IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社リコーの特許一覧

<>
  • 特開-メンテナンス装置及び印刷装置 図1
  • 特開-メンテナンス装置及び印刷装置 図2A
  • 特開-メンテナンス装置及び印刷装置 図2B
  • 特開-メンテナンス装置及び印刷装置 図2C
  • 特開-メンテナンス装置及び印刷装置 図3
  • 特開-メンテナンス装置及び印刷装置 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052097
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】メンテナンス装置及び印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240404BHJP
   B41J 2/17 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
B41J2/165 101
B41J2/165 211
B41J2/17 203
B41J2/165 401
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158567
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100090527
【弁理士】
【氏名又は名称】舘野 千惠子
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 薫
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EA17
2C056EA24
2C056EC22
2C056EC24
2C056EC57
2C056JA13
2C056JA21
2C056JA24
2C056JC13
2C056JC20
(57)【要約】
【課題】簡便な構成で洗浄液をキャップ部材に供給でき、インク成分の固着によるキャップ部材や廃液経路の詰まりを防止できるメンテナンス装置を提供する。
【解決手段】液体吐出ヘッド12のノズル面に当接可能なキャップ部材21、キャップ部材から液体を吸引する吸引手段23、キャップ部材により吸引された液体が排出される廃液貯蔵部25と、キャップ部材と廃液貯蔵部を接続する廃液経路24、洗浄液を収容する洗浄液貯蔵部26、キャップ部材と洗浄液貯蔵部を接続する洗浄液送液経路29を有する。廃液貯蔵部と洗浄液貯蔵部は、内部の気体が連通するように繋がっているとともに、廃液貯蔵部中の液体と洗浄液貯蔵部中の洗浄液とが混在しないように仕切り28が設けられている。吸引手段が吸引を行うことにより廃液貯蔵部及び洗浄液貯蔵部の内部の圧力が上昇し、内部の圧力の上昇によって洗浄液が洗浄液送液経路を通じてキャップ部材に供給される。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップ部材と、
前記キャップ部材から液体を吸引する吸引手段と、
前記キャップ部材により吸引された液体が排出される廃液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記廃液貯蔵部を接続する廃液経路と、
洗浄液を収容する洗浄液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記洗浄液貯蔵部を接続する洗浄液送液経路と、を有し、
前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部は、内部の気体が連通するように繋がっているとともに、前記廃液貯蔵部中の液体と前記洗浄液貯蔵部中の洗浄液とが混在しないように仕切りが設けられており、
前記吸引手段が吸引を行うことにより前記廃液貯蔵部及び前記洗浄液貯蔵部の内部の圧力が上昇し、圧力の上昇によって前記洗浄液が前記洗浄液送液経路を通じて前記キャップ部材に供給される
ことを特徴とするメンテナンス装置。
【請求項2】
前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部を有する液体貯蔵部を備え、
前記液体貯蔵部は、前記廃液経路と前記洗浄液送液経路が接続されているとともに、大気との連通の開閉を行う大気開放部が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載のメンテナンス装置。
【請求項3】
記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
請求項1に記載のメンテナンス装置と、を有する
