(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050073
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】個片化体形成用積層フィルム及びその製造方法、巻回体、並びに積層体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/52 20060101AFI20240403BHJP
B32B 7/12 20060101ALI20240403BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01L21/52 E
B32B7/12
H01L25/08 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156670
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】谷口 紘平
(72)【発明者】
【氏名】中村 奏美
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 義信
(72)【発明者】
【氏名】大河原 奎佑
【テーマコード(参考)】
4F100
5F047
【Fターム(参考)】
4F100AK01C
4F100AK17A
4F100AK52A
4F100AT00A
4F100AT00E
4F100BA05
4F100CB05B
4F100CB05D
4F100DD01A
4F100EJ39A
4F100EJ94
4F100GB41
4F100JB13A
4F100JL13
5F047BA33
5F047BB03
5F047BB16
(57)【要約】
【課題】巻回された積層フィルム10を巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能な積層フィルムを提供すること。
【解決手段】積層フィルム10は、第一の面1aX及び第二の面1aYを有する第一の支持フィルム1a並びに第一の粘着剤層1bを有する粘着性フィルム1と、構造部3(フィルムD)、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aを有する積層構造部5とを備える。構造部3は、熱硬化性樹脂層D1及び剛材層D2を有する。剛材層D2は、第一の粘着剤層1b上に積層されている。第一の粘着剤層1bの表面の一部は、露出している。第一の支持フィルム1aの第二の面1aYと粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bとを貼り合わせて得られる測定試料において、第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに対する粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの90°ピール強度は、1.5N/m以下である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の面及び前記第一の面とは反対側の第二の面を有する第一の支持フィルム、並びに、前記第一の面上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層を有する粘着性フィルムと、
前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層上に離間して複数設けられた、個片化体形成用フィルムからなる構造部、第二の粘着剤層、及び第二の支持フィルムを前記第一の粘着剤層からこの順序で有する積層構造部と、
を備え、
前記構造部が、熱硬化性樹脂層と、前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する剛材層とを有し、
前記構造部における前記剛材層が前記第一の粘着剤層上に積層されており、
前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層の前記第一の支持フィルムとは反対側の表面の一部が露出しており、
前記第一の支持フィルムの前記第二の面と前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層とを貼り合わせて得られる測定試料において、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される、前記第一の支持フィルムの前記第二の面に対する前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層の粘着力が1.5N/m以下である、
個片化体形成用積層フィルム。
【請求項2】
前記第一の支持フィルムの前記第二の面が、表面処理が施された面であり、
前記表面処理が、エンボス加工、マット加工、シリコーン樹脂加工、及びフッ素樹脂加工からなる群より選ばれる少なくとも1種である、
請求項1に記載の個片化体形成用積層フィルム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の個片化体形成用積層フィルムの製造方法であって、
前記製造方法が、
前記第一の支持フィルムと、前記第一の粘着剤層と、個片化体形成用フィルム基材とをこの順序で備える第一の積層体を準備する工程と、
前記第一の積層体における前記個片化体形成用フィルム基材を型抜きし、複数の前記個片化体形成用フィルムからなる前記構造部を備える第二の積層体を作製する工程と、
前記第二の積層体の複数の前記構造部上に、前記第二の粘着剤層及び前記第二の支持フィルムがこの順序となるように積層し、複数の積層構造部を作製する工程と、
を備える、
個片化体形成用積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
巻芯と、前記巻芯に巻回された、請求項1又は2に記載の個片化体形成用積層フィルムとを備える、
巻回体。
【請求項5】
第一の面及び前記第一の面とは反対側の第二の面を有する第一の支持フィルム、並びに、前記第一の面上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層を有する粘着性フィルムと、
前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層上に離間して複数設けられた、個片化体形成用フィルムからなる構造部と、
を備え、
前記構造部が、熱硬化性樹脂層と、前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する剛材層とを有し、
前記構造部における前記剛材層が前記第一の粘着剤層上に積層されており、
前記第一の支持フィルムの前記第二の面と前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層とを貼り合わせて得られる測定試料において、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される、前記第一の支持フィルムの前記第二の面に対する前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層の粘着力が1.5N/m以下である、
積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、個片化体形成用積層フィルム及びその製造方法、巻回体、並びに積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体装置の分野において、高集積、小型化、及び高速化が求められており、半導体装置の一態様として、基板上に配置されたコントローラーチップの上に半導体チップを積層させる構造が注目を集めている。例えば、特許文献1は、コントローラダイと、コントローラダイの上に支持部材によって支持されたメモリダイとを含む半導体ダイアセンブリを開示している。特許文献1の
図1Aに図示された半導体アセンブリ100はドルメン構造を有するということができる。半導体アセンブリ100は、パッケージ基板402と、その表面上に配置されたコントローラダイ103と、コントローラダイ103の上方に配置されたメモリダイ106a,106bと、メモリダイ106aを支持する支持部材130a,130bとを備える。
【0003】
特許文献1は、支持部材(支持片)として、シリコン等の半導体材料が使用できること、より具体的には半導体ウェハをダイシングして得られる半導体材料の断片が使用できることを開示している。
【0004】
また、特許文献2は、支持部材(支持片)として、シリコン等の半導体材料に代えて、樹脂材料を主成分とする樹脂フィルムが使用できることを開示している。樹脂フィルムとして、例えば、二つの熱硬化性樹脂層と、当該熱硬化性樹脂層で挟むように配置され、当該熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する剛材層とをこの順に有する三層フィルムを例示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017-515306号公報
【特許文献2】国際公開第2020/217404号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、支持部材(支持片)を形成するための積層フィルムとして、熱硬化性樹脂層と、熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する剛材層とを有するフィルムからなる構造部を備える個片化体形成用積層フィルムの開発を進めている。
【0007】
図1は、個片化体形成用積層フィルムの一実施形態を模式的に示す平面図である。
