(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051126
(43)【公開日】2024-04-10
(54)【発明の名称】パターン形成された無機層、放射線によるパターン形成組成物、およびそれに対応する方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/004 20060101AFI20240403BHJP
【FI】
G03F7/004
G03F7/004 531
【審査請求】有
【請求項の数】26
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2024029096
(22)【出願日】2024-02-28
(62)【分割の表示】P 2022128000の分割
【原出願日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】61/350,103
(32)【優先日】2010-06-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】12/850,867
(32)【優先日】2010-08-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】511130955
【氏名又は名称】インプリア・コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Inpria Corporation
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132263
【弁理士】
【氏名又は名称】江間 晴彦
(74)【代理人】
【識別番号】100221501
【弁理士】
【氏名又は名称】式見 真行
(74)【代理人】
【識別番号】100197583
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 健
(72)【発明者】
【氏名】ジェイソン・ケイ・ストワース
(72)【発明者】
【氏名】アラン・ジェイ・テレキー
(72)【発明者】
【氏名】ダグラス・エイ・ケズラー
(72)【発明者】
【氏名】アンドリュー・グレンビル
(57)【要約】
【課題】
レジストとして使用される有機組成物に変わる良好なパターニングの結果をもたらす組成物を提供すること。
【解決手段】
安定化させた前駆体溶液が放射状無機コーティング材を形成するべく使用され得る。該前駆体溶液は、一般的に金属亜酸化物陽イオン、過酸化物系リガンド、および多原子陰イオンを含む。この前駆体溶液の高レベルの安定性を得るために前駆体溶液の設計をし得る。得られるコーティング材は、紫外線、X線放射線又は電子ビーム放射線のような選択された放射線によるパターニング用に設計され得る。この放射状パターン形成されたコーティング材が材料特性に関して高いコントラストを有し得ることによって、潜像の現像にきわめて低いライン幅粗さを有するラインおよびきわめて小さなピッチを有する隣接構造体をうまく形成し得る。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と、金属亜酸化物陽イオンと、多原子無機陰イオンと、過酸化物基を含んで成る感放射線リガンドとの混合物を含んで成る無機パターン形成前駆体水溶液であって、その組成は、金属亜酸化物陽イオンに対するリガンドのモル濃度比が少なくとも約2であり、前記前駆体溶液が、相分離に関して、更に混合されることなく少なくとも約2時間安定する、無機パターン形成前駆体水溶液。
【請求項2】
約0.01M~約1.4Mの金属亜酸化物陽イオン濃度を有し、前記金属亜酸化物陽イオン濃度の約0.5~約2倍の多原子無機陰イオン濃度を有する、請求項1に記載の水性無機パターン形成前駆体水溶液の組成物。
【請求項3】
前記金属亜酸化物陽イオンがHfO+2、ZrO+2、またはこれらの組合せを含んで成り、前記多原子陰イオンが硫酸塩を含んで成り、および前記多原子陰イオンがホウ酸塩、リン酸塩、タングステン酸塩、ケイ酸塩、またはこれらの組合せを含んで成る、請求項1に記載の水性無機パターン形成前駆体水溶液の組成物。
【請求項4】
金属亜酸化物陽イオンに対するリガンドのモル濃度比が少なくとも約5となっている、請求項1に記載の水性無機パターン形成前駆体水溶液の組成物。
【請求項5】
更に混合されることなく少なくとも約24時間の安定性を有する、請求項1に記載の水性無機パターン形成前駆体水溶液の組成物。
【請求項6】
感放射線無機コーティング前駆体溶液の形成方法であって、
金属亜酸化物陽イオンを含んで成る第一の水溶液、過酸化物基を有するリガンドを含んで成る錯体溶液および多原子無機陰イオンを含んで成る組成物とを混ぜ合わせて前記コーティング前駆体溶液を形成することを含んで成り、金属亜酸化物陽イオンに対するリガンドのモル濃度比が少なくとも約2となっている、方法。
【請求項7】
前記無機陰イオンを導入前に、前記第一の水溶液を前記錯体溶液と混合してリガンド-陽イオン混合溶液を形成し、前記多原子無機陰イオンを含んで成る溶液の添加前に前記リガンド-陽イオン混合溶液を少なくとも約5分間エージングする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
基板上に無機材料をパターン形成するための方法であって、
溶媒と、金属亜酸化物陽イオンと、過酸化物基を含んで成るリガンドと、無機多原子陰イオンとを含んで成る、放射線によるパターン形成可能なコーティング材の層を形成してコート基板を形成すること、
前記コート基板を加熱して前記溶媒の少なくとも一部を除去すること、
前記コート基板に放射線のパターンを照射して、照射された箇所のコーティングを縮合させること、および
前記コーティングを現像液と接触させる前に前記コート基板を少なくとも約45℃の温度にまで照射した後に加熱すること
を含んで成る方法。
【請求項9】
前記放射線として、紫外線または電子ビームが含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記金属亜酸化物陽イオンがHfO+2、ZrO+2、またはこれらの組合せを含んで成り、また前記多原子陰イオンが硫酸塩陰イオンを含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記コーティング材は、金属亜酸化物陽イオンに対するモル濃度比が少なくとも約5であるリガンドを含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
前記コーティング材の層が約1nm~約40nmの平均厚さを有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記コート基板を現像組成物にさらして、露光されていない箇所における前記コーティング組成物を少なくとも部分的に除去する工程をさらに含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
基板および前記基板の表面上にパターン形成された無機材料を有して成る構造体であって、前記パターン形成された無機材料が、約60nm以下のピッチで約2.25nm以下の平均ライン幅ラフネスを有するか、または個々のフィーチャについて約30nm以下の平均幅を有する、エッジを有している構造体。
【請求項15】
前記パターン形成された無機材料が、金属亜酸化物組成物を含んで成る、請求項14に記載の構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、参照により本明細書中に援用される同時係属中の“Photopatternable Inorganic Hardmask”という名称のStowersらの米国仮特許出願番号第61/350,103号に関する優先権を請求する。
【0002】
政府の権利に関する記述
本明細書中で説明される本発明の開発は、アメリカ科学財団研究(U.S. Nati
onal Science Foundation)資金DGE-0549503および
IIP-0912921による政府支援により少なくとも部分的に資金提供され、連邦政
府は本発明において一定の権利を有する。
【0003】
本発明は、デバイスの素子を形成するために使用され、および/又は他の材料のパターニングを容易にするためのレジストとして使用され得るパターン形成された無機層に関する。本発明はさらに、パターニングを行うための方法の基となる放射線、および放射線によりきわめて高い解像度でパターン形成され得るコーティングを形成するために堆積され得る前駆体溶液に関する。
【背景技術】
【0004】
半導体系デバイスおよび他の電子デバイスを形成する場合、構造を組み込むために一般的に材料をパターン形成する。したがって構造は一般的に様々な材料からパターンを形成する一連の蒸着およびエッチングステップの反復工程を通して形成される。この方法で非常に多くのデバイスを小さな面積中に形成し得る。該技術のいくつかの進歩は、性能を向上させるために望ましいデバイスの設置面積の低減を含み得る。
【0005】
放射線パターンを用いてそのパターンに対応する有機組成物の化学構造を変えるために、放射線でパターン形成されるレジストとして有機組成物を使用され得る。例えば、半導体ウェーハのパターニングのためのプロセスは、感放射線有機材料の薄膜からの所望の像のリソグラフィによる転写を必要とする。レジストのパターニングは、一般的に選択されたエネルギー源に、例えばマスクを介してレジストを露光して潜像を記録し、次いでレジストの選択された領域を現像し除去することを含む幾つかのステップを伴う。ポジ型レジストの場合には、露光領域がそのような領域を選択的に除去可能にするために変換され、一方、ネガ型レジストの場合には、未露光領域がより容易に除去可能である。
【0006】
