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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049376
(43)【公開日】2024-04-09
(54)【発明の名称】液体吐出装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 29/13 20060101AFI20240402BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240402BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240402BHJP
   B41J 3/407 20060101ALI20240402BHJP
【FI】
B41J29/13
B41J2/17 103
B41J2/01 301
B41J3/407
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023163053
(22)【出願日】2023-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2022155227
(32)【優先日】2022-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【弁理士】
【氏名又は名称】城村 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】尾ヶ口 宗之
(72)【発明者】
【氏名】柳瀬 徳和
(72)【発明者】
【氏名】松本 和悦
(72)【発明者】
【氏名】上野 智志
【テーマコード(参考)】
2C056
2C061
【Fターム(参考)】
2C056EA16
2C056EA18
2C056EE10
2C056EE18
2C056FA10
2C056JB04
2C056JC17
2C056JC21
2C061AQ05
2C061AR01
2C061AS11
2C061CD08
2C061CD13
(57)【要約】
【課題】カバー部材内の気密性を向上させることを課題とする。
【解決手段】液体吐出部9A,9Bを有する装置本体部50と、X方向の移動により液体吐出部9A,9Bを覆う位置へ移動可能な前カバー7、後ろカバー8と、を備えた液体吐出装置1であって、装置本体部50は、前カバー7、後ろカバー8が液体吐出部9A,9Bを覆う位置において、前カバー7、後ろカバー8内の外部に対する開口部分を埋める本体側マイラ31A、31Bを有し、本体側マイラ31A、31Bの装置本体部50に取り付けられる側とは反対側の一端側が、X方向の前カバー7、後ろカバー8が液体吐出部9A,9Bを覆う位置へ移動する方向へ傾斜する、あるいは、X方向に垂直な方向であるZ方向へ延在することを特徴とする。
【選択図】図7
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出部を有する装置本体部と、
記録媒体搬送方向の移動により前記液体吐出部を覆う位置へ移動可能なカバー部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記装置本体部は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋める本体側弾性部材を有し、
前記本体側弾性部材の前記装置本体部に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
液体吐出部を有する装置本体部と、
記録媒体搬送方向の移動により前記液体吐出部を覆う位置へ移動可能なカバー部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋めるカバー側弾性部材を有し、
前記カバー側弾性部材の前記カバー部材に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向とは反対方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋めるカバー側弾性部材を有し、
前記カバー側弾性部材の前記カバー部材に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向とは反対方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在し、
前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記本体側弾性部材の一端側と前記カバー側弾性部材の一端側とが当接する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項4】
前記カバー部材は部分的に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記液体吐出部を覆う位置において、前記本体側弾性部材側へ突出し、前記本体側弾性部材に当接する請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項5】
前記装置本体部は部分的に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー側弾性部材側へ突出し、前記カバー側弾性部材に当接する請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項6】
液体吐出装置の前方側と後方側とにそれぞれ設けられる第1の前記液体吐出部および第2の前記液体吐出部と、
