(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051646
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】分散液、化粧料、分散液の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01G 9/02 20060101AFI20240404BHJP
C09K 23/54 20220101ALI20240404BHJP
A61K 8/89 20060101ALI20240404BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20240404BHJP
A61K 8/27 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C01G9/02 A
C09K23/54
A61K8/89
A61Q17/04
A61K8/27
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022157923
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(74)【代理人】
【識別番号】100196058
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 彰雄
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】久保田 敦子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 智海
【テーマコード(参考)】
4C083
4G047
【Fターム(参考)】
4C083AB212
4C083AD151
4C083AD152
4C083BB25
4C083BB46
4C083CC19
4C083EE07
4C083EE17
4G047AA02
4G047AB04
4G047AC02
4G047AC03
4G047AD03
(57)【要約】
【課題】表面処理紫外線遮蔽粒子を含み、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液を提供する。
【解決手段】表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子と、シリコーンオイルと、を含む分散液であって、以下の方法で作製された試料液を、動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの、累積体積百分率が90%の場合の値(D90)を、累積体積百分率が50%の場合の値(D50)で除した値が2.5以下である、分散液。
(作製方法)前記分散液と、ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、前記シリコーンオイルとを含み、前記表面処理された紫外線遮蔽粒子が10質量部、前記ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが2.8質量部となるように、前記シリコーンオイルで調製した調製液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間撹拌して、粒度分布測定用の試料液を作製する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子と、シリコーンオイルと、を含む分散液であって、
以下の方法で作製された試料液を、動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの、累積体積百分率が90%の場合の値(D90)を、累積体積百分率が50%の場合の値(D50)で除した値が2.5以下である、分散液。
(作製方法)
前記分散液と、ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、前記シリコーンオイルとを含み、前記表面処理された紫外線遮蔽粒子が10質量部、前記ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが2.8質量部となるように、前記シリコーンオイルで調製した調製液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間撹拌して、粒度分布測定用の試料液を作製する。
【請求項2】
前記分散液の総質量に対する、前記表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子の含有量が30質量%以上である、請求項1に記載の分散液。
【請求項3】
前記表面処理剤が、加水分解性の表面処理剤を含む、請求項1または2に記載の分散液。
【請求項4】
前記表面処理剤が、下記式(1)で表されるアルコキシシランである、請求項1または2に記載の分散液。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は、炭素原子数1~18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基、R2は、炭素原子数1~4のアルキル基を示す。)
【請求項5】
請求項1または2に記載の分散液と、化粧品基剤原料と、を含有する化粧料。
【請求項6】
請求項1または2に記載の分散液の製造方法であって、
表面処理剤とアルコールと紫外線遮蔽粒子とを混合して第1の混合液を調製し、前記第1の混合液を分散処理して、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行い、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子とアルコールとを含有する第2の混合液を調製する工程と、
前記第2の混合液とシリコーンオイルとを混合し、次いで、前記アルコールを加熱により除去する工程と、を有する、分散液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分散液、分散液を含有する化粧料、および分散液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
酸化亜鉛等の紫外線遮蔽粒子は、紫外線遮蔽性に優れ、透明性が高いことが知られている。そのため、紫外線遮蔽粒子は、紫外線遮蔽性と透明性が必要とされる素材の形成材料として用いられる。前記素材としては、例えば、化粧料、紫外線遮蔽フィルム、紫外線遮蔽ガラス等が挙げられる。
【0003】
紫外線遮蔽粒子としては、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子等の金属酸化物粒子が用いられている。これらの金属酸化物粒子は、表面が親水性である。そのため、これらの紫外線遮蔽粒子を化粧料に適用する場合、紫外線遮蔽粒子の表面の性質を化粧品の性状に合わせたり、紫外線遮蔽粒子の触媒活性を抑えたりするために、表面処理剤による紫外線遮蔽粒子の表面処理が行われている。
以下の説明では、表面処理剤で表面処理されて、表面処理剤を表面に有する紫外線遮蔽粒子を、表面処理紫外線遮蔽粒子と称する。
このような表面処理紫外線遮蔽粒子は、そのまま化粧料に混合されたり、分散媒に分散させた分散液の状態で化粧料に混合されたりしている。
【0004】
油性化粧料やエマルションタイプの油相等に紫外線遮蔽粒子を混合する場合には、アルコキシ基を有するシランカップリング剤等で表面処理された紫外線遮蔽粒子が用いられる(例えば、特許文献1、2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2017/130632号
【特許文献2】特開2007-51188号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、表面処理紫外線遮蔽粒子のさらなる紫外線遮蔽性と、表面処理紫外線遮蔽粒子を含む分散液の透明性の向上が求められていた。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであって、表面処理紫外線遮蔽粒子を含み、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液を提供することを目的とする。また、前記分散液を含む化粧料を提供することを目的とする。さらに、表面処理紫外線遮蔽粒子を含み、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、以下の態様を有する。
[1]表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子と、シリコーンオイルと、を含む分散液であって、
以下の方法で作製された試料液を、動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの、累積体積百分率が90%の場合の値(D90)を、累積体積百分率が50%の場合の値(D50)で除した値が2.5以下である、分散液。
(作製方法)
前記分散液と、ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、前記シリコーンオイルとを含み、前記表面処理された紫外線遮蔽粒子が10質量部、前記ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが2.8質量部となるように、前記シリコーンオイルで調製した調製液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間撹拌して、粒度分布測定用の試料液を作製する。
[2]前記分散液の総質量に対する、前記表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子の含有量が30質量%以上である、[1]に記載の分散液。
[3]前記表面処理剤が、加水分解性の表面処理剤を含む、[1]または[2]に記載の分散液。
[4]前記表面処理剤が、下記式(1)で表されるアルコキシシランである、[1]または[2]に記載の分散液。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は、炭素原子数1~18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基、R2は、炭素原子数1~4のアルキル基を示す。)
[5][1]または[2]に記載の分散液と、化粧品基剤原料と、を含有する化粧料。
[6][1]または[2]に記載の分散液の製造方法であって、
表面処理剤とアルコールと紫外線遮蔽粒子とを混合して第1の混合液を調製し、前記第1の混合液を分散処理して、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行い、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子とアルコールとを含有する第2の混合液を調製する工程と、
