(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050078
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】接着剤組成物及び接着体
(51)【国際特許分類】
C09J 4/02 20060101AFI20240403BHJP
C09J 11/06 20060101ALI20240403BHJP
C09J 163/00 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C09J4/02
C09J11/06
C09J163/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156679
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(72)【発明者】
【氏名】松永 昌大
(72)【発明者】
【氏名】正木 剛史
(72)【発明者】
【氏名】川守 崇司
【テーマコード(参考)】
4J040
【Fターム(参考)】
4J040EC002
4J040FA131
4J040GA05
4J040HD30
4J040HD36
4J040KA13
4J040KA15
4J040KA29
4J040MA01
4J040MA08
4J040MA10
4J040MA12
4J040MB05
(57)【要約】
【課題】充分な硬化速度を有するとともに、高いせん断強度を発現することが可能な接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】接着剤組成物が提供される。当該接着剤組成物は、(メタ)アクリレート化合物と、光ラジカル発生剤と、エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含有する。(メタ)アクリレート化合物は、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリレート化合物と、光ラジカル発生剤と、エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含有し、
前記(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む、
接着剤組成物。
【請求項2】
前記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、
請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項3】
前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、
請求項1に記載の接着剤組成物。
【請求項4】
第一の被着体と、第二の被着体と、前記第一の被着体及び前記第二の被着体を互いに接着する接着部とを備え、
前記接着部が、請求項1~3のいずれか一項に記載の接着剤組成物の硬化物を含有する、
接着体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物及び接着体に関する。
【背景技術】
【0002】
接着剤として、(メタ)アクリレート化合物と光ラジカル発生剤とを含有する接着剤が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の接着剤は、硬化速度に優れるものの、せん断強度の点で充分でなく、未だ改善の余地がある。
【0005】
そこで、本開示は、充分な硬化速度を有するとともに、高いせん断強度を発現することが可能な接着剤組成物を提供することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、[1]~[3]に記載の接着剤組成物及び[4]に記載の接着体を提供する。
[1](メタ)アクリレート化合物と、光ラジカル発生剤と、エポキシ化合物と、光酸発生剤とを含有し、前記(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物を含む、接着剤組成物。
[2]前記エポキシ化合物が、脂環式エポキシ化合物及び脂肪族エポキシ化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種を含む、[1]に記載の接着剤組成物。
[3]前記ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物が、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである、[1]又は[2]に記載の接着剤組成物。
[4]第一の被着体と、第二の被着体と、前記第一の被着体及び前記第二の被着体を互いに接着する接着部とを備え、前記接着部が、[1]~[3]のいずれかに記載の接着剤組成物の硬化物を含有する、接着体。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、充分な硬化速度を有するとともに、高いせん断強度を発現することが可能な接着剤組成物が提供される。また、本開示によれば、このような接着剤組成物を用いた接着体が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示の実施形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0009】
本明細書中、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。また、個別に記載した上限値及び下限値は任意に組み合わせ可能である。数値範囲「A~B」という表記においては、両端の数値A及びBがそれぞれ下限値及び上限値として数値範囲に含まれる。本明細書において、例えば、「10以上」という記載は、「10」と「10を超える数値」とを意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。また、例えば、「10以下」という記載は、「10」と「10未満の数値」とを意味し、数値が異なる場合もこれに準ずる。