図2(a)は、
図1の部分Eにおける拡大図であり、
図2(b)は、
図2(a)のb-b線における断面図である。個片化体形成用積層フィルム10(以下、単に、「積層フィルム10」という場合がある。)は、第一の面1aX及び第一の面1aXとは反対側の第二の面1aYを有する第一の支持フィルム1a、並びに、第一の面1aX上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層1bを有する粘着性フィルム1と、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に離間して複数設けられた、個片化体形成用フィルムD(以下、単に、「フィルムD」という場合がある。)からなる構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aを第一の粘着剤層1bからこの順序で有する積層構造部5とを備える。ここで、フィルムDは、ダイシングすることによって複数に個片化されるフィルムである。構造部3は、熱硬化性樹脂層D1と、熱硬化性樹脂層D1よりも高い剛性を有する剛材層D2とを有する。構造部3における剛材層D2は、第一の粘着剤層1b上に積層されている。粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面の一部は、構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aによって覆われておらず(構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aが配置されておらず)、露出している。なお、第二の支持フィルム2aと、第二の支持フィルム2a上に設けられた第二の粘着剤層2bとを有する積層フィルムを「ダイシングフィルム2」という場合がある。
【0008】
ところで、フィルム上に複数の積層構造部(構造部)が設けられた積層フィルム(例えば、ダイシング・ダイボンディング一体フィルム等)は、通常、巻芯に、積層構造部5の第二の支持フィルム2a側を内側にして巻回して得られる巻回体として、保管・運搬・使用が実施される。
【0009】
積層フィルム10における積層構造部5は、例えば、パンチング刃等により、個片化体形成用フィルム基材(原反)及びダイシングフィルム基材(原反)をそれぞれ所望の形状に段階的に型抜きすることによって複数形成される。個片化体形成用フィルム基材の不要部分及びダイシングフィルム基材の不要部分は、通常、除去されることから、積層フィルム10において、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面の一部は、構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aによって覆われていない(構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aが配置されていない)状態となり、露出することになる(
図1及び
図2参照)。
【0010】
本発明者らの検討によると、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面の一部が露出している状態において、積層フィルム10を巻芯に巻回すると、先に巻回された積層フィルム10の第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに、後から巻回された積層フィルム10の粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの一部が張り付く場合があることが見出された。第一の粘着剤層1bの一部が第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに張り付いてしまうと、巻き出し時において、その進行が妨げられる等の不具合が発生することがある。
【0011】
そこで、本開示は、ダイシングすることによって複数に個片化される個片化体形成用フィルムを備える個片化体形成用積層フィルムにおいて、巻回された個片化体形成用積層フィルムを巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能な個片化体形成用積層フィルムを提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らが上記課題を解決すべく検討したところ、第一の支持フィルムの第二の面に対して、表面処理を行う等により、第一の支持フィルムの第二の面対する第一の粘着剤層の粘着力を所定の範囲に調整することで、巻回された個片化体形成用積層フィルムを巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能であることを見出した。なお、フィルム上に複数の積層構造部(構造部)が設けられた積層フィルム(例えば、ダイシング・ダイボンディング一体フィルム等)においては、巻芯にフィルムを巻回する際に、積層フィルムが滑ってズレが発生し易くなることから、通常、第二の面に表面処理が実施されない事情がある。
【0013】
本開示は、[1]、[2]に記載の個片化体形成用積層フィルム、[3]に記載の個片化体形成用積層フィルムの製造方法、[4]に記載の巻回体、及び[5]に記載の積層体を提供する。
[1]第一の面及び前記第一の面とは反対側の第二の面を有する第一の支持フィルム、並びに、前記第一の面上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層を有する粘着性フィルムと、前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層上に離間して複数設けられた、個片化体形成用フィルムからなる構造部、第二の粘着剤層、及び第二の支持フィルムを前記第一の粘着剤層からこの順序で有する積層構造部とを備え、前記構造部が、熱硬化性樹脂層と、前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する剛材層とを有し、前記構造部における前記剛材層が前記第一の粘着剤層上に積層されており、前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層の前記第一の支持フィルムとは反対側の表面の一部が露出しており、前記第一の支持フィルムの前記第二の面と前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層とを貼り合わせて得られる測定試料において、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される、前記第一の支持フィルムの前記第二の面に対する前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層の粘着力が1.5N/m以下である、個片化体形成用積層フィルム。
[2]前記第一の支持フィルムの前記第二の面が、表面処理が施された面であり、前記表面処理が、エンボス加工、マット加工、シリコーン樹脂加工、及びフッ素樹脂加工からなる群より選ばれる少なくとも1種である、[1]に記載の個片化体形成用積層フィルム。
[3][1]又は[2]に記載の個片化体形成用積層フィルムの製造方法であって、前記製造方法が、前記第一の支持フィルムと、前記第一の粘着剤層と、個片化体形成用フィルム基材とをこの順序で備える第一の積層体を準備する工程と、前記第一の積層体における前記個片化体形成用フィルム基材を型抜きし、複数の前記個片化体形成用フィルムからなる前記構造部を備える第二の積層体を作製する工程と、前記第二の積層体の複数の前記構造部上に、前記第二の粘着剤層及び前記第二の支持フィルムがこの順序となるように積層し、複数の積層構造部を作製する工程とを備える、個片化体形成用積層フィルムの製造方法。
[4]巻芯と、前記巻芯に巻回された、[1]又は[2]に記載の個片化体形成用積層フィルムとを備える、巻回体。
[5]第一の面及び前記第一の面とは反対側の第二の面を有する第一の支持フィルム、並びに、前記第一の面上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層を有する粘着性フィルムと、前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層上に離間して複数設けられた、個片化体形成用フィルムからなる構造部とを備え、前記構造部が、熱硬化性樹脂層と、前記熱硬化性樹脂層よりも高い剛性を有する剛材層とを有し、前記構造部における前記剛材層が前記第一の粘着剤層上に積層されており、前記第一の支持フィルムの前記第二の面と前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層とを貼り合わせて得られる測定試料において、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される、前記第一の支持フィルムの前記第二の面に対する前記粘着性フィルムの前記第一の粘着剤層の粘着力が1.5N/m以下である、積層体。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、ダイシングすることによって複数に個片化される個片化体形成用フィルムを備える個片化体形成用積層フィルムにおいて、巻回された個片化体形成用積層フィルムを巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能な個片化体形成用積層フィルム及びその製造方法が提供される。また、本開示によれば、個片化体形成用積層フィルムを備える巻回体が提供される。さらに、本開示によれば、個片化体形成用積層フィルムを形成するために有用な積層体が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、個片化体形成用積層フィルムの一実施形態を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図2(a)は、