一般的に放射線、反応性ガス、または溶液でパターンを現像してレジストの選択的感応性部分を除去し得、一方、レジストの他の部分は、保護用耐エッチング層として働く。しかしながら、像を効果的に現像するのには液状現像液を用い得る。保護用レジスト層の残りの領域においてウィンドウまたはギャップを介して基板を選択的にエッチングすることができる。また、保護用レジスト層の残りの領域において、その現像済みウィンドウまたはギャップを介して所望の材料を下にある基板の露光された領域中に堆積させ得る。最後にその保護用レジスト層を除去する。この過程を繰り返してパターン形成された材料の追加の層を形成し得る。化学蒸着法、物理蒸着法、又は他の所望の手法を用いる事で、これら機能性無機材料を堆積し得る。導電性材料の蒸着またはドーパントの注入のような追加の加工ステップを用い得る。ミクロ加工およびナノ加工の分野では、高い集積密度を達成し、また回路機能を向上させるために集積回路における機能サイズは非常に小さくなった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2009/120169号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2005/0242330A号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2010/0044698A号明細書
【特許文献4】米国特許第7,208,341号明細書
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Harry J.Levinson、「Principles of Lithography」2nd Edition,SPIE Press,Monograph Vol.PM146(2005)
【非特許文献2】Cris Mack、「Fundamental Principles of Optical Lithography,The Science of Microfabrication」Willey-Interscience(2007)
【非特許文献3】P.Zimmerman,J.Photopolym.Sci.Technol.,Vol.22,No.5,2009,p.625
【発明の概要】
【0009】
第一の態様において本発明は、水、金属亜酸化物陽イオン、多原子無機陰イオンおよび過酸化物基を含んで成るリガンドとの混合物を含んで成る無機パターン形成前駆体水溶液に関する。その組成物は、金属亜酸化物陽イオンに対するリガンドのモル濃度の比が少なくとも約2であり、このレジスト組成物は追加の混合なしに相分離に関して少なくとも約2時間安定である。
【0010】
更なる態様において本発明は、感放射線無機コーティング前駆体溶液の形成方法に関し、該方法は金属亜酸化物陽イオンを含む第一の水溶液、過酸化物基を有するリガンドを含んで成る錯体溶液および多原子無機陰イオンを含んで成る組成物を混ぜ合わせてコーティング前駆体溶液を形成することを含んで成る。ある実施態様では、金属亜酸化物陽イオンに対するリガンドのモル濃度の比が少なくとも約2である。
【0011】
別の態様では本発明は、基板上で無機材料をパターン形成する方法に関し、該方法は、放射線によるパターン形成可能なコーティング材の層を形成してコート基板の形成、該コート基板の加熱による溶媒の少なくとも一部の除去、該コート基板の放射線パターンへの露光、および照射後の該コート基板の加熱を含んで成る。一般的に該パターン形成されたコーティング材は、金属亜酸化物陽イオン、過酸化物基を含んで成るリガンド、および多原子無機陰イオンを含んで成る。コート基板の照射は、照射した場所でコーティングを縮合させ得る。照射後のコート基板の加熱は、コーティングを現像液と接触させる前に少なくとも約45℃までの温度であってよい。
【0012】
他の態様では本発明は、基板および該基板表面上のパターン形成された無機材料とを含んで成るパターン形成された構造体に関する。このパターン形成された無機材料は、パターン形成された半導体材料またはパターン形成された誘電材料を含んで成ることができ、またこのパターン形成された無機材料は、約60nm以下のピッチで約2.25nm以下の平均ライン幅ラフネスのエッジを有するか、または個々のフィーチャが約30nm以下の平均幅を有することができる。
【0013】
更なる態様において本発明は、基板とその基板表面のパターン形成された無機材料とを含むパターン形成された構造体の形成方法に関する。該方法は、コーティング材の層に、約100mJ/cm2以下の線量の極紫外線、または30kVで約300μC/cm2以下に相当する線量の電子ビームを照射するステップ、およびその照射された層を現像用組成物と接触させて非照射材料を溶解し、パターン形成された無機材料を形成するステップを含んで成り得る。ある実施態様ではパターン形成された無機材料は、約60nm以下の平均ピッチを有するか、または個々のフィーチャが約30nm以下の平均幅を有する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1は、リガンドに結合した金属陽イオンを示す模式図である。Mは金属原子を表し、Oは酸素原子を表し、これらは放射線からエネルギーを吸収することによって誘発される縮合反応を受ける。
【
図2】
図2は、潜像を有する放射線でパターン形成された構造体の模式的な斜視図である。
【
図4】
図4は、潜像を現像して非照射コーティング材を除去してパターン形成された構造体を形成した後の
図2の構造体の模式的な斜視図である。
【
図5】
図5は、
図4のパターン形成された構造体の側面図である。
【
図6】
図6は、下層をエッチングした後の
図4および
図5のパターン形成された構造体の側平面図である。
【
図7】
図7は、パターン形成された縮合コーティング材をエッチングして除去した後の
図6の構造体の側平面図である。
【
図8】
図8は、「熱凍結」二重パターニング工程の流れの側平面図である。
図2~4に示す工程は、第一層を第二層に対して不溶性にするベーク後に繰り返される。
【
図9】
図9は、Hf系コーティング材による高さ約100nmの段差を有する金属ゲート線を覆った段差被覆の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図10】
図10は、20mJ/cm
2の線量レベルで193nm波長干渉リソグラフィによりパターン形成したZr系コーティング材における120nmピッチ線の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図11】
図11は、電子ビームリソグラフィによりパターン形成したHf系コーティング材における36nmピッチ線の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図13】
図13Aは、電子ビームによりパターン形成し、2.38%TMAH中で現像した36nmピッチポストの走査型電子顕微鏡写真である。
図13Bは、電子ビームによりパターン形成し、25%TMAH中で現像した36nmピッチポストの走査型電子顕微鏡写真である。
【
図14】
図14は、1.6~1.8nmのラフネスの線を有する現像したパターンの一部の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図15】
図15は、電子ビームリソグラフィを用いて本明細書中で述べるコーティング材で形成された二重パターン形成構造体の走査型電子顕微鏡写真である。
【
図17】
図17は、幅40nmのエッチングされたケイ素ナノピラーの走査型電子顕微鏡写真である。ピラーは、Hf系コーティング材で形成されたハードマスクを介したイオンエッチングにより作製された。
【
図18】
図18A~Dは、本明細書中で述べるHf系コーティング材を用いて行い、25%TMAH中で現像したEUVリソグラフィの走査型電子顕微鏡写真である。各事例において図は、幅が指定のピッチのほぼ半分の線からなるその決められたピッチの線および間隔、すなわちA)32nmピッチの線および間隔、B)30nmピッチの線および間隔、C)28nmピッチの線および間隔、D)26nmピッチの線および間隔を示す。
【発明の詳細な説明】
【0015】
無機前駆体溶液の著しい改良によって、多原子イオンを含んで成る無機酸化物材料にすぐれた直接パターニングの結果を与える。この前駆体溶液を用いて、感放射線性無機コーティング材を堆積し得る。特に関心のある実施態様では、放射線への露光が、照射されたコーティング材を、現像剤組成物による除去に対して耐性を示す縮合された材料に変換する。非照射コーティング材の少なくとも一部の選択的な除去は、縮合したコーティング材の領域を含むパターンおよび非照射コーティング材が除去されて下にある基板が露出した領域とを残す。紫外線および/または電子ビームのような選択された放射線に対して敏感であるようにコーティング材を設計し得る。さらにその前駆体溶液を配合することで、商品流通に関する適切な貯蔵寿命を安定にし得る。
【0016】
また、この改良された前駆体溶液を形成するための組成の変更は、像の現像の改良も可能にする。具体的には照射されたコーティング材は、現像液、例えば非照射コーティング材を溶解するための適当な液体に対して高レベルな耐性を有する安定な無機材料をもたらし得る。したがって、縮合したコーティング材を現像の間に除去することなくコーティング層を薄くし得る。従来の有機レジストと比べて、本明細書中で述べる無機材料は、市販の関連する機能層に対する多くのエッチング化学作用に対してきわめて高い耐性を有する。これは、普通ならマスク機能に関してパターン形成される有機レジストを補うために使用されるはずの中間の犠牲的無機パターン転写層を回避することを介して、工程の単純化を可能にする。また、該コーティング材により便利な二重パターニングが可能になる。具体的には熱処理後、その照射されるコーティング材の縮合部分は、更なる前駆体溶液を含んで成る多くの組成物との接触に対して安定である。したがって、堆積されたハードマスクコーティング材を前もって除去することなく多重パターニングを行い得る。
【0017】
続いて、所望の機能材料をパターン形成するためのマスクとしてこのパターン形成された材料を使用した後に、そのパターン形成された無機コーティング材を除去し得る。別法では、得られたパターン形成された無機材料を、デバイスの構成要素として構造体中に組み込むこともできる。パターン形成された無機コーティング材料を構造体中に組み込む場合、放射線による材料の直接パターニングを使用することを介して、その加工手順の多くのステップをなくすことができる。別法では、短波長の電磁放射線および/または電子ビームを用いて露光させた薄い無機コーティング材を使用して非常に高い解像度の構造体を形成することができること、また改良されたパターン形成構造体を形成するためにライン幅ラフネスをきわめて低レベルまで低減できることが分かった。
