IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特開2024-52274組成物、転写フィルム、積層体の製造方法、硬化膜及びデバイス
<>
  • 特開-組成物、転写フィルム、積層体の製造方法、硬化膜及びデバイス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052274
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】組成物、転写フィルム、積層体の製造方法、硬化膜及びデバイス
(51)【国際特許分類】
   C08L 33/14 20060101AFI20240404BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240404BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20240404BHJP
   G03F 7/033 20060101ALI20240404BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20240404BHJP
   C08F 220/36 20060101ALI20240404BHJP
   C08F 265/06 20060101ALI20240404BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L33/14
G03F7/004 512
G03F7/075 521
G03F7/033
C08L101/00
C08F220/36
C08F265/06
H05K1/03 610H
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158872
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】有年 陽平
(72)【発明者】
【氏名】山口 圭吾
【テーマコード(参考)】
2H225
4J002
4J026
4J100
【Fターム(参考)】
2H225AC31
2H225AC32
2H225AC36
2H225AC37
2H225AC44
2H225AC46
2H225AC49
2H225AC57
2H225AD02
2H225AD06
2H225AE08P
2H225AM10P
2H225AM22N
2H225AM22P
2H225AM26P
2H225AM32N
2H225AM66N
2H225AM86N
2H225AN03P
2H225AN12N
2H225AN39P
2H225AN47P
2H225AN60N
2H225AN62N
2H225AN82P
2H225AN87P
2H225AP01N
2H225AP08N
2H225BA01N
2H225BA01P
2H225BA32P
2H225BA33N
2H225CA13
2H225CA14
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
4J002AA00X
4J002AA01X
4J002BC02X
4J002BG01X
4J002BG04X
4J002BG05X
4J002BG07W
4J002BG09X
4J002CC03X
4J002CD00X
4J002CD20X
4J002CF01X
4J002CK02X
4J002CL00X
4J002GP03
4J002GQ00
4J026AA47
4J026AC23
4J026AC27
4J026BA28
4J026BA50
4J026DA02
4J026DA08
4J026DA15
4J026DB06
4J026DB32
4J026DB36
4J026FA07
4J026FA09
4J026GA06
4J026GA07
4J100AL08P
4J100AL08Q
4J100BA02P
4J100BA03P
4J100BA76Q
4J100BA81Q
4J100CA04
4J100DA01
4J100FA19
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られる組成物、転写フィルム、積層体の製造方法、硬化膜及びデバイスの提供。
【解決手段】バインダーポリマー、重合性化合物、重合体(X)及び溶剤を含み、重合体(X)が、所定の構成単位を含む組成物、転写フィルム、積層体の製造方法、硬化膜及びデバイス。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダーポリマー、重合性化合物、重合体(X)及び溶剤を含み、
前記重合体(X)が、下記一般式(A-1)又は下記一般式(A-2)で表される構成単位αと、下記一般式(B)で表される構成単位βと、を含む組成物。
【化1】

(一般式(A-1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、lは5~100の整数を表す。
一般式(A-2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表し、Lはトリメチルシリル基又はトリス(トリメチルシロキシ)シリル基を表す。
一般式(B)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表し、mは1~100の整数を表し、nは1~4の整数を表す。)
【請求項2】
前記構成単位αと、前記構成単位βと、の質量比が、5:95~95:5である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記重合体(X)が、前記一般式(A-1)で表される構成単位と、前記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体(X-1)、及び前記一般式(A-2)で表される構成単位と、前記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体(X-2)を含む請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記重合体(X-1)と、前記重合体(X-2)と、の質量比が、5:95~95:5である請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記重合体(X-1)と、前記重合体(X-2)と、の質量比が、10:90~50:50である請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
組成物全体の質量に対する前記重合体(X)の含有量が、0.05質量%を超え1.5質量%未満である請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記一般式(A-1)中、lが5~50の整数である請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
仮支持体と、感光性組成物層と、をこの順に有し、
前記感光性組成物層が、請求項1~請求項7のいずれか1項に記載の組成物を用いてなる層である転写フィルム。
【請求項9】
請求項8に記載の転写フィルムの前記仮支持体とは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせ、前記基板、前記導電層、前記感光性組成物層、及び、前記仮支持体をこの順に有する感光性組成物層付き基板を得る貼合工程と、
前記感光性組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された前記感光性組成物層を現像して、前記導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、感光性組成物層付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、を有する、積層体の製造方法。
【請求項10】
請求項8に記載の転写フィルムの前記感光性組成物層の少なくとも一部を硬化して得られる硬化膜。
【請求項11】
請求項10に記載の硬化膜を有するデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、組成物、転写フィルム、積層体の製造方法、硬化膜及びデバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
フォトリソグラフィによって樹脂パターンを形成するために感光性の組成物が使用される。
例えば、特許文献1には、「樹脂、重合性化合物、重合開始剤及び式(1)で表される化合物を含み、樹脂が、不飽和カルボン酸及び不飽和カルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種に由来する構造単位と、炭素数2~4の環状エーテル構造及びエチレン性不飽和結合を有する単量体に由来する構造単位とを有する共重合体を含む樹脂であり、重合開始剤が、O-アシルオキシム化合物を含む重合開始剤であり、式(1)で表される化合物の含有量が、樹脂100質量部に対して、0.25質量部以上3質量部以下である感光性樹脂組成物。」が提案されている。
【0003】
【化1】
【0004】
式(1)中、A~Aは、互いに独立に、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2014-041183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
感光性の組成物を層状に塗布し、硬化することで硬化膜とすることがある。そして当該硬化膜はパターン形成用に使用される。パターン形成用の硬化膜は、パターン形成の正確性を向上する観点から、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ないことが好ましい。
【0007】
本開示の一実施形態が解決しようとする課題は、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られる組成物を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られる転写フィルムを提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜を有する積層体の製造方法を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜を提供することである。
本開示の他の一実施形態が解決しようとする課題は、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜を有するデバイスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するための手段には、以下の手段が含まれる。
<1> バインダーポリマー、重合性化合物、重合体(X)及び溶剤を含み、
上記重合体(X)が、下記一般式(A-1)又は下記一般式(A-2)で表される構成単位αと、下記一般式(B)で表される構成単位βと、を含む組成物。
【0009】
【化2】
【0010】
一般式(A-1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、lは5~100の整数を表す。
一般式(A-2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表し、Lはトリメチルシリル基又はトリス(トリメチルシロキシ)シリル基を表す。
一般式(B)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表し、mは1~100の整数を表し、nは1~4の整数を表す。
<2> 上記構成単位αと、上記構成単位βと、の質量比が、5:95~95:5である<1>に記載の組成物。
<3> 上記重合体(X)が、上記一般式(A-1)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体(X-1)及び上記一般式(A-2)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体(X-2)を含む<1>又は<2>に記載の組成物。
<4> 上記重合体(X-1)と、上記重合体(X-2)と、の質量比が、5:95~95:5である<1>~<3>のいずれか1つに記載の組成物。
<5> 上記重合体(X-1)と、上記重合体(X-2)と、の質量比が、10:90~50:50である<1>~<4>のいずれか1つに記載の組成物。
<6> 組成物全体の質量に対する上記重合体(X)の含有量が、0.05質量%を超え1.5質量%未満である<1>~<5>のいずれか1つに記載の組成物。
<7> 上記一般式(A-1)中、lが5~50の整数である<1>~<6>のいずれか1つに記載の組成物。
<8> 仮支持体と、感光性組成物層と、をこの順に有し、
上記感光性組成物層が、<1>~<7>のいずれか1つに記載の組成物を用いてなる層である転写フィルム。
<9> <8>に記載の転写フィルムの上記仮支持体とは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせ、上記基板、上記導電層、上記感光性組成物層、及び、上記仮支持体をこの順に有する感光性組成物層付き基板を得る貼合工程と、
上記感光性組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された上記感光性組成物層を現像して、上記導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、感光性組成物層付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、を有する、積層体の製造方法。
<10> <8>に記載の転写フィルムの上記感光性組成物層の少なくとも一部を硬化して得られる硬化膜。
<11> <10>に記載の硬化膜を有するデバイス。
【発明の効果】
【0011】
本開示の一実施形態によれば、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られる組成物を提供することである。
本開示の他の一実施形態によれば、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られる転写フィルムを提供することである。
本開示の他の一実施形態によれば、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜を有する積層体の製造方法を提供することである。
本開示の他の一実施形態によれば、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜を提供することである。
本開示の他の一実施形態によれば、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜を有するデバイスを提供することである。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本開示に係る転写フィルムの層構成の一例を示す概略部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の一例である実施形態について説明する。これらの説明および実施例は、実施形態を例示するものであり、発明の範囲を制限するものではない。
本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、一つの数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0014】
各成分は該当する物質を複数種含んでいてもよい。
