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特開2024-49449超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024049449
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 8/14 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
A61B8/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022155680
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100152984
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100148080
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 史生
(72)【発明者】
【氏名】田代 りか
【テーマコード(参考)】
4C601
【Fターム(参考)】
4C601DD01
4C601DD26
4C601EE09
4C601EE11
4C601GB04
4C601HH14
4C601JB34
4C601JC06
4C601KK01
4C601KK25
4C601KK30
4C601KK46
4C601KK47
(57)【要約】
【課題】操作性に優れ且つ正確に検査を行うことができ超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供する。
【解決手段】超音波診断装置は、複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択する検査メニュー選択部(25)と、検査メニュー選択部(25)により選択された検査メニューを実行するための検査実行部(29)と、検査メニュー選択部(25)により2つ以上の検査メニューが選択された場合に、検査実行部(29)を制御することにより、選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる検査制御部(28)とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択する検査メニュー選択部と、
前記検査メニュー選択部により選択された前記検査メニューを実行するための検査実行部と、
前記検査メニュー選択部により2つ以上の前記検査メニューが選択された場合に、前記検査実行部を制御することにより、選択された前記2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる検査制御部と
を備える超音波診断装置。
【請求項2】
前記検査メニュー選択部は、前記2つ以上の検査メニューのうち、1つの検査メニューを主シーケンスとして選択し、残りの検査メニューを副シーケンスとして選択する請求項1に記載の超音波診断装置。
【請求項3】
前記検査メニュー選択部は、前記複数の定められた検査メニューに対応する複数の選択ボタンを有し、前記複数の選択ボタンのうち2つ以上の選択ボタンが順次長押しされることにより、前記2つ以上の検査メニューを選択し、最後に長押しされた選択ボタンに対応する検査メニューを前記主シーケンスとして選択する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項4】
前記検査制御部は、前記副シーケンスが短縮して実行されるように前記検査実行部を制御する請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項5】
前記複数の定められた検査メニューは、直腸観察メニューと尿量計測メニューを含み、
前記検査メニュー選択部により、前記直腸観察メニューが前記主シーケンスとして選択され、前記尿量計測メニューが前記副シーケンスとして選択される請求項2に記載の超音波診断装置。
【請求項6】
前記検査実行部は、前記直腸観察メニューと前記尿量計測メニューを連結して連続的に実行する場合に、2軸の回転楕円体により近似尿量計測を行う請求項5に記載の超音波診断装置。
【請求項7】
複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択し、
2つ以上の検査メニューが選択された場合に、選択された前記2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる
超音波診断装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の検査メニューを実行可能な超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、いわゆる超音波診断装置を用いて被検体内の断層を表す超音波画像を撮影することにより被検体に対する検査および診断が行われている。このような超音波診断装置を用いた検査では、例えば被検体の腹部を検査するための検査手順等、定められた検査手順に従って被検体の検査を行うことがある。