前記第2の混合液とシリコーンオイルとを混合し、次いで、前記アルコールを加熱により除去する工程と、を有する、分散液の製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、表面処理紫外線遮蔽粒子を含み、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液を提供することができる。また、本発明によれば、前記分散液を含む化粧料を提供することができる。さらに、本発明によれば、表面処理紫外線遮蔽粒子を含み、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の実施例1、比較例1~比較例2にて得られた分散液(測定用試料)の分光透過率を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の分散液、化粧料、分散液の製造方法の実施の形態について説明する。
なお、本実施の形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。本発明は趣旨を逸脱しない範囲において、数値、量、材料、種類、時間、温度、順番等について、変更、省略、置換、追加等が可能である。
【0012】
[分散液]
本実施形態の分散液は、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子(以下、「表面処理紫外線遮蔽粒子」と称することもある。)と、シリコーンオイルと、を含む。
本実施形態の分散液は、以下の方法で作製された試料液を、動的光散乱式粒子径分布測定装置で測定したときの、累積体積百分率が90%の場合の値(D90)を、累積体積百分率が50%の場合の値(D50)で除した値(D90/D50)が2.5以下である。
(作製方法)
前記分散液と、ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、前記シリコーンオイルとを含み、前記表面処理された紫外線遮蔽粒子が10質量部、前記ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンが2.8質量部となるように、前記シリコーンオイルで調製した調製液を、ホモジナイザーを用いて、9500rpmで5分間撹拌して、粒度分布測定用の試料液を作製する。
なお、上記調製液は、上記分散液と、上記ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、上記シリコーンオイルとが均一に混合されたものである。ここで、「均一に混合する」とは、上記分散液と、上記ポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコンと、上記シリコーンオイルを容器に添加して混合した時に、容器の壁面に固形物が付着しない程度に混合されることを意味する。均一に混合される方法は、壁面に付着した固形物が観察されない程度に混合できる方法であれば特に限定されない。例えば、上記分散液にあらかじめ超音波を加えて超音波撹拌した分散液を用いて混合する方法や、上記調製液に超音波を加えて、超音波撹拌することにより混合する方法が挙げられる。超音波で混合する方法としては、例えば、卓上型超音波洗浄機(本多電子社製、型番:2周波爆洗 W-113MK2)の爆洗モード(24kHzと31kHzとを重畳)で超音波を10分加える方法が挙げられる。
【0013】
本実施形態におけるD50とD90は、動的光散乱方式を測定原理とする粒度分布計(型番:SZ-100SP、HORIBA社製)を用いて測定した、分散液の分散粒子径である。
【0014】
本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子とシリコーンオイルのみから構成することができる。すなわち、本実施形態の分散液は、分散剤等を含まずに、化粧料の基剤として汎用されているシリコーンオイルに、表面処理紫外線遮蔽粒子が分散している状態を維持することができる。
本実施形態の分散液における、「表面処理紫外線遮蔽粒子が分散している状態を維持」について説明する。本実施形態の分散液は、分散液作製直後は表面処理紫外線遮蔽粒子の沈降は観察されない。しかし、本実施形態の分散液を静置すると、分散液を作製してから約12時間以上経過後には、表面処理紫外線遮蔽粒子の沈降が観察される。しかし、本実施形態の分散液は、このような表面処理紫外線遮蔽粒子の沈降が観察されても、分散液を撹拌機や超音波装置で撹拌すれば、上記表面処理紫外線遮蔽粒子の沈降は見えなくなって、目視では分散しているように見える。
本実施形態における「表面処理紫外線遮蔽粒子が分散している状態を維持」とは、分散液の作製直後に粒度分布を測定した場合に、上記D90/D50が2.5以下であることを意味する。または、分散液の作製直後に粒度分布を測定しない場合は、超音波処理で再分散させた場合に、上記D90/D50が2.5以下であることを意味する。超音波処理による再分散は、表面処理紫外線遮蔽粒子の沈降が確認されなくなるまで行えばよい。例えば、卓上型超音波洗浄機(本多電子社製、型番:W-113MK2)の爆洗モード(24kHzと31kHzとを重畳)で10分超音波を加える方法が挙げられる。
すなわち、本実施形態の分散液には、上記表面処理紫外線遮蔽粒子の沈降が観察されるものも含まれる。
【0015】
従来の表面処理紫外線遮蔽粒子は、乾燥され、粉体として提供されている。例えば、表面処理を緻密にし、シリコーンオイル等への分散が容易になるように湿式法で表面処理されたとしても、溶媒が除去され、乾燥されて粉体となる。そして、粉体をシリコーンオイル等の分散媒に分散し、化粧料用の材料として用いられていた(例えば、国際公開第2021/220453号等)。
【0016】
しかし、湿式法で緻密に表面処理を行っても、表面処理後に溶媒を除去したり、乾燥したりする工程での表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集を完全に抑制することは困難であった。そこで、本発明者等は、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集を抑制するために種々の検討を行った。その結果、本発明者等は、湿式法で表面処理した後に、湿式法で使用される溶媒と、化粧料で一般的に使用されるシリコーンオイルとを置換した分散液を作製することで、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されることを見出した。さらに、本発明者等は、従来の表面処理紫外線遮蔽粒子に替えて、本実施形態の分散液を化粧料に混合すれば、化粧料中で表面処理紫外線遮蔽粒子同士が凝集することも抑制できることを見出した。
【0017】
本実施形態の分散液では、表面処理紫外線遮蔽粒子が製造され、表面処理紫外線遮蔽粒子が化粧品基剤原料に混合されて化粧料となるまでの間に、表面処理紫外線遮蔽粒子同士が凝集する要因となる工程を、湿式法で使用される溶媒とシリコーンオイルとを置換する置換工程により代替した。その結果、本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制され、紫外線遮蔽性と透明性に優れる。しかも、本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子が化粧料で汎用されているシリコーンオイルに予め分散されているため、化粧料に表面処理紫外線遮蔽粒子をより容易に混合することができる。
すなわち、本実施形態の分散液によれば、従来、シリコーンオイルに分散させるために必要とされていた分散剤を用いることなく、化粧料に表面処理紫外線遮蔽粒子を混合できる。また、本実施形態の分散液によれば、分散剤の量を減らして、化粧料に表面処理紫外線遮蔽粒子を混合することができるため、化粧料の処方の自由度を高めることができる。
【0018】
従来、分散液に新しい材料を投入したり、分散液を希釈したり、分散液を長期保管したりするといった、分散液の環境の変化により、表面処理紫外線遮蔽粒子同士が凝集することがあった。本実施形態の分散液では、表面処理紫外線遮蔽粒子の凝集が抑制されているため、分散液の粒度分布がシャープである。そのため、本実施形態の分散液は、上記のような環境の変化が生じても、粒度分布の変動幅が抑制される。従って、本実施形態の分散液は、化粧料に適用するために、化粧品基剤原料等と混合されても、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集を抑制することができる。
【0019】
本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されている。これは本実施形態の分散液を用いて化粧料を作製し、それを塗膜にした場合に、その塗膜を電子顕微鏡で観察することにより確認することができる。本実施形態の分散液を用いて作製された化粧料は、従来の表面処理酸化亜鉛粒子を用いて作製された化粧料と比較して、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されていることを電子顕微鏡で観察することができる。しかし、これらの化粧料を電子顕微鏡で観察して、表面処理紫外線遮蔽粒子の凝集度合いを観察することはできても、紫外線遮蔽粒子の表面がどのような状態になっているかを観察することはできない。
分散液中の粒子同士の凝集度合いは、一次粒子径が同一であれば、粒度分布計で分散粒子径を測定し、例えば、D50を比較することにより評価することができる。
本実施形態の分散液は、分散剤を使用しなくても、シリコーンオイルに分散することができる。しかし、従来の表面処理前の紫外線遮蔽粒子、乾式法で表面処理された紫外線遮蔽粒子は、分散剤を使用せずにシリコーンオイルに分散させることは困難である。湿式法で表面処理された紫外線遮蔽粒子は、分散剤を使用せずに、シリコーンオイルに分散させることは容易ではない。
【0020】
本実施形態の分散液は、後述する本実施形態の分散液の製造方法により得ることができる。本実施形態の分散液の製造方法は、従来の分散液の製造方法とは異なり、乾燥工程を経ることなく、シリコーンオイルに分散した表面処理紫外線遮蔽粒子が得られる。乾燥工程を経ないことにより、本実施形態の分散液では、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されていると推測されるが、紫外線遮蔽粒子が表面処理剤によってどのような状態になっているかを直接評価する方法がない。
【0021】
そこで、本発明者等は、従来の表面処理紫外線遮蔽粒子と比較することができ、かつ、その特徴を一義的に特定するために、本実施形態の分散液の特徴を、化粧料で使用できる一般的な分散剤であるポリグリセリル-3-ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(信越化学工業社製、商品名:KF-6106)を用いて、所定の条件で分散させたときの、粒度分布幅(D90/D50)が小さいことで規定した。すなわち、本発明者等は、本実施形態の分散液が、分散剤を使用して、所定条件で作製した評価用の試料液の粒度分布を測定した場合に、D90/D50が2.5以下となる、という特徴で表わされることを見出した。
【0022】
