(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052307
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】組成物、接着剤、硬化物の製造方法及び硬化物
(51)【国際特許分類】
C08L 63/00 20060101AFI20240404BHJP
C08K 5/1515 20060101ALI20240404BHJP
C08L 101/06 20060101ALI20240404BHJP
C08G 59/24 20060101ALI20240404BHJP
C08G 65/18 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
C08L63/00 C
C08K5/1515
C08L101/06
C08G59/24
C08G65/18
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022158943
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉原 朋矢
(72)【発明者】
【氏名】板野 和幸
(72)【発明者】
【氏名】松土 和彦
【テーマコード(参考)】
4J002
4J005
4J036
【Fターム(参考)】
4J002AA05X
4J002CD02W
4J002CF00X
4J002CG00X
4J002CH02X
4J002EL026
4J002FD206
4J002GH00
4J002GJ01
4J002GJ02
4J005AA07
4J036AA01
4J036AJ09
4J036FA11
4J036FB11
4J036FB12
4J036FB15
4J036GA21
4J036GA22
4J036JA06
(57)【要約】
【課題】接着力に優れ、且つ耐湿熱性に優れた硬化物が製造できる組成物を提供すること。
【解決手段】脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)を含有する組成物。オキセタン化合物(D)を含有することが好適である。脂環エポキシ化合物(A)が、多官能脂環エポキシ化合物を含有することも好適である。芳香族単官能エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が、150~450g/eq.であることも好適である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)を含有する組成物。
【請求項2】
オキセタン化合物(D)を含有する請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
脂環エポキシ化合物(A)が、多官能脂環エポキシ化合物を含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
芳香族単官能エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が、150~450g/eq.である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項5】
多官能アルコール化合物(C)のアルコール当量が、100~1,500g/eq.である請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項6】
脂肪族エポキシ化合物(E)を含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項7】
芳香族多官能エポキシ化合物(F)を含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項8】
重合開始剤(G)を含有する請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1又は2に記載の組成物を含有する接着剤。
【請求項10】
請求項1又は2に記載の組成物に対して、活性エネルギー線を照射する工程、及び、
請求項1又は2に記載の組成物を加熱する工程、の少なくとも一方を含む、硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項1又は2に記載の組成物の硬化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、脂環エポキシ化合物及び芳香族エポキシ化合物を含有する組成物、接着剤、硬化物の製造方法及び硬化物に関する。
【0002】
従来、脂環エポキシ化合物及び/又は芳香族エポキシ化合物を用いた組成物は、インキ、塗料、各種コーティング剤、接着剤、光学部材等の種々の分野において用いられている。組成物の接着性能の観点にて、脂環エポキシ化合物又は芳香族エポキシ化合物を所定条件で用いる組成物としては、特許文献1~3等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011-236389号公報
【特許文献2】特開2012-149262号公報
【特許文献3】国際公開2008/111584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1~3に記載の組成物は接着力が十分ではなく、また耐湿熱性においても不足していた。
【0005】
したがって本発明の課題は、接着力に優れ、且つ耐湿熱性に優れた硬化物を製造することができる組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の発明者らは前記の課題を解決するために、鋭意検討を行った。その結果、本発明は、以下の〔1〕~〔11〕を提供する。
〔1〕脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)を含有する組成物。
〔2〕オキセタン化合物(D)を含有する〔1〕に記載の組成物。
