(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051542
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】セラミックス焼結体基板、発光装置及びそれらの製造方法
(51)【国際特許分類】
H05K 3/12 20060101AFI20240404BHJP
H01L 33/62 20100101ALI20240404BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240404BHJP
H05K 3/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H05K3/12 610G
H01L33/62
H05K1/03 610D
H05K3/10 E
H05K3/12 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】27
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157761
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝又 雅昭
(72)【発明者】
【氏名】長江 明子
【テーマコード(参考)】
5E343
5F142
【Fターム(参考)】
5E343AA07
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5F142FA16
5F142GA29
(57)【要約】
【課題】信頼性の高いセラミックス焼結体基板、発光装置及びそれらの製造方法を提供する。
【解決手段】セラミックス焼結体基板の製造方法は、セラミックス基板の表面に第1金属ペーストを配置することと、前記第1金属ペーストを配置した前記セラミックス基板を焼成することと、を含み、前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属ペーストは、複数の第1金属粉体と、複数の第2金属粉体と、複数の活性金属粉体と、を含み、前記第1金属粉体は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、前記第2金属粉体は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低く、前記セラミックス基板を焼成することにおいて、焼成温度は、前記第2金属粉体の融点以上、前記被覆部材の融点以下の温度である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス基板の表面に第1金属ペーストを配置することと、
前記第1金属ペーストを配置した前記セラミックス基板を焼成することと、を含み、
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属ペーストは、複数の第1金属粉体と、複数の第2金属粉体と、複数の活性金属粉体と、を含み、
前記第1金属粉体は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、
前記第2金属粉体は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低く、
前記セラミックス基板を焼成することにおいて、焼成温度は、前記第2金属粉体の融点以上、前記被覆部材の融点以下の温度である、セラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項2】
前記第1金属ペーストを配置する前に、貫通孔がある前記セラミックス基板を準備することと、
前記貫通孔内に前記第1金属ペーストを配置することと、を含む請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項3】
前記第1金属ペーストを配置した後、前記セラミックス基板を焼成する前に、さらに、前記第1金属ペーストを乾燥することと、乾燥させた前記第1金属ペーストを加圧することと、を含む請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項4】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属粉体のコアは、Al、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項5】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記被覆部材は、Cu、Cr、Ni、Au、Pt、Pd、Rhから選ばれる少なくとも1種を含む請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項6】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第2金属粉体は、Ag、Al、Zn、Sn、Ag-Cu合金から選択される少なくとも1種を含む請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項7】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記コアの融点は、200℃以上690℃以下である、請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項8】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記被覆部材の融点は、1050℃以上2500℃以下である、請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項9】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第2金属粉体の融点は、700℃以上1000℃以下である、請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項10】
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属ペーストは、さらに有機バインダを含む、請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項11】
前記セラミックス基板を焼成することにおいて、前記焼成温度は、700℃以上1000℃以下である、請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項12】
前記第1金属ペーストを配置した後、前記セラミックス基板を焼成する前に、前記第1金属ペーストと少なくとも一部が接触するように前記セラミックス基板上又は前記第1金属ペースト上に第2金属ペーストを配置する、請求項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
【請求項13】
前記セラミックス基板を焼成することによって、前記第1金属ペーストは第1金属部材となり、
請求項1から請求項11のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法によりセラミックス焼結体基板を製造した後に、
前記セラミックス焼結体基板に発光素子を配置することと、
配置された前記第1金属部材と、前記発光素子と、を直接又は間接に電気的に接続することと、を含む発光装置の製造方法。
【請求項14】
前記セラミックス基板を焼成することによって、前記第1金属ペーストは第1金属部材となり、前記第2金属ペーストは第2金属部材となり、
請求項12に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法により製造したセラミックス焼結体基板を準備することと、
前記セラミックス焼結体基板に発光素子を配置することと、を含み、
配置された前記第1金属部材又は前記第2金属部材と、前記発光素子と、を直接又は間接に電気的に接続する、発光装置の製造方法。
【請求項15】
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の表面に配置される第1金属部材と、を備え、
前記第1金属部材は、第1金属と、第2金属と、金属化合物と、を含み、
前記第1金属は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、
前記第2金属は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低い、セラミックス焼結体基板。
【請求項16】
前記セラミックス基板は貫通孔を有し、
前記貫通孔内に前記第1金属部材を配置し、
前記貫通孔の内壁に前記金属化合物が少なくとも一部ある請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項17】
前記コアは、Al、Zn、Snから選択される少なくとも1種を含む、請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項18】
前記被覆部材は、Cu、Cr、Ni、Au、Pt、Pd、Rhから選択される少なくとも1種を含む、請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項19】
