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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049012
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/13 20060101AFI20240402BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240402BHJP
   B05C 15/00 20060101ALI20240402BHJP
   B33Y 30/00 20150101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J2/01 305
B41J2/01 301
B05C5/00 101
B05C15/00
B33Y30/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155224
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】江藤 大貴
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C056FA10
2C056HA29
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS11
2C061BB02
2C061BB17
2C061CD01
2C061CD08
4F041AA02
4F041AB01
4F041BA01
4F041BA10
4F041BA13
4F041BA59
4F041BA60
4F042AA02
4F042AB00
4F042CC02
4F042CC03
4F042CC07
4F042CC08
4F042CC22
4F042DD09
4F042DE02
4F042DE03
4F042DE09
4F042DF01
4F042DF24
4F042DF34
4F042DH01
4F042DH02
(57)【要約】
【課題】開閉部材とステージとの間で指等を挟まれるという課題があった。
【解決手段】液体吐出ヘッド20を有する液体吐出部9A、9Bと、上下方向に移動可能に設けられ、記録媒体を載置するステージ3と、ステージを記録媒体搬送方向に移動可能に保持するガイドレール4と、上下方向と交差する方向へスライド可能に設けられた前カバー7と、を備えた液体吐出装置1であって、前カバー7は、ステージ3の上方に、上方へ回転可能な回転扉25を有することを特徴とする。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドを有する液体吐出部と、
上下方向に移動可能に設けられ、記録媒体を載置するステージと、
前記ステージを記録媒体搬送方向に移動可能に保持するガイドレールと、
前記上下方向と交差する方向へスライド可能に設けられた開閉部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記開閉部材は、前記ステージの上方に、上方へ退避可能な退避部を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記退避部は、主走査方向に延在する回転軸を中心に回転する回転扉である請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
前記開閉部材が閉じた状態において、前記回転軸が前記退避部の下端部の直上から外れた位置に配置される請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記退避部は、その下端部と前記回転軸との間に、記録媒体搬送方向の液体吐出装置の外側へ屈曲した屈曲部を有する請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記開閉部材は、その前面に垂直面を有する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項6】
記録媒体搬送方向の前記液体吐出部よりも前記退避部の側に、前記記録媒体の表面に当接する当接ローラが設けられる請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項7】
前記開閉部材は、記録媒体搬送方向にスライド可能である請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記回転扉が液体吐出装置の外側へ回転することにより上方へ退避する請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記回転扉が液体吐出装置の内側へ回転することにより上方へ退避する請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前記退避部は、上下方向にスライド可能に設けられたスライド部である請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項11】
