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特開2024-52215高血圧症評価システム及び高血圧症評価方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052215
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】高血圧症評価システム及び高血圧症評価方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 10/00 20060101AFI20240404BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61B10/00 K
A61B5/00 M
A61B10/00 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158777
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】504137912
【氏名又は名称】国立大学法人 東京大学
(71)【出願人】
【識別番号】510241915
【氏名又は名称】エバ・ジャパン 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120868
【弁理士】
【氏名又は名称】安彦 元
(72)【発明者】
【氏名】藤生 克仁
(72)【発明者】
【氏名】チン エイ
(72)【発明者】
【氏名】内田 亮子
(72)【発明者】
【氏名】小室 一成
(72)【発明者】
【氏名】野呂 直樹
(72)【発明者】
【氏名】高良 洋平
(72)【発明者】
【氏名】大橋 郁
【テーマコード(参考)】
4C117
【Fターム(参考)】
4C117XB12
4C117XB17
4C117XD05
4C117XD16
4C117XE14
4C117XE43
4C117XJ13
4C117XK05
4C117XK09
(57)【要約】
【課題】高血圧症を非能動的かつ非接触で高精度に評価できることが可能な高血圧症評価システム及び高血圧症評価方法を提供する。
【解決手段】対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価システムであって、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を取得する取得手段と、皮膚の画像に基づき前処理を行い、スペクトル画像を取得するスペクトル画像取得手段と、スペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、対象者の脈波情報と特定波長の特徴量を求め、対象者の高血圧症を評価する評価手段と、を備えることを特徴とする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価システムであって、
前記対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を取得する取得手段と、
前記取得手段により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル画像取得手段と、
前記スペクトル画像取得手段により取得されたスペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、前記対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量を求め、前記対象者の高血圧症を評価する評価手段と、
を備えることを特徴とする高血圧症評価システム。
【請求項2】
前記評価手段は、前記スペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長、及び補間波長として選択し、前記正規化波長と前記評価波長、及び補間波長との間において、前記正規化波長と前記評価波長、及び補間波長との分光強度の差に基づいて前記対象者の高血圧症として評価すること
を特徴とする請求項1に記載の高血圧症評価システム。
【請求項3】
前記評価手段は、380~1000nmの波長帯に含まれる特定波長及び380~500nmの波長帯に含まれる特定波長を正規化波長とし、特定波長及び500~600nmの波長帯に含まれる特定波長を評価波長とし、特定波長及び600~1000nmの波長帯に含まれる特定波長を補間波長として選択すること
を特徴とする請求項2に記載の高血圧症評価システム。
【請求項4】
前記評価手段は、予め取得された参照用スペクトル画像と、前記スペクトル画像から検出される脈波情報と、高血圧症の評価とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を前記参照用スペクトル画像、及び前記脈波情報とし、出力を前記高血圧症の評価として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記皮膚に含まれる高血圧症を評価すること
を特徴とする請求項1に記載の高血圧症評価システム。
【請求項5】
前記スペクトル画像取得手段は、前記取得手段により取得された画像から、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した前記波長を示す前記スペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の高血圧症評価システム。
【請求項6】
前記スペクトル画像取得手段は、予め取得された参照用画像と皮膚を示すスペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用画像とし、出力をスペクトル画像として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、前記取得手段により取得された画像に基づいて、前記皮膚を示すスペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の高血圧症評価システム。
【請求項7】
前記取得手段は、白板を撮像した白板画像をさらに取得し、前記スペクトル画像取得手段は、前記取得手段により取得された前記白板画像に対する前記画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得すること
を特徴とする請求項1~4の何れか1項に記載の高血圧症評価システム。
【請求項8】
前記取得手段は、前記白板画像を撮像したときの撮像条件を示す撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、前記画像を補正すること
を特徴とする請求項7に記載の高血圧症評価システム。
【請求項9】
前記取得手段は、平滑化された画像と平滑化される前の画像に基づいて先鋭化された前記画像を取得すること
を特徴とする請求項1に記載の高血圧症評価システム。
【請求項10】
対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価方法であって、
前記対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を取得する取得ステップと、
前記取得ステップにより取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル画像取得ステップと、
