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特開2024-51879クレーンの運転システムおよび運転方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024051879
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】クレーンの運転システムおよび運転方法
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240404BHJP
   B66C 13/48 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B66C13/22 Y
B66C13/48 B
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158255
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(74)【代理人】
【識別番号】110001368
【氏名又は名称】清流国際弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100129252
【弁理士】
【氏名又は名称】昼間 孝良
(74)【代理人】
【識別番号】100155033
【弁理士】
【氏名又は名称】境澤 正夫
(72)【発明者】
【氏名】林 優
【テーマコード(参考)】
3F204
【Fターム(参考)】
3F204AA03
3F204BA05
3F204CA01
3F204DA05
3F204DA08
3F204DB04
3F204DC06
(57)【要約】
【課題】クレーンが荷役するまでに、不規則に積み重ねられた荷役物のそれぞれの形状を特定するクレーンの運転システムおよび運転方法を提供する。
【解決手段】荷台5でZ方向に積み重ねられた複数の荷役物3を運搬する運搬車両4が走行する走行路6の側方で、荷台5の上端および複数の荷役物3の最上端の間の高さに設置された距離計11と、演算装置13と、を備えていて、演算装置13は、距離計11により計測した複数の荷役物3の各々の水平方向に面する外周面までの距離データD1、D2に基づいて、複数の荷役物3の各々の外周面の形状を特定するデータ処理を実行する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
荷台で鉛直方向に積み重ねられた複数の荷役物を運搬する運搬車両が走行する走行路の側方で、前記荷台の上端および前記複数の荷役物の最上端の間の高さに設置された距離計と、演算装置と、を備えていて、
前記演算装置は、前記距離計により計測した前記複数の荷役物の各々の水平方向に面する外周面までの距離データに基づいて、前記外周面の形状を特定するデータ処理を実行することを特徴とするクレーンの運転システム。
【請求項2】
前記演算装置は、特定した各々の前記外周面の形状に基づいて前記複数の荷役物の各々の鉛直方向視における中心位置を特定するデータ処理を実行する請求項1に記載のクレーンの運転システム。
【請求項3】
前記複数の荷役物は各々の比重が等しく、前記演算装置は、特定した前記外周面の形状および前記比重に基づいて前記複数の荷役物の各々の重量を特定するデータ処理を実行する請求項1または2に記載のクレーンの運転システム。
【請求項4】
前記距離計の測定範囲内に設定された停車位置で前記運搬車両が停車したことを検知する車両検知センサ、を備え、前記運搬車両が前記停車位置で停車したことを前記車両検知センサが検知したときに、前記演算装置は、前記距離計に前記距離データを計測させる指令を出すデータ処理を実行する請求項1に記載のクレーンの運転システム。
【請求項5】
前記距離計を複数備え、複数の前記距離計は、前記複数の荷役物の各々の水平方向に面する外周面を四方向から計測する請求項1または4に記載のクレーンの運転システム。
【請求項6】
運搬車両が走行路を走行して、荷台で鉛直方向に積み重ねられた複数の荷役物をクレーンに運搬するまでの間に、前記走行路の側方で、前記荷台の上端および前記複数の荷役物の最上端の間の高さに設置された距離計により前記複数の荷役物の水平方向に面する外周面までの距離データを計測し、
演算装置により前記距離計が計測した前記距離データをデータ処理することにより、前記複数の荷役物の各々の前記外周面の形状を特定することを特徴とするクレーンの運転方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレーンの運転システムおよび運転方法に関し、より詳しくは、運搬車両の荷台で鉛直方向に積み重ねられた複数の荷役物を荷役するクレーンの運転システムおよび運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