組成物中の各成分の量について言及する場合、組成物中に各成分に該当する物質が複数種存在する場合には、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数種の物質の合計量を意味する。
「工程」とは、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の作用が達成されれば、本用語に含まれる。
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数
値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0015】
本明細書において、特段の断りのない限り、重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、カラムとして、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、若しくは、TSKgel G2000HxL(いずれも東ソー株式会社製の商品名)、溶離液としてTHF(テトラヒドロフラン)、検出器として示差屈折計、及び、標準物質としてポリスチレンを使用し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により測定した標準物質のポリスチレンを用いて換算した値である。
【0016】
<組成物>
本実施形態に係る組成物は、バインダーポリマー、重合性化合物、重合体(X)及び溶剤を含み、上記重合体(X)が、上記一般式(A-1)又は上記一般式(A-2)で表される構成単位αと、上記一般式(B)で表される構成単位βと、を含む。
【0017】
本実施形態に係る組成物は、上記構成により、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られる。その理由は、次の通り推測される。
【0018】
バインダーポリマー、重合性化合物、重合体(X)及び溶剤を含む組成物において、重合体(X)が、上記一般式(A-1)又は上記一般式(A-2)で表される構成単位αと、上記一般式(B)で表される構成単位βと、を含むことで、組成物を塗布して得られる塗膜の厚みが均一になりやすく、かつ、塗膜中に気泡が含まれにくくなる。そのため、当該塗膜を硬化して得られる硬化膜の厚みのムラ及び膜の欠陥の発生が抑制される。
【0019】
(バインダーポリマー)
本開示に係る組成物はバインダーポリマーを含む。
バインダーポリマーとしては、例えば、(メタ)アクリル樹脂、スチレン樹脂、エポキシ樹脂、アミド樹脂、アミドエポキシ樹脂、アルキド樹脂、フェノール樹脂、エステル樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸との反応で得られるエポキシアクリレート樹脂、及び、エポキシアクリレート樹脂と酸無水物との反応で得られる酸変性エポキシアクリレート樹脂が挙げられる。
【0020】
バインダーポリマーの好適態様の一つとして、アルカリ現像性及びフィルム形成性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂が挙げられる。
なお、本明細書において、(メタ)アクリル樹脂とは、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位を有する樹脂を意味する。(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、50質量%以上が好ましく、70質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位のみで構成されていてもよく、(メタ)アクリル化合物以外の重合性単量体に由来する構成単位を有していてもよい。すなわち、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位の含有量の上限は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、100質量%以下である。
【0021】
(メタ)アクリル化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミド、及び、(メタ)アクリロニトリルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸テトラヒドロフルフリルエステル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルエステル、(メタ)アクリル酸グリシジルエステル、(メタ)アクリル酸ベンジルエステル、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、及び、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレートが挙げられ、(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましい。
(メタ)アクリルアミドとしては、例えば、ジアセトンアクリルアミド等のアクリルアミドが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリル酸アルキルエステルのアルキル基としては、直鎖状でも分岐を有していてもよい。具体例としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ペンチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸ヘプチル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2-エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、及び、(メタ)アクリル酸ドデシル等の炭素数が1~12のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが挙げられる。
(メタ)アクリル酸エステルとしては、炭素数1~4のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルが好ましく、(メタ)アクリル酸メチル又は(メタ)アクリル酸エチルがより好ましい。
【0023】
(メタ)アクリル樹脂は、(メタ)アクリル化合物に由来する構成単位以外の構成単位を有していてもよい。
上記構成単位を形成する重合性単量体としては、(メタ)アクリル化合物と共重合可能な(メタ)アクリル化合物以外の化合物であれば特に制限されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、及び、α-メチルスチレン等のα位又は芳香族環に置換基を有してもよいスチレン化合物、アクリロニトリル及びビニル-n-ブチルエーテル等のビニルアルコールエステル、マレイン酸、マレイン酸無水物、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、及び、マレイン酸モノイソプロピル等のマレイン酸モノエステル、フマール酸、ケイ皮酸、α-シアノケイ皮酸、イタコン酸、並びに、クロトン酸が挙げられる。
これらの重合性単量体は、1種又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0024】
また、(メタ)アクリル樹脂は、アルカリ現像性をより良好にする点から、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。酸基としては、例えば、カルボキシ基、スルホ基、リン酸基、及び、ホスホン酸基が挙げられる。
なかでも、(メタ)アクリル樹脂は、カルボキシ基を有する構成単位を有することがより好ましく、上記の(メタ)アクリル酸に由来する構成単位を有することが更に好ましい。
【0025】
(メタ)アクリル樹脂における酸基を有する構成単位(好ましくは(メタ)アクリル酸に由来する構成単位)の含有量は、現像性に優れる点で、(メタ)アクリル樹脂の全質量に対して、10質量%以上50質量%以下が好ましく、10質量%以上40質量%以下がより好ましい。
【0026】
また、(メタ)アクリル樹脂は、上述した(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有することがより好ましい。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位を有する場合、(メタ)アクリル樹脂における(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、1質量%~90質量%が好ましく、1質量%~50質量%がより好ましく、1質量%~30質量%が更に好ましい。
【0027】
(メタ)アクリル樹脂としては、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有する樹脂が好ましく、(メタ)アクリル酸に由来する構成単位及び(メタ)アクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位のみで構成されている樹脂がより好ましい。
また、(メタ)アクリル樹脂としては、メタクリル酸に由来する構成単位、メタクリル酸メチルに由来する構成単位、及び、アクリル酸エチルに由来する構成単位を有するアクリル樹脂も好ましい。
【0028】
また、(メタ)アクリル樹脂は、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位からなる群より選択される少なくとも1種を有することが好ましく、メタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の両者を有することが好ましい。
(メタ)アクリル樹脂におけるメタクリル酸に由来する構成単位及びメタクリル酸アルキルエステルに由来する構成単位の合計含有量は、(メタ)アクリル樹脂の全構成単位に対して、40質量%以上100質量%以下が好ましく、60質量%以上80質量%以下がより好ましい。
【0029】
また、バインダーポリマーの別の好適態様としては、アルカリ可溶性樹脂が挙げられる。
バインダーポリマーは、例えば、現像性の点から、酸価60mgKOH/g以上のバインダーポリマーであることが好ましい。
また、バインダーポリマーは、例えば、加熱により架橋成分と熱架橋し、強固な膜を形成しやすいという点から、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有樹脂)であることがより好ましく、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基を有する(メタ)アクリル樹脂(いわゆる、カルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂)であることが更に好ましい。
バインダーポリマーがカルボキシ基を有する樹脂であると、例えば、ブロックイソシアネート化合物等の熱架橋性化合物を添加して熱架橋することで、3次元架橋密度を高めることができる。また、カルボキシ基を有する樹脂のカルボキシ基が無水化され、疎水化すると、湿熱耐性が改善し得る。
【0030】
酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有(メタ)アクリル樹脂としては、上記酸価の条件を満たす限りにおいて、特に制限はなく、公知の(メタ)アクリル樹脂から適宜選択できる。
例えば、特開2011-095716号公報の段落[0025]に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂、特開2010-237589号公報の段落[0033]~[0052]に記載のポリマーのうち、酸価60mgKOH/g以上のカルボキシ基含有アクリル樹脂等を好ましく使用できる。
【0031】
バインダーポリマーは、芳香環構造を有することが好ましく、芳香環構造を有する構成単位を有することがより好ましい。
芳香環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、アラルキル基を有するモノマー、スチレン、及び重合可能なスチレン誘導体(例えば、メチルスチレン、ビニルトルエン、tert-ブトキシスチレン、アセトキシスチレン、4-ビニル安息香酸、スチレンダイマー、及びスチレントリマー等)が挙げられる。なかでも、アラルキル基を有するモノマー、又はスチレンが好ましい。
アラルキル基としては、置換又は非置換のフェニルアルキル基(ベンジル基を除く)、及び置換又は非置換のベンジル基等が挙げられ、置換又は非置換のベンジル基が好ましい。
【0032】
また、バインダーポリマーは、下記式(S)で表される構成単位(スチレンに由来する構成単位)を有することがより好ましい。
【0033】
【化3】
【0034】
バインダーポリマーが芳香環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~70質量%より好ましく、20質量%~60質量%が更に好ましい。
【0035】
バインダーポリマーは、脂肪族炭化水素環構造を有することが好ましい。つまり、バインダーポリマーは、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有することが好ましい。脂肪族炭化水素環構造としては単環でも多環でもよい。なかでも、バインダーポリマーは、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有することがより好ましい。
【0036】
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位における脂肪族炭化水素環構造を構成する環としては、トリシクロデカン環、シクロヘキサン環、シクロペンタン環、ノルボルナン環、及び、イソボロン環が挙げられる。
なかでも、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環が好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環(トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン環)がより好ましい。
脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を形成するモノマーとしては、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、及び、イソボルニル(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、バインダーポリマーは、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましく、上記式(S)で表される構成単位、及び、下記式(Cy)で表される構成単位を有することがより好ましい。
【0037】
【0038】
式(Cy)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、RCyは脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基を表す。
【0039】
式(Cy)におけるRは、メチル基であることが好ましい。
式(Cy)におけるRCyは、炭素数5~20の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが好ましく、炭素数6~16の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることがより好ましく、炭素数8~14の脂肪族炭化水素環構造を有する一価の基であることが更に好ましい。