ことを特徴とする印刷装置。
【請求項4】
前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部を有し、前記廃液経路と前記洗浄液送液経路が接続された液体貯蔵部と、
前記液体貯蔵部に設けられ、前記液体貯蔵部と大気との連通の開閉を行う大気開放部と、
前記キャップ部材、前記吸引手段及び前記大気開放部の制御を行う制御部と、
を有する
ことを特徴とする請求項3に記載の印刷装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記大気開放部が開いた状態で前記吸引手段の吸引を行うことにより、前記洗浄液を前記キャップ部材に供給せず、前記キャップ部材に残留する液体を吸引する制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記大気開放部が閉じた状態で、かつ、前記キャップ部材が前記ノズル面から離間した状態で前記吸引手段の吸引を行うことにより、前記洗浄液を前記キャップ部材に充填させる制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【請求項7】
前記廃液経路中に弁が設けられており、
前記制御部は、前記弁の開閉の制御を行い、前記弁を閉じた状態にすることで前記キャップ部材に供給された前記洗浄液を前記キャップ部材に留めておく制御を行う
ことを特徴とする請求項4に記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メンテナンス装置及び印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタなどの印刷装置では、キャップとポンプを用いて液体吐出ヘッドのノズル面からインクを吸引する技術が知られている。ノズル面からインクを吸引して、液体吐出ヘッドのノズル状態を清浄な状態にすることが目的の一つである。
【0003】
このような装置において、ノズル面からインクを吸引する動作は、維持機構のうちの一つである。維持機構では、吸引したインクを廃液タンクに排出すること、液体吐出ヘッドに当接するキャップに洗浄液を供給することなどが行われている。
【0004】
特許文献1では、複数のキャップ部材、吸引手段、廃液タンク、洗浄液タンク、廃液タンク又は洗浄液タンクのいずれか一方を接続し、他方を切断する切換え弁を有する画像形成装置が開示されている。特許文献1によれば、洗浄液の使用量を少なくすることができ、よって装置の小型化に寄与できるとしている。
【0005】
特許文献2では、キャップ部材、吸引ポンプ、液体充填手段を有するインクジェットプリンタが開示されており、液体充填手段は、キャップ部材に液体を供給し、キャップ部材の下流側に位置するインク経路に液体を充填する。特許文献2によれば、吸引処理における負圧解除時間を設けない、あるいは、負圧解除時間の短時間化を図ることが可能となり、クリーニング処理の処理時間の短縮化を図ることができるとしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1では、維持機構を洗浄するための洗浄液を格納する容器と洗浄液を供給する経路を有する特許文献1では、インクの廃液経路と洗浄液の供給経路の一部が共通であるため、経路の切り替え機構が必要になる。また、キャップまで到達する洗浄液は廃液経路を通った後の液体であるため、洗浄液がインク成分を含んでしまう場合がある。インク成分を含んだ洗浄液が乾燥すると、インク成分が固着し、詰まりの原因になってしまう場合がある。
【0007】
特許文献2では、洗浄液タンクに収容された洗浄液を送液ポンプによりキャップ部材に供給している。そのため、洗浄液を供給するための送液ポンプを設ける必要があり、装置を小型化できず、また装置が複雑化することを抑制できない。また、送液ポンプの制御も行う必要があるため、制御が複雑化することを抑制できない。
【0008】
そこで本発明は、簡便な構成で洗浄液をキャップ部材に供給でき、インク成分の固着によるキャップ部材や廃液経路の詰まりを防止できるメンテナンス装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明のメンテナンス装置は、
液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップ部材と、
前記キャップ部材から液体を吸引する吸引手段と、
前記キャップ部材により吸引された液体が排出される廃液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記廃液貯蔵部を接続する廃液経路と、