スラブなどの鋼片を荷役するクレーンの自動化には、クレーンの荷役を制御する演算装置が鋼片などの荷役物の形状を正確に把握する必要がある。これに関して、斜め上方に配置されたカメラによって鉛直方向に積み重ねられた複数の鋼片の平面画像と側面画像を撮像し、平面画像から鋼片の中心点および側面画像から鋼片の高さを演算して鋼片の重心位置を求める方法が提案されている(特許文献1参照)。特許文献1に記載の発明は積み重ねられた複数の鋼片などの荷役物の大きさが下から上に向かって順に小さい場合に全ての荷役物の形状を演算可能である。
【0003】
例えば、最上段の荷役物の大きさがそれより下方に積み重ねられた他の荷役物の大きさよりも大きく、他の荷役物が最上段の荷役物に隠れてしまう場合、斜め上方に配置されたカメラでは、最上段の荷役物しか撮像することができない。それ故、特許文献1に記載の発明を適用してクレーンの自動化を図るには、荷台での荷役物の積み重ね方を所定の規則に従って整頓する必要がある。したがって、荷台での荷役物の整頓に要する手間や時間の分、荷役効率が低下するおそれがある。また、荷役物の積み重ねに制約を掛けない場合には最上段の荷役物を荷役しないと次の最上段の荷役物の形状情報が演算できないときがある。つまり、特許文献1に記載の発明では複数の荷役物を一度に荷役できずに荷役物を一つずつ荷役することになり、荷役効率が低下するおそれがある。このように、クレーンが荷役するまでに、不規則に積み重ねられた荷役物のそれぞれの形状を特定するには改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平7-330287号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、クレーンが荷役するまでに、不規則に積み重ねられた荷役物のそれぞれの形状を特定するクレーンの運転システムおよび運転方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の目的を達成する本発明のクレーンの運転システムは、荷台で鉛直方向に積み重ねられた複数の荷役物を運搬する運搬車両が走行する走行路の側方で、前記荷台の上端および前記複数の荷役物の最上端の間に配置された距離計と、演算装置と、を備えていて、前記距離計は、前記複数の荷役物の各々の水平方向に面する外周面までの距離データを計測していて、前記演算装置は、前記距離計により計測した前記距離データに基づいて、前記外周面の形状を特定するデータ処理を実行することを特徴とする。
【0007】
上記の目的を達成する本発明のクレーンの運転方法は、運搬車両が走行路を走行して、荷台で鉛直方向に積み重ねられた複数の荷役物をクレーンに運搬するまでの間に、前記走行路の側方で、前記荷台の上端および前記複数の荷役物の最上端の間の高さに設置された距離計により前記複数の荷役物の水平方向に面する外周面までの距離データを計測し、演算装置により前記距離計が計測した前記距離データをデータ処理することにより、前記複数の荷役物の各々の前記外周面の形状を特定することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、複数の荷役物の各々の水平方向に面する外周面までの距離データを計測して、複数の荷役物の各々の外周面の形状を特定することで、仮に最上段に積み重ねられた荷役物が他の荷役物よりも大きくても、全ての荷役物の外周面の形状を特定できる。つまり、複数の荷役物を荷台で不規則に積み重ねることが可能となり、荷台での荷役物の積み重ね方を所定の規則に従って整頓する必要がない。また、荷台での複数の荷役物の積み重ね方に依らずに全ての荷役物の外周面の形状を特定できるため、クレーンにより安定して把持可能な荷役物の数を把握することが可能となる。この結果、不規則に積み重ねられた複数の荷役物の荷役時の安全性と荷役効率とを向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】クレーンの運転システムの実施形態を例示する構成図である。
図2】二つの停止線の間の停止位置に運搬車両が停止した状態を例示する斜視図である。
図3】運搬車両の後端を停止線に合わせた停止位置に運搬車両が停止した状態を例示する斜視図である。
図4】荷台に積み重ねられた複数の荷役物のX方向に向いた外周面までの距離データを例示する説明図である。
図5】荷台に積み重ねられた複数の荷役物のY方向に向いた外周面までの距離データを例示する説明図である。
