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特開2024-50506複合正極活物質、それを採用した正極とリチウム電池、及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024050506
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】複合正極活物質、それを採用した正極とリチウム電池、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20240403BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20240403BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20240403BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/36 C
H01M4/36 D
【審査請求】有
【請求項の数】20
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023167845
(22)【出願日】2023-09-28
(31)【優先権主張番号】10-2022-0124523
(32)【優先日】2022-09-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】孫 寅赫
(72)【発明者】
【氏名】馬 相國
(72)【発明者】
【氏名】趙 ▲スン▼任
(72)【発明者】
【氏名】沈 揆恩
【テーマコード(参考)】
5H050
【Fターム(参考)】
5H050AA05
5H050AA07
5H050AA12
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CA29
5H050CB02
5H050CB03
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050DA02
5H050GA10
5H050HA00
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】複合正極活物質、それを採用したリチウム電池を提供する。
【解決手段】第1リチウム遷移金属酸化物を含む第1コア;第2リチウム遷移金属酸化物を含む第2コア;及び第1コア及び第2コアのうち1つ以上の表面に沿って配置されるシェルを含み、シェルが1種以上の第1金属酸化物;第1炭素系材料;及び第2炭素系材料を含み、第1金属酸化物が第1炭素系材料マトリックス内に配置され、第1金属酸化物が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示され、Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む、複合正極活物質とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1リチウム遷移金属酸化物を含む第1コア(1st core)と、
第2リチウム遷移金属酸化物を含む第2コア(2nd core)と、
前記第1コア及び第2コアのうち1つ以上の表面に沿って配置されるシェル(shell)と、を含み、
前記シェルが1種以上の第1金属酸化物、第1炭素系材料、及び第2炭素系材料を含み、
前記第1金属酸化物が前記第1炭素系材料マトリックス内に配置され、
前記第1金属酸化物が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示され、前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、
前記第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、
前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、
前記第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む、複合正極活物質。
【請求項2】
前記第1リチウム遷移金属酸化物が複数の1次粒子を含む2次粒子を含み、
前記第2リチウム遷移金属酸化物が1つの1次粒子を含む、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項3】
前記第1リチウム遷移金属酸化物が、前記第2リチウム遷移金属酸化物に比べて粒径の大きい大径リチウム遷移金属酸化物であり、
前記第2リチウム遷移金属酸化物が、前記第1リチウム遷移金属酸化物に比べて粒径の小さい小径リチウム遷移金属酸化物である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項4】
前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが粒度分布図でバイモーダル粒径分布を有し、
前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物との粒径比が3:1~40:1である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項5】
前記第1リチウム遷移金属酸化物の粒径が8μm超過30μmであり、前記第2リチウム遷移金属酸化物の粒径が1μm~8μm未満である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項6】
前記第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物との重量比が90:10~60:40である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項7】
前記第2炭素系材料が炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブまたはそれらの組合わせを含み、
前記炭素ナノチューブが炭素ナノチューブ1次構造体、複数の炭素ナノチューブ1次粒子が凝集されて形成される炭素ナノチューブ2次構造体、またはそれらの組合わせを含み、
前記炭素ナノチューブ1次構造体が1つの炭素ナノチューブ単位体である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項8】
前記炭素ナノチューブ1次構造体が単層炭素ナノチューブ(SWCNT, single-walled carbon nanotube)、二層炭素ナノチューブ(DWCNT, double-walled carbon nanotube)及び多層炭素ナノチューブ(MWCNT, multi-walled carbon nanotube)、またはそれらの組合わせを含み、
前記炭素ナノチューブ1次構造体の直径が1nm~20nmであり、前記炭素ナノチューブ1次構造体の長さが100nm~2μmである、請求項7に記載の複合正極活物質。
【請求項9】
前記炭素ナノチューブ2次構造体がバンドル状炭素ナノチューブ(bundle-type carbon nanotube)、ロープ状炭素ナノチューブ(rope-type carbon nanotube)またはそれらの組合わせを含み、
前記炭素ナノチューブ2次構造体の直径が2nm~50nmであり、前記炭素ナノチューブ2次構造体の長さが500nm~1000μmである、請求項7に記載の複合正極活物質。
【請求項10】
前記第2炭素系材料の含量が前記第1炭素系材料と前記第2炭素系材料との総重量に対して0.1wt%~50wt%であり、
前記第2炭素系材料の含量が前記複合正極活物質の総重量に対して0.001wt%~1wt%であり、
前記第2炭素系材料が前記複合正極活物質の表面上に配置される、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項11】
前記第1金属酸化物が含む第1金属がAl、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb、及びSeのうちから選択された1つ以上の金属であり、
前記第1金属酸化物がAl(0<z<3)、NbO(0<x<2.5)、MgO(0<x<1)、Sc(0<z<3)、TiO(0<y<2)、ZrO(0<y<2)、V(0<z<3)、WO(0<y<2)、MnO(0<y<2)、Fe(0<z<3)、Co(0<w<4)、PdO(0<x<1)、CuO(0<x<1)、AgO(0<x<1)、ZnO(0<x<1)、Sb(0<z<3)、及びSeO(0<y<2)のうちから選択される1つ以上である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項12】
前記シェルが第2金属酸化物を含み、
前記第2金属酸化物が化学式M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示され、
前記第2金属酸化物が前記第1金属酸化物と同じ金属を含み、
前記第2金属酸化物のaとcとの比率であるc/aが前記第1金属酸化物のaとbとの比率であるb/aに比べてさらに大きい値を有し、
前記第2金属酸化物が前記第1炭素系材料マトリックス内に配置される、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項13】
前記第2金属酸化物がAl、NbO、NbO、Nb、MgO、Sc、TiO、ZrO、V、WO、MnO、Fe、Co、PdO、CuO、AgO、ZnO、Sb、及びSeOのうちから選択され、
前記第1金属酸化物が前記第2金属酸化物の還元生成物である、請求項12に記載の複合正極活物質。
【請求項14】
前記シェルが含む第1炭素系材料と前記コアが含むリチウム遷移金属酸化物の遷移金属が化学結合によって化学的に結合されるか(bound)、
前記シェルが含む第1炭素系材料の炭素原子(C)と前記リチウム遷移金属酸化物の遷移金属(Me)が酸素原子を媒介としてC-O-Me結合によって化学的に結合されるか(bound)、
前記第1金属酸化物が第1炭素系材料との化学結合によって化学的に結合された(bound)、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項15】
前記コア上にドーピングされる第3金属または前記コア上にコーティングされる第3金属酸化物をさらに含み、
前記第3金属酸化物上に前記シェルが配置され、
前記第3金属酸化物がAl、Zr、W、及びCoのうちから選択される1つ以上の第3金属の酸化物である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項16】
前記シェルの厚さが10nm~2μmであり、前記シェルが単層構造または多層構造を有し、
前記シェルが乾式コーティング層であり、前記シェルの含量が前記複合正極活物質の総重量に対して5wt%以下である、請求項1に記載の複合正極活物質。
【請求項17】
前記リチウム遷移金属酸化物が下記化学式1ないし化学式8のうちから選択される化学式で表示される、請求項1に記載の複合正極活物質:
[化学式1]
LiNiCo2-b
前記化学式1において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.8≦x<1、0≦y≦0.3、0<z≦0.3、及びx+y+z=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)またはそれらの組合わせであり、
Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせであり、
[化学式2]
LiNiCoMn
[化学式3]
LiNiCoAl
前記化学式2及び3において、0.8≦x≦0.95、0≦y≦0.2、0<z≦0.2及びx+y+z=1であり、
[化学式4]
LiNiCoMnAl
前記化学式4において、0.8≦x≦0.95、0≦y≦0.2、0<z≦0.2、0<w≦0.2、及びx+y+z+w=1であり、
[化学式5]
LiCo2-b
前記化学式5において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、及びx+y=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)またはそれらの組合わせであり、
Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせであり、
[化学式6]
LiNiMnM’2-b
前記化学式6において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0<x≦0.3、0.5≦y<1、0<z≦0.3、及びx+y+z=1であり、
M’は、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)またはそれらの組合わせであり、
Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせであり、
[化学式7]
LiM1M2PO4-b
前記化学式7において、0.90≦a≦1.1、0≦x≦0.9、0≦y≦0.5、0.9<x+y<1.1、0≦b≦2であり、
M1がクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)またはそれらの組合わせであり、
M2がマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ボロン(B)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはそれらの組合わせであり、XがO、F、S、Pまたはそれらの組合わせであり、
[化学式8]
LiM3PO
前記化学式8において、0.90≦a≦1.1、0.9≦z≦1.1であり、
M3がクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)またはそれらの組合わせである。
【請求項18】
請求項1ないし17のうちいずれか1項に記載の複合正極活物質を含む正極。
【請求項19】
請求項18に記載の正極;負極;及び
前記正極と負極との間に配置される電解質;を含む、リチウム電池。
【請求項20】
第1リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、
第2リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、
複合体を提供する段階と、
第2炭素系材料を提供する段階と、
前記第1リチウム遷移金属酸化物と複合体と第2炭素系材料とを機械的にミーリングして得られる第1コア/シェル構造体、及び前記第2リチウム遷移金属酸化物と複合体と第2炭素系材料とを機械的にミーリングして得られる第2コア/シェル構造体を準備する段階と、
前記第1コア/シェル構造体と前記第2コア/シェル構造体とを混合する段階と、を含み、
前記複合体が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物と、第1炭素系材料と、を含み、
前記第1金属酸化物が第1炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、
前記第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、
前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、
前記第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む、複合正極活物質の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複合正極活物質、それを採用した正極とリチウム電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
各種機器の小型化、高性能化に符合するために、リチウム電池の小型化、軽量化以外に高エネルギー密度化が重要になっている。すなわち、高容量のリチウム電池が重要になっている。
【0003】
前記用途に符合するリチウム電池を具現するために、高容量を有する正極活物質が検討されている。
【0004】
従来の正極活物質は、副反応によって寿命特性が低下し、熱安定性も劣っていた。