【0018】
集積電子デバイス等の形成は、構造体内に個々の素子または構成要素を形成するための材料のパターニングを含む。一般にこのパターニングは、互いにインターフェースで接続して所望の機能性を引き出す層の一部を被覆する異なる組成物を含む。様々な材料が半導体を構成し得、半導体は、選択されたドーパント、誘電体、導電体、および/または他の種類の材料を有し得る。高解像度のパターンを形成するにはパターンを導入するために感放射線性有機組成物を使用することができる。該組成物は、選択されたパターンを導入するために選択的材料除去を使用できるように、組成物の一部を現像/エッチングに対して耐性をもつように加工することができるため、レジストと呼び得る。選択されたパターンまたはパターンのネガに対する放射を使用してレジストを露光し、現像液に耐える領域および現像液に溶ける領域を有するパターンまたは潜像を形成し得る。デバイス内に所望の無機材料構造体を直接形成するために、および/または有機レジストの代わりの放射線でパターン形成可能な無機レジストとして、本明細書中にて説明される感放射線性無機組成物を使用することができる。どちらの場合もその顕著な工程改善を活用することができ、また、パターン形成された材料の構造も改良することができる。
【0019】
コーティング材を形成するには、前駆体溶液をウェーハなどの基板表面に塗布する。ある態様では、コーティング組成物のレオロジー、例えば粘度が基板上に薄いコーティングを形成できるように、その無機前駆体溶液は比較的低い金属イオン濃度を有する。より薄いコーティングの使用は、放射線に露光させ、パターンを現像したときに、より高解像度の構造体の形成と一致する。コーティング材のこの独立して加工可能な化学的部分の比較的高い密度および小さい空間寸法を、ライン幅ラフネスの減少、小さいフィーチャサイズ、および/またはきわめて高い解像度を有する構造体の形成のために活用し得る。
【0020】
特定の放射線の種類用に、本明細書中で説明されるコーティング材を設計し得、またこれに対応して所望のコーティング材組成物が得られるように前駆体溶液を配合し得る。具体的にはコーティング材は、選択した放射線の所望の吸収作用を有するように設計され、またより大きな放射線の吸収断面積を有するコーティング材を使用するほど、それに対応してより低い放射線量の使用が可能になる。組成物の適切な選択により、そのパターン形成組成物は、例えば紫外線、X線、または電子ビーム、ならびにそれぞれの放射線の種類の範囲内の特定の波長または波長範囲に対して感応性であることができる。これらの特定の放射線の種類は、短い放射波長に基づく小さなパターンを形成する能力によるものであることが望ましい。したがって、本明細書中で説明されるコーティング材を使用して、デバイス形成能力を高めることができる対応する低ライン幅ラフネスにより効果的に小さなパターンを形成し得る。また、放射線でパターン形成されたコーティング材は薄く、適切な現像液に対する感受性に関して高いコントラストを有するため、非照射コーティング材の除去後、構造体は隣接した構造体間の小さなピッチを有し得る。
【0021】
前駆体溶液は、金属亜酸化物陽イオン、過酸化物基を含む感放射線リガンドおよび多原子陰イオンを有する水溶液を含んで成る。金属亜酸化物陽イオンは、金属元素および共有結合した酸素原子を有する多原子陽イオンである。金属亜酸化物または金属水酸化物の水溶液はゲル化および/または沈殿に関して不安定な傾向がある。具体的にはこれら溶液は、溶媒を除去すると不安定になり、金属陽イオンによりオキソ水酸化物の網目を形成する恐れがある。だが沈殿した材料は下記に説明するように有用な特性を有する場合もある。改善された沈殿物の安定性および制御を前駆体溶液に処方することによって、放射線が材料の変化を誘発するために使用され得る。また、具体的には過酸化物系リガンドは、その材料の加工の制御も可能にしながら前駆体溶液を安定化させる。
【0022】
具体的には前駆体溶液は、その溶液の金属亜酸化物陽イオンに対する感放射線リガンドのモル濃度の比が少なくとも約2、またある実施態様では少なくとも約5であるように、十分な感放射線リガンドを含んで成り得る。具体的には過酸化物系リガンド濃度が高いほど、前駆体安定性の驚くべき大きな改善をもたらす。理論によって制限されることを望むものではないが、感放射線リガンド濃度の増加によって、金属陽イオンのアグロメレーションを減らして溶液を安定化させる。したがって前駆体溶液は更なる撹拌なしに、固形物の沈降に対して少なくとも2時間、また場合によっては例えば1月以上、著しく長時間安定であることができる。長い安定時間のため、この改良された前駆体は、潜在的な商業的利用に対する汎用性を増大させる。過酸化水素は望ましい感放射線リガンドを可能にするが、他の無機過酸化物が適当である場合もある。ある態様では、有機過酸化物を使用することができるが、一般的にはある電子技術の応用において少なくとも最終製品の形成の場合、有機化合物は完全に除去されるべきである。
【0023】
さらに、金属亜酸化物陽イオンおよび多原子陰イオンから形成される材料が、それら材料を電子デバイスなどの構成要素に適したものにする有用な材料特性を提供することができることが発見されている。特性を調整するために材料に追加の金属陽イオンおよび陰イオンを取り込むこともできる。これらの一般的前駆体溶液については、keszlerらの「Solution Processed Thin Films and Laminates,Devices Comprising Such Thin Films and Laminates,and Methods for the Use and Manufacture」という名称の(特許文献1)中にさらに記載されており、これは参照により本明細書中に援用される(以後、「keszlerのPCT出願」)。本明細書中で説明されるように、前駆体溶液の著しい改良は、著しく高い感放射線リガンド濃度の使用を介して達成される。さらにもっと驚くべきことに前駆体溶液中の感放射線リガンド濃度の著しい増大は、放射線露光後により大きなコントラストを有するコーティング材をもたらし、その結果、さらに前駆体溶液の安定性がパターニングの改善およびより短い現像時間を達成するという驚くべき追加の利点も存在する。
【0024】
金属亜酸化物陽イオンは、所望の放射線吸収を達成するように選択され得る。具体的にはZrO+2系コーティング材は、波長193nmで遠紫外線の良好な吸収を示す。HfO+2系コーティング材は、放射X線および放射電子ビームの良好な吸収を示し、またコーティング材に、密度および平滑度などの望ましい特性を与え得る。ある前駆体溶液は、ZrO+2およびHfO+2陽イオンのブレンドを効果的に取り込んでコーティング材の望ましい総合的特性を実現する。前駆体溶液は、リソグラフィにとって重要な幾つかの放射波長の吸収を増すように追加の金属陽イオンを含むことができる。金属陽イオンは、水との相互作用により様々な度合いで加水分解することができ、水による加水分解の状態は一般にpHに大きく左右される。金属イオン濃度を選択して前駆体溶液の望ましい特性を得ることができ、一般的により希薄な溶液はより薄いコーティング材の形成と一致する。
【0025】
硫酸塩陰イオンは前駆体溶液中に取り込むための望ましい多原子陰イオンであるが、他の多原子陰イオンが硫酸塩陰イオンに対する望ましい代替物または添加物であってもよい。多原子陰イオンの濃度は、様々な現像剤組成物に対するコーティング材の感受性と相関関係があることが分かっている。幾つかの多原子陰イオンは、酸素原子および/または水酸基と共有結合した金属原子を含み、また陰イオン構造もpHに左右されることがある。
【0026】
また、より安定性の高い精製前駆体溶液も、基板の放射線露光部分と未露光部分の間のより大きなコントラストの可能性を有するコーティング材をもたらす。具体的には、露光コーティング材は適切なやり方で現像剤組成物に対して抵抗して残ることができるが、非照射コーティング材は適切な現像剤組成物で相対的により容易に溶解することができる。非照射コーティング材は、照射コーティング材と比べて現像液に相対的により容易に溶けるため、コーティング組成物の望ましい除去を今までどおり維持したままで現像液との接触時間を減らすことができる。具体的にはこの改良された組成物および対応する材料により、ライン幅ラフネスは驚くべき低レベルまで低減される。これに対応してピッチも、隣接素子間の適切な絶縁、一般には電気的絶縁によりそれら隣接素子間できわめて小さくし得る。照射されたコーティング組成物は、現像/エッチング工程に対して非常に耐性があり、その結果、基板表面上の照射済みパターン形成組成物の適切な部分を残したまま非照射コーティング組成物をきれいに取り除くことに関して現像工程の有効性を損なうことなく、コーティング組成物をきわめて薄くすることができる。現像液に触れる時間を短縮できることは、さらにコーティングの露光部分を損傷することなく薄いコーティングを使用することと一致する。
【0027】
一般的にパターニングを行うには、基板の表面全体または選択した部分に前駆体溶液を塗布する。前駆体組成物は、例えば通常のコーティング手法を用いて基板上に堆積させることができる。コーティング材の塗布に先立って、前駆体水溶液による濡れを向上させるために表面の親水性を増すように親水表面処理を用いて基板表面を調製することができる。例えば、スピンコーティングを用いて前駆体溶液をウェーハまたは他の基板上に塗布することができるが、他のコーティング手法、例えばスプレー塗装、ナイフエッジ塗装、または他の適切な技術を用いることもできる。前駆体溶液を塗布するために例えばスクリーン印刷、インクジェット印刷などの印刷技術を使用することもできる。しかしながら微細形状パターニングは、一般には印刷を使用するのではなく放射線によるパターニングで行われる。溶媒の少なくとも一部の除去は、コーティング材を更なる加工のために安定化させることができる。溶媒は、部分的にはコーティング工程自体を通じて除去することができる。また、溶媒の除去の一助となるようにコーティング材付き基板を加熱することもできる。十分に溶媒の除去後、コーティング材は、パターニングを考慮に入れても一般には比較的安定であり、パターニングのためにさらに加工することができる。
【0028】
