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特開2024-50147感光性樹脂組成物、硬化物、遮光パターン付基材及びその製造方法並びに画像表示装置及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050147
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】感光性樹脂組成物、硬化物、遮光パターン付基材及びその製造方法並びに画像表示装置及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/038 20060101AFI20240403BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240403BHJP
   G03F 7/029 20060101ALI20240403BHJP
   C08F 8/14 20060101ALI20240403BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20240403BHJP
   C08G 75/045 20160101ALI20240403BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240403BHJP
   C08F 220/28 20060101ALI20240403BHJP
   C08F 212/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
G03F7/038 501
G03F7/004 501
G03F7/029
C08F8/14
C08F290/12
C08G75/045
G03F7/20 501
C08F220/28
C08F212/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156814
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100169454
【弁理士】
【氏名又は名称】平野 裕之
(74)【代理人】
【識別番号】100129296
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 博昭
(72)【発明者】
【氏名】古園 圭俊
(72)【発明者】
【氏名】澤木 琢
(72)【発明者】
【氏名】倉本 拓樹
【テーマコード(参考)】
2H197
2H225
4J030
4J100
4J127
【Fターム(参考)】
2H197AA22
2H197CA02
2H197CA03
2H197CA04
2H197CA05
2H197CA07
2H197HA04
2H197JA22
2H225AC33
2H225AC43
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC49
2H225AC72
2H225AD07
2H225AN38P
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2H225AN72P
2H225BA05P
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2H225BA16P
2H225BA35P
2H225CA21
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J030BA03
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(57)【要約】      (修正有)
【課題】高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができる感光性樹脂組成物等を提供する。
【解決手段】アルカリ可溶性バインダーポリマー、エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー、着色剤、光重合開始剤を含有し、特定の構造を有するアルカリ可溶性バインダーポリマーを含み、アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量が250~400g/モルである、感光性樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ可溶性バインダーポリマーと、
エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーと、
着色剤と、
光重合開始剤とを含有し、
前記アルカリ可溶性バインダーポリマーが、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)、下記式(3)で表される構成単位(c)、及び、下記式(4)で表される構成単位(d)を含み、
前記アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量が250~400g/モルである、感光性樹脂組成物。
【化1】

(前記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表す。)
【化2】

(前記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。)
【化3】

(前記式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【化4】

(前記式(4)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
【請求項2】
前記アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が25~125mgKOH/gである、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項3】
多官能チオール化合物をさらに含み、前記多官能チオール化合物が、1分子中に3個以上のメルカプト基を有する、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項4】
全固形分中の前記着色剤の含有率が15質量%以下である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項5】
前記光重合性モノマーが1分子中に3個以上の官能基を有し、前記3個以上の官能基が、前記エチレン性不飽和基及び水酸基を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項6】
前記着色剤が有機顔料である、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項7】
前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、請求項1に記載の感光性樹脂組成物。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
【請求項9】
基材上に、請求項1~7のいずれか一項に記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、
前記基材上に設けられた前記感光性樹脂層を露光して部分硬化層を形成する露光工程と、
前記部分硬化層を加熱する加熱工程と、
前記部分硬化層をアルカリ現像することにより遮光パターンを形成する現像工程と
を備える、遮光パターン付き基材の製造方法。
【請求項10】
前記感光性樹脂層の前記基材からの高さが5.0μm以上である、請求項9に記載の遮光パターン付き基材の製造方法。
【請求項11】
請求項9に記載の遮光パターン付き基材の製造方法により得られる遮光パターン付き基材。
【請求項12】
請求項11に記載の遮光パターン付き基材を含む、画像表示装置。
【請求項13】
請求項9に記載の遮光パターン付き基材の製造方法により遮光パターン付き基材を形成する遮光パターン付き基材形成工程と、
前記基材上にマイクロLEDを実装するマイクロLED実装工程と、
を備える画像表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記基材上にマイクロLEDを形成するマイクロLED形成工程と、
請求項9に記載の遮光パターン付き基材の製造方法により遮光パターン付き基材を形成する遮光パターン付き基材形成工程と、
を備える画像表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、感光性樹脂組成物、硬化物、遮光パターン付基材及びその製造方法並びに画像表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
テレビ、サイネージ、スマートウォッチ、スマートフォン、AR機器、VR機器などの画像表示装置は、マトリクス状に配置される複数の発色部と、これら複数の発色部を仕切る遮光パターンとを備える。このような遮光パターンは、隣接する発色部同士間のクロストーク(「混色」と呼ばれることもある)を抑制するためのものであり、感光性樹脂組成物を用いて形成されるのが一般的である。具体的には、遮光パターンは、基材上に感光性樹脂組成物を塗布して感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層を部分的に露光して部分硬化層を形成し、現像液を用いて露光による硬化部をパターンとして現像することによって得られる。例えば下記特許文献1では、感光性樹脂組成物として、色材、分散剤、アルカリ可溶性樹脂、光重合開始剤を含む感光性樹脂組成物により、優れた遮光性等を遮光パターンに付与することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2015/046178号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、次世代の画像表示装置として、マイクロLEDディスプレイが注目されている。マイクロLEDディスプレイは、発色部としてマイクロLEDを使用するものである。マイクロLEDは、量子効率が高いため長寿命及び低消費電力を可能とし、自発光型素子であるため広視野角及び高輝度を可能とすることから、マイクロLEDディスプレイへの適用が期待されている。
【0005】
しかし、特許文献1に記載の感光性樹脂組成物は以下に示す課題を有していた。
すなわち、上記特許文献1に記載の感光性樹脂組成物は、当該感光性樹脂組成物を用いて基材上に遮光パターンを形成する場合に発色部をマイクロLEDにすると、遮光パターンが高い光学濃度を有する場合、遮光パターンにおいて、解像性の点で改善の余地を有していた。また、上記特許文献1に記載の感光性樹脂組成物は、当該感光性樹脂組成物を用いて基材上に高い光学濃度を有する遮光パターンを形成すると、遮光パターンを高温高湿下に放置した場合の遮光パターンの厚さの減少の抑制、すなわち信頼性の点でも改善の余地を有していた。
【0006】
本開示は、上記課題に鑑みてなされたものであり、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができる感光性樹脂組成物、硬化物、遮光パターン付基材及びその製造方法並びに画像表示装置及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために本開示の一側面は、下記[1]~[14]に記載の感光性樹脂組成物、硬化物、遮光パターン付基材及びその製造方法、並びに画像表示装置及びその製造方法を提供する。
[1]アルカリ可溶性バインダーポリマーと、エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーと、着色剤と、光重合開始剤とを含有し、前記アルカリ可溶性バインダーポリマーが、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)、下記式(3)で表される構成単位(c)、及び、下記式(4)で表される構成単位(d)を含み、前記アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量が250~400g/モルである、感光性樹脂組成物。
【化1】

(前記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表す。)
【化2】

(前記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。)
【化3】

(前記式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【化4】

(前記式(4)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
[2]前記アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が25~125mgKOH/gである、[1]に記載の感光性樹脂組成物。
[3]多官能チオール化合物をさらに含み、前記多官能チオール化合物が、1分子中に3個以上のメルカプト基を有する、[1]又は[2]に記載の感光性樹脂組成物。