また、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、シクロペンタン環構造、シクロヘキサン環構造、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造、ノルボルナン環構造、又は、イソボロン環構造であることが好ましく、シクロヘキサン環構造、又は、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることがより好ましく、テトラヒドロジシクロペンタジエン環構造であることが更に好ましい。
更に、式(Cy)のRCyにおける脂肪族炭化水素環構造は、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造であることが好ましく、2~4環の脂肪族炭化水素環が縮環した環であることがより好ましい。
更に、式(Cy)におけるRCyは、式(Cy)における-C(=O)O-の酸素原子と脂肪族炭化水素環構造とが直接結合する基、すなわち、脂肪族炭化水素環基であることが好ましく、シクロヘキシル基、又は、ジシクロペンタニル基であることがより好ましく、ジシクロペンタニル基であることが更に好ましい。
【0040】
バインダーポリマーは、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
バインダーポリマーが脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全構成単位に対して、5質量%~90質量%が好ましく、10質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~70質量%が更に好ましい。
【0041】
バインダーポリマーが芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位を有する場合、芳香環構造を有する構成単位及び脂肪族炭化水素環構造を有する構成単位の総含有量は、バインダーポリマーの全構成単位に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、20質量%~50質量%が更に好ましい。
【0042】
バインダーポリマーは、酸基を有する構成単位を有することが好ましい。
上記酸基としては、カルボキシ基、スルホ基、ホスホン酸基、及び、リン酸基が挙げられ、カルボキシ基が好ましい。
上記酸基を有する構成単位としては、下記に示す、(メタ)アクリル酸由来の構成単位が好ましく、メタクリル酸由来の構成単位がより好ましい。
【0043】
【化4】
【0044】
バインダーポリマーは、酸基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
バインダーポリマーが酸基を有する構成単位を有する場合、酸基を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全構成単位に対して、5質量%~50質量%が好ましく、5質量%~40質量%がより好ましく、10質量%~30質量%が更に好ましい。
【0045】
バインダーポリマーは、反応性基を有することが好ましく、反応性基を有する構成単位を有することがより好ましい。
反応性基としては、ラジカル重合性基が好ましく、エチレン性不飽和基がより好ましい。また、バインダーポリマーがエチレン性不飽和基を有している場合、バインダーポリマーは、側鎖にエチレン性不飽和基を有する構成単位を有することが好ましい。
本明細書において、「主鎖」とは、樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは、主鎖から枝分かれしている原子団を表す。
エチレン性不飽和基としては、アリル基又は(メタ)アクリロキシ基がより好ましい。
反応性基を有する構成単位の一例としては、下記に示すものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0046】
【化5】
【0047】
バインダーポリマーは、反応性基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上有していてもよい。
バインダーポリマーが反応性基を有する構成単位を有する場合、反応性基を有する構成単位の含有量は、バインダーポリマーの全構成単位に対して、5質量%~70質量%が好ましく、10質量%~50質量%がより好ましく、20質量%~40質量%が更に好ましい。
【0048】
反応性基をバインダーポリマーに導入する手段としては、ヒドロキシ基、カルボキシ基、第一級アミノ基、第二級アミノ基、アセトアセチル基、及び、スルホ基等の官能基に、エポキシ化合物、ブロックイソシアネート化合物、イソシアネート化合物、ビニルスルホン化合物、アルデヒド化合物、メチロール化合物、及び、カルボン酸無水物等の化合物を反応させる方法が挙げられる。
反応性基をバインダーポリマーに導入する手段の好ましい例としては、カルボキシ基を有するポリマーを重合反応により合成した後、高分子反応により、得られたポリマーのカルボキシ基の一部にグリシジル(メタ)アクリレートを反応させて、(メタ)アクリロキシ基をポリマーに導入する手段が挙げられる。この手段により、側鎖に(メタ)アクリロキシ基を有するバインダーポリマーを得ることができる。
上記重合反応は、70℃~100℃の温度条件で行うことが好ましく、80℃~90℃の温度条件で行うことがより好ましい。上記重合反応に用いる重合開始剤としては、アゾ系開始剤が好ましく、例えば、富士フイルム和光純薬(株)製のV-601(商品名)又はV-65(商品名)がより好ましい。上記高分子反応は、80℃~110℃の温度条件で行うことが好ましい。上記高分子反応においては、アンモニウム塩等の触媒を用いることが好ましい。
【0049】
バインダーポリマーとしては、以下に示すポリマーが好ましい。なお、以下に示す各構成単位の含有比率(a~d)は、後述の重量平均分子量Mwの範囲で目的に応じて適宜選択することができる。
【0050】
【化6】
【0051】
【化7】
【0052】
【化8】
【0053】
【化9】
【0054】
バインダーポリマーの重量平均分子量(Mw)は、5,000以上が好ましく、10,000以上がより好ましく、10,000~50,000が更に好ましく、15,000~30,000が特に好ましい。
【0055】
バインダーポリマーの酸価は、10mgKOH/g~200mgKOH/gが好ましく、60mgKOH/g~200mgKOH/gがより好ましく、60mgKOH/g~150mgKOH/gが更に好ましく、60mgKOH/g~110mgKOH/gが特に好ましい。
なお、バインダーポリマーの酸価は、JIS K0070:1992に記載の方法に従って、測定される値である。
【0056】
組成物は、バインダーポリマーを1種のみ含んでいてもよく、2種以上含んでいてもよい。
バインダーポリマーの含有量は、組成物全体の質量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
【0057】
(重合性化合物)
本開示に係る組成物は重合性化合物を含む。
重合性化合物は、重合性基を有する化合物である。重合性基としては、例えば、ラジカル重合性基、及び、カチオン重合性基が挙げられ、ラジカル重合性基が好ましい。
【0058】
重合性化合物は、エチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物(以下、単に「エチレン性不飽和化合物」ともいう。)を含むことが好ましい。
エチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロキシ基が好ましい。
なお、本明細書におけるエチレン性不飽和化合物は、上記バインダーポリマー以外の化合物であり、分子量5,000未満であることが好ましい。
【0059】
重合性化合物の好適態様の一つとして、下記式(M)で表される化合物(単に、「化合物M」ともいう。)が挙げられる。
-R-Q 式(M)
式(M)中、Q及びQはそれぞれ独立に、(メタ)アクリロイルオキシ基を表し、Rは鎖状構造を有する二価の連結基を表す。
【0060】
式(M)におけるQ及びQは、合成容易性の点から、Q及びQは同じ基であることが好ましい。
また、式(M)におけるQ及びQは、反応性の点から、アクリロイルオキシ基であることが好ましい。
式(M)におけるRとしては、アルキレン基、アルキレンオキシアルキレン基(-L-O-L-)、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基(-(L-O)-L-)が好ましく、炭素数2~20の炭化水素基、又は、ポリアルキレンオキシアルキレン基がより好ましく、炭素数4~20のアルキレン基が更に好ましく、炭素数6~18の直鎖アルキレン基が特に好ましい。
上記炭化水素基は、少なくとも一部に鎖状構造を有していればよく、上記鎖状構造以外の部分としては、特に制限はなく、例えば、分岐鎖状、環状、又は、炭素数1~5の直鎖状アルキレン基、アリーレン基、エーテル結合、及び、それらの組み合わせのいずれであってもよく、アルキレン基、又は、2以上のアルキレン基と1以上のアリーレン基とを組み合わせた基が好ましく、アルキレン基がより好ましく、直鎖アルキレン基が更に好ましい。
なお、上記Lは、それぞれ独立に、アルキレン基を表し、エチレン基、プロピレン基、又は、ブチレン基が好ましく、エチレン基又は1,2-プロピレン基がより好ましい。pは2以上の整数を表し、2~10の整数であることが好ましい。
【0061】
また、化合物MにおけるQとQとの間を連結する最短の連結鎖の原子数は、3個~50個が好ましく、4個~40個がより好ましく、6個~20個が更に好ましく、8個~12個が特に好ましい。
本明細書において、「QとQの間を連結する最短の連結鎖の原子数」とは、Qに連結するRにおける原子からQに連結するRにおける原子までを連結する最短の原子数である。
【0062】
化合物Mの具体例としては、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,7-ヘプタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAのジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールFのジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレンレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール/プロピレングリコール)ジ(メタ)アクリレート、及び、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。上記エステルモノマーは混合物としても使用できる。
上記化合物のなかでも、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレートからなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが更に好ましい。
【0063】
また、重合性化合物の好適態様の一つとして、2官能以上のエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
本明細書において、「2官能以上のエチレン性不飽和化合物」とは、一分子中にエチレン性不飽和基を2つ以上有する化合物を意味する。
エチレン性不飽和化合物におけるエチレン性不飽和基としては、(メタ)アクリロイル基が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、(メタ)アクリレート化合物が好ましい。
【0064】
2官能のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
上記化合物M以外の2官能のエチレン性不飽和化合物としては、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジオキサングリコールジ(メタ)アクリレート、及び、1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0065】
2官能のエチレン性不飽和化合物の市販品としては、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート(商品名:NKエステル A-DCP、新中村化学工業(株)製)、トリシクロデカンジメナノールジメタクリレート(商品名:NKエステル DCP、新中村化学工業(株)製)、1,9-ノナンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-NOD-N、新中村化学工業(株)製)、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート(商品名:NKエステル A-HD-N、新中村化学工業(株)製)、ジオキサングリコールジアクリレート(日本化薬(株)製KAYARAD R-604)が挙げられる。
【0066】
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、特に制限はなく、公知の化合物の中から適宜選択できる。
3官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、ジペンタエリスリトール(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸(メタ)アクリレート、及び、グリセリントリ(メタ)アクリレート骨格の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
【0067】
ここで、「(トリ/テトラ/ペンタ/ヘキサ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート、テトラ(メタ)アクリレート、ペンタ(メタ)アクリレート、及び、ヘキサ(メタ)アクリレートを包含する概念であり、「(トリ/テトラ)(メタ)アクリレート」は、トリ(メタ)アクリレート及びテトラ(メタ)アクリレートを包含する概念である。
【0068】
重合性化合物としては、(メタ)アクリレート化合物のカプロラクトン変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、(メタ)アクリレート化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標) RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社のEBECRYL(登録商標) 135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製NKエステル A-GLY-9E等)も挙げられる。
【0069】
重合性化合物としては、ウレタン(メタ)アクリレート化合物も挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートとしては、ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられ、例えば、プロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレート、並びに、エチレンオキサイド及びプロピレンオキサイド変性ウレタンジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレートとしては、3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートも挙げられる。官能基数の下限としては、6官能以上がより好ましく、8官能以上が更に好ましい。なお、官能基数の上限としては、20官能以下が好ましい。3官能以上のウレタン(メタ)アクリレートとしては、例えば、8UX-015A(大成ファインケミカル(株)製)、UA-32P(新中村化学工業(株)製)、U-15HA(新中村化学工業(株)製)、UA-1100H(新中村化学工業(株)製)、共栄社化学(株)製のAH-600(商品名)、並びに、UA-306H、UA-306T、UA-306I、UA-510H、及びUX-5000(いずれも日本化薬(株)製)等が挙げられる。