前記スペクトル画像取得ステップにより取得されたスペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、前記対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量を求め、前記対象者の高血圧症を評価する評価ステップと、
をコンピュータに実行させること
を特徴とする高血圧症評価方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価システム及び高血圧症評価方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高血圧症を評価するための方法として、例えば特許文献1に開示されているハイパースペクトルまたはマルチスペクトルイメージングを使用し、ショックデータを取得する装置がある。
【0003】
特許文献1では、患者の組織上の領域から得られた皮膚の測定値を用いて、酸素送達などの情報を導き出し、様々な疾患状態に関連する生理機能を評価するが、その際、患者の皮膚の循環パターンの変化や変動により標準スペクトル画像取得、標準分類方法を実行し、全身生理機能の状態を評価するイメージングシステムなどが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2008-525158号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、血圧と脈拍(心拍)は、どちらも心臓に関わるものであり、血圧、脈拍が高い状態が続くと、健康に悪影響があるとされており、特に高血圧症の患者では、脈拍が増加するに従い、心疾患の発症や死亡のリスクが高まることが、疫学調査等により確認されており、各々に相関があることが確認されている。
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示されているイメージングシステムでは、対象者(患者)の組織上の領域から得られた皮膚の測定値を用いて、高血圧症を決定しているに過ぎず、脈拍と合わせて高血圧症を高精度に評価をするためには、従来のカフを使用した血圧測定器を対象者の皮膚に接触させ、高血圧症とは別に対象者の腕等から脈拍を測定する必要がある。このため、高血圧症を非能動的かつ非接触で高精度に評価することができないという問題点があった。また、特許文献1には、ショックデータの取得に関し、スペクトルイメージングで脈拍を認識することについては、記載も示唆もされていない。
【0007】
そこで本発明は、上述した問題に鑑みて案出されたものであり、その目的とするところは、対象者の高血圧症を非能動的かつ非接触で高精度に評価することが可能な高血圧症評価システム及び高血圧症評価方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る高血圧症評価システムは、対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価システムであって、前記対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を取得する取得手段と、前記取得手段により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル画像取得手段と、前記スペクトル画像取得手段により取得されたスペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、前記対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量を求め、前記対象者の高血圧症を評価する評価手段と、を備えることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る高血圧症評価システムは、第1発明において、前記評価手段は、前記スペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長、及び補間波長として選択し、前記正規化波長と前記評価波長、及び補間波長との間において、前記正規化波長と前記評価波長、及び補間波長との分光強度の差に基づいて前記対象者の高血圧症として評価することを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る高血圧症評価システムは、第2発明において、前記評価手段は、380~1000nmの波長帯に含まれる特定波長及び380~500nmの波長帯に含まれる特定波長を正規化波長とし、特定波長及び500~600nmの波長帯に含まれる特定波長を評価波長とし、特定波長及び600~1000nmの波長帯に含まれる特定波長を補間波長として選択することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る高血圧症評価システムは、第1発明において、前記評価手段は、予め取得された参照用スペクトル画像と、前記スペクトル画像から検出される脈波情報と、高血圧症の評価とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を前記参照用スペクトル画像、及び前記脈波情報とし、出力を前記高血圧症の評価として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、前記スペクトル取得手段により取得されたスペクトル画像に基づき、前記皮膚に含まれる高血圧症を評価することを特徴とする。
【0012】
第5発明に係る高血圧症評価システムは、第1発明~第4発明のいずれかにおいて、前記スペクトル画像取得手段は、前記取得手段により取得された画像から、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した前記波長を示す前記スペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0013】
第6発明に係る高血圧症評価システムは、第1発明~第4発明のいずれかにおいて、前記スペクトル画像取得手段は、予め取得された参照用画像と皮膚を示すスペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用画像とし、出力をスペクトル画像として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、前記取得手段により取得された画像に基づいて、前記皮膚を示すスペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0014】
第7発明に係る高血圧症評価システムは、第1発明~第4発明のいずれかにおいて、前記取得手段は、白板を撮像した白板画像をさらに取得し、前記スペクトル画像取得手段は、前記取得手段により取得された前記白板画像に対する前記画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得することを特徴とする。
【0015】
第8発明に係る高血圧症評価システムは、第7発明において、前記取得手段は、前記白板画像を撮像したときの撮像条件を示す撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、前記画像を補正することを特徴とする。
【0016】
