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特開2024-4907一重項酸素を生成する部位と、該一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する部位とを備える粒子、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024004907
(43)【公開日】2024-01-17
(54)【発明の名称】一重項酸素を生成する部位と、該一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する部位とを備える粒子、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/06 20060101AFI20240110BHJP
   G01N 21/64 20060101ALI20240110BHJP
   C09K 3/00 20060101ALN20240110BHJP
【FI】
C09K11/06
G01N21/64 Z
C09K3/00 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022104804
(22)【出願日】2022-06-29
(71)【出願人】
【識別番号】504173471
【氏名又は名称】国立大学法人北海道大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100124800
【弁理士】
【氏名又は名称】諏澤 勇司
(74)【代理人】
【識別番号】100185591
【弁理士】
【氏名又は名称】中塚 岳
(72)【発明者】
【氏名】ビジュ ヴァスデヴァン ピライ
(72)【発明者】
【氏名】ソバナン ジェラダーラー
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA03
2G043BA14
2G043CA03
2G043EA01
2G043FA01
2G043FA02
2G043FA03
2G043KA02
2G043KA03
2G043LA01
(57)【要約】
【課題】一重項酸素の発生を容易に制御でき、発生した一重項酸素を消費せずに一重項酸素をモニターすることができる粒子を提供すること。
【解決手段】コア粒子と、コア粒子の表面を修飾する修飾部と、を備え、修飾部は、光照射によって一重項酸素を生成する第一の部位と、一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する第二の部位と、を含む、粒子。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア粒子と、
前記コア粒子の表面を修飾する修飾部と、を備え、
前記修飾部は、
光照射によって一重項酸素を生成する第一の部位と、
前記一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した前記一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する第二の部位と、
を含む、粒子。
【請求項2】
前記第二の部位が、下記一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する、請求項1に記載の粒子。
【化1】

[式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、nは1~4の整数を表し、Xは、紫外光を吸収し、蛍光を発する基を表し、*1及び*2は結合手を表す。]
【請求項3】
前記Xが、下記一般式(X1)、(X2)、(X3a)、(X3b)、(X4a)、(X4b)、(X5a)、(X5b)、(X6a)、又は(X6b)で表される基である、請求項2に記載の粒子。
【化2】

[式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記一般式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化3】

[式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、式(13-1)及び(13-2)中、*4は結合手を表す。]
【化4】

[式(X2)中、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、*3は結合手を表す。]
【化5】

[式(X3a)及び(X3b)中、R18は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、前記一般式(13-1)で表される基、又は、前記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化6】

[式(X4a)及び(X4b)中、R19は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、前記一般式(13-1)で表される基、又は、前記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化7】

[式(X5a)中、Yは、ヒドロキシ基又はアルキル基を表す。式(X5a)及び(X5b)中、Zは、-O-、-S-、又は-NH-を表し、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、前記一般式(13-1)で表される基、又は、前記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化8】

[式(X6a)及び式(X6b)中、R23及びR24は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、前記一般式(13-1)で表される基、又は、前記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【請求項4】
前記Xが、下記一般式(X1)で表される基である、請求項2に記載の粒子。
【化9】

[式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記一般式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化10】

[式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、*4は結合手を表す。]
【請求項5】
前記修飾部は、カップリング剤により形成され、前記第二の部位を前記コア粒子の表面に結合する結合部位を更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項6】
前記修飾部は、カップリング剤により形成され、前記第二の部位を前記コア粒子の表面に結合する結合部位を更に含み、
前記結合部位が、下記一般式(3)で表される構造を有する、請求項2~4のいずれか一項に記載の粒子。
【化11】

[式(3)中、*5はコア粒子の表面に結合する結合手を表し、*6は、前記式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)中の*2に結合する結合手を表す。]
【請求項7】
光線力学的療法に用いられる、請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子。
【請求項8】
コア粒子の表面を修飾する修飾工程を備える、粒子の製造方法であって、
前記修飾工程は、
光照射によって一重項酸素を生成する第一の部位を前記コア粒子の表面に形成する第一の工程と、
前記一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した前記一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する第二の部位を前記コア粒子の表面に形成する第二の工程と、
を含む、製造方法。
【請求項9】
前記修飾工程が、前記第一の工程及び前記第二の工程の前に、前記コア粒子の表面をカップリング剤で修飾する工程を更に含む、請求項8に記載の製造方法。
【請求項10】
請求項1~4のいずれか一項に記載の粒子を用いて、一重項酸素を生成、捕捉及び放出させ、蛍光発光させる方法であって、
前記第一の部位に光を照射することにより、一重項酸素を生成し、該一重項酸素を前記第二の部位に捕捉させる工程と、
前記第二の部位を一光子励起又は二光子励起することにより、前記第二の部位が捕捉した前記一重項酸素を放出させ、かつ、蛍光発光物質を放出させることにより蛍光発光させる工程と、を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一重項酸素を生成する部位と、該一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する部位とを備える粒子、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一重項酸素は重要な活性酸素種であり、様々な化学反応及び生物学的反応に利用されている。中でも、光線力学的療法(PDT)への利用が特に注目されている。PDTにおいては、一重項酸素を制御して供給すると共に、一重項酸素を正確に検出する手段が非常に重要である。このような背景の下で、一重項酸素を生成する部位及び一重項酸素を検出する部位の両方を備えた、機能性ナノ材料が開発されている。
【0003】
例えば、非特許文献1には、一重項酸素を生成するユニット(プロトポルフィリンIX誘導体)、一重項酸素を貯蔵及び放出するユニット(2-ピリドン誘導体)、並びに一重項酸素をモニタリングするユニット(シアニン誘導体)を備える機能性シリカナノ担体が記載されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】Jiao, L., Zhang, X., Cui, J.,Peng, X., Song, F. Three-in-One Functional Silica Nanocarrier with SingletOxygen Generation, Storage/Release, and Self-Monitoring for Enhanced FractionalPhotodynamic Therapy. ACS Appl. Mater. Interfaces 2019, 11(29), 25750-25757.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
非特許文献1に開示されている機能性シリカナノ担体において、一重項酸素の放出は熱により進行するため、一重項酸素の貯蔵(捕捉)安定性や放出制御性に課題がある。また、当該機能性シリカナノ担体において、一重項酸素のモニタリングは、シアニン誘導体に一重項酸素を捕捉させて反応させることにより行われるため、発生した一重項酸素の一部がモニタリングのために消費され、充分な量の一重項酸素を供給することができない場合がある。
【0006】
本発明は、一重項酸素の発生を容易に制御でき、発生した一重項酸素を消費せずに一重項酸素をモニターすることができる粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、光照射によって一重項酸素を生成する部位と、一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する部位と、を備える粒子によれば、一重項酸素の発生を容易に制御でき、かつ、発生した一重項酸素を消費せずに一重項酸素をモニターすることが可能となることを見出した。本発明は、いくつかの側面において、下記の[1]~[8]を提供する。
【0008】
[1]コア粒子と、コア粒子の表面を修飾する修飾部と、を備え、修飾部は、光照射によって一重項酸素を生成する第一の部位と、一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する第二の部位と、を含む、粒子。
[2]第二の部位が、下記一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する、[1]に記載の粒子。
【化1】

