IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

特開2024-50444インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置
<>
  • 特開-インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置 図1
  • 特開-インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置 図2
  • 特開-インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置 図3
  • 特開-インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050444
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/30 20140101AFI20240403BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240403BHJP
   C09D 11/40 20140101ALI20240403BHJP
   C09D 11/54 20140101ALI20240403BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240403BHJP
   B41J 2/21 20060101ALI20240403BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
C09D11/30
B41M5/00 100
B41M5/00 120
B41M5/00 132
B41M5/00 114
C09D11/40
C09D11/54
B41J2/01 501
B41J2/21
B41J2/01 123
B41J2/175 501
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023144225
(22)【出願日】2023-09-06
(31)【優先権主張番号】P 2022156032
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】後藤 寛
(72)【発明者】
【氏名】小橋 紀之
(72)【発明者】
【氏名】田中 彩加
(72)【発明者】
【氏名】黒沼 慎
(72)【発明者】
【氏名】大川 瑞季
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
【Fターム(参考)】
2C056EE18
2C056FB03
2C056FC01
2C056KA01
2H186AB02
2H186AB05
2H186AB06
2H186AB12
2H186AB27
2H186AB34
2H186AB35
2H186AB41
2H186AB44
2H186AB47
2H186AB57
2H186AB61
2H186BA08
2H186BA10
2H186DA14
2H186DA17
2H186FA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB16
2H186FB17
2H186FB18
2H186FB22
2H186FB25
2H186FB29
2H186FB30
2H186FB48
2H186FB55
2H186FB56
2H186FB58
4J039AE04
4J039BE01
4J039BE22
4J039CA06
4J039EA18
4J039EA44
4J039EA46
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】優れた保存安定性及び吐出安定性を有し、画像堅牢性に優れた画像を形成可能なインクを提供する。
【解決手段】
色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有するインクであって、前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインクである。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有するインクであって、
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、
前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、
前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインク。
【請求項2】
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、-45℃以上0℃以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上80℃以下である、請求項1に記載のインク。
【請求項3】
前記インクは、有機溶剤を含有し、
前記有機溶剤は、23℃、80%RHにおける平衡水分量が30質量%以上である多価アルコールである、請求項1から2のいずれかに記載のインク。
【請求項4】
前記インクは、界面活性剤としてアセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物、ポリエーテル変性シロキサン化合物、及びフッ素化合物から選ばれるいずれかを含有する、請求項1から2のいずれかに記載のインク。
【請求項5】
白色インクである請求項1から2のいずれかに記載のインクと、
カラーインクである請求項1から2のいずれかに記載のインクと、からなることを特徴とするインクセット。
【請求項6】
前記インクセットは、水及び凝集剤を含有する前処理液をさらに含み、
前記凝集剤は、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーから選択されるいずれかである、請求項5に記載のインクセット。
【請求項7】
前記前処理液は、ノニオン性樹脂を含有する、請求項6に記載のインクセット。
【請求項8】
前記前処理液は、ワックスを含有する、請求項6に記載のインクセット。
【請求項9】
前記ワックスは、パラフィンワックスである、請求項8に記載のインクセット。
【請求項10】
記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与工程と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して、カラーインクを付与するカラーインク付与工程と、を含む画像形成方法であって、
前記白色インク及び前記カラーインクは、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有し、
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、
前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、
前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とする画像形成方法。
【請求項11】
前記白色インク付与工程の前に、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する前処理液付与工程を含む、請求項10に記載の画像形成方法。
【請求項12】
前記記録媒体は、濃色の布帛である、請求項10から11のいずれかに記載の画像形成方法。
【請求項13】
記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して、カラーインクを付与するカラーインク付与手段と、を含む画像形成装置であって、
前記白色インク及び前記カラーインクは、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有し、
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、
前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、
前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項14】
前記白色インク及び前記カラーインクに圧力をかけることによって、当該白色インク及び当該カラーインクを送液する送液装置を有する、請求項13に記載の画像形成装置。
【請求項15】
前処理液を収容した前処理液収容手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して、当該白色インクが付与される前に前記前処理液を付与する前処理液付与手段と、を含む、請求項13から14のいずれかに記載の画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インク、インクセット、画像形成方法、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
布帛(織物、編物、又は不織布等)等を染色(捺染)する技術は、これまで数多く提案されている。従来、布帛に対する捺染方法としては、スクリーン捺染法、ローラー捺染法などが用いられてきたが、多種少量生産性、及び即時プリント性などの観点から、インクジェット記録方法を適用することが有利である。インクジェット記録方法は、容易にカラー画像の記録が可能であり、かつランニングコストが低い等の理由からも、近年、急速に普及してきている。
インク組成物に顔料と定着樹脂とを配合して布帛を捺染する、いわゆる顔料捺染など様々な技術が検討されており、当該顔料捺染の場合には、布帛の繊維などに対して顔料を物理的に固着させることが重要となる。
【0003】
例えば、濃色の記録媒体に対して印刷を行う場合に、前処理液を付与された記録媒体に対して白色インクを付与することで白色の下地層を形成し、当該白色の下地層上にカラーインクを付与することで画像の発色性を向上させる技術、並びにインク中にガラス転移点(Tg)が-45℃以上0℃以下であるアクリル樹脂又はウレタン樹脂を用いることで、洗濯堅牢性が向上する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、優れた保存安定性及び吐出安定性を有し、画像堅牢性に優れた画像を形成可能なインクを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するための手段としての本発明のインクは、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有するインクであって、前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、優れた保存安定性及び吐出安定性を有し、画像堅牢性に優れた画像を形成可能なインクを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略斜視図である。
図2図2は、本発明の画像形成装置における収容手段の一例を示す概略斜視図である。
図3図3は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。
図4図4は、本発明の画像形成装置を用いて印刷されるチャートの一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
上記特許文献1に記載された発明のように、インク中に低Tgの樹脂粒子を多量に含むと、フィルタ通液性(吐出安定性)、及びインクの保存安定性が悪化するという問題がある。当該問題が生じる原因は定かではないが、以下のとおり推測する。
チュービングポンプ等の送液装置によってインクを送液する際に、当該インクに対して高い圧力が加わると、インク中における低Tgの樹脂粒子や顔料分散体がせん断破壊され、それに応じて発生した凝集物によってフィルタ内部で詰まりが生じるためと考えられる。
【0009】
そこで、本発明者らが、鋭意検討を行ったところ、低Tgの樹脂を含むインクに対して、高Tgのウレタン樹脂を少量添加することで、当該インク中の顔料分散体と樹脂粒子との分散安定性を向上させることができ、吐出安定性及び保存安定性に優れたインクが得られることを知見した。また、当該インクに対して低Tgのウレタン樹脂を添加することで、画像堅牢性(摩擦堅牢性)に優れた画像が得られることも併せて知見した。
【0010】
本発明において、インクの分散安定性が向上するメカニズムは明らかとなっていないが、以下のとおり推測する。
低Tgの樹脂が含まれるインクに対して高Tgのウレタン樹脂を添加すると、当該インクに高圧力が加わった場合でも、当該高Tgのウレタン樹脂が分散剤又はスペーサーとして働くため、低Tgの樹脂由来の凝集物の生成を抑制していると考えられる。
【0011】
したがって、本発明においては、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有するインクであって、前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることにより、優れた保存安定性及び吐出安定性を有し、画像堅牢性に優れた画像を形成可能なインクを提供することができる。
【0012】
以下、本発明のインクについて詳細を記載する。
【0013】
(インク、及びインクセット)
本発明のインクは、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有し、必要に応じて、有機溶剤、界面活性剤、その他の成分(A)を含んでいてもよい。
本明細書において、「第一のウレタン樹脂」は「(1)ウレタン樹脂」、「第二のウレタン樹脂」は「(2)ウレタン樹脂」と、それぞれ称することがある。なお、「第一のウレタン樹脂」及び「第二のウレタン樹脂」を総じて「ウレタン樹脂」と称することがある。
前記インクとしては、白色インク又はカラーインクであることが好ましい。
【0014】
本明細書において「白色インク」とは、後述する記録媒体に対して付与されることで白色画像を形成する液体組成物である。なお、詳細は後述するが、本発明のインクセットが前処理液を有する場合、当該「白色インク」は、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して付与されることで白色画像を形成する液体組成物であってもよい。
前記白色インクは、記録媒体上に白色画像を形成することで、例えば、前記白色インクが付与された領域に対して付与される、前記カラーインクにより形成されるカラー画像の下地層として機能し、カラー画像の発色性を向上させる。
なお、本明細書において「白色」とは、社会通念上、白及びホワイトなどと称される色であり、微量着色されているものも含む。
【0015】
前記白色インクにより記録媒体上に形成された白色画像のハンター白色度としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、75以上が好ましく、80以上がより好ましく、85以上が特に好ましい。当該白色画像のハンター白色度が、75以上であると、カラー画像の発色性を向上させることができる。
前記ハンター白色度の測定方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、分光濃度測色計(例えば、X-rite eXact、X-Rite社製)を用いて記録媒体上に形成された白色画像の色彩値L、a、及びbを測定し、下記計算式(1)により算出することができる。なお、L、a、及びbは、国際照明委員会(CIE)が定めた色の表示方法であり、「L」、「a」、及び「b」とも記載される。
ハンター白色度=100-sqr[(100-L)+(a+b)]・・・計算式(1)
【0016】
本明細書において「カラーインク」とは、記録媒体に対して付与されることでカラー画像を形成する液体組成物である。前記カラーインクと前記白色インクとを併用する場合には、記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して、前記カラーインクが付与されることでカラー画像を形成する液体組成物であってもよい。
なお、本明細書において「カラー」とは、前記「白色」に含まれない色を表し、例えば、ブラック、シアン、マゼンタ、及びイエローなどを含む。
【0017】
本発明のインクセットは、前記白色インクと、前記カラーインクとからなり、必要に応じて、前処理液、及びその他の構成を含んでいてもよい。
前記インクセットは、当該白色インクを1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。前記インクセットは、当該カラーインクを1種単独で有していてもよく、2種以上を有していてもよい。
【0018】
本明細書において「インクセット」とは、前記白色インク及び前記カラーインクがそれぞれ独立した状態で存在していればよい。例えば、前記インクセットは、前記白色インクを収容している白色インク収容手段、及び前記カラーインクを収容しているカラーインク収容手段が一体化した状態で製造、販売等されている場合に限られない。例えば、前記インクセットは、前記白色インク収容手段、及び前記カラーインク収容手段が独立して製造、販売等されていたとしても、前記白色インク及び前記カラーインクが併用されることを前提としている場合、あるいは、前記白色インク及び前記カラーインクが併用されることを実質的に誘導している場合などは、本発明のインクセットに含まれる。
【0019】
<第一のウレタン樹脂、及び第二のウレタン樹脂>
本発明におけるウレタン樹脂としては、当該ウレタン樹脂を形成するポリマーにおける主鎖において、ウレタン結合以外に、エーテル結合を含むポリエーテル型ウレタン樹脂、エステル結合を含むポリエステル型ウレタン樹脂、カーボネート結合を含むポリカーボネート型ウレタン樹脂などを使用することができる。これらの中でも、ポリカーボネート型ウレタン樹脂、及びポリエステル型ウレタン樹脂が好ましい。
また、前記ウレタン樹脂としては、ウレタン骨格を有し、水分散性を有するものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、一般的なインクジェットヘッド(撥水膜を有するノズルプレート)への固着を防ぐ観点から、カルボキシ基、スルホ基、ヒドロキシ基等のアニオン性の官能基を有するアニオン性ウレタン樹脂(ウレタン骨格を有するアニオン性樹脂)であることが好ましい。
ここで、本発明のインクセットが後述する前処理液を有する場合、前記ウレタン樹脂及び後述する色材から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることが好ましい。当該ウレタン樹脂及び後述する色材から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることで、前記インクと、凝集剤等が含まれる前処理液とが接触した際に、当該インクの凝集又は増粘を生じさせることができ、その結果、記録媒体表面において当該インクの密着性を高めることができるため好適である。
【0020】
前記ウレタン樹脂の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、定形であってもよく、不定形であってもよい。これらの中でも、定形であることが好ましい。前記ウレタン樹脂が定形である場合、球状であることが好ましい。前記ウレタン樹脂が球状である場合、粒子であることが好ましい。
【0021】