[4]全固形分中の前記着色剤の含有率が15質量%以下である、[1]~[3]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[5]前記光重合性モノマーが1分子中に3個以上の官能基を有し、前記3個以上の官能基が、前記エチレン性不飽和基及び水酸基を含む、[1]~[4]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[6]前記着色剤が有機顔料である、[1]~[5]のいずれかにに記載の感光性樹脂組成物。
[7]前記光重合開始剤が、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含む、[1]~[6]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物。
[8][1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を硬化させてなる硬化物。
[9]基材上に、[1]~[7]のいずれかに記載の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層を形成する感光性樹脂層形成工程と、前記基材上に設けられた前記感光性樹脂層を露光して部分硬化層を形成する露光工程と、前記部分硬化層を加熱する加熱工程と、前記部分硬化層をアルカリ現像することにより遮光パターンを形成する現像工程とを備える、遮光パターン付き基材の製造方法。
[10]前記感光性樹脂層の前記基材からの高さが5.0μm以上である、[9]に記載の遮光パターン付き基材の製造方法。
[11][9]又は[10]に記載の遮光パターン付き基材の製造方法により得られる遮光パターン付き基材。
[12][11]に記載の遮光パターン付き基材を含む、画像表示装置。
[13][9]又は[10]に記載の遮光パターン付き基材の製造方法により遮光パターン付き基材を形成する遮光パターン付き基材形成工程と、前記基材上にマイクロLEDを実装するマイクロLED実装工程と、を備える画像表示装置の製造方法。
[14]前記基材上にマイクロLEDを形成するマイクロLED形成工程と、[9]又は[10]に記載の遮光パターン付き基材の製造方法により遮光パターン付き基材を形成する遮光パターン付き基材形成工程と、を備える画像表示装置の製造方法。
【0008】
本開示の感光性樹脂組成物によれば、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができる。
【0009】
本開示の感光性樹脂組成物により上記効果が得られる理由については以下のとおりであると推測される。
すなわち、本開示の、アルカリ可溶性バインダーポリマー、エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー、光重合開始剤及び着色剤を含む感光性樹脂組成物を基材上に塗布して感光性樹脂層を形成し、感光性樹脂層に対して基材と反対側から部分的に露光する際、感光性樹脂層の露光部において基材から離れた部分には光が十分に到達する。このため、光重合開始剤の存在下、光により、アルカリ可溶性バインダーポリマーと光重合性モノマー、及び、光重合性モノマー同士が反応して十分に硬化する。一方、感光性樹脂層中の着色剤の濃度が大きく、感光性樹脂層の厚さが大きいと、感光性樹脂層の露光部において基材から近い部分には、着色剤の存在により光が到達しにくい。そのため、光重合開始剤の存在下でも、アルカリ可溶性バインダーポリマーと光重合性モノマーとの反応、及び、光重合性モノマー同士の反応が起こりにくく、露光時には硬化が不十分となり易い。しかし、感光性樹脂層の露光後に得られる部分硬化層を加熱すると、バインダーポリマーの二重結合当量が250~400g/モルであることで、露光後でも、アルカリ可溶性バインダーポリマーと光重合性モノマーとの反応、及び、光重合性モノマー同士の反応が適度に進行して硬化しやすくなる。その結果、感光性樹脂層がその厚さ方向に沿って均一に硬化されることとなる。このため、感光性樹脂層の露光後に得られる部分硬化層をアルカリ現像液で現像する際、非硬化部は、アルカリ可溶性バインダーポリマーがアルカリ現像液で溶解されることで溶解され、露光による硬化部については、その硬化不足に起因する現像液による溶解又は膨潤が抑制される。その結果、得られる遮光パターンにおいて優れた解像性が得られる。また、アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量が250~400g/モルであり、アルカリ可溶性バインダーポリマーが、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)を有することで露光により適度に架橋されるため、高温高湿環境下に遮光パターンが高温高湿環境下に置かれても、遮光パターンの膜厚減少が抑制される。以上のことから、本開示の感光性樹脂組成物により上記効果が得られるのではないかと推測される。
【0010】
また、上記[9]の遮光パターン付き基材の製造方法によれば、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を有する遮光パターン付き基材を製造することができる。
【0011】
また、上記[12]の画像表示装置の製造方法によれば、遮光パターン付き基材の製造方法により、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を有する遮光パターン付き基材を製造することができる。このため、基材上に遮光パターン及びマイクロLEDを有する画像表示装置において、隣接するマイクロLEDからの光によるクロストークが抑制されるとともに、マイクロLEDの実装密度を向上させることもできる。その結果、高画質でかつ高解像度の画像表示装置を製造することができる。
【0012】
また、上記[13]の画像表示装置の製造方法によれば、遮光パターン付き基材の製造方法により、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を有する遮光パターン付き基材を製造することができる。このため、基材上に遮光パターン及びマイクロLEDを有する画像表示装置において、隣接するマイクロLEDからの光によるクロストークが抑制されるとともに、形成されるマイクロLEDに合せて遮光パターンを形成させることもできる。その結果、高画質でかつ高解像度の画像表示装置を製造することができる。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができる感光性樹脂組成物、硬化物、遮光パターン付基材及びその製造方法、並びに画像表示装置及びその製造方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本開示に係る遮光パターン付き基材の製造方法の実施形態の感光性樹脂層形成工程を示す部分断面図である。
図2】本開示に係る遮光パターン付き基材の製造方法の実施形態の露光工程を示す部分断面図である。
図3図2の露光工程で得られる第2積層体を示す部分断面図である。
図4】本開示に係る遮光パターン付き基材の製造方法の実施形態の加熱工程を示す部分断面図である。
図5】本開示に係る遮光パターン付き基材の製造方法の実施形態の現像工程を示す部分断面図である。
図6図5の遮光パターン付き基材を示す平面図である。
図7】本開示に係る画像表示装置の製造方法の実施形態のマイクロLED実装工程を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、場合により図面を参照しつつ、本開示を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本開示は以下の実施形態に限定されるものではない。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル酸」とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はそれに対応するメタクリレートを意味する。
【0016】
<感光性樹脂組成物及びその硬化物>
本開示の感光性樹脂組成物は、(A)アルカリ可溶性のバインダーポリマー(以下、(A)成分ということもある)、(B)エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマー(以下、(B)成分ということもある)、(C)着色剤(以下、(C)成分ということもある)、及び(D)光重合開始剤(以下、(D)成分ということもある)とを含有する。ここで、バインダーポリマーは、下記式(1)で表される構成単位(a)、下記式(2)で表される構成単位(b)、下記式(3)で表される構成単位(c)、及び、下記式(4)で表される構成単位(d)を含み、バインダーポリマーの二重結合当量は250~400g/モルである。感光性樹脂組成物は、(E)多官能チオール化合物(以下、(E)成分ということもある)を含有してもよい。
【化5】

(上記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Xは、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表す。)
【化6】

(上記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Yは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。)
【化7】

(上記式(3)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。)
【化8】

(上記式(4)中、R及びRはそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基を表す。)
本開示の感光性樹脂組成物によれば、この感光性樹脂組成物を用いて形成される、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができる。
また、本開示の硬化物は、上述した感光性樹脂組成物を硬化させてなるものである。
本開示の硬化物によれば、硬化物が遮光パターンとして使用される場合に、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができる。
【0017】
(A)アルカリ可溶性バインダーポリマー
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、上記式(1)で表される構成単位(a)、上記式(2)で表される構成単位(b)、上記式(3)で表される構成単位(c)、及び、上記式(4)で表される構成単位(d)を含む。
【0018】
構成単位(a)を表す式(1)におけるXは、置換基を有してもよい脂環式炭化水素基を表す。脂環式炭化水素基の炭素原子数は、7~20であればよい。
置換基としては、例えばフルオロ、クロロ、ブロモ等のハロゲン原子、ヒドロキシ基などが挙げられる。
脂環式炭化水素基としては、例えば、アダマンチル基、トリシクロデシル基、イソボルニル基、シクロヘキシル基が挙げられる。
構成単位(a)は、共重合によりアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、脂環式炭化水素基含有重合性モノマーを用いることにより導入することができる。
脂環式炭化水素基含有重合性モノマーは、例えば、下記一般式(1A)で表される。
CH=C(R)-COOX…(1A)
【0019】
上記一般式(1A)で表される脂環式炭化水素基含有重合性モノマーとしては、例えば、アダマンチル(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。これらの脂環式炭化水素基含有重合性モノマーは、単独で用いてもよいし、又は2種以上を用いてもよい。
【0020】
構成単位(b)を表す式(2)におけるYは、置換基を有してもよい芳香族基を表す。芳香族基とは、芳香環を有していればよく、例えば-P-Qで表される。ここで、Pは単結合又は-COO-で表され、Qは、置換基を有してもよい芳香族炭化水素基を表す。
芳香族炭化水素基としては、例えばフェニル基、ナフチル基などのアリール基、ベンジル基などのアラルキル基、スチリル基が挙げられる。
構成単位(b)は、共重合によりアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、芳香族炭化水素基含有重合性モノマーを用いることにより導入することができる。
芳香族炭化水素基含有重合性モノマーは、下記一般式(2A)で表される。
CH=C(R)-Y …(2A)
【0021】
上記一般式(2A)で表される芳香族炭化水素基含有重合性モノマーとしては、例えば、ベンジル(メタ)クリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート等の芳香族炭化水素基含有(メタ)アクリレート、スチレン等の芳香族ビニル化合物などが挙げられる。これらの芳香族炭化水素基含有重合性モノマーは、単独で用いてもよいし、又は2種以上を用いてもよい。
【0022】
構成単位(c)は、共重合によりアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、(メタ)アクリル酸を用いることにより導入することができる。(メタ)アクリル酸は、反応性が高く、入手が容易である。
【0023】
構成単位(d)は、例えばアルカリ可溶性バインダーポリマーを製造するときに用いる重合性モノマーとして、下記式(4A)で表される重合性モノマーを用いることにより導入することができる。
【化9】

構成単位(d)は、構成単位(c)が有するカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを付加させることにより導入することもできる。