【0005】
したがって、正極活物質を含みつつも、電池性能の劣化を防止しうる方法が要求される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、複合正極活物質の副反応を抑制し、電極反応の可逆性を向上させ、リチウム電池性能の劣化を防止することができる新たな複合正極活物質を提供することである。
【0007】
本発明が解決しようとする他の課題は、前記複合正極活物質を含む正極を提供することである。
【0008】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、前記正極を採用したリチウム電池を提供することである。
【0009】
本発明が解決しようとするさらに他の課題は、複合正極活物質の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一側面によって、第1リチウム遷移金属酸化物を含む第1コア(1st core);第2リチウム遷移金属酸化物を含む第2コア(2nd core);及び、前記第1コア及び第2コアのうち1つ以上の表面に沿って配置されるシェル(shell);を含み、前記シェルが1種以上の第1金属酸化物;第1炭素系材料;及び第2炭素系材料;を含み、前記第1金属酸化物が前記第1炭素系材料マトリックス内に配置され、前記第1金属酸化物が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示され、前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、前記第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む、複合正極活物質が提供される。
【0011】
本発明の他の一側面によって、前記複合正極活物質を含む正極が提供される。
【0012】
本発明のさらに他の一側面によって、前記正極を含むリチウム電池が提供される。
【0013】
本発明のさらに他の一側面によって、第1リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、第2リチウム遷移金属酸化物を提供する段階と、複合体を提供する段階と、第2炭素系材料を提供する段階と、前記第1リチウム遷移金属酸化物と複合体と第2炭素系材料を機械的にミーリングして得られる第1コア/シェル構造体及び前記第2リチウム遷移金属酸化物と複合体と第2炭素系材料を機械的にミーリングして得られる第2コア/シェル構造体を準備する段階と、前記第1コア/シェル構造体と前記第2コア/シェル構造体を混合する段階と、を含み、前記複合体が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物;及び第1炭素系材料を含み、前記第1金属酸化物が第1炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、前記第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む、複合正極活物質の製造方法が提供される。
【発明の効果】
【0014】
本発明の一側面によれば、複合正極活物質が、大径リチウム遷移金属酸化物のコア及び小径リチウム遷移金属酸化物のコア上に配置され、第1金属酸化物と第1炭素系材料と第2炭素系材料とを含むシェルを具備し、小径リチウム遷移金属酸化物が単一(one body)粒子状を有することにより、リチウム電池の高温サイクル特性が向上し、内部抵抗の増加が抑制され、高率特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態によるコア/シェル構造体の断面模式図である。
図2】実施例1で使用された第2コア/シェル構造体粒子表面の走査電子顕微鏡イメージである。
図3】実施例1で使用された第1コア/シェル構造体粒子表面の走査電子顕微鏡イメージである。
図4】比較例1で準備されたbare NCA91、製造例1で製造された複合体、及び実施例1で製造された第1コア/シェル構造体に係わるXPSイメージである。
図5】製造例1で製造された複合体及び実施例1で製造された第1コア/シェル構造体に対するラマンスペクトルイメージである。
図6】一実施形態によるリチウム電池の概略図である。
図7】一実施形態によるリチウム電池の概略図である。
図8】一実施形態によるリチウム電池の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
多様な実施形態が添付図面に図示された。しかし、本創意的思想は、様々な他の形態に具体化され、本明細書に説明された実施形態に限定されるものと解釈されてはならない。むしろ、これらの実施例は、本開示が徹底したものであり、かつ完全になされるように提供され、技術分野で通常の知識を有する者に本創意的思想の範囲を十分に伝達するであろう。同じ図面符号は、同じ構成要素を指称する。
【0017】
ある構成要素が他の構成要素の「上に」あると言及されるとき、他の構成要素の真上にあるか、その間に他の構成要素が介在されうるということを理解することができるであろう。対照的に、構成要素が他の構成要素の「直接上に」あると言及されるとき、その間に構成要素が介在されない。
【0018】
「第1」、「第2」、「第3」などの用語は、本明細書において多様な構成要素、成分、領域、層及び/または区域を説明するために使用されうるが、これらの構成要素、成分、領域、層及び/または区域は、それらの用語によって制限されてはならない。これらの用語は、1つの構成要素、成分、領域、層または区域を、他の要素、成分、領域、層または区域と区別するためにのみ使用される。したがって、以下で説明される第1構成要素、成分、領域、層または区域は、本明細書の教示を外れずに、第2構成要素、成分、領域、層または区域と指称されうる。
【0019】
本明細書で使用された用語は、特定の実施形態のみを説明するためのものであり、本創意的思想を制限しようとするものではない。本願で使用された単数形態は、内容上、明確に異なって指示しない限り、「少なくとも1つ」を含む複数形態を含む。「少なくとも1つ」は、単数に制限するものと解釈されてはならない。本明細書で使用されたように、「及び/または」という用語は、リスト項目のうち1つ以上の任意の全ての組合わせを含む。詳細な説明で使用された「含む。」及び/または「含む」という用語は、明示された特徴、領域、整数、段階、動作、構成要素及び/または成分の存在を特定し、1つ以上の他の特徴、領域、整数、段階、動作、構成要素、成分及び/またはそれらのグループの存在または追加を排除しない。
【0020】
「下」、「下側」、「下部」、「上」、「上側」、「上部」のような空間的に相対的な用語は、ここで、1つの構成要素または特徴の他の構成要素または特徴に対する関係を容易に記述するために使用されうる。空間的に相対的な用語は、図示された方向に付け加えて使用または作動するとき、装置の互いに異なる方向を含むように意図されたと理解されるのである。例えば、図面の装置が逆さまになるのであるならば、他の構成要素または特徴の「下」または「下方」と記述された構成要素は、他の構成要素または特徴の「上」に配向されるであろう。したがって、例示的な用語「下方」は、上下方向をいずれも包括しうる。前記装置は、他の方向に配置され(90°回転、または他の方向に回転)、本明細書で使用される空間的に相対的な用語は、それに応じて解釈されうる。
【0021】
取り立てて定義されない限り、本明細書で使用される全ての用語(技術及び科学用語を含む)は、本開示が属する技術分野の通常の知識を有する者によって一般に理解されるところと同じ意味を有する。また、一般的に使用される辞書で定義されているような用語は、関連技術及び本開示の文脈におけるその意味と一致する意味を有すると解釈されねばならず、理想化されるか、過度に形式的な意味で解釈されないこともさらに理解されるであろう。
【0022】
本明細書では、理想的な実施形態の概略図である断面図を参照して実施形態を説明する。したがって、例えば、製造技術及び/または許容誤差などの結果として、図示の形状からの変形が予想されなければならない。したがって、本明細書に記述された実施例は、本明細書に図示されたような領域の特定形状に制限されると解釈されてはならず、例えば、製造によってもたされる形状の偏差を含むものでもある。例えば、平坦であると図示されているか、記述された領域は、典型的に粗く、及び/または非線形特徴を有しうる。さらに、鋭く図示された角は、丸くもある。したがって、図示された領域は、本質的に概略的であり、その形状は、領域の正確な形状を図示するためのものではなく、本請求項の範囲を制限しようとするものではない。
【0023】
「族」は、国際純正応用化学連合(「IUPAC」)1-18族分類システムによる元素周期律表のグループを意味する。
【0024】
本明細書において「粒径」は、粒子が球状である場合、平均直径を示し、粒子が非球状である場合には、平均長軸長を示す。粒径は、粒子サイズ分析器(particle size analyzer(PSA))を用いて測定することができる。「粒径」は、例えば、平均粒径である。「平均粒径」は、例えば、メジアン粒径であるD50である。
【0025】
D50は、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して50%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0026】
D90は、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して90%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0027】
D10は、レーザ回折法で測定される粒子サイズ分布において小粒子サイズを有する粒子側から計算して10%累積体積に該当する粒子サイズである。
【0028】
本開示において「金属」は、元素状態または、イオン状態において、金属とケイ素及びゲルマニウムのような半金属(metalloid)をいずれも含む。
【0029】
本開示において「合金」は、2以上の金属混合物を意味する。
【0030】
本開示において「電極活物質」は、リチウム化及び脱リチウム化を経験しうる電極材料を意味する。
【0031】
本開示において「正極活物質」は、リチウム化及び脱リチウム化を経験しうる正極材料を意味する。
【0032】
本開示において「負極活物質」は、リチウム化及び脱リチウム化を経験しうる負極材料を意味する。
【0033】
本開示において「リチウム化」及び「リチウム化する」は、リチウムを電極活物質に付け加える過程を意味する。
【0034】
本開示において「脱リチウム化」及び「脱リチウム化する」は、電極活物質からリチウムを除去する過程を意味する。
【0035】
本開示において「充電」及び「充電する」は、電池に電気化学的エネルギーを提供する過程を意味する。
【0036】
本開示において「放電」及び「放電する」は、電池から電気化学的エネルギーを除去する過程を意味する。
【0037】
本開示において「正極」及び「カソード」は、放電過程の間に電気化学的還元及びリチウム化が起こる電極を意味する。
【0038】
本開示において「負極」及び「アノード」は、放電過程の間に電気化学的酸化及び脱リチウム化が起こる電極を意味する。
【0039】
特定の実施形態が記述されたが、現在、予想されないか、予想できない代案、修正、変形、改善及び実質的な均等物が出願人または当業者に発生しうる。したがって、出願され、修正されうる添付の請求範囲は、そのような全ての代案、修正、変形、改善及び実質的な均等物を含むと意図される。
【0040】
以下、例示的な実施形態による複合正極活物質、それを含む正極とリチウム電池及びその製造方法についてさらに詳細に説明する。
【0041】
複合正極活物質は、第1リチウム遷移金属酸化物を含む第1コア(1st core);第2リチウム遷移金属酸化物を含む第2コア(2nd core);及び前記第1コア及び第2コアのうち1つ以上の表面に沿って配置されるシェル(shell);を含み、前記シェルが1種以上の第1金属酸化物;第1炭素系材料;及び第2炭素系材料を含み、前記第1金属酸化物が前記第1炭素系材料マトリックス内に配置され、前記第1金属酸化物が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示され、前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、前記第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む。
【0042】
以下、一実施形態による複合正極活物質が優秀な効果を提供する理論的な根拠について説明するが、これは、本創意的思想に係わる理解の一助とするためのものであって、いかなる方式によっても本創意的思想を限定しようとする意図ではない。
【0043】
複合正極活物質は、第1コア上に配置されるシェルを含む第1コア/シェル構造体、及び第2コア上に配置されるシェルを含む第2コア/シェル構造体を含む。第1コアが第1リチウム遷移金属酸化物を含み、第2コアが第2リチウム遷移金属酸化物を含む。第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有するので、第1コア/シェル構造体と第2コア/シェル構造体が、例えば、互いに異なる粒径を有する。第1コア/シェル構造体と第2コア/シェル構造体は、例えば、それぞれ図1の構造を有することができる。
【0044】
図1を参照すれば、コア/シェル構造体100は、コア10、及びコア10の表面に沿って連続的または不連続的に配置されるシェル20を含む。シェル20は、コア10の全部または一部を被覆することができる。シェル20は、第1金属酸化物21、第1炭素系材料22及び第2炭素系材料23を含む。第2炭素系材料23は、縦横比10以上の繊維状炭素を含む。コア/シェル構造体100の製造時に、第1炭素系材料22のマトリックスに配置された複数の第1金属酸化物21を含む複合体を使用してリチウム遷移金属酸化物コア10上にシェル20が連続的または不連続的に配置されうる。したがって、第1炭素系材料22の凝集を防止しながら、コア10上にシェル20が均一に配置されうる。コア10上に配置されたシェル20は、コア10と電解液との接触を効果的に遮断することができる。シェル20がコア10と電解液との接触を効果的に遮断することにより、コア10と電解質の接触による副反応を防止することができる。また、コア10上にシェル20が配置されることにより、コア10と電解液の接触による陽イオンミキシング(cation mixing)が抑制されうる。コア10と電解液の接触による陽イオンミキシング(cation mixing)が抑制されることにより、複合正極活物質100内部及び/または表面で抵抗層の生成が抑制されうる。また、コア10上にシェル20が配置されることにより、リチウム遷移金属酸化物コア10からの遷移金属イオンの溶出も抑制されうる。
【0045】
第1炭素系材料22は、例えば、結晶質炭素系材料でもある。第1炭素系材料22は、例えば、炭素系ナノ構造体でもある。第1炭素系材料22は、例えば、炭素系2次元ナノ構造体でもある。第1炭素系材料22は、一例において、グラフェンでもある。その場合、グラフェン及び/またはそのマトリックスを含むシェル(shell)20は、柔軟性を有するので、充放電時、コア10の体積変化を容易に収容することにより、コア10内部のクラック(crack)発生が抑制されうる。グラフェンは、高い導電性を有するので、コア10と電解液との界面抵抗を減少させうる。したがって、グラフェンを含むシェル(shell)20の導入にもかかわらず、複合正極活物質を含むリチウム電池の内部抵抗が保持されるか、減少する。これに対して、従来の一般的な炭素系ナノ構造体材料は、容易に凝集されることにより、リチウム遷移金属酸化物のコア上への均一なコーティングが困難にもなる。
【0046】
第2炭素系材料23は、縦横比10以上の繊維状炭素である。シェル20が第2炭素系材料を含むことにより、コア/シェル構造体100及びそれを含む複合正極活物質の伝導性経路(conducting path)がさらに長くもなる。第2炭素系材料23は、複数のコア/シェル構造体100の粒子間に3次元伝導性ネックワークを形成することにより、複合正極活物質を含む正極の内部抵抗を減少させうる。コア/シェル構造体100上に繊維状炭素が固定されることにより、複数のコア/シェル構造体100の粒子間に均一で安定した3次元伝導性ネットワークを形成することができる。したがって、コア/シェル構造体100が第2炭素系材料23を含むことにより、複合正極活物質を備えたリチウム電池の高率特性が向上しうる。これに対して、リチウム遷移金属酸化物コアと第2炭素系材料である繊維状炭素の単純混合物は、繊維状炭素の凝集などによって複数のリチウム遷移金属酸化物のコア粒子間に均一な3次元伝導性ネックワークを形成し難い。