【0003】
一般的に、超音波診断装置のユーザは、超音波診断装置を用いた検査を行うために一定以上の熟練度を要するため、検査手順が定められている場合でも、ユーザの熟練度によっては正確に検査を行うことが困難なことがあった。そこで、例えば特許文献1に開示される技術のように、定められた検査手順に対応する検査メニューを有し、検査メニューにおける検査対象の一連の部位を時系列に並べて表示し且つ実施している検査に対応する部位を強調表示する技術が開発されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014-064637号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、例えば直腸の検査では、被検体の膀胱に一定以上の尿が溜まっている状態で超音波プローブを被検体の腹部に接触させることにより被検体の直腸を検査する、いわゆる経腹アプローチの方法により検査が行われることがある。経腹アプローチにおいて、超音波プローブから発せられる超音波は、被検体の腹部から膀胱内の尿を通って直腸に到達する。この際に、膀胱内の尿量が一定以上存在していないと、直腸が明瞭に観察できないことが知られている。そのため、経腹アプローチによる直腸の観察を行う前に被検体の膀胱を観察し、膀胱内の尿量を確認することが好ましい。
【0006】
このように、被検体の特定の検査手順に従って部位を正確に検査するためには、別の検査手順に従う別の部位の検査を事前に行うことが望ましい場合がある。例えば特許文献1の技術を用いて互いに異なる2つ以上の検査メニューを実行する場合には、ユーザが個別に検査メニューを設定して検査を行う必要があった。また、ユーザの熟練度によっては、互いに異なる2つ以上の検査メニューを実行せずに、1つの検査メニューのみを実行する場合があった。そのため、超音波診断装置の操作性と検査の精度において、改良の余地があった。
【0007】
本発明はこのような従来の問題点を解消するためになされたものであり、操作性に優れ且つ正確に検査を行うことができる超音波診断装置および超音波診断装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以下の構成によれば、上記目的を達成できる。
〔1〕 複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択する検査メニュー選択部と、
検査メニュー選択部により選択された検査メニューを実行するための検査実行部と、
検査メニュー選択部により2つ以上の検査メニューが選択された場合に、検査実行部を制御することにより、選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる検査制御部と
を備える超音波診断装置。
〔2〕 検査メニュー選択部は、2つ以上の検査メニューのうち、1つの検査メニューを主シーケンスとして選択し、残りの検査メニューを副シーケンスとして選択する〔1〕に記載の超音波診断装置。
〔3〕 検査メニュー選択部は、複数の定められた検査メニューに対応する複数の選択ボタンを有し、複数の選択ボタンのうち2つ以上の選択ボタンが順次長押しされることにより、2つ以上の検査メニューを選択し、最後に長押しされた選択ボタンに対応する検査メニューを主シーケンスとして選択する〔1〕または〔2〕に記載の超音波診断装置。
〔4〕 検査制御部は、副シーケンスが短縮して実行されるように検査実行部を制御する〔2〕に記載の超音波診断装置。
〔5〕 複数の定められた検査メニューは、直腸観察メニューと尿量計測メニューを含み、
検査メニュー選択部により、直腸観察メニューが主シーケンスとして選択され、尿量計測メニューが副シーケンスとして選択される〔2〕または〔4〕に記載の超音波診断装置。
〔6〕 検査実行部は、直腸観察メニューと尿量計測メニューを連結して連続的に実行する場合に、2軸の回転楕円体により近似尿量計測を行う〔5〕に記載の超音波診断装置。
〔7〕 複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択し、
2つ以上の検査メニューが選択された場合に、選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる
超音波診断装置の制御方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、超音波診断装置が、複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択する検査メニュー選択部と、検査メニュー選択部により選択された検査メニューを実行するための検査実行部と、検査メニュー選択部により2つ以上の検査メニューが選択された場合に、検査実行部を制御することにより、選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる検査制御部とを備えるため、操作性に優れ且つ正確に検査を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示すブロック図である。
