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特開2024-50189部品の位置決め装置及び部品の位置決め方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050189
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】部品の位置決め装置及び部品の位置決め方法
(51)【国際特許分類】
   B23P 19/00 20060101AFI20240403BHJP
   B25J 13/08 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
B23P19/00 301D
B25J13/08 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】25
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022156884
(22)【出願日】2022-09-29
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】598121341
【氏名又は名称】慶應義塾
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 信彦
(72)【発明者】
【氏名】菊池 慎市
(72)【発明者】
【氏名】大西 公平
【テーマコード(参考)】
3C030
3C707
【Fターム(参考)】
3C030AA16
3C030BB02
3C030BB04
3C030BC04
3C030BC16
3C030BC23
3C030BC25
3C030BC27
3C030BC33
3C707AS07
3C707BS12
3C707BT12
3C707CV08
3C707CW08
3C707CY15
3C707DS01
3C707ES03
3C707ET08
3C707KS03
3C707KS05
3C707KS34
3C707KX08
3C707LT06
3C707LT12
3C707LT17
3C707LU02
3C707MT04
(57)【要約】
【課題】画像検査システムを用いることなく、かつ、従来と比較して、製造コストを抑制しつつ、高精度な部品の位置決めが可能な部品の位置決め装置及び部品の位置決め方法を提供する。
【解決手段】部品の位置決め装置は、載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を変位させる力付与部と、載置部における部品の最大変位量を導出する導出部と、最大変位量に基づいて、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、を有する。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を変位させる力付与部と、
前記載置部における前記部品の最大変位量を導出する導出部と、
前記最大変位量に基づいて、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、
前記力付与部又は前記補正部を制御する位置決め制御部であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、
を有する部品の位置決め装置。
【請求項2】
前記第1方向において180°向きが異なる2つの方向を正方向と負方向とした場合に、
前記導出部は、前記部品が前記正方向又は前記負方向の一方に片寄せされた後、前記部品を他方に変位させることによって、前記最大変位量を導出し、
前記補正部は、前記最大変位量に基づいて前記補正量を導出する請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項3】
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を片寄せする力付与部と、
片寄せされた片寄せ位置から、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、
前記力付与部又は前記補正部を制御する位置決め制御部であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、
を有する部品の位置決め装置。
【請求項4】
前記補正部は、前記片寄せ位置からの補正量であって、かつ、予め設定された補正量に基づいて、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する請求項3に記載の部品の位置決め装置。
【請求項5】
前記力付与部は、前記第1方向に加えて、同一平面内において前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記部品に対して力を付与することが可能であり、
前記補正部は、前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれにおいて、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する請求項2に記載の部品の位置決め装置。
【請求項6】
前記第1方向は水平方向である請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項7】
前記部品において、前記載置部の載置面と接触する接触面は、曲面である請求項6に記載の部品の位置決め装置。
【請求項8】
前記曲面は、前記第1方向と平行な断面形状が前記載置面に向かって凸型の円弧形状となる面である請求項7に記載の部品の位置決め装置。
【請求項9】
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記力付与部は、前記第1部品に組み付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品に力を付与する請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項10】
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記補正部は、前記第1部品に組み付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項11】
前記第2部品は、前記第1部品の少なくとも一部が挿入される穴を有しており、
前記第1部品と前記第2部品との組み付けは、前記位置及び姿勢の少なくとも一方の補正後に、前記第1部品の一部に対するかしめ加工を施すことにより行われる請求項9に記載の部品の位置決め装置。
【請求項12】
前記力付与部は、位置決め専用の部材を前記部品と接触させることにより、前記部品に力を付与する請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項13】
前記補正部は、位置決め専用の部材を前記部品と接触させることにより、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項14】
載置部に載置された部品に対し、前記部品を前記載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与部と、
前記部品に対して前記押し付け方向の力が付与された際に前記載置部内において前記部品が傾斜することによって生じる力であって、前記押し付け方向と交差する第1方向の力を検出する力検出部と、
前記力検出部により検出された前記第1方向の力に基づいて前記部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の姿勢を補正する補正部と、
前記力付与部又は前記補正部を制御する位置決め制御部であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、
を有する部品の位置決め装置。
【請求項15】
前記押し付け方向は、前記部品が目標の姿勢にある場合には第1方向の力がゼロになる方向である請求項14に記載の部品の位置決め装置。
【請求項16】
前記第1方向は水平方向であり、前記押し付け方向は鉛直方向である請求項14に記載の部品の位置決め装置。
【請求項17】
前記部品において、前記載置部の載置面と接触する接触面は、曲面である請求項16に記載の部品の位置決め装置。
【請求項18】
前記曲面は、前記第1方向と平行な断面形状が前記載置面に向かって凸型の円弧形状となる面である請求項17に記載の部品の位置決め装置。
【請求項19】
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記力付与部は、前記第1部品に組付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品に力を付与する請求項14に記載の部品の位置決め装置。
【請求項20】
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記補正部は、前記第1部品に組み付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品の姿勢を補正する請求項14に記載の部品の位置決め装置。
【請求項21】
前記第2部品は、前記第1部品の少なくとも一部が挿入される穴を有しており、
前記第1部品と前記第2部品との組み付けは、前記姿勢の補正後に、前記第1部品の一部に対するかしめ加工を施すことにより行われる請求項19に記載の部品の位置決め装置。
【請求項22】
互いに直交する3軸方向に前記載置部と前記部品とを相対的に移動させることが可能なアクチュエータを有しており、
前記補正部は、前記アクチュエータを制御することにより、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する、請求項1に記載の部品の位置決め装置。
【請求項23】
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を変位させる力付与工程と、
前記載置部における前記部品の最大変位量を導出する導出工程と、
前記導出工程により導出された前記最大変位量に基づいて前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正工程と、
前記力付与工程又は前記補正工程を制御する位置決め制御工程であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む、
部品の位置決め方法。
【請求項24】
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を片寄せする力付与工程と、
片寄せされた片寄せ位置から、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正工程と、
前記力付与工程又は前記補正工程を制御する位置決め制御工程であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む、
部品の位置決め方法。
【請求項25】
載置部に載置された部品に対し、前記部品を前記載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与工程と、
前記部品に対して前記押し付け方向の力が付与された際に前記載置部内において前記部品が傾斜することによって生じる力であって、前記押し付けと交差する第1方向の力を検出する力検出工程と、
前記力検出工程により検出された前記第1方向の力に基づいて前記部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の姿勢を補正する補正工程と、
前記力付与工程又は前記補正工程を制御する位置決め制御工程であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む、
部品の位置決め方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の技術は、部品の位置決め装置及び部品の位置決め方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の部品を組み合わせて製品を組み立てる作業を行うロボットが知られている(例えば、特許文献1)。ロボットは、部品を組み立てる際に部品の位置決めを行う機能を備えている。
【0003】
特許文献1に記載のロボットは、例えば、ワーク(2)に形成された組付穴(4)に、ハンド(1)により把持された部品(6)を組み付ける。ワーク(2)の位置は固定されており、部品(6)には組付穴(4)に挿入される位置決めピン(6a)が設けられている。なお、括弧中の符号は、引用文献1中で記載された符号である。ロボットは、ワーク(2)に対して部品(6)を組み付ける際に、位置決めピン(6a)を利用してワーク(4)に対する部品(6)の位置決めを行っている。具体的には、ロボットは、部品(6)に作用する反力を検出する力覚センサ(12)と、少なくともワーク面に平行な2軸方向(X軸方向とY軸方向)にハンド(1)を駆動する動作機構と、を備えている。このロボットでは、力覚センサ(12)の検出値に基づいて動作機構を制御することにより、力覚センサ(122)により検出した反力の方向にハンド(1)を所定量微小変位させる。これにより、ワーク(2)の組付穴(4)の適切な挿入位置に対して、部品(6)の位置決めピン(6a)の位置を合わせている。
【0004】
特許文献2には、リアルハプティクス技術の応用として医療用の鉗子を遠隔制御する場合が例示されている。より詳しくは、特許文献2には、マスタ側の操作部を操作してスレーブ側の把持部で物体を把持すると、力センサおよび加速度センサを用いずに把持部に加わる反力に応じた力が操作部に伝わる技術が提案されている。この特許文献2に記載の技術を用いると、スレーブ側に加わる力をマスタ側に応答性よく伝えることができ、繊細な作業を実現することが可能となり、人手によるのと同様の作業、操作を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7-96427号公報
【特許文献2】特許第4696307号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に記載の位置決め方法において、ワーク(2)は外力が加わっても位置ずれ及び姿勢変化が生じないように固定されており、ロボットは、位置が固定されたワーク(2)に対して、組付ける部品の位置決めを行っている。このような組み付け加工において、一方の部品であるワーク(2)の位置が固定されている場合は、例えばワーク(2)にピンを接触させてもワーク(2)の位置がずれないため、ワーク(2)の位置ずれを考慮することなく、他方の部品の位置を調整することができる。
【0007】
しかしながら、組み付け対象となる部品の位置決めにおいて、特許文献1に記載のワークのように、位置ずれ又は姿勢変化が生じないように固定されている場合だけでなく、組み付け対象の部品のサイズ等によっては、部品の姿勢が不安定な状態になってしまう場合がある。特許文献1の内容に即して言えば、ワークが不安定な状態にある場合である。
【0008】
また、特許文献2には、遠隔制御により対象物を人手による操作同様に扱う技術は開示されてはいる。ただし、例えば、数mm以下のオーダーのサイズがごく小さい部品の組み付け加工のように、毎回ワークの状況が変化する不安定な態様において、どのような状況にも対応して如何にして安定的に部品を動かすかについては示されていない。
【0009】
部品の姿勢が不安定になる理由は、次のとおりである。例えば、数mm以下のオーダーのサイズが小さい部品の組み付け加工が行われる場合は、ハンドで部品を把持することによって部品の位置及び姿勢を固定することが難しい場合もあるため、部品は受け台などの載置部に載置される。この場合において、載置部に接触する部品の接触面が曲面形状であると、部品の姿勢が不安定になりやすい。
【0010】
この場合の第1の対策としては、部品が載置される載置部の加工精度を上げることにより、部品の姿勢変化が生じないようにすることが考えられる。しかし、数mm以下のサイズの部品の姿勢変化が生じないようにするためには、載置部の加工精度が非常にシビアになり、載置部の製造コストが嵩む。部品の種類が多い場合は、種類毎に載置部を作製する必要があり、載置部の製造コストの増加は特に問題となる。また、第2の対策としては、画像検査システムによって、部品の姿勢をリアルタイムでモニタリングし、画像解析結果に基づいて部品の姿勢を補正する方法がある。画像解析によれば高精度に補正量を導出することができるため、位置決めの精度は向上する。しかし、部品の姿勢をリアルタイムでモニタリングするためには、部品を平面視可能な位置にカメラを設置する必要があるが、組み付け方法及び加工方法の内容によっては、適切な位置にカメラを設置できない場合もある。この場合は画像検査システムを用いた高精度な位置合わせを行うことができない。
【0011】
ここで、部品の姿勢の補正も、部品の位置決めに含まれるものとする。姿勢の補正も、例えば、傾いている部品を回転させることにより部品の回転位置を補正するとも言えるからである。
【0012】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、画像検査システムを用いることなく、かつ、従来と比較して、製造コストを抑制しつつ、高精度な部品の位置決めが可能な部品の位置決め装置及び部品の位置決め方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本開示の部品の位置決め装置は、載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を変位させる力付与部と、載置部における部品の最大変位量を導出する導出部と、最大変位量に基づいて、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、力付与部又は補正部を制御する位置決め制御部であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、を有する。
【0014】
本開示の部品の位置決め装置において、第1方向において180°向きが異なる2つの方向を正方向と負方向とした場合に、導出部は、部品が正方向又は負方向の一方に片寄せされた後、部品を他方に変位させることによって、最大変位量を導出し、補正部は、最大変位量に基づいて補正量を導出することが好ましい。
【0015】
本開示の部品の位置決め装置は、載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を片寄せする力付与部と、片寄せされた片寄せ位置から、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、力付与部又は補正部を制御する位置決め制御部であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、を有する。
【0016】
本開示の部品の位置決め装置において、補正部は、片寄せ位置からの補正量であって、かつ、予め設定された補正量に基づいて、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0017】
本開示の部品の位置決め装置において、力付与部は、第1方向に加えて、同一平面内において第1方向と交差する第2方向に沿って部品に対して力を付与することが可能であり、補正部は、第1方向及び第2方向のそれぞれにおいて、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0018】