〔3〕脂環エポキシ化合物(A)が、多官能脂環エポキシ化合物を含有する〔1〕又は〔2〕に記載の組成物。
〔4〕芳香族単官能エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が、150~450g/eq.である〔1〕~〔3〕の何れか一項に記載の組成物。
〔5〕多官能アルコール化合物(C)のアルコール当量が、100~1,500g/eq.である〔1〕~〔4〕の何れか一項に記載の組成物。
〔6〕脂肪族エポキシ化合物(E)を含有する〔1〕~〔5〕の何れか一項に記載の組成物。
〔7〕芳香族多官能エポキシ化合物(F)を含有する〔1〕~〔6〕の何れか一項に記載の組成物。
〔8〕重合開始剤(G)を含有する〔1〕~〔7〕の何れか一項に記載の組成物。
〔9〕〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の組成物を含有する接着剤。
〔10〕〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の組成物に対して、活性エネルギー線を照射する工程、及び、〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の組成物を加熱する工程、の少なくとも一方を含む、硬化物の製造方法。
〔11〕〔1〕~〔8〕の何れか一項に記載の組成物の硬化物。
【発明の効果】
【0007】
本発明の組成物によれば、接着力に優れ、且つ耐湿熱性に優れた硬化物を製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
1.組成物
以下、本発明の組成物について詳細に説明する。
本発明にて接着性と耐湿熱性が優れる理由としては、明確ではないが、3成分の長所が優れて発揮された結果と考えられる。つまり、脂環エポキシ化合物(A)は反応性が高い反面、硬化収縮が大きく接着力が低下しやすい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)は単独では初期反応性に劣るものの、低粘度で硬化収縮の抑制作用があり且つ耐久性を付与しやすい。多官能アルコール化合物(C)は、それ自体は硬化性能が不十分であるが、硬化物に柔軟性を与えやすく且つ2官能以上であることで架橋密度を高めやすい。本発明では3成分の組み合わせが、3種を組み合わせて互いの欠点を他の二成分で補いつつ、接着力及び耐湿熱性の効果を相乗的に高めるという形で発揮されるようになったものと考えられる。後述する実施例及び比較例に示すように、本発明では、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)を組み合わせることで光照射の初期段階のみならず、初期段階の後においても効果的に接着性能を高めることができるために接着性能に優れる。また、多官能アルコール化合物(C)存在下で芳香族単官能エポキシ化合物(B)と脂環エポキシ化合物(A)を組み合わせることで耐湿熱性を含めた耐久性が優れて効果的に向上する。
中でも、本開示の組成物は、接着力の例として、初期接着力、具体的には、光照射した後1分~10分における接着力に優れる。このような初期接着力があると、例えば基材同士を貼り合わせ露光した後の剥がれやずれが発生しづらい。このため初期接着力に優れることは、生産プロセスの適正化を図る観点から特に有利である。
上記の効果は、オキセタン化合物(D)を用いると更に顕著となる。
更に本発明の組成物は、芳香族単官能エポキシ化合物(B)を含有することで低粘度な組成物を容易に調製でき、塗工性にも優れる。
と考えられる。
【0009】
<脂環エポキシ化合物(A)>
本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)とは、シクロアルケンオキサイド構造を分子中に少なくとも一つ有する化合物である。シクロアルケンオキサイド構造は、シクロヘキセン環含有化合物やシクロペンテン環含有化合物を酸化剤でエポキシ化することによって得られる、シクロヘキセンオキサイド構造やシクロペンテンオキサイド構造のように、脂肪族環とエポキシ環とが環構造の一部を共有する構造である。以下、シクロアルケンオキサイド構造において脂肪族環と環構造の一部を共有しているエポキシ基を脂環エポキシ基という。
【0010】
本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)のエポキシ当量が、60~300g/eq.であることが好ましく、なかでも70~270g/eq.であることが好ましく、特に80~250g/eq.であることが好ましい。脂環エポキシ化合物(A)のエポキシ当量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである
【0011】
本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)の分子量が、100~800であることが好ましく、なかでも120~400であることが好ましく、特に120~300であることが好ましい。脂環エポキシ化合物(A)の分子量が、上述の範囲内である場合、ハンドリング性に優れ(低粘度)、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0012】
脂環エポキシ基は反応性基の一種である。前記反応性基とは、他の反応性基と共有結合を形成できる性質を有する官能基を意味する。脂環エポキシ化合物(A)は、脂環エポキシ基以外の他の反応性基を有していてもよい。反応性基としては、脂環エポキシ基以外に、エチレン性不飽和結合性基、炭素-炭素三重結合性基(エチニル基)、シアノ基、脂環エポキシ基以外のエポキシ基、メチルエポキシ基、オキセタニル基、イソシアネート基、水酸基(フェノール性水酸基を含む)、アミノ基及びチオール基などが挙げられる。なお、シアノ基は三量化反応によりトリアジン環を形成することが可能であるため反応性基に含める。エチレン性不飽和結合性基としては、ビニル基、アクリル基、メタクリル基が上げられる。脂環エポキシ化合物(A)における脂環エポキシ基以外の反応性基としては、エチレン性不飽和結合性基、脂環エポキシ基以外のエポキシ基、メチルエポキシ基、オキセタニル基、水酸基が好ましく、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メチルエポキシ基、オキセタニル基、水酸基が特に好ましい。
