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特開2024-4879ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む分解性樹脂組成物、それを含む成形体及びその製造方法、並びに分解性樹脂組成物の分解物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004879
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む分解性樹脂組成物、それを含む成形体及びその製造方法、並びに分解性樹脂組成物の分解物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08L 23/00 20060101AFI20240110BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20240110BHJP
   C08K 5/098 20060101ALI20240110BHJP
   C08F 8/50 20060101ALI20240110BHJP
   C08F 10/06 20060101ALI20240110BHJP
   C08L 101/16 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C08L23/00
C08L1/00
C08K5/098
C08F8/50
C08F10/06
C08L101/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104754
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】武田 正
(72)【発明者】
【氏名】パク ミンソン
【テーマコード(参考)】
4J002
4J100
4J200
【Fターム(参考)】
4J002AB012
4J002AB022
4J002AB032
4J002BB031
4J002BB041
4J002BB051
4J002BB061
4J002BB071
4J002BB081
4J002BB111
4J002BB151
4J002BB171
4J002BB241
4J002BD151
4J002EG046
4J100AA02Q
4J100AA03P
4J100CA01
4J100CA04
4J100CA31
4J100HA51
4J100JA58
4J200AA04
4J200BA07
4J200BA38
4J200DA01
4J200DA17
4J200EA11
(57)【要約】
【課題】これまで、十分な強度及び熱分解性又は生分解性を有し、汎用プラスチックとしての加工性の高いポリオレフィンを含む樹脂組成物が得られていなかった。
【解決手段】ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む、分解性樹脂組成物によって達成される。また、分解のための加熱前には汎用プラスチックとして十分な強度を有する一方、分解のための加熱によって、ポリオレフィンを含む樹脂が分解され得る成形体を提供することができる。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む、分解性樹脂組成物。
【請求項2】
前記ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンからなる群から選択される、請求項1に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項3】
前記ポリオレフィンは、ポリプロピレン又はプロピレン-エチレン共重合体である、請求項2に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項4】
前記有機酸金属塩の有機酸は、C~C22の脂肪族カルボン酸及びC~C22の芳香族カルボン酸からなる群から選択される、請求項1に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項5】
前記カルボン酸は、モノカルボン酸である、請求項4に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項6】
前記有機酸金属塩の金属は、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、錫、ランタン、セリウム、タングステン、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択される、請求項1に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項7】
前記セルロース系化合物は、前記ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、1~60質量部含まれる、請求項1に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項8】
