(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049017
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/17 20060101AFI20240402BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
B41J 29/13 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J2/17 103
B41J2/01 123
B41J2/01 301
B41J29/13
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155233
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【弁理士】
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100207181
【弁理士】
【氏名又は名称】岡村 朋
(72)【発明者】
【氏名】津田 直明
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 徳和
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EC53
2C056FA10
2C056HA42
2C056JC17
2C061AP01
2C061AQ05
2C061AS02
2C061BB27
2C061BB35
2C061CD08
(57)【要約】
【課題】各液体吐出部から吐出される液体の混合を防止することを課題とする。
【解決手段】液体吐出ヘッド20を有し、記録媒体の搬送方向に並設される複数の液体吐出部9A,9Bと、記録媒体の搬送方向において一方の液体吐出部9Aと他方の液体吐出部9Bとの間に設けられ、主走査方向の気流を形成する第1気流形成機構21と、記録媒体の搬送方向において他方の液体吐出部9Bと第1気流形成機構21との間に設けられる仕切り板231と、を備えた液体吐出装置1であって、仕切り板231は、主走査方向に延在し、第1気流形成機構21の側と他方の液体吐出部9Bの側との間を区画することを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドを有し、記録媒体の搬送方向に並設される複数の液体吐出部と、
前記記録媒体の搬送方向において一方の前記液体吐出部と他方の前記液体吐出部との間に設けられ、主走査方向の気流を形成する第1気流形成機構と、
前記記録媒体の搬送方向において他方の前記液体吐出部と前記第1気流形成機構との間に設けられる仕切り部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記仕切り部材は、前記主走査方向に延在し、前記第1気流形成機構の側と他方の前記液体吐出部の側との間を区画することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
前記液体吐出部の側から吸気して異なる方向へ排気する第2気流形成機構をさらに有する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項3】
開閉可能に設けられ、前記液体吐出部を覆うことのできるカバー部材をさらに有する液体吐出装置であって、
前記第2気流形成機構からの排気が、前記カバー部材の内面に沿って流れ、前記第2気流形成機構による吸気側へ循環し、
前記カバー部材の内面の上端と主走査方向の端部との角部に相当する箇所に面取りがされる請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記液体吐出部のいずれかは、前処理液、バインダー、オーバーコート液のいずれかを吐出する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記第1気流形成機構が形成する気流の方向において、前記第1気流形成機構の下流側に電装部を有する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項6】
前記第1気流形成機構の気流方向の上流側および下流側は、液体吐出装置外に連通し、
前記第1気流形成機構は、液体吐出装置の主走査方向の全域にわたって気流を流す請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項7】
開閉可能に設けられ、前記液体吐出部を覆うことのできるカバー部材と、
前記仕切り部材に設けられ、前記仕切り部材と前記カバー部材との間の隙間を埋める弾性部材とをさらに有する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記カバー部材を複数有する液体吐出装置であって、
記録媒体搬送方向の一方の前記液体吐出部を覆う一方の前記カバー部材と、他方の前記液体吐出部を覆う他方の前記カバー部材との間に、前記仕切り部材が設けられる請求項7記載の液体吐出装置。