本開示の部品の位置決め装置において、第1方向は水平方向であることが好ましい。
【0019】
本開示の部品の位置決め装置において、部品において、載置部の載置面と接触する接触面は、曲面であることが好ましい。
【0020】
本開示の部品の位置決め装置において、曲面は、第1方向と平行な断面形状が載置面に向かって凸型の円弧形状となる面であることが好ましい。
【0021】
本開示の部品の位置決め装置において、載置部に載置された部品を第1部品とした場合において、力付与部は、第1部品に組み付けられる第2部品を第1部品と接触させることにより、第1部品に力を付与することが好ましい。
【0022】
本開示の部品の位置決め装置において、載置部に載置された部品を第1部品とした場合において、補正部は、第1部品に組み付けられる第2部品を第1部品と接触させることにより、第1部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0023】
本開示の部品の位置決め装置において、第2部品は、第1部品の少なくとも一部が挿入される穴を有しており、第1部品と第2部品との組み付けは、位置及び姿勢の少なくとも一方の補正後に、第1部品の一部に対するかしめ加工を施すことにより行われることが好ましい。
【0024】
本開示の部品の位置決め装置において、力付与部は、位置決め専用の部材を部品と接触させることにより、部品に力を付与することが好ましい。
【0025】
本開示の部品の位置決め装置において、補正部は、位置決め専用の部材を部品と接触させることにより、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0026】
本開示の部品の位置決め装置は、載置部に載置された部品に対し、部品を載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与部と、部品に対して押し付け方向の力が付与された際に載置部内において部品が傾斜することによって生じる力であって、押し付け方向と交差する第1方向の力を検出する力検出部と、力検出部により検出された第1方向の力に基づいて部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の姿勢を補正する補正部と、力付与部又は補正部を制御する位置決め制御部であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、を有する。
【0027】
本開示の部品の位置決め装置において、押し付け方向は、部品が目標の姿勢にある場合には第1方向の力がゼロになる方向であることが好ましい。
【0028】
本開示の部品の位置決め装置において、第1方向は水平方向であり、押し付け方向は鉛直方向であることが好ましい。
【0029】
本開示の部品の位置決め装置において、部品において、載置部の載置面と接触する接触面は、曲面であることが好ましい。
【0030】
本開示の部品の位置決め装置において、曲面は、第1方向と平行な断面形状が載置面に向かって凸型の円弧形状となる面であることが好ましい。
【0031】
本開示の部品の位置決め装置において、載置部に載置された部品を第1部品とした場合において、力付与部は、第1部品に組付けられる第2部品を第1部品と接触させることにより、第1部品に力を付与することが好ましい。
【0032】
本開示の部品の位置決め装置において、載置部に載置された部品を第1部品とした場合において、補正部は、第1部品に組み付けられる第2部品を第1部品と接触させることにより、第1部品の姿勢を補正することが好ましい。
【0033】
本開示の部品の位置決め装置において、第2部品は、第1部品の少なくとも一部が挿入される穴を有しており、第1部品と第2部品との組み付けは、姿勢の補正後に、第1部品の一部に対するかしめ加工を施すことにより行われることが好ましい。
【0034】
本開示の部品の位置決め装置において、互いに直交する3軸方向に載置部と部品とを相対的に移動させることが可能なアクチュエータを有しており、補正部は、アクチュエータを制御することにより、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正することが好ましい。
【0035】
本開示の部品の位置決め方法は、載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を変位させる力付与工程と、載置部における部品の最大変位量を導出する導出工程と、導出工程により導出された最大変位量に基づいて部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正工程と、力付与工程又は補正工程を制御する位置決め制御工程であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む。
【0036】
本開示の部品の位置決め方法は、載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を片寄せする力付与工程と、片寄せされた片寄せ位置から、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正工程と、力付与工程又は補正工程を制御する位置決め制御工程であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む。
【0037】
本開示の部品の位置決め方法は、載置部に載置された部品に対し、部品を載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与工程と、部品に対して押し付け方向の力が付与された際に載置部内において部品が傾斜することによって生じる力であって、押し付けと交差する第1方向の力を検出する力検出工程と、力検出工程により検出された第1方向の力に基づいて部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の姿勢を補正する補正工程と、力付与工程又は補正工程を制御する位置決め制御工程であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む。
【発明の効果】
【0038】
本開示の技術によれば、画像検査システムを用いることなく、かつ、従来と比較して、製造コストを抑制しつつ、高精度な部品の位置決めを行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】部品の位置決め装置の全体構成を示す斜視図である。
図2】ピンが組み付けられる組み立て部品の一例としての内視鏡の湾曲部の一部を示す正面図、及び湾曲部の内部を拡大した側面図である。
図3】内視鏡の湾曲部の一部を拡大した状態で示す断面図である。
図4】ピン、第1リング及び第2リングを分解した状態で示す分解斜視図である。
図5】部品の位置決め装置における把持部を3軸方向に移動させる移動装置を示す斜視図である。
図6】(A)は、部品の位置決め装置における把持部及び載置部の一部を示す斜視図であって、ピンに第1リング及び第2リングを係合する前の状態を示す斜視図であり、(B)は、部品の位置決め装置における把持部及び載置部の一部を示す斜視図であって、ピンに第1リング及び第2リングを係合した状態を示す斜視図である。
図7】部品の位置決め装置におけるピンに第1リング及び第2リングを配置した状態を示す平面図である。
図8】載置部の凹部と、凹部に載置されるピンを示す斜視図である。
図9】ピンを示す平面図である。
図10】部品の位置決め装置の制御装置の電気構成を示すブロック図である。
図11】位置決め制御部の詳細構成を示すブロック図である。
図12】第1実施形態の部品の位置決め装置において、ピンの位置決めを行うための複数の工程を示す説明図である。
図13】第1実施形態の部品の位置決め装置において、Y方向の位置決め処理を示す説明図である。
図14】第1実施形態の部品の位置決め装置において、X方向の位置決め処理を示す説明図である。
図15】第1実施形態の部品の位置決め装置において、Y方向の補正量を導出する処理を示す説明図である。
図16】第1実施形態の部品の位置決め装置において、X方向の補正量を導出する処理を示す説明図である。
図17】第1実施形態の部品の位置決め装置によるY方向の位置決め処理における各種項目の対応表である。
図18】第1実施形態の部品の位置決め装置によるX方向の位置決め処理における各種項目の対応表である。
図19】第1実施形態の部品の位置決め装置によるピンの位置決め及び組付の手順を示すフローチャートである。
図20】第1実施形態の部品の位置決め装置によるピンのY方向の位置決め処理の手順を示すフローチャートである。
図21】第1実施形態の部品の位置決め装置によるピンの位置決め処理の繰り返し手順を示すフローチャートである。
図22】第1実施形態の部品の位置決め装置において、繰り返し処理による補正量を導出する効果を示す説明図である。
図23】第2実施形態の部品の位置決め装置において、部品の位置決めを行うための複数の工程を示す説明図である。
図24】第2実施形態の部品の位置決め装置において、X方向におけるピンの中心位置とX方向の力との関係の情報を示す図である。
図25】第2実施形態の部品の位置決め装置において、Y方向におけるピンの中心位置とY方向の力との関係の一例としての設定情報を示す図である。
図26】第2実施形態の部品の位置決め装置による位置決め処理の力付与時における各種項目の対応表である。
図27】第2実施形態の部品の位置決め装置による位置決め処理の補正時における各種項目の対応表である。
図28】第2実施形態の部品の位置決め装置によるピンの位置決め処理の手順を示すフローチャートである。
図29】第3実施形態の部品の位置決め装置において、ピン及び載置部を示す断面図である。
図30】第3実施形態の部品の位置決め装置によるY方向の位置決め処理における各種項目の対応表である。
図31】第3実施形態の部品の位置決め装置によるX方向の位置決め処理における各種項目の対応表である。
図32】第4実施形態の部品の位置決め装置において、ピン及び載置部を示す断面図である。
図33】第5実施形態の部品の位置決め装置において、ピン及び接触部材を示す断面図である。
図34】第6実施形態の部品の位置決め装置における把持部及び載置部の一部を示す斜視図であって、ピンに第1リング及び第2リングを係合する工程を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本開示の技術を実施するための形態について説明する。
【0041】
〔第1実施形態〕
図1に一例として示すように、部品の位置決めを行う位置決め装置10は、多関節ロボット12と、多関節ロボット12の先端部に設けられた移動装置14と、移動装置14に設けられた把持部16と、位置決めを行う部品が載置される載置部18とを備えている。位置決め装置10の載置部18の側には、載置部18に載置された部品をかしめて組み付けるためのプレス機20が設けられている。載置部18はプレス機20の鉛直方向の下方に位置にしている。なお、図1において、載置部18は、空中に浮いているように見えるが、図示しない部材によって支持されており、位置が固定されている。
【0042】
位置決め装置10は、多関節ロボット12によって組付け対象の一方の部品を、プレス機20のある載置部18まで移動させ、移動装置14によって組付け対象の複数の部品の細かな相対的な位置決めを行う。
【0043】
多関節ロボット12は、本体部22と、本体部22の上部から延びたアーム24と、を備えている。
【0044】
アーム24は、6つの関節部を介して連接された4つのアーム部を有する多関節アームであり、各関節でアーム部を回転させることで、アーム24の先端を任意の位置に移動させることが可能である。具体的には、アーム24は、本体部22側に位置する第1アーム部24Aと、第1アーム部24Aと本体部22とを接続する上側関節部23及び第1関節部25Aとを備えている。また、アーム24は、第1アーム部24Aの先端側に位置する第2アーム部24Bと、第2アーム部24Bと第1アーム部24Aとを接続する第2関節部25Bとを備えている。また、アーム24は、第2アーム部24Bの先端側に位置する第3アーム部24Cと、第3アーム部24Cと第2アーム部24Bとを接続する第3関節部25Cとを備えている。また、アーム24は、第3アーム部24Cの先端側に位置する第4アーム部24Dと、第4アーム部24Dと第3アーム部24Cとを接続する第4関節部25D及び第5関節部25Eとを備えている。
【0045】
第1アーム部24Aは、略直線状の筒状部で構成されている。上側関節部23及び第1関節部25Aには、本体部22と第1アーム部24Aとを相対的に回転させるモータ(図示省略)が設けられている。一例として、上側関節部23は、本体部22の上部に設けられており、本体部22に対して第1アーム部24Aを略水平方向に回転させる。一例として、第1関節部25Aは、上側関節部23の側部に設けられており、上側関節部23に対して第1アーム部24Aを略上下方向に回転させる。第2アーム部24Bは、略L字状の筒状部で構成されている。第2関節部25Bには、第2アーム部24Bと第1アーム部24Aとを相対的に回転させるモータ(図示省略)が設けられている。一例として、第2関節部25Bは、第1アーム部24Aの先端側部に設けられており、第1アーム部24Aに対して第2アーム部24Bを回転させる。
【0046】
第3アーム部24Cは、略直線状の筒状部で構成されている。第3関節部25Cには、第3アーム部24Cと第2アーム部24Bとを相対的に回転させるモータ(図示省略)が設けられている。一例として、第3関節部25Cは、第2アーム部24Bの先端側部に設けられており、第2アーム部24Bに対して第3アーム部24Cを回転させる。
【0047】
第4アーム部24Dは、略直線状の筒状部で構成されている。第4関節部25D及び第5関節部25Eには、それぞれ第4アーム部24Dと第3アーム部24Cとを相対的に回転させるモータ(図示省略)が設けられている。一例として、第4関節部25Dは、第3アーム部24Cの先端部に上下方向に沿って配置されており、第3アーム部24Cに対して第4アーム部24Dを略水平方向に回転させる。一例として、第5関節部25Eは、第4関節部25Dの下部に設けられており、第4アーム部24Dを周方向に回転させる。
【0048】
なお、位置決め装置10は、上記構成に限定されるものではなく、アーム部と関節部の数、位置及び形状のいずれかを変更してもよい。
【0049】
位置決め装置10では、各モータの回転量を制御することにより、第4アーム部24Dの先端部を空間内の任意の位置に移動させることが可能である。位置決め装置10では、アーム24により移動装置14を載置部18まで移動させる。
【0050】
移動装置14は、一例として、支持部40を3軸方向の一例としてのX方向、Y方向及びX方向に移動させる、いわゆる3軸の直動ステージである。位置決め装置10は、載置部18の位置にある移動装置14を駆動することにより、組付け対象の双方の部品の細かな位置決めを行う。移動装置14については、後述する。
【0051】
アーム24の可動範囲は、例えば、約500mm程度あり、対して、移動装置14の可動範囲は、約10mm程度である。アーム24の可動範囲は、移動装置14と比較して大きく、マクロ的な位置決めが可能である。対して、移動装置14の可動範囲は、約10mm程度と狭いが、位置決め精度はアーム24と比較して高いため、細かな位置決めが可能である。
【0052】
把持部16は、移動装置14に設けられた支持部26の上部に配置されている。把持部16は、組み付け対象の部品の一つを把持する。把持部16の詳細については、後述する。
【0053】
載置部18には、組み付け対象の部品が載置される。載置部18の詳細については、後述する。後述するように、載置部18に載置される部品は、把持部16によって把持される部品とは異なり、双方の部品が相対的に位置決めされた後、プレス機20によるかしめ加工による組み付けが行われる。
【0054】
次に、組み付け対象の部品について説明する。本例において、組み付け対象の部品は、図2に示すように、第1リング104及び第2リング106の2つのリングと、2つのリングを連結するためのピン102である。
【0055】
図2に示すように、ピン102、第1リング104及び第2リング106は、内視鏡の湾曲部110に用いられている。湾曲部110は、身体の内部に挿入される挿入部において、カメラ部等(図示せず)が設けられる先端部の基端側に連接される部分であり、カメラ部を上下方向及び左右方向に湾曲させる機能を有する。湾曲部110の内部には、第1リング104と第2リング106とが湾曲部110の軸方向に沿って交互に並べて配置されている。隣り合う第1リング104と第2リング106とは、周方向において180°間隔を空けた対向する2箇所でピン102により連結されている。隣り合う第1リング104と第2リング106とは、ピン102により連結された箇所でピン102を中心に相対的に回転する。
【0056】
より具体的に説明すると、例えば、図2において湾曲部110の軸方向の左側から右側に向かって見た場合、隣り合う左側の第1リング104と右側の第2リング106は、周方向の180°間隔で対向する2箇所でピン102により連結されている。次に隣り合う左側の第2リング106と右側の第1リング104は、上記左側の第1リング104と右側の第2リング106とを連結したそれぞれのピン102の位置から周方向に90°ずれた2箇所でピン102により連結されている。このようなピン102による連結を軸方向に繰り返すことで、第1リング104と第2リング106とが交互に連結されている。このように第1リング104と第2リング106は、1組ずつ交互に上下方向と左右方向に回転可能になっており、こうした回転により、湾曲部110が全体として上下左右に湾曲する。
【0057】
図3に示されるように、第1リング104と第2リング106とが交互に複数のピン102により連結された状態で、周方向における4箇所のピン102にそれぞれ軸方向に沿って1本ずつワイヤ112が挿通されている。すなわち、ワイヤ112は、上下方向の操作用として2本1組、及び左右方向の操作用として2本1組の合計4本設けられている。図示しない内視鏡の操作部により、上下方向または左右方向で対向するワイヤ112の一方を引っ張りかつ他方を押し出すことで、内視鏡の湾曲部110を湾曲させるための操作が可能となる。
【0058】
図4にも示すように、ピン102は、頭部102Aと、頭部102Aの一端側から突出する段付き軸部102Bとを備えている。頭部102Aの他端側(段付き軸部102Bと反対側)には、断面形状が凸型の円弧形状となる曲面120が形成されている。頭部102Aは、周方向の対向する位置に、軸方向に沿って略平行にカットされた2つの平面部122を備えている(図8参照)。さらに、頭部102Aは、2つの平面部122をピン102の軸方向と交差する方向に貫通する孔部124を備えている。孔部124には、湾曲部110を湾曲操作するためのワイヤ112が挿通される(図3参照)。
【0059】
ピン102が第1リング104と第2リング106とを連結する前の状態では、段付き軸部102Bは、頭部102A側の外径に対して先端側の外形が小さい段付きの形状とされている。より具体的には、軸部102Bは、頭部102A側に配置された大径部126Aと、大径部126Aの先端側に大径部126Aの外径よりも外径が小さい小径部126Bとを備えている(図8参照)。ピン102は、例えば、金属製とされている。
【0060】