前記第2金属は、Ag、Al、Zn、Sn、Ag-Cu合金から選択される少なくとも1種を含む、請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項20】
前記セラミックス基板は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素から選択される少なくとも1種を含む、請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項21】
前記第1金属は、連続する前記第2金属中に分散されている、請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項22】
前記第1金属のメジアン径は、1μm以上50μm以下である、請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項23】
前記セラミックス基板は、前記セラミックス基板の表面、又は、前記貫通孔の内壁に前記金属化合物の反応層がある、請求項16に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項24】
前記貫通孔の直径は、0.05mm以上0.5mm以下である、請求項16に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項25】
前記第1金属部材上に配置する第2金属部材を備える請求項15に記載のセラミックス焼結体基板。
【請求項26】
請求項15から請求項24のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板と、前記セラミックス焼結体基板に備える前記第1金属部材に電気的に接続される発光素子と、を備える発光装置。
【請求項27】
請求項25に記載のセラミックス焼結体基板と、前記セラミックス焼結体基板に備える前記第1金属部材及び/又は前記第2金属部材と電気的に接続される発光素子と、を備える発光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、セラミックス焼結体基板、発光装置及びそれらの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、セラミックス基板に使用されるビア材は低融点金属粉と高融点金属粉と活性金属粉とからなることが知られている(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6122561号公報
【特許文献2】特許第5922739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示に係る実施形態は、体積収縮の小さい金属ペーストを用いるセラミックス焼結体基板、発光装置及びそれらの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施形態に開示されるセラミックス焼結体基板の製造方法は、セラミックス基板の表面に第1金属ペーストを配置することと、前記第1金属ペーストを配置した前記セラミックス基板を焼成することと、を含み、前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属ペーストは、複数の第1金属粉体と、複数の第2金属粉体と、複数の活性金属粉体と、を含み、前記第1金属粉体は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、前記第2金属粉体は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低く、前記セラミックス基板を焼成することにおいて、焼成温度は、前記第2金属粉体の融点以上、前記被覆部材の融点以下の温度である。
【0006】
また、実施形態に開示される発光装置の製造方法は、前記セラミックス基板を焼成することによって、前記第1金属ペーストは第1金属部材となり、セラミックス焼結体基板の製造方法によりセラミックス焼結体基板を製造した後に、前記セラミックス焼結体基板に発光素子を配置することと、配置された前記第1金属部材と、前記発光素子と、を直接又は間接に電気的に接続することと、を含む。
【0007】
また、実施形態に開示される発光装置の製造方法は、前記セラミックス基板を焼成することによって、前記第1金属ペーストは第1金属部材となり、前記第2金属ペーストは第2金属部材となり、セラミックス焼結体基板の製造方法により製造したセラミックス焼結体基板を準備することと、前記セラミックス焼結体基板に発光素子を配置することと、を含み、配置された前記第1金属部材又は前記第2金属部材と、前記発光素子と、を直接又は間接に電気的に接続する。
【0008】
また、実施形態に開示されるセラミックス焼結体基板は、セラミックス基板と、前記セラミックス基板の表面に配置される第1金属部材と、を備え、前記第1金属部材は、第1金属と、第2金属と、金属化合物と、を含み、前記第1金属は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、前記第2金属は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低い。
【0009】
また、実施形態に開示される発光装置は、前記したセラミックス焼結体基板と、前記セラミックス焼結体基板に備える第1金属部材に電気的に接続される発光素子と、を備える。
さらに、実施形態に開示される発光装置は、前記セラミックス焼結体基板と、前記セラミックス焼結体基板に備える第1金属部材及び/又は第2金属部材と電気的に接続される発光素子と、を備える。
【発明の効果】
【0010】
本開示の実施形態によれば、体積収縮の小さい金属ペーストを用いるセラミックス焼結体基板、発光装置及びそれらの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】実施形態に係るセラミックス焼結体基板を模式的に示す平面図である。
【
図2】
図1のII-II線における断面を模式的に示す断面斜視図である。
【
図3A】実施形態に係るセラミックス焼結体基板の貫通孔に第1金属ペーストを配置した状態を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
【
図3B】
図3Aのセラミックス焼結体基板を焼結した第1金属体の状態を模式的に示す拡大断面図である。
【
図4】実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法を例示するフローチャートである。
【
図5A】実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法において、準備したセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
【
図5B】実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法において、貫通孔に第1金属ペーストを配置した状態を模式的に示す断面図である。
【
図5C】実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法において、第2金属ペーストを配置した状態を模式的に示す断面図である。
【
図6】実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。
【
図7】実施形態に係る発光装置の製造方法を例示するフローチャートである。
【
図8A】実施形態に係る発光装置の製造方法において、準備したセラミックス焼結体基板を模式的に示す断面図である。
【
図8B】実施形態に係る発光装置の製造方法において、セラミックス焼結体基板に接合部材を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【
図8C】実施形態に係る発光装置の製造方法において、発光素子を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【
図8D】実施形態に係る発光装置の製造方法において、光反射部材を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【
図9A】実施形態に係る発光装置を発光モジュールとして示す斜視図である。
【
図9B】
図9Aの一部を省略してIXB-IXB線における断面を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示に係る実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、本開示に係る技術的思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、発明を以下のものに限定しない。一つの実施形態において説明する内容は、他の実施形態及び変形例にも適用可能である。また、図面は実施形態を概略的に示すものであり、説明を明確にするため、各部材のスケールや間隔、位置関係等を誇張し、あるいは、部材の一部の図示を省略している場合がある。各図において示す方向は、構成要素間の相対的な位置を示し、絶対的な位置を示すことを意図したものではない。なお、同一の名称、符号については、原則として、同一若しくは同質の部材を示しており、詳細説明を適宜省略する。また、実施形態について、「覆う」とは直接接する場合に限らず、間接的に、例えば他の部材を介して覆う場合も含む。