【請求項9】
前記仕切り部材は、前記主走査方向の前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する領域全域にわたって設けられる請求項1記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体としてのインクを吐出する液体吐出装置では、画像形成のために液体吐出ヘッドから吐出される主な液滴の他に、この液滴よりも小さい霧状のインクミストが発生し、画像品質の低下や機内の汚染を生じさせる。
【0003】
これに対して、例えば特許文献1(特開2021-123103号公報)の液体吐出装置では、ファン、吸引ダクト、排気ダクトを備えたインクミスト回収部を設け、装置内で循環する気流を発生させる機構を設ける。この循環する気流により、液体吐出ヘッドから発生したインクミストを回収し、画像品質の低下や機内の汚染を抑制する。
【0004】
しかし、複数の液体吐出部を有する液体吐出装置では、特定の液体吐出部から発生したインクミストが別の液体吐出部に混ざることで、異なる液体同士が混合して固化や化学反応を生じ、液体吐出装置の機能を阻害したり装置を腐食したりするという問題があることがわかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、各液体吐出部から吐出される液体の混合を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体吐出ヘッドを有し、記録媒体の搬送方向に並設される複数の液体吐出部と、前記記録媒体の搬送方向において一方の前記液体吐出部と他方の前記液体吐出部との間に設けられ、主走査方向の気流を形成する第1気流形成機構と、前記記録媒体の搬送方向において他方の前記液体吐出部と前記第1気流形成機構との間に設けられる仕切り部材と、を備えた液体吐出装置であって、前記仕切り部材は、前記主走査方向に延在し、前記第1気流形成機構の側と他方の前記液体吐出部の側との間を区画することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、各液体吐出部から吐出される液体が混合することを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の各カバー部材が閉じた状態の斜視図である。
【
図3】液体吐出装置の各カバー部材が開いた状態の斜視図である。
【
図5】仕切り部および気流形成機構を示す液体吐出装置内部の平面図である。
【
図6】仕切り部および気流形成機構を示す液体吐出装置内部の側面図である。
【
図7】仕切り部および気流形成機構を示す液体吐出装置内部の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
図1に各カバーが閉じた状態の液体吐出装置1の斜視図、
図2に平面図を示す。また
図3に各カバーが開いた状態の液体吐出装置1の斜視図、
図4に平面図を示す。
図1の方向Xを液体吐出装置の前後方向あるいは副走査方向あるいは記録媒体搬送方向、方向Yを液体吐出装置の幅方向あるいは主走査方向、方向Zを上下方向とする。方向Xおよび方向Yはステージ上に配置された記録媒体の液体吐出面に平行な方向であるが、多少の誤差があってもよい。方向X,Y,Zは互いに直交する方向である。なお
図3では、便宜上後述の仕切り板の記載を省略している。
【0011】
図1および
図2に示すように、液体吐出装置1は、筐体2の前方にステージ3を有する。ステージ3はガイドレール4上に設けられる。ガイドレール4は方向Xに延在している。筐体2の前側に操作パネル5が設けられる。筐体2の側面にはインクカートリッジ6が着脱される。筐体2の上方には、開閉部材あるいはカバー部材としての前カバー7および後ろカバー8が設けられる。
【0012】
ステージ3の上面は記録媒体を載置する載置面であり、平坦状をなしている。ステージ3の上面は方向Xおよび方向Yに平行な面である。ステージ3はガイドレール4上を移動し、方向Xの両方向に往復移動可能に設けられる。またステージ3はZ方向に昇降可能に設けられる。これにより、ステージ3に配置された記録媒体の高さを調整できる。
【0013】
前カバー7および後ろカバー8は方向Xの両方向に移動可能に設けられる。前カバー7が後ろ方向に移動し、後ろカバー8が前方向に移動した
図1の状態がそれぞれのカバーが閉じた状態である。これに対して、前カバー7が前方向に移動し、後ろカバー8が後ろ方向に移動した
図3の状態がそれぞれのカバーが開いた状態である。このように前カバー7および後ろカバー8をスライドにより開閉する構成とすることにより、例えば上下に開閉する構成と比較すると、各カバーの開閉領域を含めた液体吐出装置の占有領域を小さくできる。前カバー7および後ろカバー8はその前後方向の両端に開口部を有する。前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態で、前カバー7と後ろカバー8とが前後方向に連続して配置される。
【0014】
図3および