【0024】
上記アルカリ可溶性バインダーポリマーは、エチレン性不飽和基を有する。このため、露光時には、感光性樹脂層の露光部のうち基材から離れた部分で、アルカリ可溶性バインダーポリマーが、光重合性モノマーと反応して硬化がより十分に進行する。また、感光性樹脂層の露光部のうち感光性樹脂層の露光部において基材から近い部分でも、感光性樹脂層の露光後に得られる部分硬化層の加熱時に、アルカリ可溶性バインダーポリマーが、光重合性モノマーと反応して硬化がより十分に進行する。
【0025】
アルカリ可溶性バインダーポリマーにおいては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(a)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又は、1モル%以上であってよい。構成単位(a)の割合は30モル%以下、29モル%以下、又は28モル%以下であってよい。
【0026】
アルカリ可溶性バインダーポリマーにおいては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(b)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、0.1モル%以上、0.5モル%以上、又は、1.0モル%以上であってよい。構成単位(b)の割合は20モル%未満、19モル%以下、又は18モル%以下であってよい。構成単位(b)の割合が20モル%未満であると、遮光パターンを高温高湿環境下に放置した場合でもライン幅の減少を抑制できる傾向にある。
【0027】
アルカリ可溶性バインダーポリマーにおいては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(c)の割合は、0モル%より大きければ特に制限されるものではないが、1モル%以上、2モル%以上、又は、3モル%以上であってよい。構成単位(c)の割合は35モル%以下、34モル%以下、又は33モル%以下であってよい。
【0028】
アルカリ可溶性バインダーポリマーにおいては、上記構成単位(a)、構成単位(b)、構成単位(c)及び構成単位(d)の合計を基準(100モル%)とした場合に、構成単位(d)の割合は、二重結合当量を250~400の範囲にすることができる範囲であれば特に制限されるものではないが、45モル%以上、47モル%以上、又は、49モル%以上であってよい。構成単位(d)の割合は85モル%以下、83モル%以下、又は81モル%以下であってよい。
【0029】
アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量は250~400g/モルである。アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量が250g/モル以上であると、二重結合当量が250g/モル未満である場合に比べて、感光性樹脂組成物において粘着性が生じにくくなり、有用なアルカリ可溶性バインダーポリマーが得られやすくなる。また、アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量が400g/モル以下であると、二重結合当量が400g/モルを超える場合に比べて解像性がより高くなるか、又は信頼性がより高くなる。
アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量は260g/モル以上であってよく、270g/モル以上であってもよく、280g/モル以上であってよい。アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量は390g/モル以下であってよく、380g/モル以下であってもよく、370g/モル以下であってよい。
アルカリ可溶性バインダーポリマーの二重結合当量は、重合性不飽和結合のモル数当たりの重合体の質量であり、モノマーの使用量に基づいて算出される。
【0030】
アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価は、特に制限されるものではないが、25mgKOH/g以上であってよく、30mgKOH/g以上であってもよい。アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が25mgKOH/g以上であると、露光時の露光量が低くても遮光パターンの解像性を向上させることができる。
アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価は、125mgKOH/g以下であってよく、120mgKOH/g以下であってもよい。アルカリ可溶性バインダーポリマーの固形分酸価が125mgKOH/g以下であることで、遮光パターンの解像性をより向上させることができる。
固形分酸価は、アルカリ可溶性バインダーポリマー1g中に存在する酸を中和するのに必要な水酸化カリウムのmg数を意味する。
【0031】
アルカリ可溶性バインダーポリマーの重量平均分子量は、機械強度及びアルカリ現像性のバランスを図る観点から、3,000~30,000であってよく、3,500~25,000であってもよく、4,000~20,000であってもよい。露光後の耐現像液性に優れる点では、重量平均分子量が、4,000以上であってよい。また、現像時間の観点からは、重量平均分子量は、20,000以下であってよい。但し、上記現像性は、固形分酸価や水酸基価ならびに樹脂骨格にも大きく影響するため、アルカリ可溶性バインダーポリマーの重量平均分子量は、上記の範囲に特に限定されるものではない。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー法(GPC)により測定され、標準ポリスチレンを用いて作成した検量線により換算された値である。
【0032】
アルカリ可溶性バインダーポリマーは、1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0033】
(B)光重合性モノマー
光重合性モノマーは、エチレン性不飽和基を有する。
【0034】
エチレン性不飽和基を有する光重合性モノマーとしては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させで得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、(メタ)アクリル酸アルキルエステルなどが挙げられる。
【0035】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、エチレン基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレン基の数が2~14であり、プロピレン基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、プロピレン基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリアククリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0036】
上記ウレタンモノマーとしては、例えば、β位にヒドロキシル基を有する(メタ)アクリルモノマーとイソホロンジイソシアネート、2,6-トルエンジイソシアネート、2,4-トルエンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物との付加反応物、トリス[(メタ)アクリロキシテトラエチレングリコールイソシアネート]ヘキサメチレンイソシアヌレート、EO変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、EO,PO変性ウレタンジ(メタ)アクリレートなどが挙げられる。なお、「EO」はエチレンオキサイドを示し、EO変性された化合物はエチレンオキサイド基のブロック構造を有する。また、「PO」はプロピレンオキサイドを示し、PO変性された化合物はプロピレンオキサイド基のブロック構造を有する。
【0037】
光重合性モノマーにおいて1分子中の官能基の数は2個以上又は3個以上であってよい。なお、官能基数が2個以上の光重合性モノマーと、官能基数が3個以上の光重合性モノマーの2種以上の光重合性モノマーを併用しても良い。
【0038】
光重合性モノマーにおいて1分子中の官能基の数が3個以上である場合、3個以上の官能基がすべてエチレン性不飽和基であってもよいが、3個以上の官能基がエチレン性不飽和基のほかにさらに水酸基を含んでよい。この場合、感光性樹脂層の露光後に得られる部分硬化層に対する現像性がより向上する。また、現像時における部分硬化層の露光による硬化部の現像液による膨潤を抑制することができ、感光性樹脂組成物の解像性をより向上させることもできる。
【0039】
なお、1分子中の官能基の数は、26個以下又は5個以下であってよい。
【0040】
光重合性モノマーは、上述した化合物を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0041】
感光性樹脂組成物中における光重合性モノマーの含有割合は、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対して、5~50質量部、又は、5~30質量部であってよい。光重合性モノマーの含有割合が5質量部以上であると、感光性樹脂層の光硬化性が良好になる傾向にあり、50質量部以下であると、感光性樹脂組成物を用いて基材上に感光性樹脂層を形成した際に、感光性樹脂層が露光前の形状保持性に優れる傾向にある。
【0042】
(C)着色剤
着色剤としては、顔料及び染料が挙げられる。顔料は、有機顔料でも無機顔料でもよいが、有機顔料であってよい。顔料が有機顔料である場合、有機顔料は紫外線を透過させることが可能となるため、無機顔料を用いる場合に比べて、露光時に、光を感光性樹脂層の表面から十分に深い位置まで到達させることができ、露光部の硬化不足をより抑制できる。このため、現像時の露光による硬化部の溶解又は膨潤をより抑制でき、遮光パターンの解像性をより向上させることができる。着色剤は、2種以上を含有してもよい。
【0043】
有機顔料としては、ラクタムブラック、ペリレンブラック、アニリンブラックなどが挙げられる。
【0044】
無機顔料としては、カーボンブラック、チタンブラックなどが挙げられる。
【0045】
染料としては、ロイコ染料などが挙げられる。
【0046】
全固形分中の着色剤の含有率は0質量%より大きければ特に制限されるものではないが、形成する遮光パターンの遮光性を向上させる観点からは、4質量%以上、又は、6質量%以上であってよい。但し、全固形分中の着色剤の含有率は15質量%以下、12質量%以下又は4質量%以下であってよい。全固形分中の着色剤の含有率は15質量%以下であると、感光性樹脂組成物を用いて形成される感光性樹脂層の露光時において、表面からの光の到達深さをより大きくすることができ、露光部の硬化不足を抑制できる。このため、現像液による現像時に露光による硬化部が溶解したり膨潤したりすることが十分に抑制される。特に、全固形分中の着色剤の含有率は4質量%以下であると、遮光パターンを高温高湿下に放置した後でも、遮光パターンの厚さの現象を抑制することができる傾向にある。
【0047】
(D)光重合開始剤
光重合開始剤は、アルカリ可溶性バインダーポリマーと光重合性モノマーとの反応、及び、光重合性モノマー同士の反応を開始させる化合物であり、光重合開始剤としては、使用する露光機の光波長等に応じて適宜選択することが可能であり、光ラジカル重合開始剤、光カチオン重合開始剤等の公知のものを利用することができる。光重合開始剤は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0048】
光ラジカル重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、N,N’-テトラアルキル-4,4’-ジアミノベンゾフェノン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)-ブタノン-1、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノ-プロパノン-1、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4’-ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン、及び4-メトキシ-4’-ジメチルアミノベンゾフェノン等の芳香族ケトン類、アルキルアントラキノン、及びフェナントレンキノン等のキノン類、ベンゾイン、及びアルキルベンゾイン等のベンゾイン化合物、ベンゾインアルキルエーテル、及びベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル化合物、ベンジルジメチルケタール等のベンジル誘導体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)イミダゾール二量体、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体、2,4-ジ(p-メトキシフェニル)-5-フェニルイミダゾール二量体、及び2-(2,4-ジメトキシフェニル)-4,5-ジフェニルイミダゾール二量体等の2,4,5-トリアリールイミダゾール二量体、N-フェニルグリシン、N-フェニルグリシン誘導体、及び9-フェニルアクリジン等のアクリジン誘導体、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン 2-(O-ベンゾイルオキシム)等のオキシムエステル、7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン系化合物、2,4-ジエチルチオキサントン等のチオキサントン系化合物、並びに、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド等のアシルホスフィンオキサイド系化合物が挙げられる。