【0013】
脂環エポキシ化合物(A)が脂環エポキシ基以外の反応性基を有する場合に、反応性基は、反応性基を有する基として分子内の任意の位置に結合していてもよい。反応性基又は反応性を有する基の位置は脂環エポキシ基を有する環上であっても、それ以外の位置であってもよい。反応性基を有する基の例としては、下記式(1-6-1)が挙げられる。
*-Z1-R99(式(1-6-1)
(式中、R99は反応性基であり、Z1は単結合、炭素原子数1~16のアルキレン基又はアルキレン基中の酸素原子が-O-で置換された炭素原子数1~16の基を表す。*は結合手である。)
炭素原子数1~16のアルキレン基とは、炭素原子数1~16のアルキル基から水素原子を1個除いた基が挙げられ、該アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、tert-ペンチル基、ヘキシル基、2-ヘキシル基、3-ヘキシル基、ヘプチル基、2-ヘプチル基、3-ヘプチル基、イソヘプチル基、tert-ヘプチル基、オクチル基、イソオクチル基、tert-オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、イソノニル基、デシル基、n-ウンデシル基、1-メチルデシル基、n-ドデシル基、4-エチルオクチル基、1,3,5,7-テトラメチルオクチル基、トリデシル基、1-ヘキシルヘプチル基、n-テトラデシル基、n-ペンタデシル基、n-ヘキサデシル基が挙げられる。炭素原子数1~16のアルキレン基としては、メチレン基、メチルメチン基、イソプロピリデン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基等が挙げられる。アルキレン基中の酸素原子が-O-で置換された炭素原子数1~16の基としては、炭素原子数1~16のアルキレン基の一方の末端に酸素が結合した基(炭素原子数1~16のオキシアルキレン基)や、炭素原子数1~17のアルキレン基における内部のメチレン基の1又は2以上を酸素原子が互いに隣り合わない条件にて酸素原子で置換した基が挙げられる。
【0014】
例えば、反応性基としてエチレン性不飽和結合性基を有する基を用いる場合、反応性基を有する基の例としては、炭素原子数2~20のアルケニル基及び炭素原子数2~20のアルケニルオキシ基が挙げられる。炭素原子数2~20のアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、2-メチル-2-プロペニル基、3-ブテニル基、4-ペンテニル基及び5-ヘキセニル基等が挙げられる。炭素原子数2~20のアルケニルオキシ基としては、アリルオキシ基、2-メチル-2-プロペニルオキシ基、3-ブテニルオキシ基、4-ペンテニルオキシ基及び5-ヘキセニルオキシ基等が挙げられる。
【0015】
本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)の反応性基の数が、1~4で、あることが好ましく、なかでも2~4であることが好ましく、特に2つであることが好ましい。
また本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)の脂環エポキシ基の数が、1~4で、あることが好ましく、なかでも1~3であることが好ましく、特に2つであることが好ましい。なお、本明細書において、脂環エポキシ基の数が2つ以上である脂環エポキシ化合物(A)を、多官能脂環エポキシ化合物ともいう。特に本開示においては、脂環式エポキシ基を2つ有し、その他の反応性基を有さないものが好ましい。脂環エポキシ化合物(A)の反応性基が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0016】
本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)が、下記一般式(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、(1-5)及び(1-6)から選択される化学式で表される化合物のうち少なくとも1種であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0017】
【0018】
式(1-1)中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、R8、R9及びR10は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基を表す。
式(1-2)中、R11、R12、R13、R14、R15、R16、R17、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25及びR26は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基。又は脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基を表す。
式(1-3)中、R31、R32、R33、R34、R35、R36、R37、R38、R39、R40、R41、R42、R43、R44、R45、R46、R47及びR48は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基。炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基を表す。
式(1-4)中、R51、R52、R53、R54、R55、R56、R57、R58、R59、R60、R61、R62、R63、R64、R65、R66、R67及びR68は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基を表す。
