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特開2024-51632樹脂ケース、センサモジュール、樹脂ケースの製造方法、及びセンサモジュールの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051632
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】樹脂ケース、センサモジュール、樹脂ケースの製造方法、及びセンサモジュールの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G01L 3/10 20060101AFI20240404BHJP
【FI】
G01L3/10 305
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157902
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(74)【代理人】
【識別番号】110002583
【氏名又は名称】弁理士法人平田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉本 千明
(72)【発明者】
【氏名】外山 祐一
(57)【要約】
【課題】高い防水性を有する樹脂ケース、センサモジュール、樹脂ケースの製造方法、及びセンサモジュールの製造方法を提供する。
【解決手段】樹脂ケース10は、樹脂製のケース本体2及び蓋体3と、ケース本体2と蓋体3との間に配置された止水部材4とを備える。止水部材4の融点は、ケース本体2及び蓋体3の融点よりも低く、止水部材4がケース本体2及び蓋体3と溶け合っている。センサモジュール1は、樹脂ケース10と、樹脂ケース10に収容された磁界センサ11と、磁界センサ11に電気的に接続された複数の電線131を一括してシース132に収容してなるケーブル13とを備え、シース132と蓋体3とが溶け合っている。止水部材4とケース本体2とは、ケース本体2を成形する工程における樹脂の成形熱によって溶け合い、止水部材4及びシース132と蓋体3とは、蓋体3を成形する工程における樹脂の成形熱によって溶け合う。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の第1ケース部材及び第2ケース部材と、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に配置された止水部材と、を備え、
前記止水部材の融点が前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材の融点よりも低く、
前記止水部材が前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材と溶け合っている、
樹脂ケース。
【請求項2】
前記止水部材の材料の弾性率が前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材の弾性率よりも低い、
請求項1に記載の樹脂ケース。
【請求項3】
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材が前記止水部材を挟んで所定の並び方向に沿って並び、
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材の一方に係合部が設けられると共に他方に被係合部が設けられており、
前記第1ケース部材と前記第2ケース部材とが離間する前記所定の並び方向への相対移動が、前記被係合部に前記係合部が係合することにより抑止されている、
請求項2に記載の樹脂ケース。
【請求項4】
前記止水部材よりも融点が高い樹脂製の第3ケース部材をさらに備え、
前記止水部材が環状に形成され、前記第3ケース部材が前記止水部材の内周側に配置されており、
前記止水部材の内周面に前記第3ケース部材が接している、
請求項1に記載の樹脂ケース。
【請求項5】
前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材が前記止水部材を挟んで所定の並び方向に沿って並び、
前記第3ケース部材は、前記所定の並び方向に沿って前記止水部材と共に前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に挟まれるフランジ部を有し、
