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特開2024-51188被覆樹脂ペレット及びその成形品並びに成形品の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051188
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】被覆樹脂ペレット及びその成形品並びに成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240404BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240404BHJP
   C08L 1/02 20060101ALI20240404BHJP
   C08K 7/08 20060101ALI20240404BHJP
   B29B 9/14 20060101ALI20240404BHJP
   B29B 9/16 20060101ALI20240404BHJP
   B29C 71/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CER
C08J3/12 CEZ
C08L101/00
C08L1/02
C08K7/08
B29B9/14
B29B9/16
B29C71/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157215
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】纐纈 拓大
(72)【発明者】
【氏名】寺岡 尚信
【テーマコード(参考)】
4F070
4F201
4J002
【Fターム(参考)】
4F070AA02
4F070AA15
4F070AC42
4F070AC47
4F070AC72
4F070AD02
4F070AE27
4F070DB03
4F070DC02
4F201AA03
4F201AA29
4F201AB25
4F201AC01
4F201AD16
4F201AR06
4F201BA02
4F201BA07
4F201BC02
4F201BC19
4F201BD04
4F201BD05
4F201BL44
4F201BL47
4F201BR02
4F201BR37
4J002AB012
4J002BB001
4J002BB121
4J002BC021
4J002BE011
4J002BE021
4J002BG031
4J002CE001
4J002CF001
4J002CG001
4J002CL001
4J002CN031
4J002FA042
4J002FD012
4J002FD030
4J002FD040
4J002FD060
4J002FD070
4J002FD090
4J002FD100
4J002FD130
4J002FD160
4J002FD170
4J002GN00
4J002GT00
(57)【要約】
【課題】良好な外観を有する成形品を製造でき、かつ成形品製造時の計量安定性に優れた、セルロース繊維含有樹脂材料の樹脂ペレット及びその成形品、並びに前記成形品の製造方法を提供する。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース繊維(B)を含む樹脂ペレットの表面の少なくとも一部が脂肪酸誘導体(C)で被覆されており、前記脂肪酸誘導体(C)の被覆量が、前記樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である、被覆樹脂ペレット(I)。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース繊維(B)を含む樹脂ペレットの表面の少なくとも一部が脂肪酸誘導体(C)で被覆されており、
前記脂肪酸誘導体(C)の被覆量が、前記樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である、被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項2】
前記脂肪酸誘導体(C)が、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項3】
前記樹脂ペレットの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂(A)の割合が30~95質量%であり、前記再生セルロース繊維(B)の割合が5~70質量%である、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項4】
前記樹脂ペレットが、前記再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えた繊維束に、前記熱可塑性樹脂(A)が含侵した、熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)を含む、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項5】
前記樹脂ペレットが、前記熱可塑性樹脂(A)からなるマトリックス樹脂と、前記再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えた繊維束に、前記熱可塑性樹脂(A)が含侵した、熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)と、を含む、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項6】
前記被覆樹脂ペレット(I)中の、前記再生セルロース繊維(B)の平均繊維長さが6~30mmである、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項7】
前記熱可塑性樹脂(A)が、オレフィン系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項8】
前記再生セルロース繊維(B)が、ビスコースレーヨンを含む、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項9】
前記熱可塑性樹脂(A)及び前記再生セルロース繊維(B)を含む樹脂組成物100質量部に対して、前記脂肪酸誘導体(C)0.0005~0.2質量部を含む、樹脂-脂肪酸誘導体複合物である、請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
【請求項10】
請求項1または2に記載の被覆樹脂ペレット(I)の成形品。
【請求項11】
