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特開2024-51368樹脂組成物、成形品、カメラモジュール部品及びカメラモジュール
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  • 特開-樹脂組成物、成形品、カメラモジュール部品及びカメラモジュール 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051368
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】樹脂組成物、成形品、カメラモジュール部品及びカメラモジュール
(51)【国際特許分類】
   C08L 67/03 20060101AFI20240404BHJP
   C08K 7/00 20060101ALI20240404BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240404BHJP
   C08K 3/30 20060101ALI20240404BHJP
   C08G 63/19 20060101ALI20240404BHJP
   G03B 30/00 20210101ALI20240404BHJP
   C08L 63/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L67/03
C08K7/00
C08K3/34
C08K3/30
C08G63/19
G03B30/00
C08L63/00 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157499
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】390006323
【氏名又は名称】ポリプラスチックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼澤 佑
(72)【発明者】
【氏名】西山 寛樹
(72)【発明者】
【氏名】長永 昭宏
(72)【発明者】
【氏名】吉原 綾菜
【テーマコード(参考)】
4J002
4J029
【Fターム(参考)】
4J002CF161
4J002DE106
4J002DE116
4J002DE136
4J002DE146
4J002DE236
4J002DG046
4J002DG056
4J002DJ006
4J002DJ016
4J002DJ036
4J002DJ046
4J002DJ056
4J002DK006
4J002DL006
4J002FA016
4J002FD016
4J002GP00
4J029AA04
4J029AB07
4J029AC02
4J029AE01
4J029BB04A
4J029BB05A
4J029BB10A
4J029BC06A
4J029CB05A
4J029CB06A
4J029CC06A
4J029HA01
4J029HA02
4J029HA05
4J029HB01
4J029HB02
4J029HB05
(57)【要約】      (修正有)
【課題】低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好な成形品が得られる樹脂組成物及びその成形品を提供する。
【解決手段】下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV)を必須構成単位として含む全芳香族ポリエステルと、非繊維状充填剤とを含む樹脂組成物。

(III)におけるArは、2,6-ナフタレン、又は4,4’-ビフェニレン。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、(A)全芳香族ポリエステルと、(B)非繊維状充填剤とを含み、
(A)全芳香族ポリエステルは、必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV):
【化1】
を含み、
構成単位(III)におけるArは、2,6-ナフタレン、又は4,4’-ビフェニレンを表し、
構成単位(I)の含有量が、全構成単位に対して15~30モル%であり、
構成単位(II)の含有量が、全構成単位に対して20~35モル%であり、
構成単位(III)の含有量が、全構成単位に対して15~30モル%であり、
構成単位(IV)の含有量が、全構成単位に対して20~35モル%であり、
(B)非繊維状充填剤が、メディアン径が50μm以下の、板状充填剤及び粒状充填剤からなる群より選択される少なくとも1つの充填剤を含み、
(A)全芳香族ポリエステルの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60~90質量%であり、
(B)非繊維状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10~40質量%である、樹脂組成物。
【請求項2】
構成単位(I)~(IV)の合計含有量が、(A)全芳香族ポリエステルの全構成単位に対して90~100モル%である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
(A)全芳香族ポリエステルが、さらに下記構成単位(V):
【化2】
を含み、
構成単位(I)、(II)及び(V)の合計含有量が、全構成単位に対して47.5~52.5モル%である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
(A)全芳香族ポリエステルが、さらに下記構成単位(VI):
【化3】
を含み、
構成単位(III)、(IV)及び(VI)の合計含有量が、全構成単位に対して47.5~52.5モル%である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項5】
(B)非繊維状充填剤が、タルク、マイカ、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項6】
前記樹脂組成物が、さらに(C)エポキシ基含有重合体を含み、
(A)全芳香族ポリエステルの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60~87.5質量%であり、
(B)非繊維状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10~37.5質量%であり、
(C)エポキシ基含有重合体の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、1~7質量%である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項7】
カメラモジュール部品用である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項8】
カメラモジュール部品を製造するための、請求項1または2に記載の樹脂組成物の使用。
【請求項9】
請求項1または2に記載の樹脂組成物を含む、成形品。
【請求項10】
カメラモジュール部品である、請求項9に記載の成形品。
【請求項11】
請求項10に記載のカメラモジュール部品を備える、カメラモジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、成形品、カメラモジュール部品及びカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
全芳香族ポリエステル等の液晶性樹脂は、優れた流動性、機械強度、耐熱性、耐薬品性、電気的性質等をバランス良く有するため、各種電子部品の材料として利用されている。近年、液晶性樹脂はこれらの特長を生かして、精密機器部品へも応用されている。
【0003】
このような部品としては、例えば、FPCコネクター等のコネクター;メモリーカードソケット等のソケット;レンズホルダー等のカメラモジュール部品;リレー等が挙げられる。これらのうち、特にカメラモジュールのような光学レンズを保持するような部品において、液晶性樹脂の流動性、機械強度等の特性を生かして、小型化や精度向上を図ることが行われている。
【0004】