【0049】
中でも、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、フォトブリーチング機能を有するため、露光により分解した後、光を吸収しにくくなる。したがって、露光時に、時間の経過とともに、光を感光性樹脂層の表面から十分に深い位置まで到達させることができるため、露光部の硬化不足を抑制できる。このため、現像時の露光による硬化部の溶解又は膨潤を抑制でき、遮光パターンの解像性をより向上させることができる。
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、アシルホスフィンオキサイド基(>P(=O)-C(=O)-基)を有するものであり、例えば、(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,6-ペンチルホスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド(製品名:IRGACURE-TPO、BASF社製)、エチル-2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネイト、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド(製品名:IRGACURE-819、BASF社製)、(2,5-ジヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、(p-ヒドロキシフェニル)ジフェニルホスフィンオキサイド、ビス(p-ヒドロキシフェニル)フェニルホスフィンオキサイド、トリス(p-ヒドロキシフェニル)ホスフィンオキサイド等が挙げられる。
【0050】
光カチオン重合開始剤としては、活性エネルギー線を照射したときにルイス酸を放出するオニウム塩が用いられてよい。このようなオニウム塩の例としては、第VIIa族元素の芳香族スルホニウム塩、第VIa族元素の芳香族オニウム塩、第Va族元素の芳香族オニウム塩等を挙げることができる。具体的には、例えば、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、テトラフルオロホウ酸トリフェニルフェナシルホスホニウム、ヘキサフルオロアンチモン酸トリフェニルスルホニウム、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニオ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジ4’-ヒドロキシエトキシフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロアンチモネート、ビス-[4-(ジフェニルスルフォニォ)フェニル]スルフィドビスジヘキサフルオロフォスフェート、及びテトラフルオロホウ酸ジフェニルヨードニウムが挙げられる。
【0051】
感光性樹脂組成物における光重合開始剤の含有割合は、光感度と内部の光硬化性とを両立させる観点から、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対して、2.0~15.0質量部、3.0~12.0質量部、又は4.0~10.0質量部であってよい。
【0052】
(E)多官能チオール化合物
感光性樹脂組成物は、多官能チオール化合物をさらに含んでよい。多官能チオール化合物は、感光性樹脂組成物を露光して得られる感光性樹脂層を加熱すると、多官能チオール化合物がラジカル連鎖反応を起こすことで、露光後でも、光重合性モノマー同士、光重合性モノマーと多官能チオール化合物のメルカプト基との反応を適度に進行させて感光性樹脂層を硬化しやすくするものである。また、多官能チオール化合物は、部分硬化層の露光部において十分な架橋構造を形成させつつ、遮光性パターンと基材10との間に加わる応力を緩和させて遮光パターンの基材への密着性を維持し、信頼性を向上させるためのものでもある。多官能チオール化合物は、1分子中にメルカプト基を2個以上含んでよく、3個以上含んでもよく、4個以上含んでもよい。多官能チオール化合物が、1分子中にメルカプト基を3個以上含む場合、露光時における露光量が低くても遮光パターンにおける解像性をより向上させることができる。
1分子中のメルカプト基の数は、6個以下であってよい。この場合、遮光パターンの残膜性とパターン幅を制御しやすくなる。
【0053】
多官能チオール化合物としては、1級多官能チオール及び2級多官能チオールが挙げられる。中でも、2級多官能チオールは、高い貯蔵安定性を有し、臭気を抑制することができる。
【0054】
2級多官能チオールとしては、例えばペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、1,3,5-トリス[2-(3-メルカプトブタノイルオキシ)エチル]-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオンが挙げられる。
【0055】
1級多官能チオールとしては、例えばトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)、トリス-[(3-メルカプトプロピオニルオキシ)-エチル]-イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトプロピオネート)、ジペンタエリスリトールヘキサキス(3-メルカプトプロピオネート)が挙げられる。
【0056】
多官能チオール化合物は、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0057】
アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの総量100質量部に対する多官能チオール化合物の含有割合は、0.05~10.0質量部、0.1~8.0質量部、又は0.2~6.0質量部であってよい。多官能チオール化合物の含有割合が0.05~10.0質量部であると、光感度と内部の光硬化性とを両立させやすくなる。
【0058】
光重合性モノマー及び多官能チオール化合物の総量100質量部に対する多官能チオール化合物の含有割合は、1.0質量部以上、3.0質量部以上、又は5.0質量部以上であってよい。この場合、露光時における露光量が低くても遮光パターンの解像性を効果的に向上させることができる。
多官能チオール化合物の含有割合は、60.0質量部以下、50.0質量部以下、30.0質量部以下であってよい。この場合、遮光パターンの解像性をより向上させることができ、パターン幅の広がりを抑制することもできる。
【0059】
(その他の成分)
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、メタノール、エタノール、アセトン、メチルエチルケトン、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、トルエン、N,N-ジメチルホルムアミド、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、乳酸エチル等の溶剤をさらに含んでよい。これらはそれぞれ単独で又は2種以上を混合して用いることができる。溶媒の量は、例えば感光性樹脂組成物中の全固形分濃度が10~60質量%程度になるように適宜決定すればよい。
【0060】
感光性樹脂組成物は、必要に応じて、可塑剤、充填剤、消泡剤、難燃剤、安定剤、密着性付与剤、レベリング剤、剥離促進剤、酸化防止剤、香料、熱架橋剤等の添加剤をさらに含んでよい。これらはそれぞれ、単独で又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。これらの添加剤の添加量は、アルカリ可溶性バインダーポリマー及び光重合性モノマーの合計100質量部に対して各々0.01~20質量部であってよい。
【0061】
<遮光パターン付き基材及びその製造方法>
次に、本開示の一側面に係る遮光パターン付き基材の製造方法の実施形態について図1図6を参照しながら説明する。図1図2図4及び図5は、遮光パターン付き基材の製造方法の一連の工程を示す模式断面図、図3は、図2の露光工程で得られる第2積層体を示す部分断面図、図6は、図5の遮光パターン付き基材を示す平面図である。
本実施形態の遮光パターン付き基材の製造方法は、基材10上に、上述した本実施形態の感光性樹脂組成物を用いて感光性樹脂層20を形成して第1積層体100を得る感光性樹脂層形成工程(図1参照)と、基材10上に設けられた感光性樹脂層20を、露光(感光性樹脂層2に部分的に光Lを照射)して部分硬化層30を形成し、第2積層体110を得る露光工程(図2及び図3参照)と、第2積層体110の部分硬化層30を加熱する加熱工程(図4参照)と、第2積層体110の部分硬化層30をアルカリ現像し、必要に応じて後硬化工程を行うことにより遮光パターン21を形成して遮光パターン付き基材120を得る現像工程(図5参照)とを備える。
【0062】
(感光性樹脂層形成工程)
感光性樹脂層形成工程における基材10としては、例えば、ガラス基板、サファイア基板、ポリカーボネート、シクロオレフィンポリマ等のプラスチック基板、及び、TFT又はCMOSなどの回路基板などが挙げられる。
【0063】
感光性樹脂層20の基材10からの高さは、用途により異なるが、塗工性及び光硬化性を両立する観点から、乾燥後の厚さで1~200μm、又は、10~100μmであってよい。
但し、本開示は、感光性樹脂層20の基材10からの高さが5μm以上である場合に有効であり、10μm以上である場合に特に有効である。感光性樹脂層20の基材10からの高さが5μm以上である場合、露光時に光が感光性樹脂層20のうち基材10側の部分にまで十分に到達しなくなるところ、そのような場合でも、本開示の感光性樹脂組成物は、感光性樹脂層20の厚さ方向に沿って均一に硬化することができる。但し、感光性樹脂層20の基材10からの高さは、遮光パターン21の解像性を向上させやすくする理由から、50μm以下、又は、30μm以下であってよい。
【0064】
感光性樹脂層20は、基材10上に、上述した感光性樹脂組成物の溶液(感光性樹脂層形成用塗布液)を塗布し、乾燥することにより形成できる。但し、この場合、感光性樹脂層20中の残存有機溶剤量は、後の工程での有機溶剤の拡散を防止するため、2質量%以下であってよい。
【0065】
塗工は、例えば、ロールコート法、コンマコート法、グラビアコート法、エアーナイフコート法、ダイコート法、バーコート法、スプレーコート法、スピンコート法等の公知の方法で行うことができる。塗工後、有機溶剤等を除去するための乾燥は、70~150℃で1~30分間程度、熱風対流式乾燥機等で行うことができる。
【0066】
(露光工程)
露光工程における露光方法としては、感光性樹脂層20の所定部分に光(活性光線)を照射するために、複数の開口を有するマスクMを通して光(活性光線)を画像状に照射する方法(マスク露光法)が挙げられる(図2参照)。活性光線の光源としては、公知の光源、例えば、カーボンアーク灯、水銀蒸気アーク灯、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、キセノンランプ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものが用いられる。また、Arイオンレーザ、半導体レーザ等の紫外線、可視光などを有効に放射するものも用いることができる。更に、写真用フラッド電球、太陽ランプ等の可視光を有効に放射するものも用いることができる。また、レーザ露光法等を用いた直接描画法により活性光線を画像状に照射する方法を採用してもよい。この場合、マスクMは不要となる。
【0067】
露光工程における露光量は、使用する装置及び感光性樹脂層20の組成によって異なるが、光硬化性に優れる点では、30mJ/cm以上、又は50mJ/cm以上であってよい。露光工程における露光量は、解像性の点では500mJ/cm以下、又は400mJ/cm以下であってよい。
【0068】
露光は、空気中、真空中等で行うことができ、露光の雰囲気は特に制限されない。
【0069】
露光後は、感光性樹脂層20は部分硬化層30となる。具体的には、感光性樹脂層20のうち露光された部分は、遮光パターン21としての硬化部となり、感光性樹脂層20のうち露光されなかった部分は、非硬化部22となる(図3参照)。
【0070】
(加熱工程)
加熱工程は、部分硬化層30を加熱することにより、遮光パターン21のうち基材10側の部分を特に光重合性モノマー同士又は光重合性モノマーと多官能チオール化合物のメルカプト基との硬化反応を適度に進行させるために行う工程である。部分硬化層30を加熱することにより多官能チオール化合物がラジカル連鎖反応を起こすことで、露光後でも、光重合性モノマー同士、光重合性モノマーと多官能チオール化合物のメルカプト基との反応が適度に進行して硬化しやすくなる。
【0071】