【0013】
[セラミックス焼結体基板]
実施形態に係るセラミックス焼結体基板10を、
図1Aから
図3を参照しながら説明する。なお、
図1は、実施形態に係るセラミックス焼結体基板を模式的に示す平面図である
図2は、実施形態に係るセラミックス焼結体基板を模式的に示す断面斜視図である。
図3Aは、実施形態に係るセラミックス焼結体基板の貫通孔に第1金属ペーストを配置した状態を拡大して模式的に示す拡大断面図である。
図3Bは、
図3Aのセラミックス焼結体基板を焼結して第1金属体の状態を模式的に示す拡大断面図である。
図6は、実施形態に係る発光装置を模式的に示す断面図である。なお、
図3Aは、セラミックス焼結体基板を焼結する前の状態を示している。
【0014】
セラミックス焼結体基板10は、セラミックス基板1と、セラミックス基板1の表面に配置される第1金属部材3と、を備えている。そして、第1金属部材3は、第1金属4aと、第2金属6と、金属化合物5a,5bと、を含んでいる。また、1個の第1金属4aは、コア41aと、コア41aよりも融点が高く、コア41aの少なくとも一部を覆う被覆部材42aと、を有している。さらに、被覆部材42aは、第1金属4aよりも融点が高く、第2金属6よりも融点が低いものである。
セラミックス基板1の「表面」は、セラミックス基板1の平面及び底面、側面だけでなく、貫通孔や段差、凹部を設けた場合は、その内側面等も含まれる。また、特に断りのない限り、明細書において「表面」は「ひょうめん」である。また、「複数」と明記している箇所以外は、「1又は2以上の複数」でもよい。
【0015】
なお、セラミックス焼結体基板10は、セラミックス基板1に貫通孔2を有し、貫通孔2内に第1金属部材3を配置し、貫通孔2を画定する内壁に金属化合物(金属化合物の反応層)5aの少なくとも一部がある。
ただし、第1金属部材3は、焼成前では第1金属ペースト3A、第2金属部材8aは、焼成前では第2金属ペースト8、と称呼することもある。焼成後のものは焼成前と状態が異なっているが、説明の便宜上、焼成後のものを表現する場合に、焼成前の名称や原料名で表現することもある。セラミックス基板1は焼成前後で性状は異なるが、セラミックス基板1として説明する。
以下、セラミックス焼結体基板10の各構成について説明する。
【0016】
(セラミックス基板)
セラミックス基板1は、セラミックス焼結体基板10の基礎となる板状の部材である。セラミックス基板1の平面視形状は、例えば矩形状である。なお、セラミックス基板1の平面視形状は特に限定されない。セラミックス基板1は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。なお、セラミックス基板1は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素などの窒化物系セラミックスが好ましいが、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウムなどの酸化物系セラミックスを使用してもよい。また、セラミックス基板1は、炭化ケイ素、ムライト、ホウケイ酸ガラス等も使用してもよい。
【0017】
セラミックス基板1は、板厚方向に貫通孔2が所定位置に形成され、貫通孔2を画定する内部に第1金属部材3が配置される。そして、セラミックス基板1は、第1金属部材3の少なくとも一部が接触するように第2金属部材8aが配置される。なお、第2金属部材8aは、ここでは、セラミックス基板1の上面及び下面において、貫通孔2に配置されている第1金属部材3の少なくとも一部に接触するように配置されている。第2金属部材8aは、発光素子20と電気的な接続を行うための配線、配線パッドあるいは外部接続電極として用いられる。
【0018】
また、セラミックス基板1の貫通孔2は、内部に配置される第1金属部材3を介して発光素子20の素子電極24と、セラミックス基板1の外部と、を電気的に接続するためのビアホールである。貫通孔2は、ドリル加工、レーザ加工等の機械的な加工により形成されることや、エッチング等の化学的な加工により形成される。貫通孔2は、セラミックス基板1に対して水平方向に切断した際に、その形状が略円形あるいは円形であることが好ましい。そして、貫通孔2の直径は、0.05mm以上0.5mm以下であることが好ましい。貫通孔2が0.05mm以上であると、第1金属部材3の配置が的確に行い易くなる。また、貫通孔2が0.5mm以下であると、高い強度や低い電気抵抗値を維持しつつ、適切な充填量とすることができる。
【0019】
(第1金属部材)
第1金属部材3は、セラミックス基板1の貫通孔2に配置されるものである。第1金属部材3は、単独で、あるいは、第2金属部材8aと共に、発光素子20と電気的な接続を行う部材である。第1金属部材3は、一例として、第1金属4aと、第2金属6と、金属化合物5a,5bと、を含んでおり、金属化合物5aの反応層が貫通孔2を画定する内側面に形成されていると共に、コア41aの周囲に配置される被覆部材42aの表面や、第2金属6中等に金属化合物5bの反応物が形成されている。なお、第1金属ペースト3Aとしては、ここでは、有機バインダ7を含むものとして説明する。
【0020】
第1金属ペースト3Aは、焼成前の状態の一例として、焼結前の状態として、複数の第1金属粉体4と、複数の第2金属粉体6aと、複数の活性金属粉体50と、有機バインダ7と、を含んでいる。なお、第1金属ペースト3Aとしては、ここでは、有機バインダ7を含むものとして説明する。第1金属ペースト3Aは、焼成後において、第1金属部材3となる。
そして、第1金属ペースト3Aの第1金属粉体4は、焼成後に第1金属4aとなる。第1金属粉体4は、コア41bと、コア41bよりも融点が高く、コア41bの少なくとも一部を覆う被覆部材(焼成前)42bと、を有している。
一例として、第1金属ペースト3Aは、複数の第1金属粉体4が10質量%以上50質量%以下、複数の第2金属粉体6aが50質量%以上85質量%以下、複数の活性金属粉体50が0.5質量%以上15質量%以下、有機バインダ7が0.1質量%以上2.0質量%以下含むものである。被覆部材42bは、焼成後において被覆部材42aとなる。活性金属粉体50は、焼成後において金属化合物5a,5bとなる。焼成後において、第1金属4aは、コア41aが60質量%以上80質量%以下、被覆部材42aが3質量%以上25質量%以下、金属化合物5bである反応物が1質量%以上15質量%以下含まれる。貫通孔2を画定する内側面に反応層としての金属化合物5aが偏析している。なお、焼成後における第1金属部材3において、有機バインダ7は、揮発又は分解して残存していない。
【0021】
第1金属粉体4は、第1金属ペースト3Aに含まれる金属の粉体である。第1金属粉体4は、メジアン径が、1μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。第1金属粉体4は、1μm以上であると、凝集し難く分散性も良いなど扱い易く、第1金属ペースト4中の粘度を所定の範囲で保持することができる。また、第1金属粉体4が50μm以下の大きさであると、貫通孔2の大きさとの関係で配置がし易くなったり、電気伝導性を高くしたりすることができる。そして、第1金属4aは、焼結前の状態として、コア41bより高融点の被覆部材42bにより覆われている。第1金属粉体4は、第1金属ペースト3A中に、第2金属粉体6a、活性金属粉体50、有機バインダ7と共に分散した状態となっている。そして、第1金属4aは、焼成後において第2金属6中に分散された状態となる。なお、第1金属4aの状態においても、メジアン径が1μm以上50μm以下であることが好ましく、5μm以上40μm以下であることがさらに好ましい。第1金属4aのメジアン径とは、隣り合う他の第1金属4aと区画される粒界(コア41bと被覆部材42b)までの大きさを粒径とし、その粒径におけるメジアン径をいうものである。
【0022】
コア41bを覆っていた被覆部材42bは焼成により全体が溶融され液状となっていないが、焼成により被覆部材42bの表面が一部軟化し、焼成後においては隣り合う被覆部材42bや第2金属6と一部接触または混合された状態となっている。第2金属粉体6aを融点以上に加熱すると溶融し液状となるが、ここでは被覆部材42bの融点よりも低い温度での加熱のため、被覆部材42b自体は溶融して液状となっていない。また、第2金属粉体6aも溶融し液状となるが被覆部材42bが密集している状態で溶融しているため、大幅な流動は生じていない。さらに、コア41bも加熱により溶融して液状になっているが、被覆部材42b中に配置されているため、被覆部材42bからの流出は抑えられている。
【0023】
ただし、被覆部材42bの隙間から溶融したコア41bが流出してきたとしても、被覆部材42bは所定の形状を保持しているため、溶融したコア41bは被覆部材42bの粒子間にとどまっており、大幅な流動は生じていない。被覆部材42bの全体が溶融していないため、被覆部材42bから流出するコア41bの流出量は小さく、かつ、有機バインダ7の揮発分や第1金属粉体4、第2金属粉体6a等の隙間分があるため、第1金属ペースト3Aの表面を押し上げるに至らない。これにより第1金属ペースト3Aの表面がひけて大幅な凹面になることを低減することができる。
【0024】