近年、カメラモジュール部品においては、ズームやピント調節、手振れ防止などの駆動機構の付与による部品同士の摺動や、衝撃衝突により、部品表面が摩耗して発塵するという問題がある。低発塵性を達成するために、ナイロン樹脂等の靭性が高く、耐衝撃性に優れる樹脂に置き換えることも考えられるが、これらの樹脂では、液晶性樹脂が有する流動性や寸法安定性、耐熱性を達成しにくい。係る課題に対して、例えば、特許文献1には、低発塵性、靭性、及び衝撃強度に優れる成形品を提供することを目的として、液晶性ポリエステル樹脂に、特定の平均粒子径を有する球状シリカを配合した、カメラモジュール用液晶性ポリエステル樹脂組成物が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/077387号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の液晶性ポリエステル樹脂組成物では、低発塵性、靭性が不十分である。また、従来の液晶性樹脂組成物では、低発塵性、靭性、流動性及び耐熱性の全ての性質を両立することは難しい。そこで本発明は、低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好な成形品が得られる樹脂組成物及びその成形品、並びにカメラモジュール部品と前記カメラモジュール部品を備えるカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者らは鋭意検討した結果、特定の構成単位を必須成分として含む全芳香族ポリエステルと、非繊維状充填剤と組み合わせることにより、前述の全ての課題を解決できる樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成させるに至った。
本発明は以下の態様を有する。
[1]樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物は、(A)全芳香族ポリエステルと、(B)非繊維状充填剤とを含み、
(A)全芳香族ポリエステルは、必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV):
【化1】
を含み、
構成単位(III)におけるArは、2,6-ナフタレン、又は4,4’-ビフェニレンを表し、
構成単位(I)の含有量が、全構成単位に対して15~30モル%であり、
構成単位(II)の含有量が、全構成単位に対して20~35モル%であり、
構成単位(III)の含有量が、全構成単位に対して15~30モル%であり、
構成単位(IV)の含有量が、全構成単位に対して20~35モル%であり、
(B)非繊維状充填剤が、メディアン径が50μm以下の、板状充填剤及び粒状充填剤からなる群より選択される少なくとも1つの充填剤を含み、
(A)全芳香族ポリエステルの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60~90質量%であり、
(B)非繊維状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10~40質量%である、樹脂組成物。
[2]構成単位(I)~(IV)の合計含有量が、(A)全芳香族ポリエステルの全構成単位に対して90~100モル%である、[1]に記載の樹脂組成物。
[3](A)全芳香族ポリエステルが、さらに下記構成単位(V):
【化2】
を含み、
構成単位(I)、(II)及び(V)の合計含有量が、全構成単位に対して47.5~52.5モル%である、[1]または[2]に記載の樹脂組成物。
[4](A)全芳香族ポリエステルが、さらに下記構成単位(VI):
【化3】
を含み、
構成単位(III)、(IV)及び(VI)の合計含有量が、全構成単位に対して47.5~52.5モル%である、[1]から[3]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[5](B)非繊維状充填剤が、タルク、マイカ、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1つを含む、[1]から[4]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[6]前記樹脂組成物が、さらに(C)エポキシ基含有重合体を含み、
(A)全芳香族ポリエステルの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60~87.5質量%であり、
(B)非繊維状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10~37.5質量%であり、
(C)エポキシ基含有重合体の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、1~7質量%である、[1]から[5]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[7]カメラモジュール部品用である、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物。
[8]カメラモジュール部品を製造するための、[1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物の使用。
[9][1]から[6]のいずれかに記載の樹脂組成物を含む、成形品。
[10]カメラモジュール部品である、[9]に記載の成形品。
[11][10]に記載のカメラモジュール部品を備える、カメラモジュール。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好な成形品が得られる樹脂組成物及びその成形品、並びにカメラモジュール部品と前記カメラモジュール部品を備えるカメラモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一般的なカメラモジュールを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について詳細に説明する。本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の効果を阻害しない範囲で適宜変更を加えて実施することができる。一実施形態について記載した特定の説明が他の実施形態についても当てはまる場合には、他の実施形態においてはその説明を省略している場合がある。本開示において数値範囲についての「X~Y」との表現は、「X以上Y以下」であることを意味している。
【0011】
[樹脂組成物]
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)全芳香族ポリエステルと、(B)非繊維状充填剤とを含み、(A)全芳香族ポリエステルは、必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV):
【化4】
を含み、構成単位(III)におけるArは、2,6-ナフタレン、又は4,4’-ビフェニレンを表し、構成単位(I)の含有量が、全構成単位に対して15~30モル%であり、構成単位(II)の含有量が、全構成単位に対して20~35モル%であり、構成単位(III)の含有量が、全構成単位に対して15~30モル%であり、構成単位(IV)の含有量が、全構成単位に対して20~35モル%であり、(B)非繊維状充填剤が、メディアン径が50μm以下の、板状充填剤及び粒状充填剤からなる群より選択される少なくとも1つの充填剤を含み、(A)全芳香族ポリエステルの含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、60~90質量%であり、(B)非繊維状充填剤の含有量が、前記樹脂組成物の総質量に対して、10~40質量%である。なお、本実施形態に係る樹脂組成物において、(A)全芳香族ポリエステル及び(B)非繊維状充填剤の合計含有量は100質量%を超えない。また、本開示において、(A)成分の各構成単位の割合(モル%)は、(A)成分を重合する際のモノマーの仕込み比から算出することができる。あるいは、(A)成分の各構成単位の割合(モル%)は、Polymer Degradation and Stability vol.76(2002),85-94に記載の、熱分解ガスクロマトグラフィー法によっても算出することができる。
本実施形態に係る樹脂組成物は、低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好な成形品を提供できる。
【0012】
<(A)全芳香族ポリエステル>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)全芳香族ポリエステル(以下、「(A)成分」と記載することもある)を含む。(A)成分は、必須の構成成分として、下記構成単位(I)、(II)、(III)及び(IV)を含む。
【化5】
【0013】