一般にコーティング材は、放射線への露光が照射領域においてコーティング材の組成を潜像として変えるように感放射線性である。放射線パターンは、物理的マスクを介して放射線を通過または反射させることにより導入され、適切な光学系を用いてパターン形成された放射線をコーティング材に送達し得る。これに加えてまたは別法では、放射線のビームでコーティング材全体にわたって走査して、放射線への露光に基づく潜像としてコーティング材中にパターンを形成し得る。放射線吸収は、コーティング材の照射部分の縮合を引き起こす。換言すれば、放射線吸収由来のエネルギーが金属イオンのアグロメレーションを引き起こして、照射された材料の性質を変える。
【0029】
理論に限定されることを望むものではないが、放射線を吸収すると過酸化物の官能基がばらばらになり、組成物がそれに対応して架橋金属-酸素結合の形成により縮合すると考えられる。縮合反応により放射線パターンはコーティング材中のパターンに転写される。具体的には、照射され、それに応じて縮合されたコーティング材のパターンと、コーティング材がパターン形成される照射前の組成と実質上変わらない非照射コーティング材のパターンが存在する。
【0030】
照射後の材料の加熱により材料特性のコントラストを、縮合したコーティング組成物と非照射コーティング組成物の間で増大し得ることを発見した。具体的にはこの加熱工程が、照射されたコーティング組成物の縮合を増進させることが分かる。加熱は、現像のステップにおける非照射材料の除去能力をあまり変えない。
【0031】
パターン形成されたコーティング組成物を、コーティング材の非照射部分を除去する現像液、例えば2.38重量%の水酸化テトラメチルアンモニウム(半導体リソグラフィにおける標準的現像液)にさらす。現像は、現像液組成を適切に選択することにより短時間行うことができる。さらに縮合した照射済みコーティング材の安定化のため、縮合コーティング材は現像液に対してきわめて安定である。縮合コーティング材はきわめて硬いマスキング材料を形成する。
【0032】
コーティング材のパターニング後、パターンを覆って追加の材料層を塗布し得、かつ/または非照射コーティング材を除去することにより生じたウィンドウを介して追加のエッチングを行って、パターン形成されたコーティング材中の潜像に基づき基板材料を選択的に除去もし得る。このようなやり方で、パターン形成されたコーティング材を使用して様々な組成物の更なる相補的なパターニングにより構造体を組み立て得る。イオンもまた、電気的特性の制御のために、パターン形成されたコーティング材のウィンドウを介して選択的に基板中に注入してよい。このパターン形成された無機コーティングの緻密性は、従来の有機パターン形成コーティングと比べて高い注入抵抗をもたらす。このパターン形成されたコーティング材はそれ自体が構造体に望ましい特性を組み込むことのできる無機材料であるため、パターン形成されたコーティング材をデバイス中に直接組み込むことができる。このパターン形成されたコーティング材を構造体に直接組み込む実施態様の場合、レジストのパターニングおよび除去だけを達成する別個のステップが回避されるため、きわめて大きな加工の利点を達成し得る。これらの使用法は下記の考察において詳しく述べる。
【0033】
前述のように、本明細書中で述べる感放射線コーティング材は、ネガレジストとして使用され得る。パターン形成されたコーティング材を現像して非照射コーティング材を除去した後に、パターンを追加の加工ステップのために使用し得る。具体的にはパターン形成されたコーティングのギャップを介してエッチングし得る。さらに追加の材料を、追加の材料がこのパターン形成されたコーティング材のギャップを貫通して下にある基板に達する状態で堆積させることができる。ある実施態様では、エッチングおよび/または蒸着の組合せは、コーティング材中のパターンに基づく。コーティング材中のパターンに基づいて追加の加工を行った後に、無機コーティング材すなわち無機レジストを、適当なエッチング組成物または他のエッチング工程を用いて除去し得る。例えば、照射済みコーティング材を、ドライBCl3プラズマエッチングまたは水性HFウェットエッチングにより除去し得る。ネガレジストとしての、またポジレジストのある実施態様としての同様の組成物の使用法が、参照により本明細書中に援用されているケゼラーPCT出願中に記載されている。有機レジストと比べてこの無機コーティング材は、選択された放射線の吸収に関して、また露光領域と未露光領域との間の高いコントラストに関して、高い解像度を適度の放射線量で達成し得るような明確な利点を提供する。
【0034】
パターン形成された感放射線無機コーティング材の直接使用は、有機レジストを別個に使用することなく、パターン形成された無機層の形成を可能にする。無機コーティング材の照射領域と非照射領域との間の特性の大きなコントラストは、現像工程の間にコーティング材の抵抗性縮合部分をあまり損傷することなく非照射部分をきれいに取り除くことができる薄いパターン層の形成を可能にする。このパターン形成された無機コーティング材の密度および全般的耐エッチング性のため、パターン形成された薄いコーティング材は、マスクとしてのこのパターン形成された無機コーティング材によって導かれ、例えばエッチングおよびイオン注入を含めた、構造体の更なる加工に効果的に使用することができる。ある実施態様では、機能素子としてデバイス中に直接組み込まれる適切な厚さおよび物理的性質を有する縮合無機コーティング材を設計し得る。例えば、参照により本明細書中に援用される、Hermanらの“Dielectric Material”という名称の米国特許出願公開第2005/0242330A号に記載されているように製品金属亜酸化物組成物を誘電体として使用し得る。また、金属亜酸化物組成物のある実施態様は、参照により本明細書中に援用される、Hermanらの“Semiconductor Film Composition”という名称の米国特許出願公開第2010/0044698A号に記載されているように半導体特性を示す。したがって、適切な機能性を有するように該コーティング材を選択し得る。
【0035】
リソグラフィ手法の全般的使用法は、電子業界でよく知られている。例えば、Leeらの「Method for Manufacturing Printed Circuit Board」という名称の米国特許第7,208,341号、Harry J.Levinson、「Principles of Lithography」2nd Edition,SPIE Press,Monograph Vol.PM146(2005)、およびCris Mack、「Fundamental Principles of Optical Lithography,The Science of Microfabrication」Willey-Interscience(2007)を参照されたい。これら3つの文献はすべて参照により本明細書中に援用される。基板は、ポリマーなどの他の基板を使用することもできるが、一般には単結晶シリコンウェーハであり、これは他の層を含んでもよい。具体的には本明細書中で述べる無機コーティング材の加工温度は比較的低く、その結果、600℃を超えるような高温では損傷なしに加工することが不可能な基板上に、本明細書中で述べるパターン形成された無機コーティング材の形成をきわめて高い解像度で行うことができる。本明細書中で説明される無機コーティング材を用いて素子をパターン形成することができる好適なデバイスには、例えば集積電子回路、太陽電池、電子ディスプレイなどが挙げられる。
【0036】
前駆体溶液
前駆体溶液は、前駆体溶液の市販製品の貯蔵寿命が適切であるように、きわめて高レベルの安定性を達成するように配合されてきた。また、前駆体溶液の配合が、金属陽イオンの選択に基づいて選定された放射線に対して所望のレベルの放射線吸収を達成するように設計され得ることが発見された。前駆体溶液は、金属酸化物の化学および多原子陰イオンを含む金属陽イオンの水溶液に基づいている。前駆体溶液は、少なくとも部分的な溶媒除去時にコーティング組成物を形成するように、また最終的には金属酸化物および多原子陰イオンを含む無機固形物を形成するように設計される。前駆体溶液の制御は、金属陽イオンに対して感放射線リガンド、具体的には過酸化物系リガンドの高い濃度に基づいている。具体的には、水酸基対金属陽イオンのモル比が少なくとも2である場合、より安定な溶液を形成することができる。より安定な前駆体溶液は、最終の照射コーティング材と非照射コーティング材との間のより大きなコントラストという別の利点を提供する。
【0037】
前駆体水溶液は、一般的に1種類またはそれよりも多い種類の金属陽イオンを含んで成る。水溶液中では金属陽イオンは、水分子との相互作用のため水和している。この相互作用の性質は一般的にpHに左右される。具体的には加水分解が起こって酸素原子を金属イオンと結合させ、対応する水素イオンの放出により水酸化物リガンドまたはオキソ結合を形成し得る。追加の加水分解が起こるに従って、溶液は金属酸化物の沈殿に関して、またはゲル化に関して不安定になる。最終的には酸化物質を形成することが望ましいが、この酸化物への進行は、まず溶液を加工してコーティング材にし、次いで多原子陰イオンを含む最終の金属酸化物の組成物にする手順の一部として制御される。溶媒除去は酸化物の形成に寄与することができるが、この手法は本明細書中で説明される過酸化物系リガンドの使用なしには工程の有効な制御を実現しない。下記に述べるように過酸化物系リガンドを用いて溶液の加工の有効な制御を実現することができる。
【0038】
こうして金属陽イオンの水溶液は、更なる加工の準備が整う。具体的にはそれを前駆体水溶液の追加成分、すなわち溶液を金属酸化物の組成物の方へさらに進める準備の整った金属亜酸化物として使用することが望ましい。一般には前駆体溶液は、約0.01M~約1.4M、更なる実施形態では約0.05M~約1.2M、また追加の実施形態では約0.1M~約1.0Mの金属亜酸化物陽イオンを含んで成る。当業者は、上記に明示した範囲内の金属亜酸化物の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあると認識するであろう。金属亜酸化物は、ハロゲン塩、例えば塩化物、フッ化物、臭化物、ヨウ化物、またはこれらの組合せなどの適当な塩として加えることができる。前駆体溶液中での金属亜酸化物イオンの使用に基づいて、感放射線リガンドの使用に基づく溶液の良好な制御を維持したまま、比較的低レベルの加熱を用いて酸化物を形成することができる。