図1の部分Eにおける拡大図であり、
図2(b)は、
図2(a)のb-b線における断面図である。
【
図3】
図3(a)、(b)、及び(c)は、個片化体形成用積層フィルムの作製過程を模式的に示す断面図である。
【
図4】
図4(a)及び(b)は、個片化体形成用積層フィルムの作製過程を模式的に示す断面図である。
【
図5】
図5は、本開示の半導体装置の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図6】
図6(a)及び
図6(b)は、第一のチップと複数の支持片との位置関係の例を模式的に示す平面図である。
【
図7】
図7は、支持片形成用積層フィルムの一実施形態を模式的に示す断面図である。
【
図8】
図8(a)、(b)、(c)、及び(d)は、支持片の作製過程を模式的に示す断面図である。
【
図9】
図9は、基板上であって第一のチップの周囲に複数の支持片を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【
図10】
図10は、接着剤片付きチップの一例を模式的に示す断面図である。
【
図11】
図11は、基板上に形成されたドルメン構造を模式的に示す断面図である。
【
図12】
図12は、本開示の半導体装置の第二実施形態を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を適宜参照しながら、本開示の実施形態について説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。以下の実施形態において、その構成要素(ステップ等も含む)は、特に明示した場合を除き、必須ではない。各図における構成要素の大きさは概念的なものであり、構成要素間の大きさの相対的な関係は各図に示されたものに限定されない。
【0017】
本開示における数値及びその範囲についても同様であり、本開示を制限するものではない。本明細書において「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0018】
本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。また、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
【0019】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリル共重合体等の他の類似表現についても同様である。
【0020】
本明細書に例示する各成分及び材料は、特に断らない限り、一種を単独で使用してもよく、二種以上を併用して使用してもよい。
【0021】
[個片化体形成用積層フィルム]
図1及び
図2で示される積層フィルム10は、第一の面1aX及び第一の面1aXとは反対側の第二の面1aYを有する第一の支持フィルム1a、並びに、第一の面1aX上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層1bを有する粘着性フィルム1と、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に離間して複数設けられた、フィルムDからなる構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aを第一の粘着剤層1bからこの順序で有する積層構造部5とを備える。
【0022】
積層フィルム10において、ダイシングフィルム2の第二の粘着剤層2bの一部は、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bと接していてもよいし(
図2(b)参照)、接していなくてもよい。積層フィルム10を使用する際には、粘着性フィルム1は、適当なタイミングで剥がされる。
【0023】
積層フィルム10における粘着性フィルム1は、例えば、幅(長手方向と直交する方向の長さ)が300~500mmであり、全長(長手方向の長さ)が10~400mである。
【0024】
第一の支持フィルム1aとしては、例えば、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等)、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルスルフィド、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィドなどのフィルムが挙げられる。これらのフィルムは、単層フィルムであってもよく、2種以上のフィルムから構成される多層フィルムであってもよい。第一の支持フィルム1aの厚さは、例えば、1~200μm、10~100μm、又は20~50μmであってよい。
【0025】
第一の支持フィルム1aは、第一の粘着剤層1bが設けられる第一の面1aX及び第一の面1aXとは反対側の第二の面1aYを有している。第一の支持フィルム1aの第二の面1aYは、表面処理が施された面であってよい。第一の支持フィルム1aの第二の面1aYが、表面処理が施された面であることにより、第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに対する粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの粘着力をより充分に低下させることができる。
【0026】
表面処理は、エンボス加工、マット加工、シリコーン樹脂加工、及びフッ素樹脂加工からなる群より選ばれる少なくとも1種であってよい。
【0027】
エンボス加工とは、表面に凹凸のあるエンボスロールをフィルムに圧接し、エンボスロールの凹凸に対応する凹凸をフィルムの表面に形成する加工技術を意味する。エンボスロールには、その表面に模様が彫刻されている。マット加工とは、微細な砂をフィルムに投射し、凹凸をフィルムの表面に形成する加工技術を意味する。
【0028】
シリコーン樹脂加工とは、フィルムの表面にシリコーン樹脂をコーティングする加工技術を意味する。フッ素樹脂加工とは、フィルムの表面にフッ素樹脂(テフロン(登録商標)等)をコーティングする加工技術を意味する。
【0029】
第一の粘着剤層1bは、非紫外線硬化型粘着剤を含む層(非紫外線硬化型粘着剤からなる層)である。第一の粘着剤層1bは、非紫外線硬化型粘着剤層であり得る。非紫外線硬化型粘着剤は、短時間の加圧で一定の粘着性を示す粘着剤の一種であり、紫外線の照射前後で粘着性が大きく変動しない粘着剤である。非紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、天然ゴム系、合成ゴム系、アクリル樹脂系、ポリビニルエーテル樹脂系、ウレタン樹脂系、シリコーン樹脂系等の粘着剤が挙げられる。第一の粘着剤層1bの厚さは、例えば、5~20μmであってよい。
【0030】
積層フィルム10において、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面の一部は、構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aによって覆われておらず(構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aが配置されておらず)、露出している。積層フィルム10は、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面において、構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aによって覆われていない(構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aが配置されていない)露出部を有しているということができる。
【0031】
粘着性フィルム1の厚さ(第一の支持フィルム1aと第一の粘着剤層1bとの合計の厚さ)は、例えば、5~150μm、15~100μm、又は25~70μmであってよい。
【0032】
第一の支持フィルム1aの第二の面1aYと粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bとを貼り合わせて得られる測定試料において、第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに対する粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの粘着力は、1.5N/m以下である。ここで、粘着力は、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される90°ピール強度である。90°ピール強度は、例えば、以下の方法によって測定することができる。まず、第一の支持フィルム1aを幅25mm×長さ100mmで切り出して、切り出し片Aを用意する。次いで、粘着性フィルム1を幅25mm×長さ100mmで切り出して、切り出し片Bを用意する。次に、切り出し片Aの第一の支持フィルム1aの第二の面1aYと、切り出し片Bの粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bとを貼り合わせ、これを測定試料とする。次いで、測定試料の切り出し片Aの第一の支持フィルム1a側を固定した状態で、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS-1000)を用いて、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で第一の粘着剤層1bを引き剥がすことによって、90°ピール強度を測定する。第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに対する第一の粘着剤層1bの粘着力が1.5N/m以下であると、第一の粘着剤層1bと第一の支持フィルム1aの第二の面1aYとが張り付いた場合であっても、巻き出し時において、第一の粘着剤層1bと第一の支持フィルム1aの第二の面1aYとの分離が容易となり、積層フィルム10を巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能となる。粘着力は、1.2N/m以下又は1.0N/m以下であってよい。粘着力の下限は、例えば、0.1N/m以上、0.3N/m以上、又は0.5N/m以上であってよい。