前記(1)ウレタン樹脂(固形分)の含有量は、前記インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、連続吐出安定性と摩擦堅牢性とのバランスが良好となる観点から、9質量%以上13質量%以下であることが好ましい。当該(1)ウレタン樹脂(固形分)の含有量が、前記インク全量に対して5質量%以上であると、本発明のインクによって得られる画像の摩擦堅牢性を向上させることができ好適である。当該(1)ウレタン樹脂(固形分)の含有量が、前記インク全量に対して15質量%以下であると、インクの吐出安定性が良好となり好適である。
【0022】
前記(2)ウレタン樹脂(固形分)の含有量は、前記インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であり、インクの保存安定性、フィルタ通液性、及び摩擦堅牢性のバランスが良好となる観点から、1質量%以上2質量%以下であることが好ましい。当該(2)ウレタン樹脂(固形分)の含有量が、前記インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であると、インクの保存安定性、及び吐出安定性(フィルタ通液性)が良好となるため好適である。なお、当該(2)ウレタン樹脂(固形分)の含有量が、前記インク全量に対して3質量%を超過する場合、上記効果は飽和することがある。
【0023】
前記(1)ウレタン樹脂のガラス転移点(Tg:glass transition point)は、0℃以下であり、-45℃以上0℃以下であることが好ましい。ガラス転移点が上記範囲である(1)ウレタン樹脂をインクに添加することにより、当該インクによって得られる画像の摩擦堅牢性を向上させることができる。
【0024】
前記(2)ウレタン樹脂のガラス転移点(Tg:glass transition point)は、40℃以上であり、40℃以上80℃以下であることが好ましい。ガラス転移点が上記範囲である(2)ウレタン樹脂をインクに添加することにより、インクの保存安定性、及び吐出安定性(フィルタ通液性)を向上させることができる。
【0025】
前記ウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば、株式会社島津製作所製の冷却装置付きDSC-60A Plusを用いて測定することができる。
【0026】
前記(1)ウレタン樹脂の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、10nm以上150nm以下が好ましく、35nm以上100nm以下がより好ましい。当該(1)ウレタン樹脂の体積平均粒径が10nm以上であると、摩擦堅牢性が良好であるため好適である。当該(1)ウレタン樹脂の体積平均粒径が150nm以下であると、フィルタ通液性が良好であるため好適である。
【0027】
前記(2)ウレタン樹脂の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、10nm以上100nm以下が好ましく、10nm以上35nm以下がより好ましい。当該(2)ウレタン樹脂の体積平均粒径が10nm以上であると、(1)ウレタン樹脂の分散助剤となり得るため好適である。当該(2)ウレタン樹脂の体積平均粒径が35nm以下であると、(1)ウレタン樹脂の分散助剤としての機能が損なわれにくくなるため好適である。
【0028】
前記ウレタン樹脂の体積平均粒径は、例えば、ナノトラック粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)により測定することができる。
【0029】
前記ウレタン樹脂としては、水に安定して分散させるために必要な親水成分が導入された自己乳化型のものであってもよく、外部乳化剤の使用により水分散性となるものであってもよい。また、前記ウレタン樹脂は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。
【0030】
前記(1)ウレタン樹脂の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
・ユーコートUX-300(Tg:-25℃、体積平均粒径:120nm、三洋化成工業株式会社製)
・ユーコートUX-310(Tg:-25℃、体積平均粒径:120nm、三洋化成工業株式会社製)
・ユーコートUX-340(Tg:-50℃、体積平均粒径:50nm、三洋化成工業株式会社製)
・パーマリンUA-150(Tg:-70℃、体積平均粒径:70nm、三洋化成工業株式会社製)
・パーマリンUA-200(Tg:-35℃、体積平均粒径:70nm、三洋化成工業株式会社製)
・パーマリンUA-350(Tg:-30℃、体積平均粒径:70nm、三洋化成工業株式会社製)
・パーマリンUA-368(Tg:-20℃、体積平均粒径:300nm、三洋化成工業株式会社製)
・ユーコートUWS-145(Tg:-45℃、体積平均粒径:20nm、三洋化成工業株式会社製)
・ユープレンUXA-307(Tg:-45℃、体積平均粒径:200nm、三洋化成工業株式会社製)
・スーパーフレックス300(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-42℃、体積平均粒径:70nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス420(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-10℃、体積平均粒径:10nm、固形分32質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス420NS(Tg:-10℃、体積平均粒径:10nm、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス460(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-21℃、体積平均粒径:40nm、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス460S(Tg:-28℃、体積平均粒径:30nm、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス470(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-31℃、体積平均粒径:50nm、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス500M(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-39℃、体積平均粒径:140nm、固形分45質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス740(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-34℃、体積平均粒径:200nm、固形分40質量%、第一工業製薬株式会社製)
・タケラック(登録商標)WS-6021(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-60℃、体積平均粒径:90nm、固形分30質量%、三井化学株式会社製)
・タケラックW-6110(ポリウレタンディスパージョン、Tg:-20℃、体積平均粒径:90nm、固形分32質量%、三井化学株式会社製)
【0031】
前記(2)ウレタン樹脂の市販品としては、例えば、以下のものが挙げられる。
・スーパーフレックス130(Tg:101℃、体積平均粒径:30nm、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス150(ポリウレタンディスパージョン、Tg:40℃、体積平均粒径:30nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス170(ポリウレタンディスパージョン、Tg:75℃、体積平均粒径:10nm、固形分33質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス210(Tg:41℃、体積平均粒径40nm、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス820(ポリウレタンディスパージョン、Tg:46℃、体積平均粒径:30nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス830HS(ポリウレタンディスパージョン、Tg:68℃、体積平均粒径:10nm、固形分27質量%、第一工業製薬株式会社製)
・スーパーフレックス870(ポリウレタンディスパージョン、Tg:78℃、体積平均粒径:30nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製)
・タケラックW-5030(Tg:85℃、体積平均粒径:50nm、三井化学株式会社製)
・タケラックW-5661(ポリウレタンディスパージョン、Tg:70℃、体積平均粒径:30nm、固形分35質量%、三井化学株式会社製)
・タケラックWS-5984(Tg:70℃、体積平均粒径:80nm、三井化学株式会社製)
・タケラックW-6010(Tg:90℃、体積平均粒径:60nm、三井化学株式会社製)
・タケラックW-6020(ポリウレタンディスパージョン、Tg:90℃、体積平均粒径:80nm、固形分30質量%、三井化学株式会社製)
・タケラックW-605(Tg:100℃、体積平均粒径:80nm、三井化学株式会社製)
・タケラックW-635(Tg:70℃、体積平均粒径:150nm、三井化学株式会社製)
【0032】
<色材>
本発明において、前記白色インクは白色の色材を含有し、前記カラーインクはカラーの色材を含有する。
前記色材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、顔料などが挙げられる。当該顔料としては、例えば、無機顔料及び有機顔料を使用することができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
また、前記顔料としては、例えば、ブラック顔料、イエロー顔料、マゼンタ顔料、シアン顔料、白色顔料、緑色顔料、橙色顔料、若しくは、光沢色顔料又はメタリック顔料(金色や銀色等)などを用いることができる。
【0033】
前記無機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、水酸化アルミニウム、バリウムイエロー、カドミウムレッド、クロムイエロー、及びカーボンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、白色色材としては酸化チタンが好ましく、黒色色材としてはカーボンブラックが好ましい。
当該カーボンブラックとしては、特に制限はなく、目的に応じて、適宜選択することができ、例えば、コンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、及びランプブラックなどが挙げられる。
【0034】
前記有機顔料としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アゾ顔料、多環式顔料、染料キレート、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、又はアニリンブラックなどが挙げられる。これらの中でも、前記有機顔料は、アゾ顔料、及び多環式顔料などが好ましい。
当該アゾ顔料としては、例えば、アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、及びキレートアゾ顔料などが挙げられる。
当該多環式顔料としては、例えば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジオキサジン顔料、インジゴ顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、及びキノフラロン顔料などが挙げられる。
当該染料キレートとしては、例えば、塩基性染料型キレート、及び酸性染料型キレートなどが挙げられる。
【0035】
前記有機顔料の具体例としては、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー34、C.I.ピグメントイエロー35、C.I.ピグメントイエロー37、C.I.ピグメントイエロー42(黄色酸化鉄)、C.I.ピグメントイエロー53、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー74、C.I.ピグメントイエロー81、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー95、C.I.ピグメントイエロー97、C.I.ピグメントイエロー98、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー101、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー108、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー117、C.I.ピグメントイエロー120、C.I.ピグメントイエロー128、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー151、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー183、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー213;C.I.ピグメントオレンジ5、C.I.ピグメントオレンジ13、C.I.ピグメントオレンジ16、C.I.ピグメントオレンジ17、C.I.ピグメントオレンジ36、C.I.ピグメントオレンジ43、C.I.ピグメントオレンジ51;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド5、C.I.ピグメントレッド17、C.I.ピグメントレッド22、C.I.ピグメントレッド23、C.I.ピグメントレッド31、C.I.ピグメントレッド38、C.I.ピグメントレッド48:2(パーマネントレッド2B(Ca))、C.I.ピグメントレッド48:3、C.I.ピグメントレッド48:4、C.I.ピグメントレッド49:1、C.I.ピグメントレッド52:2、C.I.ピグメントレッド53:1、C.I.ピグメントレッド57:1(ブリリアントカーミン6B)、C.I.ピグメントレッド60:1、C.I.ピグメントレッド63:1、C.I.ピグメントレッド63:2、C.I.ピグメントレッド64:1、C.I.ピグメントレッド81、C.I.ピグメントレッド83、C.I.ピグメントレッド88、C.I.ピグメントレッド101(べんがら)、C.I.ピグメントレッド104、C.I.ピグメントレッド105、C.I.ピグメントレッド106、C.I.ピグメントレッド108(カドミウムレッド)、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントレッド114、C.I.ピグメントレッド122(キナクリドンマゼンタ)、C.I.ピグメントレッド123、C.I.ピグメントレッド146、C.I.ピグメントレッド149、C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド168、C.I.ピグメントレッド170、C.I.ピグメントレッド172、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド178、C.I.ピグメントレッド179、C.I.ピグメントレッド185、C.I.ピグメントレッド190、C.I.ピグメントレッド193、C.I.ピグメントレッド209、C.I.ピグメントレッド219;C.I.ピグメントバイオレット1(ローダミンレーキ)、C.I.ピグメントバイオレット3、C.I.ピグメントバイオレット5:1、C.I.ピグメントバイオレット16、C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット38;C.I.ピグメントブルー1、C.I.ピグメントブルー2、C.I.ピグメントブルー15(フタロシアニンブルー)、C.I.ピグメントブルー15:1、C.I.ピグメントブルー15:2、C.I.ピグメントブルー15:3(フタロシアニンブルー)、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー17:1、C.I.ピグメントブルー56、C.I.ピグメントブルー60、C.I.ピグメントブルー63;C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン8、C.I.ピグメントグリーン10、C.I.ピグメントグリーン17、C.I.ピグメントグリーン18、C.I.ピグメントグリーン36などが挙げられる。
【0036】
前記顔料のBET比表面積としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、10m/g以上1,500m/g以下が好ましく、20m/g以上600m/g以下がより好ましく、50m/g以上300m/g以下がさらに好ましい。
所望のBET比表面積の顔料は、一般的なサイズ減少又は粉砕処理を行うことにより得ることができる。当該サイズ減少又は粉砕処理としては、特に制限はなく、公知の方法の中から適宜選択することができ、例えば、ボールミル粉砕、ジェットミル粉砕、又は超音波処理などが挙げられる。前記顔料は、1種単独の処理が行われてもよく、2種以上を組み合わせた処理が行われてもよい。
【0037】
前記顔料の累積50%体積粒子径D50としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インク中において、50nm以上350nm以下であることが好ましい。
【0038】
前記顔料の含有量(固形分)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、前記インク全量に対して1.0質量%以上15.0質量%以下が好ましく、1.5質量%以上10.0質量%以下がより好ましい。当該顔料の含有量(固形分)が、前記インク全量に対して1.0質量%以上であると、前記インクの発色性及び画像濃度が向上するため好適である。当該顔料の含有量(固形分)が、前記インク全量に対して15.0質量%以下であると、前記インクの吐出安定性が向上するため好適である。
【0039】
本発明における顔料として、複合顔料を用いてもよい。
前記複合顔料としては、一次平均粒径が小さい観点から、シリカ/カーボンブラック複合材料(戸田工業株式会社製)、シリカ/フタロシアニンPB15:3複合材料(戸田工業株式会社製)、シリカ/ジスアゾイエロー複合材料(戸田工業株式会社製)、及びシリカ/キナクリドンPR122複合材料(戸田工業株式会社製)等が好ましい。
【0040】
例えば、一次粒子径が20nmである無機顔料粒子を等量の有機顔料で被覆した場合、この複合顔料の一次粒子径は25nm程度になる。これに適当な分散剤を用いて一次粒子まで分散できれば、分散粒子径が25nmの非常に微細な複合顔料分散インクを作製することができる。前記複合顔料は、被覆している表面の有機顔料が分散に寄与するが、厚み約2.5nmの有機顔料の薄層を通して中心にある無機顔料の性質も現れてくるため、両者を同時に分散安定化できる顔料分散剤の選択も求められる。