図4に示すように、液体吐出装置1の装置本体部50は、筐体2、筐体2上に設けられる液体吐出部9A、9Bなどを有する。本実施形態では特に、装置本体部50は、液体吐出装置1の前カバー7および後ろカバー8以外の部分である。この装置本体部50に対して、前カバー7および後ろカバー8がX方向にスライド可能に設けられる。
【0015】
前カバー7および後ろカバー8が開くことで、液体吐出装置1内の液体吐出部が外側に開放される。液体吐出部を外部に開放することにより、メンテナンスユニット30や液体吐出ヘッドおよびその周辺の清掃、あるいはキャリッジの交換が可能になる。また、画像形成時には前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態になる。これにより、前カバー7あるいは後ろカバー8により液体吐出部9A、9Bが覆われ、液体吐出部9A、9Bのキャリッジなどの動作部が外部からアクセスできない状態になる。また前カバー7あるいは後ろカバー8内の閉じられた空間に液体吐出部9A、9Bを配置することにより、液体吐出動作時にインクミストが周辺に飛散することを防止するとともに、液体吐出部9A、9Bに設けられるファンによって前カバー7あるいは後ろカバー8内で気流を循環させ、発生したインクミストを前カバー7あるいは後ろカバー8内で循環させて回収することができる。
【0016】
本実施形態の液体吐出装置1は、方向Xに二つの液体吐出部9A、9Bを有する。液体吐出部9Aはカラーおよび白色のインクを吐出する。液体吐出部9Bは前処理液を吐出する。なお、各液体吐出部9A、9Bが吐出する液体は上記に限らず、カラーインク、白色のインク、前処理液のうち任意の液体を吐出する形態でもよい。特に、記録媒体が布帛の場合には、インクによる画像形成の前に前処理液を塗布することが好ましいため、どちらか一方の液体吐出部は前処理液を吐出する形態であることが好ましい。
【0017】
液体吐出部9A、9Bは同様の構成を有するため、以下、液体吐出部9Aについて説明する。液体吐出部9Aは、キャリッジ10Aと、ガイドロッド11と、電装部12と、メンテナンスユニット30とを有する。液体吐出部9A、9Bあるいはキャリッジ10A、10Bを単に液体吐出部9あるいはキャリッジ10とも称する。
【0018】
ガイドロッド11は主走査方向に延在する。キャリッジ10はガイドロッド11に沿って主走査方向に移動可能に設けられる。キャリッジ10は複数の液体吐出ヘッドを有する。メンテナンスユニット30は、ガイドロッド11に対向する位置で、左右方向の一方側の液体吐出領域外に設けられる。
【0019】
電装部12は、基板や基板を覆う電装カバーなどからなる。電装部12は、液体吐出動作を制御する制御部を有する。
【0020】
メンテナンスユニット30は、液体吐出ヘッドのノズル面を清掃する払拭部材やノズル面を吸引する吸引機構などを有する。払拭部材は、ゴム等で構成されたワイパーでもよいし、不織布等から構成されるウェブでもよい。
【0021】
以上の液体吐出ヘッドについて、記録媒体に画像を形成する過程について説明する。
【0022】
まず記録媒体をステージ3に載置し、ガイドレール4上を搬送する。そして、液体吐出装置の後方側まで搬送し、液体吐出部9Bにより前処理液を記録媒体に塗布する。具体的には、キャリッジ10Bをガイドロッド11に沿って主走査方向へ移動させながら液体吐出ヘッドに設けられたノズルから前処理液を記録媒体に対して主走査方向にわたって塗布する。これを副走査方向の各位置で繰り返し行うことにより、記録媒体に前処理液が塗布される。その後、ステージ3を前方向へ移動させ、同様の方法で液体吐出部9Aによりカラーの各色を記録媒体に吐出する。記録媒体に白色の印刷をする場合には、例えばまず液体吐出部9Aにより白色のインクを吐出した後、再びステージ3を液体吐出部9Aの後方側まで移動させ、液体吐出部9Aによりカラーのインクを記録媒体に吐出させる。これにより、記録媒体に画像を形成できる。
【0023】
このように、複数の液体吐出部9A、9Bを有する液体吐出装置1においては、それぞれの液体吐出部から吐出された液体が混合してしまう場合がある。例えば、液体吐出部9Aから吐出されたインクの一部がインクミストになって液体吐出部9Bの側へ飛散すると、液体吐出部9Bから吐出される前処理液と混合してしまう。そして、異なる液体同士が混合することで固化や化学反応を生じ、液体吐出装置の機能を阻害したり装置を腐食したりするという問題がある。以下、これらの液体吐出部間の液体の混合を防止するための仕切り部や、液体吐出装置内に気流を発生させる機構について、
図5~
図7を用いて説明する。
【0024】
図5に示すように、液体吐出部9Aと液体吐出部9Bとの間には、第1気流形成機構21が設けられる。また、液体吐出部9A、9Bの前方にはそれぞれ第2気流形成機構22が設けられる。なお、ここで言う液体吐出部9Aや液体吐出部9Bとは、ガイドロッド11によって移動可能なキャリッジ10A、10Bの移動領域全域のことを指す。第2気流形成機構22は、主走査方向の一方側と他方側とにそれぞれ設けられ、液体吐出部9Aあるいは液体吐出部9Bに対して記録媒体の搬送方向に対向する位置に設けられる。
【0025】