前記有機酸金属塩は、前記ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部含まれる、請求項1に記載の分解性樹脂組成物。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の分解性樹脂組成物を含む、成形体。
【請求項10】
ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を混練する工程を含む、請求項9に記載の成形体の製造方法。
【請求項11】
ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む分解性樹脂組成物を40℃~100℃で加熱する工程を含む、前記分解性樹脂組成物の分解物の製造方法。
【請求項12】
前記加熱を1週間~6ヵ月行う、請求項11に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む分解性樹脂組成物、それを含む成形体及びその製造方法、並びに分解性樹脂組成物の分解物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンを含む汎用プラスチックは、フィルム、シートなどの形態で、食品包装や農業分野にて幅広く使用されている。これらの汎用プラスチックは、様々な形態で利用されているため、ペットボトルとは異なり、リサイクルが非常に困難であり、多くの場合は焼却処分されている。しかし、焼却には多くの熱エネルギーを必要とするという問題がある。また、回収されずにごみとして土壌中に長期間放置された場合、ポリオレフィンは微生物等によって極めて分解されにくいため、土壌の環境破壊を引き起こす。そのため、土壌中や堆肥コンポスト中で低分子量化され、微生物によって水と二酸化炭素に分解され得る、ポリオレフィンを含む樹脂組成物が求められている。
【0003】
特許文献1には、ポリプロピレン85%~70%に生分解性添加剤30~15%の割合で混合成形することによって、業務用の食器としての実用性が得られる一方、熱への暴露又は土壌中への放置によって分解される、プラスチック食器の製造方法が開示されている。しかしながら、この方法では、ポリプロピレンと比べて高価である生分解性添加剤の添加量が15%以上と多く、得られる材料を安価にすることが困難であり、汎用プラスチックとして使用することが現実的でない。また、生分解性添加剤の少量添加では、効果が得られにくいため、短時間での分解には不向きであった。
【0004】
特許文献2及び特許文献3には、デンプン由来のバイオマス材料と、ポリオレフィン系樹脂と、酸化分解促進剤とを含む樹脂組成物を開示している。しかしながら、ポリオレフィン系樹脂へのデンプンの配合は、デンプンに含まれるアミロースの性質から、熱分解性又は生分解性に有利であるものの、その構造から、汎用プラスチックとしての強度が不十分であり、用途が限られるという欠点があった。
【0005】
特許文献4には、ポリオレフィンである熱可塑性樹脂中にセルロース繊維を分散してなるセルロース繊維樹脂成形体を開示している。しかしながら、この材料は汎用プラスチックとして十分な強度は得られるものの、熱分解性又は生分解性が乏しく、土壌中での分解用途には適さなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2000-312638号公報
【特許文献2】特開2020-122111号公報
【特許文献3】特開2009-227777号公報
【特許文献4】特開2020-193262号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の技術では、酸化分解促進剤の少量添加で、十分な強度及び熱分解性又は生分解性を有し、汎用プラスチックとしての加工性の高いポリオレフィンを含む樹脂組成物が得られていなかった。
【0008】
本発明は、前記課題を解決すべくなされたものであり、十分な機械特性を有するとともに優れた熱分解性又は生分解性を有し、容易に低分子量化することが可能な、分解性樹脂組成物、それを含む成形体及びその製造方法、並びに分解性樹脂組成物の分解物の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは前記課題について鋭意検討した結果、本発明に到達した。すなわち、本発明の目的は、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む、分解性樹脂組成物によって達成される。
【0010】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられるポリオレフィンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンからなる群から選択されることが好ましい。
【0011】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられるポリオレフィンは、ポリプロピレン又はプロピレン-エチレン共重合体であることが好ましい。
【0012】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられる有機酸金属塩の有機酸は、C~C22の脂肪族カルボン酸及びC~C22の芳香族カルボン酸からなる群から選択されることが好ましい。