図3及び図4に示すように、第1リング104は、環状の本体部104Aと、本体部104Aから軸方向(すなわち、本体部104Aの周方向と交差する方向)の一方側に延びた2つの突出部104Bと、本体部104Aから軸方向の他方側に延びた2つの突出部104C(図3及び図4では不図示)とを備えている。2つの突出部104Bは、本体部104Aの周方向における180°の位置に設けられている。2つの突出部104Cは、2つの突出部104Bに対して本体部104Aの周方向に90°ずれた位置に設けられている。
【0061】
2つの突出部104Bの外面は、本体部104Aの外周面よりも半径方向内側に配置されている。突出部104Bには、ピン102の段付き軸部102Bの大径部126Aが挿入される(すなわち、係合される)貫通孔130が形成されている。大径部126Aの外径は、貫通孔130の内径よりも小さい。また、2つの突出部104Cの外面は、本体部104Aの外周面と面一又は本体部104Aの外周面よりも僅かに半径方向外側に配置されている。突出部104Bには、ピン102の段付き軸部102Bの小径部126Bが挿入される(すなわち、係合される)貫通孔132が形成されている。貫通孔130の内径は、貫通孔132の内径よりも大きい。小径部126Bの外径は、貫通孔132の内径よりも小さい。
【0062】
同様に、第2リング106は、環状の本体部106Aと、本体部106Aから軸方向の一方側に延びた2つの突出部106Bと、本体部106Aから軸方向の他方側に延びた2つの突出部106C(図3及び図4では不図示)と、を備えている。2つの突出部106Bは、本体部106Aの周方向における180°の位置に設けられている。2つの突出部106Cは、2つの突出部106Bに対して本体部106Aの周方向に90°ずれた位置に設けられている。
【0063】
2つの突出部106Bの外面は、本体部106Aの外周面よりも半径方向内側に配置されている。突出部106Bには、ピン102の段付き軸部102Bの大径部126Aが挿入される貫通孔130が形成されている。また、2つの突出部106Cの外面は、本体部106Aの外周面と面一又は本体部104Aの外周面よりも僅かに半径方向外側に配置されている。突出部106Bには、ピン102の段付き軸部102Bの小径部126Bが挿入される貫通孔132が形成されている。
【0064】
一例として、第1リング104の突出部104Bの外側(すなわち、半径方向の外側)に第2リング106の突出部106Cが重ね合わされる。その際、突出部104Bと突出部106Cとは、貫通孔130と貫通孔132の位置が合うように配置されることで、貫通孔130と貫通孔132にピン102の段付き軸部102Bが挿入可能となる(すなわち、係合可能となる)。その際、貫通孔130に段付き軸部102Bの大径部126Aが挿入され、貫通孔132に段付き軸部102Bの小径部126Bが挿入される(図4参照)。
【0065】
第1リング104の貫通孔130と第2リング106の貫通孔132とを位置合わせした状態でピン102が挿入される。この状態でピン102の段付き軸部102Bをかしめることで、第1リング104の突出部104Bと第2リング106の突出部106Cとが連結される(図3参照)。
【0066】
図示を省略するが、第2リング106の突出部106Bの外側(すなわち、半径方向の外側)には、第1リング104の突出部104Cが重ね合わされる。その際、貫通孔130と貫通孔132の位置を合わせることで、貫通孔130と貫通孔132にピン102の段付き軸部102Bが挿入可能となる(すなわち、係合可能となる)。
【0067】
ここで、ピン102、第1リング104及び第2リング106は、組み付け対象の部品の一例である。そして、ピン102は、本開示の技術に係る第1部品の一例であり、第2リング106は、第1部品に組み付けられる第2部品の一例である。また、ピン102において、図4に示したように、曲面120を含む頭部102Aの外周面は、載置部18の載置面と接触する接触面の一例である。
【0068】
位置決め装置10の機能を概略すると、次のとおりである。上述のとおり、第1リング104及び第2リング106は、ピン102によってかしめ加工によって連結されるが、例えば、第1リング104及び第2リング106に対して、ピン102の姿勢が傾いた状態でピン102がかしめられてしまうと、第1リング104と第2リング106とがスムーズに回転しないといった不具合が生じる。第1リング104及び第2リング106のリング径は、約4mm~約十数mm程度であり、ピン102の軸の直径は、例えば、0.6mm程度である。位置決め装置10は、このような非常に小さな部品を組み付ける際の位置決めを行う。
【0069】
本例においては、後述するように、載置部18には、ピン102と第1リング104とが予め載置されている。この載置部18に、把持部16によって把持された第2リング106が多関節ロボット12を用いて移動される。ピン102は、載置面が曲面120を含んでいるため、載置部18において姿勢が不安定である。第1実施形態においては、位置決め装置10は、移動装置14によって第2リング106を介してピン102の姿勢を補正することにより、ピン102と第2リング106との位置決めを行う。
【0070】
次に、移動装置14の構成について説明する。
【0071】
図5に示すように、移動装置14は、多関節ロボット12の第4アーム部24Dの先端部に設けられている(図1参照)。移動装置14は、第4アーム部24Dの先端部に固定された基体30と、基体30に対してY方向に移動するY方向移動ステージ32とを備えている。また、移動装置14は、Y方向移動ステージ32に対してX方向に移動するX方向移動ステージ34と、X方向移動ステージ34に対してZ方向に移動するZ方向移動ステージ36とを備えている。第1実施形態では、Y方向は、第1方向の一例であり、水平方向に沿った方向である。X方向は、同一平面内において第1方向と交差する第2方向の一例である。例えば、X方向は、Y方向と直交する方向である。Z方向は、X方向及びY方向に直交する方向、すなわち鉛直方向(上下方向)に沿った方向である。
【0072】
基体30は、板状体30Aと、ガイド部30Bとを備えている。板状体30Aは、側面視にてL字状とされており、板状体30Aの一端側は水平方向に沿って配置され、板状体30Aの他端側は上下方向に沿って配置されている。ガイド部30Bは、板状体30Aの一端側の上部に設けられている。板状体30Aの他端側は、第4アーム部24Dの先端部に取り付けられている。ガイド部30Bは、X方向に沿った断面がU字状の形状とされており、Y方向に沿って配置されている。ガイド部30Bは、Y方向移動ステージ32の移動方向を規定し、かつY方向移動ステージ32をガイドする。
【0073】
Y方向移動ステージ32は、基体30のガイド部30Bの上側に配置されている。Y方向移動ステージ32は、本体部32Aの下部に設けられた一対の摺動部32Bと、本体部32Aの上部に設けられたガイド部32Cとを備えている。一対の摺動部32Bは、基体30のガイド部30BのX方向の両端部に摺動可能に係合する凹状の形状とされている。一対の摺動部32Bは、ガイド部30Bに沿ってY方向に摺動可能とされている。ガイド部32Cは、Y方向に沿った断面がU字状の形状とされており、X方向に沿って配置されている。ガイド部32Cは、X方向移動ステージ34の移動方向を規定し、かつX方向移動ステージ34をガイドする。
【0074】
X方向移動ステージ34は、Y方向移動ステージ32のガイド部32Cの上側に配置されている。X方向移動ステージ34は、本体部34Aの下部に設けられた一対の摺動部34B(図5では奥側が不図示)と、本体部34Aの上部に設けられたガイド部34Cとを備えている。一対の摺動部34Bは、Y方向移動ステージ32のガイド部32CのY方向の両端部に摺動可能に係合する凹状の形状とされている。一対の摺動部34Bは、ガイド部32Cに沿ってX方向に摺動可能とされている。ガイド部34Cは、本体部34Aの上部に上下方向に沿って配置されており、Y方向に沿った断面がU字状の形状とされている。ガイド部34Cは、Z方向移動ステージ36の移動方向を規定し、かつZ方向移動ステージ36をガイドする。
【0075】
Z方向移動ステージ36は、X方向移動ステージ34のガイド部34Cの側方に配置されている。Z方向移動ステージ36は、L字状の板状体36Aと、板状体36Aの一端側の側部に設けられた一対の摺動部36B(図5では奥側が不図示)とを備えている。板状体36Aの一端側は上下方向に沿って配置されており、板状体36Aの他端側は水平方向に沿って配置されている。一対の摺動部36Bは、Z方向移動ステージ36のガイド部34CのY方向の両端部に摺動可能に係合する凹状の形状とされている。一対の摺動部36Bは、ガイド部34Cに沿ってZ方向に摺動可能とされている。
【0076】
板状体36Aの他端側の上部には、支持部26が取り付けられている。支持部26は、把持部16を支持する。支持部26の上部には、凹部26Aが形成されており、凹部26A内を把持部16が移動可能とされている。凹部26Aは、Y方向に沿って配置されている。
【0077】
把持部16は、一対の本体部40A及び40Bと、本体部40Aの上部から延びた一方のチャック42Aと、本体部40Bの上部から延びた他方のチャック42Bとを備えている。本体部40A及び40Bは、後述する電動のアクチュエータ62(図10参照)により互いに近接する方向、及び離れる方向に移動する。チャック42A及び42Bは、Y方向に沿った断面形状が対称とされており、対向する位置に凹状の湾曲面が形成されている。チャック42A及び42Bは、互いに近接する方向に移動することで第2リング106を把持する。
【0078】
載置部18は、棒状の部材で構成されている。載置部18の一端部は、支持部48に着脱可能に支持されている。載置部18は、載置部18の軸方向がX方向となるように支持部48に支持されている。載置部18の外径は、第1リング104及び第2リング106の内径よりも小さい。これにより、載置部18に第1リング104及び第2リング106を外挿することが可能である。
【0079】
図6図9に示すように、載置部18の上部には、平面部18Aが形成されており、平面部18Aにピン102が載置される凹部44が形成されている(図8参照)。凹部44は、載置面の一例である。凹部44は、上下方向に沿って配置された縦壁44Aと、縦壁44Aの奥側(図8において下方)に形成された凹状の湾曲面44Bとを備えている。縦壁44Aは、平面視にて円形状に形成されており、縦壁44Aの内径は、ピン102の頭部102Aの外径よりも大きい。湾曲面44BのY方向の断面形状は、頭部102AのY方向(図9参照)に沿った曲面120の形状に合わせて湾曲している(図8参照)。凹部44のX方向の断面形状は、凹部44のY方向の断面形状と同様である。凹部44には、ピン102の頭部102Aが挿抜可能に載置されている。一例として、ピン102の頭部102Aは、2つの平面部122がY方向に沿うように、載置部18の凹部44に載置されている(図8参照)。すなわち、2つの平面部122は、X方向と交差(第1実施形態では直交)している。
【0080】
図6(A)に示すように、ピン102と、第1リング104及び第2リング106の組み付けが行われる際には、載置部18の凹部44に、ピン102の頭部102Aが載置される。一例として、ピン102の頭部102Aは、ユーザーの手動により凹部44に載置される。例えば、載置部18の凹部44にはピン102との間に隙間があり、載置部18の凹部44において、ピン102は、姿勢が変化可能な状態で載置される。
【0081】
その後、例えば、第1リング104を載置部18に外挿し、第1リング104の貫通孔130をピン102の段付き軸部102Bに係合する。一例として、ユーザーの手動により第1リング104の貫通孔130をピン102の段付き軸部102Bに係合する。このとき、第1リング104の貫通孔130をピン102の段付き軸部102Bの大径部126Aに係合する。
【0082】
さらに、図6(B)に示すように、第2リング106を把持部16のチャック42A及び42Bで把持し、チャック42A及び42Bを移動装置14によりX方向に移動させることで、第2リング106を載置部18に外挿する。さらに、チャック42A及び42Bを移動装置14によりZ方向等に移動させることで、第2リング106の貫通孔132をピン102の段付き軸部102Bに係合する。このとき、第2リング106の貫通孔132をピン102の段付き軸部102Bの小径部126Bに係合する。
【0083】
図5において、プレス機20は、上下方向に沿って移動する加圧部20Aを備えている。プレス機20は、図示しないアクチュエータにより加圧部20Aを上下方向下側に移動させ、載置部18に載置されたピン102の段付き軸部102Bに加圧部20Aを押し付ける。これにより、ピン102の段付き軸部102Bをかしめることにより、ピン102によって、第1リング104と第2リング106とを連結することが可能である。ピン102の段付き軸部102Bのかしめ加工は、載置部18の凹部44に載置されたピン102を位置合わせした後に行われる。
【0084】
図10に示すように、移動装置14は、Y方向移動ステージ32を移動させるY方向用のアクチュエータ50と、Y方向移動ステージ32の変位量を検出する変位量検出部52とを備えている。また、移動装置14は、X方向移動ステージ34を移動させるX方向用のアクチュエータ54と、X方向移動ステージ34の変位量を検出する変位量検出部56とを備えている。また、移動装置14は、Z方向移動ステージ36を移動させるZ方向用のアクチュエータ58と、Z方向移動ステージ36の変位量を検出する変位量検出部60とを備えている。アクチュエータ50、54及び58は、例えば、ボイスコイルモータである。変位量検出部52、56及び60は、例えば、リニアエンコーダである。
【0085】
また、移動装置14は、把持部16のチャック42A及び42Bを接近及び離間させる方向に移動させるアクチュエータ62を備えている。さらに、移動装置14は、移動装置14の各部を制御する制御部70を備えている。
【0086】
制御部70は、メモリ72と、位置決め制御部74と、アーム制御部76と、把持制御部78とを有している。制御部70は、例えば、プロセッサにより構成されている。プロセッサの一例は、プログラムを実行することにより各種の制御を行うCPU(Central Processing Unit)である。CPUは、プログラムを実行することにより、位置決め制御部74、アーム制御部76及び把持制御部78を有する制御部70として機能する。メモリ72は、プロセッサとしてのCPUに接続又は内蔵されたメモリの一例である。
【0087】
メモリ72には、制御部70が各種の制御を行うために予め設定される設定情報73が記憶されている。設定情報73には、例えば、移動装置14により把持部16で把持された第2リング106を移動させる目標位置としてのアーム24の目標位置が記録されている。また、設定情報73には、位置決め制御を行う際に必要な情報が記録されている。具体的には、移動装置14により第2リング106を介してピン102に付与するY方向及びX方向の力、及びピン102の目標の姿勢とピン102の最大変位量との相関関係などが記録されている。これらについては後述する。
【0088】
アーム制御部76は、アーム24の駆動を制御する。アーム制御部76は、アーム24に備えられた複数のモータ(図示省略)の回転を制御することで、アーム24の先端をX方向、Y方向及びZ方向の任意の位置に移動させる。アーム制御部76は、設定情報73におけるアーム24の目標位置に基づき、アーム24を目標位置に移動させる。これにより、アーム24の先端に配置された移動装置14の把持部16が載置部18と対向する位置に移動する。
【0089】
把持制御部78は、把持部16におけるアクチュエータ62の駆動を制御する。把持制御部78は、アクチュエータ62駆動を制御することで、例えば、チャック42A及び42Bにより第2リング106を把持する。
【0090】
位置決め制御部74は、Y方向用のアクチュエータ50の駆動と、X方向用のアクチュエータ54の駆動と、Z方向用のアクチュエータ58の駆動を制御する。また、位置決め制御部74には、変位量検出部52の検出信号と、変位量検出部56の検出信号と、変位量検出部60の検出信号が入力される。また、位置決め制御部74は、メモリ72から設定情報73を読み出す。位置決め制御部74は、設定情報73及び検出信号に基づいて、各アクチュエータ50、54及び58を駆動することで、第2リング106とピン102との位置決め制御を行う。また、位置決め制御部74は、アクチュエータ50の駆動を制御することにより部品としてピン102に力を付与する「力付与部」、載置部18におけるピン102の最大変位量を導出する「導出部」、導出した補正量に基づいてピン102の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する「補正部」の一例である。
【0091】
一例として図11に示すように、位置決め制御部(力付与部又は補正部)74は、目標位置信号発生部300、目標力信号発生部301、第1加速度信号生成部302、第2加速度信号生成部303、駆動信号生成部304、及び反力推定部305を含む。
【0092】
目標位置信号発生部300は、ピン102の目標の位置を示す目標位置信号POrefを発生する。目標位置信号発生部300は、目標位置信号POrefを第1加速度信号生成部302に出力する。
【0093】
目標力信号発生部301は、ピン102に与える目標の力を示す目標力信号Frefを発生する。目標力信号発生部301は、目標力信号Frefを第2加速度信号生成部303に出力する。
【0094】
第1加速度信号生成部302は、目標位置信号POrefと位置信号POとに基づいて、第1加速度信号a1を生成する。第1加速度信号生成部302は、第1加速度信号a1を駆動信号生成部304に出力する。位置信号POは、ピン102の位置を示す信号であり、変位量検出部52、56、又は60から出力される検出信号である。第1加速度信号生成部302は、より詳しくは、目標位置信号POrefと位置信号POとの差を求め、求めた差に適当な演算を施すことで、差を第1加速度信号a1に変換する。目標位置信号POrefと位置信号POとの差は、ピン102の目標の位置と実際の位置とのずれである。このため、第1加速度信号a1は、ピン102の目標の位置と実際の位置とのずれを間接的に表す。
【0095】
第2加速度信号生成部303は、目標力信号Frefと反力推定信号Fとに基づいて、第2加速度信号a2を生成する。第2加速度信号生成部303は、第2加速度信号a2を駆動信号生成部304に出力する。反力推定信号Fは、反力推定部305で推定した、ピン102から受ける反力を示す信号である。第2加速度信号生成部303は、より詳しくは、目標力信号Frefと反力推定信号Fとの和を求め、求めた和に適当な演算を施すことで、和を第2加速度信号a2に変換する。目標力信号Frefと反力推定信号Fとの和は、ピン102に与える目標の力と、ピン102から受ける反力とのずれである。このため、第2加速度信号a2は、ピン102に与える目標の力と、ピン102から受ける反力とのずれを間接的に表す。
【0096】
駆動信号生成部304は、第1加速度信号a1または第2加速度信号a2のいずれかに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号生成部304は、駆動信号Iをアクチュエータ50、54、又は58、並びに反力推定部305に出力する。駆動信号Iは、アクチュエータ50、54、又は58に入力される駆動電流値であり、ピン102の目標の位置と実際の位置とのずれ、及びピン102に与える目標の力と、ピン102から受ける反力とのずれを解消するための信号である。駆動信号生成部304は、より詳しくは、第1加速度信号a1または第2加速度信号a2のいずれかに適当な演算を施すことで、第1加速度信号a1または第2加速度信号a2のいずれかを駆動信号Iに変換する。