構成単位(I)は、1,4-フェニレンジカルボン酸(以下、「TA」と記載することもある)及びその重合可能な誘導体から誘導される。重合可能な誘導体としては、例えば、1,4-フェニレンジカルボン酸の、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。本実施形態において、(A)成分は、構成単位(I)を全構成単位に対して15~30モル%含む。構成単位(I)の含有量が15~30モル%であれば、得られる成形品の靭性が高くなり、かつ耐熱性も良好となる。なお、得られる成形品の靭性と耐熱性とをより両立しやすくなる観点からは、構成単位(I)の含有量は、全構成単位に対して、15~28.75モル%が好ましく、15~27.5モル%がより好ましく、17.5~26モル%がさらに好ましい。
【0014】
構成単位(II)は、2,6-ナフタレンジカルボン酸(以下、「NDA」と記載することもある)及びその重合可能な誘導体から誘導される。重合可能な誘導体としては、例えば、2,6-ナフタレンジカルボン酸の、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。本実施形態において、(A)成分は、構成単位(II)を全構成単位に対して20~35モル%含む。構成単位(II)の含有量が20~35モル%であれば、得られる成形品の靭性が高くなり、かつ耐熱性も良好となる。なお、得られる成形品の靭性と耐熱性とをより両立しやすくなる観点からは、構成単位(II)の含有量は、全構成単位に対して、21.25~35モル%が好ましく、22.5~35モル%がより好ましく、24~32.5モル%がさらに好ましい。
【0015】
構成単位(III)において、Arは、2,6-ジヒドロキシナフタレン(以下、「NDO」と記載することもある)又は4,4’-ジヒドロキシビフェニル(以下、「BP」と記載することもある)を表す。すなわち、構成単位(III)は、NDO及びその重合可能な誘導体から誘導される単位であってもよく、BP及びその重合可能な誘導体から誘導される単位であってもよく、又はこれらを2種以上含んでいてもよい。なお、NDOの重合可能な誘導体としては、例えば、2,6-ジヒドロキシナフタレンの、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。また、BPの重合可能な誘導体としては、例えば、4,4’-ジヒドロキシビフェニルの、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。
【0016】
一実施形態において、価格と供給性の観点からは、構成単位(III)として、BPから誘導される単位を含むことが好ましい。
【0017】
本実施形態において、(A)成分は、構成単位(III)を全構成単位に対して15~30モル%含む。構成単位(III)の含有量が15~30モル%であれば、得られる成形品の靭性が高くなり、かつ耐熱性も良好となる。なお、得られる成形品の靭性と耐熱性とをより両立しやすくなる観点からは、構成単位(III)の含有量は、全構成単位に対して、15~28.75モル%が好ましく、15~27.5モル%がより好ましく、17.5~26モル%がさらに好ましい。
【0018】
構成単位(IV)は、1,4-ジヒドロキシベンゼン(以下、「HQ」と記載することもある)及びその重合可能な誘導体から誘導される。重合可能な誘導体としては、1,4-ジヒドロキシベンゼンの、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。 本実施形態において、(A)成分は、構成単位(IV)を全構成単位に対して20~35モル%含む。構成単位(IV)の含有量が20~35モル%であれば、得られる成形品の靭性が高くなり、かつ耐熱性も良好となる。なお、得られる成形品の靭性と耐熱性とをより両立しやすくなる観点からは、構成単位(IV)の含有量は、21.25~35モル%が好ましく、22.5~35モル%がより好ましく、24~32.5モル%がさらに好ましい。
【0019】
一実施形態において、(A)成分中の構成単位(I)~(IV)の合計含有量は、(A)成分の全構成単位に対して、90~100モル%であることが好ましく、95~100モル%がより好ましい。より靭性が高く、かつ耐熱性にも優れる成形品が得られやすくなる観点からは、(A)成分は構成単位(I)~(IV)のみを含んでいてもよい(すなわち、構成単位(I)~(IV)の合計含有量が、全構成単位に対して、100モル%であってもよい)。
【0020】
(A)成分は、前述の構成単位(I)~(IV)以外の構成単位を含むことができる。一実施形態において、(A)成分は、下記構成単位(V)を含んでいてもよい。
【化6】
【0021】
構成単位(V)は、1,3-フェニレンジカルボン酸(以下、「IA」と記載することもある)及びその重合可能な誘導体から誘導される。重合可能な誘導体としては、1,3-フェニレンジカルボン酸の、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。(A)成分が構成単位(V)を含む場合、芳香族ジカルボン酸から誘導される、構成単位(I)、(II)及び(V)の合計含有量は、全構成単位に対して、47.5~52.5モル%が好ましく、48.75~51.25モル%がより好ましく、50モル%が特に好ましい。(A)成分が構成単位(V)を含むことにより、(A)成分の融点が低下しやすくなり、よりハンドリングの良好な全芳香族ポリエステルとなりやすい。
【0022】
一実施形態において、(A)成分が構成単位(V)を含む場合、構成単位(V)の含有量は、(A)成分の全構成単位に対して、0.5~10モル%であることが好ましく、0.5~7.5モル%であることがより好ましく、0.5~5モル%であることがさらに好ましい。また、前述の通り、構成単位(I)、(II)及び(V)の合計含有量は、47.5~52.5モル%の範囲であることが好ましい。すなわち、(A)成分が構成単位(V)を含む場合、構成単位(I)及び/又は構成単位(II)の一部を、構成単位(V)に置き換えることが好ましい。構成単位(I)及び/又は構成単位(II)の一部を構成単位(V)に置き換えることで、(A)成分の融点が低下しやすくなり、ハンドリング性が良好となりやすい。一実施形態において、(A)成分中の構成単位(I)、(II)及び(V)の配合比(モル比)((I)/(II)/(V))は、(15~30)/(20~35)/(0~10)であってもよく、(15~28.75)/(21.25~35)/(0.5~10)であってもよく、(15~27.5)/(22.5~35)/(0.5~7.5)であってもよい。
【0023】
一実施形態において、(A)成分は、下記構成単位(VI)を含んでいてもよい。
【化7】
【0024】
構成単位(VI)は、1,3-ジヒドロキシベンゼン(慣用名:レゾルシノール。以下、「RES」と記載することもある)及びその重合可能な誘導体から誘導される。重合可能な誘導体としては、1,3-ジヒドロキシベンゼンの、アルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)またはハロゲン化物等が挙げられる。(A)成分が構成単位(VI)を含む場合、芳香族ジオールから誘導される、構成単位(III)、(IV)及び(VI)の合計含有量は、全構成単位に対して、47.5~52.5モル%が好ましく、48.75~51.25モル%がより好ましく、50モル%が特に好ましい。(A)成分が構成単位(VI)を含むことにより、(A)成分の融点が低下しやすくなり、よりハンドリングの良好な全芳香族ポリエステルとなりやすい。
【0025】
一実施形態において、(A)成分が構成単位(VI)を含む場合、構成単位(VI)の含有量は、(A)成分の全構成単位に対して、0.5~10モル%であることが好ましく、0.5~7.5モル%であることがより好ましく、0.5~5モル%であることがさらに好ましい。また、前述の通り、構成単位(III)、(IV)及び(VI)の合計含有量は、47.5~52.5モル%の範囲であることが好ましい。すなわち、(A)成分が構成単位(VI)を含む場合、構成単位(III)及び/又は構成単位(IV)の一部を、構成単位(VI)に置き換えることが好ましい。構成単位(III)及び/又は構成単位(IV)の一部を構成単位(VI)に置き換えることで、(A)成分の融点が低下しやすくなり、ハンドリング性が良好となりやすい。一実施形態において、(A)成分中の構成単位(III)、(IV)及び(VI)の配合比(モル比)((III)/(IV)/(VI))は、(15~30)/(20~35)/(0~10)であってもよく、(15~28.75)/(21.25~35)/(0.5~10)であってもよく、(15~27.5)/(22.5~35)/(0.5~7.5)であってもよい。