【0039】
金属亜酸化物陽イオンとして様々な金属イオン、例えばVO+2、SbO+、ReO3
+、TiO+2、TaO+3、TaO2
+、YO+、NbO+2、MoO+2、WO+4、WO2
+2、AlO+、GaO+、CrO+、FeO+、BiO+、LaO+、CeO+、PrO+、NdO+、PmO+、SmO+、EuO+、GdO+、TbO+、DyO+、HoO+、ErO+、TmO+、YbO+、LuO+、TiOy(OH)z
(4-2y-z)+、TaOy(OH)z
(5-2y-z)+、YOy(OH)z
(3-2y-z)+、NbOy(OH)z
(4-2y-z)+、MoOy(OH)z
(4-2y-z)+、WOy(OH)z
(6-2y-z)+、AlOy(OH)z
(3-2y-z)+、GaOy(OH)z
(3-2y-z)+、Zn(OH)+、CrOy(OH)z
(3-2y-z)+、FeOy(OH)z
(3-2y-z)+、BiOy(OH)z
(3-2y-z)+、LaOy(OH)z
(3-2y-z)+、CeOy(OH)z
(3-2y-z)+、PrOy(OH)z
(3-2y-z)+、NbOy(OH)z
(3-2y-z)+、PmOy(OH)z
(3-2y-z)+、SmOy(OH)z
(3-2y-z)+、EuOy(OH)z
(3-2y-z)+、GdOy(OH)z
(3-2y-z)+、TbOy(OH)z
(3-2y-z)+、DyOy(OH)z
(3-2y-z)+、HoOy(OH)z
(3-2y-z)+、ErOy(OH)z
(3-2y-z)+、TmOy(OH)z
(3-2y-z)+、YbOy(OH)z
(3-2y-z)+、LuOy(OH)z
(3-2y-z)+、またはこれらの組合せを準備することができる。パラメーターyおよびzは、イオンが金属原子の特定の酸化状態に基づいて正電荷を有するように選択することができる。特に関心のある金属亜酸化物陽イオンには、例えばZrO+2、ZrOOH+、Zr(OH)2
+2、Zr(OH)3
+、HfO+2、HfOOH+、Hf(OH)2
+2、Hf(OH)3
+、これらの組合せ、および/または他の金属亜酸化物陽イオンとの組合せが挙げられる。さらにこの溶液は、追加の金属陽イオン、例えばハフニウム(Hf+4)、チタン(Ti+4)、ジルコニウム(Zr+4)、セリウム(Ce+4)、スズ(Sn+4)、タンタル(Ta+5)、ニオブ(Nb+4)、イットリウム(Y+3)、モリブデン(Mo+6)、タングステン(W+6)、アルミニウム(Al+3)、ガリウム(Ga+3)、亜鉛(Zn+2)、クローム(Cr+3)、鉄(Fe+3)、ビスマス(Bi+3)、スカンジウム(Sc+3)、バナジウム(V+4)、マンガン(Mn+2、Mn+3、Mn+4)、コバルト(Co+2、Co+3)、ニッケル(Ni+2、Ni+3)、インジウム(In+3)、アンチモン(Sb+5)、イリジウム(Ir+3、Ir+4)、白金(Pt+2、Pt+4)、ランタン(La+3)、プラセオジム(Pr+3)、ネオジム(Nd+3)、プロメチウム(Pm+3)、サマリウム(Sm+3)、ユーロピウム(Eu+3)、ガドリニウム(Gd+3)、テルビウム(Tb+3)、ジスプロシウム(Dy+3)、ホルミウム(Ho+3)、エルビウム(Eb+3)、ツリウム(Tm+3)、イッテルビウム(Yb+3)、ルテチウム(Lu+3)、またはこれらの組合せを含むことができる。前述のように溶液中の陽イオンの状態はpHに左右され、したがって酸素配位の初期状態が溶液中で変わる可能性があるが、趨勢は酸化物の形成を引き起こす加水分解の方向にある。過酸化物系リガンドは、ゲル化および最終的には沈殿を引き起こす金属-酸素の網目の形成を妨げることが分かっている。したがって過酸化物を使用して、過酸化物結合の破壊時に迅速に縮合することができる安定状態を形成することができる。
【0040】
金属陽イオンは、一般に放射線吸収に大きな影響を与える。したがって金属陽イオンは、所望の放射線および吸収断面積に基づいて選択することができる。ZrO+2は、193nm波長の紫外線および他の遠紫外線の良好な吸収を示すことが分かっている。HfO+2は、電子ビーム材料および極紫外線の良好な吸収を示す。放射線吸収用組成物の更なるチューニングは、他の金属イオンの添加に基づいて調整することができる。例えば、チタン、亜鉛、カルシウム、インジウム、スズ、アンチモン、ビスマス、またはこれらの組合せを含んで成る1種類またはそれよりも多い種類のイオン(陽イオンまたは陰イオン)を前駆体溶液に加えて、例えば248nm波長の紫外線に対して感応性を示すようにより長波長に移動した吸収端を有するコーティング材を形成し得る。また、マグネシウム、ホウ素、カルシウム、アルミニウム、ケイ素、リン、またはこれらの組合せを含む1種類またはそれよりも多い種類のイオン(陽イオンまたは陰イオン)を用いて、より短波長において吸収断面積を増大させることもできる。吸収されたエネルギーは、過酸化物結合の破壊を引き起こし得る過酸化物リガンドに移り、材料特性の所望の制御を実現する。
【0041】
また、前駆体溶液は一般には酸素系である多原子陰イオンを含んで成り得る。最終的な無機酸化物の形成を通じて、酸素系多原子陰イオンを最終の固体材料内の酸化物中に持ち込み得る。陽イオンの場合と同様にこれら陰イオンの性質はpHに左右され得る。適当な酸素系多原子陰イオンには、例えばSO4
-2、BO3
-3、AsO4
-3、MoO4
-2、PO4
-3、WO4
-2、SeO4
-2、SiO4
-4、それらのプロトン化形態、およびそれらの組合せを含む。一般に前駆体溶液は、金属亜酸化物陽イオン濃度の約0.5~約2.0倍の、他の実施態様では金属亜酸化物陽イオン濃度の約0.75~約1.5倍の、また更なる実施態様では金属亜酸化物陽イオン濃度の約0.8~約1.3倍の多原子陰イオン濃度を含む。当業者は、上記に明示した範囲内の陰イオン濃度の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。多原子陰イオンはpH調整が適している場合には酸として加えることもでき、および/または多原子陰イオンは所望の金属陽イオンと共に加えることもできる。前駆体溶液は一般に、金属亜酸化物陽イオンと共に加えてよいハロゲン陰イオンなどの追加の陰イオンを含んだ状態で調製し得る。ハロゲン陰イオンは過酸化物リガンドと反応して、Cl2、Br2、またはI2などのハロゲン分子を形成し得る。ハロゲンイオンとの反応は過酸化物濃度を、加えた過酸化物の量に対して適度な量まで低下させる。
【0042】
過酸化物系リガンドは、組成物を縮合に対して安定化させる。具体的には過酸化物系リガンドの高い相対濃度においては、縮合した金属酸化物または金属水酸化物を形成することなくかなりの量の水を組成物から除去し得る。この安定性の発見に基づいて良好な貯蔵安定性を有する高濃度の感放射線リガンドを用いて、コーティングを形成するための都合のよい加工手続きを保持したままで溶液を形成することができる。特に関心のある感放射線リガンドは過酸化物基-O-O-を有する。さきに
図1の脈絡において述べたように吸収された放射線由来のエネルギーは、この酸素-酸素結合を破壊し得る。過酸化物基が破壊されるにつれてM-O-M結合(ここで、Mは金属原子を表す)の形成により組成物が縮合するため、対応する安定化が失われる。したがって縮合を放射線により制御することができる。高い感放射線リガンド濃度を有する組成物は、自然縮合の回避に関してきわめて安定であり得る。
【0043】
化学的に最も単純なリガンド組成物は過酸化水素H2O2であり、これは水溶性である。追加の過酸化物系リガンドは、例えば有機組成物および/または無機組成物を含んで成る。多くのデバイスにとって炭素は不都合であるため、ある実施態様では無機過酸化物系リガンドが望ましい。無機過酸化物を感放射線リガンドとして使用する場合、感放射線リガンド由来の炭素汚染の危険性が回避される。好適な無機過酸化物リガンドには、例えばペルオキシ硫酸塩イオン(SO5H-)、ペルオキシ二硫酸塩イオン(S2O8
-2)、ペルオキシ塩素酸イオン(ClO5H-)等、およびこれらの組合せを含んで成る。前駆体組成物は、一般には金属陽イオン濃度の少なくとも約2倍の、更なる実施態様では少なくとも約3倍の、他の実施態様では少なくとも約4倍の、また追加の実施態様では金属陽イオン濃度の約5~約25倍のリガンド濃度を含んで成る。
【0044】
一般には所望の化合物を溶解して水溶液を形成する。溶液の成分を溶解し混ぜ合わせた後、種の特性が水和および過酸化物系リガンド結合の結果として変わってよい。溶液の組成について本明細書中で言及する場合、溶液中の種の性質があまりよく知られていないため、その言及は溶液に加えられる成分に関するものである。
【0045】
ある実施態様では、混ぜ合わせることができる別々の溶液を形成して混合により前駆体溶液を形成することが望ましいことがある。具体的には、金属亜酸化物陽イオン、任意の追加の金属陽イオン、過酸化物系リガンド、および多原子陰イオンのうちの1種類またはそれよりも多い種類を含んで成る別々の溶液を形成し得る。複数の金属陽イオンを導入する場合、それら複数の金属陽イオンを同じ溶液に導入し、かつ/または別個の溶液に導入し得る。一般にこれら別々の溶液を十分に混合し得る。ある実施態様では、次いで過酸化物系リガンドが金属陽イオンと共役し得るように金属陽イオン溶液を過酸化物系リガンド溶液と混合する。得られた溶液は安定化金属陽イオン溶液と呼ぶことができる。ある実施態様では更なる加工に先立ってこの安定化金属陽イオン溶液を少なくとも約5分間、また更なる実施形態では少なくとも約15分間放置して安定化させる。高分子陰イオン溶液を安定化金属陽イオン溶液に加えて安定化前駆体溶液を形成し得る。前駆体溶液のある実施態様では、この溶液を混ぜ合わせる順序によって、より望ましい結果がもたらされることもある。この溶液は、適切な混合条件下で、かつ良好な混合を達成するための適切な速度で混ぜ合わせ得る。
【0046】
