(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049197
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】発光装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 33/54 20100101AFI20240402BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240402BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L33/54
H01L33/62
H01L21/56 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155516
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】篠原 孝彰
【テーマコード(参考)】
5F061
5F142
【Fターム(参考)】
5F061AA01
5F061BA03
5F061CA04
5F061CA22
5F061CB02
5F061FA01
5F142AA02
5F142BA32
5F142CA11
5F142CA13
5F142CD02
5F142CD13
5F142CD15
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5F142CD18
5F142CG04
5F142CG05
5F142CG06
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5F142CG32
5F142DA13
5F142DB02
5F142DB17
5F142DB18
5F142DB24
5F142FA14
5F142FA18
(57)【要約】
【課題】光取り出し効率をより向上可能な発光装置の製造方法を提供する。
【解決手段】本発光装置の製造方法は、上面と、前記上面に連なる複数の側面とを備えた発光素子を準備する工程と、前記発光素子の上面及び側面に接着樹脂を配置する工程であって、前記発光素子の側面間の角部における前記接着樹脂の下端が、前記発光素子の側面の中央部における前記接着樹脂の下端より下側に位置するように前記接着樹脂を配置する工程と、前記発光素子の上面に透光性部材を配置し、前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する工程と、前記接着樹脂を硬化する工程と、を有する。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、前記上面に連なる複数の側面とを備えた発光素子を準備する工程と、
前記発光素子の上面及び側面に接着樹脂を配置する工程であって、前記発光素子の側面間の角部における前記接着樹脂の下端が、前記発光素子の側面の中央部における前記接着樹脂の下端より下側に位置するように前記接着樹脂を配置する工程と、
前記発光素子の上面に透光性部材を配置し、前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する工程と、
前記接着樹脂を硬化する工程と、を有する発光装置の製造方法。
【請求項2】
前記接着樹脂を配置する工程では、前記発光素子の上面の中央部に位置する第1部分が前記発光素子の上面の角部に位置する第2部分よりも、前記発光素子の上面からの高さが高くなるように前記接着樹脂を配置する、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項3】
前記接着樹脂を配置する工程では、前記第1部分と、前記第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分と、を含むように前記接着樹脂を配置し、
前記第2部分は、前記第3部分よりも、前記発光素子の上面からの高さが高い、請求項2に記載の発光装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2部分は、前記発光素子の側面間の角部に配置された前記接着樹脂と連続する、請求項3に記載の発光装置の製造方法。
【請求項5】
前記透光性部材は、前記発光素子の上面よりも大きい面積の下面と、前記下面に連なる複数の側面と、を備え、
前記接着樹脂を押圧する工程では、前記接着樹脂が前記透光性部材の下面の外縁に達するように前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項6】
前記接着樹脂を押圧する工程では、前記接着樹脂が前記発光素子の側面の下端に達するように前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項7】
前記接着樹脂を配置する工程の前に、前記発光素子を配線基板上に配置する工程を含み、
前記接着樹脂を押圧する工程において、押圧後の前記接着樹脂は、前記配線基板と離隔して配置される、請求項1に記載の発光装置の製造方法。
【請求項8】
前記接着樹脂を配置する工程では、前記接着樹脂を配置する前に、先端面の大きさが前記発光素子の上面よりも大きいノズルを準備し、前記先端面が前記発光素子の上面と対向し、かつ前記先端面の外縁が前記発光素子の上面の外縁よりも外側に位置するように前記ノズルを前記発光素子の上方に配置する、請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【請求項9】
前記ノズルは、前記先端面の中央部に開口する吐出孔と、前記先端面に開口し、前記吐出孔に連通して前記吐出孔から前記先端面の外縁に向かって延びる複数の溝と、を有し、
前記接着樹脂は、前記吐出孔から吐出されて前記発光素子の上面に配置されると共に、前記吐出孔から複数の前記溝内を移動して前記発光素子の側面間の角部に配置される、請求項8に記載の発光装置の製造方法。
【請求項10】
前記溝の幅が一定であり、かつ前記溝の深さが一定である、請求項9に記載の発光装置の製造方法。
【請求項11】
前記接着樹脂を硬化する工程の後に、前記接着樹脂の側面及び前記透光性部材の側面を被覆する被覆部材を配置する工程を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の発光装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、発光装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
発光ダイオード等の発光素子を有する発光装置が知られている。一例として、光取出し面となる第1面と、第1面と対向する第2面と、第1面と第2面との間に複数の第3面とを有し、第2面側に一対の電極を有する発光素子と、第1面側に配置される透光性部材と、発光素子と透光性部材との間にあって発光素子の第1面から複数の第3面までを覆い、発光素子と透光性部材とを接着する接着樹脂とを備えた発光装置が挙げられる(特許文献1参照)。