[式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、nは1~4の整数を表し、Xは、紫外光を吸収し、蛍光を発する基を表し、*1及び*2は結合手を表す。]
【0009】
[3]Xが、下記一般式(X1)、(X2)、(X3a)、(X3b)、(X4a)、(X4b)、(X5a)、(X5b)、(X6a)、又は(X6b)で表される基である、[2]に記載の粒子。
【化2】

[式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記一般式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化3】

[式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、式(13-1)及び(13-2)中、*4は結合手を表す。]
【化4】

式(X2)中、R16及びR17は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、*3は結合手を表す。
【化5】

[式(X3a)及び(X3b)中、R18は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、一般式(13-1)で表される基、又は、式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化6】

[式(X4a)及び(X4b)中、R19は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、一般式(13-1)で表される基、又は、式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化7】

[式(X5a)中、Yは、ヒドロキシ基又はアルキル基を表す。式(X5a)及び(X5b)中、Zは、-O-、-S-、又は-NH-を表し、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、一般式(13-1)で表される基、又は、式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化8】

[式(X6a)及び式(X6b)中、R23及びR24は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、一般式(13-1)で表される基、又は、式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【0010】
[4]Xが、下記一般式(X1)で表される基である、[2]に記載の粒子。
【化9】

[式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記一般式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表し、*3は結合手を表す。]
【化10】

[式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、*4は結合手を表す。]
[5]修飾部は、カップリング剤により形成され、第二の部位をコア粒子の表面に結合する結合部位を更に含む、[1]~[4]のいずれかに記載の粒子。
[6]修飾部は、カップリング剤により形成され、第二の部位をコア粒子の表面に結合する結合部位を更に含み、結合部位が、下記一般式(3)で表される構造を有する、[2]~[4]のいずれかに記載の粒子。
【化11】

[式(3)中、*5はコア粒子の表面に結合する結合手を表し、*6は、式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)中の*2に結合する結合手を表す。]
[7]光線力学的療法に用いられる、[1]~[6]のいずれかに記載の粒子。
【0011】
[8]コア粒子の表面を修飾する修飾工程を備える、粒子の製造方法であって、修飾工程は、光照射によって一重項酸素を生成する第一の部位をコア粒子の表面に形成する第一の工程と、一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する第二の部位をコア粒子の表面に形成する第二の工程と、を含む、製造方法。
[9]修飾工程が、第一の工程及び第二の工程の前に、コア粒子の表面をカップリング剤で修飾する工程を更に含む、[8]に記載の製造方法。
[10][1]~[6]のいずれかに記載の粒子を用いて、一重項酸素を生成、捕捉及び放出させ、蛍光発光させる方法であって、
第一の部位に光を照射することにより、一重項酸素を生成し、該一重項酸素を第二の部位に捕捉させる工程と、
第二の部位を一光子励起又は二光子励起することにより、第二の部位が捕捉した一重項酸素を放出させ、かつ、蛍光発光物質を放出させることにより蛍光発光させる工程と、を含む、方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、一重項酸素の発生を容易に制御でき、発生した一重項酸素を消費せずに一重項酸素をモニターすることができる粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】式(2-1)で表される化合物に532nmレーザーを照射した後、UV光を照射した場合の(A)蛍光スペクトル及び(B)該スペクトルの光照射時間に対する極大波長における蛍光強度の変化を示す図である。
図2】Si-センサにTCPPを添加したサンプル及びSi-センサ-TCPPに532nmレーザーを照射した場合の、蛍光スペクトルの極大波長における光照射時間に対する蛍光強度の変化を示す図である。
図3】Si-センサ-TCPPの分散液の蛍光画像である。
図4】(A)Si-センサにTCPPを添加したサンプル及び(B)Si-センサ-TCPPに532nmレーザーを照射した後、UV光を照射する操作を繰り返した場合の、蛍光スペクトルの極大波長における蛍光強度の経時変化を示す図である。
図5】Si-センサにTCPPを添加したサンプル及びSi-センサ-TCPPが(A)一重項酸素を捕捉する際、及び、(B)捕捉した一重項酸素を放出する際の、蛍光スペクトルの極大波長における光照射時間に対する蛍光強度の変化を示す図である。
図6】MCF7細胞内のシリカ-センサ-TCPPに、532nmレーザー及びUV光を照射した場合の、蛍光スペクトルの極大波長における蛍光強度の光照射時間に対する変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されない。
【0015】
[粒子]
本発明の一実施形態に係る粒子は、コア粒子と、コア粒子の表面を修飾する修飾部と、を備える。
【0016】
修飾部は、光照射によって一重項酸素を生成する第一の部位を含む。第一の部位は、光増感剤がコア粒子の表面に結合することにより構成される部位であってよい。この場合、光増感剤を光により励起して三重項状態とし、三重項状態の光増感剤から基底状態の酸素にエネルギー移動させることにより、一重項酸素を発生させることができる。
【0017】
第一の部位を構成する光増感剤は、例えば、テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン等のポルフィリン化合物、ローズベンガル、メチレンブルー、及び量子ドットであってよい。
【0018】
第一の部位が一重項酸素を生成する際に照射される光は、光増感剤の吸収波長等を考慮して適宜選択することができる。第一の部位が一重項酸素を生成する際に照射される光は、後述する第二の部位の分解(一重項酸素及び蛍光発光物質の放出)を防ぐ観点から、可視光であることが好ましい。第一の部位が一重項酸素を生成する際に照射される光の波長は、例えば、400nm以上であってよく、800nm以下であってよい。
【0019】
第一の部位は、カップリング剤を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。すなわち、修飾部は、カップリング剤により形成され、第一の部位をコア粒子の表面に結合する結合部位を更に含んでもよい。カップリング剤は、コア粒子の表面に結合可能な基と、第一の部位に結合可能な基と、を有していてよい。第一の部位に結合可能な基の例としては、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、ハロゲノ基、アジド基(-N)、マレイミド基、スクシンイミド基、ビニル基、エポキシ基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が挙げられる。ハロゲノ基の例としては、クロロ基、ブロモ基、及びヨード基が挙げられる。また、第一の部位に結合可能な基は、ジアゾニオ基(-N )であってもよく、この場合、カップリング剤は、ジアゾニウム塩(例えば、塩化ジアゾニウム)であってもよい。
【0020】
カップリング剤の例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、及びアルミネートカップリング剤が挙げられる。カップリング剤は、好ましくはシランカップリング剤である。上述したカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
修飾部は、一重項酸素を捕捉し、一光子励起又は二光子励起によって捕捉した一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する第二の部位を更に含む。第二の部位は、一重項酸素を捕捉可能な構造と、蛍光発光物質を放出可能な構造と、を有する部位であってよい。一重項酸素を捕捉可能な構造の例としては、例えば、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン、テトラセン、ベンズアントラセン、ピレン、ペンタセン、ジベンゾアントラセン、ベンゾピレン、アセナフチレン等の芳香族炭化水素及びこれらの誘導体の構造が挙げられる。蛍光発光物質を放出可能な構造は、例えば、クマリン及びその誘導体等の蛍光性化合物の構造であってよい。蛍光性化合物の構造の例としては、後述する一般式(X1)、(X2)、(X3a)、(X3b)、(X4a)、(X4b)、(X5a)、(X5b)、(X6a)、及び(X6b)で表される構造が挙げられる。
【0022】
第二の部位は、下記一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する部位であってよい。
【化12】
【0023】
式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、nは1~4の整数を表す。nは、1~3又は1~2の整数であってもよく、1であってもよい。
【0024】
式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、*1及び*2は結合手を表す。式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0025】
式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中、Xは、紫外光を吸収し、蛍光を発する基を表す。
【0026】
は、下記一般式(X1)で表される基であってよい。
【化13】