【0010】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート、及び、それに対応するメタクリレートの少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリル酸」等の他の類似の表現においても同様である。また、「A又はB」とは、A及びBのどちらか一方を含んでいればよく、両方とも含んでいてもよい。
【0011】
以下で例示する材料は、特に断らない限り、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0012】
[接着剤組成物]
一実施形態の接着剤組成物は、(メタ)アクリレート化合物(以下、「(A)成分」という場合がある。)と、光ラジカル発生剤(以下、「(B)成分」という場合がある。)と、エポキシ化合物(以下、「(C)成分」という場合がある。)と、光酸発生剤(以下、「(D)成分」という場合がある。)とを含有する。(A)成分は、ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物(以下、「(A1)成分」という場合がある。)を含む。本実施形態の接着剤組成物は、光硬化性を示す接着剤であり得る。また、本実施形態の接着剤組成物は、一液型接着剤であり得る。
【0013】
本実施形態の接着剤組成物によれば、充分な硬化速度を有するとともに、高いせん断強度を発現することが可能となる。このような効果を奏する理由は必ずしも明らかではないが、本発明者らは、以下のように考えている。まず、接着剤組成物においては、光照射により、(A)成分のラジカル重合が進行し、これにより、速硬化性が発現していると推察される。次いで、(A)成分のラジカル重合に続いて、(B)成分の開環反応(カチオン重合)、及び、(B)成分と(A)成分の重合体との架橋化反応が進行する。一般に、(B)成分の重合体は、(A)成分の重合体よりも硬化収縮が小さい傾向にあり、(B)成分の反応が進行することによって、得られる硬化物の硬化収縮が抑制され、基材への密着性が向上することで、せん断強度が向上すると推察される。
【0014】
(A)成分:(メタ)アクリレート化合物
(A)成分は、ラジカルによって反応する(メタ)アクリロイル基を1個以上有する化合物である。(A)成分は、(A1)成分(ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物)を含む。(A1)成分は、例えば、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートであってよい。ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。(A)成分が(A1)成分を含むことにより、(B)成分と(A)成分の重合体との架橋化反応が進行し易くなり、充分な硬化速度を有するとともに、得られる硬化物の強度が向上する傾向がある。
【0015】
(A1)成分の含有量は、(A)成分の総量を基準として、20~100質量%、50~100質量%、70~100質量%、又は90~100質量%であってよい。
【0016】
(A)成分は、(A1)成分に加えて、本開示の効果を阻害しない範囲で、その他の(メタ)アクリレート化合物(以下、「(A2)成分」という場合がある。)を含んでいてもよい。その他の(メタ)アクリレート化合物としては、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリロイル基を1個有する単官能(メタ)アクリレート、ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリロイル基を2個以上有する多官能(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0017】
このような単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、tert-ブチル(メタ)アクリレート、n-ヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート;3-ブテニル(メタ)アクリレート等のアルケニル基を有するアルケニル(メタ)アクリレート;ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族基を有する(メタ)アクリレート;シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の脂環式基を有する(メタ)アクリレート;4-(メタ)アクリロイルモルホリン等の複素環基を有する(メタ)アクリレート;メトキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシオクタエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート;テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ヘキサエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、オクタプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等のポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート;シロキサン骨格を有する(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0018】