式(1-5)中、R71、R72、R73、R74、R75、R76、R77、R78、R79、R80、R81、R82、R83、R84、R85、R86、R87及びR88は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基、又は脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基を表し、
Xは、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基、カルボニル基(-CO-)、エーテル結合(-O-)、エステル結合(-COO-、-OCO-)、カーボネート基(-OCOO-、アミド基(-NR’-CO-、R’は水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基)若しくはこれらが酸素原子が隣接しないように複数連結した基を表す。
また、エステル結合-アルキレン基-エステル結合-アルキレン基のように、同一種類の基を2以上組み合わせてもよい。
式(1-6)中、R91、R92、R93、R94、R95、R94‘、R95’、R96、R97及びR98は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数1~20のアルコキシ基又は脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基を表し、R94及びR95は少なくとも一方が脂環エポキシ基以外の反応性基を有する基であり、反応性基を有する基でない場合、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルコキシ基を表す。
【0019】
上記式(1-1)中のR1~R10、上記式(1-2)中のR11~R26、上記式(1-3)中のR31~R48、上記式(1-4)中のR51~R68、上記式(1-5)中のR71~R88、及び上記式(1-6)中のR91~R98で表されるハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素等が挙げられる。
【0020】
上記式(1-1)中のR1~R10、上記式(1-2)中のR11~R26、上記式(1-3)中のR31~R48、上記式(1-4)中のR51~R68、上記式(1-5)中のR71~R88及び上記式(1-6)中のR91~R98で表される炭素原子数1~20のアルキル基としては、例えば、上記で挙げた炭素原子数1~16のアルキル基が挙げられるほか、n-ヘプタデシル基、n-オクタデシル基、n-エイコシル基等が挙げられる。
【0021】
上記式(1-1)中のR1~R10、上記式(1-2)中のR11~R26、上記式(1-3)中のR31~R48、上記式(1-4)中のR51~R68、上記式(1-5)中のR71~R88及び上記式(1-6)中のR91~R98で表される炭素原子数1~20のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、sec-ブトキシ基、tert-ブトキシ基、アミルオキシ基、イソアミルオキシ基、tert-アミルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、tert-オクチルオキシ基、ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、デシルオキシ基、イソデシルオキシ基、n-ウンデシルオキシ基、1-メチルデシルオキシ基、n-ドデシルオキシ基、4-エチルオクチルオキシ基、1,3,5,7-テトラメチルオクチルオキシ基、n-トリデシルオキシ基、1-ヘキシルヘプチルオキシ基、n-テトラデシルオキシ基、n-ペンタデシルオキシ基、n-ヘキサデシルオキシ基、n-ヘプタデシルオキシ基、n-オクタデシルオキシ基、n-エイコシルオキシ基等が挙げられる。
【0022】
上記式(1-5)中のXで表される、炭素原子数1~4のアルキレン基としては、上記で挙げた炭素原子数1~16のアルキレン基のうち、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
上記Xが、炭素原子数1~4のアルキレン基、カルボニル基、エーテル結合、エステル結合、カーボネート基及びアミド基から選択される基が複数連結した基である場合、Xの全体の炭素原子数としては、2以上20以下とすることができ、2以上10以下が好ましく、2以上5以下が特に好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0023】
上記式(1-1)中のR1~R10、上記式(1-2)中のR11~R26、上記式(1-3)中のR31~R48、上記式(1-4)中のR51~R68、上記式(1-5)中のR71~R88、及び上記式(1-6)中のR91~R98で表される反応性基を有する基としては、上述した一般式(1-6-1)で表される基等が挙げられる。本開示においては、R94及びR95の少なくとも一方が、反応性基を有する基であるが、R94のみが、反応性基を有する基であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0024】
上記式(1-1)~(1-6)で表される化合物の製造方法としては、特開2019-189844号公報に記載の製造方法等が挙げられる。
上記式(1-1)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、THI-DE(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記式(1-2)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DE-102(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記式(1-3)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、DE-103(ENEOS(株)製)等が挙げられる。