【0097】
反力推定部305は、駆動信号生成部304からの駆動信号Iと、変位量検出部52、56、又は60からの位置信号POとから、ピン102から受ける反力を推定する。反力推定部305は、推定した反力に応じた反力推定信号Fを第2加速度信号生成部303に出力する。
【0098】
ピン102が例えば凹部44中を移動している場合は、位置信号POは時々刻々と変化する。この場合にピン102から受ける反力は、主として移動により生じる摩擦力である。ピン102が例えば凹部44の縦壁44Aに当たる等して、ピン102がそれ以上変位しなくなった場合は、位置信号POは変化しなくなる。この場合にピン102から受ける反力は、アクチュエータ50、54、又は58を介してピン102に付与される力に等しい。
【0099】
位置決め制御部74は、ある時間Tに生成された駆動信号Iによってアクチュエータ50、54、又は58が駆動され、これによりピン102の実際の位置(位置信号PO)、又はピン102から受ける反力(反力推定信号F)が変わる度に、それらに見合った時間T+Δ(Δは例えば数msec)における新たな駆動信号Iを生成する。こうしてループ的な制御を行うことで、位置決め制御部74は、ピン102の位置を目標の位置に一致させ、あるいは、ピン102に与える目標の力とピン102から受ける反力とを釣り合わせる。なお、位置決め制御部74の詳細構成については、特許第4696307号も参照されたい。
【0100】
以下において、図12において、ピン102、第1リング104及び第2リング106の組み付け工程の概略を示した後、図13から図16において、位置決め処理の詳細を説明する。
【0101】
図12は、ピン102、第1リング104及び第2リング106の組み付け工程の全体を模式的に示す。組み付け工程において、(1)の工程では、まず受台としての載置部18の凹部44にピン102がセット(すなわち、載置)される。このとき、ピン102の頭部102Aが載置部18の凹部44に挿入される。さらに、ピン102の段付き軸部102Bに第1リング104の貫通孔130を係合させ、その状態で、第1リング104が載置部18にセットされる。このとき、段付き軸部102Bの大径部126Aに第1リング104の貫通孔130を係合する。本例では、ユーザーの手動により、載置部18の凹部44へのピン102のセットと、第1リング104の載置部18へのセットが行われる。
【0102】
その後、(2)の工程では、把持部16のチャック42A及び42Bで第2リング106を把持し、把持部16を移動させることで(図6参照)、ピン102の段付き軸部102Bに第2リング106の貫通孔132を係合する。このとき、段付き軸部102Bの小径部126Bに第1リング104の貫通孔130を係合する。第2リング106を把持した把持部16の載置部18への移動は、アーム制御部76(図10参照)が多関節ロボット12を制御することにより行う。設定情報73(図10参照)には、アーム24の目標位置として載置部18の位置が記録されており、アーム制御部76は、アーム24を制御することにより、把持部16を目標位置に移動する。上述のとおり、移動装置14の可動範囲は、約10mm程度なので、アーム24の目標位置は、X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向の3軸方向のそれぞれにおける約10mmの移動によって、第2リング106とピン102との位置決めが可能な程度の位置に設定される。
【0103】
その後、(3)の工程で、載置部18の凹部44に載置されたピン102の位置決め処理を行う。位置決め処理については、後に説明する。
【0104】
その後、(4)の工程で、プレス機20の加圧部20Aでピン102の段付き軸部102Bにかしめ加工を施すことで、ピン102と、第1リング104及び第2リング106とを組み付ける。例えば、ピン102の段付き軸部102Bにかしめ加工を施し、ピン102を第2リング106に固定することにより、ピン102により第1リング104と第2リング106とが連結される。
【0105】
図13から図16を参照しながら、位置決め処理を説明する。位置決め処理は、位置決め制御部74が移動装置14の駆動を制御することによって行われる。図13には、ピン102のY方向における位置決め処理が示されている。図13では構成を分かりやすくするため、第1リング104の図示を省略している。
【0106】
上述したとおり、ピン102と載置部18の凹部44との間には隙間があるため、頭部102Aの曲面で凹部44と接するピン102は、傾斜した姿勢になっている場合が多い。本例の位置決め処理では、このように傾斜しているピン102の姿勢を、ピン102の軸が鉛直方向と平行となる目標の姿勢に補正する。
【0107】
図13において、例えば、Y方向において180°向きが異なる2つの方向を正方向と負方向とする。Y方向における位置決め処理では、まず、ピン102を負方向の一方にいったん片寄せする。本例では、(1)の工程で、把持部16に把持された第2リング106をピン102に接触させることにより、ピン102にY方向における負方向の力を付与する。これにより、ピン102が負方向へ片寄せされる。ここで、片寄せとは、載置部18の凹部44内において、ピン102の一部を凹部44の内壁と接触させ、かつ、接触部分とは180°反対方向において、ピン102と凹部44の内壁との間に隙間が生じる状態をいう。
【0108】
Y方向における負方向の力の付与は、位置決め制御部74が移動装置14のY方向移動ステージ32により把持部16を負方向に移動させることにより行われる。把持部16が負方向に移動すると、把持部16に把持された第2リング106がピン102を押し、ピン102に負方向の力が付与される。ピン102に付与する力は、予め決められており、設定情報73に記録されている。位置決め制御部74は、Y方向移動ステージ32のアクチュエータ50の電流値を制御することにより、第2リング106を介してピン102に力を付与する。
【0109】
これにより、ピン102がY方向における負方向に変位し、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たる。ピン102が縦壁44Aに当たると、ピン102は縦壁44Aから反力を受ける。位置決め制御部74がアクチュエータ50を介してピン102に付与する力と、縦壁44Aからの反力とが釣り合うと、ピン102がそれ以上変位しなくなる。このとき、位置決め制御部74は、(2)の工程で、Y方向移動ステージ32の移動前の初期位置からピン102が片寄せされた状態のY方向移動ステージ32の位置を、ピン102のY方向の負方向における片寄せ位置として、変位量検出部52により検出する。
【0110】
位置決め制御部74は、(3)の工程で、ピン102が負方向に片寄せされた状態から、アクチュエータ50を通じて正方向に力を付与する。具体的には、把持部16に把持された第2リング106をピン102に接触させることにより、ピン102にY方向における正方向の力を付与する。正方向の力は、負方向の力と同じ大きさで向きが異なる力である。これにより、ピン102がY方向における正方向に変位し、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たり、位置決め制御部74がアクチュエータ50を介してピン102に付与する力と、縦壁44Aからの反力とが釣り合うと、ピン102がそれ以上変位しなくなる。
【0111】
さらに、位置決め制御部74は、(4)の工程で、ピン102のY方向における最大変位量Ymaxを導出する。最大変位量Ymaxは、ピン102が負方向に片寄せされた状態を基準位置とし、基準位置からピン102が正方向に変位しなくなったところまでのピン102の変位量である。位置決め制御部74は、この最大変位量Ymaxを、変位量検出部52を通じて検出されるY方向移動ステージ32の移動量に基づいて導出する。
【0112】
その後、位置決め制御部74は、(5)の工程で、ピン102の最大変位量Ymaxに基づいて、ピン102の姿勢を補正するための補正量を導出する。位置決め制御部74は、設定情報73に記憶されたピン102の目標の姿勢とピン102の最大変位量との相関関係に基づいて、補正量を導出する。本例においては、相関関係は、ピン102の最大変位量Ymaxの半分である。つまり、ピン102の最大変位量Ymaxは、凹部44内においてピン102がY方向で変位可能な最大量であるため、最大変位量Ymaxを二等分する位置にピン102の中心が合う位置が目標の姿勢と考えられる。位置決め制御部74は、最大変位量Ymaxを2で割った値を、ピン102が正方向に片寄せされている状態から目標の姿勢に補正するための補正量として導出する。
【0113】
ピン102は、正方向に変位しているため、位置決め制御部74は、(6)の工程で、Y方向移動ステージ32を負方向に、導出した補正量だけ移動させる。具体的には、把持部16に把持された第2リング106をピン102に接触させることにより、ピン102を補正する。これにより、ピン102が目標の姿勢に補正される。
【0114】
図14には、ピン102のX方向における位置決め処理が示されている。図14では構成を分かりやすくするため、第1リング104の図示を省略している。図14において、例えば、X方向において180°向きが異なる2つの方向を正方向と負方向とする。X方向における位置決め処理では、まず、ピン102を負方向の一方にいったん片寄せする。本例では、(1)の工程で、把持部16に把持された第2リング106をピン102に接触させることにより、ピン102にX方向における負方向の力を付与する。これにより、ピン102が負方向へ片寄せされる。
【0115】
X方向における負方向の力の付与は、位置決め制御部74が移動装置14のX方向移動ステージ34により把持部16を負方向に移動させることにより行われる。把持部16が負方向に移動すると、把持部16に把持された第2リング106がピン102を押し、ピン102に負方向の力が付与される。ピン102に付与する力は、予め決められており、設定情報73に記録されている。位置決め制御部74は、X方向移動ステージ34のアクチュエータ54の電流値を制御することにより、第2リング106を介してピン102に力を付与する。
【0116】
これにより、ピン102がX方向における負方向に変位し、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たる。ピン102が縦壁44Aに当たると、ピン102は縦壁44Aから反力を受ける。位置決め制御部74がアクチュエータ54を介してピン102に付与する力と、縦壁44Aからの反力とが釣り合うと、ピン102がそれ以上変位しなくなる。このとき、位置決め制御部74は、(2)の工程で、X方向移動ステージ34の移動前の初期位置からピン102が片寄せされた状態のX方向移動ステージ34の位置を、ピン102のX方向の負方向における片寄せ位置として、変位量検出部56により検出する。
【0117】
位置決め制御部74は、(3)の工程で、ピン102が負方向に片寄せされた状態から、アクチュエータ54を通じて正方向に力を付与する。具体的には、把持部16に把持された第2リング106をピン102に接触させることにより、ピン102にX方向における正方向の力を付与する。正方向の力は、負方向の力と同じ大きさで向きが異なる力である。これにより、ピン102がX方向における正方向に変位し、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たり、位置決め制御部74がアクチュエータ54を介してピン102に付与する力と、縦壁44Aからの反力とが釣り合うと、ピン102がそれ以上変位しなくなる。
【0118】
さらに、位置決め制御部74は、(4)の工程で、ピン102のX方向における最大変位量Xmaxを導出する。最大変位量Xmaxは、ピン102が負方向に片寄せされた状態を基準位置とし、基準位置からピン102が正方向に変位しなくなったところまでのピン102の変位量である。位置決め制御部74は、この最大変位量Xmaxを、変位量検出部56を通じて検出されるX方向移動ステージ34の移動量に基づいて導出する。
【0119】
その後、位置決め制御部74は、(5)の工程で、ピン102の最大変位量Xmaxに基づいて、ピン102の姿勢を補正するための補正量を導出する。位置決め制御部74は、設定情報73に記憶されたピン102の目標の姿勢とピン102の最大変位量との相関関係に基づいて、補正量を導出する。本例においては、相関関係は、ピン102の最大変位量Xmaxの半分である。つまり、ピン102の最大変位量Xmaxは、凹部44内においてピン102がX方向で変位可能な最大量であるため、最大変位量Xmaxを二等分する位置にピン102の中心が合う位置が目標の姿勢と考えられる。位置決め制御部74は、最大変位量Xmaxを2で割った値を、ピン102が正方向に片寄せされている状態から目標の姿勢に補正するための補正量として導出する。
【0120】
ピン102は、正方向に変位しているため、位置決め制御部74は、(6)の工程で、X方向移動ステージ34を負方向に、導出した補正量だけ移動させる。これにより、ピン102が目標の姿勢に補正される。
【0121】
図15及び図16を用いて、図13及び図14で示したピン102の位置決め処理の原理的な説明を補足する。図15はY方向の位置決め処理の原理の概念図であり、図16はX方向の位置決め処理の原理の概念図である。図15及び図16もどちらもピン102を上方から見た図である。なお、図15において、Y軸の上方が負、下方が正として、以下説明する。
【0122】
Y方向の位置決め処理において、まず、図15(A)に示すように、載置部18の凹部44に、ピン102がセットされているとする。ピン102は凹部44内において傾斜しているため、ピン102の軸の中心C1は、X軸とY軸の交点で示す凹部44の中心Oに対してずれている。図15(A)の例では、中心C1は、Y軸に対してもずれているし、X軸に対してもずれている。Y方向の位置決め処理は、中心C1をY軸に一致させる処理である。
【0123】
図15(A)の状態で、ピン102に対して負方向の力が付与される。そうすると、図15(B)に示すように、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たり、ピン102が負方向に片寄せされる。図15(B)において、ピン102と凹部44との接点を黒丸で示している。この状態から、ピン102に対して正方向の力が付与される。そうすると、図15(C)に示すように、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たり、ピン102が正方向に片寄せされる。ピン102が負方向に片寄せされている状態のピン102の中心C1の位置(図15(B)に示す位置)をY1、ピン102が正方向に片寄せされている状態のピン102の中心C1の位置(図15(C)に示す位置)をY2とすると、Y1とY2の差が最大変位量Ymaxとなる。そして、最大変位量Ymaxの半分(Ymax/2)が補正量として導出され、補正量に基づいて、ピン102が図15(C)に示す状態から、図15(D)に示す状態に補正される。図15(D)においては、ピン102の中心C1がY軸と一致している。これにより、Y方向の位置決め処理が完了する。
【0124】
なお、図15に示したように、凹部44及びピン102が平面視で円形の場合は、ピン102の中心C1が、X軸に対してずれた位置にある状態では、最大変位量Ymaxは、中心C1がX軸と一致している状態の最大変位量とは一致しない。このように、最大変位量Ymaxは、ピン102の中心C1のX軸に対する位置に応じて変化する量であり、次のように定義される。本例においては、図15(B)に示すように、載置部18の凹部44に載置されたピン102が負方向に片寄せされている状態を基準位置とした場合において、図15(C)に示すように、ピン102に対して正方向に向けて予め決められた力を付与し、かつ、付与された力と反対の負方向にピン102が受ける反力によってピン102が変位しなくなる状態までの基準位置からの変位量をいう。
【0125】
より一般化すると、最大変位量は、載置部に載置された部品が一方に片寄せされている状態を基準位置とした場合において、基準位置にある部品に対して他方に向けて予め決められた力を付与し、かつ、付与された力と反対方向に部品が受ける反力によって部品が変位しなくなる状態までの基準位置からの変位量をいう。
【0126】
図16に示すX方向の位置決め処理は、図15に示すY方向の位置決め処理と基本的に同様である。ただし、図16に示すX方向の位置決め処理では、Y方向の位置決め処理が完了しているため、ピン102の中心C1はY軸と一致している。図16(A)に示すように、ピン102の中心C1は、X軸とY軸の交点で示す凹部44の中心Oに対してずれているが、図16(A)においては、ピン102の中心C1はY軸とは一致しており、X軸に対してのみずれている。X方向の位置決め処理は、中心C1をX軸に一致させる処理である。
【0127】
図16(A)の状態で、ピン102に対して負方向の力が付与される。そうすると、図16(B)に示すように、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たり、ピン102が負方向に片寄せされる。図16(B)において、ピン102と凹部44との接点を黒丸で示している。この状態から、ピン102に対して正方向の力が付与される。そうすると、図16(C)に示すように、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たり、ピン102が正方向に片寄せされる。ピン102が負方向に片寄せされている状態のピン102の中心C1の位置(図16(B)に示す位置)をX1、ピン102が正方向に片寄せされている状態のピン102の中心C1の位置(図16(C)に示す位置)をX2とすると、X1とX2の差が最大変位量Xmaxとなる。そして、最大変位量Xmaxの半分(Xmax/2)が補正量として導出され、補正量に基づいて、ピン102が図16(C)に示す状態から、図16(D)に示す状態に補正される。図16(D)においては、ピン102の中心C1がX軸と一致している。これにより、X方向の位置決め処理が完了する。また、図16(D)においては、ピン102のY方向の位置決め処理も完了しているため、ピン102の中心C1は、X軸とY軸の交点と一致している。
【0128】
なお、最大変位量Xmaxの定義についても、最大変位量Ymaxの定義と同様である。すなわち、凹部44及びピン102が平面視で円形の場合は、ピン102の中心C1が、Y軸に対してずれた位置にある状態では、最大変位量Xmaxは、中心C1がY軸と一致している状態の最大変位量とは一致しない。最大変位量Xmaxは、ピン102の中心C1のY軸に対する位置に応じて変化する量である。なお、図16の例では、Y方向の位置決め処理が完了後の状態を示しているため、本例の場合は、ピン102の中心C1がY軸と一致している。
【0129】
一例として図17に示すように、図13及び図15で示したY方向の位置決め処理の力付与(ピン102の片寄せ)時においては、図11で示した目標位置信号POrefは、片寄せ位置が不定である(予見できない)ためなしである。位置信号POもなしである。目標力信号Frefは、ピン102が縦壁44Aに当たってそれ以上変位しなくなった場合に、アクチュエータ50を介してピン102に与えられている力FYpである。力FYpは、事前の実験等により予め確かめられる。反力推定信号Fは、Y方向用のアクチュエータ50の駆動電流値とY方向移動ステージ32の変位量検出部52の検出信号から反力推定部305が推定した、第2リング106がピン102から受ける反力を示す信号である。なお、力付与時とは、ピン102の片寄せの開始から終了までの間である。