請求項10に記載の成形品を製造する方法であって、
成形機投入前に、前記熱可塑性樹脂(A)及び前記再生セルロース繊維(B)を含む前記樹脂ペレット100質量部に対して、前記脂肪酸誘導体(C)を0.0005~0.2質量部混合して前記樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を被覆することを含む、製造方法。
【請求項12】
成形温度が210℃以下である、請求項11に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被覆樹脂ペレット及びその成形品並びに成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
持続可能な社会構築に向け、石油由来の樹脂成分にバイオマス成分を配合した複合樹脂材料の活用が進んでいる。このような複合樹脂材料としては、例えば、再生セルロース繊維を熱可塑樹脂に充填した、セルロース繊維含有樹脂材料等が知られている(例えば、特許文献1、2等)。このようなセルロース繊維含有樹脂材料は、機械強度や弾性率の向上が期待できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-091775号公報
【特許文献2】特開2016-020465号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述のセルロース繊維含有樹脂材料を成形する場合、ペレット状の樹脂材料(以下、「樹脂ペレット」と記載する)を射出成形、又は押出成形する方法を採用できる。これらの成形は、いずれも通常はスクリュー式押出機を用いて行われる。すなわち、ホッパーから樹脂ペレットをシリンダー内に投入し、前記シリンダー内で樹脂ペレットを加熱溶融しながらスクリューで溶融樹脂を押出して、ノズルから吐出する。本願発明者らが検討した結果、セルロース繊維含有樹脂材料の樹脂ペレットを前述のスクリュー式押出機を用いて連続成形を行った場合、シリンダー内のスクリューに半溶融状態の樹脂ペレットが絡みついて、計量不良が発生することが判明した。この問題を解決するために、シリンダー内の温度を上げて、樹脂の絡まりを抑制した場合、得られる成形品が着色して外観が低下することも判明した。
【0005】
そこで本発明は、良好な外観を有する成形品を製造でき、かつ成形品製造時の計量安定性に優れた、セルロース繊維含有樹脂材料の樹脂ペレット及びその成形品、並びに前記成形品の製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本願発明者らは鋭意検討した結果、驚くべきことに、セルロース繊維と熱可塑性樹脂を含む樹脂ペレットの表面の一部を、特定量の脂肪酸誘導体で被覆した被覆樹脂ペレットであれば、前述の全ての課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
すなわち、本発明は以下の態様を有する。
[1]熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース繊維(B)を含む樹脂ペレットの表面の少なくとも一部が脂肪酸誘導体(C)で被覆されており、
前記脂肪酸誘導体(C)の被覆量が、前記樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である、被覆樹脂ペレット(I)。
[2]前記脂肪酸誘導体(C)が、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドからなる群より選択される少なくとも1つを含む、[1]に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[3]前記樹脂ペレットの総質量に対する、前記熱可塑性樹脂(A)の割合が30~95質量%であり、前記再生セルロース繊維(B)の割合が5~70質量%である、[1]または[2]に記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[4]前記樹脂ペレットが、前記再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えた繊維束に、前記熱可塑性樹脂(A)が含侵した、熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)を含む、[1]から[3]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[5]前記樹脂ペレットが、前記熱可塑性樹脂(A)からなるマトリックス樹脂と、前記再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えた繊維束に、前記熱可塑性樹脂(A)が含侵した、熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)と、を含む、[1]から[4]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[6]前記被覆樹脂ペレット(I)中の、前記再生セルロース繊維(B)の平均繊維長さが6~30mmである、[1]から[5]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[7]前記熱可塑性樹脂(A)が、オレフィン系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含む、[1]から[6]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[8]前記再生セルロース繊維(B)が、ビスコースレーヨンを含む、[1]から[7]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[9]前記熱可塑性樹脂(A)及び前記再生セルロース繊維(B)を含む樹脂組成物100質量部に対して、前記脂肪酸誘導体(C)0.0005~0.2質量部を含む、樹脂-脂肪酸誘導体複合物である、[1]から[8]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)。
[10][1]から[9]のいずれかに記載の被覆樹脂ペレット(I)の成形品。
[11][10]に記載の成形品を製造する方法であって、
成形機投入前に、前記熱可塑性樹脂(A)及び前記再生セルロース繊維(B)を含む前記樹脂ペレット100質量部に対して、前記脂肪酸誘導体(C)を0.0005~0.2質量部混合して前記樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を被覆することを含む、製造方法。