洗浄液を収容する洗浄液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記洗浄液貯蔵部を接続する洗浄液送液経路と、を有し、
前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部は、内部の気体が連通するように繋がっているとともに、前記廃液貯蔵部中の液体と前記洗浄液貯蔵部中の洗浄液とが混在しないように仕切りが設けられており、
前記吸引手段が吸引を行うことにより前記廃液貯蔵部及び前記洗浄液貯蔵部の内部の圧力が上昇し、内部の圧力の上昇によって前記洗浄液が前記洗浄液送液経路を通じて前記キャップ部材に供給される
ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、簡便な構成で洗浄液をキャップ部材に供給でき、インク成分の固着によるキャップ部材や廃液経路の詰まりを防止できるメンテナンス装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るメンテナンス装置及び印刷装置の一例を示す概略図である。
図2A】メンテナンス動作の一例を示す概略図である。
図2B】メンテナンス動作の一例を示す概略図である。
図2C】メンテナンス動作の一例を示す概略図である。
図3】制御部のハードウェア構成の一例を示す図である。
図4】本発明に含まれない比較例のメンテナンス装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明に係るメンテナンス装置及び印刷装置について図面を参照しながら説明する。なお、本発明は以下に示す実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、修正、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【0013】
本発明のメンテナンス装置は、
液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップ部材と、
前記キャップ部材から液体を吸引する吸引手段と、
前記キャップ部材により吸引された液体が排出される廃液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記廃液貯蔵部を接続する廃液経路と、
洗浄液を収容する洗浄液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記洗浄液貯蔵部を接続する洗浄液送液経路と、を有し、
前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部は、内部の気体が連通するように繋がっているとともに、前記廃液貯蔵部中の液体と前記洗浄液貯蔵部中の洗浄液とが混在しないように仕切りが設けられており、
前記吸引手段が吸引を行うことにより前記廃液貯蔵部及び前記洗浄液貯蔵部の内部の圧力が上昇し、内部の圧力の上昇によって前記洗浄液が前記洗浄液送液経路を通じて前記キャップ部材に供給される
ことを特徴とする。
【0014】
本発明の印刷装置は、記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、本発明のメンテナンス装置と、を有することを特徴とする。印刷装置は、液体を吐出する装置、画像形成装置、記録装置、インクジェットプリンタなどと称されてもよい。記録媒体(印刷媒体などと称してもよい)としては、特に制限されるものではなく、適宜選択することができる。
【0015】
本発明によれば、簡便な構成で洗浄液をキャップ部材に供給でき、インク成分の固着によるキャップ部材や廃液経路の詰まりを防止できる。
【0016】
まず、本発明に含まれない比較例に係るメンテナンス装置について説明する。
図4は、本比較例に係るメンテナンス装置を示す概略図である。図は、液体吐出ヘッド12のノズル面にキャップ部材21を当接させ、吸引ポンプ23で吸引した場合の一例を示している。キャップ部材21に吸引された液体(例えばインク)は、廃液経路24を通って廃液タンク25に排出される。このようにインクを吸引することで、ノズル状態を回復させる。
【0017】
しかし、このような吸引を何度も繰り返すと、キャップ部材21の内部(ノズル面とキャップ部材21によって形成される内側の空間)や、廃液経路24の内部にインクが固着する場合がある。インクが固着すると、吸引動作に不具合が生じ、ノズル状態を回復させることができない場合がある。またこの場合、液体吐出ヘッド12の吐出性が低下し、画像品質が低下してしまう。
【0018】
また背景技術の欄で説明したように、従来技術ではキャップ部材に洗浄液を供給する技術が提案されている。しかしながら、簡便な構成で洗浄液をキャップ部材に供給でき、インク成分の固着によるキャップ部材や廃液経路の詰まりを防止できる技術が求められている。