【0013】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられるカルボン酸は、モノカルボン酸であることが好ましい。
【0014】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられる有機酸金属塩の金属は、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、錫、ランタン、セリウム、タングステン、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択されることが好ましい。
【0015】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられるセルロース系化合物は、前記ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、1~60質量部含まれることが好ましい。
【0016】
本発明の分解性樹脂組成物に用いられる有機酸金属塩は、前記ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部含まれることが好ましい。
【0017】
本発明はまた、本発明の組成物を含む成形体にも関する。
【0018】
本発明はまた、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を混練する工程を含む、本発明の成形体の製造方法にも関する。
【0019】
本発明はまた、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む分解性樹脂組成物を40℃~100℃で加熱する工程を含む、分解性樹脂組成物の分解物の製造方法にも関する。
【0020】
本発明の分解性樹脂組成物の分解物の製造方法において、加熱を1週間~6ヵ月行うことが好ましい。
【発明の効果】
【0021】
本発明の分解性樹脂組成物によれば、分解のための加熱前には汎用プラスチックとして十分な強度を有する一方、分解のための加熱によって、ポリオレフィンを含む樹脂が分解され得る成形体を提供することができる。
【0022】
本発明の分解性樹脂組成物の分解物の製造方法によれば、加熱によって、ポリオレフィンを含む樹脂が分解されて、微生物等に十分に分解され得る低分子量の分解物に変化させる方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
[分解性樹脂組成物]
以下、まずは本発明の分解性樹脂組成物について詳細に説明する。本発明の分解性樹脂組成物は、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含むことを特徴とする。
【0024】
本発明の「分解性」とは、熱又は微生物等によって分解することが可能であることを意味する。
【0025】
[ポリオレフィンを含む樹脂]
一実施形態において、ポリオレフィンは、C~C12のオレフィン単量体から選択される少なくとも一つ以上のホモポリマー、コポリマー、又はターポリマーであり得る。
【0026】
~C12のオレフィン単量体は、1個以上の二重結合を有するC~C12のアルケンであって、水素がフッ素、塩素、臭素などのハロゲン又はC~C18のアルキル基によって置換されていてもよい。好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン、ペンテン、ヘキセン、ヘプテン、オクテン、デセン、ウンデセン、ドデセン、及びテトラフルオロエチレンからなる群から選択されてもよく、より好ましくはエチレン及びプロピレンである。
【0027】
一実施形態において、ポリオレフィンは、C~C12のオレフィン単量体とオレフィン単量体と共重合可能な他のモノマーとのコポリマー又はターポリマーであってもよい。
【0028】
オレフィン単量体と共重合可能な他のモノマーは、特に限定されないが、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、アルファ-メチルスチレン、C~C18のアルキル(メタ)アクリレート、及び(メタ)アクリル酸からなる群から選択されてもよい。
【0029】
一実施形態において、コポリマー及びターポリマーは、ランダムポリマー、ブロックポリマー、又はグラフトポリマーであってもよく、好ましくはランダムポリマーである。
【0030】
一実施形態において、ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、超高分子ポリエチレン、塩素化ポリエチレン、ポリテトラフルオロエチレン、プロピレン-エチレン共重合体などのエチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-メタクリル酸共重合体、エチレン-メチルメタクリレート共重合体、ポリプロピレン、塩素化ポリプロピレン、及びポリメチルペンテンからなる群から選択され得る。
【0031】
好ましくは、ポリオレフィンは、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、エチレン-α-オレフィン共重合体、又はポリプロピレンであってもよく、より好ましくはポリプロピレン又はプロピレン-エチレン共重合体であり、更に好ましくはポリプロピレンであり得る。