[12]成形温度が210℃以下である、[11]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、良好な外観を有する成形品を製造でき、かつ成形品製造時の計量安定性に優れた、セルロース繊維含有樹脂材料の樹脂ペレット及びその成形品、並びに前記成形品の製造方法を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明するが、本発明の範囲はここで説明する一実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更ができる。また、特定のパラメータについて、複数の上限値及び下限値が記載されている場合、これらの上限値及び下限値の内、任意の上限値と下限値とを組合せて好適な数値範囲とすることができる。また本明細書において「~」の記載は「以上以下」を意味する。例えば、「10~50質量%」は、「10質量%以上50質量%以下」を意味する。
【0009】
[被覆樹脂ペレット(I)]
本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース繊維(B)を含む樹脂ペレットの表面の少なくとも一部が脂肪酸誘導体(C)で被覆されており、前記脂肪酸誘導体(C)の被覆量が、前記樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部であることを特徴とする。本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、良好な外観を有する成形品を製造でき、かつ成形品製造時の計量安定性に優れている。
【0010】
<樹脂ペレット>
(熱可塑性樹脂(A))
本実施形態に係る樹脂ペレットは、熱可塑性樹脂(A)と再生セルロース繊維(B)とを含む。熱可塑性樹脂(A)としては本発明の効果を有する限り特に限定されず、任意の熱可塑性樹脂を採用できる。例えば、熱可塑性樹脂(A)としては、オレフィン系樹脂、ビニルアルコール系樹脂、ビニルエステル系樹脂、スチレン系樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリスルホン系樹脂、ポリフェニレン系樹脂、ポリアセタール系樹脂、熱可塑性エラストマー等を採用できる。
【0011】
オレフィン系樹脂としては、例えば、炭素数2~6のオレフィンの単独重合体又は共重合体(ポリエチレン、エチレン-プロピレン共重合体等のエチレン系樹脂;ポリプロピレン、プロピレン-エチレン共重合体、プロピレン-ブテン共重合体等のプロピレン系樹脂;ポリ(メチルペンテン-1);プロピレン-メチルペンテン共重合体等);炭素数2~6のオレフィンと共重合性単量体との共重合体(エチレン-(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等);アルキル基やエステル基等の置換基を有していてもよい環状オレフィン(特に炭化水素環と縮合した環状オレフィン、橋架環式環状オレフィン等)の単独重合体又は共重合体(例えば、ポリビシクロペンタジエン、ポリノルボルネン等の環状オレフィンの単独重合体;ビシクロアルカジエン、トリシクロアルカジエン、ビシクロアルケン、及びトリシクロアルケンから選択される環状オレフィンと炭素数2~4のα-オレフィン(エチレン等)との共重合体等)等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0012】
ビニルアルコール系樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール、エチレン-ビニルアルコール共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0013】
ビニルエステル系樹脂(カルボン酸ビニルエステル系樹脂)としては、例えば、ポリ酢酸ビニル等のカルボン酸ビニルエステル系単量体の単独重合体又は共重合体;エチレン-酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等のカルボン酸ビニルエステル系単量体と共重合性単量体との共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0014】
スチレン系樹脂としては、例えば、スチレン系単量体の単独重合体又は共重合体(ポリスチレン、スチレン-α-メチルスチレン共重合体等);スチレン系単量体と他の共重合性単量体との共重合体(スチレン-アクリロニトリル共重合体(AS樹脂)、スチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体等)等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0015】
(メタ)アクリル系樹脂としては、例えば、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等のポリ(メタ)アクリル酸エステル、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル共重合体、メタクリル酸メチル-(メタ)アクリル酸エステル-(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸エステル-スチレン共重合体(MS樹脂等)等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。なお、(メタ)アクリル系樹脂には、メタクリル系樹脂、アクリル系樹脂の両方が含まれる。
【0016】
ポリエステル系樹脂としては、例えば、アルキレンテレフタレート(エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート等)やアルキレンナフタレート(エチレンナフタレート、ブチレンナフタレート等)を繰り返し単位とするホモポリエステル又はコポリエステル(アジピン酸等の炭素数6~12の脂肪族ジカルボン酸又はフタル酸、イソフタル酸等の非対称型芳香族ジカルボン酸と、炭素数2~6のアルキレングリコール、ポリオキシアルキレングリコール、ビスフェノールA等とを共重合成分とするコポリエステル等);芳香族ポリエステル(ビスフェノールA等の芳香族ジオールと、テレフタル酸等の芳香族ジカルボン酸との反応により生成するポリアリレート系樹脂等);液晶性ポリエステル;ラクトン(ε-カプロラクトン等)の単独又は共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
