(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049208
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】ガス供給体、処理装置及び半導体装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/31 20060101AFI20240402BHJP
C23C 16/455 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
H01L21/31 B
C23C16/455
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155532
(22)【出願日】2022-09-28
(71)【出願人】
【識別番号】318009126
【氏名又は名称】株式会社KOKUSAI ELECTRIC
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】西堂 周平
【テーマコード(参考)】
4K030
5F045
【Fターム(参考)】
4K030EA04
4K030EA05
4K030FA10
4K030GA06
4K030JA03
4K030JA04
4K030LA12
4K030LA15
5F045AA06
5F045AB31
5F045AD07
5F045AD08
5F045AD09
5F045AD10
5F045AD11
5F045AE15
5F045AE17
5F045AE19
5F045AE21
5F045AE23
5F045BB03
5F045DP19
5F045DP28
5F045DQ05
5F045EF03
5F045EF09
5F045EK06
(57)【要約】
【課題】開口部から供給されるガスの特性を確保しつつ、ガス供給部の省スペース化を実現する。
【解決手段】ガスが導入される第1配管部と、ガスが放出される開口部を有する第2配管部と、を有するガス供給部において、前記第1配管部の流路断面積より前記第2配管部の流路断面積が大きく、平面視において前記第1配管部の中心から前記第2配管部との中心へ向かう方向に対して前記開口部から前記ガスが放出される方向が傾斜している。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスが導入される第1配管部と、ガスが放出される開口部を有する第2配管部と、を有し、
前記第1配管部の流路断面積より前記第2配管部の流路断面積が大きく、
平面視において前記第1配管部の中心から前記第2配管部の中心へ向かう方向に対して前記開口部から前記ガスが放出される方向が傾斜しているガス供給体。
【請求項2】
さらに、前記第1配管部と前記第2配管部とを接続する折り返し部を有し、
前記折り返し部は、頂点部を境に、前記第1配管部と同じ流路断面積である延伸部と、前記流路断面積が変化する変化部と、に分けられ、
前記頂点部から前記流路断面積が変化する請求項1記載のガス供給体。
【請求項3】
前記折り返し部の前記頂点部は、前記第1配管部と同じ流路断面積を有する請求項2記載のガス供給体。
【請求項4】
前記変化部は、前記第2配管部に設けられる開口部よりも高い位置に設けられる請求項2記載のガス供給体。
【請求項5】
前記第1配管部と前記第2配管部とを連結する連結部を有する請求項1記載のガス供給体。
【請求項6】
前記連結部は、前記第2配管部に設けられる開口部の下端部よりも高い位置に少なくとも一つ設けられている請求項5記載のガス供給体。
【請求項7】
前記連結部は、前記第2配管部に設けられる開口部よりも低い位置に少なくとも一つ設けられている請求項5記載のガス供給体。
【請求項8】
前記連結部は、前記第1配管部と前記第2配管部とのそれぞれの長手方向に、所定間隔を開けて設けられている請求項5記載のガス供給体。
【請求項9】
前記連結部の断面積は、前記第1配管部の断面積よりも小さく構成されている請求項5記載のガス供給体。
【請求項10】
前記開口部は、前記第2配管部の内部に設けられる流路の途中に、前記第2配管部の内部を前記ガスが流れる方向に対して交差する方向に設けられる請求項1記載のガス供給体。
【請求項11】
前記開口部は、スリット又は孔であり、
前記スリット又は前記孔は、前記第2配管部の長手方向に沿って複数設けられている請求項1記載のガス供給体。
【請求項12】
ガスが導入される第1配管部と、ガスが放出される開口部を有する第2配管部と、を有し、
前記第1配管部の流路断面積より前記第2配管部の流路断面積が大きく、
平面視において前記第1配管部の中心から前記第2配管部の中心へ向かう方向に対して前記開口部から前記ガスが放出される方向が傾斜しているガス供給体を備えた処理装置。
【請求項13】
前記ガス供給体と同じ構成を有する第2ガス供給体をさらに含み、
前記ガス供給体と前記第2ガス供給体を隣に並べて配置し、両方から前記ガスを供給する請求項12の処理装置。
【請求項14】
前記ガス供給体及び前記第2ガス供給体は、各第1配管部間の距離と各第2配管部間の距離とが同じになるように配置される請求項13の処理装置。
【請求項15】
平面視において、前記ガス供給体における第1配管部と第2配管部との中心間の距離、又は、前記第2ガス供給体における第1配管部と第2配管部との中心間の距離、のうちの少なくとも一方は、前記ガス供給体及び前記第2ガス供給体の各第1配管部の中心間の距離、又は、各第2配管部の中心間の距離よりも短い請求項13の処理装置。