第1気流形成機構21は主走査方向の一方側から吸気して他方側へ排気する。これにより、液体吐出部9Aと液体吐出部9Bとの間に主走査方向に流れる気流を形成する。これにより、液体吐出部9Aおよび液体吐出部9Bの一方から他方へインクミストが飛散し、液体吐出部9Aおよび液体吐出部9B間でインクが混合することを抑制できる。
【0026】
図5および
図6に示すように、第2気流形成機構22は、吸気ダクト221と、フィルタ222と、ファン223と、排気ダクト224とを有する。吸気ダクト221は、吸気側である
図5の右側へ向けて幅が広がる形状をしており、液体吐出部の側からより広範囲の空気を取り込むことができる。従って、第2気流形成機構22によるインクミストの回収効率が向上する。フィルタ222は、吸気ダクト221から取り込んだ空気中のインクミストを回収できる。
【0027】
図5に矢印で示すように、ファン223によりキャリッジ10の移動領域側(つまり、ガイドロッド11側)から吸気ダクト221へ流れる気流が形成される。この気流は、フィルタ222を介して排気ダクト224から上方へ排気される。
【0028】
図7に示すように、排気ダクト224からの排気は、前カバー7の天板部の底面および側板部の内面に沿って流れる。そして、吸気ダクト221からの吸気によって再び吸気ダクト221側へ流れ、前カバー7内で気流が循環する。この前カバー7内で循環する気流により、前カバー7内のインクミストを第2気流形成機構側へ流し、フィルタ222により回収できる。なお、後ろカバー8内に設けられた第2気流形成機構22により、同様に後ろカバー8内で気流が循環する。
【0029】
また
図6に示すように、記録媒体の搬送方向の第1気流形成機構21と液体吐出部9Bとの間には、仕切り部23が設けられる。仕切り部23は、仕切り部材としての仕切り板231と、弾性部材としてのマイラ232とを有する。仕切り板231は、装置本体部50の筐体2(
図1参照)から上方へ延出する板状の部材である。マイラ232は、プラスチック製のシート状部材で、弾性を有する。マイラ232は仕切り板231の上部に取り付けられる。マイラ232の仕切り板231に取り付けられる側と反対側の一端側は、後方側であって、後ろカバー8を開く方向へ延在する。ただし、マイラ(デュポン社の登録商標、テレフタル酸ポリエステル)はこれらの弾性部材として用いられる樹脂フィルムの一例であり、この樹脂フィルムとして例えばポリエステルやビニル樹脂を用いることができる。また、ゴム材などにより弾性部材を形成してもよい。以降で説明する他のマイラについても同様に、樹脂フィルムやゴム材を用いることができる。
【0030】
仕切り板231は、記録媒体の搬送方向において、液体吐出部9A側の第1気流形成機構21と他方の液体吐出部9Bとの間に設けられる。これにより、第1気流形成機構21と液体吐出部9Bとの間を区画できる。従って、仮に液体吐出部9Aから吐出されたインクミストが、第1気流形成機構21が形成した主走査方向の気流を越えて液体吐出部9B側へ飛散した場合でも、液体吐出部9Bまで飛散してインクが混合することを防止できる。またこれとは逆に、液体吐出部9Bから発生したインクミストが液体吐出部9A側へ飛散することも防止できる。これらにより、液体吐出部9A、9B間での液体の混合を防止できる。
【0031】
また
図7に一点鎖線で示すように、仕切り板231およびマイラ232は主走査方向に延在し、特に本実施形態では、主走査方向の液体吐出ヘッド20による液体吐出領域全域にわたって設けられる。これにより、液体吐出ヘッドが記録媒体に対して液体を吐出する領域全域において、上記のように液体の混合を防止する効果を得ることができる。特に本実施形態では、マイラ232の一端が後ろカバー8の天板部底面の前方部分に当接する。これにより、後ろカバー8を閉じた際の後ろカバー8内の外部に対する開口部を小さくできる。従って、後ろカバー8内において、第2気流形成機構22による気流の循環性および液体の回収性を向上させることができる。さらに、仕切り板231およびマイラ232を主走査方向のキャリッジ10の移動領域全域にわたって設けることもできる。これにより、メンテナンスユニットに対向する位置に仕切り部23を配置でき、メンテナンス時に飛散する液体が他の液体吐出部の側へ飛散することを防止できる。
【0032】
仕切り板231の上部に弾性変形可能なマイラ232を設けることにより、上下方向にわたって、液体吐出部9A側の第1気流形成機構21と他方の液体吐出部9Bとの間を区画することができる。つまり
図6に示すように、マイラ232が弾性変形して後ろカバー8の天板部の底面に当接することにより、上下方向の仕切り板231と後ろカバー8との間を隙間なく埋めることができる。ただし、マイラ232を設けず、仕切り板231を後ろカバー8の天板部により近い高さまで延在させることもできる。
【0033】