ポリカーボネート系樹脂としては、例えば、ジヒドロキシ化合物(ビスフェノールA、ビスフェノールS等のビスフェノール化合物等)と、ホスゲン又は炭酸ジエステル(ジフェニルカーボネート、ジメチルカーボネート等のジアルキルカーボネート等)との反応により得られるポリカーボネート等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0018】
ポリアミド系樹脂としては、例えば、脂肪族ポリアミド;芳香族ポリアミド;ラクタム(ε-カプロラクタム等)の単独重合体又は共重合体等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。また、ポリアミド系樹脂は、ホモポリアミドに限らずコポリアミドであってもよい。
【0019】
ポリスルホン系樹脂としては、例えば、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0020】
ポリフェニレン系樹脂としては、例えば、ポリフェニレンオキシド系樹脂[ポリ(2,5-ジメチル-1,4-フェニレン)オキシド、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレン)オキシド、ポリ(2-メチル-6-エチル-1,4-フェニレン)オキシド、ポリ(2,6-ジ-n-プロピル-1,4-フェニレン)オキシド、ポリ(2-メチル-6-クロロエチル-1,4-フェニレン)オキシド等の単独重合体;ポリフェニレンオキシドブロックをベースとして構成された変性ポリフェニレンオキシド共重合体;ポリフェニレンオキシド又はその共重合体にスチレン系重合体がグラフトしている変性グラフト共重合体等];ポリフェニレンスルフィド系樹脂(ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドケトン、ポリビフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン等)等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
ポリアセタール系樹脂としては、例えば、ポリアセタール(ポリオキシメチレン)、コポリアセタール(例えば、トリオキサン-エチレンオキシド共重合体、トリオキサン-1,3-ジオキソラン共重合体等)が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0022】
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリ塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性樹脂エラストマー等の硬質相と軟質相から構成される熱可塑性エラストマーが挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0023】
これらのうち、熱可塑性樹脂(A)としては、オレフィン系樹脂及びポリアミド系樹脂からなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0024】
好ましい実施形態において、オレフィン系樹脂としては、炭素数2~6のオレフィンの単独重合体又は共重合体、及び炭素数2~6のオレフィンと共重合性単量体との共重合体から選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。より具体的には、例えば、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン(HDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、低密度線状ポリエチレン(LLDPE)、ポリ-1-ブテン、ポリイソブチレン、エチレンとプロピレンの共重合体、エチレン-プロピレン-ジエン三元共重合体(原料としてのジエン成分が10質量%以下)、ポリメチルペンテン、エチレン又はプロピレン(50モル%以上)と他の共重合モノマー(酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニル等)とのランダム、ブロック、及び/又はグラフト共重合体等が挙げられる。これらオレフィン系樹脂を1種単独で、又は2種以上を併用して用いることが好ましい。このうち、機械的強度や加工性の観点からは、ポリプロピレンを含むことが特に好ましい。
【0025】
一実施形態において、熱可塑性樹脂(A)がオレフィン系樹脂を含む場合、再生セルロース繊維(B)への含浸性が向上しやすくなる観点から、酸変性ポリオレフィンを併用することが好ましい。酸変性ポリオレフィンとしては、マレイン酸変性ポリオレフィン(マレイン酸変性ポリプロピレン)、無水マレイン酸変性ポリオレフィン(無水マレイン酸変性ポリオレフィン)がより好ましい。また、一実施形態において、熱可塑性樹脂(A)として、オレフィン系樹脂と酸変性ポリオレフィンを併用する場合、熱可塑性樹脂(A)中の酸量(酸変性ポリオレフィンに含まれる酸成分の量)が、無水マレイン酸換算で平均0.05~0.5質量%の範囲となるように、酸変性ポリオレフィンを併用することがより好ましい。
【0026】
好ましい実施形態において、ポリアミド系樹脂としては、脂肪族ポリアミド、及び芳香族ポリアミドから選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。具体的には、例えば、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド1010、ポリアミド612、ポリアミド46、ポリアミド11、ポリアミド12、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンとの反応で得られる芳香族ポリアミド(例えば、ナイロン6T(ヘキサメチレンジアミンとテレフタル酸)、ナイロン6I(ヘキサメチレンジアミンとイソフタル酸)、ナイロン9T(ノナンジアミンとテレフタル酸)、ナイロンM5T(メチルペンタジアミンとテレフタル酸)、ナイロン10T(デカメチレンジアミンとテレフタル酸)等)、又は脂肪族ジカルボン酸と芳香族ジアミンとの反応で得られる芳香族ポリアミド(例えば、ナイロンMXD(メタキシリレンジアミンとアジピン酸)等)、を挙げることができる。これらポリアミド系樹脂を1種単独で、又は2種以上を併用して用いることができる。
これらポリアミド系樹脂のうち、ポリアミド6、ポリアミド69、ポリアミド610、ポリアミド612、ポリアミド11、ポリアミド12、ポリアミド1010等の脂肪族ポリアミドが、加工温度の観点からは好ましい。
【0027】
(再生セルロース繊維(B))
本実施形態において、樹脂ペレットは再生セルロース繊維(B)を含む。「再生セルロース繊維」とは、天然セルロース繊維(高等植物由来のセルロース繊維、動物由来のセルロース繊維、バクテリア由来のセルロース繊維)、及び/又は化学的に合成されたセルロース繊維を用いて人造で紡糸されたセルロース繊維を指す。