このような多官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、3-メチル-1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノール(メタ)アクリレート、エトキシ化2-メチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の脂肪族(メタ)アクリレート;エトキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールA型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化ビスフェノールF型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート、エトキシ化プロポキシ化フルオレン型ジ(メタ)アクリレート等の芳香族(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
(A2)成分の含有量は、(A)成分の総量を基準として、0~80質量%、0~50質量%、0~30質量%、又は0~10質量%であってよい。
【0020】
(A)成分((A1)成分及び(A2)成分の総量)の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、5~70質量%であってよい。(A)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、10質量%以上、15質量%以上、又は20質量%以上であってもよく、60質量%以下、50質量%以下、又は40質量%以下であってもよい。
【0021】
(B)成分:光ラジカル発生剤
(B)成分は、150~750nmの範囲内の波長を含む光又は254~405nmの範囲内の波長を含む光の照射によってラジカルを発生する成分であり得る。(B)成分は、紫外光の照射によってラジカルを発生する成分であってよい。(B)成分は、(A)成分の重合開始剤として作用する成分である。
【0022】
(B)成分は、光により分解して遊離ラジカルを発生する。つまり、(B)成分は、外部からの光エネルギーの付与によりラジカルを発生する化合物である。(B)成分は、オキシムエステル構造、ビスイミダゾール構造、アクリジン構造、α-アミノアルキルフェノン構造、アミノベンゾフェノン構造、N-フェニルグリシン構造、アシルホスフィンオキサイド構造、ベンジルジメチルケタール構造、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造等の構造を有する化合物であってよい。(B)成分は、例えば、オキシムエステル構造、α-アミノアルキルフェノン構造、及びアシルホスフィンオキサイド構造からなる群より選択される構造を有する化合物であってよく、アシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物であってもよい。
【0023】
オキシムエステル構造を有する化合物の具体例としては、1-フェニル-1,2-ブタンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-メトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-1,2-プロパンジオン-2-o-ベンゾイルオキシム、1,3-ジフェニルプロパントリオン-2-(o-エトキシカルボニル)オキシム、1-フェニル-3-エトキシプロパントリオン-2-(o-ベンゾイル)オキシム等が挙げられる。
【0024】
α-アミノアルキルフェノン構造を有する化合物の具体例としては、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-モルホリノフェニル)-ブタノン-1等が挙げられる。
【0025】
アシルホスフィンオキサイド構造を有する化合物の具体例としては、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6,-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド、ジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0026】
(B)成分の含有量は、(A)成分の総量100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部、0.3~7質量部、又は0.5~5質量部であってよい。
【0027】
(C)成分:エポキシ化合物
(C)成分は、エポキシ基を1個以上有する化合物である。(C)成分は、エポキシ基を2個以上有する化合物であってよい。(C)成分は、硬化物の耐熱性、透明性等に優れることから、脂環式エポキシ化合物(以下、「(C1a)成分」という場合がある。)及び脂肪族エポキシ化合物(以下、「(C1b)成分」という場合がある。)からなる群より選ばれる少なくとも1種を含んでいてもよい。
【0028】
(C1a)成分は、脂環式環を構成する2個の炭素原子とともに形成されるエポキシ基(例えば、エポキシシクロヘキシル基)を有する化合物である。(C1a)成分の市販品としては、例えば、セロキサイド8010、セロキサイド2021P、セロキサイド2081(商品名、いずれも株式会社ダイセル製)等が挙げられる。また、(C1a)成分は、芳香族環を有しないエポキシ化合物であってよい。
【0029】
(C1b)成分は、脂肪族基を有するエポキシ化合物である。(C1b)成分は、アルキレン基、オキシアルキレン基、及びシクロアルキレン基からなる群より選ばれる少なくとも1種の脂肪族基(連結基)を有する脂肪族ジグリシジルエーテルであってよい。また、(C1b)成分は、芳香族環を有しないエポキシ化合物であってよい。
【0030】