粒度分布を測定する場合に、試料液中に含有される表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量によって、D50、D90の値が変動することがある。本実施形態では、上記評価用の試料液に含有される表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量を10質量部とした。しかし、評価用の試料液を上記シリコーンオイルで希釈して、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量を、例えば、3質量部、1質量部、0.5質量部に調製した試料液であっても、本実施形態の分散液に含まれる表面処理紫外線遮蔽粒子の凝集が抑制されているため、D90/D50の変動幅が従来の表面処理紫外線遮蔽粒子の場合より小さい。
上記D90/D50の下限は1.0以上であるが、1.3以上であってもよく、1.5以上であってもよい。
上記D90/D50が2.5以下であることにより、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制され、紫外線遮蔽性と透明性に優れることとなる。
【0023】
本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量が10質量部である上記試料液のD90-D50が200nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、160nm以下であることがさらに好ましい。
本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量が10質量部である上記試料液を、上記シリコーンオイルで3質量部、1質量部、0.5質量部に希釈した場合の試料液のD90-D50が200nm以下であることが好ましく、180nm以下であることがより好ましく、160nm以下であることがさらに好ましい。
上記D90-D50が200nm以下であることにより、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制され、紫外線遮蔽性と透明性に優れる。
【0024】
本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されているため、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。すなわち、本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されているため、塗膜を形成した場合に、その塗膜において表面処理紫外線遮蔽粒子が偏在することが抑制され、塗膜に濁りが生じ難く、塗膜の透明性に優れる。また、本実施形態の分散液は、上述のように塗膜において表面処理紫外線遮蔽粒子が偏在することが抑制されているため、塗膜の全域において、表面処理紫外線遮蔽粒子による紫外線遮蔽性を発現することができる。さらに、本実施形態の分散液は、化粧料に混合しても、均一な塗膜を形成することができる。
【0025】
本実施形態の分散液に含まれる表面処理紫外線遮蔽粒子の一次粒子径は任意に選択できるが、15nm以上であることが好ましく、20nm以上であることがより好ましい。
また、上記表面処理紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は715nm以下であることが好ましく、650nm以下であることがより好ましい。上記平均一次粒子径は必要に応じて、550nm以下であってもよく、350nm以下であってもよく、250nm以下であってもよく、180nm以下であってもよい。
【0026】
表面処理紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径が15nm以上715nm以下であれば、化粧料に配合した場合に透明性と紫外線遮蔽性に優れる。化粧料に配合した場合の透明性を高くしたい場合には、上記表面処理紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は135nm以下であることが好ましく、100nm以下であることがより好ましく、50nm以下であることがさらに好ましい。一方、化粧料に配合した場合のUVAの遮蔽性を大きくしたい場合には、上記表面処理紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は135nmを超えることが好ましく、140nm以上であることがより好ましく、150nm以上であることがさらに好ましい。
【0027】
なお、上記表面処理紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径は、上記表面処理紫外線遮蔽粒子のBET換算粒子径(nm)とだいたい一致する。しかし、本実施形態では、上記紫外線遮蔽粒子を表面処理した後に、乾燥工程を経ることなくシリコーンオイルに分散させるため、表面処理紫外線遮蔽粒子のBETを測定することが困難である。そこで、本実施形態では、以下の方法で表面処理紫外線遮蔽粒子の平均一次粒子径を求めてもよい。
まず、本実施形態の分散液から上記表面処理紫外線遮蔽粒子を採取して、透過型電子顕微鏡(TEM)等を用いて、上記表面処理紫外線遮蔽粒子を観察する。そして、表面処理紫外線遮蔽粒子を所定数、例えば、200個、あるいは100個を選び出す。そして、これら表面処理紫外線遮蔽粒子各々の最長の直線部分(最大長径)を測定し、これらの測定値を算術平均して、平均一次粒子径を得る。
なお、表面処理紫外線遮蔽粒子同士が凝集している場合には、この凝集体の凝集粒子径を測定するのではない。この凝集体を構成している表面処理紫外線遮蔽粒子(一次粒子)を所定数測定し、平均一次粒子径を得る。
【0028】
本実施形態において、「表面処理剤で表面処理された」とは、表面処理剤が紫外線遮蔽粒子に対し、これらの間の相互作用により接触または結合することをいう。接触としては、例えば、物理吸着が挙げられる。また、結合としては、例えば、イオン結合、水素結合、共有結合等が挙げられる。
【0029】
<紫外線遮蔽粒子>
本実施形態における紫外線遮蔽粒子とは、紫外線を遮蔽できる金属酸化物粒子を意味する。このような金属酸化物粒子としては、例えば、酸化亜鉛粒子、酸化チタン粒子、酸化セリウム粒子を用いることができる。UVA領域の紫外線が遮蔽できる点から、酸化亜鉛粒子を用いることが好ましい。
【0030】
本実施形態の紫外線遮蔽粒子の比表面積は、任意に選択できるが、例えば、1.5m2/g以上であることが好ましく、2.5m2/g以上であることがより好ましく、4m2/g以上であることがさらに好ましい。また、紫外線遮蔽粒子の比表面積は、例えば、65m2/g以下であってもよく、55m2/g以下であってもよく、50m2/g以下であってもよく、45m2/g以下であってもよい。必要に応じて、紫外線遮蔽粒子の比表面積は、40m2/g以下であってもよく、30m2/g以下であってもよく、10m2/g以下であってもよい。紫外線遮蔽粒子の比表面積の上記上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
表面処理紫外線遮蔽粒子の原料である紫外線遮蔽粒子の比表面積が1.5m2/g以上65m2/g以下であれば、本実施形態の分散液を化粧品基剤原料に混合した場合に、得られた化粧料は透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0031】
本実施形態の分散液を化粧品基剤原料に混合した場合に、得られる化粧料の透明性を高くしたい場合には、紫外線遮蔽粒子の比表面積は、8m2/g以上であることが好ましく、15m2/g以上であることがより好ましく、20m2/g以上であることがさらに好ましい。
例えば、紫外線遮蔽粒子の比表面積は、20m2/g以上50m2/g以下であることが好ましく、20m2/g以上48m2/g以下であることがより好ましく、20m2/g以上46m2/g以下であることがさらに好ましい。必要に応じて、紫外線遮蔽粒子の比表面積は、20.0m2/g以上30.0m2/g以下であってもよく、20.0m2/g以上38.0m2/g以下であってもよく、20.0m2/g以上44.0m2/g以下であってもよい。紫外線遮蔽粒子の比表面積が上記下限値以上であることにより、本実施形態の分散液を化粧品基剤原料に混合した場合に、透明性に優れる化粧料を得ることができる。一方、紫外線遮蔽粒子の比表面積が上記上限値以下であることにより、粒子の表面エネルギーが大き過ぎないため、少ないエネルギーで、本実施形態の分散液を化粧品基剤原料に混合することができる。
【0032】
一方、本実施形態の分散液を化粧品基剤原料に混合した場合に、得られる化粧料のUVA領域の紫外線遮蔽性を大きくしたい場合には、紫外線遮蔽粒子の比表面積は、20m2/g未満であることが好ましく、15m2/g未満であることがより好ましく、8m2/g未満であることがさらに好ましい。
例えば、紫外線遮蔽粒子の比表面積は1.5m2/g以上20m2/g未満であることが好ましく、1.5m2/g以上15m2/g未満であることがより好ましく、1.5m2/g以上8m2/g未満であることがさらに好ましい。紫外線遮蔽粒子の比表面積が上記下限値以上であることにより、化粧品基剤原料に混合された場合に、透明性のある化粧料を得ることができる。一方、紫外線遮蔽粒子の比表面積が上記上限値未満であることにより、粒子の表面エネルギーが大き過ぎないため、少ないエネルギーで、本実施形態の分散液を化粧品基剤原料に混合することができ、UVA領域の紫外線遮蔽性に優れる化粧料を得ることができる。
【0033】
本実施形態における紫外線遮蔽粒子の比表面積(単位:m2/g)とは、BET法で求めたBET比表面積のことである。
紫外線遮蔽粒子の比表面積を測定する方法としては、例えば、全自動比表面積測定装置(商品名:Macsorb HM Model-1201、マウンテック社製)を用いたBET法が挙げられる。
なお、表面処理前の紫外線遮蔽粒子の比表面積と、表面処理紫外線遮蔽粒子の比表面積とは、表面処理剤の付着の仕方によって多少前後するが、大きくは変化しない。
そのため、所望の比表面積の表面処理紫外線遮蔽粒子を得るためには、所望の比表面積を有する紫外線遮蔽粒子を用いればよい。すなわち、本実施形態の表面処理紫外線遮蔽粒子は、上記紫外線遮蔽粒子の好ましい比表面積の値や範囲と、同様の値や範囲を好ましく有することができる。
【0034】
<表面処理剤>
本実施形態における表面処理剤は、化粧料で使用できるものであれば特に限定されない。紫外線遮蔽粒子の表面の水酸基と反応できる点から、加水分解性の表面処理剤が好ましい。本実施形態における「加水分解性」とは、アルコキシ基の加水分解だけでなく、金属石鹸の脱アルカリや、シリコーンのSiHの脱水素も含む。
【0035】
このような表面処理剤としては、例えば、シラン化合物、シリコーン化合物、脂肪酸、脂肪酸石鹸、脂肪酸エステルおよび有機チタネート化合物からなる群から選択される少なくとも1種が挙げられる。
また、界面活性剤を用いてもよい。
【0036】
上記シラン化合物としては、例えば、アルキルシラン、フルオロアルキルシラン等が挙げられる。
アルキルシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン等が挙げられる。