【0041】
上述したとおり、本発明のインクセットが前処理液を有する場合、前記ウレタン樹脂及び前記色材から選ばれる少なくとも1つがアニオン性であることが好ましい。即ち、前記色材はアニオン性であることが好ましく、当該色材はアニオン性の顔料であることがより好ましい。
当該アニオン性の顔料としては、例えば、界面活性剤で顔料を分散させた界面活性剤分散顔料、樹脂で顔料を分散させた樹脂分散顔料、顔料の表面を樹脂で被覆した樹脂被覆分散顔料、及び顔料表面に親水基を設けた自己分散顔料等が挙げられるが、いずれの分散形態においても水分散性であることが好ましい。
【0042】
前記アニオン性の顔料が、前記樹脂被覆分散顔料、又は前記自己分散顔料である場合、顔料表面に少なくとも1つの親水基を有するものが好ましい。
当該親水基としては、例えば、-COOM、-SOM、-POHM、-PO、-CONM、-SONM、-NH-C-COOM、-NH-C-SOM、-NH-C-POHM、-NH-C-PO、-NH-C-CONM、及び-NH-C-SONMなどが挙げられる。これらの親水基は公知の方法で導入することができる。なお、当該親水基における「M」は、カウンターイオンを示す。
【0043】
前記親水基において「M」で表示するカウンターイオンは、四級アンモニウムイオンであることが好ましい。当該四級アンモニウムイオンの具体例としては、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラプロピルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラペンチルアンモニウムイオン、ベンジルトリメチルアンモニウムイオン、ベンジルトリエチルアンモニウムイオン、及びテトラヘキシルアンモニウムイオンなどが挙げられる。これらの中でも、テトラエチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、及びベンジルトリメチルアンモニウムイオンが好ましく、テトラブチルアンモニウムイオンがより好ましい。
このような顔料を用いたインクは、経時保存安定性に優れ、水分蒸発時の粘度上昇が抑制される。これは、水リッチなインクから水分が蒸発し、有機溶剤リッチとなった際においても、四級アンモニウムイオンを有する親水基により、顔料の分散が安定に保てるためであると推測される。
【0044】
表面に親水基を有する色材以外の、アニオン性の顔料としては、インクの保存安定性の観点から、ポリマー微粒子に顔料を含有させたポリマーエマルジョンが好ましい。当該ポリマーエマルジョンにおいて、当該顔料は、当該ポリマー微粒子中に封入されていてもよく、当該ポリマー微粒子の表面に吸着されていてもよい。この場合、全ての顔料が、当該ポリマー微粒子中に封入又は当該ポリマー微粒子の表面に吸着されている必要はなく、一部がエマルジョン中に分散していてもよい。
前記ポリマー微粒子用のポリマーとしては、例えば、ビニル系ポリマー、ポリエステル系ポリマー、及びポリウレタン系ポリマーなどが挙げられる。これらの中でも、ビニル系ポリマー、及びポリエステル系ポリマーが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0045】
前記色材と、前記有機溶剤との質量比は、インクの吐出安定性や、画像形成装置の維持機構における廃インクの固着抑制などに関係するため、適宜調整することが好ましい。例えば、前記色材の含有量が多い一方で、前記有機溶剤の含有量が少ないインクをインクジェットヘッドから吐出する場合、ノズルのインクメニスカス付近の水分蒸発が進むことで、吐出不良を生じる場合がある。
【0046】
<水>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0047】
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、前記インクの乾燥性及び吐出信頼性の観点から、前記インク全量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0048】
<有機溶剤>
前記有機溶剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、温度23℃、相対湿度(RH)80%環境中における平衡水分量が30質量%以上であるもの(以下、「湿潤剤」と称することがある)を用いることが好ましい。これらの中でも、前記有機溶剤は、沸点(bp)が245℃~290℃であり、平衡水分量が43質量%~49質量%であるものがより好ましい。このような有機溶剤の選択は、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)に関係するが、インクの吐出安定性の向上や画像形成装置の維持機構における廃インクの固着抑制などにも関係する。
【0049】
ここで「平衡水分量」とは、塩化カリウムと塩化ナトリウムとを6:4(塩化カリウム:塩化ナトリウム、質量部)の割合で混合した飽和水溶液を用いて、デシケーター内の温湿度を温度23℃±1℃、RH80%±3%に保ち、当該デシケーター内で各有機溶剤を1gずつ秤量したシャーレを保管して平衡する水分量を測定した後、下記計算式(2)により算出したものである。
平衡水分量(質量%)=〔有機溶剤が吸収した水分量/(有機溶剤量+有機溶剤が吸収した水分量)〕×100・・・計算式(2)
【0050】
前記湿潤剤としては、例えば、温度23℃、RH80%環境中における平衡水分量が30質量%以上である多価アルコールなどが挙げられる。当該多価アルコールの具体例としては、ジエチレングリコール(bp245℃、平衡水分量43質量%)、トリエチレングリコール(bp285℃、平衡水分量39質量%)、テトラエチレングリコール(bp324℃~330℃、平衡水分量37質量%)、1,3-ブタンジオール(bp203℃~204℃、平衡水分量35質量%)、グリセリン(bp290℃、平衡水分量49質量%)、ジグリセリン(bp270℃/20hPa、平衡水分量38質量%)、1,2,3-ブタントリオール(bp175℃/33hPa、平衡水分量38質量%)、及び1,2,4-ブタントリオール(bp190℃~191℃/24hPa、平衡水分量41質量%)などが挙げられる。これらの中でも、グリセリン、及び1,3-ブタンジオールが好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0051】
前記多価アルコール以外の湿潤剤としては、例えば、2-メチル-1,3-ブタンジオール(bp214)、3-メチル-1,3-ブタンジオール(bp203℃)、ジプロピレングリコール(bp232℃)、1,5-ペンタンジオール(bp242℃)、プロピレングリコール(bp187℃)、2-メチル-2,4-ペンタンジオール(bp197℃)、エチレングリコール(bp196℃~198℃)、トリプロピレングリコール(bp267℃)、ヘキシレングリコール(bp197℃)、ポリエチレングリコール(粘調液体~固体)、ポリプロピレングリコール(bp187℃)、1,6-ヘキサンジオール(bp253℃~260℃)、1,2,6-ヘキサントリオール(bp178℃)、トリメチロールエタン(固体、融点(mp)199℃~201℃)、又はトリメチロールプロパン(固体、(mp)61℃)などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0052】
前記有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、前記インク全量に対して10.0質量%以上75.0質量%以下が好ましく、15.0質量%以上50.0質量%以下がより好ましい。
当該有機溶剤の含有量が、インク全量に対して10.0質量%以上であると、インクの保湿効果が良好であるため好適である。
当該有機溶剤の含有量が、インク全量に対して75.0質量%以下であると、後述する記録媒体上におけるインクの乾燥性が向上するため好適である。
【0053】
また、後述する記録媒体が非浸透性(低浸透性)である場合、前記有機溶剤としては、溶解度パラメータ(SP値)が9.0(cal/cm1/2以上11.8(cal/cm1/2未満のものを用いることが好ましい。SP値が上記範囲である有機溶剤の具体例としては、3-エチル-3-オキセタンメタノール(SP値:11.31(cal/cm1/2)、3-メチル-3-オキセタンメタノール(SP値:11.79(cal/cm1/2)、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド)(SP値:9.19(cal/cm1/2)、β-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド)(SP値:9.03(cal/cm1/2)、1,2-ヘキサンジオール(SP値:11.8(cal/cm1/2)、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(SP値:10.6(cal/cm1/2)、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール(SP値:10.8(cal/cm1/2)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(SP値:10.14(cal/cm1/2)、3-メトキシ-1-ブタノール(SP値:9.64(cal/cm1/2)、3-メトキシ-3-メチル-1-ブタノール(SP値:9.64(cal/cm1/2)、3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値:11.8(cal/cm1/2)、メチルプロピレントリグリコール(SP値:9.43(cal/cm1/2)、ジエチレングリコールモノ-n-ブチルエーテル(SP値:9.86(cal/cm1/2)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.34(cal/cm1/2)、トリエチレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.12(cal/cm1/2)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(SP値:9.82(cal/cm1/2)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:10.19(cal/cm1/2)、プロピレングリコールモノブチルエーテル(SP値:9.69(cal/cm1/2)、3-メトキシ-1-ブタノール(SP値:10.65(cal/cm1/2)、3-メトキシ-1-プロパノール(SP値:10.41(cal/cm1/2)、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル(SP値:9.84(cal/cm1/2)、及び3-メチル-1,5-ペンタンジオール(SP値:11.8(cal/cm1/2)などが挙げられる。
【0054】
また、後述する記録媒体が非浸透性(低浸透性)である場合、SP値が上記範囲である有機溶剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)の観点、及びインクの発色性の観点から、前記インク全量に対して0.5質量%以上5.0質量%以下が好ましく、1.0質量%以上4.0質量%以下がより好ましい。
【0055】
<界面活性剤>
本発明のインクは、カラーブリード及びビーディングの抑制(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)の観点から、界面活性剤を含むことが好ましい。
前記界面活性剤としては、例えば、アセチレン界面活性剤、シリコーン界面活性剤、及びフッ素界面活性剤などが挙げられる。当該アセチレン界面活性剤の具体例としては、アセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物などが挙げられる。当該シリコーン界面活性剤の具体例としては、ポリエーテル変性シロキサン化合物などが挙げられる。当該フッ素界面活性剤の具体例としては、フッ素化合物などが挙げられる。
これらの中でも、フィルタ通液性、及び摩擦堅牢度が向上する観点からポリエーテル変性シロキサン化合物が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
本発明のインクに界面活性剤が含まれることで、前記インクがインクジェットヘッドのノズルプレートにおける撥インク膜に濡れ難くなり、当該インクがノズルに付着することによる吐出不良を抑制することができ、吐出安定性が向上するため好適である。
【0056】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物としては、下記一般式(1)~(4)で表されるものが好ましい。
【0057】
【化1】
【0058】
前記一般式(1)中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは0~23の整数を表し、nは1~10の整数を表し、aは1~23の整数を表し、bは0~23の整数を表す。
【0059】
【化2】
【0060】
前記一般式(2)中、R及びRはそれぞれ独立して水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、mは1~8の整数を表し、c及びdはそれぞれ独立して1~10の整数を表す。
【0061】
【化3】
【0062】
前記一般式(3)中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、eは1~8の整数を表す。
【0063】
【化4】
【0064】
前記一般式(4)中、Rは下記一般式(5)のポリエーテル基を表し、fは1~8の整数を表す。
【0065】
【化5】
【0066】
前記一般式(5)中、Rは水素原子又は炭素数1~4のアルキル基を表し、gは0~23の整数を表し、hは0~23の整数を表す。但し、g及びhが同時に0となる場合はない。
【0067】
前記一般式(1)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(1)~(8)で表される化合物などが挙げられる。
【0068】
【化6】
【0069】
【化7】
【0070】
【化8】
【0071】
【化9】
【0072】
【化10】
【0073】
【化11】
【0074】
【化12】
【0075】
【化13】
【0076】
前記一般式(2)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(9)で表される化合物などが挙げられる。
【0077】
【化14】
【0078】
前記一般式(3)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(10)で表される化合物などが挙げられる。
【0079】
【化15】
【0080】
前記一般式(4)で表される化合物としては、具体的には、下記構造式(11)~(13)で表される化合物などが挙げられる。
【0081】
【化16】
【0082】
【化17】
【0083】
【化18】
【0084】
前記ポリエーテル変性シロキサン化合物は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該ポリエーテル変性シロキサン化合物の市販品としては、例えば、KF-353、KF-640、KF-642、KF-643、KF-644(いずれも、信越化学工業株式会社製)、EMALEX-SS-5051(日本エマルジョン株式会社製)、BYK-345、BYK-347、BYK-348、BYK-375、BYK-377(いずれも、ビックケミー・ジャパン株式会社製)、シルフェイスSAG002、シルフェイスSAG003、シルフェイスSAG005、シルフェイスSAG503A、シルフェイスSAG008(いずれも、日信化学株式会社製)、TEGO_Wet_KL245、TEGO_Wet_250、TEGO_Wet_260、TEGO_Wet_265、TEGO_Wet_270、TEGO_Wet_280(いずれも、エボニックジャパン株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、フィルタ通液性、及び摩擦堅牢度が向上する観点から、KF-353(信越化学工業株式会社製)が好ましい。
【0085】
前記アセチレングリコール化合物、及び前記アセチレンアルコール化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記アセチレングリコール化合物、及び前記アセチレンアルコール化合物は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該アセチレングリコール化合物、及び当該アセチレンアルコール化合物の市販品としては、例えば、サーフィノール104E(2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール)、サーフィノール420、サーフィノール440、サーフィノール465、サーフィノールSE、サーフィノールSE-F、サーフィノールPSA-336、サーフィノールDF110D、サーフィノールDF58、オルフィンE1004、オルフィンE1010、オルフィンE1020、オルフィンPD-001、オルフィンPD-002W、オルフィンPD-004、オルフィンPD-005、オルフィンEXP.4001、オルフィンEXP.4200、オルフィンEXP.4123、及びオルフィンEXP.4300(いずれも、日信化学工業株式会社製)などが挙げられる。
【0086】
前記フッ素化合物としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、起泡性が小さい観点から、パーフルオロアルキルスルホン酸化合物、パーフルオロアルキルカルボン酸化合物、パーフルオロアルキルリン酸エステル化合物、パーフルオロアルキルエチレンオキサイド付加物、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物などが好ましい。
【0087】
前記パーフルオロアルキルスルホン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルスルホン酸、及びパーフルオロアルキルスルホン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルカルボン酸化合物としては、例えば、パーフルオロアルキルカルボン酸、及びパーフルオロアルキルカルボン酸塩などが挙げられる。
前記パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマー化合物としては、パーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの硫酸エステル塩、及びパーフルオロアルキルエーテル基を側鎖に有するポリオキシアルキレンエーテルポリマーの塩などが挙げられる。
【0088】
前記フッ素化合物における塩の対イオンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、Li、Na、K、NH、NHCHCHOH、NH(CHCHOH)、又はNH(CHCHOH)などが挙げられる。
【0089】