加熱工程において、部分硬化層30を加熱する場合、加熱手段としては、ホットプレートH(図4参照)、箱型乾燥機、リフロー炉、クリーンオーブンなどを用いることができる。
【0072】
加熱工程において、温度は、70~150℃、又は85~130℃であってよい。加熱時間は1~30分、又は、2~20分であってよい。
【0073】
(現像工程)
現像工程におけるアルカリ現像は、例えば、アルカリ性水溶液等の現像液を用いて、スプレー、揺動浸漬、ブラッシング、スクラッビング等の公知の方法により行われる。
【0074】
現像液は、アルカリ可溶性バインダーポリマーを溶解可能な溶液であればよく、例えばアルカリ性水溶液等の安全かつ安定であり、操作性が良好なものが用いられる。上記アルカリ性水溶液の塩基としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム又はアンモニウムの水酸化物等の水酸化アルカリ、リチウム、ナトリウム、カリウム若しくはアンモニウムの炭酸塩又は重炭酸塩等の炭酸アルカリ、リン酸カリウム、リン酸ナトリウム等のアルカリ金属リン酸塩、ピロリン酸ナトリウム、ピロリン酸カリウム等のアルカリ金属ピロリン酸塩などが用いられる。
【0075】
また、現像に用いるアルカリ性水溶液としては、0.1~5質量%水酸化テトラアンモニウム水溶液、0.1~5質量%炭酸ナトリウム水溶液、0.1~5質量%炭酸カリウム水溶液、0.1~5質量%水酸化ナトリウム水溶液、0.1~5質量%四ホウ酸ナトリウム水溶液等が用いられてよい。また、現像に用いるアルカリ性水溶液のpHは9~11の範囲であってよく、その温度は、感光性樹脂層20の現像性に合わせて調節される。また、アルカリ性水溶液中には、表面活性剤、消泡剤、現像を促進させるための少量の有機溶剤等を混入させてもよい。
【0076】
また、アルカリ水溶液と一種以上の有機溶剤とからなる水系現像液を用いることができる。ここで、アルカリ水溶液に含まれる塩基としては、上述の塩基以外に、例えば、ホウ砂、メタケイ酸ナトリウム、エタノールアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、2-アミノ-2-ヒドロキシメチル-1、3-プロパンジオール、1、3-ジアミノプロパノール-2、及びモルホリンが挙げられる。有機溶剤としては、例えば、ジアセトンアルコール、アセトン、酢酸エチル、炭素数1~4のアルコキシ基をもつアルコキシエタノール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、及びジエチレングリコールモノブチルエーテルが挙げられる。これらは、1種を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0077】
上述した現像液は、必要に応じて、2種以上を併用してもよい。
【0078】
現像の方式としては、例えば、ディップ方式、パドル方式、スプレー方式、ブラッシング、スラッビング等が挙げられる。これらのうち、高圧スプレー方式を用いると、遮光パターンの解像性が向上する。
現像時間は、特に制限されるものではなく、例えば3秒以上であってよく、5秒以上であってもよい。現像時間が5秒以上であると、過現像が起こりにくくなり、遮光パターンのライン幅及び厚さの製造バラつきが小さくなる。現像時間は、300秒以下であってよく、200秒以下であってもよい。
なお、図6は、現像工程により得られた遮光パターン付き基材120を示す平面図である。図6に示すように、遮光パターン21は、複数の開口(貫通孔)を有している。図6に示すSが、開口の幅、すなわちスペース幅を表し、Lは、遮光パターン21のライン幅を表す。
【0079】
(後硬化工程)
後硬化工程は、現像後に、硬化部を硬化させる工程である。
後硬化工程における露光方法としては、硬化部に光(活性光線)を照射する方法が挙げられる。活性光線の光源としては、露光工程で用いられる光源と同様の光源を使用することができる。
【0080】
後硬化工程における露光量は、使用する装置及び硬化部の組成によって異なるが、光硬化性に優れる点では、100mJ/cm以上、又は300mJ/cm以上であってよい。後硬化工程における露光量は、10000mJ/cm以下、又は5000mJ/cm以下であってよい。
【0081】
後硬化工程は、空気中、真空中等で行うことができ、後硬化工程の雰囲気は特に制限されない。
【0082】
後硬化工程が行われる場合には、後硬化工程により、さらに硬化された硬化部が最終的に遮光パターン21となる。
【0083】
<画像表示装置及びその製造方法>
次に、本開示の画像表示装置及びその製造方法の実施形態について図7を参照しながら説明する。図7は、本開示に係る画像表示装置の製造方法の実施形態のマイクロLED実装工程を示す部分断面図である。
【0084】
本実施形態の画像表示装置の製造方法は、上述した遮光パターン付き基材の製造方法により遮光パターン付き基材120を形成する遮光パターン付き基材形成工程と、基材10上に発光素子としてのマイクロLED40を実装するマイクロLED実装工程とを備える(図7参照)。上記画像表示装置の製造方法により、画像表示装置200が得られる。
【0085】
遮光パターン付き基材形成工程において、基材10としては、回路基板が用いられる。回路基板は、マイクロLED40が実装され、電気的に接続されることでマイクロLED40の点灯及び消灯を可能にするものである。また、遮光パターン21の形成に用いられる感光性樹脂組成物に含まれる着色剤は、クロストークをより抑制する観点から、黒色であってよい。さらに、本実施形態の画像表示装置の製造方法は、感光性樹脂層20の基材10からの高さが5μm以上である場合に有効であり、10μm以上である場合に特に有効である。感光性樹脂層20の基材10からの高さが5μm以上、すなわち基材10上に遮光パターン21及びマイクロLED40を有する画像表示装置において、基材10上に実装されるマイクロLED40の高さが5μm以上となる場合、隣接するマイクロLED40からの光によるクロストークを十分に抑制できる。
【0086】
マイクロLED実装工程において、マイクロLED40とは、微小な大きさのLED(半導体発光ダイオード)、LED作製用の素子、LED作製用の部材、LEDが組み込まれた部品、LEDウエハ等を指す。例えば、窒化ガリウム、窒化ガリウムインジウム、ケイ素等を用いたLED素子が挙げられる。
【0087】
マイクロLED40の形状としては、特に限定されないが、例えば、主面の形状が正方形、長方形、菱形、台形、多角形、及び、円、楕円、弧等の曲面を有する形状を挙げることができる。また、マイクロLED40は、厚さ方向に凹凸した形状を有していてもよい。マイクロLED40の大きさとしては、例えば、主面の形状が正方形である場合、一辺の長さが0.1~2000μmであるものが挙げられ、主面の形状が長方形である場合、長辺の長さが0.2μm~2000μm、及び短辺の長さが0.1~1500μmであるものが挙げられる。マイクロLED40の厚さは、例えば、0.1~20μmである。
【0088】
マイクロLED40は、遮光パターン21に形成された開口部内に配置されて基材10と電気的に接続される。マイクロLED40は、サファイア基板などの他の基材上に形成して個別に切り出したマイクロLEDを用いることができる。マイクロLED40は、青色を発光するマイクロLED、赤色を発光するマイクロLED及び緑色を発光するマイクロLEDの中から適宜選択すればよい。このとき、マイクロLED40の基材10からの高さは、遮光パターン21の基材10からの高さ以下であってよい。この場合、隣接するマイクロLED40からの光によるクロストークをより抑制できる。
【0089】
なお、遮光パターン付き基材形成工程及びマイクロLED実装工程は、遮光パターン付き基材形成工程の後にマイクロLED実装工程が行われてもよく、マイクロLED実装工程の後に遮光パターン付き基材形成工程が行われてもよい。また、マイクロLED40のうち基材10と反対側にはカラーフィルターが必要に応じて設けられてもよい。
【0090】
本実施形態の画像表示装置の製造方法によれば、遮光パターン付き基材の製造方法により、遮光パターン21において優れた解像性及び信頼性を有する遮光パターン付き基材120を製造することができる。このため、基材10上に遮光パターン21及びマイクロLED40を有する画像表示装置200において、隣接するマイクロLED40からの光によるクロストークが抑制されるとともに、マイクロLED40の実装密度を向上させることもできる。その結果、高画質でかつ高解像度の画像表示装置200を製造することができる。
【0091】
なお、画像表示装置の製造方法は、基材10上にマイクロLED40を形成するマイクロLED形成工程と、上述した遮光パターン付き基材の製造方法により遮光パターン付き基材120を形成する遮光パターン付き基材形成工程と、を備えてもよい。
【0092】
本開示の画像表示装置の製造方法によれば、遮光パターン付き基材の製造方法により、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を有する遮光パターン付き基材を製造することができる。このため、基材上に遮光パターン及びマイクロLEDを有する画像表示装置において、隣接するマイクロLEDからの光によるクロストークが抑制されるとともに、形成されるマイクロLEDに合せて遮光パターンを形成させることもできる。その結果、高画質でかつ高解像度の画像表示装置を製造することができる。
【0093】
なお、上記実施形態では、本開示の画像表示装置として、遮光パターン付き基材と発光素子としてのマイクロLEDとを有する画像表示装置を挙げたが、本開示の画像表示装置は、上記の遮光パターン付き基材を含む画像表示装置であればよく、例えば、遮光パターン付き基材と、発光素子としての有機発光素子または量子ドット発光素子とを含む画像表示装置であってもよい。
【実施例0094】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本開示をさらに具体的に説明するが、本開示は以下の実施例に限定されるものではない。
【0095】
<アルカリ可溶性バインダーポリマー溶液の調製>
以下のようにしてアルカリ可溶性バインダーポリマー溶液(以下、単に「バインダーポリマー溶液」ということがある)1~16を調製した。なお、アルカリ可溶性バインダーポリマー(以下、単に「バインダーポリマー」ということがある)の構成単位1~8はそれぞれ以下のとおりである。ここで、構成単位1は、構成単位(a)に含まれ、構成単位2は構成単位(b)に含まれ、構成単位3は構成単位(c)に含まれ、構成単位4、6は、構成単位(d)に含まれる。
【化10】

【化11】
【0096】
(バインダーポリマー溶液1)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート39.6g(0.18モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸68.8g(0.80モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.93gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー1の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート88.0g(0.62モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.6g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.6gを、上記のバインダーポリマー1の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー1の重量平均分子量は18500、二重結合当量は340g/モル、ガラス転移温度(Tg)は58.7℃であった。また、バインダーポリマー1における各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液1(固形分濃度46.3質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液1は、バインダーポリマー1とPGMEとが表3に示す質量割合で混合されるように調製した。
なお、固形分とは、バインダーポリマー溶液を130℃で2時間加熱したときの加熱残分を意味し、固形分においてはバインダーポリマー1が主成分となる。このバインダーポリマー溶液1の樹脂酸価は28.1KOHmg/g、バインダーポリマー溶液1中に含まれる固形分の固形分酸価は60.7KOHmg/gであった。
【0097】
(バインダーポリマー溶液2)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.93gを8.62gに変更したこと以外はバインダーポリマー溶液1と同様にして樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー2の重量平均分子量は13100、二重結合当量は340g/モル、バインダーポリマー2のガラス転移温度(Tg)は58.7℃であった。また、バインダーポリマー2における各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液2(固形分濃度49.1質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液2は、バインダーポリマー2とPGMEとが表3に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液2の樹脂酸価は29.9KOHmg/g、バインダーポリマー溶液2中に含まれる固形分の固形分酸価は58.9KOHmg/gであった。