【0070】
重合性化合物の好適態様の一つとして、酸基を有するエチレン性不飽和化合物が挙げられる。
酸基としては、リン酸基、スルホ基、及び、カルボキシ基が挙げられる。
これらのなかでも、酸基としては、カルボキシ基が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、酸基を有する3~4官能のエチレン性不飽和化合物〔ペンタエリスリトールトリ及びテトラアクリレート(PETA)骨格にカルボキシ基を導入したもの(酸価:80~120mgKOH/g)〕、酸基を有する5~6官能のエチレン性不飽和化合物(ジペンタエリスリトールペンタ及びヘキサアクリレート(DPHA)骨格にカルボキシ基を導入したもの〔酸価:25~70mgKOH/g)〕等が挙げられる。
これら酸基を有する3官能以上のエチレン性不飽和化合物は、必要に応じ、酸基を有する2官能のエチレン性不飽和化合物と併用してもよい。
【0071】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
酸基を有するエチレン性不飽和化合物が、カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物及びそのカルボン酸無水物からなる群から選ばれる少なくとも1種であると、現像性及び膜強度がより高まる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物は、特に制限されず、公知の化合物の中から適宜選択できる。
カルボキシ基を有する2官能以上のエチレン性不飽和化合物としては、アロニックス(登録商標)TO-2349(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-520(東亞合成(株)製)、アロニックス(登録商標)M-510(東亞合成(株)製)が挙げられる。
【0072】
酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、特開2004-239942号公報の段落[0025]~[0030]に記載の酸基を有する重合性化合物が好ましく、この公報に記載の内容は、本明細書に組み込まれる。
【0073】
重合性化合物としては、例えば、多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、グリシジル基含有化合物にα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物、ウレタン結合を有する(メタ)アクリレート化合物等のウレタンモノマー、γ-クロロ-β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、β-ヒドロキシエチル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート、及び、β-ヒドロキシプロピル-β’-(メタ)アクリロイルオキシエチル-o-フタレート等のフタル酸系化合物、並びに、(メタ)アクリル酸アルキルエステルも挙げられる。
これらは単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0074】
多価アルコールにα,β-不飽和カルボン酸を反応させて得られる化合物としては、例えば、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシ)フェニル)プロパン、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン、及び、2,2-ビス(4-((メタ)アクリロキシポリエトキシポリプロポキシ)フェニル)プロパン等のビスフェノールA系(メタ)アクリレート化合物、エチレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド基の数が2~14であり、かつ、プロピレンオキサイド基の数が2~14であるポリエチレンポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンテトラエトキシトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンペンタエトキシトリ(メタ)アクリレート、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、並びに、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートが挙げられる。
なかでも、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
【0075】
重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物のカプロラクトン変性化合物(例えば、日本化薬(株)製KAYARAD(登録商標)DPCA-20、新中村化学工業(株)製A-9300-1CL等)、エチレン性不飽和化合物のアルキレンオキサイド変性化合物(例えば、日本化薬(株)製KAYARAD RP-1040、新中村化学工業(株)製ATM-35E、A-9300、ダイセル・オルネクス社製 EBECRYL(登録商標)135等)、エトキシル化グリセリントリアクリレート(新中村化学工業(株)製A-GLY-9E等)等も挙げられる。
【0076】
重合性化合物(特に、エチレン性不飽和化合物)としては、転写後の感光性組成物層の現像性に優れる点で、なかでも、エステル結合を含むものも好ましい。
エステル結合を含むエチレン性不飽和化合物としては、分子内にエステル結合を含むものであれば特に制限されないが、本発明の効果が優れる点で、テトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物が好ましく、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、又は、ジ(トリメチロールプロパン)テトラアクリレートがより好ましい。
信頼性付与の点からは、エチレン性不飽和化合物としては、炭素数6~20の脂肪族基を有するエチレン性不飽和化合物と、上記のテトラメチロールメタン構造又はトリメチロールプロパン構造を有するエチレン不飽和化合物と、を含むことが好ましい。
炭素数6以上の脂肪族構造を有するエチレン性不飽和化合物としては、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、及び、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0077】
重合性化合物の好適態様の一つとしては、脂肪族炭化水素環構造を有する重合性化合物(好ましくは、2官能エチレン性不飽和化合物)が挙げられる。
上記重合性化合物としては、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造(好ましくは、トリシクロデカン構造及びトリシクロデセン構造からなる群から選択される構造)を有する重合性化合物が好ましく、2環以上の脂肪族炭化水素環が縮環した環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物がより好ましく、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートが更に好ましい。
上記脂肪族炭化水素環構造としては、シクロペンタン構造、シクロヘキサン構造、トリシクロデカン構造、トリシクロデセン構造、ノルボルナン構造、又は、イソボロン構造が好ましい。
【0078】
重合性化合物の分子量は、200~3,000が好ましく、250~2,600がより好ましく、280~2,200が更に好ましく、300~2,200が特に好ましい。
組成物に含まれる重合性化合物のうち、分子量300以下の重合性化合物の含有量の割合は、組成物に含まれる全ての重合性化合物の含有量に対して、30質量%以下が好ましく、25質量%以下がより好ましく、20質量%以下が更に好ましい。
【0079】
組成物の好適態様の一つとして、組成物は、2官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むのが好ましく、3官能以上のエチレン性不飽和化合物を含むのがより好ましく、3官能又は4官能のエチレン性不飽和化合物を含むのが更に好ましい。
【0080】
また、組成物の好適態様の一つとして、組成物は、脂肪族炭化水素環構造を有する2官能エチレン性不飽和化合物と、脂肪族炭化水素環を有する構成単位を有するバインダーポリマーとを含むことが好ましい。
【0081】
また、組成物の好適態様の一つとして、組成物は、式(M)で表される化合物と、酸基を有するエチレン性不飽和化合物とを含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物とを含むことがより好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレートと、トリシクロデカンジメタノールジアクリレートと、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートのコハク酸変性体とを含むことが更に好ましい。
【0082】
また、組成物の好適態様の一つとして、組成物は、現像残渣抑制性、及び、防錆性の点から、2官能のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、2官能の(メタ)アクリレート化合物)と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物(好ましくは、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物)と、を含むことが好ましい。
2官能のエチレン性不飽和化合物と、3官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量の質量比は10:90~90:10が好ましく、30:70~70:30がより好ましい。
全てのエチレン性不飽和化合物の合計量に対する、2官能のエチレン性不飽和化合物の含有量は、20質量%~80質量%が好ましく、30質量%~70質量%がより好ましい。
組成物における2官能のエチレン性不飽和化合物は、10質量%~60質量%が好ましく、15質量%~40質量%がより好ましい。
【0083】
また、組成物の好適態様の一つとして、組成物は、2官能エチレン性不飽和化合物、3官能以上のエチレン性不飽和化合物、及び酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが特に好ましい。
また、組成物の好適態様の一つとして、組成物は、1,9-ノナンジオールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、及び、カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物を含むことが好ましく、1,9-ノナンジオールジアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、及び、カルボン酸基を有するエチレン性不飽和化合物を含むことが更に好ましい。
【0084】
組成物は、エチレン性不飽和化合物として、単官能エチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
上記エチレン性不飽和化合物における2官能以上のエチレン性不飽和化合物の含有量は、組成物に含まれる全てのエチレン性不飽和化合物の総含有量に対し、60質量%~100質量%が好ましく、80質量%~100質量%がより好ましく、90質量%~100質量%が更に好ましい。
【0085】
重合性化合物(特に、エチレン性不飽和化合物)は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
組成物における重合性化合物(特に、エチレン性不飽和化合物)の含有量は、組成物全体の質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%が更に好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。
【0086】
(重合体(X))
重合体(X)は、下記一般式(A-1)又は下記一般式(A-2)で表される構成単位αと、下記一般式(B)で表される構成単位βと、を含む。
【0087】
【化10】
【0088】
一般式(A-1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表し、Rは炭素数1~4のアルキル基を表し、lは5~100の整数を表す。
一般式(A-2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表し、Lはトリメチルシリル基又はトリス(トリメチルシロキシ)シリル基を表す。
一般式(B)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表し、mは1~100の整数を表し、nは1~4の整数を表す。
【0089】
一般式(A-1)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、Rはメチル基であることが好ましい。
【0090】
一般式(A-1)中、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表す。
で表されるアルキレン基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、炭素数1~5のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることがさらに好ましい。
で表されるアルキレン基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などがあげられ、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましく、エチレン基又はプロピレン基であることがより好ましく、プロピレン基であることが更に好ましい。
【0091】
一般式(A-1)中、Rは炭素数1~4のアルキル基を表す。
で表されるアルキル基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0092】
一般式(A-1)中、lは5~100の整数を表し、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、5~60の整数であることが好ましく、5~50の整数であることがより好ましく、20~40の整数であることが更に好ましい。
【0093】
下記表1に一般式(A-1)で表される構成単位の具体例について記載するが、これに限定されることはない。
なお、表1中のR、R、R及びlは一般式(A-1)中のR、R、R及びlを意味する。
【0094】
【表1】
【0095】
一般式(A-2)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、Rはメチル基であることが好ましい。
【0096】
一般式(A-2)中、Rは炭素数1~10のアルキレン基を表す。
で表されるアルキレン基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、炭素数1~5のアルキレン基であることが好ましく、炭素数1~4のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1~3のアルキレン基であることがさらに好ましい。