【請求項16】
平面視において、前記ガス供給体の第1配管部と第2配管部との中心間の距離と、前記ガス供給体の第2配管部と前記第2ガス供給体の第1配管部との中心間の距離が同じである請求項13の処理装置。
【請求項17】
側面に開口部が設けられるように構成されている追加ガス供給体をさらに有し、
前記ガス供給体と前記追加ガス供給体を配置し、両方から前記ガスを供給する請求項12の処理装置。
【請求項18】
前記ガス供給体から供給されるガスと前記追加ガス供給体から供給されるガスとが異なる請求項17記載の処理装置。
【請求項19】
前記ガス供給体は原料ガスを供給するよう構成され、
前記追加ガス供給体は反応ガスを供給する請求項18記載の処理装置。
【請求項20】
前記ガス供給体の開口部は、スリット状に形成され、
前記追加ガス供給体の開口部は、孔状に形成されている請求項18記載の処理装置。
【請求項21】
ガスが導入される第1配管部と、ガスが放出される開口部を有する第2配管部と、を有し、
前記第1配管部の流路断面積より前記第2配管部の流路断面積が大きく、
平面視において前記第1配管部の中心から前記第2配管部との中心へ向かう方向に対して前記開口部から前記ガスが放出される方向が傾斜しているガス供給体により、前記ガスを供給して、処理対象物を処理する工程を有する半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガス供給体、処理装置、及び半導体装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体装置の製造工程の一工程として、基板上に膜を形成する処理が行われることがある(たとえば特許文献1、2参照)。これらの文献に掲載されているノズル(以下、ガス供給体という)により、処理ガスが基板上を均等に流れるようにして、プロセス性能を確保している。一般的に、このタイプのガス供給体は、設置するためのスペースの確保が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-028256号公報
【特許文献2】国際公開2018/008088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、開口部から供給されるガスの特性を確保しつつ、ガス供給体の省スペース化を実現する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一態様によれば、
ガスが導入される第1配管部と、ガスが放出される開口部を有する第2配管部と、を有し、
前記第1配管部の流路断面積より前記第2配管部の流路断面積が大きく、
平面視において前記第1配管部の中心から前記第2配管部の中心へ向かう方向に対して前記開口部から前記ガスが放出される方向が傾斜している、
技術が提供される。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、開口部から供給されるガスの特性を確保しつつ、ガス供給体の省スペース化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置の一例を概略的に示す縦断面図である。
【
図2】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に設けられるガス供給体の外観図である。
【
図3】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に設けられるガス供給体の外観図である。
【
図4】
図3のIV-IV断面図の一例を示す図である。ただし、開口部は省略している。
【
図5】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に設けられるガス供給体の内部におけるガスの流れを模式的に示す図である。ただし、連結部は省略している。
【
図7】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置の平面断面を概略的に示す図である。
【
図8】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に設けられるガス供給体に加えて追加ガス供給体を設ける場合の配置を模式的に示す図である。
【
図9】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に設けられるガス供給体に加えて第2ガス供給体を設ける場合の配置を模式的に示す図である。
【
図10】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に用いられるコントローラの概略構成図であり、コントローラの制御系を示すブロック図である。
【
図11】(A)はガス供給体の第1配管部における原料ガスの流速を示すグラフであり、(B)はガス供給体の第1配管部における熱分解ガスの濃度を示すグラフであり、(C)はガス供給体の第2配管部における熱分解ガスの分圧を示すグラフである。
【
図12】本開示の実施形態で好適に用いられる処理装置に設けられるガス供給体の第2配管部の開口部におけるガスの流速を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
<本開示の実施態様>
以下、本開示の実施態様について、主に、