【0032】
一実施形態において、ポリオレフィンの重量平均分子量は、20,000g/mol~1,000,000g/molであってもよく、好ましくは、50,000g/mol~750,000g/molであってもよく、より好ましくは、100,000g/mol~500,000g/molであってもよい。ポリオレフィンの重量平均分子量が20,000g/mol以下の場合、分解性樹脂組成物を含む成形体に十分な強度が得られず、ポリオレフィンの重量平均分子量が1,000,000g/mol以上の場合、分解性樹脂組成物を含む成形体の加工性が悪い。
【0033】
ポリオレフィンの重量平均分子量の測定は、特に制限されないが、高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィーが用いられ、ポリスチレン標準の較正曲線から算出されてもよい。
【0034】
一実施形態において、ポリオレフィンを含む樹脂中に、ポリオレフィンは80質量%以上100質量%以下、好ましくは、90質量%以上100質量%以下、より好ましくは、95質量%以上100質量%以下含まれ得る。
【0035】
[セルロース系化合物]
一実施形態において、セルロース系化合物に使用されるセルロースは、グルコース中の水酸基がβ-1,4縮合した直鎖状のポリマーであって、木材、綿などの天然材料から従来の物理的方法又は化学的方法で製造される。セルロース系化合物は、結晶セルロース、微結晶セルロース、球状セルロース、粉末セルロース、セルロースミクロフィブリル、セルロースナノフィブリル、セルロースマイクロファイバー、セルロースナノクリスタル又はセルロースナノファイバーであってもよく、好ましくはセルロースナノファイバーである。セルロース系化合物がセルロースナノファイバーであることで、分解性樹脂組成物に均一に分散され得る。
【0036】
一実施形態において、セルロース系化合物は、セルロース及びセルロース誘導体から選択され得る。セルロース誘導体とは、セルロースのグルコース単位内に含まれる3つの水酸基のうち、少なくとも一つを、化学変性したものであってもよく、例えば、メチル基又はエチル基などのアルキル化、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基又はヒドロキシプロピル基などのヒドロキシアルキル化、カルボキシメチル基などのカルボキシアルキル化、アセチル基、プロピオニル基、又はブチリル基などのアシル化、カルボキシル化、ニトロ化、リン酸エステル化、亜リン酸エステル化、ザンテートエステル化、硫酸エステル化、アミノ基又はエポキシ基などを有するアルコキシシラン化、カーバメート化、カルボキシ基ベースN-アシルウレア化、カルボキシ基ベースアルキルアンモニウム化、フルオレン誘導体化又はフタルイミド化されたものであってもよい。また、ヒドロキシアルキル化、カルボキシアルキル化、カルボキシル化、ニトロ化、リン酸エステル化、亜リン酸エステル化、ザンテートエステル化及び硫酸エステル化されたセルロース誘導体は金属塩を形成してもよい。
【0037】
一実施形態において、セルロース系化合物は、ポリオレフィンを含む樹脂に分散されていてもよい。セルロースが分散されるポリオレフィンを含む樹脂は上記例示したポリオレフィンを含む樹脂であってもよく、好ましくはポリプロピレンである。セルロース系化合物がポリオレフィンに分散されていることによって、セルロース系化合物が分解性樹脂組成物に均一に分散され得る。
【0038】
一実施形態において、セルロース系化合物は、ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、1~60質量部含まれ得る。好ましくは、ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、2~50質量部、より好ましくは、4~45質量部含まれ得る。
【0039】
[有機酸金属塩]
一実施形態において有機酸金属塩の有機酸は、炭素原子から構成される分子構造を有し、カルボキシ基、スルホン酸基、又はホスホン酸基からなる群から選択される官能基を少なくとも1個有する酸であってもよい。
【0040】
有機酸は、例えば、ギ酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イソクロトン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、マレイン酸、安息香酸、フタル酸、桂皮酸、トリメリット酸、グリコール酸、乳酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、イソクエン酸、ピルビン酸、オキサロ酢酸、α-ケトグルタル酸、アセト酢酸、アセトンジカルボン酸、レブリン酸、β-クロロプロピオン酸、ニコチン酸、アスコルビン酸、ヒドロキシピバリン酸、メタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸等が挙げられる。
【0041】
一実施形態において、有機酸金属塩の有機酸は、C~C30の脂肪族カルボン酸及びC~C30の芳香族カルボン酸からなる群から選択され得る。好ましくは、C12~C22の脂肪族カルボン酸、より好ましくは、C12~C22の飽和脂肪族カルボン酸である。
【0042】