で表されるアルキレン基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基などがあげられ、メチレン基、エチレン基又はプロピレン基であることが好ましく、エチレン基又はプロピレン基であることがより好ましく、エチレン基であることが更に好ましい。
【0097】
下記表2に一般式(A-2)で表される構成単位の具体例について記載するが、これに限定されることはない。
なお、表2中のR、R及びLは一般式(A-2)中のR、R及びLを意味する。
表2中「TMS基」はトリメチルシリル基を意味し、「TTMS基」はトリス(トリメチルシロキシ)シリル基を意味する。
【0098】
【表2】
【0099】
一般式(B)中、Rは水素原子又はメチル基を表す。
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、Rはメチル基であることが好ましい。
【0100】
一般式(B)中、Rは水素原子又は炭素数1~18のアルキル基を表す。
で表されるアルキル基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、炭素数1~12のアルキル基であることが好ましく、1~4のアルキル基であることがより好ましく、1~3のアルキル基であることが更に好ましい。
で表されるアルキル基は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、メチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基であることが好ましく、メチル基又はエチル基であることがより好ましく、メチル基であることが更に好ましい。
【0101】
一般式(B)中、mは1~100の整数を表し、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、5~50の整数であることが好ましく、7~30の整数であることがより好ましく、8~20の整数であることが更に好ましい。
一般式(B)中、nは1~4の整数を表し、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、2~4の整数であることが好ましく、2又は3であることがより好ましく、3であることが更に好ましい。
【0102】
下記表3に一般式(B)の具体例について記載するが、これに限定されることはない。
なお、表3中のR、R、m及びnは一般式(B)中のR、R、m及びnを意味する。
【0103】
【表3】
【0104】
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、構成単位αと、構成単位βと、の質量比(構成単位α:構成単位β)が、5:95~95:5であることが好ましく、10:90~50:50であることがより好ましく、25:75~40:60であることが更に好ましい。
【0105】
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、重合体(X)の数平均分子量(Mn)は3000~20000であることが好ましく、5000~15000であることがより好ましく、7000~10000であることが更に好ましい。
【0106】
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、重合体(X)は、上記一般式(A-1)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体(X-1)、及び上記一般式(A-2)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体(X-2)を含むことが好ましい。
【0107】
重合体(X-1)は上記一般式(A-1)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体である。
重合体(X-1)に含まれる一般式(A-1)で表される構成単位及び一般式(B)で表される構成単位の好ましい態様は既述の通りである。
【0108】
下記表4に重合体(X-1)の具体例について記載するが、これに限定されることはない。
また、表4中、一般式(A-1)で表される構成単位の下欄に記載の「種類」は表1に示す一般式(A-1)で表される構成単位の具体例と同一である。
一般式(B)で表される構成単位の下欄に記載の「種類」は表3に示す一般式(B)で表される構成単位の具体例と同一である。
また、「含有量(質量%)」は、重合体(X-1)に含まれる構成単位の全体の質量に対する、一般式(A-1)で表される構成単位又は一般式(B)で表される構成単位の質量である。
また、「分子量」は数平均分子量(Mn)を意味する。
【0109】
【表4】
【0110】
重合体(X-2)は、上記一般式(A-2)で表される構成単位と、上記一般式(B)で表される構成単位と、を含む重合体である。
重合体(X-2)に含まれる一般式(A-2)で表される構成単位及び一般式(B)で表される構成単位の好ましい態様は既述の通りである。
【0111】
下記表5に重合体(X-2)の具体例について記載するが、これに限定されることはない。
また、表5中、一般式(A-2)で表される構成単位の下欄に記載の「種類」は表2に示す一般式(A-2)で表される構成単位の具体例と同一である。
一般式(B)で表される構成単位の下欄に記載の「種類」は表3に示す一般式(B)で表される構成単位の具体例と同一である。
また、「含有量(質量%)」は、重合体(X-2)に含まれる構成単位の全体の質量に対する、一般式(A-2)で表される構成単位又は一般式(B)で表される構成単位の質量である。
また、「分子量」は数平均分子量(Mn)を意味する。
【0112】
【表5】
【0113】
重合体(X-1)と、重合体(X-2)と、の質量比(重合体(X-1):重合体(X-2))は、5:95~95:5であることが好ましく、10:90~50:50であることがより好ましく、20:80~40:60であることが更に好ましい。
【0114】
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、重合体(X-1)の数平均分子量(Mn)は3000~20000であることが好ましく、5000~10000であることがより好ましく、7000~9000であることが更に好ましい。
厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、重合体(X-2)の数平均分子量(Mn)は3000~20000であることが好ましく、7000~15000であることがより好ましく、9000~11000であることが更に好ましい。
【0115】
組成物全体の質量に対する重合体(X)の含有量は、0.05質量%を超え1.5質量%未満であることが好ましく、0.10質量%以上1.2質量%以下であることがより好ましく、0.2質量%以上1.0質量%以下であることが更に好ましい。
【0116】
(溶剤)
本開示に係る組成物は溶剤を含む。
溶剤としては、有機溶剤が好ましい。有機溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(別名:1-メトキシ-2-プロピルアセテート)、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、シクロヘキサノン、メチルイソブチルケトン、乳酸エチル、乳酸メチル、カプロラクタム、n-プロパノール、及び、2-プロパノールが挙げられる。
【0117】
また、溶剤としては、必要に応じ、沸点が180~250℃である有機溶剤(高沸点溶剤)を用いることもできる。
【0118】
溶剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
組成物中の溶剤の含有量としては、組成物全体の質量に対して、20質量%以上95質量%以下であることが好ましく、60質量%以上95質量%以下であることがより好ましく、70質量%以上95質量%以下であることが更に好ましい。
【0119】
(重合開始剤)
本開示に係る組成物は重合開始剤を含んでいてもよい。
重合開始剤としては、光重合開始剤が好ましい。
光重合開始剤としては特に制限はなく、公知の光重合開始剤を使用できる。
光重合開始剤としては、オキシムエステル構造を有する光重合開始剤(以下、「オキシム系光重合開始剤」ともいう。)、α-アミノアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤」ともいう。)、α-ヒドロキシアルキルフェノン構造を有する光重合開始剤(以下、「α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤」ともいう。)、アシルフォスフィンオキサイド構造を有する光重合開始剤(以下、「アシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤」ともいう。)、及び、N-フェニルグリシン構造を有する光重合開始剤(以下、「N-フェニルグリシン系光重合開始剤」ともいう。)等が挙げられる。
【0120】
光重合開始剤は、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、α-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤、及び、N-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましく、オキシム系光重合開始剤、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、及び、N-フェニルグリシン系光重合開始剤よりなる群から選ばれる少なくとも1種を含むことがより好ましい。
【0121】
また、光重合開始剤としては、例えば、特開2011-95716号公報の段落[0031]~[0042]、及び、特開2015-014783号公報の段落[0064]~[0081]に記載された重合開始剤を用いてもよい。
【0122】
光重合開始剤の市販品としては、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-1,2-オクタンジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-01、BASF社製〕、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン-1-(O-アセチルオキシム)〔商品名:IRGACURE(登録商標) OXE-02、BASF社製〕、IRGACURE(登録商標)OXE03(BASF社製)、IRGACURE(登録商標)OXE04(BASF社製)、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン〔商品名:Omnirad(登録商標)379EG、IGM Resins B.V社製〕、2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパン-1-オン〔商品名:Omnirad(登録商標)907、IGM Resins B.V社製〕、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}-2-メチルプロパン-1-オン〔商品名:Omnirad(登録商標)127、IGM Resins B.V社製〕、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1〔商品名:Omnirad(登録商標)369、IGM Resins B.V社製〕、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン〔商品名:Omnirad(登録商標)1173、IGM Resins B.V社製〕、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン〔商品名:Omnirad(登録商標)184、IGM Resins B.V社製〕、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン〔商品名:Omnirad(登録商標)651、IGM Resins B.V社製〕等、オキシムエステル系の〔商品名:Lunar(登録商標) 6、DKSHジャパン(株)製〕、1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-3-シクロペンチルプロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-305、常州強力電子新材料社製)、1,2-プロパンジオン,3-シクロヘキシル-1-[9-エチル-6-(2-フラニルカルボニル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,2-(O-アセチルオキシム)(商品名:TR-PBG-326、常州強力電子新材料社製)、3-シクロヘキシル-1-(6-(2-(ベンゾイルオキシイミノ)ヘキサノイル)-9-エチル-9H-カルバゾール-3-イル)-プロパン-1,2-ジオン-2-(O-ベンゾイルオキシム)(商品名:TR-PBG-391、常州強力電子新材料社製)、APi-307(1-(ビフェニル-4-イル)-2-メチル-2-モルホリノプロパン-1-オン、Shenzhen UV-ChemTech Ltd.製)等が挙げられる。
【0123】
光重合開始剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用使用することもできる。
2種以上を使用する場合は、オキシム系光重合開始剤と、α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤及びα-ヒドロキシアルキルフェノン系重合開始剤から選ばれる少なくとも1種と、を使用することが好ましい。
組成物が光重合開始剤を含む場合、光重合開始剤の含有量は、組成物全質量に対して、0.1質量%以上であるのが好ましく、0.5質量%以上であるのがより好ましく、1.0質量%以上であるのが更に好ましい。また、その上限値としては、組成物全質量に対して、10質量%以下であるのが好ましく、5質量%以下であるのより好ましい。
【0124】
(複素環化合物)
本開示に係る組成物は、複素環化合物を含んでいてもよい。
複素環化合物が有する複素環は、単環及び多環のいずれの複素環でもよい。
複素環化合物が有するヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び、硫黄原子が挙げられる。複素環化合物は、窒素原子、酸素原子、及び、硫黄原子からなる群より選ばれる少なくとも1種の原子を有することが好ましく、窒素原子を有することがより好ましい。
【0125】
複素環化合物としては、例えば、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、ベンゾオキサゾール化合物、及び、ピリミジン化合物が挙げられる。 上記のなかでも、複素環化合物としは、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾル化合物、トリアジン化合物、ローダニン化合物、チアゾール化合物、ベンゾイミダゾー化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が好ましく、トリアゾール化合物、ベンゾトリアゾール化合物、テトラゾール化合物、チアジアゾール化合物、チアゾール化合物、ベンゾチアゾール化合物、ベンゾイミダゾール化合物、及び、ベンゾオキサゾール化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物がより好ましい。
