(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024048729
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】研磨方法および研磨装置
(51)【国際特許分類】
B24B 1/04 20060101AFI20240402BHJP
B24B 37/00 20120101ALI20240402BHJP
H01L 21/304 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B24B1/04 D
B24B37/00 E
H01L21/304 622R
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022154804
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】504174135
【氏名又は名称】国立大学法人九州工業大学
(74)【代理人】
【識別番号】100197642
【弁理士】
【氏名又は名称】南瀬 透
(74)【代理人】
【識別番号】100099508
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 久
(74)【代理人】
【識別番号】100219483
【弁理士】
【氏名又は名称】宇野 智也
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵友
(72)【発明者】
【氏名】山本 颯真
【テーマコード(参考)】
3C049
3C158
5F057
【Fターム(参考)】
3C049AA07
3C049CB05
3C158AA07
3C158AA11
3C158AA16
3C158CB05
3C158DA17
3C158ED00
5F057AA33
5F057AA48
5F057BA11
5F057BB01
5F057BB03
5F057BB06
5F057BB09
5F057BB11
5F057BB12
5F057CA11
5F057CA19
5F057DA01
5F057FA11
5F057FA41
(57)【要約】
【課題】省電力化や小型化が可能であり、局所的な研磨も行いやすい研磨方法および研磨装置を提供する。
【解決手段】本発明の研磨方法は、ベース10と被研磨物2とを、ベース10と非接着な研磨素材粒子1を介して接触させつつ、縦波発生手段30からベース10に縦波3を供給し研磨素材粒子1を振動させて、被研磨物2の研磨素材粒子1と接触する側の表面2sを研磨するものである。また、研磨装置100は、ベース10と非接着な研磨素材粒子1を用いて被研磨物2を研磨するものであり、研磨素材粒子1に振動を与えるベース10と、ベース10が振動可能な状態でベース10を保持する保持手段20と、ベース10に供給する縦波3を発生させる縦波発生手段30と、を有する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースと被研磨物とを、前記ベースと非接着な研磨素材粒子を介して接触させつつ、
縦波発生手段から前記ベースに縦波を供給し前記研磨素材粒子を振動させて、前記被研磨物の前記研磨素材粒子と接触する側の表面を研磨する研磨方法。
【請求項2】
前記縦波の周波数が、前記ベースの共振周波数であり、前記ベースを共振させて前記研磨素材粒子を振動させる、請求項1に記載の研磨方法。
【請求項3】
前記縦波の周波数を経時的に変化させる、請求項1または2に記載の研磨方法。
【請求項4】
前記ベースが、金属またはガラス製の薄板状部材である、請求項1または2に記載の研磨方法。
【請求項5】
前記ベースの前記研磨素材粒子と接触する側の表面に、複数の凸部を有するマイクロパターンが形成されている、請求項1または2に記載の研磨方法。
【請求項6】
ベースと非接着な研磨素材粒子を用いて被研磨物を研磨する研磨装置であり、
前記研磨素材粒子に振動を与える前記ベースと、
前記ベースが振動可能な状態で前記ベースを保持する保持手段と、
前記ベースに供給する縦波を発生させる縦波発生手段と、