図1~
図11を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において用いられる図面は、いずれも模式的なものであり、図面に示される各要素の寸法の関係及び各要素の比率等は、現実のものとは必ずしも一致していない。また、複数の図面の相互間においても、各要素の寸法の関係及び各要素の比率等は必ずしも一致していない。さらに、各図面において共通して付されている符号は、各図の説明において特段の説明がなくとも、同一の部材又は構造を指し示している。
【0009】
(処理装置)
図1は、本実施態様の処理装置2の一例を概略的に示す縦断面図である。
図1に示すように、反応管10の下端開口部には、円筒形のマニホールド18が、Oリング等のシール部材20を介して連結され、反応管10の下端を支持している。マニホールド18は、たとえばステンレス等の金属により形成されている。マニホールド18の下端開口部は円盤状の蓋部22によって開閉される。蓋部22は、たとえば金属により形成されている。蓋部22の上面にはOリング等のシール部材20が設置されており、これにより、反応管10内と外気とが気密にシールされている。蓋部22上には、中央に上下に亘って孔が形成された断熱部24が載置されている。断熱部24は、たとえば石英により形成されている。
【0010】
処理室14は、複数枚、たとえば25~150枚の処理対象物であるウエハWを垂直に棚状に支持する基板保持具としてのボート26を内部に収納する。ボート26は、たとえば石英やSiCより形成される。ボート26は、蓋部22及び断熱部24を貫通する回転軸28により、断熱部24の上方に支持される。回転軸28は蓋部22の下方に設置された回転機構30に接続される。ここで、蓋部22の回転軸28が貫通する部分には、たとえば、磁性流体シールが設けられる。これにより、回転軸28は反応管10の内部を気密にシールした状態で回転可能に構成される。蓋部22は昇降機構としてのボートエレベータ32により上下方向に駆動される。これにより、ボート26及び蓋部22が一体的に昇降され、反応管10に対してボート26が搬入出される。
【0011】
処理装置2は、基板処理に使用されるガスを処理室14内に供給するガス供給機構34を備えている。ガス供給機構34が供給するガスは、成膜処理によって得られる膜の種類に応じて換えられる。ここでは、ガス供給機構34は、原料ガス供給部、反応ガス供給部及び不活性ガス供給部を含む。
【0012】
原料ガス供給部は、ガス供給管36aを備え、ガス供給管36aには、上流方向から順に、流量制御器であるマスフローコントローラ(MFC)38a及び開閉弁であるバルブ40aが設けられている。ガス供給管36aはマニホールド18の側壁を貫通するガス供給体44aに接続される。ガス供給体44aは、
図2及び
図3に示すように、ノズルとして形成される。ガス供給体44aは、供給バッファ室10A内に上下方向に沿って立設している。ガス供給体44aには、ボート26に保持されるウエハWに向かって開口する縦長形状のスリット状に構成された複数の開口部45aが形成されている。ガス供給体44aの開口部45aを通して供給バッファ室10A内に原料ガスが拡散され、供給バッファ室10Aのスリット10Dを介してウエハWに対して原料ガスが供給される。ガス供給体44aの詳細については後述する。
【0013】
以下、同様の構成にて、反応ガス供給部からは、ガス供給管36b、MFC38b、バルブ40b、追加ガス供給体44b及びスリット10Dを介して、反応ガスがウエハWに対して供給される。追加ガス供給体44bは、ガス供給体44aと同様、ノズルとして形成される。追加ガス供給体44bには、ボート26に保持されるウエハWに向かって開口する複数の開口部45b(
図7参照)が形成されている。不活性ガス供給部からは、ガス供給管36c、36d、MFC38c、38d、バルブ40c、40d、ガス供給体44a、追加ガス供給体44b及びスリット10Dを介して、ウエハWに対して不活性ガスが供給される。
【0014】
反応管10の周囲には、処理室14内のウエハWが所定の温度となるよう加熱するヒータ12が配設されている。反応管10には、温度検出器としての温度センサ16(
図7参照)が設置されている。温度センサ16により検出された温度情報に基づきヒータ12への通電具合を調整することで、処理室14内の温度が所望の温度分布となる。温度センサ16は、反応管10の外壁に沿って設けられている。また、反応管10には、排気バッファ室10Bに連通するように、排気管46が取り付けられている。排気管46には、処理室14内の圧力を検出する圧力検出器としての圧力センサ48及び圧力調整器としてのAPC(Auto Pressure Controller)バルブ50を介して、真空排気装置としての真空ポンプ52が接続されている。このような構成により、処理室14内の圧力を処理に応じた処理圧力とすることができる。
【0015】
回転機構30、ボートエレベータ32、ガス供給機構34のMFC38a~d及びバルブ40a~d、APCバルブ50には、これらを制御するコントローラ100が電気的に接続されている。コントローラ100は、たとえば、CPUを備えたマイクロプロセッサ(コンピュータ)を備え、処理装置2の動作を制御するよう構成されている。コントローラ100には、たとえばタッチパネル等として構成された入出力装置102が接続されている。
【0016】