【0126】
(熱架橋性化合物)
本開示に係る組成物は得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、熱架橋性化合物を含むことが好ましい。なお、本明細書においては、後述するエチレン性不飽和基を有する熱架橋性化合物は、エチレン性不飽和化合物としては扱わず、熱架橋性化合物として扱うものとする。
熱架橋性化合物としては、エポキシ化合物、オキセタン化合物、メチロール化合物、及び、ブロックイソシアネート化合物が挙げられる。なかでも、得られる硬化膜の強度、及び、得られる未硬化膜の粘着性の点から、ブロックイソシアネート化合物が好ましい。
ブロックイソシアネート化合物は、ヒドロキシ基及びカルボキシ基と反応するため、例えば、バインダーポリマー及びエチレン性不飽和基を有するラジカル重合性化合物の少なくとも一方が、ヒドロキシ基及びカルボキシ基の少なくとも一方を有する場合には、形成される膜の親水性が下がり、保護膜としての機能が強化される傾向がある。
なお、ブロックイソシアネート化合物とは、「イソシアネートのイソシアネート基をブロック剤で保護(いわゆる、マスク)した構造を有する化合物」を指す。
【0127】
ブロックイソシアネート化合物は、例えば、膜の脆性改良、被転写体との密着力向上等の点から、イソシアヌレート構造を有することが好ましい。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物は、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートをイソシアヌレート化して保護することにより得られる。
イソシアヌレート構造を有するブロックイソシアネート化合物のなかでも、オキシム化合物をブロック剤として用いたオキシム構造を有する化合物が好ましい。
【0128】
ブロックイソシアネート化合物は、重合性基を有していてもよい。
重合性基としては、特に制限はなく、公知の重合性基を用いることができ、ラジカル重合性基が好ましい。
重合性基としては、(メタ)アクリロキシ基、(メタ)アクリルアミド基、及び、スチリル基等のエチレン性不飽和基、並びに、グリシジル基等のエポキシ基を有する基が挙げられる。
なかでも、重合性基としては、エチレン性不飽和基が好ましく、(メタ)アクリロキシ基がより好ましく、アクリロキシ基が更に好ましい。
【0129】
ブロックイソシアネート化合物としては、市販品を使用できる。
ブロックイソシアネート化合物の市販品の例としては、カレンズ(登録商標) AOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BM、カレンズ(登録商標) MOI-BP等(以上、昭和電工(株)製)、ブロック型のデュラネートシリーズ(例えば、デュラネート(登録商標) TPA-B80E、デュラネート(登録商標)SBN-70D、デュラネート(登録商標) WT32-B75P等、旭化成ケミカルズ(株)製)が挙げられる。
【0130】
熱架橋性化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用することもできる。
組成物が熱架橋性化合物を含む場合、熱架橋性化合物の含有量は、組成物全質量に対して、1質量%~50質量%が好ましく、5質量%~30質量%がより好ましい。
【0131】
(他の成分)
本開示に係る組成物は、既述の成分以外の成分(以下、「他の成分」ともいう。)を含んで
いてもよい。他の成分としては、例えば、着色剤、酸化防止剤、及び、粒子(例えば、金
属酸化物粒子)が挙げられる。また、他の成分としては、特開2000-310706号
公報の段落[0058]~[0071]に記載のその他の添加剤も挙げられる。
【0132】
(本開示に係る組成物の製造方法)
本開示に係る組成物の製造方法は特に限定されず、バインダーポリマー、重合性化合物、重合体(X)及び溶剤を混合することで製造することができる。
【0133】
<転写フィルム>
本開示に係る転写フィルムは、仮支持体と、感光性組成物層と、をこの順に有し、感光性組成物層が、本開示に係る組成物を用いてなる層である。
【0134】
(仮支持体)
転写フィルムは、仮支持体を有する。
仮支持体は、感光性組成物層を支持する部材であり、最終的には剥離処理により除去される。
【0135】
仮支持体は、単層構造であっても、複層構造であってもよい。
仮支持体は、フィルムであることが好ましく、樹脂フィルムであることがより好ましい。仮支持体としては、可撓性を有し、かつ、加圧下、又は、加圧及び加熱下において、著しい変形、収縮、又は、伸びを生じないフィルムが好ましい。
上記フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルム(例えば、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム)、ポリメチルメタクリレートフィルム、トリ酢酸セルロースフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリイミドフィルム、及び、ポリカーボネートフィルムが挙げられる。
なかでも、仮支持体としては、ポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、仮支持体として使用するフィルムには、シワ等の変形、及び、傷等がないことが好ましい。
【0136】
仮支持体は、仮支持体を介してパターン露光できるという点から、透明性が高いことが好ましく、313nm、365nm、313nm、405nm及び436nmでの透過率は60%以上が好ましく、70%以上がより好ましく、80%以上が更に好ましく、90%以上が最も好ましい。
【0137】
仮支持体の厚みは特に制限されないが、5μm~200μmが好ましく、取り扱いやすさ及び汎用性の点から、5μm~150μmがより好ましく、5μm~50μmが更に好ましく、5μm~25μmが最も好ましい。
仮支持体の厚みは、SEM(走査型電子顕微鏡:Scanning Electron Microscope)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出する。
【0138】
仮支持体と感光性組成物層との密着性を向上させるために、仮支持体の感光性組成物層と接する側がUV照射、コロナ放電、プラズマ等により表面改質されていてもよい。
【0139】
仮支持体としては、例えば、膜厚16μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、膜厚12μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルム、及び、膜厚9μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムが挙げられる。
仮支持体は、リサイクル品であってもよい。リサイクル品としては、使用済みフィルム等を洗浄、チップ化し、これを材料にフィルム化したものが挙げられる。リサイクル品の具体例としては、東レ社のEcouseシリーズが挙げられる。
【0140】
仮支持体の好ましい形態としては、例えば、特開2014-085643号公報の段落[0017]~[0018]、特開2016-027363号公報の段落[0019]~[0026]、国際公開第2012/081680号の段落[0041]~[0057]、及び、国際公開第2018/179370号の段落[0029]~[0040]に記載が挙げられ、これらの公報の内容は本明細書に組み込まれる。
【0141】
ハンドリング性を付与する点で、仮支持体の表面に、微小な粒子を含む層(滑剤層)を設けてもよい。滑剤層は仮支持体の片面に設けてもよいし、両面に設けてもよい。滑剤層に含まれる粒子の直径は、0.05μm~0.8μmが好ましい。
また、滑剤層の膜厚は、0.05μm~1.0μmが好ましい。
【0142】
仮支持体の市販品としては、ルミラー16KS40、ルミラー16FB40、ルミラー#38-U48、ルミラー#75-U34、ルミラー#25T60、(以上、東レ株式会社製)、コスモシャインA4100、コスモシャインA4160、コスモシャインA4300、コスモシャインA4360、コスモシャインA8300(以上、東洋紡株式会社製)を挙げることができる。
【0143】
(感光性組成物層)
本開示に係る転写フィルムは、感光性組成物層を有する。
感光性組成物層は本開示に係る組成物を用いてなる層である。
【0144】
感光性組成物層を被転写体上に転写した後、露光及び現像を行うことにより、被転写体上にパターンを形成できる。
感光性組成物層としては、ネガ型が好ましい。なお、ネガ型感光性組成物層とは、露光により露光部が現像液に対する溶解性が低下する感光性組成物層である。
【0145】
感光性組成物層は、例えば、本開示に係る組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥することで得られる。
そのため、感光性組成物層に含まれる成分としては、本開示に係る組成物に含まれ得る成分と同様であり、好ましい態様も同様である。
【0146】
感光性組成物層に含まれる成分の含有量の好ましい態様は以下の通りである。
バインダーポリマーの含有量は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、感光性組成物層全質量に対して、10質量%~90質量%が好ましく、20質量%~80質量%がより好ましく、30質量%~70質量%が更に好ましい。
重合性化合物の含有量は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、感光性組成物層全質量に対して、1質量%~70質量%が好ましく、5質量%~70質量%がより好ましく、5質量%~60質量%が更に好ましく、5質量%~50質量%が特に好ましい。
重合体(X)の含有量は、厚みのムラ及び膜の欠陥の観点から、感光性組成物層全質量に対して、0.01質量%~3.0質量%が好ましく、0.01質量%~1.0質量%がより好ましく、0.05質量%~0.80質量%が更に好ましい。
溶剤の含有量は、感光性組成物層全質量に対して、0質量%~3.0質量%が好ましく、0質量%~1.0質量%がより好ましく、0質量%~0.80質量%が更に好ましい。
【0147】
感光性組成物層の厚みは、特に制限されないが30μm以下の場合が多く、本発明の効果がより優れる点で、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、10μm以下が更に好ましく、5.0μm以下が特に好ましい。下限としては、感光性組成物層を硬化して得られる膜の強度が優れる点で、0.60μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
すなわち、感光性組成物層の厚みは、0.60μm以上20μm以下が好ましく、1.5μm以上15μm以下がより好ましく、1.5μm以上5.0μm以下が特に好ましい。
感光性組成物層の厚みは、例えば、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任意の5点の平均値として算出できる。
【0148】
感光性組成物層の膜厚1.0μmあたりの可視光透過率は80%以上が好ましく、90%以上がより好ましく、95%以上が最も好ましい。
可視光の透過率としては、波長400nm~800nmの平均透過率、波長400nm~800nmの透過率の最小値、波長400nmmの透過率、いずれもが上記を満たすことが好ましい。
透過率の好ましい値としては、例えば、87%、92%、98%等を挙げることが出来る。
【0149】
(保護フィルム)
本開示に係る転写フィルムは保護フィルムを有していてもよい。
保護フィルムとしては、耐熱性及び耐溶剤性を有する樹脂フィルムを用いることができ、例えば、ポリプロピレンフィルム及びポリエチレンフィルム等のポリオレフィンフィルム、ポリエチレンテレフタレートフィルム等のポリエステルフィルム、ポリカーボネートフィルム、並びに、ポリスチレンフィルムが挙げられる。
また、保護フィルムとして上述の仮支持体と同じ材料で構成された樹脂フィルムを用いてもよい。
なかでも、保護フィルムとしては、ポリオレフィンフィルムが好ましく、ポリプロピレンフィルム又はポリエチレンフィルムがより好ましく、ポリエチレンフィルムが更に好ましい。
【0150】
保護フィルムの厚みは、1μm~100μmが好ましく、5μm~50μmがより好ましく、5μm~40μmが更に好ましく、15μm~30μmが特に好ましい。
保護フィルムの厚みは、機械的強度に優れる点で、1μm以上が好ましく、比較的安価
となる点で、100μm以下が好ましい。
【0151】
(屈折率調整層)
本開示に係る転写フィルムは、屈折率調整層を有してもよい。
屈折率調整層としては、公知の屈折率調整層を適用できる。屈折率調整層に含まれる材料としては、例えば、バインダーポリマー、重合性化合物、金属塩、及び、粒子が挙げられる。
屈折率調整層の屈折率を制御する方法は、特に制限されず、例えば、所定の屈折率の樹脂を単独で用いる方法、樹脂と粒子とを用いる方法、及び、金属塩と樹脂との複合体を用いる方法が挙げられる。
【0152】
屈折率調整層の屈折率は、感光性組成物層の屈折率よりも高いことが好ましい。
屈折率調整層の屈折率は、1.50以上が好ましく、1.55以上がより好ましく、1.60以上が更に好ましく、1.65以上が特に好ましい。屈折率調整層の屈折率の上限は、2.10以下が好ましく、1.85以下がより好ましく、1.78以下が更に好ましい。
【0153】
屈折率調整層の厚みは、50~500nmが好ましく、55~110nmがより好まし
く、60~100nmが更に好ましい。
屈折率調整層の厚みは、走査型電子顕微鏡(SEM)による断面観察により測定した任
意の5点の平均値として算出する。
【0154】
(転写フィルムの実施形態の一例)
以下において、転写フィルムの実施形態の一例について説明する。
図1に示す転写フィルム10は、仮支持体1と、感光性組成物層3と、屈折率調整層5と、保護フィルム7とを、この順に有する。
なお、図1で示す転写フィルム10は保護フィルム7を配置した形態であるが、保護フィルム7は、配置されなくてもよい。
また、図1で示す転写フィルム10は屈折率調整層5を配置した形態であるが、屈折率調整層5は、配置されなくてもよい。
【0155】
(転写フィルムの製造方法)
本開示に係る転写フィルムの製造方法は、特に制限されず、公知の方法を使用できる。
上記の転写フィルム10の製造方法としては、例えば、仮支持体1の表面に本開示に係る組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して感光性組成物層3を形成する工程と、感光性組成物層3の表面に屈折率調整層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、更にこの塗膜を乾燥して屈折率調整層5を形成する工程と、を含む方法が挙げられる。
【0156】
上述の製造方法により製造された積層体の屈折率調整層5上に、保護フィルム7を圧着させることにより、転写フィルム10が製造される。
第1実施形態の転写フィルムの製造方法としては、屈折率調整層5の仮支持体11を有する側とは反対側の面に接するように保護フィルム7を設ける工程を含むことにより、仮支持体1、感光性組成物層3、屈折率調整層5、及び保護フィルム7を備える転写フィルム10を製造することが好ましい。
上記の製造方法により転写フィルム10を製造した後、転写フィルム10を巻き取ることにより、ロール形態の転写フィルムを作製及び保管してもよい。ロール形態の転写フィルムは、後述するロールツーロール方式での基板との貼合工程にそのままの形態で提供できる。
【0157】
また、上記の転写フィルム10の製造方法としては、保護フィルム7上に、屈折率調整層5を形成した後、屈折率調整層5の表面に感光性樹脂層13を形成する方法であってもよい。