前記止水部材の内周面に前記第3ケース部材の前記フランジ部が接している、
請求項4に記載の樹脂ケース。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂ケースと、
前記樹脂ケースに収容された物理量センサと、
前記物理量センサに電気的に接続された複数の電線を一括してシースに収容してなるケーブルと、を備え、
前記ケーブルが前記第2ケース部材から導出されており、
前記シースと前記第2ケース部材とが溶け合っている、
センサモジュール。
【請求項7】
請求項1乃至5の何れか1項に記載の樹脂ケースの製造方法であって、
前記止水部材を成形する工程と、
前記第1ケース部材を成形する工程と、
前記第2ケース部材を成形する工程とを備え、
前記第1ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材と前記第1ケース部材とが溶け合い、
前記第2ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材と前記第2ケース部材とが溶け合う、
樹脂ケースの製造方法。
【請求項8】
請求項6に記載のセンサモジュールの製造方法であって、
前記止水部材を成形する工程と、
前記第1ケース部材を成形する工程と、
前記第2ケース部材を成形する工程とを備え、
前記第1ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材と前記第1ケース部材とが溶け合い、
前記第2ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材及び前記シースと前記第2ケース部材とが溶け合う、
センサモジュールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂ケース、センサモジュール、樹脂ケースの製造方法、及びセンサモジュールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、温度や磁気等の物理量を検出するセンサは、防水機能を有するケースに収容して用いられることが多い。例えば、特許文献1に記載のトルクセンサは、無端状のシール部材によってカバーの防水性が確保されている。特許文献2に記載のセンサモジュールは、回路基板に搭載されたセンサを収容するケースとカバーとの間に防水性を有する複数のシートを挟むことにより防水性が確保されている。特許文献3に記載のセンサ用ケースは、第1ケースと第2ケースとのインロー部との嵌合により防水性が確保されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11-248564号公報
【特許文献2】特開2017-58279号公報
【特許文献3】特開2021-135180号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば車両に搭載されるセンサのケースには、小型軽量であると共に、部材間の僅かな隙間からの毛管現象による水分の浸入をも防ぐことが可能な高い防水性が求められる場合がある。本発明は、高い防水性を有する樹脂ケース、センサモジュール、樹脂ケースの製造方法、及びセンサモジュールの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記課題を解決することを目的として、樹脂製の第1ケース部材及び第2ケース部材と、前記第1ケース部材と前記第2ケース部材との間に配置された止水部材と、を備え、前記止水部材の融点が前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材の融点よりも低く、前記止水部材が前記第1ケース部材及び前記第2ケース部材と溶け合っている、樹脂ケースを提供する。
【0006】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の樹脂ケースと、前記樹脂ケースに収容された物理量センサと、前記物理量センサに電気的に接続された複数の電線を一括してシースに収容してなるケーブルと、を備え、前記ケーブルが前記第2ケース部材から導出されており、前記シースと前記第2ケース部材とが溶け合っている、センサモジュールを提供する。