コントローラ100には記憶媒体としての記憶部104が接続されている。記憶部104には、処理装置2の動作を制御する制御プログラムや、処理条件に応じて処理装置2の各構成部に処理を実行させるためのプログラム(レシピともいう)が、読み出し可能に格納される。
【0017】
記憶部104は、コントローラ100に内蔵された記憶装置100c(ハードディスクやフラッシュメモリ)であってもよいし、可搬性の外部記憶装置103(磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)であってもよい。また、コンピュータへのプログラムの提供は、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。プログラムは、必要に応じて、入出力装置102からの指示等にて記憶部104から読み出される。そして、読み出されたレシピに従った処理をコントローラ100が実行することで、処理装置2は、コントローラ100の制御のもと、所望の処理を実行する。コントローラ100の詳細については後述する。
【0018】
(ガス供給体)
図2及び
図3に示すように、ガス供給体44aは第1配管部61と第2配管部62とを並列させて、第1配管部61と第2配管部62の間には隙間程度の間隔で垂直方向に延伸するように構成されている。また、
図3は、
図2のガス供給体44aの外観について、開口部45aを正面に向けたものであり、第1配管部61と第2配管部62の径の大きさを異ならせていることがわかる。
【0019】
図2及び
図3に示すように、ガス供給体44aは、ガスが導入される第1配管部61と、ガスが放出される開口部45aを有する第2配管部62と、第1配管部61と第2配管部62とを接続する折り返し部63とを有する。すなわち、ガスが導入される導入部60から第1配管部61が上方へ延設され、上端の折り返し部63へ至る。そして、この折り返し部63で180°屈曲して、第2配管部62が下方へ延設される。第2配管部62の側面には、スリット状の開口部45aが、長手方向に沿って複数設けられている。第2配管部62は、第1配管部61が屈曲する付近で盲端となっている。換言すると、本実施形態のガス供給体44aは、いわゆるUターンノズルとして構成することができる。
【0020】
図2及び
図3に示すように、第2配管部62の内径は、第1配管部61の内径より大きくなっており、これによって第1配管部61の流路断面積は第1配管部61の流路断面積より大きくなっている。この構成によって、往路側配管である第1配管部61の内径を小さくすることで、流速が速くなり、第1配管部61内でのガスの熱分解を抑制できる。さらに、復路側配管である第2配管部62内でのガスの流速を低下させることで、第2配管部62に設けられる各開口部45aから噴出されるガスの流量を均等にすることができる。加えて、流路断面積がより小さく、熱容量のより小さい第1配管部61をヒータ12の近くに配置することができるので、内部を流動するガスの加熱をより促進することができる。なお、第2配管部62に設けられる開口部45aは、反応管10の中心方向を向いている。
【0021】
図3のIV-IV断面を示したのが
図4(ただし、開口部45aは省略している。)である。
図4に示すように、本実施形態のガス供給体44aは、第1配管部61と第2配管部62とを連結する連結部67を有する。具体的には、第1配管部61及び第2配管部62のそれぞれの外壁を連結するように円弧形状の連結部67が設けられている。この連結部67により熱応力によるガス供給体44aの破損を防止している。第2配管部62からはみ出さなければ、この形態に限定されず、円筒状、円柱状(断面が円)、断面が多角形状であってもよい。
【0022】
また、ガス供給体44aの内部におけるガスの流れを模式的に示したのが
図5である。
図5に示すように、第1配管部61の中心から第2配管部62の中心へ向かう方向Lに対し、開口部45aからガスが放出される方向Dが傾斜している。具体的には、方向Lに対し方向Dは、90°ではない方向、より具体的には、方向Lを向いたときの方向Dのなす角θが鈍角となるように傾斜している。この構成によって、第2配管部62の上端側に設けられる開口部45aにおける慣性の影響によるガスの噴出量の減衰を抑制することができる。
【0023】
図6は、
図3に示す折り返し部63の断面図の一例である。
図6に示すように、折り返し部63は、頂点部64を境に、第1配管部61と同じ流路断面積である延伸部65と、流路断面積が変化する変化部66と、に分けられ、頂点部64から流路断面積が変化する。具体的には、頂点部64から第2配管部62にかけて流路断面積が徐々に増加する。この構成によって、往路側配管である第1配管部61を流れるガスの流速をほぼ変化(具体的には、低下)させることなく、復路側配管である第2配管部62の開口部45aからガスを放出させることができる。さらには、複数の開口部45aからそれぞれ供給されるガスを均等にすることができる。
【0024】
図6に示すように、折り返し部63の頂点部64は、第1配管部61と同じ流路断面積を有している。この構成によって、頂点部64までのガスの流速を一定にすることができ、これにより、第1配管部61から第2配管部62へのガスの流速の変動を低減させることができる。これに伴い、第2配管部62の開口部45aから供給されるガスへの熱分解などによる影響を小さくすることができる。
【0025】
図2及び