図6】クレーンの運転方法の実施形態の手順を例示するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のクレーンの運転システムおよびクレーンの運転方法を、図に示す実施形態に基づいて説明する。図中では、X方向を距離計11による計測時における走行路6の横断方向(運搬車両4の車幅方向)とし、Y方向を距離計11による計測時における走行路6の延在方向(運搬車両4の前後方向)とし、Z方向を鉛直方向とする。
【0011】
図1に例示する運転システム10の実施形態は、蔵置ヤード1でのクレーン2による荷役物3の荷役を自動制御している。荷役物3としては、鋼塊が分塊圧延されて成る半成品であり、スラブ、ブルーム、ビレットなどが例示される。荷役物3は、その形状がZ方向視で矩形の板状を成しているが、荷役物3どうしがZ方向に積み重ねられるものであればその形状が特に限定されるものではない。
【0012】
蔵置ヤード1は、複数の荷役物3が一時的に蔵置される公知の種々の蔵置ヤードを用いることができる。蔵置ヤード1の一例は、Z方向に積み重ねられた複数の荷役物3がY方向に間隔を空けて並べられた列がX方向に間隔を空けて複数並んでいる。蔵置ヤード1は荷役物3を蔵置できればよく、その構造は特に限定されない。蔵置ヤード1における複数の荷役物3の配列方向は、特に限定されるものではない。また、X方向やY方向に隣接する荷役物3どうしの間の間隔は、一定である必要が無く、異なっていてもよい。
【0013】
クレーン2は、門型クレーン、天井クレーンなどの公知の種々のクレーンを用いることができる。クレーン2の一例は、蔵置ヤード1をY方向に跨いでX方向に走行する門型クレーンが例示される。クレーン2はトロリのY方向の横行と走行装置によるX方向の走行とにより吊具を移動させ、吊具のZ方向の昇降により複数の荷役物3の荷役作業を行う。図示しない吊具は、荷役物3に応じたものであればよく、公知の種々の吊具を用いることができる。吊具としては、複数の荷役物3がスラブ、ブルーム、ビレットなどの場合に、スラブトングやスラブリフタが例示される。
【0014】
運搬車両4は、荷役物3を蔵置ヤード1まで運搬する公知の種々の車両を用いることができる。運搬車両4としては、複数の荷役物3が積み重ねられた荷台5(パレットともいう)の下に潜り込み、その荷台5を上方に持ち上げて蔵置ヤード1まで運搬し、所定の位置にその荷台5を下ろし、下ろされた荷台5の下から這い出る自走式キャリヤやパレットトラックが例示される。運搬車両4は複数の荷役物3を運搬可能な構成であればよく、荷台5が別体のものに限定されず、荷台5が一体的に搭載されたものでもよい。本実施形態の荷台5は、積み重ねられた荷役物3が置かれる台部5aと、台部5aを支持する脚部5bと、を有している。荷台5は運搬車両4により運搬され、蔵置ヤード1の所定の位置に設置され、置かれた荷役物3の荷役が完了すると再度、運搬車両4により運搬される。
【0015】
運搬車両4が走行する走行路6には、停止線7が設置されている。停止線7は、運搬車両4が停止する目安として用いられている。なお、停止線7の代わりに、遮断器などを設置してもよい。図中には、二つの停止線7が設置されており、二つの停止線7の間は、一台の運搬車両4分の距離が空いている。
【0016】
運転システム10は、距離計11と車両検知センサ12と演算装置13とを備えている。運転システム10は、距離計11が計測した距離データD1、D2に基づいて演算装置13によりデータ処理することにより、運搬車両4の荷台5でZ方向に積み重ねられた複数の荷役物3の各々の外周面の形状を特定し、特定した外周面の形状を利用して荷役に必要な各データを取得して、クレーン2の荷役を自動制御している。
【0017】
以下、図2および図3に基づいて、運転システム10の各装置について詳述する。図2および図3の各々は、所定の停止位置で運搬車両4が停止している状態を示している。具体的に、図2は、二つの停止線7(7a、7b)の間に運搬車両4が停止した状態を示している。図3は、停止線7(7b)に運搬車両4の後端を合わせて運搬車両4が停止した状態を示している。以降、距離計11a、11bの両方を表す場合、距離計11と称し、停止線7a、7bの両方を表す場合、停止線7と称し、車両検知センサ12a、12bの両方を表す場合、車両検知センサ12と称す。以下、距離計11aは、走行路6を運搬車両4の進行方向に見て左側に配置されたものとし、距離計11bは、右側に配置されたものとする。停止線7aは、運搬車両4の進行方向の後方側に配置されたものとし、停止線7bは、前方側に配置されたものとする。車両検知センサ12aは、運搬車両4の進行方向の後方側に配置されたものとし、車両検知センサ12bは、前方側に配置されたものとする。
【0018】
距離計11(11a、11b)は、超音波式距離計、レーザー光線式距離計などの公知の種々の距離計を用いることができる。距離計11は、荷台5が運搬車両4に運搬されている状態で、その荷台5でZ方向に積み重ねられた複数の荷役物3の各々の外周面に超音波やレーザー光線を照射して、各々の外周面までの距離データD1、D2を計測している。距離データD1、D2の詳細は後述する。複数の荷役物3ごとの水平方向に面する外周面は、水平方向に直交する面を含むが、水平方向に交差する面(鉛直方向に向いた面を除いた面)を含んでもよい。