【0033】
粘着性フィルム1は、市販品を用いることができる。粘着性フィルム1の市販品としては、例えば、PET75-H2120(10)(商品名、日榮新化株式会社製)、コスモタックシリーズ(商品名、株式会社コスモテック製)、ヒタレックスDTシリーズ(商品名、昭和電工マテリアルズ株式会社製)等が挙げられる。
【0034】
積層構造部5は、フィルムDからなる構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aを第一の粘着剤層1bからこの順序で有する。積層構造部5は、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に離間して複数設けられている。
【0035】
フィルムDからなる構造部3は、熱硬化性樹脂層D1と、熱硬化性樹脂層D1よりも高い剛性を有する剛材層D2とを有する。フィルムDは、二層フィルムであり得る。すなわち、構造部3は、二層であり得る。構造部3における剛材層D2は、第一の粘着剤層1b上に積層されている。
【0036】
熱硬化性樹脂層D1を構成する熱硬化性樹脂組成物は、半硬化(Bステージ)状態を経て、その後に加熱処理によって硬化物(Cステージ)状態となり得るものであってよい。熱硬化性樹脂組成物は、所望の効果がより一層得られ易いことから、エポキシ樹脂と、硬化剤と、エラストマとを含有していてもよく、必要に応じて、無機フィラー、硬化促進剤等をさらに含有していてもよい。熱硬化性樹脂層D1は、少なくとも一部が硬化した、半硬化(Bステージ)状態のものであっても、その後に加熱処理によって硬化物(Cステージ)状態となり得るものであってもよい。
【0037】
エポキシ樹脂は、硬化して接着作用を有するものであれば特に限定されない。エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂等の二官能エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂などが挙げられる。また、エポキシ樹脂としては、例えば、多官能エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、複素環含有エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂等も挙げられる。
【0038】
硬化剤としては、例えば、フェノール樹脂、エステル化合物、芳香族アミン、脂肪族アミン、酸無水物等が挙げられる。これらの中でも、硬化剤は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、フェノール樹脂であってよい。フェノール樹脂の市販品としては、例えば、DIC株式会社製のLF-4871(商品名、BPAノボラック型フェノール樹脂)、エア・ウォーター株式会社製のHE-100C-30(商品名、フェニルアラキル型フェノール樹脂)、DIC株式会社製のフェノライトKA及びTDシリーズ、三井化学株式会社製のミレックスXLC-シリーズ及びXLシリーズ(例えば、ミレックスXLC-LL)、エア・ウォーター株式会社製のHEシリーズ(例えば、HE100C-30)、明和化成株式会社製のMEHC-7800シリーズ(例えば、MEHC-7800-4S)、JEFケミカル株式会社製のJDPPシリーズ、群栄化学工業株式会社製のPSMシリーズ(例えば、PSM-4326)等が挙げられる。
【0039】
エポキシ樹脂及びフェノール樹脂の配合量は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、それぞれエポキシ当量と水酸基当量の当量比で、0.6~1.5、0.7~1.4、又は0.8~1.3であってよい。配合比がこのような範囲にあると、硬化性及び流動性の両方を充分に高水準に達成し易い傾向がある。
【0040】
エラストマとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、シリコーン樹脂、ポリブタジエン、アクリロニトリル、エポキシ変性ポリブタジエン、無水マレイン酸変性ポリブタジエン、フェノール変性ポリブタジエン、カルボキシ変性アクリロニトリル等が挙げられる。
【0041】
エラストマは、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、アクリル樹脂であってよい。アクリル樹脂は、グリシジルアクリレート又はグリシジルメタクリレート等のエポキシ基又はグリシジル基を架橋性官能基として有する官能性モノマーを重合することによって得られるエポキシ基含有(メタ)アクリル共重合体等のアクリル樹脂であってよい。これらの中でも、アクリル樹脂は、エポキシ基含有(メタ)アクリル酸エステル共重合体及びエポキシ基含有アクリルゴムであってよく、好ましくはエポキシ基含有アクリルゴムである。エポキシ基含有アクリルゴムは、アクリル酸エステルを主成分とし、主として、ブチルアクリレート、アクリロニトリル等の共重合体、エチルアクリレート、アクリロニトリル等の共重合体などのエポキシ基を有するゴムである。なお、アクリル樹脂は、エポキシ基だけでなく、アルコール性又はフェノール性水酸基、カルボキシル基等の架橋性官能基を有していてもよい。
【0042】
アクリル樹脂の市販品としては、例えば、ナガセケムテック株式会社製のSG-70L、SG-708-6、WS-023 EK30、SG-280 EK23、SG-P3溶剤変更品(商品名、アクリルゴム、重量平均分子量:80万、Tg:12℃、溶剤はシクロヘキサノン)等が挙げられる。
【0043】
アクリル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、-50~50℃であることが好ましく、-30~30℃であることがより好ましい。アクリル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、10万~300万であることが好ましく、50万~200万であることがより好ましい。ここで、Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定し、標準ポリスチレンによる検量線を用いて換算した値を意味する。なお、分子量分布の狭いアクリル樹脂を用いることによって、高弾性の個片化体を形成できる傾向がある。
【0044】
エラストマの含有量は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して、10~200質量部又は20~100質量部であってよい。
【0045】
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、ホウ酸アルミウィスカ、窒化ホウ素、結晶性シリカ、非晶性シリカ等が挙げられる。
【0046】
無機フィラーの平均粒径は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、0.005μm~1.0μm又は0.05~0.5μmであってよい。無機フィラーの表面は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、化学修飾されていてもよい。表面を化学修飾する材料としては、例えば、シランカップリング剤等が挙げられる。シランカップリング剤の官能基の種類としては、例えば、ビニル基、アクリロイル基、エポキシ基、メルカプト基、アミノ基、ジアミノ基、アルコキシ基、エトキシ基等が挙げられる。
【0047】
無機フィラーの含有量は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、熱硬化性樹脂組成物の樹脂成分(エポキシ樹脂、硬化剤、及びエラストマ)100質量部に対して、20~200質量部又は30~100質量部であってよい。
【0048】
硬化促進剤としては、例えば、イミダゾール類及びその誘導体、有機リン系化合物、第二級アミン類、第三級アミン類、第四級アンモニウム塩等が挙げられる。硬化促進剤は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、イミダゾール類であってよい。イミダゾール類としては、例えば、2-メチルイミダゾール、1-ベンジル-2-メチルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-メチルイミダゾール等が挙げられる。
【0049】
硬化促進剤の含有量は、高いシェア強度(ダイシェア強度)を達成する観点から、エポキシ樹脂及び硬化剤の合計100質量部に対して、0.04~3質量部又は0.04~0.2質量部であってよい。
【0050】