図3に示すように、変化部66は、第2配管部62に設けられる開口部45aよりも高い位置に設けられている。この構成によって、第1配管部61から第2配管部62へのガスの流速の変化が開口部45aの位置において影響を及ぼすことがなく、第2配管部62の複数の開口部45aからそれぞれ供給されるガスを均等にすることができる。
【0026】
図2に示すように、第1配管部61及び第2配管部62のそれぞれの外壁を連結するように連結部67が設けられている。この構成によって、第2配管部62ので第1配管部61から離れるような動きを連結部67が防止することで、ガス供給体44aの折り返し部63、特に頂点部64近傍に生ずる応力を生じさせずに、この部位での破損を防止することができる。さらに、強度を保ったうえで、連結部67は溶接されているため、溶接による熱歪みを極力減らすために溶接個所は最小にすることが好ましい。
【0027】
図2に示すように、連結部67は、第2配管部62に設けられる開口部45aの下端部よりも高い位置に少なくとも一つ設けられている。また、連結部67は、第2配管部62に設けられる開口部45aよりも低い位置に少なくとも一つ設けられている。
【0028】
たとえば、第2配管部62の中心部又は上端部付近にのみ連結部67が設けられている場合、頂点部64での破損は抑制されるが、第2配管部62がその連結部67より下方で熱による変形を被る。この変形によって、開口部45aから供給されるガスの流れが安定せずに方向も安定しないため、開口部45aからのガスの流れを均等にすることができず、結果として、ウエハWから製造される基板の品質の低下が懸念される。
【0029】
しかしながら、本実施形態では、第1配管部61と第2配管部62のそれぞれの外壁を連結するように連結部67が、第2配管部62の下端側に設けられている。この構成によって、このガス供給体44aが折り返し部63の特に頂点部64付近での応力による破損が防止されるのみならず、第2配管部62の熱による変形を抑制することができる。これにより、開口部45aから供給されるガスの流れを安定させ、所望の方向へ導入させることができるようになっている。
【0030】
図2に示すように、連結部67は、第1配管部61と第2配管部62とのそれぞれの長手方向に、所定間隔を開けて設けられている。すなわち、連結部67が複数設けられているので、このガス供給体44aの熱応力に対する強度が高くなる。これにより、熱によるガス供給体44aの変形や破損の可能性が低下する。
【0031】
ここで、連結部67の断面積は、第1配管部61の断面積よりも小さく構成されている。この構成によって、ガス供給体44aの開口部45aから供給されるガスの流れが連結部67によって妨げられずに、ガスの流れを均等にすることができる。また、平面視において、連結部67が第2配管部62からはみ出さないように設けることができるので、Uターンノズルが収まる程度の狭い空間に、このガス供給体44aを配置することができる。
【0032】
図5に示すように、第1配管部61から第2配管部62へ向かう方向Lを向いたとき、開口部45aからガスを放出する方向Dがなす角度θは、90°を上回り120°未満の鈍角である。すなわち、角度θが90°を上回っているので、方向Lから方向Dへの方向転換が緩やかである。これによって、供給バッファ室10Aの壁面に対して供給されるガスが多くなって、ガスの流速や流量が抑制されてしまうことがなくなる。また、角度θは120°未満であるので、供給バッファ室10A内にガス供給体44aを配置することができるようになり、処理室14にガス供給体44aがはみ出すことなく、基板の処理への悪影響が生じる懸念はない。
【0033】
ここで、
図4に示すように、開口部45aは、第2配管部62の内部に設けられる流路の途中に、前記第2配管部の内部を前記ガスが流れる方向(すなわち、図中では紙面に垂直な方向)に対して交差する方向(すなわち、垂直な方向)に設けられる。また、開口部45aは、図面ではスリット状に描かれているがこれは孔であってもよく、このスリット又は孔は、第2配管部62の長手方向に沿って複数設けられている。この構成によって、第2配管部62に配置されている開口部45aのそれぞれから供給されるガスの流量を、第2配管部62の長手方向(換言すると、上下方向)で均等にすることができる。
【0034】
図1に示す本実施形態の処理装置2は、上述のとおりのガス供給体44aを備える。すなわち、本実施形態の処理装置2は、ガスが導入される第1配管部61と、ガスが放出される開口部45aを有する第2配管部62と、第1配管部61と第2配管部62を接続する折り返し部63を有し、第1配管部61の流路断面積より第2配管部62の流路断面積が大きく、平面視において第1配管部61の中心から第2配管部62の中心へ向かう方向Lに対して開口部45aからガスが放出される方向D(
図5参照)が傾斜しているガス供給体44aを備えている。
【0035】
本実施形態の処理装置2においては、ガス供給体44aの第2配管部62の内径は、第1配管部61の内径より大きくなっており、これによって第1配管部61の流路断面積は第1配管部61の流路断面積より大きくなっている。この構成によって、往路側配管である第1配管部61の内径を小さくすることで、流速が速くなり、第1配管部61内でのガスの熱分解を抑制できる。さらに、復路側配管である第2配管部62内でのガスの流速を低下させることで、第2配管部62に設けられる各開口部45aから噴出されるガスの流量を均等にすることができる。
【0036】
なお、第2配管部62に設けられる開口部45aは、反応管10の中心方向を向いている。すなわち、