脂肪族ジグリシジルエーテルとしては、例えば、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル等のアルキレン基を有するジグリシジルエーテル;ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル等のオキシアルキレン基を有するジグリシジルエーテル;水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、1,4-シクロヘキサンジメタノールジグリシジルエーテル、ジグリシジル-1,2-シクロヘキサンジカルボキシレート等のシクロアルキレン基を有するジグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0031】
(C1a)成分及び(C1b)成分の含有量は、(C)成分の総量を基準として、30~100質量%、50~100質量%、70~100質量%、又は90~100質量%であってよい。
【0032】
(C)成分は、(C1a)成分及び(C1b)成分に加えて、本開示の効果を阻害しない範囲で、その他のエポキシ化合物(以下、「(C2)成分」という場合がある。)を含んでいてもよい。その他のエポキシ化合物としては、例えば、芳香族環を有するエポキシ化合物等が挙げられる。
【0033】
(C2)成分としては、例えば、フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0034】
(C2)成分の含有量は、(C)成分の総量を基準として、0~70質量%、0~50質量%、0~30質量%、又は0~10質量%であってよい。
【0035】
(C)成分((C1a)成分、(C1b)成分、及び(C2)成分の総量)の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、30~95質量%であってよい。(C)成分の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、40質量%以上、50質量%以上、又は60質量%以上であってもよく、90質量%以下、85質量%以下、又は80質量%以下であってもよい。
【0036】
(D)成分:光酸発生剤
(D)成分は、150~750nmの範囲内の波長を含む光又は254~405nmの範囲内の波長を含む光の照射によってカチオン重合を開始させる酸を発生する成分であり得る。(D)成分は、紫外光の照射によって酸を発生する成分であってよい。(D)成分は、(C)成分の重合開始剤として作用する成分である。
【0037】
(D)成分としては、スルホニウム塩、ホスホニウム塩、アンモニウム塩、ジアゾニウム塩、ヨードニウム塩、アニリニウム塩等のオニウム塩などが挙げられる。オニウム塩のアニオンとしては、例えば、BF4
-、BR4
-(Rは、2以上のフッ素原子又は2以上のトリフルオロメチル基で置換されたフェニル基を示す。)、PF6
-、SbF6
-、AsF6
-、SO4R-(Rは、アルキル基を示す。)等が挙げられる。
【0038】
(D)成分の市販品としては、例えば、CPI-100P、CPI-110P、CPI-101A、CPI-200K、CPI-210S(いずれもサンアプロ株式会社製)、UVI-6990、UVI-6992、UVI-6976(いずれもダウ・ケミカル日本株式会社製)、SP-150、SP-152、SP-170、SP-172、SP-300(いずれも株式会社ADEKA製)等が挙げられる。
【0039】
(D)成分の含有量は、(C)成分の総量100質量部に対して、例えば、0.1~10質量部、0.3~7質量部、又は0.5~5質量部であってよい。
【0040】
(A)成分及び(C)成分は、接着剤組成物の主成分であり得る。(A)成分及び(C)成分の総量の含有量は、接着剤組成物の全量を基準として、60質量%以上、70質量%以上、80質量%以上、85質量%以上、90質量%以上、又は95質量%以上であってよい。
【0041】
接着剤組成物は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、例えば、カップリング剤、酸化防止剤、光増感剤等が挙げられる。
【0042】
カップリング剤は、例えば、シランカップリング剤であってよい。シランカップリング剤は、例えば、加水分解性シリル基と、(メタ)アクリレート化合物又はエポキシ化合物のいずれかと反応し得る官能基とを有する化合物であってよい。加水分解性シリル基は、例えば、ケイ素原子と、当該ケイ素原子に結合している1~3個のアルコキシ基とを有する基である。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基の炭素数は、例えば、1~4個であってよい。官能基としては、例えば、1級アミノ基、2級アミノ基等のアミノ基、エポキシ基、メルカプト基、(メタ)アクリロイル基などが挙げられる。なお、本明細書において、加水分解性シリル基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物、並びに、加水分解性シリル基及びエポキシ基を有する化合物は、シランカップリング剤に分類される。
【0043】
シランカップリング剤の市販品としては、例えば、KBM-303、KBM-402、KBM-403、KBE-402、KBE-403、KBM-4803、KBM-502、KBM-503、KBE-502、KBE-503、KBM-5103、KBM-5803、KBM-602、KBM-603、KBM-903、KBE-903、KBE-9103P、KBM-573、KBM-575、KBM-802、KBM-803(商品名、信越化学工業株式会社製)が挙げられる。
【0044】
シランカップリング剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、0.1~10質量%、0.2~8質量%、又は0.5~5質量%であってよい。
【0045】
酸化防止剤としては、例えば、ベンゾキノン、ハイドロキノン等のキノン誘導体、4-メトキシフェノール、4-t-ブチルカテコール等のフェノール誘導体(ヒンダードフェノール誘導体)、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等のアミノキシル誘導体、テトラメチルピペリジルメタクリレート等のヒンダードアミン誘導体などが挙げられる。