【0026】
(A)成分は、芳香族ヒドロキシカルボン酸(例えば、p-ヒドロキシ安息香酸(以下、「HBA」と記載することもある)、6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(以下、「HNA」と記載することもある)等)から誘導される構成単位を含んでいないことが好ましい。芳香族ヒドロキシカルボン酸から誘導される構成単位を含まない場合、より靭性に優れる成形品が得られやすくなる。
【0027】
一実施形態において、(A)成分中の、芳香族ジカルボン酸に由来する単位(構成単位(I)、(II)及び(V)の合計量)と、芳香族ジオールに由来する単位(構成単位(III)、(IV)及び(VI)の合計量)とは、モル比で、1.05:1~1:1.05の範囲であることが好ましい。
【0028】
本実施形態に係る樹脂組成物中の、(A)全芳香族ポリエステルの含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、60~90質量%であり、62.5~85質量%が好ましく、65~80質量%がより好ましく、67~75質量%がさらに好ましい。樹脂組成物中の(A)全芳香族ポリエステルの含有量が前記範囲内であれば、成形時における流動性が良好であり、かつ靭性及び耐熱性に優れる成形品が得られる。
【0029】
一実施形態において、(A)成分は、溶融時に光学異方性を示す液晶性樹脂であることが好ましい。(A)成分が液晶性樹脂であることにより、流動性と靭性とを併せ持つ樹脂組成物が得られやすくなる。
なお、溶融時に光学異方性を示すことは、直交偏光子を利用した慣用の偏光検査方法により確認することができる。より具体的には(A)成分の光学異方性の確認は、偏光顕微鏡(例えば、オリンパス(株)製、製品名:BX51)を使用し、ホットステージ(例えば、リンカム社製、製品名:CSS450)にのせた試料を溶融し、窒素雰囲気下で150倍の倍率で観察することにより実施できる。液晶性樹脂は光学的に異方性であり、直交偏光子間に挿入したとき光を透過させる。試料が光学的に異方性であると、例えば溶融静止液状態であっても偏光は透過する。
【0030】
ネマチックな液晶性樹脂は融点以上で著しく粘性低下を生じるので、一般的に融点又はそれ以上の温度で液晶性を示すことが加工性の指標となる。
【0031】
一実施形態において、(A)成分の融点より10~40℃高い温度、かつ、剪断速度1000/秒における、(A)成分の溶融粘度は、1000Pa・s以下が好ましく、4~500Pa・sがより好ましく、4~250Pa・sがさらに好ましく、5~100Pa・sが特に好ましい。(A)成分の溶融粘度が上記範囲内であると、本実施形態に係る樹脂組成物の成形時において、流動性が確保されやすく、充填圧力が過度になりにくい。なお、本開示において、溶融粘度とは、ISO11443に準拠して測定した溶融粘度をいう。
【0032】
一実施形態において、(A)成分の流動開始温度は、310℃以下が好ましく、300℃以下がより好ましく、295℃以下がさらに好ましい。流動開始温度が310℃以下であれば、低温での溶融加工性に優れた液晶性全芳香族ポリエステルとなりやすい。一実施形態において、(A)成分は、流動開始温度が292℃以下であってもよい。また、一実施形態において、(A)成分は、流動開始温度を290℃以下又は280℃以下にすることもできる。
【0033】
なお、流動開始温度とは、(A)成分を加熱昇温させていった際に、外力によって流動性を示す温度であり、以下の方法により測定することができる。すなわち、流動開始温度は、毛細管型レオメーター(例えば、(株)島津製作所製、製品名「フローテスターCFT-500型」)を用い、4℃/minの昇温速度で加熱溶融されたサンプル樹脂を100kg/cmの加重下で、内径1mm、長さ10mmのノズルから押出した時に、溶融粘度が48000ポイズを示す温度(℃)として測定する。
【0034】
<(A)全芳香族ポリエステルの製造方法>
次に、(A)全芳香族ポリエステルの製造方法について説明する。
本実施形態に係る樹脂組成物に含まれる(A)全芳香族ポリエステルは、芳香族ジオール成分を、脂肪酸無水物を用いてアシル化させたのち、芳香族ジカルボン酸成分と重縮合させることを含む方法によって、製造できる。
芳香族ジオール成分は、4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP)及び2,6-ジヒドロキシナフタレン(NDO)から選択される少なくとも1つと、1,4-ジヒドロキシベンゼン(HQ)とを含む。また芳香族ジカルボン酸成分は、1,4-フェニレンジカルボン酸(TA)及び2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA)を含む。
【0035】
一実施形態において、芳香族ジオール成分は、BP及びNDOから選択される少なくとも1つと、HQと、レゾルシノール(RES)とを含んでいてもよい。一実施形態において、芳香族ジカルボン酸成分は、TAと、NDAと、1,3-フェニレンジカルボン酸(IA)とを含んでいてもよい。また、これら、TA、IA、NDA、BP、NDO、HQ及びRESは、それぞれ、その重合可能な誘導体を含み得る。重合可能な誘導体としては、例えば、前述のアルキルエステル(アルキル基の炭素数は1~4程度が好ましい)、またはハロゲン化物等が挙げられる。
【0036】
(アシル化剤)
脂肪酸無水物は、アシル化剤としての作用を有する。脂肪酸無水物としては、例えば、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸、無水吉草酸、無水ピバル酸、無水2-エチルヘキサン酸、無水モノクロル酢酸、無水ジクロル酢酸、無水トリクロル酢酸、無水モノブロモ酢酸、無水ジブロモ酢酸、無水トリブロモ酢酸、無水モノフルオロ酢酸、無水ジフルオロ酢酸、無水トリフルオロ酢酸、無水グルタル酸、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水β-ブロモプロピオン酸等が挙げられる。脂肪酸無水物は、これらから選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。
【0037】
価格と取り扱い性の観点から好適なものとしては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸、無水イソ酪酸等の無水カルボン酸等を挙げることができ、これらから選択される少なくとも1つを用いることが好ましい。中でも、入手の容易さの点で、脂肪酸無水物は無水酢酸を含むことが好ましい。
【0038】
脂肪酸無水物の使用量は、反応制御の容易さの点で、芳香族ジオール成分の水酸基総量(すなわち、BP及びNDOから選択される少なくとも1つと、HQと、必要に応じてRESを含む芳香族ジオール成分の水酸基総量)に対して、1.0~1.1当量であることが好ましく、1.01~1.05当量であることがより好ましい。
【0039】
BP及びNDOから選択される少なくとも1つの合計の使用量は、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、15~30モル%であり、15~28.75モル%が好ましく、15~27.5モル%がより好ましく、17.5~26モル%がさらに好ましい。一実施形態において、前記BP及びNDOの合計の使用量は、前記全モノマーに対して、18~26モル%であってもよく、19~25.5モル%であってもよく、20~25モル%であってもよい。
【0040】
HQの使用量は、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、20~35モル%であり、21.25~35モル%が好ましく、22.5~35モル%がより好ましく、24~32.5モル%がさらに好ましい。一実施形態において、前記HQの使用量は、前記全モノマーに対して、24.5~32モル%であってもよく、24.5~31モル%であってもよく、25~30モル%であってもよい。
【0041】
構成単位(V)を含む(A)成分を調製する場合は、芳香族ジオール成分としてRESを含むことができる。RESは、BP及びNDOから選択される少なくとも1つと、HQと、RESとの合計の使用量が、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、47.5~52.5モル%となるように配合することができる。前記合計の使用量は、前記全モノマーに対して、48.75~51.25モル%が好ましく、50モル%が特に好ましい。
【0042】