図3に示すように、反応管10の中心方向から見ると、開口部45aは正面に位置するとともに、第2配管部62と第1配管部61とは一部重複しているように見える。
図5に示すように、第1配管部61の中心と第2配管部62の中心とを結ぶ直線Lに対し、開口部45aからガスが放出される方向Dは、90°ではない方向に傾斜している。この構成によって、本実施形態の処理装置2においては、第2配管部62の上端側に設けられる開口部45aにおける慣性の影響によるガスの噴出量の減衰を抑制することができる。
【0037】
本実施形態の処理装置2では、
図7の平面断面に概略的に示すように、供給バッファ室10Aに、上述のガス供給体44aに加え、隔壁10Cを隔てて追加ガス供給体44bが収容されている。
【0038】
なお、
図8に示すように、隔壁10Cを設けない単一の供給バッファ室10Aで、側面に開口部45bが設けられるように構成されている追加ガス供給体44bをさらに有し、ガス供給体44aと追加ガス供給体44bを隣に並べて配置し、両方からガスを供給する。そして、ガス供給体44aから供給されるガスと追加ガス供給体44bから供給されるガスとが異なることが望ましい。具体的には、ガス供給体44aは原料ガスを供給するよう構成され、追加ガス供給体44bは反応ガスを供給することが望ましい。さらには、ガス供給体44aの開口部45aは、スリット状に形成され、追加ガス供給体44bの開口部45bは、孔状に形成されていることとしてもよい。
【0039】
ここで、追加ガス供給体44bは、ガス供給体44aと上下方向の長さはほぼ同一であるが、ガス供給体44aのようなUターンノズルではなく、下端から上端まで真っ直ぐな、いわゆるストレートノズルとして構成されている。そして、追加ガス供給体44bが反応管10の中心に向かう側には、ガス供給体44aにおいてスリット状の開口部45aが設けられている範囲とほぼ一致して、長手方向に沿って孔状の開口部45bが複数形成されている。
【0040】
上記のように構成することで、ガス供給体44aの開口部45aと追加ガス供給体44bの開口部45bとの距離を近づけることができる。このため、開口部45a及び開口部45bから供給されるガスの戻り流を抑制する効果が発揮される。よって、ウエハW上で戻り流が発生することなく、ウエハWの面上を、開口部45a及び開口部45bからそれぞれ供給されるガスが均等に流れるため、ウエハWの面内における膜厚の均一性が期待される。また、基板処理におけるプロセス性能を確保することができる上に、ガス供給体44a及び追加ガス供給体44bの設置空間を極めて小さくすることができる。たとえば、供給バッファ室10A内にUターンノズルのガス供給体44aと、ストレートノズルの追加ガス供給体44bとを近接して設置することができるので、省スペース化が期待できる。
【0041】
なお、
図9に示すように、本実施形態の処理装置2は、隔壁10Cを設けない単一の供給バッファ室10A内に、ガス供給体44aと同じ構成を有する第2ガス供給体44cをさらに含んでいてもよい。そして、ガス供給体44aと第2ガス供給体44cを隣に並べて配置し、両方から前記ガスを供給してもよい。また、ガス供給体44a及び第2ガス供給体44cは、各第1配管部61、61間の距離X
1と各第2配管部62、62間の距離X
2とが同じになるように配置されていてもよい。さらに、平面視において、ガス供給体44aにおける第1配管部61と第2配管部62との中心間の距離Y
1、又は、第2ガス供給体44cにおける第1配管部61と第2配管部62との中心間の距離Y
2、のうちの少なくとも一方は、ガス供給体44a及び第2ガス供給体44cの各第1配管部61、61の中心間の距離X
1、又は、各第2配管部62、62の中心間の距離X
1よりも短いことが望ましい。また、平面視において、ガス供給体44aの第1配管部61と第2配管部62との中心間の距離Y
1と、ガス供給体44aの第2配管部62と第2ガス供給体44cの第1配管部61との中心間の距離Z
1が同じであることが望ましい。
【0042】
上記のように構成することで、ガス供給体44aの開口部45aと第2ガス供給体44cの開口部45bとの距離を近づけることができる。このため、開口部45a及び開口部45bから供給されるガスの戻り流を抑制する効果が発揮される。よって、ウエハW上で戻り流が発生することなく、ウエハWの面上を、開口部45a及び開口部45bからそれぞれ供給されるガスが均等に流れるため、ウエハWの面内における膜厚の均一性が期待される。また、基板処理におけるプロセス性能を確保することができる上に、ガス供給体44a及び第2ガス供給体44cの設置空間を極めて小さくすることができる。たとえば、供給バッファ室10A内に2つのUターンノズルであるガス供給体44aと第2ガス供給体44cとを近接して設置することができるので、省スペース化が期待できる。
【0043】
(制御部)
図10に示すように、制御部(制御手段)であるコントローラ100は、CPU(Central Processing Unit)100a、RAM(Random Access Memory)100b、記憶装置100c、I/Oポート100dを備えたコンピュータとして構成されている。RAM100b、記憶装置100c、I/Oポート100dは、内部バス100eを介して、CPU100aとデータ交換可能なように構成されている。コントローラ100には、たとえばタッチパネル等として構成された入出力装置122が接続されている。
【0044】