剛材層D2は、例えば、熱硬化性樹脂層D1よりも高い剛性を有する樹脂層又は熱硬化性樹脂層D1よりも高い剛性を有する金属層であってよい。当該樹脂層は、熱硬化性樹脂層D1と異なる材質からなるものであり、例えば、ポリイミド層であってよい。剛材層D2が当該樹脂層であると、ダイシングによって個片化された後において、熱硬化性樹脂層D1の熱硬化処理を実施しなくても、ピックアップ性に優れる傾向がある。当該金属層は、例えば、銅層又はアルミニウム層であってよい。剛材層D2が当該金属層であると、優れたピックアップ性に加え、樹脂材料と金属材料との光学的なコントラストにより、ピックアップ工程において優れた視認性を有する傾向がある。
【0051】
フィルムDからなる構造部3の厚さに対する熱硬化性樹脂層D1の厚さの比率(熱硬化性樹脂層D1の厚さ/構造部3の厚さ)は、0.1~0.8、0.2~0.7、又は0.2~0.6であってよい。当該比率が0.1以上であると、例えば、個片化体を配置した後の位置ずれ抑制に優れる傾向がある。当該比率が0.8以下であると、ピックアップ性に優れる傾向がある。熱硬化性樹脂層D1の厚さは、例えば、5~120μm又は10~60μmであってよい。剛材層D2の厚さは、例えば、20~80μm又は20~60μmであってよい。
【0052】
フィルムDからなる構造部3は、例えば、パンチング刃等により、個片化体形成用フィルム基材(原反)を所望の形状に型抜きした(例えば、「(プリ)カットした」、「切断した」と言い換えることもできる。)ものであり得る。構造部3の平面視における形状は、例えば、
図2(a)に示す円形であってもよく、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。構造部3の平面視における形状が円形である場合、構造部3の直径は、例えば、290~340mm又は310~335mmであってよい。
【0053】
第二の支持フィルム2aとしては、第一の支持フィルム1aで例示したフィルムと同様のものが例示できる。第二の支持フィルム2aの厚さは、例えば、1~200μm、50~170μm、又は70~130μmであってよい。
【0054】
第二の粘着剤層2bは、粘着剤を含む(粘着剤からなる)層である。第二の粘着剤層2bは、粘着剤層であり得る。粘着剤は、当該分野で一般的に使用される粘着剤を使用でき、非紫外線硬化型粘着剤又は紫外線硬化型粘着剤のいずれであってもよい。すなわち、第二の粘着剤層2bは、非紫外線硬化型粘着剤層又は紫外線硬化型粘着剤層のいずれであってもよい。非紫外線硬化型粘着剤は、第一の粘着剤層1bで例示した非紫外線硬化型粘着剤と同様のものが例示できる。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射によって、粘着性が低下する性質を有する粘着剤であり、従来公知の粘着剤を用いることができる。紫外線硬化型粘着剤としては、例えば、光反応性を有する炭素-炭素二重結合を有する樹脂等が挙げられる。より具体的には、例えば、アクリル樹脂系等の粘着剤が挙げられる。第二の粘着剤層2bの厚さは、例えば、1~100μmであってよい。
【0055】
ダイシングフィルム2の平面視における形状は、フィルムDの形状に合わせて適宜形状を調整することができる。ダイシングフィルム2は、例えば、パンチング刃等により、ダイシングフィルム基材(原反)を所望の形状に型抜きした((プリ)カットした、切断した)ものであってよい。ダイシングフィルム2の平面視における形状は、例えば、
図2(a)に示す円形であってもよく、矩形(正方形又は長方形)であってもよい。ダイシングフィルム2の平面視における形状が円形である場合、ダイシングフィルム2の直径は、例えば、290~500mm又は310~400mmであってよい。
【0056】
ダイシングフィルム2の厚さ(第二の支持フィルム2aと第二の粘着剤層2bとの合計の厚さ)は、例えば、5~200μm、15~170μm、又は30~140μmであってよい。
【0057】
積層フィルム10において、フィルムDからなる構造部3(剛材層D2)に対する粘着性フィルム1(第一の粘着剤層1b)の30°ピール強度(第一のピール強度)は、フィルムDからなる構造部3(熱硬化性樹脂層D1)に対するダイシングフィルム2(第二の粘着剤層2b)の30°ピール強度(第二のピール強度)よりも低いことが好ましい。ピール強度がこのような関係にあることにより、積層フィルム10において、ダイシングフィルム2よりも粘着性フィルム1を先に剥がし易くなる。
【0058】
第一のピール強度は、例えば、0.5N/25mm以下であってよく、0.4N/25mm以下又は0.3N/25mm以下であってもよい。第一のピール強度の下限は、例えば、0.1N/25mm以上であってよい。第一のピール強度は、以下の方法によって測定することができる。まず、積層フィルム10を準備し、これを幅25mm×長さ100mmで切り出すことによって測定試料を作製する。次いで、測定試料からダイシングフィルム2を剥がし、金属製の支持板に、測定試料のフィルムD側を固定する。測定試料を固定した状態で、測定温度25℃、剥離角度30°、及び剥離速度60mm/分の条件で粘着性フィルム1を引き剥がすことによって、第一のピール強度を測定することができる。
【0059】
第二のピール強度は、0.5N/25mm超であってよく、1.0N/25mm以上又は2.0N/25mm以上であってもよい。第二のピール強度の上限は、例えば、5.0N/25mm以下であってよい。第二のピール強度は、以下の方法によって測定することができる。まず、積層フィルム10を準備し、これを幅25mm×長さ100mmで切り出すことによって測定試料を作製する。次いで、測定試料から粘着性フィルム1を剥がし、金属製の支持板に、測定試料のフィルムD側を固定する。測定試料を固定した状態で、測定温度25℃、剥離角度30°、及び剥離速度60mm/分の条件でダイシングフィルム2を引き剥がすことによって、第二のピール強度を測定することができる。
【0060】
ダイシングフィルム2(第二の粘着剤層2b)の一部が粘着性フィルム1(第一の粘着剤層1b)と接している場合、ダイシングフィルム2(第二の粘着剤層2b)に対する粘着性フィルム1(第一の粘着剤層1b)の90°ピール強度(第三のピール強度)は、例えば、0.2N/25mm以下であってよく、0.1N/25mm以下又は0.05N/25mm以下であってもよい。第三のピール強度の下限は、例えば、0.01N/25mm以上であってよい。第三のピール強度は、以下の方法によって測定することができる。
まず、積層フィルム10を準備し、これを幅25mm×長さ200mmで切り出すことによって測定試料を作製する。次いで、金属製の支持板に、測定試料のダイシングフィルム2側を固定する。測定試料を固定した状態で、測定温度25℃、剥離角度90°、及び剥離速度50mm/分の条件で粘着性フィルムを引き剥がすことによって、第三のピール強度を測定することができる。第三のピール強度が上記範囲にあることにより、積層フィルム10から粘着性フィルム1を容易に剥離することができる。
【0061】
積層フィルム10によれば、第一の粘着剤層1bと第一の支持フィルム1aの第二の面1aYとが張り付いた場合であっても、巻き出し時において、第一の粘着剤層1bと第一の支持フィルム1aの第二の面1aYとの分離が容易となり、積層フィルム10を巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能となる。
【0062】
積層フィルム10によれば、フィルムDからなる構造部3をダイシングして個片化する際において、最表面側の熱硬化性樹脂層が存在しないことになることから、最表面側の熱硬化性樹脂層と剛材層との間での剥離が起こらず、ダイシングラインの切断面(側面)に発生する熱硬化性樹脂層に由来すると推測されるバリも低減される。これにより、個片化体形成用フィルムをダイシングして個片化する際に発生する不具合を充分に抑制することも可能となる。
【0063】
積層フィルム10は、半導体装置の製造プロセスにおいて使用されるものであってよい。積層フィルム10から形成される個片化体は、例えば、基板と、基板上に配置された第一のチップと、基板上であって第一のチップの周囲に配置された複数の支持片と、複数の支持片によって支持され且つ第一のチップを覆うように配置された第二のチップとを含むドルメン構造を有する半導体装置において、支持片として使用することができる。
【0064】
また、積層フィルム10から形成される個片化体は、例えば、半導体チップに貼り付ける等により、半導体チップの補強材として使用することもできる。積層フィルム10から形成される個片化体は、後述の半導体装置の製造方法における(A)~(C)の工程を含む方法によって製造することができる。
【0065】
[個片化体形成用積層フィルムの製造方法]
図3(a)、(b)、及び(c)、並びに、
図4(a)、(b)、及び(c)は、個片化体形成用積層フィルムの作製過程を模式的に示す断面図である。積層フィルム10の製造方法は、第一の支持フィルム1aと、第一の粘着剤層1bと、個片化体形成用フィルム基材DA(以下、単に「フィルム基材DA」という場合がある。)とをこの順序で備える第一の積層体20を準備する工程(第一の工程)と、第一の積層体20におけるフィルム基材DAを型抜きし、複数のフィルムDからなる構造部3を備える第二の積層体30を作製する工程(第二の工程)と、第二の積層体30の複数の構造部3上に、第二の粘着剤層2b及び第二の支持フィルム2aがこの順序となるように積層し、複数の積層構造部5を作製する工程(第三の工程)とを備える。なお、フィルム基材DAは、フィルムDの原反であり得る。
【0066】
第一の工程は、第一の積層体20を準備する工程である。第一の積層体20は、当該構成の積層体が得られるのであれば特に作製方法は制限されないが、第一の支持フィルム1aと、第一の支持フィルム1a上に設けられた第一の粘着剤層1bとを有する粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に、熱硬化性樹脂層D1と、剛材層D2とを有するフィルム基材DAの剛材層D2側を配置し、粘着性フィルム1とフィルム基材DAとを貼り合わせることによって得ることができる(
