えば、産業車両はフォークリフトに限定されず、バッテリーなどの動力源を備えたハンドリフト(パレットジャッキ)などであってもよい。また、物品はパレットに限定されない。
【0089】
寸法が既知であれば、パネル40の形状は正方形でもよい。この場合、縦エッジ及び横エッジの求め方は、パネル40が長方形の場合と同様である。
【0090】
また、縦エッジ40c,40dや横エッジ40a,40bに相当する部位を検出できれば、パネルの形状は必ずしも長方形や正方形でなくてもよい。例えば、寸法既知の図形がパネル上面に描かれており、第2の情報画像に基づいて、当該図形の左右の縦エッジのカメラ座標系における縦方向ベクトル、及び当該図形の上下の横エッジのカメラ座標系における横方向ベクトルを求めるようにしてもよい。なお、描かれる図形は、長方形または正方形であるのが好ましいが、縦エッジ40c,40dや横エッジ40a,40bに相当する部位を有していれば、その形状は問わない。
【0091】
キャリブレーションのより具体的な方法は、フォークに図形が描かれたパネルを配置し、当該図形に設定された基準位置とフォーク座標系の原点との位置合わせを行う。そして、図形のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成し、第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる図形のエッジの抽出を行う。最後に、第2の情報画像における特定方向を他の方向に変換して、図形のエッジの抽出を行う。
【0092】
[形態1]
荷役する物品を検出する物品検出装置であって、
前記物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得部と、
前記周囲画像に基づいて、前記物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成部と、
前記第1の情報画像に基づいて、前記荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算部と、
前記物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成部と、
前記第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる前記物品に関するエッジ候補を前記第1の演算部の演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、前記エッジ候補から、前記物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算部と、を備える、物品検出装置。
[形態2]
前記第2の情報画像作成部は前記第2の情報画像を作成するにあたり、物品に荷が積まれた第1の場合と、物品に荷が積まれていない第2の場合における第2の情報画像を作成し
第1の場合において、前記画像取得部の天頂方向を中心軸とした前記第2の情報画像を作成し、
第2の場合において、前記画像取得部の光軸方向を中心軸とした前記第2の情報画像を作成する、形態1に記載された物品検出装置。
[形態3]
前記第2の演算部は、前記第2の情報画像から、前記エッジ候補を、荷役対象の横方向の一方側、及び他方側のそれぞれから抽出する、形態1又は2に記載された物品検出装置。
[形態4]
前記第2の情報画像作成部は、
前記天頂方向を中心軸とした前記第2の情報画像と、
前記光軸方向を中心軸とした前記第2の情報画像の両方を作成し、
前記第2の演算部は、どちらの第2の情報画像においても有効な結果を得た場合は、前記光軸方向を中心軸とした前記第2の情報画像での結果を採用する、形態2に記載された物品検出装置。
[形態5]
前記第2の演算部は、前記第2の情報画像のうち、前記エッジ候補を抽出するための特定領域において、エッジ点のハフ変換を行い、得られた直線の長さが所定以上の場合、前記特定領域内に前記エッジ候補が存在すると判断する、形態1~4の何れか一項に記載された物品検出装置。
[形態6]
物品検出装置で用いる画像取得部のキャリブレーション方法であって、
フォークにキャリブレーション用のパネルを配置するステップと、
前記パネルの中央部とフォーク座標系の原点との位置合わせを行うステップと、
前記パネルの縦横エッジの方向に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成するステップと、
前記第2の情報画像に含まれる、前記パネルの縦エッジの抽出を行うステップと、
前記第2の情報画像に含まれる、前記パネルの横エッジの抽出を行うステップと、を備える、キャリブレーション方法。
[形態7]
荷役する物品を検出する物品検出方法であって、
物品検出装置の周囲を撮影した周囲画像を取得する画像取得ステップと、
前記周囲画像に基づいて、前記物品の荷役対象部位に関する情報を認識し易い状態に変換した第1の情報画像を作成する第1の情報画像作成ステップと、
前記第1の情報画像に基づいて、前記荷役対象部位の位置及び姿勢の少なくとも一方を演算する第1の演算ステップと、
前記物品のピッチ角度検出部位に関する情報を認識しやすい状態に変換した第2の情報画像を作成する第2の情報画像作成ステップと、
前記第2の情報画像に含まれる、特定方向へ延びる前記物品に関するエッジ候補を前記第1の演算ステップの演算結果に基づいて、少なくとも2つ抽出し、前記エッジ候補から、前記物品のピッチ角度を示す三次元方向ベクトルを演算する第2の演算ステップと、を備える、物品検出方法。
【符号の説明】
【0093】
32…撮影部(画像取得部)、50…フォークリフト(産業車両)、61…パレット(物品)、61a…前面(荷役対象部位)、62…荷、100…物品検出装置、101…画像取得部、103…情報画像作成部(第1の情報画像作成部、第2の情報画像作成部)、104…演算部(第1の演算部、第2の演算部)。
図1
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