【0003】
このような発光装置では、接着樹脂が発光素子から側方に出射する光に対して導光部材として機能する。そのため、発光素子から側方に出射する光が接着樹脂の側面で透光性部材側に反射され、発光装置の光取出し効率が向上する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、光取り出し効率をより向上可能な発光装置の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一実施形態に係る発光装置の製造方法は、上面と、前記上面に連なる複数の側面とを備えた発光素子を準備する工程と、前記発光素子の上面及び側面に接着樹脂を配置する工程であって、前記発光素子の側面間の角部における前記接着樹脂の下端が、前記発光素子の側面の中央部における前記接着樹脂の下端より下側に位置するように前記接着樹脂を配置する工程と、前記発光素子の上面に透光性部材を配置し、前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する工程と、前記接着樹脂を硬化する工程と、を有する。
【発明の効果】
【0007】
本開示の一実施形態によれば、光取り出し効率をより向上可能な発光装置の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
【
図2】
図1のII-II線における縦断面図である。
【
図3】
図1のIII-III線における縦断面図である。
【
図5】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す側面図である。
【
図6】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す側面図である。
【
図7】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す側面図である。
【
図8】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す下面図である。
【
図9】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す斜視図である。
【
図10】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す側面図である。
【
図11】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す側面図である。
【
図12】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【
図13】本実施形態に係る発光装置の製造方法の製造工程の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明に係る実施形態の製造方法、及び該製造方法により得られる発光装置(以下、「実施形態に係る発光装置」と呼ぶことがある)について説明する。なお、以下の説明では、必要に応じて特定の方向や位置を示す用語(例えば、「上」、「下」、及びそれらの用語を含む別の用語)を用いる。しかし、それらの用語の使用は図面を参照した発明の理解を容易にするためであって、それらの用語の意味によって本発明の技術的範囲が制限されるものではない。また、複数の図面に表れる同一符号の部分は同一もしくは同等の部分または部材を示す。
【0010】
また、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための発光装置等を例示するものであって、本発明を以下に限定するものではない。また、以下に記載されている構成部品の寸法、材料、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定する趣旨ではなく、例示することを意図したものである。また、一の実施形態において説明する内容は、他の実施形態や変形例にも適用可能である。また、図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張している場合がある。さらに、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略した模式図を用いたり、断面図として切断面のみを示す端面図を用いたりすることがある。
【0011】
<実施形態に係る発光装置1>
図1は、本実施形態に係る発光装置を模式的に示す斜視図である。
図2は、
図1のII-II線における縦断面図である。
図3は、
図1のIII-III線における縦断面図である。
図4は、
図2のA部の部分拡大図である。なお、縦断面とは、発光装置1を発光素子20の上面と垂直な平面で切断した断面である。
【0012】
図1~
図3に示すように、発光装置1は、配線基板10と、発光素子20と、保護素子30と、導光部材40と、透光性部材50と、被覆部材60とを有している。なお、発光装置1は、保護素子30と、被覆部材60とを有していない構成であってもよい。
【0013】
発光装置1において、発光素子20は、配線基板10上に配置されている。さらに、発光装置1は、配線基板10上に保護素子30が配置されてもよい。発光素子20は、上面20aと、上面20aに連なる複数の側面20cと、上面20aと反対側の下面20bとを有する。複数の側面20cは、上面20a及び下面20bと連なる。言い換えれば、複数の側面20cは、それぞれが、上面20aの外縁と下面20bの外縁とに連なる外縁を有する。発光素子20において、上面20a、下面20b、及び側面20cから光が出射される。
【0014】
発光素子20は、略矩形形状の上面20aを有する。例えば、発光素子20は、外観形状が略直方体又は略立方体である。この場合、発光素子20の上面20a及び下面20bは略矩形であり、発光素子20は4つの略矩形の側面20cを有する。発光素子20の上面20aの形状は、三角形や六角形等の多角形であってもよい。また、発光素子20は、外観形状が、上面が多角形の柱状体や錐台体であってもよい。
【0015】
導光部材40は、発光素子20の上面20a及び上面20aに連なる複数の側面20cを連続して被覆する。具体的には、導光部材40は、発光素子20の上面20aの全体と、各々の側面20cの少なくとも上端側(つまり上面20aと連なる外縁側)の一部とを被覆する。導光部材40は、発光素子20の側面20cと透光性部材50の下面とに接する側面40cを備えている。導光部材40は、発光素子20の各々の側面20cのより多くの領域を被覆していることが好ましく、各々の側面20cの略全てを被覆していることがより好ましい。すなわち、導光部材40の側面40cは、発光素子20の各々の側面20cの下端側(つまり下面20bと連なる側)に近い位置において、側面20cと接することが好ましく、各々の側面20cの下端に接することがより好ましい。具体的には、発光素子20の各々の側面20cにおいて、上端側から高さ方向の75%以上100%以下の領域が導光部材40で被覆されることが好ましく、90%以上100%以下の領域が導光部材40で被覆されることがより好ましい。