【0019】
距離計11は、運搬車両4が走行する走行路6の側方で、運搬車両4の荷台5の上端および複数の荷役物3の最上端の間に配置されている。走行路6の側方は、走行路6の外側であり、距離計11の測定範囲は、走行路6の外側から走行路6の内側に向かっている。荷台5の上端は、荷台5が運搬車両4により運搬された状態での荷台5の上端を示し、そのZ方向の位置は、図2のH1で示す。複数の荷役物3の最上端は、運搬車両4の荷台5に予め設定された最大数の荷役物3が積み重ねられた状態での複数の荷役物3の最上端を示し、そのZ方向の位置は、図2のH2で示す。距離計11が荷台5の上端および複数の荷役物3の最上端の間に配置されることで、距離計11と複数の荷役物3とが略水平方向で対向する位置関係になる。それ故、距離計11から照射される超音波やレーザー光線が荷台5の上端や複数の荷役物3のなかのZ方向視で最大の荷役物3により遮られる頻度を最小にできる。距離計11は、荷台5の上端および複数の荷役物3の最上端の間に配置されていればよいが、荷台5の上端および複数の荷役物3の最上端の間の中間地点に配置されることがより望ましい。
【0020】
距離計11は、運搬車両4がクレーン2により複数の荷役物3が荷役されるよりも前に、距離データD1、D2を計測可能であればよい。つまり、距離計11は、運搬車両4がクレーン2の荷役する領域に到着するまでの間に配置されていればよい。図1では、距離計11が走行路6のY方向に延在する部分に配置されている。
【0021】
距離計11は、距離計11の近傍を運搬車両4が通過する際に、距離データD1、D2や距離計11自身への影響度が低い位置に配置されることが望ましい。影響度は、距離計11による計測の精度に及ぼす度合いや距離計11の耐久性に及ぼす度合いを示す。影響度が低い位置では運搬車両4が距離計11の近傍を幾度となく通過しても計測の精度を維持できるが、影響度が高い位置では運搬車両4が距離計11の側を通過すると計測の精度が低下したり、距離計11の耐久性が早めに低下したりする。
【0022】
影響度の程度は、当業者であれば、経験則などに基づいて概ね把握されており、影響度が低い位置は、当業者の経験則を利用して設定することが可能となっている。例えば、荷役物3がスラブ、ブルーム、ビレットなどの場合に、製造直後の荷役物3の温度に起因した影響度が例示される。製造直後のスラブ、ブルーム、ビレットは900℃に対することもあり、距離計11と通過する運搬車両4とが近接すると高温により距離計11自身や距離計11を支持する部分が熱損により故障するおそれがある。この場合に、影響度が低い位置とは、製造直後のスラブ、ブルーム、ビレットから発せられる熱の放射(輻射)伝熱による影響が低い位置であり、影響度の指標として放射照度を用いることができる。走行路6の側方は、走行路6の外側に限定されるものではなく、影響度が低い位置であれば走行路6の内側でもよい。
【0023】
距離計11の測定範囲は、運搬車両4の荷台5に積み重ね可能な高さまで複数の荷役物3を積み重ねた状態で、Z方向において、荷台5の上端部から最上段の荷役物3が含まれる範囲で、かつ、XY平面において、荷台5の上端部の外周面よりも広い範囲であることが望ましい。距離計11の測定範囲に、荷台5の上端部を含めることで、複数の荷役物3の外周面の特定に既知の形状との比較を利用することが可能となり、より簡便に特定が可能となる。
【0024】
距離計11は、走行路6の側方に一つ配置されていればよい。距離計11の測定範囲に依るが、運搬車両4の停車位置を変えれば、一台の距離計11でも運搬車両4の荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の水平方向に向いた外周面のうちの半周以上を計測可能である。荷役物3の外周面の形状が対称性を有している場合に、外周面の半周程度が計測対象となっていれば概ね外周面の形状を把握することが可能である。ただし、距離計11は、走行路6の側方に複数配置されて、複数の距離計11による計測により運搬車両4の荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の各々の水平方向に面する外周面の全周が計測対象となることが望ましい。距離計11を複数備えて、外周面の全周が計測対象となることで、荷役物3の外周面の形状が非対称性であっても、その外周面を特定可能になり、外周面の形状をより詳細に特定するには有利になる。
【0025】