ただし、被覆部材42bは融点未満の温度であっても、被覆部材42b自体の厚みが薄く、また、コア41bや第2金属粉体6aとの反応等により、被覆部材42bの表面の一部が軟化状態となり、他の被覆部材42bの粒子や第2金属粉体6aと接触または混合された状態で配置される。このとき被覆部材42aと第2金属6との間に界面がある場合もあるが、界面がない場合もある。このように被覆部材42aと第2金属6とを界面がない状態とすることもできるため、電気抵抗値を下げ、電気伝導性や熱伝導性を高めることができる。また、コア41bの材料が被覆部材42bの材料よりも軽量であるため、セラミックス焼結体基板10の重量を軽くすることもできる。さらに、第1金属ペースト3A中の第1金属粉体4は高密度に配置されているため、焼成後においても、第1金属部材3は、ボイドが少なく、応力も低いため、冷熱サイクル特性等の信頼性が高い状態となる。さらに、第1金属ペースト3A中の第1金属粉体4は高密度に配置されているため、焼成後においても、第1金属部材3は、ボイドが少なく、応力も低いため、冷熱サイクル特性等の信頼性が高い状態となる。
【0025】
このコア41bは、例えば、Al、Zn、Snから選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。コア41bは、Al、Zn、Snを主成分とする合金も含む。これにより安価で軽量な第1金属部材3を使用することができる。また、コア41bの融点は、200℃以上690℃以下であることが好ましい。コア41bの融点が200℃以上であると、後記する被覆部材42aの融点あるいは金属化合物5a,5bの融点との差が小さくなり、被覆部材42bの形状を所定の状態で保持することができる。また、コア41bの融点が690℃以下であると他の部材に及ぼす悪影響も小さくすることができる。
【0026】
被覆部材42bは、コア41bの少なくとも一部、あるいは、全部を囲むように配置されている。被覆部材42bは、コア41bよりも融点が高く、一例として、Cu、Cr、Ni、Au、Pt、Pd、Rhから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。被覆部材42bはめっき法、化学気相成長法、蒸着などによりコア41a上に形成される。被覆部材42bは、溶融前の状態においてコア41bの直径又は長径に対して、3%以上30%以下の厚みを有する。被覆部材42bの厚みが厚いとコア41bの流出を抑えたり、被覆部材42bの変形を抑えたりすることができる。一方で、被覆部材42bの厚みを薄くするとコア41bの流出を促し、第1金属4aや第2金属6の粒子の隙間を埋めることもできる。また、被覆部材42bの厚みを薄くすると被覆部材42bの一部軟化を促進することができる。さらに、第1金属4aの粒径が同じであれば、被覆部材42bの厚みが薄い方が、コア41bの量を増やすことができ、軽量化を促進することができる。
【0027】
被覆部材42bは、被覆部材42bの周りを別の部材を覆っていないため、焼成後においても必要以上に被覆部材42a同士が接触することも離れることもない。このように金属粉体4aが適度に分散されていることで貫通孔2内における熱の偏りも抑えることができる。なお、焼成後の被覆部材42aは、焼成前の被覆部材42bとほぼ同じ材料であるが、焼成前の被覆部材42bの厚みが極めて薄いため、被覆部材42bからコア41bが流出し、被覆部材42bと混合することもある。
【0028】
セラミックス基板1が窒素を含有する場合には、焼成後において、被覆部材42aの表面、又は、第2金属6中等に活性金属粉体50の反応物である金属化合物5bを配置している。セラミックス基板1が窒素を含有する場合とは、例えば、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素から選ばれる少なくとも1種を用いる場合である。
【0029】
金属化合物5a,5bは、被覆部材42aの間に配置されることもある。活性金属粉体50は、焼成により少なくとも一部、又は、全部が金属化合物5a,5bとなる。活性金属粉体50は、第1金属ペースト3A中に分散されており、焼成後の金属化合物5a,5bも第1金属部材3中に分散されている。例えば、活性金属粉体50として、水素化チタン(TiH2)を例にとって説明する。水素化チタンは、焼成により水素を放出して、金属チタンとなり、次いでチタンが酸化又は窒化等されて酸化チタン、又は、窒化チタン等のような金属化合物となる。
【0030】
さらに、被覆部材42aの融点は、第2金属粉体6aの融点よりも高い。そのため、第2金属粉体6aは、第1金属ペースト3Aとして貫通孔2内に配置され、第2金属粉体6aの融点以上、被覆部材42bの融点以下の温度で焼成されたとしても、被覆部材42bは溶融しないため、被覆部材42aが分散された状態を維持している。また、焼成後の被覆部材42aは貫通孔2内を連続して配置される。この「被覆部材42aは貫通孔2内を連続して配置される」とは、貫通孔2の上端から下端まで物理的に繋がっている訳ではなく、また、貫通孔2内の上端若しくは下端の一方に偏在するように配置されている訳でもなく、貫通孔2内の上端から下端まで分散された状態で連続して配置されていることを意味する。つまり、一般に金属が溶融して液状になると流動し偏在し易くなるが、ここでは被覆部材42bが完全に溶融していないため、貫通孔2内の上端から下端において偏在することなく分散して配置することができる。
【0031】
貫通孔2を画定する内側面に活性金属粉体50の反応物である金属化合物5aを配置する。この貫通孔2を画定する内側面に配置される金属化合物5aは連続していてもよく、分散していてもよい。貫通孔2を画定する内側面に金属化合物5aを配置することにより、第1金属部材3とセラミックス基板1との密着強度を向上させている。また、活性金属粉体50から反応した金属化合物5bは第1金属部材3内に分散される。コア41aと被覆部材42a、第2金属6、金属化合物5bとの間にそれぞれ比重差があっても、沈降や浮上することになく、分散状態を維持することができる。
【0032】
活性金属粉体50は、例えば、TiH2、CeH2、ZrH2、LaH2、MgH2から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。この活性金属粉体50を焼成することにより、水素の全部又は一部が脱離し、セラミックス基板1等に含まれる窒素、酸素、炭素等と反応し、窒化物金属、酸化物金属、炭化物金属等に変化する。この変化したものが金属化合物5a,5bである。活性金属粉体50は、特に、TiH2を使用することが好ましく、TiH2を含むことで、セラミックス基板1等に含まれる窒素と反応し、セラミックス焼結体基板10との界面において、TiNのような反応層となる金属化合物5aを形成する。これにより、導電性ビアである第1金属部材3とセラミックス基板1との密着性を向上させ、第1金属部材3が貫通孔2に対して強固に密着することになる。
【0033】
第2金属粉体6aは、コア41bよりも融点が高く、被覆部材42bよりも融点が低い。第2金属粉体6aは、例えば、融点が、700℃以上1000℃以下であることが好ましい。第2金属粉体6aは、例えば、Ag、Al、Zn、Sn、Ag-Cu合金から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。第2金属粉体6aは、焼成後において第1金属部材3に第2金属6として分散した状態で配置される。
【0034】
有機バインダ7は、焼成前の第1金属ペースト3Aに含有される部材である。この有機バインダ7は、焼成後には揮発又は分散して第1金属ペースト3A内には残存していない状態となる。有機バインダ7は、一例として、一般的にビア材として使用される溶剤やアクリル、エポキシ、ウレタン、エチルセルロースなどの樹脂材料であってもよい。
【0035】
第2金属部材8aは、予め設定された配線パターンの配線、配線パッドあるいは外部接続電極等を形成する導電性の部材である。第2金属部材8aは、第2金属ペースト8を焼成することにより形成してもよい。第2金属ペースト8は、第1金属ペースト3Aの状態、又は、第1金属部材3の状態において、いずれかの状態において少なくとも一部に接するように配置される。第2金属ペースト8の厚さは、例えば12μm以上35μm以下であることが好ましい。第2金属ペースト8の配線、あるいは、接続パッドは、例えば、エッチングや印刷等によって形成することができる。
【0036】
第2金属ペースト8は、セラミックス基板1の第1面に配置される配線等として配置されると共に、第1面の反対側のとなる第2面に配線等として配置される。第2金属ペースト8の形状は、平面視において矩形や円形、線状等に形成され、セラミックス基板1の第1面に互いに離隔して配置されると共に、第2面に互いに離隔して配置されている。第2金属ペースト8は、セラミックス基板1の第1面に配置される大きさと、第2面に配置される大きさと、は同じでも異なっていてもよい。一例として、セラミックス基板1の第1面に配置される側の第2金属ペースト8の面積が第2面に配置される側の第2金属ペースト8の面積よりも大きくなるようにしている。第2金属ペースト8は、一例として、上面視において円形の第1金属ペースト3Aの全部に接するように、矩形として図示しているが、その形状や配置は任意であり限定されるものではない。
【0037】