前記退避部は、上方へ弾性変形可能な弾性変形部である請求項1記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体としてのインクを記録媒体に吐出して記録媒体に画像を形成する液体吐出装置には、スライド可能に設けられ、液体吐出装置内を開閉する開閉部材が設けられたものが存在する(例えば特許文献1)。
【0003】
また、記録媒体を載置するステージが上下移動可能に設けられることにより、記録媒体を配置する高さを調整できる液体吐出装置が存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えばステージの上昇時等に、開閉部材とステージとの間で指等を挟まれるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体吐出ヘッドを有する液体吐出部と、上下方向に移動可能に設けられ、記録媒体を載置するステージと、前記ステージを記録媒体搬送方向に移動可能に保持するガイドレールと、前記上下方向と交差する方向へスライド可能に設けられた開閉部材と、を備えた液体吐出装置であって、前記開閉部材は、前記ステージの上方に、上方へ退避可能な退避部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、開閉部材とステージとの間での挟み込みを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の各カバーが閉じた状態の斜視図である。
図2図1の液体吐出装置の平面図である。
図3】液体吐出装置の各カバーが開いた状態の斜視図である。
図4図3の液体吐出装置の平面図である。
図5】前カバー内の気流を示す側面図である。
図6】前カバー内の気流を示す正面図である。
図7】前カバーの回転扉が開いた状態の斜視図である。
図8図1のA-A線断面図である。
図9図8の回転扉が上方へ回転した状態の図である。
図10】回転扉の変形例を示す断面図である。
図11】回転扉の別の変形例を示す断面図である。
図12図11の回転扉が上方へ回転した状態の図である。
図13】スライド部を備えた前カバーおよびその周辺の構成を示す断面図である。
図14図13のスライド部が上方へスライドした状態の図である。
図15】弾性変形部を備えた前カバーおよびその周辺の構成を示す断面図である。
図16】一つの液体吐出部を有する液体吐出装置の平面図である。
図17】一つのキャリッジに一つの液体吐出ヘッドユニットを設けた構成を示す図である。
図18】一つのキャリッジに二つの液体吐出ヘッドユニットを設けた構成を示す図である。
図19図18と液体吐出ヘッドユニットの配置が異なる図である。
図20】左右方向、かつ内側に開閉するカバーを有する液体吐出装置の正面図で、各カバーが閉じた状態の図である。
図21図20の液体吐出装置の平面図である。
図22図21から右カバーが開いた状態の図である。
図23図21から左カバーが開いた状態の図である。
図24図21の液体吐出装置の側面断面図である。
図25図21の左カバーの回転扉が上方へ回転した状態の図である。
図26】複数の液体吐出部と、左右に開閉するカバーとを有する液体吐出装置の正面図である。
図27】左右方向、かつ外側に開閉するカバーを有する液体吐出装置の正面図ある。
図28図27の液体吐出装置の平面図で、各カバーが閉じた状態の図である。
図29図28から各カバーが開いた状態の平面図である。
図30】前後方向、かつ内側に開閉する液体吐出装置の平面図で、各カバーが閉じた状態の図である。
図31図30から前カバーが開いた状態の平面図である。
図32図30から後ろカバーが開いた状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0009】
図1に各カバーが閉じた状態の液体吐出装置1の斜視図、図2に平面図を示す。また図3に各カバーが開いた状態の液体吐出装置1の斜視図、図4に平面図を示す。図1の方向Xを液体吐出装置の前後方向あるいは副走査方向あるいは記録媒体搬送方向、方向Yを液体吐出装置の幅方向あるいは主走査方向、方向Zを上下方向とする。方向Xおよび方向Yはステージ上に配置された記録媒体の液体吐出面に平行な方向であるが、多少の誤差があってもよい。方向X,Y,Zは互いに直交する方向である。
【0010】
図1および図2に示すように、液体吐出装置1は、筐体2の前方にステージ3を有する。ステージ3はガイドレール4上に設けられる。ガイドレール4は方向Xに延在している。筐体2の前側に操作パネル5が設けられる。筐体2の側面にはインクカートリッジ6が着脱される。筐体2の上方には、開閉部材あるいはカバー部材としての前カバー7および後ろカバー8が設けられる。開閉部材は、液体吐出装置の内部を露出、または遮蔽することが可能な部材である。
【0011】
ステージ3の上面は記録媒体を載置する載置面であり、平坦状をなしている。ステージ3の上面は方向Xおよび方向Yに平行な面である。ステージ3はガイドレール4上を移動し、方向Xの両方向に往復移動可能に設けられる。またステージ3はZ方向に昇降可能に設けられる。これにより、ステージ3に配置された記録媒体の高さを調整できる。
【0012】