一対の距離計11a、11bは、走行路6の両側方の各々に対向配置されている。一対の距離計11a、11bが対向する方向は、走行路6の横断方向(X方向)でもよく、その横断方向から傾いた方向でもよい。つまり、一対の距離計11a、11bは、二つの停止線7a、7bの間に運搬車両4が停車したときに、停車した運搬車両4のZ方向視での中心に対して点対称に対向配置されていればよい。一対の距離計11a、11bが停車した運搬車両4の中心に対して点対称に対向配置されることで、荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の各々の水平方向に面する外周面の全域を計測対象として網羅することが可能となる。
【0026】
一対の距離計11a、11bは、二つの停止線7a、7bの間に運搬車両4が停車したときに、荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の各々のX方向に向いた外周面までの距離データD1を計測している。また、一対の距離計11a、11bは、運搬車両4の前端が一対の距離計11a、11bよりも後側に、または、運搬車両4の後端が一対の距離計11a、11bよりも前側に位置して運搬車両4が停車したときに、停車した運搬車両4の荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の各々のY方向に向いた外周面までの距離データD2を計測している。運搬車両4の前端が一対の距離計11a、11bよりも後側に位置したときは、運搬車両4の前端が停止線7aに合わせられて運搬車両4が停車したときである。運搬車両4の後端が一対の距離計11a、11bよりも前側に位置したときは、運搬車両4の後端が停止線7bに合わせられて運搬車両4が停車したときである。一対の距離計11a、11bは、運搬車両4が停車せずに各々の近傍を通過する際に、距離データD1、D2を計測することも可能であるが、より精度が高い距離データD1、D2を計測するには、運搬車両4が所定の位置で停車したタイミングで計測することが望ましい。その所定の位置として、二つの停止線7a、7bの間の位置と、各々の停止線7上に運搬車両4の前端または後端が位置する位置との三ヶ所が例示される。
【0027】
図4および図5は、一対の距離計11a、11bにより測定された距離データD1、D2の一例を示す。図4に例示する距離データD1は、二つの停止線7a、7bの間の停車位置に運搬車両4が停車したときに距離計11aにより計測されている。同様の距離データD1が、距離計11bにより計測される。図5に例示する距離データD2は、運搬車両4の前端が停止線7aに合う停車位置に運搬車両4が停車したときに距離計11aにより計測されている。また、同様の距離データD2が運搬車両4の後端が停止線7bに合う停車位置に運搬車両4が停車したときに距離計11bにより計測される。
【0028】
つまり、一対の距離計11a、11bの三箇所の停車位置での測定により、二つの距離データD1と、二つの距離データD2とが計測される。二つの距離データD1は、荷役物3のX方向に向いた各々の外周面までの距離を示し、二つの距離データD2は、荷役物3のY方向に向いた各々の外周面までの距離を示す。つまり、二つの距離データD1および二つの距離データD2を合わせたデータは、複数の荷役物3の水平方向に面する外周面までの距離をその外周面の全周に亘って集積したデータである。このように、複数の距離計11a、11bにより、複数の荷役物3を四方向(例えば、X方向の左方から右方へ向かう方向、右方から左方へ向かう方向、Y方向の前方から後方へ向かう方向、後方から前方へ向かう方向の計四方向)から測定すれば、複数の荷役物3の水平方向に面する外周面までの距離をその外周面の全周に亘って取得することができる。なお、この一例では、距離計11としてレーザー光線式距離計を用いている。
【0029】
図中の多数の点は、レーザー光線が照射された箇所を示している。つまり、図中の多数の点は、計測した距離データD1、D2を三次元座標系にプロットしたものである。図中の多数の点から三次元座標系の限定までの距離が、計測した距離データD1、D2となっている。
【0030】
図4に例示する距離データD1には、複数の荷役物3の各々の水平方向に向いた外周面のなかのX方向に向いた外周面までの多数の距離データが含まれている。また、この距離データD1には、荷台5の上端部の外周面のなかのX方向に向いた外周面までの多数の距離データも含まれている。この距離データD1には、複数の荷役物3の各々の水平方向に向いた外周面のなかのY方向に向いた外周面までの距離データが含まれていない。
【0031】