【0047】
図2及び図3を参照すれば、第2炭素系材料の縦横比は、10以上または20以上でもある。第2炭素系材料の縦横比は、例えば、10~100,000、10~80,000、10~50,000、10~10,000、10~5000、10~1000、10~500、10~100、または10~50でもある。第2炭素系材料の縦横比は、例えば、第2炭素系材料の中心を通る長軸の長さ、すなわち、第2炭素系材料の長さと、第2炭素系材料の中心を通り、前記長軸に垂直である短軸長、すなわち、第2炭素系材料の直径の比率である。第2炭素系材料の直径は、例えば、50nm以下、30nm以下、20nm以下、または10nm以下でもある。第2炭素系材料の直径は、例えば、1nm~50nm、1nm~30nm、または1nm~10nmでもある。第2炭素系材料の直径が過度に大きければ、体積当たりの絶対数が減少し、内部抵抗減少効果が微々たるものでもある。第2炭素系材料の直径が過度に小さければ、均一な分散が困難である。第2炭素系材料の長さは、例えば、1000μm以下、100μm以下、50μm以下、10μm以下、5μm以下、2μm以下、1μm以下、500nm以下、または300nm以下でもある。第2炭素系材料の長さは、例えば、100nm~1000μm、100nm~500μm、100nm~100μm、100nm~50μm、100nm~10μm、100nm~5μm、100nm~2μm、100nm~1μm、100nm~500nm、または100nm~300nmでもある。第2炭素系材料の長さは、例えば、500nm~1000μm、500nm~500μm、500nm~100μm、500nm~50μm、500nm~10μm、500nm~5μm、または500nm~2μmでもある。第2炭素系材料の長さが増加するほど、電極の内部抵抗が減少しうる。第2炭素系材料の長さが過度に短ければ、効果的な導電経路の提供が困難である。
【0048】
図2を参照すれば、第1リチウム遷移金属酸化物は、複数の1次粒子を含む2次粒子を含む。第1リチウム遷移金属酸化物が含む1次粒子の粒径は、1μm未満、800nm以下、600nm以下、500nm以下、または300nm以下でもある。複数の1次粒子の凝集体(agglomerate)が2次粒子を形成することができる。2次粒子は、例えば、複数の結晶性1次粒子が凝集された多結晶性(polycrystalline)粒子である。
【0049】
図3を参照すれば、第2リチウム遷移金属酸化物は、粒径1μm以上の1次粒子を含む。粒径1μm以上の1次粒子は、例えば、単一(one body)粒子状を有する。第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の単一(one body)粒子であることによって比表面積が減少し、充放電時にクラック(crack)の発生が減少することにより、充放電過程で電解液との副反応が減少しうる。そのような第2リチウム遷移金属酸化物を含む複合正極活物質を採用したリチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm未満の複数の1次粒子の凝集体(agglomerate)、すなわち、2次粒子である場合、そのような凝集体の比表面積が増加するので、充放電時、クラックの発生が増加することにより、充放電過程で電解液との副反応が増加しうる。第2リチウム遷移金属酸化物が含む粒径1μm以上の1次粒子は、例えば、単結晶(single crystal)粒子である。
【0050】
複合正極活物質は、第1リチウム遷移金属酸化物を含む第1コア/シェル構造体と、第2リチウム遷移金属酸化物を含む第2コア/シェル構造体を含む。第1コア/シェル構造体と第2コア/シェル構造体が互いに異なる粒径を有することにより、第1コア/シェル構造体間の空隙に第2コア/シェル構造体が配置されるか、第2コア/シェル構造体間の空隙に第1コア/シェル構造体が配置されうる。したがって、コア/シェル構造体粒子間の空隙に異なる大きさのコア/シェル構造体粒子がさらに配置されることにより、正極内でイオンの移動経路が短縮され、そのような複合正極活物質を含む正極のイオン伝導度が向上しうる。また、コア上に配置されたシェルが炭素系材料を含むので、コア/シェル構造体粒子間の空隙に異なる大きさのコア/シェル構造体粒子がさらに配置されることにより、正極内で電池の移動経路が短縮され、複合正極活物質を含む正極の電子伝導度が向上しうる。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池の高温サイクル特性が向上し、内部抵抗の増加が抑制されうる。また、コア/シェル構造体粒子間の空隙に他のコア/シェル構造体粒子がさらに配置されることにより、正極の混合密度が増加し、結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池のエネルギー密度がさらに向上しうる。これに対して、従来の正極活物質を含む正極では、正極活物質粒子間の空隙に炭素系導電材が配置されることにより、正極の電子伝導度が向上しうるが、炭素系導電材はイオン伝導度を有さないので、正極のイオン伝導度は低下しうる。そして、正極活物質層の全体厚さが増加することにより、そのような正極のイオン伝導度低下が顕著になる。したがって、そのような従来の正極を採用するリチウム電池の性能低下が顕著になる。
【0051】
複合正極活物質において、第1リチウム遷移金属酸化物は、第2リチウム遷移金属酸化物に比べて、粒径の大きい大径リチウム遷移金属酸化物でもある。第2リチウム遷移金属酸化物は、例えば、第1リチウム遷移金属酸化物に比べて粒径の小さい小径リチウム遷移金属酸化物でもある。例えば、第1コアが大径リチウム遷移金属酸化物であり、第2コアが小径リチウム遷移金属酸化物である。例えば、第1コア間の空隙に、第1コアに比べて平均粒径の小さい第2コアが配置されうる。大径粒子である第1コア粒子間の空隙に小径粒子である第2コア粒子が配置されることにより、複合正極活物質を含む正極のイオン伝導度及び/または電子伝導度が向上しうる。また、複合正極活物質を含む正極のエネルギー密度が向上しうる。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池のエネルギー密度が向上し、サイクル特性が向上しうる。
【0052】
第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物は、例えば、粒度分布図でバイモーダル粒径分布を有することができる。例えば、複合正極活物質は、粒子サイズ分析器(particle size analyzer(PSA))などを使用して得られる粒度分布図において、2個のピークを有するバイモーダル粒径分布を有することができる。バイモーダル粒径分布は、第1リチウム遷移金属酸化物に対応する第1ピーク、及び第2リチウム遷移金属酸化物に対応する第2ピークを有することができる。
【0053】
第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物の粒径比は、例えば、3:1~40:1、3:1~30:1、3:1~20:1、3:1~10:1、または3:1~5:1でもある。第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とがそのような範囲の粒径比を有することにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のエネルギー密度及びサイクル特性がさらに向上しうる
【0054】
第1リチウム遷移金属酸化物の粒径は、例えば、8μm超過~30μm、9μm~25μm、9μm~20μm、9μm~15μm、または9μm~12μmでもある。第1リチウム遷移金属酸化物の粒径は、例えば、メジアン粒径(D50)でもある。第2リチウム遷移金属酸化物の粒径は、例えば、1μm~8μm未満、1μm~7μm、1μm~6μm、1μm~5μmまたは1μm~4μmでもある。第1リチウム遷移金属酸化物の粒径は、例えば、メジアン粒径(D50)でもある。第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物がそのような範囲の平均粒径を有することにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のエネルギー密度及び/またはサイクル特性がさらに向上しうる。第1リチウム遷移金属酸化物及び第2リチウム遷移金属酸化物の粒径は、例えば、レーザ回折方式や動的光散乱方式の測定装置を使用して測定する。粒径は、例えば、レーザ散乱粒度分布計(例えば、HORIBA LA-920)を用いて測定し、体積換算における素粒子側から50%累積したときのメジアン径(D50)の値である。
【0055】
第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物の重量比は、例えば、90:10~60:40、85:15~65:35、80:20~65:35、または75:25~65:35でもある。第1リチウム遷移金属酸化物と第2リチウム遷移金属酸化物がそのような範囲の重量比を有することにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のエネルギー密度及び/またはサイクル特性がさらに向上しうる。
【0056】
第2炭素系材料は、例えば、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブまたはそれらの組合わせを含みうる。
【0057】
炭素ナノチューブは、例えば、炭素ナノチューブ1次構造体、複数の炭素ナノチューブ1次粒子が凝集されて形成される炭素ナノチューブ2次構造体、またはそれらの組合わせを含みうる。
【0058】
炭素ナノチューブ1次構造体は、1つの炭素ナノチューブ単位体である。炭素ナノチューブ単位体は、黒鉛面(graphite sheet)がナノサイズ直径のシリンダ状を有し、sp2結合構造を有する。黒鉛面が反る角度及び構造によって、導体の特性または半導体の特性を示しうる。炭素ナノチューブ単位体は、壁をなしている結合数によって単層炭素ナノチューブ(SWCNT, single-walled carbon nanotube)、二層炭素ナノチューブ(DWCNT, double-walled carbon nanotube)及び多層炭素ナノチューブ(MWCNT, multi-walled carbon nanotube)などに分類されうる。炭素ナノチューブ単位体の壁厚が薄くなるほど抵抗が低くなる。
【0059】
炭素ナノチューブ1次構造体は、例えば、単層炭素ナノチューブ(SWCNT, single-walled carbon nanotube)、二層炭素ナノチューブ(DWCNT, double-walled carbon nanotube)及び多層炭素ナノチューブ(MWCNT, multi-walled carbon nanotube)、またはそれらの組合わせを含みうる。炭素ナノチューブ1次構造体の直径は、例えば、1nm以上または2nm以上でもある。炭素ナノチューブ1次構造体の直径は、例えば、20nm以下、または10nm以下でもある。炭素ナノチューブ1次構造体の直径は、例えば、1nm~20nm、1nm~15nm、または1nm~10nmでもある。炭素ナノチューブ1次構造体の長さは、例えば、100nm以上または200nm以上でもある。炭素ナノチューブ1次構造体の長さは、例えば、2μm以下、1μm以下、500nm以下、または300nm以下でもある。炭素ナノチューブ1次構造体の長さは、例えば、100nm~2μm、100nm~1μm、100nm~500nm、100nm~400nm、100nm~300nm、または200nm~300nmでもある。炭素ナノチューブ1次構造体の直径及び長さは、走査電子顕微鏡(SEM)または透過電子顕微鏡(TEM)イメージから測定されうる。それと異なって、炭素ナノチューブ1次構造体の直径及び/または長さは、レーザ回折法で測定されうる。
【0060】
炭素ナノチューブ2次構造体は、炭素ナノチューブ1次構造体が全体的または部分的にバンドル状またはロープ状をなすように集合されて形成された構造体である。炭素ナノチューブ2次構造体は、例えば、バンドル状炭素ナノチューブ(bundle-type carbon nanotube)、ロープ状炭素ナノチューブ(rope-type carbon nanotube)またはそれらの組合わせを含みうる。炭素ナノチューブ2次構造体の直径は、例えば、2nm以上または3nm以上でもある。炭素ナノチューブ2次構造体の直径は、例えば、50nm以下、30nm以下、20nm以下、または10nm以下でもある。炭素ナノチューブ2次構造体の直径は、例えば、2nm~50nm、2nm~30nm、または2nm~20nmでもある。炭素ナノチューブ2次構造体の長さは、例えば、500nm以上、700nm以上、1μm以上または10μm以上でもある。炭素ナノチューブ2次構造体の長さは、例えば、1000μm以下、500μm以下、または100μm以下でもある。炭素ナノチューブ2次構造体の長さは、例えば、500nm~1000μm、500nm~500μm、500nm~200μm、500nm~100μm、または500nm~50μmでもある。炭素ナノチューブ2次構造体の直径及び長さは、走査電子顕微鏡(SEM)イメージまたは光学顕微鏡から測定されうる。それと異なって、炭素ナノチューブ2次構造体の直径及び/または長さは、レーザ回折法で測定されうる。
【0061】
炭素ナノチューブ2次構造体は、例えば、溶媒などに分散させて炭素ナノチューブ1次構造体に転換させた後、複合正極活物質の製造に使用することができる。
【0062】
第2炭素系材料の含量は、例えば、第1炭素系材料と前記第2炭素系材料の総重量に対して0.1wt%~50wt%、1wt%~40wt%、または5wt%~30wt%でもある。複合正極活物質が、そのような範囲の第1炭素系材料及び第2炭素系材料を含むことにより、複合正極活物質内で伝導性経路(conduction path)がさらに効果的に確保されて、複合正極活物質の内部抵抗がさらに減少しうる。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。第2炭素系材料の含量は、例えば、複合正極活物質の総重量の0.001wt%~5wt%、0.01wt%~3wt%、0.01wt%~1wt%、0.01wt%~0.5wt%または0.01wt%~0.1wt%でもある。複合正極活物質がそのような範囲の第2炭素系材料を含むことにより、複合正極活物質内で伝導性経路(conduction path)が確保されて、複合正極活物質の内部抵抗がさらに減少しうる。結果として、複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上しうる。
【0063】
第2炭素系材料23は、複合正極活物質の表面上に配置されうる。図2及び図3を参照すれば、第2炭素系材料23は、コア/シェル構造体100表面に配置されうる。また、図1に示されたように、第2炭素系材料23は、コア/シェル構造体100表面から突出しうる。したがって、第2炭素系材料23が複数のコア/シェル構造体100の間に伝導性ネットワークを効果的に提供することができる。第2炭素系材料23が第1炭素系材料22のマトリックス内に配置されることにより、コア10上に容易にコーティングされうる。第1炭素系材料22のマトリックスは、コアと第2炭素系材料23とを結着する結着剤として作用することができる。したがって、第1炭素系材料22のマトリックスがない場合、第2炭素系材料23がコア10上に容易に付着し難いか、第2炭素系材料23が正極用スラリー製造過程でコア10から容易に脱離されうる。リチウム遷移金属酸化物コア10と第2炭素系材料23との結着のためにバインダを追加する場合、コア10が絶縁性バインダによって被覆されることにより、複合正極活物質100の内部抵抗が増加しうる。バインダを炭化させるために、第2炭素系材料及びバインダに被覆されたコアを高温熱処理する場合、熱処理過程でコア10及び第2炭素系材料23が劣化されうる。
【0064】