前記フッ素化合物としては、適宜合成したものを用いてもよいし、市販品を用いてもよい。当該フッ素化合物の市販品としては、例えば、サーフロンS-242、サーフロンS-243、サーフロンS-420、サーフロンS-431(いずれも、AGCセイミケミカル株式会社製);メガファックF-251、メガファックF-430、メガファックF-444、メガファックF-477、メガファックF-552、メガファックF-553、メガファックF-554(いずれも、DIC株式会社製);CAPSTONE FS-10、CAPSTONE FS-30、CAPSTONE FS-31、CAPSTONE FS-34、CAPSTONE FS-35、CAPSTONE FS-51、CAPSTONE FS-60、CAPSTONE FS-61、CAPSTONE FS-63、CAPSTONE FS-64、CAPSTONE FS-65、CAPSTONE FS-3100(いずれも、Chemours社製);フタージェント212M、フタージェント215M、フタージェント250、フタージェント251、フタージェント222F、フタージェント245F(いずれも、株式会社ネオス社製);ポリフォックスPF-136A、PF-156A、PF-151N(いずれも、北村化学産業株式会社製)などが挙げられる。これらの中でも、良好な印字品質、特に発色性、紙に対する浸透性、濡れ性、均染性が著しく向上する点から、DuPont社製のCAPSTONE FS-3100、CAPSTON FS-34、株式会社ネオス社製のフタージェント250、フタージェント251、北村化学産業株式会社製のポリフォックスPF-151Nが好ましい。
【0090】
前記界面活性剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、前記インク全量に対して0.001質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.01質量%以上3.0質量%以下がより好ましい。当該界面活性剤の含有量が、インク全量に対して0.001質量%以上であることで、カラーブリード及びビーディングの抑制効果(言い換えると、静的表面張力及び動的表面張力の制御)が得られやすいため好適である。なお、当該界面活性剤の含有量が、インク全量に対して5.0質量を超えると、当該効果が飽和することがある。
【0091】
<その他の成分(A)>
前記その他の成分(A)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、(1)ウレタン樹脂及び(2)ウレタン樹脂以外の樹脂、添加剤などが挙げられる。
本明細書において、「(1)ウレタン樹脂及び(2)ウレタン樹脂以外の樹脂」を「その他の樹脂」と称することがある。
【0092】
<<その他の樹脂>>
前記その他の樹脂としては、(1)ウレタン樹脂及び(2)ウレタン樹脂に該当するものでなければ、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、造膜性に優れ、かつ耐溶剤性、耐水性、及び耐候性を備えた樹脂であることが画像形成において有用である。このような樹脂としては、例えば、縮合系合成樹脂、付加系合成樹脂、及び天然高分子化合物などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0093】
前記縮合系合成樹脂としては、例えば、ポリエステル樹脂、ポリエポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエーテル樹脂、ポリ(メタ)アクリル樹脂、アクリル-シリコーン樹脂、及びフッ素樹脂などが挙げられる。なお、本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル又はメタクリルを意味する。
前記付加系合成樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルエステル樹脂、ポリアクリル酸樹脂、及び不飽和カルボン酸樹脂などが挙げられる。
前記天然高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ロジン類、及び天然ゴムなどが挙げられる。
【0094】
前記その他の樹脂の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
前記その他の樹脂は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該その他の樹脂の市販品としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
・スーパーフレックス 150HS(ポリウレタンディスパージョン、Tg:32℃、体積平均粒径:80nm、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製)
・タケラック(登録商標)W-6061(ポリウレタンディスパージョン、Tg:25℃、体積平均粒径:100nm、固形分30質量%、三井化学株式会社製)
・ボンコートVF1060(アクリルエマルジョン、Tg:-10℃、固形分50質量%、DIC株式会社製)
【0095】
<<添加剤>>
前記添加剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、抑泡剤(消泡剤)、pH調整剤、防腐防黴剤、キレート試薬、防錆剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、酸素吸収剤、光安定化剤などが挙げられる。
【0096】
-抑泡剤(消泡剤)-
前記抑泡剤は、前記インクに微量添加することによって、当該インクの発泡を抑えるために用いられる。
ここで「発泡」とは、液体が薄い膜になって空気を包むことである。この泡の生成には、前記インクの表面張力や粘度等の特性が関与する。即ち、水のように表面張力が高い液体は、液体の表面積をできるだけ小さくしようとする力が働くため発泡し難い。これに対し、高粘度で高浸透性のインクは、表面張力が低いために発泡し易く、また溶液の粘性により生成した泡が維持されやすく消泡し難い。
通常、抑泡剤は、泡膜の表面張力を局部的に低下させて泡を破壊するか、発泡液に不溶な抑泡剤を発泡液表面に点在させることにより泡を破壊する。
【0097】
本発明のインクが界面活性剤として、ポリエーテル変性シロキサン化合物を含む場合、前記抑泡剤としては、下記一般式(6)で表される化合物を含む抑泡剤であることが好ましい。
【0098】
【化19】
【0099】
前記一般式(6)中、R及びRはそれぞれ独立して炭素数3~6のアルキル基を表し、R及びR10はそれぞれ独立して炭素数1~2のアルキル基を表し、nは1~6の整数を表す。
【0100】
前記一般式(6)で表される化合物を含む抑泡剤は、ポリエーテル変性シロキサン化合物ほど表面張力を低下させる働きが強くないものの、ポリエーテル変性シロキサン化合物に対する相溶性が高い。そのため、当該抑泡剤は効率的に泡膜に取り込まれ、ポリエーテル変性シロキサン化合物と当該抑泡剤との表面張力の違いにより、泡膜の表面が局部的に不均衡な状態となり、泡が破壊されると考えられる。
【0101】
前記一般式(6)で表される化合物としては、例えば、2,4,7,9-テトラメチルデカン-4,7-ジオール、及び2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールなどが挙げられる。これらの中でも、抑泡効果とインクへの相溶性が高いことから、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールが好ましい。
【0102】
前記抑泡剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インク全量に対して0.01質量%以上10.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
当該抑泡剤の含有量が、前記インク全量に対して0.01質量%以上であると、抑泡効果が良好であるため好適である。
当該抑泡剤の含有量が、前記インク全量に対して10.0質量%以下であると、樹脂粒子の粒径等のインク物性に影響がでることを抑制することができる。
【0103】
-pH調整剤-
前記pH調整剤としては、前記インクのpHを調整できるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、アルコールアミン類、アルカリ金属元素の水酸化物、アンモニウムの水酸化物、ホスホニウム水酸化物、及びアルカリ金属の炭酸塩などが挙げられる。これらの中でも、アルコールアミン類が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0104】
前記アルコールアミン類としては、例えば、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、及び2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオールなどが挙げられる。
前記アルカリ金属元素の水酸化物としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、及び水酸化カリウムなどが挙げられる。
前記アンモニウムの水酸化物としては、例えば、水酸化アンモニウム、及び第4級アンモニウム水酸化物などが挙げられる。
前記ホスホニウム水酸化物としては、例えば、第4級ホスホニウム水酸化物などが挙げられる。
前記アルカリ金属の炭酸塩としては、例えば、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、及び炭酸カリウムなどが挙げられる。
【0105】
前記pH調整剤の含有量としては、前記インクを所望のpHに調整することができれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0106】
-防腐防黴剤-
前記防腐防黴剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、1,2-ベンゾチアゾリン-3-オン、デヒドロ酢酸ナトリウム、ソルビン酸ナトリウム、2-ピリジンチオール-1-オキサイドナトリウム、安息香酸ナトリウム、及びペンタクロロフェノールナトリウムなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記防腐防黴剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
前記防腐防黴剤は、適宜合成したものを使用してもよいし、市販品を使用してもよい。当該防腐防黴剤の市販品としては、例えば、PROXEL(登録商標)GXL(1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンを主成分とした防腐防黴剤、アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)などが挙げられる。
【0107】
-キレート試薬-
前記キレート試薬としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、ニトリロ三酢酸ナトリウム、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸ナトリウム、ジエチレントリアミン五酢酸ナトリウム、及びウラミル二酢酸ナトリウムなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記キレート試薬の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0108】
-防錆剤-
前記防錆剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸性亜硫酸塩、チオ硫酸ナトリウム、チオジグリコール酸アンモニウム、ジイソプロピルアンモニウムニトライト、四硝酸ペンタエリスリトール、及びジシクロヘキシルアンモニウムニトライトなどが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記防錆剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0109】
-酸化防止剤-
前記酸化防止剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、フェノール系酸化防止剤(ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含む)、アミン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、又はリン系酸化防止剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記酸化防止剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0110】
-紫外線吸収剤-
前記紫外線吸収剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチレート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、及びニッケル錯塩系紫外線吸収剤などが挙げられる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記紫外線吸収剤の含有量としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができる。
【0111】
<インクの物性>
本発明におけるインクの物性としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができ、例えば、粘度、表面張力、pH等が以下の範囲であることが好ましい。
【0112】
前記インクの25℃での粘度は、5mPa・s以上25mPa・s以下が好ましく、6mPa・s以上20mPa・s以下がより好ましい。前記インクの25℃での粘度が5mPa・s以上であることで、画像濃度や文字品位の向上効果が得られるため好適である。また、前記インクの25℃での粘度が、25mPa・s以下であることでインクの吐出安定性を向上させることができ好適である。
ここで粘度は、例えば回転式粘度計(東機産業株式会社製RE-80L)を使用することができる。測定条件としては、25℃で、標準コーンローター(1°34’×R24)、サンプル液量1.2mL、回転数50rpm、3分間で測定可能である。
【0113】
前記インクのpHとしては、インクの吐出安定性が向上する観点から、7~12が好ましい。
ここでpHは、例えば、pHメータ(HM-30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、25℃にて測定することができる。
【0114】
<インクの製造方法>
前記インクは、上述の各材料を撹拌し混合することによって製造することができ、例えば、サンドミル、ホモジナイザー、ボールミル、ペイントシェイカー、超音波分散機等の装置を用いて行うことができる。
【0115】
<インクの組成分析方法>
本発明のインクの組成は、ガスクロマトグラフ質量分析計(GC-MS、株式会社島津製作所製)、TG/DTA同時測定装置などで分析することができる。
【0116】
<前処理液>
前記前処理液は、水及び凝集剤を含有し、必要に応じて、樹脂(pre)、ワックス、有機溶剤(pre)、界面活性剤(pre)、その他の成分(B)を含有していてもよい。
前記前処理液は、前記白色インク及び前記カラーインクが付与される前に、記録媒体に対して付与される液体組成物である。記録媒体に対して、前記インクが付与される前に当該前処理液を付与することで、後から付与される当該インクの凝集及び増粘を生じさせ、密着性を向上させることができる。
【0117】
<<水>>
前記水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができ、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、及び超純水などを用いることができる。
【0118】
前記水の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、前記前処理液の乾燥性の観点から、前記前処理液全量に対して10.0質量%以上90.0質量%以下が好ましく、20.0質量%以上60.0質量%以下がより好ましい。
【0119】
<<凝集剤>>
本明細書において「凝集剤」とは、前記前処理液と、前記インクとが接触したときに、当該インクを凝集又は増粘させる成分を表す。具体例としては、前記インクに含まれるアニオン性化合物(例えば、色材又はウレタン樹脂)を凝集させる成分などが挙げられる。このような凝集剤を含む前処理液を用いることで、前記前処理液と接触した前記インクを凝集又は増粘させ、記録媒体表面における当該インクの密着性を向上させることができる。
【0120】
前記凝集剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、例えば、カチオン性化合物などが挙げられる。当該カチオン性化合物としては、例えば、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーから選ばれるいずれかであることが好ましく、無機金属塩及びカチオン性ポリマーから選ばれるいずれかであることがより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0121】
前記無機金属塩としては、例えば、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マンガン、硫酸ニッケル、硫酸鉄(II)、硫酸銅(II)、硫酸亜鉛、硝酸鉄(II)、硝酸鉄(III)、硝酸コバルト、硝酸ストロンチウム、硝酸銅(II)、硝酸ニッケル(II)、硝酸鉛(II)、硝酸マンガン(II)、塩化ニッケル(II)、塩化カルシウム、塩化スズ(II)、塩化ストロンチウム、塩化バリウム、塩化マグネシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸水素ナトリウム、硫酸水素カリウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、塩化ナトリウム、及び塩化カリウムなどが挙げられる。これらの中でも、前記無機金属塩としては、硫酸マグネシウム、及び塩化カリウムが好ましい。
【0122】
前記有機酸金属塩としては、例えば、L-アスパラギン酸ナトリウム、L-アスパラギン酸マグネシウム、アスコルビン酸カルシウム、L-アスコルビン酸ナトリウム、琥珀酸ナトリウム、琥珀酸二ナトリウム、クエン酸アルミニウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、乳酸亜鉛、乳酸アルミニウム、乳酸カリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、乳酸マグネシウム、酢酸カルシウム、酒石酸カリウム、酒石酸カルシウム、DL-酒石酸ナトリウム、及び酒石酸ナトリウムカリウムなどが挙げられる。
【0123】
前記無機金属塩及び前記有機酸金属塩は、それぞれ、カルシウム塩、マグネシウム塩、ニッケル塩、及びアルミニウム塩から選ばれるいずれかであることが好ましい。前記無機金属塩及び前記有機酸金属塩がこれらの塩であることによって、前記インクに含まれる前記ウレタン樹脂に対する凝集効果が向上し、カラーブリード及びビーディングの発生をより抑制することができるとともに、前記前処理液の保存安定性を向上させることができ好適である。
【0124】