フルオロアルキルシランとしては、例えば、トリフルオロメチルエチルトリメトキシシラン、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
これらのシラン化合物の中でも、アルキルシランが好ましく、特にオクチルトリエトキシシランが好ましい。
これらのシラン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0037】
上記シリコーン化合物としては、例えば、シリコーンオイル、メチコン、ジメチコン、ハイドロゲンジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン、(アクリレーツ/アクリル酸トリデシル/メタクリル酸トリエトキシシリルプロピル/メタクリル酸ジメチコン)コポリマー、トリエトキシカプリリルシラン等が挙げられる。
シリコーンオイルとしては、例えば、メチルハイドロジェンポリシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等が挙げられる。
これらのシリコーン化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、シリコーン化合物としては、これらのシリコーン化合物の共重合体を用いてもよい。
【0038】
上記脂肪酸としては、例えば、パルミチン酸、イソステアリン酸、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、ロジン酸、12-ヒドロキシステアリン酸等が挙げられる。
上記脂肪酸石鹸としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ジステアリン酸アルミニウム、ジミリスチン酸アルミニウム、12-ヒドロキシステアリン酸アルミニウム等が挙げられる。
上記脂肪酸エステルとしては、例えば、デキストリン脂肪酸エステル、コレステロール脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、デンプン脂肪酸エステル等が挙げられる。
【0039】
上記有機チタネート化合物としては、例えば、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリ(ドデシル)ベンゼンスルホニルチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシートリ(ジオクチル)ホスフェイトチタネート、ネオペンチル(ジアリル)オキシートリネオドデカノイルチタネート等が挙げられる。
【0040】
上記表面処理剤のうち、アルコキシ基を有するシランカップリング剤を用いることが好ましい。
【0041】
「アルコキシ基を有するシランカップリング剤」
アルコキシ基を有するシランカップリング剤としては、任意に選択でき、例えば、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤のうち、化粧料に使用可能なものが好ましく挙げられる。
R1Si(OR2)3 (1)
(R1は、炭素原子数1~18のアルキル基、フルオロアルキル基またはフェニル基、R2は、炭素原子数1~4のアルキル基を示す。)
【0042】
このようなシランカップリング剤としては、アルキルアルコキシシラン、アリルアルコキシシラン、アルキル基を側鎖に有するポリシロキサンおよびアリル基を側鎖に有するポリシロキサンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0043】
アルキルアルコキシシランとしては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリブトキシシラン、n-プロピルトリメトキシシラン、n-プロピルトリエトキシシラン、n-プロピルトリプロポキシシラン、n-プロピルトリブトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソプロピルトリエトキシシラン、イソプロピルトリプロポキシシラン、イソプロピルトリブトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、フェニルトリブトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン(トリエトキシカプリリルシラン)、n-オクタデシルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0044】
シランカップリング剤としては、例えば、ジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマー、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルジメチコン、トリエトキシシリルエチルポリジメチルシロキシエチルヘキシルジメチコン等の、シロキサン骨格を主鎖とし、分子構造内にアルコキシ基とアクリル基とを有するポリマー型シランカップリング剤等を用いることもできる。
【0045】
シランカップリング剤としては、例えば、トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、パーフルオロオクチルトリエトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリエトキシシラン等のフルオロアルキルアルコキシシラン等を用いることもできる。
【0046】
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0047】
上記のシランカップリング剤の中でも、分子内にオクチル基を有するシランカップリング剤がより好ましい。具体的には、ナチュラルオイルやエステル油からシリコーンオイルまでの幅広い極性の油相に対応可能な、シランカップリング剤がより好ましい。このようなシランカップリング剤としては、n-オクチルトリエトキシシラン、n-オクチルトリメトキシシランおよびジメトキシジフェニルシラン-トリエトキシカプリリルシランクロスポリマーからなる群から選ばれる少なくとも1種が特に好ましい。
これらのシランカップリング剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
表面処理紫外線遮蔽粒子中における表面処理剤の含有量は、上記紫外線遮蔽粒子の比表面積と、混合する化粧料の疎水化度に合わせて適宜調整して用いればよい。例えば、表面処理紫外線遮蔽粒子中における表面処理剤の含有量は、紫外線遮蔽粒子と表面処理剤の合計質量中、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、5質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上16質量%以下であることがさらに好ましい。
表面処理剤の含有量が上記下限値以上であることにより、親水性の紫外線遮蔽粒子を油性の化粧料に混合することができる。また、表面処理剤の含有量が上記上限値以下であることにより、化粧料に混合した時の紫外線遮蔽粒子の紫外線遮蔽性が充分に発揮される。
【0049】
表面処理紫外線遮蔽粒子中における表面処理剤の含有量は、表面処理剤がシランカップリング剤である場合には、例えば、表面処理紫外線遮蔽粒子中のSi量を、誘導結合プラズマ発光分光分析装置で定量分析することで算出することができる。
【0050】
本実施形態の分散液において、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量は特に限定されない。本実施形態の分散液において、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量は10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。分散液中の表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量が多い方が、化粧料に混合する場合の分散液の添加量が少量で済むため、化粧料の処方の自由度を高められる。
本実施形態の分散液において、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の上限は、表面処理紫外線遮蔽粒子がシリコーンオイルでの分散を維持できる量であれば特に限定されず、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
すなわち、本実施形態の分散液は、10質量%以上90質量%以下の表面処理紫外線遮蔽粒子と10質量%以上90質量%以下のシリコーンオイルのみから構成されてもよく、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量は、30質量%以上であることが好ましく、40質量%以上であることがより好ましい。
【0051】
本実施形態の分散液は、表面処理紫外線遮蔽粒子とシリコーンオイルのみから構成されていてもよいが、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含有していてもよい。
一般的な添加剤としては、例えば、疎水性溶媒、親水性溶媒、防腐剤、分散剤、分散助剤、安定剤、水溶性バインダー、炭化水素油、エステル油、公休脂肪酸、ナチュラルオイル、アルコール、グリセリン、増粘剤、油溶性薬剤、油溶性色素類、油溶性蛋白質類、UV吸収剤等が挙げられる。
【0052】
本実施形態の分散液において、シリコーンオイルの含有量は特に限定されず、他の成分の残部とすることができる。本実施形態の分散液において、シリコーンオイルの含有量は、10質量%以上であってもよく、20質量%以上であってもよく、30質量%以上であってもよく、40質量%以上であってもよい。また、本実施形態の分散液において、シリコーンオイルの含有量は、90質量%以下であってもよく、80質量%以下であってもよく、70質量%以下であってもよく、60質量%以下であってもよい。
【0053】
<シリコーンオイル>
本実施形態におけるシリコーンオイルは、化粧料で使用できるものであり、後述するアルコールと置換できるものであれば特に限定されない。
本実施形態の分散液の製造を容易にする観点から、沸点がアルコールよりも高いことが好ましい。例えば、本実施形態におけるシリコーンオイルの沸点は、110℃以上であってもよく、120℃以上であってもよく、130℃以上であってもよく、140℃以上であってもよい。
本実施形態におけるシリコーンオイルの沸点の上限値は、特に限定されず、250℃以下であってもよく、200℃以下であってもよい。
【0054】
本実施形態におけるシリコーンオイルの粘度は、上記表面処理紫外線遮蔽粒子を分散できれば特に限定されない。シリコーンオイルの粘度は、例えば、0.1mm2/s以上であってもよく、0.5mm2/s以上であってもよく、1mm2/s以上であってもよい。また、シリコーンオイルの粘度は、100万mm2/s以下であってもよく、1万mm2/s以下であってもよく、5000mm2/s以下であってもよく、1000mm2/s以下であってもよく、100mm2/s以下であってもよく、50mm2/s以下であってもよく、10mm2/s以下であってもよい。