第9発明に係る高血圧症評価システムは、第1発明において、前記取得手段は、平滑化された画像と平滑化される前の画像に基づいて先鋭化された前記画像を取得することを特徴とする。
【0017】
第10発明に係る高血圧症評価方法は、対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価方法であって、前記対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を取得する取得ステップと、前記取得ステップにより取得された画像に基づくスペクトル画像を取得するスペクトル画像取得ステップと、前記スペクトル画像取得ステップにより取得されたスペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、前記対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量を求め、前記対象者の高血圧症を評価する評価ステップと、をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
第1発明~第9発明によれば、高血圧症評価システムは、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像に基づくスペクトル画像を取得する。このため、スペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、対象者の脈波情報と特定波長の特徴量を求めることができる。これにより、対象者の高血圧症を非能動的かつ非接触で高精度に評価できることが可能となる。
【0019】
特に、第2発明によれば、正規化波長と評価波長との分光強度の差に基づいて顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚に含まれる高血圧症を評価する。これにより、撮像されたスペクトル画像の特徴を分離することができる。このため、より高精度に高血圧症を評価することができる。
【0020】
特に、第3発明によれば、評価手段は、380~1000nmの波長帯に含まれる特定波長及び380~500nmの波長帯に含まれる特定波長を正規化波長とし、特定波長及び500~600nmの波長帯に含まれる特定波長を評価波長とし、特定波長及び600~1000nmの波長帯に含まれる特定波長を補間波長として選択する。これにより、正規化波長と評価波長とをそれぞれ適した波長帯の波長を利用できるため、より高精度に評価することが可能となる。
【0021】
特に、第4発明によれば、評価モデルを用いて、スペクトル画像の特徴量に基づき、顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚に含まれる高血圧症を評価する。これにより、機械学習により高精度に高血圧症を評価することが可能となる。
【0022】
特に、第5発明によれば、画像から、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した波長を示すスペクトル画像を取得する。これにより、画像に含まれる顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚のみを抽出し、非能動的かつ非接触で取得することが可能となるため、より高精度に高血圧症の評価が可能となる。
【0023】
特に、第6発明によれば、抽出モデルを用いて、画像に基づいて、顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像を取得する。これにより、画像に含まれる顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚のみを抽出し、非能動的かつ非接触で取得することが可能となるため、より高精度に高血圧症の評価が可能となる。
【0024】
特に、第7発明によれば、白板画像に対する画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得する。これにより、白板画像を基準としてスペクトル画像を取得するため、ノイズを排除した画像を用いることが可能となる。
【0025】
特に、第8発明によれば、撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、画像を補正する。これにより、撮影時の光量等の条件を補正することが可能となり、ノイズを排除した画像を用いることが可能となる。
【0026】
特に、第9発明によれば、平滑化された画像と平滑化される前の画像に基づいて先鋭化された画像を取得する。これにより、例えば平滑化された画像と平滑化される前の画像との差分に基づいて画像を先鋭化することが可能となる。これにより、精度よく先鋭化された画像を用いることが可能となる。
【0027】
第10発明によれば、高血圧症評価方法は、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像に基づくスペクトル画像を取得する。このため、スペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、対象者の脈波情報と特定波長の特徴量を求めることができる。これにより、対象者の高血圧症を非能動的かつ非接触で高精度に評価できることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、本実施形態における高血圧症評価システムの構成の一例を示す模式図である。
図2図2は、画像の分解とスペクトル画像の抽出の一例を示す模式図である。
図3図3は、本実施形態における抽出モデルの一例を示す図である。
図4図4(a)は、本実施形態における高血圧症評価装置の構成の一例を示す模式図であり、図4(b)は、本実施形態における高血圧症評価装置の機能の一例を示す模式図である。
図5図5は、本実施形態における高血圧症評価システムの動作のフローチャートの一例を示す図である。
図6図6は、本実施形態における評価モデルの一例を示す図である。
図7図7は、波長毎のスペクトル強度の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明を適用した実施形態における高血圧症評価システムの一例について、図面を用いて説明する。
【0030】
<高血圧症評価システム100>
図1は、高血圧症評価システム100の構成の一例を示す模式図である。高血圧症評価システム100は、例えば図1に示すように、高血圧症評価装置1と、サーバ3と、撮像装置5と照明器具6とを有するユーザ端末2とが公共通信網4を介して接続される。また、高血圧症評価システム100は、公共通信網4を介することなく接続された、高血圧症評価装置1と撮像装置5とのみを備えていてもよい。
【0031】
<高血圧症評価装置1>
高血圧症評価装置1は、ユーザ端末2から出力された対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像、及びスペクトル画像に基づいて、それぞれ処理を行う。高血圧症評価装置1は、例えばパーソナルコンピュータ(PC)等の電子機器が用いられるほか、例えばスマートフォン、タブレット型端末、ウェアラブル端末、IoT(Internet of Things)デバイス等の電子機器、Raspberry Pi(登録商標)等のシングルボードコンピュータが用いられてもよく、例えば撮像装置5や照明器具6などが内蔵されてもよい。
【0032】