前記有機酸アンモニウム塩としては、例えば、酢酸アンモニウム、プロピオン酸アンモニウム、乳酸アンモニウム、蓚酸アンモニウム、酒石酸アンモニウム、琥珀酸アンモニウム(琥珀酸二アンモニウム)、マロン酸ジアンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム、クエン酸三アンモニウム、及びL-グルタミン酸アンモニウムなどが挙げられる。
【0125】
前記カチオン性ポリマーとしては、第4級アンモニウム塩型のカチオン性高分子化合物が好ましい。具体的には、ジアルキルアリルアンモニウムクロライド重合物、ジアルキルアミノエチル(メタ)アクリレート4級アンモニウム塩重合物、変性ポリビニルアルコールジアルキルアンモニウム塩重合物、及びジアルキルジアリルアンモニウム塩重合物などが挙げられる。
また、上記例示のもの以外にも、その他のカチオン性ポリマーとして、カチオン性特殊変性ポリアミン化合物、カチオン性ポリアミドポリアミン化合物、カチオン性尿素-ホルマリン樹脂化合物、カチオン性ポリアクリルアミド化合物、カチオン性アルキルケテンダイマー、カチオン性ジシアンジアミド化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ホルマリン縮合化合物、カチオン性ジシアンジアミド-ポリアミン縮合化合物、カチオン性ポリビニルホルムアミド化合物、カチオン性ポリビニルピリジン化合物、カチオン性ポリアルキレンポリアミン化合物、及びカチオン性エポキシポリアミド化合物を用いてもよい。
これらの中でも、下記一般式(7)~(10)で表される化合物が好ましい。
【0126】
【化20】
【0127】
前記一般式(7)中、R11はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、Yはハロゲンイオンを表し、nは整数を表す。
【0128】
【化21】
【0129】
前記一般式(8)中、Yはハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、R12はH又はCHを表し、R13、R14、及びR15はそれぞれ独立してH又はアルキル基を表し、nは整数を表す。
【0130】
【化22】
【0131】
前記一般式(9)中、R16はそれぞれ独立してメチル基又はエチル基を表し、Yはハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、nは整数を表す。
【0132】
【化23】
【0133】
前記一般式(10)中、Yはハロゲンイオン、硝酸イオン、亜硝酸イオン、又は酢酸イオンを表し、Xはハロゲン原子を表し、nは1~3の整数を表し、mは1~3の整数を表す。
【0134】
前記凝集剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、当該凝集剤の溶解性等の観点、及びカラーブリード及びビーディングの発生を抑制する観点から、前記前処理液全量に対して0.1質量%以上30.0質量%以下であることが好ましく、1.0質量%以上20.0質量%以下であることがより好ましい。
【0135】
<<樹脂(pre)>>
本明細書において、前記前処理液に含まれる樹脂を「樹脂(pre)」と称することがある。なお、当該樹脂(pre)は、前記インクに含まれるウレタン樹脂(第一のウレタン樹脂、及び第二のウレタン樹脂)とは異なるものである。
前記前処理液が樹脂(pre)を含有することで、前記インクの記録媒体に対する密着性を向上させることができる。
【0136】
前記樹脂(pre)は、長期的な保存安定性の観点から、一般的に用いられている電荷反発型エマルションではなく、立体障害により分散したノニオン性樹脂であることが好ましい。当該樹脂(pre)がノニオン性樹脂であることによって、以下のような問題を解消することができ好適である。
・当該樹脂(pre)として、電荷反発型エマルションであるアニオン性樹脂を用いた場合、凝集剤の一例である無機金属塩と当該アニオン性樹脂とで凝集が生じる。
・当該樹脂(pre)として、電荷反発型エマルションであるアニオン性樹脂を用いた場合、解離時に3価の陽イオンを生じる金属多価塩と当該アニオン性樹脂とで、瞬時に凝集が生じる。
・当該樹脂(pre)として、カチオン性樹脂を用いた場合、常温放置では充分に安定であるが、長期安定性を見越した加速試験として加温下で静置すると、増粘が生じる。
【0137】
前記ノニオン性樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオレフィン樹脂、塩素化ポリオレフィン樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アクリル樹脂、スチレンブタジエン樹脂、及びこれらの樹脂の重合に用いられる重合性化合物の共重合体などを用いることができる。これらの中でも、エチレン-酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合樹脂、エチレン-酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル共重合体、及び塩素化オレフィン樹脂が好ましい。これら樹脂は、前記インクの記録媒体に対する密着性をより向上させることができる。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0138】
前記樹脂(pre)が前記ノニオン性樹脂であることを判断する方法としては、特に限定されないが、例えば、前記前処理液から遠心分離により固形分を単離後、熱分解GC-MS(例えば、GCMS―QP2020NX、株式会社島津製作所製など)により、カルボキシル基及びスルホキシル基等の酸性官能基、又はアミノ基等の塩基性官能基を含有する材料が検出されないことを確認する方法などが挙げられる。
【0139】
前記樹脂(pre)の形状としては、特に制限はなく目的に応じて適宜選択することができ、定形であってもよく、不定形であってもよい。これらの中でも、定形であることが好ましい。前記樹脂(pre)が定形である場合、球状であることが好ましい。前記樹脂(pre)が球状である場合、粒子であることが好ましい。
【0140】
前記ノニオン性樹脂のガラス転移点(Tg)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、-30℃以上30℃以下であることが好ましく、-25℃以上25℃以下であることがより好ましい。当該ノニオン性樹脂のガラス転移点(Tg)が、-30℃以上であることで樹脂皮膜が強靭なものとなり、当該前処理液により形成される層がより堅牢なものとなる。また、当該ノニオン性樹脂のガラス転移点(Tg)が、30℃以下であることで樹脂の成膜性が向上し、柔軟性も担保されるため、前記インクの記録媒体に対する密着性をより向上させることができる。
前記ノニオン性樹脂のガラス転移点(Tg)は、例えば、株式会社島津製作所製の冷却装置付きDSC-60A Plusを用いて、ガラス転移点(Tg)を測定することができる。
【0141】
前記ノニオン性樹脂の体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50nm以上1000nm以下が好ましく、100nm以上1000nm以下がより好ましい。
前記ノニオン性樹脂の体積平均粒径は、例えば、ナノトラック粒度分布測定装置(Nnotrac WaveII-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)により測定することができる。
【0142】
前記樹脂(pre)の含有量(固形分)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することできるが、前記前処理液全量に対して0.5質量%以上20.0質量%以下であることが好ましい。
前記樹脂(pre)の含有量(固形分)が、前記前処理液全量に対して0.5質量%以上20.0質量%以下であることで、前記インクの記録媒体に対する密着性をより向上させることができる。
【0143】
<<ワックス>>
前記ワックスとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水分散性ワックスなどを用いることができる。前記ワックスの具体例としては、カルナバワックス、キャンデリラワックス、みつろう、ライスワックス、及びラノリン等の植物又は動物系ワックス;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、酸化ポリエチレンワックス、及びペトロラタム等の石油系ワックス;モンタンワックス又はオゾケライト等の鉱物系ワックス;カーボンワックス、へキストワックス、ポリエチレンワックス、及びステアリン酸アミド等の合成ワックスなどが挙げられる。これらの中でも、前記インクの記録媒体に対する密着性を向上させることができる観点、並びに前記前処理液中における分散性の観点から、パラフィンワックス、及びポリエチレンワックスが好ましく、パラフィンワックスがより好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0144】
前記ワックスの融点としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、50℃以上130℃以下が好ましく、60℃以上120℃以下がより好ましい。当該ワックスの融点が50℃以上130℃以下であると、前記インクの記録媒体に対する密着性をより向上させることができる。
【0145】
前記ワックスの体積平均粒径としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、1μm以上20μm以下が好ましく、1μm以上5μm以下がより好ましい。
前記ワックスの体積平均粒径は、例えば、ナノトラック粒度分布測定装置(Nanotrac WaveII-UT151、マイクロトラック・ベル株式会社製)により測定することができる。
【0146】
前記ワックスの含有量(固形分)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜設定することができるが、前記前処理液全量に対して0.05質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下であることがより好ましい。前記ワックスの含有量(固形分)が、前記前処理液全量に対して0.05質量%以上5.0質量%以下であることで、前記白色インクを記録媒体表面付近に留め易くなり、ハンター白色度を向上させることができる。
【0147】
<<有機溶剤(pre)>>
本明細書において、前記前処理液に含まれる有機溶剤を「有機溶剤(pre)」と称することがある。なお、当該有機溶剤(pre)は、前記インクに含まれる有機溶剤とは異なるものである。
前記水溶性有機溶剤(pre)の具体例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、3-メチル-1,3-ブタンジオール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、1,2-ペンタンジオール、1,3-ペンタンジオール、1,4-ペンタンジオール、2,4-ペンタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,3-ヘキサンジオール、2,5-ヘキサンジオール、1,5-ヘキサンジオール、グリセリン、1,2,6-ヘキサントリオール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、エチル-1,2,4-ブタントリオール、1,2,3-ブタントリオール、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール、又はペトリオール等の多価アルコール類;エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、テトラエチレングリコールモノメチルエーテル、又はプロピレングリコールモノエチルエーテル等の多価アルコールアルキルエーテル類;エチレングリコールモノフェニルエーテル、又はエチレングリコールモノベンジルエーテル等の多価アルコールアリールエーテル類;2-ピロリドン、N-メチル-2-ピロリドン、N-ヒドロキシエチル-2-ピロリドン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ε-カプロラクタム、又はγ-ブチロラクトン等の含窒素複素環化合物;ホルムアミド、N-メチルホルムアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、3-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド、又は3-ブトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド等のアミド類;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、又はトリエチルアミン等のアミン類;ジメチルスルホキシド、スルホラン、又はチオジエタノール等の含硫化合物;プロピレンカーボネート;炭酸エチレンなどが挙げられる。
【0148】
前記有機溶剤(pre)は、湿潤剤として機能するだけでなく、良好な乾燥性を得られることから、沸点が250℃以下の有機溶剤を用いることが好ましい。
これらの中でも、記録媒体表面に濡れ易くなる観点から、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、及び1,2-ブタンジオールが好ましい。
【0149】
前記前処理液における前記有機溶剤(pre)の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記前処理液の乾燥性及び吐出信頼性の点から、前記前処理液全量に対して5.0質量%以上60.0質量%以下が好ましく、10.0質量%以上30.0質量%以下がより好ましい。
【0150】
<<界面活性剤(pre)>>
本明細書において、前記前処理液に含まれる界面活性剤を「界面活性剤(pre)」と称することがある。なお、当該界面活性剤(pre)は、前記インクに含まれる界面活性剤とは異なるものである。
前記界面活性剤(pre)としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、シリコーン界面活性剤、フッ素界面活性剤、両性界面活性剤、ノニオン界面活性剤、又はアニオン界面活性剤のいずれも使用可能である。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0151】
-シリコーン界面活性剤-
前記シリコーン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、高pH(pH11~14)でも分解しないものが好ましい。
高pH(pH11~14)でも分解しないシリコーン界面活性剤としては、例えば、側鎖変性ポリジメチルシロキサン、両末端変性ポリジメチルシロキサン、片末端変性ポリジメチルシロキサン、側鎖両末端変性ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。これらの中でも、親水性が向上し、水に対する溶解性が高くなる観点から、変性基としてポリオキシエチレン基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン基を有するものが好ましい。
また、前記シリコーン界面活性剤として、ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤を用いることもできる。当該ポリエーテル変性シリコーン界面活性剤としては、例えば、ポリアルキレンオキシド構造をジメチルシロキサンのSi部側鎖に導入した化合物などが挙げられる。
【0152】
前記フッ素界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記インクに含まれるフッ素界面活性剤と同様のものを用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0153】
前記両性界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ラウリルアミノプロピオン酸塩、ラウリルジメチルベタイン、ステアリルジメチルベタイン、又はラウリルジヒドロキシエチルベタインなどが挙げられる。
【0154】
前記ノニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、ポリオキシエチレンプロピレンブロックポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、又はアセチレンアルコールのエチレンオキサイド付加物などが挙げられる。
【0155】
前記アニオン界面活性剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、ラウリル酸塩、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルサルフェートの塩などが挙げられる。
【0156】
<<その他の成分(B)>>
前記その他の成分(B)としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、消泡剤、防腐防黴剤、及び防錆剤などが挙げられる。
【0157】
-消泡剤-
前記消泡剤としては、上述の<その他の成分(A)>の項目に記載した―抑泡剤(消泡剤)―と同様のものを使用することができる。当該消泡剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、シリコーン消泡剤、ポリエーテル消泡剤、及び脂肪酸エステル消泡剤などが挙げられる。これらの中でも、前記消泡剤は、破泡効果に優れる点から、シリコーン消泡剤が好ましい。
これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0158】
-防腐防黴剤-
前記防腐防黴剤としては、上述の<その他の成分(A)>の項目に記載した―防腐防黴剤―と同様のものを使用することができる。
【0159】
-防錆剤-
前記防錆剤としては、上述の<その他の成分(A)>の項目に記載した―防錆剤―と同様のものを使用することができる。
【0160】
<記録媒体>
前記インク、及び前記前処理液などが付与される記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、布帛、フィルム、OHPシート、又は汎用印刷用紙などが挙げられる。これらの中でも、前記記録媒体は、カラーブリード及びビーディングが発生しやすく、前記インクセットを適用することにより得られる効果が顕著になる観点から、商業印刷用紙等の低浸透性の記録媒体、サイネージ用等の非浸透性の記録媒体、又は布帛などが好ましい。なお、前記布帛は、フィルムや紙などと異なり、凹凸に富んだ表面構造を有するため、付与される白色インク及びカラーインクなどの量が多くなりやすく、これに伴ってカラーブリード及びビーディングが発生しやすくなる記録媒体である。
【0161】
前記記録媒体の一例として、布帛について説明する。本明細書において「布帛」とは、繊維を、織物、編物、不織布などの形態にしたものを表す。
当該繊維としては、合成繊維、半合成繊維、再生繊維、及び天然繊維等の有機質繊維であることが好ましい。
【0162】
前記合成繊維としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、アクリル、ポリオレフィン、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、及びポリイミドなどの繊維が挙げられる。
