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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052091
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】小麦粉
(51)【国際特許分類】
   A23L 7/10 20160101AFI20240404BHJP
   A21D 6/00 20060101ALI20240404BHJP
   A21D 13/00 20170101ALI20240404BHJP
   A21D 13/41 20170101ALI20240404BHJP
   A23L 7/109 20160101ALI20240404BHJP
   A23L 35/00 20160101ALI20240404BHJP
【FI】
A23L7/10 Z
A21D6/00
A21D13/00
A21D13/41
A23L7/109 B
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158558
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000187079
【氏名又は名称】昭和産業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100112874
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 薫
(72)【発明者】
【氏名】二瀬 哲郎
(72)【発明者】
【氏名】元田 光
(72)【発明者】
【氏名】市野 正明
(72)【発明者】
【氏名】玉木 信孝
(72)【発明者】
【氏名】宮野 恵
【テーマコード(参考)】
4B023
4B032
4B036
4B046
【Fターム(参考)】
4B023LC02
4B023LC05
4B023LE26
4B023LG06
4B023LP20
4B032DB02
4B032DB03
4B032DB05
4B032DB32
4B032DG02
4B032DK03
4B032DK11
4B032DK12
4B032DK18
4B032DK43
4B032DK47
4B032DK55
4B032DP08
4B032DP25
4B032DP33
4B032DP40
4B036LC01
4B036LF13
4B036LF14
4B036LH04
4B036LH10
4B036LH11
4B036LH13
4B036LH14
4B036LH22
4B036LH29
4B036LH30
4B036LH38
4B036LH50
4B036LP02
4B036LP03
4B036LP12
4B036LP14
4B046LA05
4B046LE05
4B046LG07
4B046LG29
4B046LP03
4B046LP10
4B046LP15
4B046LP31
4B046LP33
4B046LP41
(57)【要約】
【課題】小麦粉二次加工品の品質を向上させ得る新規な小麦粉を提供すること。
【解決手段】本技術では、以下の特徴を有する小麦粉を提供する。
(1)損傷澱粉含量:6.5質量%以下
(2)中心粒子径:90~180μm
(3)粒子径50μm以下の粒子の割合:7%以上
(4)粒子径180μm以上の粒子の割合:4%以上
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の特徴を有する小麦粉。
(1)損傷澱粉含量:6.5質量%以下
(2)中心粒子径:90~180μm
(3)粒子径50μm以下の粒子の割合:7%以上
(4)粒子径180μm以上の粒子の割合:4%以上
【請求項2】
さらに、以下の特徴を有する請求項1に記載の小麦粉。
(5)原料小麦が硬質小麦である
【請求項3】
請求項1又は2に記載の小麦粉を含む、小麦粉ミックス。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の小麦粉が用いられた、生地。
【請求項5】
請求項1又は2に記載の小麦粉が用いられた、食品。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の小麦粉を添加する工程を含む、食品の製造方法。
【請求項7】
請求項1又は2に記載の小麦粉を添加して生地を調製する生地調製工程と、
前記生地を3時間以上発酵させる発酵工程と、を含む、ベーカリー製品の製造方法。
【請求項8】
請求項1又は2に記載の小麦粉を添加する工程を含む、食品の食感及び/又は風味改質方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、小麦粉に関する。より詳しくは、本技術は、小麦粉、該小麦粉を用いた小麦粉ミックス、生地、食品、食品の製造方法、ベーカリー製品の製造方法、及び食品の食感及び/又は風味改質方法に関する。
【背景技術】
【0002】
小麦粉は、パン類、麺類、ケーキ、菓子、揚げ物、など、様々な食品の材料として使用されており、たん白質含量の高いものが強力粉、低いものが薄力粉、その中間が中力粉に分類され、それぞれに適した用途に使用されている。近年では、用途に適した性質を持つ小麦粉が開発されつつある。
【0003】
例えば、特許文献1では、原料を強力系小麦とし、粒径が50~160μmの大きさの粒が70質量%以上で、かつ粒径が50~110μmの大きさの粒が55質量%以上である小麦粉、及び、該小麦粉を10質量%以上、好ましくは50質量%以上用いることで、モルトなどを配合しなくても優れた二次加工適性を有し、品質の優れた小麦粉製品を製造する技術が開示されている。
【0004】
特許文献2では、粒径が60~180μの小麦粉を70~90重量%含むことを特徴とした菓子用小麦粉組成物に、増粘剤及び/又はアスコルビン酸、又はその塩を5ppm~200ppm添加することで、サク味のある口溶けのよい菓子を製造する技術が開示されている。
【0005】
特許文献3では、100~210ミクロンの粒度を有し、かつ灰分0.4~3.0%である小麦粉を20~40重量%含有させることで、栄養価と風味に富み、かつ二次加工適性が安定し、また製品の外観も優れ、ふすまの青臭さも抑えられた小麦粉を提供する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007-14224号公報