前カバー7および後ろカバー8は方向Xの両方向に移動可能に設けられる。本実施形態ではカバーはX方向に移動可能であるが、X方向以外に移動可能なカバーとしてもよい。前カバー7が後ろ方向に移動し、後ろカバー8が前方向に移動した図1の状態がそれぞれのカバーが閉じた状態である。これに対して、前カバー7が前方向に移動し、後ろカバー8が後ろ方向に移動した図3の状態がそれぞれのカバーが開いた状態である。このように前カバー7および後ろカバー8をスライドにより開閉する構成とすることにより、例えば上下に開閉する構成と比較すると、各カバーの開閉領域を含めた液体吐出装置の占有領域を小さくできる。前カバー7および後ろカバー8はその前後方向の両端に開口部を有する。前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態で、前カバー7と後ろカバー8とが前後方向に連続して配置される。
【0013】
図3および図4に示すように、液体吐出装置1の装置本体部50は、筐体2、筐体2上に設けられる液体吐出部9A、9Bなどを有する。本実施形態では特に、装置本体部50は、液体吐出装置1の前カバー7および後ろカバー8以外の部分である。この装置本体部50に対して、前カバー7および後ろカバー8がX方向にスライド可能に設けられる。
【0014】
前カバー7および後ろカバー8が開くことで、液体吐出装置1内の液体吐出部が外側に開放される。液体吐出部を外部に開放することにより、メンテナンスユニット30や液体吐出ヘッドおよびその周辺の清掃、あるいはキャリッジの交換が可能になる。また、画像形成時には前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態になる。これにより、前カバー7あるいは後ろカバー8により液体吐出部9A、9Bが覆われ、液体吐出部9A、9Bのキャリッジなどの動作部が外部からアクセスできない状態になる。また前カバー7あるいは後ろカバー8内の閉じられた空間に液体吐出部9A、9Bを配置することにより、液体吐出動作時にインクミストが周辺に飛散することを防止するとともに、液体吐出部9A、9Bに設けられるファンによって前カバー7あるいは後ろカバー8内で気流を循環させ、発生したインクミストを前カバー7あるいは後ろカバー8内で循環させて回収することができる。
【0015】
本実施形態の液体吐出装置1は、方向Xに二つの液体吐出部9A、9Bを有する。液体吐出部9Aはカラーおよび白色のインクを吐出する。液体吐出部9Bは前処理液を吐出する。なお、各液体吐出部9A、9Bが吐出する液体は上記に限らず、カラーインク、白色のインク、前処理液のうち任意の液体を吐出する形態でもよい。特に、記録媒体が布帛の場合には、インクによる画像形成の前に前処理液を塗布することが好ましいため、どちらか一方の液体吐出部は前処理液を吐出する形態であることが好ましい。
【0016】
液体吐出部9A、9Bは同様の構成を有するため、以下、液体吐出部9Aについて説明する。液体吐出部9Aは、キャリッジ10Aと、ガイドロッド11と、電装部12と、メンテナンスユニット30とを有する。液体吐出部9A、9Bあるいはキャリッジ10A、10Bを単に液体吐出部9あるいはキャリッジ10とも称する。
【0017】
ガイドロッド11は主走査方向に延在する。キャリッジ10はガイドロッド11に沿って主走査方向に移動可能に設けられる。キャリッジ10は複数の液体吐出ヘッドを有する。メンテナンスユニット30は、ガイドロッド11に対向する位置で、左右方向の一方側の液体吐出領域外に設けられる。
【0018】
電装部12は、基板や基板を覆う電装カバーなどからなる。電装部12は、液体吐出動作を制御する制御部を有する。
【0019】
メンテナンスユニット30は、液体吐出ヘッドのノズル面を清掃する払拭部材やノズル面を吸引する吸引機構などを有する。払拭部材は、ゴム等で構成されたワイパーでもよいし、不織布等から構成されるウェブでもよい。
【0020】
以上の液体吐出ヘッドについて、記録媒体に画像を形成する過程について説明する。
【0021】
まず記録媒体をステージ3に載置し、ガイドレール4上を搬送する。そして、液体吐出装置の後方側まで搬送し、液体吐出部9Bにより前処理液を記録媒体に塗布する。具体的には、キャリッジ10Bをガイドロッド11に沿って主走査方向へ移動させながら液体吐出ヘッドに設けられたノズルから前処理液を記録媒体に対して主走査方向にわたって塗布する。これを副走査方向の各位置で繰り返し行うことにより、記録媒体に前処理液が塗布される。その後、ステージ3を前方向へ移動させ、同様の方法で液体吐出部9Aによりカラーの各色を記録媒体に吐出する。記録媒体に白色の印刷をする場合には、例えばまず液体吐出部9Aにより白色のインクを吐出した後、再びステージ3を液体吐出部9Aの後方側まで移動させ、液体吐出部9Aによりカラーのインクを記録媒体に吐出させる。これにより、記録媒体に画像を形成できる。
【0022】
ところで、前カバー7が閉じられた状態において、記録媒体の位置を調整するためにステージ3を上昇させると、作業者が前カバー7とステージ3との間で指等の体の一部を挟んでしまうおそれがある。具体的には、前カバー7の前板部のステージ3に対向する下端面とステージ3の上面との間で指を挟んでしまうおそれがある。
【0023】
上記の前カバー7とステージ3との間での挟み込みを防止するために、本実施形態では、前カバー7に上方へ退避する退避部を設けている。以下、この退避部の構成について、図7図9を用いて説明する。
【0024】
図7に示すように、前カバー7は、退避部としての回転扉25を有する。回転扉25は、前カバー7の前板部の一部であって、前カバー7の上方に設けられた部分である。