前記半合成繊維としては、例えば、アセテート、ジアセテート、及びトリアセテートなどの繊維が挙げられる。
前記再生繊維としては、例えば、ポリノジック、レーヨン、リヨセル、及びキュプラなどの繊維が挙げられる。
前記天然繊維としては、例えば、綿、麻、絹、及び毛などの繊維が挙げられる。
【0163】
前記布帛を形成する繊維の中でも、綿等の天然繊維よりも、ポリエステル等の合成繊維の方が、カラーブリード及びビーディングが発生しやすく、更に白色インクを表面にとどめることも難しい。しかし、本発明のインクセットを用いることによって、このような布帛に対して好適に作用し、カラーブリードとビーディングを抑制し、更に白色インクを表面に留めることも可能となる点で有利である。
【0164】
前記布帛は、当該布帛に用いられる繊維が、内部又は表面において、顔料又は染料等の着色剤を化学的に又は物理的に保持することにより着色された濃色であるものが好ましい。前記布帛が濃色である場合、当該布帛に形成されるカラー画像の発色性を向上させることを目的として、当該布帛とカラー画像との間に白色の下地が形成され得る。つまりは、前記白色インク及び前記カラーインクを有する前記インクセットを使用することが好適となるためである。
【0165】
なお、本明細書において「濃色の布帛」とは、前記布帛の明度(L)を分光測色計(例えば、X-rite eXact、X-Rite社製)を用いて測定した場合に、60>Lの範囲を満たす布帛を表し、50>Lの範囲を満たす布帛であることが好ましく、40>Lの範囲を満たす布帛であることがより好ましく、30>Lの範囲を満たす布帛であることが更に好ましく、20>Lの範囲を満たす布帛であることが特に好ましい。
【0166】
<インクカートリッジ>
本発明のインクセットは、インクカートリッジに収容されていてもよい。当該インクカートリッジは、本発明のインクセットを収容してなるものであり、当該インクセットと、容器とを有し、さらに必要に応じて、その他の部材を有していてもよい。
前記インクカートリッジは、インク交換などの作業において、インクに直接触れる必要がなく、手指や着衣の汚れなどの心配がなく、またインクへのごみ等の異物混入を防止できる点で有利である。
【0167】
前記インクカートリッジは、前記インクセットを、一体的に収容していてもよく、前記白色インク及び前記カラーインクを、それぞれ独立に収容していてもよい。また、前記インクセットが、前記白色インク及び前記カラーインクを複数有する場合、前記インクカートリッジは、各白色インク及び各カラーインクを一体的に収容していてもよく、それぞれ独立に収容していてもよい。
【0168】
前記容器としては、特に制限はなく、目的に応じてその形状、構造、大きさ、材質等を適宜選択することができ、例えば、アルミニウムラミネートフィルム、樹脂フィルム等で形成されたインク袋などを有するものなどが好ましい。
【0169】
前記インクカートリッジの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜用いて製造することができる。
【0170】
前記インクカートリッジは、例えば、前記インク袋等の容器に収容されたインクセットを、更にカートリッジケース(例えば、プラスチック製のケース)内に収容し、画像形成装置に着脱可能に装着して用いられるようになっていることが好ましい。これにより、インクの補充や交換を簡素化でき、作業性を向上させることができる。
【0171】
(画像形成装置、及び画像形成方法)
本発明の画像形成装置は、白色インク付与手段と、カラーインク付与手段とを有し、必要に応じて、白色インク収容手段、カラーインク収容手段、及びその他の手段を有していてもよい。
本発明の画像形成方法は、白色インク付与工程と、カラーインク付与工程とを有し、必要に応じて、その他の工程を有していてもよい。
前記画像形成方法は、前記画像形成装置によって好適に行われる。
【0172】
<白色インク付与手段及び白色インク付与工程>
前記白色インク付与手段は、記録媒体に対して白色インクを付与する手段である。
前記白色インク付与工程は、記録媒体に対して白色インクを付与する工程である。
前記白色インク付与工程は、前記白色インク付与手段によって好適に行われる。
前記記録媒体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、上述の<記録媒体>の項目に記載のものを使用することができ、好ましい態様も同様である。
【0173】
前記白色インクの付与方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、吐出方式又は塗布方式などが挙げられる。これらの中でも、前記白色インクの付与方式は、吐出方式であることが好ましく、インクジェット吐出方式であることがより好ましい。
【0174】
前記吐出方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、圧電素子アクチュエータを用いる方式、熱エネルギーを作用させる方式、静電気力を利用したアクチュエータを用いる方式、又は連続噴射型の荷電制御タイプのヘッドを用いる方式などが挙げられる。
【0175】
前記記録媒体に対する前記白色インクの付与量としては、前記記録媒体の種類によって大きく異なるが、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、1g/m以上500g/m以下であることが好ましく、5g/m以上400g/m以下であることがより好ましい。
また、前記記録媒体として前記布帛を用いる場合は、50g/m以上500g/m以下であることが好ましく、100g/m以上400g/m以下であることがより好ましく、150g/m以上300g/m以下であることがさらに好ましい。
【0176】
<カラーインク付与手段及びカラーインク付与工程>
前記カラーインク付与手段は、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する手段である。
前記カラーインク付与工程は、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対してカラーインクを付与する工程である。
前記カラーインク付与工程は、前記カラーインク付与手段によって好適に行われる。
【0177】
前記カラーインクの付与方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記白色インクの付与方式と同様の方式を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0178】
前記記録媒体に対する前記カラーインクの付与量としては、前記記録媒体の種類によって大きく異なるが、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、1g/m以上50g/m以下であることが好ましく、5g/m以上30g/m以下であることがより好ましい。
また、前記記録媒体として前記布帛を用いる場合は、5g/m以上50g/m以下であることが好ましく、10g/m以上30g/m以下であることがより好ましい。
【0179】
<白色インク収容手段、及びカラーインク収容手段>
前記白色インク収容手段は、白色インクを収容する手段である。
前記カラーインク収容手段は、カラーインクを収容する手段である。
前記白色インク収容手段、及び前記カラーインク収容手段は、前記インクカートリッジであってもよい。
前記白色インク収容手段が収容する白色インクは、本発明のインクセットに含まれる白色インクである。
前記カラーインク収容手段が収容するカラーインクは、本発明のインクセットに含まれるカラーインクである。
【0180】
前記画像形成方法において、前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間(即ち、前記白色インク付与工程と前記カラーインク付与工程との間)は、極力短い方が生産性の観点から好ましい。なお、「前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されるまでの間」とは、前記白色インクを乾燥(凝集・増粘)させる時間である。一般的な画像形成装置(方法)においては、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的で、当該白色インクを加熱乾燥させる加熱手段(工程)を設けているものがあるが、本発明のインクセットであれば、当該加熱手段(工程)を有さずとも、前記記録媒体に対して前記白色インクが付与されてから、前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して前記カラーインクが付与されることによって、カラーブリード及びビーディングを抑制することができる。
【0181】
<その他の手段及びその他の工程>
前記その他の手段としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前処理液収容手段、前処理液付与手段、及び加熱手段などが挙げられる。
前記その他工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前処理液付与工程、及び加熱工程などが挙げられる。
【0182】
<<前処理液収容手段>>
前記前処理液収容手段は、前処理液を収容する手段である。
当該前処理液収容手段によって収容される前処理液は、本発明のインクセットに含まれる前処理液である。
【0183】
<<前処理液付与手段及び前処理液付与工程>>
前記前処理液付与手段は、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して、当該白色インクが付与される前に前記前処理液を付与する手段である。
前記前処理液付与工程は、前記白色インク付与工程の前に、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する工程である。
前記前処理液付与工程は、前記前処理液付与手段により好適に行われる。
【0184】
本発明の画像形成装置が、前記前処理液収容手段及び前記前処理液付与手段を有する場合、前記白色インク付与手段は、前記記録媒体の前記前処理液が付与された領域に対して前記白色インクを付与する手段と言い換えることができる。
また、前記画像形成方法が前処理液付与工程を有する場合、前記白色インク付与工程は、前記記録媒体の前記前処理液が付与された領域に対して前記白色インクを付与する工程と言い換えることができる。
【0185】
前記前処理液の付与方式としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記白色インクの付与方式と同様の方式を用いることができ、好ましい態様も同様である。
【0186】
前記記録媒体に対する前記前処理液の付与量としては、前記記録媒体の種類によって大きく異なるが、画像品質向上と乾燥性向上の観点から、0.1g/m以上500g/m以下であることが好ましく、1g/m以上400g/m以下であることがより好ましい。
また、前記記録媒体として前記布帛を用いる場合は、100g/m以上500g/m以下であることが好ましく、200g/m以上500g/m以下であることがより好ましく、300g/m以上400g/m以下であることが更に好ましい。
【0187】
<<加熱手段及び加熱工程>>
前記加熱手段は、前記記録媒体に付与された前記白色インク、前記カラーインク、又は前記前処理液などの各種液体を加熱する手段である。
前記加熱工程は、前記記録媒体に付与された前記白色インク、前記カラーインク、又は前記前処理液などの各種液体を加熱する工程である。
前記加熱工程は、前記加熱手段により好適に行われる。
【0188】
前記加熱手段としては、特に制限はなく、公知の加熱手段の中から適宜選択することができ、例えば、ロールヒーター、ドラムヒーター、温風発生装置、ヒートプレス装置などが挙げられる。
【0189】
なお、前記画像形成方法は、上述のように前記白色インク付与工程と前記カラーインク付与工程との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱する加熱工程を含まないことが好ましい。
同様に、前記画像形成装置は、前記白色インク付与手段と前記カラーインク付与手段との間に、前記白色インクが付与された記録媒体を加熱する加熱手段を有さないことが好ましい。
【0190】
以下に、図1図3を参照して、本発明の画像形成装置について具体的に説明するが、本発明はこれに限られるものではない。
【0191】
図1は、本発明の画像形成装置の一例を示す概略斜視図である。図2は、本発明の画像形成装置における収容手段の一例を示す概略斜視図である。
【0192】
図1に示す画像形成装置400は、シリアル型のインクジェットヘッドを有する画像形成装置である。画像形成装置400の外装401内に機構部420が設けられている。前処理液用の前処理液収容手段410p、白色インク用の白色インク収容手段410w、ブラックインク用のブラックインク収容手段410k、シアンインク用のシアンインク収容手段410cにおける収容部411は、例えば、アルミニウムラミネートフィルム等の包装部材により形成されている。収容部411は、例えば、プラスチック製の収容容器ケース414内に収容される。これにより各収容手段410は、インクカートリッジとして用いられる。
【0193】
一方、画像形成装置400の本体のカバー401cを開いたときの開口の奥側には、カートリッジホルダ404が設けられている。カートリッジホルダ404には、各収容手段410(p、w、k、及びc)が着脱自在に装着される。これにより、各供給チューブ436を介して、各収容手段410(p、w、k、及びc)の排出口413とインクジェット吐出ヘッド434とが連通し、インクジェット吐出ヘッド434から記録媒体へ前処理液及び各インクを吐出可能となる。
なお、図1に示す画像形成装置400では、前処理液をインクジェット吐出方式で記録媒体に付与するが、前処理液の付与方法としてはこれに限られず、前述の付与方法を用いることができる。
【0194】
なお、画像形成装置400は、記録媒体に付与された白色インク、カラーインク、又は前処理液などの各種液体を加熱する加熱手段を有していてもよいが、白色インク付与後からカラーインク付与前までの間に、白色インクが付与された記録媒体を加熱する加熱手段を有さないことが好ましい。このような加熱手段は、白色インクを加熱して乾燥させることで、白色インクの乾燥が不十分であることに起因して生じるカラーブリード及びビーディングを抑制する目的で設けられるが、本発明のインクセットは加熱手段を有さずともカラーブリード及びビーディングを抑制することができるためである。
【0195】
画像形成装置400は、内部にインクを送液する送液装置435を有してもよい。当該送液装置にてインクを送液する手段としては、公知の手段を用いることができ、例えば、チュービングポンプ(チューブポンプ、ローラーポンプとも称される)や、ダイヤフラムポンプ、ピストンポンプ、ギアポンプなどを用いることができる。
【0196】
ここで、図3を用いて本発明の画像形成装置の一例を示す。図3は、本発明の画像形成装置の他の一例を示す概略図である。なお、本発明の画像形成方法におけるインク付与工程(白色インク付与工程及びカラーインク付与工程)と、前処理液付与工程とは同じ印刷機器で実施してもよいし、別々の印刷機器で実施してもよい。
【0197】
図3の印刷装置100は、前処理液付与部110、インク付与部120、後処理液付与部130、乾燥部140、及び搬送部150を有し、前処理液付与部110は記録媒体Mに前処理液を付与する。
なお、前処理液付与部110、後処理液付与部130、乾燥部140、搬送部150は省略してもよい。本発明の場合には特に、乾燥部140は有さなくてもよい。
前処理液付与部110、インク付与部120、及び後処理液付与部130は、前処理液収容部110a、インク収容部120a、及び後処理液収容部130aを備えていてもよい。各収容部は、付与部で記録媒体に付与する前処理液、インク、及び後処理液を収容する。
【0198】
前処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
なお、あらかじめバーコート法等で前処理液を手作業にて記録媒体に塗布した後に、印刷装置を用いて印刷してもよいため、前処理液付与部110は省略してもよい。
【0199】
記録に用いる記録媒体Mとしては、特に限定されないが、例えば、普通紙、光沢紙、特殊紙、段ボール、布、フィルム、OHPシート、汎用印刷用紙などが挙げられる。
【0200】
インク付与部120は、記録媒体Mの前処理液が付与された面に、インクジェットインクを付与する。当該インク付与部120としては、例えば、公知のインクジェットヘッドを用いることができる。
インク付与部120は、任意の色のインクを吐出するヘッドであってよく、例えば、必要に応じて、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)、W(ホワイト)等のインクを吐出するヘッドを設けてもよい。
【0201】
後処理液付与部130は、記録媒体Mのインクジェットインクが付与された面のインクジェットインクが付与された領域に後処理液を付与できればよく、例えば、インクジェットヘッド以外にも、スプレーやローラーなどを用いることができる。
なお、後処理液付与部130は、省略してもよい。
【0202】
後処理液を付与する方法としては、特に限定されないが、例えば、インクジェット法、ローラー塗布法、ブレードコート法、グラビアコート法、グラビアオフセットコート法、バーコート法、ロールコート法、ナイフコート法、エアナイフコート法、コンマコート法、Uコンマコート法、AKKUコート法、スムージングコート法、マイクログラビアコート法、リバースロールコート法、4本乃至5本ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法などが挙げられる。
【0203】
乾燥部140は、後処理液が付与された記録媒体Mを乾燥させる。なお、後処理液付与部がない場合には、乾燥部140を省略してもよい。
乾燥部140は、温風、赤外線、マイクロ波、ロールヒーター、ヒートプレス等を用いて、後処理液が付与された記録媒体Mを加熱乾燥させてもよいし、乾燥部140を作動させないで後処理液が付与された記録媒体Mを自然乾燥させてもよい。
【0204】
搬送部150は、記録媒体Mを搬送する。
搬送部150としては、記録媒体Mを搬送することが可能であれば、特に限定されないが、搬送ベルト、プラテンなどが挙げられる。
【0205】
なお、印刷装置100は、記録媒体Mに形成された画像を加熱定着させる定着部を更に有してもよい。定着部としては、特に限定されないが、定着ローラー、ヒートプレスなどが挙げられる。
【0206】
卓上プリンタを印刷装置として用いる場合には、前処理液付与部、後処理液付与部の一態様として、ブラック(K)、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びホワイト(W)などのインクの場合と同様に、前処理液や後処理液を有する液体収容部と液体吐出ヘッドを追加し、前処理液や、後処理液をインクジェット記録方式で吐出する態様がある。
【0207】
なお、インク及び処理液の使用方法としては、インクジェット記録方法に制限されず、広く使用することが可能である。インクジェット記録方法以外にも、例えば、ブレードコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ディップコート法、カーテンコート法、スライドコート法、ダイコート法、スプレーコート法などが挙げられる。