図5に例示する距離データD2には、複数の荷役物3の各々の水平方向に向いた外周面のなかのY方向に向いた外周面までの多数の距離データが含まれている。また、この距離データD2には、荷台5の上端部の外周面のなかのY方向に向いた外周面までの多数の距離データも含まれている。さらに、この距離データD2には、複数の荷役物3の各々の水平方向に向いた外周面のなかのX方向に向いた外周面までの距離データの一部が含まれている。距離データD2において、複数の荷役物3のなかの最上段に位置する荷役物3のY方向に向いた外周面の一部の距離データは、その下方に位置する荷役物3によりレーザー光線が遮られていて取得できていない。
【0032】
車両検知センサ12(12a、12b)は、停止線7(7a、7b)に合わせて運搬車両4が停止したことを検知可能な公知の種々のセンサを用いることができる。センサとしては、停止線7と同一に設置した地面設置型の地磁気センサやループコイルセンサ、距離計11と同様に走行路6の側方に配置された周波数変調連続波や無変調連続波のマイクロ波を照射するマイクロウェーブセンサ、あるいは、照射した近赤外線の反射や遮断を利用する近赤外線センサなどが例示される。
【0033】
車両検知センサ12は、距離計11の計測状況に応じた運搬車両4の停止位置を検知できればよい。一例では、近赤外線センサで構成された車両検知センサ12a、12bを停止線7a、7bごとに設置している。二つの車両検知センサ12a、12bが同時に運搬車両4を検知することにより、運搬車両4が二つの停止線7a、7bの間に存在していることが特定される。二つの車両検知センサ12a、12bのどちらか一方のみのセンサが運搬車両4を検知することにより、運搬車両4が二つの停止線7a、7bのどちらか一方側に存在していることが特定される。したがって、二つの車両検知センサ12a、12bと二つの停止線7a、7bとを組み合わせることにより、運搬車両4が三箇所の停止位置に停止したことを検知することができる。そして、その検知結果を、一対の距離計11a、11bが距離データD1、D2を計測する際のトリガとして利用することが可能となっている。
【0034】
図示しないが、車両検知センサ12の検知結果に応じた運搬車両4の停止状況を運搬車両4の運転者に報知する報知装置を備えてもよい。報知装置としては、光の明滅や音の吹鳴などを利用する公知の報知装置を用いることができる。報知装置を備えることで、運搬車両4の運転者が運搬車両4の停止状況を把握可能になる。また、この報知装置を利用して、運搬車両4の運転者に距離計11による距離データD1、D2の計測が完了したことを報知することもできる。なお、報知装置を備えていなくても、運搬車両4の停止時間により、計測の完了を推測することが可能であるため、報知装置は必須ではない。
【0035】
演算装置13は、公知の種々のコンピュータを用いることができる。演算装置13は、中央演算処理部(CPU)、主記憶部(メモリ)、補助記憶部(例えば、HDD)、入出力部を有している。演算装置13は、距離計11および車両検知センサ12に電気的に接続されている。演算装置13と距離計11や車両検知センサ12との接続は、ネットワークを介した接続でもよい。補助記憶部には、距離計11が計測した距離データD1、D2が記憶される。
【0036】
演算装置13は、所定のプログラムが起動されて実行されると、そのプログラムにより指示された各データ処理を実行する。具体的に、そのプログラムは、演算装置13に、運搬車両4により運搬されている複数の荷役物3の外周面の形状を特定させて、複数の荷役物3の荷役に用いる各種データを取得させる手順と、特定した外周面の形状に基づいて荷役物3を荷役させる手順と、を実行させる。
【0037】
図6にクレーン2の運転方法の取得工程(S100)での手順の一例を示す。この手順では、まず、一対の距離計11a、11bにより複数の荷役物3の水平方向に面する外周面に対して四方向から計測を行って、距離データD1、D2を二つずつ取得する(S110、S120)。ついで、取得した距離データD1、D2に基づいて外周面の形状を特定する(S130)。ついで、特定した外周面の形状から各種データを特定する(S140、150)。以下に、(S110)~(S150)の各ステップの内容を詳述する。
【0038】
(S110)と(S120)の各ステップは、ループ処理になっており、n箇所の停車位置ごとに繰り返される。一例では、二つの停止線7a、7bの間の位置と、運搬車両4の前端が停止線7aに合う位置と、運搬車両4の後端が停止線7bに合う位置との三箇所の停車位置ごとにループ処理が繰り返される。
【0039】
i番目の停車位置での停車を検知するステップ(S110)では、車両検知センサ12により、所定の停車位置での運搬車両4の停車を検知する。n箇所の停車位置は、運搬車両4の進行順に順番が付与されている。一例では、運搬車両4の前端が停止線7aに合う位置が一番目(i=1)の停車位置、二つの停止線7a、7bの間の位置が二番目(i=2)の停車位置、運搬車両4の後端が停止線7bに合う位置が三番目(i=3)の停車位置となっている。運搬車両4が一番目の停車位置での停車は、車両検知センサ12aが運搬車両4を検知し、車両検知センサ12bが運搬車両4を検知していないことで検知される。運搬車両4が二番目の停車位置での停車は、車両検知センサ12a、12bの両方のセンサが運搬車両4を同時に検知したことで検知される。運搬車両4が三番目の停車位置での停車は、車両検知センサ12aが運搬車両4を検知しておらず、車両検知センサ12bが運搬車両4を検知したことで検知される。