式(X1)中、*3は結合手を表す。
【0027】
式(X1)中、R11は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、又はアミノアルキル基を表す。R11は、好ましくはアルキル基、又はアリール基である。
【0028】
11としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R11としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、又は1(すなわちR11がメチル基)であってよい。
【0029】
11としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R11としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0030】
11としてのアリール基の炭素数は、6~48であることが好ましく、6~24であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。R11としてのアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R11としてのアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。なお、アリール基が置換基を有する場合、上記アリール基の炭素数は、置換基の炭素数を除いた数を意味する。
【0031】
11としてのヘテロ環基は、5員環又は6員環を含むことが好ましい。また、ヘテロ環基は、単環又は縮合環であることが好ましい。ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ヘテロ原子の数は、1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。ヘテロ環基の例としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する5員環又は6員環を1つ含む基、多環芳香環を1つ含む基等が挙げられる。R11としてのヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
【0032】
11としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのスルホン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのリン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R11としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0033】
式(X1)中、R12は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表す。R12は、好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基である。
【0034】
12としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R12としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、又は1(すなわちR12がメチル基)であってよい。
【0035】
12としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R12としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0036】
12としてのアリール基の炭素数は、6~48であることが好ましく、6~24であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。R12としてのアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R12としてのアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。なお、アリール基が置換基を有する場合、上記アリール基の炭素数は、置換基の炭素数を除いた数を意味する。
【0037】
12としてのヘテロ環基は、5員環又は6員環を含むことが好ましい。また、ヘテロ環基は、単環又は縮合環であることが好ましい。ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ヘテロ原子の数は、1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。ヘテロ環基の例としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する5員環又は6員環を1つ含む基、多環芳香環を1つ含む基等が挙げられる。R12としてのヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
【0038】
12としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R12としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R12としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0039】
式(X1)中、R13は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、アミノアルキル基、下記一般式(13-1)で表される基、又は、下記式(13-2)で表される基を表す。R13は、好ましくは水素原子、アルキル基、又はアリール基である。
【化14】

式(13-1)中、R131は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、又はアミノアルキル基を表し、*4は結合手を表す。
【0040】
13としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R13としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、又は1(すなわちR13がメチル基)であってよい。
【0041】
13としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R13としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0042】
13としてのアリール基の炭素数は、6~48であることが好ましく、6~24であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。R13としてのアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R13としてのアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。なお、アリール基が置換基を有する場合、上記アリール基の炭素数は、置換基の炭素数を除いた数を意味する。
【0043】
13としてのヘテロ環基は、5員環又は6員環を含むことが好ましい。また、ヘテロ環基は、単環又は縮合環であることが好ましい。ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ヘテロ原子の数は、1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。ヘテロ環基の例としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する5員環又は6員環を1つ含む基、多環芳香環を1つ含む基等が挙げられる。R13としてのヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
【0044】
13としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R13としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R13としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0045】
131としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R131としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は1~3、1(すなわちR13がメチル基)であってよい。
【0046】
131としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R131としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0047】
131としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R131としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R131としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0048】
一般式(X1)で表される基の例としては、下記式(X1-1)~(X1-8)で表される基が挙げられる。
【化15】

式(X1-1)~(X1-8)中、*3は結合手を表す。
【0049】
第二の部位は、下記一般式(1B-X1)で表される構造を有する部位であってもよい。
【化16】

式(1B-X1)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、式(1B-X1)中のR11、R12、及びR13は、上記式(X1)中のR11、R12、及びR13とそれぞれ同義であり、*1及び*2は結合手を表す。式(1B-X1)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0050】
は、下記一般式(X2)で表される構造を有する基であってもよい。
【化17】

式(X2)中、R16及びR17は、それぞれ独立に、上記式(13-1)中のR131と同義であり、*3は結合手を表す。
【0051】
一般式(X2)で表される基の例としては、下記式(X2-1)で表される基が挙げらる。
【化18】

式(X2-1)中、*3は結合手を表す。
【0052】
は、下記一般式(X3a)又は(X3b)で表される基であってもよい。
【化19】

式(X3a)及び(X3b)中、R18は、上記式(X1)中のR13と同義であり、*3は結合手を表す。
【0053】
一般式(X3a)で表される基の例としては、下記式(X3a-1)で表される基が挙げられ、一般式(X3b)で表される基の例としては、下記式(X3b-1)で表される基が挙げられる。
【化20】

式(X3a-1)及び(X3b-1)中、*3は結合手を表す。
【0054】
は、下記一般式(X4a)又は(X4b)で表される基であってもよい。
【化21】

式(X4a)及び(X4b)中、R19は、上記式(X1)中のR13と同義であり、*3は結合手を表す。
【0055】
一般式(X4a)で表される基の例としては、下記式(X4a-1)、(X4a-2)、及び(X4a-3)で表される基が挙げられ、一般式(X4b)で表される基の例としては、下記式(X4b-1)、及び(X4b-2)で表される基が挙げられる。
【化22】

【化23】

【化24】

式(X4a-1)~(X4a-3)並びに(X4b-1)及び(X4b-2)中、*3は結合手を表す。
【0056】
は、下記一般式(X5a)又は(X5b)で表される基であってもよい。
【化25】

式(X5a)中、Yは、ヒドロキシ基又はアルキル基を表す。式(X5a)及び(X5b)中、Zは、-O-、-S-、又は-NH-を表し、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立に、上記式(X1)中のR13と同義であり、*3は結合手を表す。
【0057】
一般式(X5a)で表される基の例としては、下記式(X5a-1)~(X5a-6)で表される基が挙げられ、一般式(X5b)で表される基の例としては、下記式(X5b-1)で表される基が挙げられる。
【化26】

【化27】

式(X5a-1)~(X5a-6)及び式(5b-1)中、*3は結合手を表す。
【0058】
は、下記一般式(X6a)又は(X6b)で表される基であってもよい。
【化28】

式(X6a)及び式(X6b)中、R23及びR24は、それぞれ独立に、上記式(X1)中のR13と同義であり、*3は結合手を表す。
【0059】
一般式(X6a)で表される基の例としては、下記式(X6a-1)で表される基が挙げられ、一般式(X6b)で表される基の例としては、下記式(X6b-1)、及び(X6b-2)で表される基が挙げられる。
【化29】