前方側に設けられ、後方側への移動により前記第1の液体吐出部を覆う位置へ移動する第1の前記カバー部材と、
後方側に設けられ、前方側への移動により前記第2の液体吐出部を覆う位置へ移動する第2の前記カバー部材と、を有する請求項3記載の液体吐出装置であって、
前記第1のカバー部材は、第1の前記カバー側弾性部材を有し、
前記第2のカバー部材は、第2の前記カバー側弾性部材を有し、
前記装置本体側は、第1の前記本体側弾性部材および第2の前記本体側弾性部材を有し、
前記第1のカバー部材が前記第1の液体吐出部を覆う位置において、前記第1のカバー側弾性部材および前記第1の本体側弾性部材は、前記第1の液体吐出部よりも後方側で互いに当接し、
前記第2のカバー部材が前記第2の前記液体吐出部を覆う位置において、前記第2のカバー側弾性部材および前記第2の本体側弾性部材は、前記第2の液体吐出部よりも後方側で互いに当接する液体吐出装置。
【請求項7】
前記液体吐出部は、液体吐出ヘッドを有し、主走査方向へ移動可能に設けられるキャリッジを備え、
前記本体側弾性部材が、前記キャリッジの主走査方向の移動範囲にわたって設けられる請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項8】
前記液体吐出部は、液体吐出ヘッドを備え、主走査方向へ移動可能に設けられたキャリッジを有し、
前記カバー側弾性部材が、前記キャリッジの主走査方向の移動範囲にわたって設けられる請求項2記載の液体吐出装置。
【請求項9】
気流発生機構を有する前記液体吐出部を複数備え、
それぞれの前記気流発生機構が独立して動作可能である請求項1記載の液体吐出装置。
【請求項10】
前処理液を吐出する前記液体吐出部を備え、当該液体吐出部は前処理液のミストを回収する前記気流発生機構を有する請求項9記載の液体吐出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置として、記録媒体としての布帛に液体を吐出する構成のものが存在する。例えば特許文献1(特開2019-131909号公報)の液体吐出装置では、ステージ上に布帛を配置し、このステージを液体吐出装置内部の液体吐出部に対向する位置まで移動させ、液体吐出部に設けられた液体吐出ヘッドのノズルから液体としてのインクを吐出して布帛上に画像を形成する。
【0003】
このような液体吐出装置では、開閉動作により、液体吐出部を覆う位置と外部に対して開放する位置とを往復可能なカバー部材が設けられるものが存在する。液体吐出部を外部に対して開放することで、液体吐出ヘッドのノズル面やメンテナンスユニットの清掃、あるいはキャリッジの交換などが可能になる。また液体吐出動作時には、カバー部材を閉じることで、キャリッジなどの駆動部に対して外部から触ることができないようにするとともに、カバー部材内を閉空間にして、インクミストを液体吐出部内で循環および回収させることができる。
【0004】
しかし、カバー部材を開閉動作させる構成では、カバー部材を閉じた状態でその内側の空間を十分に密閉できないという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
カバー部材内の気密性を向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明は、液体吐出部を有する装置本体部と、記録媒体搬送方向の移動により前記液体吐出部を覆う位置へ移動可能なカバー部材と、を備えた液体吐出装置であって、前記装置本体部は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋める本体側弾性部材を有し、前記本体側弾性部材の前記装置本体部に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在することを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、カバー部材内の気密性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る液体吐出装置の各カバー部材が閉じた状態の斜視図である。
図2図1の液体吐出装置の平面図である。
図3】液体吐出装置の各カバー部材が開いた状態の斜視図である。
図4図3の液体吐出装置の平面図である。
図5】前カバー内の気流を示す側面図である。
図6】前カバー内の気流を示す正面図である。
図7図3の側面断面図である。
図8図7から各カバーが閉じた状態の側面断面図である。
図9図8の矢印A方向視の前カバーおよびその内部を示す図である。
図10】各マイラの構成が異なる液体吐出装置の変形例を示す側面断面図である。
図11】本体側マイラのみを設けた液体吐出装置の変形例を示す側面断面図である。
図12図11から前カバーが閉じた状態を示す側面断面図である。
図13】カバー側マイラのみを設けた液体吐出装置の変形例を示す側面断面図である。
図14図13から前カバーが閉じた状態を示す側面断面図である。
図15】カバー側マイラに代えて突起部を設けた液体吐出装置の変形例を示す側面断面図である。
図16図15から前カバーが閉じた状態を示す側面断面図である。
図17】本体側マイラに代えて突起部を設けた液体吐出装置の変形例を示す側面断面図である。
図18図17から前カバーが閉じた状態を示す側面断面図である。
図19】一つの液体吐出部を有する液体吐出装置の側面図である。
図20】一つのキャリッジに一つの液体吐出ヘッドユニットを設けた構成を示す図である。
図21】一つのキャリッジに二つの液体吐出ヘッドユニットを設けた構成を示す図である。
図22図21と液体吐出ヘッドユニットの配置が異なる図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化ないし省略する。