【0130】
Y方向の位置決め処理の力付与時においては、目標位置信号POref及び位置信号POがなしであるため、第1加速度信号生成部302は作動せず、したがって第1加速度信号a1はなしである。一方、第2加速度信号生成部303は作動する。第2加速度信号a2は、目標力信号Frefである力FYpと、反力推定部305が推定した反力推定信号Fとの和から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第2加速度信号a2のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第2加速度信号a2を変換することで得られた、Y方向用のアクチュエータ50の駆動電流値である。なお、第1加速度信号生成部302が作動しない、とは、目標位置信号POref及び位置信号POは受け付けるが、第1加速度信号a1を生成しない場合と、目標位置信号POref及び位置信号PO自体を受け付けない場合とを含む。
【0131】
Y方向の位置決め処理の力付与時においては、図11で示したアクチュエータはY方向用のアクチュエータ50である。変位量検出部は、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52である。
【0132】
Y方向の位置決め処理の補正時においては、図11で示した目標位置信号POrefは、最大変位量Ymaxから求めた補正量、ここでは最大変位量Ymaxの半分の値(Ymax/2)である。補正量は、言うなればピン102の現在の位置から目標の位置までの移動量である。位置信号POは、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52の検出信号である。目標力信号Fref及び反力推定信号Fは、ともになしである。反力推定信号Fは、厳密にはピン102の移動により生じる摩擦力に応じた値が出力されるが、結局はデータとして使われないため、なしとしている。なお、ピン102を移動させるために予め設定された力を目標力信号Frefとしてもよい。
【0133】
Y方向の位置決め処理の補正時においては、目標力信号Fref及び反力推定信号Fがなしであるため、第2加速度信号生成部303は作動せず、したがって第2加速度信号a2はなしである。一方、第1加速度信号生成部302は作動する。第1加速度信号a1は、目標位置信号POrefである、最大変位量Ymaxから求めた補正量と、位置信号POである、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52の検出信号との差から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第1加速度信号a1のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第1加速度信号a1を変換することで得られた、Y方向用のアクチュエータ50の駆動電流値である。なお、第2加速度信号生成部303が作動しない、とは、目標力信号Fref及び反力推定信号Fは受け付けるが、第2加速度信号a2を生成しない場合と、目標力信号Fref及び反力推定信号F自体を受け付けない場合とを含む。
【0134】
Y方向の位置決め処理の補正時においても、力付与時と同じく、図11で示したアクチュエータはY方向用のアクチュエータ50である。変位量検出部は、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52である。なお、補正時とは、ピン102の位置及び姿勢の少なくとも一方の補正開始から終了までの間である。
【0135】
一例として図18に示すように、図14及び図16で示したX方向の位置決め処理の力付与(ピン102の片寄せ)時においては、図11で示した目標位置信号POrefは、片寄せ位置が不定である(予見できない)ためなしである。位置信号POもなしである。目標力信号Frefは、ピン102が縦壁44Aに当たってそれ以上変位しなくなった場合に、アクチュエータ54を介してピン102に与えられている力FXpである。力FXpは、力FYpと同様に、事前の実験等により予め確かめられる。反力推定信号Fは、X方向用のアクチュエータ54の駆動電流値とX方向移動ステージ34の変位量検出部56の検出信号から反力推定部305が推定した、第2リング106がピン102から受ける反力を示す信号である。
【0136】
X方向の位置決め処理の力付与時においては、目標位置信号POref及び位置信号POがなしであるため、第1加速度信号生成部302は作動せず、したがって第1加速度信号a1はなしである。一方、第2加速度信号生成部303は作動する。第2加速度信号a2は、目標力信号Frefである力FXpと、反力推定部305が推定した反力推定信号Fとの和から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第2加速度信号a2のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第2加速度信号a2を変換することで得られた、X方向用のアクチュエータ54の駆動電流値である。
【0137】
X方向の位置決め処理の力付与時においては、図11で示したアクチュエータはX方向用のアクチュエータ54である。変位量検出部は、X方向移動ステージ34の変位量検出部56である。
【0138】
X方向の位置決め処理の補正時においては、図11で示した目標位置信号POrefは、最大変位量Xmaxから求めた補正量、ここでは最大変位量Xmaxの半分の値(Xmax/2)である。位置信号POは、X方向移動ステージ34の変位量検出部56の検出信号である。目標力信号Fref及び反力推定信号Fは、ともになしである。Y方向の位置決め処理の場合と同じく、反力推定信号Fは、厳密にはピン102の移動により生じる摩擦力に応じた値が出力されるが、結局はデータとして使われないため、なしとしている。なお、ピン102を移動させるために予め設定された力を目標力信号Frefとしてもよい。
【0139】
X方向の位置決め処理の補正時においては、目標力信号Fref及び反力推定信号Fがなしであるため、第2加速度信号生成部303は作動せず、したがって第2加速度信号a2はなしである。一方、第1加速度信号生成部302は作動する。第1加速度信号a1は、目標位置信号POrefである、最大変位量Xmaxから求めた補正量と、位置信号POである、X方向移動ステージ34の変位量検出部56の検出信号との差から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第1加速度信号a1のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第1加速度信号a1を変換することで得られた、X方向用のアクチュエータ54の駆動電流値である。
【0140】
X方向の位置決め処理の補正時においても、力付与時と同じく、図11で示したアクチュエータはX方向用のアクチュエータ54である。変位量検出部は、X方向移動ステージ34の変位量検出部56である。
【0141】
このように、第1加速度信号a1を補正に寄与する制御に用い、第2加速度信号a2を力の付与に寄与する制御に用いることで、ピン102のような不安定なワークに対しても高精度な位置合わせをする制御を実現することができる。
【0142】
以下、上記構成による作用について、図19及び図20に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0143】
図19は、組み付け工程の流れを示すフローチャートである。図19に示すように、載置部18の凹部44にピン102と第1リング104を載置する(ステップS1000)。一例として、ユーザーの手動により、載置部18の凹部44にピン102を載置し、ピン102の段付き軸部102Bに第1リング104の貫通孔130とを係合させた状態で第1リング104を載置部18に載置する。
【0144】
アーム24と移動装置14で第2リング106をピン102と係合する目標位置に移動する(ステップS2000)。例えば、制御部70において、位置決め制御部74は、把持部16により第2リング106を把持し、第2リング106をピン102と係合する目標位置に移動する(図6参照)。より具体的には、本例では、制御部70のアーム制御部76がアーム24の移動を制御することで、第2リング106をピン102が配置された目標位置付近に移動する。目標位置付近とは、例えば、第2リング106とピン102とが係合する目標位置の上方位置である。そして、第2リング106が目標位置付近に移動した後、位置決め制御部74は移動装置14を用いて、第2リング106をX方向、Y方向及びZ方向に微小量移動させることにより、第2リング106を、ピン102と係合する目標位置に移動する。目標位置では、第2リング106の貫通孔130がピン102の段付き軸部102Bと係合する。つまり、第2リング106は、移動装置14による微調整が可能な目標位置付近までアーム制御部76によって移動され、その後、移動装置14によって目標位置付近から目標位置まで微調整される。
【0145】
その後、位置決め制御部74は、移動装置14を制御することによりピン102の位置決め処理を行う(ステップS3000)。
【0146】
図20に示すように、位置決め処理(ステップS3000)では、位置決め制御部74は、まず、図13に示したように、Y方向の位置決め処理を行う。ステップS3010で、位置決め制御部74は、Y方向における負方向の力をピン102に付与することにより、ピン102を負方向に片寄せする。本例では、位置決め制御部74は、アクチュエータ50によりY方向移動ステージ32をY方向における負方向に移動させ、第2リング106をピン102に接触させることにより、Y方向における負方向の力をピン102に付与する。これにより、ピン102が負方向に片寄せされる。
【0147】
次に、ステップS3020で、位置決め制御部74は、ピン102が負方向に片寄せされた状態のY方向移動ステージ32の位置を、変位量検出部52によって検出する。
【0148】
次に、ステップS3030で、位置決め制御部74は、負方向に片寄せされた状態のピン102に対して、Y方向における正方向の力を付与することにより、ピン102を正方向に片寄せする。
【0149】
次に、ステップS3040で、位置決め制御部74は、ピン102が負方向に片寄せされた状態から正方向に片寄せされた状態までのY方向移動ステージ32の変位量を、ピン102のY方向の最大変位量Ymaxとして、変位量検出部52によって検出する。
【0150】
次に、ステップS3050で、位置決め制御部74は、最大変位量Ymaxに基づいて、最大変位量Ymaxの半分の値を、Y方向の姿勢の補正量として導出する。
【0151】
次に、ステップS3060で、位置決め制御部74は、導出された補正量に基づいて、ピン102の姿勢を補正する。これにより、Y方向におけるピン102の姿勢が補正される。
【0152】
図示を省略するが、位置決め制御部74は、Y方向の位置決め処理の後、Y方向と同様の処理の流れにより、X方向の位置決め処理を実行する。これにより、X方向におけるピン102の姿勢が補正される。
【0153】
図20において、ステップS3000の位置決め処理の後、ピン102にかしめ加工を施す(ステップS4000)。第1実施形態の例では、プレス機20の加圧部20Aでピン102の段付き軸部102Bにかしめ加工を施すことで、ピン102によって、第1リング104及び第2リング106を連結する(図12参照)。
【0154】
以上説明したように、位置決め装置10は、力付与部、導出部及び補正部として機能する位置決め制御部74を備える。位置決め装置10では、載置部18の凹部44にピン102が載置される。例えば、載置部18の凹部44にはピン102との間に隙間があり、載置部18の凹部44において、ピン102は、姿勢が変化可能な状態で載置される。力付与部として機能する位置決め制御部74は、ピン102に対して、例えばY方向に沿って力を付与することで、載置部18の凹部44においてピン102をY方向に変位させる。ピン102をY方向に変位させることで、導出部として機能する位置決め制御部74は、ピン102のY方向における最大変位量を導出する。補正部として機能する位置決め制御部74は、最大変位量に基づいて、ピン102の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて、Y方向におけるピン102の姿勢を補正する。位置決め制御部74は、例えば、目標の姿勢と最大変位量との間の相関関係に基づいて目標の姿勢に補正するための補正量を導出する。
【0155】
これにより、載置部18の凹部44の加工精度が低く隙間がある場合でも、ピン102の姿勢の補正が可能である。このため、載置部18の加工精度を高くしなくて済む。上述したとおり、ピン102の直径は、1mmにも満たない。このように小さな部品を精度よく載置するためには、非常に高い加工精度が必要になり、こうした載置部18は非常に高コストになる。しかも、部品の種類が多い場合は、載置部18の種類も多くなるため、非常にコストがかさむ。本開示の技術は、載置部18の加工精度が低く隙間がある場合でも、従来と比較して、製造コストを抑制しつつ、高精度な部品の位置決めが可能となる。
【0156】
図11に示したように、位置決め制御部74は、ピン102の位置(位置信号PO)とピン102の目標の位置(目標位置信号POref)とに基づいて、補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号a1を生成する第1加速度信号生成部302、ピン102から受ける反力(反力推定信号F)とピン102に与える目標の力(目標力信号Fref)とに基づいて、力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号a2を生成する第2加速度信号生成部303、並びに、ピン102を変位させるための駆動信号Iを生成する駆動信号生成部304を含む。このため、ピン102を片寄せしたり正しい位置及び姿勢に直したりといった繊細な作業を精度よく行うことができる。
【0157】
また、載置部18においてピン102を限界まで傾けることにより最大変位量を導出し、導出した最大変位量に基づいて補正する。最大変位量の導出は画像検査システムを用いることなく導出することが可能である。そのため、画像検査システムを用いずにピン102の姿勢の補正が可能である。
【0158】
特に、図1及び図6に示したように、載置部18の上方にプレス機20が配置されているような場合は、ピン102の位置を検出する画像検査システムを配置することができない。このような場合に、本開示の技術は有効である。
【0159】
また、第1実施形態の位置決め装置10において、位置決め制御部74は、載置部18に載置されたピン102(部品の一例)に対し、水平方向(第1方向の一例)に沿って力を付与し、載置部18においてピン102を片寄せする力付与部と、片寄せされた片寄せ位置から、ピン102の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部として機能する。このような力付与部と補正部とを備えていることで、本開示の技術は、載置部18の加工精度が低く隙間がある場合でも、画像検査システムを用いることなく、かつ、従来と比較して、製造コストを抑制しつつ、高精度な部品の位置決めが可能となる。
【0160】
また、位置決め装置10では、導出部として機能する位置決め制御部74は、例えばY方向において、ピン102が負方向に片寄せされたのち、ピン102を正方向に変位させることによって、最大変位量を導出する。そして、補正部として機能する位置決め制御部74は、こうして導出された最大変位量に基づいて補正量を導出する。これにより、正方向と負方向の両方で姿勢等の変化が生じる部品の位置決めが可能となる。
【0161】
また、位置決め装置10では、力付与部として機能する位置決め制御部74は、Y方向と交差するX方向に対して正方向と負方向の力とを付与する。そして、位置決め制御部74は、Y方向とX方向のそれぞれにおいて、部品の姿勢等を補正する。これにより、複数の方向で位置決めが必要な部品に対応することができる。
【0162】
また、位置決め装置10では、水平方向に傾いている部品の姿勢等を補正することができる。
【0163】
また、位置決め装置10では、部品の一例であるピン102において、載置部18の凹部44と接触する接触面は、曲面120である。部品の接触面が曲面120である場合は、接触面が平面である場合(図32参照)と比較して、特に部品の姿勢が安定しないため、姿勢等を補正する必要性が高い。このような場合に、本開示の技術は特に有効である。
【0164】
また、位置決め装置10では、部品の一例であるピン102の曲面120は、第1方向の一例であるY方向と平行な断面形状が凹部44に向かって凸型の円弧形状となる面である。円弧形状の場合は、特に姿勢変化が大きいと考えられるため、本開示の技術は、このような部品を位置決めする際に有効である。
【0165】
また、位置決め装置10では、力付与部として機能する位置決め制御部74は、載置部18の凹部44に載置されたピン102(第1部品の一例)に組み付けられる第2リング106(第2部品の一例)をピン102と接触させることにより、ピン102に力を付与する。このため、位置決め装置10では、第1部品に力を付与するための位置決め専用の部材が不要となる。
【0166】
また、位置決め装置10では、補正部として機能する位置決め制御部74は、載置部18の凹部44に載置されたピン102(第1部品の一例)に組み付けられる第2リング106(第2部品の一例)をピン102と接触させることにより、ピン102の姿勢を補正する。このため、位置決め装置10では、第1部品の姿勢を補正するための位置決め専用の部材が不要となる。
【0167】
また、位置決め装置10は、ピン102(第1部品の一例)と第2リング106(第2部品の一例)との組み付けを行う。第2リング106は、ピン102の一部である段付き軸部102Bが挿入される穴の一例として貫通孔132を有している。ピン102と第2リング106との組み付けは、ピン102の姿勢の補正後に、ピン102に対するかしめ加工を施すことにより行われる。このため、位置決め装置10では、第1部品の少なくとも一部を第2部品の穴に係合させた状態で、第1部品の姿勢等が補正されるので、第1部品と第2部品とを精度よく組み付けることができる。
【0168】
また、第1実施形態の例では、組み付け対象の部品が内視鏡の湾曲部110を構成するピン102、第1リング104及び第2リング106である。ピン102の位置決めを正確に行うことにより、湾曲部の動きが鈍くなるという不具合の発生確率を低減することができる。もちろん、内視鏡の湾曲部110を構成する部品は、本開示の技術を適用する対象の一例であり、内視鏡以外の部品に対しても適用することは可能である。
【0169】
また、第1実施形態は、第1方向において、正方向と負方向の両方に部品を変位させることにより最大変位量を導出する例であるが、正方向と負方向のいずれかに部品を変位させることにより最大変位量を導出してもよい。例えば、載置部18にピン102を載置した場合に、ピン102が正方向と負方向のいずれかに片寄せされていれば、位置決め制御部74は、ピン102を反対方向に変位させるだけで最大変位量を導出することが可能である。
【0170】
〔変形例〕
上記例においては、Y方向及びX方向の位置決め処理を1回ずつ行う例で説明したが、Y方向及びX方向の少なくとも1つの方向の位置決め処理を複数回繰り返してもよい。図21は、Y方向及びX方向の各方向の位置決め処理を複数回繰り返す場合の手順を示すフローチャートである。