上記表面処理紫外線遮蔽粒子の分散を容易にする観点では、本実施形態におけるシリコーンオイルの粘度は、0.1mm2/s以上10mm2/s以下であることが好ましい。
【0055】
このようなシリコーンオイルとしては、例えば、トリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン、ハイドロジェンポリシロキサン、メチルハイドロジェンポリシロキサン、アミノ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、ポリグリセリン変性シリコーン、脂肪酸変性シリコーン、メチルポリシロキサンエマルジョン、シリコーン樹脂、シリコーングリース、メチルスチリル変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、公休脂肪酸変性シリコーン、高級脂肪酸エステル変性シリコーン、高級アルコキシ変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、フッ素変性シリコーン、及び脂肪族アルコール変性ポリシロキサンの群から選択される1種または2種以上を用いることができる。
本実施形態におけるシリコーンオイルは、鎖状構造であってもよく、環状構造であってもよい。
【0056】
本実施形態の分散液によれば、所定条件で分散させたときのD90/D50が2.5以下となるほど、上記表面処理紫外線遮蔽粒子同士の凝集が抑制されている。そのため、塗膜や化粧料に使用されたときに、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液を提供することができる。
【0057】
[分散液の製造方法]
本実施形態の分散液の製造方法は、上記表面処理紫外線遮蔽粒子を、アルコールを含む湿式処理で製造し、次いで、シリコーンオイルを添加し、前記アルコールを加熱により除去する方法である。すなわち、本実施形態の分散液の製造方法は、表面処理剤とアルコールと紫外線遮蔽粒子とを混合して第1の混合液を調製し、第1の混合液を分散処理して、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行い、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子とアルコールとを含有する第2の混合液を調製する工程と、第2の混合液とシリコーンオイルとを混合し、第2の混合液に含まれるアルコールを加熱により除去する工程と、を有する。前記アルコールは加熱により除去されるため、前記第2の混合液のアルコールが、前記シリコーンオイルで置換されたことになる。
【0058】
表面処理剤として加水分解性の表面処理剤を用いる場合、表面処理剤と水を混合した加水分解液を用いてもよい。
本実施形態において「湿式処理」とは、加水分解液に含まれる溶媒も含めて、混合液中に溶媒が合計で40質量%以上存在する状態で表面処理を行うことを意味する。
【0059】
「加水分解液を調製する工程」
本工程においては、表面処理剤と水を混合して加水分解液を調製する。
表面処理剤と水を混合した混合液を、一定の温度で所定の時間保持することで加水分解液を調製してもよい。これにより、表面処理剤の加水分解をより一層促進させることができる。
加水分解処理において、混合液の温度は特に限定されず、表面処理剤の種類によって適宜変更できるが、例えば、5℃以上65℃以下であることが好ましく、30℃以上60℃以下であることがより好ましい。
【0060】
また、保持時間は特に限定されないが、例えば、10分以上180分以下であることが好ましく、30分以上120分以下であることがより好ましい。なお、上記混合液の保持において、混合液を適宜撹拌してもよい。
【0061】
上記加水分解工程で使用する表面処理剤は、上記と同一物が使用できるため、説明を省略する。
水は化粧料に一般的に使用される水であれば特に限定されず、純水、イオン交換水、蒸留水、精製水、超純水、天然水、等を用いることができる。
【0062】
本工程では、表面処理剤の加水分解反応を制御するために、表面処理剤に対して水以外の溶媒を混合することが好ましい。上記溶媒は、表面処理剤の加水分解を過度に抑制するものでなければ特に制限されず、例えば、アルコール系溶媒を混合することができる。
【0063】
アルコール系溶媒としては、例えば、炭素原子数1~4の分岐アルコール化合物、または直鎖状アルコール化合物が挙げられる。アルコール系溶媒は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、第1級アルコール、第2級アルコールおよび第3級アルコールのいずれであってもよい。
アルコール系溶媒に含まれるアルコール化合物は、一価アルコール、二価アルコールおよび三価アルコールのいずれであってもよい。
より具体的には、アルコール系溶媒としては、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、イソプロピルアルコール、1-ブチルアルコール、2-ブタノール、イソブチルアルコール、tert-ブチルアルコール、メタンジオール、1,2-エタンジオール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,2-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、2-ブテン-1,4-ジオール、1,4-ブチンジオール、グリセリン、ジエチレングリコール、3-メトキシ-1,2-プロパンジオール等が挙げられる。これらのアルコール系溶媒のなかでも、加水分解反応の制御が容易で、化粧料に混入しても影響が少ない観点から、エタノール、イソプロピルアルコールが好ましい。
【0064】
本工程では、表面処理剤の加水分解反応を促進するために、表面処理剤と水を混合した混合液に触媒を加えてもよい。
触媒は、酸であってもよく、塩基であってもよい。酸は、混合液中において表面処理剤の加水分解反応を触媒する。一方、塩基は、加水分解された表面処理剤と紫外線遮蔽粒子の表面のシラノール基との縮合反応を触媒する。
【0065】
酸としては、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、硝酸、ホウ酸、リン酸、等の無機酸や酢酸、クエン酸、ギ酸、等の有機酸が挙げられる。これらの酸は、1種を単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。
塩基としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、水酸化カルシウム、アンモニア、アミン等が挙げられる。これらの塩基は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0066】
上記混合液中における表面処理剤の含有量は特に限定されないが、例えば、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。
【0067】
上記混合液中における水の含有量は特に限定されないが、例えば、1質量%以上20質量%以下であることが好ましく、3質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、5質量%以上10質量%以下であることがさらに好ましい。
【0068】
上記混合液中における溶媒の含有量は特に限定されないが、例えば、20質量%以上70質量%以下であることが好ましく、30質量%以上60質量%以下であることがより好ましい。これにより、加水分解液中における表面処理剤の含有量を充分に大きくすることができるとともに、充分な量の水を混合液中に含めることができる。その結果、表面処理剤の加水分解反応を効率よく進行させることができる。
【0069】
上記混合液中における触媒の含有量は特に限定されず、例えば、10ppm以上1000ppm以下であることが好ましく、20ppm以上800ppm以下であることがより好ましい。これにより、表面処理剤の加水分解反応を充分に促進させることができる。
【0070】
「第2の混合液を調製する工程」
本工程は、表面処理剤とアルコールと紫外線遮蔽粒子とを混合して第1の混合液を調製し、第1の混合液を分散処理して、湿式で、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行い、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子とアルコールとを含有する第2の混合液を調製する工程である。
または、本工程は、上記加水分解液とアルコールと紫外線遮蔽粒子とを混合して第1の混合液を調製し、第1の混合液を分散処理して、湿式で、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行い、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子とアルコールとを含有する第2の混合液を調製する工程である。
分散処理は、表面処理剤を紫外線遮蔽粒子の表面に均一に処理する観点において、分散機を用いて行うことが好ましい。そのため、分散機を用いた分散処理について詳細に説明する。
紫外線遮蔽粒子は上記と同一物が使用できるため、説明を省略する。
【0071】
本工程では、上記表面処理剤または上記加水分解液とアルコールと紫外線遮蔽粒子とを分散機に投入して第1の混合液とする。これらの材料を、同時に分散機に投入してもよく、順次に分散機に投入してもよい。これらの材料を投入する順番は特に限定されない。分散機に材料を投入した後、そのまま放置して攪拌しなくてもよいが、簡単に攪拌してもよい。また、分散機に投入する前に、あらかじめこれらの材料を混合してから分散機に投入してもよい。
【0072】
「アルコール」
本実施形態の分散液の製造方法で用いられるアルコールは、上記表面処理剤または上記加水分解液と混合可能で、かつ上記シリコーンオイルと置換可能であれば特に限定されない。アルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノール等のアルコールを用いることができる。アルコールの中でも、揮発しやすく、化粧料の原料としても使用される観点から、エタノールが特に好ましい。
【0073】
上記第1の混合液中におけるアルコールの含有量は任意に選択できるが、紫外線遮蔽粒子同士の凝集を抑制するため、第1の混合液中の液分が40質量%以上となるように、アルコールの含有量を調整することが好ましい。アルコールの含有量の上限値は、特に制限されないが、生産効率の観点から、95質量%以下であることが好ましい。
【0074】
第1の混合液中における紫外線遮蔽粒子の含有量は任意に選択できるが、紫外線遮蔽粒子同士の凝集の抑制と生産効率の両立の観点から、1質量%以上55質量%以下であることが好ましく、10質量%以上50質量%以下であることがより好ましい。前記含有量は、15質量%以上45質量%以下であってもよく、20質量%以上40質量%以下であってもよく、25質量%以上35質量%以下等であってもよい。
【0075】