【特許文献2】特開平04-356152号公報
【特許文献3】特開2004-147549号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述のように、用途に適した性質を持つ小麦粉の開発が進められつつあるが、更なる技術の向上が求められているのが実情である。
【0008】
そこで、本技術では、小麦粉二次加工品の品質を向上させ得る新規な小麦粉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
即ち、本技術では、まず、以下の特徴を有する小麦粉を提供する。
(1)損傷澱粉含量:6.5質量%以下
(2)中心粒子径:90~180μm
(3)粒子径50μm以下の粒子の割合:7%以上
(4)粒子径180μm以上の粒子の割合:4%以上
本技術に係る小麦粉は、さらに、以下の特徴を有していてもよい。
(5)原料小麦が硬質小麦である
【0010】
本技術では、また、本技術に係る小麦粉を含む、小麦粉ミックスを提供する。
本技術では、さらに、本技術に係る小麦粉や、本技術に係る小麦粉ミックスを用いた生地、及び食品を提供する。
【0011】
本技術では、次に、本技術に係る小麦粉や、本技術に係る小麦粉ミックスを添加する工程を含む、食品の製造方法を提供する。
本技術では、また、本技術に係る小麦粉や、本技術に係る小麦粉ミックスを添加して生地を調製する生地調製工程と、
前記生地を3時間以上発酵させる発酵工程と、を含む、ベーカリー製品の製造方法を提供する。
本技術では、さらに、本技術に係る小麦粉や、本技術に係る小麦粉ミックスを添加する工程を含む、食品の食感及び/又は風味改質方法を提供する。
【発明の効果】
【0012】
本技術に係る小麦粉を用いれば、小麦粉二次加工品の品質を向上させることができる。
なお、ここに記載された効果は、必ずしも限定されるものではなく、本明細書中に記載されたいずれかの効果であってもよい。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本技術を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本技術の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0014】
<小麦粉>
本技術に係る小麦粉は、以下の特徴を有することにより、小麦粉二次加工品の品質を向上させることができる。以下、本技術に係る小麦粉の特徴を詳細に説明する。
【0015】
(1)損傷澱粉含量
本技術に係る小麦粉は、損傷澱粉含量が6.5質量%以下であることを特徴とする。本技術に係る小麦粉の損傷澱粉含量は、6.5質量%以下であれば特に限定されないが、6.0質量%以下が好ましく、5.7質量%以下がより好ましく、5.5質量%以下、5.4質量%以下、5.3質量%以下であってもよい。また、本技術に係る小麦粉の損傷澱粉含量の下限値は、特に限定されないが、例えば、2質量%以上とすることができ、2.5質量%以上、2.8質量%以上、3.0質量%以上、3.2質量%以上であってもよい。
【0016】
本技術において、小麦粉の損傷澱粉含量は、AACC Method76-31に従って測定した値である。具体的には、Starch Damage Assay Kit(Megazyme製)を用いて、各小麦粉試料100mgに、予め40℃で10分間プレインキュベートしたα-アミラーゼ溶液(Aspergillus oryzae由来、50unit/mL)を1mL添加して、撹拌した後、40℃で10分間処理した。次いで、クエン酸-リン酸水溶液(pH2.5)を5mL添加して反応を停止させ、遠心分離(1,000g×5分)して上清を得た。この上清0.1mLにアミログルコシダーゼ溶液(Aspergillus niger由来、2unit/0.1mL)を添加して40℃で20分間処理した後、510nmで吸光度を測定し、得られた吸光度から生成したグルコース量を算出し、試料中に含まれる損傷澱粉含有量を算出した。
【0017】
(2)中心粒子径
本技術に係る小麦粉は、中心粒子径が90~180μmであることを特徴とする。本技術に係る小麦粉の中心粒子径は、90~180μmであれば特に限定されないが、その下限は、95μm以上が好ましく、100μm以上がより好ましく、103μm以上がさらに好ましく、105μm以上がよりさらに好ましい。また、中心粒子径の上限は、170μm以下が好ましく、160μm以下がより好ましく、150μm以下がさらに好ましい。
【0018】
(3)粒子径50μm以下の粒子の割合
本技術に係る小麦粉は、粒子径50μm以下の粒子の割合が7%以上であることを特徴とする。本技術に係る小麦粉の粒子径50μm以下の粒子の割合は、7%以上であれば特に限定されないが、8%以上が好ましく、9%以上がより好ましく、9.5%以上、10%以上であってもよい。また、本技術に係る小麦粉の粒子径50μm以下の粒子の割合の上限値は、特に限定されないが、例えば、30%以下、好ましくは25%以下、より好ましくは22%以下である。
【0019】
(4)粒子径180μm以上の粒子の割合
本技術に係る小麦粉は、粒子径180μm以上の粒子の割合が4%以上であることを特徴とする。本技術に係る小麦粉の粒子径180μm以上の粒子の割合は、4%以上であれば特に限定されないが、4.3%以上が好ましく、4.5%以上がより好ましい。また、本技術に係る小麦粉の粒子径180μm以上の粒子の割合の上限値は、特に限定されないが、例えば、50%以下、好ましくは45%以下、より好ましくは40%以下である。
【0020】
なお、本技術において、中心粒子径、粒子径50μm以下の粒子の割合、粒子径180μm以上の粒子の割合、及び後述する粒子径500μm以上の粒子の割合等各粒子径の粒子の割合は、体積基準の粒子径累積分布から決定することができ、レーザー回折式の粒度分布測定装置を用いて測定することができる。具体的には、レーザー回折式粒度分布測定装置HELOS&RODOS(日本レーザー製)を用いて、フラウンホーファー回折によって体積基準の粒子径分布を得て、粒子径分布における中央値に相当する粒子径を中心粒子径とし、また、得られた粒子径分布から、粒子径50μm以下の粒子の割合、粒子径180μm以上の粒子の割合、及び粒子径500μm以上の粒子の割合を算出することができる。
【0021】