【0098】
(バインダーポリマー溶液3)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内の液体を窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート39.6g(0.18モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸68.8g(0.8モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)7.39gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー3の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート102.24g(0.72モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.64g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.64gを、上記のバインダーポリマー3の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー3の重量平均分子量は15500、二重結合当量は310g/モル、バインダーポリマー3のガラス転移温度(Tg)は50.5℃であった。また、バインダーポリマー3における各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
このバインダーポリマー3の溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液3(固形分濃度48.9質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液3は、バインダーポリマー3とPGMEとが表3に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液3の樹脂酸価は14.9KOHmg/g、バインダーポリマー溶液3中に含まれる固形分の固形分酸価は30.5KOHmg/gであった。
【0099】
(バインダーポリマー溶液4)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)7.39gを9.74gに変更したこと以外はバインダーポリマー溶液3と同様にして樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー4の重量平均分子量は12500、二重結合当量は310g/モル、バインダーポリマー4のガラス転移温度(Tg)は50.5℃であった。また、バインダーポリマー4における各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液4(固形分濃度51.1質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液4は、バインダーポリマー4とPGMEとが表3に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液4の樹脂酸価は16.2KOHmg/g、バインダーポリマー溶液4中に含まれる固形分の固形分酸価は31.7KOHmg/gであった。
【0100】
(バインダーポリマー溶液5)
t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)7.39gを14.55gに変更したこと以外はバインダーポリマー溶液3と同様にして樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー5の重量平均分子量は9300、二重結合当量は310g/モル、バインダーポリマー5のガラス転移温度(Tg)は50.5℃であった。また、バインダーポリマー5における各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液5(固形分濃度53.2質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液5は、バインダーポリマー5とPGMEとが表3に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液5の樹脂酸価は16.4KOHmg/g、バインダーポリマー溶液5中に含まれる固形分の固形分酸価は30.8KOHmg/gであった。
【0101】
(バインダーポリマー溶液6)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート4.40g(0.02モル)、ベンジルメタクリレート31.68g(0.18モル)及びメタクリル酸68.8g(0.8モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.56gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー6の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート88.04g(0.62モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.6g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.6gを、上記のバインダーポリマー6の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー6の重量平均分子量は20100、二重結合当量は320g/モル、バインダーポリマー6のガラス転移温度(Tg)は43.1℃であった。また、バインダーポリマー6における各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液6(固形分濃度46.1質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液6は、バインダーポリマー6とPGMEとが表4に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液6の樹脂酸価は31.0KOHmg/g、バインダーポリマー溶液6中に含まれる固形分の固形分酸価は67.2KOHmg/gであった。
【0102】
(バインダーポリマー溶液7)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート39.6g(0.18モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸68.8g(0.8モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.60gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー7の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート71.00g(0.50モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.6g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.6gを、上記のバインダーポリマー7の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー7の重量平均分子量は17700、二重結合当量は380g/モル、バインダーポリマー7のガラス転移温度(Tg)は70.9℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液7(固形分濃度42.8質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液7は、バインダーポリマー7とPGMEとが表4に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液7の樹脂酸価は43.4KOHmg/g、バインダーポリマー溶液7中に含まれる固形分の固形分酸価は101.4KOHmg/gであった。
【0103】
(バインダーポリマー溶液8)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート61.6g(0.28モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸60.2g(0.7モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.64gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー8の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート73.84g(0.52モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.6g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.6gを、上記のバインダーポリマー8の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー8の重量平均分子量は14600、二重結合当量は400g/モル、バインダーポリマー8のガラス転移温度(Tg)は73.0℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液8(固形分濃度46.0質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液8は、バインダーポリマー8とPGMEとが表4に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液8の樹脂酸価は28.5KOHmg/g、バインダーポリマー溶液8中に含まれる固形分の固形分酸価は62.0KOHmg/gであった。
【0104】
(バインダーポリマー溶液9)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート2.20g(0.01モル)、ベンジルメタクリレート1.76g(0.01モル)及びメタクリル酸84.28g(0.98モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)7.77gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー9の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート73.84g(0.52モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.6g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.6gを、上記のバインダーポリマー9の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー9の重量平均分子量は16500、二重結合当量は270g/モル、バインダーポリマー9のガラス転移温度(Tg)は36.9℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表1に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液9(固形分濃度44.1質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液9は、バインダーポリマー9とPGMEとが表4に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液9の樹脂酸価は29.1KOHmg/g、バインダーポリマー溶液9中に含まれる固形分の固形分酸価は66.0KOHmg/gであった。
【0105】
(バインダーポリマー溶液10)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート39.6g(0.18モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸68.8g(0.8モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)3.36gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー10の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート41.18g(0.29モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.45g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.45gを、上記のバインダーポリマー10の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー10の重量平均分子量は18500、二重結合当量は550g/モル、バインダーポリマー10のガラス転移温度(Tg)は102.4℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液10(固形分濃度39.3質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液10は、バインダーポリマー10とPGMEとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液10の樹脂酸価は75.6KOHmg/g、バインダーポリマー溶液10中に含まれる固形分の固形分酸価は192.4KOHmg/gであった。