【実施例0208】
以下に調製例、製造例、実施例、及び比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの調製例、製造例、及び実施例に何ら限定されるものではない。
【0209】
<顔料分散体又は顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製>
以下の調製例1~9に記載の方法により、顔料分散体又は顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
【0210】
(調製例1:表面改質ブラック顔料分散体の調製)
BLACK PEARLS(登録商標)1000(BET比表面積343m/g、ジブチルフタレート吸収量(DBPA)105mL/100gを有するカーボンブラック、Cabot Corporation製)100g、スルファニル酸(林純薬工業社製)100mmol、及びイオン交換高純水1Lを、室温(23℃±0.5℃)にて、Silverson(登録商標)ミキサー(試験室用ミキサー、シルバーソンニッポン社製)を用い、6,000rpmの条件で混合してスラリーを得た。
次に、得られたスラリーに、硝酸(1.42、Honeywell-Fluka社製)100mmolを添加し、更に30分間後に10mLのイオン交換高純水に溶解させた亜硝酸ナトリウム(林純薬工業社製)100mmolをゆっくり添加した。更に撹拌しながら60℃に加温し、1時間反応させてカーボンブラックにスルファニル酸が付加した改質顔料を得た。
次に、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液(富士フイルム和光純薬社製)でpHを9に調整し、30分間後に改質顔料分散体を得た。次いで、この改質顔料分散体とイオン交換高純水とを用いて透析膜による限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質ブラック顔料分散体を得た。
得られた表面改質ブラック顔料分散体の顔料の表面処理レベルは0.75mmol/gであり、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は120nmであった。
【0211】
(調製例2:表面改質マゼンタ顔料分散体の調製)
顔料分散体SMART Magenta 3122BA(C.I.ピグメントレッド122表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%、SENSIENT社製)1kgを0.1Nの塩酸水溶液(富士フイルム和光純薬社製)で酸析した。
次に、10質量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド水溶液(富士フイルム和光純薬社製)でpHを9に調整し、30分間後に、少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラエチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラエチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体と、イオン交換高純水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質マゼンタ顔料分散体を得た。
得られた表面改質マゼンタ顔料分散体について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は104nmであった。
【0212】
(調製例3:表面改質シアン顔料分散体の調製)
顔料分散体SMART Cyan 3154BA(C.I.ピグメントブルー15:4表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%、SENSIENT社製)1kgを0.1Nの塩酸水溶液(富士フイルム和光純薬社製)で酸析した。
次に、40質量%ベンジルトリメチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液(富士フイルム和光純薬社製)でpHを9に調整し、30分間後に、少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸ベンジルトリメチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体と、イオン交換高純水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20質量%含む表面改質シアン顔料分散体を得た。
得られた表面改質シアン顔料分散体について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は116nmであった。
【0213】
(調製例4:表面改質イエロー顔料分散体の調製)
顔料分散体SMART Yellow 3074BA(C.I.ピグメントイエロー74表面処理分散体、顔料固形分14.5質量%、SENSIENT社製)1kgを、10質量%テトラブチルアンモニウムヒドロキシドメタノール溶液(富士フイルム和光純薬社製)でpH9に調整し、30分間後に、少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラブチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体を得た。少なくとも1つのアミノ安息香酸基又はアミノ安息香酸テトラブチルアンモニウム塩と結合した顔料を含む改質顔料分散体と、イオン交換高純水とを用いて透析膜により限外濾過を行い、更に超音波分散を行って顔料固形分を20%含む表面改質イエロー顔料分散体を得た。
得られた表面改質イエロー顔料分散体について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は145nmであった。
【0214】
(調製例5:マゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
機械式撹拌機、温度計、窒素ガス導入管、還流管、及び滴下ロートを備えた1Lのフラスコ内を充分に窒素ガス置換した後、スチレンモノマー(富士フイルム和光純薬社製)11.2g、アクリル酸(富士フイルム和光純薬社製)2.8g、ラウリルメタクリレート(BASF社製)12.0g、ポリエチレングリコールジメタクリレート(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)4.0g、スチレンマクロマー(東亜合成社製)4.0g、及びメルカプトエタノール(富士フイルム和光純薬社製)0.4gをフラスコ内で混合し、65℃に昇温した。次に、スチレン100.8g、アクリル酸25.2g、ラウリルメタクリレート108.0g、ポリエチレングリコールジメタクリレート36.0g、ヒドロキシルエチルメタクリレート(日本触媒社製)60.0g、スチレンマクロマー36.0g、メルカプトエタノール3.6g、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(95%、富士フイルム和光純薬社製)2.4g、及びメチルエチルケトン(富士フイルム和光純薬社製)18gの混合溶液を、2.5時間かけてフラスコ内に滴下した。滴下後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)(95%、富士フイルム和光純薬社製)0.8g、及びメチルエチルケトン18gの混合溶液を、0.5時間かけてフラスコ内に滴下した。65℃で1時間撹拌した後、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)0.8gを添加し、更に1時間撹拌した。反応終了後、フラスコ内にメチルエチルケトン364gを添加し、濃度が50質量%のポリマー溶液Aを800g得た。
次に、ポリマー溶液Aを28g、C.I.ピグメントレッド122(BASF社製)を42g、1mol/Lの水酸化カリウム水溶液(富士フイルム和光純薬社製)13.6g、メチルエチルケトン20g、及びイオン交換水13.6gを十分に撹拌した後、ロールミルを用いて混練した。得られたペースト(約117g)を純水200gに投入し、充分に撹拌した後、エバポレータ用いてメチルエチルケトン及び水を留去した。更に粗大粒子を除くために、この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルター(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)にて加圧濾過し、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液を得た。
得られたマゼンタ顔料含有ポリマー微粒子分散液について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は127nmであった。
【0215】
(調製例6:シアン顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122を、フタロシアニン顔料(C.I.ピグメントブルー15:3、大日精化工業社製)に変更したこと以外は、調製例5と同様にして、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたシアン顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は93nmであった。
【0216】
(調製例7:イエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122を、ビスアゾイエロー顔料(C.I.ピグメントイエロー155、DIC社製)に変更したこと以外は、調製例5と同様にして、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたイエロー顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は76nmであった。
【0217】
(調製例8:ブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液の調製)
調製例5において、顔料としてのC.I.ピグメントレッド122を、カーボンブラック(FW100、デグサ社製)に変更したこと以外は、調製例5と同様にして、顔料固形分を15質量%含み、総固形分を20質量%含むブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液を調製した。
得られたブラック顔料含有ポリマー微粒子分散液におけるポリマー微粒子について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は104nmであった。
【0218】
(調製例9:ポリマー分散ホワイト顔料分散液の調製)
DISPERBYK-2081(BYKジャパン社製)コポリマー溶液55.6g、酸化チタン(TITONE R-25、堺化学工業株式会社製)517g、β-メトキシ-N,N-ジメチルプロピオンアミド(KJCMPA(登録商標)-100、Kjケミカルズ社製)50g、及びイオン交換水377.4gを十分に撹拌した後、ビーズミル(ダイノーミル)に投入し、累積50%体積粒子径D50が300nm以下になるまで分散を行った。更に粗大粒子を除くために、この分散液を平均孔径5.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルター(シグマ アルドリッチ ジャパン社製)にて加圧濾過し、ホワイト顔料固形分を50質量%含むポリマー分散ホワイト顔料分散液を得た。
得られたポリマー分散ホワイト顔料分散液における顔料粒子について、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA-EX150、日機装株式会社製)で測定したところ、累積50%体積粒子径D50は283nmであった。
【0219】
<インクの製造>
以下の製造例1~78に記載の方法により、白色インク及びカラーインクを製造した。
【0220】
(製造例1:インク1の製造)
撹拌機を備えた容器に、2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(97%、富士フイルム和光純薬社製)を0.20質量部、2,5,8,11-テトラメチルドデカン-5,8-ジオールを0.30質量部、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬社製)を2.00質量部、1,2-ヘキサンジオール(富士フイルム和光純薬社製)を6.00質量部、プロピレングリコール(富士フイルム和光純薬社製)を30.00質量部、及びキャプストーンFS-3100(フッ素界面活性剤、Chemours社製)を0.10質量部入れ、30分間混合撹拌した。次いで、防腐防黴剤(PROXEL(登録商標)GXL)を0.05質量部、及び調製例1の表面改質ブラック顔料分散体を30.00質量部加え、20分間混合撹拌した。次いで、(1)ウレタン樹脂としてのタケラックWS-6021を16.67質量部、(2)ウレタン樹脂としてのタケラックW-6020を3.33質量部、及び全体が100質量部となる量の高純水を加え、60分間混合撹拌した。次いで、得られた混合物を、平均孔径1.2μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターで加圧濾過し、粗大粒子及びごみを除去してインク1を得た。
【0221】
(製造例2~78:インク2~78の製造)
製造例1において、インクの処方を下記表1~表16に示す材料及び含有量に変更したこと以外は、製造例1と同様にしてインク2~78を得た。
なお、下記表1~表16において、各種材料の含有量の単位は「質量%」であり、含有量に関する表示は、固形分量又は有効成分量ではなく全量の表示である。
【0222】
なお、下記表1~表16において示す各種材料の詳細は、以下に示す通りである。
【0223】
--色材--
・ポリマー分散ホワイト顔料分散液:AC-AW62(大日精化工業株式会社製、顔料固形分50質量%)
【0224】
--第一のウレタン樹脂--
・スーパーフレックス420:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-10℃、体積平均粒径;10nm、固形分32質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス460:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-21℃、体積平均粒径;40nm、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス470:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-31℃、体積平均粒径;50nm、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス500M:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-39℃、体積平均粒径;140nm、固形分45質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス740:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-34℃、体積平均粒径;200nm、固形分40質量%、第一工業製薬株式会社製
・タケラックW-6110:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-20℃、体積平均粒径;90nm、固形分32質量%、三井化学株式会社製
・スーパーフレックス300:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-42℃、体積平均粒径;70nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製
・ユーコートUWS-145:Tg;-45℃、体積平均粒径;20nm、三洋化成工業株式会社製)
・タケラック WS-6021:ポリウレタンディスパージョン、Tg;-60℃、体積平均粒径;90nm、固形分30質量%、三井化学株式会社製
【0225】
--第二のウレタン樹脂--
・スーパーフレックス150:ポリウレタンディスパージョン、Tg;40℃、体積平均粒径;30nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス170:ポリウレタンディスパージョン、Tg;75℃、体積平均粒径;10nm、固形分33質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス830HS:ポリウレタンディスパージョン、Tg;68℃、体積平均粒径;10nm、固形分27質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス820:ポリウレタンディスパージョン、Tg;46℃、体積平均粒径;30nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製
・スーパーフレックス870:ポリウレタンディスパージョン、Tg;78℃、体積平均粒径;30nm、固形分30質量%、第一工業製薬株式会社製
・タケラックW-5661:ポリウレタンディスパージョン、Tg;70℃、体積平均粒径;30nm、固形分35質量%、三井化学株式会社製
・タケラックW-6020:ポリウレタンディスパージョン、Tg;90℃、体積平均粒径;80nm、固形分30質量%、三井化学株式会社製
【0226】
--その他の樹脂--
・スーパーフレックス150HS:ポリウレタンディスパージョン、Tg;32℃、体積平均粒径;80nm、固形分38質量%、第一工業製薬株式会社製
・タケラックW-6061:ポリウレタンディスパージョン、Tg;25℃、体積平均粒径;100nm、固形分30質量%、三井化学株式会社製
・ボンコートVF1060:アクリルエマルジョン、Tg;-10℃、固形分50質量%、DIC株式会社製
【0227】
--有機溶剤--
・グリセリン:bp;290℃/760mmHg、平衡水分量49wt%、富士フイルム和光純薬社製
・ジグリセリン:bp;265~270℃/15mmHg、平衡水分量38wt%、阪本薬品工業社製
・1,3-ブタンジオール:bp;207℃/760mmHg、平衡水分量35wt%、富士フイルム和光純薬社製
・エチレングリコール:bp;197.3℃/760mmHg、平衡水分量44wt%、富士フイルム和光純薬社製
・プロピレングリコール:bp;188℃/760mmHg、富士フイルム和光純薬社製
・3-メチル-1,3-ブタンジオール:bp;203℃/760mmHg、富士フイルム和光純薬社製
・1,2-ブタンジオール:bp;193℃/760mmHg、東京化成工業社製
・1,2-ヘキサンジオール:bp;223℃/760mmHg、富士フイルム和光純薬社製
・ジエチレングリコールモノエチルエーテル:bp;202℃/760mmHg、東京化成工業社製
・トリエチレングリコールモノブチルエーテル:bp;278℃/760mmHg、東京化成工業社製
・2-エチル-1,3-ヘキサンジオール:bp;249℃/760mmHg、富士フイルム和光純薬社製