本技術に係る小麦粉は、以下の特徴を有することにより、小麦粉二次加工品の品質及び/又は二次加工性をさらに向上させることができる。
【0022】
(5)本技術に係る小麦粉の原料小麦
本技術に係る小麦粉の原料小麦は、特に限定されないが、硬質小麦であることが好ましい。硬質小麦を原料とすることで、たん白質含量が高い小麦粉となり、パン類などにも好適に用いることができる。本技術に係る小麦粉のたん白質含量は、特に限定されないが、9~18質量%であることが好ましく、その下限は、10質量%以上がより好ましく、10.5質量%以上がさらに好ましく、11質量%以上がよりさらに好ましい。また、たん白質含量の上限は、17質量%以下がより好ましく、16質量%以下がさらに好ましく、15質量%以下がよりさらに好ましく、14.5質量%以下であってもよい。本技術において、小麦粉のたん白質含量は、水分13質量%で換算した値である。水分量は、135℃、1時間で乾燥させた小麦粉の該乾燥前に対する質量変化から算出した値である。また、本技術において、たん白質量は、ケルダール法によって定量した窒素含量に、窒素-たん白質換算係数(5.70)を乗じて算出した値である。
【0023】
一般に小麦は、種子の硬さ(硬軟質性)に基づいて硬質小麦と軟質小麦に分類される。種子の硬軟質性は、ピュロインドリン-aとピュロインドリン-bという2種のたん白質の遺伝子の変異によって決定され、野生型が軟質で、これらの遺伝子に変異が起きると硬質になる。硬質小麦の例としては、ダーク・ノーザン・スプリング(DNS)、ハード・レッド・ウインター(HRW)、No.1カナダ・ウェスタン・レッド・スプリング(1CW)、オーストラリアン・プライム・ハード(APH)、オーストラリアン・ハード(AH)、オーストラリアン・プレミアム・ホワイト(APW)、ゆめちから、春よ恋、デュラム小麦等が挙げられる。
【0024】
小麦粉は、一般的にロール式粉砕と篩分けを多段階で組み合わせた段階式製粉方法で製造される。原料小麦が硬質小麦である場合、損傷澱粉含量は高くなる。また、粒径が小さい粒子の割合が増えるほど、損傷澱粉含量は高くなる。市販されている硬質小麦から得られる小麦粉(市販強力粉)は、例えば、後述の表1で示す物性である。本技術に係る小麦粉は、市販強力粉と比較すると、粒度分布では、中心粒子径が大きく、粒子径50μm以下の粒子の割合が少なく、粒子径180μm以上の粒子の割合が多い特徴があり、また、損傷澱粉含量が低いのが特徴である。
【0025】
加えて、本技術に係る小麦粉を、市販の強力粉を分画して得られた製造例7~9と比較すると、粒子径50μm以下の粒子の割合が大きいにもかかわらず、損傷澱粉含量は同等である。前述の通り、一般的には粒径が小さい粒子の割合が増えるほど損傷澱粉含量は高くなる。すなわち、本技術に係る小麦粉は、粒子径50μm以下の粒子の割合が7%以上含まれるにもかかわらず、損傷澱粉含量が6.5質量%以下であることが特徴である。
【0026】
損傷澱粉は、製粉時に圧力・せん断・熱などの物理的な力が加わることによって、小麦の胚乳にある、多数の澱粉粒が詰まった細胞が壊れる際、また、その後表面に出ることで、割れや傷が生じた澱粉粒のことである。小麦の胚乳にある細胞は、150~250μm程度と知られている。前述の本技術に係る小麦粉の特徴を考えると、一般的な小麦粉と比較して、細胞が壊れず残っている割合が多いことが推測される。
【0027】
(6)粒子径500μm以上の粒子の割合
本技術に係る小麦粉は、粒子径500μm以上の粒子の割合が5%以下であることが好ましく、3%以下であることがより好ましく、2%以下であることがさらに好ましく、1%以下であることがよりさらに好ましく、0.7%以下、0.5%以下、0.3%以下、0.1%以下であってもよい。粒子径500μm以上の粒子の割合をこの範囲にすることにより、二次加工性を向上させることができる。
【0028】
(7)本技術に係る小麦粉の灰分
本技術に係る小麦粉の灰分は、0.35~2質量%以下であることが好ましく、その下限は、0.38質量%以上がより好ましく、0.4質量%以上がさらに好ましく、0.42質量%以上がよりさらに好ましい。また、上限は1.5質量%以下がより好ましく、1.2質量%以下がさらに好ましく、0.9質量%以下、0.8質量%以下、0.7質量%以下であってもよい。灰分をこの範囲にすることにより、二次加工性を向上させ、また、二次加工品の香りを高めることができる。本技術において、小麦粉の灰分は、水分13質量%で換算した値である。灰分の測定方法は、AACC Method08-02に従って、直接灰化法を用いる。
【0029】
(8)本技術に係る小麦粉の用途
本技術に係る小麦粉の用途は限定されず、小麦粉を用いたあらゆる二次加工品に用いることができる。特に、本技術に係る小麦粉は、ベーカリー製品用、麺類用、及び揚げ物用として好適に用いることができる。
【0030】
(9)小麦粉の製造方法
本技術に係る小麦粉は、原料小麦から、一般的な製粉方法を用いて製造することができる。例えば、精選した小麦粒を、加水・テンパリング工程を行った後、ブレーキング工程、リダクション工程等を行うことができる。また、ピーリング工程、粉砕工程、分級工程等を、自由に組み合わせて行うことができる。粉砕工程における粉砕方法は特に限定されないが、例えば、石臼、ハンマーミル、ピンミル、ジェットミル等の粉砕機を用いて粉砕することができる。
【0031】
<小麦粉ミックス>
本技術に係る小麦粉は、本技術の効果を損なわない限り、一般的な小麦粉や目的の二次加工品に使用する他の材料と混合して、小麦粉ミックスとして流通させることもできる。
【0032】
本技術に係る小麦粉ミックスの本技術に係る小麦粉の含有量は、本技術の効果を損なわない限り、用途等に応じて、自由に設定することができるが、穀粉類100質量%当たり、20質量%以上が好ましく、40質量%以上がより好ましく、60質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上がよりさらに好ましい。
【0033】
なお、本技術において、穀粉類とは、例えば、本技術に係る小麦粉を含む小麦粉、米粉、そば粉、大麦粉、ライ麦粉、トウモロコシ粉、ひえ粉、あわ粉、大豆粉、ホワイトソルガム粉あるいはこれら穀粉に加熱処理を施した加熱穀粉等の穀粉類;コーンスターチ、米澱粉、小麦澱粉、サゴ澱粉等の澱粉(地上系澱粉)、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘藷澱粉等のような地下茎又は根由来の澱粉(地下系澱粉)、これらのワキシー種、ハイアミロース種の澱粉、あるいはこれら澱粉に物理的、化学的な加工を単独又は複数組み合せて施した加工澱粉等の澱粉類が挙げられる。なお、本技術において、難消化性澱粉は澱粉類に含まれる。