高血圧症評価装置1は、例えば撮像装置5から出力された顔面及び掌の少なくとも一方の画像を取得し、取得した画像に基づく、多次元のスペクトル画像を取得する。高血圧症評価装置1は、例えば取得したスペクトル画像(顔面及び掌の少なくとも一方)から特定領域の特定波長を選択し、選択した特定波長の位相差と特定波長の特徴量に基づき対象者の高血圧症を評価する。
【0033】
ここで、図2を参照して、本実施形態における対象者から取得した顔面及び掌の少なくとも一方の画像の分解とスペクトル画像の抽出の一例を説明する。図2は、画像の分解とスペクトル画像の抽出の一例を示す模式図である。
【0034】
高血圧症評価装置1は、初めに対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の画像を取得する。取得された各々の画像には、例えば図2に示すようなベクトルデータを抽出するための範囲と対象箇所(顔:No.1~12、掌:No.13~21)が予め設定される。高血圧症評価装置1は、取得した皮膚画像と紐付けて、対象箇所を割当てるようにしてもよい。
【0035】
高血圧症評価装置1は、例えば設定した対象箇所のスペクトル画像を抽出し、抽出した顔面及び掌の少なくとも一方のスペクトル画像のシグナル成分から、脈波に相当するの特定波長の検出を行なう。高血圧症評価装置1は、例えば脈波の検出は、正常高血圧者、及び早期高血圧患者などから得られたスペクトル動画データをもとに、画像処理、シグナル抽出を行うようにしてもよい。高血圧症評価装置1は、抽出した特定波長のノイズなどを除去するなどし、スペクトル画像(動画)の特定波長の画像成分から特徴量を抽出する。
【0036】
図2に示すベクトルデータを抽出するための範囲と対象箇所は、例えば対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を撮像した画像に対して設定されるほか、例えばスペクトル画像に対して設定されるようにしてもよい。また、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の各々の範囲と対象箇所からベクトルデータを抽出する際は、例えば特徴量を算出するために抽出するシグナルの強度が弱い場合(高血圧症状を特定できない、脈波・波波形を検出できない)は、顔と掌の両方の複数個所から、複数のシグナル成分を合算する等するようにしてもよい。これにより、より高精度に高血圧症の評価が可能となる。
【0037】
ここで、図3を参照して、本実施形態における取得した多次元のスペクトル画像(データ)に分解と再構築、特定波長の抽出について説明する。図3に、本実施形態における抽出モデルの一例を示す。抽出モデルは、例えば対象者の属性や高血圧症の有無、高血圧症の症状のほか、例えば図2に示すベクトルデータを抽出するための範囲と対象箇所に応じて1つまたは複数の抽出モデルが設定されるようにしてもよい。
【0038】
高血圧症評価装置1は、例えばターゲットスペクトルカメラで対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚画像を各々に撮影し、各々に撮影した皮膚のスペクトル画像を取得する。皮膚のスペクトル画像は、高血圧症評価装置1による取得時は、例えば多次元スペクトルデータであるため、スペクトル画像に含まれる複数の特定波長を、ある特定の画像成分に分解し、正常高血圧者、及び早期高血圧患者から得られたスペクトル動画データに基づいてノイズ除去などの画像処理し、その結果から再構成を行いシグナル(特定波長)の抽出を行なう。
【0039】
その後に高血圧症評価装置1は、高血圧症と相関あるシグナルの抽出を、例えば周知の行列計算、ベクトル演算、グラフ化技術、または3次元表示技術などを用いて行なうようにしてもよい。これにより、例えば可視化された正常血圧群に対して、早期であるが疾患発症リスクがある高血圧(例えば血圧が130/80mmHg以上)群を別のクラスター形成として確認することが可能となる。
【0040】
高血圧症評価装置1は、例えば取得したスペクトル画像(顔面及び掌の少なくとも一方)から特定領域の特定波長を選択し、選択した特定波長の位相差から脈波を求め、さらに特定波長の特徴量に基づき対象者の高血圧症を評価ことが可能となる。
【0041】
また高血圧症評価装置1は、初めに対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の画像を取得する。取得された各々の画像には、例えば図2に示すようなベクトルデータを抽出するための範囲と対象箇所(顔:No.1~12、掌:No.13~21)が予め設定される。高血圧症評価装置1は、取得した皮膚画像と紐付けて、対象箇所を割当てるようにしてもよい。
【0042】
次に図4を参照して、本実施形態における高血圧症評価装置1の一例を説明する。図4(a)は、本実施形態における高血圧症評価装置1の構成の一例を示す模式図であり、図4(b)は、本実施形態における高血圧症評価装置1の機能の一例を示す模式図である。
【0043】
高血圧症評価装置1は、例えば図4(a)に示すように、筐体10と、CPU(Central Processing Unit)101と、ROM(Read Only Memory)102と、RAM(Random Access Memory)103と、保存部104と、I/F105~107とを備える。CPU101と、ROM102と、RAM103と、保存部104と、I/F105~107とは、内部バス110により接続される。
【0044】
CPU101は、高血圧症評価装置1全体を制御する。ROM102は、CPU101の動作コードを格納する。RAM103は、CPU101の動作時に使用される作業領域である。保存部104は、画像やスペクトル画像、抽出モデル及び評価モデル等の各種情報が保存される。保存部104は、例えばクラウド、HDD(Hard Disk Drive)の他、SSD(Solid State Drive)やSDカード、miniSDカード等のデータ保存装置が用いられる。なお、例えば高血圧症評価装置1は、図示しないGPU(Graphics Processing Unit)を有してもよい。
【0045】
I/F105は、公共通信網4を介して各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。I/F106は、入力部108との情報の送受信を行うためのインターフェースである。入力部108として、例えばキーボードが用いられ、高血圧症評価装置1を利用する評価者や対象者等は、入力部108を介して、各種情報又は高血圧症評価装置1の制御コマンド等を入力する。I/F107は、表示部109との各種情報の送受信を行うためのインターフェースである。表示部109は、保存部104に保存された評価結果等の各種情報、または高血圧症評価装置1の処理状況等を出力する。表示部109として、ディスプレイが用いられ、例えばタッチパネル式でもよい。
【0046】
保存部104は、例えば撮像装置5から取得した画像及びスペクトル画像が記憶されるほか、スペクトル画像等に関連する情報、高血圧症の評価に用いられるアルゴリズム、抽出モデル及び評価モデル等が記憶される。
【0047】
表示部109は、各種情報を表示する。表示部109は、例えば評価結果、画像等を表示する。
【0048】