この第2金属ペースト8は、例えば、第1金属ペースト3Aと同じ材料を使用することが好ましく、第1金属ペースト3Aを配置した後、焼成前に第2金属ペースト8を配置してもよい。第1金属ペースト8は、第1金属ペースト3Aと異なる材料を使用してもよい。また、第2金属ペースト8の材料は、例えば、Au、Ag、Cu、Pt、Al、Cr、Ni、Pd、Rh等の単体若しくはその合金や混合粉体と樹脂バインダとの混合物であってもよい。また、第2金属ペースト8は、これら金属の他に、熱硬化性樹脂の材料や、ガラスフリットが含有された高温焼成タイプの材料等を用いてもよい。樹脂バインダは、例えば、エポキシ樹脂やシリコーン樹脂、アクリル樹脂、エチルセルロース等を使用することができる。また、第2金属ペースト8には有機酸等の還元剤を含むことが好ましい。これにより発光素子20との接続における電気抵抗を小さくすることができる。第2金属ペースト8は、セラミックス基板1を焼成した後の第1金属部材3と電気的に接続するように配置することもできる。
【0038】
上記のような構成を備えるセラミックス焼結体基板10は、第1金属部材3がセラミックス基板1の貫通孔2を画定する内側面に強固に接合するので、信頼性が高く、発光素子との間の電気的接続を確実にすることができる。
なお、セラミックス基板1の貫通孔2の数は、2つ以上であってもよく、その平面視の形状も楕円形、矩形等、円形に限定されるものではない。
また、第2金属部材8aの形状は、正方形状でもよく、長方形状や台形状でもよく、曲線部分を含む形状でもよい。また、第2金属部材8aを設けずに、第1金属部材3の一部に発光素子20を直接接続するようにしてもよい。
【0039】
[セラミック焼結体基板の製造方法]
次に、実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法を、
図4から
図5Cを参照しながら説明する。
図4は、実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法を例示するフローチャートである。
図5Aは、実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法において、準備したセラミックス基板を模式的に示す断面図である。
図5Bは、実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法において、貫通孔に第1金属ペーストを配置した状態を模式的に示す断面図である。
図5Cは、実施形態に係るセラミックス焼結体基板の製造方法において、第2金属ペーストを配置した状態を模式的に示す断面図である。
【0040】
セラミックス焼結体基板10の製造方法S10は、セラミックス基板1の表面に第1金属ペースト3Aを配置することS12と、第1金属ペースト3Aを配置したセラミックス基板1を焼成することS14と、を含み、第1金属ペースト3Aを配置することS12において、第1金属ペースト3Aは、複数の第1金属粉体4と、複数の第2金属粉体6aと、複数の活性金属粉体50と、を含む。そして、第1金属粉体4は、コア41bと、コア41bよりも融点が高く、コア41bの少なくとも一部を覆う被覆部材42bと、を有している。さらに、第2金属粉体6aは、コア41bよりも融点が高く、被覆部材42bよりも融点が低いものである。また、セラミックス基板1を焼成することS14において、焼成温度は、第2金属粉体6aの融点以上、被覆部材42bの融点以下の温度である。なお、セラミックス焼結体基板10の製造方法S10は、一例として、セラミックス基板1の表面に第1金属ペースト3Aを配置することS12の前に、貫通2孔があるセラミックス基板1を準備することS11を行い、さらに、第1金属ペースト3Aを配置することS12の後で、セラミックス基板1を焼成することS14の前に、第1金属ペースト3Aと少なくとも一部が接触するようにセラミックス基板1上に第2金属ペースト8を配置することS13を行うものとして説明する。
【0041】
(セラミックス基板を準備すること)
セラミックス基板1を準備することS11(以下、工程S11という)は、一例として、平板状のセラミックス基板1を準備する。この工程S11において、準備されたセラミックス基板1は、焼結済みのセラミックス基板1もしくは焼成前のセラミックス基板1のグリーンシートにドリル加工、レーザ加工、又は、焼結済みのセラミックス基板1にエッチング加工等により貫通孔2が形成されている。貫通孔2の数は、後記する発光素子20の素子電極24等の接続部分に対応した数とすることもできるが異なる数とすることもできる。セラミックス基板1は、発光素子20を一つ配置する場合には、一例として、二箇所に貫通孔2が形成される。なお、セラミックス基板1は、複数の発光素子20を配置する面積の大きさ、及び、素子電極24の数に対応した数の貫通孔2を形成した状態で準備されることや、所定の数の発光素子20を配置する大きさに切断されて準備されることとしてもよい。
【0042】
(第1金属ペーストを配置すること)
第1金属ペースト3Aを配置することS12(以下、工程S12という)は、セラミックス基板1に形成された貫通孔2に第1金属ペースト3Aを配置することである。この工程S12では、例えば、スクリーン印刷やノズルにより注入することにより、貫通孔2内に第1金属ペースト3Aを配置している。また、第1金属粉体4は、コア41bと、コア41bを被覆する被覆部材42bと、を有している。
【0043】
工程S12では、第1金属ペースト3Aを貫通孔2に配置する場合、セラミックス基板1の一方の面である第1面から、例えば、スクリーン印刷に使用される工具であるスキージを用いて第1金属ペースト3Aを貫通孔2に配置し、さらに、セラミックス基板1の他方の面である第2面から、第1面と同様にスキージを用いて第1金属ペーストを貫通孔2に配置することが好ましい。ただし、第1面または第2面の一方の面からのみの第1金属ペースト3Aの配置であってもよい。
【0044】
(第2金属ペーストを配置すること)
第2金属ペースト8を配置することS13(以下、工程S13という)は、貫通孔2に配置した第1金属ペースト3Aと少なくとも一部が接触するようにセラミックス基板1上に第2金属ペースト8を配置する。図面においては、セラミックス基板1の貫通孔2から露出している第1金属ペースト3Aの全面に接触するように第2金属ペースト8が配置されている。第2金属ペースト8は、一例として、セラミックス基板1の第1面に二箇所、セラミックス基板1の第2面に二箇所の合計4箇所に、平面視で矩形に配置される。そして、第2金属ペースト8は、スクリーン印刷、メタルマスク印刷等によりマスクを介して矩形の配線あるいは配線パッドを、セラミックス基板1の第1面上及び第2面上に形成している。
【0045】
なお、工程S12及び工程S13で使用される第1金属ペースト3A及び第2金属ペースト8は、流動性を有しており、任意の形状の貫通孔2に配置が自在にできると共に、任意の形状、厚みとすることもでき、塗布した後に硬化させて配置することもできる。
【0046】
(セラミックス基板を焼成すること)
セラミックス基板1を焼成することS14(以下、工程S14という)を行う。この工程S14において、焼成温度は、第2金属粉体6aの融点以上、被覆部材42bの融点以下の温度である。一例として、焼成温度は、700℃以上1000℃以下の温度であることが好ましく、700℃以上980℃以下がより好ましく、750℃以上970℃以下であることが特に好ましい。この工程S14において、焼成作業を行う場合、焼成雰囲気は真空雰囲気またはガス組成が99.9%以上のAr雰囲気であることが好ましい。真空雰囲気は真空度が10Pa以下が好ましく、さらに100Pa以下のArを含有させることがより好ましい。
【0047】
以上の工程により、セラミックス焼結体基板10を製造することができる。
図3Bで示すように、第1金属ペースト3Aの状態を、焼成後において、観察してみると、例えば、焼成前のコア41bである粉体及び被覆部材42bは、焼成後において、ほぼ同じ位置にコア41a及び被覆部材42aとして配置されている。焼成前のコア41b及び被覆部材42bの間にあった第2金属粉体6aも、焼成後においてほぼ同じ位置に配置されている。焼成により被覆部材42bの表面の一部は軟化し、隣り合う被覆部材42bや第2金属粉体6aと混合されている。
【0048】
ただし、焼成後の被覆部材42aと隣り合う被覆部材42a又は第2金属6との間は、界面が残るように焼成してもよい。焼成前の活性金属粉体50は、セラミックス基板1の貫通孔2内に配置されており、焼成によりセラミックス基板1と反応し、セラミックス基板1の貫通孔2の内側面に、活性金属粉体50の反応層である金属化合物5aが配置されている。金属化合物5aは貫通孔2の内側面に連続して配置されている。また、第2金属粉体6aが配置されていた位置付近に金属化合物5bが分散されて配置されている。また、被覆部材42aの表面付近に金属化合物5bが配置されている。コア41aは被覆部材42a中に配置されているだけでなく、被覆部材42aから流出し第2金属6と混合されていることもある。焼成後において有機バインダ7は揮発又は分解されている。
【0049】