【0010】
図1に各カバー部材が閉じた状態の液体吐出装置1の斜視図、図2に平面図を示す。また図3にカバー部材が開いた状態の液体吐出装置1の斜視図、図4に平面図を示す。図1の方向Xを液体吐出装置の前後方向あるいは副走査方向あるいは記録媒体搬送方向、方向Yを液体吐出装置の幅方向あるいは主走査方向、方向Zを上下方向とする。方向Xおよび方向Yはステージ上に配置された記録媒体の液体吐出面に平行な方向であるが、多少の誤差があってもよい。方向X,Y,Zは互いに直交する方向である。ただし、図4はマイラの記載を省略している。
【0011】
図1および図2に示すように、液体吐出装置1は、筐体2の前方にステージ3を有する。ステージ3はガイドレール4上に設けられる。ガイドレール4は方向Xに延在している。筐体2の前側に操作パネル5が設けられる。筐体2の側面にはインクカートリッジ6が着脱される。筐体2の上方には、カバー部材としての前カバー7および後ろカバー8が設けられる。
【0012】
ステージ3の上面は記録媒体を載置する載置面であり、平坦状をなしている。ステージ3の上面は方向Xおよび方向Yに平行な面である。ステージ3はガイドレール4上を移動し、方向Xの両方向に往復移動可能に設けられる。またステージ3はZ方向に昇降可能に設けられる。これにより、ステージ3に配置された記録媒体の高さを調整できる。
【0013】
前カバー7および後ろカバー8は方向Xの両方向に移動可能に設けられる。前カバー7が後ろ方向に移動し、後ろカバー8が前方向に移動した図1の状態がそれぞれのカバーが閉じた状態である。これに対して、前カバー7が前方向に移動し、後ろカバー8が後ろ方向に移動した図3の状態がそれぞれのカバーが開いた状態である。このように前カバー7および後ろカバー8をスライドにより開閉する構成とすることにより、例えば上下に開閉する構成と比較すると、カバー部材の開閉領域を含めた液体吐出装置の占有領域を小さくできる。前カバー7および後ろカバー8はその前後方向の両端に開口部を有する。前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態で、前カバー7と後ろカバー8とが前後方向に連続して配置される。
【0014】
図3および図4に示すように、液体吐出装置1の装置本体部50は、筐体2、筐体2上に設けられる液体吐出部9A、9Bなどを有する。本実施形態では特に、装置本体部50は、液体吐出装置1の前カバー7および後ろカバー8以外の部分である。この装置本体部50に対して、前カバー7および後ろカバー8がX方向にスライド可能に設けられる。
【0015】
前カバー7および後ろカバー8が開くことで、液体吐出装置1内の液体吐出部が外側に開放される。液体吐出部を外部に開放することにより、メンテナンスユニット30や液体吐出ヘッドおよびその周辺の清掃、あるいはキャリッジの交換が可能になる。また、画像形成時には前カバー7および後ろカバー8が閉じられた状態になる。これにより、前カバー7あるいは後ろカバー8により液体吐出部9A、9Bが覆われ、液体吐出部9A、9Bのキャリッジなどの動作部が外部からアクセスできない状態になる。また前カバー7あるいは後ろカバー8内の閉じられた空間に液体吐出部9A、9Bを配置することにより、液体吐出動作時にミストが周辺に飛散することを防止するとともに、液体吐出部9A、9Bに設けられるファンによって前カバー7あるいは後ろカバー8内で気流を循環させ、発生したミストを前カバー7あるいは後ろカバー8内で循環させて回収することができる。
【0016】
本実施形態の液体吐出装置1は、方向Xに二つの液体吐出部9A、9Bを有する。液体吐出部9Aはカラーおよび白色のインクを吐出する。液体吐出部9Bは前処理液を吐出する。なお、各液体吐出部9A、9Bが吐出する液体は上記に限らず、カラーインク、白色のインク、前処理液のうち任意の液体を吐出する形態でもよい。特に、記録媒体が布帛の場合には、インクによる画像形成の前に前処理液を塗布することが好ましいため、どちらか一方の液体吐出部は前処理液を吐出する形態であることが好ましい。
【0017】
液体吐出部9A、9Bは同様の構成を有するため、以下、液体吐出部9Aについて説明する。液体吐出部9Aは、キャリッジ10Aと、ガイドロッド11と、基板や電装カバーなどからなる電装部12と、メンテナンスユニット30とを有する。液体吐出部9A、9Bあるいはキャリッジ10A、10Bを単に液体吐出部9あるいはキャリッジ10とも称する。
【0018】
ガイドロッド11は主走査方向に延在する。キャリッジ10はガイドロッド11に沿って主走査方向に移動可能に設けられる。キャリッジ10は複数の液体吐出ヘッドを有する。メンテナンスユニット30は、ガイドロッド11に対向する位置で、左右方向の一方側の液体吐出領域外に設けられる。
【0019】
メンテナンスユニット30は、液体吐出ヘッドのノズル面を清掃する払拭部材やノズル面を吸引する吸引機構などを有する。払拭部材は、ゴム等で構成されたワイパーでもよいし、不織布等から構成されるウェブでもよい。
【0020】
以上の液体吐出ヘッドについて、記録媒体に画像を形成する過程について説明する。
【0021】
まず記録媒体をステージ3に載置し、ガイドレール4上を搬送する。そして、液体吐出装置の後方側まで搬送し、液体吐出部9Bにより前処理液を記録媒体に塗布する。具体的には、キャリッジ10Bをガイドロッド11に沿って主走査方向へ移動させながら液体吐出ヘッドに設けられたノズルから前処理液を記録媒体に対して主走査方向にわたって塗布する。これを副走査方向の各位置で繰り返し行うことにより、記録媒体に前処理液が塗布される。その後、ステージ3を前方向へ移動させ、同様の方法で液体吐出部9Aによりカラーの各色を記録媒体に吐出する。記録媒体に白色の印刷をする場合には、例えばまず液体吐出部9Aにより白色のインクを吐出した後、再びステージ3を液体吐出部9Aの後方側まで移動させ、液体吐出部9Aによりカラーのインクを記録媒体に吐出させる。これにより、記録媒体に画像を形成できる。