【0025】
図8図1のA-A線断面図である。
図8に示すように、前カバー7の天板部に回転扉25の回転軸25aが設けられる。回転軸25aはY方向に延在するが、厳密にY方向に延在する必要はない。回転扉25の下端部25bは、回転軸25aの直上から外れた位置に設けられる。
【0026】
本実施形態では、ステージ3が上昇してステージ3上の作業者の指が回転扉25の下端部25bを押すと、下端部25bに上方向の力が加わる。これにより、回転扉25が回転軸25aを中心に図8の時計回りの方向へ回転し、図9に示すように回転扉25の下端部25bが上方へ退避する。従って、ステージ3と前カバー7との間で指等の体の一部が挟み込まれることを防止できる。
【0027】
特に本実施形態では、図8に示すように、回転扉25に外力が作用せず、回転扉25が回転していない状態で、回転軸25aが下端部25bの直上から外れた位置に配置される。つまり、指によって力を加えられる部分と回転軸25aとがX方向の異なる位置に配置されている。これにより、下端部25bに対して回転扉25が回転する方向の力を加えることができ、回転扉25を円滑に回転させることができる。
【0028】
また図8に示すように、液体吐出装置1内部の前方側で、液体吐出部9Aのキャリッジ10Aよりも前方(回転扉25側)に、当接ローラとしてのスプレッドローラ29が設けられる。特に記録媒体が布帛である場合、前処理液塗布後には、布帛の表面に毛羽立ちが生じることがあり、この状態でインクを吐出させると布帛に形成される画像の乱れにつながる。スプレッドローラ29を、前処理液を塗布した後の布帛の表面に当接させることにより、布帛表面をならし、異常画像の形成を抑制できる。
【0029】
本実施形態では、回転扉25を回転させて前カバー7内を開放することで、キャリッジ10Aよりも前方に設けられたスプレッドローラ29にアクセスできる。従って、スプレッドローラ29の清掃や交換が容易になる。
【0030】
本実施形態では、前カバー7の前板部が垂直面をなし、その上端部に面取りが施された形状をなしている。前カバー7の前板部に垂直面が設けられることにより、例えば傾斜面により構成される前カバー7の前板部(図8の二点鎖線部参照)と比較すると、前カバー7内の前方側のスペースを大きく設けることができる。つまり、前カバー7の前端位置を同じ位置とした時に、前カバー7の前板部に垂直面が設けられる構成の方が前カバー7内の前方側のスペースを大きく設けることができる。これにより、前カバー7内のキャリッジ10Aの前方にスプレッドローラ29を配置することが可能になる。
【0031】
次に、回転扉25の変形例について説明する。
【0032】
図10に示す実施形態では、回転扉25が、回転軸25aと下端部25bとの間に屈曲部25cを有する。回転軸25aは下端部25bの直上に配置される。
【0033】
回転扉25は、回転軸25a側である上部側が、下方へ向かうに従って前方へ傾斜している。一方、屈曲部25cを境にしてその傾斜方向が変化し、下端部25b側である下部側が、下方へ向かうに従って後方へ傾斜している。ここで言う前方側とは、液体吐出装置の外側でもある。
【0034】
ステージ3の上昇により作業者の指等が下端部25bあるいは回転扉25の下方側の部分を押し上げると、回転扉25が回転軸25aを中心に図9の時計回りの方向へ回転し、回転扉25が上方へ退避する。
【0035】
このように、回転軸25aが下端部25bの直上に配置される構成であっても、回転扉25に屈曲部25cを設けることにより、作業者の指による上方への押圧によって回転扉25を時計回りに回転させることができる。従って、本実施形態の構成でもステージ3と前カバー7との間で指等の体の一部が挟み込まれることを防止できる。ただし、図10の実施形態において、必ずしも回転軸25aを下端部25bの直上に配置する必要はない。
【0036】
図11に示すように、本実施形態では、回転扉25の回転軸25aが前カバー7の内部に設けられる。回転軸25aは回転扉25の下端部25bよりも前カバー7の内側である前後方向の後方側に設けられる。
【0037】
ステージ3の上昇により回転扉25の下端部25bに上方向の力が加えられると、図12に示すように、回転扉25が回転軸25aを中心に図12の時計回りに回転する。これにより、下端部25bが上方へ退避する。このように、前カバー7を内側へ回転する構成においても、ステージ3と前カバー7との間で指等の体の一部が挟み込まれることを防止できる。
【0038】
図11に示す実施形態のように、前カバー7の内側へ回転する回転扉25を設けることで、液体吐出装置1の外径サイズをほとんど変化させることなく回転扉25を回転させることができる。一方、図7に示す実施形態のように外側へ回転する回転扉25を設けることで、前カバー7内のスペースが大きくなり、図8に示すスプレッドローラ29を配置しやすくなる等、前カバー7内の配置の自由度が向上する。
【0039】
また以上の説明では、前カバー7に設けられる退避部が、回転軸を中心に回転することで上方へ退避する回転扉である構成を示したが、本発明はこれに限らない。例えば図13に示すように、本実施形態では、前カバー7に、退避部としてのスライド部26を有する。スライド部26は、前カバー7の本体部に対して、上下方向にスライド可能に設けられる。
【0040】