上記式(1-5)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、セロキサイド2021P、セロキサイド8000((株)ダイセル製)等が挙げられる。
上記式(1-6)で表される化合物のうち市販されているものとしては、例えば、セロキサイド2000、セロキサイド3000((株)ダイセル製)、LDO(シムライズ製)等が挙げられる。
【0025】
本開示においては、上記脂環エポキシ化合物(A)が、上記式(1-1)、(1-2)、(1-3)、(1-4)、(1-5)及び(1-6)から選択される化学式で表される化合物のうち少なくとも1種を含むことが好ましく、上記式(1-1)、(1-5)及び(1-6)から選択される化学式で表される化合物のうち少なくとも1種を含むことがより好ましく、特に、上記式(1-1)及び(1-5)で表される化合物のうち少なくとも1種を含むことが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。上記脂環エポキシ化合物(A)は、上記式(1-5)で表される化合物を単独で用いるか、上記式(1-5)で表される化合物及び上記式(1-6)で表される化合物を組み合わせて用いることが好ましい。両者の組み合わせる場合の質量比率は前者;後者が100:1~300が好ましく、100:2~150がより好ましく、100:7~100であってもよい。
【0026】
上記式(1-1)~(1-4)については、脂環エポキシ基以外の反応性基を有しない化合物であってよい。
上記式(1-1)中のR1~R10、上記式(1-2)中のR11~R26、上記式(1-3)中のR31~R48、上記式(1-4)中のR51~R68、上記式(1-5)中のR71~R88、及び上記式(1-5)中のR91~R93、R94’、R95’、R95~R98は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素原子数1~3のアルキル基であることがより好ましく、特に、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
上記式(1-5)中のXは、単結合、炭素原子数1~4のアルキレン基、エステル結合、又は炭素原子数1~4のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましく、なかでも、単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましく、特に、単結合、又は、炭素原子数1~2のアルキレン基とエステル結合とが連結した基であることが好ましく、なかでも特に、単結合であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
本開示においては、R94及びR95の少なくとも一方が、反応性基を有する基であるが、R94のみが、反応性基を有する基であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
上記式(1-6)中のR94としては、所望の接着力及び耐湿熱性が得られるものであれば特に限定されるものではないが、上述した一般式(1-6-1)で表される基であることが好ましい。
上記式(1-6)中のR94としては、式(1-6-1)で表される基であり、反応性基として、エチレン性不飽和結合性基、エポキシ基、メチルエポキシ基、オキセタニル基、水酸基が好ましく、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、アクリロイルオキシ基、メタクリロイルオキシ基、エポキシ基、メチルエポキシ基、オキセタニル基及び水酸基から選ばれる基を用いることが好ましく、ビニル基、アクリル基、メタクリル基、エポキシ基、メチルエポキシ基から選ばれる基を用いることがより好ましく、ビニル基、エポキシ基、メチルエポキシ基から選ばれる基を用いることがより好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
また上記式(1-6-1)で表される基におけるZ1は単結合又は炭素原子数1~4のアルキレン基又は炭素原子数1~4のオキシアルキレン基であることが好ましく、単結合又は炭素原子数1~2のアルキレン基であることがより好ましく、単結合であることが最も好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0027】
本開示においては、脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量100質量部に対して20~55質量部で、あることが好ましく、なかでも25~45質量部であることが好ましく、特に25~40質量部であることが好ましい。脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0028】
脂環エポキシ化合物(A)の含有量は、組成物中、2質量%以上50質量%以下であることが好ましく、5質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、10質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0029】
脂環エポキシ化合物(A)の含有量は、組成物の固形分中、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、12質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。本明細書において組成物の固形分とは溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0030】