【0022】
これらの液体吐出部9A、9Bには、前カバー7あるいは後ろカバー8が閉じられた状態で、各カバー内の閉空間でミストを循環させるための気流形成機構が設けられる。以下、この気流形成機構について図5および図6を用いて説明する。
【0023】
図5に示すように、前カバー7が閉じられた状態で、その内側に気流形成機構22が設けられる。気流形成機構22は、吸気ダクト221と、フィルタ222と、ファン223と、排気ダクト224とを有する。
【0024】
図5に矢印で示すように、ファン223によりキャリッジ10の移動領域側(つまり、ガイドロッド11側)から吸気ダクト221へ流れる気流が形成される。この気流は、フィルタ222を介して排気ダクト224から上方へ排気される。
【0025】
図6に示すように、気流形成機構22は液体吐出装置1の幅方向に2つ設けられる。排気ダクト224からの排気は、前カバー7の内側の面に沿って再び吸気ダクト221側へ流れる。これにより、前カバー7内で気流が循環する。
【0026】
以上のように循環気流の途中にキャリッジ10の移動領域を配置することができ、キャリッジ10の液体吐出ヘッド20から発生したミストをカバー部材内で循環させ、回収できる。つまり、キャリッジ10の液体吐出ヘッド20からステージ3上の記録媒体200に対してインクが吐出されることで、液体吐出ヘッド20の周辺でミストが発生する。このミストが、ファン223によって形成された気流により吸気ダクト221側へ流れる。これにより、ミストが周辺に付着することを抑制できる。このように、気流発生機構22により、その気流発生機構22が設けられた液体吐出部から発生するミストを回収できる。
【0027】
それぞれの液体吐出部9A、9B(図4参照)に設けられる気流発生機構22は、対応する液体吐出部の動作中にのみ稼働させることが好ましい。特に本実施形態のように、一方の液体吐出部9Aがインクを吐出し、他方の液体吐出部9Bが前処理液を吐出する構成の場合、各気流発生機構22を対応する液体吐出部の動作中にのみ稼働させることが特に好ましい。インクと前処理液は、記録媒体上で互いに反応するという特性上、そのミストも互いに反応して凝集し固着してしまう。このため、液体吐出部9Aから吐出されたインクあるいは液体吐出部9Bから吐出された前処理液の一方のミストが、他方の液体吐出部の側へ移動することで、例えばヘッド表面でインクと前処理液が反応して固着してしまうという問題がある。これに対して、上記のように液体吐出部9Bの動作中にのみ、対応する気流発生機構22を稼働させる構成とすることで、液体吐出部9Bから散逸するミストが液体吐出部9Aにおけるインクミストと結合して固着することを防止できる。また、液体吐出部9Aの動作中にのみ、対応する気流発生機構22を稼働させる構成とすることで、液体吐出部9Aから散逸するインクミストが液体吐出部9Bにおける前処理液のミストと結合して固着することを防止できる。なお、気流発生機構22の配置は本実施形態の配置に限らず、キャリッジの移動領域の周辺など、各液体吐出部からのミストを回収できる適宜の位置に配置できる。
【0028】
ところで、前カバー7内の空間の気密性が高いほど、前カバー7内におけるミストの循環性やフィルタ222によるミストの回収性を高めることができる。しかし、前カバー7や後ろカバー8は前後方向に開閉移動する構成のため、開閉動作時に装置本体側との干渉を避ける構成とする必要がある。このため、カバー開閉動作時に液体吐出部を通過する部分である、前カバー7の後方側および後ろカバー8の前方側を覆うことが難しく、それぞれのカバー部材の気密性を保つことが難しかった。
【0029】
そこで、前カバー7あるいは後ろカバー8が閉じられた状態における各カバー内の気密性を向上させるために、液体吐出装置にマイラ(登録商標)が設けられる。以下、このマイラ(登録商標)について図3図7図9を用いて説明する。図3は各カバーが開いた状態の液体吐出装置の斜視図、図7は各カバー部材の内側を示した側面断面図、図8は各カバーが閉じた状態の液体吐出装置の側面断面図である。図9図8の矢印A方向視の背面図である。なお、前カバー7が閉じた状態は前カバー7が液体吐出部9Aの上方に配置されて液体吐出部9Aを覆う状態、後ろカバー8が閉じた状態は後ろカバー8が液体吐出部9Bの上方に配置されて液体吐出部9Bを覆う状態のことである。
【0030】
図3および図7に示すように、装置本体部の液体吐出部9A側には本体側弾性部材としての本体側マイラ31Aが、前カバー7にはカバー側弾性部材としてのカバー側マイラ32Aがそれぞれ設けられる。また、装置本体部の液体吐出部9B側には本体側弾性部材としての本体側マイラ31Bが、後ろカバー8にはカバー側弾性部材としてのカバー側マイラ32Bが設けられる。それぞれのマイラ(デュポン社の登録商標、テレフタル酸ポリエステル)は可撓性を有し、シート状をなす。ただし、マイラはこれらの弾性部材として用いられる樹脂フィルムの一例であり、この樹脂フィルムとして例えばポリエステルやビニル樹脂を用いることができる。また、ゴム材などにより弾性部材を形成してもよい。マイラの一端側は自由端になっている。液体吐出部9Aは液体吐出装置の前方側に設けられる第1の液体吐出部で、液体吐出部9Bは後方側に設けられる第2の液体吐出部である。前カバー7は前方側に設けられる第1のカバー部材で、後ろカバー8は後方側に設けられる第2のカバー部材である。本体側マイラ31Aは前方側に設けられる第1の本体側弾性部材で、本体側マイラ31Bは後方側に設けられる第2の本体側弾性部材である。カバー側マイラ32Aは前カバー7に設けられる第1のカバー側弾性部材で、カバー側マイラ32Bは後ろカバー8に設けられる第2のカバー側弾性部材である。