を有する研磨装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨方法および研磨装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ウエハ等の基板の加工では、その表面を所定の表面粗さに調整することなどを目的として研磨が行われる。基板の研磨は、砥石や研磨パッド、研磨布などの研磨部材を用いて行われている。例えば、ターンテーブルの上に固定された基板に、スピンドルに取り付けられた砥石を押し付けて、それぞれを回転させて研磨を行う方法が知られている。また、ターンテーブルに固定された研磨パッドや研磨布に、チャック等の保持部材に保持された基板を押し付けて、研磨剤を含むスラリーを供給しながら、それぞれを回転させて研磨を行う方法が知られている
【0003】
また、超音波を用いる研磨装置も提案されている。特許文献1には、固定砥粒を有するドレッサを超音波で振動させて、研磨パッドの表面を目立て(ドレッシング)するドレッシング装置を備えた研磨装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板と研磨部材を回転させて研磨を行う従来の研磨装置は、基板や研磨部材を回転させるためにモータが必要であるため、大きな電力を要するという問題や、モータは比較的大型であるため、装置全体の小型化が難しいという問題があった。さらに、基板の局所的な研磨が難しいという問題があった。
【0006】
また、スラリーを補充しながら研磨を行う研磨装置は、スラリーを供給するための供給装置が必要であり、さらに装置の小型化が難しかったり、スラリーの使用量が多くなりやすいという問題があった。
【0007】
特許文献1は、超音波を利用するものであるが、超音波の利用は研磨の補助的な機能である。特許文献1の研磨装置も、モータ等が必要であり、装置全体の小型化や、基板の局所的な研磨が難しかった。
【0008】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、省電力化や小型化が可能であり、局所的な研磨も行いやすい研磨方法および研磨装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、下記の発明が上記目的に合致することを見出し、本発明に至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の発明に係るものである。
<1> ベースと被研磨物とを、前記ベースと非接着な研磨素材粒子を介して接触させつつ、縦波発生手段から前記ベースに縦波を供給し前記研磨素材粒子を振動させて、前記被研磨物の前記研磨素材粒子と接触する側の表面を研磨する研磨方法。
<2> 前記縦波の周波数が、前記ベースの共振周波数であり、前記ベースを共振させて前記研磨素材粒子を振動させる、前記<1>に記載の研磨方法。
<3> 前記縦波の周波数を経時的に変化させる、前記<1>または<2>に記載の研磨方法。
<4> 前記ベースが、金属またはガラス製の薄板状部材である、前記<1>から<3>のいずれかに記載の研磨方法。
<5> 前記ベースの前記研磨素材粒子と接触する側の表面に、複数の凸部を有するマイクロパターンが形成されている、前記<1>から<4>のいずれかに記載の研磨方法。
<6> ベースと非接着な研磨素材粒子を用いて被研磨物を研磨する研磨装置であり、前記研磨素材粒子に振動を与える前記ベースと、前記ベースが振動可能な状態で前記ベースを保持する保持手段と、前記ベースに供給する縦波を発生させる縦波発生手段と、を有する研磨装置。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、省電力化や小型化が可能であり、局所的な研磨も行いやすい研磨方法および研磨装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】本発明の研磨方法を説明するための模式図である。
【
図3】
図2のAの領域における、研磨素材粒子の動きを説明するための図である。
【
図10】本発明の研磨方法を説明するための模式図である。
【
図11】本発明の研磨方法を説明するための模式図である。
【
図15】実施例1の研磨前後での被研磨物(銅ウエハ)表面のAFM画像である。
【