【0016】
図3は、発光素子20の側面20c間の角部を通る縦断面を示している。
図3に示すように、導光部材40の側面40cは、発光素子20の側面20c間の角部を通る縦断面視において、発光素子20の側面20cから離れる方向に凸の曲線となることが好ましい。また、導光部材40の側面40cは、発光素子20の側面20c間の角部を通らない縦断面視(例えば側面20cの中央部を通る縦断面視)においても、
図2に示すように、発光素子の側面20cから離れる方向に凸の曲線となることが好ましい。なお、発光素子20の側面20c間の角部とは、隣接する側面20c間において、隣接する側面20c同士が接する角部である。
【0017】
導光部材40の側面40cが発光素子の側面20cから離れる方向に凸の曲線となることにより、
図4に示すように、発光素子20の側面20cの下端側から横方向に出射される光Lは、導光部材40の側面20cと被覆部材60との界面において発光素子20の上方に反射されやすくなる。そのため、透光性部材50に入射する光が増加し、発光装置1における光の取り出し効率を向上させることができる。
【0018】
透光性部材50は、導光部材40を介して発光素子20上に配置される。透光性部材50は、上面と、上面と反対側の下面50bと、上面と下面50bとの間の側面とを有する。透光性部材50の上面50aは、発光装置1の主発光面として、発光装置1の上面を構成している。透光性部材50は、透光性部材50の下面50bが、発光素子20の上面20a上に配置された導光部材40を介して、発光素子20の上面20aと対向するように、発光素子20上に配置される。透光性部材50は、透光性部材50の下面50bが、発光素子20の上面20aと略平行となるように配置される。透光性部材の下面50bの形状は発光素子の上面20aの形状と類似する形状であることが好ましい。例えば、発光素子の上面20aが矩形状である場合、透光性部材の下面50bも矩形状であることが好ましい。
【0019】
透光性部材50の下面50bは平坦面である。透光性部材50の上面50aは下面50bに平行な平坦面であってもよく、上面50aの一部または全てが下面50bに平行でない面を有していてもよい。透光性部材50の側面は上面50a及び/又は下面50bに垂直な面、傾斜した面、曲面等のいずれであってもよい。なお、透光性部材50は、その表面の一部または全てに凹凸構造を有していてもよい。
【0020】
透光性部材50の下面50bは、発光素子20の上面20aよりも大きい面積であることが好ましい。また、透光性部材50は、上面視で透光性部材50の下面50bが発光素子20を内包するように配置されていることが好ましい。また、発光装置1において、透光性部材50の下面50bと発光素子20の上面20aとの間に介在する導光部材40は、上面視で発光素子20の上面20aと重ならない透光性部材50の下面50bを被覆していることが好ましい。さらに、発光装置1において、導光部材40は透光性部材50の下面50bの外縁に達するように配置されていることが好ましく、下面50bの全てが導光部材40で被覆されていることがより好ましい。これにより、発光素子20から出射される光のより多くを、導光部材40を介して透光性部材50の下面50bから入射させることができる。
【0021】
被覆部材60は、配線基板10上に設けられ、透光性部材50の上面50aを露出し、導光部材40の側面40c、及び透光性部材50の側面を被覆する。また、発光装置1が保護素子30を有する場合、被覆部材60は、保護素子30の上面、下面、及び側面を被覆することが好ましい。さらに、被覆部材60は、発光素子20の導光部材40から露出する側面20c及び、発光素子20の下面20bを被覆していてもよい。
【0022】
被覆部材60が導光部材40の側面40cを被覆することにより、発光素子20の側面20cから出射され、導光部材40を透過した光が被覆部材60で反射される。また、被覆部材60が発光素子20の下面20bを被覆することにより、発光素子20の下方に進む光が被覆部材60で反射される。これらにより、発光装置1における光の取り出し効率を向上させることができる。
【0023】
被覆部材60は、単一の部材から構成されてもよいし、複数の部材から構成されてもよい。
図2および
図3に示す例では、被覆部材60は、第1被覆部材61及び第2被覆部材62から構成されている。第1被覆部材61は、例えば、配線基板10上に設けられ、発光素子20の下面20b、及び導光部材40の側面40cの少なくとも一部を被覆する。また、発光装置1が保護素子30を有する場合、第1被覆部材61は、例えば、保護素子30の下面、及び側面の少なくとも一部を被覆する。
【0024】
第2被覆部材62は、例えば、第1被覆部材61上に設けられ、透光性部材50の側面を被覆する。また、発光装置1が保護素子30を有する場合、第2被覆部材62は、例えば、保護素子30の上面を被覆する。第2被覆部材62は、透光性部材50の側面の一部、及び保護素子30の側面の一部を被覆してもよい。
【0025】
第2被覆部材62の側面は、配線基板10の基材11の側面と共に、発光装置1の側面を構成する。第2被覆部材62の側面と基材11の側面とは、例えば、同一面とすることができる。また、第2被覆部材62の上面と透光性部材50の上面50aとは、例えば、同一面とすることができる。
【0026】
以下、実施形態に係る発光装置1を構成する各要素について詳説する。
【0027】
[配線基板10]
配線基板10は、発光素子20が配置される部材である。配線基板10は、外部から発光素子に電力を供給するための配線と、配線を支持する基材11と、を備える。配線基板10は、一例として、発光素子20が配置される上面に配置される上面配線12と、上面と反対側の下面に配置される下面配線13とを有する。基材11は、例えば、略直方体形状又は略立方体形状である。基材11には、絶縁性材料であり、かつ、発光素子20から出射される光や外光等を透過しにくい材料を用いることが好ましい。基材11の材料としては、例えば、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、ムライト等のセラミック、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、BTレジン、ポリフタルアミド等の樹脂、シリコン等の半導体、銅、アルミニウム等の金属の単一材料及びこれらの複合材料が挙げられる。これらの中でも、基材11の材料として、放熱性に優れるセラミックを好適に用いることができる。
【0028】