【0031】
これらのマイラはY方向に延在しており、Y方向にわたって各カバー部材内の外部に対する開口部を埋めることができる。例えばこれらのマイラは、Y方向のキャリッジ10の移動領域全域にわたって設けられる。これにより、各マイラが、キャリッジ10がインクを吐出する範囲やメンテンナンス動作を行うY方向の位置において、各カバー部材の開口部を埋めることができ、インクのカバー部材内における循環性や回収性を高めることができる。ただし、必ずしもこれらの領域全域にわたってマイラを設ける必要はない。例えば、これらのY方向の一部領域が装置本体部などにより塞がっている場合には、マイラのY方向の長さを小さくできる。
【0032】
本体側マイラ31Aの一端側は、前カバー7が開いた状態において(つまり、カバー側マイラ32Aとの非接触状態において)、前カバー7を閉じる方向である図7の右方向へ延在する。本体側マイラ31Aの他端側は液体吐出装置の装置本体部に固定される。カバー側マイラ32Aの一端側は、前カバー7が開いた状態において(つまり、本体側マイラ31Aとの非接触状態において)、前カバー7を開く方向である図7の左方向へ延在する。カバー側マイラ32Aの他端側は前カバー7の天板部の底面に固定される。本体側マイラ31Aの一端はカバー側マイラ32Aの一端よりも上方に設けられる。また本体側マイラ31Aは前カバー7のカバー側マイラ32A以外の部分に接触しない高さに設けられ、カバー側マイラ32Aは装置本体部の本体側マイラ31A以外の部分に接触しない高さに設けられる。また本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32Aの一端側は、前カバー7を完全に閉じる位置の手前で両者が当接するように、それぞれが配置されている。
【0033】
本体側マイラ31Bの一端側は、後ろカバー8が開いた状態において(つまり、カバー側マイラ32Bとの非接触状態において)、後ろカバー8を閉じる方向である図7の左方向へ延在する。本体側マイラ31Bの他端側は液体吐出装置の装置本体部に固定される。カバー側マイラ32Bの一端側は、後ろカバー8が開いた状態において(つまり、本体側マイラ31Bとの非接触状態において)、後ろカバー8を開く方向である図7の右方向へ延在する。カバー側マイラ32Bの他端側は後ろカバー8の天板部の底面に固定される。本体側マイラ31Bの一端はカバー側マイラ32Bの一端よりも上方に設けられる。また本体側マイラ31Bは後ろカバー8のカバー側マイラ32B以外の部分に接触しない高さに設けられ、カバー側マイラ32Bは装置本体部の本体側マイラ31B以外の部分に接触しない高さに設けられる。また本体側マイラ31Bおよびカバー側マイラ32Bの一端側は、後ろカバー8を完全に閉じる位置の手前で両者が当接するように、それぞれが配置されている。
【0034】
図8に示すように、前カバー7を閉じることにより、前カバー7内に液体吐出部9Aが配置され、液体吐出部9Aが前カバー7に覆われた状態になる。また前カバー7を閉じる過程で本体側マイラ31Aとカバー側マイラ32Aとが接近し、両者の一端側に設けられた傾斜面が互いに当接する。そして、前カバー7を閉じた位置では、本体側マイラ31Aとカバー側マイラ32Aとが互いに弾性変形した状態で当接する。この弾性変形により、本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32Aの一端側に弾性復帰力が生じる。つまり、本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32Aの一端側に互いに接近する方向の力が生じ、両者の一端側が密着する。これにより、本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32Aの配置された部分を隙間なく埋めることができ、前カバー7内の気密性が向上する。別の言い方をすると、図9に示すように、本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32Aにより、液体吐出部9Aを配置した前カバー7内の領域の外部に対する開口部分を埋めることができ、前カバー7内のより密閉した空間内に液体吐出部9Aを配置できる。なお、図9の本体側マイラ31Aの下方には、液体吐出装置の筐体部や電装カバーなどが配置されており、この部分が塞がれている。
【0035】
また図8に示すように、後ろカバー8を閉じることにより、後ろカバー8内に液体吐出部9Bが配置され、液体吐出部9Bが後ろカバー8に覆われた状態になる。また後ろカバー8を閉じる過程で、本体側マイラ31Bとカバー側マイラ32Bとが接近し、両者の一端側に設けられた傾斜面が互いに当接する。そして、後ろカバー8を閉じた位置では、本体側マイラ31Bとカバー側マイラ32Bとが互いに弾性変形した状態で当接する。この弾性変形により、本体側マイラ31Bとカバー側マイラ32Bとの一端側が密着する。これにより、後ろカバー8による液体吐出部9Bの気密性が向上する。
【0036】
より詳細には、キャリッジ10Aを含む液体吐出部9Aは、その液体吐出動作時には、前カバー7の前板部、両側板部、天板部、ステージ3、そして装置本体部と本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32Aにより囲まれた空間内に配置される。また、キャリッジ10Bを含む液体吐出部9Bは、その液体吐出動作時には、前カバー7および後ろカバー8の両側板部、天板部、ステージ3、装置本体部と本体側マイラ31Aおよびカバー側マイラ32A、装置本体部と本体側マイラ31Bおよびカバー側マイラ32Bにより囲まれた空間内に配置される。ただし、前カバー7と後ろカバー8との間に、別の仕切り部材が配置されていてもよい。これらのそれぞれの空間内で、それぞれの液体吐出部9A,9Bから発生したミストが循環および回収される。