図2】本発明の実施の形態における送受信回路の構成を示すブロック図である。
図3】本発明の実施の形態における画像生成部の構成を示すブロック図である。
図4】検査メニューを選択するメニュー画面の例を示す図である。
図5】尿量計測の結果の表示例を示す図である。
図6】第1表示領域に現在の超音波画像が表示され、第2表示領域に参考画像が表示され、第3表示領域に走査ガイドの動画が表示される例を示す図である。
図7】超音波画像に付与するアノテーションを選択するアイコンの例を示す図である。
図8】本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。
以下に記載する構成要件の説明は、本発明の代表的な実施態様に基づいてなされるが、本発明はそのような実施態様に限定されるものではない。
なお、本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、「同一」、「同じ」は、技術分野で一般的に許容される誤差範囲を含むものとする。
【0012】
実施の形態
図1に本発明の実施の形態に係る超音波診断装置の構成を示す。超音波診断装置は、超音波プローブ1と、超音波プローブ1に接続される装置本体2を備えている。
【0013】
超音波プローブ1は、振動子アレイ11を有している。振動子アレイ11に送受信回路12が接続されている。
【0014】
装置本体2は、超音波プローブ1の送受信回路12に接続される画像生成部21を有している。画像生成部21に、表示制御部22およびモニタ23が、順次、接続されている。また、画像生成部21にメモリ24が接続されている。メモリ24に、表示制御部22および検査メニュー選択部25が接続されている。検査メニュー選択部25に、参考画像表示部26、走査ガイド表示部27および検査制御部28が接続されている。参考画像表示部26および走査ガイド表示部27は表示制御部22に接続している。検査制御部28に検査実行部29が接続されている。検査実行部29はメモリ24に接続している。また、装置本体2は被検体特定部30を備えている。被検体特定部30は表示制御部22およびメモリ24に接続している。また、送受信回路12、画像生成部21、表示制御部22、メモリ24、検査メニュー選択部25、参考画像表示部26、走査ガイド表示部27、検査制御部28、検査実行部29および被検体特定部30に、本体制御部31が接続されている。本体制御部31に入力装置32が接続されている。
【0015】
また、送受信回路12と画像生成部21により画像取得部33が構成されている。また、画像生成部21、表示制御部22、検査メニュー選択部25、参考画像表示部26、走査ガイド表示部27、検査制御部28、検査実行部29、被検体特定部30および本体制御部31により、装置本体2用のプロセッサ34が構成されている。
【0016】
超音波プローブ1の振動子アレイ11は、1次元または2次元に配列された複数の超音波振動子を有している。これらの超音波振動子は、それぞれ送受信回路12から供給される駆動信号に従って超音波を送信すると共に、被検体からの超音波エコーを受信して、超音波エコーに基づく信号を出力する。各超音波振動子は、例えば、PZT(Lead Zirconate Titanate:チタン酸ジルコン酸鉛)に代表される圧電セラミック、PVDF(Poly Vinylidene Di Fluoride:ポリフッ化ビニリデン)に代表される高分子圧電素子およびPMN-PT(Lead Magnesium Niobate-Lead Titanate:マグネシウムニオブ酸鉛-チタン酸鉛固溶体)に代表される圧電単結晶等からなる圧電体の両端に電極を形成することにより構成される。
【0017】
送受信回路12は、本体制御部31による制御の下で、振動子アレイ11から超音波を送信し且つ振動子アレイ11により取得された受信信号に基づいて音線信号を生成する。送受信回路12は、図2に示すように、振動子アレイ11に接続されるパルサ41と、振動子アレイ11から順次直列に接続される増幅部42、AD(Analog to Digital)変換部43およびビームフォーマ44を有している。
【0018】
パルサ41は、例えば、複数のパルス発生器を含んでおり、本体制御部31からの制御信号に応じて選択された送信遅延パターンに基づいて、振動子アレイ11の複数の超音波振動子から送信される超音波が超音波ビームを形成するようにそれぞれの駆動信号を、遅延量を調節して複数の超音波振動子に供給する。このように、振動子アレイ11の超音波振動子の電極にパルス状または連続波状の電圧が印加されると、圧電体が伸縮し、それぞれの超音波振動子からパルス状または連続波状の超音波が発生して、それらの超音波の合成波から、超音波ビームが形成される。