【0034】
また、穀粉類以外のその他の材料としては、大豆たん白質、小麦たん白質、卵黄粉、卵白粉、全卵粉、脱脂粉乳等のたん白質素材;動植物油脂、粉末油脂、ショートニング等の油脂;砂糖、ぶどう糖、オリゴ糖、デキストリン、糖アルコール等の糖質;粉末セルロース、結晶セルロース、イヌリン等の食物繊維素材;重曹等の膨張剤;食塩等の塩類;乳化剤、pH調整剤、香辛料、調味料、酵素、ビタミン類、ミネラル類、色素、香料、かんすい等が挙げられる。
【0035】
<生地>
本技術に係る生地は、前述した本技術に係る小麦粉、又は前述した本技術に係る小麦粉ミックスを用いることを特徴とする。本技術に係る生地の種類は、例えば、ドウであってもバッターであってもよく、特に限定されないが、ベーカリー製品用生地、麺類用生地、及び揚げ物用生地に好適に用いることができる。例えば、本技術に係る小麦粉、又は本技術に係る小麦粉ミックス、水、油脂等の必要な材料を混合して、ベーカリー製品用生地、麺類用生地、及び揚げ物用生地を製造することができる。また、例えば、ベーカリー製品用生地は、中種法、ストレート法、ノータイム法、発酵種法、湯種法、冷凍生地法等の公知のベーカリー製品の製造方法の過程で得られる生地であってもよい。
【0036】
本技術に係る生地は、常温、冷蔵、チルド、冷凍等の状態で流通させることができる。例えば、ベーカリー製品用生地では、冷蔵生地玉、成形冷蔵生地、冷凍生地玉、成形冷凍生地、ホイロ済み冷凍生地等の形態で流通させることが可能である。
【0037】
<食品>
本技術に係る食品は、前述した本技術に係る小麦粉、又は前述した本技術に係る小麦粉ミックスを用いることを特徴とする。本技術に係る食品の種類は特に限定されないが、ベーカリー製品、麺類、及び揚げ物等を挙げることができる。
【0038】
本技術において、ベーカリー製品としては、パン類、ケーキ、洋菓子類、和菓子類、その他小麦粉を含有する生地を用いた食品等が挙げられる。パン類としては、食事パン(例えば、食パン、ライ麦パン、フランスパン、乾パン、バラエティブレッド、ロールパン等)、調理パン(例えば、ホットドッグ、ハンバーガー、ピザパイ等)、菓子パン(例えば、ジャムパン、アンパン、クリームパン、レーズンパン、メロンパン、スイートロール、クロワッサン、ブリオッシュ、デニッシュ、コロネ等)、蒸しパン(例えば、肉まん、中華まん、あんまん等)、特殊パン(例えば、グリッシーニ、イングリッシュマフィン、ナン等)等が挙げられる。ケーキとしては、例えば、蒸しケーキ、スポンジケーキ、バターケーキ、ロールケーキ、ホットケーキ、ブッセ、バームクーヘン、パウンドケーキ、チーズケーキ、スナックケーキ等が挙げられる。なお、洋菓子には、シュー、ワッフル、ドーナツ、クレープ、パイ、ビスケット、カステラ、マドレーヌ、クッキー、サブレ等も含まれる。また、和菓子には、どら焼、饅頭、たい焼、回転焼、今川焼、人形焼、鈴カステラ、最中皮等が含まれる。また、小麦粉を含有する生地を用いた食品としては、たこ焼、お好み焼、明石焼等が挙げられる。また、本技術において、ベーカリー製品は、例えば、半焼成パン等の加熱未了状態でそのままでは喫食は困難であるが、店頭や家庭において加熱調理して喫食することを想定したものも包含する概念である。
【0039】
本技術において、麺類としては、中華麺やスパゲッティ、マカロニ等のパスタ類等の麺線はもちろん、餃子やしゅうまい、ラザニア等に用いられる麺皮類を包含する概念である。具体的には、例えば、中華麺、焼きそば、うどん、和そば、素麺、冷や麦、冷麺、ビーフン、きしめん等の麺線はもちろん、餃子皮、しゅうまい皮、ワンタン皮、春巻皮、ラザニアシート等に用いられる麺皮類が挙げられる。
【0040】
また、本技術において、麺類は、調理前の麺類と調理済の麺類の両方を包含する概念である。調理済の麺類を調製する場合は、麺線等の未調理の麺類を、湯の中で茹でる等して調理すればよい。麺類の調理方法は特に制限されないが、茹でて調理することはもちろん、油ちょうや蒸し、電子レンジ等によって調理してもよく、喫食可能になるまで麺類をα化すればよい。また、麺類の形態も特に限定されず、生麺、乾麺(半乾燥麺を含む。)、茹で麺、蒸し麺、揚げ麺、冷蔵麺(チルド麺)、冷凍麺、即席麺、調理麺、LL(ロングライフ)麺のいずれにも適用できる。
【0041】
本技術において、揚げ物としては、例えば、海老天、イカ天、鶏天、豚天、野菜天、かき揚げ等の天ぷら類;牛カツ、とんかつ、チキンカツ、メンチカツ等のかつ類;各種具材を用いた唐揚げ類;ポテトコロッケ、ミートコロッケ、クリームコロッケ、ライスコロッケ等のコロッケ類;白身フライ、エビフライ、カキフライ、野菜フライ等のフライ類;各種具材を用いたフリット等が挙げられる。また、本技術において、揚げ物は、例えば、プリフライした揚げ物等の加熱未了状態でそのままでは喫食は困難であるが、店頭や家庭において加熱調理して喫食することを想定したものも包含する概念である。
【0042】
<食品の製造方法、食品の食感及び/又は風味改質方法>
本技術に係る食品の製造方法、食品の食感及び/又は風味改質方法は、前述した本技術に係る小麦粉、前述した本技術に係る小麦粉ミックスを添加する添加工程を含む方法である。
【0043】
本技術に係る食品の製造方法、食品の食感及び/又は風味改質方法において、前述した本技術に係る小麦粉、前述した本技術に係る小麦粉ミックスを添加する方法や、添加するタイミングについては、特に限定されない。例えば、食品の製造に用いる製造原料に代えて、又はその一部とともに、本技術に係る小麦粉を製造原料の一つとして、所定量添加することができる。また、本技術に係る小麦粉を含有する小麦粉ミックスを予め調製した上で、当該小麦粉ミックスを用いて食品を製造することができる。
【0044】
添加工程における本技術に係る小麦粉の添加量は、本技術の効果を損なわない限り、目的の食品の種類や性質等に応じて、自由に設定することができる。好ましくは、穀粉類100質量%当たり、好ましくは20質量%以上、より好ましくは40質量%以上、さらに好ましくは60質量%以上、よりさらに好ましくは80質量%以上添加することができる。上記範囲にすることで、小麦粉二次加工品の品質をより向上させることができる。