式(X6a-1)、(X6b-1)及び(X6b-2)中、*3は結合手を表す。
【0060】
第二の部位は、下記一般式(1A’)、(1B’)、(1C’)又は(1D’)で表される構造を有する部位であってもよい。
【化30】

式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中のn及びXは、式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中の、n及びXとそれぞれ同義であり、*2は結合手を表す。式(1A’)、(1B’)、(1C’)又は(1D’)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0061】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、水素原子、アルキル基、アルケニル基、アリール基、ヘテロ環基、カルボキシアルキル基、ヒドロキシアルキル基、スルホン酸アルキル基、リン酸アルキル基、アミノアルキル基、フェニル基、カルボキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ジカルボキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、又はトリカルボキシフェニル基であってよい。R14は、好ましくは、水素原子又はアルキル基である。
【0062】
14としてのアルキル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。また、R14としてのアルキル基は、Xと結合していてもよい。R14としてのアルキル基の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、1~3、1~2、又は2(すなわちR12がエチル基)であってよい。Xが上記一般式(X3a)、(X3b)、(X4a)、(X4b)、(X5a)、(X5b)、(X6a)、又は(X6b)で表される基である場合、R14は、好ましくは炭素数4のアルキル基(すなわちブチル基)である。
【0063】
14としてのアルケニル基は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。R14としてのアルケニル基の炭素数は、2~18、2~15、2~12、2~10、2~5、2~3又は2であってよい。
【0064】
14としてのアリール基の炭素数は、6~48であることが好ましく、6~24であることがより好ましく、6~12であることが特に好ましい。R14としてのアリール基の例としては、フェニル基、ナフチル基等が挙げられる。R14としてのアリール基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。なお、アリール基が置換基を有する場合、上記アリール基の炭素数は、置換基の炭素数を除いた数を意味する。
【0065】
14としてのヘテロ環基は、5員環又は6員環を含むことが好ましい。また、ヘテロ環基は、単環又は縮合環であることが好ましい。ヘテロ環基に含まれるヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子、及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよく、窒素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。ヘテロ原子の数は、1~3であることが好ましく、1~2であることがより好ましい。ヘテロ環基の例としては、窒素原子、酸素原子及び硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する5員環又は6員環を1つ含む基、多環芳香環を1つ含む基等が挙げられる。R14としてのヘテロ環基は、置換基を有していてもよい。置換基としては、例えば、ハロゲノ基、アルキル基、ヒドロキシ基、アミノ基、アシルアミノ基等が挙げられる。
【0066】
14としてのカルボキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのヒドロキシアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのスルホン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのリン酸アルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。R14としてのアミノアルキル基におけるアルキレン鎖の炭素数は、1~18、1~15、1~12、1~10、1~5、又は2~4であってよい。これらの基におけるアルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0067】
14としてのカルボキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、アミノフェニル基、ジヒドロキシフェニル基、ジカルボキシフェニル基、トリヒドロキシフェニル基、及びトリカルボキシフェニル基における置換基(カルボキシ基又はヒドロキシ基)の置換位置は特に制限されない。トリカルボキシフェニル基は、例えば、2,3,4-トリカルボキシフェニル基、又は2,4,5-トリカルボキシフェニル基であってもよい。トリヒドロキシフェニル基は、例えば、2,3,4-トリヒドロキシフェニル基、又は2,4,6-トリヒドロキシフェニル基であってよい。
【0068】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、末端にヒドロキシ基若しくはメトキシ基を有するポリオキシアルキレン基又は末端にアミノ基を有するポリアミノアルキレン基であってよい。
【0069】
14としてのポリオキシアルキレン基は、末端にヒドロキシ基又はメトキシ基を有する。R14としてのポリオキシアルキレン基は、下記一般式(14-1)で表される基であってもよい。
-(-O-C2a-)-R141 (14-1)
式(14-1)中、aは2~4の整数を表し、bは1以上の整数を表し、R141は水素原子、メトキシ基、又はアミノ基を表す。
【0070】
14としてのポリオキシアルキレン基において、アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。当該アルキレン鎖の炭素数(式(14-1)中のa)は、例えば、2であってよい。このとき、R14は、ポリオキシエチレン基であってよい。
【0071】
14としてのポリオキシアルキレン基において、オキシアルキレン基の数(式(14-1)中のb)は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、10000以下であってよい。
【0072】
14としてのポリアミノアルキレン基は、末端にアミノ基を有する。R14としてのポリアミノアルキレン基は、下記一般式(14-2)で表される基であってもよい。
-(-NH-C2d-)-NH (14-2)
式(14-2)中、dは2~4の整数を表し、eは1以上の整数を表す。
【0073】
14としてのポリアミノアルキレン基において、アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。当該アルキレン鎖の炭素数(式(14-2)中のd)は、例えば、2であってよい。このとき、R14は、ポリアミノエチレン基であってよい。
【0074】
14としてのポリアミノアルキレン基において、アミノアルキレン基の数(式(14-2)中のe)は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、10000以下であってよい。
【0075】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、下記一般式(14-3)又は一般式(14-4)で表される基であってもよい。
-(-C-O-)-C2g-R143 (14-3)
-(-O-C-)-C2i-R144 (14-4)
式(14-3)中のf及びg並びに式(14-4)中のh及びiは、1~12の整数を表し、式(14-3)中のR143及び式(14-4)中のR144は水素原子、ヒドロキシ基、カルボキシ基、又はアミノ基を表す。
【0076】
式(14-3)及び式(14-4)において、オキシアルキレン基の数(式(14-3)中のf及び式(14-4)中のh)は、2以上、又は3以上であってよく、10以下、7以下、又は5以下であってよい。
【0077】
式(14-3)及び式(14-4)におけるアルキレン鎖の炭素数(式(14-3)中のg及び式(14-4)中のi)は、1~10、1~5、又は1~3であってよい。当該アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0078】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、下記一般式(14-5)で表される基であってよい。
-(-C-NH-)-C2k-R145 (14-5)
式(14-5)中、j及びkは1~12以上の整数を表しR145は水素原子、又はカルボキシ基を表す。
【0079】
式(14-5)において、アミノアルキレン基の数(式(14-5)中のj)は、1以上、2以上、又は3以上であってよく、12以下、10以下、7以下、又は5以下であってよい。
【0080】
式(14-5)におけるアルキレン鎖の炭素数(式(14-5)中のk)は、1~10、1~5、又は1~3であってよい。当該アルキレン鎖は、直鎖状であってよく、分岐状であってもよい。
【0081】
式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中、R14は、末端にデンドリマーが結合したアルキレン基であってもよい。当該アルキレン基の炭素数は、2~4であってもよい。デンドリマーの例としては、エチレンジアミンデンドリマー、ピロガロールデンドリマー、フロログルシノールデンドリマー、ヘミメリット酸デンドリマー、及びトリメリト酸デンドリマーが挙げられる。
【0082】
第二の部位は、下記一般式(1B’-X1)で表される構造を有する部位であってもよい。
【化31】