また、シェルは、第1金属酸化物及び第1炭素系材料を含む。第1炭素系材料は、例えば、グラフェンマトリックスに由来するので、黒鉛系材料に由来の従来の炭素系材料に比べて、相対的に密度が低く、気孔率が高い。第1炭素系材料のd002面間距離(interplanar distance)は、例えば、3.38Å以上、3.40Å以上、3.45Å以上、3.50Å以上、3.60Å以上、3.80Å以上、または4.00Å以上でもある。シェルが含む第1炭素系材料のd002面間距離(interplanar distance)は、例えば、3.38~4.0Å、3.38~3.8Å、3.38~3.6Å、3.38~3.5Å、または3.38~3.45Åでもある。これに対して、黒鉛系材料に由来の従来の炭素系材料のd002面間距離は、例えば、3.38Å以下、または3.35~3.38Åでもある。第1金属酸化物は、耐電圧性を有するので、高電圧での充放電時にコアが含むリチウム遷移金属酸化物の劣化を防止することができる。シェルは、例えば、1種の第1金属酸化物または2種以上の互いに異なる第1金属酸化物を含んでもよい。結果として、上述した複合正極活物質を含むリチウム電池の高温サイクル特性が向上する。シェルの含量は、例えば、前記複合正極活物質の総重量の0.1wt%~5wt%、0.1wt%~4wt%、0.1wt%~3wt%、0.1wt%~2.5wt%、0.1wt%~2wt%、または、0.1wt%~1.5wt%でもある。第1金属酸化物の含量は、例えば、複合正極活物質の総重量の0.06wt%~3wt%、0.06wt%~2.4wt%、0.06wt%~1.8wt%、0.06wt%~1.5wt%、0.06wt%~1.2wt%、または、0.06wt%~0.9wt%でもある。複合正極活物質がそのような含量範囲のシェル及び第1金属酸化物をそれぞれ含むことにより、リチウム電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0065】
第1金属酸化物は、第1金属を含み、第1金属は、例えば、Al、Nb、Mg、Sc、Ti、Zr、V、W、Mn、Fe、Co、Pd、Cu、Ag、Zn、Sb、及びSeのうちから選択された1つ以上でもある。第1金属酸化物は、例えば、Al(0<z<3)、NbO(0<x<2.5)、MgO(0<x<1)、Sc(0<z<3)、TiO(0<y<2)、ZrO(0<y<2)、V(0<z<3)、WO(0<y<2)、MnO(0<y<2)、Fe(0<z<3)、Co(0<w<4)、PdO(0<x<1)、CuO(0<x<1)、AgO(0<x<1)、ZnO(0<x<1)、Sb(0<z<3)、及びSeO(0<y<2)のうちから選択された1つ以上でもある。第1炭素系材料マトリックス内にそのような第1金属酸化物が配置されることにより、コア上に配置されたシェルの均一性が向上し、複合正極活物質の耐電圧性がさらに向上する。例えば、シェルは、第1金属酸化物として、Al(0<x<3)を含む。
【0066】
シェルは、化学式M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される1種以上の第2金属酸化物をさらに含む。前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属である。例えば、第2金属酸化物は、前記第1金属酸化物と同じ金属を含み、第2金属酸化物のaとcとの比率であるc/aが、前記第1金属酸化物のaとbとの比率であるb/aに比べて、さらに大きい値を有する。例えば、c/a>b/aである。第2金属酸化物は、例えば、Al、NbO、NbO、Nb、MgO、Sc、TiO、ZrO、V、WO、MnO、Fe、Co、PdO、CuO、AgO、ZnO、Sb、及びSeOのうちから選択される。第1金属酸化物は、例えば、第2金属酸化物の還元生成物である。第2金属酸化物の一部または全部が還元されることにより、第1金属酸化物が得られる。したがって、第1金属酸化物は、第2金属酸化物に比べて酸素含量が低く、金属の酸化数も低い。シェルは、例えば、第1金属酸化物であるAl(0<x<3)及び第2金属酸化物であるAlを含んでもよい。
【0067】
シェルは、例えば、第1炭素系材料を含み、コアは、例えば、リチウム遷移金属酸化物を含んでもよい。そして、第1炭素系材料とリチウム遷移金属酸化物の遷移金属は、例えば、化学結合によって化学的に結合されうる(bound)。第1炭素系材料の炭素原子(C)と前記リチウム遷移金属酸化物の遷移金属(Me)は、例えば、酸素原子を媒介としたC-O-Me結合(例えば、C-O-Ni結合、またはC-O-Co結合)を介して化学的に結合される(bound)。シェルに配置された第1炭素系材料とコアに配置されたリチウム遷移金属酸化物とが化学結合によって化学的に結合されることにより、コアとシェルとが複合化される。したがって、複合正極活物質は、第1炭素系材料とリチウム遷移金属酸化物の単なる物理的混合物と区別される。また、第1金属酸化物と第1炭素系材料も、化学結合によって化学的に結合されうる(bound)。ここで、化学結合は、例えば、共有結合またはイオン結合である。
【0068】
シェルは、例えば、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上を含み、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の粒径は、例えば、1nm~100nm、1nm~50nm、1nm~30nm、5nm~30nm、または10nm~30nmでもある。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物がそのようなナノ範囲の粒径を有することにより、第1炭素系材料マトリックス内にさらに均一に分布されうる。第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち1つ以上の粒径が過度に増加すれば、シェルの厚さが増加することにより、複合負極活物質の内部抵抗が増加しうる。第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうち1つ以上の粒径が過度に減少すれば、均一な分散が困難である。
【0069】
シェルは、第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物を含み、第1炭素系材料を含んでもよい。第1炭素系材料は、第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物表面から突出する方向に配置されうる。第1炭素系材料は、第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物の表面から直成長することにより、第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物表面から突出する方向に配置されうる。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物表面から突出する方向に配置される第1炭素系材料は、例えば、炭素系2次元ナノ構造体、炭素系フレーク(flake)またはグラフェンである。
【0070】
複合正極活物質は、例えば、コア上にドーピングされる第3金属及び/または前記コア上にコーティングされる第3金属酸化物をさらに含んでもよい。そして、コア上にドーピングされた第3金属及び/またはコア上にコーティングされた第3金属酸化物上にシェルが配置されうる。例えば、リチウム遷移金属酸化物コアの表面に第3金属がドーピングされるか、リチウム遷移金属酸化物の表面上に第3金属酸化物がコーティングされた後、前記第3金属及び/または第3金属酸化物上にシェルに配置されうる。例えば、複合正極活物質は、コア;コア上に配置される中間層;及び中間層上に配置されるシェルを含み、中間層が第3金属または第3金属酸化物を含んでもよい。第3金属は、Al、Zr、W、及びCoのうちから選択される1つ以上の金属であり、第3金属酸化物は、Al、LiO-ZrO、WO、CoO、Co、Coまたはそれらの組合わせでもある。
【0071】
シェルの厚さは、例えば、10nm~2μm、30nm~1μm、50nm~1μm、100nm~500nm、100nm~300nm、または100nm~200nmである。シェルがそのような範囲の厚さを有することにより、複合正極活物質を含む正極の電子伝導度がさらに向上しうる。
【0072】
シェルは、例えば、単層構造、または多層構造を有する。多層構造は、例えば、2層ないし5層構造を有する。単層構造は、例えば、第1金属酸化物を含む第1層構造、または第1金属酸化物及び第2金属酸化物を含む第1層構造を有する。多層構造は、例えば、第1金属酸化物を含む第1層;及び第2金属酸化物を含む第2層を含む構造を有する。多層構造は、例えば、第3金属酸化物を含む第1層、及び第1金属酸化物を含む第2層を含む構造を有する。多層構造は、例えば、第3金属酸化物を含む第1層、及び第1金属酸化物と第2金属酸化物を含む第2層を含む構造を有する。多層構造は、例えば、第1金属酸化物を含む第1層、及び第3金属酸化物を含む第2層を含む構造を有する。多層構造は、例えば、第1金属酸化物と第2金属酸化物とを含む第1層、及び第3金属酸化物を含む第2層を含む構造を有することができる。
【0073】
シェルは、乾式によって製造される乾式コーティング層でもある。乾式は、例えば、機械的ミーリングでもあるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野において乾式で使用する方法であれば、いずれも使用可能である。
【0074】
シェルの含量は、例えば、複合正極活物質の総重量に対して5wt%以下、4wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、1.5wt%以下、または1wt%以下でもある。シェルの含量は、例えば、前記複合正極活物質の総重量の0.01wt%~5wt%、0.05wt%~4wt%、0.05wt%~3wt%、0.05wt%~2wt%、0.05wt%~1.5wt%、または、0.05wt%~1wt%でもある。第1金属酸化物の含量は、例えば、複合正極活物質の総重量の0.006wt%~3wt%、0.03wt%~2.4wt%、0.03wt%~1.8wt%、0.03wt%~1.2wt%、0.03wt%~0.9wt%、または、0.03wt%~0.6wt%でもある。複合正極活物質がそのような含量範囲のシェル及び第1金属酸化物をそれぞれ含むことにより、リチウム電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0075】
コアの表面に沿って配置されるシェルは、例えば、第1金属酸化物、及び第1炭素系材料、例えば、グラフェンを含む複合体をコア上にミーリングなどでコーティングすることにより形成されうる。したがって、コアの表面に沿って連続的または不連続的に配置されるシェルは、例えば、第1金属酸化物、及び第1炭素系材料、例えば、グラフェンを含む複合体及び/または前記第2複合体のミーリング(milling)結果物のうちから選択された1つ以上を含んでもよい。第1金属酸化物は、炭素系材料のマトリックス、例えば、グラフェンマトリックス内に配置される。シェルは、例えば、第1金属酸化物、及び第1炭素系材料、例えば、グラフェンを含む複合体から製造されうる。複合体は、第1金属酸化物以外に第2金属酸化物をさらに含んでもよい。複合体は、例えば、2種以上の第1金属酸化物を含んでもよい。複合体は、例えば、2種以上の第1金属酸化物及び2種以上の第2金属酸化物を含んでもよい。
【0076】
複合体及びそのミーリング結果物のうち1つ以上の含量は、例えば、複合正極活物質の総重量の5wt%以下、3wt%以下、2wt%以下、2.5wt%以下、または1.5wt%以下でもある。複合体及びそのミーリング結果物のうち1つ以上の含量は、複合正極活物質の総重量の0.01wt%~5wt%、0.01wt%~4wt%、0.01wt%~3wt%、0.01wt%~2.5wt%、0.01wt%~2wt%、または、0.01wt%~1.5wt%でもある。複合正極活物質がそのような範囲の複合体及びそのミーリング結果物のうち1つ以上を含むことにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のサイクル特性がさらに向上する。
【0077】
複合体は、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上を含んでもよい。第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の粒径は、1nm~100nm、1nm~50nm、1nm~30nm、5nm~30nm、または10nm~30nmでもある。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物がそのようなナノ範囲の粒径を有することにより、複合体の第1炭素系材料マトリックス内にさらに均一に分布されうる。したがって、そのような複合体が凝集なしにコア上に均一にコーティングされてシェルを形成することができる。また、第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物がそのような範囲の粒径を有することにより、コア上にさらに均一に配置されうる。したがって、コア上に第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物が均一に配置されることにより、耐電圧特性をさらに効果的に発揮することができる。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物の粒径は、例えば、レーザ回折方式や動的光散乱方式の測定装置を使用して測定する。粒径は、例えば、レーザ散乱粒度分布計(例えば、HORIBA LA-920)を用いて測定し、体積換算における素粒子側から50%累積したときのメジアン径(D50)の値である。第1金属酸化物及び/または第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の均一度偏差が3%以下、2%以下、または1%以下でもある。均一度は、例えば、XPSによって求めることができる。したがって、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上が3%以下、2%以下、または1%以下の偏差を有し、均一に複合体内に分布されうる。
【0078】
複合体は、第1炭素系材料を含む。第1炭素系材料は、例えば、分枝された構造(branched structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物が第1炭素系材料の分枝された構造内に分布されうる。第1炭素系材料の分枝された構造は、例えば、互いに接触する複数の第1炭素系材料粒子を含む。第1炭素系材料が分枝された構造を有することにより、多様な伝導性経路を提供することができる。第1炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。グラフェンは、例えば、分枝された構造(branched structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物がグラフェンの分枝された構造内に分布されうる。グラフェンの分枝された構造は、例えば、互いに接触する複数のグラフェン粒子を含む。グラフェンが分枝された構造を有することにより、多様な伝導性経路を提供することができる。
【0079】
第1炭素系材料は、例えば、球状構造(spherical structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物は、前記球状構造内に分布されうる。第1炭素系材料の球状構造の大きさが50nm~300nmでもある。球状構造を有する第1炭素系材料が複数個でもある。第1炭素系材料が球状構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。第1炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。グラフェンは、例えば、球状構造(spherical structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物は、前記球状構造内に分布されうる。グラフェンの球状構造の大きさが50nm~300nmでもある。球状構造を有するグラフェンが複数個でもある。グラフェンが球状構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0080】