【0045】
本技術に係るベーカリー製品の製造方法は、一般的なベーカリー製品の製造方法を自由に選択して用いることができる。具体的には、例えば、前述した本技術に係る小麦粉、又は前述した本技術に係る小麦粉ミックスを用いて前述したベーカリー製品用生地を製造する工程と、該ベーカリー製品用生地を用いてベーカリー製品を製造する工程と、を少なくとも行うことで、本技術に係るベーカリー製品を製造することができる。ベーカリー製品用生地を用いてベーカリー製品を製造する工程としては、例えば、本技術に係るベーカリー製品用生地を、必要に応じて、一次発酵、分割、成形、二次発酵等を行い、加熱することでベーカリー製品を製造することができる。加熱方法は特に限定されず、焼成、蒸し、油ちょう、マイクロ波加熱等、本技術の効果を損なわない限り、1種又は2種以上の加熱方法を自由に選択して用いることができる。
【0046】
本技術に係るベーカリー製品の製造方法は、好ましくは、さらに前述したベーカリー製品用生地を発酵する工程を含む方法であり、より好ましくは、該工程がベーカリー製品用生地を2時間以上発酵する工程であり、さらに好ましくは発酵時間が5時間以上であり、よりさらに好ましくは8時間以上であり、特に好ましくは12時間以上である。なお、発酵時間の上限は、本技術の効果を損なわない限り特に限定されず、目的のベーカリー製品の品質や製造効率、製造方法を考慮して、適宜設定することができる。例えば、本技術に係る小麦粉を用いたベーカリー製品用生地は、発酵種として用いることも可能である。本技術に係る小麦粉を用いたベーカリー製品用生地を発酵種として用いた生地を、さらに発酵種として用いることができる。このように、本技術に係る小麦粉を用いたベーカリー製品用生地を繰り返し発酵種として用いる場合には、発酵時間に上限はない。また、発酵温度は、特に限定されず、例えば、0~35℃から、発酵時間、製法、イースト配合量等の条件に合わせて適切な温度を設定すればよい。このような発酵工程を含むことにより、製造されたベーカリー製品において、香ばしい香りや甘み、旨味がより向上し、食感をさらに良好にすることができる。食感の効果としては、例えば、バゲット、食パン、ピザのクラストの歯切れが向上する。
【0047】
本技術に係る小麦粉を用いて麺類を製造する場合、麺類の製造方法も特に限定されず、麺類用生地の調製方法も一般的な調製方法を自由に用いることができる。例えば、本技術に係る小麦粉や、本技術に係る小麦粉ミックスに、必要に応じて粉体材料、水、塩等を配合して混練し、麺類用生地を調製することができる。また、中華麺用生地を調製する場合には、さらに、かんすい等を配合してもよい。麺生地を調製する際の水の量は、麺類の種類にもよるが、通常は、穀粉類100質量部に対して、水25~50質量部とすることが好ましく、水28~48質量部とすることがより好ましい。
【0048】
製麺方法も特に限定されず、手打ち、手延べ又は手打ち式製麺、圧延式製麺、押出式製麺等の公知の製麺方法を採用することができる。本技術の一つの態様において、麺類用生地は、圧延され、所望の厚さの麺帯とされる。当該圧延は、麺類用生地を圧延ロールに通すことで行われる。次いで、製麺機等を用いて麺帯を切り出して麺線とし、この麺線を所望の長さに切断することにより生麺を得ることができる。また、型抜き機等を用いて麺帯から麺皮を得ることができる。
【0049】
本発明の一つの態様において、麺類用生地を引き伸ばしたり撚ったりして麺線を得てもよく、また、麺類用生地を穴等から押し出して麺類を製造してもよい。一般に、スパゲッティやマカロニ等の麺類は、麺類用生地を押し出して製造することが多い。また本技術においては、機械を用いて製麺してもよく、機械を用いずに手延べや手打ちによって製麺してもよい。
【0050】
本発明に係る麺類の製造方法において、例えば、前記生麺を茹でることによって茹で麺が得られ、蒸すことによって蒸し麺が得られ、調湿乾燥法等により乾燥すれば乾麺が得られる。また、例えば、茹で処理又は蒸し処理を行った後、フライ用バスケットあるいは乾燥用バスケットに一食ずつ成形充填し、フライあるいは高温熱風乾燥処理すれば即席麺が得られる。
【0051】
本技術に係る小麦粉を用いて揚げ物を製造する場合、揚げ物の製造方法も特に限定されず、一般的な揚げ物の製造方法を用いることができる。例えば、本技術に係る小麦粉、本技術に係る小麦粉ミックスを含有するバッターやまぶし粉を、具材に、直接又は打ち粉等を介して付着させた状態、又は、さらにパン粉等を付着させた状態で油ちょうすることにより製造することができる。なお、前記打ち粉として、本技術に係る小麦粉、本技術に係る小麦粉ミックスを用いることもできる。
【0052】
揚げ物に用いることができる具材としては、エビ、イカ、白身魚等の魚介類;鶏肉、豚肉、牛肉等の畜肉類;野菜類;穀物類;乳製品;及びこれらの加工品等が挙げられる。
【0053】
なお、本技術は、本技術では、以下の構成を取ることもできる。
[1]
以下の特徴を有する小麦粉。
(1)損傷澱粉含量:6.5質量%以下
(2)中心粒子径:90~180μm
(3)粒子径50μm以下の粒子の割合:7%以上
(4)粒子径180μm以上の粒子の割合:4%以上
[2]
さらに、以下の特徴を有する[1]の小麦粉。
(5)原料小麦が硬質小麦である
[3]
[1]又は[2]の小麦粉を含む、小麦粉ミックス。
[4]
[1]又は[2]の小麦粉、又は[3]の小麦粉ミックスが用いられた、生地。
[5]
[1]又は[2]の小麦粉、又は[3]の小麦粉ミックスが用いられた、食品。
[6]
[1]又は[2]の小麦粉、又は[3]の小麦粉ミックスを添加する工程を含む、食品の製造方法。
[7]
[1]又は[2]の小麦粉、又は[3]の小麦粉ミックスを添加して生地を調製する生地調製工程と、
前記生地を3時間以上発酵させる発酵工程と、を含む、ベーカリー製品の製造方法。
[8]
[1]又は[2]のいずれかの小麦粉、又は[3]の小麦粉ミックスを添加する工程を含む、食品の食感及び/又は風味改質方法。
【実施例0054】
以下、実施例に基づいて本技術をさらに詳細に説明する。なお、以下に説明する実施例は、本技術の代表的な実施例の一例を示したものであり、これにより本技術の範囲が狭く解釈されることはない。
【0055】
<実験例1>