図7に示すように、本実施形態の前カバー7は、その内面側であって、天板部と側板部とが交差する角部に相当する位置にR面取りがなされている。別の言い方をすると、前カバー7の内面の上端と主走査方向端部とによる角部に相当する箇所にR面取りがなされる。これにより、第2気流形成機構22による気流が前カバー7の天板部内面から側板部内面に沿って流れやすくなり、気流を前カバー7内で循環させやすくすることができる。また後ろカバー8にも同様にR面取りが施されている。ただし、前カバー7の角部に相当する位置にC面取りを施すなど、その角部に相当する箇所に面取りがされていればよく、これは後ろカバー8や後述のマイラ232も同様である。
【0034】
またマイラ232の一端部であって、上記の後ろカバー8のR面取りをなされた箇所に対応する位置にもR面取りがなされる。別の言い方をすると、マイラ232の一端部であって、その幅方向の端部の角部に相当する位置にR面取りがなされる。これにより、前後方向視で(
図7の方向視である。ただし、
図7には後ろカバー8ではなく前カバー7が示されている)、後ろカバー8の上記角部に相当する箇所において、マイラ232を後ろカバー8の内面により近づけることができ、後ろカバー8の内面とマイラ232との隙間を小さくできる。これにより、液体吐出部9A、9B間での液体の混合をより防止できる。ただし、マイラ232が設けられない構成において、仕切り板231の後ろカバー8の上記角部に相当する箇所に面取りを施してもよい。
【0035】
またいずれかの液体吐出部は、バインダーやオーバーコート液を吐出するものであってもよい。本実施形態の仕切り部の構成を適用することにより、これらの液体や、インク、前処理液の混合を防止できる。
【0036】
また
図6に示すように、各液体吐出部9A、9Bの後方に、装置本体部50の筐体2に取り付けられた弾性部材としてのマイラ24が設けられる。これにより、前カバー7あるいは後ろカバー8内の各液体吐出部9A、9Bの気密性を向上させることができ、前カバー7あるいは後ろカバー8内における、第2気流形成機構22によるインクミストの循環性および回収性を向上させることができる。
【0037】
また
図5に示すように、電装部12は第1気流形成機構21による排気方向の下流側に設けられる。この構成により、第1気流形成機構21による排気によって電装部12にインクミストが付着することを抑制できる。
【0038】
液体吐出部9Aの第2気流形成機構22の前方には第2の仕切り板25が設けられる。第2の仕切り板25により、液体吐出部9Aから吐出された液体が、液体吐出装置1の前方へ飛散することを抑制できる。また液体吐出部9Bの第1気流形成機構21の後方に第3の仕切り板26が設けられる。仕切り板26により、液体吐出部9Bから吐出された液体が、液体吐出装置1の後方へ飛散することを抑制できる。特に、液体吐出装置1が3つ以上の液体吐出部を有する構成であれば、第3の仕切り板26により第3の液体吐出部と液体吐出部9Bとの間での液体の混合を防止できる。
【0039】
以上のように、液体吐出装置に設けられる液体吐出部の数は、実施形態の二つ限らず、三つ以上であってもよい。
【0040】
また第1気流形成機構21の気流方向の上流側および下流側において、液体吐出装置1はその外側へ連通している。具体的には、
図1に示すように、前カバー7および後ろカバー8の両側板部に孔部7a、8aが設けられる。孔部7a、8aは
図1の拡大図に示すように、複数の貫通孔からなり、例えばその直径をφ10mmに設定することができる。これにより、第1気流形成機構21が、液体吐出装置1の外側から吸気して液体吐出装置1の主走査方向全域にわたって流れ、液体吐出装置1の吸気側と反対側から液体吐出装置1の外側へ排気する気流を形成できる。この気流により、主に液体吐出部9Aから飛散したインクミストを液体吐出装置1外へ排出することができる。なお、
図1の拡大図では一例として孔部7aを示しているが、孔部8aも同じく複数の貫通孔が形成される。孔部7a、8aの数や配置は適宜変更可能である。また、必ずしも孔部7a、8aを設ける必要はない。
【0041】
また上記の実施形態では、
図7に示すように、左右方向の一方側と他方側の第2気流形成機構22により、それぞれ前カバー7の左側面あるいは右側面に沿って循環する気流を形成した。これに加えて、これらの第2気流形成機構22の中央に三つ目の第2気流形成機構22を設けてもよい。これにより、左右方向の中央側の領域において、キャリッジ10の移動領域の側から吸気する気流を形成できる。
【0042】
また
図8に示すように、仕切り部23に設けられたマイラ232が前カバー7の側へ延在し、前カバー7の天板部の底板に当接する構成であってもよい。この場合、仕切り部23が、装置本体部50と前カバー7との間で、上下方向にわたって設けられ、液体吐出部9Aの後方に設けられた第1気流形成機構21の側と液体吐出部9Bの側とを区画する。これにより、液体吐出部9A、9B間での液体の混合を防止する。
【0043】
仕切り板231は、前カバー7と後ろカバー8との間に設けられる。これにより、前カバー7および後ろカバー8の開閉移動領域を避けて、仕切り板231を配置できる。また、マイラ232の一端側を前カバー7側あるいは後ろカバー8側へ伸ばすことにより、仕切り板231とこれらのカバーとの間の隙間を埋めて、液体吐出部9Aの第1気流形成機構21側と他方の液体吐出部9B側とを区画できる。ただし、前カバー7あるいは後ろカバー8内に仕切り板231を設けてもよい。この場合、開閉移動する前カバー7あるいは後ろカバー8に接触しない高さで仕切り板231が設けられる。