上記表面処理剤または上記加水分解液と、紫外線遮蔽粒子の混合比率は特に限定されないが、表面処理剤の含有量が紫外線遮蔽粒子と表面処理剤の合計質量中に、1質量%以上20質量%以下となるように混合することが好ましい。表面処理剤の含有量は、5質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上16質量%以下であることがさらに好ましい。
【0076】
「分散機」
分散機は、紫外線遮蔽粒子同士の凝集をほぐしながら表面処理できる程度の分散エネルギーを、第1の混合液に付与できるものであれば、特に限定されない。
このような分散機としては、例えば、コロイドミル、ロールミル、超音波分散機、高圧ホモジナイザー、アルティマイザー、回転ミル、遊星ミル、ビーズミル、サンドミル等が挙げられる。分散メディアを必要とする分散装置で使用する分散メディアとしては、例えば、ジルコニア、ガラス、アルミナ、チタニア、窒化ケイ素等の所定硬度を有する粒状体を用いることができる。
【0077】
本工程では、分散機を用いて、第1の混合液を、所定以上のエネルギーで分散処理することにより、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行い、表面処理剤で表面処理された紫外線遮蔽粒子とアルコールとを含有する第2の混合液を得る。
第1の混合液に付与されるエネルギーは、分散機の大きさに合わせて、適宜調整すればよい。よって、分散の条件は適宜選択してよい。例えば、ミル、具体的には、容量が約1Lの容器を用いてビーズミルで、分散処理する場合には、500rpm以上の回転数で、1時間以上10時間以下の時間で分散処理をすることが好ましい。ただし、条件は必要に応じて選択でき、前記条件のみに限定されない。
【0078】
また、ミル、具体的には、容量が約1Lの容器を用いてビーズミルで分散処理する場合には、第1の混合液に付与される分散エネルギーは、例えば、100W・h/kg以上600W・h/kg以下であることが好ましい。ただし、条件は必要に応じて選択でき、前記条件のみに限定されない。
また、ビーズミルの解砕力がミル内のディスクまたはピン外周のビーズの遠心力に依存することから、ビーズ質量をミル内のビーズの総質量とした場合に、前記遠心力と分散時間の積(力積)を算出し、その算出した値が0.5×106N・s以上100×106N・s以下となるような分散処理をすることが好ましい。
【0079】
分散機で分散する工程における温度は特に限定されないが、例えば、20℃以上45℃以下であることが好ましい。
【0080】
「第3の混合液を調製する工程」
上記第2の混合液を調製する工程において、上記加水分解液を使用した場合には、上記第2の混合液を調製した後に、本工程を行ってもよく、行わなくてもよい。
本工程では、上記第2の混合液と、上記加水分解液を混合して第3の混合液とすることにより、再度、表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を行う工程である。
表面処理剤で紫外線遮蔽粒子の表面処理を2回行うことにより、表面処理剤が粒子表面に均一に付着しやすくなる。なお、表面処理工程は3回行ってもよく、4回行ってもよく、それ以上の回数行ってもよい。
【0081】
上記加水分解液と紫外線遮蔽粒子の混合比率は特に限定されないが、上記第2の混合液を調製する工程も合わせて、紫外線遮蔽粒子と表面処理剤の合計質量中、表面処理剤の含有量が1質量%以上20質量%以下となるように、上記第2の混合液と上記加水分解液を混合することが好ましい。表面処理剤の含有量は、5質量%以上18質量%以下であることがより好ましく、8質量%以上16質量%以下であることがさらに好ましい。
第2の混合液を調製する工程で混合する表面処理剤と、第3の混合液を調製する工程で混合する表面処理剤の質量比率は、特に限定されないが、0.5:1~3:1であることが好ましい。
2回目以降の表面処理工程は、加水分解性の反応基の残存を抑制するために行う工程であるため、表面処理剤の混合比率は小さめにして、加熱等により表面処理を促進させることが好ましい。
【0082】
本工程は、加水分解性の反応基の残存を抑制するために行う工程であるため、加熱しながら、上記第2の混合液と上記加水分解液を混合することが好ましい。
すなわち、第2の混合液を調製する工程にて紫外線遮蔽粒子の表面に表面処理剤を均一に付着させ、第3の混合液を調製する工程にて表面処理剤による紫外線遮蔽粒子の表面処理をより促進させる。
加熱温度は、表面処理が促進される温度であれば特に限定されず、例えば、40℃以上150℃以下であることが好ましい。必要に応じて、40℃以上80℃以下であってもよく、60℃から100℃であってもよい。
【0083】
「シリコーンオイルの添加とアルコールの除去工程」
本工程は、上記第2の混合液または上記第3の混合液とシリコーンオイルとを混合し、上記第2の混合液または上記第3の混合液に含まれるアルコールを加熱により除去する工程である。換言すれば、加熱によりアルコールとシリコーンオイルを置換する工程である。
上記第2の混合液に水が含まれている場合には、本工程で水も分散液から除去される。
シリコーンオイルは上記と同一物が使用できるため、説明を省略する。
シリコーンオイルの添加量は、上記第2の混合液または上記第3の混合液に含まれる表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量を勘案し、所望の表面処理紫外線遮蔽粒子の濃度となるように調製すればよい。
本工程では、シリコーンオイルに上記第2の混合液または上記第3の混合液を添加してもよく、上記第2の混合液または上記第3の混合液にシリコーンオイルを添加してもよい。添加後の混合液が均一になるように撹拌を行ってもよく、行わなくてもよい。
【0084】
本工程では、加熱により、上記2の混合液または上記第3の混合液とシリコーンオイルとを混合した液から、上記アルコールを除去する。
加熱温度は、上記アルコールが揮発する温度以上で、上記シリコーンオイルの揮発が抑制される温度であれば特に限定されない。例えば、70℃以上250℃以下であることが好ましく、75℃以上200℃以下であることがより好ましく、80℃以上150℃以下であることがさらに好ましい。
加熱により、上記アルコールが除去されるとともに、未反応の表面処理剤があった場合に、表面処理反応が進行する効果も得られる。
加熱時間は、アルコールが除去されれば特に限定されず、適宜調整すればよい。例えば、30分以上であってよく、1時間以上であってもよく、2時間以上であってもよく、3時間以上であってもよく、4時間以上であってもよい。
アルコールが除去されたかどうかは、混合液の質量減少で確認することができる。
上記加熱は、還流装置と組み合わせて、上記アルコールは除去しながら、上記シリコーンオイルは還流できる環境で行ってもよい。
上記混合液中におけるアルコールや水分は完全に除去されるのが好ましいが、本発明の目的を阻害しない程度、例えば、5%以下程度であれば残存していてもよい。
【0085】
アルコールが除去される工程で、容器の壁面に固形物が付着した場合は、アルコールの除去工程の途中または、アルコールの除去工程後に、例えば、超音波処理により、壁面に付着した固形物が液に混合されるようにしてもよい。または、アルコールの除去工程後に、化粧品基剤原料で使用される分散剤や溶媒等を添加して、超音波処理することにより、壁面に付着した固形物を分散液に混合してもよい。
上記工程により、本実施形態の分散液を作製することができる。
【0086】
本実施形態の分散液の製造方法によれば、上記第2の混合液または上記第3の混合液とシリコーンオイルとを混合し、上記アルコールを上記シリコーンオイルで置換するため、紫外線遮蔽性および透明性に優れる分散液が得られる。また、化粧料で使用されるシリコーンオイルに表面処理紫外線遮蔽粒子が分散されているため、化粧品基剤原料との混合が容易であり、ハンドリング性が高い。
【0087】
[組成物]
本実施形態の組成物は、本実施形態の分散液と、樹脂と、を含有してなる。
【0088】
本実施形態の組成物における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量は、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。本実施形態の組成物における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量は、例えば、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、20質量%以上30質量%以下であることがより好ましい。
【0089】
組成物における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量が上記範囲であることにより、組成物において、表面処理紫外線遮蔽粒子が高濃度に含有される。そのため、表面処理紫外線遮蔽粒子の特性が充分に得られ、かつ、表面処理紫外線遮蔽粒子を均一に分散した組成物が得られる。
【0090】
本実施形態の組成物は、上記分散液に樹脂を分散するために、分散媒を含んでいてもよい。
分散媒は、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されない。分散媒としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール等のアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、トルエン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等が挙げられる。
【0091】
本実施形態の組成物における分散媒の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0092】
樹脂は、工業用途で一般的に用いられるものであれば特に限定されない。樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、シリコーン樹脂等が挙げられる。
【0093】
本実施形態の組成物における樹脂の含有量は、特に限定されず、目的とする組成物の特性に応じて適宜調整される。
【0094】
本実施形態の組成物は、その特性を損なわない範囲において、一般的に用いられる添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば、重合開始剤、分散剤、防腐剤等が挙げられる。
【0095】
本実施形態の組成物の製造方法は、特に限定されない。例えば、本実施形態の表面処理紫外線遮蔽粒子と、樹脂とを、公知の混合装置で、機械的に混合する方法が挙げられる。
【0096】
混合装置としては、例えば、撹拌機、自公転式ミキサー、ホモミキサー、超音波ホモジナイザー等が挙げられる。
【0097】
本実施形態の組成物を、ロールコート法、フローコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、はけ塗り法、浸漬法等の通常の塗布方法により、ポリエステルフィルム等のプラスチック基材に塗布することにより、塗膜を形成することができる。得られた塗膜は、紫外線遮蔽膜やガスバリア膜として活用することができる。
【0098】