【0037】
以上のように本実施形態では、各カバー部材の閉じる方向へのスライド移動により、本体側マイラとカバー側マイラとを互いに接近させて当接させることができる。そして、本体側マイラおよびカバー側マイラに対して、互いに接近する方向の弾性力を生じさせることができる。つまり、カバー部材を閉じる動作だけで両者を密着させ、カバー部材内の気密性を向上させることができる。ただし、ここで言う「カバー部材の気密性」とは、厳密にカバー部材内とその外側との空間が区画されているような状態に限らず、カバー部材内とその外側との空間に隙間があってもよい。つまり、「カバー部材内の気密性を向上させる」とは、液体吐出部が配置されたカバー部材内の外部に対する開口部をより小さくする、といった意味である。
【0038】
次に、液体吐出装置に設けられるマイラ(弾性部材)の変形例について説明する。なお、図10以降では気流発生機構22の記載を省略している。
【0039】
図10に示す実施形態では、本体側マイラ31A、31Bの一端側が上方向へ延在し、カバー側マイラ32A、32Bの一端側が下方向へ延在する。この上方向あるいは下方向は、液体吐出装置1が搬送する記録媒体の液体吐出面に垂直な方向である。ただし、本体側マイラ31A、31Bの一端側、あるいは、カバー側マイラ32A、32Bの一端側が、X方向に垂直な方向で、Y方向とは異なるZ方向に延在している。
【0040】
本実施形態においても、前カバー7あるいは後ろカバー8を閉じることにより、本体側マイラ31Aとカバー側マイラ32A、あるいは、本体側マイラ31Bとカバー側マイラ32Bとの一端側を互いに当接させることができる。そして、この当接により、それぞれのマイラを弾性変形させる。この弾性変形により、前述の実施形態の図8のように、それぞれのマイラを傾斜させ、本体側マイラ31Aとカバー側マイラ32A、あるいは、本体側マイラ31Bとカバー側マイラ32Bとの一端側を密着させることができる。これにより、前カバー7あるいは後ろカバー8内の気密性を向上させることができる。上記の実施形態では本体側マイラとカバー側マイラの双方がZ方向に延在する場合を示したが、いずれか一方であってもよい。
【0041】
以上のように、本体側マイラの一端側を、図7のように各カバー部材が閉じる方向へ延在させるか、あるいは、図10のように方向Xに垂直で方向Yと異なるいずれかの方向へ延在させることにより、各カバー部材を閉じる動作によってカバー側マイラに当接させることで、本体側マイラを各カバー部材が閉じる方向へさらに弾性変形させ、カバー側マイラに密着させる方向の弾性復帰力を付与することができる。また同様に、カバー側マイラの一端を、図7のように各カバー部材が開く方向へ延在させるか、あるいは、図10のように方向Xに垂直で方向Yと異なるいずれかの方向へ延在させることにより、各カバー部材を閉じる動作によって本体側マイラに当接させることでカバー側マイラを各カバー部材が開く方向へさらに弾性変形させ、本体側マイラに密着させる方向の弾性復帰力を付与することができる。
【0042】
また本発明は、液体吐出装置が本体側マイラとカバー側マイラの双方を有する構成に限らない。例えば図11に示す実施形態では、前カバー7にカバー側マイラ32Aが設けられていない。そして、装置本体部に設けられる本体側マイラ31Aが前カバー7の天板部の底面に当接する長さで設けられる。なお、後ろカバー8に当接する本体側マイラ31Bについて、同様の構成を採用することができるが、図11ではその記載を省略している。また以下に示す実施形態についても、後ろカバー8側の記載は省略する。本体側マイラ31Bやカバー側マイラ32Bについては基本的にその構成は本体側マイラ31Aやカバー側マイラ32Aと同じであり、その配置が後ろカバー8側であること、図8のように一端側の延在方向が前後方向の逆方向である点が異なっている。
【0043】
前カバー7を閉じることにより、図12に示すように、本体側マイラ31Aが前カバー7の天板部に当接してその一端側が前カバー7を閉じる移動方向の下流側へ弾性変形する。本体側マイラ31Aの弾性復帰力により、本体側マイラ31Aが前カバー7の天板部に押し当てられる。これにより、前カバー7内の気密性が向上する。
【0044】
また図13に示す実施形態では、装置本体部に本体側マイラ31Aが設けられていない。そして、前カバー7に設けられるカバー側マイラ32Aが、装置本体部に当接する長さで設けられる。図14に示すように、前カバー7を閉じることにより、カバー側マイラ32Aが装置本体部の所定の位置に当接し、その一端側が前カバー7を閉じる移動方向と逆方向へ弾性変形する。カバー側マイラ32Aの弾性復帰力により、カバー側マイラ32Aが装置本体部に押し当てられる。これにより、前カバー7による液体吐出部9Aの気密性が向上する。
【0045】
また装置本体部と各カバーの一方にのみマイラを設け、他方にはマイラに当接する突起部を設けた構成とすることもできる。例えば図15に示す実施形態では、前カバー7に、本体側マイラ31Aに当接する突起部33が設けられる。突起部33は、前カバー7の天板部の底面のその他の部分よりも下方に部分的に突出した部分である。この下方は、前カバー7が閉じられた状態において、本体側マイラ31Aの側の方向である。突起部33は、前カバー7の天板部の底面の一部分とすることができる。
【0046】
図16に示すように、前カバー7を閉じることにより、本体側マイラ31Aが突起部33に当接して図12等と同じ方向へ弾性変形する。これにより、前カバー7による液体吐出部9Aの気密性が向上する。
【0047】