【0007】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記の樹脂ケースの製造方法であって、前記止水部材を成形する工程と、前記第1ケース部材を成形する工程と、前記第2ケース部材を成形する工程とを備え、前記第1ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材と前記第1ケース部材とが溶け合い、前記第2ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材と前記第2ケース部材とが溶け合う、樹脂ケースの製造方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、上記課題を解決することを目的として、上記のセンサモジュールの製造方法であって、前記止水部材を成形する工程と、前記第1ケース部材を成形する工程と、前記第2ケース部材を成形する工程とを備え、前記第1ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材と前記第1ケース部材とが溶け合い、前記第2ケース部材を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材及び前記シースと前記第2ケース部材とが溶け合う、センサモジュールの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る樹脂ケース、センサモジュール、樹脂ケースの製造方法、及びセンサモジュールの製造方法によれば、高い防水性を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】(a)は、本発明の実施の形態に係るセンサモジュールを示す斜視図である。(b)は、(a)とは異なる角度から見たセンサモジュールの斜視図である。
図2図1(a)に示す角度から見たセンサモジュールの各構成部材を示す分解斜視図である。
図3図1(b)に示す角度から見たセンサモジュールの各構成部材を示す分解斜視図である。
図4】センサモジュールを示す断面図である。
図5図4の部分拡大図である。
図6】(a)は、ホルダを示す斜視図である。(b)は、支持部材を示す斜視図である。(c)は、挟持部材を示す斜視図である。
図7】蓋体を成形する工程を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態]
本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。この実施の形態では、本発明を車両の操舵トルクを検出するためのセンサモジュールに適用した場合について説明するが、本発明の適用対象はこれに限らず、様々な物理量を検出するセンサモジュール、あるいは電気製品の樹脂ケース等に本発明を適用することが可能である。
【0012】
図1(a)は、本発明の実施の形態に係るセンサモジュール1を示す斜視図である。図1(b)は、図1(a)とは異なる角度から見たセンサモジュール1の斜視図である。図2は、図1(a)に示す角度から見たセンサモジュール1の各構成部材を示す分解斜視図である。図3は、図1(b)に示す角度から見たセンサモジュール1の各構成部材を示す分解斜視図である。図4は、センサモジュール1を示す断面図である。図5は、図4の部分拡大図である。
【0013】
センサモジュール1は、車両のステアリング装置のハウジングに取り付けられ、ステアリングホイールに連結されたステアリングシャフトによって伝達される操舵トルクを検出する。
【0014】
センサモジュール1は、樹脂ケース10と、一対の磁界センサ11と、磁界センサ11が実装されたプリント基板12と、一対の磁界センサ11に電気的に接続された複数の電線131を一括してシース132に収容してなるケーブル13と、軟磁性体からなる第1集磁リング14及び第2集磁リング15と、取付対象への取り付けのためのボルトが挿通される一対の金属製のカラー16とを備えている。
【0015】
磁界センサ11は、本発明の物理量センサの一態様であり、検出した磁界の強度に応じた電気信号を出力する。ケーブル13は、7本の電線131を有しており、これらの電線131が一対の磁界センサ11のそれぞれに電気的に接続されている。電線131は、導体からなる芯線131aが絶縁被覆材131bによって被覆された絶縁電線である。各電線131の芯線131aは、プリント基板12の電極に半田付けされ、プリント基板12の配線パターンを介して磁界センサ11の端子に電気的に接続されている。シース132は、例えばポリ塩化ビニル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、フッ素ゴムなどからなる。