第1炭素系材料は、例えば、複数の球状構造(spherical structure)が連結された螺旋形構造(spiral structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物は、前記螺旋形構造の球状構造内に分布されうる。第1炭素系材料の螺旋形構造の大きさが500nm~100μmでもある。第1炭素系材料が螺旋形構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。第1炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。グラフェンは、例えば、複数の球状構造(spherical structure)が連結された螺旋形構造(spiral structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物は、前記螺旋形構造の球状構造内に分布されうる。グラフェンの螺旋形構造の大きさが500nm~100μmでもある。グラフェンが螺旋形構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0081】
第1炭素系材料は、例えば、複数の球状構造(spherical structure)が凝集されたクラスタ構造(cluster structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物は、前記クラスタ構造の球状構造内に分布されうる。第1炭素系材料のクラスタ構造の大きさが0.5mm~10cmである。第1炭素系材料がクラスタ構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。第1炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。グラフェンは、例えば、複数の球状構造(spherical structure)が凝集されたクラスタ構造(cluster structure)を有し、第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上の金属酸化物は、前記クラスタ構造の球状構造内に分布されうる。グラフェンのクラスタ構造の大きさが0.5mm~10cmでもある。グラフェンがクラスタ構造を有することにより、複合体が堅固な構造を有することができる。
【0082】
複合体は、例えば、しわのよった多面体ボール構造体(faceted-ball structure)であり、構造体の内部または表面に第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上が分布されうる。複合体がそのような多面体ボール構造体であることによって、複合体がコアの不規則的な表面凹凸上に容易に被覆されうる。
【0083】
複合体は、例えば、平面構造体(planar structure)であり、構造体の内部または表面に第1金属酸化物及び第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上が分布されうる。複合体がそのような2次元平面構造体であることによって、複合体がコアの不規則的な表面凹凸上に容易に被覆されうる。
【0084】
第1炭素系材料は、第1金属酸化物において10nm以下の距離ほど延び、少なくとも1~20個の炭素系材料層を含んでもよい。例えば、複数の第1炭素系材料層が積層されることにより、第1金属酸化物上に12nm以下の総厚を有する第1炭素系材料が配置されうる。例えば、第1炭素系材料の総厚は、0.6nm~12nmでもある。第1炭素系材料は、例えば、グラフェンでもある。グラフェンは、第1金属酸化物で10nm以下の距離ほど延び、少なくとも1~20個のグラフェン層を含んでもよい。例えば、複数のグラフェン層が積層されることにより、第1金属酸化物上に12nm以下の総厚を有するグラフェンが配置されうる。例えば、グラフェンの総厚は、0.6nm~12nmでもある。
【0085】
複合正極活物質がコア、例えば、第1コア及び第2コアを含み、第1コア及び第2コアは、互いに独立し、例えば、下記化学式1ないし8で表示されるリチウム遷移金属酸化物を含むことができる:
[化学式1]
LiNiCo2-b
前記化学式1において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.8≦x<1、0<y≦0.3、0<z≦0.3、及びx+y+z=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)またはそれらの組合わせであり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせである。
【0086】
[化学式2]
LiNiCoMn
[化学式3]
LiNiCoAl
前記化学式2及び3において、0.8≦x≦0.95、0≦y≦0.2、0<z≦0.2及びx+y+z=1である。
【0087】
[化学式4]
LiNiCoMnAl
前記化学式4において、0.8≦x≦0.95、0≦y≦0.2、0<z≦0.2、0<w≦0.2、及びx+y+z+w=1である。
【0088】
化学式1ないし4のリチウム遷移金属酸化物は、全体遷移金属モル数に対して80mol%以上、85mol%以上、90mol%以上または90mol%以上の高いニッケル含量を有しながらも、優秀な初期容量、常温寿命特性及び高温寿命特性を提供することができる。例えば、化学式1ないし4のリチウム遷移金属酸化物におけるニッケル含量は、全体遷移金属モル数に対して80mol%~99mol%、85mol%~99mol%、または90mol%~97mol%でもある。
【0089】
[化学式5]
LiCo2-b
前記化学式5において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0.9≦x≦1、0≦y≦0.1、及びx+y=1であり、
Mは、マンガン(Mn)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)またはそれらの組合わせであり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせである。
【0090】
[化学式6]
LiNiMnM’2-b
前記化学式6において、
1.0≦a≦1.2、0≦b≦0.2、0<x≦0.3、0.5≦y<1、0<z≦0.3、及びx+y+z=1であり、
M’は、コバルト(Co)、ニオブ(Nb)、バナジウム(V)、マグネシウム(Mg)、ガリウム(Ga)、シリコン(Si)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、ボロン(B)またはそれらの組合わせであり、Aは、F、S、Cl、Brまたはそれらの組合わせである。
【0091】
[化学式7]
LiM1M2PO4-b
前記化学式7において、0.90≦a≦1.1、0≦x≦0.9、0≦y≦0.5、0.9<x+y<1.1、0≦b≦2であり、
M1がクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)またはそれらの組合わせであり、
M2がマグネシウム(Mg)、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、バリウム(Ba)、チタン(Ti)、亜鉛(Zn)、ボロン(B)、ニオブ(Nb)、ガリウム(Ga)、インジウム(In)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、アルミニウム(Al)、シリコン(Si)、クロム(Cr)、バナジウム(V)、スカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)またはそれらの組合わせであり、XがO、F、S、Pまたはそれらの組合わせである。
【0092】
[化学式8]
LiM3PO
前記化学式8において、0.90≦a≦1.1、0.9≦z≦1.1であり、
M3がクロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、ジルコニウム(Zr)またはそれらの組合わせである。
【0093】
他の一実施形態による正極は、上述した複合正極活物質を含む。正極が上述した複合正極活物質を含むことにより、向上したエネルギー密度、向上したサイクル特性及び増加した伝導度を提供する。
【0094】
複合正極活物質が粒径1μm以上の1次粒子である第2リチウム遷移金属酸化物を含むことにより、充放電時の副反応による第2リチウム遷移金属酸化物の急激な劣化を防止することができる。したがって、リチウム電池の寿命特性が向上しうる。また、複合正極活物質のシェルが第2炭素系材料を含むことにより、複合正極活物質が導電材の役割をさらに遂行することができる。したがって、正極内に使用される導電材含量が減少しうる。導電材は、電池の伝導性向上のために必要であるが、導電材の含量が増加する場合、正極の混合密度が低下するので、結果として、リチウム電池のエネルギー密度が低下する。これに対して、本願発明の正極は、上述した複合正極活物質を使用することにより、内部抵抗の増加なしに導電材の含量を減少させうる。したがって、正極の混合密度が増加するので、結果として、リチウム電池のエネルギー密度が向上しうる。特に、高容量のリチウム電池で導電材の含量を減少させつつ、複合正極活物質の含量を増加させることにより、リチウム電池のエネルギー密度増加が顕著になりうる。
【0095】
正極は、例えば、湿式によって製造されうる。正極は、例えば、下記の例示的な方法によって製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、要求される条件によって調節される。
【0096】
まず、上述した複合正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して正極活物質組成物を準備する。準備された正極活物質組成物をアルミニウム集電体上に直接コーティング及び乾燥させ、正極活物質層が形成された正極極板を製造する。それと異なって、前記正極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングした後、該支持体から剥離して得たフィルムを前記アルミニウム集電体上にラミネーションして、正極活物質層が形成された正極極板を製造する。
【0097】
導電材としては、カーボンブラック、黒鉛微粒子、天然黒鉛、人造黒鉛、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維;炭素ナノチューブ;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維または金属チューブ;ポリフェニレン誘導体のような伝導性高分子などが使用されるが、それらに限定されず、当該技術分野で導電材として使用するものであれば、いずれも使用可能である。それと異なって、正極は、例えば、別途の導電材を含まない。
【0098】
バインダとしては、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、前述した高分子の混合物、スチレンブタジエンゴム系ポリマーなどが使用され、溶媒としては、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトン、水などが使用されるが、必ずしもそれらに限定されず、当該技術分野として使用するものであれば、いずれも使用可能である。
【0099】
正極活物質組成物に可塑剤または気孔形成剤をさらに付け加えて電極板の内部に気孔を形成してもよい。
【0100】
正極に使用される複合正極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって前記導電材、バインダ及び溶媒のうち、1つ以上の省略が可能である。
【0101】
正極に使用されるバインダ含量は、正極活物質層の総重量の0.1wt%~10wt%または0.1wt%~5wt%でもある。正極に使用される複合正極活物質含量は、正極活物質層の総重量の80wt%~99wt%、90wt%~99wt%または95wt%~99wt%でもある。正極に使用される導電材含量は、正極活物質層の総重量の0.01wt%~10wt%、0.01wt%~5wt%、0.01wt%~3wt%、0.01wt%~1wt%、0.01wt%~0.5wt%、0.01wt%~0.1wt%でもある。導電材は、省略されうる。
【0102】
また、正極は、上述した複合正極活物質以外に他の一般的な正極活物質をさらに含みうる。
【0103】
一般的な正極活物質は、リチウム含有金属酸化物として、当業界で通常使用されるものであれば、制限なしにいずれも使用されうる。例えば、コバルト、マンガン、ニッケル、及びそれらの組合わせから選択される金属とリチウムとの複合酸化物のうち1種以上のものを使用することができ、その具体例としては、Li1-b(前記式において、0.90≦a≦1、及び0≦b≦0.5である);Li1-b2-c(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiE2-b4-c(前記式において、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05である);LiNi1-b-cCoα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cCo2-αα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cCo2-α(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMnα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2である);LiNi1-b-cMn2-αα(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi1-b-cMn2-α(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2である);LiNi(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1である);LiNiCoMn(前記式において、0.90≦a≦1、0≦b≦0.9、0≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1である);LiNiG(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiCoG(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMnG(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);LiMn(前記式において、0.90≦a≦1、0.001≦b≦0.1である);QO;QS;LiQS;V;LiV;LiIO;LiNiVO;Li(3-f)(PO(0≦f≦2);Li(3-f)Fe(PO(0≦f≦2);LiFePOの化学式のうち、いずれか1つで表現される化合物を使用することができる。
【0104】
上述した化合物を表現する化学式において、Aは、Ni、Co、Mn、またはそれらの組合わせであり、Bは、Al、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素またはそれらの組合わせであり、Dは、O、F、S、P、またはそれらの組合わせであり、Eは、Co、Mn、またはそれらの組合わせであり、Fは、F、S、P、またはそれらの組合わせであり、Gは、Al、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはそれらの組合わせであり、Qは、Ti、Mo、Mn、またはそれらの組合わせであり、Iは、Cr、V、Fe、Sc、Y、またはそれらの組合わせであり、Jは、V、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはそれらの組合わせである。上述した化合物表面にコーティング層が付け加えられた化合物の使用も可能であり、上述した化合物とコーティング層が付け加えられた化合物の混合物の使用も可能である。上述した化合物の表面に付け加えられるコーティング層は、例えば、コーティング元素のオキシド、ヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートのコーティング元素化合物を含む。そのようなコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質である。コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zrまたはそれらの混合物である。コーティング層形成方法は、正極活物質の物性に悪影響を与えない範囲内で選択される。コーティング方法は、例えば、スプレーコーティング、浸漬法などである。具体的なコーティング方法は、当該分野に従事する者によく理解されうる内容なので、詳細な説明は、省略する。