また、上記の転写フィルム10の製造方法としては、仮支持体1上に感光性組成物層3を形成し、別途、保護フィルム7上に屈折率調整層5を形成し、感光性組成物層3とに屈折率調整層5とを貼り合わせて形成する方法であってもよい。
【0158】
-感光性組成物層の形成方法-
生産性に優れる点で、転写フィルム中の感光性組成物層は、上述した本開示に係る組成物を使用して塗布法により形成されるのが望ましい。
転写フィルムの製造方法としては、具体的には、仮支持体上に本開示に係る組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜に所定温度にて乾燥処理を施して感光性組成物層を形成する方法であるのが好ましい。
【0159】
感光性組成物の塗布方法としては、例えば、印刷法、スプレー法、ロールコート法、バーコート法、カーテンコート法、スピンコート法、及び、ダイコート法(すなわち、スリットコート法)が挙げられる。
【0160】
塗膜の乾燥方法としては、加熱乾燥及び減圧乾燥が好ましい。なお、本明細書において、「乾燥」とは、組成物に含まれる溶剤の少なくとも一部を除去することを意味する。乾燥方法としては、例えば、自然乾燥、加熱乾燥、及び、減圧乾燥が挙げられる。上記した方法を単独で又は複数組み合わせて適用することができる。
【0161】
乾燥温度としては、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。また、その上限値としては130℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。温度を連続的に変化させて乾燥させることもできる。
また、乾燥時間としては、20秒以上が好ましく、40秒以上がより好ましく、60秒以上が更に好ましい。また、その上限値としては特に制限されないが、600秒以下が好ましく、300秒以下がより好ましい。
【0162】
-屈折率調整層の形成方法-
屈折率調整層形成用組成物としては、上述した屈折率調整層を形成する各種成分と溶剤とを含むのが好ましい。
溶剤としては、屈折率調整層に含まれる成分を溶解又は分散可能であれば特に制限されず、水及び水混和性の有機溶剤からなる群より選択される少なくとも1種が好ましく、水又は水と水混和性の有機溶剤との混合溶剤がより好ましい。
水混和性の有機溶剤としては、例えば、炭素数1~3のアルコール、アセトン、エチレングリコール、及びグリセリンが挙げられ、炭素数1~3のアルコールが好ましく、メタノール又はエタノールがより好ましい。
溶剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上使用してもよい。
溶剤の含有量は、組成物の全固形分100質量部に対して、50質量部~2,500質量部が好ましく、50質量部~1,900質量部がより好ましく、100質量部~900質量部が更に好ましい。
【0163】
屈折率調整層の形成方法は、上記の成分を含む層を形成可能な方法であれば特に制限されず、例えば、公知の塗布方法(スリット塗布、スピン塗布、カーテン塗布、及びインクジェット塗布等)が挙げられる。
【0164】
また、保護フィルムを屈折率調整層に貼り合わせることにより、第1実施形態の転写フィルムを製造できる。
保護フィルムを屈折率調整層に貼り合わせる方法は特に制限されず、公知の方法が挙げられる。
保護フィルムを屈折率調整層に貼り合わせる装置としては、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターが挙げられる。
ラミネーターはゴムローラー等の任意の加熱可能なローラーを備え、加圧及び加熱ができるものであることが好ましい。
【0165】
(転写フィルムの用途)
本開示に係る転写フィルムは、種々の用途に適用できる。
例えば、電極保護膜、絶縁膜、平坦化膜、オーバーコート膜、ハードコート膜、パッシベーション膜、隔壁、スペーサ、マイクロレンズ、光学フィルター、反射防止膜、エッチングレジスト、及びめっき部材などに適用できる。
より具体的な例として、タッチパネル電極の保護膜又は絶縁膜、プリント配線板の保護膜又は絶縁膜、TFT基板の保護膜又は絶縁膜、カラーフィルター、カラーフィルター用オーバーコート膜、配線形成のためのエッチングレジスト等を挙げることができる。
なかでも、本開示に係る転写フィルムは、タッチパネルの製造に用いられることが好ましい。
【0166】
<積層体の製造方法>
以下、積層体の製造方法について詳細に説明するが、感光性組成物層及び屈折率調整層をまとめて組成物層と称する。
【0167】
本開示に係る積層体の製造方法は、本開示に係る転写フィルムの仮支持体とは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせ、基板、導電層、感光性組成物層、及び、仮支持体をこの順に有する感光性組成物層付き基板を得る貼合工程と、
感光性組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された感光性組成物層を現像して、導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、感光性組成物層付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、を有する。
【0168】
屈折率調整層を有する場合の本開示に係る積層体の製造方法は、本開示に係る転写フィルムの仮支持体とは反対側の表面を、導電層を有する基板に接触させて貼り合わせ、基板、導電層、屈折率調整層、感光性組成物層、及び、仮支持体をこの順に有する組成物層付き基板を得る貼合工程と、
屈折率調整層及び感光性組成物層をパターン露光する露光工程と、
露光された屈折率調整層及び感光性組成物層を現像して、導電層を保護する保護膜パターンを形成する現像工程と、を有し、
更に、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と現像工程との間に、組成物層付き基板から仮支持体を剥離する剥離工程と、を有する。
以下、一例として、屈折率調整層を有する場合の本開示に係る積層体の製造方法について説明する。
【0169】
<貼合工程>
貼合工程は、転写フィルムの仮支持体とは反対側の表面を、導電部を有する基板に接触させて貼り合わせ、基板、導電層、組成物層、及び、仮支持体をこの順に有する組成物層付き基板を得る工程である。なお、転写フィルムが保護フィルムを有する構成である場合、保護フィルムを剥がしてから貼合工程を実施する。
【0170】
上記貼合においては、上記導電層と上記組成物層の表面とが接触するように圧着させる。
上記圧着の方法としては特に制限はなく、公知の転写方法、及び、ラミネート方法を使用できる。なかでも、組成物層の表面を、導電部を有する基板に重ね、ロール等による加圧及び加熱が行われることが好ましい。
貼り合せには、真空ラミネーター、及び、オートカットラミネーター等の公知のラミネーターを使用できる。
ラミネート温度としては特に制限されないが、例えば、70~130℃であるのが好ましい。
【0171】
導電層を有する基板は、基板上に導電層を有し、必要により任意の層が形成されてもよい。つまり、導電層を有する基板は、基板と、基板上に配置される導電層とを少なくとも有する導電性基板である。
【0172】
基板としては、例えば、樹脂基板、ガラス基板、及び、半導体基板が挙げられる。
基板の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0140]に記載があり、この内容は本明細書に組み込まれる。樹脂基板の材料としては、シクロオレフィンポリマー及びポリイミドが好ましい。樹脂基板の厚みは5μm~200μmが好ましく、10~100μmがより好ましい。
【0173】
導電層としては、導電性及び細線形成性の点から、金属層、導電性金属酸化物層、グラフェン層、カーボンナノチューブ層、及び、導電ポリマー層からなる群から選択される少なくとも1種の層であるのが好ましい。
また、基板上には導電層を1層のみ配置してもよいし、2層以上配置してもよい。導電層を2層以上配置する場合は、異なる材質の導電層を有することが好ましい。
導電層の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0141]に記載があり、この内容は本明細書に組み込まれる。
【0174】
導電層を有する基板としては、透明電極及び引き回り配線の少なくとも一方を有する基板が好ましい。上記のような基板は、タッチパネル用基板として好適に使用できる。
透明電極は、タッチパネル用電極として好適に機能し得る。透明電極は、ITO(酸化インジウムスズ)、及び、IZO(酸化インジウム亜鉛)等の金属酸化膜、並びに、金属メッシュ、及び、金属ナノワイヤー等の金属細線により構成されることが好ましい。
金属細線としては、銀、銅等の細線が挙げられる。なかでも、銀メッシュ、銀ナノワイヤー等の銀導電性材料が好ましい。
【0175】
引き回し配線の材質としては、金属が好ましい。
引き回し配線の材質である金属としては、金、銀、銅、モリブデン、アルミニウム、チタン、クロム、亜鉛、及び、マンガン、並びに、これらの金属元素の2種以上からなる合金が挙げられる。引き回し配線の材質としては、銅、モリブデン、アルミニウム、又は、チタンが好ましく、銅が特に好ましい。
【0176】
本開示に係る転写フィルム中の組成物層を用いて形成されたタッチパネル用電極保護膜は、電極等(すなわち、タッチパネル用電極及びタッチパネル用配線の少なくとも一方)を保護する目的で、電極等を直接又は他の層を介して覆うように設けられることが好ましい。
【0177】
<露光工程>
露光工程は、組成物層をパターン露光する工程である。
なお、ここで、「パターン露光」とは、パターン状に露光する形態、すなわち、露光部と非露光部とが存在する形態の露光を指す。
パターン露光における露光領域と未露光領域との位置関係は特に制限されず、適宜調整される。
組成物層の基板とは反対側から露光してもよく、組成物層の基板側から露光してもよい。
【0178】
パターン露光の光源としては、少なくとも感光性組成物層を硬化し得る波長域の光(例えば、365nm又は405nm)を照射できるものであれば適宜選定して使用できる。なかでも、パターン露光の露光光の主波長は、365nmが好ましい。なお、主波長とは、最も強度が高い波長である。
【0179】
光源としては、例えば、各種レーザー、発光ダイオード(LED)等の半導体光源;超高圧水銀灯、高圧水銀灯、及び、メタルハライドランプ等の放電ランプ;が挙げられる。
露光量は、5~200mJ/cm2が好ましく、10~200mJ/cm2がより好ましい。
【0180】
転写フィルムを用いて基板上に組成物層を設けた場合、パターン露光は、仮支持体を組成物層から剥離してから行ってもよいし、仮支持体を剥離する前に、仮支持体を介して露光し、その後、仮支持体を剥離してもよい。組成物層とマスクの接触によるマスクの汚染を防止する観点、及びマスクに付着した異物による露光への影響を避ける観点からは、仮支持体を剥離せずに露光することが好ましい。仮支持体による露光光の散乱を抑制すること、及びマスクを透過した光の回折を抑制することによって、解像度を向上させる観点からは、仮支持体を剥離した後に露光することが好ましい。
【0181】
なお、パターン露光は、マスクを介した露光でもよいし、レーザー等を用いたダイレクト露光でもよい。
露光マスクを介して露光する場合のマスクの基材としては、石英マスク、ソーダライムガラスマスク、フィルムマスクなどが挙げられる。中でも、石英マスクは寸法精度に優れる点が好ましく、フィルムマスクは大サイズ化が容易である点で好ましい。
フィルムマスクの基材としては、ポリエステルフィルムが好ましく、ポリエチレンテレフタレートフィルムがより好ましい。
フィルムマスクの基材の具体例としては、XPR-7S SG(富士フイルムグローバルグラフィックシステムズ(株)製)が挙げられる。
【0182】
露光に使用する光源、露光量及び露光方法の好ましい態様としては、例えば、国際公開第2018/155193号の段落[0146]~[0147]に記載があり、これらの内容は本明細書に組み込まれる。
【0183】
露光工程、及び、後述する現像工程を行うことで、基板上の導電層上に、導電層の少なくとも一部を保護する保護膜パターン(硬化膜)が形成される。
【0184】
<剥離工程>
剥離工程は、貼合工程と露光工程との間、又は、露光工程と後述する現像工程との間に、組成物層付き基板から仮支持体を剥離する工程である。
剥離方法は特に制限されず、特開2010-072589号公報の段落[0161]~[0162]に記載されたカバーフィルム剥離機構と同様の機構を使用できる。
【0185】
<現像工程>
現像工程は、露光された組成物層を現像して、パターン(硬化膜)を形成する工程である。
上記組成物層の現像は、現像液を用いて行うことができる。
現像液として、アルカリ性水溶液が好ましい。アルカリ性水溶液に含まれ得るアルカリ性化合物としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、テトラプロピルアンモニウムヒドロキシド、テトラブチルアンモニウムヒドロキシド、及び、コリン(2-ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキシド)が挙げられる。
【0186】
現像の方式としては、例えば、パドル現像、シャワー現像、スピン現像、及び、ディッ
プ現像等の方式が挙げられる。
【0187】
本明細書において好適に用いられる現像液としては、例えば、国際公開第2015/0
93271号の段落[0194]に記載の現像液が挙げられ、好適に用いられる現像方式
としては、例えば、国際公開第2015/093271号の段落[0195]に記載の現
像方式が挙げられる。
【0188】
<ポスト露光工程及びポストベーク工程>
上記積層体の製造方法は、上記現像工程によって得られたパターンを、露光する工程(ポスト露光工程)、及び/又は、加熱する工程(ポストベーク工程)を有していてもよい。
ポスト露光工程及びポストベーク工程の両方を含む場合、ポスト露光の後、ポストベークを実施することが好ましい。
ポスト露光の露光量は、100mJ/cm~5000mJ/cmが好ましく、200mJ/cm~3000mJ/cmがより好ましい。
ポストベークの温度は、80℃~250℃が好ましく、90℃~160℃がより好ましい。
ポストベークの時間は、1分~180分が好ましく、10分~60分がより好ましい。
【0189】
<積層体の用途>
本発明の積層体の製造方法により製造される積層体は、種々の装置に適用することができる。上記積層体を備えた装置としては、例えば、表示装置、プリント配線板、半導体パッケージ、入力装置等が挙げられ、タッチパネルであることが好ましく、静電容量型タッチパネルであることがより好ましい。また、上記入力装置は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置、液晶表示装置等の表示装置に適用することができる。
積層体がタッチパネルに適用される場合、組成物層から形成されるパターンは、タッチパネル用電極又はタッチパネル用配線の保護膜として用いられることが好ましい。つまり、転写フィルムに含まれる組成物層は、タッチパネル用電極保護膜又はタッチパネル用配線の形成に用いられることが好ましい。
【0190】
<硬化膜>
本開示に係る硬化膜は、感光性組成物層の少なくとも一部を硬化することで得られるものである。
感光性組成物層の少なくとも一部を硬化する方法としては、光、又は、熱による硬化が挙げられ、所望の形状にパターン形成する観点から、パターン露光による硬化がより好ましい。
好ましいパターン露光方法については、上述の積層体の製造方法における露光工程における好ましい態様を参照することができる。
【0191】
<デバイス>
本開示に係るデバイスは、硬化膜を有する。
本開示に係るデバイスとしては、上記<積層体の用途>において説明した積層体を備えた装置が挙げられる。