【0016】
第1集磁リング14及び第2集磁リング15は、それぞれ、環状に形成された環状部141,151と、環状部141,151の一部から径方向外方に向かって突出された突片部142,152とを一体に有している。本実施の形態では、第1集磁リング14及び第2集磁リング15がそれぞれ二つの突片部142,152を有しており、第1集磁リング14の二つの突片部142と第2集磁リング15の二つの突片部152との間に一対の磁界センサ11が配置されている。
【0017】
第1集磁リング14及び第2集磁リング15の環状部141,151の内側には、ステアリングシャフトの一部であるトーションバー(捩じれ軸)が永久磁石及びヨークと共に配置され、トーションバーの捩じれ量に応じて一対の磁界センサ11によって検知される磁界の強度が変化する。磁界センサ11が出力する電気信号は、ステアリングシャフトによって伝達される操舵トルクを示す信号として制御装置に入力され、制御装置がこの信号に応じて例えばパワーステアリング装置を制御する。
【0018】
樹脂ケース10は、磁界センサ11が実装されたプリント基板12を収容する中空の胴部21を有するケース本体2と、ケース本体2の胴部21の開口210を覆う蓋体3と、ケース本体2と蓋体3との間に配置された止水部材4と、ケース本体2の胴部21の内側でプリント基板12及びケーブル13の端部を保持するホルダ5と、を有して構成されている。本実施の形態では、ホルダ5が、プリント基板12及びケーブル13を支持する支持部材6、及び支持部材6との間にケーブル13の一部を挟み込む挟持部材7の組み合わせによって構成されている。
【0019】
ケース本体2は、本発明の第1ケース部材の一態様である。蓋体3は、本発明の第2ケース部材の一態様である。ホルダ5は、本発明の第3ケース部材の一態様である。
【0020】
ケース本体2、蓋体3、ならびにホルダ5の支持部材6及び挟持部材7は、樹脂製である。止水部材4は、ケース本体2、蓋体3、ならびにホルダ5の支持部材6及び挟持部材7よりも柔らかくて弾性率が低い材料からなる。また、止水部材4の融点は、ケース本体2、蓋体3、ならびにホルダ5の支持部材6及び挟持部材7の融点よりも低い。
【0021】
ケース本体2は、胴部21と、第1集磁リング14及び第2集磁リング15の環状部141,151を保持する円環部22と、胴部21と円環部22の間に設けられた取付部23とを一体に有している。以下、胴部21、円環部22、及び取付部23の並び方向を軸方向という。胴部21は、軸方向から見た形状が四角形状であり、取付部23側とは反対側の軸方向の端部に開口210が形成されている。ケーブル13は、軸方向に沿って蓋体3から導出されている。
【0022】
取付部23は、胴部21の四角形状の長辺方向と平行な方向が長手方向となる矩形状であり、その両端部にカラー16がそれぞれ保持されている。取付部23は、カラー16に挿通されるボルトによって取付対象に固定され、取付対象に形成された開口を閉塞する。本実施の形態では、この取付対象がステアリング装置のハウジングである。ケース本体2の円環部22は、ハウジングの内側に配置される。胴部21は、車両の走行時にタイヤによって跳ね上げられた水滴が掛かるハウジングの外側に配置される。
【0023】
止水部材4は、軸方向から見た形状が角丸四角形状を呈する環状に形成されている。また、止水部材4は、軸方向に沿った断面における断面形状が図5に示すように四角形状であり、内周面4aと外周面4bとの間の一方の側面4cが軸方向一側(ケース本体2側)を向き、他方の側面4dが軸方向他側(蓋体3側)を向いている。
【0024】
ケース本体2の胴部21は、軸方向の一端部が蓋体3に覆われており、この一端部における外周側の角部に、止水部材4の軸方向の一部を収容する切り欠き211が環状に形成されている。止水部材4は、一方の側面4cを含む軸方向の一部が胴部21の切り欠き211に収容されており、他方の側面4dを含む軸方向の他の一部が胴部21の切り欠き211から軸方向に突出している。ホルダ5は、止水部材4の内周側に配置され、止水部材4の内周面4aに接している。
【0025】
ケース本体2及び蓋体3は、止水部材4を挟んで所定の並び方向に沿って並んでいる。本実施の形態では、この所定の並び方向が上記の軸方向である。また、止水部材4は、ケース本体2及び蓋体3と溶け合っている。これにより、ケース本体2と蓋体3との間の僅かな隙間からホルダ5側への水分の浸入が抑止され、センサモジュール1の防水性が高められている。