このように、第1金属ペースト3Aを焼成することにより金属化合物5aである反応層が形成される。これにより、第1金属部材3が貫通孔2を画定する内側面に強度に接合した状態となり、信頼性が高い構成を実現できる。したがって、セラミックス焼結体基板10は、第1金属4aの分散状態が貫通孔2内において比較的均等であるため、導電性が安定する。また、低融点金属であるコア41aは、高融点金属である被覆部材42aで被覆されているが、被覆部材42aは溶融していないため、所定の形状を維持しており、体積収縮が抑えられる。また、コア41bは焼成温度よりも低い融点であるため、コア41bが被覆部材42bから溶融し流れだしてくることもあるが、コア41bの流出量が少なく、被覆部材42b同士の隙間に配置されるため、体積収縮が抑えられる。これにより焼成後の第1金属部材3の上面及び下面を平坦とすることができる。よって、配線の厚みを一定に保持することができるため、抵抗値のバラツキを低減することができる。
【0050】
[発光装置]
次に、実施形態に係る発光装置100を、
図6を参照しながら説明する。発光装置100は、セラミックス焼結体基板10に発光素子20を配置して発光するようにした装置である。図面では発光素子20の数は1つであるが、発光素子20の数は複数でもよく、その配置も一列状にすること等、特に限定されるもではない。
発光装置100は、すでに説明したセラミックス焼結体基板10と、セラミックス焼結体基板10に備える第2金属部材8aと電気的に接続される発光素子20と、を備えている。ここでは、第2金属部材及び第1金属部材を用いて発光素子と電気的接続を行っているが、第2金属部材を用いず、第1金属部材のみを用いて発光素子と電気的接続を行っても良い。なお、発光装置100は、発光素子20の側面及びセラミックス焼結体基板10の上面に光反射部材30を一例として配置しているものである。また、セラミックス焼結体基板10では、用途に応じて様々なパターンの配線を形成することができる。
【0051】
(発光素子)
発光素子20は、半導体積層体21と、素子基板22と、一対の素子電極24と、を有している。半導体積層体21の上方に素子基板22を備え、半導体積層体の下方に一対の素子電極24を有している。発光素子20の素子基板22の上方に透光性部材23が配置されている。
半導体積層体21としては、所望とする発光波長に応じて任意の組成を用いることができるが、例えば、青色又は緑色の発光が可能な窒化物半導体(InXAlYGa1-X-YN、0≦X、0≦Y、X+Y≦1)やGaP、又は、赤色の発光が可能なGaAlAsやAlInGaPなどを用いることができる。また、使用する目的に応じて発光素子20の大きさや形状は適宜選択が可能である。
素子基板22は、一例として、サファイア基板あるいはシリコン基板が使用される。
【0052】
透光性部材23は、例えば、透光性の樹脂材料からなり、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂又はこれらを混合した樹脂等を用いることができる。透光性部材23は、蛍光体を含んでいてもよく、例えば、発光素子20からの青色の光を吸収し、黄色の光を放射する蛍光体を含むことにより、白色の光を出射させることができる。また、透光性部材23は、複数種類の蛍光体を含んでいてもよく、例えば、半導体積層体21からの青色の光を吸収して、緑色の光を放射する蛍光体と、赤色の光を放射する蛍光体と、を含むことによっても、発光素子20から白色の光を出射させることができる。
【0053】
このような蛍光体としては、例えば、イットリウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Y3(Al,Ga)5O12:Ce)、ルテチウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Lu3(Al,Ga)5O12:Ce)、テルビウム・アルミニウム・ガーネット系蛍光体(例えば、Tb3(Al,Ga)5O12:Ce)、βサイアロン蛍光体(例えば、(Si,Al)3(O,N)4:Eu)、αサイアロン蛍光体(例えば、Mz(Si,Al)12(O,N)16(但し、0<z≦2であり、MはLi、Mg、Ca、Y、及びLaとCeを除くランタニド元素))、CASN系蛍光体(例えば、CaAlSiN3:Eu)若しくはSCASN系蛍光体(例えば、(Sr,Ca)AlSiN3:Eu)等の窒化物系蛍光体、KSF系蛍光体(例えば、K2SiF6:Mn)、KSAF系蛍光体(例えば、K2(Si,Al)F6:Mn)、若しくはMGF系蛍光体(例えば、3.5MgO・0.5MgF2・GeO2:Mn)等のフッ化物系蛍光体、又は、ペロブスカイト、カルコパイライト等の量子ドット蛍光体等を用いることができる。
【0054】
素子電極24は、金属バンプ12により、接合部材11を介してセラミックス焼結体基板10の第2金属部材8aに接続されている。素子電極24は、一方がp電極、他方がn電極であり、p電極はn電極と電気的に短絡しない距離を保って配置されている。素子電極24は、一例として、p電極とn電極とをそれぞれ一箇所ずつ配置する構成としているが、いずれか一方を二箇所とし、他方を一箇所配置するような構成としても構わない。
【0055】
金属バンプ12は、素子電極24と第2金属部材8aとを電気的に接続させるものである。金属バンプ12は、その形状、大きさ、数は、いずれも、素子電極24の範囲で配置できる限り、適宜設定することができる。また、金属バンプ12の大きさは、半導体積層体の大きさ、求められる発光素子の発光出力等によって適宜調整することができ、例えば、直径が数十μmから数百μm程度の大きさが挙げられる。
【0056】
金属バンプ12は、例えば、Au、Ag、Cu、Al、Sn、Pt、Zn、Ni又はこれらの合金により形成することができ、例えば当該分野で公知のスタッドバンプにより形成することができる。スタッドバンプは、スタッドバンプボンダー、ワイヤボンディング装置等により形成することができる。また、金属バンプ12は、電解めっき、無電解めっき、蒸着、スパッタ等の当該分野において公知の方法によって形成してもよい。
【0057】
金属バンプ12は、一例として、ここでは、接合部材11を介して接合されている。ここで用いられる接合部材11としては、例えば、Sn-Bi系、Sn-Cu系、Sn-Ag系、Au-Sn系などの半田、AuとSnとを主成分とする合金、AuとSiとを主成分とする合金、AuとGeとを主成分とする合金等の共晶合金、あるいは、Ag、Au、Pdなどのペースト材、ACP、ACF等の異方性導電材、低融点金属のろう材、これらを組み合わせた導電性接着材、導電性複合接着材等が挙げられる。
【0058】
(光反射部材)
光反射部材30は、光反射性を有する部材である。光反射部材30は、セラミックス焼結体基板10における第1面上を覆うと共に、発光素子20の側面を覆うように配置されている。また、光反射部材30は、発光素子20の光取出し面を露出するように配置され、発光素子20の透光性部材23と同一平面となるように配置されている。なお、光反射部材30は、一例として、発光素子20の下面とセラミックス焼結体基板10の第1面との間にも配置されている。
【0059】
光反射部材30は、発光素子20からの光を有効に利用するために、高い反射率を有することが好ましい。光反射部材30は、白色であることが好ましい。光反射部材30の反射率は、発光素子20の発する光の波長において、例えば80%以上であることが好ましく、90%以上がより好ましい。
光反射部材30は、樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ポリカーボネート樹脂、環状ポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂若しくはポリエステル樹脂等の熱可塑性樹脂、又は、エポキシ樹脂若しくはシリコーン樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。また、光拡散材としては、例えば、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、酸化亜鉛又はガラス等の公知の材料を用いることができる。
【0060】
上記のような構成を備える発光装置100は、セラミックス焼結体基板10における第1金属部材3を備えることで、第1金属部材3とセラミックス基板1との接合強度が高く、信頼性を向上することができる。これは、体積収縮の小さい第1金属部材3を用いるセラミックス焼結体10上に発光素子20を配置することで発光素子20の安定性が良く、接合し易いためである。
なお、発光装置100は、1個の発光素子20を1個のユニットとして明るさ及び点消灯の制御単位としているが、1個のユニットに含まれる発光素子20の個数は、1個でもよく、複数でもよい。例えば、1行4列、あるいは、2行2列の4個の発光素子20や3行3列の9個の発光素子20を1個のユニットとすることができる。
【0061】
[発光装置の製造方法]
次に、実施形態に係る発光装置の製造方法を
図7から
図8Dを参照して説明する。
図7は、実施形態に係る発光装置の製造方法を例示するフローチャートである。
図8Aは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、準備したセラミックス焼結体基板を模式的に示す断面図である。
図8Bは、セラミックス焼結体基板に接合部材を配置した状態を模式的に示す断面図である。
図8Cは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、発光素子を配置した状態を模式的に示す断面図である。
図8Dは、実施形態に係る発光装置の製造方法において、光反射部材を配置した状態を模式的に示す断面図である。
【0062】