脂環エポキシ化合物(A)は、組成物の固形分中、5質量%以上60質量%以下であることが好ましく、12質量%以上45質量%以下であることがより好ましく、15質量%以上35質量%以下であることが特に好ましい。脂環エポキシ化合物(A)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。本明細書において組成物の固形分とは溶剤を除いた成分の合計量をいう。
【0031】
式(1-5)で表される化合物の含有量は、エポキシ化合物、オキセタン化合物(D)及び多官能アルコール化合物(C)の合計量中、2~45質量%が好ましく、8~40質量%がより好ましく、17~35質量%が更に好ましく、21~35質量%が最も好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
式(1-1)で表される化合物の含有量は、エポキシ化合物、オキセタン化合物(D)及び多官能アルコール化合物(C)の合計量中、0質量%以上40質量%以下が好ましく、30質量%以下がより好ましく、23質量%以下が最も好ましい。含有する場合、下限としては、2質量%以上、4質量%以上、或いは7質量%以上が好適に挙げられる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
式(1-1)で表される化合物の含有量は、エポキシ化合物、オキセタン化合物(D)及び多官能アルコール化合物(C)の合計量中、0質量%以上40質量%以下が好ましく、20質量%以下がより好ましく、13質量%以下が最も好ましい。含有する場合には下限としては、2質量%以上、4質量%以上、或いは7質量%以上が好適に挙げられる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0032】
<芳香族単官能エポキシ化合物(B)>
本開示においては、芳香族単官能エポキシ化合物(B)とは、分子内に脂環エポキシ基を含まず、芳香族環を1つ以上含有し、脂環エポキシ基以外のエポキシ基(以下、「他のエポキシ基」ともいう。)を1つ有する化合物である。
【0033】
本開示においては、芳香族単官能エポキシ化合物(B)の芳香族環の数が、1~8で、あることが好ましく、なかでも1~6であることが好ましく、特に1~4が好ましく、1~2が最も好ましい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)の芳香族環の数が、上述の範囲内である場合、他材料と溶解性が良く均一な組成物が得られ、低粘度でハンドリング性がよく、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。なお、芳香族環としては、芳香族炭化水素環及び芳香族複素環が挙げられ、例えば、ベンゼン等の単環、ナフタレン、アントラセン、インドール、カルバゾール、フルオレン及びクマリン等の縮合環が挙げられる。なお、2つの単環が縮合してなる1つの縮合環は2つとカウントする。
【0034】
本開示においては、芳香族単官能エポキシ化合物(B)の反応性基の数が、1~3が好ましく、中でも1~2が好ましく、脂環エポキシ基以外のエポキシ基1つが特に好ましい。
芳香族単官能エポキシ化合物(B)の反応性基の数が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物がより得やすいからである。
【0035】
上記芳香族単官能エポキシ化合物(B)としては、具体的には、下記式(2-1)で表される化合物が好ましく挙げられる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0036】
【0037】
(式中、R195は、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基であり、Z2は単結合、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数1~20のオキシアルキレン基又は炭素原子数4~20のポリオキシアルキレン基であり、
pは、0~4の数である。)ここで、単結合とはZ2が酸素原子とベンゼン環を直接結合
【0038】
上記一般式(2-1)中のR195に用いられるアルキル基及びアルコキシ基としては、上記式(1-1)中のR1等に用いられる炭素原子数1~20のアルキル基又は炭素原子数1~20のアルコキシ基の例として挙げた基のうち、所定の炭素原子数を満たす基を用いることができる。
Z2で表される炭素原子数1~20のアルキレン基とは、上記Z1で説明した炭素原子数1~16のアルキレン基と炭素原子数が拡大された以外は同様である。炭素原子数1~20のオキシアルキレン基としては、当該炭素原子数1~20のアルキレン基における、ベンゼン環に結合する側の末端に酸素原子を結合させた基が挙げられる。
炭素原子数4~20のポリオキシアルキレン基としては、オキシアルキレン基が複数結合して炭素原子数4~20となった基が挙げられ、下記式(2-1-1)で表される基である。
*1-(O-R196)k-*2(2-1-1)
(式中、*1はベンゼン環に結合する結合手であり、*2は酸素原子に結合する結合手である。kは2以上の数である。R196は炭素原子数2~4のアルキレン基である。)
【0039】
本開示においては、pが0~3であることが好ましく、なかでも0~2であることが好ましく、特に0~1であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0040】
本開示においては、R195が、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基であるため他の脂環エポキシ化合物(A)及び多官能アルコール化合物(C)との相溶性に優れ、炭素原子数1~10のアルキル基であることがより好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基であることが最も好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0041】