【0026】
図6(a)は、支持部材6と挟持部材7を組み合わせたホルダ5を示す斜視図である。図6(b)は、挟持部材7を示す斜視図である。図6(c)は、支持部材6を示す斜視図である。
【0027】
支持部材6は、シース132の一部を支持する半円筒状のシース支持部61と、シース132から導出された複数の電線131を支持する電線支持部62と、プリント基板12を支持する基板支持部63と、シース支持部61における電線支持部62側の端部から軸方向に対して垂直な方向に突出するようにして設けられた壁部64と、を一体に有している。
【0028】
支持部材6のシース支持部61は、軸方向から見た形状が半円状であり、軸方向に延在している。電線支持部62には、複数の電線131をそれぞれ保持する複数の保持溝621、及び複数の電線131がそれぞれ挿通される複数の電線挿通孔622が形成されている。電線挿通孔622は、保持溝621の端部と連通しており、電線挿通孔622から突き出た電線131の芯線131aがプリント基板12の電極に半田付けされる。
【0029】
基板支持部63は、磁界センサ11が実装されたプリント基板12の実装面12aと向かい合う板部631と、板部631に立設された一対の突起部632とを有している。一対の突起部632は、プリント基板12に形成された一対の貫通孔121に挿通され、プリント基板12を位置決めする。
【0030】
壁部64は、電線支持部62よりも大きく軸方向に対して垂直な方向に突出している。壁部64は、軸方向の厚みが異なる厚肉部641と薄肉部642とを有し、薄肉部642が厚肉部641の外縁を囲むように形成されている。壁部64における電線支持部62側の面には、厚肉部641と薄肉部642との厚みの違いによる段差面64aが形成されている。
【0031】
挟持部材7は、シース132の一部を支持する半円筒状のシース支持部71と、シース132から導出された複数の電線131を支持する電線支持部72と、シース支持部71における電線支持部72側の端部から軸方向に対して垂直な方向に突出するようにして設けられた壁部73と、を一体に有している。
【0032】
挟持部材7のシース支持部71は、軸方向から見た形状が半円状であり、軸方向に延在している。シース132は、支持部材6のシース支持部61と挟持部材7のシース支持部71とによって、周方向の全体が囲われている。電線支持部72は、複数の電線131を挟んで支持部材6の電線支持部62と向かい合っている。電線支持部72には、複数の電線131がそれぞれ挿通される複数の切り欠き721が形成されている。
【0033】
挟持部材7の壁部73は、電線支持部72よりも大きく軸方向に対して垂直な方向に突出している。壁部73は、支持部材6の壁部64と同様に、軸方向の厚みが異なる厚肉部731と薄肉部732とを有し、薄肉部732が厚肉部731の外縁を囲むように形成されている。壁部73における電線支持部72側の面には、厚肉部731と薄肉部732との厚みの違いによる段差面73aが形成されている。
【0034】
ホルダ5は、ケース本体2の胴部21における軸方向の開口端面21aに当接するフランジ部51を有している。フランジ部51は、支持部材6の壁部64における薄肉部642と、挟持部材7の壁部73における薄肉部732との組み合わせによって環状に構成されている。フランジ部51は、胴部21の開口端面21aと軸方向に対向する対向面51aを有しており、この対向面51aが胴部21の開口端面21aに当接することにより、ケース本体2に対してホルダ5が軸方向に位置決めされている。また、ホルダ5は、支持部材6の段差面64a及び挟持部材7の段差面73aが胴部21の内面21bに嵌合することにより、ケース本体2に対し、軸方向に対して垂直な方向に位置決めされている。
【0035】
ホルダ5は、フランジ部51の外周面51bが止水部材4の内周面4aに接している。フランジ部51は、軸方向に沿って止水部材4と共にケース本体2と蓋体3との間に挟まれている。フランジ部51の外周面51bは、全周にわたって止水部材4の内周面4aに接していることが望ましいが、周方向の一部において止水部材4の内周面4aに接していなくてもよい。
【0036】
ケース本体2及び蓋体3は、これらの一方に設けられた係合部が他方に設けられた被係合部に係合することにより、ケース本体2と蓋体3とが離間する軸方向への相対移動が抑止されている。本実施の形態では、ケース本体2の胴部21の外周に被係合部24が一体に設けられており、この被係合部24に係合する係合部31が蓋体3に設けられている。被係合部24は、胴部21の外周に全周にわたって形成されており、止水部材4と軸方向に並んでいる。