・2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオール:bp;232℃/760mmHg、東京化成工業社製
【0228】
--界面活性剤--
・TEGO(登録商標)Wet 270:ポリエーテル変性シロキサン化合物、エボニック社製、有効成分100%
・シルフェイスSAG503A:ポリエーテル変性シロキサン化合物、日信化学工業株式会社製、有効成分100%
・サーフィノール104E:2,4,7,9-テトラメチル-5-デシン-4,7-ジオール、日信化学工業株式会社製、有効成分50%
・キャプストーンFS-3100:ポリオキシエチレンパーフロロアルキルエーテル、Chemours社製、有効成分100%
・エマルゲンLS-106:ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、花王株式会社製、有効成分100%
・KF-353:ポリエーテル変性シリコーンオイル、信越化学工業株式会社
【0229】
--防腐防黴剤--
・PROXEL(登録商標) GXL:1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンを主成分とした防腐防黴剤(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0230】
--pH調整剤--
・2-アミノ-2-エチル-1,3-プロパンジオール(富士フイルム和光純薬社製)
【0231】
【表1】
【0232】
【表2】
【0233】
【表3】
【0234】
【表4】
【0235】
【表5】
【0236】
【表6】
【0237】
【表7】
【0238】
【表8】
【0239】
【表9】
【0240】
【表10】
【0241】
【表11】
【0242】
【表12】
【0243】
【表13】
【0244】
【表14】
【0245】
【表15】
【0246】
【表16】
【0247】
<白色インク及びカラーインクの物性>
製造例1~78で得られたインク1~78について、以下のようにして、粘度、pH及び静的表面張力の各種物性を測定し、吐出安定性(連続吐出、フィルタ通液性)、及び保存安定性を評価した。結果を表17~18に示した。
【0248】
-粘度-
製造例1~78で得られたインク1~78の粘度は、粘度計(RE85L、東機産業株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0249】
-pH-
製造例1~78で得られたインク1~78のpHは、pHメータ(HM-30R型、東亜ディーケーケー株式会社製)を用いて、25℃で測定した。
【0250】
-静的表面張力-
製造例1~78で得られたインク1~78の25℃における静的表面張力は、自動表面張力計(DY-300、協和界面科学株式会社製)を用いてプレート法(Wilhelmy法)で測定した。
【0251】
-連続吐出-
23±1℃環境下で、インクジェット印刷装置(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)のインクカートリッジから各色の吐出ヘッドへ、製造例1~78で得られたインク1~78を各1Lずつ通した。直後に、インクジェット印刷装置を用い、Microsoft Word2000により作成したA4サイズ用紙の面積の80%をベタ画像で塗りつぶしたチャートを、連続200枚、MyPaper(株式会社リコー製)に打ち出した。更に、打ち出し後のノズルチェックチャートより、各打ち出しノズルの吐出乱れについて、下記の評価基準で評価した。
なお、印刷モードは、プリンタ添付のドライバで、普通紙のユーザー設定より「普通紙-標準はやい」モードを「色補正なし」と改変したモードを使用した。実用的には、評価基準「B」以上が必要となる。
〔評価基準〕
A:ノズルチェックチャートにおいて、吐出乱れが生じている部分の面積が全体の1%未満である
B:ノズルチェックチャートにおいて、吐出乱れが生じている部分の面積が全体の1%以上3%未満である
C:ノズルチェックチャートにおいて、吐出乱れが生じている部分の面積が全体の3%以上5%未満である、又は吐出しないノズルの数が全体の1%未満である
D:ノズルチェックチャートにおいて、吐出乱れが生じている部分の面積が全体の5%以上、又は吐出しないノズルの数が全体の1%以上である
【0252】
-フィルタ通液性-
23±1℃環境下で、インクジェット印刷装置(IPSiO GXe-5500、株式会社リコー製)における、ヘッド内フィルタ(ステンレス製焼結フィルタ)濾過性度10μmを用いて、製造例1~78で得られたインク1~78 1Lをチュービングポンプ(型番TP-1973D、ASONE社製)で送液しながらフィルタを通した。初期インク流量は、0.167g/secで実施した。この通液性開始直後の1分間あたりの質量と、1L流し終わる直前の1分間あたりの質量とを測定し、減量率を求め、下記の評価基準で評価した。実用的には、評価基準「C」以上が必要となる。
〔評価基準〕
A:減量率が1%未満である
B:減量率が1%以上5%未満である
C:減量率が5%以上10%未満である
D:減量率が10%以上15%未満である
E:減量率が15%以上である
【0253】
-保存安定性-
製造例1~78で得られたインク1~78を50mlポリエチレン容器に50gずつ秤量し、70℃恒温槽に10日間保管し、保存前後のインク粘度変化率を求め、下記の評価基準で評価した。実用的には、評価基準「B」以上が必要となる。
〔評価基準〕
A:変化率が3%未満である
B:変化率が3%以上5%未満である
C:変化率が5%以上10%未満である
D:変化率が10%以上である
【0254】
【表17】
【0255】
【表18】
【0256】
<前処理液の製造>
前処理液1~12を下記に記載の方法により、前処理液を製造した。
【0257】
(前処理液調整例1:前処理液1の製造)
ガラスビーカーに硫酸マグネシウム(東京化成工業社製)を12.50質量部秤量し、高純水を50.00質量部投入後、5分間撹拌した。次いで、プロピレングリコール3.00質量部、防腐防黴剤(PROXEL(登録商標)GXL)を0.05質量部、及び1,2,3-ベンゾトリアゾール(東京化成工業社製)を0.10質量部投入後、15分間混合撹拌した。更に、高純水を添加して合計100質量部にし、10分間混合撹拌した。この混合物を平均孔径10.0μmのポリビニリデンフロライドメンブランフィルターにて加圧濾過し、不溶物等のごみを除去して、前処理液1を調製した。
【0258】
(前処理液調整例2~12:前処理液2~12の製造)
前処理液調整例1において、前処理液の処方を下記表19及び表20に示す材料及び含有量に変更したこと以外は、前処理液調整例1と同様にして前処理液2~12を調製した。
なお、下記表19及び表20において、各種材料の含有量の単位は「質量%」であり、含有量に関する表示は、固形分量又は有効成分量ではなく全量の表示である。
【0259】
なお、下記表19及び表20において示す各種材料の詳細は以下に示す通りである。
【0260】
--カチオン性ポリマー--
・シャロール(登録商標)DC-902P:ポリジメチルジアリルアンモニウムクロライド、固形分51.0質量%、第一工業製薬株式会社製
・DK6810:ポリアミン樹脂、固形分55.0質量%、星光PMC株式会社製
【0261】
--ノニオン性樹脂粒子--
・タケラックW-635:ポリウレタンエマルション、固形分35質量%、三井化学株式会社製
・SUMIKAFLEX-850HQ:エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、固形分50質量%、住友化学株式会社製
・SUMIKAFLEX-951HQ:エチレン-酢酸ビニル-バーサチック酸ビニル共重合体、固形分55質量%、住友化学株式会社製
【0262】
--ワックス--
・AQUACER497:パラフィンワックス、有効成分50質量%、BYKジャパン株式会社製
・AQUACER539:変性パラフィンワックス、有効成分35質量%、BYKジャパン株式会社製
・AQUACER531:変性ポリエチレンワックス、有効成分45質量%、BYKジャパン株式会社製
【0263】
--防腐防黴剤--
・PROXEL GXL:1,2-ベンゾチアゾリン-3-オンを主成分とした防腐防黴剤(アビシア社製、成分20%、ジプロピレングリコール含有)
【0264】
【表19】
【0265】
【表20】
【0266】
以下の実施例1~17、及び比較例1~11に記載の方法により、インクセットを用いた画像形成を行った。
【0267】
(実施例1~17、及び比較例1~11)
23℃±0.5℃、50%±5%RHに調整された環境条件下で、インクジェット印刷装置(Direct to Garment Printer RICOH Ri 6000、株式会社リコー製)を用い、インクの吐出量が均しくなるようにピエゾ素子の駆動電圧を変動させ、記録媒体に同じ付着量のインクが付着するように設定した。
【0268】
まず、下記表21に示す通り、所定の記録媒体に対し、所定の前処理液を、所定の付与方法(塗布方法)で、所定の付着量になるように付与した。その後、記録媒体が濃色ポリエステルTシャツ(00300-ACT)である場合は、130℃のオーブンで90秒間乾燥させ、濃色綿Tシャツ(00085-CVT)である場合は、165℃のオーブンで90秒間乾燥させた。
【0269】
次に、下記表21に示す所定のインクセットに含まれる白色インク及びカラーインクをそれぞれ上記インクジェット印刷装置に充填し、記録媒体の前処理液が付与された領域に対して、下記表21に示す所定の付与量で白色インクを付与してベタ画像を形成し、白色インクの付与から17秒間後に、記録媒体の白色インクが付与された領域に対して、下記表21に示す所定の付与量でカラーインクを付与して図4に示すチャートを形成した。
なお、白色インクの付与からカラーインクの付与までの間において、記録媒体の加熱は行わなかった。
【0270】
次に、図4に示すチャートが形成された記録媒体が濃色ポリエステルTシャツ(00300-ACT)である場合は、130℃のオーブンで3分間乾燥させ、淡色又は濃色綿Tシャツ(00085-CVT)である場合は、165℃のオーブンで2分間乾燥させることによりサンプル画像を得た。
なお、図4において、「W」は下地としての白色のベタ画像部を表し、「Y」は下地W上に形成されたイエロー色のベタ画像部を表し、「M」は下地W上に形成された赤色のベタ画像部を表し、「C」は下地W上に形成されたシアン色のベタ画像部を表し、「P」は下地W上に形成されたマゼンタ色のベタ画像部を表し、「V」は下地W上に形成された青色のベタ画像部を表し、「G」は下地W上に形成された緑色のベタ画像部を表し、「K」は下地W上に形成された黒色のベタ画像部を表し、「k」~「k」は下地W上に形成された黒色の文字「R」を表し、「y」は下地W上に形成されたイエロー色の文字「R」を表す。また、図4に示すチャートは、ソフトウェアであるPhotoshop(登録商標)(アドビ(登録商標)社製)を用いて、色補正無しでデータ化した画像を基に作成され、600dpi×600dpiで印刷された。
【0271】
なお、下記表21において示す各種記録媒体の詳細は以下の通りである。
・00085-CVT ホワイト:白色綿Tシャツ、Printstar(登録商標) 00085-CVT White、トムス株式会社製
・00085-CVT ブラック:濃色綿Tシャツ、Printstar 00085-CVT Black、トムス株式会社製
・00300-ACT ブラック:濃色ポリエステルTシャツ、glimmer 00300-ACT Black、トムス株式会社製
【0272】
<サンプル画像の評価>
実施例1~17及び比較例1~11で得られた各サンプル画像について、以下のようにして、ハンター白色度及び摩擦堅牢度を評価した。結果を下記表21に示した。
【0273】
-ハンター白色度-
実施例1~17及び比較例1~11で得られた各サンプル画像の白色ベタ画像部における画像濃度の色彩値L、a、及びbを、分光濃度測色計(X-Rite eXact、X-rite社製)を用いて測定し、下記計算式(1)によりハンター白色度を算出し、下記評価基準に基づいて評価した。実用的には、評価基準「B」以上が必要となる。
なお、画像濃度の測定は、色上質紙 中厚口 黒紙(北越コーポレーション株式会社製)を5枚重ねた上にサンプル画像を置いて測定した。
ハンター白色度=100-sqr[(100-L)+(a+b)]・・・計算式(1)
[評価基準]
A+:ハンター白色度が85以上である
A :ハンター白色度が80以上85未満である
B :ハンター白色度が75以上80未満である
C :ハンター白色度が70以上75未満である
D :ハンター白色度が70未満である
【0274】
-摩擦堅牢度-
JIS L 0849に規定の方法に従い、摩擦試験機I形を用いて、摩擦試験機I形(クロックメータ)法により試験を行った。JIS L 0849に規定される乾燥試験則って「乾燥摩擦」を試験し、JIS L 0849に規定される湿潤試験に則って「湿潤摩擦」を試験し、下記評価基準に基づいて評価した。実用的には、評価基準「C」以上が必要となる。
[評価基準]
A:色票が4-5級以上
B:色票が3-4級以上4級以下
C:色票が2-3級以上3級以下
D:色票が2級以下
【0275】
【表21】
【0276】
製造例1~78で得られたインク1~78、並びに実施例1~17及び比較例1~11で得られたサンプル画像の評価結果を表22~24にまとめた。
【0277】
【表22】
【0278】
【表23】
【0279】
【表24】
【0280】
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1>
色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有するインクであって、
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、
前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、
前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とするインクである。
<2>
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、-45℃以上0℃以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上80℃以下である、<1>に記載のインクである。
<3>
前記インクは、有機溶剤を含有し、
前記有機溶剤は、23℃、80%RHにおける平衡水分量が30質量%以上である多価アルコールである、<1>から<2>のいずれかに記載のインクである。
<4>
前記インクは、界面活性剤としてアセチレングリコール化合物、アセチレンアルコール化合物、ポリエーテル変性シロキサン化合物、及びフッ素化合物から選ばれるいずれかを含有する、<1>から<3>のいずれかに記載のインクである。
<5>
白色インクである<1>から<4>のいずれかに記載のインクと、
カラーインクである<1>から<4>のいずれかに記載のインクと、からなることを特徴とするインクセットである。
<6>
前記インクセットは、水及び凝集剤を含有する前処理液をさらに含み、
前記凝集剤は、無機金属塩、有機酸金属塩、有機酸アンモニウム塩、及びカチオン性ポリマーから選択されるいずれかである、<5>に記載のインクセットである。
<7>
前記前処理液は、ノニオン性樹脂を含有する、<6>に記載のインクセットである。
<8>
前記前処理液は、ワックスを含有する、<6>から<7>のいずれかに記載のインクセットである。
<9>
前記ワックスは、パラフィンワックスである、<8>に記載のインクセットである。
<10>
記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与工程と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して、カラーインクを付与するカラーインク付与工程と、を含む画像形成方法であって、
前記白色インク及び前記カラーインクは、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有し、
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、
前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、
前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とする画像形成方法である。
<11>
前記白色インク付与工程の前に、前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して前処理液を付与する前処理液付与工程を含む、<10>に記載の画像形成方法である。
<12>
前記記録媒体は、濃色の布帛である、<10>から<11>のいずれかに記載の画像形成方法である。
<13>
記録媒体に対して白色インクを付与する白色インク付与手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与された領域に対して、カラーインクを付与するカラーインク付与手段と、を含む画像形成装置であって、
前記白色インク及び前記カラーインクは、色材、第一のウレタン樹脂、第二のウレタン樹脂、及び水を含有し、
前記第一のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、0℃以下であり、
前記第一のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して5質量%以上15質量%以下であり、
前記第二のウレタン樹脂のガラス転移点(Tg)が、40℃以上であり、
前記第二のウレタン樹脂の固形分含有量が、インク全量に対して0.5質量%以上3質量%以下であることを特徴とする画像形成装置である。
<14>
前記白色インク及び前記カラーインクに圧力をかけることによって、当該白色インク及び当該カラーインクを送液する送液装置を有する、<13>に記載の画像形成装置である。
<15>
前処理液を収容した前処理液収容手段と、
前記記録媒体の前記白色インクが付与される領域に対して、当該白色インクが付与される前に前記前処理液を付与する前処理液付与手段と、を含む、<13>から<14>のいずれかに記載の画像形成装置である。
【0281】
前記<1>から<4>のいずれかに記載のインク、前記<5>から<9>のいずれかに記載のインクセット、前記<10>から<12>のいずれかに記載の画像形成方法、及び前記<13>から<15>のいずれかに記載の画像形成装置は、従来における前記諸問題を解決し、前記本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0282】
400 画像形成装置
401 画像形成装置の外装
401c 画像形成装置の本体のカバー
404 カートリッジホルダ
410p 前処理液収容手段
410w 白色インク収容手段
410k ブラックインク収容手段
410c シアンインク収容手段
411 収容部
413 排出口
414 収容容器ケース
420 機構部
434 インクジェット吐出ヘッド
435 送液装置
436 供給チューブ
100 印刷装置
110 前処理液付与部
110a 前処理液収容部
120 インク付与部
120a インク収容部
130 後処理液付与部
130a 後処理液収容部
140 乾燥部
150 搬送部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0283】
【特許文献1】特許第6610710号公報
図1
図2
図3
図4