【0019】
図1は、本実施形態のメンテナンス装置20及び印刷装置1を示す概略図である。
印刷装置1は、例えば液体吐出ヘッド12とメンテナンス装置20を有する。
液体吐出ヘッド12は、インクタンク14から液体(例えばインク)が供給され、記録媒体に液体を吐出する。液体吐出ヘッドとしては、特に制限されるものではなく、シリアル方式であってもよいし、ライン方式であってもよい。また、液体吐出ヘッドを複数有していてもよいし、ヘッドアレイやヘッドユニットの構成としてもよい。
【0020】
メンテナンス装置20は、例えば、キャップ部材21、吸引ポンプ23、廃液タンク25、洗浄液タンク26を有する。
キャップ部材21は、液体吐出ヘッド12のノズル面に当接可能である。
吸引ポンプ23は、吸引手段の一例であり、キャップ部材21から液体を吸引する。
廃液タンク25は、廃液貯蔵部の一例であり、キャップ部材21により吸引された液体が排出される。図中、吸引された液体を廃液31として図示している。
洗浄液タンク26は、洗浄液貯蔵部の一例であり、洗浄液32を収納する。
【0021】
またメンテナンス装置20は、廃液経路24と洗浄液送液経路29を有する。
廃液経路24は、キャップ部材21と廃液タンク25を接続する。洗浄液送液経路29は、キャップ部材21と洗浄液タンク26を接続する。廃液経路24と洗浄液送液経路29は、特に制限されるものではないが、例えばチューブにより形成することができる。
【0022】
キャップ部材21は、例えば、廃液経路24が接続する第1の接続口と、洗浄液送液経路29が接続する第2の接続口とを有する。第1の接続口と第2の接続口の位置は、特に制限されるものではなく、適宜変更することができる。
【0023】
本実施形態において、廃液タンク25と洗浄液タンク26は、内部の気体が連通するように繋がっているとともに、廃液タンク25中の液体と洗浄液タンク26中の洗浄液とが混在しないように仕切り28が設けられている。なお、廃液タンク25と洗浄液タンク26において、内部の気体が連通するように繋がっていることを、内部的に繋がっていると称してもよい。
【0024】
このような構成にすることで、キャップ部材21に自動的に洗浄液32を供給することができる。例えば、キャップ部材21がノズル面に当接した状態で吸引を行うと、廃液タンク25と洗浄液タンク26の内圧が上がり、洗浄液タンク26内の洗浄液32が洗浄液送液経路29内に押し出される。このため、吸引と同時に、洗浄液32が洗浄液送液経路29を通じてキャップ部材21に自動的に供給される。
【0025】
本実施形態では、経路の切り替え機構を設けることなく、また装置を複雑化させることなく、キャップ部材21に洗浄液を供給することができる。また本実施形態では、キャップ部材21に供給される洗浄液は、廃液経路24を通らずにキャップ部材21に供給されるため、インク成分を含まずに供給される。そのため、洗浄液が乾燥して、例えば廃液経路24にインク成分の固着が生じることを防止でき、経路の詰まりを防止できる。
【0026】
すなわち本実施形態によれば、インクの吸引と同時に、かつ、自動的に洗浄液32をキャップ部材21と廃液経路24に通液することができ、キャップ部材21と廃液経路24に残ったインクを洗い流すことができる。このため、キャップ部材21や廃液経路24におけるインクの固着を防止でき、インク固着による維持機構の機能低下を防ぐことができる。本実施形態によれば、液体吐出ヘッド12の吐出状態を維持、回復するために必要な維持機構を簡便な構成で洗浄することができる。
【0027】
キャップ部材21の吸引とキャップ部材21への洗浄液の供給とを行う際、キャップ部材21はノズル面に当接した状態であってもよいし、当接していない状態であってもよい。キャップ部材21がノズル面に当接した状態で吸引を行うことにより、液体吐出ヘッド12のノズル面に対してクリーニングを行うことができる。一方、キャップ部材21がノズル面に当接していない状態で吸引を行うことにより、キャップ部材21が空気を吸引することになる。この場合でも、廃液タンク25と洗浄液タンク26の内部の圧力が上昇し、洗浄液32がキャップ部材21に供給される。
【0028】
洗浄液32の供給量は、適宜選択することができ、例えば、廃液タンク25と洗浄液タンク26の容量、廃液タンク25中の液体の量などを考慮して設計することができる。また、廃液タンク25に排出された液体(廃液)の量によって、タンク内部の圧力の変化が影響を受ける場合もあるため、廃液タンク25中の廃液量も考慮して設計することが好ましい。
【0029】