図3(a)参照)。
【0067】
熱硬化性樹脂層D1は、例えば、熱硬化性樹脂組成物を支持フィルム上に塗布する方法によって形成することができる。熱硬化性樹脂層D1の形成においては、熱硬化性樹脂組成物のワニス(熱硬化性樹脂ワニス)を用いてもよい。熱硬化性樹脂ワニスを用いる場合は、上記成分を溶剤中で混合又は混練して熱硬化性樹脂ワニスを調製し、得られた熱硬化性樹脂ワニスを支持フィルム上に塗布し、溶剤を加熱乾燥して除去することによって熱硬化性樹脂層D1を得ることができる。
【0068】
支持フィルムは、上記の加熱乾燥に耐えるものであれば特に限定されないが、例えば、ポリエステルフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム、ポリイミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリメチルペンテンフィルム等であってよい。支持フィルムは、2種以上を組み合わせた多層フィルムであってもよく、表面がシリコーン系、シリカ系等の離型剤などで処理されたものであってもよい。支持フィルムの厚さは、例えば、10~200μm又は20~170μmであってよい。
【0069】
混合又は混練は、通常の撹拌機、らいかい機、三本ロール、ボールミル等の分散機を用い、これらを適宜組み合わせて行うことができる。
【0070】
熱硬化性樹脂ワニスの調製に用いられる溶剤は、各成分を均一に溶解、混練、又は分散できるものであれば制限はなく、従来公知のものを使用することができる。このような溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、Nメチルピロリドン、トルエン、キシレン等が挙げられる。
【0071】
熱硬化性樹脂ワニスを支持フィルム上に塗布する方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、ナイフコート法、ロールコート法、スプレーコート法、グラビアコート法、バーコート法、カーテンコート法等を用いることができる。加熱乾燥は、使用した溶剤が充分に揮散する条件であれば特に制限されないが、50~150℃の範囲で、1~30分の範囲で行うことができる。加熱乾燥は、異なる加熱温度で異なる加熱時間で段階的に行うことができる。
【0072】
フィルム基材DAは、熱硬化性樹脂層D1と剛材層D2とを加熱されたゴムロールで貼り合わせることによって得ることができる。
【0073】
第一の積層体20は、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に、剛材層D2及び熱硬化性樹脂層D1をこの順に積層してフィルム基材DAを作製することよっても得ることができる。この場合、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bと剛材層D2とを貼り合わせた後、熱硬化性樹脂ワニスを剛材層D2に塗布することによって熱硬化性樹脂層D1を設けることができる。
【0074】
第二の工程は、第二の積層体30を作製する工程である。ここでは、作製した第一の積層体20のフィルム基材DAを所望の形状(例えば、円形)となるように、パンチング刃等により、位置L1においてフィルム基材DAの上面から方向Xで切り込みを入れ、型抜きする((プリ)カットする、切断する)ことによって、複数のフィルムDからなる構造部3を備える第二の積層体30を作製することができる(
図3(b)、(c)参照、第一のプリカット加工)。フィルム基材DAを型抜きする際の切り込みは、粘着性フィルム1の一部にまで到達していてもよい。なお、型抜きされたフィルム基材DAにおいて、不要部分は、通常、除去される。
【0075】
第二の積層体30は、第一の面1aX及び第一の面1aXとは反対側の第二の面1aYを有する第一の支持フィルム1a、並びに、第一の面1aX上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層1bを有する粘着性フィルム1と、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に離間して複数設けられた、フィルムDからなる構造部3とを備える。ここで、フィルムDは、ダイシングすることによって複数に個片化されるフィルムである。構造部3は、熱硬化性樹脂層D1と、熱硬化性樹脂層D1よりも高い剛性を有する剛材層D2とを有する。構造部3における剛材層D2は、第一の粘着剤層1b上に積層されている。第一の支持フィルム1aの第二の面1aYと粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bとを貼り合わせて得られる測定試料において、第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに対する粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの粘着力は、1.5N/m以下である。
【0076】
なお、本発明者らの検討によると、粘着性フィルム1が第一の粘着剤層1bを有することにより、第一の支持フィルム1aと剛材層D2との剥離が抑制されることが見出された。また、本発明者らの検討によると、粘着性フィルム1が第一の粘着剤層1bを有することにより、製造工程でフィルム基材DA又はフィルムDからなる構造部3に付着した異物(例えば、樹脂のカス等)を効率よく除去できることが見出された。そのため、粘着性フィルム1が第一の粘着剤層1bを有することにより、フィルム基材DAの型抜きにおける歩留まりを改善することが可能となる。異物は、例えば、積層フィルム10を使用する際に、粘着性フィルム1を剥離する際に除去され得る。剥離後の粘着性フィルム1は、通常、破棄されるため、異物は、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bに付着することにより、フィルム基材DA又はフィルムDからなる構造部3から取り除かれ、そのまま粘着性フィルム1とともに破棄されることになる。また、粘着性フィルム1が設けられることにより、フィルム基材DAの型抜きによって露出し得る第二の粘着剤層2bの保護層として機能し、例えば、搬送又は出荷の工程における第二の粘着剤層2bへの異物の付着を防止することができる。
【0077】
フィルム基材DAを所望の形状(例えば、円形)に型抜きする際には、型抜きされた所望の形状の外縁に沿って、粘着性フィルム1の表面に第一の切り込み部が形成されていてもよい。第一の切り込み部の切り込み深さは、例えば、粘着性フィルム1の厚さ未満であり、かつ25μm以下であってよい。
【0078】
第三の工程は、複数のフィルムDからなる構造部3の熱硬化性樹脂層D1上に、第二の粘着剤層2b及び第二の支持フィルム2aをこの順序で積層し、複数の積層構造部を形成する工程である(
図4(a)、(b)参照)。第二の粘着剤層2b及び第二の支持フィルム2aをこの順序で積層する方法としては、例えば、第二の支持フィルム2aと、第二の支持フィルム2a上に設けられた第二の粘着剤層2bとを有するダイシングフィルム基材2Aを、複数のフィルムDからなる構造部3の熱硬化性樹脂層D1の表面全体を覆うように配置し、配置されたダイシングフィルム基材2Aを所望の形状(例えば、円形)となるように、パンチング刃等により位置L2においてダイシングフィルム基材2Aの上面から方向Yで切り込みを入れ、型抜きする((プリ)カットする、切断する)方法(
図4(b)参照、第二のプリカット加工)等が挙げられる。ダイシングフィルム基材2Aを構造部3の熱硬化性樹脂層D1の表面に積層する場合、ダイシングフィルム基材2Aの第二の粘着剤層2bの一部は、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bと接していてもよいし(
図4(b)参照)、接していなくてもよい。また、ダイシングフィルム基材2A(ダイシングフィルム2)は、フィルムDの側面と接していてもよい。ダイシングフィルム基材2Aを型抜きする際の切り込みは、粘着性フィルム1の一部にまで到達していてもよい。
【0079】
なお、型抜きされたダイシングフィルム基材2Aにおいて、不要部分は、通常、除去される。そのため、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面の一部は、構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aによって覆われていない(構造部3、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aが配置されていない)状態となり、露出することになる(
図1及び
図2参照)。
【0080】
ダイシングフィルム基材2Aは、ダイシングフィルム2の原反であり得る。ダイシングフィルム基材2Aは、市販品を用いることができる。また、ダイシングフィルム基材2Aは、例えば、第二の粘着剤層2bを構成する粘着剤(非紫外線硬化型粘着剤又は紫外線硬化型粘着剤)のワニス(粘着剤ワニス)を調製し、粘着剤ワニスを第二の支持フィルム2a上に塗布し、次いで溶剤を加熱乾燥して除去することによって得ることができる。粘着剤ワニスを第二の支持フィルム2a上に塗布する際に使用される溶剤、粘着剤ワニスの塗布方法、溶剤の除去方法等は、例えば、上記の熱硬化性樹脂ワニスを支持フィルム上に塗布する際に使用される溶剤、粘着剤ワニスの塗布方法、溶剤の除去方法等と同様であってよい。
【0081】