上面配線12は、発光素子20と電気的に接続される配線、及び保護素子30と電気的に接続される配線を含む。下面配線13は、外部電源と電気的に接続されるアノード電極及びカソード電極を含む。上面配線12及び下面配線13には、例えば、鉄、銅、ニッケル、アルミニウム、金、銀、プラチナ、チタン、タングステン、パラジウム等の金属又は、これらの少なくとも一種を含む合金を用いることができる。さらに、配線基板10は、基材11の内部及び/又は側面に、上面配線12と下面配線13とを接続するための中継配線を備えてもよい。
【0029】
配線基板10は、下面配線13を有していなくてもよい。この場合、上面又は側面に、外部電源と電気的に接続されるアノード電極及びカソード電極が配置されていてもよい。
【0030】
なお、配線基板10は、上面に凹部を有し、発光装置1は、配線基板10の凹部の底に発光素子20が配置される構造としてもよい。また、発光装置1は、配線基板10を備えない構造としてもよい。例えば発光素子20の下面20bを被覆する被覆部材60から露出する金属部材を発光装置1の電極として備える構造の発光装置であってもよい。
【0031】
(発光素子20)
発光素子20は、発光ダイオード(LED)チップや半導体レーザー(LD)チップ等の半導体発光素子が好適に利用できる。発光素子20の形状や大きさ等は任意のものを選択できる。発光素子20は、例えば、下面20bに複数の電極25を有する。発光素子20は、配線基板10上に配置されている。発光素子20は、例えば、電極25を備えた下面25bを配線基板10の側に向けて、配線基板10にフリップチップ実装されている。発光素子20の複数の電極25は、上面配線12と電気的に接続されている。発光素子20の複数の電極25と上面配線12とは、例えば、共晶はんだ、導電ペースト、バンプ等の公知の部材を用いて接続することができる。
【0032】
発光素子20は、例えば、半導体構造体と、半導体構造体を支持する支持基板と、を含む。半導体構造体は、n側半導体層と、p側半導体層と、n側半導体層とp側半導体層とに挟まれた活性層とを含む。活性層は、単一量子井戸(SQW)構造としてもよいし、複数の井戸層を含む多重量子井戸(MQW)構造としてもよい。半導体構造体は、窒化物半導体からなる複数の半導体層を含む。窒化物半導体は、InxAlyGa1-x-yN(0≦x、0≦y、x+y≦1)からなる化学式において組成比x及びyをそれぞれの範囲内で変化させたすべての組成の半導体を含む。活性層の発光ピーク波長は、目的に応じて適宜選択することができる。活性層は、例えば、可視光または紫外光を発光可能に構成されている。
【0033】
発光素子20は、1つの支持基板上に1つの半導体構造体を有してもよいし、1つの支持基板上に複数の半導体積層体を有していてもよい。また、1つの半導体構造体は1つの発光層のみを有してもよいし、複数の発光層を有していてもよい。複数の発光層を有する半導体構造体の構造は、1つのn側半導体層と1つのp側半導体層との間に複数の活性層を含む構造であってもよいし、n側半導体層と活性層とp側半導体層とを順に含む構造が複数回繰り返された構造であってもよい。
【0034】
発光素子20において、複数の電極25は半導体構造体上に配置される。電極25は、n側半導体層に接続されるn電極とp側半導体層に接続されるp電極とを含む。p電極とn電極は半導体積層体の異なる面に配置されていてもよく、同一面に配置されていてもよい。ここでは、p電極とn電極を含む複数の電極25は、半導体構造体の同一面に配置されており、複数の電極25が配置される側が発光素子20の下面20bを構成し、支持基板の半導体構造体が配置される面と反対側の面が発光素子20の上面20aを構成している。支持基板としては、サファイアやスピネル(MgAl2O4)のような絶縁性基板、窒化ガリウム等の窒化物系の半導体基板が挙げられる。なお、活性層から出射される光を支持基板を介して取り出すために、支持基板は、透光性を有する材料を用いることが好ましい。
【0035】
(保護素子30)
発光装置1は、発光素子20の他に、保護素子30等の他の電子部品を備えることができる。保護素子30は、例えば、ツェナーダイオードである。なお、発光装置1は、保護素子30を備えない構成であってもよい。
【0036】
(導光部材40)
導光部材40は、発光素子20と透光性部材50との間に配置され、発光素子20と透光性部材50とを接合する部材である。また、導光部材40は、発光素子20から出射される光を透光性部材50に導光する部材である。導光部材40が発光素子20の側面を被覆することにより、発光素子20の側面から出射される光を透光性部材50へと導光しやすくなり、発光装置1における光の取り出し効率を向上させることができる。
【0037】
導光部材40は、発光素子20の上面20a及び各々の側面20cを覆うように配置されている。発光素子20の側面20cを被覆する導光部材40は、透光性部材50と発光素子20とを接合する未硬化の接着樹脂が、発光素子20の側面20cに濡れ広がり、その後硬化されることで形成することができる。硬化後に導光部材40となる接着樹脂としては、例えば、透光性の樹脂を用いることができる。透光性の樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。なかでも、耐熱性の高いシリコーン樹脂が好適に用いられる。なお、導光部材40は、後述する光拡散部材や蛍光体が含有されていてもよい。
【0038】
(透光性部材50)
透光性部材50は、発光素子20上に配置され、発光素子20から出射される光を透過して外部に放出する部材である。透光性部材50は、発光素子20からの光及び/又は発光素子20からの光が波長変換された光(例えば、波長320nm~850nmの範囲の光)の60%以上を透過するものが挙げられ、70%以上の光を透過するものが好ましい。透光性部材50は、例えば、ガラス、セラミック、サファイア等の無機材料、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、フッ素樹脂のうちの一種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂等の有機材料のいずれによって形成されていてもよい。透光性部材50は、入射された光の少なくとも一部を波長変換可能な蛍光体を含有してもよい。蛍光体を含有する透光性部材50は、例えば、蛍光体の焼結体や、上述した材料に蛍光体粉末を含有させたものが挙げられる。また、透光性部材50は、樹脂、ガラス、セラミック等の成形体の表面に蛍光体を含有する樹脂層や蛍光体を含有するガラス層等の透光層を形成したものでもよい。また、透光性部材50は、目的に応じて、拡散材等のフィラーを含有してもよい。また、拡散材等のフィラーを含有する場合、透光性部材50は、樹脂、ガラス、セラミック又は他の無機物等にフィラーを含有させたものでもよいし、樹脂、ガラス、セラミック等の成形体である透光板の表面にフィラーを含有する樹脂層やフィラーを含有するガラス層等の透光層を形成したものでもよい。
【0039】
蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、(Y,Gd)3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb3(Al,Ga)5O12:Ce)、CCA系蛍光体(例えば、Ca10(PO4)6Cl2:Eu)、SAE系蛍光体(例えば、Sr4Al14O25:Eu)、クロロシリケート系蛍光体(例えば、Ca8MgSi4O16Cl2:Eu)、シリケート系蛍光体(例えば、(Ba,Sr,Ca,Mg)2SiO4:Eu)、βサイアロン系蛍光体(例えば、(Si,Al)3(O,N)4:Eu)若しくはαサイアロン系蛍光体(例えば、Ca(Si,Al)12(O,N)16:Eu)等の酸窒化物系蛍光体、LSN系蛍光体(例えば、(La,Y)3Si6N11:Ce)、BSESN系蛍光体(例えば、(Ba,Sr)2Si5N8:Eu)、SLA系蛍光体(例えば、SrLiAl3N4:Eu)、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、K2SiF6:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K2(Si1-xAlx)F6-x:Mn ここで、xは、0<x<1を満たす。)若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)等のフッ化物系蛍光体、ペロブスカイト構造を有する量子ドット(例えば、(Cs,FA,MA)(Pb,Sn)(F,Cl,Br,I)3 ここで、FAとMAは、それぞれホルムアミジニウムとメチルアンモニウムを表す。)、II-VI族量子ドット(例えば、CdSe)、III-V族量子ドット(例えば、InP)、又はカルコパイライト構造を有する量子ドット(例えば、(Ag,Cu)(In,Ga)(S,Se)2)等を用いることができる。
【0040】
光拡散部材としては、当該分野で公知のものを使用することができる。例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム等を用いることができる。
【0041】
また蛍光体層や拡散材層のバインダーとして樹脂を用いる場合、樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0042】
(被覆部材60)
被覆部材60は、遮光性を有することが好ましく、具体的には、光反射性及び/又は光吸収性を有することが好ましい。なかでも、発光素子20から出射された光を好適に反射することができる材料を含むことが好ましい。例えば、発光素子20から出射された光に対して60%以上の反射率を有することが好ましく、70%以上、80%以上又は90%以上の反射率を有することがより好ましい。
【0043】
被覆部材60は、絶縁性材料を用いることが好ましい。被覆部材60は、例えば、透光性の樹脂に光反射性物質の粒子を含有させた部材である。被覆部材60に用いる樹脂としては、例えば、シリコーン樹脂、変性シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、変性エポキシ樹脂、ユリア樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、ポリフタルアミド樹脂、の1種以上を含む樹脂又はハイブリッド樹脂が挙げられる。これらの中でも、特に、耐光性、耐熱性、電気絶縁性に優れ、柔軟性のあるシリコーン樹脂を用いることが好ましい。光反射性物質としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、チタン酸カリウム、チタン酸バリウム、酸化亜鉛、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、珪酸カルシウム、及びこれらの組み合わせ等が挙げられる。これらの中でも、光反射の観点から、屈折率が比較的高い酸化チタンを用いることが好ましい。
【0044】
前述のように、被覆部材60は、第1被覆部材61及び第2被覆部材62から構成されてもよい。この場合、第1被覆部材61及び第2被覆部材62のそれぞれは、被覆部材60の材料として例示した上記の材料の中から選択した材料を用いて形成することができる。被覆部材60を第1被覆部材61及び第2被覆部材62から構成することにより、例えば、発光装置1の外表面を構成する第2被覆部材62に機械強度の高い材料を用いたり、発光素子20の下面20bを被覆する第1被覆部材61に低弾性、低線膨張の材料を用いて、樹脂膨張の応力を緩和させたりすることが可能となる。
【0045】
(発光装置1の動作)
発光装置1において、外部電源から発光素子20に電流が供給されると、発光素子20が発光して光を出射する。発光素子20が出射する光のうち、上方(つまり透光性部材の下面側)へ進む光は、導光部材40及び透光性部材50を介して発光装置1の外部に取り出される。また、発光素子20が出射する光のうち、下方へ進む光は、被覆部材60及び配線基板10で反射され、導光部材40及び透光性部材50を介して発光装置1の外部に取り出される。また、発光素子20が出射する光のうち、横方向へ進む光は、導光部材40の側面20cと被覆部材60との界面で反射され、導光部材40及び透光性部材50を介して発光装置1の外部に取り出される。この際、導光部材40の側面40cが発光素子の側面20cから離れる方向に凸の曲線となることにより、反射面となる導光部材40と被覆部材60との界面の表面積が大きくなり、より効率よく光を反射させることができる。これにより、より光取り出し効率に優れる発光装置1とすることができる。
【0046】
<実施形態に係る発光装置の製造方法>
実施形態に係る発光装置の製造方法は、上面と、上面に連なる複数の側面とを備えた発光素子を準備する工程と、発光素子の上面及び側面に接着樹脂を配置する工程であって、発光素子の側面間の角部における接着樹脂の下端が、発光素子の側面の中央部における接着樹脂の下端より下側に位置するように接着樹脂を配置する工程と、発光素子の上面に透光性部材を配置し、透光性部材で接着樹脂を押圧する工程と、接着樹脂を硬化する工程と、を有する。
【0047】
さらに、実施形態に係る発光装置の製造方法は、接着樹脂を配置する工程の前に、発光素子を配線基板上に配置する工程を含んでいてもよい。
【0048】
さらに、実施形態に係る発光装置の製造方法は、接着樹脂を硬化する工程の後に、接着樹脂の側面及び透光性部材の側面を被覆する被覆部材を配置する工程を含んでいてもよい。
【0049】
以下、実施形態に係る発光装置の製造方法の各製造工程について、図面を参照しながら説明する。
【0050】
図5~
図13は、本実施形態に係る発光装置の製造工程を説明する模式図である。具体的には、
図5~
図7、
図10、及び
図11は、発光装置の製造工程を例示する側面図である。また、
図7は、発光装置の製造工程において、樹脂の供給に用いるノズルを先端面側から視た下面図である。また、
図9は、発光装置の製造工程を例示する斜視図である。また、
図12及び
図13は、発光装置の製造工程を例示する断面図である。