本実施形態では、キャップ部材21が液体吐出ヘッド12のノズル面に当接する際、キャップ部材21がノズル面に押圧するように当接してもよい。キャップ部材21がノズル面に押圧することで、キャップ部材21がノズル面に対して密閉空間を形成しやすくなる。押圧する方法としては、特に制限されるものではなく、任意の付勢手段を用いることができる。
【0030】
キャップ部材21は、液体吐出ヘッド12のノズル面に押圧してノズル面に密閉した状態にできることが好ましい。これにより、吸引の効率を向上させることができる。
【0031】
本実施形態では、廃液経路24に弁22を設けている。弁22が開いた状態の場合、キャップ部材21から廃液タンク25に廃液を行うことができる。一方、弁22が閉じた状態の場合、吸引を行ってもキャップ部材21から廃液タンク25に廃液されない。なお、廃液経路24を通って廃液タンク25に液体が廃液されることを、排出、供給、導入などと言い換えてもよい。弁22を設けることにより、メンテナンス動作の選択肢が広がる。
【0032】
本実施形態のメンテナンス装置は、液体貯蔵タンク27を備えている。
液体貯蔵タンク27は、液体貯蔵部の一例であり、廃液タンク25(廃液貯蔵部)と洗浄液タンク26(洗浄液貯蔵部)を有する。液体貯蔵タンク27は、廃液経路24と洗浄液送液経路29が接続されているとともに、大気との連通の開閉を行う大気開放弁30が設けられている。
【0033】
大気開放弁30を設けることにより、メンテナンス動作の選択肢が広がる。例えば、大気開放弁30を開いた状態にすることで、吸引を行っても洗浄液32がキャップ部材21に供給されないようにすることができる。一方、大気開放弁30を閉じた状態にすることで、吸引を行うと洗浄液32がキャップ部材21に供給されるようにすることができる。このため、キャップ部材21や廃液経路24の洗浄を行うか、もしくは行わないかの選択をすることができる。吸引と洗浄液の供給を同時に行うことで、キャップ部材21や廃液経路24の洗浄を行うことができるため、大気開放弁30の開閉によって、このような洗浄を行うか、行わないかの選択を行うことができる。
【0034】
大気開放弁30は、大気開放部の一例であり、大気との連通の開閉を行う。大気開放弁30が開く(開放状態になる)と液体貯蔵タンク27が大気と連通し、大気開放弁30が閉じる(閉鎖状態になる)と液体貯蔵タンク27が大気と連通しなくなる。
【0035】
本例の液体貯蔵タンク27は、例えば1つの筐体もしくは収容部で構成されており、廃液貯蔵部と洗浄液貯蔵部を区画するように仕切り28で分けられている。
【0036】
本実施形態のメンテナンス装置20の動作の一例を説明する。以下の動作例では、大気開放弁30を用いる場合についても合わせて例示しているが、大気開放弁30は任意の構成である。
【0037】
(1)液体吐出ヘッドのクリーニング
キャップ部材21を液体吐出ヘッド12のノズル面に当接させる。弁22を開いた状態にして吸引ポンプ23で吸引を行う。これにより、キャップ部材21から液体が吸引され、キャップ部材21の内部に負圧が形成され、液体吐出ヘッド12のノズル面に対して吸引が行われる。これにより、キャップ部材21から液体が図中の矢印aの方向に廃液経路24を通り、廃液タンク25に廃液される。このようにすることで、例えば、液体吐出ヘッド12のノズル面に付着した液体をクリーニングすることができる。
【0038】
なお、キャップ部材21の内部とあるのは、液体吐出ヘッド12のノズル面とキャップ部材21との間の空間をいう。
【0039】
(2)キャップ部材及び廃液経路のクリーニング
本実施形態では、上記(1)の吸引を行うと、廃液タンク25と洗浄液タンク26の内部の圧力が上昇する。これにより、洗浄液タンク26内の洗浄液32が押し出されるようにして洗浄液送液経路29を矢印bの方向に流れる。このため、洗浄液32がキャップ部材21に供給される。すなわち、上記(1)の吸引を行うのと同時に、自動的にキャップ部材21に洗浄液32を供給することができる。
【0040】
吸引と同時にキャップ部材21に洗浄液32を供給することで、キャップ部材21と廃液経路24に残った液体(例えばインク)を洗い流すことができる。このようにして、キャップ部材21と廃液経路24のクリーニングを行うことができる。キャップ部材21と廃液経路24に残ったインクを洗い流すことにより、キャップ部材21内や廃液経路24内にインクが固着することを抑制できる。このため、メンテナンス装置の維持機能を保つことができる。
【0041】
また本実施形態では、上記(1)の吸引を行うのと同時にキャップ部材21に自動的に洗浄液32を供給することができるため、洗浄液32を供給するための送液ポンプが不要である。このことからも、本実施形態によれば、洗浄液32を供給するに際し、装置の構成や制御の処理が複雑化することを防止できるとともに、装置の小型化を図ることができる。