【0040】
距離データを計測するステップ(S120)では、演算装置13により、車両検知センサ12a、12bの検知状況に応じて一対の距離計11a、11bに計測の指示を出し、その指示に基づいて一対の距離計11a、11bが複数の荷役物3の水平方向に面する外周面までの距離を示す距離データD1、D2を計測するデータ処理が実行される。一例では、一番目の停車位置で運搬車両4が停車したことが検知されると、演算装置13は、距離計11aに計測の指示を出し、距離計11aにより複数の荷役物3のY方向の前方に面する外周面までの距離を示す距離データD2が計測される。二番目の停車位置で運搬車両4が停車したことが検知されると、演算装置13は、一対の距離計11a、11bの各々に計測の指示を出し、距離計11a、11bにより複数の荷役物3のX方向の左右に面する外周面までの距離を示す距離データD1が各々、計測される。三番目の停車位置で運搬車両4が停車したことが検知されると、演算装置13は、距離計11bに計測の指示を出し、距離計11bにより複数の荷役物3のY方向の後方に面する外周面までの距離を示す距離データD2が計測される。
【0041】
外周面の形状を特定するステップ(S130)では、演算装置13により、距離計11a、11bにより計測された距離データD1、D2に基づいて、複数の荷役物3の各々の外周面の形状を特定するデータ処理が実行される。特定される複数の荷役物3の各々の外周面の形状は、Z方向視での形をより詳細に示す各種パラメータとから成る。一例では、複数の荷役物3が矩形の板状を成しているため、外周面の形状は、奥行き(Y方向の長さ)、幅(X方向の長さ)、厚さ(Z方向の長さ)、形(Z方向視の形)の四つパラメータから成る。計測された各々の距離データD1、D2は、異なる座標系のものが含まれているため、基準となる座標系に変換する必要がある。基準となる座標系は、一対の距離計11a、11bの中点を原点とする座標系を用いることもできるが、この一例では、荷台5の上端部の形状を示す座標系を用いている。各々の距離データD1、D2には、荷台5の上端部の水平方向に面する外周面の距離データが含まれている。荷台5の上端部の外周面の形状は、既知である。つまり、各々の荷台5の上端部の距離データを既知の荷台5の外周面の形状に合わせた変換に伴って、各々の距離データD1、D2が基準となる座標系に変換される。これにより、複数の荷役物3の各々の奥行き(Y方向の長さ)、幅(X方向の長さ)、厚さ(Z方向の長さ)、形(Z方向視の形)の四つパラメータが特定される。
【0042】
中心位置を特定するステップ(S140)では、演算装置13により、特定した複数の荷役物3の各々の外周面の形状に基づいて、複数の荷役物3の各々の中心位置を特定するデータ処理が実行される。特定される複数の荷役物3の各々の中心位置は、荷台5の外周面の形状における中心位置を原点とした座標系での位置を示す。
【0043】
重量を特定するステップ(S150)では、演算装置13により、特定した複数の荷役物3の各々の外周面の形状と複数の荷役物3の各々の比重とに基づいて、複数の荷役物3の各々の重量を特定するデータ処理が実行される。複数の荷役物3の各々の比重は、演算装置13の補助記憶部に予め記憶されている。このステップは、複数の荷役物3の各々の比重が等しい場合に有効であるが、複数の荷役物3の各々の比重が等しくない場合、複数の荷役物3の各々の外周面の形状と比重とに相関関係があれば、その相関関係を用いることもできる。例えば、外周面の形状がAの荷役物3の比重がa、外周面の形状がBの荷役物の比重がbという相関関係が予め把握可能であれば、特定した外周面の形状により荷役物3の比重が特定でき、荷役物3の重量が特定可能である。
【0044】
演算装置13は、上記のフローにより特定した複数の荷役物3の各々の外周面の形状、中心位置、および、重量に基づいて、クレーン2による荷役物3の荷役を制御する。具体的に、クレーン2の吊具により一度に把持する荷役物3の枚数や、掴み方などを判断し、その判断に基づいてクレーン2による荷役物3の荷役を制御する。
【0045】