【0037】
蓋体3は、上記の係合部31と、ケーブル13のシース132を覆う円筒状の筒状部32と、軸方向に沿って止水部材4及びホルダ5のフランジ部51をケース本体2との間に挟む側板部33と、ケース本体2の胴部21の軸方向一端部及び被係合部24の外周を覆う外周筒部34と、を一体に有している。
【0038】
ケーブル13のシース132は、蓋体3の筒状部32と溶け合っており、シース132と筒状部32との隙間からの水分の浸入が抑止されている。筒状部32は、シース132の全周を覆っている。係合部31は、外周筒部34の内周面34aから内方に突出して環状に形成されている。被係合部24の外周面24aは、外周筒部34の内周面34aに接している。ケース本体2の被係合部24における取付部23側の軸方向端面24bは、係合部31における側板部33側の端面31aに接している。
【0039】
次に、センサモジュール1及び樹脂ケース10の製造方法について説明する。センサモジュール1及び樹脂ケース10の製造方法は、止水部材4を成形する工程と、ケース本体2を成形する工程と、ホルダ5の支持部材6及び挟持部材7を成形する工程と、蓋体3以外のセンサモジュール1の構成部品を組み立てる工程と、蓋体3を成形する工程と、を備えている。
【0040】
止水部材4の融点温度は、例えば200℃以下である。ケース本体2、蓋体3、支持部材6、及び挟持部材7の融点温度は、止水部材4の融点温度よりも高く、例えば260℃以上300℃以下である。なお、ケース本体2、蓋体3、支持部材6、及び挟持部材7の材料としては、それぞれ異なる材料を用いてもよいが、これらの各部材を共通の材料によって形成することが望ましい。共通の材料によってケース本体2、蓋体3、支持部材6、及び挟持部材7を形成すれば、樹脂ケース10の温度が変化しても、熱膨張率の違いに起因してこれらの部材間の隙間が大きくなることを防ぐことができるためである。
【0041】
ケース本体2、蓋体3、支持部材6、及び挟持部材7の材料として、ポリブチレンテレフタレート(PBT)を用いる場合、止水部材4の材料としては、ポリブチレンテレフタレート構造とポリテトラメチレングリコール構造を有する共重合体である、東レ・デュポン社製のハイトレル(登録商標)を好適に用いることができる。また、ケース本体2、蓋体3、支持部材6、及び挟持部材7の材料として、ポリアミド612(PA612)又は芳香族ポリアミド(PPA)を用いる場合、止水部材4の材料としては、ポリアミド系の樹脂を好適に用いることができる。
【0042】
ケース本体2を成形する工程では、当該工程における樹脂の成形熱によって止水部材4とケース本体2とが溶け合う。より具体的には、ケース本体2の胴部21に形成された切り欠き211において蓋体3側を指向する軸端面211aと止水部材4の一方の側面4cとが溶け合い、切り欠き211における外周面211bと止水部材4の内周面4aとが溶け合う。軸端面211a及び外周面211bは、共に切り欠き211の内面である。
【0043】
ケース本体2を成形する工程では、予め成形された止水部材4を一対のカラー16と共に金型に配置し、この金型内に溶融樹脂を注入してケース本体2を成形する。この溶融樹脂の温度は、止水部材4の融点温度よりも高いので、ケース本体2を成形するための樹脂の成形熱によって止水部材4の一部の表面が溶融し、止水部材4とケース本体2とが溶け合って一体となる。
【0044】
ここで、成形熱とは、ケース本体2の成形用樹脂に与えられる熱であり、ケース本体2を成形するための金型に注入される溶融樹脂の流動時における熱のほか、ケース本体2が固化した後にアニール処理を行う場合には、このアニール処理時における熱も含まれる。
【0045】
また、止水部材4及びケース本体2を2色成形によって形成してもよい。この場合、金型内に止水部材4となる溶融樹脂を注入して固化させ、その後さらに止水部材4が形成された金型内にケース本体2となる溶融樹脂を注入する。この成形方法によっても、ケース本体2を成形するための樹脂の成形熱によって止水部材4の一部の表面が溶融し、止水部材4とケース本体2とが溶け合って一体となる。
【0046】
ホルダ5の支持部材6及び挟持部材7を成形する工程では、支持部材6及び挟持部材7をそれぞれ別の金型を用いて射出成形する。
【0047】