実験例1では、硬質小麦を原料に用いて製粉し、製造例1~6の小麦粉を製造した。また、硬質小麦を原料に用いている市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を分級して、製造例7~9の小麦粉を製造した。製造した各小麦粉と市販強力粉の物性を下記の表1に示す。
【0056】
【表1】
【0057】
<実験例2>
実験例2では、用いる小麦粉の物性の違いによるベーカリー製品への影響を調べた。本実験例ではベーカリー製品の一例としてバゲット(パン)を製造した。
【0058】
(1)バゲットの製造1
前記実験例1で製造した小麦粉を用いて、表2に示す材料の配合(質量%)で、各実施例、比較例のバゲットを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例のバゲットを製造した。具体的には、材料をボウルに入れ、ミキサーの低速で2分間ミキシングした後、15分間オートリーズをとり、さらにミキサーの低速で5分間、中速で3分間ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は22℃であった。発酵工程は、室温で40分間、パンチ後5℃で16時間とした。発酵後、生地を350gに分割・成形して、250℃で25分間焼成し、バゲットを製造した。
【0059】
【表2】
【0060】
(2)評価
製造したバゲットについて、製パン性、香り、甘味、旨味、クラストの歯切れを評価した。
【0061】
[製パン性]
下記の基準に基づいて、3名の合議で製パン性を評価した。
3:参考例と比較して、同等もしくはそれ以上に、生地形成がしやすい(良好)
2:参考例と比較して、生地形成がわずかにしにくいが、許容できる(やや良好)
1:参考例と比較して、生地形成がしにくい(劣る)
【0062】
[香り]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、香ばしい香りが非常に強く感じられる(非常に良好)
4:参考例に比べ、香ばしい香りが強く感じられる(良好)
3:参考例に比べ、香ばしい香りがやや強く感じられる(やや良好)
2:参考例に比べ、香ばしい香りが同程度に感じられる(やや劣る)
1:参考例に比べ、香ばしい香りが弱く感じられる(劣る)
【0063】
[甘味]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、甘味が非常に良好
4:参考例に比べ、甘味が良好
3:参考例に比べ、甘味がやや良好
2:参考例に比べ、甘味が同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、甘味が劣る
【0064】
[旨味]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、旨味が非常に良好
4:参考例に比べ、旨味が良好
3:参考例に比べ、旨味がやや良好
2:参考例に比べ、旨味が同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、旨味が劣る
【0065】
[クラストの歯切れ]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、歯切れが非常に良好
4:参考例に比べ、歯切れが良好
3:参考例に比べ、歯切れがやや良好
2:参考例に比べ、歯切れが同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、歯切れが劣る
【0066】
(3)結果
結果を下記の表3に示す。
【0067】
【表3】
【0068】
(4)考察
上記表3の結果から、損傷澱粉含量:6.5質量%以下、中心粒子径:90~180μm、粒子径50μm以下の粒子の割合:7%以上、粒子径180μm以上の粒子の割合:4%以上をすべて満たす小麦粉を用いた実施例1~5は、すべての評価が良好であった。
【0069】
一方、損傷澱粉含量が6.5質量%を超える製造例6の小麦粉を用いた比較例1では、製パン性は良好であったが、香り、甘味、旨味、クラストの歯切れの評価が低かった。粒子径50μm以下の粒子の割合が7%未満で、かつ、粒子径180μm以上の粒子の割合が4%未満の製造例7の小麦粉を用いた比較例2では、製パン性、香り、旨味の評価は良好であったが、甘味、クラストの歯切れの評価が低かった。粒子径50μm以下の粒子の割合が7%未満の製造例8の小麦粉を用いた比較例3では、製パン性は問題なく、また、香り、旨味の評価は良好であったが、甘味、クラストの歯切れの評価が低かった。製造例8の小麦粉より粒度が粗い製造例9の小麦粉を用いた比較例4では、製パン性は問題なく、また、香り、クラストの歯切れの評価は良好であったが、甘味、旨味の評価が低かった。
【0070】
<実験例3>
実験例3では、ベーカリー製品の製造時における発酵時間の違いによるベーカリー製品への影響を調べた。本実験例ではベーカリー製品の一例としてバゲット(パン)を製造した。
【0071】
(1)バゲットの製造2
前記実験例1にて製造した製造例2の小麦粉を用いて、表4に示す材料の配合(質量%)でバゲットを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例のバゲットを製造した。具体的には、材料をボウルに入れ、ミキサーの低速で2分間ミキシングした後、15分間オートリーズをとり、さらにミキサーの低速で5分間、中速で5分間ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は24℃であった。発酵工程は、28℃、湿度70%で90分間、パンチ後28℃、湿度70%で90分間とした。発酵後、生地を350gに分割・成形して、250℃で25分間焼成し、バゲットを製造した。
【0072】
【表4】
【0073】
(2)バゲットの製造3
発酵工程を、室温で40分間、パンチ後15℃で7時間とした以外は、前記実験例2と同様の方法で、前記実験例1で製造した製造例2の小麦粉、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、実施例、参考例のバゲットを製造した。
【0074】
(3)バゲットの製造4
発酵工程を、室温で40分間、パンチ後10℃で10時間とした以外は、前記実験例2と同様の方法で、前記実験例1で製造した製造例2の小麦粉、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、実施例、参考例のバゲットを製造した。
【0075】
(4)評価