【0051】
(発光素子を準備する工程)
まず、
図5に示すように、上面20aと、下面20bと、上面20a及び下面20bに連なる複数の側面20cとを備えた発光素子20を準備する。また、保護素子30を準備する。保護素子30は、必要に応じて準備する。なお、ここでは、一例として、発光素子20の上面20aが正方形であるとして以下の説明をする。
【0052】
(発光素子を配線基板上に配置する工程)
次に、
図6に示すように、個片化後に発光装置1が備える個々の配線基板10となる複数の領域10Aを含む基板10Sを準備する。領域10Aは、例えば、基板10Sの上面視において行列状に2次元に配置される。そして、発光素子20及び保護素子30を、基板10Sの各領域10A上に配置する。発光素子20及び保護素子30は、例えば、各々の電極が配置される側の面を上面配線12側に向けて各領域10A上にフリップチップ実装される。
【0053】
(接着樹脂を配置する工程)
次に、
図7~
図10に示すように、発光素子20の上面20a及び各々の側面20cに硬化後に導光部材40となる未硬化の接着樹脂400を配置する。ここでは、発光素子20の側面20c間の角部を被覆する接着樹脂400の下端が、発光素子20の側面20cの中央部を被覆する接着樹脂400の下端より下側に位置するように接着樹脂400を配置する。ここで、発光素子20の側面20cの中央部とは、側面20cを側面20cの法線方向から視たときに、両側に位置する辺(すなわち隣接する側面との境界)から等距離にある直線上に位置する部分である。
【0054】
具体的には、まず、
図7及び
図8に示すように、先端面101に吐出孔102を有するノズル100を準備し、発光素子20の上面20aに先端面101が対向するように、ノズル100を発光素子20の上方に配置する。
【0055】
ノズル100の先端面101の大きさは、発光素子20の上面20aよりも大きいことが好ましい。例えば、発光素子20の上面20aがLmm×Lmmの正方形であれば、先端面101の大きさは1.05Lmm×1.05Lmm以上、1.15Lmm×1.15Lmm以下程度の正方形とすることができる。
図7に示すように、先端面101が発光素子20の上面20aと対向し、かつ先端面101の外縁101eが発光素子20の上面20aの外縁よりも外側に位置するようにノズル100を発光素子20の上方に配置する。
【0056】
また、
図8に示すように、ノズル100は、先端面101の中央部に開口する吐出孔102と、先端面101に開口し、吐出孔102に連通して吐出孔102から先端面101の外縁101eに向かって延びる複数の溝とを有することが好ましい。
図8の例では、下面視において、吐出孔102の形状は円形である。また、
図8の例では、下面視において、4つの溝103、104、105、及び106が、吐出孔102から先端面101の対角線方向に向かってX状に配置されている。なお、発光素子20の上面20a形状が矩形以外の多角形である場合、ノズル100の先端面も同様の多角形であることが好ましく、複数の溝は、多角形の中心から各頂点に向かう複数の溝とすることが好ましい。
【0057】
なお、
図8では、先端面101において、吐出孔102及び溝103~106が設けられていない領域をドットパターンで示している。ドットパターンで示した領域は、略平坦である。また、
図8では、先端面101の外縁101eと発光素子20の上面20aの外縁との位置関係を示すため、便宜上発光素子20の上面20aの外縁を破線で示している。
【0058】
このような構造のノズル100を用いることにより、接着樹脂400の配置位置の制御が容易となる。すなわち、接着樹脂400を発光素子20の上面20aから、側面20c間の角部まで移動させやすくすることができ、かつ表面張力で発光素子20の側面20c間の角部に接着樹脂400を溜まらせやすくすることができる。
【0059】
溝103~106のそれぞれにおいて、例えば、溝の底面は平面であり、溝の側面は先端面101に対して垂直である。溝103~106のそれぞれにおいて、溝の幅が略一定であり、かつ溝の深さが略一定であることが好ましい。これにより、接着樹脂400が溝内を移動する際に、接着樹脂400の流動状態が安定するため、接着樹脂400におけるボイドの発生を抑制することができる。
【0060】
なお、先端面101の外縁101eは、
図8に示す下面視における先端面101の外縁を指す。すなわち、
図8に示す下面視において、溝103~106が形成される部分も含めた正方形の4辺が先端面101の外縁101eである。また、
図8に示す下面視における先端面101の外縁101eの大きさが、前述の先端面101の大きさである。
【0061】
次に、ノズル100から発光素子20の上面20aに向けて未硬化の接着樹脂400を吐出する。そして、所定量の接着樹脂400を吐出したら、吐出を停止し、ノズル100を発光素子20の上方から移動させる。これにより、
図9及び
図10に示すように、接着樹脂400は、吐出孔102から吐出されて発光素子20の上面20aに配置されると共に、発光素子20の側面20c間の角部に配置される。発光素子20の側面20c間の角部における接着樹脂400の下端は、発光素子20の側面20cの中央部における接着樹脂400の下端より下側に位置する。
【0062】
具体的に説明すると、吐出孔102から吐出された接着樹脂400は、まず発光素子20の上面20aの中央部に配置され、吐出孔102から溝103~106に沿って発光素子20の中央部から上面20aの角部に向かって移動する。そして、ノズル100の先端面101の外縁101eが発光素子20の上面20aの外縁よりも外側に位置していることにより、接着樹脂400は発光素子20の上面20aの外縁を越えて、発光素子20の側面20c間の角部まで移動することができる。なお、発光素子20の側面20cの中央部においては、上方に吐出孔及び溝が配置されていないため、側面20c間の角部と比較して、配置される接着樹脂400の量が少なくなる。
【0063】
このように、発光素子20の側面20c間の角部が接着樹脂400で被覆されていることで、後の工程において透光性部材50で接着樹脂400を押圧したときに、発光素子20の側面20c間の角部のより下方まで接着樹脂400を配置することができる。さらに、接着樹脂400の粘度を、表面張力で接着樹脂400が側面20cに溜まりやすくなるよう調整することで、側面20cを被覆する接着樹脂の量を増やすことができる。これにより発光素子20の側面20cを被覆する導光部材40の形状を、発光素子20の側面20cから離れる方向に凸となる曲面を有する形状に容易に形成することができる。その結果、発光素子20の側面20cからの光が導光部材40に入射して上方に反射されやすくなるため、発光装置1における光の取り出し効率を向上させることができる。なお、未硬化の接着樹脂400の粘度は、例えば、選択する樹脂の物性により、また、樹脂中に含有させる粘度調整用のフィラーの量により調整することができる。
【0064】