【0019】
送信された超音波ビームは、例えば、被検体の部位等の対象において反射され、超音波プローブ1の振動子アレイ11に向かって伝搬する。このように振動子アレイ11に向かって伝搬する超音波エコーは、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子により受信される。この際に、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子は、伝搬する超音波エコーを受信することにより伸縮して、電気信号である受信信号を発生させ、これらの受信信号を増幅部42に出力する。
【0020】
増幅部42は、振動子アレイ11を構成するそれぞれの超音波振動子から入力された信号を増幅し、増幅した信号をAD変換部43に送信する。AD変換部43は、増幅部42から送信された信号をデジタルの受信データに変換する。ビームフォーマ44は、AD変換部43から受け取った各受信データに対してそれぞれの遅延を与えて加算することにより、いわゆる受信フォーカス処理を行う。この受信フォーカス処理により、AD変換部43で変換された各受信データが整相加算され且つ超音波エコーの焦点が絞り込まれた音線信号が取得される。
【0021】
画像生成部21は、図3に示すように、信号処理部45、DSC(Digital Scan Converter:デジタルスキャンコンバータ)46および画像処理部47が順次直列に接続された構成を有している。
【0022】
信号処理部45は、送受信回路12から受信した音線信号に対し、本体制御部31により設定される音速値を用いて超音波の反射位置の深度に応じて距離による減衰の補正を施した後、包絡線検波処理を施すことにより、被検体内の組織に関する断層画像情報であるBモード画像信号を生成する。
【0023】
DSC46は、信号処理部45で生成されたBモード画像信号を通常のテレビジョン信号の走査方式に従う画像信号に変換(ラスター変換)する。
画像処理部47は、DSC46から入力されるBモード画像信号に階調処理等の各種の必要な画像処理を施した後、Bモード画像信号を表示制御部22およびメモリ24に送出する。以降は、画像処理部47により画像処理が施されたBモード画像信号を、超音波画像と呼ぶ。
【0024】
モニタ23は、表示制御部22の制御の下で、種々の表示を行う。モニタ23は、例えば、LCD(Liquid Crystal Display:液晶ディスプレイ)、有機ELディスプレイ(Organic Electroluminescence Display)等のディスプレイ装置を含むことができる。
【0025】
入力装置32は、検査者による入力操作を受け付け、入力された情報を本体制御部31に送出する。入力装置32は、例えば、キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッドおよびタッチパネル等の検査者が入力操作を行うための装置等により構成される。
【0026】
本体制御部31は、予め記録されたプログラム等に従って装置本体2の各部および超音波プローブ1を制御する。また、本体制御部31は、複数の定められた検査メニューを有しており、それらの検査メニューを実行するように超音波診断装置の各部を制御する。ここで、検査メニューとは、例えば被検体の直腸または膀胱等の被検体の特定の部位を検査するための定められた一連の検査手順のことをいう。
【0027】
検査メニュー選択部25は、入力装置32を介して入力されたユーザの指示に基づいて、複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択する。例えば、表示制御部22により図4に示すようなメニュー画面M1がモニタ23に表示された場合に、メニュー画面M1に含まれる複数の選択ボタンA1~A8のうち検査メニューに関連する選択ボタンが入力装置32を介してユーザによって選択されると、検査メニュー選択部25は、ユーザが選択した選択ボタンに基づいて検査メニューを選択できる。
【0028】
図4のメニュー画面M1は、血管への針の穿刺に関する検査メニューである血管穿刺メニューを選択するための選択ボタンA1、検査メニューのリストを設定するモードを選択するための選択ボタンA2、被検体の膀胱を観察して膀胱内の尿量を計測する検査メニューである尿量計測メニューを選択するための選択ボタンA3、直腸を観察する検査メニューである直腸観察メニューを選択するための選択ボタンA4、肺エコーを観察する検査メニューである肺エコー観察メニューを選択するための選択ボタンA5、超音波プローブ1の走査を開始するための選択ボタンA6、検査履歴をモニタ23に表示するモードを選択するための選択ボタンA7、および、超音波診断装置の取り扱い説明書をモニタ23に表示するモードを選択するための選択ボタンA8を含んでいる。
【0029】