前駆体溶液中の種の濃度を選択して溶液の所望の特性を達成し得る。具体的には、低濃度の方が全体的に見てスピンコーティングなどの幾つかのコーティング方法にとって溶液の望ましい特性をもたらすことができ、また妥当なコーティングパラメーターを用いてより薄いコーティングを達成し得る。一般に濃度は、選択したコーティング方法に適切なように選択され得る。前述のように過酸化物系リガンド対金属陽イオンの比較的大きな比率を用いて前駆体溶液を大幅に安定化させ得る。前駆体溶液の安定性は、初期の溶液に対する変化に関して評価を行い得る。具体的には溶液は、大きなゾル粒子の生成により相分離が生ずる場合、安定性を失う。本明細書中で説明される安定化手法の改良に基づき、溶液は追加の混合なしに少なくとも約2時間、更なる実施態様では少なくとも約1日、他の実施態様では少なくとも約5日間、また追加の実施態様では少なくとも約25日間安定であり得る。当業者は、別の安定化時間範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。溶液を適切な貯蔵寿命で商業的に流通させ得る十分な安定時間を有する溶液を配合し得る。
【0047】
コーティング材
コーティング材は、選択した基板上に前駆体溶液を堆積することにより形成される。基板は、一般に上にコーティング材を堆積し得る表面を与え、また基板は、表面が最上層と関係する複数の層を含んで成り得る。基板表面を処理してコーティング材の接着のための面を調製し得る。表面の調製に先立って表面を必要に応じて清浄および/または平滑にし得る。適当な基板表面は、任意の妥当な材料を含んで成り得る。特に興味深いある基板には、例えばシリコンウェーハ、シリカ基板、他の無機材料、有機ポリマーなどのポリマー基板、それらの複合体、および表面全体のかつ/または基板の層中のこれらの組合せを含む。比較的薄い円筒構造などのウェーハが好都合な場合もあるが、任意の妥当な形状の構造を使用し得る。ポリマー基板または非ポリマー構造体上にポリマー層を有する基板が、それらの低コストおよび可撓性に基づいてある用途にとって望ましいこともあり、それら適当なポリマーは、本明細書中で説明されるパターン形成可能な無機材料の加工に使用し得る比較的低い加工温度に基づいて選択し得る。適当なポリマーには、例えばポリカーボナート、ポリイミド、ポリエステル、ポリアルケン、これらの共重合体、およびこれらの混合物を含み得る。一般に基板は、特に高解像度の用途の場合には平坦な表面を有することが望ましい。
【0048】
伝統的な有機レジストは非極性溶媒に可溶であり、疎水性表面に堆積される。これら表面は、表面を疎水性にし、ポリマーレジストの接着を促進させるためにヘキサメチルジシラザン(HMDS)などの化合物で処理し得る。これとは対照的に、本明細書中で説明されるパターン形成可能な無機材料は水溶液に基づくものであり、それは基板表面に塗布するには溶液を親水性表面に塗布するのが望ましいことを示唆する。表面が初めに望ましい程度の親水性でない場合、表面を親水性にするために、それら特定の基板組成物に適当な方法を使用し得る。シリコン基板の場合、表面を親水性にするために、これらには限定されないが塩基性界面活性剤中への浸漬、酸素プラズマ処理、UVオゾン処理、ピラニアエッチング液(濃H2SO4(水性)と30重量%H2O2(水性)の3:1混合物)中への浸漬、およびジメチルスルホキシド(DMSO)による処理と続く約225℃~約275℃での約5分間までの加熱を含めた様々な方法を使用することができる。
【0049】
一般に、任意の適切なコーティング方法を用いて前駆体溶液を基板に送達することができる。好適なコーティング手法には、例えばスピンコーティング、スプレー塗装、浸漬塗装、ナイフエッジ塗装、インクジェット印刷およびスクリーン印刷などの印刷手法などを含み得る。これらのコーティング手法の幾つかはコーティング工程の間にコーティング材のパターンを形成するが、印刷などから現在得られる解像度は本明細書中で説明される放射線系パターニングから得られる解像度よりも著しくレベルが低い。コーティング材を多重コーティングステップで塗布してコーティング工程のより卓越した制御を実現し得る。例えば多重スピンコーティングを行って所望の最終塗り厚を得ることができる。各コーティングステップ後または複数のコーティングステップ後に下記に説明する加熱工程を適用し得る。
【0050】
放射線を用いてパターニングを行う場合、比較的均一に基板を被覆するにはスピンコーティングが望ましい手法であるが、端部効果が存在する恐れがある。ある実施態様ではウェーハを約500rpm~約10,000rpmの速度で、更なる実施態様では約1000rpm~約7500rpmの速度で、また追加の実施態様では約2000rpm~約6000rpmの速度で回転し得る。回転速度を調整して所望の塗り厚を得ることができる。スピンコーティングは約5秒間~約5分間、また更なる実施態様では約15秒間~約2分間行い得る。例えば50rpm~250rpmでの初期低速回転を用いて基板全体にわたって組成物の初期大量拡散を行うことができる。水または他の適切なリンス液で裏面リンス処理、エッジビーム除去のステップなどを行ってエッジビードを除去し得る。当業者は、上記に明示した範囲内のスピンコーティングパラメーターの別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0051】
コーティングの厚さは、一般に前駆体溶液の濃度、粘度、および回転速度の関数である。また、他のコーティング方法の場合も、一般に厚さはコーティングパラメーターの選択により調整し得る。ある実施態様では、小さな、また高度に解像されたフィーチャの形成を容易にするために薄いコーティングを使用することが望ましいこともある。ある実施態様では、コーティング材は、約1ミクロン以下の、更なる実施態様では約250ナノメートル(nm)以下の、追加の実施態様では約1ナノメートル(nm)~約50nmの、他の実施態様では約1nm~約40nmの、また幾つかの実施態様では約1nm~約25nmの平均厚さを有することができる。当業者は、上記に明示した範囲内の厚さの別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。厚さは、膜の光学的性質に基づいてX線反射率および/またはエリプソメトリーの非接触法を用いて評価し得る。
【0052】
多くのコーティング方法が、大きな表面積および/または蒸発を促す溶液の移動を有するコーティング材の小滴または他の形を形成するため、コーティング方法自体が一部の溶媒の蒸発を引き起こす可能性がある。溶媒の減損は、材料中の種の濃度が増大するためコーティング材の粘度を増大させる傾向がある。溶媒をさらに駆逐し、コーティング材の高密度化を促進させるために、一般にコーティング材を放射線露光に先立って加熱し得る。コーティング材の加熱処理および高密度化の結果として、コーティング材は過酸化物基の熱分解の結果としてコントラストを著しく減損させることなく、屈折率および放射線吸収の増加を示すことができる。
【0053】
コーティング工程の間での目標は、更なる加工のために溶媒を十分に除去してコーティング材を安定化させることである。この溶媒除去工程はコーティング材中に残存する溶媒の特定な量に関して量的に制御することはできず、一般には得られるコーティング材特性の経験的評価を行ってパターニング工程にとって効果的な加工条件を選択する。加熱は工程をうまく働かせるためには必要でないが、加工速度を速めかつ/または工程の再現性を高めるために塗布済み基板を加熱することが望ましいこともある。熱を利用して溶媒を除去する実施態様では、コーティング材を、約45℃~約150℃の温度、更なる実施態様では約50℃~約130℃の温度、他の実施態様では約60℃~約110℃の温度まで加熱し得る。溶媒除去のための加熱は、一般には少なくとも約0.1分間、更なる実施態様では約0.5分間~約30分間、また追加の実施態様では約0.75分間~約10分間行い得る。当業者は、上記に明示した範囲内の加熱温度および時間の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0054】
パターン露光およびパターン形成されたコーティング材
放射線を用いてコーティング材に微細なパターンを形成し得る。前述のように、所望の形態の放射線を十分に吸収するように前駆体溶液の組成、したがって対応するコーティング材を設計することができる。放射線の吸収は過酸化物の-O-O-結合を破壊するエネルギーの移動を引き起こし、その結果、過酸化物系リガンドの少なくとも一部は材料の安定化のためにもはや利用できなくなる。十分な量の放射線の吸収により露光コーティング材は縮合する。一般に放射線は、選択されたパターンに従って送達される。放射線パターンは、照射領域および非照射領域を有するコーティング材における対応するパターンまたは潜像に転写される。照射領域は縮合したコーティング材を含んで成り、非照射領域は一般に形成されたままのコーティング材を含んで成る。下記で述べるように非照射コーティング材の除去によるコーティング材の現像時にきわめてシャープなエッジを形成し得る。
【0055】
一般に、マスクを介して放射線を塗布済み基板に向けるか、また放射線ビームで基板全体にわたって制御可能に走査させることができる。一般にこの放射線は、電磁放射線、電子ビーム(ベータ放射線)、または他の適当な放射線を含むことができる。一般に電磁放射線は、可視光線、紫外線、またはX線などの所望の波長または波長域を有する。放射線パターンが達成できる解像度は一般に放射線の波長に左右され、高い解像度パターンは短波長の放射線により達成することができる。したがって特に高い解像度パターンを達成するには、紫外線、X線、または電子ビームを使用するのが望ましい。
【0056】
参照により本明細書中に援用される国際規格ISO 21348(2007)によれば、紫外線は100nm以上と400nm未満の波長間に拡がる。フッ化クリプトンレーザーを248nm紫外線の供給源として使用することができる。紫外域は、一般に容認された規格のもとで幾通りかの方法で、例えば10nm以上、121nm未満の極紫外線(EUV)と122nm以上、200nm未満の遠紫外線(FUV)とに細分することができる。フッ化アルゴンレーザー由来の193nmスペクトル線をFUVの放射線源として使用することができる。EUV光線は、13.5nmでリソグラフィに使用されており、この光線は、高エネルギーレーザーまたは放電パルスを用いて励起させたXeまたはSnプラズマ供給源から発生する。軟X線は、0.1nm以上、10nm未満と定義することができる。
【0057】
電磁放射線の量は、露光時間に対する積分放射流束によって得られるフルエンスまたは線量によって特徴づけることができる。適当な放射線フルエンスは、約1mJ/cm2~約150mJ/cm2、更なる実施態様では約2mJ/cm2~約100mJ/cm2、また更なる実施態様では約3mJ/cm2~約50mJ/cm2であることができる。当業者は、上記に明示した範囲内の放射線フルエンスの別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0058】