ステージ3が上昇して作業者の指がスライド部26の下端部26bを上方へ押すと、図14に示すように、スライド部26が前カバー7の本体部に対してスライドし、上方へ退避する。これにより、ステージ3と前カバー7との間で指等の体の一部が挟み込まれることを防止できる。
【0041】
また図15に示す実施形態では、前カバー7が、退避部としての弾性変形部27を有する。弾性変形部27は、前カバー7のステージ3に対向する位置で、その下端部を含む一部に設けられる。弾性変形部27は例えばゴム材などにより構成される。
【0042】
ステージ3が上昇して作業者の指が弾性変形部27の下端部27bを上方へ押すと、部分拡大図に点線部で示すように、弾性変形部27が弾性変形して下端部27bが上方へへこむ。これにより、ステージ3と前カバー7との間で指等の体の一部が挟み込まれて強い圧力を受けることを防止できる。
【0043】
以上の説明では、液体吐出装置が複数の(2つの)液体吐出部9A、9Bを備え、それぞれの液体吐出部9A、9Bが、液体吐出ヘッドを備えたキャリッジ10A、10B、および、ガイドロッド11、11を備えた構成について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば図16に示すように、液体吐出装置1が液体吐出部9を1つのみ有する構成であってもよい。この液体吐出装置1は、開閉部材としてのカバー部材7が液体吐出部9を開閉可能に設けられる。図17に示すように、液体吐出部9が、ガイドロッド11と、キャリッジ10と、キャリッジ10に設けられる液体吐出ヘッドユニット60を有する。液体吐出ヘッドユニット60は複数の液体吐出ヘッドからなるが、単一の液体吐出ヘッドであってもよい。液体吐出ヘッドユニット60は、前処理液、白色あるいはカラー色のインクを吐出する。また液体吐出装置が液体吐出部を3つ以上有していてもよい。また、図18に示すように、キャリッジ10が複数の液体吐出ヘッドユニット60A,60Bを有する構成であってもよい。この場合、例えば液体吐出ヘッドユニット60Aにより白色あるいはカラー色のインクが吐出され、液体吐出ヘッドユニット60Bにより前処理液が吐出される。また各液体吐出ヘッドユニット60A,60Bの配置は、図18のように副走査方向に並べて配置する構成の他、図19のように主走査方向に並べて配置してもよい。以上の各液体吐出装置においても、前述の実施形態と同様、カバー部材7の前板側で、ステージ3の上方の位置に、前述の各構成の退避部を設けることができる。
【0044】
以上の説明では、複数の開閉部材が前後方向にスライドして液体吐出装置内を開閉する構成を説明したが、本発明はこれに限らない。例えば図20に示すように、液体吐出装置1は、液体吐出部などを有する装置本体部50の上部に、開閉部材あるいはカバー部材としての左カバー13および右カバー14を有する。図20の位置がそれぞれのカバーを閉じた状態であり、それぞれのカバーに示した矢印がそれぞれのカバーを開く方向である。左カバー13は退避部としての回転扉25Aを有し、右カバー14は退避部としての回転扉25Bを有する。
【0045】
図21に示すように、左カバー13および右カバー14が閉じた状態では、液体吐出部が覆われている。一方、図22に示すように、右カバー14を左方向(図22の上方向)へ移動させることで液体吐出部9の右側の一部領域が開放され、図23に示すように、左カバー13を右方向(図23の下方向)へ移動させることで液体吐出部9の左側の一部領域が開放される。
【0046】
本実施形態においても、図24に示すように、回転扉25A、25Bの各下端部25bに上方向の力が加わると、回転扉25A、25Bが各回転軸25aを中心に図24の時計回りに回転し、回転扉25A、25Bが上方へ退避する。これにより、ステージ3と回転扉25A、25Bとの間での挟み込みを防止できる。
【0047】
なお、図25に示すように、内側の回転扉25Aの回転量が回転扉25Bと比較して大きい場合には、回転扉25Aが回転扉25Bに当接し、回転扉25Bに対して図25の時計回りに回転する力を加える。
【0048】
上記実施形態では、液体吐出装置1が液体吐出部9を一つのみ有する構成を示したが、図26に示すように、カバーが左右開きする構成において、複数の液体吐出部を有していてもよい。
【0049】
上記の実施形態では左カバー13および右カバー14が内側へ開く構成を示したが、本発明はこれに限らない。例えば図27に示すように、本実施形態の液体吐出装置1は、左カバー13および右カバー14が図27に矢印で示すように外側へ開いてもよい。
【0050】
図28に示すように、各カバーが閉じた状態では各カバーに液体吐出部9が覆われる。図29に示すように、各カバーを開くことで液体吐出部9を外部に対して開放できる。
【0051】
本実施形態においても、図27に示すように、左カバー13は退避部としての回転扉25Aを有し、右カバー14は退避部としての回転扉25Bを有する。これらが前述の実施形態と同様、上方へ退避することにより、ステージ3と各カバーとの間で指などを挟むことを防止できる。
【0052】
図20のようにカバーが内側へ開く構成の方が、図27のように外側へカバーが開く構成と比較して、カバーの可動領域を含めた液体吐出装置の占有領域を小さくすることができる。
【0053】