接着樹脂400を配置する工程では、接着樹脂400を、発光素子20の上面20aの中央部に位置する第1部分401が、発光素子20の上面20aの角部に位置する第2部分402よりも、発光素子20の上面20aからの高さが高くなるように、発光素子20上に配置することが好ましい。これにより、後述する透光性部材50で接着樹脂400を押圧する工程において、押圧された接着樹脂400が、発光素子20の上面20aの中央部から上面20aの外縁に向かって広がるように移動するため、接着樹脂400にボイドが発生しにくくなるとともに、発生したボイドを外側に移動させて外部に抜けやすくすることができる。さらに、接着樹脂400を透光性部材50の下面の外縁に配置しやすくなる。
【0065】
また、接着樹脂400を配置する工程では、第1部分401と、第2部分402と、第1部分401と第2部分402との間に位置する第3部分403と、を含むように接着樹脂を配置してもよい。この場合、第1部分401が第2部分402よりも発光素子20の上面20aからの高さが高いことが好ましく、かつ第2部分402が第3部分403よりも発光素子20の上面20aからの高さが高いことが好ましい。さらに、第2部分402は、発光素子20の側面20c間の角部に配置された接着樹脂400と連続していることがより好ましい。言い換えると、第2部分402は上面視において発光素子20の側面20c間の角部に配置された接着樹脂400と重なるように配置されることがより好ましい。これにより、後述する透光性部材50で接着樹脂400を押圧する工程において、発光素子20の側面20c間の角部のより下方まで接着樹脂400を配置することができる。
【0066】
このような形状の第1部分401、第2部分402、第3部分403を有する接着樹脂400の配置について具体的に説明する。
【0067】
吐出孔102から供給される接着樹脂400は、まず発光素子20の上面20aの中央部を被覆する。そして溝に沿って上面20a上を移動し、上面20aの角部より外側に達する。そして、側面20c間の角部に達した後、接着樹脂400の供給を停止し、ノズルを上方に移動させる。つまり、接着樹脂400が発光素子20上に供給される際の、供給の始点は上面20aの中央部に位置する第1部分401であり、終点も第1部分となる。樹脂吐出装置においては、供給の始点と終点において樹脂の吐出量が多くなる傾向にあるため、第1部分401における接着樹脂400の発光素子20の上面20aからの高さが最も高くなる。さらに、接着樹脂400の移動の始点は第1部分401であり、終点は第2部分402近傍である。接着樹脂400は、発光素子20の上面20aを越えて発光素子20の側面20c間の角部に配置され、その後接着樹脂の供給が停止される。接着樹脂400は、表面張力により、第2部分402において発光素子20の上面20aからの高さが保たれる。第3部分403は、主に供給停止後に濡れ性により接着樹脂400が広がる領域であるため、第1部分401や第2部分402と比較して、発光素子20の上面20aからの高さは低くなる。
【0068】
上述した製造方法を用いることにより、発光素子20上の上面及び側面の所望の位置に接着樹脂400を配置することが可能となる。発光素子20の上面20aにのみ接着樹脂400を配置し、押圧により発光素子20の側面20cに接着樹脂400を移動させようとすると、発光素子20の上面20aの中央部から相対的に距離が遠い側面20c間の角部に配置される接着樹脂400の量が少なくなる。上記のように、第1部分401及び第2部分402を含むように接着樹脂400を配置し、各々の第2部分402が発光素子20の側面20c間の角部に配置された接着樹脂400と連続することにより、発光素子20の側面20c間の角部を被覆する接着樹脂400の量を相対的に増やすことができる。また、第1部分401、第2部分402、及び第3部分403を上記のような高さ関係にすることにより、後の工程において透光性部材50で接着樹脂400を押圧したときに、接着樹脂400が発光素子20の上面20aに均等に広がりやすくなると共に、接着樹脂400が発光素子20の各々の側面20cを被覆しやすくなる。接着樹脂400が発光素子20の各々の側面20cを被覆することにより、発光装置1が完成したときに、発光素子20の側面20cからの光が接着樹脂400を硬化させた導光部材40に入射して上方に反射されやすくなる。そのため、発光装置1における光の取り出し効率を向上させることができる。
【0069】
(接着樹脂を押圧する工程)
次に、
図11に示すように、透光性部材50で接着樹脂400を押圧する。具体的には、まず、
図11の矢印上側に示すように、発光素子20の上面20aに透光性部材50を配置する。透光性部材50は、発光素子20の上面20aよりも大きい面積の下面50bを備えていることが好ましい。また、透光性部材50は、上面視で発光素子20を内包するように配置することが好ましい。
【0070】
次に、
図11の矢印下側に示すように、透光性部材50で接着樹脂400を押圧する。これにより、発光素子20の上面20aと透光性部材50の下面50bとの間に、接着樹脂400が略一定の厚さで配置される。また、押圧により、接着樹脂400は発光素子20の上面20aから外側に移動し、透光性部材50の下面を被覆するとともに、発光素子20の側面20cの一部または全部に接着樹脂400が配置される。接着樹脂400は、表面張力により透光性部材50の下面50bの外縁又は外縁より内側、発光素子20の側面20c下端又は下端より上方に留まり、外側に凸の曲面を有する形状で安定する。これにより、発光素子20の側面20cを被覆する接着樹脂400の厚さを厚くすることができる。
【0071】
接着樹脂を押圧する工程では、接着樹脂400が透光性部材50の下面50bの外縁に達するように透光性部材50で接着樹脂400を押圧することが好ましい。また、接着樹脂400が発光素子20の各々の側面20cの下端に達するように透光性部材50で接着樹脂400を押圧することが好ましい。つまり、接着樹脂400が透光性部材50の下面の全体、及び発光素子20の各々の側面20cの全体を被覆することが好ましい。これにより、発光装置1が完成したときに、発光素子20の側面20cからの光のより多くを導光部材40を介して透光性部材50へと導光させることができるため、発光装置1における光の取り出し効率を向上させることができる。なお、
図11の矢印下側は、接着樹脂400が透光性部材50の下面の全てを被覆し、発光素子20の各々の側面20cの下端に達するように配置された場合を図示している。
【0072】
なお、押圧する工程において、押圧後の接着樹脂400は、配線基板10(つまり基板10Sにおける領域10A)の表面と離隔して配置されることが好ましい。接着樹脂400が配線基板10と離隔することで、接着樹脂400が異形形状となって発光素子20からの光が意図しない方向に反射されることを抑制できるため、発光装置1の光取出し効率を向上させることができる。
図11の工程の後、接着樹脂400を硬化させて導光部材40を作製する。