ダイシングフィルム基材2Aを所望の形状(例えば、円形)に型抜きする際には、型抜きされた所望の形状の外縁に沿って、粘着性フィルム1の表面に第二の切り込み部が形成されていてもよい。第二の切り込み部の切り込み深さは、例えば、粘着性フィルム1の厚さ未満であり、かつ25μm以下であってよい。
【0082】
[巻回体]
巻回体は、巻芯と、巻芯に巻回された、上記の個片化体形成用積層フィルムとを備える。巻回体は、巻芯に、上記の個片化体形成用積層フィルムを巻回することによって得ることができる。
【0083】
巻芯の形状は、例えば、略円筒状であってよい。略円筒状の巻芯は、例えば、8~20mmの外径(長手方向と直交する断面の直径)、及び、100~240mmの長さ(長手方向の長さ)を有していてよい。巻芯の材質は、例えば、ABS(アクリロニトリル(Acrylonitrile)-ブタジエン(Butadiene)-スチレン(Styrene))樹脂等のプラスチック材料などであってよい。
等であってよい。
【0084】
[半導体装置及びその製造方法]
<第一実施形態>
図5は、本開示の半導体装置の第一実施形態を模式的に示す断面図である。
図5に示す半導体装置100は、基板40と、基板40の表面上に配置されたチップT1(第一のチップ)と、基板40の表面上であってチップT1の周囲に配置された複数の支持片DXcと、チップT1の上方に配置されたチップT2(第二のチップ)と、チップT2と複数の支持片DXcとによって挟まれている接着剤片Tcと、チップT2上に積層されたチップT3,T4と、基板40の表面上の電極(不図示)とチップT1~T4とをそれぞれ電気的に接続する複数のワイヤwと、チップT1とチップT2との隙間等に充填された封止材50とを備える。支持片DXcは、フィルムDを個片化した個片化体の硬化物であり得る。
【0085】
本実施形態においては、複数の支持片DXcと、チップT2と、支持片DXcとチップT2との間に位置する接着剤片Tcとによって基板40上にドルメン構造が構成されている。チップT1は、接着剤片Tcと離間している。支持片DXcの厚さを適宜設定することで、チップT1の上面と基板40とを接続するワイヤwのためのスペースを確保することができる。チップT1が接着剤片Tcと離間していることで、チップT1と接続されるワイヤwの上部がチップT2に接することによるワイヤwのショートを防ぐことができる。また、チップT2と接する接着剤片Tcにワイヤを埋め込む必要性がないため、接着剤片Tcを薄くできるという利点がある。
【0086】
図5に示すように、チップT1とチップT2との間の接着剤片Tcは、チップT2におけるチップT1と対面する領域Rを覆うとともに、領域RからチップT2の周縁側にまで連続的に延在している。つまり、一つの接着剤片Tcが、チップT2の領域Rを覆うとともに、チップT2と複数の支持片の間に介在し、これらを接着している。なお、
図5には、接着剤片TcがチップT2の一方の面(下面)の全体を覆うように設けられている態様を図示している。しかし、接着剤片Tcは、半導体装置100の製造過程において収縮することがあり得るため、チップT2の一方の面(下面)の全体を実質的に覆っていればよく、例えば、チップT2の周縁の一部に接着剤片Tcで覆われていない箇所があってもよい。
図5におけるチップT2の下面はチップの裏面に相当する。近年のチップの裏面は凹凸が形成されていることが多い。チップT2の裏面の実質的全体が接着剤片Tcで覆われていることで、チップT2にクラック又は割れが生じることを抑制できる。
【0087】
基板40は、有機基板であってもよく、リードフレーム等の金属基板であってもよい。基板40は、半導体装置100の反りを抑制する観点から、基板40の厚さは、例えば、90~300μmであり、90~210μmであってもよい。
【0088】
チップT1は、例えば、コントローラーチップであり、接着剤片T1cによって基板40に接着され且つワイヤwによって基板40と電気的に接続されている。平面視におけるチップT1の形状は、例えば矩形(正方形又は長方形)である。チップT1の一辺の長さは、例えば、5mm以下であり、2~5mm又は1~5mmであってもよい。チップT1の厚さは、例えば、10~150μmであり、20~100μmであってもよい。
【0089】
チップT2は、例えば、メモリチップであり、接着剤片Tcを介して支持片DXcの上に接着されている。平面視でチップT2は、チップT1よりも大きいサイズを有する。平面視におけるチップT2の形状は、例えば矩形(正方形又は長方形)である。チップT2の一辺の長さは、例えば、20mm以下であり、4~20mm又は4~12mmであってもよい。チップT2の厚さは、例えば、10~170μmであり、20~120μmであってもよい。なお、チップT3,T4も、例えば、メモリチップであり、接着剤片Tcを介してチップT2の上に接着されている。チップT3,T4の一辺の長さは、チップT2と同様であればよく、チップT3,T4の厚さもチップT2と同様であればよい。
【0090】
支持片DXcは、チップT1の周囲に空間を形成するスペーサーの役割を果たす。支持片DXcは、熱硬化性樹脂組成物の硬化物からなる層(熱硬化性樹脂層を硬化した層)及び剛材層を、基板40からこの順に備えている。なお、
図6(a)に示すように、チップT1の両側の離れた位置に、二つの支持片DXc(形状:長方形)を配置してもよいし、
図6(b)に示すように、チップT1の角に対応する位置にそれぞれ一つの支持片DXc(形状:正方形、計4個)を配置してもよい。平面視における支持片DXcの一辺の長さは、例えば、20mm以下であり、1~20mm又は1~12mmであってもよい。支持片DXcの厚さ(高さ)は、例えば、10~180μmであり、20~120μmであってもよい。
【0091】
次に、半導体装置100の製造方法について説明する。本実施形態の製造方法は、以下の(A)~(G)の工程を含む。本実施形態の製造方法は、以下の(H)の工程をさらに含んでいてもよい。
(A)第一の面1aX及び第一の面1aXとは反対側の第二の面1aYを有する第一の支持フィルム1a、並びに、第一の面1aX上に設けられた、非紫外線硬化型粘着剤を含む第一の粘着剤層1bを有する粘着性フィルム1と、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1b上に離間して複数設けられた、支持片形成用フィルムDX(以下、単に「フィルムDX」という場合がある。)からなる構造部3X、第二の粘着剤層2b、及び第二の支持フィルム2aを第一の粘着剤層1bからこの順序で有する積層構造部5Xとを備え、構造部3Xが、熱硬化性樹脂層D1と、熱硬化性樹脂層D1よりも高い剛性を有する剛材層D2とを有し、構造部3Xにおける剛材層D2が第一の粘着剤層1b上に積層されており、粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bの第一の支持フィルム1aとは反対側の表面の一部が露出しており、第一の支持フィルム1aの第二の面1aYと粘着性フィルム1の第一の粘着剤層1bとを貼り合わせて得られる測定試料において、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で測定される、第一の支持フィルム1aの第二の面1aYに対する第一の粘着剤層1bの粘着力が1.5N/m以下である、支持片形成用積層フィルム10X(以下、単に「積層フィルム10X」という場合がある。)を準備する工程(
図7参照)
(B)フィルムDXからなる構造部3Xをダイシングすることによって、第二の粘着剤層2bの表面上に複数の支持片DXaを形成する工程(
図8(b)参照)
(C)第二の粘着剤層2bから支持片DXaをピックアップする工程(
図8(d)参照)
(D)基板40上にチップT1を配置する工程
(E)基板40上であってチップT1の周囲又はチップT1が配置されるべき領域の周囲に複数の支持片DXaを配置する工程(
図9参照)
(F)チップT2と、チップT2の一方の面上に設けられた接着剤片Taとを備える接着剤片付きチップT2aを準備する工程(
図10参照)
(G)複数の支持片DXcの表面上に接着剤片付きチップT2aを配置することによってドルメン構造を構築する工程(
図11参照)
(H)チップT1とチップT2との隙間等を封止材50で封止する工程(
図5参照)
【0092】
(A)工程
(A)工程は、積層フィルム10Xを準備する工程である。積層フィルム10Xは、上記の積層フィルム10を使用することができる。このとき、フィルムDからなる構造部3が、フィルムDXからなる構造部3Xとなり、積層構造部5が、積層構造部5Xとなる。積層フィルム10Xを使用する際には、粘着性フィルム1は、適当なタイミングで剥がされる。粘着性フィルム1を剥がすタイミングは、例えば、(A)工程と(B)工程との間であってよい。
【0093】
(B)工程及び(C)工程
(B)工程は、フィルムDXからなる構造部3Xをダイシングすることによって、第二の粘着剤層2bの表面上に複数の支持片DXaを形成する工程であり、(C)工程は、第二の粘着剤層2bから支持片DXaをピックアップする工程である。
図8(a)に示すように、積層フィルム10Xから粘着性フィルム1を剥がした積層体にダイシングリングDRを貼り付ける。すなわち、積層フィルム10Xの第二の粘着剤層2bにダイシングリングDRを貼り付け、ダイシングリングDRの内側にフィルムDXからなる構造部3Xが配置されている状態にする。この状態において、フィルムDXからなる構造部3Xをダイシングによって個片化する(
図8(b)参照)。これにより、フィルムDXからなる構造部3Xから多数の支持片DXaを得ることができる。その後、第二の粘着剤層2bが紫外線硬化型粘着剤層である場合、第二の粘着剤層2bに対して紫外線を照射することにより、第二の粘着剤層2bと支持片DXaとの間の粘着力を低下させる。
図8(c)に示すように、第二の支持フィルム2aをエキスパンドすることで、支持片DXaを互いに離間させる。