図4(b)は、高血圧症評価装置1の機能の一例を示す模式図である。高血圧症評価装置1は、取得部11と、スペクトル画像取得部12と、評価部13と、記憶部14と、出力部15と、変換部16と、抽出部17とを備える。なお、図4(b)に示した取得部11と、スペクトル画像取得部12と、評価部13と、記憶部14と、出力部15と、変換部16と、抽出部17とは、CPU101が、RAM103を作業領域として、保存部104等に保存されたプログラムを実行することにより実現され、例えば人工知能等により制御されてもよい。
【0049】
<<取得部11>>
取得部11は、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を取得する。取得部11は、例えば図2に示すとおり、ベクトルデータを抽出するための範囲と対象箇所(顔:No.1~12、掌:No.13~21)と取得した皮膚画像とを紐付けて、取得するようにしてもよい。
【0050】
取得部11は、撮像装置5が撮像した画像を、ユーザ端末2を介して取得する他、例えば高血圧症評価装置1に内蔵された撮像装置5から、画像及びスペクトル画像を取得するようにしてもよい。また、サーバ3等から公共通信網4を介して画像及びスペクトル画像を取得してもよい。なお、取得部11が各種情報を取得する頻度、及び周期は、任意である。
【0051】
さらに取得部11は、例えば白板を撮像した白板画像のほか、白板画像を撮像したときの撮像条件を示す撮像条件情報を取得し、取得した撮像条件情報に応じて、画像を補正する。取得部11は、平滑化された画像と平滑化される前の画像に基づいて先鋭化された前記画像を取得する。
【0052】
<<スペクトル画像取得部12>>
スペクトル画像取得部12は、例えば取得部11により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得し、取得したスペクトル画像の補正等の処理を行う。
【0053】
またスペクトル画像取得部12は、例えば取得部11により取得された画像から、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、波長を示すスペクトル画像を取得する。
【0054】
さらにスペクトル画像取得部12は、例えば予め取得された参照用画像と皮膚を示すスペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用画像とし、出力をスペクトル画像として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、取得部11により取得された画像に基づいて、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像を取得する。
【0055】
またスペクトル画像取得部12は、取得部11により取得された白板画像に対する画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得する。
【0056】
<<評価部13>>
評価部13は、例えばスペクトル画像取得部12により取得されたスペクトル画像の所定の波長帯に含まれる特定波長を選択し、対象者の脈波情報と特定波長の特徴量を求め、対象者の高血圧症を評価する。
【0057】
また評価部13は、例えばスペクトル画像取得部12により取得されたスペクトル画像に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長、及び補間波長として選択し、正規化波長と評価波長、及び補間波長との間において、正規化波長と評価波長、及び補間波長との分光強度の差に基づいて対象者の高血圧症として評価する。
【0058】
また評価部13は、例えば380~1000nmの波長帯に含まれる特定波長及び380~500nmの波長帯に含まれる特定波長を正規化波長とし、特定波長及び500~600nmの波長帯に含まれる特定波長を評価波長とし、特定波長及び600~1000nmの波長帯に含まれる特定波長を補間波長として選択し、評価を行う。
【0059】
さらに評価部13は、例えば予め取得された参照用スペクトル画像と高血圧症の評価とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用スペクトル画像とし、出力を高血圧症の評価として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、スペクトル画像取得部12により取得されたスペクトル画像の特徴量に基づき、対象者の高血圧症を評価する。
【0060】
<<記憶部14>>
記憶部14は、保存部104に保存された各種情報を必要に応じて取り出す。記憶部14は、取得部11と、スペクトル画像取得部12と、評価部13と、変換部16と、抽出部17とにより取得又は出力された各種情報を、保存部104に保存する。
【0061】
<<出力部15>>
出力部15は、各種情報を出力する。出力部15は、I/F107を介して表示部109に評価結果を送信する。
【0062】
<<変換部16>>
変換部16は、スペクトル画像取得部12により処理された画像に基づいて、スペクトル画像を取得する。かかる場合、例えば変換部16は、画像を、画像に含まれるスペクトルを示すスペクトル画像に変換する。
【0063】
また変換部16は、例えば取得したスペクトル画像に対して、各種の画像処理、シグナル抽出のほか、例えばシグナル強度の変更、ノイズ除去、などを行うようにしてもよい。
【0064】
<<抽出部17>>
抽出部17は、変換部16により取得されたスペクトル画像から、顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像を抽出する。
【0065】
<ユーザ端末2>
ユーザ端末2は、例えばデータベースを生成する電子機器を示してもよい。ユーザ端末2は、例えばパーソナルコンピュータや、タブレット端末等の電子機器が用いられる。ユーザ端末2は、例えば高血圧症評価装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよい。ユーザ端末2は、対象者に高血圧症の評価結果を提示できる図示しないディスプレイ、又はスピーカを備えていてもよい。
【0066】
<サーバ3>
サーバ3は、高血圧症評価装置1及びユーザ端末2から送信された画像等の各種データを記憶する記憶媒体である。また、サーバ3は、必要に応じて記憶した各種データを高血圧症評価装置1及びユーザ端末2に送信する。サーバ3は、例えば高血圧症評価装置1の備える機能のうち、少なくとも一部の機能を備えてもよく、例えば高血圧症評価装置1の代わりに少なくとも一部の処理を行ってもよい。
【0067】
<公共通信網4>
公共通信網4は、例えば高血圧症評価装置1が通信回路を介して接続されるインターネット網等である。公共通信網4は、いわゆる光ファイバ通信網で構成されてもよい。また、公共通信網4は、有線通信網のほか、無線通信網等の公知の通信技術で実現してもよい。ユーザ端末2は、例えば高血圧症評価システム100を用いたサービスの対象者等が保有し、公共通信網4を介して高血圧症評価装置1と接続される。
【0068】
<撮像装置5>
撮像装置5は、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を撮像して画像及びスペクトル画像を生成する公知のカメラである。撮像装置5として、例えばRGBカメラ、マルチスペクトルカメラ、ターゲットスペクトルカメラ、ハイパースペクトルカメラ等が用いられてもよい。撮像装置5は、例えば動画を撮影するビデオカメラであってもよく、高血圧症評価装置1に内蔵されてもよい。
【0069】