蓋体3以外のセンサモジュール1の構成部品を組み立てる工程では、一対の磁界センサ11が実装されたプリント基板12の電極に各電線131の芯線131aが半田付けされたケーブル13をホルダ5の支持部材6と挟持部材7との間に配置する。その後さらに、止水部材4が一体化されたケース本体2にホルダ5と第1集磁リング14及び第2集磁リング15と組み付ける。
【0048】
図7は、蓋体3を成形する工程を示す説明図である。この工程では、磁界センサ11、プリント基板12、ケーブル13、第1集磁リング14、第2集磁リング15、カラー16、ケース本体2、止水部材4、及びホルダ5が組み立てられた組立体8を、蓋体3を成形するための金型9に配置し、金型9のキャビティ90に蓋体3となる溶融樹脂を注入して固化させる。
【0049】
金型9は、上型91及び下型92からなり、上型91に溶融樹脂の注入孔910が形成され、下型92に溶融樹脂の注入孔920が形成されている。これらの注入孔910,920は、ケーブル13のシース132の外周面132aに対向する位置に開口している。図7では、注入孔910,920からキャビティ90に注入された溶融樹脂が流れる方向を矢印で示している。
【0050】
ホルダ5のフランジ部51は、その外周面51bが止水部材4の内周面4aに接することにより、溶融樹脂によって止水部材4がケース本体2から剥がれてしまうことを抑制している。つまり、ホルダ5と止水部材4との間に隙間があると、この隙間に流れ込んだ溶融樹脂の圧力によって止水部材4の内周面4aと切り欠き211の外周面211bとが剥離してしまいやすくなるが、本実施の形態では、フランジ部51の外周面51bが止水部材4の内周面4aに接することにより、ホルダ5と止水部材4との間に溶融樹脂が入り込みにくいようになっている。また、フランジ部51は、胴部21の開口端面21aに当接することにより、溶融樹脂の圧力によってホルダ5が胴部21の奥側に入り込んでしまうことを抑止している。
【0051】
蓋体3を成形する工程では、当該工程における樹脂の成形熱によって止水部材4及びケーブル13のシース132と蓋体3とが溶け合う。より具体的には、止水部材4の外周面4bが蓋体3の外周筒部34と溶け合い、止水部材4の側面4dが蓋体3の側板部33と溶け合う。シース132の外周面132aは、蓋体3の筒状部32と溶け合う。この成形熱は、蓋体3の成形用樹脂に与えられる熱をいい、蓋体3を成形するための金型内に注入される溶融樹脂の流動時における熱の他、蓋体3が固化した後にアニール処理を行う場合には、このアニール処理時における熱も含まれる。
【0052】
(実施の形態の作用及び効果)
以上説明した実施の形態によれば、止水部材4がケース本体2及び蓋体3と溶け合うことにより、ホルダ5側への水分の浸入が抑止され、センサモジュール1の防水性が高められる。また、止水部材4は、ケース本体2、蓋体3、ならびにホルダ5の支持部材6及び挟持部材7よりも弾性率が低い材料からなるので、製造時における蓋体3の成形後の温度の低下や、使用時における環境温度の変化によって、止水部材4と他の部材とが異なる膨張率で収縮又は膨張しても、止水部材4の弾性変形によってこれを吸収し、止水部材4と他の部材との間に隙間ができてしまうことを防ぐことができる。またさらに、ケース本体2の被係合部24に蓋体3の係合部31が係合するため、ケーブル13が引っ張られた場合でも、ケース本体2と蓋体3とが軸方向に離間して止水部材4とケース本体2又は蓋体3との間に隙間ができてしまうことを防ぐことができる。
【0053】
(実施の形態のまとめ)
次に、以上説明した実施の形態から把握される技術思想について、実施の形態における符号等を援用して記載する。ただし、以下の記載における各符号は、特許請求の範囲における構成要素を実施の形態に具体的に示した部材等に限定するものではない。
【0054】
[1]樹脂製の第1ケース部材(ケース本体2)及び第2ケース部材(蓋体3)と、前記第1ケース部材(2)と前記第2ケース部材(3)との間に配置された止水部材(4)と、を備え、前記止水部材(4)の融点が前記第1ケース部材(2)及び前記第2ケース部材(3)の融点よりも低く、前記止水部材(4)が前記第1ケース部材(2)及び前記第2ケース部材(3)と溶け合っている、樹脂ケース(10)。
【0055】
[2]前記止水部材(4)の材料の弾性率が前記第1ケース部材(2)及び前記第2ケース部材(3)の弾性率よりも低い、上記[1]に記載の樹脂ケース(10)。
【0056】