【0105】
さらに他の具現例によるリチウム電池は、上述した複合正極活物質を含む正極を採用する。
【0106】
リチウム電池が上述した複合正極活物質を含む正極を採用することにより、向上したエネルギー密度、サイクル特性と熱安定性を提供する。
【0107】
リチウム電池は、例えば、下記の例示的な方法によって製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、要求される条件によって調節される。
【0108】
まず、上述した正極製造方法によって正極が製造される。
【0109】
次いで、負極が次のように製造される。負極は、例えば、複合正極活物質の代わりに負極活物質を使用することを除き、正極と実質的に同一方法で製造される。また、負極活物質組成物において導電材、バインダ及び溶媒は、正極と実質的に同一物を使用することができる。
【0110】
例えば、負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒を混合して負極活物質組成物を製造し、それを銅集電体に直接コーティングして負極極板を製造する。それと異なって、製造された負極活物質組成物を別途の支持体上にキャスティングし、該支持体から剥離させた負極活物質フィルムを銅集電体にラミネーションして負極極板を製造する。
【0111】
負極活物質は、当該技術分野でリチウム電池の負極活物質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。例えば、リチウム金属、リチウムと合金可能な金属、遷移金属酸化物、非遷移金属酸化物及び炭素系材料からなる群から選択された1つ以上を含む。リチウムと合金可能な金属は、例えば、Si、Sn、Al、Ge、Pb、Bi、SbSi-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素またはそれらの組合わせ元素であり、Siではない)、Sn-Y合金(前記Yは、アルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、遷移金属、希土類元素またはそれらの組合わせ元素であり、Snではない)などである。元素Yは、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはそれらの組合わせである。前記遷移金属酸化物は、例えば、リチウムチタン酸化物、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などである。非遷移金属酸化物は、例えば、SnO、SiO(0<x<2)などである。炭素系材料は、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはそれらの混合物である。結晶質炭素は、例えば、無定形、板状、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛である。非晶質炭素は、例えば、ソフトカーボン(soft carbon:低温焼成炭素)またはハードカーボン(hard carbon)、メゾ相ピッチ(mesophase pitch)炭化物、焼成されたコークスなどである。
【0112】
負極活物質、導電材、バインダ及び溶媒の含量は、リチウム電池で通常使用されるレベルである。リチウム電池の用途及び構成によって前記導電材、バインダ及び溶媒のうち、1つ以上の省略が可能である。
【0113】
負極に使用されるバインダ含量は、例えば、負極活物質層の総重量の0.1wt%~10wt%または0.1wt%~5wt%でもある。負極に使用される導電材含量は、例えば、負極活物質層の総重量の0.1wt%~10wt%または0.1wt%~5wt%でもある。負極に使用される負極活物質含量は、例えば、負極活物質層の総重量の80wt%~99wt%、90wt%~99wt%または95wt%~99wt%でもある。負極活物質がリチウム金属である場合、負極は、バインダ及び導電材を含まない。
【0114】
次いで、前記正極と負極との間に挿入されるセパレータが設けられる。
【0115】
セパレータは、リチウム電池で通常使用されるものであれば、いずれも使用可能である。セパレータとしては、例えば、電解質のイオン移動に対して低抵抗でありながら、電解液含浸能に優れたものが使用される。セパレータは、例えば、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)またはそれらの組み合わせ物のうちから選択されたものであって、不織布または織布形態である。リチウムイオン電池には、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのような巻取可能なセパレータが使用され、リチウムイオンポリマー電池には、有機電解液含浸能に優れたセパレータが使用される。
【0116】
セパレータは、下記の例示的な方法によって製造されるが、必ずしもそのような方法に限定されず、要求される条件によって調節される。
【0117】
まず、高分子樹脂、充填剤及び溶媒を混合してセパレータ組成物が準備される。セパレータ組成物が電極上部に直接コーティング及び乾燥されてセパレータが形成される。それと異なって、セパレータ組成物が支持体上にキャスティング及び乾燥された後、前記支持体から剥離させたセパレータフィルムが電極上部にラミネーションされてセパレータが形成される。
【0118】
セパレータ製造に使用される高分子は、特に限定されず、電極板の結合材に使用される高分子であれば、いずれも使用可能である。例えば、フッ化ビニリデン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートまたはそれらの混合物などが使用される。
【0119】
次いで、電解質が準備される。
【0120】
電解質は、例えば、有機電解液である。有機電解液は、例えば、有機溶媒にリチウム塩が溶解されて製造される。
【0121】
有機溶媒は、当該技術分野で有機溶媒として使用するものであれば、いずれも使用可能である。有機溶媒は、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、メチルエチルカーボネート、メチルプロピルカーボネート、エチルプロピルカーボネート、メチルイソプロピルカーボネート、ジプロピルカーボネート、ジブチルカーボネート、ベンゾニトリル、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、γ-ブチロラクトン、ジオキソラン、4-メチルジオキソラン、N,N-ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジオキサン、1,2-ジメトキシエタン、スルホラン、ジクロロエタン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ジエチレングリコール、ジメチルエーテルまたはそれらの混合物である。
【0122】
リチウム塩も当該技術分野でリチウム塩として使用するものであれば、いずれも使用可能である。リチウム塩は、例えば、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiClO、LiCFSO、Li(CFSON、LiCSO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(但し、x、yは、それぞれ1~20の自然数)、LiCl、LiIまたはそれらの混合物である。
【0123】
また、電解質は、固体電解質である。固体電解質は、例えば、ホウ素酸化物、リチウムオキシナイトライドなどであるが、それらに限定されず、当該技術分野で固体電解質として使用するものであれば、いずれも使用可能である。固体電解質は、例えば、スパッタリングなどの方法で前記負極上に形成されるか、別途の固体電解質シートが負極上に積層される。
【0124】
固体電解質は、例えば、酸化物系固体電解質または、硫化物系固体電解質である。
【0125】
固体電解質は、例えば、酸化物系固体電解質である。酸化物系固体電解質は、Li1+x+yAlTi2-xSi3-y12(0<x<2、0≦y<3)、BaTiO、Pb(Zr,Ti)O(PZT)、Pb1-xLaZr1-yTi(PLZT)(O≦x<1、O≦y<1)、PB(MgNb2/3)O-PbTiO(PMN-PT)、HfO、SrTiO、SnO、CeO、NaO、MgO、NiO、CaO、BaO、ZnO、ZrO、Y、Al、TiO、SiO、LiPO、LiTi(PO(0<x<2、0<y<3)、LiAlTi(PO(0<x<2、0<y<1、0<z<3)、Li1+x+y(Al、Ga)(Ti、Ge)2-xSi3-y12(0≦x≦10≦y≦1)、LiLaTiO(0<x<2、0<y<3)、LiO、LiOH、LiCO、LiAlO、LiO-Al-SiO-P-TiO-GeO、Li3+xLa12(M=Te、Nb、またはZr、xは、1~10の整数)のうちから選択された1つ以上である。固体電解質は、焼結法などによって作製される。例えば、酸化物系固体電解質は、LiLaZr12(LLZO)及びLi3+xLaZr2-a12(M doped LLZO、M=Ga、W、Nb、Ta、またはAl、xは、1~10の整数)のうちから選択されたガーネット系(Garnet-type)固体電解質である。
【0126】
硫化物(sulfide)系固体電解質は、例えば、硫化リチウム、硫化ケイ素、硫化リン、硫化ホウ素またはそれらの組合わせを含みうる。硫化物系固体電解質粒子は、LiS、P、SiS、GeS、Bまたはそれらの組合わせを含みうる。硫化物系固体電解質粒子は、LiSまたはPでもある。硫化物系固体電解質粒子は、他の無機化合物に比べて高いリチウムイオン伝導度を有すると知られている。例えば、硫化物系固体電解質は、LiS及びPを含む。硫化物系固体電解質を構成する硫化物固体電解質材料がLiS-Pを含む場合、LiS:Pの混合モル比は、例えば、約50:50~約90:10の範囲でもある。また、LiPO、ハロゲン、ハロゲン化合物、Li2+2xZn1-xGeO(LISICON、0≦x<1)、Li3+yPO4-xx(LIPON、0<x<4、0<y<3)、Li3.25Ge0.250.75(ThioLISICON)、LiO-Al-TiO-P(LATP)などをLiS-P、SiS、GeS、B、またはそれらの組合わせの無機固体電解質に添加して製造された無機固体電解質が、硫化物固体電解質として使用されうる。硫化物固体電解質材料の非制限的な例は、LiS-P;LiS-P-LiX(X=ハロゲン元素);LiS-P-LiO;LiS-P-LiO-LiI;LiS-SiS;LiS-SiS-LiI;LiS-SiS-LiBr;LiS-SiS-LiCl;LiS-SiS-B-LiI;LiS-SiS-P-LiI;LiS-B;LiS-P-Z(0<m<10、0<n<10、Z=Ge、ZnまたはGa);LiS-GeS;LiS-SiS-LiPO;及びLiS-SiS-LiMO(0<p<10、0<q<10、M=P、Si、Ge、B、Al、GaまたはIn)を含む。これと関連して、硫化物系固体電解質材料は、硫化物系固体電解質物質の原料開始物質(例えば、LiS、Pなど)を溶融焼入れ法(melt quenching method)、機械的ミーリング法などによって処理することで製造されうる。また、焼成(calcinations)工程が前記処理後に遂行されうる。硫化物系固体電解質は、非晶質、結晶質、またはそれらが混合された状態でもある。
【0127】
図6を参照すれば、一実施形態によるリチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。正極3、負極2及びセパレータ4が巻き取られたり折り畳まれたりして電池構造体7を形成する。形成された電池構造体7が電池ケース5に収容される。電池ケース5に有機電解液が注入され、キャップ(cap)アセンブリー6に密封されてリチウム電池1が完成される。電池ケース5は、円筒状からなっているが、必ずしもそのような形態に限定されず、例えば、角形、薄膜状などからなってもよい。
【0128】
図7を参照すれば、一実施形態によるリチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。正極3と負極2との間にセパレータ4が配置され、正極3、負極2及びセパレータ4が巻回または折り畳まれて電池構造体7を形成する。形成された電池構造体7が電池ケース5に収容される。電池構造体7で形成された電流を外部に誘導するための電気的通路の役割を行う電極タブ8を含んでもよい。電池ケース5に有機電解液が注入され、密封されてリチウム電池1が完成される。電池ケース5は、角状であるが、必ずしもそのような形態に限定されず、例えば、円筒状、薄膜状などでもある。
【0129】
図8を参照すれば、一実施形態によるリチウム電池1は、正極3、負極2及びセパレータ4を含む。正極3と負極2との間にセパレータ4が配置されて電池構造体が形成される。電池構造体7がバイセル構造によって積層された(stacked)後、電池ケース5に収容される。電池構造体7で形成された電流を外部に誘導するための電気的通路の役割を行う電極タブ8を含んでもよい。電池ケース5に有機電解液が注入され、密封されてリチウム電池1が完成される。電池ケース5は、角状であるが、必ずしもそのような形態に限定されず、例えば、円筒状、薄膜状などでもある。
【0130】
パウチ型リチウム電池は、図6ないし図8のリチウム電池において電池ケースとしてパウチを使用したものにそれぞれ該当する。パウチ型リチウム電池は、1つ以上の電池構造体を含む。正極と負極との間にセパレータが配置されて電池構造体が形成される。電池構造体がバイセル構造によって積層された後、有機電解液に含浸され、パウチに収容及び密封されてパウチ型リチウム電池が完成される。例えば、図示されていないが、上述した正極、負極及びセパレータが単純積層されて電極組立体の形態にパウチに収容されるか、ゼリーロール型電極組立体として巻き取られるか、折り畳まれた後、パウチに収容される。次いで、パウチに有機電解液が注入され、密封されてリチウム電池が完成される。
【0131】
リチウム電池は、寿命特性及び高率特性に優れるので、例えば、電気車両(electric vehicle、EV)に使用される。例えば、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に使用される。また、多量の電力保存が要求される分野に使用される。例えば、電気自転車、電動工具などに使用される。
【0132】
リチウム電池は、複数個積層されて電池モジュールを形成し、複数の電池モジュールが電池パックを形成する。そのような電池パックは、高容量及び高出力が要求される全ての機器に使用されうる。例えば、ノート型パソコン、スマートフォン、電気車両などに使用されうる。電池モジュールは、例えば、複数の電池とそれらを保持するフレームを含む。電池パックは、例えば、複数の電池モジュールとそれらを連結するバスバー(bus bar)を含む。電池モジュール及び/または電池パックは、冷却装置をさらに含みうる。複数の電池パックが電池管理システムによって調節される。電池管理システムは、電池パック、及び電池パックに連結された電池制御装置を含む。
【0133】
さらに他の一実施形態による複合正極活物質の製造方法は、第1リチウム金属酸化物を提供する段階と、第2リチウム金属酸化物を提供する段階と、複合体を提供する段階と、第2炭素系材料を提供する段階と、前記第1リチウム遷移金属酸化物と複合体と第2炭素系材料とを機械的にミーリングして得られる第1コア/シェル構造体、及び前記第2リチウム遷移金属酸化物と複合体と第2炭素系材料とを機械的にミーリングして得られる第2コア/シェル構造体を準備する段階と、前記第1コア/シェル構造体と前記第2コア/シェル構造体とを混合する段階と、を含み、前記複合体が化学式M(0<a≦3、0<b<4、aが1、2、または3であれば、bは、整数ではない)で表示される1種以上の第1金属酸化物、及び第1炭素系材料を含み、前記第1金属酸化物が第1炭素系材料マトリックス内に配置され、前記Mは、元素周期律表2族ないし13族、第15族及び16族のうちから選択された1つ以上の金属であり、前記第2炭素系材料が縦横比10以上の繊維状炭素系材料を含み、前記第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有し、前記第2リチウム遷移金属酸化物が粒径1μm以上の1次粒子を含む。