アシル化は、公知の方法により行うことができる。例えば、BP及びNDOから選択される少なくとも1つと、HQと、必要に応じてRESとを、脂肪酸無水物と混合し、120~160℃の温度範囲で、0.5~5時間程度加熱して、アシル化物を含む反応生成物を得てもよい。
【0043】
(重縮合反応)
次いで、上記アシル化により得られたアシル化物と、TA及びNDAとを重縮合させる。一実施形態においては、前記アシル化物を、TA、NDA及びIAと重縮合させてもよい。
【0044】
TAの使用量は、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、15~30モル%であり、15~28.75モル%が好ましく、15~27.5モル%がより好ましく、17.5~26モル%がさらに好ましい。一実施形態において、TAの使用量は、前記全モノマーに対して、18~26モル%であってもよく、19~25.5モル%であってもよく、20~25モル%であってもよい。
【0045】
NDAの使用量は、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、20~35モル%であり、21.25~35モル%が好ましく、22.5~35モル%がより好ましく、24~32.5モル%がさらに好ましい。一実施形態において、NDAの使用量は、前記全モノマーに対して、24.5~32モル%であってもよく、24.5~31モル%であってもよく、25~30モル%であってもよい。
【0046】
構成単位(VI)を含む(A)成分を調製する場合は、芳香族ジカルボン酸成分として、IAを含むことができる。IAは、TA、NDA及びIAの合計の使用量が、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、47.5~52.5モル%となるように配合することができる。前記合計の使用量は、前記全モノマーに対して、48.75~51.25モル%が好ましく、50モル%が特に好ましい。
【0047】
重縮合反応は、公知の方法により行うことができる。例えば、BP及びNDOから選択される少なくとも1つと、HQとのアシル化物(必要に応じてRESのアシル化物を含む)を、TA及びNDA(必要に応じて、IAを含む)と混合し、200~400℃の温度範囲で、2~12時間程度加熱して重縮合させる。
【0048】
一実施形態において、TA、NDA、BP及びNDAから選択される少なくとも1つ、及びHQの合計の使用量は、(A)成分を構成するための全モノマーに対して、90~100モル%が好ましく、95~100モル%がより好ましい。前記合計の使用量は100モル%であってもよい。
【0049】
重縮合反応に際しては、溶融重合法、溶液重合法、スラリー重合法、固相重合法等、又はこれらの2種以上の組み合わせが用いられ、溶融重合法、又は溶融重合法と固相重合法との組み合わせが好ましく用いられる。
【0050】
上記重縮合反応により製造された(A)全芳香族ポリエステルは、さらに常圧又は減圧下で、不活性ガス中で加熱する固相重合により分子量の増加を図ることができる。
固相重合は、従来公知の方法を用いることができる。例えば、減圧又は真空下、窒素ガス等の不活性ガス気流中で、原料樹脂(重縮合反応により得られた全芳香族ポリエステル)の液晶形成温度よりも10~120℃低い温度で加熱することにより行うことができる。なお、全芳香族ポリエステルは固相重合が進むにしたがってその融点も上昇するので、原料樹脂の元の融点以上で固相重合することも可能である。固相重合は、一定の温度で実施してもよいし段階的に高温にしてもよい。加熱方法は、特に限定されず、マイクロ波加熱、ヒータ加熱等を用いることができる。
【0051】
上記各反応に際しては、公知の触媒を用いることができる。代表的なものとしては、酢酸カリウム、酢酸マグネシウム、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸鉛、酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、トリス(2,4-ペンタンジオナト)コバルト(III)等の金属塩系触媒、1-メチルイミダゾール、4-ジメチルアミノピリジン等の有機化合物系触媒を挙げることができる。触媒は、これらから選択される少なくとも1つを含むことが好ましい。触媒は、アシル化反応、重縮合反応(必要に応じて固相重合反応)において同じ触媒を使用してもよい。
【0052】
上記各反応は、全原料モノマー、脂肪酸無水物及び触媒を、同一反応容器に仕込んで反応を開始させることもできるし(一段方式)、前述の芳香族ジオール成分を脂肪酸無水物によりアシル化させた後、別途、前述の芳香族ジカルボン酸成分と反応させることもできる(二段方式)。
【0053】
<(B)非繊維状充填剤>
本実施形態に係る樹脂組成物は、(B)非繊維状充填剤を含む。(B)非繊維状充填剤(以下、「(B)成分」と記載することもある)は、板状又は粒状の充填剤を指す。本実施形態に係る樹脂組成物において、(B)成分は、メディアン径が50μm以下の、板状充填剤及び粒状充填剤からなる群より選択される少なくとも1つの充填剤を含む。本実施形態に係る樹脂組成物は、(A)成分を(B)成分と組み合わせることで、低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好な成形品を得ることができる。なお、本開示において、メディアン径はレーザー回折/散乱法で測定した体積基準の中央値の粒子径(D50)を指す。具体的には、レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置(例えば、(株)堀場製作所製、製品名:レーザー回折/散乱式粒度分布測定装置LA-920)を用いて、測定した値を指す。
【0054】
(板状充填剤)
(B)成分は、メディアン径が50μm以下の板状充填剤を含むことができる。板状充填剤のメディアン径は5~50μmが好ましく、5~40μmがより好ましく、10~40μmがさらに好ましい。また、板状充填剤のメディアン径は10~25μmであってもよい。(B)成分が板状充填剤を含む場合、板状充填剤のメディアン径が前記範囲内であれば、樹脂組成物の流動性が低下するのを防ぎ、かつ成形品の靭性がより向上しやすくなる。
【0055】
板状充填剤としては、例えば、タルク、マイカ、ガラスフレーク、各種の金属箔等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。これらのうち、樹脂組成物の流動性を悪化させることなく、得られる成形品の靭性がより向上しやすく、かつ低発塵性を達成しやすい観点からは、タルク及びマイカからなる群より選ばれる少なくとも1つを含むことが好ましい。
【0056】
(タルク)
(B)成分として好ましく使用できるタルクとしては、例えば、タルクの全固形分量に対して、Fe、Al及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であり、Fe及びAlの合計含有量が1.0質量%超2.0質量%以下であり、かつCaOの含有量が0.5質量%未満のものが挙げられる。即ち、タルクとしては、その主成分たるSiO及びMgOの他、Fe、Al及びCaOのうちの少なくとも1種を含み、各成分を上記の含有量範囲で含有するものであってもよい。
【0057】
なお、上記のタルクにおいて、Fe、Al及びCaOの合計含有量が2.5質量%以下であれば、樹脂組成物の成形加工性及び得られる成形品の耐熱性が悪化しにくい。一実施形態において、Fe、Al及びCaOの合計含有量は、1.0~2.0質量%であることがより好ましい。
【0058】
また、上記のタルクにおいて、Fe及びAlの合計含有量が1.0質量%超2.0質量%以下のものは、入手がより容易であり、かつ樹脂組成物の成形加工性及び得られる成形品の耐熱性が悪化しにくい。一実施形態において、タルクのFe及びAlの合計含有量は、1.0質量%超1.7質量%以下がより好ましい。
【0059】
一実施形態において、上記のタルクに含まれるCaO含有量は、0.5質量%未満であることが好ましい。CaO含有量が0.5質量%未満であれば、樹脂組成物の成形加工性及び得られる成形品の耐熱性が悪化しにくい。一実施形態において、タルクのCaO含有量は、0.01~0.4質量%がより好ましい。
【0060】
(マイカ)
マイカとは、アルミニウム、カリウム、マグネシウム、ナトリウム、鉄等を含んだケイ酸塩鉱物の粉砕物を指す。(C)成分として好ましく使用できるマイカとしては、例えば、白雲母、金雲母、黒雲母、人造雲母等が挙げられるが、これらのうち色相が良好であり、低価格であるという点で白雲母が好ましい。
【0061】