以上のように本実施形態によれば、複数の荷役物3の各々の水平方向に面する外周面までの距離データD1、D2を計測して、複数の荷役物3の各々の外周面の形状を特定することで、仮に最上段に積み重ねられた荷役物3が他の荷役物3よりも大きくても、荷台5に積み重ねられた全ての荷役物3の外周面の形状を特定できる。つまり、複数の荷役物3を荷台5で不規則に積み重ねることが可能となり、荷台5での荷役物3の積み重ね方を所定の規則に従って整頓する必要がない。また、荷台5での複数の荷役物3の積み重ね方に依らずに全ての荷役物3の外周面の形状を特定できるため、クレーン2により安定して把持可能な荷役物3の数を把握することが可能となる。この結果、不規則に積み重ねられた複数の荷役物3の荷役時の安全性と荷役効率とを向上することができる。
【0046】
また、製造された荷役物3は、逐次、荷台5に積み重ねられて、クレーン2により蔵置ヤード1に蔵置される。本実施形態によれば、複数の荷役物3の各々の外周面の形状、中心位置、重量などを把握した状態で、複数の荷役物3を蔵置ヤード1に蔵置させることができる。つまり、特定した各データを利用することにより、蔵置ヤード1に蔵置された複数の荷役物3の管理を簡便に行うことが可能となる。
【0047】
従来から荷役物3には、荷役物3を識別するための製品番号などが記載されていた。この製品番号を確認することができれば、荷役物3の形状や重量などを確認できる。しかしながら、積み重ねられた複数の荷役物3では、最上段の荷役物3の製品番号しか確認することができなかった。これに関して、本実施形態によれば、最上段の荷役物3以外の荷役物3の形状、中心位置、重量を把握することができる。
【0048】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示の運転システム10およびクレーン2の運転方法は特定の実施形態に限定されるものではなく、本開示の要旨の範囲内において、種々の変形・変更が可能である。
【0049】
運転システム10は、クレーン2の荷役を制御するシステムに限定されるものではない。運転システム10は、特定した各種のデータをモニタなどの出力部に出力して、運転者によるクレーン2の運転を補助するシステムでもよい。つまり、運転システム10は、クレーン2の自動化に寄与するだけでなく、クレーン2の運転支援としても利用することができる。
【0050】
運搬車両4は、運転者が直に搭乗して運行する有人車両でもよく、運転者が搭乗せずに遠隔地からの遠隔操作により運行したり、上位システムからの指令に応じて運行したりする無人車両でもよい。無人車両の場合、車両検知センサ12の検知結果をその無人車両に送信することで、複数の停止位置での停止をコントロール可能になる。
【0051】
荷台5は運搬車両4と別体の構成に限定されず、荷台5が運搬車両4に一体的に搭載されていてもよい。この場合に、運搬車両4は荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3が荷役されるまで所定の位置で停車するものとする。
【0052】
距離計11は、カメラなどの荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の水平方向に面する外周面の画像を撮像する装置でもよい。カメラなどにより撮像された画像データを画像解析することで、外周面の形状を特定することができる。ただし、カメラで撮像した画像データでは、荷役物3の縁の判別が容易ではなく、計測精度が低くなるおそれがある。また、天候によっても、計測精度が低くなるおそれがある。それ故、複数の荷役物3の水平方向に面する外周面の形状を高精度に特定するには画像を撮像する装置よりも3Dレーザーセンサなどの距離計が好ましい。
【0053】
既述した実施形態では、荷役物3が矩形の板状を成していて、中心位置と重心位置とが一致することから、このステップでは、複数の荷役物3の各々の中心位置を特定したが、荷役物3が中心位置と重心位置とが一致しない場合、中心位置の代わりに重心位置を特定してもよい。
【0054】
距離データD1、D2は、荷台5に積み重ねられた複数の荷役物3の外周面を四方向から測定したデータであるが、その数は特に限定されるものではない。例えば、距離データD2は、運搬車両4の前端が停止線7aに合う停止位置に運搬車両4が停止したときに、一対の距離計11a、11bの両方により計測されてもよく、運搬車両4の後端が停止線7bに合う停止位置に運搬車両4が停止したときに、一対の距離計11a、11bの両方により計測されてもよい。また、距離計11a、11bの測定範囲によっては、距離データD1および距離データD2を統合したデータが、運搬車両4の前端が停止線7aに合う停止位置に運搬車両4が停止したときと運搬車両4の後端が停止線7bに合う停止位置に運搬車両4が停止したときとに計測されてもよい。
【符号の説明】
【0055】
2 クレーン
3 荷役物
4 運搬車両
5 荷台
6 走行路
7 停止線
10 運転システム
11 距離計
12 車両検知センサ
13 演算装置
D1、D2 距離データ
図1
図2
図3
図4
図5
図6