【0134】
第1リチウム遷移金属酸化物が提供される。第1リチウム遷移金属酸化物は、例えば、上述した化学式1ないし8で表示される化合物である。第2リチウム遷移金属酸化物が提供される。第2リチウム遷移金属酸化物は、例えば、上述した化学式1ないし8で表示される化合物である。第1リチウム遷移金属酸化物と前記第2リチウム遷移金属酸化物とが互いに異なる粒径を有する。例えば、第1リチウム遷移金属酸化物の粒径が第2リチウム遷移金属酸化物の粒径に比べてさらに大きい。第2リチウム遷移金属酸化物は、例えば、粒径1μm以上の1次粒子である単一(one body)粒子である。
【0135】
複合体が提供される。複合体を提供する段階は、例えば、金属酸化物を含む構造体に炭素供給源気体からなる反応ガスを供給し、熱処理して複合体を提供する段階を含む。複合体を提供する段階は、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2または3の場合、bが整数)で表示される1種以上の第2金属酸化物に炭素供給源気体からなる反応ガスを供給し、熱処理して複合体を製造する段階を含み、前記Mは、元素周期律表第2族ないし第13族、第15族及び第16族のうちから選択された1つ以上の金属である。
【0136】
炭素供給源ガスは、下記化学式9で表示される化合物からなるガスであるか、または下記化学式9で表示される化合物と、下記化学式10で表示される化合物と、下記化学式11で表示される酸素含有気体とからなる群から選択された1つ以上の混合ガスである。
【0137】
[化学式9]
(2n+2-a)[OH]
前記化学式9において、nは、1~20、aは、0または1であり、
[化学式10]
2n
前記化学式10において、nは、2~6であり、
[化学式11]

前記化学式11において、xは、0または1~20の整数であり、yは、0または1~20の整数であり、zは、1または2である。
【0138】
化学式9で表示される化合物及び化学式10で表示される化合物は、メタン、エチレン、プロピレン、メタノール、エタノール、プロパノールからなる群から選択された1つ以上である。化学式11で表示される酸素含有気体は、例えば、二酸化炭素(CO)及び一酸化炭素(CO)、水蒸気(HO)またはその混合物を含む。
【0139】
(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される第2金属酸化物に炭素供給源気体からなる反応ガスを供給して熱処理する段階以後に、窒素、ヘリウム及びアルゴンからなる群から選択された1つ以上の不活性気体を用いた冷却段階をさらに経る。冷却段階は、常温(20-25℃)に調節する段階を言う。炭素供給源気体は、窒素、ヘリウム、アルゴンからなる群から選択された1つ以上の不活性気体を含んでもよい。
【0140】
複合体の製造方法において、気相反応による炭素系材料、例えば、グラフェンの成長過程は、多様な条件で遂行されうる。
【0141】
第1条件によれば、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される第2金属酸化物が配置された反応器にまずメタンを供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分~4時間であり、熱処理温度Tは、700℃~1100℃範囲である。熱処理温度Tで反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4時間~8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させて複合体を製造する。熱処理温度Tから常温までの冷却過程における所要時間は、例えば、1時間~5時間である。
【0142】
第2条件によれば、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される第2金属酸化物が配置された反応器にまず水素を供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分~4時間であり、熱処理温度Tは、700℃~1100℃範囲である。熱処理温度Tにおいて一定反応時間の間、熱処理した後、メタンガスを供給し、残余反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4時間~8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させて複合体を製造する。冷却する過程で窒素を供給する。熱処理温度Tから常温までの冷却過程における所要時間は、例えば、1時間~5時間である。
【0143】
第3条件によれば、例えば、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される第2金属酸化物が配置された反応器にまず水素を供給し、熱処理温度Tまで昇温処理する。熱処理温度Tまでの昇温時間は、10分~4時間であり、熱処理温度Tは、700℃~1100℃範囲である。熱処理温度Tにおいて一定反応時間の間、熱処理した後、メタンと水素の混合ガスを供給し、残余反応時間の間、熱処理を実施する。反応時間は、例えば、4時間~8時間である。熱処理された結果物を常温に冷却させて複合体を製造する。冷却過程で窒素を供給する。熱処理温度Tから常温までの冷却過程における所要時間は、例えば、1時間~5時間である。
【0144】
複合体を製造する過程において、炭素供給源気体が水蒸気を含む場合、非常に優秀な伝導度を有する複合体を得る。気体混合物内の水蒸気の含量は、制限されず、例えば、炭素供給源気体の全体100体積%を基準として、0.01体積%~10体積%である。炭素供給源気体は、例えば、メタン、メタンと不活性気体とを含む混合気体、またはメタンと酸素含有気体とを含む混合気体である。
【0145】
炭素供給源気体は、例えば、メタン;メタンと二酸化炭素との混合気体;またはメタンと二酸化炭素と水蒸気との混合気体;でもある。メタンと二酸化炭素の混合気体でメタンと二酸化炭素のモル比は、約1:0.20~1:0.50、約1:0.25~1:0.45、または約1:0.30~1:0.40である。メタンと二酸化炭素と水蒸気の混合気体においてメタンと二酸化炭素と水蒸気とのモル比は、約1:0.20~0.50:0.01ないし1.45、約1:0.25~0.45:0.10~1.35、または約1:0.30~0.40:0.50~1.0である。
【0146】
炭素供給源気体は、例えば、一酸化炭素または二酸化炭素である。炭素供給源気体は、例えば、メタンと窒素との混合気体である。メタンと窒素との混合気体においてメタンと窒素とのモル比は、約1:0.20~1:0.50、約1:0.25~1:0.45、または約1:0.30~1:0.40である。炭素供給源気体は、窒素のような不活性気体を含まない。
【0147】
熱処理圧力は、熱処理温度、気体混合物の組成及び所望の炭素コーティング量などを考慮して選択することができる。熱処理圧力は、流入される気体混合物の量と流出される気体混合物の量とを調整して制御することができる。熱処理圧力は、例えば、0.5atm以上、1atm以上、2atm以上、3atm以上、4atm以上、または5atm以上である。熱処理圧力は、例えば、0.5atm~10atm、1atm~10atm、2atm~10atm、3atm~10atm、4atm~10atm、または5atm~10atmである。
【0148】
熱処理時間は、特に制限されず、熱処理温度、熱処理時の圧力、気体混合物の組成及び所望の炭素コーティング量によって適切に調節することができる。例えば、熱処理温度における反応時間は、例えば、10分~100時間、30分~90時間、または50分~40時間である。例えば、熱処理時間が増加するほど沈積される炭素量、例えば、グラフェン(炭素)量が多くなり、これにより、複合体の電気的物性が向上しうる。但し、そのような傾向は、必ずしも時間に正比例するものではない。例えば、所定時間経過後には、それ以上の炭素沈積、例えば、グラフェン沈積が起こらないか、沈積率が低くなりうる。
【0149】
上述した炭素供給源気体の気相反応を通じて、比較的低い温度でも、M(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される第2金属酸化物及びその還元生成物であるM(0<a≦3、0<b<4、aは、1、2、または3であり、bは、整数ではない)で表示される第1金属酸化物のうちから選択された1つ以上に均一な炭素系材料のコーティング、例えば、グラフェンコーティングを提供することにより、複合体が得られる。
【0150】
複合体は、例えば、球状構造(spherical structure)、複数の球状構造(spherical structure)が連結された螺旋形構造(spiral structure)、複数の球状構造(spherical structure)が凝集されたクラスタ構造(cluster structure)及びスポンジ構造(sponge structure)のうちから選択された1つ以上の構造を有する炭素系材料のマトリックス、例えば、グラフェンマトリックスと前記グラフェンマトリックス内に配置されるM(0<a≦3、0<b<4、aは、1、2、または3であり、bは、整数ではない)で表示される第1金属酸化物及びM(0<a≦3、0<c≦4、aが1、2、または3であれば、cは、整数である)で表示される第2金属酸化物のうちから選択された1つ以上を含む。
【0151】
次いで、第1リチウム遷移金属酸化物と複合体とを機械的にミーリング(milling)して第1コア/シェル構造体を製造する。ミーリング時にノビルタミキサーなどを使用することができる。ミーリング時のミキサーの回転数は、例えば、1000rpm~5000rpmである。ミーリング時間は、例えば、5分~100分である。第1リチウム遷移金属酸化物と複合体の機械的ミーリング(milling)に使用される第2複合体の平均粒径(D50)は、例えば、50nm~200nm、100nm~300nm、または200nm~500nmである。機械的にミーリングする段階においてミーリング方法は、特に限定されず、リチウム遷移金属酸化物と複合体を機械を使用して接触させる方法であって、当該技術分野で使用可能な方法であれば、いずれも使用可能である。
【0152】
また、第2リチウム遷移金属酸化物と複合体を機械的にミーリング(milling)して第2コア/シェル構造体を製造する。第1リチウム遷移金属酸化物の代わりに、第1リチウム遷移金属酸化物が使用されることを除き、第1コア/シェル構造体の製造方法と同様に、第2コア/シェル構造体を製造することができる。
【0153】
次いで、第1コア/シェル構造体と第2リチウム金属酸化物とを混合して複合正極活物質を製造する。第1コア/シェル構造体と第2リチウム遷移金属酸化物との混合は、重量比で、例えば、90:10~60:40、85:15~65:35、または80:20~70:30でもある。第1コア/シェル構造体と第2リチウム遷移金属酸化物がそのような範囲の重量比を有することにより、複合正極活物質を含むリチウム電池のエネルギー密度及び/またはサイクル特性がさらに向上しうる。
【0154】
以下の実施例及び比較例を通じて本発明がさらに詳細に説明される。但し、実施例は、本発明を例示するためのものであって、それらによってのみ本発明の範囲が限定されるものではない。
【0155】
(複合体の製造)
製造例1:Al @Gr複合体
Al粒子(平均粒径:約20nm)を反応器内に位置させた後、反応器内でCHを約300sccm、1atmで約30分間供給する条件で反応器の内部温度を1000℃に上昇させた。
【0156】
次いで、前記温度で7時間保持して熱処理を遂行した。次いで、反応器の内部温度を常温(20-25℃)に調節し、Al粒子及びその還元生成物であるAl(0<z<3)粒子がグラフェンに埋め込まれた複合体を得た。
【0157】
複合体が含むアルミナ含量は、60wt%であった。
【0158】
比較製造例1:SiO @Gr複合体
SiO粒子(平均粒径:約15nm)を反応器内に位置させた後、反応器内でCHを約300sccm、1atmで約30分間供給する条件で反応器の内部温度を1000℃に上昇させた。
【0159】
次いで、前記温度で7時間保持して熱処理を遂行した。次いで、反応器の内部温度を常温(20~25℃)に調節し、SiO粒子及びその還元生成物であるSiO(0<y<2)粒子がグラフェンに埋め込まれた複合体を得た。
【0160】
(複合正極活物質の製造)
実施例1:Al @Gr複合体0.15wt%(アルミナ0.09wt%)及びCNT 0.05wt%コーティング大径NCA91及びAl @Gr複合体0.15wt%(アルミナ0.09wt%)及びCNT 0.05wt%コーティング小径単一粒子(one body)NCA91
平均粒径10μmの大径LiNi0.91Co0.05Al0.04(以下、大径NCA91と称する)と製造例1で準備された複合体と炭素ナノチューブ(以下、CNTと称する)をノビルタミキサー(Nobilta Mixer、Hosokawa、Japan)を用いて、約1000~2000rpmの回転数で約5~30分間ミーリングを実施して第1コア/シェル構造体を得た。大径NCA91と製造例1によって得た複合体とCNTとの混合重量比は、99.8:0.15:0.05であった。大径NCA91は、複数の1次粒子が凝集された2次粒子である。
【0161】
平均粒径3μmの小径LiNi0.91Co0.05Al0.04(以下、小径NCA91と称する)と製造例1で準備された複合体とCNTをノビルタミキサー(Nobilta Mixer、Hosokawa、Japan)を用いて、約1000~2000rpmの回転数で約5~30分間ミーリングを実施して第2コア/シェル構造体を得た。小径NCA91と製造例1によって得た複合体とCNTとの混合重量比は、99.8:0.15:0.05であった。小径NCA91は、単一(one body)粒子状を有し、単結晶構造を有する粒子である。
【0162】
第1コア/シェル構造体と第2コア/シェル構造体を7:3重量比で混合して複合正極活物質を製造した。
【0163】
粒子サイズ分析器(particle size analyzer、PSA)を使用して粒度分布を測定した結果、複合正極活物質は、バイモーダル(bimodal)粒度分布を有することを確認した。
【0164】
図3に示されたように、第1コア/シェル構造体の大径NCA91 2次粒子の表面に炭素ナノチューブが配置されることを確認した。炭素ナノチューブは、炭素ナノチューブ1次構造体、及び複数の炭素ナノチューブ単位体が凝集されて形成された炭素ナノチューブ2次構造体を含んでいる。炭素ナノチューブ1次構造体は、1つの炭素ナノチューブ単位体からなる。炭素ナノチューブ単位体の長さは、200nm~300nmであり、炭素ナノチューブの直径は、約10nmであった。炭素ナノチューブ2次構造体は、複数の炭素ナノチューブ単位体が凝集されて形成された。炭素ナノチューブ2次構造体の長さは、500nm以上であり、直径は、約40nmであった。
【0165】
図2に示されたように、第2コア/シェル構造体の小径NCA91単一(one body)粒子表面に炭素ナノチューブが配置されることを確認した。炭素ナノチューブは、炭素ナノチューブ1次構造体を含んでいる。
【0166】
実施例2:Al @Gr複合体0.17wt%及びCNT 0.03wt%コーティング大径NCA91及びAl @Gr複合体0.17wt%及びCNT 0.03wt%コーティング小径単一粒子NCA91
複合体と炭素ナノチューブとの混合比を0.15:0.05から0.17:0.03に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0167】
実施例3:Al @Gr複合体0.19wt%及びCNT 0.01wt%コーティング大径NCA91及びAl @Gr複合体0.19wt%及びCNT 0.01wt%コーティング小径単一粒子NCA91
複合体と炭素ナノチューブとの混合比を0.15:0.05から0.19:0.01に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0168】