【0106】
(バインダーポリマー溶液11)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGME180.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート39.6g(0.18モル)、ベンジルメタクリレート3.52g(0.02モル)及びメタクリル酸68.8g(0.8モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)5.15gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー11の前駆体溶液を合成した。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、グリシジルメタクリレート56.80g(0.40モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.50g及びメチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.50gを、上記のバインダーポリマー11の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー11の重量平均分子量は17400、二重結合当量は440g/モル、バインダーポリマー11のガラス転移温度(Tg)は83.8℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液11(固形分濃度41.9質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液11は、バインダーポリマー11とPGMEとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液11の樹脂酸価は58.0KOHmg/g、バインダーポリマー溶液11中に含まれる固形分の固形分酸価は138.4KOHmg/gであった。
【0107】
(バインダーポリマー溶液12)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGMEA167.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g(0.3モル)、スチレン10.4g(0.1モル)及びグリシジルメタクリレート85.2g(0.6モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)19.4gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー12の前駆体を生成させた。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、アクリル酸41.9g(0.58モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.61g、メチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.31gを、上記のバインダーポリマー12の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けた。次いで、フラスコ内にテトラヒドロフタル酸無水物68.4g(0.45モル)を添加し、110℃で3時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー12の重量平均分子量は8300、二重結合当量は500g/モル、バインダーポリマー12のガラス転移温度(Tg)は39.0℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEAを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液12(固形分濃度57.6質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液12は、バインダーポリマー12とPGMEAとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液12の樹脂酸価は51.6KOHmg/g、バインダーポリマー溶液12中に含まれる固形分の固形分酸価は89.6KOHmg/gであった。
【0108】
(バインダーポリマー溶液13)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGMEA167.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g(0.3モル)、スチレン10.4g(0.1モル)及びグリシジルメタクリレート85.2g(0.6モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)10.7gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー13の前駆体を生成させた。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、アクリル酸41.9g(0.58モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.61g、メチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.31gを、上記のバインダーポリマー13の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けた。次いで、フラスコ内にテトラヒドロフタル酸無水物66.88g(0.44モル)を添加し、110℃で3時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー13の重量平均分子量は14700、二重結合当量は480g/モル、バインダーポリマー13のガラス転移温度(Tg)は40.0℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEAを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液13(固形分濃度53.2質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液13は、バインダーポリマー13とPGMEAとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液13の樹脂酸価は46.9KOHmg/g、バインダーポリマー溶液13中に含まれる固形分の固形分酸価は88.2KOHmg/gであった。
【0109】
(バインダーポリマー溶液14)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGMEA167.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g(0.3モル)、スチレン10.4g(0.1モル)及びグリシジルメタクリレート85.2g(0.6モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)16.16gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー14の前駆体を生成させた。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、アクリル酸41.9g(0.58モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.61g、メチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.31gを、上記のバインダーポリマー14の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けた。次いで、フラスコ内にテトラヒドロフタル酸無水物41.05g(0.27モル)を添加し、110℃で3時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー14の重量平均分子量は7200、二重結合当量は450g/モル、バインダーポリマー14のガラス転移温度(Tg)は47.6℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEAを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液14(固形分濃度57.6質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液14は、バインダーポリマー14とPGMEAとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液14の樹脂酸価は36.8KOHmg/g、バインダーポリマー溶液14中に含まれる固形分の固形分酸価は63.9KOHmg/gであった。
【0110】
(バインダーポリマー溶液15)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGMEA152.5gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g(0.30モル)、スチレン10.4g(0.10モル)及びグリシジルメタクリレート85.2g(0.60モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)10.3gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー15の前駆体を生成させた。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、アクリル酸41.9g(0.58モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.61g、メチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.31gを、上記のバインダーポリマー15の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けた。次いで、フラスコ内に無水コハク酸無水物33.00g(0.33モル)を添加し、110℃で3時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー15の重量平均分子量は15000、二重結合当量は420g/モル、バインダーポリマー15のガラス転移温度(Tg)は48.4℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEAを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液15(固形分濃度53.3質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液15は、バインダーポリマー15とPGMEAとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液15の樹脂酸価は40.2KOHmg/g、バインダーポリマー溶液15中に含まれる固形分の固形分酸価は75.4KOHmg/gであった。
【0111】
(バインダーポリマー溶液16)
攪拌装置、滴下ロート、コンデンサー、温度計及びガス導入管を備えたフラスコに、溶媒としてPGMEA167.1gを加え、フラスコ内のガスを窒素ガスで置換しながら攪拌し、120℃に昇温させた。
次いで、トリシクロデカニルメタクリレート66.0g(0.30モル)、スチレン23.9g(0.23モル)及びグリシジルメタクリレート66.7g(0.47モル)からなるモノマー混合物に、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート(重合開始剤、日油株式会社製、パーブチル(登録商標)O)17.2gを添加したものを別途用意した。このモノマー及び重合開始剤の混合物を、滴下ロートから1時間にわたってフラスコ中に滴下した。滴下終了後、120℃で更にフラスコ内の液体を2時間攪拌して共重合反応を行い、バインダーポリマー16の前駆体を生成させた。その後、フラスコ内のガスを空気に置換して、アクリル酸32.8g(0.46モル)、トリフェニルホスフィン(触媒)0.61g、メチルハイドロキノン(重合禁止剤)0.31gを、上記のバインダーポリマー16の前駆体溶液中に投入した。その後、110℃で10時間にわたり反応を続けた。次いで、フラスコ内に無水コハク酸無水物22.00g(0.22モル)を添加し、110℃で3時間にわたり反応を続けて、樹脂溶液を得た。この樹脂溶液中に含まれるバインダーポリマー16の重量平均分子量は8100、二重結合当量は420g/モル、バインダーポリマー16のガラス転移温度(Tg)は60.1℃であった。また、バインダーポリマーにおける各構成単位1~8の割合は、全構成単位1~8の合計を基準(100モル%)とした場合に、表2に示すとおりであった。