製造したバゲットについて、前記実験例2と同様の評価基準に基づいて、製パン性、香り、甘味、旨味、クラストの歯切れを評価した。
【0076】
(5)結果
結果を下記の表5に示す。なお、実験例2の参考例1及び実施例2の結果も併せて記載した。
【0077】
【表5】
【0078】
(6)考察
上記表5の結果から、発酵時間が長くなるにつれて、各評価結果が向上することが分かった。
【0079】
<実験例4>
実験例4では、本技術に係る小麦粉の配合量の違いによるベーカリー製品への影響を調べた。本実験例ではベーカリー製品の一例としてバゲット(パン)を製造した。
【0080】
(1)小麦粉ミックスの製造
下記の表6に記載の配合で、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)と前記実験例1にて製造した製造例2の小麦粉を混合して、小麦粉ミックスを製造した。
【0081】
(2)バゲットの製造
製造した小麦粉ミックスを用いて、前記実験例2と同様の方法(本実験例においては「小麦粉」は「小麦粉ミックス」と読み替える)にて、バゲットを製造した。
【0082】
(3)評価
製造したバゲットについて、前記実験例2と同様の評価基準に基づいて、製パン性、香り、甘味、旨味、クラストの歯切れを評価した。
【0083】
(4)結果
結果を下記の表6に示す。
【0084】
【表6】
【0085】
(5)考察
上記表6の結果から、本技術に係る小麦粉の配合量が多くなるにつれて、各評価結果が向上することが分かった。
【0086】
<実験例5>
実験例5では、本技術に係る小麦粉を用いて、食パンを製造した。
【0087】
(1)食パンの製造1
前記実験例1にて製造した製造例2の小麦粉を用いて、表7に示す材料の配合(質量%)で食パンを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例の食パンを製造した。具体的には、油脂以外の材料をボウルに入れ、ミキサーの低速で4分間、中速で5分間、高速で2分間ミキシングした後、油脂を添加し、さらにミキサーの低速で2分間、中速で5分間、高速で3分間ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は26℃であった。発酵工程は、28℃、湿度70%で90分間、パンチ後28℃、湿度70%で90分間とした。発酵後、生地を分割(型生地比容積4.3)・成形して、220℃で35分間焼成し、食パンを製造した。
【0088】
【表7】
【0089】
(2)食パンの製造2
前記実験例1にて製造した製造例2の小麦粉を用いて、表8に示す材料の配合(質量%)で食パンを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例の食パンを製造した。具体的には、油脂以外の材料をボウルに入れ、ミキサーの低速で4分間、中速で5分間、高速で1分間ミキシングした後、油脂を添加し、さらにミキサーの低速で2分間、中速で5分間、高速で2分間ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は22℃であった。発酵工程は、室温で40分間、パンチ後5℃で16時間とした。発酵後、生地を分割(型生地比容積4.3)・成形して、220℃で35分間焼成し、食パンを製造した。
【0090】
【表8】
【0091】
(3)評価
製造した食パンについて、前記実験例2と同様の評価基準に基づいて、製パン性、香り、甘味、旨味、クラストの歯切れを評価した。
【0092】
(4)結果
結果を下記の表9に示す。
【0093】
【表9】
【0094】
(5)考察
上記表9の結果から、本技術に係る小麦粉を用いれば、食パンについても、本技術に係る小麦粉を用いたバゲットと同様の効果が得られることが分かった。
【0095】
<実験例6>
実験例6では、本技術に係る小麦粉を用いて、ピザを製造した。
【0096】
(1)ピザの製造
前記実験例1で製造した製造例2の小麦粉を用いて、表10に示す材料の配合(質量%)で、ピザを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例のピザを製造した。具体的には、材料をボウルに入れ、ミキサーの低速で5分間、中速で3分間ミキシングした。生地の捏ね上げ温度は22℃であった。発酵工程は、室温で40分間、生地を200gに分割後、5℃で16時間とした。発酵後、生地を成形して、400℃で2分30秒間焼成し、ピザを製造した。
【0097】
【表10】
【0098】
(2)評価
製造したピザについて、前記実験例2と同様の評価基準に基づいて、製パン性、香り、甘味、旨味、クラストの歯切れを評価した。
【0099】
(3)結果
結果を下記の表11に示す。
【0100】
【表11】
【0101】
(4)考察
上記表11の結果から、本技術に係る小麦粉を用いれば、ピザについても、本技術に係る小麦粉を用いたバゲットと同様の効果が得られることが分かった。
<実験例7>
実験例7では、本技術に係る小麦粉を用いて、パウンドケーキ(菓子)を製造した。
【0102】
(1)パウンドケーキの製造
前記実験例1で製造した製造例2、製造例8の小麦粉を用いて、表12に示す材料の配合(質量%)で、パウンドケーキを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例のパウンドケーキを製造した。具体的には、無糖バターとグラニュー糖を混合した後、さらに全卵、小麦粉の順で混合して、生地を調製した。調製した生地を、型に流し込み、上火170℃/下火170℃にて50分間焼成して、パウンドケーキを製造した。
【0103】
【表12】
【0104】
(2)評価
製造したパウンドケーキについて、下記の評価基準に基づいて、歯切れ、口溶けを評価した。
【0105】
[歯切れ]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、歯切れが非常に良好
4:参考例に比べ、歯切れが良好
3:参考例に比べ、歯切れがやや良好
2:参考例に比べ、歯切れが同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、歯切れが劣る
【0106】
[口溶け]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、口溶けが非常に良好
4:参考例に比べ、口溶けが良好