実施例4:Al @Gr複合体0.10wt%及びCNT 0.10wt%コーティング大径NCA91及びAl @Gr複合体0.10wt%及びCNT 0.10wt%コーティング小径単一粒子NCA91
複合体と炭素ナノチューブとの混合比を0.15:0.05から0.10:0.10に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0169】
比較例1:bare大径NCA91及びbare小径単一粒子NCA91
第1コア/シェル構造体の代わりに、大径NCA91をそのまま使用し、第2コア/シェル構造体の代わりに、小径NCA91をそのまま使用したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0170】
比較例2:Al @Gr複合体0.15wt%(アルミナ0.09wt%)及びCNT 0.05wt%コーティング大径NCA91及びAl @Gr複合体0.15wt%(アルミナ0.09wt%)及びCNT 0.05wt%コーティング小径2次粒子NCA91
単一(one body)粒子である小径NCA91の代わりに、複数の1次粒子が凝集された2次粒子である小径NCA91を使用したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0171】
比較例3:Al @Gr複合体0.2wt%単独コーティング大径NCA91及びAl @Gr複合体0.2wt%単独小径単一粒子NCA91
複合体と炭素ナノチューブとの混合比を0.15:0.05から0.20:0に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0172】
比較例4:CNT 0.2wt%単独コーティング大径NCA91及びCNT 0.2wt%単独コーティング小径単一粒子NCA91
複合体と炭素ナノチューブとの混合比を0.15:0.05から0:0.2に変更したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0173】
比較例5:SiO @Gr複合体0.15wt%(シリカ0.09wt%)及びCNT 0.05wt%コーティング大径NCA91及びSiO @Gr複合体0.15wt%(シリカ0.09wt%)及びCNT 0.05wt%コーティング小径単一粒子NCA91
製造例1で製造されたAl@Gr複合体の代わりに、比較製造例1で製造されたSiO@Gr複合体を使用したことを除き、実施例1と同様の方法で複合正極活物質を製造した。
【0174】
(リチウム電池(half cell)の製造、湿式)
実施例5
(正極の製造)
実施例1で製造された複合正極活物質、炭素導電材、及びポリフッ化ビニリデン(PVdF)を98.85:0.5:0.65の重量比で混合した混合物を、N-メチルピロリドン(NMP)と共にメノウ乳鉢で混合してスラリーを製造した。
【0175】
炭素導電材は、炭素ナノチューブ(CNT)とケッチェンブラック(ECP)の7:3重量比混合物を使用した。
【0176】
15μm厚さのアルミニウム集電体上に前記スラリーをバーコーティング(bar coating)し、常温で乾燥した後、真空、120℃の条件でもう一回乾燥し、圧延及びパンチングして60μm厚さの正極を製造した。
【0177】
(コインセルの製造)
前記で製造された正極を使用し、リチウム金属を相対電極とし、PTFE隔離膜(separator)と1.5 M LiPFがEC(エチレンカーボネート)+EMC(エチルメチルカーボネート)+DMC(ジメチルカーボネート)(2:1:7体積比)に溶けている溶液を電解質として使用して、コインセルをそれぞれ製造した。
【0178】
実施例6ないし8
実施例1で製造された複合正極活物質の代わりに、実施例2ないし4で準備された複合正極活物質をそれぞれ使用したことを除き、実施例5と同様の方法でコインセルを製造した。
【0179】
比較例6ないし10
実施例1で製造された複合正極活物質の代わりに、比較例1ないし5で準備された複合正極活物質をそれぞれ使用したことを除き、実施例5と同様の方法でコインセルを製造した。
【0180】
評価例1:XPSスペクトル評価
製造例1で製造された複合体の製造過程で時間経過によるQuantum 2000 (Physical Electronics)を使用してXPSスペクトルを測定した。昇温前、1分経過後、5分経過後、30分経過後、1時間経過後、及び4時間経過後の試料に対するC 1sオービタル及びAl 2pオービタルのXPSスペクトルをそれぞれ測定した。昇温初期には、Al 2pオービタルに対するピークのみ観察され、C 1sオービタルに係わるピークは観察されていない。30分経過後には、C 1sオービタルに係わるピークが明確に観察され、Al 2pオービタルに係わるピークの大きさが顕著に減少した。
【0181】
30分経過後には、284.5eV近傍でグラフェンの成長によるC-C結合及びC=C結合に起因したC 1sオービタルに対するピークが明確に観察された。
【0182】
反応時間が経過することにより、アルミニウムの酸化数が減少し、Al 2pオービタルのピーク位置がさらに低い結合エネルギー(binding energy、eV)側にシフトした。
【0183】
したがって、反応が進むにつれて、Al粒子上にグラフェンが成長し、Alの還元生成物であるAl(0<x<3)が生成されることを確認した。
【0184】
製造例1で製造された複合体試料の10個の領域でのXPS分析結果を通じて炭素及びアルミニウムの平均含量を測定した。測定結果に対して、各領域別アルミニウム含量の偏差(deviation)を計算した。アルミニウム含量の偏差を平均値に対する百分率で示し、それを均一度(uniformity)と称する。アルミニウム含量の偏差の平均値に対する百分率、すなわち、アルミニウム含量の均一度(uniformity)は、1%であった。したがって、製造例1で製造れた複合体内にアルミナが均一に分布されることを確認した。
【0185】
評価例2:SEM、HR-TEM及びSEM-EDS分析
製造例1で製造された複合体、実施例1で製造された第1コア/シェル構造体及び比較例1で製造されたbare大径NCA91に対する走査電子顕微鏡、高解像度透過電子顕微鏡及びEDS (Energy-dispersive X-ray spectroscopy)分析を遂行した。
【0186】
SEM-EDS分析時、Philips社のFEI Titan 80-300を使用した。
【0187】
製造例1で製造された複合体は、Al粒子及びその還元生成物であるAl(0<z<3)粒子がグラフェンに埋め込まれた構造を有することを示した。Al粒子及びAl(0<z<3)のうちから選択された1つ以上の粒子の外郭にグラフェン層が配置されることを確認した。Al粒子及びAl(0<z<3)のうちから選択された1つ以上の粒子は、グラフェンマトリックス内に均一に分散された。Al粒子及びAl(0<z<3)粒子のうち1つ以上の粒径は、約20nmであった。製造例1で製造された複合体の粒径は、約50nm~200nmであった。
【0188】
実施例1で製造された第1コア/シェル構造体で、大径NCA91コア上に、グラフェンを含む複合体によって形成されたシェル(shell)が配置されることを確認した。
【0189】
比較例1のbare大径NCA91及び実施例1で製造された第1コア/シェル構造体に対するSEM-EDSマッピング(mapping)分析において、比較例1のbare NCA91表面に比べて、実施例1の第1コア/シェル構造体表面に分布されたアルミニウム(Al)の濃度が増加することを確認した。実施例1の第1コア/シェル構造体で、大径NCA91コア上に製造例1で製造された複合体がコーティングされてシェル(shell)を形成することを確認した。
【0190】
評価例3:XPSスペクトル評価(グラフェン-NCA化学結合)
製造例1で製造された複合体、比較例1のbare大径NCA91、及び実施例1で製造された第1コア/シェル構造体に対してQuantum 2000 (Physical Electronics)を使用してO1sオービタルに係わるXPSスペクトルを測定し、その結果を図4に示した。
【0191】
図4に示されたように、実施例1の複合正極活物質では、530.2eV近傍でC-O-Ni結合によるピークが観察された。そのようなピークは、NCA91表面に存在するNiO相(phase)とグラフェン(graphene)のカーボンとの間に形成された結合に起因したピークと判断された。したがって、コア上に形成されたシェルに含まれたグラフェンが、コアに含まれた遷移金属であるNiと共有結合を形成することを確認した。
【0192】
評価例4:ラマンスペクトル評価(グラフェン-NCA化学結合)
製造例1で製造された複合体、及び実施例1で製造された第1コア/シェル構造体に対してラマンスペクトルを測定し、その結果を図5に示した。
【0193】
図5に示されたように、製造例1で製造された複合体は、グラフェンに起因した1338.7cm-1でのDバンドピーク及び1575.0cm-1でのGバンドピークを示した。
【0194】
これに対して、実施例1の第1コア/シェル構造体では、グラフェンを含むシェルに比べて、Dバンドピークが1351.3cm-1と、約12cm-1シフトし、Gバンドピークが1593.6cm-1と、約18cm-1シフトした。
【0195】
Dバンドピークのシフトは、ミーリングによってコア上に結合されてシェルを形成するグラフェンのストレイン(strain)に起因したものと判断された。
【0196】
Gバンドピークのシフトは、コアとグラフェンとがC-O-Ni結合による複合体を形成することにより、そのような複合体でコアとグラフェンとの電荷伝達(charge transfer)によるものと判断された。
【0197】
したがって、コア上に形成されたシェルに含まれるグラフェンは、コアに含まれる遷移金属であるNiと共有結合を形成することを確認した。
【0198】
評価例4:高温(45℃)充放電特性評価
実施例5ないし8及び比較例6ないし10で製造されたリチウム電池を25℃で0.1C rateの電流で電圧が4.3V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.3Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.1C rateの定電流で放電した(化成(formation)サイクル)。
【0199】
化成サイクルを経たリチウム電池を45℃で0.2C rateの電流で電圧が4.3V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.3Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.2C rateの定電流で放電した(1stサイクル)。そのようなサイクルを50thサイクルまで同じ条件で繰り返した。
【0200】
全ての充放電サイクルにおいて1回の充電/放電サイクル後、10分間の休止期間を置いた。高温充放電実験結果の一部を下記表1に示した。初期効率は、下記数式1のように定義され、容量維持率は、下記数式2のように定義される。
【0201】
[数式1]
初期効率[%]=[1stサイクルでの放電容量/1stサイクルでの充電容量]×100
【0202】
[数式2]
容量維持率[%]=[50thサイクルでの放電容量/1stサイクルでの放電容量]×100
【0203】
【表1】
【0204】
表1に示されたように、実施例5ないし8のリチウム電池は、比較例6、8及び9のリチウム電池に比べて高温寿命特性が向上した。
【0205】
比較例9のリチウム電池は、高温寿命特性が最も劣った。比較例9のリチウム電池の製造過程で、NCA91コア上にCNTのみが配置された複合正極活物質を含む正極形成用スラリーでコーティング層のCNTがコアから脱離されることにより、正極活物質層の均一性が低下したからであると判断された。
【0206】
表1に示されていないが、比較例7及び比較例10のリチウム電池は、実施例5のリチウム電池に比べて高温寿命特性が劣った。
【0207】
比較例7のリチウム電池において、小径NCA91粒子として2次粒子を使用することにより、充放電が行われる間に、粒子表面抵抗の増加によって小径NCA91粒子が急に劣化されたからであると判断された。
【0208】
比較例10のリチウム電池において、NCA91コア上に配置されるSiO@Gr複合体の高電圧安定性が劣ったからであると判断された。
【0209】
評価例5:高温充放電前後の直流内部抵抗(DC-IR、Direct Current Internal Resistance)評価
実施例5ないし8及び比較例6ないし10で製造されたリチウム電池に対して、高温充放電評価の前及び後に、直流内部抵抗(DC-IR)をそれぞれ下記方法で測定した。
【0210】
stサイクルで0.2Cの電流でSOC(state of charge)50%の電圧まで充電した後、3.0Cで10秒間定電流放電し、次いで、0.2Cで10秒間定電流放電した後、最後に3.0Cで10秒間放電させた。
【0211】
それぞれのC-rateで定電流放電する間の平均電圧変化(ΔV)及び平均電流変化(ΔI)の比率から直流内部抵抗(DC-IR、R=ΔV/ΔI)を計算し、それらの平均値を測定値とした。
【0212】
測定された高温充放電評価の前及び後の直流内部抵抗の測定結果の一部を、下記表2に示した。
【0213】
【表2】
【0214】
表2に示されたように、実施例5及び6のリチウム電池は、比較例6のリチウム電池に比べて、初期効率が向上し、直流内部抵抗増加が抑制された。
【0215】
表2に示されていないが、実施例7及び8のリチウム電池は、比較例6のリチウム電池に比べて、初期効率が向上し、直流内部抵抗増加が抑制された。
【0216】
評価例6:常温高率特性評価
実施例5ないし8及び比較例6ないし10で製造されたリチウム電池を25℃で0.1C rateの電流で電圧が4.3V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.3Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.1C rateの定電流で放電した(化成(formation)サイクル)。
【0217】
化成サイクルを経たリチウム電池を25℃で0.2C rateの電流で電圧が4.3V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.3Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.2C rateの定電流で放電した(1stサイクル)。
【0218】
stサイクルを経たリチウム電池を25℃で0.2C rateの電流で電圧が4.3V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.3Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで0.5C rateの定電流で放電した(2ndサイクル)。
【0219】
ndサイクルを経たリチウム電池を25℃で0.2C rateの電流で電圧が4.3V(vs.Li)に至るまで定電流充電し、次いで、定電圧モードで4.3Vを保持しながら、0.05C rateの電流でカットオフ(cut-off)した。次いで、放電時に電圧が2.8V(vs.Li)に至るまで1.0C rateの定電流で放電した(3rdサイクル)。
【0220】
全ての充放電サイクルで1回の充電/放電サイクル後、10分間の休止期間を置いた。高率特性実験結果の一部を下記表3に示した。高率特性は、下記数式3によって定義される。
【0221】
[数式3]
高率特性[%]=[1.0C rate放電容量(3thサイクル放電容量)/0.2C rate放電容量(1stサイクル放電容量)]×100
【0222】
【表3】
【0223】
表3に示されたように、実施例5ないし8のリチウム電池は、比較例6のリチウム電池に比べて高率特性が向上した。
【符号の説明】
【0224】
1 リチウム電池
2 負極
3 正極
4 セパレータ
5 電池ケース
6 キャップアセンブリー
7 電池構造体
8 電極タブ
10 コア
20 シェル
21 第1金属酸化物
22 第1炭素系材料
23 第2炭素系材料
100 コア/シェル構造体
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8