発光装置の製造方法S20は、既に説明したセラミックス焼結体基板の製造方法S10により製造したセラミックス焼結体基板10を準備することS21と、セラミックス焼結体基板10に、発光素子20を配置することS22と、を含み、発光素子20を配置することS22において、貫通孔2に配置された第1金属部材3と、発光素子20と、を直接又は間接に電気的に接続している。ここでは第1金属部材3の上下面に第2金属部材8aを配置しており、第2金属部材8aを介して、第1金属部材3と、発光素子20と、を電気的に接続している。なお、発光素子20を配置することS22においては、第1金属部材3の少なくとも一部に接する第2金属部材8aに素子電極24を直接又は間接に接続しても構わない。また、一例として、発光素子20を配置することS22の後で、発光素子20の側面を覆うように光反射部材30をセラミックス焼結体基板10の上面に配置することS23を行うこととして説明する。
【0063】
(セラミックス焼結体基板を準備すること)
セラミックス焼結体基板10を準備することS21(以下、工程S21という)とは、既に説明したセラミックス焼結体基板の製造方法S10によって製造したセラミックス焼結体基板10を準備することである。セラミックス焼結体基板10は、その第1面及び第2面を繋ぐ2つの貫通孔2に配置された第1金属部材3に第2金属部材8aを接続して4箇所配置されている。なお、第2金属部材8aは、その形状や大きさや間隔は、発光素子20の素子電極24に合わせて調節して形成することができる。なお、セラミックス焼結体基板10は、発光素子20を配置する領域が複数あり、後記する光反射部材30を配置した後に、発光装置100毎に個片化する大きさとすることや、一つの発光装置100ごとの大きさとすることであっても構わない。
セラミックス焼結体基板10の第1面における第2金属部材8aの表面に接合部材11を配置する。
【0064】
(発光素子を配置すること)
発光素子20を配置することS22(以下、工程S22という)とは、発光素子20をセラミックス焼結体基板10に配置することである。この工程S22では、発光素子20の素子電極24を、第2金属部材8aに配置した接合部材11を介して金属バンプ12を用いて接続している。なお、発光素子20は、予め透光性部材23が素子基板22に接続された状態のものを使用する。透光性部材23を素子基板22に接合する場合には、透光性の接合材料を使用してもよく、接合材料を使用せず直接接合してもよい。
【0065】
(光反射部材を配置すること)
光反射部材30を配置することS23(以下、工程S23という)とは、セラミックス焼結体基板10の上面である第1面を覆うと共に、発光素子20の側面を覆うように光反射部材30を配置することである。この工程S23では、光反射部材30は、発光素子20を囲み発光素子20の光取出し面となる透光性部材23の上面を露出するようにセラミックス焼結体基板10の上に配置される。光反射部材30は、平面視において矩形となるように配置される。この工程23において、光反射部材30は、印刷や射出成形、噴霧など公知の方法で配置することができる。
【0066】
なお、発光装置の製造方法S20では、工程S23の作業が終了した後に、必要に応じて個片化作業が行われる。発光装置100は、使用されている発光素子20の数で予め発光装置100の1つの単位が設定されている。そのため、発光装置100をまとめて複数製造している場合には、個片化作業が行われる。個片化作業を行う場合には、格子状に切断することで、複数の発光装置100を作製する。また、切断する方法としては、例えば、円盤状の回転刃、超音波カッター、レーザ光照射、ブレード等を用いることができる。
【0067】
上記のような構成を備える発光装置の製造方法S20は、セラミックス焼結体基板の製造方法S10によって、セラミックス基板1の貫通孔2に配置される第1金属ペースト3Aとセラミックス基板1との接合強度を向上させることで信頼性を図り、発光素子20の安定した制御をすることが可能となる。
【0068】
(応用例)
なお、
図9A及び
図9Bに示すように、発光素子20を、一列に複数(図面では、11個)備える発光モジュール100Aとしてもよい。発光モジュール100Aとした場合の構成について説明する。
図9Aは、実施形態に係る発光装置を発光モジュールとして示す斜視図である。
図9Bは、
図9Aの一部を省略してIXB-IXB線における断面を模式的に示す断面図である。
発光モジュール100Aは、一列に11個の発光素子20を備え、光反射部材30の外側に枠体140を有し、セラミックス焼結体基板10の下方の第2金属部材8aにモジュール基板150が接続されている。
【0069】
枠体140は、複数の発光素子20を覆う光反射部材30を取り囲むための部材である。枠体140は、平面視で例えば長方形状となる矩形環状に形成され、光反射部材30の周囲を取り囲むように配置されている。枠体140は、金属、合金又はセラミックからなる枠状の部材を用いて形成することができる。金属としては、例えば、Fe、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Al、Pt、Ti、W、Pd等が挙げられる。合金としては、例えば、Fe、Cu、Ni、Al、Ag、Au、Al、Pt、Ti、W、Pd等のうちの少なくとも一種を含む合金が挙げられる。また、枠体140として樹脂材料を用いてもよい。この場合、樹脂材料で形成された枠体140に上記金属、合金又はセラミック部材が埋設されていてもよいし、枠体140の一部を樹脂材料、他の一部を金属、合金又はセラミック部材で形成してもよい。
【0070】
モジュール基板150は、発光装置100を載置する部材であり、発光装置100を電気的に外部と接続するものである。モジュール基板150は、例えば平面視で略長方形に形成されている。モジュール基板150は、基板部160と、配線板部170と、を備えている。
基板部160の材料としては、例えば、絶縁性材料を用いることが好ましく、かつ、発光素子20から出射される光や外光等を透過しにくい材料を用いることが好ましい。例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、ムライト等のセラミックス、ポリアミド、ポリフタルアミド、ポリフェニレンサルファイド、又は、液晶ポリマー等の熱可塑性樹脂や、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、変性エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、又は、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂を用いることができる。なかでも放熱性、耐熱性に優れるセラミックスを用いることが好ましい。
【0071】
また、配線板部170は、発光装置100の下方の第2金属部材8aに対面する位置で基板部160上に形成されている。配線板部170の材料としては、例えば、第1金属部材3や第2金属部材8a等に用いる材料として例示したものが挙げられる。
なお、モジュール基板150は、導電性接着材151を介して枠体140と接合し、かつ、第2金属部材8aと配線板部170とが接合するように配置されている。導電性接着材151としては、例えば共晶はんだ、導電性のペースト、バンプ等を用いればよい。また、発光装置100では、各発光素子20と並列して、セラミックス焼結体基板10上にそれぞれ保護素子125が配置されている。
【0072】
発光モジュール100Aは、以上のように構成されているため、駆動すると以下のようになる。すなわち、発光モジュール100Aは、配線板部170、第2金属部材8a、第1金属部材3、素子電極24を介して外部電源から発光素子20に電流が供給され、発光素子20が発光する。発光素子20が発光した光は、上方へ進む光が、透光性部材23を介して発光装置100の上方の外部に取り出される。また、下方へ進む光は、セラミックス焼結体基板10で反射され、透光性部材23を介して発光装置100の外部に取り出される。また、発光素子20と枠体140との間に進む光は、光反射部材30及び枠体140で反射され、透光性部材23を介して発光装置100の外部に取り出される。また、発光素子20間に進む光は、光反射部材30で反射され、透光性部材23を介して発光装置100の外部に取り出される。この際、透光性部材23間を狭く(例えば0.2mm以下)することで、光学系の構成を簡単かつ小型なものとすることができる。例えば、発光モジュール100Aは、車両用ヘッドライトの光源等に用いることができる。
【0073】
なお、発光モジュール100Aを製造する場合には、シート部材上に発光素子20を並べて、その周りに枠体140を配置し、その状態で光反射部材30を枠体140及びシート部材で囲まれる空間に配置することで、光反射部材30を配置する。その後、配線板部170及び導電性接着材151を配置したモジュール基板150に、枠体140及び光反射部材30で支持されている発光装置100を配置して、第2金属ペースト8と配線板部170とを電気的に接続することで発光モジュール100Aは製造される。
なお、請求項の構成において、以下に示す[項1]から[項27]のような従属関係であっても構わない。
【0074】
[項1]
セラミックス基板の表面に第1金属ペーストを配置することと、
前記第1金属ペーストを配置した前記セラミックス基板を焼成することと、を含み、
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属ペーストは、複数の第1金属粉体と、複数の第2金属粉体と、複数の活性金属粉体と、を含み、