【0073】
(接着樹脂を硬化する工程)
接着樹脂を硬化する工程は、接着樹脂400の硬化(または固化)を行う工程である。接着樹脂400を硬化することにより導光部材40が形成され、導光部材40を介して、透光性部材50と発光素子20とが接合される。硬化は、例えばオーブンでの加熱等、公知の方法で行うことができる。
【0074】
なお、硬化する工程は、透光性部材50を押圧する工程と同時に行ってもよい。また、硬化する工程において、押圧する工程で接着樹脂400が所望の位置に移動した状態で透光性部材50をコレット等により保持し、透光性部材50の下面50bと発光素子20の上面20aとが平行となる所望の位置を保った状態で、硬化を完了させてもよい。
【0075】
(被覆部材を配置する工程)
次に、
図12及び
図13に示すように、硬化後の接着樹脂400(すなわち導光部材40)の側面40c及び透光性部材50の側面を被覆する被覆部材60を配置する。具体的には、まず、
図12に示すように、各領域10A上に、発光素子20の下面20b、導光部材40の側面40cの少なくとも一部、保護素子30の下面、及び保護素子30の側面の少なくとも一部を被覆する未硬化の第1被覆部材61を配置する。第1被覆部材61は、例えば、ポッティング、スプレー、印刷等により各領域10A上に配置することができる。その後、未硬化の第1被覆部材61を硬化させる。
【0076】
次に、
図13に示すように、硬化後の第1被覆部材61上に、透光性部材50の側面を被覆する未硬化の第2被覆部材62を配置する。第2被覆部材62は、保護素子30の上面、保護素子30の側面の一部、及び透光性部材50の側面の一部を被覆してもよい。第2被覆部材62は、例えば、ポッティング、スプレー、印刷等により第1被覆部材61上に配置することができる。その後、未硬化の第2被覆部材62を硬化させ、硬化した第1被覆部材61及び第2被覆部材62からなる被覆部材60が形成される。その後、各領域10Aをダイシング等により個片化する。領域10Aが個片化後の発光装置の各配線基板10となる。これにより、発光装置1が得られる。
【0077】
なお、第1被覆部材及び第2被覆部材からなる被覆部材60を配置する代わりに、接着樹脂400(すなわち導光部材40)の側面40c及び透光性部材50の側面を被覆する第1被覆部材61を配置してもよい。すなわち、被覆部材60は、第1被覆部材61のみから構成されてもよい。
【0078】
また、第1被覆部材が未硬化の状態で第2被覆部材を配置し、第1被覆部材と第2被覆部材の硬化を同時に行ってもよい。
【0079】
以上、好ましい実施形態等について詳説したが、上述した実施形態等に制限されることはなく、特許請求の範囲に記載された範囲を逸脱することなく、上述した実施形態等に種々の変形及び置換を加えることができる。
【0080】
以上の実施形態に加えて、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
上面と、前記上面に連なる複数の側面とを備えた発光素子を準備する工程と、
前記発光素子の上面及び側面に接着樹脂を配置する工程であって、前記発光素子の側面間の角部における前記接着樹脂の下端が、前記発光素子の側面の中央部における前記接着樹脂の下端より下側に位置するように前記接着樹脂を配置する工程と、
前記発光素子の上面に透光性部材を配置し、前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する工程と、
前記接着樹脂を硬化する工程と、を有する発光装置の製造方法。
(付記2)
前記接着樹脂を配置する工程では、前記発光素子の上面の中央部に位置する第1部分が前記発光素子の上面の角部に位置する第2部分よりも、前記発光素子の上面からの高さが高くなるように前記接着樹脂を配置する、付記1に記載の発光装置の製造方法。
(付記3)
前記接着樹脂を配置する工程では、前記第1部分と、前記第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との間に位置する第3部分と、を含むように前記接着樹脂を配置し、
前記第2部分は、前記第3部分よりも、前記発光素子の上面からの高さが高い、付記2に記載の発光装置の製造方法。
(付記4)
前記第2部分は、前記発光素子の側面間の角部に配置された前記接着樹脂と連続する、付記3に記載の発光装置の製造方法。
(付記5)
前記透光性部材は、前記発光素子の上面よりも大きい面積の下面と、前記下面に連なる複数の側面と、を備え、
前記接着樹脂を押圧する工程では、前記接着樹脂が前記透光性部材の下面の外縁に達するように前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する、付記1から4のいずれか1に記載の発光装置の製造方法。
(付記6)
前記接着樹脂を押圧する工程では、前記接着樹脂が前記発光素子の側面の下端に達するように前記透光性部材で前記接着樹脂を押圧する、付記1から5のいずれか1に記載の発光装置の製造方法。
(付記7)
前記接着樹脂を配置する工程の前に、前記発光素子を配線基板上に配置する工程を含み、
前記接着樹脂を押圧する工程において、押圧後の前記接着樹脂は、前記配線基板と離隔して配置される、付記1か6のいずれか1に記載の発光装置の製造方法。
(付記8)
前記接着樹脂を配置する工程では、前記接着樹脂を配置する前に、先端面の大きさが前記発光素子の上面よりも大きいノズルを準備し、前記先端面が前記発光素子の上面と対向し、かつ前記先端面の外縁が前記発光素子の上面の外縁よりも外側に位置するように前記ノズルを前記発光素子の上方に配置する、付記1から7のいずれか1に記載の発光装置の製造方法。
(付記9)
前記ノズルは、前記先端面の中央部に開口する吐出孔と、前記先端面に開口し、前記吐出孔に連通して前記吐出孔から前記先端面の外縁に向かって延びる複数の溝と、を有し、
前記接着樹脂は、前記吐出孔から吐出されて前記発光素子の上面に配置されると共に、前記吐出孔から複数の前記溝内を移動して前記発光素子の側面間の角部に配置される、付記8に記載の発光装置の製造方法。
(付記10)
前記溝の幅が一定であり、かつ前記溝の深さが一定である、付記9に記載の発光装置の製造方法。
(付記11)
前記接着樹脂を硬化する工程の後に、前記接着樹脂の側面及び前記透光性部材の側面を被覆する被覆部材を配置する工程を有する、付記1から10のいずれか1に記載の発光装置の製造方法。
【符号の説明】
【0081】
1 発光装置
10 配線基板
10S 基板
11 基材
12 上面配線
13 下面配線
20 発光素子
20a 上面
20b 下面
20c 側面
25 電極
30 保護素子
40 導光部材
40c 側面
50 透光性部材
50a 上面
50b 下面
60 被覆部材
61 第1被覆部材
62 第2被覆部材
100 ノズル
101 先端面
101e 外縁
102 吐出孔
103,104,105,106 溝
400 接着樹脂
401 第1部分
402 第2部分
403 第3部分