【0171】
図21に示すように、位置決め処理(ステップS3000A)では、位置決め制御部74は、Y方向の位置決め処理を実行する(ステップS3100)。Y方向の位置決め処理は、図13図15及び図20に示した手順で実行される。
【0172】
ステップS3200で、位置決め制御部74は、Y方向の位置決め処理が規定回数(例えば2回)終了したか否かを判断する。Y方向の位置決めが規定回数終了していない場合(ステップS3200において、NOの場合)、位置決め制御部74は、ステップS3100の処理に戻る。
【0173】
Y方向の位置決めが規定回数終了した場合(ステップS3200において、YESの場合)、制御部70は、X方向の位置決め処理を実行する(ステップS3300)。X方向の位置決め処理は、図14図16及び図20に示した手順で実行される。
【0174】
位置決め制御部74は、X方向の位置決めが規定回数(例えば2回)終了したか否かを判断する(ステップS3400)。X方向の位置決めが規定回数終了していない場合(ステップS3400において、NOの場合)、位置決め制御部74は、ステップS3300の処理に戻る。
【0175】
X方向の位置決めが規定回数終了した場合(ステップS3400において、YESの場合)、位置決め制御部74は、X方向の位置決め処理を終了する。
【0176】
このように各方向の位置決め処理を複数回繰り返すことで、次のような効果が得られる。図22を参照しながら、効果を説明する。図22においても、図15と同様に、Y軸の上方を負、下方を正として説明する。図22において、ピン102の中心C1は、Y軸とX軸の交点である凹部44の中心Oからずれた位置にあり、Y軸及びX軸の双方からずれている。
【0177】
図15と同様に、この状態で、Y方向における負方向(図22の上方)の力をピン102に付与した場合、ピン102はY方向における負方向に変位し、ピン102が凹部44の縦壁44Aに当たる。この場合、ピン102は、凹部44と接点S1において接触する。ピン102と凹部44とが円形の場合、Y軸の負方向に力を付与しても、ピン102に付与する力が大きい場合あるいはピン102と凹部44との摩擦力が低い場合は、図22における矢印Bに示すように、ピン102が凹部44の外周に沿ってY軸方向に変位する。
【0178】
この場合、ピン102の中心C1の位置も矢印B方向に移動する。このとき、ピン102を負方向に片寄せした位置を検出するタイミングが、ピン102の矢印B方向への移動前であった場合は、図22に示すΔYだけ、最大変位量Ymaxが大きく導出されてしまう可能性がある。つまり、最大変位量Ymaxは、ピン102を負方向に片寄せした状態を基準として、ピン102を正方向に片寄せした状態までピン102を変位させた場合の変位量である。そのため、ピン102を負方向に片寄せした位置を検出後に、ピン102が凹部44に沿って移動することによりピン102の位置が変化してしまうと、最大変位量Ymaxが正確に導出されない可能性がある。この場合、補正量は最大変位量Ymaxに基づいて導出されるため、補正量も正確に導出できない。そのため、不正確な補正量に基づいて、Y方向におけるピン102の姿勢を補正しても、ピン102の姿勢がY方向の目標位置からずれる可能性がある。
【0179】
この場合、ステップS3100及びS3200のように、Y方向の位置決めを規定回数繰り返すことで、Y方向におけるピン102の姿勢をより適切な位置に補正することができる。すなわち、Y方向の位置決め処理を行った場合に、図22に示すように、ピン102の接点S1が移動したとしても、接点S1の移動方向は、Y軸に近づく。接点S1がY軸に近づくほど、接点S1における凹部44の面はY方向と直交する方向に近づくため、ピン102の接点S1の移動は低減する。これにより、Y方向の位置決め処理を繰り返すことにより、最大変位量Ymaxを正確に導出することが可能となる。これにより、ピン102のY方向の姿勢を正確に補正することができる。
【0180】
図22では、Y方向におけるピン102の最大変位量のずれについて説明したが、X方向における最大変位量のずれについても同様である。このため、ステップS3300及びS3400のように、X方向の位置決めを規定回数繰り返すことにより、最大変位量Xmaxを正確に導出することが可能となる。これにより、ピン102のX方向の姿勢を正確に補正することができる。
【0181】
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態の位置決め装置10について説明する。なお、第2実施形態において、第1実施形態と同一の構成要素、部材等を有する場合は、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0182】
第2実施形態の位置決め装置10も、ピン102、第1リング104及び第2リング106の組み付けの際の位置決め処理を行う。第2実施形態の位置決め装置10では、第1実施形態の位置決め装置10と比較して、位置決め制御部74による位置決め処理の方法が異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0183】
第2実施形態においても、ピン102、第1リング104及び第2リング106を係合させるまでの処理は、図12に示す第1実施形態と同様である。すなわち、ピン102と第1リング104を載置部18に予めセットし、この状態で、把持部16によって第2リング106を載置部18に移動する。そして、第2リング106をピン102と係合させる。これにより、第1リング104の貫通孔130及び第2リング106の貫通孔132がピン102の段付き軸部102Bに係合された状態となる。この後に、ピン102の位置決め処理が行われる。
【0184】
図23には、第2実施形態の位置決め装置10におけるピン102の位置決め処理が示されている。位置決め装置10は、第1実施形態と同様に、X方向及びY方向の2つの方向について同様の位置決め処理を行う。図23に示す位置決め処理は、X方向及びY方向のどちらについても適用可能である。
【0185】
把持部16は、第2リング106を設定情報73に記録されている目標位置まで移動する。第2リング106の目標位置までの移動は、アーム24の移動によって目標位置の上方位置まで移動し、その後、移動装置14によってX方向、Y方向及びZ方向に微小量移動させることで、目標位置まで移動する。そして、図23の(1)の工程において、第2リング106の貫通孔132をピン102の段付き軸部102Bに係合する。位置決め処理が開始される前の第2リング106の初期位置では、第2リング106の貫通孔132の中心が、凹部44の中心と一致しているとは限らず、貫通孔132の中心と凹部44の中心とがずれている可能性がある。図23の(1)の例では、第2リング106の貫通孔132の中心が、凹部44の中心に対して、左側にずれている状態を示している。
【0186】
位置決め制御部74は、(2)の工程において、X方向又はY方向、すなわち本例における水平方向の位置については第2リング106を初期位置で固定した状態で、把持部16を介して第2リング106をZ方向(鉛直方向)にのみ移動させる。位置決め制御部74は、第2リング106でピン102にZ方向の力Pを付与することにより、ピン102を載置部18に押し付ける。Z方向の力Pは、載置部18に押し付ける「押し付け方向の力」の一例である。
【0187】
具体的には、位置決め制御部74は、Z方向用のアクチュエータ58を駆動することにより、Z方向移動ステージ36をZ方向の下側に移動させることで、第2リング106でピン102にZ方向の力Pを付与する(図10参照)。このように、位置決め制御部74は、載置部18に載置された部品の一例であるピン102に対し、ピン102を載置部18に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与部として機能する。
【0188】
図23の(2)の工程において、初期状態ではピン102の姿勢が左側に傾斜している。この傾斜の原因の1つは、例えば、ピン102の曲面120が凸状の円弧形状であるため、ピン102を載置部18の凹部44に載置した際に、ピン102の中心軸が傾いてしまうことだと考えられる。そして、上述のとおり、第2リング106の貫通孔132の中心は凹部44の中心に対して左側にずれている。このような状態で、第2リング106でピン102を載置部18に押し付けると、(3)の工程において、次のように第2リング106はピン102から水平方向の力FHを受ける。すなわち、第2リング106がピン102をZ方向の下側に押すと、第2リング106はピン102の段付き軸部102Bの図23における右側の肩を押圧する。そうすると、左側に傾斜しているピン102は、押圧によって右側に傾斜しようとする。これにより、ピン102は第2リング106を押圧する力FHを発生する。
【0189】
しかし、第2リング106はピン102から力FHを受けても、第2リング106の水平方向の位置は、移動装置14により水平方向の位置を固定しているので、初期位置のままで変化しない。そのため、第2リング106がZ方向の下側に押し付け力を発生し、ピン102を載置部18に押し付けている間、ピン102は左側に傾斜した姿勢のまま、第2リング106を水平方向の力FHで押し続ける状態になる。
【0190】
位置決め制御部74は、(4)の工程において、ピン102から第2リング106が受ける水平方向の力FHを検出する。位置決め制御部74による力FHの検出は、例えば、次のように行われる。上述したとおり、位置決め制御部74は、第2リング106の水平方向の位置を初期位置で固定する。この制御は、Y方向移動ステージ32のアクチュエータ50と、X方向移動ステージ34のアクチュエータ54とに入力する駆動電流値を制御することによって行われる。すなわち、まず、位置決め制御部74は、第2リング106の初期位置を記憶する。初期位置は、Y方向移動ステージ32及びX方向移動ステージ34のそれぞれの変位量検出部52及び56の検出信号によって把握される。加えて、第2リング106をピン102に接触させる前における、Y方向移動ステージ32のアクチュエータ50と、X方向移動ステージ34のアクチュエータ54とに入力する初期の駆動電流値を記憶する。第2リング106をピン102に接触させる前に各アクチュエータ50及び54に入力される初期の駆動電流値は、すなわち、第2リング106に対してピン102からの力FHが加わっていない状態における、アクチュエータ50及び54に入力する初期の駆動電流値である。
【0191】
そして、第2リング106に水平方向の力FHが加わり、第2リング106が初期位置から変化しようとする場合、位置決め制御部74は、Y方向移動ステージ32のアクチュエータ50と、X方向移動ステージ34のアクチュエータ54とに入力する駆動電流値を増減させることにより、第2リング106が初期位置を維持するように制御する。こうした制御を通じて第2リング106の水平方向の位置は初期位置に固定される。
【0192】
そのため、ピン102から第2リング106が受ける水平方向の力FHの大きさによって、位置決め制御部74が、第2リング106の水平方向の位置を初期位置に維持するために各アクチュエータ50及び54に入力される駆動電流値は変化する。位置決め制御部74は、第2リング106にピン102から力FHが加わっていない状態における各アクチュエータ50及び54に入力する初期の駆動電流値と、第2リング106にピン102から力FHが加わっている状態の駆動電流値との差に基づいて、力FHを検出する。すなわち、位置決め制御部74は、部品の一例であるピン102に対してZ方向(押し付け方向の一例)の力Pが付与された際に載置部18内においてピン102が傾斜することによって生じる力であって、Z方向と交差する水平方向(第1方向の一例)の力FHを検出する力検出部として機能する。
【0193】
位置決め制御部74は、(5)の工程において、水平方向の力FHに基づいてピン102の姿勢を補正するための補正量を導出する。より具体的には、位置決め制御部74は、図24及び図25に示すように、力FHとピン102の姿勢、すなわち、中心C1の位置(図24及び図25において中心位置として示す)との相関関係を用いて、補正量を導出する。図24は、ピン102がX方向に傾斜している場合において、X方向の傾斜量に対応する中心C1のX方向の位置のずれと、第2リング106がピン102から受けるX方向の力FHXとの相関関係を示す。図25は、ピン102がY方向に傾斜している場合において、Y方向の傾斜量に対応する中心C1のY方向の位置のずれと、第2リング106がピン102から受けるY方向の力FHYとの相関関係を示す。ピン102の中心C1の位置のずれは、凹部44の中心に対するずれであり、画像検査システムによって測定された値である。
【0194】
図24及び図25に示すように、力FHの大きさは、ピン102の姿勢によって変化する。例えば、ピン102が、ピン102の中心C1と凹部44の中心とが一致する目標の姿勢にある場合、第2リング106によってピン102を押し付けても、ピン102は左右のどちらにも傾斜していないため、ピン102は第2リング106に対して水平方向の力FHを発生しない。すなわち、ピン102が目標の姿勢にある場合は、ピン102をZ方向に押し付けても力FHは0である。言い換えれば、第2実施形態において、ピン102の押し付け方向は、ピン102が目標の姿勢にある場合には水平方向(第1方向の一例)の力がゼロになる方向である。
【0195】
図24及び図25に示すグラフにおいて、ピン102の中心C1の位置が「0」の状態、すなわち、ピン102の中心C1と凹部44とが一致している状態において、X方向の力FHX又はY方向の力FHYが発生していない。これは、ピン102が目標の姿勢にある場合は、ピン102を押し付けても力FHが発生しないことを示している。
【0196】
一方、X方向又はY方向において、ピン102が左右のいずれかに傾斜している状態、すなわち、ピン102の中心C1が凹部44の中心からずれている場合は、力FH(FHX又はFHY)が発生している。そして、力FH(FHX又はFHY)の大きさは、ピン102の傾斜の大きさ、すなわち、ピン102の中心C1の位置ずれが大きいほど、大きくなる。このように、力FHとピン102の中心C1の位置ずれとの間には、図24及び図25に示すような相関関係が存在する。なお、図24及び図25において、グラフが異なるのは、図8及び図9に示したように、ピン102の形状がX方向とY方向で異なることに起因する。
【0197】
図24及び図25に示す相関関係は、設定情報73に記録されている。位置決め制御部74は、設定情報73に記録されている相関関係から、検出した力FHに対応するピン102の中心C1の位置ずれの大きさを読み出す。ピン102の中心C1の位置ずれの大きさは、すなわち、ピン102の姿勢の補正量である。位置決め制御部74は、このように力FHと相関関係とに基づいてピン102の補正量を導出する。相関関係は、テーブルデータの形態で記録されていてもよいし、関数を表す数式の形態で記録されていてもよい。このように、位置決め制御部74は、検出された水平方向(第1方向の一例)の力FHに基づいてピン102(部品の一例)の姿勢を補正するための補正量を導出する。
【0198】
そして、図23に示すように、位置決め制御部74は、(6)の工程において、導出した補正量に基づいて、第2リング106を水平方向に移動させることで、ピン102の姿勢を補正する。これにより、(7)の工程に示すように、ピン102は、中心C1が凹部44の中心と一致する目標の姿勢に補正される。
【0199】
このように、第2実施形態の位置決め制御部74は、力検出部により検出された水平方向(第1方向の一例)の力FHに基づいてピン102(部品の一例)の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいてピン102の姿勢を補正する補正部として機能する。
【0200】
図23においては図示を省略するが、ピン102の姿勢の補正後に、プレス機20の加圧部20Aでピン102の段付き軸部102Bにかしめ加工を施すことで、ピン102と、第1リング104及び第2リング106とを組み付ける。
【0201】
一例として図26に示すように、本第2実施形態の位置決め処理の力付与(ピン102の押し付け)時においては、図11で示した目標位置信号POref及び位置信号POはなしである。目標力信号Frefは、第2リング106でピン102をZ方向に押し付ける力Pである。反力推定信号Fは、Z方向用のアクチュエータ58の駆動電流値とZ方向移動ステージ36の変位量検出部60の検出信号から反力推定部305が推定した、第2リング106がピン102から受ける反力を示す信号である。
【0202】
本第2実施形態の位置決め処理の力付与時においては、目標位置信号POref及び位置信号POがなしであるため、第1加速度信号生成部302は作動せず、したがって第1加速度信号a1はなしである。一方、第2加速度信号生成部303は作動する。第2加速度信号a2は、目標力信号Frefである力Pと、反力推定部305が推定した反力推定信号Fとの和から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第2加速度信号a2のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第2加速度信号a2を変換することで得られた、Z方向用のアクチュエータ58の駆動電流値である。
【0203】
本第2実施形態の位置決め処理の力付与時においては、図11で示したアクチュエータはZ方向用のアクチュエータ58である。変位量検出部は、Z方向移動ステージ36の変位量検出部60である。なお、この場合の力付与時とは、ピン102のZ方向への押し付け開始から終了までの間である。
【0204】
一例として図27に示すように、本第2実施形態の位置決め処理のY方向の補正時においては、図11で示した目標位置信号POrefは、第2リング106がピン102から受けたY方向の力FHYから、図25に示した相関関係に基づき求めた補正量である。位置信号POは、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52の検出信号である。目標力信号Fref及び反力推定信号Fは、ともになしである。反力推定信号Fは、第1実施形態の場合と同じく、厳密にはピン102の移動により生じる摩擦力に応じた値が出力されるが、結局はデータとして使われないため、なしとしている。なお、ピン102を移動させるために予め設定された力を目標力信号Frefとしてもよい。
【0205】
本第2実施形態の位置決め処理のY方向の補正時においては、目標力信号Fref及び反力推定信号Fがなしであるため、第2加速度信号生成部303は作動せず、したがって第2加速度信号a2はなしである。一方、第1加速度信号生成部302は作動する。第1加速度信号a1は、目標位置信号POrefである、力FHYから求めた補正量と、位置信号POである、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52の検出信号との差から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第1加速度信号a1のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第1加速度信号a1を変換することで得られた、Y方向用のアクチュエータ50の駆動電流値である。
【0206】
本第2実施形態の位置決め処理のY方向の補正時においては、図11で示したアクチュエータはY方向用のアクチュエータ50である。変位量検出部は、Y方向移動ステージ32の変位量検出部52である。