記憶装置100cは、たとえばフラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive)等で構成されている。記憶装置100c内には、基板処理装置の動作を制御する制御プログラムや、後述するノズルのエッチング処理や成膜処理の手順や条件等が記載されたエッチングレシピやプロセスレシピ等が、読み出し可能に格納されている。エッチングレシピやプロセスレシピは、後述する基板処理工程における各手順をコントローラ100に実行させ、所定の結果を得ることができるように組み合わされたものであり、プログラムとして機能する。以下、このプロセスレシピや制御プログラム等を総称して、単に、プログラムともいう。また、エッチングレシピやプロセスレシピを、単にレシピともいう。本明細書においてプログラムという言葉を用いた場合は、レシピ単体のみを含む場合、制御プログラム単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。RAM100bは、CPU100aによって読み出されたプログラムやデータ等が一時的に保持されるメモリ領域(ワークエリア)として構成されている。
【0045】
I/Oポート100dは、上述のMFC38a~38d、バルブ40a~40d、圧力センサ48、APCバルブ50、真空ポンプ52、ヒータ12、温度センサ16、回転機構30、ボートエレベータ32等に接続されている。
【0046】
CPU100aは、記憶装置100cから制御プログラムを読み出して実行すると共に、入出力装置102からの操作コマンドの入力等に応じて記憶装置100cからレシピを読み出すように構成されている。CPU100aは、読み出したレシピの内容に沿うように、MFC38a~38dによる各種ガスの流量調整動作、バルブ40a~40dの開閉動作、APCバルブ50の開閉動作及び圧力センサ48に基づくAPCバルブ50による圧力調整動作、真空ポンプ52の起動及び停止、温度センサ16に基づくヒータ12の温度調整動作、回転機構30によるボート26の回転及び回転速度調節動作、ボートエレベータ32によるボート26の昇降動作等を制御するように構成されている。
【0047】
コントローラ100は、外部記憶装置(たとえば、磁気テープ、フレキシブルディスクやハードディスク等の磁気ディスク、CDやDVD等の光ディスク、MO等の光磁気ディスク、USBメモリやメモリカード等の半導体メモリ)103に格納された上述のプログラムを、コンピュータにインストールすることにより構成することができる。記憶装置100cや外部記憶装置103は、
図1に示す記憶部104を構成し、コンピュータ読み取り可能な記録媒体として構成されている。以下、これらを総称して、単に、記録媒体ともいう。本明細書において記録媒体という言葉を用いた場合は、記憶装置100c単体のみを含む場合、外部記憶装置103単体のみを含む場合、又は、その両方を含む場合がある。なお、コンピュータへのプログラムの提供は、外部記憶装置103を用いず、インターネットや専用回線等の通信手段を用いて行ってもよい。
【0048】
次に、上述の処理装置2を用いて、基板上に膜を形成する処理(すなわち、成膜処理)を実施する半導体装置の製造方法の一例について説明する。ここでは、ウエハWに対して、原料ガスと、反応ガスとを供給することで、ウエハW上に膜を形成する例について説明する。なお、以下の説明において、処理装置2を構成する各部の動作はコントローラ100により制御される。
【0049】
(ウエハチャージ及びボートロード)
複数枚のウエハWがボート26に装填(ウエハチャージ)されると、ボート26は、ボートエレベータ32によって処理室14内に搬入(ボートロード)され、反応管10の下部開口は蓋部22によって気密に閉塞(シール)された状態となる。
【0050】
(圧力調整及び温度調整)
処理室14内が所定の圧力(真空度)となるように、真空ポンプ52によって真空排気(減圧排気)される。処理室14内の圧力は、圧力センサ48で測定され、この測定された圧力情報に基づきAPCバルブ50がフィードバック制御される。また、処理室14内のウエハWが所定の温度となるように、ヒータ12によって加熱される。この際、処理室14が所定の温度分布となるように、温度センサ16が検出した温度情報に基づきヒータ12への通電具合がフィードバック制御される。また、回転機構30によるボート26及びウエハWの回転を開始する。
【0051】
(成膜処理)
[原料ガス供給工程]
処理室14内の温度が予め設定された処理温度に安定すると、処理室14内のウエハWに対して原料ガスを供給する。原料ガスは、MFC38aにて所望の流量となるように制御され、ガス供給管36a、ガス供給体44a及びスリット10Dを介して処理室14内に供給される。
【0052】
[原料ガス排気工程]
次に、原料ガスの供給を停止し、真空ポンプ52により処理室14内を真空排気する。この時、不活性ガス供給部から不活性ガスを処理室14内に供給しても良い(不活性ガスパージ)。
【0053】
[反応ガス供給工程]
次に、処理室14内のウエハWに対して反応ガスを供給する。反応ガスは、MFC38bにて所望の流量となるように制御され、ガス供給管36b、追加ガス供給体44b及びスリット10Dを介して処理室14内に供給される。
【0054】
[反応ガス排気工程]
次に、反応ガスの供給を停止し、真空ポンプ52により処理室14内を真空排気する。この時、不活性ガス供給部から不活性ガスを処理室14内に供給しても良い(不活性ガスパージ)。