【0028】
高等植物由来のセルロース繊維としては、例えば、木材繊維(例えば、針葉樹、広葉樹等の木材パルプ等)、竹繊維、サトウキビ繊維、種子毛繊維(例えば、コットンリンター、ボンバックス綿、カポック等)、ジン皮繊維(例えば、麻、コウゾ、ミツマタ等)、葉繊維(例えば、マニラ麻、ニュージーランド麻等)等の天然セルロース繊維(パルプ繊維)等が挙げられる。
動物由来のセルロース繊維としては、例えば、ホヤセルロース等が挙げられる。
【0029】
化学的に合成されたセルロース繊維としては、例えば、セルロースアセテート(酢酸セルロース)、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート等の有機酸エステルの繊維;硝酸セルロース、硫酸セルロース、リン酸セルロース等の無機酸エステルの繊維;硝酸酢酸セルロース等の混酸エステルの繊維;ヒドロキシアルキルセルロース(例えば、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース等)の繊維;カルボキシアルキルセルロース(カルボキシメチルセルロース(CMC)、カルボキシエチルセルロース等)の繊維;アルキルセルロース(メチルセルロース、エチルセルロース等)の繊維;再生セルロース(レーヨン、セロファン等)等のセルロース誘導体の繊維等が挙げられる。
これら天然セルロース繊維及び化学的に合成されたセルロース繊維は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
上述のセルロース繊維から再生セルロース繊維を得る方法としては、例えば、ビスコース法、銅アンモニア法、溶剤紡糸法(セルロースを一旦化学的に変換せずに直接紡糸する方法)等が挙げられる。ビスコース法で得られた再生セルロース繊維としては、ビスコースレーヨン、ポリノジック、モダール等が挙げられる。また、銅アンモニア法で得られた再生セルロース繊維としては、キュプラ等が挙げられる。また、溶剤紡糸法で得られた再生セルロース繊維としては、リヨセル、テンセル等が挙げられる。再生セルロース繊維(B)としては、これらの方法で得られた再生セルロース繊維を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。一実施形態において、再生セルロース繊維(B)はビスコース法で得られた再生セルロース繊維を含むことが好ましく、ビスコースレーヨンを含むことがより好ましい。再生セルロース繊維(B)がビスコース法で得られた再生セルロース繊維を含むことで、最終的に得られる被覆樹脂ペレット(I)の機械的強度が良好となりやすい。
【0031】
一実施形態において、再生セルロース繊維(B)の平均繊維径は、5~30μmであることが好ましく、X線配向度が86%以上であることが好ましい。このような平均繊維径及びX線配向度を有することで、再生セルロース繊維(B)に熱可塑性樹脂(A)が含侵しやすくなる。また、本実施形態の被覆樹脂ペレット(I)から得られる成形品の機械的強度も向上しやすくなる。
前記平均繊維径は6~20μmであることがより好ましく、7~15μmであることがさらに好ましい。なお、再生セルロース繊維(B)の平均繊維径はSEM等で、複数本の繊維の繊維径(長径)を観察し、その平均値から算出できる。
また前記X線配向度は90%以上であることがより好ましい。再生セルロース繊維(B)のX線配向度は、特開平9-31744号公報や、特開平9-256216号公報に記載の数式から求めることができる。
【0032】
一実施形態において、再生セルロース繊維(B)の引張弾性率(ヤング率)は、10GPa以上であってもよく、13GPa以上であってもよく、15GPa以上であってもよい。再生セルロース繊維(B)の引張弾性率は、特開2013-91775号公報の段落番号0038に記載の、「23℃、50RHの空調で3週間保管後、チャック間距離200mm、引張速度200mm/min.で測定」する方法で求めることができる。
【0033】
一実施形態において、被覆樹脂ペレット(I)中の再生セルロース繊維(B)の平均繊維長さは、6~30mmであることが好ましく、6~15mmであることがより好ましく、6~9mmであることがさらに好ましい。平均繊維長さが6~30mmである再生セルロース繊維は長繊維となる。つまり、被覆樹脂ペレット(I)が長繊維を含むことにより、機械的強度が良好となりやすい。
【0034】
一実施形態において、樹脂ペレットは、再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えて束ねた繊維束に、前述の熱可塑性樹脂(A)を溶融させた状態で含浸させて一体化させた後にカッティングした、熱可塑性樹脂(A)と再生セルロース繊維(B)との複合材を含んでいてもよい。すなわち、本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えた繊維束に、熱可塑性樹脂(A)が含浸した熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)を含んでいてもよい。以下、熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)の詳細について説明する。
【0035】
(熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1))
熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)(以下、単に「繊維束(B1)」と記載することもある)は、前述の通り、再生セルロース繊維(B)を長さ方向に揃えた繊維束に、熱可塑性樹脂(A)を含浸させた後にカッティングした複合材である。一実施形態において、繊維束(B1)における再生セルロース繊維(B)の平均繊維長さは、6~30mmであってもよく、6~15mmであってもよい。
【0036】
繊維束(B1)における再生セルロース繊維(B)の本数は、2,000~30,000本であることが好ましく、3,000~25,000本であることがより好ましく、5,000~25,000本であることがさらに好ましい。繊維束(B1)中の繊維の本数が前記範囲内であれば、繊維束(B1)の中心部にまで熱可塑性樹脂(A)が含侵しやすくなる。その結果、繊維束(B1)を含む本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)を成形加工した際に、外観がより良好であり、かつ機械的強度により優れる成形品が得られやすくなる。また繊維束(B1)の製造時に、繊維束が切れる等の製造上の問題が発生しにくい。
【0037】