図17】実施例3で用いた研磨装置の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明の実施の形態を詳細に説明するが、以下に記載する構成要件の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はその要旨を変更しない限り、以下の内容に限定されない。なお、本明細書において「~」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
<研磨方法>
本発明は、ベースと被研磨物とを、前記ベースと非接着な研磨素材粒子を介して接触させつつ、縦波発生手段から前記ベースに縦波を供給し前記研磨素材粒子を振動させて、前記被研磨物の前記研磨素材粒子と接触する側の表面を研磨する研磨方法(以下、「本発明の研磨方法」と記載する場合がある。)に関するものである。
【0015】
<研磨装置>
また、本発明は、ベースと非接着な研磨素材粒子を用いて被研磨物を研磨する研磨装置であり、前記研磨素材粒子に振動を与える前記ベースと、前記ベースが振動可能な状態で前記ベースを保持する保持手段と、前記ベースに供給する縦波を発生させる縦波発生手段と、を有する研磨装置(以下、「本発明の研磨装置」と記載する場合がある。)に関するものである。本発明の研磨装置は、本発明の研磨方法を行うことができる。
【0016】
本発明の研磨方法のように、縦波発生手段からベースに縦波を供給することで、縦波の振動やこれに起因するベースの振動により、研磨素材粒子が振動しながら被研磨物と接触するため、被研磨物の研磨素材粒子と接触する側の表面(研磨面)を研磨することができる。このような研磨方法および研磨装置とすることにより、モータなどを必須としないので、省電力化や装置の小型化が可能である。また、被研磨物の局所的な研磨を容易に行うことができる。さらに、研磨素材粒子の使用量を低減することができる。
【0017】
以下、
図1~
図11に基づいて、本発明の研磨方法および本発明の研磨装置について説明する。また、同じの要素には同じ符号を付して重複する説明を省略する場合がある。
【0018】
<実施の形態1>
図1は、本発明の研磨方法を行うことができる、本発明の研磨装置の一例の模式図である。
図1に示す研磨装置100は、被研磨物を研磨するための研磨素材粒子に振動を与えるベース10と、ベース10を保持する保持手段20と、縦波発生手段30と、を有する。
【0019】
図2は、研磨装置100を用いて、被研磨物2を研磨する研磨方法を説明するための模式図である。
図3は、
図2のAの領域における、研磨素材粒子1の動きを説明するための図である。
【0020】
図2,
図3に示すように、ベース10と被研磨物2とが研磨素材粒子1を介して接触した状態で、縦波発生手段30から発生した縦波3がベース10に入射する(供給される)と、縦波3がベース10に吸収されベース10が振動したり、ベース10を透過した縦波の振動が研磨素材粒子1に伝搬されたりする。ベース10や透過した縦波の振動により、ベース10と非接着な研磨素材粒子1は、弾き飛ばされながら、振動しない或いは振動が極めて小さい節の部分Xに集まるように、ベース10上を移動する。この研磨素材粒子1が揺動するときに、研磨素材粒子1が被研磨物2の研磨面2sと衝突して研磨面2sを削り取る。これによって、被研磨物2の研磨面2sが研磨される。振動しない或いは振動が極めて小さい節の部分Xに集まった研磨素材粒子1は、さほど研磨面2sを削り取らない傾向にある。
【0021】
また、縦波発生手段30から発生させる縦波3の周波数や振幅を制御することで、研磨素材粒子1の動きを制御し、研磨することができる。
図4は、異なる周波数のクラニド図形である。周波数を変化させることにより
図4に示すように振動しない或いは振動が極めて小さい節(研磨素材粒子1が集まっている部分)を変化させることができるので、様々な研磨状態を実現できる。
【0022】
(ベース10)
ベース10は、研磨素材粒子1に振動を与えるための部材である。研磨装置100においては、ベース10上に研磨素材粒子1が供給され、被研磨物2が、研磨素材粒子1が供給されたベース10上に載置され、ベース10と被研磨物2の間の研磨素材粒子1により研磨が行わる。なお、ベース10は水平に配置されているが、水平方向に対して0°超12°以下(好ましくは0.5°以上10°以下)程度傾けた状態で配置してもよい。