電子ビームリソグラフィの場合、電子ビームは一般に二次電子を誘起し、それが一般に照射される材料を変性させる。解像度は材料中の少なくとも一部の二次電子の値域の関数であり、一般により高い解像度は、より短い値域の二次電子によりもたらされると考えられる。本明細書中で述べる無機コーティング材を用いて電子リソグラフィにより達成できる高解像度に基づいて、無機材料中の二次電子の値域を限定する。電子ビームはビームのエネルギーによって特徴づけることができ、適切なエネルギーは約5eV~約200keV、また更なる実施態様では約7.5eV~約100keVであることができる。30keVにおける近接補正ビーム線量は、1平方センチメートル当たり約0.1マイクロクーロン(μC/cm2)~1平方センチメートル当たり約5ミリクーロン(mC/cm2)、更なる実施態様では約0.5μC/cm2~約1mC/cm2、また他の実施態様では約1μC/cm2~約100μC/cm2の範囲にあることができる。当業者は、本明細書中の教示に基づいて他のビームエネルギーでの対応する線量を計算することができ、上記に明示した範囲内の電子ビーム特性の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0059】
放射線による露光後、コーティング材は照射領域および非照射領域によりパターン形成される。
図2および3を参照して、基板102、薄膜103、およびパターン形成されたコーティング材104を含むパターン形成された構造体100を示す。パターン形成されたコーティング材104は、照射コーティング材の縮合領域110、112、114、116、および非照射コーティング材の非縮合領域118、120を含んで成る。縮合領域110、112、114、116、および非縮合領域118、120によって形成されたパターン形成領域は、コーティング材中の潜像を表す。
【0060】
無機コーティング材の設計に基づいて、縮合コーティング材を有する照射領域および非照射、非縮合コーティング材の間に材料特性の大きなコントラストが存在する。このコントラストは照射後熱処理で向上させることができるが、驚くべきことにある実施態様では、照射後熱処理なしでも満足な結果を達成することができることを見出した。露光後熱処理は、照射済みコーティング材をアニーリングして、コーティング材の非照射領域を過酸化物の熱分解によりあまり顕著に縮合させることなく縮合を向上させるように見える。熱処理を使用する実施態様の場合、照射後熱処理は、約45℃~約150℃、追加の実施態様では約50℃~約130℃、また更なる実施態様では約60℃~約110℃の温度で行うことができる。溶媒除去のための加熱は、一般に少なくとも約0.1分間、更なる実施態様では約0.5分間~約30分間、また追加の実施態様では約0.75分間~約10分間行うことができる。当業者は、上記に明示した範囲内の照射後加熱温度および時間の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。材料特性のこの大きなコントラストが、下記の項で説明する現像後のパターン中のシャープな線の形成をさらに容易にする。
【0061】
現像およびパターン形成された構造体
像の現像は、潜像を含むパターン形成されたコーティング材を現像剤組成物と接触させて非照射コーティング材を除去するステップを伴う。
図4および5を参照すると、
図2および3に示す構造体の潜像を現像液と接触させることにより現像してパターン形成された構造体130が形成される。像の現像後、基板102を上面に沿って開口部132、134を通して露光する。開口部132、134は、それぞれ非縮合領域118、120の位置に置かれる。
【0062】
一般に現像液は水性の酸または塩基であることができる。よりシャープな像を得るためには、一般に水性塩基を使用することができる。現像液由来の汚染を低減するために、金属原子を含まない現像液を使用するのが望ましいこともある。したがって、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラプロピルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウム、またはこれらの組合せなどの水酸化第四アンモニウム組成物が現像液として望ましい。特に関心のある水酸化第四アンモニウムは、一般に式R4NOH(ここで、R=メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、またはこれらの組合せ)で表すことができる。一般に無機コーティング材は、現在ポリマーレジストに普通に使用されているものと同じ現像液、具体的には水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)で現像し得る。市販のTMAHは2.38重量%で入手でき、この濃度を本明細書中で説明される処理用に使用し得る。しかしながら無機材料の現像についてのある実施態様では、現像液を、有機レジストの現像に一般に使用される濃度と比べてより高い濃度、例えば25重量%TMAHで出荷し得る。さらに、混合水酸化第四テトラアルキルアンモニウムを、改良されたラインエッジの輪郭を得るために経験的評価に基づいて選択し得る。一般に現像液は、約2~約40重量%、更なる実施形態では約3~約35重量%、また他の実施形態では約4~約30重量%の水酸化テトラアルキルアンモニウムを含むことができる。当業者は、上記に明示した範囲内の現像液濃度の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0063】
現像液は、この主要現像剤組成物に加えて、現像工程を容易にするための追加の組成物を含んで成り得る。好適な添加剤には、例えばアンモニウム、d-ブロック金属陽イオン(ハフニウム、ジルコニウム、ランタンなど)、f-ブロック金属陽イオン(セリウム、ルテチウムなど)、p-ブロック金属陽イオン(アルミニウム、スズなど)、アルカリ金属(リチウム、ナトリウム、カリウムなど)、およびこれらの組合せからなる群から選択される陽イオンを有する溶存塩と、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、硝酸、硫酸、リン酸、ケイ酸、ホウ酸、過酸化物、ブトキシド、ギ酸、エチレンジアミン-四酢酸(EDTA)、タングステン酸、モリブデン酸など、およびこれらの組合せからなる群から選択される陰イオンを有する溶存塩とを含む。これら任意選択の添加剤が存在する場合、現像液は、約10重量%以下の添加剤、また更なる実施態様では約5重量%以下の添加剤を含んで成り得る。当業者は、上記に明示した範囲内の添加剤濃度の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。これら添加剤は、コントラスト、感受性、およびライン幅ラフネスを改良するように選択し得る。また、現像液中の添加剤は、HfO2/ZrO2粒子の形成および沈殿を抑制し得る。
【0064】
より弱い現像液、例えばより低濃度の現像液の場合、より高温の現像工程を用いて工程速度を上げることができる。より強い現像液の場合、現像工程の温度をより低くして現像速度を下げ、かつ/または速度を制御することができる。一般に現像温度は、水性溶媒の適切な値の間で調整し得る。さらに、現像液-コーティング界面近傍の溶存無機コーティング材を含む現像液を、現像の間に超音波で分散させ得る。
【0065】
任意の妥当な手法を用いて、現像液をパターン形成されたコーティング材に塗布し得る。例えば、現像液をパターン形成されたコーティング材上に噴霧し得る。またスピンコーティングを用い得る。自動化された処理の場合、静止した型の中でコーティング材上に現像液を注ぐことを伴うパドル法を用い得る。所望の場合、スピンリンシングおよび/またはスピンドライを用いて現像工程を終えることもできる。適当なすすぎ液には、例えば超純水、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、およびこれらの組合せが挙げられる。像が現像された後、コーティング材がパターンとして基板上に配置される。
【0066】
現像のステップの完了後、コーティング材を熱処理して、さらに材料を縮合させ、またさらに材料を脱水することができる。この熱処理は、無機コーティング材を最終的なデバイス中に組み込む実施態様では特に望ましいが、更なるパターニングを容易にするためにコーティング材を安定化することが望ましい場合、無機コーティング材をレジストとして使用し、最終的に除去する幾つかの実施態様にとっては熱処理を行うことが望ましいこともある。具体的には、パターン形成済みコーティング材が所望のレベルのエッチ選択性を示す条件下でパターン形成済みコーティング材のベークを行うことができる。幾つかの実施態様では、パターン形成済みコーティング材を約150℃~約600℃、更なる実施態様では約175℃~約500℃、また追加の実施態様では約200℃~約400℃の温度まで加熱し得る。加熱は、少なくとも約1分間、他の実施態様では約2分間~約1時間、また更なる実施態様では約2.5分間~約25分間行い得る。当業者は、上記に明示した範囲内の熱処理の温度および時間の別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0067】
有機レジストに関しては、構造体のアスペクト比(高さを幅で割った比)が非常に大きくなる場合、構造体はパターンの崩壊の影響を受けやすい。パターンの崩壊は、加工のステップに関係した力、例えば表面張力が構造要素を歪めるような高アスペクト比の構造体の機械的不安定性に関係がある。低アスペクト比の構造体は、潜在的な変形させる力に対してより安定である。本明細書中で述べるパターン形成可能な無機材料の場合、コーティング材の層が薄い構造体ほど効率的に加工することができるため、高アスペクト比のパターン形成されたコーティング材を必要とせずに改良されたパターニングを達成し得る。したがってきわめて高い解像度のフィーチャが、パターン形成されたコーティング材中の高アスペクト比のフィーチャの助けを借りることなく形成されている。
【0068】