撮像装置5は、例えばスペクトルビデオカメラの場合は、例えば撮像された動画の一部からスペクトル画像が抽出されてもよい。撮像装置5は、撮像した画像をユーザ端末2に出力する。また、撮像装置5は、ユーザ端末2を介することなく、公共通信網4を介して、高血圧症評価装置1に撮像した画像を出力してもよい。
【0070】
<照明器具6>
照明器具6は、撮像装置5による対象者(被検者、患者など)の顔面及び掌の少なくとも一方の画像を撮像する際に、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方(顔面、手の甲、または手の内側)を照らす任意の照明器具である。
【0071】
(実施形態:高血圧症評価システム100の動作)
次に、本実施形態における高血圧症評価システム100の動作の一例について説明する。図5は、本実施形態における高血圧症評価システム100の動作の一例を示すフローチャートである。
【0072】
まず、ステップS110において、取得部11は、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の画像を取得する。かかる場合、例えば撮像装置5により撮像された画像を、公共通信網4を介して取得してもよい。また、撮像装置5により、画像を撮像するとき、照明器具6を用いて対象者の顔面及び掌の少なくとも一方に光を照射してもよいがこの限りではなく、照明器具6を用いることなく画像を撮像してもよい。また、例えばサーバ3に記憶されている顔面及び掌の少なくとも一方の画像を、公共通信網4を介して取得してもよい。
【0073】
取得部11は、撮像装置5により撮像された画像を、I/F105を介して取得してもよい。取得部11は、例えば記憶部14を介して、画像を保存部104に保存する。
【0074】
次に、ステップS120において、スペクトル画像取得部12は、ステップS110において、取得部11により取得された画像に基づくスペクトル画像を取得する。スペクトル画像取得部12は、取得された画像に補正等の前処理を行う。スペクトル画像取得部12は、例えば画像を平滑化し、平滑化された画像と平滑化される前の画像に基づいて、画像を先鋭化してもよい。かかる場合、まずスペクトル画像取得部12は、例えばミディアンフィルタ、ガウシアンフィルタ、移動平均、Savitzky-Golay法等を用いて、画像を平滑化する。
【0075】
スペクトル画像取得部12は、例えば取得部11により取得された顔面の画像のスペクトルデータから、特徴量としてRGB画素のGreen成分(G成分)のシグナルを特定成分として取り出し、取り出したG成分のシグナルを対象に前処理を行なうようにしてもよい。また、例えば取得部11により取得された掌の画像のスペクトルデータから、特徴量としてRGB画素のRed成分(R成分)のシグナルを特定成分として取り出し、取り出したG成分のシグナルを対象に脈波の波形を顕在化、先鋭化させる前処理を行なうようにしてもよい。スペクトル画像取得部12は、取得した多次元のスペクトル画像(データ)を可視化、グラフ化する際に、例えばUMAP(Uniform Manifold Approximation and Projection)、MATLAB(登録商標)などの数値解析ソフトウェアを用いて、ある特定成分ごとにクラスタリング解析を行なうようにしてもよい。なお、特定成分として取り出すシグナルは、高血圧症、脈波を顕在化、先鋭化できる成分であれば、波長、強度、時間などは、対象者の特性に基づいて、後述する顔及び掌の取得範囲、対象から適宜に取得するようにしてもよい。
【0076】
次にスペクトル画像取得部12は、例えばラプラシアンフィルタ(2階微分)、アンシャープ方式を用いて、画像を先鋭化する。かかる場合、スペクトル画像取得部12は、例えば平滑化された画像と平滑化される前の画像との差分を算出し、差分を大きくするように画像を先鋭化する。平滑化は、画像をぼかすことであり、例えば画像の画素値の変化を小さくする処理である。先鋭化は、例えば画像の画素値の変化を大きくする処理である。
【0077】
次に、ステップS130において、評価部13は、所定の波長帯に含まれる特定波長を選択する。評価部13が選択する特定波長は、例えば変換部16により変換された特定波長である。変換部16は、例えば白板を撮像した白板画像に対する画像の相対反射率に基づくスペクトル画像を取得し、スペクトル画像の変換を行う。白板は、例えば一定の反射率を要する基準板であり、これにより照明光源の変動によらず、高血圧症およびその他構成物の相対反射率を算出し、比較する。
【0078】
また、評価部13は、所定の波長帯に含まれる特定波長を選択する場合に、変換部16は、白板を撮像するときの撮像するときの条件である撮像条件と、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を撮像するときの撮像条件とに基づいて、適宜に画像を補正されたスペクトル画像に基づく特定波長を取得するようにしてもよい。撮像条件は、例えば撮像するときのゲイン、露光時間、明るさ等である。変換部16は、例えば白板画像を撮像するときの照明器具6の光強度と、顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の画像を撮像するときの照明器具6の光強度の差に基づいて、画像のゲイン及び露光時間を補正するようにしてもよい。
【0079】
次に、ステップS140において、評価部13は、対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量を求める。対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量は、例えば変換部16により変換された特定波長の位相差、高血圧症を示す特定波長との相関(例えば血圧が130/80mmHg以上)により求められる。
【0080】
また、評価部13は、ステップS130において変換部16により変換され、抽出部17により抽出されたスペクトル画像から顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像に基づいて対象者の脈波情報と前記特定波長の特徴量を求める。
【0081】
ここで、抽出部17は、例えば予め保存部104(データベース)を参照し、登録された対象者の性別、年齢、人種、疾病・通院歴情報、その他の各種の対象者に関する情報に基づいて(図示せず)、対象者の高血圧症や脈波を特定するようなスペクトル画像を抽出するようにしてもよい。
【0082】
例えば抽出部17は、画像から、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の波長を示す基準波長との差分が閾値以下となる波長を抽出し、抽出した波長を示すスペクトル画像を取得する。例えば抽出部17は、SAM(Spectral Angle Mapper)法等を用いて、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の波長を示す基準波長と近似するスペクトルを抽出する。基準波長は、例えば380~1000nmの波長範囲内から選択した任意の波長である。これにより、画像に含まれる顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚のみを抽出し、非能動的かつ非接触で取得することが可能となる。
【0083】