また図17に示すように、装置本体部にカバー側マイラ32Aに当接する突起部34を設けてもよい。突起部34は、装置本体部のその他の部分よりも、上方へ部分的に突出した部分である。本実施形態の突起部34は、例えば電装部12を覆う電装カバー等の装置本体部の機能的な部材とは異なる部分である。この上方は、前カバー7が閉じられた状態において、カバー側マイラ32Aの側の方向である。図18に示すように、前カバー7を閉じることにより、カバー側マイラ32Aが突起部34に当接して図12等と同じ方向へ弾性変形する。これにより、前カバー7による液体吐出部9Aの気密性が向上する。突起部34は、液体吐出装置の装置本体部の筐体の一部とすることができる。
【0048】
以上の実施形態では、本体側マイラ31Aあるいはカバー側マイラ32Aの一端が上方あるいは下方に垂直に延在する場合を示したが、図7の実施形態のように傾斜していてもよい。
【0049】
以上のように、本体側弾性部材あるいはカバー側弾性部材のいずれか一方に代えて、剛体の当接部を配置することもできる。ただし、図8の実施形態のように、本体側弾性部材とカバー側弾性部材の双方を設けて互いに当接させることにより、弾性力により両者を密着させることができる。従って、カバー部材内の気密性をより向上させることができて好ましい。
【0050】
以上の説明では、液体吐出装置が複数の(2つの)液体吐出部9A、9Bを備え、それぞれの液体吐出部9A、9Bが、液体吐出ヘッドを備えたキャリッジ10A、10B、および、ガイドロッド11、11を備えた構成について説明したが、本発明はこれに限らない。例えば、液体吐出装置1が三つ以上の液体吐出部を有し、そのすべてあるいは一部に、対応するカバー部材および弾性部材が設けられる構成であってもよい。また図19に示すように、液体吐出装置1が液体吐出部9を1つのみ有する構成であってもよい。この液体吐出装置は、図20に示すように、液体吐出部9が、ガイドロッド11と、キャリッジ10と、キャリッジ10に設けられる液体吐出ヘッドユニット60を有する。液体吐出ヘッドユニット60は複数の液体吐出ヘッドからなるが、単一の液体吐出ヘッドであってもよい。液体吐出ヘッドユニット60は、前処理液、白色あるいはカラー色のインクを吐出する。また液体吐出装置が液体吐出部を3つ以上有していてもよい。また、図21に示すように、キャリッジ10が複数の液体吐出ヘッドユニット60A,60Bを有する構成であってもよい。この場合、例えば液体吐出ヘッドユニット60Aにより白色あるいはカラー色のインクが吐出され、液体吐出ヘッドユニット60Bにより前処理液が吐出される。また各液体吐出ヘッドユニット60A,60Bの配置は、図21のように副走査方向に並べて配置する構成の他、図22のように主走査方向に並べて配置してもよい。
【0051】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0052】
本願において、吐出される液体は、ヘッドから吐出可能な粘度や表面張力を有するものであればよく、特に限定されないが、常温、常圧下において、または加熱、冷却により粘度が30mPa・s以下となるものであることが好ましい。より具体的には、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり、これらは例えば、インクジェット用インク、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0053】
「液体」にはインクだけでなく塗料や前処理液、バインダー、オーバーコート液を含む。
【0054】
本願において、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドを有するキャリッジを備え、液体吐出ヘッドを駆動させて、液体を吐出させる装置である。液体吐出装置には、液体が付着可能なものである記録媒体に対して液体を吐出することが可能な装置だけでなく、液体を気中や液中に向けて吐出する装置も含まれる。
【0055】
この「液体吐出装置」は、液体が付着可能なものの給送、搬送、排紙に係わる手段、その他、前処理装置、後処理装置なども含むことができる。
【0056】
例えば、「液体吐出装置」として、インクを吐出させて用紙に画像を形成する装置である画像形成装置、立体造形物(三次元造形物)を造形するために、粉体を層状に形成した粉体層に造形液を吐出させる立体造形装置(三次元造形装置)がある。
【0057】
また、「液体吐出装置」は、吐出された液体によって文字、図形等の有意な画像が可視化されるものに限定されるものではない。例えば、それ自体意味を持たないパターン等を形成するもの、三次元像を造形するものも含まれる。
【0058】
上記「液体が付着可能なもの」とは、液体が少なくとも一時的に付着可能なものであって、付着して固着するもの、付着して浸透するものなどを意味する。具体例としては、用紙、記録紙、記録用紙、フィルム、布などの被記録媒体、電子基板、圧電素子などの電子部品、粉体層(粉末層)、臓器モデル、検査用セルなどの媒体であり、特に限定しない限り、液体が付着するすべてのものが含まれる。
【0059】
上記「液体が付着可能なもの」の材質は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックスなど液体が一時的でも付着可能であればよい。
【0060】
また、「液体吐出装置」は、液体吐出ヘッドと液体が付着可能なものとが相対的に移動する装置があるが、これに限定するものではない。具体例としては、液体吐出ヘッドを移動させるシリアル型装置、液体吐出ヘッドを移動させないライン型装置などが含まれる。
【0061】