また、検査メニュー選択部25は、入力装置32を介したユーザの入力操作に基づいて、2つ以上の検査メニューを選択できる。この際に、検査メニュー選択部25は、選択された2つ以上の検査メニューのうち、1つの検査メニューを主シーケンスとして選択し、残りの検査メニューを副シーケンスとして選択できる。この場合に、検査メニュー選択部25は、例えば、検査メニューを表す複数の選択ボタンA1、A3~A5のうち、2つ以上の選択ボタンが順次長押しされることにより、2つ以上の検査メニューを選択できる。検査メニュー選択部25は、さらに、最後に長押しされた選択ボタンに対応する検査メニューを主シーケンスとして選択できる。あるいは、検査メニュー選択部25は、最初に長押しされた選択ボタンに対応する検査メニューを主シーケンスとして選択することもできる。なお、図4には、尿量計測メニューを選択するための選択ボタンA3と直腸観察メニューを選択するための選択ボタンA4が選択された例が示されている。なお、長押しとは、同一の選択ボタンを数秒等の定められた時間以上選択し続けることをいう。長押しの所要時間については、適宜設定できる。
【0030】
検査実行部29は、検査制御部28による制御の下で、検査メニュー選択部25により選択された検査メニューを実行する。例えば、検査実行部29は、検査メニュー選択部25により尿量計測メニューが選択された場合に、尿量計測メニューを実行し、定められた手順により被検体の膀胱内の尿量を計測する。この際に、検査実行部29は、例えば、互いに直交する断層面を表す2方向から超音波画像を撮影するようにユーザを促し、得られた2方向からの超音波画像に基づいて、互いに直交する3つの方向に沿った膀胱の直径を計測し、膀胱を楕円体に近似してその体積を算出することにより、尿量計測を行うことができる。また、検査実行部29は、膀胱の断層面を表す1フレームのみの超音波画像に基づいて、膀胱を2軸の回転楕円体に近似してその体積を算出することにより、いわゆる近似尿量計測を行うこともできる。
【0031】
この際に、表示制御部22は、例えば図5に示すように、検査実行部29による尿量計測の結果をモニタ23に表示できる。図5には、尿量計測の結果として、互いに直交する断層面を表し且つ被検体の膀胱Jを写した超音波画像UAおよびUBと、尿量計測の計測値Nがモニタ23に表示されている。また、この際に、表示制御部22は、例えば保存ボタンEをモニタ23に表示できる。入力装置32を介してユーザにより保存ボタンEが選択されると、本体制御部31は、例えば超音波画像UAおよびUBと計測値Nを含む尿量計測の結果をメモリ24に保存する。
【0032】
検査実行部29は、例えば、検査メニュー選択部25により直腸観察メニューが選択された場合に、直腸観察メニューを実行し、定められた手順により直腸の検査を実行する。この際に、検査実行部29は、例えば、直腸が写る超音波画像を撮影するようにユーザを促し、得られた超音波画像から直腸内に存在する便を検出することができる。検査実行部29は、超音波画像から便を検出する際に、例えば、便に関する複数のテンプレート画像を記憶しており、複数のテンプレート画像を用いて超音波画像内をサーチする、いわゆるテンプレートマッチングの方法により便Kを検出できる。検査実行部29は、例えば、便が写った多数の被検体の直腸の超音波画像により学習されたいわゆる機械学習における、学習済みモデルを用いて超音波画像から便を検出することもできる。
【0033】
また、この際に、表示制御部22は、モニタ23の表示を例えば図6に示すような表示に遷移できる。この際に、モニタ23は、第1表示領域R1、第2表示領域R2および第3表示領域R3を有する。
【0034】
表示制御部22は、画像生成部21により生成された最新の超音波画像を、順次、モニタ23の第1表示領域R1に表示する。
【0035】
参考画像表示部26は、直腸を撮影した標準的な超音波画像である参考画像を記憶しており、例えば図6に示すように、参考画像URをモニタ23の第2表示領域R2において表示する。ユーザは、第1表示領域R1に表示される現在の超音波画像と第2表示領域R2に表示される参考画像URを確認して、参考画像URに類似する超音波画像が得られるように超音波プローブ1を移動しながら走査を行うことにより、被検体の直腸を容易に撮影できる。
【0036】
走査ガイド表示部27は、被検体の直腸を撮影するために超音波プローブ1の走査をガイドする走査ガイドを記憶しており、例えば図6に示すように、被検体の直腸に対する走査ガイドG1をモニタ23の第3表示領域R3に表示する。ここで、走査ガイド表示部27は、走査ガイドG1として、例えば、超音波プローブ1の直腸までの移動経路を示す動画または静止画を表示できる。ユーザは、第3表示領域R3に表示された走査ガイドG1を確認することにより、超音波プローブ1の移動経路を容易に把握して、被検体の直腸を容易に撮影できる。
【0037】
ここで、モニタ23は、図6のように、第1表示領域R1、第2表示領域R2および第3表示領域R3を有する表示において、フリーズボタンB1を含むことができる。フリーズボタンB1は、第1表示領域R1における超音波画像の連続的な表示を一時停止する、すなわち、いわゆるフリーズさせるためのボタンである。
【0038】