マイカの製造方法としては特に限定されないが、所望のメディアン径及び厚みを有するマイカが得られやすいという観点からは、湿式粉砕法によって得られたマイカが好ましい。
【0062】
(粒状充填剤)
(B)成分は、メディアン径が50μm以下の粒状充填剤を含むことができる。粒状充填剤のメディアン径は0.1~20μmが好ましく、0.1~10μmがより好ましく、0.5~10μmがさらに好ましい。粒状充填剤を含む場合、粒状充填剤のメディアン径が前記範囲内であれば、樹脂組成物の流動性が低下するのを防ぎ、かつ成形品の靭性がより向上しやすくなる。粒状充填剤としては、例えば、シリカ、石英粉末、ガラスビーズ、ガラス粉、硅酸カルシウム、硅酸アルミニウム、カオリン、クレー、珪藻土、ウォラストナイト等の硅酸塩;酸化鉄、酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ等の金属酸化物;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の金属炭酸塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム等の金属硫酸塩;炭化硅素;窒化硅素;窒化硼素等が挙げられる。これらは1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。このうち、樹脂組成物の流動性を悪化させることなく、得られる成形品の靭性がより向上しやすく、かつ低発塵性を達成しやすい観点からは、珪酸塩及び金属硫酸塩から選択される少なくとも1つを含むことが好ましく、シリカ及び硫酸バリウムから選択される少なくとも1つを含むことがより好ましい。
【0063】
一実施形態において、(B)成分は、タルク、マイカ、シリカ及び硫酸バリウムからなる群より選択される少なくとも1つの充填剤を含むことが好ましく、タルク又はマイカを含むことがより好ましい。
【0064】
樹脂組成物中の(B)成分の含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、10~40質量%であり、10~35質量%が好ましく、15~35質量%がより好ましく、15~30質量%がさらに好ましく、20~30質量%が特に好ましい。一実施形態において、(B)成分の含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、10~25質量%であってもよく、10~20質量%であってもよい。(B)成分の含有量が前記範囲内であれば、得られる成形品の低発塵性、靭性及び耐熱性を両立しやすい。
【0065】
<(C)エポキシ基含有重合体>
一実施形態において、樹脂組成物はさらに(C)エポキシ基含有重合体を含むことができる。(C)エポキシ基含有重合体(以下、「(C)成分」と記載することもある)は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。
(C)成分としては、本発明の効果を有する限り特に限定されず、例えば、(C1)エポキシ基含有オレフィン系重合体及び(C2)エポキシ基含有スチレン系重合体からなる群より選択される少なくとも1つが挙げられる。(C)成分を含むことにより、本実施形態に係る樹脂組成物より得られる成形体の低発塵性がより良好となりやすい。
【0066】
((C1)エポキシ基含有オレフィン系重合体)
一実施形態において、(C)成分は、(C1)エポキシ基含有オレフィン系重合体を含むことができる。(C1)エポキシ基含有オレフィン系重合体(以下、「(C1)成分」と記載することもある)としては、例えば、α-オレフィンに由来する繰り返し単位及びα,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位から構成される共重合体が挙げられる。
【0067】
α-オレフィンとしては特に限定されず、例えば、エチレン、プロピレン、ブテン等が挙げられ、中でもエチレンが好ましく用いられる。
α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとは、下記一般式(1)で表される化合物である。下記一般式(1)中、R’は、水素、炭素数1~5の低級アルキル基又は-R-COOH基(Rは、炭素数1~5のアルキレン基を表す)を表す。このうち、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルとしては、アクリル酸グリシジルエステル、メタクリル酸グリシジルエステル、エタクリル酸グリシジルエステル、イタコン酸グリシジルエステルが好ましい。低発塵性がより良好となりやすい観点からは、メタクリル酸グリシジルエステルを含むことが特に好ましい。
【化8】
【0068】
一実施形態において、(C1)成分の、α-オレフィンに由来する繰り返し単位の含有量は、(C1)成分の全構成単位に対して、87~98質量%であることが好ましく、90~97質量%がより好ましい。また、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位の含有量は、全構成単位に対して、2~13質量%であることが好ましく、3~10質量%がより好ましい。なお、前記含有量は、H-NMR測定等から算出することができる。
【0069】
一実施形態において、(C1)成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記2成分以外に第3成分としてアクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、α-メチルスチレン、無水マレイン酸等のオレフィン系不飽和エステルの1種又は2種以上に由来する繰り返し単位を含んでいてもよい。第3成分を含む場合、上記2成分の合計量(100質量部)に対し0~48質量部の範囲で含有することができる。
【0070】
(C1)成分は、前述の各成分に対応するモノマー及びラジカル重合触媒を用いて通常のラジカル重合法により調製できる。具体的には、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとを、ラジカル重合触媒の存在下、500~4000気圧、100~300℃で共重合させることにより製造できる。前記重合は溶媒や連鎖移動剤の存在下又は不存在下で行われてもよい。その他、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステル及びラジカル重合触媒とを混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造できる。
【0071】
((C2)エポキシ基含有スチレン系重合体)
一実施形態において、(C)成分は、(C2)エポキシ基含有スチレン系重合体(以下、「(C2)成分」と記載することもある)を含むことができる。(C2)成分としては、例えば、スチレン類に由来する繰り返し単位及びα,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位とから構成される共重合体が挙げられる。α,β-不飽和酸のグリシジルエステルは、(C1)成分と同様のものが例示でき、好ましい例もまた同様である。
【0072】
スチレン類としては、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、ハロゲン化スチレン(例えば、ブロム化スチレン等)、ジビニルベンゼン等が挙げられる。このうち、スチレンが好ましく用いられる。
【0073】
一実施形態において、(C2)成分には、本発明の効果を損なわない範囲で、上記2成分以外に第3成分として、他のビニルモノマーの1種又は2種以上に由来する繰り返し単位を含有する多元共重合体であってもよい。第3成分として好適なものは、アクリロニトリル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、無水マレイン酸等のオレフィン系不飽和エステルの1種又は2種以上に由来する繰り返し単位である。(C2)成分としては、前記第3成分に由来する繰り返し単位を、共重合体中に40質量%以下含有するエポキシ基含有スチレン系重合体が好ましい。
【0074】
一実施形態において、(C2)成分の、α,β-不飽和酸のグリシジルエステルに由来する繰り返し単位の含有量は、(C2)成分の全構成単位に対して、2~20質量%であることが好ましい。また、スチレン類に由来する繰り返し単位の含有量は、全構成単位に対して、80~98質量%であることが好ましい。なお、前記含有量は、H-NMR測定等から算出することができる。
【0075】