また、ステップS140において、抽出部17は、予め取得された参照用画像と対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を顔面及び掌の少なくとも一方のスペクトル画像とし、出力を高血圧症であるか否かを示す参照情報として、機械学習により生成された抽出モデルを用いて、ステップS110により取得された対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の画像に基づいて、前処理を行った後に高血圧症または脈波を示すスペクトル画像を抽出してもよい。
【0084】
ここで図6を参照し、本実施形態における抽出モデルの一例を説明する。例えば図6に示すように、抽出モデルの生成方法は、例えばニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて、抽出モデルを生成してもよい。抽出モデルは、例えばCNN(Convolution Neural Network)等のニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて生成されるほか、任意のモデルが用いられてもよい。
【0085】
かかる場合、抽出モデルには、例えば図6のように、入力データである顔面及び掌の少なくとも一方のスペクトル画像と出力データである高血圧症であるか否かを示す参照情報との間における連関度を有する連関性が記憶される。連関度は、入力データと出力データとの繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど各データの繋がりが強いと判断することができる。連関度は、例えば百分率等の3値以上又は3段階以上で示されるほか、2値又は2段階で示されてもよい。また、参照用情報は、予め取得した学習データに用いるための顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を含む画像である。
【0086】
また、顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を含むスペクトル画像は、ステップS140と同様の方法で取得した顔面及び掌の少なくとも一方の脈波の皮膚をスペクトル画像であってもよい。顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像は、例えば顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を含むスペクトル画像から、SAM法等を用いて、予め取得された顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚の脈波の波長を示す基準波長と近似するスペクトルを抽出したスペクトル画像であってもよい。
【0087】
例えば連関性は、複数の入力データ、対、複数の出力データの間における繋がりの度合いにより構築される。連関性は、機械学習の過程で適宜更新され、例えば複数の入力データ、及び複数の出力データに基づいて最適化された関数を用いた分類器を示す。なお、連関性は、例えば各データの間における繋がりの度合いを示す複数の連関度を有してもよい。連関度は、例えばデータベースがニューラルネットワークで構築される場合、重み変数に対応させることができる。
【0088】
また連関性は、例えば図6に示すように、複数の入力データと、複数の出力データとの間における繋がりの度合いを示してもよい。連関性は、例えば各入力データと、各出力データとをそれぞれ紐づける複数の連関度を有する。連関度は、例えば百分率、10段階、又は5段階等の3段階以上で示され、例えば線の特徴(例えば太さ等)で示される。例えば、入力データに含まれる「スペクトル画像A」は、出力データに含まれる「参照情報A」との間の連関度AA「73%」を示し、出力データに含まれる「参照情報B」との間の連関度AB「12%」を示す。すなわち、「連関度」は、各データ間における繋がりの度合いを示しており、例えば連関度が高いほど、各データの繋がりが強いことを示す。
【0089】
このような図5に示す3段階以上の連関度を予め取得しておく。つまり実際の解の判別を行う上で、入力データと、出力データとの何れが採用、評価されたか、過去のデータセットを蓄積しておき、これらを分析、解析することで図5に示す連関度を作り上げておく。
【0090】
また、この連関度は、人工知能におけるニューラルネットワークのノードで構成されるものであってもよい。即ち、このニューラルネットワークのノードが出力に対する重み付け係数が、上述した連関度に対応することとなる。またニューラルネットワークに限らず、人工知能を構成するあらゆる意思決定因子で構成されるものであってもよい。
【0091】
また、抽出モデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0092】
このような連関度が、人工知能でいうところの学習済みデータとなる。このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから新たに画像から皮膚を示すスペクトル画像の推定を行うこととなる。かかる場合には、ステップS120により処理された画像に対する皮膚を示すスペクトル画像を新たに取得する。推定の際には、例えば予め取得した図5に示す連関度を参照する。例えば、新たに取得した画像が「スペクトル画像A」と同一かこれに類似するものである場合には、連関度を介して「参照情報A」との間の連関度AA「73%」、「スペクトル画像B」との間の連関度AB「12%」で関連付けられている。この場合には、連関度の最も高い「スペクトル画像A」を最適解として選択する。但し、最も連関度の高いものを最適解として選択することは必須ではなく、連関度は低いものの連関性そのものは認められる「スペクトル画像B」を最適解として選択するようにしてもよい。また、これ以外に矢印が繋がっていない出力解を選択してもよいことは勿論であり、連関度に基づくものであれば、その他いかなる優先順位で選択されるものであってもよい。
【0093】
このような連関度を参照することにより、画像が、入力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができる。
【0094】
次に、ステップS150において、評価部13は、ステップS140により抽出された皮膚を示すスペクトル画像に基づいて、対象者の顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚に含まれる高血圧症を評価する。例えば評価部13は、顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚を示すスペクトル画像の特徴量に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長として選択し、正規化波長と評価波長との間において、正規化波長と評価波長との分光強度の差に基づいて顔面及び掌の少なくとも一方の皮膚に含まれる高血圧症を評価する。正規化波長は、例えば光のムラや影等、条件が異なっていた場合においても、それらの影響を軽減して、高血圧症を評価するために正規化される対象となる波長である。評価波長は、正規化波長を正規化するための評価用の波長である。
【0095】