【0207】
本第2実施形態の位置決め処理のX方向の補正時においては、図11で示した目標位置信号POrefは、第2リング106がピン102から受けたX方向の力FHXから、図24に示した相関関係に基づき求めた補正量である。位置信号POは、X方向移動ステージ34の変位量検出部56の検出信号である。目標力信号Fref及び反力推定信号Fは、ともになしである。Y方向の補正時と同じく、反力推定信号Fは、厳密にはピン102の移動により生じる摩擦力に応じた値が出力されるが、結局はデータとして使われないため、なしとしている。なお、ピン102を移動させるために予め設定された力を目標力信号Frefとしてもよい。
【0208】
本第2実施形態の位置決め処理のX方向の補正時においては、目標力信号Fref及び反力推定信号Fがなしであるため、第2加速度信号生成部303は作動せず、したがって第2加速度信号a2はなしである。一方、第1加速度信号生成部302は作動する。第1加速度信号a1は、目標位置信号POrefである、力FHXから求めた補正量と、位置信号POである、X方向移動ステージ34の変位量検出部56の検出信号との差から求めた信号である。駆動信号生成部304は、第1加速度信号a1のみに基づいて駆動信号Iを生成する。駆動信号Iは、第1加速度信号a1を変換することで得られた、X方向用のアクチュエータ54の駆動電流値である。
【0209】
本第2実施形態の位置決め処理のX方向の補正時においては、図11で示したアクチュエータはX方向用のアクチュエータ54である。変位量検出部は、X方向移動ステージ34の変位量検出部56である。
【0210】
このように、第2実施形態においても、第1加速度信号a1を補正に寄与する制御に用い、第2加速度信号a2を力の付与に寄与する制御に用いることで、ピン102のような不安定なワークに対しても高精度な位置合わせをする制御を実現することができる。
【0211】
以下、上記構成による作用について、図28に示すフローチャートを参照しながら説明する。
【0212】
第2実施形態の位置決め装置10によるピン102の組み付け工程は、図19に示すフローチャートと同様であるが、図19のステップS3000の位置決め処理の代わりに、図28に示すステップS3000Aの位置決め処理が実行される。
【0213】
図28は、位置決め制御部74が担当する位置決め処理の流れを示すフローチャートである。図28に示すように、位置決め処理が実行されると(ステップS3000A)、位置決め制御部74は、ピン102に対してZ方向である鉛直方向の力を付与する(ステップS3610)。第2実施形態の例では、位置決め制御部74は、アクチュエータ58によりZ方向移動ステージ36をZ方向に移動させ、第2リング106をピン102に接触させることにより、Z方向の力をピン102に付与する。ここで、位置決め制御部74は、Y方向移動ステージ32のアクチュエータ50とX方向移動ステージ34のアクチュエータ54とに入力する駆動電流値を制御することにより、第2リング106のX方向及びY方向の位置を、初期位置で固定する。
【0214】
ピン102に対してZ方向(鉛直方向)の力が付与されると、図24及び図25で示したように、ピン102の姿勢に応じて、ピン102から第2リング106に対して水平方向の力FHが発生する。位置決め制御部74は、各アクチュエータ50及び54の駆動電流値の変化に基づいて、ピン102によって第2リング106に生じる水平方向の力FHを検出する(ステップS3620)。
【0215】
位置決め制御部74は、検出された水平方向の力FHに基づき、ピン102の姿勢の補正量を導出する(ステップS3630)。位置決め制御部74は、例えば、図24及び図25に示す力FHとピン102の中心C1の位置との相関関係に基づき、検出した力FHに応じた中心C1の位置ずれの大きさを補正量として導出する。位置決め制御部74は、一例として、力FHについて、X方向の力FHXとY方向の力FHYの両方を検出し、補正量についてもX方向とY方向の両方の補正量を導出する。本例において、位置決め制御部74は、X方向の力FHXとY方向の力FHYとをほぼ同時に検出し、各方向の補正量を導出する。これは、ピン102において、載置面としての凹部44と接触する「曲面120」が半球上をしているためである。
【0216】
位置決め制御部74は、導出された補正量に基づき、X方向及びY方向におけるピン102の姿勢を補正する(ステップS3640)。例えば、位置決め制御部74は、導出した補正量に基づいて、アクチュエータ50及び54を駆動し、Y方向移動ステージ32とX方向移動ステージ34とを移動させる。これにより、把持部16に把持された第2リング106をX方向及びY方向に移動させることで、水平方向におけるピン102の姿勢を補正する。
【0217】
第2実施形態の位置決め装置10では、載置部18の凹部44にピン102が載置される。例えば、載置部18の凹部44にはピン102との間に隙間があり、載置部18の凹部44において、ピン102は、姿勢が変化可能な状態で載置される。この状態でピン102に対して、ピン102を載置部18に押し付けるZ方向の力Pを付与する。その際、載置部18の凹部44内においてピン102が傾斜することによって生じる力であって、Z方向と交差する水平方向の力(例えば、X方向及びY方向の力)を検出する。さらに、制御部70は、検出された水平方向の力に基づいて、ピン102の姿勢を補正するための補正量を導出する。そして、位置決め制御部74は、導出した補正量に基づいてピン102の姿勢を補正する。
【0218】
載置部18の凹部44の加工精度が低く、ピン102との間に隙間がある場合には、ピン102を載置部18に押し付けたときに、ピン102の姿勢が悪いとピン102が傾斜する。そして、ピン102の傾斜によって生じる水平方向の力(例えば、X方向及びY方向の力)を検出する。図24及び図25に示すように、ピン102の傾斜と水平方向の力に相関があることにより、水平方向の力に基づいてピン102の姿勢を補正することが可能である。
【0219】
これにより、載置部18の凹部44の加工精度が低く、ピン102との間に隙間がある場合でも、ピン102の姿勢の補正が可能である。また、ピン102を載置部18に押し付けた際に生じる水平方向の力に基づいて補正量を導出するため、画像検査システムを用いずにピン102の姿勢の補正が可能である。
【0220】
本第2実施形態においても第1実施形態と同様に、第1加速度信号生成部302、第2加速度信号生成部303、および駆動信号生成部304を含む位置決め制御部74を用いているので、繊細な作業を精度よく行うことができる。なお、力付与時及び補正時だけでなく、力FHの検出時にも位置決め制御部74の第1加速度信号生成部302、第2加速度信号生成部303、および駆動信号生成部304を作動させてもよい。
【0221】
また、第2実施形態の位置決め装置10では、以下のような作用及び効果を有している。
【0222】
第2実施形態の位置決め装置10では、ピン102の押し付け方向は、ピン102が目標の姿勢にある場合には水平方向の力がゼロになる方向である。ピン102の押し付け方向をこのような方向とすることで、ピン102の補正量を導出しやすい。
【0223】
また、第2実施形態の位置決め装置10では、ピン102の押し付け方向は鉛直方向であり、ピン102に発生する第1方向は水平方向である。ピン102の押し付け方向を、ピン102の自重が作用する鉛直方向とすることで、ピン102が傾斜することによって生じる水平方向の力を検出しやすい。
【0224】
また、第2実施形態の位置決め装置10では、ピン102の曲面120は、Y方向と平行な断面形状が載置部18の凹部44に向かって凸型の円弧形状となる面である。このため、ピン102の姿勢変化が生じやすいため、姿勢の補正の必要性が高く、本開示の技術の必要性も高い。また、ピン102における凸型の円弧形状となる曲面120を載置部18の凹部44に載置した状態で、Z方向の力によりピン102が傾斜しやすい。第2実施形態の位置決め装置10は、Z方向の力により姿勢変化が生じやすい形状のピン102の特性を有効に利用することにより、ピン102の姿勢を、補正している。そのため、第2実施形態の位置決め装置10は、本例の形状のピン102に対して特に有効である。
【0225】
なお、第2実施形態の位置決め装置10では、位置決め制御部74が、アクチュエータ50及び54の駆動電流値に基づいて水平方向(Y方向及びX方向)の力FHを検出したが、力FHの検出方法はこれに限定されない。例えば、力覚センサを設け、力覚センサにより力FHを検出してもよい。あるいは、反力推定部305によって力FHを推定してもよい。
【0226】
〔第3実施形態〕
次に、第3実施形態の位置決め装置について説明する。なお、第3実施形態において、第1及び第2実施形態と同一の構成要素、部材等を有する場合は、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0227】
図29に示すように、第3実施形態の位置決め装置10も、ピン102、第1リング104及び第2リング106の組み付けの際の位置決め処理を行う。第3実施形態の位置決め装置10では、第1実施形態の位置決め装置10と比較して、位置決め制御部74による位置決め処理の方法が異なる。以下、相違点を中心に説明する。
【0228】
第3実施形態においても、ピン102、第1リング104及び第2リング106を係合させるまでの処理は、図12に示す第1実施形態と同様である。すなわち、ピン102と第1リング104を載置部18に予めセットし、この状態で、把持部16によって第2リング106を載置部18に移動する。そして、第2リング106をピン102と係合させる。これにより、第1リング104の貫通孔130及び第2リング106の貫通孔132がピン102の段付き軸部102Bに係合された状態となる。この後に、ピン102の位置決め処理が行われる。
【0229】
図29には、第3実施形態の位置決め装置10におけるピン102の位置決め処理が示されている。位置決め装置10は、図29の(1)の工程に示すように、載置部18の凹部44にピン102が載置された状態で、ピン102にY方向の力を付与し、載置部18の凹部44において、ピン102を片寄せする。具体的には、第3実施形態では、把持部16で把持された第2リング106をY方向の一方側(例えば、負方向)に移動させることで、ピン102にY方向の力を付与する。これにより、ピン102が凹部44の縦壁44Aに接触する位置まで傾き、ピン102がそれ以上移動しなくなる。このときのピン102の位置が片寄せ位置となる。位置決め制御部74は、載置部18においてピン102を片寄せする力付与部として機能する。また、Y方向は、第1方向の一例である。
【0230】
第3実施形態では、設定情報73には、片寄せ位置からのピン102の補正量、すなわちピン102の中心C1を凹部44の中心と合致する位置まで移動させるための補正量が記憶されている。凹部44の直径D1、ピン102の頭部102Aの直径など部品及び載置部の寸法が分かれば、ピン102が片寄せ位置にある場合のピン102の中心C1の位置を把握することができる。そして、ピン102が片寄せ位置にある場合のピン102の中心C1の位置が凹部44の中心に対してどの程度の距離にあるかが分かれば、凹部44の直径D1も分かっているため、凹部44の中心までピン102をどの程度移動させればよいかを把握することが可能である。このように、ピン102及び凹部44の寸法が分かっている場合は、片寄せ位置からのピン102の補正量を、設定情報73に予め設定しておくことが可能である。
【0231】
そして、図29の(2)の工程に示すように、位置決め制御部74は、片寄せ位置からの補正量に基づいて、ピン102の姿勢を補正する。第3実施形態では、位置決め制御部74は、把持部16で把持された第2リング106をY方向の他方側(例えば、正方向)に移動させることで、ピン102の姿勢を補正する。位置決め制御部74は、片寄せ位置からの補正量に基づいて、ピン102の姿勢を補正する補正部として機能する。
【0232】
なお、図示を省略するが、第1実施形態と同様に、X方向及びY方向の2つの方向について同様の位置決め処理を行ってもよい。
【0233】
本第3実施形態のY方向の位置決め処理における各種項目の対応表を図30に示す。また、本第3実施形態のX方向の位置決め処理における各種項目の対応表を図31に示す。本第3実施形態の位置決め処理においては、補正時の目標位置信号POrefが、設定情報73に記憶された片寄せ位置からの補正量となる以外は、図17及び図18に示した第1実施形態と同じである。このため詳細な説明は省略する。
【0234】
このように、第3実施形態においても、第1加速度信号a1を補正に寄与する制御に用い、第2加速度信号a2を力の付与に寄与する制御に用いることで、ピン102のような不安定なワークに対しても高精度な位置合わせをする制御を実現することができる。
【0235】
第3実施形態の位置決め装置10では、載置部18の凹部44にピン102が載置される。例えば、載置部18の凹部44にはピン102との間に隙間があり、載置部18の凹部44において、ピン102は、姿勢が変化可能な状態で載置される。力付与部として機能する位置決め制御部74は、ピン102に対して、例えばY方向に沿って力を付与することで、載置部18の凹部44においてピン102を片寄せする。補正部として機能する位置決め制御部74は、片寄せされた片寄せ位置からの補正量であって、かつ、予め設定された補正量に基づいて、Y方向におけるピン102の姿勢を補正する。
【0236】
このように第3実施形態の位置決め装置10も、第1実施形態と同様に、載置部18の加工精度が低く隙間がある場合でも、画像検査システムを用いることなく、かつ、従来と比較して、製造コストを抑制しつつ、高精度な部品の位置決めが可能となる。
【0237】
本第3実施形態においても第1及び第2実施形態と同様に、第1加速度信号生成部302、第2加速度信号生成部303、および駆動信号生成部304を含む位置決め制御部74を用いているので、繊細な作業を精度よく行うことができる。
【0238】
第3実施形態は、部品及び載置部の寸法が予めわかっている場合に有効である。部品及び載置部の寸法が予め把握できない場合、あるいは、部品の種類が複数ある場合は、最大変位量を導出した上で補正量を導出する第1実施形態が好ましい。
【0239】
〔第4実施形態〕
次に、第4実施形態の位置決め装置について説明する。なお、第4実施形態において、第1~第3実施形態と同一の構成要素、部材等を有する場合は、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0240】
図32に示すように、第4実施形態の位置決め装置200では、第1実施形態の位置決め装置10と比較して、ピン202の形状及び載置部18の凹部204の形状が異なる。ピン202は、頭部202Aと段付き軸部102Bとを備えている。頭部202Aは、Y方向及びX方向の沿った断面が矩形状とされている。頭部202Aの先端面203は、平面状とされている。載置部18の凹部204は、Y方向及びX方向の沿った断面が矩形状とされている。凹部204は、頭部202Aの形状に合わせた形状とされており、凹部204の底面205は、平面状とされている。凹部204の大きさは、頭部202Aの大きさよりも大きく、頭部202Aが凹部204に挿入可能とされている。
【0241】
なお、上記構成以外の構成は、第1実施形態の位置決め装置10の構成と同様である。
【0242】
第4実施形態の位置決め装置200では、第1実施形態の位置決め装置10と同様の構成により、第1実施形態の位置決め装置10と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0243】
〔第5実施形態〕
次に、第5実施形態の位置決め装置について説明する。なお、第5実施形態において、第1~第4実施形態と同一の構成要素、部材等を有する場合は、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0244】
図33に示すように、第5実施形態の位置決め装置220では、第1実施形態の位置決め装置10の第1リング104及び第2リング106に代えて、位置決め専用の部材の一例としての接触部材222が設けられている。位置決め装置220では、第1リング104及び第2リング106は設けられておらず、部品の一例としてのピン102のみの位置決めを行う。位置決め装置220では、ピン102が載置部18の凹部44に載置されている。そして、接触部材222をピン102に接触させることで、ピン102に予め設定された力を付与する。また、位置決め装置220では、接触部材222をピン102に接触させることで、ピン102の姿勢を補正する。
【0245】
接触部材222は、貫通孔224を備えている。貫通孔224の内径は、ピン102の段付き軸部102Bの外径よりも大きい。これにより、接触部材222の貫通孔224をピン102の段付き軸部102Bに係合させることが可能である。接触部材222の貫通孔224をピン102の段付き軸部102Bに係合させた状態で、接触部材222をピン102に接触させることで、ピン102に予め設定された力を付与する。また、接触部材222の貫通孔224をピン102の段付き軸部102Bに係合させた状態で、接触部材222をピン102に接触させることで、ピン102の姿勢を補正する。なお、図示を省略するが、ピン102の姿勢を補正した後、ピン102に予め設定された加工を施してもよい。
【0246】
第5実施形態の位置決め装置220では、第1実施形態の位置決め装置10と同様の構成による作用及び効果に加えて、以下のような作用及び効果を得ることができる。
【0247】
位置決め装置220では、接触部材222をピン102と接触させることにより、ピン102に予め設定された力を付与する。このため、位置決め装置200では、接触部材222を用いることで、ピン102に予め設定された力を付与しやすい。
【0248】
位置決め装置220では、接触部材222をピン102と接触させることにより、ピン102の姿勢を補正する。このため、位置決め装置200では、接触部材222を用いることで、ピン102の姿勢を補正しやすい。
【0249】
〔第6実施形態〕
次に、第6実施形態の位置決め装置について説明する。なお、第6実施形態において、第1~第5実施形態と同一の構成要素、部材等を有する場合は、同一符号を付して、詳細な説明を省略する。
【0250】
図34に示すように、第6実施形態の位置決め装置240では、第1実施形態の位置決め装置10と比較して、ピン102への第1リング104及び第2リング106の係合の仕方が異なる。上記実施形態では、載置部18に予めピン102と第1リング104とを係合させた状態でセットしておき、その後に把持部16によって第2リング106をピン102に係合させる例で説明した。
【0251】
対して、第6実施形態の位置決め装置240では、まず、載置部18の凹部44にピン102を載置する。すなわち、載置部18にセットされる部品はピン102のみである。そして、第1リング104の貫通孔130と第2リング106の貫通孔132の位置を合わせた状態で、把持部16のチャック42A及び42Bで第1リング104と第2リング106とを把持する。
【0252】
そして、チャック42A及び42BをX方向に移動させ、さらにチャック42A及び42BをZ方向に移動させることで、ピン102の段付き軸部102Bに第1リング104の貫通孔130及び第2リング106の貫通孔132を係合させる。このように各部品を係合させてもよい。
【0253】
なお、上記構成以外の構成は、第1実施形態の位置決め装置10の構成と同様である。
【0254】