【0023】
ベース10は、薄板状部材であり、厚みが0.5~10.0mm程度である。例えば、ベース10として、振動板(ダイヤフラム)を用いることができる。
【0024】
また、ベース10は、単層であっても、積層体であってもよい。また、内部に空洞を有する薄肉中空構造体であってもよい。ベース10の材質としては、金属製、ガラス製、樹脂製など特に限定されず、被研磨物2の材質や研磨素材粒子1の種類に応じて適宜選択すればよい。ベース10が積層体である場合は、各層は、同一の材質で形成されてもよく、異なる材質で形成されてもよい。
【0025】
ベース10の形状は特に限定されず、例えば、多角形形状(三角形、四角形、六角形、八角形など)、円形状、リング状の薄板とすることができる。また、ベース10の大きさは、例えば、四角形状である場合、長さが100~1000mm、幅が100~1000mmとすることができ、円形状である場合、直径が100~1000mmとすることができる。
【0026】
また、ベース10は、研磨素材粒子1と接触する側の面に複数の凸部を有するマイクロパターンが形成されているものを用いてもよい。表面にマイクロパターンが形成されたベース10を用いることで、凸部により研磨素材粒子1の移動を制限し、被研磨物2に対して平行な移動を、被研磨物2に対して垂直な移動に変換することができる。マイクロパターンとは、マイクロスケールの凸部が規則的または不規則に形成された配列構造である。例えば、高さが0.5~10μm、底面の面積が0.7~100μm2の凸部が、0.5~10μmの間隔で形成された構造などである。また、凸部の形状は特に限定されず、例えば、四角錐や、円錐、四角錐台、円錐台などとすることができる。このような構造は、薄板状部材の表面を加工してマイクロパターンを形成させたり、研磨パッドのような表面にマイクロパターンが形成された部材を、振動板のような薄板状部材と重ね合わせた積層体としたりすることで作製することができる。
【0027】
(研磨素材粒子1)
研磨素材粒子1は、被研磨物2の研磨面2sを削るための硬質の微小粒子である。研磨素材粒子1は、ベース10には非接着(固着されていない状態)であり、ベース10や被研磨物2の上に供給されて用いられる。研磨素材粒子1の粒径は、目的に応じて適宜選択される。通常、0.01~30μm、好ましくは0.1~1μm程度である。その形状は特に限定されず、球状や、多角形状、不定形状など任意である。研磨素材粒子1としては、ダイヤモンド、立方晶窒化ホウ素、炭化ケイ素、酸化アルミニウム、ジルコニア、チタニア、セリア、シリカ、樹脂(アクリル等の複合体など)などが挙げられる。これらは1種類で用いても、2種類以上を併用してもよい。
【0028】
(被研磨物2)
被研磨物2は、研磨装置100によって研磨される対象物である。被研磨物2の形状は特に限定されず、多角形形状(四角形、三角形、六角形、六角形など)、円形状、リング状等の平板や、柱状体、筒状体等の立体物など用途に応じた形状のものを用いることができる。例えば、被研磨物2としては、シリコンウエハ、サファイアウエハ、化合物半導体ウエハ(SiCウエハ、金属窒化ガリウム基板等)、ガラス、磁気ディスクなどの基板が挙げられる。また、被研磨物2として立体物を用いた場合には、立体物の特に外周面等を研磨することが好ましい。
【0029】
(保持手段20)
保持手段20は、ベース10の下方側に設けられた、ベース10を保持する部材である。保持手段20は、縦波発生手段30からベース10に縦波が放射されたときに、ベース10が振動できる状態でベース10を保持している。
【0030】
(縦波発生手段30)
縦波発生手段30は、ベース10に供給する縦波3を発生させる手段である。縦波3は、媒質の振動が波の進行方向に対して平行である疎密波である。研磨装置100において、縦波発生手段30は、ベース10の側面側に離隔して配置されており、縦波3の振動を非接触でベース10に与えることができる。なお、本実施の形態では、縦波3の進行方向に対して、ベース10の側面10b(