(C2)成分は、前述の各成分に対応するモノマー及びラジカル重合触媒を用いて通常のラジカル重合法により調製することができる。具体的には、スチレン類とα,β-不飽和酸のグリシジルエステルとを、ラジカル重合触媒の存在下、500~4000気圧、100~300℃で共重合させることにより製造できる。前記重合は溶媒や連鎖移動剤の存在下又は不存在下で行われてもよい。その他、α-オレフィンとα,β-不飽和酸のグリシジルエステル及びラジカル重合触媒とを混合し、押出機の中で溶融グラフト共重合させる方法によっても製造できる。
【0076】
一実施形態において、得られる成形品の耐熱性がより良好となりやすい観点からは、(C)成分として、(C1)成分を含むことが好ましい。
なお、(C1)成分と(C2)成分とを併用する場合、これら成分同士の割合は、適宜、要求される特性に沿って選択することができる。
【0077】
一実施形態において、樹脂組成物中の(C)成分の含有量は、樹脂組成物の総質量に対して、1~7質量%が好ましく、1.5~6.5質量%がより好ましく、2~6質量%がさらに好ましい。(C)成分の含有量が前記範囲内であれば、靭性、耐熱性及び流動性等の物性を損なうことなく、低発塵性がより良好となるため好ましい。
【0078】
(その他の成分)
本実施形態に係る樹脂組成物は、上述の(A)~(C)成分の他に、核剤、カーボンブラック、無機焼成顔料等の顔料、酸化防止剤、安定剤、可塑剤、滑剤、離型剤、難燃剤、公知の無機充填剤((B)成分以外の無機充填剤)等のその他の成分を含むことができる。これらその他の成分は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を併用してもよい。樹脂組成物がその他の成分を含む場合、樹脂組成物の総質量に対して、5質量%以下の範囲で含むことができる。なお、得られる成形品の低発塵性の観点からは、繊維状充填剤を含まないことが好ましい。
【0079】
本実施形態に係る樹脂組成物は、流動性に優れるため成形性も良好である。一実施形態において、(A)成分の融点より10~40℃高い温度、剪断速度1000/秒の条件で、ISO 11443に準拠した方法で測定した、樹脂組成物の溶融粘度は、50Pa・s以下であることが好ましく、40Pa・s以下であることがより好ましい。
【0080】
[樹脂組成物の製造方法]
本実施形態に係る樹脂組成物の製造方法としては、(A)~(B)成分、必要に応じて(C)成分及びその他の成分を均一に混合できる方法であれば、特に限定されず、従来公知の樹脂組成物の製造方法を適宜選択することができる。例えば、1軸又は2軸押出機等の溶融混練装置を用いて、各成分を溶融混練して押出した後、得られた樹脂組成物を、粉末、フレーク、ペレット等の所望の形態に加工する方法が挙げられる。
【0081】
[成形品]
本実施形態に係る成形品は、前述の樹脂組成物を成形して得られる。本実施形態に係る成形品は、前述の(A)全芳香族ポリエステルを含むため、流動性、耐熱性及び靭性に優れている。また、(A)成分と、特定量の(B)成分とを組み合わせているため、低発塵性も達成できる。
【0082】
本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られる成形品は、前述の通り、靭性に優れ、かつ低発塵性を達成できる。一実施形態において、成形品の、ISO178に準拠した方法で測定した曲げ歪み(破壊点)は、5.0%以上が好ましく、5.5%以上がより好ましく、6.0%以上がさらに好ましい。
【0083】
また、本実施形態に係る成形品は、前述の(A)成分を特定量含んでいるため、耐熱性も良好である。一実施形態において、成形品の、ISO75-1,2に準拠した方法で測定した荷重たわみ温度は、200℃以上であることが好ましく、210℃以上であることがより好ましい。
【0084】
<成形品の製造方法>
本実施形態に係る成形品を製造する方法としては、特に限定されず一般的な成形方法を採用することができる。例えば、射出成形、押出成形、圧縮成形、ブロー成形、真空成形、発泡成形、回転成形、ガスインジェクション成形、インフレーション成形等によって成形することができる。
【0085】
[用途]
本実施形態に係る樹脂組成物は、流動性に優れている。また、前記樹脂組成物から得られる成形品は、低発塵性及び靭性に優れ、かつ耐熱性も良好である。そのため、精密機器用途、特にカメラモジュール部品として好適に用いることができる。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物の一態様は、カメラモジュール部品を製造するための原料としての使用である。
【0086】
<カメラモジュール部品>
本実施形態に係る樹脂組成物の成形品は、カメラモジュール部品として使用できる。すなわち、本実施形態に係る樹脂組成物を用いて、カメラモジュール部品を製造できる。本実施形態に係る樹脂組成物を用いることで、低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好なカメラモジュール部品を得ることができる。以下、本実施形態に係る樹脂組成物を成形して得られるカメラモジュール部品の一例について説明する。
【0087】
図1は、一般的なカメラモジュールの断面を模式的に示した断面図である。図1のカメラモジュール1は、基板10と、光学素子11と、リード配線12と、ホルダー13と、バレル14と、レンズ15と、IRフィルター16とを備える。
【0088】
光学素子11は基板10上に配置されており、光学素子11と基板10との間はリード配線12で電気的に接続されている。
【0089】
ホルダー13は、基板10上に配置されており、光学素子11を覆うように配置されている。ホルダー13の頂部は開口しており、この開口部の壁面には螺旋状の溝部が形成されている。
【0090】
バレル14は円筒状であり、円筒状の内部にレンズ15が略水平となるように保持されている。また、円筒の一端の側壁には螺旋状の凸部が形成されており、この螺旋状の凸部と、ホルダー13の開口部の壁面に形成された螺旋状の溝部とが螺合することで、バレル14がホルダー13と連結している。また、円筒状のバレル14の一端を閉じるように、IRフィルター16が、バレル14の一端に配置されている。図1では、IRフィルター16とレンズ15は略平行となるように配置されている。
【0091】
図1のカメラモジュール1においては、バレル14が回転することによって、レンズ15と光学素子11との間の距離が変化する。この距離を調整することでカメラのフォーカス調整を行うことができる。具体的には、ホルダー13の開口部の壁面に形成された螺旋状の溝部を、バレル14の端部の側壁に形成された螺旋状の凸部が移動することで、フォーカス調整が行われる。このとき、上記螺旋状の溝部と上記螺旋状の凸部とは接触面で擦れ合うため、摩耗して発塵することがある。本実施形態に係る樹脂組成物から得られる成形品は、低発塵性かつ靭性に優れるため、部品同士の衝突や摩耗による発塵を抑制できる。そのため、本実施形態に係る樹脂組成物は、例えば、前述のホルダー13やバレル14のようなカメラモジュール部品を製造するための原料として、好適に用いることができる。なお、本開示において、「発塵性」は、成形品を超音波洗浄機で洗浄した際に発生するダストの数で評価することができる。
【実施例0092】
以下に実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、これらの実施例により本発明の解釈が限定されるものではない。
【0093】
[実施例1]
((A)全芳香族ポリエステルの調製)
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、及び脂肪酸無水物を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)1,4-フェニレンジカルボン酸(TA) 0.5モル(25モル%)
(II)2,6-ナフタレンジカルボン酸(NDA) 0.5モル(25モル%)
(III)4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP) 0.5モル(25モル%)
(IV)1,4-ジヒドロキシベンゼン(HQ) 0.5モル(25モル%)
酢酸カリウム触媒 150ppm
無水酢酸 2.08モル(BP及びHQの水酸基総量に対して1.04当量)
【0094】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で3時間反応させた(アシル化工程)。その後、さらに360℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合反応工程)。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして、(A)全芳香族ポリエステルのペレットを得た。