表示制御部22は、検査実行部29により便Kが検出された場合に、例えば図6に示す関心領域示唆線L1を超音波画像U1上に表示する等により便Kの位置を強調表示できる。関心領域示唆線L1は、検出された便Kを含む領域の存在を示唆する線であり、任意の形態を有することができるが、例えば、便Kを囲む矩形の四隅を表す4つの屈曲線からなることができる。表示制御部22は、関心領域示唆線L1を表示する他に、例えば、便Kの画像の色を周囲とは異なる色で表示する、便Kの輪郭線を表示する、便Kを点滅させる等、便Kを周囲とは異なる表示態様により強調表示することもできる。
【0039】
検査実行部29により便Kが検出された状態で、入力装置32を介してユーザによりフリーズボタンB1が選択されると、本体制御部31は、モニタ23の表示を、例えば図7に示すような表示に遷移できる。この表示では、例えば、便Kが検出された最新の超音波画像U1がモニタ23に表示され、超音波画像U1に対して便Kの性状に関するアノテーションを付与するためのアノテーションアイコンC1、C2およびC3が表示される。ユーザは、入力装置32を介してアノテーションアイコンC1、C2およびC3のうちいずれかを選択することにより、選択されたアノテーションアイコンに対応するアノテーションを超音波画像U1に付与できる。このようにして超音波画像U1に付与されたアノテーションは、超音波画像U1に関連付けてメモリ24に保存される。また、図7の表示において、モニタ23は、検出された便Kの性状がアノテーションアイコンC1、C2およびC3に対応する便Kの性状に該当しないことから超音波画像U1に対してアノテーションを付与しない指示を行うための該当なしボタンB3と、フリーズを解除して走査を再開する再スキャンボタンB4を含むこともできる。
【0040】
検査制御部28は、検査メニュー選択部25により2つ以上の検査メニューが選択された場合に、検査実行部29を制御することにより、選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させる。例えば、検査メニュー選択部25により、直腸観察メニューが主シーケンスとして選択され且つ尿量計測メニューが副シーケンスとして選択された場合に、検査制御部28は、検査実行部29に、副シーケンスの尿量計測メニュー、主シーケンスの直腸観察メニューの順に検査メニューを実行させる。
【0041】
ここで、例えば直腸の検査では、被検体の膀胱Jに一定以上の尿が溜まっている状態で超音波プローブ1を被検体の腹部に接触させることにより被検体の直腸を検査する、いわゆる経腹アプローチの方法により検査が行われることがある。経腹アプローチにおいて、超音波プローブ1から発せられる超音波は、被検体の腹部から膀胱J内の尿を通って直腸に到達する。この際に、膀胱J内の尿量が一定以上存在していないと、直腸が明瞭に観察できないことが知られている。そのため、経腹アプローチによる直腸の観察を行う前に被検体の膀胱Jを観察し、膀胱J内の尿量を確認することが好ましい。
【0042】
このように、被検体の特定の検査手順に従って部位を正確に検査するためには、別の検査手順に従う別の部位の検査を事前に行うことが望ましい場合がある。本発明の超音波診断装置では、検査制御部28が、検査実行部29を制御することにより、検査メニュー選択部25によって選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させるため操作性に優れ、且つ、例えば熟練度が低いユーザであっても正確に検査を行うことができる。
【0043】
被検体特定部30は、例えば入力装置32を介してユーザにより入力された被検体の識別情報に基づいて被検体を特定する。ここで、被検体の識別情報としては、例えば、被検体毎に設定されたID(Identifier:識別子)または被検体名等を用いることができる。
【0044】
メモリ24は、本体制御部31の制御の下で、画像生成部21により生成された超音波画像および検査実行部29により実行された検査結果等を、被検体特定部30により特定された被検体に紐付けて保存できる。
【0045】
メモリ24としては、例えば、フラッシュメモリ、HDD(Hard Disk Drive:ハードディスクドライブ)、SSD(Solid State Drive:ソリッドステートドライブ)、FD(Flexible Disk:フレキシブルディスク)、MOディスク(Magneto-Optical disk:光磁気ディスク)、MT(Magnetic Tape:磁気テープ)、RAM(Random Access Memory:ランダムアクセスメモリ)、CD(Compact Disc:コンパクトディスク)、DVD(Digital Versatile Disc:デジタルバーサタイルディスク)、SDカード(Secure Digital card:セキュアデジタルカード)、または、USBメモリ(Universal Serial Bus memory:ユニバーサルシリアルバスメモリ)等の記録メディア等を用いることができる。
【0046】