式(1B’-X1)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、式(1B’-X1)中のR11、R12、及びR13は、上記式(X1)中のR11、R12、及びR13とそれぞれ同義であり、式(1B’-X1)中のR14は、上記式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)のR14と同義であり、*2は結合手を表す。式(1B’-X1)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0083】
式(1B’-X1)で表される構造において、R14が水素原子又はアルキル基であることが好ましい。この場合、R11は、好ましくはアルキル基であり、R12は、好ましくは水素原子であり、R13は、好ましくは水素原子である。
【0084】
また、第二の部位は、下記一般式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、又は(1B’-X2-4)で表される部位であってもよい。
【化32】

【化33】

式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、及び(1B’-X2-4)中のnは、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のnと同義であり、*2は結合手を表す。式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、又は(1B’-X2-4)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0085】
第二の部位は、下記一般式(2)で表される部位であってよい。
【化34】

式(2)中、R202は、水素原子又はエチル基を表し、*2は結合手を表す。式(2)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0086】
式(2)で表される部位の例としては、下記式(i)で表される部位、及び下記式(ii)で表される部位が挙げられる。
【化35】

式(i)及び(ii)中、*2は結合手を表す。式(i)又は(ii)で表される構造を有する第二の部位は、*2の結合手によって、任意の結合部位を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。任意の結合部位は、例えば、後述するカップリング剤により形成された構造を有していてよい。
【0087】
第二の部位は、カップリング剤を介してコア粒子の表面に結合していてもよい。すなわち、修飾部は、カップリング剤により形成され、第二の部位をコア粒子の表面に結合する結合部位を更に含んでもよい。カップリング剤は、コア粒子の表面に結合可能な基と、第二の部位に結合可能な基と、を有していてよい。第二の部位に結合可能な基の例としては、アミノ基、チオール基、カルボキシル基、ハロゲノ基、アジド基(-N)、マレイミド基、スクシンイミド基、ビニル基、エポキシ基、アクリロイル基、及びメタクリロイル基が挙げられる。ハロゲノ基の例としては、クロロ基、ブロモ基、及びヨード基が挙げられる。また、第一の部位に結合可能な基は、ジアゾニオ基(-N )であってもよく、この場合、カップリング剤は、ジアゾニウム塩(例えば、塩化ジアゾニウム)であってもよい。
カップリング剤は、アミノ基を有することが好ましい。
【0088】
カップリング剤の例としては、シランカップリング剤、チタネートカップリング剤、及びアルミネートカップリング剤が挙げられる。カップリング剤は、好ましくはシランカップリング剤である。上述したカップリング剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。第一の部位をコア粒子の表面に結合させる結合部位(カップリング剤)と、第二の部位をコア粒子の表面に結合させる結合部位(カップリング剤)とは、好ましくは互いに同一である。
【0089】
カップリング剤により形成された結合部位は、下記一般式(3)で表される構造を有していてもよい。この場合、一重項酸素と共に発生する蛍光の強度がより大きくなり、一重項酸素のモニターがしやすくなる。
【化36】

式(3)中、*5はコア粒子に結合する結合手を表す。
【0090】
式(3)中のR15としては、上記式(1A’)、(1B’)、(1C’)及び(1D’)中のR14として挙げたものを特に制限なく用いることができる。R15は、水素原子、アルキル基、アリール基であることが好ましい。
【0091】
式(3)中の*6は、第二の部位に結合する結合手を表す。特に、第二の部位が式(1A)、(1B)、(1C)若しくは(1D)、式(1B-X1)、式(1A’)、(1B’)、(1C’)若しくは(1D’)、式(1B’-X1)、式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、若しくは(1B’-X2-4)、式(2)、又は式(i)若しくは(ii)で表される構造を有する部位である場合、式(3)中の*6は、上記式(1A)、(1B)、(1C)若しくは(1D)、式(1B-X1)、式(1A’)、(1B’)、(1C’)若しくは(1D’)、式(1B’-X1)、式(1B’-X2-1)、(1B’-X2-2)、(1B’-X2-3)、若しくは(1B’-X2-4)、式(2)、又は式(i)若しくは(ii)中の*2に結合する結合手を表す。
【0092】
第二の部位は、一重項酸素と共存する場合に、一重項酸素を捕捉することができる部位である。例えば、第二の部位が一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する場合、一重項酸素が共存すると、その芳香族炭化水素部分において、一重項酸素を捕捉することができる。一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造が、一重項酸素を捕捉すると、エンドペルオキシドを形成し、それぞれ、下記一般式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)又は(1D-O)で表される構造を生成する。
【化37】

式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)及び(1D-O)中、n、X、*1及び*2は、上記式(1A)、(1B)、(1C)及び(1D)中のn、X、*1及び*2とそれぞれ同義である。
【0093】
一重項酸素を捕捉した一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する部位(言い換えれば、一般式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)又は(1D-O)で表される構造を有する部位)は、一光子励起又は二光子励起されるまで、安定に一重項酸素を捕捉することができ、また、蛍光を発することもない。したがって、一実施形態に係る粒子によれば、一重項酸素の発生の容易な制御と、一重項酸素の発生量のモニターが可能となる。
【0094】
一重項酸素を捕捉した第二の部位は、一光子励起又は二光子励起によって、捕捉した一重項酸素及び蛍光発光物質を放出する。一重項酸素を捕捉した第二の部位を一光子励起する方法は、一重項酸素を捕捉した第二の部位に対して紫外(UV)光を照射する方法であってよい。UV光の波長は、例えば、100nm以上であってよく、430nm以下であってよい。
【0095】
一重項酸素を捕捉した第二の部位を二光子励起する方法は、一重項酸素を捕捉した第二の部位に対してパルス光を照射する方法であってよい。パルス光の波長は、例えば、600nm以上であってよく、860nm以下であってよい。
【0096】
例えば、一重項酸素を捕捉した一般式(1A)、(1B)、(1C)又は(1D)で表される構造を有する第二の部位を一光子励起又は二光子励起すると、一重項酸素が放出されると共に、Xで表される基を有する化合物に基づく蛍光が放出される。また、副生成物として、上記一般式(1A-O)、(1B-O)、(1C-O)又は(1D-O)で表される構造中のエンドペルオキシドに由来する化合物も生成する。代表的に、一重項酸素を捕捉した一般式(1B-X1)で表される構造(下記一般式(1B-X1-O)で表される構造)を有する部位を一光子励起又は二光子励起した場合のスキームを以下に示す。
【化38】