図2参照)は略垂直に配置されているが、これに限定されるものではない。仕様などにより縦波3がベース10の側面10bに±20°の範囲の角度で入射するように傾けてもよい。
【0031】
縦波発生手段30としては、例えば、周波数が10Hz~50kHz(好ましくは、15Hz~40kHz)の音波(縦波)を発生する音源を用いることができ、発生した音波がベース10に向けて放射されるように配置される。音源としては、ダイナミック式、圧電式、静電式、ソレノイド式など種々の方式のスピーカーなどを用いることができる。発生させる音波の周波数等の制御は、オーディオやパーソナルコンピュータ、スマートフォン、タブレットなどの再生機器により行うことができる。再生機器から所定の周波数の音声信号をアンプに出力し、アンプで音声信号を増幅しスピーカーに出力すると、スピーカーは入力された音声信号を変換し所定の周波数の音波を発生させる。なお、発生させる音波の周波数等の制御の際、スマートフォン、タブレットなどの携帯端末装置で行うことで、現場にて研磨状況を確認しながら周波数の調整、電源のON,OFFなどを行うことが可能となり、利便性が向上する。また、携帯端末装置を用いることで、例えば、サーバーなどに蓄積された周波数パターン情報をインターネット経由で携帯端末装置にダウンロードし、携帯端末装置より周波数パターン情報に従った音声信号をアンプに出力することで、様々な研磨パターンを迅速に実現することができる。
【0032】
なお、縦波発生手段30は、縦波3の振動を接触または非接触でベース10に与えることができるように配置すればよいので、縦波発生手段30は、ベース10の上方や下方に離隔して配置してもよく、ベース10の側面側や、上方、下方に接続部材を介して配置してもよい。縦波3をベース10の上方や下方から入射させる場合、縦波3の進行方向は、ベース10の作用面(研磨素材粒子1と接する面)と反対側の面10a(
図2参照)に略垂直な方向に限定されず、所定の角度で傾けてもよい。仕様等に応じて縦波3の進行方向は適宜設定でき、ベース10の作用面の反対側の面10aに垂直な線と、縦波3の進行方向に平行な線とがなす鋭角側の角度(以下、「角度θ」という。)は、0°~90°の範囲で適宜調整することができる。例えば、縦波3を、作用面の反対側の面10aに入射させるときの角度θは0°~20°程度とでき、縦波3を側面10bに入射させるときの角度θは70°~90°程度とできる。
【0033】
また、2以上の縦波発生手段30を配置してもよい。2以上の縦波発生手段30を有する場合、各縦波発生手段は、同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。また、それぞれ独立に制御することができるので、各縦波発生手段から、同一の縦波を発生させてもよいし、異なる縦波を発生させてもよいし、同時に縦波を発生させてもよいし、段階的に縦波を発生させてもよい。
【0034】
図5~
図7は、本発明の研磨装置の一例の模式図であり、研磨装置100のベース10と縦波発生手段30の配置を変更した変形例である。
図5~
図7の(a)はベース10の上方から見た平面模式図であり、(b)はベース10の側面側から見た側面模式図である。
図5は、縦波発生手段30をベース10の下方に離隔して配置した本発明の研磨装置の模式図である。
図6は、ベース10の下方に接続部材20a(保持部材)を介して縦波発生手段30を配置した本発明の研磨装置の模式図である。接続部材20aは、縦波発生手段30で発生した縦波の振動を伝達できる材質で構成され、縦波の振動を伝達可能な状態で、ベース10と縦波発生手段30を接続する。
図7は、4つの縦波発生手段30を配置したものであり、四角形状のベース10の各側面側に、縦波発生手段30を離隔して配置した本発明の研磨装置の模式図である。
【0035】
(研磨)
図8は、研磨装置100を用いた本発明の研磨方法の一例のフロー図である。
図8に示す研磨装置100を用いた研磨では、まず、ベース10の上に研磨素材粒子1を供給する(S1-1)。次いで、被研磨物2を、研磨素材粒子1が供給されたベース10の上に押圧する(S1-2)。さらに、縦波発生手段30から、ベース10の共振周波数(例えば、10~50000Hzや100~2000Hz)の縦波(音波)を発生させ、ベース10を共振させることで、研磨素材粒子1を振動させ、被研磨物2を研磨する(S1-3)。