一実施形態において、繊維束(B1)は、ダイスを用いた周知の製造方法により製造することができる。具体的には、特開平6-313050号公報、特開2007-176227号公報、特公平6-2344号公報等に記載の製造方法を適用することができる。
【0038】
一実施形態において、繊維束(B1)の総質量に対する、再生セルロース繊維(B)の割合は、10~50質量%が好ましく、10~40質量%がより好ましく、20~40質量%がさらに好ましい。繊維束(B1)の総質量に対する再生セルロース繊維(B)の割合が前記範囲内であれば、射出成形、又は押出成形を行う際の流動性と機械的強度のバランスが良好となりやすい。
【0039】
一実施形態において、樹脂ペレット中の繊維束(B1)の割合は、80質量%以上であってもよく、90質量%以上であってもよい。また、樹脂ペレット中の繊維束(B1)の割合は100質量%であってもよい。
【0040】
一実施形態において、樹脂ペレットは、熱可塑性樹脂(A)からなるマトリックス樹脂中に、前述の繊維束(B1)が分散したものであってもよい。すなわち、本実施形態に係る樹脂ペレットにおいて、熱可塑性樹脂(A)は、繊維束(B1)に含浸樹脂として含まれていてもよく、樹脂ペレットの母材(マトリックス樹脂)として含まれていてもよく、その両方であってもよい。また、繊維束(B1)に含浸樹脂として含まれる熱可塑性樹脂(A)と、マトリックス樹脂として含まれる熱可塑性樹脂(A)の種類は、同じであってもよく、異なっていてもよい。なお、「熱可塑性樹脂(A)の種類が同じである」とは、熱可塑性樹脂(A)の主成分が同じであることを指す。例えば、含浸樹脂が主成分としてオレフィン系樹脂を含む場合、マトリックス樹脂も主成分としてオレフィン系樹脂を含むことができる。
【0041】
一実施形態において、樹脂ペレット中の熱可塑性樹脂(A)の割合は、樹脂ペレットの総質量に対して、30~95質量%が好ましく、40~92.5質量%がより好ましく、50~90質量%がさらに好ましい。また、樹脂ペレット中の再生セルロース繊維(B)の割合は、樹脂ペレットの総質量に対して、5~70質量%が好ましく、7.5~60質量%がより好ましく、10~50質量%がさらに好ましい。熱可塑性樹脂(A)と再生セルロース繊維(B)の割合が前記範囲内であれば、製造加工性が良好となりやすい。
【0042】
一実施形態において、樹脂ペレットは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、公知の添加剤を含むことができる。添加剤としては、例えば、難燃剤及び難燃助剤、熱安定剤、滑剤、光安定剤、酸化防止剤、着色剤、離型剤、帯電防止剤等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。またこれらの添加剤は、繊維束(B1)内に含有させてもよく、マトリックス樹脂中に含有させてもよい。本明細書では、樹脂ペレット中に含まれる添加剤を「内部添加剤」と記載し、樹脂ペレットを被覆している添加剤を「外部添加剤」と記載することもある。
【0043】
(脂肪酸誘導体(C))
本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、前述の樹脂ペレットの表面の少なくとも一部が脂肪酸誘導体(C)で被覆されている。また、脂肪酸誘導体(C)の被覆量は、樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である。特定量の脂肪酸誘導体(C)で樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を被覆することにより、成形時の計量安定性に優れた樹脂ペレットを得ることができる。また、樹脂ペレットの絡まりを抑制するために、シリンダー温度を高温に設定する必要がないため、得られる成形品が着色するのを防ぐことができる。本開示において、「脂肪酸誘導体」とは、カルボキシ基を少なくとも一つ有する、飽和脂肪酸及び/又は不飽和脂肪酸の置換、あるいはその他の化学反応によって得られた化合物を指す。
【0044】
本実施形態において、脂肪酸誘導体(C)は、樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を被覆している。一実施形態において、脂肪酸誘導体(C)は樹脂ペレットの全表面を被覆していてもよい。「表面の少なくとも一部を被覆する」とは、樹脂ペレットの少なくとも一部の表面が脂肪酸誘導体(C)で覆われている状態を指す。被覆樹脂ペレット(I)の、脂肪酸誘導体(C)で覆われている表面の面積は特に限定されないが、被覆樹脂ペレット(I)の表面積の0.2%以上が脂肪酸誘導体(C)で被覆されていれば、より計量安定性に優れた被覆樹脂ペレット(I)が得られやすい。
また、「樹脂ペレットの表面を脂肪酸誘導体(C)で覆う」ことには、樹脂ペレットの表面に脂肪酸誘導体(C)を付着させることも含まれる。すなわち、本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、樹脂ペレットの表面の少なくとも一部に、脂肪酸誘導体(C)が層状に積層されたものであってもよく、粉末状の脂肪酸誘導体(C)が樹脂ペレットの表面の少なくとも一部に付着したものであってもよい。
【0045】
脂肪酸誘導体(C)の被覆量は、樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部である。被覆量を0.2質量部以下とすることにより、成形時の計量安定性が向上する。また、被覆樹脂ペレット(I)を乾燥する際に、ペレット同士が付着しにくい。一実施形態において、前記被覆量は0.001~0.15質量部であってもよく、0.005~0.1質量部であってもよい。
【0046】
脂肪酸誘導体(C)の種類としては本発明の効果を有する限り特に限定されないが、成形時のスクリューへの樹脂の絡まりをより抑制しやすい観点からは、脂肪酸誘導体(C)は、脂肪酸金属塩及び脂肪酸アミドからなる群より選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0047】