なお、画像生成部21、表示制御部22、検査メニュー選択部25、参考画像表示部26、走査ガイド表示部27、検査制御部28、検査実行部29、被検体特定部30および本体制御部31を有するプロセッサ34は、CPU(Central Processing Unit:中央処理装置)、および、CPUに各種の処理を行わせるための制御プログラムから構成されるが、FPGA(Field Programmable Gate Array:フィードプログラマブルゲートアレイ)、DSP(Digital Signal Processor:デジタルシグナルプロセッサ)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit:アプリケーションスペシフィックインテグレイテッドサーキット)、GPU(Graphics Processing Unit:グラフィックスプロセッシングユニット)、または、その他のIC(Integrated Circuit:集積回路)を用いて構成されてもよく、もしくはそれらを組み合わせて構成されてもよい。
【0047】
また、プロセッサ34の画像生成部21、表示制御部22、検査メニュー選択部25、参考画像表示部26、走査ガイド表示部27、検査制御部28、検査実行部29、被検体特定部30および本体制御部31は、部分的にあるいは全体的に1つのCPU等に統合させて構成されることもできる。
【0048】
次に、図8のフローチャートを用いて実施の形態に係る超音波診断装置が検査メニューを実行する際の動作の例を説明する。
【0049】
まず、ステップS1において、検査メニュー選択部25は、入力装置32を介して入力されたユーザの指示に基づいて、複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択する。例えば、表示制御部22により図4に示すようなメニュー画面M1がモニタ23に表示された場合に、メニュー画面M1に含まれる複数の選択ボタンA1~A8のうち検査メニューに関連する選択ボタンが入力装置32を介してユーザによって選択されると、検査メニュー選択部25は、ユーザが選択した選択ボタンに基づいて検査メニューを選択できる。
【0050】
また、検査メニュー選択部25は、入力装置32を介したユーザの入力操作に基づいて、2つ以上の検査メニューを選択できる。この際に、検査メニュー選択部25は、選択された2つ以上の検査メニューのうち、1つの検査メニューを主シーケンスとして選択し、残りの検査メニューを副シーケンスとして選択できる。この場合に、検査メニュー選択部25は、例えば、検査メニューを表す複数の選択ボタンA1、A3~A5のうち、2つ以上の選択ボタンが順次長押しされることにより、2つ以上の検査メニューを選択できる。検査メニュー選択部25は、さらに、最後または最初に長押しされた選択ボタンに対応する検査メニューを主シーケンスとして選択できる。
【0051】
次に、検査制御部28は、検査メニュー選択部25により2つ以上の検査メニューが選択されたか否かを判定する。ここで2つ以上の検査メニューが選択されたと判定された場合にステップS3に進む。また、1つの検査メニューのみが選択されたと判定された場合にステップS3を省略してステップS4に進む。
【0052】
ステップS3において、検査制御部28は、ステップS1で選択された2つ以上の検査メニューを連結する。この際に、検査制御部28は、2つ以上の検査メニューのうち主シーケンスの検査メニューを最後に実行するように2つ以上の検査メニューを連結できる。
【0053】
最後に、ステップS4において、検査実行部29は、検査制御部28による制御の下で、ステップS1で選択された検査メニューを実行する。
【0054】
ステップS3で2つ以上の検査メニューが連結された場合に、検査実行部29は、連結された検査メニューを順番通りに実行する。例えば、副シーケンスが尿量計測メニューであり且つ主シーケンスが直腸観察メニューである場合に、検査実行部29は、まず尿量計測メニューを実行し、その後で直腸観察メニューを実行する。
【0055】
例えば、経腹アプローチの方法により被検体の直腸を観察する場合には、被検体の膀胱J内の尿量が一定以上でないと直腸を明瞭に観察することが困難なことがある。そのため、直腸観察メニューを実行する前に尿量計測メニューを実行することにより、ユーザは、被検体内の尿量が一定以上であることを容易に把握して、直腸の検査を正確に行うことができる。このように、ステップS4において、ステップS3で連結された2つ以上の検査メニューが順次実行されることにより、操作性に優れ、且つ、ユーザが、被検体の検査を正確に行うことができる。
【0056】
ステップS2で1つの検査メニューのみが選択されたと判定されてステップS3が省略された場合に、ステップS4において、検査実行部29は、選択された1つの検査メニューを実行する。
【0057】
このようにしてステップS4が完了すると、図8のフローチャートに従う超音波診断装置の動作が完了する。
【0058】