式(1B-X1-O)中のn及び*2、並びに式(1B-X1-O)及び式(c)中のR11、R12、R13、及び*1は、上記式(1B-X1)中のn、*2、R11、R12、R13、及び*2とそれぞれ同義である。また、式(c)中、Rは任意の一価の基を表す。Rは、例えば、メチル基、メトキシ基、アルデヒド基、又はカルボキシ基であってよい。
【0097】
このように、本発明の一実施形態に係る粒子では、一重項酸素を捕捉した第二の部位が一光子励起又は二光子励起されると、一重項酸素を捕捉した第二の部位が分解することにより、一重項酸素が発生すると共に、蛍光発光物質が生成して蛍光が発生する。つまり、一実施形態において、蛍光が発生する際に一重項酸素を消費することがない上に、蛍光の発生量は、一重項酸素の発生量に相関する。したがって、一実施形態に係る粒子によれば、一重項酸素を発生させながら、発生した一重項酸素をモニタリングのために消費することなく、蛍光強度に基づいて一重項酸素をモニターすることができる。
【0098】
第一の部位の含有量に対する第二の部位の含有量の質量比(第二の部位の含有量(質量)/第一の部位の含有量(質量))は、1以上、又は2以上であってよく、好ましくは5以上であり、より好ましくは10以上であり、100以下であってよい。
【0099】
コア粒子は、その表面に、第一の粒子及び第二の粒子が結合できる粒子であれば、特に制限されない。コア粒子の例としては、鉄、金、銀等の金属粒子、シリカ、酸化鉄、酸化チタン等の無機酸化物粒子、シリコン粒子、量子ドット、炭素粒子、デンドリマー、キトサン粒子、アルブミン粒子、及びリポソーム等の有機粒子が挙げられる。コア粒子は、好ましくはシリカ粒子である。
【0100】
コア粒子は、親水性であってよく、疎水性であってもよい。コア粒子は、好ましくは親水性である。第一の部位及び第二の部位をコア粒子表面に容易に結合できる観点から、コア粒子は、好ましくは親水性シリカ粒子である。コア粒子としては、上述したものを1種単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0101】
コア粒子の平均粒子径は、10nm以上であってよく、好ましくは50nm以上であり、より好ましくは100nm以上である。コア粒子の平均粒子径は、1μ以下、又は800nm以下であってよく、好ましくは500nm以下であり、より好ましくは300nm以下である。コア粒子の平均粒子径は、SEMによりコア粒子を観察し、100個のコア粒子について測定した粒子径の平均値を意味する。コア粒子の粒子径は、各コア粒子に外接する円の直径として測定される。
【0102】
以上説明した粒子は、一重項酸素を生成する部位と、一重項酸素を捕捉した後、蛍光発光物質と共に一重項酸素を放出する部位とを両方備えており、一重項酸素の生成、捕捉、放出、及びモニターを一つの粒子により行うことができる。特に、一重項酸素の発生をUV光による一光子励起又は可視光若しくは近赤外光による二光子励起により容易に制御することができ、一重項酸素をモニターするために一重項酸素を消費することがない。したがって、本実施形態に係る粒子は、光線力学的療法(PDT)に特に有用である。
【0103】
また、以上説明した粒子は、一重項酸素を生成、捕捉、及び放出させ、蛍光発光させる方法に用いることができる。当該方法は、第一の部位に光を照射することにより、一重項酸素を生成し、該一重項酸素を前記第二の部位に捕捉させる工程と、第二の部位を一光子励起又は二光子励起することにより、第二の部位が捕捉した一重項酸素を放出させ、かつ、蛍光発光物質を放出させることにより蛍光発光させる工程と、を含む。
【0104】
[粒子の製造方法]
一実施形態に係る粒子は、例えば、コア粒子の表面を修飾する修飾工程を備える、製造方法であって、修飾工程は、第一の部位をコア粒子の表面に形成する第一の工程と、第二の部位をコア粒子の表面に形成する第二の工程と、を含む、製造方法により、製造することができる。本発明の他の一実施形態は、このような粒子の製造方法である。
【0105】
修飾工程は、第一の工程及び第二の工程の前に、コア粒子の表面をカップリング剤で修飾する工程を含んでいてよい。カップリング剤としては、上述したものを用いることができる。
【0106】
コア粒子の表面をカップリング剤で修飾する方法としては、コア粒子表面に存在する官能基(例えば、水酸基)と、カップリング剤が有する官能基(例えば、アルコキシシリル基)とを反応させる方法が挙げられる。コア粒子表面に存在する官能基と、カップリング剤が有する官能基との反応は、例えば、カップリング剤が溶解する溶媒(アセトン、水等)中で行われてよい。
【0107】
第一の工程は、コア粒子の表面に結合したカップリング剤を第一の部位に結合させる工程を含んでいてよい。コア粒子の表面に存在するカップリング剤を第一の部位に結合させる方法としては、カップリング剤の有する官能基(例えば、アミノ基)と、第一の部位を有する化合物とを反応させる方法が挙げられる。カップリング剤の有する官能基と、第一の部位を有する化合物との反応は、例えば、カップリング剤と、第一の部位を有する化合物が溶解する溶媒(ジメチルスルホキシド等)中で行われてよい。
【0108】
第二の工程は、コア粒子の表面に結合したカップリング剤を第二の部位に結合させる工程を含んでいてよい。コア粒子の表面に存在するカップリング剤を第二の部位に結合させる方法としては、カップリング剤の有する官能基(例えば、アミノ基)と、第二の部位を有する化合物とを反応させる方法が挙げられる。カップリング剤の有する官能基と、第二の部位を有する化合物との反応は、例えば、カップリング剤及び第二の部位を有する化合物が溶解する溶媒(1,2-ジクロロベンゼン等)中で行われてよい。
【0109】
第一の工程と第二の工程とは、順次行われる工程であってよく、同時に行われる工程であってもよい。前者の場合、第一の工程の後に第二の工程が行われてもよく、第二の工程の後に第一の工程が行われてもよい。
【実施例0110】
以下、実施例に基づいて本発明を更に具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の実施例で用いた溶媒は、特筆する場合を除き、富士フイルム和光純薬(株)製の試薬グレードのものである。
1.粒子の作製
以下の実験において用いた試薬は全て分析グレードであり、特に言及しない限り、製品をそのまま使用した。NMR測定は、JEOL 400MHz NMR specrometer(日本電子(株)製)により行った。まず、下記スキームに沿って、粒子における第二の部位を構成する式(2-1)で表される化合物及び式(2-2)で表される化合物を合成した。
【化39】
【0111】
[式(2-1)で表される化合物の合成]
9,10-ビス(クロロメチル)アントラセン(東京化成工業(株)製)1.38g(5.01mmol)を130℃の1,2-ジクロロベンゼン(20mL)に溶解し、さらにN,N-ジオクチルアミン(東京化成工業(株)製)0.96g(3.97mmol)を加えた。この溶液に対し、KCO(富士フイルム和光純薬(株)製)1.36g(9.84mmol)を加え、得られた混合物をアルゴン雰囲気下、5時間、130℃で攪拌した。この間に中間体2が生成した。次いで、さらに7-アミノ-4-メチルクマリン(東京化成工業(株)製)680mg(3.88mmol)を溶液に添加し、12時間攪拌を継続した。その後、反応混合物を室温まで冷却し、生成した沈殿物をろ過により除去した。濾液を回収し、溶媒を減圧蒸留により除去した。生成物を、酢酸エチルとヘキサンの混合液(酢酸エチル:ヘキサン(質量比)=10:90)を溶出液として用いてシリカゲルカラムクロマトグラフィーにより精製し、淡黄色の固体粉末として式(2-1)で表される化合物を得た。