【0055】
上述した4つの工程を行うサイクルを所定回数(1回以上)行うことにより、ウエハW上に、所定組成及び所定膜厚の膜を形成することができる。
【0056】
(ボートアンロード及びウエハディスチャージ)
所定膜厚の膜を形成した後、不活性ガス供給部から不活性ガスが供給され、処理室14内の雰囲気が不活性ガスに置換されると共に、処理室14の圧力が常圧に復帰される。その後、ボートエレベータ32により蓋部22が降下されて、ボート26が反応管10から搬出(ボートアンロード)される。その後、処理済ウエハWはボート26より取出される(ウエハディスチャージ)。
【0057】
ウエハWに膜を形成する際の処理条件としては、たとえば、下記が例示される。なお、下記の数値範囲は、下限値及び上限値がその範囲に含まれる。
処理温度(ウエハ温度):300℃~700℃、
処理圧力(処理室内圧力):1Pa~4000Pa、
原料ガス:100sccm~10000sccm、
反応ガス:100sccm~10000sccm、
不活性ガス:100sccm~10000sccm、
それぞれの処理条件を、それぞれの範囲内の値に設定することで、成膜処理を適正に進行させることが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態の処理装置2は、半導体を製造する装置のみならず、LCD装置のようなガラス基板を処理する装置にも適用できる。また、アニール処理、酸化処理、窒化処理又は拡散処理等の処理を実施する装置にも適用できる。さらに、上述した成膜処理には、たとえば、CVD、PVD、酸化膜若しくは窒化膜若しくはこの両方を形成する処理、又は金属を含む膜を形成する処理を含む。
【実施例0059】
実施例として、本実施形態のガス供給体44aを備えた処理装置2について、実際に原料ガスを内部に流動させた場合の作用効果を検証した。一方、比較例として、従来のUターンノズルを装着した処理装置について同様の検証を行った。この従来のUターンノズルでは、往路と復路とで内径が同一で、往路の中心から復路の中心へ向かう方向と開口部からガスが放出される方向とが直交している。なお、以下で言及する各グラフにおいては、実線は実施例を、破線は比較例を表す。
【0060】
図11(A)は、ガス供給体44aの第1配管部61における原料ガスの流速を示すグラフである。このグラフでは、縦軸は第1配管部61内の流速(m/sec)を表し、横軸は測定ポイントの高さを表す。すなわち、グラフ横軸における右側の上流側から左側の下流側へ原料ガスが第1配管部61内を上昇することを表している。本実施形態のガス供給体44aにおいては、Uターンノズルの往路である第1配管部61の内径が従来のUターンノズルの内径よりも小さくなったことによって、上流から下流までの全域において原料ガスの流速が上昇し、特に下流側における流速の上昇が顕著であった。
【0061】
図11(B)は、ガス供給体44aの第1配管部61内における、原料ガスの熱分解により生じた副産物である熱分解ガスの濃度を示すグラフである。このグラフでは、縦軸は第1配管部61内での、ガス全体に対する熱分解ガスの濃度(v/v%)を表し、横軸は測定ポイントの高さを表す。すなわち、グラフ横軸における右側の上流側から左側の下流側へ原料ガスが第1配管部61内を上昇することを表している。
図11(A)のグラフで示したとおり、第1配管部61内で原料ガスの流速が上昇したのに伴い、特に流速が顕著に上昇した下流域において、従来のUターンノズルに比べて原料ガスの熱分解が抑制されて熱分解ガスの濃度が減少した。
【0062】
図11(C)は、ガス供給体44aの第2配管部62内における、原料ガスの熱分解により生じた副産物である熱分解ガスの分圧を示すグラフである。このグラフでは、縦軸は第2配管部62内での、ガス全体に対する熱分解ガスの分圧(P)を表し、横軸は測定ポイントの高さを表す。すなわち、グラフ横軸における左側の上流側から右側の下流側へ原料ガスが第2配管部62内を下降することを表している。
図11(B)のグラフで示したとおり、第1配管部61内の下流側で熱分解ガスの濃度が減少したのに伴い、連結部67を介したその直後の第2配管部62内の上流域(一点鎖線の囲み内参照)で、従来のUターンノズルに比べて熱分解ガスの分圧の低下が認められた。
【0063】
図12は、ガス供給体44aの第2配管部62の開口部45aにおけるガスの流速を示すグラフである。このグラフでは、縦軸は第2配管部62内での原料ガスの流速(m/sec)を表し、横軸は測定ポイントの高さを表す。すなわち、グラフ横軸における左側の上流側から右側の下流側へ原料ガスが第2配管部62内を下降することを表している。なお、グラフの曲線が周期的に途切れているのは、強度を確保するために開口部45aが途切れている部分である。このグラフに示されるように、従来のUターンノズルで見られる上流域(一点鎖線の囲み内参照)での流速の低下が、実施例では生じていないことが認められた。これは、ガスがUターンノズルの往路から復路に向かう方向を向いたときの、開口部から出るガスの方向がなす角度が関係していると思われる。すなわち、従来のUターンノズルのようにこの角度が直角である場合、Uターンした直後である復路の上流域では、慣性の影響で開口部を避けるような流れが形成され、その開口部からのガスの流出量がやや減衰する、と考えられる。一方、実施例では、この角度がより鈍角となるため(
図5参照)、ガスの流れの慣性の影響による流出量の減衰が抑制された、と考えられる。