本実施形態の組成物によれば、本実施形態の分散液と、樹脂とを含むため、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。
【0099】
[化粧料]
本実施形態の化粧料は、本実施形態の分散液と、化粧品基剤原料と、を含有する。
【0100】
ここで、化粧品基剤原料とは、化粧品の本体を形成する諸原料のことであり、油性原料、水性原料、界面活性剤、粉体原料等が挙げられる。
油性原料としては、例えば、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油類等が挙げられる。
水性原料としては、精製水、アルコール、増粘剤等が挙げられる。
粉末原料としては、有色顔料、白色顔料、パール剤、体質顔料等が挙げられる。
本実施形態においては、化粧品基剤原料は、好ましくは、油性原料、粉末原料、または油性原料および粉末原料を用いることができ、より好ましくは油性原料を用いることができる。
【0101】
本実施形態の化粧料は、油性化粧料や、本実施形態の分散液を油相に含むエマルションタイプの化粧料や、本実施形態の分散液を油剤と混合した後に、上記分散液に含まれるシリコーンオイルと、油剤を除去して成型する粉末固形化粧料等の、その製造過程または最終形態において、表面処理紫外線遮蔽粒子が油成分(油相)に含有されている、化粧料を含む。
エマルションタイプの化粧料は、O/W型のエマルションであってもよく、W/O型のエマルションであってもよい。
本実施形態の化粧料は、換言すれば、本実施形態の分散液が、油成分または油相に含有されていることが好ましい。
【0102】
油性化粧料やエマルションの油相に用いられる油成分は、化粧料で一般的に使用されているものであれば特に限定されない。例えば、シリコーンオイル、油脂、高級脂肪酸、高級アルコール、エステル油、ナチュラルオイル等が挙げられる。
【0103】
また、本実施形態の化粧料は、その特性を阻害しない範囲で、上記水性原料、界面活性剤、粉末原料等を含んでいてもよい。
【0104】
本実施形態の化粧料は、例えば、本実施形態の表面処理紫外線遮蔽粒子、または分散液を、乳液、クリーム、サンスクリーン、ファンデーション、口紅、頬紅、アイシャドー等の化粧品の基剤に、従来通りに混合することにより得られる。
【0105】
また、本実施形態の化粧料は、本実施形態の表面処理紫外線遮蔽粒子含有シリコーンオイル分散液を油相に混合して、O/W型のまたはW/O型のエマルションとし、そのエマルションと化粧料の原料とを混合することにより得られる。
【0106】
本実施形態の化粧料における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量は、目的とする化粧料の特性に応じて適宜調整される。例えば、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であってもよく、0.1質量%以上であってもよく、1質量%以上であってもよい。また、表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。
化粧料における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0107】
以下、化粧料の一例として、日焼け止め化粧料について具体的に説明する。
紫外線を、特に長波長紫外線(UVA)を効果的に遮蔽し、粉っぽさやきしみの少ない良好な使用感を得るためには、日焼け止め化粧料における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の下限は、0.01質量%以上であることが好ましく、0.1質量%以上であることがより好ましく、1質量%以上であることがさらに好ましい。また、日焼け止め化粧料における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の上限は、50質量%以下であってもよく、40質量%以下であってもよく、30質量%以下であってもよい。日焼け止め化粧料における表面処理紫外線遮蔽粒子の含有量の上限値および下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0108】
日焼け止め化粧料は、必要に応じて、疎水性分散媒、表面処理紫外線遮蔽粒子以外の無機微粒子や無機顔料、親水性分散媒、油脂、界面活性剤、保湿剤、増粘剤、pH調整剤、栄養剤、酸化防止剤、香料、防腐剤、分散剤、消泡剤、着色剤、美容成分、高分子物質、生体由来成分、植物由来成分、抗菌剤、殺菌剤、防カビ剤、水性成分、油性成分、ビタミン剤、乳化剤、安定化剤、可溶化剤、真珠光沢剤、再脂肪化物質等を含んでいてもよい。
【0109】
疎水性分散媒としては、例えば、流動パラフィン、スクワラン、イソパラフィン、分岐鎖状軽パラフィン、ワセリン、セレシン等の炭化水素油、イソプロピルミリステート、セチルイソオクタノエート、グリセリルトリオクタノエート等のエステル油、デカメチルシクロペンタシロキサン、ジメチルポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等のシリコーン油、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸等の高級脂肪酸、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、ヘキシルドデカノール、イソステアリルアルコール等の高級アルコール等が挙げられる。
【0110】
化粧料に含まれる表面処理粒子以外の無機微粒子や無機顔料としては、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム(アパタイト)、炭酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、カオリン、タルク、酸化チタン、酸化アルミニウム、黄酸化鉄、γ-酸化鉄、チタン酸コバルト、コバルトバイオレット、酸化ケイ素等が挙げられる。
【0111】
日焼け止め化粧料は、さらに、有機系紫外線吸収剤を少なくとも1種含有していてもよい。表面処理紫外線遮蔽粒子と有機系紫外線吸収剤をともに含有する化粧料は、ブースター効果により、紫外線遮蔽域が広くなり、紫外線遮蔽性も増大するため好ましい。
【0112】
有機系紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤、安息香酸系紫外線吸収剤、アントラニル酸系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ケイ皮酸系紫外線吸収剤、シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0113】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’-ヒドロキシ-5-メチルフェニルベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-t-オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニルベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0114】
ベンゾイルメタン系紫外線吸収剤としては、例えば、ジベンザラジン、ジアニソイルメタン、4-tert-ブチル-4’-メトキシジベンゾイルメタン、1-(4’-イソプロピルフェニル)-3-フェニルプロパン-1,3-ジオン、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン等が挙げられる。
【0115】
安息香酸系紫外線吸収剤としては、例えば、パラアミノ安息香酸(PABA)、PABAモノグリセリンエステル、N,N-ジプロポキシPABAエチルエステル、N,N-ジエトキシPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAエチルエステル、N,N-ジメチルPABAブチルエステル、N,N-ジメチルPABAメチルエステル等が挙げられる。
【0116】
アントラニル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、ホモメンチル-N-アセチルアントラニレート等が挙げられる。
【0117】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、アミルサリシレート、メンチルサリシレート、ホモメンチルサリシレート、オクチルサリシレート、フェニルサリシレート、ベンジルサリシレート、p-2-プロパノールフェニルサリシレート等が挙げられる。
【0118】
ケイ皮酸系紫外線吸収剤としては、例えば、オクチルメトキシシンナメート(メトキシケイヒ酸エチルヘキシル)、ジ-パラメトキシケイ皮酸-モノ-2-エチルヘキサン酸グリセリル、オクチルシンナメート、エチル-4-イソプロピルシンナメート、メチル-2,5-ジイソプロピルシンナメート、エチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、メチル-2,4-ジイソプロピルシンナメート、プロピル-p-メトキシシンナメート、イソプロピル-p-メトキシシンナメート、イソアミル-p-メトキシシンナメート、オクチル-p-メトキシシンナメート(2-エチルヘキシル-p-メトキシシンナメート)、2-エトキシエチル-p-メトキシシンナメート、シクロヘキシル-p-メトキシシンナメート、エチル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、2-エチルヘキシル-α-シアノ-β-フェニルシンナメート、グリセリルモノ-2-エチルヘキサノイル-ジパラメトキシシンナメート等が挙げられる。
【0119】
シリコーン系ケイ皮酸紫外線吸収剤としては、例えば、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-1-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル-3-メチルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルプロピル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリルブチル]-3,4,5-トリメトキシシンナメート、[3-トリス(トリメチルシロキシ)シリル-1-メチルプロピル]-3,4-ジメトキシシンナメート等が挙げられる。
トリアジン系紫外線吸収剤の例としては、例えば、ビスエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン、エチルヘキシルトリアゾン、メチレンビスベンゾトリアゾリルテトラメチルブチルフェノール、トリスビフェニルトリアジン、ジエチルヘキシルブタミドトリアゾン等が挙げられる。
【0120】
上記以外の有機系紫外線吸収剤としては、例えば、3-(4’-メチルベンジリデン)-d,l-カンファー、3-ベンジリデン-d,l-カンファー、ウロカニン酸、ウロカニン酸エチルエステル、2-フェニル-5-メチルベンゾキサゾール、5-(3,3’-ジメチル-2-ノルボルニリデン)-3-ペンタン-2-オン、シリコーン変性紫外線吸収剤、フッ素変性紫外線吸収剤等が挙げられる。