1H NMR(400MHz, CDCl3): δ=8.64-8.67(d, 2H, Ar-H), 8.21-8.23(d, 2H, Ar-H),7.51-7.53(m, 4H, Ar-H), 7.42-7.45(d, 1H, Ar-H), 6.75(s, 1H, Ar-H), 6.60-6.62(d,1H, Ar-H), 6.04(s, 1H, allylic), 5.21(d, 2H, CH2-NH), 4.52(s, 2H, CH2-N),4.36(t, 1H, NH), 2.51-2.53(t, 4H, N-CH2), 2.39 (s, 3H, CH3) 1.4-1.55 (q, 4H, C-CH2-C),1.0-1.35(m, 20H, CH2), 0.5-0.8(t, 6H, C-CH3).
【0112】
[式(2-2)で表される化合物の合成]
9,10-ビス(クロロメチル)アントラセン(東京化成工業(株)製)2g(7.26mmol)を130℃の1,2-ジクロロベンゼン(30mL)に溶解し、さらに7-アミノ-4-メチルクマリン(東京化成工業(株)製)0.87g(4.99mmol)を加えた。この溶液に対し、KCO(富士フイルム和光純薬(株)製)1.36g(9.84mmol)を加え、得られた混合物をアルゴン雰囲気下、3時間、130℃で攪拌した。その後、過剰のヘキサンを添加して溶媒を除去し、生成した沈殿物を濾過により回収した。トルエンとアセトニトリルを用いた再沈殿により粗生成物を精製し、式(2-2)で表される化合物を得た。なお、この後N,N-ジオクチルアミンと反応させると、式(2-1)で表される化合物を合成することができる。
1HNMR(400MHz, CDCl3): δ=8.41-8.43(d, 2H, Ar-H), 8.29-8.43(d, 2H,Ar-H), 7.62-7.67(m, 4H, Ar-H), 7.44-7.46(d, 1H, Ar-H), 6.76(s, 1H, Ar-H),6.61-6.63(d, 1H, Ar-H), 6.06(s, 1H, allylic), 5.66(s, 2H, CH2-Cl),5.24(s, 2H, CH2-NH), 4.33(s, 1H, NH) 2.4(s, 3H, CH3).
13CNMR(400MHz, CDCl3): δ=18.72, 31.03, 38.97, 40.72, 98.18, 110.02,110.46, 111.18, 124.42, 124.76, 125.80, 126.79, 126.89, 128.32, 129.13, 129.67,129.84, 130.38, 130.48, 151.21, 153.01, 156.20, 161.97.
【0113】
[Si-センサ-TCPPの作製]
下記スキームに沿って、シリカ粒子(コア粒子)表面に、テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP)の構造を有する部位(第一の部位)及び式(2-2)で表される化合物の構造を有する部位(第二の部位)が結合した、粒子(以下、「Si-センサ-TCPP」ともいう。)を作製した。
【化40】
【0114】
まず、メソポーラスシリカナノ粒子(シグマアルドリッチ社製、200nmサイズ)0.5gに、25μLの3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APTES)の溶液(1質量%のAPTES、80質量%のアセトン、及び19質量%の水を含有)を添加して、シラン処理した。溶液を25℃で30分間撹拌した後、沈殿した粒子を水とアセトンで十分に洗い流し、乾燥させた。次いで、乾燥させた粒子に、式(2-2)で表される化合物の1,2-ジクロロベンゼン溶液(5mM)を加え、さらにKCO(富士フイルム和光純薬(株)製)0.5mg(3.61μmol)を加えて100℃で1時間撹拌した後、アセトンと水で十分に洗浄し、乾燥させた。これにより、シリカ粒子(コア粒子)表面に式(2-2)で表される化合物の構造を有する部位(第二の部位)が結合した、中間体粒子(以下、「Si-センサ」ともいう。)が得られた。
【0115】
上述の方法で作製したSi-センサに、テトラキス(4-カルボキシフェニル)ポルフィリン(TCPP、東京化成工業(株)製)のDMSO溶液(500μM)を加えた。さらに縮合剤として4-(4,6-ジメトキシ-1,3,5-トリアジン-2-イル)-4-メチルモルホリニウムクロリド(DMT-MM、富士フイルム和光純薬(株)製)0.13mg(0.46μmol)を加えて25℃で15分間撹拌した後、メタノールとDMSOで十分に洗浄し、乾燥させた。これにより、Si-センサ-TCPPが得られた。
【0116】
2.Si-センサ-TCPPによる一重項酸素の生成、捕捉及び放出
Si-センサ-TCPPに対し、適切な励起光源を用いて光を照射すると、TCPPによって一重項酸素が生成される。第二の部位において、シリカとクマリン誘導体との間に存在するアミノメチルアントラセン基は、[2+4]環化付加反応によりこの一重項酸素を選択的に捕捉し、9,10-エンドペルオキシドを形成する。また、このとき、本来観測されるドナー-アクセプター対間の電子移動が抑制されるため、クマリン発色団による消光蛍光を放出する。以上のプロセスを概略的に表すと下記スキームのとおりになる。
【化41】
【0117】
粒子における第二の部位の一重項酸素の捕捉及び放出能について調べるため、式(2-1)で表される化合物の液相での光物理的特性を調べた。式(2-1)で表される化合物(10μM)及びTCPP(5μM)をCHCNに溶解したサンプル溶液に対し、532nmレーザー(50mWcm-2)を30分間照射した後、UVランプ(365nm、1mWcm-2)を5分間照射した。このときの蛍光スペクトル(λex=320nm)を記録した。結果を図1に示す。図1(A)は、532nmレーザーの照射前(S0)、532nmレーザーの照射開始後5分ごと(S1)、及び365nmUVランプの照射開始後10分ごと(S2)に測定した蛍光スペクトルである。なお、図1(A)中、S1としてまとめられたスペクトルは、下から順に、532nmレーザーの照射開始後5分、10分、15分、20分、25分、及び30分の時点で測定したスペクトルであり、S2としてまとめられたスペクトルは、下から順に、365nmUVランプの照射開始後5分、15分、25分、35分、45分、55分、65分、75分、及び85分の時点で測定したスペクトルである。また、図1(B)には、図1(A)の各スペクトルの極大波長における蛍光強度(I/I)の経時プロット(三角形のプロット)を示した。図1(B)中の破線で示された時点までは532nmレーザーが照射され、破線で示された時点より後では365nmUVランプが照射された。図1(B)には、上記実験において、UVランプのみ(四角形のプロット)又は532nmレーザーのみ(円形のプロット)を照射した際の蛍光スペクトルの極大波長における蛍光強度(I/I)の経時プロットを併せて示した。なお、蛍光スペクトル測定には日立 F-4500((株)日立ハイテクサイエンス製)を用いた。以下の測定でも同様の機器を用いた。
【0118】