一実施形態において、カルボン酸は、モノカルボン酸が好ましい。好ましくは、C12~C22の飽和脂肪族モノカルボン酸であって、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、マルガリン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、及びベヘン酸からなる群から選択されてもよく、特に、ステアリン酸が好ましい。
【0043】
一実施形態において、有機酸金属塩の金属は、アルミニウム、スカンジウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、イットリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、銀、錫、ランタン、セリウム、タングステン、アンチモン、及びビスマスからなる群から選択される酸化還元能力のある金属であってもよい。より好ましくは、マンガン、鉄、コバルト、銅、亜鉛及びセリウムからなる群から選択されてもよく、特に好ましくは、マンガン及びセリウムからなる群から選択されてもよい。
【0044】
一実施形態において、有機酸金属塩はステアリン酸マンガン、ステアリン酸鉄、ステアリン酸コバルト、ステアリン酸銅、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸セリウムからなる群から選択されてもよく、好ましくは、ステアリン酸マンガン及びステアリン酸セリウムからなる群から選択されてもよい。
【0045】
本発明の有機酸金属塩は、分解性組成物中で酸化分解促進剤として作用し、分解性組成物の熱分解を促進させる。ポリオレフィンに有機酸金属塩を配合するのみでは、熱分解の効果が弱いところ、分解性組成物にセルロース系化合物を配合させることによって、熱分解が著しく促進され得る。
【0046】
一実施形態において、有機酸金属塩は、ポリオレフィンを含む樹脂に分散されていてもよい。有機酸金属塩が分散されるポリオレフィンを含む樹脂は上記例示したポリオレフィンを含む樹脂であってもよく、好ましくはポリプロピレンである。有機酸金属塩がポリオレフィンに分散されていることによって、有機酸金属塩が分解性樹脂組成物に均一に分散され得るため、効率よく分解される。
【0047】
一実施形態において、有機酸金属塩は、前記ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、0.1~10質量部含まれ得る。好ましくは、ポリオレフィンを含む樹脂100質量部に対して、0.5~5質量部、より好ましくは、0.5~3質量部、更に好ましくは、0.8~2質量部含まれ得る。
【0048】
[成形体]
本発明はまた、本発明の組成物を含む成形体にも関する。
【0049】
一実施形態において、本発明の成形体は、シート、フィルム、又は成形された種々の形状の成形体であってもよい。シート又はフィルムの厚みは、特に限定されないが、10μm~10mmであってもよく、好ましくは、0.5mm~5mmであってもよい。
【0050】
[成形体の製造方法]
本発明はまた、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を混練する工程を含む、本発明の成形体の製造方法にも関する。
【0051】
一実施態様において、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を混練する工程は、ヘンシェルミキサー、三本ロール、二本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー、押出機又はその他の混練機を用いて、混錬されてもよい。好ましくは、120℃~250℃の温度で溶融混錬されてもよい。溶融混錬されることによって、分解性樹脂組成物中の成分が、ポリオレフィンのマトリックス中に均一に分散され得る。
【0052】
一実施形態において、本発明の成形体の製造方法は、混練された分解性組成物を成形する工程を含んでいてもよく、また、溶融混錬せずに、乾式ブレンドにて分解性組成物を成形してもよい。
【0053】
一実施形態において、成形工程は、押出成形、射出成形、カレンダー成形、ブロー成形、プレス成形、インフレーション成形、真空成形、圧延成形、注型成形、及び発泡成形等、従来の成形方法によって、混練物を、所望の形状、厚さ及び大きさの成形体に製造することができる。
【0054】
[分解性樹脂組成物の分解物の製造方法]
本発明はまた、ポリオレフィンを含む樹脂、セルロース系化合物、及び有機酸金属塩を含む分解性樹脂組成物を40℃~100℃で加熱する工程を含む、分解性樹脂組成物の分解物の製造方法にも関する。
【0055】
一実施形態において、分解物の製造に使用される分解性樹脂組成物は、上記分解性樹脂組成物が使用され得る。
【0056】
一実施形態において、加熱工程の温度は40℃~100℃であってもよく、好ましくは60℃~90℃、より好ましくは、70℃~85℃であってもよい。40℃より低い場合には、分解性樹脂組成物中のポリオレフィンを含む樹脂が分解される速度が遅く、ポリオレフィンを含む樹脂の分子量が大幅に減少しないため、強度が維持されたままであり、100℃より高い場合には、分解性樹脂組成物中のポリオレフィンが溶融し得る。