前記第1金属粉体は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、
前記第2金属粉体は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低く、
前記セラミックス基板を焼成することにおいて、焼成温度は、前記第2金属粉体の融点以上、前記被覆部材の融点以下の温度である、セラミックス焼結体基板の製造方法。
[項2]
前記第1金属ペーストを配置する前に、貫通孔がある前記セラミックス基板を準備することと、
前記貫通孔内に前記第1金属ペーストを配置することと、を含む項1に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項3]
前記第1金属ペーストを配置した後、前記セラミックス基板を焼成する前に、さらに、前記第1金属ペーストを乾燥することと、乾燥させた前記第1金属ペーストを加圧することと、を含む項1又は項2に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項4]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記コアは、Al、Zn、Snから選ばれる少なくとも1種を含む項1から項3のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項5]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記被覆部材は、Cu、Cr、Ni、Au、Pt、Pd、Rhから選ばれる少なくとも1種を含む項1から項4のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項6]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第2金属粉体は、Ag、Al、Zn、Sn、Ag-Cu合金から選択される少なくとも1種を含む項1から項5のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項7]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記コアの融点は、200℃以上690℃以下である、項1から項6のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項8]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記被覆部材の融点は、1050℃以上2500℃以下である、項1から項7のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項9]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第2金属粉体の融点は、700℃以上1000℃以下である、項1から項8のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項10]
前記第1金属ペーストを配置することにおいて、前記第1金属ペーストは、さらに有機バインダを含む、項1から項9のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項11]
前記セラミックス基板を焼成することにおいて、前記焼成温度は、700℃以上1000℃以下である、項1から項10のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項12]
前記第1金属ペーストを配置した後、前記セラミックス基板を焼成する前に、前記第1金属ペーストと少なくとも一部が接触するように前記セラミックス基板上又は前記第1金属ペースト上に第2金属ペーストを配置する、項1から項11のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法。
[項13]
前記セラミックス基板を焼成することによって、前記第1金属ペーストは第1金属部材となり、
項1から項11のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法によりセラミックス焼結体基板を製造した後に、
前記セラミックス焼結体基板に発光素子を配置することと、
配置された前記第1金属部材と、前記発光素子と、を直接又は間接に電気的に接続することと、を含む発光装置の製造方法。
[項14]
前記セラミックス基板を焼成することによって、前記第1金属ペーストは第1金属部材となり、前記第2金属ペーストは第2金属部材となり、
項12に記載のセラミックス焼結体基板の製造方法により製造したセラミックス焼結体基板を準備することと、
前記セラミックス焼結体基板に発光素子を配置することと、を含み、
配置された前記第1金属部材又は前記第2金属部材と、前記発光素子と、を直接又は間接に電気的に接続する、発光装置の製造方法。
[項15]
セラミックス基板と、
前記セラミックス基板の表面に配置される第1金属部材と、を備え、
前記第1金属部材は、第1金属と、第2金属と、金属化合物と、を含み、
前記第1金属は、コアと、前記コアよりも融点が高く、前記コアの少なくとも一部を覆う被覆部材と、を有し、
前記第2金属は、前記コアよりも融点が高く、前記被覆部材よりも融点が低い、セラミックス焼結体基板。
[項16]
前記セラミックス基板は貫通孔を有し、
前記貫通孔内に前記第1金属部材を配置し、
前記貫通孔の内壁に前記金属化合物が少なくとも一部ある項15に記載のセラミックス焼結体基板。
[項17]
前記コアは、Al、Zn、Snから選択される少なくとも1種を含む、項15又は項16に記載のセラミックス焼結体基板。
[項18]
前記被覆部材は、Cu、Cr、Ni、Au、Pt、Pd、Rhから選択される少なくとも1種を含む、項15から項17のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項19]
前記第2金属は、Ag、Al、Zn、Sn、Ag-Cu合金から選択される少なくとも1種を含む、項15から項18のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項20]
前記セラミックス基板は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、酸化アルミニウム、炭化ケイ素から選択される少なくとも1種を含む、項15から項19のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項21]
前記第1金属は、連続する前記第2金属中に分散されている、項15から項20のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項22]
前記第1金属のメジアン径は、1μm以上50μm以下である、項15から項21のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項23]
前記セラミックス基板は、前記セラミックス基板の表面、又は、前記貫通孔の内壁に前記金属化合物の反応層がある、項16から項22のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項24]
前記貫通孔の直径は、0.05mm以上0.5mm以下である、項16から項23のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項25]
前記第1金属部材上に配置する第2金属部材を備える項15から項24のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板。
[項26]
項15から項24のいずれか一項に記載のセラミックス焼結体基板と、前記セラミックス焼結体基板に備える前記第1金属部材に電気的に接続される発光素子と、を備える発光装置。
[項27]
項25に記載のセラミックス焼結体基板と、前記セラミックス焼結体基板に備える前記第1金属部材及び/又は前記第2金属部材と電気的に接続される発光素子と、を備える発光装置。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示の実施形態に係る発光装置は、配光可変型ヘッドランプ光源に利用することができる。その他、本開示の実施形態に係る発光装置は、液晶ディスプレイのバックライト光源、各種照明器具、大型ディスプレイ、広告や行き先案内等の各種表示装置、更には、デジタルビデオカメラ、ファクシミリ、コピー機、スキャナ等における画像読取装置、プロジェクタ装置等に利用することができる。
【符号の説明】
【0076】
1 セラミックス基板
2 貫通孔
3A 第1金属ペースト
3 第1金属部材
4 第1金属粉体
4a 第1金属
41a コア(焼成後)
41b コア(焼成前)
42a 被覆部材(焼成後)
42b 被覆部材(焼成前)
50 活性金属粉体
6 第2金属
6a 第2金属粉体
5a 金属化合物(反応層)
5b 金属化合物(反応層)
7 有機バインダ
8 第2金属ペースト
8a 第2金属部材
10 セラミックス焼結体基板
11 接合部材
12 金属バンプ
20 発光素子
21 半導体層
22 素子基板
23 透光性部材
24 素子電極
30 光反射部材
100 発光装置