脂肪酸金属塩としては、例えば、ラウリン酸(ドデカン酸)、イソデカン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸(テトラデカン酸)、ペンタデシル酸、パルミチン酸(ヘキサデカン酸)、マルガリン酸(ヘプタデカン酸)、ステアリン酸(オクタデカン酸)、イソステアリン酸、ツベルクロステアリン酸(ノナデカン酸)、2-ヒドロキシステアリン酸、アラキジン酸(イコサン酸)、ベヘン酸(ドコサン酸)、リグノセリン酸(テトラドコサン酸)、セロチン酸(ヘキサドコサン酸)、モンタン酸(オクタドコサン酸)、メリシン酸等の脂肪酸の金属塩;ミリストレイン酸(テトラデセン酸)、パルミトレイン酸(ヘキサデセン酸)、オレイン酸(cis-9-オクタデセン酸)、エライジン酸(trans-9-オクタデセン酸)、リシノール酸(オクタデカジエン酸)、バクセン酸(cis-11-オクタデセン酸)、リノール酸(オクタデカジエン酸)、リノレン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、エレステアリン酸(9,11,13-オクタデカトリエン酸)、ガドレイン酸(イコサン酸)、エルカ酸(ドコサン酸)、ネルボン酸(テトラドコサン酸)等の不飽和脂肪酸の金属塩が挙げられる。具体的には、例えば、前記脂肪酸又は不飽和脂肪酸のリチウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩、及びアルミニウム塩等が挙げられる。これら脂肪酸金属塩は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、価格と供給性の観点からは、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等の炭素数22未満の脂肪酸の亜鉛塩、カルシウム塩、又はアルミニウム塩が好ましく、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウムがより好ましい。
【0048】
脂肪酸アミドとしては、例えば、ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘニン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド等が挙げられる。これら脂肪酸アミドは、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、価格と供給性の観点からは、エチレンビスステアリン酸アミドがより好ましい。
【0049】
本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース(B)を含む樹脂組成物100質量部に、特定量の脂肪酸誘導体(C)を外部添加したものであってもよい。すなわち、熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース(B)を含む樹脂組成物100質量部に対して、脂肪酸誘導体(C)を0.0005~0.2質量部添加した、樹脂-脂肪酸誘導体複合物であってもよい。
【0050】
本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)の形状は特に限定されず、円柱状(略円柱状)、球形状等、任意の形状とすることができるが、いずれの形状の被覆樹脂ペレット(I)であっても、その表面の少なくとも一部が脂肪酸誘導体(C)で被覆されているものは、本実施形態の被覆樹脂ペレット(I)の範囲として含まれる。
【0051】
ところで、繊維強化樹脂材料としては、ガラス繊維等の無機繊維や、カーボン繊維等を樹脂材料中に配合したものが知られている。このような繊維強化樹脂材料も、射出成形又は押出成形により成形されるが、成形機内のスクリューに樹脂が絡まる現象は生じない。本願発明者らは、スクリューに半溶融状態の樹脂が絡みついて計量不良が発生するという課題が、セルロース繊維(再生セルロース繊維)を含む樹脂材料特有の課題であることを発見した。また前記樹脂材料を連続で(例えば、20ショット以上)成形した場合に、前述の現象に基づく計量不良が発生しやすくなることも発見した。さらに本願発明者らは、樹脂の絡まり抑制のためにシリンダー温度を上げると、成形品が茶褐色に着色しやすくなるという、別の課題が生じることも見出した。このような、セルロース繊維含有樹脂材料特有の課題を解決するために本願発明者らは鋭意検討した結果、特定量の脂肪酸誘導体(C)で再生セルロース繊維を含む樹脂組成物からなるペレットの表面の一部を被覆することにより、前述の現象による計量不良の発生を抑制できることを見出した。
【0052】
[用途]
本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、射出成形用樹脂ペレット、又は押出成形用樹脂ペレットとして好適に用いることができる。
【0053】
[成形品]
本実施形態に係る成形品は、前述の被覆樹脂ペレット(I)を成形して得られるものである。本実施形態に係る成形品は、前述の被覆樹脂ペレット(I)を射出成形、又は押出成形して得られるものであってもよい。本実施形態に係る成形品は、前述の被覆樹脂ペレット(I)を成形して得られるものであるため、機械的強度や弾性率に優れている。また外観も良好である。
【0054】
<成形品の製造方法>
本実施形態に係る成形品の製造方法は、成形機投入前に、熱可塑性樹脂(A)及び再生セルロース繊維(B)を含む樹脂ペレット100質量部に対して、脂肪酸誘導体(C)を0.0005~0.2質量部混合して樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を被覆すること(工程(1))を含む。すなわち、本実施形態に係る成形品の製造方法は、成形機投入前に被覆樹脂ペレット(I)を調製することを含んでいる。
【0055】
(工程(1))
前述の通り、本実施形態に係る成形品の製造方法は、樹脂ペレット100質量部に対して、脂肪酸誘導体(C)を0.0005~0.2質量部混合して樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を被覆することを含む。一実施形態において、前述の成形機としては、被覆樹脂ペレット(I)を射出成形又は押出成形できるものであれば、特に限定されない。
【0056】
工程(1)において、樹脂ペレットの表面の少なくとも一部を脂肪酸誘導体(C)で被覆する方法としては、例えば、ドライブレンド法がある。この方法であれば、脂肪酸誘導体(C)を添加混合しやすい。
【0057】
工程(1)において、「成形機投入前」とは、例えば、成形機に備え付けられたホッパーに樹脂ペレットを投入する前のことであってもよい。一実施形態において、被覆樹脂ペレット(I)を得るタイミングは特に限定されず、前述のホッパーに投入する直前に、樹脂ペレットに脂肪酸誘導体(C)を添加混合して、被覆樹脂ペレット(I)を得てもよく、事前に被覆樹脂ペレット(I)を調製して保管しておくこともできる。
【0058】
(工程(2))