【実施例0192】
以下に実施例について説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、以下の説明において、特に断りのない限り、「部」及び「%」はすべて質量基準である。
【0193】
<重合体X-1-1の合成>
撹拌装置、還流冷却器、滴下ロート、温度計、及び窒素ガス吹き込み口を備えた1000mlの反応容器に、酢酸ブチル150部を仕込み、窒素ガスを導入しながら還流させた。酢酸ブチルが還流する条件で、以下に示す滴下溶液300部を滴下ロートにより2時間で等速滴下した。
滴下溶液の滴下終了1時間後、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエイト1.5部を加え、さらに、還流温度を保ちつつ2時間反応させ重合体X-1-1を合成した。反応終了後、酢酸ブチルで重合体X-1-1の濃度を調整して、重合体X-1-1を含む溶液(溶液全体の質量に対する重合体X-1-1の質量が30質量%)を得た。
合成した重合体X-1-1のゲルパーミエーションクロマトグラフによるポリスチレン換算の数平均分子量は、7500であった。
【0194】
-滴下溶液の組成-
・下記式(a-1-1)で表される単量体:57部
・下記式(b-1)で表される単量体:243部
【0195】
【化11】
【0196】
<重合体X-1-2の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-1-2を合成した。数平均分子量は、7500であった。
【0197】
-滴下溶液の組成-
・下記式(a-1-2)で表される単量体:87部
・下記式(b-1)で表される単量体:213部
【0198】
【化12】
【0199】
<重合体X-1-3の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-1-3を合成した。数平均分子量は、7500であった。
【0200】
-滴下溶液の組成-
・下記式(a-1-1)で表される単量体:69部
・下記式(b-3)で表される単量体:231部
【0201】
【化13】
【0202】
<重合体X-1-4の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-1-4を合成した。数平均分子量は、7500であった。
【0203】
-滴下溶液の組成-
・下記式(a-1-1)で表される単量体:48部
・下記式(b-4)で表される単量体:252部
【0204】
【化14】
【0205】
<重合体X-2-1の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-1を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0206】
-滴下溶液の組成-
・下記式(a-2-1)で表される単量体:69部
・下記式(b-2)で表される単量体:231部
【0207】
【化15】
【0208】
<重合体X-2-2の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-2を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0209】
-滴下溶液の組成-
・上記式(a-2-1)で表される単量体:9部
・上記式(b-2)で表される単量体:291部
【0210】
<重合体X-2-3の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-3を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0211】
-滴下溶液の組成-
・上記式(a-2-1)で表される単量体:15部
・上記式(b-2)で表される単量体:285部
【0212】
<重合体X-2-4の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-4を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0213】
-滴下溶液の組成-
・上記式(a-2-1)で表される単量体:150部
・上記式(b-2)で表される単量体:150部
【0214】
<重合体X-2-5の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-5を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0215】
-滴下溶液の組成-
・上記式(a-2-1)で表される単量体:285部
・上記式(b-2)で表される単量体:15部
【0216】
<重合体X-2-6の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-6を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0217】
-滴下溶液の組成-
・上記式(a-2-1)で表される単量体:291部
・上記式(b-2)で表される単量体:9部
【0218】
<重合体X-2-7の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体X-2-7を合成した。数平均分子量は、9500であった。
【0219】
-滴下溶液の組成-
・上記式(a-2-1)で表される単量体:69部
・上記式(b-2)で表される単量体:231部
【0220】
<重合体CX-1の合成>
滴下溶液の組成を以下の通りに変更したこと以外は重合体X-1-1の合成と同一の手順で重合体CX-1を合成した。数平均分子量は、7500であった。
【0221】
-滴下溶液の組成-
・下記式(ca-1)で表される単量体:12部
・下記式(b-1)で表される単量体:288部
【0222】
【化16】
【0223】
<実施例1~25、実施例28~実施例31、比較例1~比較例3>
(組成物の調製)
表6~表8に記載の通りの成分を混合することで、混合物を得た。当該混合物にメチルエチルケトン(MEK)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)との混合溶剤(MEK/PGMEA=60%/40%)を添加し、25%の固形分濃度を有する組成物を得た。
なお、表6~表8中の各成分の含有量は、混合物全体の質量に対する、混合物中の各成分の質量(単位は質量%)である。
【0224】
(転写フィルムの作製)
組成物を30分間攪拌した直後、スリット状ノズルを用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(仮支持体、ルミラー16KS40、東レ株式会社、厚さ:16μm)の上に塗布し、75℃から120℃の温度勾配で熱風対流式乾燥機を用いて乾燥して溶剤を除去して、仮支持体上に感光性組成物層を形成した。感光性組成物の塗布量は、乾燥後の感光性組成物層の厚みが5.8μmになるよう調整した。
次に、感光性組成物層の上に、保護フィルム(ルミラー16KS40、東レ株式会社、厚さ:16μm)を圧着することにより、仮支持体と、感光性組成物層と、保護フィルムと、をこの順に有する転写フィルムを作製した。
【0225】
<実施例26>
実施例5と同一の手順で、仮支持体上に感光性組成物層を形成した。その後、更に感光性組成物層の上に、下記の屈折率調整層形成用組成物を、乾燥後の厚みが73nmになるように調整して塗布し、80℃で1分間乾燥させた。その後、更に110℃で1分間乾燥させて、感光性組成物層上に直接配置された屈折率調整層を形成した。次に、屈折率調整層の上に、保護フィルム(ルミラー16KS40、東レ株式会社、厚さ:16μm)を圧着することにより、仮支持体と、感光性組成物層と、屈折率調整層と、保護フィルムと、をこの順に有する転写フィルムを作製した。
【0226】
(屈折率調整層形成用組成物)
屈折率調整層形成用組成物は、下記の各成分を用いて調整した。
なお、屈折率調整層形成用組成物は、酸基を有する樹脂と、アンモニア水溶液とを用いて調製しており、酸基を有する樹脂はアンモニア水溶液で中和され、酸基を有する樹脂のアンモニウム塩を含む水系樹脂組成物である。
・金属酸化物粒子(ZrO粒子、ナノユースOZ-S30M、固形分濃度30.5質量%、メタノール69.5質量%、屈折率2.2、平均粒径約12nm、日産化学工業社製):固形分換算で80.84質量部
・酸基を有するバインダーポリマー(アクリル樹脂、ZB-015M、富士フイルムファインケミカル社製、メタクリル酸/メタクリル酸アリルの共重合樹脂(組成比(モル比)=20/80)、重量平均分子量2.5万、固形分濃度5.00%、アンモニア水溶液):固形分換算で9.02質量部
・酸基を有するバインダーポリマー(アクリル樹脂、ARUFON UC3920、東亞合成社製):0.54質量部
・エチレン性不飽和化合物(カルボン酸基を有する多官能エチレン性不飽和化合物、アロニックス TO-2349、東亞合成社製):2.05質量部・モノイソプロパノールアミン(三井化学ファイン社製):1.33質量部
・アミノアルコールMDA(日本乳化剤社製):2.05質量部
・アデニン(東京化成工業社製):2.05質量部
・界面活性剤(シリコーン系界面活性剤、BYK-348、ビックケミー社製):2.12質量部
・メタノールと蒸留水と混合溶剤(メタノール:蒸留水=7:3(質量比)):屈折率調整層形成用組成物の固形分濃度が1.62質量%になる量
【0227】
<実施例27>
(組成物の調製)を下記手順とすること以外は、実施例1と同一の手順で転写フィルムを作製した。
(組成物の調製)
表8に記載の通りの成分を混合することで、混合物を得た。当該混合物にメチルエチルケトン(MEK)とプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)との混合溶剤(MEK/PGMEA=60%/40%)を添加し、29%の固形分濃度を有する組成物を得た。
【0228】
(積層体の作製)
-貼合工程-
得られた転写フィルムの試験片から保護フィルムを剥離し、試験片における剥離面を銅基板に接触させて貼合し、貼合体を得た。
-露光工程-
次いで、この貼合体の感光性組成物層に対し、仮支持体側から露光(条件:150mJ/cm(i線))を実施した。
-剥離工程-
露光後、支持フィルムを剥離した。
-現像工程-
液温35℃の1質量%の炭酸ナトリウム溶液に、35℃にて50秒間浸漬して現像した。
-ポスト露光工程及びポストベーク工程-
現像後、感光性層側から露光(条件:400mJ/cm(i線))を実施した。さらに、オーブンを用い、150℃、30分の熱処理を行い、感光性組成物層が硬化した膜(以下、硬化膜)が銅基板に積層された積層体を得た。
【0229】
<評価>
(厚みムラの評価)
硬化膜の厚みを走査型電子顕微鏡(SEM)による観察により測定し、下記式(1)に基づいて厚みムラ(%)を算出し、下記評価基準に基づいて硬化膜の厚みムラを評価した。
なお、式(1)中、厚みは、SEMを用いて測定される任意の5か所における硬化膜の厚みを算術平均した平均厚みである。
式(1):厚みムラ(%)={(最大厚み-最小厚み)/厚み}×100
下記評価基準において、実用上、「C」以上が好ましく、「B」以上がより好ましく、「A」が最も好ましい。
-評価基準-
「A」:1%未満
「B」:1%以上3%未満
「C」:3%以上5%未満
「D」:5%以上10%未満
「E」:10%以上
【0230】
(泡状欠陥の評価)
積層体を硬化膜側から光学式顕微鏡を用いて観察し、円形状に見える泡状欠陥(硬化膜の表面にあっても、内部にあってもよい)を、下記評価基準に基づいて評価した。
下記評価基準において、実用上、「C」以上が好ましく、「B」以上がより好ましく、「A」が最も好ましい。
-評価基準-
「A」:泡状欠陥が全く観察されなかった。
「B」:直径0.1μm以下の泡状欠陥が観察された。
「C」:直径0.1μmを超え0.5μm以下の泡状欠陥が観察された。
「D」:直径0.5μmを超え1μm以上の泡状欠陥が観察された。
【0231】
(密着性の評価)
積層体を110℃、85%RH環境で、24時間静置した。
その後、JIS規格(K5400-8.5)を参考に100マスのクロスカット試験を実施した。積層体の試験面である硬化膜にカッターナイフを用いて1mm四方の碁盤目の切り傷を入れ、透明粘着テープ#600(スリーエム(株)製)を強く圧着させ、180℃方向に剥離した後、碁盤目の状態を目視により観察し、以下の評価基準にしたがって密着性を評価した。下記評価基準において、実用上、「C」以上が好ましく、「B」以上がより好ましく、「A」が最も好ましい。
-評価基準-
「A」:硬化膜の剥がれは全く発生しなかった。
「B」:切れこみの近辺のみ、わずかに剥がれが発生した。
「C」:切れこみの近辺のみ、剥がれが発生した。
「D」:切れ込みに寄らず、剥がれが一部発生した。
「E」:全面剥がれが発生し、硬化膜は残らなかった。
【0232】
(銅腐食の評価)
積層体を110℃、85%RH環境で、24時間静置した。
その後、光学式顕微鏡で銅基板の変色を観察した。下記評価基準に基づいて評価した。
下記評価基準において、実用上、「C」以上が好ましく、「B」以上がより好ましく、「A」が最も好ましい。
-評価基準-
「A」:変色が、全く発生しなかった。
「B」:変色が、わずかに観察された。
「C」:変色が、観察された。
「D」:変色が、顕著に観察された。
「E」:変色が、顕著に観察され、一部硬化膜が銅基板から剥がれていた。
【0233】
【表6】
【0234】
【表7】
【0235】
【表8】
【0236】
表6~8中の略称は以下の通りである。
-バインダーポリマー-
バインダーポリマーA:下記構造Aを有するアルカリ可溶性樹脂(各構成単位の比率=質量%、Mw=18,000)
バインダーポリマーB:下記構造Bを有するアルカリ可溶性樹脂(各構成単位の比率=質量%、Mw=27,000)
バインダーポリマーC:下記構造Cを有するアルカリ可溶性樹脂(各構成単位の比率=質量%、Mw=18,000)
【0237】
【化17】
【0238】
【化18】
【0239】
【化19】
【0240】
-重合性化合物-
ADCP:NKエステル A-DCP(新中村化学工業株式会社、重合性化合物)
TO2349:アロニックス TO-2349(東亞合成株式会社、重合性化合物)
A-NOD-N:NKエステル A-NOD-N(新中村化学工業株式会社、重合性化合物)
DPHA:KAYARAD DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、日本化薬株式会社、重合性化合物)
8UX-015A:アクリット8UX-015A(ウレタン-アクリルモノマー、大成ファインケミカル社製)
【0241】
-光重合開始剤-
OXE-02:IRGACURE OXE02(BASF社、光重合開始剤)
Irg 907:Omnirad 907(IGM Resins B.V.社、光重合開始剤)
APi-307:APi-307(Shenzhen UV-ChemTech LTD社、光重合開始剤)
【0242】
-架橋性化合物-
WT32-B75P:デュラネート WT32-B75P(旭化成ケミカルズ株式会社)
化合物Q-1:下記の構造の化合物
【0243】
【化20】
【0244】
-他の成分-
NPG:N-フェニルグリシン
XIRAN EF40:XIRAN EF-40(Polyscope Polymers社)
Amitrole:3-アミノ-1,2,4-トリアゾール
5-ATZ:5-アミノ-1H-テトラゾール
【0245】
-フッ素系界面活性剤-
F551A:(DIC社製)
【0246】
上記結果から、本実施例の組成物は、厚みのムラ及び膜の欠陥が少ない硬化膜が得られることがわかる。
また、本実施例の組成物は、基板に対する密着性が高く、かつ、基板の保護性に優れた硬化膜が得られることがわかる。
【符号の説明】
【0247】
1 仮支持体、3 感光性組成物層、5 屈折率調整層、7 保護フィルム
図1