【0044】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0045】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0046】
「液体」にはインクだけでなく塗料や前処理液、バインダー、オーバーコート液を含む。
【0047】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドを有するキャリッジを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものである記録媒体に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0048】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0049】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0050】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0051】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0052】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0053】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0054】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0055】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0056】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
液体吐出ヘッドを有し、記録媒体の搬送方向に並設される複数の液体吐出部と、
前記記録媒体の搬送方向において一方の前記液体吐出部と他方の前記液体吐出部との間に設けられ、主走査方向の気流を形成する第1気流形成機構と、
前記記録媒体の搬送方向において他方の前記液体吐出部と前記第1気流形成機構との間に設けられる仕切り部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記仕切り部材は、前記主走査方向に延在し、前記第1気流形成機構の側と他方の前記液体吐出部の側との間を区画することを特徴とする液体吐出装置である。
<2>
前記液体吐出部の側から吸気して異なる方向へ排気する第2気流形成機構をさらに有する<1>記載の液体吐出装置である。
<3>
開閉可能に設けられ、前記液体吐出部を覆うことのできるカバー部材をさらに有する液体吐出装置であって、
前記第2気流形成機構からの排気が、前記カバー部材の内面に沿って流れ、前記第2気流形成機構による吸気側へ循環し、
前記カバー部材の内面の上端と主走査方向の端部との角部に相当する箇所に面取りがされる<2>記載の液体吐出装置である。
<4>
前記液体吐出部のいずれかは、前処理液、バインダー、オーバーコート液のいずれかを吐出する<1>から<3>いずれか記載の液体吐出装置である。
<5>
前記第1気流形成機構が形成する気流の方向において、前記第1気流形成機構の下流側に電装部を有する<1>から<4>いずれか記載の液体吐出装置である。
<6>
前記第1気流形成機構の気流方向の上流側および下流側は、液体吐出装置外に連通し、
前記第1気流形成機構は、液体吐出装置の主走査方向の全域にわたって気流を流す<1>から<5>いずれか記載の液体吐出装置である。
<7>
開閉可能に設けられ、前記液体吐出部を覆うことのできるカバー部材と、
前記仕切り部材に設けられ、前記仕切り部材と前記カバー部材との間の隙間を埋める弾性部材とを有する<1>から<6>いずれか記載の液体吐出装置である。
<8>
前記カバー部材を複数有する液体吐出装置であって、
記録媒体搬送方向の一方の前記液体吐出部を覆う一方の前記カバー部材と、他方の前記液体吐出部を覆う他方の前記カバー部材との間に、前記仕切り部材が設けられる<7>記載の液体吐出装置である。
<9>
前記仕切り部材は、前記主走査方向の前記液体吐出ヘッドが液体を吐出する領域全域にわたって設けられる<1>から<8>いずれか記載の液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0057】
1 液体吐出装置
3 ステージ
7 前カバー(カバー部材)
8 後ろカバー(カバー部材)
9A、9B 液体吐出部
10 キャリッジ
12 電装部
21 第1気流形成機構
22 第2気流形成機構
23 仕切り部
231 仕切り板(仕切り部材)
232 マイラ(弾性部材)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0058】