【0057】
一実施形態において、加熱工程は、1週間~6ヵ月行われてもよい。より好ましくは、1ヵ月~4ヵ月、より好ましくは、1ヵ月~3ヵ月行われてもよい。
【0058】
一実施形態において、分解性樹脂組成物の分解は、分解物中のポリオレフィンの重量平均分子量、分解性樹脂組成物の重量変化、及び分解性樹脂組成物の最大引張強度の変化によって確認されてもよい。また、分解性樹脂組成物の分解は、射出成形によって得られたダンベル型試験片によって確認されてもよい。
【0059】
一実施形態において、分解物中のポリオレフィンの重量平均分子量は、100g/mol~10,000g/molであってもよく、好ましくは、100g/mol~8,000g/mol、より好ましくは、100g/mol~5,000g/molであってもよい。
【0060】
一実施形態において、分解物の重量は、分解のための加熱後に、加熱前から0.8%~80%減少してもよい。好ましくは、1.0%~50%、より好ましくは、1.5%~30%であり得る。
【0061】
一実施形態において、分解物の最大引張強度は、分解のための加熱後に、加熱前から40%~100%減少してもよい。好ましくは、50%~100%、より好ましくは、60%~100%であり得る。
【0062】
以下、本発明に関して実施例を挙げて説明するが、本発明は、これらによって限定されるものではない。
【実施例0063】
実施例において、以下の試料を使用した。
[試料]
・ポリオレフィン
日本ポリプロ社製「ノバテックFL203D」フィルムグレード(MFR=3):ポリプロピレン
・セルロース系化合物
大王製紙社製「ELLEX-R55」:セルロース55質量%含有ポリプロピレン樹脂マスターバッチペレット
・有機酸金属塩
ピーライフ・ジャパン・インク社製「P-Life PP20」:有機酸金属塩20質量%含有ポリプロピレン樹脂マスターバッチペレット
【0064】
[実施例1]
ポリプロピレン94質量%、セルロース系化合物5質量%、有機酸金属塩1質量%になるように3種類を配合したペレット材料をポリエチレン袋に投入し、乾式予備ブレンドした後、小型射出成形機(新興セルビック社製「AE-M3」)を用いて、射出成形し、小型ダンベル(ISO527-2-7)を作成した。なお、成形機の設定温度は220℃、金型温度は50℃であった。
【0065】
[参考例1、実施例2及び3並びに比較例1~8]
下記表1~3のとおりに各成分を配合した以外は、実施例1と同様の手順で小型ダンベルを作成した。
【0066】
<試験方法>
(経時試験)
作成した小型ダンベルをエスペック社製オーブンの80℃恒温槽において、所定時間熱処理後、小型ダンベルを常温にて一昼夜放置後、各試験を行った。
【0067】
(重量平均分子量、数平均分子量及び分子量分布)
高温ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(東ソー社製「HLC8121GPC/HT」、135℃、溶離液:o-ジクロロベンゼン)を用いて、ポリスチレン標準の較正曲線から算出された。
【0068】
(重量減少の経時変化)
熱処理後の小型ダンベルの重量を精密電子天秤で測定し、熱処理前の小型ダンベルの重量に対する重量減少率を算出した。
【0069】
(最大引張強度)
熱処理後の小型ダンベルの最大引張強度(降伏強度あるいは破断強度)を、引張試験装置(島津製作所製AG-X、引張速度20mm/分)を用いて、測定した。
【0070】
配合処方及び試験結果を表1~3に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
表1の実施例1~3及び参考例1、比較例1、2及び4を比較すると、実施例1~3は、加熱によって、1カ月後に重量平均分子量が大きく減少する。また、実施例1~3及び比較例3、5及び6を比較すると、セルロース系化合物又は有機酸金属塩のどちらか一方が含まれない場合、重量平均分子量は大きく減少しない。この結果から、ポリプロピレンにセルロース系化合物及び有機酸金属塩を配合することによって、著しく分解が促進されることがわかる。
【0075】
表2の比較例7では、セルロース系化合物及び有機酸金属塩の配合なしでは、ポリプロピレン樹脂は熱分解せず、重量変化がない。実施例1~3と比較例3及び8を比較すると、1ヵ月経時後には、実施例1~3のみ重量が減少しているため、実施例1~3の方が、熱分解が促進されていることがわかる。また、比較例5及び6では、1ヵ月後~4ヵ月後の重量変化がほとんどないことから、分解は進行していないことがわかる。
【0076】
表3においても、表2と同様の結果が得られ、実施例1~3の1ヵ月後の最大引張強度が熱処理前の36%以下になっているのに対して、比較例3及び8の1ヵ月後の最大引張強度は、熱処理前から変化がないことから、実施例1~3の熱分解促進効果が確認された。また、実施例1~3と比較例7を比較すると、熱処理前の最大引張強度が同程度以上であることから、一般的なポリプロピレンの用途に使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明の成形体は、汎用プラスチックとして加工性及び強度に優れながら、熱処理によって、容易に分子量及び重量を減少させ、更に強度を低下させることができるため、土壌中で微生物等によって、容易に分解され得る材料として適している。