【0036】
図8に示す研磨方法のように、ベース10を共振させることで、研磨素材粒子1を強く振動させることができ、研磨力が増大する。ベース10の共振周波数は、ベース10の材質や大きさによって異なるものであるため、縦波(音波)の周波数や振幅(音量・音圧)などを変えながら、縦波を発生させて、研磨素材粒子1が振動する条件に調整してもよい。また、縦波発生手段30とベース10との間隔を変更することで条件を調整してもよい。
【0037】
また、経時的に縦波(音波)の周波数を変えて研磨を行うことが好ましい。このようにすることで、被研磨物をより均一に研磨することができる。
【0038】
なお、発生させる縦波(音波)の周波数は、共振周波数に限定されるものでなく、振幅(音量・音圧)を大きくするなどして、研磨素材粒子1を振動させてもよい。
【0039】
図9は、研磨装置100を用いた本発明の研磨方法の他の例のフロー図である。
図9に示す研磨装置100を用いた研磨では、まず、ベース10の上に研磨素材粒子1を含むスラリーを供給する(S2-1)。次いで、被研磨物2を、研磨素材粒子1を含むスラリーが供給されたベース10の上に押圧する(S2-2)。さらに、縦波発生手段30から、ベース10の共振周波数の縦波(音波)を発生させ、ベース10を共振させることで、研磨素材粒子1を振動させ、被研磨物2を研磨する(S2-3)。
【0040】
図8に示す研磨方法は、研磨素材粒子1を用いて乾式で研磨を行うものであるのに対して、
図9に示す研磨方法は、研磨素材粒子1を含むスラリーを用いて湿式で研磨を行うものである。このように、本発明の研磨方法は、湿式および乾式のいずれの方式で行ってもよい。研磨素材粒子1を含むスラリーは特に限定されず、被研磨物2の種類や研磨目的等に応じて、湿式研磨の分野において使用されているスラリー(研磨液)の中から適宜選択して用いることができる。
【0041】
<実施の形態2>
図10は、本発明の研磨方法の他の例を説明するための模式図である。
図1に示す研磨装置100を用いる研磨方法は、被研磨物をベースの上面に接触させて研磨を行うものであるのに対して、
図10に示す研磨装置110を用いる研磨方法は、被研磨物をベースの下面に接触させて研磨を行うものである。
【0042】
図10に示す研磨装置110は、ベース11と、縦波発生手段31と、被研磨物2を載置する載置台2Tとを有する。ベース11は、振動可能な状態で被研磨物2上に載置され、被研磨物2を研磨するための研磨素材粒子1に振動を与える部材である。ベース11の材質や形状は、ベース10と同様である。また、縦波発生手段31は、縦波発生手段30と同様であり、縦波の振動を接触または非接触でベース11に与えることができれば、その数や配置も特に限定されない。
【0043】
研磨装置110においては、載置台2T上に被研磨物2が載置され、被研磨物2の上に研磨素材粒子1が供給され、その上にベース11が載置される。ベース11を押し当てつつ、縦波発生手段31から縦波を発生させ、ベース11と被研磨物2の間の研磨素材粒子1を振動させることで研磨を行う。ベース11への縦波の供給の仕方(縦波の周波数や振幅など)は、研磨装置100を用いた研磨方法と同様であり、また、湿式および乾式のいずれの研磨方式で行ってもよい。
【0044】
<実施の形態3>
図11は、本発明の研磨方法の他の例を説明するための模式図である。研磨装置100、110を用いる研磨方法は、被研磨物の一方の面を研磨するものであるのに対して、
図11に示す研磨装置120を用いる研磨方法は、被研磨物の両面の研磨を行うものである。
【0045】
図11に示す研磨装置120は、被研磨物2が載置され、被研磨物2を研磨するための研磨素材粒子1に振動を与えるベース12aと、ベース12aに供給する縦波を発生させる縦波発生手段32aと、被研磨物2上に載置され、被研磨物2を研磨するための研磨素材粒子1に振動を与えるベース12bと、ベース12bに供給する縦波を発生させる縦波発生手段32bと、を有する。ベース12a,12bは、それぞれ振動可能な状態で保持されている。ベース12a,12bの材質や形状は、ベース10と同様であり、ベース12aとベース12bは同一の構成であっても、異なる構成であってよい。また、縦波発生手段32a,32bは、縦波発生手段30と同様であり、縦波の振動を接触または非接触でベース12a,12bに与えることができれば、その数や配置も特に限定されない。