【0121】
本実施形態の化粧料によれば、本実施形態の分散液を含むため、透明性と紫外線遮蔽性に優れる。また、本実施形態の化粧料は、対象物に対して上記表面処理紫外線遮蔽粒子を均一に塗布することができる。
【実施例0122】
以下、実施例および比較例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0123】
[実施例1]
(加水分解液を調製する工程)
オクチルトリエトキシシラン(OTS)(製品名:KBE-3083、信越化学工業社製)40.0gと、純水8.0gと、0.1mol/Lの塩酸0.8gと、エタノール51.2gとを60℃で90分混合し、加水分解液を得た。
【0124】
(表面処理工程)
得られた加水分解液7gと、比表面積が40m2/gの酸化亜鉛粒子(住友大阪セメント社製)25gと、エタノール68gとを混合して第1の混合液を得た。
次いで、この第1の混合液を、ビーズミルを用いて分散させた。分散条件は、回転数を1300rpm、温度を20℃、分散時間を40分とした。分散処理後、ビーズを除去し、エタノールで固形分を30質量%に調製した第2の混合液を得た。
【0125】
(アルコール除去工程)
得られた第2の混合液30gと、ジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)9gとを混合して、この混合液(第4の混合液)を100℃のオイルバス中にて還流し、混合液中のエタノールをシリコーンオイルに置換することで、実施例1の分散液a0(分散液a0)を得た。実施例1の分散液には、オクチルトリエトキシシランで表面処理された酸化亜鉛粒子が50質量%、シリコーンオイルが50質量%含有されている。
【0126】
「粒度分布による分散粒子径の評価」
得られた実施例1の分散液(分散液a0)20gに、ジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)77.2gと、分散剤としてポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF-6106、信越化学工業社製)2.8gとを混合して、この混合液に卓上型超音波洗浄機(本多電子社製、型番:2周波爆洗 W-113MK2)の爆洗モード(24kHzと31kHzとを重畳)で超音波を10分加えた。次いで、この混合液をさらにホモジナイザー(IKA社製、ULTRA-TURRAX(登録商標)シリーズ:T25basic)を用いて、9500rpmで5分間分散処理し、これにより、表面処理酸化亜鉛粒子を10質量%含む粒度分布評価用の分散液(分散液a1)を作製した。
さらに、それぞれ表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が0.5質量%、1質量%、3質量%となるように、ジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)で分散液a1を希釈し、手振りで混合して、粒度分布測定用の分散液液(分散液a2、a3、a4)を得た。
粒度分布測定装置(nano Partica SZ-100、堀場製作所社製)を用いて、表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が0.5質量%と1質量%と3質量%と10質量%の粒度分布測定用の分散液a1~a4のD50とD90を積算回数5回でそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0127】
「分光光度計による透明性と紫外線遮蔽性の評価」
表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が0.5質量%の分散液a4を0.1質量部と、ジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)77.2gと、分散剤としてポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(商品名:KF-6106、信越化学工業社製))99.9質量部とを手振りで混合して、表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が0.005質量%の透過率測定用の分散液(分散液a5)を得た。
この分散液a5を光路長が10mmの石英セルに入れ、波長300nm~800nmの直線透過率(%)を、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光社製、型番:V-770)を用いて測定した。結果を
図1に示す。
360nmにおける透過率が低いことは、紫外線遮蔽性が高いことを示す。このため、360nmにおける透過率は、低いことが好ましい。
550nmにおける透過率が高いことは、透明性が高いことを示す。このため、550nmにおける透過率は、高いことが好ましい。
【0128】
「塗膜の観察」
実施例1の分散液(分散液a0)と、化粧品基剤原料とを混合して、化粧料を作製した。この化粧料を基材に塗布して、塗膜を電子顕微鏡で観察した。その結果、表面処理酸化亜鉛粒子が均一に分散し、ムラのない均一な塗膜が形成されていることが観察された。
【0129】
[比較例1]
比表面積が40m2/gの酸化亜鉛粒子(住友大阪セメント社製)100gをヘンシェルミキサーに投入した。酸化亜鉛粒子をヘンシェルミキサーで撹拌しながら、オクチルトリエトキシシラン(商品名:KBE-3083、信越化学社製)11.2g、純水0.846g、およびイソプロピルアルコール7.125gの混合液を添加した。これらの混合物をヘンシェルミキサー内で混合し、1時間撹拌した。
次いで、得られた混合物をジェットミルで粉砕し、この粉砕粉を100℃で乾燥することにより、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0130】
(分散液の作製)
比較例1の酸化亜鉛粒子10gと、ジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)87.2gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(型番:KF-6106、信越化学工業社製)2.8gとを混合した。この混合液に、卓上型超音波洗浄機(本多電子社製、型番:2周波爆洗 W-113MK2)の爆洗モード(24kHzと31kHzとを重畳)で超音波を10分加えた。
次いで、この分散液を、ホモジナイザー(IKA社製、ULTRA-TURRAX(登録商標)シリーズ:T25basic、IKA社製)を用いて、9500rpmで5分間分散処理し、表面処理酸化亜鉛粒子を10質量%含有する比較例1の分散液b1を得た。
【0131】
「粒度分布による分散粒子径の評価」
比較例1の分散液において、酸化亜鉛粒子の含有量が0.5質量%、1質量%、3質量%となるようにジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)で比較例1の分散液b1を希釈して、手振りで混合して、粒度分布測定用の分散液(分散b2、b3、b4)を得た。
実施例1と同様にして、粒度分布測定用の分散液b2~b4のD50とD90をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0132】
「分光光度計による透明性と紫外線遮蔽性の評価」
実施例1で分散液a4を用いる替わりに、比較例1の分散液b4を用いた以外は実施例1と同様にして、表面処理酸化亜鉛粒子の含有量が0.005質量%の透過率測定用の分散液(分散液b5)を得た。
実施例1と同様にして、比較例1の透過率測定用の分散液b5の透過率を測定した。結果を
図1に示す。
【0133】
[比較例2]
(表面処理酸化亜鉛粒子の作製)
実施例1で得られた加水分解液7gと、比表面積が40m2/gの酸化亜鉛粒子(住友大阪セメント社製)25gと、エタノール68gとを混合して、第1の混合液を得た。
次いで、この第1の混合液を、ビーズミルを用いて分散させた。分散条件は、回転数を1300rpm、温度を20℃、分散時間を40分とした。分散処理後、ビーズを除去し、固液分離し、80℃で2時間乾燥し、比較例2の表面処理酸化亜鉛粒子を得た。
【0134】
比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子を用いる替わりに、比較例2の表面処理酸化亜鉛粒子を用いたこと以外は比較例1と同様にして、比較例2の分散液c1~c5を得た。
比較例1と同様にして、粒度分布と透過率を測定した。結果を表1と
図1にそれぞれ示す。
【0135】
「塗膜の観察」
比較例2の表面処理酸化亜鉛粒子を用いて、実施例1と同様にして化粧料を作製した。実施例1と同様にして塗膜を観察した。その結果、塗膜中に表面処理酸化亜鉛粒子が存在せずに基材が露出している箇所があり、均一な塗膜が形成されていないことが観察された。
【0136】
[比較例3]
実施例1で用いた比表面積が40m2/gの酸化亜鉛粒子を、比較例3の酸化亜鉛粒子とした。比較例3の酸化亜鉛粒子は表面処理剤で表面処理されていない。
【0137】
(分散液の作製)
比較例3の酸化亜鉛粒子10gと、ジメチコンオイル(商品名:KF-96L-2CS、信越化学工業社製)87.2gと、ポリグリセリル-3ポリジメチルシロキシエチルジメチコン(型番:KF-6106、信越化学工業社製)2.8gとを混合した。この混合液に卓上型超音波洗浄機(本多電子社製、型番:2周波爆洗 W-113MK2)の爆洗モード(24kHzと31kHzとを重畳)で超音波を10分加えた。ついで、この分散液を、ホモジナイザー(IKA社製、ULTRA-TURRAX(登録商標)シリーズ:T25basic)を用いて、9500rpmで5分間分散処理し、酸化亜鉛粒子を10質量%含有する比較例1の分散液d1を得た。
【0138】
「粒度分布による分散粒子径の評価」
比較例3の分散液d1のD50とD90を実施例1と同様にして測定した。結果を表1に示す。
【0139】
「塗膜の観察」
比較例1の酸化亜鉛粒子を用いて、実施例1と同様にして化粧料を作製した。実施例1と同様にして塗膜を観察した。その結果、酸化亜鉛粒子同士が凝集し、均一な塗膜が形成されていないことが観察された。
【0140】
【0141】
表1に示す結果から、実施例1の分散液から得られた粒度分布評価用の分散液は、表面処理酸化亜鉛粒子の含有量に関わらず、D90/D50の値が小さく、表面処理酸化亜鉛粒子の凝集が抑制されることが確認された。
また、
図1に示す結果から、実施例1の分散液は、透明性と紫外線遮蔽性に優れることが確認された。
また、実施例1の分散液、比較例1の表面処理酸化亜鉛粒子、比較例3の酸化亜鉛粒子を用いて作製した化粧料の塗膜の観察結果より、実施例1の分散液を用いて作製された化粧料は、表面処理酸化亜鉛粒子同士の凝集が抑制された塗膜を形成できることが確認された。
本発明は、紫外線遮蔽性と透明性に優れる分散液を提供できる。本発明の分散液は、紫外線遮蔽性と透明性に優れるため、化粧料に用いられた場合の工業的価値は大きい。