本開示においては、Z2が単結合、炭素原子数1~10のアルキレン基、炭素原子数1~10のオキシアルキレン基又は炭素原子数4~10のポリオキシアルキレン基であることが好ましく、単結合、炭素原子数1~6のアルキレン基、炭素原子数1~6のオキシアルキレン基又は炭素原子数4~9のポリオキシアルキレン基であることがより好ましく、単結合、又は炭素原子数1~6のオキシアルキレン基であることが更に好ましく、単結合、又は炭素原子数2~5のオキシアルキレン基であることが最も好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0042】
式(2-1)で表される化合物の例としては、フェノール、クレゾール及びブチルフェノール等の1価フェノール、又はこれらに更にアルキレンオキサイドを付加した化合物のグリシジルエーテル化物が挙げられる。また芳香族単官能エポキシ化合物(B)としては、安息香酸やトルイル酸、ナフトエ酸等の安息香酸類のグリシジルエステル、スチレンオキサイドのエポキシ化物等も挙げられる。
【0043】
芳香族単官能エポキシ化合物(B)は、エポキシ当量が、150~450g/eq.で、あることが好ましく、なかでも160~350g/eq.であることが好ましく、特に180~250g/eq.であることが好ましい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)のエポキシ当量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0044】
本開示においては、芳香族単官能エポキシ化合物(B)の分子量が、150~450で、あることが好ましく、なかでも160~350であることが好ましく、特に180~250であることが好ましい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)の分子量が、上述の範囲内である場合、ハンドリング性に優れ(低粘度)、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0045】
本開示においては、芳香族単官能エポキシ化合物(B)の含有量が、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量100質量部に対して30~65質量部で、あることが好ましく、なかでも40~55質量部であることが好ましく、特に40~50質量部であることが好ましい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0046】
芳香族単官能エポキシ化合物(B)の含有量は、組成物中、10質量%以上70質量%以下であることが好ましく、15質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、20質量%以上45質量%以下であることが特に好ましい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0047】
芳香族単官能エポキシ化合物(B)の含有量は、組成物の固形分中、15質量%以上70質量%以下であることが好ましく、20質量%以上60質量%以下であることがより好ましく、25質量%以上45質量%以下であることが特に好ましい。芳香族単官能エポキシ化合物(B)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0048】
<多官能アルコール化合物(C)>
本開示においては、多官能アルコール化合物(C)とは、エポキシ基(脂環エポキシ基を含む全てのエポキシ基)を含まず、アルコール性水酸基を2つ以上有する化合物である。
【0049】
多官能アルコール化合物(C)は、アルコール当量が、100~1500g/eq.で、あることが好ましく、なかでも200~1500g/eq.であることが好ましく、特に250~1200g/eq.であることが好ましく、500~1200g/eq.であることが最も好ましい。多官能アルコール化合物(C)のアルコール当量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0050】
本開示においては、多官能アルコール化合物(C)の分子量が、500~3,000で、あることが好ましく、なかでも800~2,500であることが好ましく、特に1,000~2,000であることが好ましい。多官能アルコール化合物(C)の分子量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。ここでいう分子量とは、仮に異なる分子量の集合体である場合には、水酸基価による数平均分子量をいう。
【0051】
本開示においては、多官能アルコール化合物(C)の水酸基が、2~6個で、あることが好ましく、なかでも2~4個であることが好ましく、特に2~3個であることが好ましい。ここでいう水酸基の数はアルコール性水酸基の数であることが好ましい。多官能アルコール化合物(C)の水酸基の数が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0052】
本開示においては、多官能アルコール化合物(C)が有するアルコール性水酸基の1つ以上が、1級アルコール又は2級アルコールであることが好ましく、特に1級アルコールであることが好ましい。多官能アルコール化合物(C)が、上述のアルコールである場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0053】
本開示においては、多官能アルコール化合物(C)のアルコール性水酸基以外の反応性基の数が、0~2で、あることが好ましく、特に0であることが好ましい。多官能アルコール化合物(C)のアルコール性水酸基以外の反応性基の数が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物がより得やすいからである。
【0054】