【0046】
研磨装置120においては、まず、ベース12a上に研磨素材粒子1が供給され、その上に被研磨物2が載置される。次いで、被研磨物2の上に研磨素材粒子1が供給され、その上にベース12bが載置される。このようにして、被研磨物2を2枚のベース12a,12bで挟んだ状態で、縦波発生手段32a,32bから縦波を発生させ、研磨素材粒子1を振動させることで研磨を行う。ベース12a,12bへの縦波の供給の仕方(縦波の周波数や振幅など)は、研磨装置100を用いた研磨方法と同様であり、また、湿式および乾式のいずれの研磨方式で行ってもよい。
【0047】
なお、研磨装置100,110,120は、本発明の研磨方法を行うことができる研磨装置の一例を示すものであり、本発明の研磨方法はこれらの研磨装置を用いるものに限定されない。
【実施例0048】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を変更しない限り以下の実施例に限定されるものではない。
【0049】
<実施例1>
ベース(振動板):ステンレス板(100mm×100mm×厚さ0.5mm)
保持手段:ボルト
縦波発生手段:スピーカー(ONKYO 25W 3.5Ω)
被研磨物:銅ウエハ(20mm×20mm×厚さ0.7mm)
研磨素材粒子:ダイヤモンド砥粒(粒径0.1μm)1g
【0050】
(研磨)
ステンレス板とスピーカーを、ボルトを介してつなぎ、研磨装置を作製した。まず、フランジ付きナットのフランジ部分にワッシャーを接着剤で固定し、ステンレス板の裏面の中央部に、両面テープでワッシャーを貼り付け固定した。また、スピーカーのセンターキャップに接着剤で接合部材を固定した。次いで、接合部材とボルトの一方の先端をねじ等によって螺着し、スピーカーのセンターキャップとボルトの一方の先端を、接合部材を介して固定した。さらに、ボトルの他方の先端に、ステンレス板の裏面のフランジ付きナットを嵌合して、ボルトとステンレス板を固定した。
図12に、作製した研磨装置の写真を示す。
【0051】
次いで、ステンレス板上にダイヤモンド砥粒を散布し、その上に銅ウエハを載せた。さらに、スピーカーにアンプを接続し、アンプにスマートフォンを接続した。スポンジを用いて、銅ウエハを上からステンレス板に押圧しながら、スマートフォンから所定の周波数(10Hz~20kHz)の音声信号を出力し、スピーカーから所定の周波数の音波を発生させて、銅ウエハの研磨を行った。
図13に、研磨時の写真を、
図14に、研磨時の模式図を示す。
【0052】
図15に研磨前と研磨後の銅ウエハの表面をAFMで測定した画像を示す。また、研磨レートは4.7nm/minであった。
【0053】
<実施例2>
ダイヤモンド砥粒1gに変えて、ダイヤモンド砥粒のスラリー(ダイヤモンド砥粒0.3g、水10mL、クエン酸2g、過酸化水素0.5g)を用いた以外は、実施例1と同様にして、銅ウエハを研磨した。
実施例2においても、実施例1と同様に銅ウエハを研磨することでき、研磨レートは40nm/minであった。
【0054】
<実施例3>
ベース(振動板):ガラス板(一辺が80mmの正八角形×厚さ3mm)
保持手段:塩ビ管(外径180mm×厚み5mm×高さ170mm)
縦波発生手段:スピーカー(ONKYO 25W 3.5Ω)
被研磨物:銅ウエハ(20mm×20mm×厚さ0.7mm)
研磨素材粒子:ダイヤモンド砥粒(粒径0.1μm)1g
【0055】
(研磨)
塩ビ管の内部にスピーカーを配置し、塩化ビニル管の上端にガラス板を置き、研磨装置を作製した。
図16に、作製した研磨装置の写真を、
図17に、作製した研磨装置の模式図を示す。
【0056】
次いで、ガラス板上にダイヤモンド砥粒を散布し、その上に銅ウエハを載せた。さらに、スピーカーにアンプを接続し、アンプにスマートフォンを接続した。スポンジを用いて、銅ウエハを上からガラス板に押圧しながら、スマートフォンから所定の周波数(10Hz~20kHz)の音声信号を出力し、スピーカーから所定の周波数の音波を発生させて、銅ウエハの研磨を行った。