【0042】
上記(1)及び(2)の動作例は、例えば図1に示すような状態になる。矢印aのようにキャップ部材21から液体(例えばインク)が廃液タンク25に排出され、矢印bのように洗浄液タンク26から洗浄液32がキャップ部材21に供給される。
【0043】
(3)洗浄液を供給しない吸引
上記(2)では、上記(1)の吸引を行うのと同時にキャップ部材21に自動的に洗浄液32を供給していたが、洗浄液32を供給しないようにすることもできる。上記(1)の吸引を行う際、大気開放弁30を開放状態にして吸引ポンプ23で吸引を行う。これにより、液体貯蔵タンク27内の圧力は大気圧と同等の状態に保たれ、洗浄液32は送液されずに吸引動作のみを行うことができる。
【0044】
上記(3)の動作例は、例えば図2Aに示すような状態になる。矢印aのようにキャップ部材21から液体が廃液タンク25に排出されるが、洗浄液32はキャップ部材21に供給しない。
【0045】
(4)洗浄液をキャップ部材に供給
液体吐出ヘッド12のノズル面に対する吸引を行わずに洗浄液32をキャップ部材21に供給することもできる。この場合、キャップ部材21を液体吐出ヘッド12に当接させず、弁22を開いた状態にし、大気開放弁30を閉じた状態で、吸引ポンプ23で吸引を行う。これにより、キャップ部材21は空気を吸引し、液体貯蔵タンク27内の圧力が上がり、洗浄液32が洗浄液送液経路29を通ってキャップ部材21に供給される。
【0046】
なお、この状態で吸引ポンプ23の吸引を続けると、キャップ部材21に供給された洗浄液32が廃液経路24を通って廃液されるため、適度なタイミングで吸引ポンプ23の吸引を停止する。このようにすることで、キャップ部材21に洗浄液32が充填した状態にすることができる。
【0047】
上記(4)の動作例は、例えば図2Bに示すような状態になる。キャップ部材21は液体吐出ヘッド12から離間し、矢印aのようにキャップ部材21から空気が吸引される。このため、廃液タンク25と洗浄液タンク26の内圧が上昇し、矢印bのように洗浄液32がキャップ部材21に供給される。
【0048】
(5)キャッピング(キャップ動作)
洗浄液32をキャップ部材21の内部に残留させたままの状態で、キャップ部材21を液体吐出ヘッド12のノズル面に当接させる。これにより、キャップ部材21の内部を湿潤状態に保った状態でキャッピングを行うことができ、液体吐出ヘッド12の乾燥を防ぐことができる。このため、液体吐出ヘッド12の乾燥によって吐出に不具合が生じることを防ぐことができる。
【0049】
キャップ動作は、弁22と大気開放弁30を閉じた状態で行うことが好ましい。この場合、キャップ部材21の内部の湿潤状態を保ちやすくなる。
【0050】
上記(5)の動作例は、例えば図2Cに示すような状態になる。弁22と大気開放弁30を閉じた状態でキャップ部材21を液体吐出ヘッド12のノズル面に当接させてキャッピングを行う。
【0051】
上記の動作は、例えば制御部によって制御することができる。
図3は、制御部100のハードウェア構成の一例を示すブロック図である。制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、HDD(Hard Disk Drive)/SSD(Solid State Drive)104と、I/F(Interface)105と、を備える。これらは、システムバスBを介して相互に電気的に接続しており、また液体吐出ヘッド12、メンテナンス装置20等に対し、システムバスBを介してデータ及び信号を送受可能に接続している。
【0052】
なお、図中、液体吐出ヘッド12として図示しているが、液体吐出ヘッド12を含めた液体吐出部としてもよい。また、図1では制御部100を図示しているが、図2A等では制御部100の図示を省略している。
【0053】
CPU101は、RAM103を作業領域として使用し、ROM102に格納されているプログラムを実行する。HDD/SSD104は、記憶部として使用され、予め設定された設定値を格納している。HDD/SSD104に格納されている情報は、CPU101が読み出しプログラム実行時に使用することもある。I/F105は、例えば印刷装置1と外部PC(Personal Computer)110とを通信可能にするインターフェースである。
【0054】
制御部100は、液体吐出ヘッド12、メンテナンス装置20等を制御する。メンテナンス装置20の制御としては、例えば、キャップ部材21、弁22、吸引ポンプ23、大気開放弁30を制御する。特に制限されるものではないが、例えば、キャップ部材21の当接及び離間、弁22の開放及び閉鎖、吸引ポンプ23の駆動及び停止、大気開放弁30の開放及び閉鎖を制御する。