3:参考例に比べ、口溶けがやや良好
2:参考例に比べ、口溶けが同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、口溶けが劣る
【0107】
(3)結果
結果を下記の表13に示す。
【0108】
【表13】
【0109】
(4)考察
上記表13の結果から、本技術に係る小麦粉の製造例2を用いた実施例15は、すべての評価が良好であった。一方、粒子径50μm以下の粒子の割合が7%未満の製造例8の小麦粉を用いた比較例5では、歯切れ及び口溶けの評価が低かった。
【0110】
<実験例8>
実験例8では、本技術に係る小麦粉を用いて、麺類を製造した。本実験例では麺類の一例として中華麺を製造した。
【0111】
(1)中華麺の製造
前記実験例1で製造した製造例2、製造例8の小麦粉を用いて、表14に示す材料の配合(質量%)で、中華麺を製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例の中華麺を製造した。具体的には、材料を混捏した後、常温にて30分間熟成させて、生地を調製した。調製した生地を、ロール式製麺機を用いて麺帯とし、この麺帯を、麺圧1.5mmにて切り出し(切刃:角20番)、得られた麺線(生麺)を冷蔵庫で2日間熟成させ、中華麺を製造した。
【0112】
【表14】
【0113】
(2)評価
製造した中華麺を、熱湯で3分間茹でた後、温かいスープ(「醤油ラーメンスープ」創味食品製)に入れて調理し、下記の評価基準に基づいて、粘弾性を評価した。
【0114】
[粘弾性]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、粘弾性が非常に高く、非常に良好
4:参考例に比べ、粘弾性が高く、良好
3:参考例に比べ、粘弾性がやや高く、やや良好
2:参考例に比べ、粘弾性が同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、弾力性及び/又は粘りが劣る
【0115】
(3)結果
結果を下記の表15に示す。
【0116】
【表15】
【0117】
(4)考察
上記表15の結果から、本技術に係る小麦粉の製造例2を用いた実施例16は、粘弾性が良好であった。一方、粒子径50μm以下の粒子の割合が7%未満の製造例8の小麦粉を用いた比較例6では、粘弾性の評価が低かった。
【0118】
<実験例9>
実験例9では、本技術に係る小麦粉を用いて、揚げ物を製造した。本実験例では揚げ物一例としてコロッケを製造した。
【0119】
(1)コロッケの製造
前記実験例1で製造した製造例2、製造例8の小麦粉を用いて、表16に示す材料の配合(質量%)で、コロッケを製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例のコロッケを製造した。具体的には、材料を混合して、バッターを調製した。蒸してつぶしたジャガイモを、ひき肉とタマネギを炒めて調味料で味付けしたものと混ぜ、約43g/個、厚さ8mmの小判型に成形したコロッケのパテを作製した。前記で調製したバッターに、作製したパテを浸漬させた後、引き上げ、約14gのバッターを付着させ、さらに、パン粉を付けて冷凍した。冷凍した状態のまま175℃で5分間油ちょうし、コロッケを製造した。
【0120】
【表16】
【0121】
(2)評価
製造したコロッケについて、下記の評価基準に基づいて、サクミ、歯切れを評価した。
【0122】
[サクミ]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、サクミを強く感じ、非常に良好
4:参考例に比べ、サクミを感じ、良好
3:参考例に比べ、サクミをやや感じ、やや良好
2:参考例に比べ、サクミが同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、サクミが感じられず、劣る
【0123】
[歯切れ]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、歯切れが非常に良好
4:参考例に比べ、歯切れが良好
3:参考例に比べ、歯切れがやや良好
2:参考例に比べ、歯切れが同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、歯切れが劣る
【0124】
(3)結果
結果を下記の表17に示す。
【0125】
【表17】
【0126】
(4)考察
上記表17の結果から、本技術に係る小麦粉の製造例2を用いた実施例17は、すべての評価が良好であった。一方、粒子径50μm以下の粒子の割合が7%未満の製造例8の小麦粉を用いた比較例5では、サクミ及び歯切れの評価が低かった。
【0127】
<実験例10>
実験例10では、本技術に係る小麦粉を用いて、たこ焼を製造した。
【0128】
(1)たこ焼の製造
前記実験例1で製造した製造例2、製造例8の小麦粉を用いて、表18に示す材料の配合(質量%)で、たこ焼を製造した。また、市販強力粉(「ネオン」昭和産業製)を用いて、参考例のたこ焼を製造した。具体的には、材料を混合して、バッターを調製した。200℃に加熱したたこ焼器にサラダ油をひき、調製したバッターを流し入れた後、各窪みに茹で蛸(4g)を加え、竹串を用いて球状に形を整えながら10分間焼成して、たこ焼を製造した。
【0129】
【表18】
【0130】
(2)評価
製造したたこ焼について、下記の評価基準に基づいて、保形性、とろみを評価した。
【0131】
[保形性]
下記の基準に基づいて、3名の合議で保形性を評価した。
3:参考例と比較して、保形性が良好
2:参考例と比較して、保形性が同程度(やや良好)
1:参考例と比較して、保形性が劣る
【0132】
[とろみ]
下記の基準に基づいて、10名の評価点の平均点を算出した。
5:参考例に比べ、とろみが強く、非常に良好
4:参考例に比べ、とろみがあり、良好
3:参考例に比べ、とろみがややあり、やや良好
2:参考例に比べ、とろみが同程度(やや劣る)
1:参考例に比べ、とろみが弱く、劣る
【0133】
(3)結果
結果を下記の表19に示す。
【0134】
【表19】
【0135】
(4)考察
上記表19の結果から、本技術に係る小麦粉の製造例2を用いた実施例18は、すべての評価が良好であった。一方、粒子径50μm以下の粒子の割合が7%未満の製造例8の小麦粉を用いた比較例8では、保形性は問題なかったが、とろみの評価が低かった。