第6実施形態の位置決め装置240では、第1実施形態の位置決め装置10と同様の構成により、第1実施形態の位置決め装置10と同様の作用及び効果を得ることができる。
【0255】
また、第6実施形態のように第1リング104と第2リング106を一緒に把持して、ピン102に係合させるのではなく、把持部16によって第1リング104と第2リング106とを一つずつ移動させることにより、順番にピン102と係合させてもよい。
【0256】
〔その他〕
なお、第1実施形態において、部品の一例であるピン102の姿勢を補正する例で説明したが、第1実施形態では、部品の姿勢に加えて、部品の位置を補正することも可能である。例えば、ピン102が、姿勢だけ傾いているだけでなく、Y方向又はX方向の位置もずれている場合でも、本開示の技術によって位置の補正が可能である。
【0257】
例えば、図32で示したとおり、凹部44の載置面と部品の接触面とがそれぞれ平面である場合は、曲面である場合と比較すると、部品の姿勢変化は生じにくく、位置のみの補正が必要となる場合が多いと考えられる。この場合は、位置のみを補正してもよい。このように、本開示の技術では、位置又は姿勢の少なくとも一方が補正されればよい。
【0258】
なお、第1~第6実施形態において、部品の形状は、変更可能である。部品は、ピン以外の形状でもよく、例えば、円形状、楕円形状、又は多角形状の棒材で構成されていてもよい。また、部品は、円錐状、多角錐状の部材で構成されていてもよい。また、載置部において、部品が載置される凹部の形状は、部品の形状に合わせて変更可能である。
【0259】
第1~第6実施形態において、アーム24の形状及び把持部16の形状は、変更可能である。また、移動装置14は、把持部16をX方向、Y方向、及びZ方向に移動させたが、把持部16を移動させる方向は、変更可能である。
【0260】
駆動信号生成部304は、第1加速度信号a1および第2加速度信号a2の両方に基づいて駆動信号Iを生成してもよい。
【0261】
上記各実施形態において、位置決め制御部74、アーム制御部76及び把持制御部78といった各種の処理を実行する処理部(Processing Unit)のハードウェア的な構造としては、次に示す各種のプロセッサ(Processor)を用いることができる。各種のプロセッサには、上述したように、ソフトウェアを実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPUに加えて、FPGA(Field Programmable Gate Array)等の製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路等が含まれる。
【0262】
1つの処理部は、これらの各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合わせ(例えば、複数のFPGAの組み合わせ、および/または、CPUとFPGAとの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。
【0263】
複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、1つ以上のCPUとソフトウェアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)等に代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサの1つ以上を用いて構成される。
【0264】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造としては、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)を用いることができる。
【0265】
以上の説明により、以下の付記項に記載の技術を把握することができる。
[付記項1]
少なくともプロセッサを備えており、
プロセッサは、
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を変位させる力付与処理と、
載置部における部品の最大変位量を導出する導出処理と、
最大変位量に基づいて、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正処理と、
力付与処理又は補正処理を制御する位置決め制御処理であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御処理とを、実行する部品の位置決め装置。
[付記項2]
少なくともプロセッサを備えており、
プロセッサは、
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、載置部において部品を片寄せする力付与処理と、
片寄せされた片寄せ位置から、部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正処理と、
力付与処理又は補正処理を制御する位置決め制御処理であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御処理とを、実行する部品の位置決め装置。
[付記項3]
少なくともプロセッサを備えており、
プロセッサは、
載置部に載置された部品に対し、部品を載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与処理と、
部品に対して押し付け方向の力が付与された際に載置部内において部品が傾斜することによって生じる力であって、押し付け方向と交差する第1方向の力を検出する力検出処理と、
力検出部により検出された第1方向の力に基づいて部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した補正量に基づいて部品の姿勢を補正する補正処理と、
力付与処理又は補正処理を制御する位置決め制御処理であり、部品の位置と部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、部品から受ける反力と部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御処理とを、実行する部品の位置決め装置。
【0266】
[付記項4]
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を変位させる力付与部と、
前記載置部における前記部品の最大変位量を導出する導出部と、
前記最大変位量に基づいて、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、
前記力付与部又は前記補正部を制御する位置決め制御部であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、
を有する部品の位置決め装置。
[付記項5]
前記第1方向において180°向きが異なる2つの方向を正方向と負方向とした場合に、
前記導出部は、前記部品が前記正方向又は前記負方向の一方に片寄せされた後、前記部品を他方に変位させることによって、前記最大変位量を導出し、
前記補正部は、前記最大変位量に基づいて前記補正量を導出する付記項4に記載の部品の位置決め装置。
[付記項6]
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を片寄せする力付与部と、
片寄せされた片寄せ位置から、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正部と、
前記力付与部又は前記補正部を制御する位置決め制御部であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、
を有する部品の位置決め装置。
[付記項7]
前記補正部は、前記片寄せ位置からの補正量であって、かつ、予め設定された補正量に基づいて、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する付記項6に記載の部品の位置決め装置。
[付記項8]
前記力付与部は、前記第1方向に加えて、同一平面内において前記第1方向と交差する第2方向に沿って前記部品に対して力を付与することが可能であり、
前記補正部は、前記第1方向及び前記第2方向のそれぞれにおいて、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する付記項5から付記項7までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項9]
前記第1方向は水平方向である付記項4から付記項8までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項10]
前記部品において、前記載置部の載置面と接触する接触面は、曲面である付記項9に記載の部品の位置決め装置。
[付記項11]
前記曲面は、前記第1方向と平行な断面形状が前記載置面に向かって凸型の円弧形状となる面である付記項10に記載の部品の位置決め装置。
[付記項12]
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記力付与部は、前記第1部品に組み付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品に力を付与する付記項4から付記項11までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項13]
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記補正部は、前記第1部品に組み付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する付記項4から付記項11までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項14]
前記第2部品は、前記第1部品の少なくとも一部が挿入される穴を有しており、
前記第1部品と前記第2部品との組み付けは、前記位置及び姿勢の少なくとも一方の補正後に、前記第1部品の一部に対するかしめ加工を施すことにより行われる付記項12又は付記項13に記載の部品の位置決め装置。
[付記項15]
前記力付与部は、位置決め専用の部材を前記部品と接触させることにより、前記部品に力を付与する付記項4から付記項11までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項16]
前記補正部は、位置決め専用の部材を前記部品と接触させることにより、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する付記項4から付記項11までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項17]
載置部に載置された部品に対し、前記部品を前記載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与部と、
前記部品に対して前記押し付け方向の力が付与された際に前記載置部内において前記部品が傾斜することによって生じる力であって、前記押し付け方向と交差する第1方向の力を検出する力検出部と、
前記力検出部により検出された前記第1方向の力に基づいて前記部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の姿勢を補正する補正部と、
前記力付与部又は前記補正部を制御する位置決め制御部であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成する第1加速度信号生成部、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成する第2加速度信号生成部、並びに、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する駆動信号生成部を含む位置決め制御部と、
を有する部品の位置決め装置。
[付記項18]
前記押し付け方向は、前記部品が目標の姿勢にある場合には第1方向の力がゼロになる方向である付記項17に記載の部品の位置決め装置。
[付記項19]
前記第1方向は水平方向であり、前記押し付け方向は鉛直方向である付記項17又は付記項18に記載の部品の位置決め装置。
[付記項20]
前記部品において、前記載置部の載置面と接触する接触面は、曲面である付記項19に記載の部品の位置決め装置。
[付記項21]
前記曲面は、前記第1方向と平行な断面形状が前記載置面に向かって凸型の円弧形状となる面である付記項20に記載の部品の位置決め装置。
[付記項22]
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記力付与部は、前記第1部品に組付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品に力を付与する付記項17から付記項21までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項23]
前記載置部に載置された前記部品を第1部品とした場合において、
前記補正部は、前記第1部品に組み付けられる第2部品を前記第1部品と接触させることにより、前記第1部品の姿勢を補正する付記項17から付記項21までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項24]
前記第2部品は、前記第1部品の少なくとも一部が挿入される穴を有しており、
前記第1部品と前記第2部品との組み付けは、前記姿勢の補正後に、前記第1部品の一部に対するかしめ加工を施すことにより行われる付記項22又は付記項23に記載の部品の位置決め装置。
[付記項25]
互いに直交する3軸方向に前記載置部と前記部品とを相対的に移動させることが可能なアクチュエータを有しており、
前記補正部は、前記アクチュエータを制御することにより、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する、付記項4から付記項24までのいずれか1項に記載の部品の位置決め装置。
[付記項26]
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を変位させる力付与工程と、
前記載置部における前記部品の最大変位量を導出する導出工程と、
前記導出工程により導出された前記最大変位量に基づいて前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正工程と、
前記力付与工程又は前記補正工程を制御する位置決め制御工程であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む、
部品の位置決め方法。
[付記項27]
載置部に載置された部品に対し、第1方向に沿って力を付与し、前記載置部において前記部品を片寄せする力付与工程と、
片寄せされた片寄せ位置から、前記部品の位置及び姿勢の少なくとも一方を補正する補正工程と、
前記力付与工程又は前記補正工程を制御する位置決め制御工程であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む、
部品の位置決め方法。
[付記項28]
載置部に載置された部品に対し、前記部品を前記載置部に押し付ける押し付け方向の力を付与する力付与工程と、
前記部品に対して前記押し付け方向の力が付与された際に前記載置部内において前記部品が傾斜することによって生じる力であって、前記押し付けと交差する第1方向の力を検出する力検出工程と、
前記力検出工程により検出された前記第1方向の力に基づいて前記部品の姿勢を補正するための補正量を導出し、導出した前記補正量に基づいて前記部品の姿勢を補正する補正工程と、
前記力付与工程又は前記補正工程を制御する位置決め制御工程であり、
前記部品の位置と前記部品の目標の位置とに基づいて、前記補正に寄与する制御に用いる第1加速度信号を生成し、
前記部品から受ける反力と前記部品に与える目標の力とに基づいて、前記力の付与に寄与する制御に用いる第2加速度信号を生成し、
前記部品を変位させるための駆動信号を生成する位置決め制御工程と、を含む、
部品の位置決め方法。
【0267】
以上、本開示の実施例について記述したが、本開示は上記の実施例に何ら限定されるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲において種々なる態様で実施し得ることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0268】
10 位置決め装置(部品の位置決め装置の一例)
12 多関節ロボット
14 移動装置
16 把持部
18 載置部
18A 平面部
20 プレス機
20A 加圧部
22 本体部
24 アーム
24A 第1アーム部
24B 第2アーム部
24C 第3アーム部
24D 第4アーム部
25A 第1関節部
25B 第2関節部
25C 第3関節部
25D 第4関節部
25E 第5関節部
26 支持部
26A 凹部
30 基体
30A 板状体
30B ガイド部
32 Y方向移動ステージ
32A 本体部
32B 摺動部
32C ガイド部
34 X方向移動ステージ
34A 本体部
34B 摺動部
34C ガイド部
36 Z方向移動ステージ
36A 板状体
36B 摺動部
40 支持部
40A 本体部
42A、42B チャック
44 凹部
44A 縦壁
44A 壁部
44A 湾曲面
44B 湾曲面
48 支持部
50 アクチュエータ
52 変位量検出部
54 アクチュエータ
56 変位量検出部
58 アクチュエータ
60 変位量検出部
62 アクチュエータ
70 制御部
72 メモリ
73 設定情報
74 位置決め制御部
76 アーム制御部
78 把持制御部
102 ピン(部品の一例、第1部品の一例)
102A 頭部
102B 軸部
104 第1リング(第2部品の一例)
104A 本体部
104B 突出部
104C 突出部
106 第2リング(第2部品の一例)
106A 本体部
106B 突出部
106C 突出部
110 湾曲部
112 ワイヤ
120 曲面
122 平面部
124 孔部
126A 大径部
126B 小径部
130 貫通孔
132 貫通孔
200 位置決め装置
202 ピン
202A 頭部
203 先端面
204 凹部
205 底面
220 位置決め装置
222 接触部材(位置決め専用の部材の一例)
224 貫通孔
240 位置決め装置
300 目標位置信号発生部
301 目標力信号発生部
302 第1加速度信号生成部
303 第2加速度信号生成部
304 駆動信号生成部
305 反力推定部
a1 第1加速度信号
a2 第2加速度信号
B 矢印
C1 ピンの中心
D1 凹部の直径
F 反力推定信号
FH、FHX、FHY 第2リングがピンから受ける水平方向の力
Fref 目標力信号
FXp、FYp ピンに与えられる力
I 駆動信号
O 凹部の中心
P ピンに与えられる力
PO 位置信号
POref 目標位置信号
S1 ピンと凹部との接点
S1000、S2000、S3000、S3000A、S3010、S3020、S3030、S3040、S3050、S3060、S3100、S3200、S3300、S3400、S3610、S3620、S3630、S3640、S4000 ステップ
Xmax 最大変位量
Ymax 最大変位量
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25
図26
図27
図28
図29
図30
図31
図32
図33
図34