本実施形態に係る成形品の製造方法は、工程(1)の後、被覆樹脂ペレット(I)を乾燥させること(工程(2))を含むことができる。工程(2)を含むことにより、被覆樹脂ペレット(I)の表面及び/又は内部の水分によって、成形品の物性がばらつくのを防ぎやすくなる。工程(2)を実施する場合、被覆樹脂ペレット(I)の乾燥方法としては特に限定されず、従来公知の方法を採用できる。例えば、被覆樹脂ペレット(I)を乾燥機に投入して、80~140℃、より好ましくは90~120℃で、1~5時間、より好ましくは3~4時間乾燥させてもよい。本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、外部添加剤として、脂肪酸誘導体(C)を、樹脂ペレット100質量部に対して、0.0005~0.2質量部配合している。脂肪酸誘導体(C)の配合量を前記範囲内とすることで、工程(2)において、被覆樹脂ペレット(I)同士が付着する現象も抑制しやすくなる。
【0059】
(工程(3))
本実施形態に係る成形品の製造方法は、得られた被覆樹脂ペレット(I)をさらに成形すること(工程(3))を含むことができる。前述の通り、本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は成形品製造時の計量安定性に優れている。そのため、計量不良抑制の観点から、シリンダー内の温度を高温に制御する必要はない。一実施形態において、成形品の外観を良好とする観点からは、成形温度は210℃以下であることが好ましく、200℃以下であることがより好ましく、190℃以下であることがさらに好ましい。なお、「成形温度」は、成形機のシリンダー内の温度、及びノズル温度から選択されるいずれか1つの温度であってもよい。シリンダー内温度及び/又はノズル温度を210℃以下に設定することで、計量不良を抑制しつつ、良好な外観も維持しやすい。
【0060】
[用途]
本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)から得られる成形品は、機械的強度に優れ、かつ外観も良好である。このような成形品は、例えば、ケース部品、車載ドアモジュール等の用途に好適に用いることができる。
【実施例0061】
以下、実施例を示して本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。
【0062】
樹脂ペレット(I)及び脂肪酸誘導体(C)として以下を用いた。
<樹脂ペレット(I)>
(熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1))
ビスコースレーヨン(平均繊維径(長径)18μm)(再生セルロース繊維(B))を長さ方向に揃えた繊維束に、ホモポリプロピレン(熱可塑性樹脂(A))を含浸させた熱可塑性樹脂含浸繊維束を7mmの長さに切断して得られた繊維束(B1)。前記繊維束の総質量に対するビスコースレーヨンの割合は40質量%である(ポリプラスチックス(株)製、製品名「プラストロン(登録商標)LFT PP RF40-02」)。
【0063】
(熱可塑性樹脂(A):マトリックス樹脂)
樹脂ペレット(I)のマトリックス樹脂として、ホモポリプロピレン(サンアロマー(株)製、製品名「PMB02A」)を用いた。
【0064】
(脂肪酸誘導体(C))
ステアリン酸カルシウム:堺化学工業(株)製、製品名「SC-100」。
ステアリン酸マグネシウム:堺化学工業(株)製、製品名「SM-1000」。
エチレンビスステアリン酸アミド:花王(株)製、製品名「カオーワックスEB-G」。
【0065】
[実施例1]
熱可塑性樹脂含浸再生セルロース繊維束(B1)(樹脂ペレット)100質量部に対して、0.01質量部のステアリン酸カルシウム(脂肪酸誘導体(C))を、ドライブレンドの条件で混合して、被覆樹脂ペレット(I)を調製した。脂肪酸誘導体(C)は、樹脂ペレットの全表面を被覆するように混合した。その後、得られた被覆樹脂ペレット(I)を乾燥機((株)サタケ製、製品名「60-S8」)に投入して、120℃で4時間乾燥させた。
得られた被覆樹脂ペレット(I)を、成形機(日精樹脂工業(株)製、製品名「NEX220III-50E」)に投入し、ノズル温度190℃、後部(シリンダー)温度170℃に調整しながら、射出成形を行って成形品を製造した。
【0066】
成形品製造時の、「被覆樹脂ペレット(I)の乾燥時のペレット同士の付着」、「計量安定性」を以下の条件で評価した。
(被覆樹脂ペレット(I)乾燥時のペレット同士の付着の有無)
被覆樹脂ペレット(I)を乾燥機に投入して、120℃で4時間乾燥させてから取り出した。この時、ペレット同士が付着して接着状態となっていたものを、「ペレット同士の付着有り」と評価した。
【0067】
(計量安定性の評価)
上述の条件で射出成形した際の計量時間を測定した。計量安定性は、20~30ショット目の計量時間の平均を算出し、前記計量時間の平均値が30秒未満であったものを「合格」、計量時間の平均値が30秒以上であったものを「不合格」とした。
【0068】
得られた成形品について、分光色差計(日本電色工業(株)製、製品名「SE6000」)を用いて、L値を測定した。
(成形品の外観評価)
L値が45以上であったものを「合格」、L値が45未満であったものを「不合格」とした。
【0069】
[実施例2~10及び比較例1~7]
樹脂ペレット(I)及び脂肪酸誘導体(C)の種類及び配合量を表1~2の通り変更して被覆樹脂ペレット(I)(比較例1は未被覆の樹脂ペレット)を得たのち、実施例1と同じ条件で樹脂ペレットを乾燥させた。その後、表1~2に記載の成形条件で製造して、成形品を得た。また、実施例1と同じ条件で、成形品製造時の、「被覆樹脂ペレット(I)の乾燥時のペレット同士の付着」、「計量安定性」、及び「成形品の外観評価」を評価した。結果を表1~2に示す。なお、表1~2中、「-」の記載は、その評価を実施しなかった(又は実施できなかった)ことを指す。
【0070】
【表1】
【0071】
【表2】
【0072】
表1~2に示すように、本実施形態の構成を満たす被覆樹脂ペレット(I)は、成形時の計量安定性に優れ、かつ被覆樹脂ペレット(I)を乾燥する際に、ペレット同士の付着も発生しなかった。さらに、得られた成形品の外観も良好であった。
一方、脂肪酸誘導体(C)で被覆しなかった比較例1の樹脂ペレットは、成形時に計量不良が発生して成形品を得ることができなかった。比較例1の樹脂ペレットについて、成形温度を変更して成形を行った比較例3でも、同様に本願の課題を解決できなかった。樹脂ペレット100質量部に対して、脂肪酸誘導体(C)を0.3質量部配合した比較例4の被覆樹脂ペレットは、乾燥時にペレット同士が付着して成形することができなかった。脂肪酸誘導体(C)を内部添加した比較例2の樹脂ペレットも、計量不良が発生して成形品を得ることができなかった。また、比較例5~7も本願の課題を解決できていなかった。
以上の結果より、本実施形態に係る被覆樹脂ペレット(I)は、良好な外観を有する成形品を製造でき、かつ成形品製造時の計量安定性に優れることが分かった。