図8(d)に示すように、支持片DXaを突き上げ治具42で突き上げることによって第二の粘着剤層2bから支持片DXaを剥離させるとともに、吸引コレット44で吸引して支持片DXaをピックアップする。なお、ダイシングする前のフィルムDXからなる構造部3X又はピックアップする前の支持片DXaを加熱することによって、熱硬化性樹脂層D1の硬化反応を進行させておいてもよい。ピックアップする際に支持片DXaが適度に硬化していることでピックアップ性に優れる傾向がある。個片化のための切り込みは、フィルムDXからなる構造部3Xの外縁まで形成されていることが好ましい。
【0094】
(D)工程
(D)工程は、基板40上にチップT1を配置する工程である。例えば、まず、基板40上の所定の位置に接着剤片T1cを介してチップT1を配置する。その後、チップT1はワイヤwで基板40と電気的に接続される。(D)工程は、(E)工程よりも前に行われる工程であってよく、(A)工程よりも前、(A)工程と(B)工程との間、(B)工程と(C)工程との間、又は(C)工程と(E)工程との間であってもよい。
【0095】
(E)工程
(E)工程は、基板40上であってチップT1の周囲又はチップT1が配置されるべき領域の周囲に複数の支持片DXaを配置する工程である。(E)工程を経て、
図7に示す構造体60が作製される。構造体60は、基板40と、その表面上に配置されたチップT1と、複数の支持片DXaとを備える。支持片DXaの配置は圧着処理によって行うことができる。圧着処理は、例えば、80~180℃、0.01~0.50MPaの条件で、0.5~3.0秒間にわたって実施することができる。なお、支持片DXaは、(E)工程の時点で完全に硬化して支持片DXcとなっていてもよく、この時点では完全硬化していなくてもよい。支持片DXaは、(G)工程の開始前の時点で完全硬化して支持片DXcとなっていることが好ましい。
【0096】
(F)工程
(F)工程は、チップT2と、チップT2の一方の面上に設けられた接着剤片Taとを備える接着剤片付きチップT2aを準備する工程である。接着剤片付きチップT2aは、チップT2と、その一方の表面に設けられた接着剤片Taとを備える。接着剤片付きチップT2aは、例えば、半導体ウェハ及びダイシング・ダイボンディング一体型フィルムを使用し、ダイシング工程及びピックアップ工程を経て得ることができる。
【0097】
(G)工程
(G)工程は、複数の支持片DXcの上面に接着剤片Taが接するように、チップT1の上方に接着剤片付きチップT2aを配置する工程である。具体的には、支持片DXcの上面に接着剤片Taを介してチップT2を圧着する。圧着処理は、例えば、80~180℃、0.01~0.50MPaの条件で、0.5~3.0秒間にわたって実施することができる。次に、加熱によって接着剤片Taを硬化させる。硬化処理は、例えば、60~175℃、0.01~1.0MPaの条件で、5分間以上にわたって実施することができる。これにより、接着剤片Taが硬化して接着剤片Tcとなる。この工程を経て、基板40上にドルメン構造が構築される(
図11参照)。チップT1が接着剤片付きチップT2aと離間していることで、ワイヤwの上部がチップT2に接することによるワイヤwのショートを防ぐことができる。また、チップT2と接する接着剤片Taにワイヤを埋め込む必要性がないことから、接着剤片Taを薄くできるという利点がある。
【0098】
(G)工程後であって(H)工程前に、チップT2の上に接着剤片を介してチップT3を配置し、さらに、チップT3の上に接着剤片を介してチップT4を配置する。接着剤片は上記の接着剤片Taと同様の熱硬化性樹脂組成物であればよく、加熱硬化によって接着剤片Tcとなる(
図5参照)。他方、チップT2,T3,T4と基板40とをワイヤwで電気的にそれぞれ接続する。なお、チップT1の上方に積層するチップの数は本実施形態の三つに限定されず、適宜設定することができる。
【0099】
(H)工程
(H)工程は、チップT1とチップT2との隙間等を封止材50で封止する工程である。(H)工程を経て、
図5に示す半導体装置100を得ることができる。
【0100】
<第二実施形態>
図12は、本開示の半導体装置の第二実施形態を模式的に示す断面図である。第一実施形態の半導体装置100は、チップT1が接着剤片Tcと離間している態様であるのに対して、本実施形態の半導体装置200は、チップT1が接着剤片Tcと接している態様である。つまり、接着剤片Tcは、チップT1の上面及び支持片DXcの上面に接している。例えば、フィルムDXからなる構造部3Xの厚さを適宜設定することで、チップT1の上面の位置と支持片DXcの上面の位置とを一致させることができる。
【0101】
半導体装置200においては、チップT1が基板40に対して、ワイヤボンディングではなく、フリップチップ接続されている。なお、ワイヤwが接着剤片Taに埋め込まれるような構成とすることにより、基板40にチップT1がワイヤボンディングされた態様にすることができ、チップT1が接着剤片Tcと接した態様にすることができる。接着剤片Taは、チップT2とともに接着剤片付きチップT2aを構成するものである(
図10参照)。
【0102】
図12に示すように、チップT1とチップT2との間の接着剤片Tcは、チップT2におけるチップT1と対面する領域Rを覆うとともに、領域RからチップT2の周縁側にまで連続的に延在している。このような一つの接着剤片Tcが、チップT2の領域Rを覆うとともに、チップT2と複数の支持片の間に介在し、これらを接着している。
図12におけるチップT2の下面は裏面に相当する。上記のとおり、近年のチップの裏面は凹凸が形成されていることが多い。チップT2の裏面の実質的全体が接着剤片Tcで覆われていることで、接着剤片TcにチップT1の上面が接してもチップT2にクラック又は割れが生じることを抑制できる。
【0103】
以上、本開示の実施形態について詳細に説明したが、本開示は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態においては、第二の粘着剤層2bが紫外線硬化型粘着剤層である場合を例示したが、第二の粘着剤層2bは非紫外線硬化型粘着剤層であってもよい。
【0104】
本開示の個片化体形成用積層フィルムによれば、第一の支持フィルムの第二の面に対する粘着性フィルムの第一の粘着剤層の粘着力が充分に低く、個片化体形成用積層フィルムを巻芯に巻回したときに、先に巻回された個片化体形成用積層フィルムの第一の支持フィルムの第二の面に、後から巻回された個片化体形成用積層フィルムの粘着性フィルムの第一の粘着剤層の一部が張り付いた場合であっても、巻き出す際は、容易に剥離されることが推測される。したがって、本開示の個片化体形成用積層フィルムは、ダイシングすることによって複数に個片化される個片化体形成用フィルムを備える個片化体形成用積層フィルムにおいて、巻回された個片化体形成用積層フィルムを巻き出す際の不具合を充分に抑制することが可能となる。
【実施例0105】
以下、実施例により本開示について説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0106】
(参考例1)
[粘着性フィルムの準備]
粘着性フィルムとして、コスモタックシリーズのTP-3336NS(商品名、株式会社コスモテック製)を準備した。
【0107】
[支持フィルムの表面処理(シリコーン樹脂加工)が施された面に対する粘着性フィルムの粘着剤層の粘着力(90°ピール強度)の測定]
第一の支持フィルムとして、A31B(商品名、東洋紡株式会社)を準備した。A31Bは、表面処理が施されていない第一の面、及び、表面処理(シリコーン樹脂加工)が施された第二の面を有するフィルムであり、これを用いて、所定の粘着力(90°ピール強度)を測定した。まず、第一の支持フィルムを幅25mm×長さ100mmで切り出して、切り出し片Aを用意した。次いで、粘着性フィルムを幅25mm×長さ100mmで切り出して、切り出し片Bを用意した。続いて、切り出し片Aの第一の支持フィルムの第二の面と、切り出し片Bの粘着性フィルムの第一の粘着剤層とを貼り合わせることによって、参考例1の測定試料を作製した。次いで、測定試料の切り出し片Aの第一の支持フィルム側を固定した状態で、引張試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAGS-1000)を用いて、25℃において剥離角度90°及び剥離速度50mm/分の条件で第一の粘着剤層を引き剥がすことによって、90°ピール強度を測定した。参考例1の測定試料における90°ピール強度は、1.0N/mであった。
【0108】
(参考例2)
[支持フィルムの表面処理が施されていない面に対する粘着性フィルムの粘着剤層の粘着力(90°ピール強度)の測定]
切り出し片Aの第一の支持フィルムの第一の面と、切り出し片Bの粘着性フィルムの第一の粘着剤層とを貼り合わせた以外は、参考例1と同様にして、参考例2の測定試料を作製し、90°ピール強度を測定した。参考例2の測定試料における90°ピール強度は、2.0N/mであった。
1…粘着性フィルム、1a…第一の支持フィルム、1aX…第一の面、1aY…第二の面、2…ダイシングフィルム、2A…ダイシングフィルム基材、2a…第二の支持フィルム、2b…第二の粘着剤層、3,3X…構造部、5,5X…積層構造部、10…個片化体形成用積層フィルム、10X…支持片形成用積層フィルム、20…第一の積層体、30…第二の積層体、40…基板、50…封止材、60…構造体、100,200…半導体装置、D…個片化体形成用フィルム、DA…個片化体形成用フィルム基材、DX…支持片形成用フィルム、D1…熱硬化性樹脂層、D2…剛材層、DXa…支持片、DXc…支持片(硬化物)、R…領域、T1,T2,T3,T4…チップ、T2a…接着剤片付きチップ、Ta…接着剤片、Tc…接着剤片(硬化物)。