以上から、実施の形態の超音波診断装置によれば、検査メニュー選択部25が、複数の定められた検査メニューから少なくとも1つの検査メニューを選択し、検査制御部28が、検査メニュー選択部25により2つ以上の検査メニューが選択された場合に、検査実行部29を制御することにより、選択された2つ以上の検査メニューを連結して連続的に実行させるため、操作性に優れ、且つ、熟練度が低いユーザであっても被検体の検査を正確に行うことができる。
【0059】
なお、送受信回路12が超音波プローブ1に備えられることが説明されているが、送受信回路12は装置本体2に備えられていてもよい。
また、画像生成部21が装置本体2に備えられることが説明されているが、画像生成部21は超音波プローブ1に備えられていてもよい。
【0060】
また、装置本体2は、いわゆる据え置き型でもよく、持ち運びが容易な携帯型でもよく、例えばスマートフォンまたはタブレット型のコンピュータにより構成される、いわゆるハンドヘルド型でもよい。このように、装置本体2を構成する機器の種類は特に限定されない。
【0061】
また、装置本体2がメモリ24を備えることが説明されているが、メモリ24は、装置本体2に外付けされたメモリであってもよい。また、超音波診断装置は、例えば、装置本体2とネットワークを介して接続されるサーバを備えることができる。この場合に、メモリ24は、装置本体2ではなくサーバに備えられていてもよい。
【0062】
また、検査メニュー選択部25が、検査メニューを表す複数の選択ボタンA1、A3~A5のうち、2つ以上の選択ボタンが順次長押しされることにより、2つ以上の検査メニューを選択することが説明されているが、検査メニュー選択部25が2つ以上の検査メニューを選択する方法は、特にこれに限定されない。例えば、表示制御部22が図示しない設定ボタンをモニタ23に表示した場合に、検査メニュー選択部25は、入力装置32を介してユーザにより設定ボタンが選択されることで、2つ以上の検査メニューを選択するモードとなり、このモードにおいてユーザに選択された全ての選択ボタンA1、A3~A5に対応する検査メニューを選択することもできる。
【0063】
また、検査制御部28は、連結された2つ以上の検査メニューのうち、副シーケンスの検査メニューが短縮して実行されるように検査実行部29を制御することもできる。この際に、検査制御部28は、入力装置32を介してユーザの入力操作に基づいて副シーケンスの検査メニューが短縮して実行されるように検査実行部29を制御することができる。具体的には、例えば、表示制御部22が、副シーケンスの検査メニューを短縮するための図示しないスキップボタンをモニタ23に表示させた場合に、検査制御部28は、入力装置32を介してユーザによりスキップボタンが選択されることをトリガとして、副シーケンスの検査メニューが短縮して実行されるように検査実行部29を制御できる。
【0064】
例えば、副シーケンスが尿量計測メニューであり且つ主シーケンスが直腸観察メニューである場合に、尿量計測メニューの実行途中、例えば、膀胱Jの互いに直交する断層面を表す2フレームの超音波画像UAおよびUBのうち一方のみが取得された状態で、ユーザが、超音波画像UAまたはUBを確認することによりを確認することで膀胱J内の尿量を把握できた等の場合に、尿量計測メニューの移行の手順を省略して直腸観察メニューに進むことができる。これにより、ユーザは、検査時間を短縮して、より円滑に検査を進めることができる。
【0065】
また、参考画像表示部26が直腸観察メニューにおいて参考画像URをモニタ23に表示すると説明されているが、参考画像表示部26は、尿量計測メニュー等の他の検査メニューにおいても、その検査メニューに応じた参考画像URをモニタ23に表示できる。また、走査ガイド表示部27も、参考画像表示部26と同様に、直腸観察メニュー以外の検査メニューにおいて、その検査メニューに応じた走査ガイドG1をモニタ23に表示できる。ユーザは、複数の検査メニューのそれぞれにおいて、参考画像URと走査ガイドG1を確認しながら円滑に検査を進めることができる。
【符号の説明】
【0066】
1 超音波プローブ、2 装置本体、11 振動子アレイ、12 送受信回路、21 画像生成部、22 表示制御部、23 モニタ、24 メモリ、25 検査メニュー選択部、26 参考画像表示部、27 走査ガイド表示部、28 検査制御部、29 検査実行部、30 被検体特定部、31 本体制御部、32 入力装置、33 画像取得部、34 プロセッサ、41 パルサ、42 増幅部、43 AD変換部、44 ビームフォーマ、45 信号処理部、46 DSC、47 画像処理部、A1~A8 選択ボタン、B1 フリーズボタン、B3 該当なしボタン、B4 再スキャンボタン、C1~C3 アノテーションアイコン、E 保存ボタン、G1 走査ガイド、J 膀胱、K 便、L1 関心領域示唆線、M1 メニュー画面、N 計測値、R1 第1表示領域、R2 第2表示領域、R3 第3表示領域、U1,UA,UB 超音波画像、UR 参考画像。
図1
図2
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図7
図8