この樹脂溶液にPGMEAを更に添加して、バインダーポリマー溶液としてのバインダーポリマー溶液16(固形分濃度58.4質量%)を調製した。このとき、バインダーポリマー溶液16は、バインダーポリマー16とPGMEAとが表5に示す質量割合で混合されるように調製した。また、このバインダーポリマー溶液16の樹脂酸価は33.2KOHmg/g、バインダーポリマー溶液1中に含まれる固形分の固形分酸価は56.8KOHmg/gであった。
【0112】
<物性値の測定法>
上記樹脂酸価、固形分酸価、二重結合当量、重量平均分子量及びガラス転移温度は、以下に記載する方法によって得られた値である。
(1)樹脂酸価
樹脂酸価は、JIS K6901 5.3.2に従ってブロモチモールブルーとフェノールレットの混合指示薬を用いて測定されたバインダーポリマー溶液の酸価である。樹脂酸価は、バインダーポリマー溶液1g中に含まれる酸性成分を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を意味する。
(2)固形分酸価
固形分酸価は、下記式で算出される値である。
固形分酸価=100×樹脂酸価/(バインダーポリマー溶液の固形分濃度(質量%))
(3)二重結合当量
二重結合当量は、重合性不飽和結合のモル数当たりの重合体の質量であり、モノマーの使用量に基づいて算出した計算値である。
(4)重量平均分子量(Mw)
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、下記条件にて測定した標準ポリスチレン換算した重量平均分子量を意味する。
カラム:ショウデックス(登録商標) LF-804+LF-804(昭和電工株式会社製)
カラム温度:40℃
試料:共重合体の0.2%テトラヒドロフラン溶液
展開溶媒:テトラヒドロフラン
検出器:示差屈折計(ショウデックス(登録商標) RI-71S)(昭和電工株式会社製)
流速: 1mL/min
(5)ガラス転移温度(Tg)
バインダーポリマーのTgは、示差走査熱量計(株式会社日立ハイテクサイエンス社製、DSC7000X)を用いて測定した。
具体的には、バインダーポリマー溶液からそれぞれ1gを採取し、130℃で120分間乾燥させて、溶媒を揮発させ、得られたそれぞれの固形分から10mgずつ試料を採取した。そして、示差走査熱量計(DSC)を用いて、10℃/分の昇温速度で-0℃から200℃まで試料の温度を変化させて示差走査熱量測定を行い、観察されたガラス転移による吸熱開始温度をガラス転移温度(Tg)とした。なお、Tgが2つ観察された場合には、2つのTgの平均値をバインダーポリマーのTgとした。
【0113】
【表1】
【0114】
【表2】
【0115】
<実施例1~9及び比較例1~7>
[感光性樹脂組成物の作製]
表3、表4又は表5に示す(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分及び(F)成分を、同表に示す含有率(単位:質量%)となるように配合し、攪拌機を用いて15分間混合して感光性樹脂組成物としての感光性樹脂層形成用塗布液を作製した。
【0116】
【表3】
【0117】
【表4】
【0118】
【表5】
【0119】
表3、表4又は表5において、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分、(E)成分および(F)成分の詳細は以下のとおりである。
(A)成分
溶液1~16:上述した方法で作製したバインダーポリマー溶液1~16
【0120】
(B)成分
光重合性モノマー:トリメチロールプロパンオリアクリレート(新中村化学工業株式会社製、製品名「A-TMPT」)
【0121】
(C)成分
多官能チオール化合物:ペンタエリスリトールテトラキス(3-メルカプトブチレート)(KarenzMT(登録商標) PE1(SH基数=4)、昭和電工株式会社製)
【0122】
(D)成分
顔料としての下記構造式で表されるラクタムブラック(固形分)と、分散剤としての非アミン系分散剤(固形分)と、PGMEAとを15.0:4.5:80.5(質量比)で混合してなる混合液(ラクタムブラック系有機顔料分散液(製品名「SF BLACK BJ4379」、山陽色素株式会社製、固形分:19.5質量%、ラクタムブラック系有機顔料:15質量%))
【0123】
(E)成分
光重合開始剤:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-ホスフィンオキサイド(製品名「Lunacure TPO」、DKSHジャパン株式会社製)
【0124】
(F)成分
密着助剤:Siカップリング剤(製品名「KBM-803」、信越化学工業株式会社製)
【0125】
[遮光パターンの形成]
上記のようにして得られた感光性樹脂層形成用塗布液を、3.0mmの厚さを有するガラス板の上に滴下し、スピンコート法により塗膜を形成してガラス板上に塗膜を有する積層体を得た。その後、この積層体をホットプレートの上に配置し、120℃で2分間加熱して溶媒を除去し、感光性樹脂層を有する第1積層体を作製した。上記第1積層体を得る際には、スピンコート法における回転数を調整することにより塗膜の厚さを調整し、感光性樹脂層の厚さが15±1μmとなるようにした。
次に、第1積層体に対し、フォトマスクとしての井桁状のガラスマスク(株式会社進映社製)を介して、紫外線露光機(製品名「MA-20」、ミカサ株式会社製)を用いて紫外線による部分露光を行い、部分硬化層を有する第2積層体を得た。このとき、ガラスマスクとしては、スペース幅(S)が40μm、ライン幅(L)が30μmであるものを使用した。また、露光量は、表3、表4又は表5に示す値(単位:mJ/cm)とした。
次に、第2積層体をホットプレート上に配置し、表3、表4又は表5に示すように100℃で1分間の加熱(ポストベーク)を行った。
次に、第2積層体を吸着ステージ上に配置し、現像機(製品名「AD-1200」、ミカサ株式会社製)を用いてスプレー現像を行った後、洗浄を行い、ガラス板上に硬化部のみを有する第3積層体を得た。このとき、スプレー現像は、現像液として2.38%TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)を用い、23℃で、表3、表4又は表5に示す現像時間行った。ここで、現像時間は、部分硬化層の非硬化部が現像液に完全に溶解する最小時間である。また水洗は、23℃の純水を用い、30秒間行った。
その後、第3積層体に対して、紫外線露光機(製品名「MA-20」、ミカサ株式会社製)を用いて紫外線による全面露光を行った。このとき、露光量は、1000mJ/cmとした。
こうしてガラス板上に遮光パターンを形成した。
こうしてガラス板上に、15μmの厚さを有する遮光パターンを形成してなる遮光パターン付き基材を形成した。
次に、ガラスマスクとして、ライン幅(L)を25μm,20μm,15μm,10μm,8μm,6μm又は4μmに変更したものを用いたこと以外は上記と同様にして遮光パターン付き基材を形成した。
以上のようにして、8種類の遮光パターン付き基材を形成した。
【0126】
<性能評価>
以下のようにして、遮光パターン付き基材について光学濃度、解像性及び信頼性の評価を行った。
(1)光学濃度(OD値)
上記のようにして得られた遮光パターンのOD値は、OD値と感光性樹脂層形成用塗布液に含まれる全固形分中の着色剤の含有率との関係を予め求めておき、この関係と、感光性樹脂層形成用塗布液に含まれる全固形分中の着色剤の含有率とに基づいて算出した。結果を表3、表4及び表5に示す。
なお、上記のように遮光パターンのOD値を間接的に求めるのは、透過率の測定に使用する予定の透過率測定装置(製品名「分光ヘイズメータ SH 7000」、日本電色工業株式会社製)における透過率の測定限界最小値が0.03%(OD値2.4程度に相当)であり、OD値が2.4より大きくなると、OD値を算出することが難しくなるからである。
上記関係は以下のように求めた。まず各実施例又は各比較例ごとに、全固形分中の着色剤の含有率のみを0質量%、4質量%、6質量%、8質量%、10質量%にしたこと以外は各実施例又は各比較例と同様の感光性樹脂層形成用塗布液を5種類用意した。そして、5種類の感光性樹脂層形成用塗布液をそれぞれ、3.0mmの厚さを有するガラス板の上に滴下し、スピンコート法により塗膜を形成し、ガラス板上に塗膜を形成してなる積層体を得た。このとき、5種類の感光性樹脂層形成用塗布液のそれぞれについて、スピンコート法における回転数を調整し、塗膜の厚さが異なり且つ溶媒除去後の透過率が上記透過率測定装置の透過率測定限界内の値となる3つの積層体を得た。その後、これら3つの積層体をそれぞれホットプレートの上に配置し、120℃で2分間加熱して溶媒を除去し、ガラス板の上に感光性樹脂層を形成してなる第1積層体を得た。次に、第1積層体に対し、紫外線露光機(製品名「MA-20」、ミカサ株式会社製)を用いて紫外線による露光を行い、硬化体を得た。このとき、露光量は、200mJ/cmとした。
次に、硬化体をホットプレート上に配置し、60℃で5分間加熱した。こうしてガラス板上に、15μmの厚さを有する硬化層を形成してなる透過率測定用サンプルを作製した。
そして、透過率測定用サンプルについて、上記透過率測定装置を使用して透過率を測定し、この透過率と下記式に基づいてOD値を算出した。
OD値=-log10(610nmの波長における透過率/100)
そして、透過率測定用サンプルの硬化層の厚さに対して、上記のようにして算出したOD値をプロットし、プロット点を通る直線を形成した。このとき、直線は、全固形分中の着色剤の含有率ごとに形成され、全部で5本となった。
次に、硬化層の厚さが15μmである直線と、上記のようにして求めた5本の直線との5つの交点から、硬化層の厚さが15μmであるときの、全固形分中の着色剤の含有率0質量%、4質量%、6質量%、8質量%、10質量%に対する5つのOD値を求めた。
そして、これら5つのOD値をプロットしてプロット点を通る直線を形成した。こうして、上記関係を求めた。上記関係により、全固形分中の着色剤の含有率とOD値とは比例の関係にあることがわかった。
OD値の合格基準は以下のとおりとした。
(合格基準)OD値が3.0以上であること
【0127】
(2)解像性
上記のようにして作製した遮光パターン付き基材の遮光パターンを、レーザ顕微鏡(製品名「3D MEASURING LASER MICROSCOPE OLS5000」、OLYMPUS製)を用いてガラス板の厚さ方向に観察してライン幅を測定し、以下の条件を満たすライン幅のうち最小のライン幅を求めた。結果を表3、表4及び表5に示す。なお、表3、表4及び表5において、「-」は、感光性樹脂組成物としての感光性樹脂層形成用塗布液が感光性を有さず、遮光パターンの形成ができなかったことから、以下の条件を満たすライン幅を求めることができなかったことを示す。
(条件)
・厚さ:遮光パターンの厚さが、露光前の感光性樹脂層の厚さに対して90%以上であること
・形状:井桁のパターンが、欠け及び歪みがなく形成されていること
解像性の合格基準は以下のとおりとした。
(合格基準)ライン幅が15μm以下であること
【0128】
(3)信頼性
上記のようにして作製した8種類の遮光パターン付き基材のうちガラスマスクとしてライン幅(L)が15μmmであるガラスマスクを用いて作製した遮光パターン付き基材の遮光パターンを、85℃85%RHの環境下に500時間放置した。
そして、下記式に基づいて遮光パターンの厚さ方向の残膜率(%)を算出した。結果を表3、表4及び表5に示す。なお、表3、表4及び表5において、「-」は、残膜率の算出が行われなかったことを示す。
残膜率(%)=100×a1/a0
(上記式中、a0は、初期の遮光パターンの膜厚(μm)を表し、a1は、85℃85%RHの環境下に500時間放置した後の遮光パターンの膜厚(μm)を表す。)
信頼性の合格基準は以下のとおりとした。
(合格基準)残膜率が80%以上であること
【0129】
表3、表4及び表5に示す結果より、実施例1~9の感光性樹脂組成物は、OD値が高い遮光パターンにおいても解像性及び信頼性の点で合格基準を満たした。これに対し、比較例1~7の感光性樹脂組成物は、OD値が高い遮光パターンにおいては、解像性及び信頼性の少なくとも一方の点で合格基準を満たさなかった。特に、実施例1~9の感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光パターンの表面(基材であるガラス板の表面と反対側の表面)はほぼ平坦であった。これに対し、比較例2~5及び7の感光性樹脂組成物を用いて形成された遮光パターンの表面は、お椀状に湾曲していた。なお、遮光パターンの表面が湾曲せずほぼ平坦になると、外光反射や遮光パターンの上部に封止層が設けられる場合などの外部因子があった際のディスプレイの平滑性・画質の均一性が得られやすい等の利点が得られる。
以上のことから、本開示の感光性樹脂組成物によれば、高い光学濃度を有する遮光パターンにおいて優れた解像性及び信頼性を付与することができることが確認された。
【符号の説明】
【0130】
10…基材、20…感光性樹脂層、21…遮光パターン、30…部分硬化層、40…マイクロLED、120…遮光パターン付き基材、200…画像表示装置。
図1
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図7