【0095】
[樹脂組成物の調製]
上記で調製した(A)全芳香族ポリエステル75質量%と、(B)非繊維状充填剤として、マイカ((株)ヤマグチマイカ製、製品名:AB-25S)25質量%とを、二軸押出機((株)日本製鋼所製、製品名:TEX30α)を用いて、シリンダー温度350℃にて溶融混練し、実施例1の樹脂組成物のペレットを得た。また、以下の方法で、樹脂組成物の溶融粘度、荷重たわみ温度、曲げ歪み(破壊点)及びダスト発生数を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
<樹脂組成物の溶融粘度の測定>
得られた樹脂組成物を、キャピラリー式レオメーター((株)東洋精機製作所製、製品名:キャピログラフ)を使用し、以下のシリンダー温度、剪断速度1000/秒で、ISO11443に準拠して、樹脂組成物の溶融粘度を測定した。測定には、内径1mm、長さ20mmのオリフィスを用いた。
シリンダー温度:
実施例1、実施例5~8、比較例2:350℃
実施例2~4、比較例1:370℃
【0097】
<荷重たわみ温度の測定>
得られた樹脂組成物のペレットを、下記の成形条件で射出成形して、80mm×10mm×4mmの曲げ試験片を作成した。得られた試験片について、ISO75-1,2に準拠して、荷重たわみ温度を測定した。なお、曲げ応力は1.8MPaとした。
(成形条件)
・成形機:住友重機械工業(株)製、製品名:SE100DU
・シリンダー温度:
実施例1、実施例5~8、比較例2:350℃
実施例2~4、比較例1:370℃
・金型温度:80℃
・射出速度:33mm/sec
・保圧:50MPa
【0098】
<曲げ歪み(破壊点)の測定>
得られた樹脂組成物のペレットを、下記の成形条件で射出成形して、80mm×10mm×4mmの曲げ試験片を作成した。得られた試験片について、ISO178に準拠して、以下の試験条件で、曲げ歪み(破壊点)を測定した。
(成形条件)
・成形機:住友重機械工業(株)製、製品名:SE100DU
・シリンダー温度:
実施例1、実施例5~8、比較例2:350℃
実施例2~4、比較例1:370℃
・金型温度:90℃
・射出速度:33mm/sec
・保圧:50MPa
(試験条件)
・試験速度:2.0mm/min
・支点間距離:64mm
・圧子の半径:5mm
・支持台の半径:5mm
・弾性率:割線法
【0099】
<ダスト発生数>
得られた樹脂組成物のペレットを下記条件で射出成形して、12.5mm×120mm×0.8mmの試験片を作成した。前記試験片を、超音波洗浄機(出力300W、周波数45kHz)に浸漬し、室温の水中(80mL)で3分間超音波洗浄を行った。その後、パーティクルカウンター(RION(株)製、製品名:液中微粒子計数器KL-11A(PARTICLECOUNTER))にて、上記水10mL中に存在する2μm以上の粒子数を測定し、ダスト発生数として評価した。結果を表1に示す。
(成形条件)
・成形機:住友重機械工業(株)製、製品名:SE30DUZ
・シリンダー温度:
実施例1、実施例5~8、比較例2:350℃
実施例2~4、比較例1:370℃
・金型温度:80℃
・射出速度:100mm/sec
【0100】
[実施例2~8、比較例3~6]
原料モノマー及びその配合量を表1に記載のとおりとした以外は、実施例1と同じ方法で(A)全芳香族ポリエステルのペレットを調製した。次いで、(A)~(B)成分の配合量(実施例7は(A)~(C)成分の配合量)を表1に示す通りとした以外は、実施例1と同じ方法で樹脂組成物のペレットを得た。得られた樹脂組成物のペレットについて、実施例1と同じ方法で、溶融粘度、荷重たわみ温度、曲げ歪み(破壊点)及びダスト発生数を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
[比較例1]
撹拌機、還流カラム、モノマー投入口、窒素導入口、減圧/流出ラインを備えた重合容器に、以下の原料モノマー、脂肪酸金属塩触媒、及び脂肪酸無水物を仕込み、窒素置換を開始した。
(I)1,4-フェニレンジカルボン酸(TA) 0.46モル(25モル%)
(III)4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP) 0.46モル(25モル%)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA) 0.037モル(2モル%)
6-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸(HNA) 0.883モル(48モル%)
酢酸カリウム触媒 150ppm
無水酢酸 1.914モル(BP、HBA及びHNAの水酸基総量に対して1.04当量)
【0102】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で3時間反応させた(アシル化工程)。その後、さらに360℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合反応工程)。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして、全芳香族ポリエステルのペレットを得た。次いで、上記で調製した全芳香族ポリエステルを用いて、表1に示す配合で樹脂組成物のペレットを調製した。樹脂組成物の調製は実施例1と同じ方法で行った。得られた樹脂組成物のペレットについて、実施例1と同じ方法で、溶融粘度、荷重たわみ温度、曲げ歪み(破壊点)及びダスト発生数を測定した。結果を表1に示す。
【0103】
[比較例2]
(I)1,4-フェニレンジカルボン酸(TA) 0.28モル(14モル%)
(VI)1,3-フェニレンジカルボン酸(IA) 0.12モル(6モル%)
(III)4,4’-ジヒドロキシビフェニル(BP) 0.4モル(20モル%)
4-ヒドロキシ安息香酸(HBA) 1.2モル(60モル%)
酢酸カリウム触媒 150ppm
無水酢酸 2.08モル(BP及びHBAの水酸基総量に対して1.04当量)
【0104】
原料を仕込んだ後、反応系の温度を140℃に上げ、140℃で3時間反応させた(アシル化工程)。その後、さらに360℃まで4.5時間かけて昇温し、そこから15分かけて10Torr(即ち1330Pa)まで減圧して、酢酸、過剰の無水酢酸、及びその他の低沸分を留出させながら重縮合を行った(重縮合反応工程)。撹拌トルクが所定の値に達した後、窒素を導入して減圧状態から常圧を経て加圧状態にして、重合容器の下部からポリマーを排出した。その後、ストランドをペレタイズして全芳香族ポリエステルのペレットを得た。次いで、上記で調製した全芳香族ポリエステルを用いて、表1に示す配合で樹脂組成物のペレットを調製した。樹脂組成物の調製は実施例1と同じ方法で行った。得られた樹脂組成物のペレットについて、実施例1と同じ方法で、溶融粘度、荷重たわみ温度、曲げ歪み(破壊点)及びダスト発生数を測定した。結果を表1に示す。
【0105】
本実施例で使用した材料は以下のとおりである。
(B)非繊維状充填剤
マイカ:(株)ヤマグチマイカ製、製品名:AB-25S、メディアン径:25.0μm。
タルク:松村産業(株)製、製品名:クラウンタルクPP、メディアン径:14.6μm。
(C)エポキシ基含有重合体
(C1)エチレン-グリシジルメタクリレート共重合体:住友化学(株)社製、製品名:ボンドファースト(登録商標)2C、グリシジルメタクリレートの含有量6質量%。
【0106】
【表1】
【0107】
表1に示すように、本発明の構成を満たす実施例1~8の樹脂組成物より得られた成形品は、溶融粘度が低く流動性に優れていた。また、荷重たわみ温度が高く、耐熱性にも優れていた。さらに、曲げ歪み(破壊点)が6.0%以上であり、靭性にも優れていた。さらに、ダスト発生数も少なかった。一方、本発明の構成を満たさない全芳香族ポリエステルを含む比較例1及び2の樹脂組成物から得られた成形品は、流動性及び耐熱性は良好であったものの、靭性が低く、かつダスト発生数も多かった。比較例3~6は、全芳香族ポリエステルの重合時に固化が発生し、ポリマーが得られなかった。以上の結果より、本発明の構成を満たす樹脂組成物からは、低発塵性及び靭性に優れ、かつ流動性及び耐熱性も良好な成形品が得られることが確認された。このような成形品は、精密機器、特にカメラモジュール部品として好適に利用できる。
【符号の説明】
【0108】
1 カメラモジュール
10 基 板
11 光学素子
12 リード配線
13 ホルダー
14 バレル
15 レンズ
16 IRフィルター

図1