【0055】
本実施形態の印刷装置は、上記で示したように、液体貯蔵タンク27(液体貯蔵部)と、大気開放弁30(大気開放部)と、制御部100と、を有することが好ましい。上記(1)~(5)の動作が行いやすくなる。液体貯蔵タンク27は、廃液タンク25と洗浄液タンク26を有し、廃液経路24と洗浄液送液経路29が接続されている。大気開放弁30は、液体貯蔵タンク27に設けられ、液体貯蔵タンク27と大気との連通の開閉を行う。以下、制御部100の制御例を説明する。
【0056】
制御部100は、大気開放弁30が開いた状態で吸引ポンプ23の吸引を行うことにより、洗浄液をキャップ部材21に供給せず、キャップ部材21に残留する液体を吸引する制御を行う。これは上記(3)の動作にも相当する。
【0057】
制御部100は、大気開放弁30が閉じた状態で、かつ、キャップ部材21がノズル面から離間した状態で吸引ポンプ23の吸引を行うことにより、洗浄液をキャップ部材21に充填させる制御を行う。これは上記(4)の動作にも相当する。
【0058】
制御部100は、弁22の開閉の制御を行い、弁22を閉じた状態にすることでキャップ部材21に供給された洗浄液をキャップ部材に留めておく制御を行う。これにより、上記(5)のキャッピングを行う際に、キャップ部材21が湿潤状態でキャッピングを行うことができる。
【0059】
本発明の態様は、例えば、以下のとおりである。
<1>液体吐出ヘッドのノズル面に当接可能なキャップ部材と、
前記キャップ部材から液体を吸引する吸引手段と、
前記キャップ部材により吸引された液体が排出される廃液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記廃液貯蔵部を接続する廃液経路と、
洗浄液を収容する洗浄液貯蔵部と、
前記キャップ部材と前記洗浄液貯蔵部を接続する洗浄液送液経路と、を有し、
前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部は、内部の気体が連通するように繋がっているとともに、前記廃液貯蔵部中の液体と前記洗浄液貯蔵部中の洗浄液とが混在しないように仕切りが設けられており、
前記吸引手段が吸引を行うことにより前記廃液貯蔵部及び前記洗浄液貯蔵部の内部の圧力が上昇し、圧力の上昇によって前記洗浄液が前記洗浄液送液経路を通じて前記キャップ部材に供給される
ことを特徴とするメンテナンス装置。
<2>前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部を有する液体貯蔵部を備え、
前記液体貯蔵部は、前記廃液経路と前記洗浄液送液経路が接続されているとともに、大気との連通の開閉を行う大気開放部が設けられている
ことを特徴とする<1>に記載のメンテナンス装置。
<3>記録媒体に液体を吐出する液体吐出ヘッドと、
<1>に記載のメンテナンス装置と、を有する
ことを特徴とする印刷装置。
<4>前記廃液貯蔵部と前記洗浄液貯蔵部を有し、前記廃液経路と前記洗浄液送液経路が接続された液体貯蔵部と、
前記液体貯蔵部に設けられ、前記液体貯蔵部と大気との連通の開閉を行う大気開放部と、
前記キャップ部材、前記吸引手段及び前記大気開放部の制御を行う制御部と、
を有する
ことを特徴とする<3>に記載の印刷装置。
<5>前記制御部は、前記大気開放部が開いた状態で前記吸引手段の吸引を行うことにより、前記洗浄液を前記キャップ部材に供給せず、前記キャップ部材に残留する液体を吸引する制御を行う
ことを特徴とする<4>に記載の印刷装置。
<6>前記制御部は、前記大気開放部が閉じた状態で、かつ、前記キャップ部材が前記ノズル面から離間した状態で前記吸引手段の吸引を行うことにより、前記洗浄液を前記キャップ部材に充填させる制御を行う
ことを特徴とする<4>又は<5>に記載の印刷装置。
<7>前記廃液経路中に弁が設けられており、
前記制御部は、前記弁の開閉の制御を行い、前記弁を閉じた状態にすることで前記キャップ部材に供給された前記洗浄液を前記キャップ部材に留めておく制御を行う
ことを特徴とする<4>から<6>のいずれかに記載の印刷装置。
【符号の説明】
【0060】
1 印刷装置
12 液体吐出ヘッド
14 インクタンク
20 メンテナンス装置
21 キャップ部材
22 弁
23 吸引ポンプ
24 廃液経路
25 廃液タンク
26 洗浄液タンク
27 液体貯蔵タンク
28 仕切り
29 洗浄液送液経路
30 大気開放弁
31 廃液
32 洗浄液
【先行技術文献】
【特許文献】
【0061】
【特許文献1】特開2010-120266号公報
【特許文献2】特開2020-168798号公報
図1
図2A
図2B
図2C
図3
図4