また、「液体吐出装置」としては他にも、用紙の表面を改質するなどの目的で用紙の表面に処理液を塗布するために処理液を用紙に吐出する処理液塗布装置、原材料を溶液中に分散した組成液を、ノズルを介して噴射させて原材料の微粒子を造粒する噴射造粒装置などがある。
【0062】
なお、本願の用語における、画像形成、記録、印字、印写、印刷、造形等はいずれも同義語とする。
【0063】
本発明の態様は、例えば以下の通りである。
<1>
液体吐出部を有する装置本体部と、
記録媒体搬送方向の移動により前記液体吐出部を覆う位置へ移動可能なカバー部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記装置本体部は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋める本体側弾性部材を有し、
前記本体側弾性部材の前記装置本体部に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在することを特徴とする液体吐出装置である。
<2>
液体吐出部を有する装置本体部と、
記録媒体搬送方向の移動により前記液体吐出部を覆う位置へ移動可能なカバー部材と、を備えた液体吐出装置であって、
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋めるカバー側弾性部材を有し、
前記カバー側弾性部材の前記カバー部材に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向とは反対方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在することを特徴とする液体吐出装置である。
<3>
前記カバー部材は、前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー部材内の外部に対する開口部分を埋めるカバー側弾性部材を有し、
前記カバー側弾性部材の前記カバー部材に取り付けられる側とは反対側の一端側が、前記記録媒体搬送方向の前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置へ移動する方向とは反対方向へ傾斜する、あるいは、記録媒体搬送方向に垂直な方向で主走査方向と異なる方向へ延在し、
前記カバー部材が前記液体吐出部を覆う位置において、前記本体側弾性部材の一端側と前記カバー側弾性部材の一端側とが当接する<1>記載の液体吐出装置である。
<4>
前記カバー部材は部分的に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記液体吐出部を覆う位置において、前記本体側弾性部材側へ突出し、前記本体側弾性部材に当接する<1>記載の液体吐出装置である。
<5>
前記装置本体部は部分的に突出する突起部を有し、
前記突起部は、前記液体吐出部を覆う位置において、前記カバー側弾性部材側へ突出し、前記カバー側弾性部材に当接する<2>記載の液体吐出装置である。
<6>
液体吐出装置の前方側と後方側とにそれぞれ設けられる前記液体吐出部と、
前方側に設けられ、後方側への移動により前方側の前記液体吐出部を覆う位置へ移動する第1の前記カバー部材と、
後方側に設けられ、前方側への移動により後方側の前記液体吐出部を覆う位置へ移動する第2の前記カバー部材と、を有する請求項3記載の液体吐出装置であって、
前記第1のカバー部材は、第1の前記カバー側弾性部材を有し、
前記第2のカバー部材は、第2の前記カバー側弾性部材を有し、
前記装置本体側は、第1の前記本体側弾性部材および第2の前記本体側弾性部材を有し、
前記第1のカバー部材が前記前方側の前記液体吐出部を覆う位置において、 前記第1のカバー側弾性部材および前記第1の本体側弾性部材は、前記前方側の液体吐出部よりも後方側で互いに当接し、
前記第2のカバー部材が前記後方側の前記液体吐出部を覆う位置において、 前記第2のカバー側弾性部材および前記第2の本体側弾性部材は、前記後方側の液体吐出部よりも後方側で互いに当接する液体吐出装置である。
<7>
前記液体吐出部は、液体吐出ヘッドを有し、主走査方向へ移動可能に設けられるキャリッジを備え、
前記本体側弾性部材が、前記キャリッジの主走査方向の移動範囲にわたって設けられる<1>、<3>、<4>、<6>いずれか記載の液体吐出装置である。
<8>
前記液体吐出部は、液体吐出ヘッドを有し、主走査方向へ移動可能に設けられるキャリッジを備え、
前記カバー側弾性部材が、前記キャリッジの主走査方向の移動範囲にわたって設けられる<2>、<3>、<5>、<6>いずれか記載の液体吐出装置である。
<9>
気流発生機構を有する前記液体吐出部を複数備え、
それぞれの前記気流発生機構が独立して動作可能である<1>から<8>いずれか記載の液体吐出装置である。
<10>
前処理液を吐出する前記液体吐出部を備え、当該液体吐出部は前処理液のミストを回収する前記気流発生機構を有する<9>記載の液体吐出装置である。
【符号の説明】
【0064】
1 液体吐出装置
7 前カバー(第1のカバー部材)
8 後ろカバー(第1のカバー部材)
9A 液体吐出部(第1の液体吐出部)
9B 液体吐出部(第2の液体吐出部)
10 キャリッジ
31A 本体側マイラ(第1の本体側弾性部材)
31B 本体側マイラ(第2の本体側弾性部材)
32A カバー側マイラ(第1のカバー側弾性部材)
32B カバー側マイラ(第2のカバー側弾性部材)
33 突起部
34 突起部
50 液体吐出装置の装置本体部
X 記録媒体搬送方向(前後方向)
Y 主走査方向
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2019-131909号公報
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22