【0046】
酸化防止剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、0.1~10質量%であってよい。
【0047】
光増感剤としては、例えば、ベンゾフラビン、アントラセン、ピレン、チオキサントン、ベンゾフェノン、アントラキノン、カンファーキノン等が挙げられる。
【0048】
光増感剤の含有量は、(A)成分及び(C)成分の総量を基準として、0.1~10質量%であってよい。
【0049】
接着剤組成物は、(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分、並びに、その他の成分を混合(又は混練)することによって調製することができる。混合は、通常の撹拌機、自公転ミキサー等の分散機を適宜、組み合わせて行うことができる。また、混合においては、適宜、真空脱気等によって脱泡処理を施してもよい。
【0050】
接着剤組成物の25℃における粘度は、塗布性及び密着性の観点から、50~5000mPa・sであってよい。粘度は、60mPa・s以上又は70mPa・s以上であってもよく、3000mPa・s以下又は1000mPa・s以下であってもよい。接着剤組成物の25℃における粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、製品名:VISCOMETER-TV22、適用コーンプレート型ロータ:3°×R17.65)を用いて測定される25℃における粘度を意味する。
【0051】
接着剤組成物は、各種被着体に対する接着性に優れる接着部(接着剤層)を形成することができる。接着部は、接着剤組成物を所定の位置に配置し、配置された接着剤組成物に対して光照射することによって得ることができる。接着部は、接着剤組成物の硬化物を含有する。光照射は、接着剤組成物に対して直接行ってもよく、透明樹脂、ガラス等を介して行ってもよい。
【0052】
光照射の光は、150~750nmの範囲内の波長を含む光又は254~405nmの範囲内の波長を含む光であってよく、紫外光であってもよい。
【0053】
光照射の光源としては、例えば、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED光源等が挙げられる。光照射の積算光量は、適宜設定することができ、例えば、100~5000mJ/cm2であってよい。
【0054】
光照射の雰囲気は、特に制限されないが、例えば、空気雰囲気、又は、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気であってよい。
【0055】
接着剤組成物の硬化物の全光線透過率(400~700nm)は、90%以上であってよく、92%以上又は95%以上であってもよい。接着剤組成物の硬化物の全光線透過率は、JIS K 7375:2008に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定される値を意味する。全光線透過率は、例えば、NDH-5000(製品名、日本電色工業株式会社製)等の市販の装置を用いて測定することができる。
【0056】
接着剤組成物の硬化物のヘーズ(400~700nm)は、5%以下であってよく、3%以下又は1%以下であってもよい。接着剤組成物の硬化物のヘーズは、JISK7136:2000に規定される方法に準拠して、市販の曇り度計(濁度計)を用いて測定される値を意味する。ヘーズは、例えば、NDH-5000(製品名、日本電色工業株式会社製)等の市販の装置を用いて測定することができる。
【0057】
[接着体]
一実施形態の接着体は、第一の被着体と、第二の被着体と、第一の被着体及び第二の被着体を互いに接着する接着部とを備える。接着部は、上記の接着剤組成物の硬化物を含有する。
【0058】
第一の被着体及び第二の被着体としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)樹脂、PC(ポリカーボネート)樹脂、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、アクリル樹脂、透明樹脂等の有機材料;鉄鋼、ステンレス鋼、金属(アルミニウム、銅、ニッケル、クロム等)単体又はこれら金属の合金、ガラス、シリコンウエハ等の無機材料;木材;ゴムなどが挙げられる。また、第一の被着体1及び第二の被着体2としては、上記プラスチックと上記無機材料とが複合化された材料も挙げられる。第一の被着体1又は第二の被着体2のいずれか一方は、光照射の観点から、透明樹脂又はガラスであってよい。
【0059】
第一の被着体及び第二の被着体の厚さは、例えば、0.1~2.0mm、0.1~1.0mm、又は0.1~0.5mmであってよい。
【0060】
接着体は、例えば、第一の被着体上に接着剤組成物を塗布して、接着剤組成物を含有する接着部を形成する工程と、接着部前駆体上に、第二の被着体を配置して積層体を作製する工程と、積層体の接着部に対して光照射することによって、接着剤組成物の硬化物を含有する接着部を形成する工程と含む方法によって得ることができる。
【0061】
接着剤組成物は、ナイフコーター、ロールコーター、アプリケーター、コンマコーター、ダイコーター、ディスペンサー等を用いて塗布することができる。
【0062】
積層体の接着部に対する光照射条件(光の波長、光源、積算光量等)は、上記の光照射条件(光の波長、光源、積算光量等)と同様であってよい。
【0063】
接着剤組成物の硬化物を含有する接着部の厚さは、例えば、0.01~1.0mm、0.01~0.5mm、又は0.01~0.2mmであってよい。
【実施例0064】
以下、実施例により本開示を具体的に説明するが、本開示はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0065】
[接着剤組成物の調製]