図1(A)、(B)のとおり、サンプル溶液に対する532nmレーザーの照射によって、式(2-1)で表される化合物の蛍光強度が50倍以上に増大した(円形のプロット及び破線で示された時点までの三角形のプロット)。これは、TCPPの光増感によって生成された一重項酸素が式(2-1)で表される化合物に捕捉され、エキシプレックスの形成を経て、蛍光性の低いエンドペルオキシドが生成したことを示唆している。その後、サンプル溶液に対してUV光を照射すると、蛍光強度は急激に増大し、初期状態の225倍以上に達した(破線で示された時点以降の三角形のプロット)。この結果は、365nmのUV光の照射によってエンドペルオキシドが分解され、主な生成物として、捕捉されていた一重項酸素、9,10-アントラキノン及び高蛍光性化合物であるクマリン誘導体が放出されたことを示している。
【0119】
なお、式(2-1)で表される化合物におけるアントラセン部分は[4+4]光二量化することが知られており、UV光のみを照射した場合でも、この光二量化によって式(2-1)で表される化合物の蛍光強度は230倍以上に増強する(四角形のプロット)。しかし、UV光のみを照射した場合は蛍光強度がおおよそ一定の割合で変化するのに対して、532nmレーザー光の照射後にUV光を照射した際は、UV光照射開始直後から急激に蛍光強度が増大していた。この結果から、式(2-1)で表される化合物の光二量化反応に比べ、式(2-1)で表される化合物が一重項酸素を捕捉して生成したエンドペルオキシドの分解反応の方が反応速度は大きく、この点で両反応を区別することが可能であることが示された。
【0120】
同様に、TCPPのDMF溶液(5μM)中のSi-センサ(15mg)(Si-センサにTCPPを添加したサンプル)、及びDMF中のSi-センサ-TCPP(15mg)についても、532nmレーザー(50mWcm-2)による光活性化を60分間行い、このときの蛍光スペクトル(λex=320nm)を測定した。得られた蛍光スペクトルの極大波長における蛍光強度(I/I)を5分ごとにプロットした結果を図2に示す。図2中、四角形のプロットはSi-センサにTCPPを添加したサンプルの結果を表し、円形のプロットはSi-センサ-TCPPの結果を表す。
【0121】
図2のとおり、式(2-1)で表される化合物及びTCPPを含むDMF溶液の場合と同様に、蛍光強度の経時的な増大が観測された。この結果から、Si-センサ-TCPPもまた、TCPPによる、粒子内又は粒子間の光増感酸素化反応によって、良好な一重項酸素捕捉能力を有することが示された。また、Si-センサとTCPPとの混合系と、Si-センサ-TCPPとを比べると、蛍光強度はSi-センサ-TCPPの方が大きかった。このことから、Si-センサ-TCPPにおける一重項酸素の生成及び捕捉が、Si-センサとTCPPとの混合系を用いる場合より効率的であることが示された。
【0122】
3.単一粒子レベルでの一重項酸素の捕捉及び放出
図3は、Si-センサ-TCPPを水中に分散した(1mg/10mL)サンプルについて、532nmレーザー(2mWcm―2)を照射し、600nmロングパスフィルターを通して観察した蛍光画像である。図3において、多数の粒子が分散して存在している様子が確認された。
【0123】
観察されたSi-センサ-TCPP粒子の単一粒子レベルでの一重項酸素の捕捉及び放出挙動を、以下の方法により調べた。まず、Si-センサ及びTCPPのDMF溶液と、Si-センサ-TCPPのDMF溶液を調製した。それぞれの溶液について、10~50μLを、カバーガラス(25×50mm)上に滴下してサンプルを作製した。作製したそれぞれのサンプルについて、EMCCD(iXon、Andor Technology社製)、40倍対物レンズ(オリンパス(株)製、NA=0.60)、及び420~480nmバンドパス(BP)フィルタ(クマリン系蛍光性化合物の蛍光検出用)に接続した顕微鏡(IX70、オリンパス(株)製)により、単一粒子の蛍光強度の経時変化を15分間記録した。この間、532nmレーザー(スペクトラ・フィジックス(株)製「Millenia IIs」、2mWcm-2)により30秒間光活性化し、その後2分間UV光(365nm、1mWcm-2)を照射する操作を繰り返した。Si-センサにTCPPを添加したサンプル及びSi-センサ-TCPPの蛍光極大波長における蛍光強度の経時変化を、順に図4(A)及び(B)に示す。
【0124】
さらに、図4(A)及び(B)のデータについて、532nmレーザーを照射した後の最初のデータポイントと、UV光を照射した際のデータポイントとを分離して、図5(A)及び(B)を作製した。図5(A)は、光に誘起されて9,10-エンドペルオキシドを生成することによる、一重項酸素の捕捉挙動を示している。図5(A)中、四角形のプロットはSi-センサにTCPPを添加したサンプルの結果を表し、円形のプロットはSi-センサ-TCPPの結果を表す。また、図5(B)は、UV光に誘起された一重項酸素の放出挙動を示している。
【0125】
図5(A)のとおり、Si-センサにTCPPを添加したサンプル及びSi-センサ-TCPPの両方のサンプルにおいて、エンドペルオキシド形成による蛍光強度の経時的な増大が確認された。しかし、蛍光強度の変化の割合は、Si-センサにTCPPを添加したサンプルと比較して、Si-センサ-TCPPの方が明らかに大きかった。この理由は以下のとおりと考えられる。Si-センサ-TCPPでは、センサの近くにTCPPが存在する一方で、Si-センサとTCPPとの混合系では、TCPPにより生成された一重項酸素は拡散し、水中を移動してセンサに到達する必要がある。一重項酸素の寿命が短い(1μ秒未満)ことも考慮すると、Si-センサとTCPPとの混合系と比べ、Si-センサ-TCPPでは、一重項酸素が三重項酸素になる前に、より効率的に捕捉される。
【0126】
図5(B)のとおり、Si-センサにTCPPを添加したサンプル及びSi-センサ-TCPPの両方のサンプルにおいて、クマリン誘導体の放出によって蛍光強度が段階的に増大し、時間的に制御された一重項酸素の放出が確認された。また、一重項酸素放出の反応速度はSi-センサ-TCPPの方がわずかに大きいことが分かった。メソポーラスシリカナノ粒子は、保護された生理的環境を提供し、高い多孔性によって水性媒体中に溶解された酸素分子の拡散をより容易にするため、酸素分子は、単独で存在する場合と比べてより効率的にTCPPと相互作用し、一重項酸素を生成することができる。
【0127】
以上の結果から、Si-センサ-TCPP(粒子)では、一重項酸素を持続的に生成することができると共に、生成した一重項酸素とセンサ(第二の部位)との光酸化反応が起こりやすく、また、UV光源によって容易に制御可能な一重項酸素の連続的放出も可能であることが示された。
【0128】
4.細胞内での一重項酸素の捕捉及び放出
モデル細胞株としてMCF7乳癌細胞を用いて、細胞内における、粒子による一重項酸素の生成を実証した。MCF7細胞を、シリカ-センサ-TCPPと共にインキュベートしたサンプルを用意した。該サンプルに対して、ここでは、532nmレーザー光を連続的に照射し続け、UV光の照射/非照射を30秒ごとに繰り返した。UV光の照射中の蛍光極大波長における蛍光強度(λex=320nm)を記録した。結果を図6に示す。
【0129】
図6のとおり、3.と同様に、細胞に取り込まれたシリカ-センサ-TCPPによっても、蛍光強度の経時的な増大が観測された。以上の結果から、粒子を用いることにより、細胞内の環境でも、光酸化反応によって一重項酸素が連続的に生成、捕捉及び放出されることが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6