得られる構造体は、きわめて低いライン幅ラフネスを有する、シャープなエッジを有することができる。具体的にはライン幅ラフネスを低減できることに加えて、高いコントラストはまた、小さなフィーチャおよびフィーチャ間の間隔の形成と、きわめてよく解像された二次元パターン(例えばシャープコーナー)を形成できることとを可能にする。したがってある実施態様では、近接している構造体の隣接した直線部分は、約60nm以下の、ある実施態様では約50nm以下の、また更なる実施態様では約40nm以下の平均ピッチを有し得る。ピッチは、設計によって数値を求め、走査型電子顕微鏡法(SEM)により、例えばトップダウン画像により確かめることができる。本明細書中で使用されるピッチとは、反復構造要素の空間的周期すなわち中心間距離を指す。パターンのフィーチャ寸法はまた、一般にコーナーなどから離れたところで数値が求められるフィーチャの平均幅に関して表すこともできる。またフィーチャは、材料要素間の間隔および/または材料要素を指すこともできる。ある実施態様では平均幅は、約30nm以下、更なる実施態様では約25nm以下、また追加の実施態様では約20nm以下であることができる。平均ライン幅ラフネスは、約2.25nm以下、また更なる実施態様では約1.2nm~約2.0nmであることができる。トップダウンSEM画像の分析によりライン幅ラフネスの数値を求めて平均ライン幅から3σ偏差値を導く。この平均は、高度数および低度数ラフネスの両方、すなわちそれぞれ短い相関長および長い相関長を包含する。有機レジストのライン幅ラフネスは主として長い相関長によって特徴付けられるが、本発明の無機コーティング材は著しく短い相関長を示す。パターン転写工程ではエッチング過程の間に短相関ラフネスを滑らかにし、ずっと高い忠実性パターンを生成することができる。当業者は、上記に明示した範囲内のピッチ、平均幅、およびライン幅ラフネスの別の範囲について検討し、それらも本発明の開示の範囲内にあることを認識するであろう。
【0069】
パターン形成されたコーティング材の更なる加工
パターン形成されたコーティング材の形成後、選択したデバイスの形成を容易にするために該コーティング材をさらに加工し得る。さらに、構造体を完成させるために一般に更なる材料の蒸着および/またはパターニングを行い得る。コーティング材は、最終的に除去されてもされなくてもよい。パターン形成されたコーティング材の品質は、いずれの事例においてもデバイスの改良、例えばより小さな設置面積などを有するデバイスに向けて前進させ得る。
【0070】
パターン形成されたコーティング材は、例えば
図4および5に示すように下にある基板への開口部を形成する。従来のレジストの場合と同様に、このパターン形成されたコーティング材は、パターンを転写して下にある薄膜を選択的に除去するために使用することができるエッチマスクを形成する。
図6を参照すると下にある薄膜103は、縮合領域110、112、114の下にそれぞれフィーチャ152、154、156を残してパターン形成される。従来のポリマーレジストと比較して本明細書中で説明される材料は、著しく大きな耐エッチング性を実現し得る。
【0071】
別法ではまたはこれに加えて、更なる材料の蒸着は、下にある構造体の特性を変え、かつ/または下にある構造体との接触を可能にし得る。この更なるコーティング材は、材料の望ましい特性に基づいて選択され得る。これに加えて、このパターン形成された無機コーティング材の密度が高い注入抵抗性を実現し得るため、イオンを下にある構造体中に選択的に注入し得る。ある実施態様では更なる堆積材料は、誘電体、半導体、導電体、または他の好適な材料であってよい。適切な手法、例えば溶液法、化学蒸着法(CVD)、スパッタリング、物理蒸着法(PVD)、または他の適当な手法を用いてこの更なる堆積材料を堆積し得る。
【0072】
一般に複数の追加の層を堆積し得る。複数の層の蒸着に関連して追加のパターニングを行い得る。もし行うならば任意の追加のパターニングは、本明細書中で説明される追加の量のコーティング材、ポリマー系レジスト、他のパターニング方法、またはそれらの組合せを用いて行い得る。
【0073】
前述のようにパターニング後のコーティング材の層は、除去されてもされなくてもよい。層を除去しない場合には、パターン形成されたコーティング材は構造体中に組み込まれる。パターン形成されたコーティング材を構造体中に組み込む実施態様の場合、コーティング材の特性は、所望のパターニング特性を実現するだけでなく、構造体内で材料の特性を実現するように選択され得る。
【0074】
パターン形成されたコーティング材の除去が望ましい場合、コーティング材はレジストとして働く。このパターン形成されたコーティング材は、レジスト/コーティング材の除去に先立って後続の堆積材料をパターン形成するために、かつ/または縮合コーティング材中の空隙を通して基板を選択的にエッチングするために使用され得る。このコーティング材は適切なエッチング方法を用いて除去され得る。具体的には、縮合したコーティング材を除去するためには、例えばBCl
3プラズマ、Cl
2プラズマ、HBrプラズマ、Arプラズマ、または他の適切なプロセスガスを用いたプラズマによるドライエッチングを行い得る。別法ではまたはこれに加えて、例えばHF(水性)または緩衝HF(水性)/NH
4Fによるウェットエッチングを用いて、パターン形成されたコーティング材を除去し得る。
図7を参照して、コーティング材除去後の
図6の構造体を示す。エッチングされた構造体150は、基板102およびフィーチャ152、154、156を含んで成る。
【0075】
これらコーティング材は、P.Zimmerman,J.Photopolym.Sci.Technol.,Vol.22,No.5,2009,p.625中で従来のレジストに関して全般的に記述されているような熱凍結法を用いて多重パターニングを行うには特に便利である。「熱凍結」による二重パターニング工程の概略を
図8に示す。第一ステップでは、
図4および5に関して描かれているようにリソグラフィ法および現像を用いてコーティング材を基板162上のパターン160に形成する。加熱ステップ164を行ってコーティング材を脱水する。この加熱ステップは、上記現像の項で述べた現像後加熱のステップに対応する。この「熱凍結」工程は、コーティング材をコーティング材の第二層の後続の堆積物に対して不溶性にする。第二リソグラフィおよび現像のステップ166を行って基板162上に二重パターン形成された構造体168を形成する。エッチングステップ170の後、産物である二重パターン形成された構造体172が形成される。この工程を多重コーティングおよびパターニングのステップに拡張することは容易であり、そのような拡張について考慮し、それらも本発明の開示の範囲内にあることに注目されたい。多重パターニングに関して、本明細書中で説明される無機コーティング材と従来の有機レジストの間の顕著な違いは、有機レジストが熱ベークの後でさえ従来のレジスト注型溶媒中に可溶のまま残ることである。本明細書中で説明されるレジスト材料は熱ベークにより脱水することができ、その結果、それらが水溶性でなく、後続のコーティング層を塗布し得る。
【実施例0076】
前駆体溶液の調製
この実施例は、ハフニウム(Hf)および/またはジルコニウム(Zr)に基づく金属亜酸化物陽イオンを含んで成る前駆体溶液を調製するために使用した方法について記載する。
【0077】
前駆体溶液の成分について別々の水溶液を調製した。表記の便宜上、それぞれの溶液を亜酸化物陽イオンについてはPart A、過酸化物系リガンド溶液についてはPart B、また多原子陰イオンを含んで成る溶液についてはPart Cと呼ぶ。500mLの超純水(電気抵抗18MΩ・cm)と混ぜ合わせた0.5モルのZrOCl2・8H2O(161.125、Alfa Aesar 99.9%)の溶液を濾過することによって溶液Part A1を調製した。500mLの超純水と混ぜ合わせた0.5モルのHfOCl2・8H2O(204.76g、Alfa Aesar 98%)の溶液を濾過することによって溶液Part A2を調製した。下記のようにPart A1を用いて193nmリソグラフィパターニングのための前駆体溶液を形成し、またPart A2を用いて13nm(極UVまたはEUVとしても知られる)または電子ビームリソグラフィパターニングのための前駆体溶液を形成した。H2O2(水性)(30%w/w、Mallinckrodt Baker)を超純水で希釈して6~8%w/wのH2O2(水性)溶液を生成することによって溶液Part Bを調製した。2~5M H2SO4(水性)を含んで成る溶液Part Cは、保証濃度(Fischer Scientific、10N)で得るか、または濃厚溶液(98% H2SO4、Mallinckrodt Baker)を超純水で希釈した。
【0078】
193nmリソグラフィパターニングについてはZr系前駆体溶液が調製された。EUVまたは電子ビームリソグラフィパターニングについてはHf系前駆体溶液が調製された。どちらの前駆体溶液の調製に使用した方法も、Zr系前駆体溶液がPart A1を用いて調製され、Hf系前駆体溶液がPart A2を用いて調製されたことを除いては同一である。選択された比率の成分溶液、Part A1またはPart A2、Part B、およびPart Cを計量して個々の予め清浄化したポリエチレンボトルに入れた。目標の最終金属濃度を得るのに十分な量の超純水をPart C成分溶液に加えた。次いでPart A1またはPart A2成分溶液をPart B成分溶液に注ぐことによってボトル中の成分を混ぜ合わせ、5分間待ち、次いでこの混ぜ合わせたPart A1またはPart A2およびPart Bに、Part Cを注ぎ、さらに5分間待った。この特定の混合順序が粒子の成長を制限することが分かっている。
【0079】
上記の方法を用いて4.8mLの溶液Part A1(Zr)、1.8mLの溶液Part B(H2O2)、2.16mLの溶液Part C(H2SO4(水性))、および21.24mLの超純水を混ぜ合わせることによって、0.16Mの最終ジルコニウム濃度を有するZr系前駆体溶液の配合物30mLを得た。上記の方法を用いて4.5mLの溶液Part A2(Hf)、16.875mLの溶液Part B(H2O2)、1.8mLの溶液Part C(H2SO4(水性))、および6.825mLの超純水を混ぜ合わせることによって、0.15Mの最終ハフニウム濃度を有するHf系前駆体溶液の配合物30mLを得た。