また図30に示すように、前カバー7および後ろカバー8が前後に開く構成において、内開きの構成を採用することもできる。図31に示すように、前カバー7を開くことにより、液体吐出部9Aを外部に対して開放する。図32に示すように、後ろカバー8を開くことにより、液体吐出部9Bを外部に対して開放する。以上の構成の液体吐出装置1においても、前カバー7に図8の実施形態同様に退避部としての回転扉25を設けることができる。これにより、ステージ3と各カバーとの間で指などを挟むことを防止できる。
【0054】
以上の説明では、各実施形態で退避部としての回転扉を設ける場合を例示したが、その他の退避部の構成を適用できることはもちろんである。
【0055】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0056】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0057】
「液体」にはインクだけでなく塗料や前処理液、バインダー、オーバーコート液を含む。
【0058】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドを有するキャリッジを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものである記録媒体に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0059】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0060】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0061】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0062】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0063】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0064】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0065】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0066】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0067】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
液体吐出ヘッドを有する液体吐出部と、
上下方向に移動可能に設けられ、記録媒体を載置するステージと、
前記ステージを記録媒体搬送方向に移動可能に保持するガイドレールと、
前記上下方向と交差する方向へスライド可能に設けられた開閉部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記開閉部材は、前記ステージの上方に、上方へ退避可能な退避部を有することを特徴とする液体吐出装置である。
<2>
前記退避部は、主走査方向に延在する回転軸を中心に回転する回転扉である<1>記載の液体吐出装置である。
<3>
前記開閉部材が閉じた状態において、前記回転軸が前記退避部の下端部の直上から外れた位置に配置される<2>記載の液体吐出装置である。
<4>
前記退避部は、その下端部と前記回転軸との間に、記録媒体搬送方向の液体吐出装置の外側へ屈曲した屈曲部を有する<2>記載の液体吐出装置である。
<5>
前記開閉部材は、その前面に垂直面を有する<1>から<4>いずれか記載の液体吐出装置である。
<6>
記録媒体搬送方向の前記液体吐出部よりも前記退避部の側に、前記記録媒体の表面に当接する当接ローラが設けられる<1>から<5>いずれか記載の液体吐出装置である。
<7>
前記開閉部材は、記録媒体搬送方向にスライド可能である<1>から<6>いずれか記載の液体吐出装置である。
<8>
前記回転扉が液体吐出装置の外側へ回転することにより上方へ退避する<2>から<7>いずれか記載の液体吐出装置である。
<9>
前記回転扉が液体吐出装置であるの内側へ回転することにより上方へ退避する<2>から<7>いずれか記載の液体吐出装置である。
<10>
前記退避部は、上下方向にスライド可能に設けられたスライド部である<1>記載の液体吐出装置、あるいは、<1>に係り、かつ、<5>、<6>、<7>の少なくともいずれか1つに係る液体吐出装置である。
<11>
前記退避部は、上方へ弾性変形可能な弾性変形部である<1>記載の液体吐出装置、あるいは、<1>に係り、かつ、<5>、<6>、<7>の少なくともいずれか1つに係る液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0068】
1 液体吐出装置
3 ステージ
4 ガイドレール
7 前カバー(開閉部材)
9A、9B 液体吐出部
25 回転扉(退避部)
25a 回転扉の回転軸
25b 回転扉の下端部
26 スライド部(退避部)
27 弾性変形部(退避部)
29 スプレッドローラ(当接ローラ)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0069】
【特許文献1】特開2021-94721号公報
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