図7は、スペクトル画像が示す顔(各線上)と掌(各線下)の複数のスペクトルグラフである。図7は、縦軸を光の強度、横軸を波長[nm]とするグラフである。複数のスペクトルグラフの実線、破線の各々は、例えば撮像された各々の画像毎のスペクトルに対応する。評価部13は、例えば380~1000nmの波長帯に含まれる特定波長及び380~500nmの波長帯に含まれる特定波長を正規化波長(例えば、a1:顔面、b1:掌)とし、特定波長及び500~600nmの波長帯に含まれる特定波長を評価波長(例えば、a:顔面、b:掌)とし、特定波長及び600~1000nmの波長帯に含まれる特定波長を補間波長(例えば、a2:顔面、b2:掌)として選択するとしてもよい。
【0096】
評価部13は、このようなスペクトルグラフに含まれる波長を特定波長とし、正規化波長、及び評価波長として選択する。評価部13は、各スペクトルグラフ間のスペクトル強度の差分値が最も大きくなる波長を特定波長としてもよい。また、評価部13は、各スペクトルグラフ上で凸のピークが形成されている特異点を特定波長として特定するようにしてもよい。また、評価部13は、回帰分析、総当たり解析、機械学習等を用いた学習済みモデルを用いた解析により、特定波長を選択してもよい。
【0097】
ここで、例えば正規化波長及び評価波長は、1点で特定してもよいし、複数を特定してもよい。また、これらの正規化波長及び評価波長を中心とした波長範囲を設定するようにしてもよい。波長範囲は、例えば正規化波長及び評価波長の差が±10nmとなる波長幅等のように、予め設定した所定の波長範囲で構成されてもよい。このため、仮に正規化波長が400nmであり、波長範囲が±10nmであれば、実際にスペクトルデータを評価する範囲は、390~410nmとなる。かかる場合、正規化波長及び評価波長の決め方としては、例えば各波長の範囲の中心の波長を特定波長としてもよい。
【0098】
次に、評価部13は、選択された正規化波長と評価波長との間において、正規化波長と評価波長との分光強度の差により高血圧症の量を示す高血圧症レベルを算出し、高血圧症を評価する。
【0099】
評価部13は、例えば正規化波長と評価波長との分光強度の差によるスペクトル変化により高血圧症レベルを算出する。かかる場合、正規化波長と評価波長との分光強度の和で正規化することにより、例えば光のムラや影等、条件が異なっていた場合においても、それらの影響を軽減して、高血圧症レベルを比較可能にすることができる。これらの高血圧症レベルの算出は、例えば公知のスペクトル計測手法、スペクトル解析技法(例えば「NDSI:normalized difference spectral index、正規化分光反射指数」)等により次式により求める。「Iλ」は、例えば「λnm」の分光強度となり、正規化波長は「λ2」、評価波長は「λ1」として求められる。
【数1】
【0100】
評価部13は、例えばスペクトル画像の評価結果に基づいて、部位ごとのピクセルの分布から高血圧症レベルを付与する。また、高血圧症レベルとして、例えば面積当たりの高血圧症の量に合わせ、レベル1~5等の具体的な高血圧症の程度を示すようにしてもよい。
【0101】
評価部13は、例えば保存部104に保存された出力用フォーマット等の形式データを用いて、評価結果を生成する。評価部13は、例えば記憶部14を介して、評価結果を保存部104に保存する。
【0102】
また、ステップS150において、評価部13は、予め取得された一対の参照用スペクトル画像と高血圧症の評価とからなるデータセットを学習データとして用い、入力を参照用スペクトル画像とし、出力を高血圧症の評価として、機械学習により生成された評価モデルを用いて、スペクトル画像の特徴量に基づき、皮膚に含まれる高血圧症を評価してもよい。参照用スペクトル画像は、評価モデルの学習データとして用いるスペクトル画像であり、例えば予め取得された皮膚を示すスペクトル画像であるが、これに限らず、皮膚を示すスペクトルを含む任意の画像を用いてもよい。
【0103】
評価部13は、高血圧症の評価を、例えば高血圧症を示すスペクトルである高血圧症スペクトルを示すスペクトル画像である。また、高血圧症の評価は、例えば高血圧症レベルであってもよい。また、高血圧症の評価は、ステップS150と同様の方法で取得した高血圧症の評価の結果又は高血圧症を示すスペクトル画像であってもよい。つまり高血圧症の評価は、スペクトル画像の特徴量に基づき、所定の波長範囲に含まれる特定波長を正規化波長とし、所定の波長範囲に含まれる特定波長を評価波長として選択し、正規化波長と評価波長との間において、正規化波長と評価波長との分光強度の差により高血圧症レベルを算出し、算出した高血圧症レベルに基づいて、取得された高血圧症を示すスペクトル画像であってもよい。
【0104】
評価モデルの生成方法として、例えばニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて、評価モデルを生成してもよい。評価モデルは、例えばCNN(Convolution Neural Network)等のニューラルネットワークをモデルとした機械学習を用いて生成されるほか、任意のモデルが用いられてもよい。
【0105】
かかる場合、評価モデルには、例えば図7のように、入力データである参照用スペクトル画像と出力データである高血圧症の評価との間における連関度を有する連関性が記憶される。
【0106】
また、評価モデルは、入力データと出力データとの間に少なくとも1以上の隠れ層が設けられ、機械学習させるようにしてもよい。入力データ又は隠れ層データの何れか一方又は両方において上述した連関度が設定され、これが各データの重み付けとなり、これに基づいて出力の選択が行われる。そして、この連関度がある閾値を超えた場合に、その出力を選択するようにしてもよい。
【0107】
このような学習済みデータを作った後に、実際にこれから新たにスペクトル画像から高血圧症の評価の推定を行うこととなる。かかる場合には、ステップS140において抽出したスペクトル画像に対する高血圧症の評価を新たに取得する。
【0108】
このような連関度を参照することにより、スペクトル画像が、入力データと同一又は類似である場合のほか、非類似である場合においても、入力データに適した出力データを定量的に選択することができる。
【0109】
次に、出力部15により評価結果が出力される。出力部15は、評価結果を表示部109等に出力する。また、出力部15は、公共通信網4を介して、評価結果をユーザ端末2に出力してもよい。
【0110】
これにより、本実施形態における高血圧症評価装置1の動作が終了する。これにより、高血圧症を非能動的かつ非接触で高精度に評価できることが可能となる。
【0111】
また、本実施形態によれば、対象者の高血圧症を評価する高血圧症評価方法は、取得手段S110を行なう取得ステップ、スペクトル画像取得手段S120を行なうスペクトル画像取得ステップ、評価手段S130を行なう評価ステップと、をコンピュータに実行させることにより提供することができる。
【0112】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0113】
1 :高血圧症評価装置
2 :ユーザ端末
3 :サーバ
4 :公共通信網
5 :撮像装置
6 :照明器具
10 :筐体
11 :取得部
12 :スペクトル画像取得部
13 :評価部
14 :記憶部
15 :出力部
16 :変換部
17 :抽出部
100 :高血圧症評価システム
101 :CPU
102 :ROM
103 :RAM
104 :保存部
105 :I/F
106 :I/F
107 :I/F
108 :入力部
109 :表示部
110 :内部バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7