[3]前記第1ケース部材(2)及び前記第2ケース部材(3)が前記止水部材(4)を挟んで所定の並び方向に沿って並び、前記第1ケース部材(2)及び前記第2ケース部材(3)の一方に係合部(31)が設けられると共に他方に被係合部(24)が設けられており、前記第1ケース部材(2)と前記第2ケース部材(3)とが離間する前記所定の並び方向への相対移動が、前記被係合部(24)に前記係合部(31)が係合することにより抑止されている、上記[2]に記載の樹脂ケース(10)。
【0057】
[4]前記止水部材(4)よりも融点が高い樹脂製の第3ケース部材(ホルダ5)をさらに備え、前記止水部材(4)が環状に形成され、前記第3ケース部材(5)が前記止水部材(4)の内周側に配置されており、前記止水部材(4)の内周面(4a)に前記第3ケース部材(5)が接している、上記[1]に記載の樹脂ケース(10)。
【0058】
[5]前記第1ケース部材(2)及び前記第2ケース部材(3)が前記止水部材(4)を挟んで所定の並び方向に沿って並び、前記第3ケース部材(5)は、前記所定の並び方向に沿って前記止水部材(4)と共に前記第1ケース部材(2)と前記第2ケース部材(3)との間に挟まれるフランジ部(51)を有し、前記止水部材(4)の内周面(4a)に前記第3ケース部材(5)の前記フランジ部(51)が接している、上記[4]に記載の樹脂ケース(10)。
【0059】
[6]上記[1]乃至[5]の何れか一つに記載の樹脂ケース(10)と、前記樹脂ケース(10)に収容された物理量センサ(磁界センサ11)と、前記物理量センサ(11)に電気的に接続された複数の電線(131)を一括してシース(132)に収容してなるケーブル(13)と、を備え、前記ケーブル(13)が前記第2ケース部材(3)から導出されており、前記シース(132)と前記第2ケース部材(3)とが溶け合っている、センサモジュール(1)。
【0060】
[7]上記[1]乃至[5]の何れか一つに記載の樹脂ケース(10)の製造方法であって、前記止水部材(4)を成形する工程と、前記第1ケース部材(2)を成形する工程と、前記第2ケース部材(3)を成形する工程とを備え、前記第1ケース部材(2)を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材(4)と前記第1ケース部材(2)とが溶け合い、前記第2ケース部材(3)を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材(4)と前記第2ケース部材(3)とが溶け合う、樹脂ケース(10)の製造方法。
【0061】
[8]上記[6]に記載のセンサモジュール(1)の製造方法であって、前記止水部材(4)を成形する工程と、前記第1ケース部材(2)を成形する工程と、前記第2ケース部材(3)を成形する工程とを備え、前記第1ケース部材(2)を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材(4)と前記第1ケース部材(2)とが溶け合い、前記第2ケース部材(3)を成形する工程における樹脂の成形熱によって前記止水部材(4)及び前記シース(132)と前記第2ケース部材(3)とが溶け合う、センサモジュール(1)の製造方法。
【0062】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、上記の実施の形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。また、実施の形態の中で説明した特徴の組合せの全てが発明の課題を解決するための手段に必須であるとは限らない点に留意すべきである。
【0063】
また、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で、適宜変形して実施することが可能である。例えば、上記の実施の形態では、ホルダ5が支持部材6及び挟持部材7の二部材からなる場合について説明したが、ホルダ5の構成によっては、ホルダ5を単一の部材として形成することも可能である。また、ケース本体2に係合部を設け、蓋体3に被係合部を設けてもよい。
【符号の説明】
【0064】
1…センサモジュール 10…樹脂ケース
11…磁界センサ(物理量センサ) 13…ケーブル
131…電線 132…シース
2…ケース本体(第1ケース部材) 24…被係合部
3…蓋体(第2ケース部材) 31…係合部
4…止水部材 4a…内周面
5…ホルダ(第3ケース部材) 51…フランジ部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7