表1に示す量(質量部)の(A)成分、(B)成分、(C)成分、及び(D)成分を自公転ミキサー(5分/1500rpm)で混合して、実施例1、2及び比較例1~8の接着剤組成物を調製した。
【0066】
なお、各原料の詳細は以下のとおりである。
(A)成分:(メタ)アクリレート化合物
・(A1)成分:ヒドロキシ基を有する(メタ)アクリレート化合物
A1-1:4HBA(4-ヒドロキシブチルアクリレート、大阪有機化学工業株式会社製)
A1-2:HEMA(2-ヒドロキシエチルメタクリレート、富士フイルム和光純薬株式会社製)
・(A2)成分:ヒドロキシ基を有しない(メタ)アクリレート化合物
A2-1:ACMO(アクリロイルモルホリン、KJケミカルズ株式会社製)
A2-2:TMPEOTA(エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート、ダイセル・オルネクス株式会社製、EBECRYL160S)
(B)成分:光ラジカル発生剤
B-1:ビス(2,4,6,-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキサイド(商品名:Omnirad819、IGM Resins B.V.社製)
(C)成分:エポキシ化合物
・(C1a)成分:脂環式エポキシ化合物
C1a-1:3’,4’-エポキシシクロヘキシルメチル 3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート(商品名:セロキサイド2021P、株式会社ダイセル製)
・(C1b)成分:脂肪族エポキシ化合物
C1b-1:ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル(商品名:デナコールEX211、ナガセケムテックス株式会社製)
(D)成分:光酸発生剤
D-1:CPI-110P(商品名、サンアプロ株式会社製)
【0067】
[接着剤組成物の評価]
実施例1、2及び比較例1~8の接着剤組成物を用いて、以下の評価を行った。
【0068】
(粘度の測定)
接着剤組成物の25℃における粘度は、E型粘度計(東機産業株式会社製、製品名:VISCOMETER-TV22、適用コーンプレート型ロータ:3°×R17.65)に、サンプルが0.8~1.0mLとなるようにセットした後、回転数10rpmの条件で測定した。結果を表1に示す。
【0069】
(硬化速度及び貯蔵弾性率の測定)
回転レオメーター(Anton Paar社製、製品名:MCR301、測定治具:ガラスプレート及び直径12mmφアルミプレート)を用いて、周波数1Hz、測定温度25℃、治具間距離50μmの条件下で経過時間に対する貯蔵弾性率の変化を測定し、貯蔵弾性率が0.1MPaに達した時間を接着剤組成物の硬化速度とした。なお、測定開始から30秒間は、接着剤組成物を硬化させるために、キセノンランプ(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、30mW/cm2の条件で接着剤組成物に対してガラスプレートの下側から光を照射した。貯蔵弾性率については、測定開始から300秒経過後の貯蔵弾性率を接着剤組成物の硬化物の貯蔵弾性率(25℃)とした。結果を表1に示す。
【0070】
(せん断強度の測定)
寸法が幅5mm×5mm、厚さ50μmとなるように、スライドガラスに厚さ50μmのスペーサーフィルムを配置し、接着剤組成物をスライドガラス上に塗布した。塗布した接着剤組成物の上に、幅7mm×7mm、厚さ1.0mmのガラスチップを配置し、キセノンランプ(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、30mW/cm2、30秒の条件で接着剤組成物に対して光を照射した。せん断強度は、ボンドテスター(Nordson社製、製品名:DAGE4000)を用いて、光の照射を終了してから270秒経過した後のものを測定サンプルとして、せん断速度180mm/minの条件で測定した。結果を表1に示す。
【0071】
(全光線透過率の測定)
接着剤組成物の硬化物の全光線透過率は、JIS K 7375:2008に規定される方法に準拠して、NDH-5000(製品名、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。測定サンプルは、以下の手順によって作製した。まず、寸法が幅50mm×50mm、厚さ200μmとなるように、離型フィルムに厚さ200μmのスペーサーフィルムを配置し、接着剤組成物を離型フィルム上に塗布した。次いで、キセノンランプ(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、30mW/cm2、30秒の条件で接着剤組成物に対して光を照射し、光の照射を終了してから270秒経過した後のものを測定サンプルとした。また、ベースラインには基材として用いるガラスを用いた。結果を表1に示す。
【0072】
(ヘーズの測定)
接着剤組成物の硬化物のヘーズは、JISK7136:2000に規定される方法に準拠して、NDH-5000(製品名、日本電色工業株式会社製)を用いて測定した。測定サンプルは、以下の手順によって作製した。まず、寸法が幅50mm×50mm、厚さ200μmとなるように、離型フィルムに厚さ200μmのスペーサーフィルムを配置し、接着剤組成物を離型フィルム上に塗布した。次いで、キセノンランプ(浜松ホトニクス株式会社製)を用いて、30mW/cm2、30秒の条件で接着剤組成物に対して光を照射し、光の照射を終了してから270秒経過した後のものを測定サンプルとした。また、ベースラインには基材として用いるガラスを用いた。結果を表1に示す。
【0073】
【0074】
表1に示すとおり、実施例1、2の接着剤組成物は、比較例1、2に比べて、貯蔵弾性率が0.1MPaに到達するまでの時間が短く、比較例3~8に比べて、せん断強度が高かった。以上より、本開示の接着剤組成物が、充分な硬化速度を有するとともに、高いせん断強度を発現することが可能であることが確認された。