多官能アルコール化合物(C)としては、例えば、分子内にエステル骨格(好ましくはポリエステル骨格)を有するポリエステルポリオール、分子内にエーテル骨格(好ましくはポリエーテル骨格)を有するポリエーテルポリオール、分子内にカーボネート骨格(好ましくはポリカーボネート骨格)を有するポリカーボネートポリオール、ポリエステル骨格、ポリエーテル骨格及びポリカーボネート骨格をいずれも有しない、ポリオール単量体等が挙げられる。
【0055】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、下記一般式(3-1)で表される化合物を好ましく用いることができる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0056】
【0057】
(式中、R201は、水酸基を有していてもよいn2価の炭化水素基を表し、
n2は、2以上の整数を表し、
X201は、それぞれ独立に、下記一般式(3-1-1)で表される基であり、
X201の少なくとも1つは、式(3-1-1)中のn3が1以上の整数である。)
【0058】
*-O-(CO-R202-O)n3-H (3-1-1)
【0059】
(式中、R202は、二価の炭素原子数1~20の炭化水素基を表し、
n3は、0又は1以上の整数を表し、*は結合手を表す。)
【0060】
R201に用いられる水酸基を有していてもよいn2価の炭化水素基は、炭素原子数1~20であることが好ましく、当該炭素原子数の炭化水素基としては、一価の炭素原子数1~20の炭化水素基からn2-1個の水素原子を除いた基を用いることができる。
一価の炭素原子数1~20の炭化水素基としては、一価の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基、炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基が挙げられる。
【0061】
一価の炭素原子数1~20の脂肪族炭化水素基としては、芳香族炭化水素環を含まない炭化水素基であればよく、例えば、炭素原子数1~20のアルキル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基等が挙げられる。
炭素原子数1~20のアルキル基としては、R1の例で挙げた各種のアルキル基等が挙げられる。
炭素原子数3~20のシクロアルキル基とは、3~20の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。前記炭素原子数3~20のシクロアルキル基としては、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等が挙げられる。
炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された炭素原子数4~20の基を意味する。このような炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基としては、例えば、シクロプロピルメチル、2-シクロブチルエチル、3-シクロペンチルプロピル、4-シクロヘキシルブチル、シクロヘプチルメチル等が挙げられる。
炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル、エチレン、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル、シクロペンタジニエル等が挙げられる。
【0062】
一価の炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基としては、芳香族炭化水素環を含み、複素環を含まないものであればよく、例えば、炭素原子数6~20のアリール基、アリール基と上述の脂肪族炭化水素基とを組み合わせた炭素原子数7~20の基等が挙げられる。
なお、本明細書において「炭素原子数6~20の芳香族炭化水素環含有基」とは、「芳香族炭化水素」ではなく「芳香族炭化水素環含有基」の炭素原子数を規定する。他の炭素原子数の場合も同様である。
炭素原子数6~20のアリール基としては、芳香族炭化水素環を有し、芳香族性を有する基である。
上記アリール基としては、フェニル、トリル基等の単環の芳香族環基(以下、単環芳香族炭化水素環基と称する場合がある。)、ナフチル、アントラセニル、フェナントリル、フルオレニル、ピレニル等の単環の芳香族環の縮合環基(以下、縮合芳香族炭化水素基と称する場合がある。)や、ビフェニル、ベンゾフェノン等の2以上の単環芳香族環又はその縮合環が、単結合、カルボニル基(-CO-)又はスルフィド基(-S-)等の連結基を介して結合した化合物から水素原子を1以上除いた基が挙げられる。
なお、トリル基のように、芳香族炭化水素環中の水素原子の1つ又は2つ以上がアルキル基で置換された基は、アリール基に含まれるものである。また、トリル基は、単環芳香族炭化水素環基に該当するものである。
【0063】
R201に用いられる炭化水素基は、芳香族炭化水素環又は脂肪族環含有基であることが好ましく、脂肪環基含有基であることがより好ましく、シクロヘキサン環含有基であることが更に好ましい。201に用いられる炭化水素基は、水酸基を有していてもよく、n2-1個の水素原子を除いた基である。
R201に用いられる炭化水素基の炭素原子数は、1~20が好ましく、2~15であることが好ましく、中でも、3~12であることが好ましく、特に、4~11であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0064】
(3-1)に表される化合物において、式(3-1-1)で表される基が複数存在するところ、複数存在するR202及びn3はそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
R202に用いられる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、中でも、アルキル基から1個の水素原子を除いた基であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
R3に用いられる炭化水素基の炭素原子数は、1~20であればよいが、2~10であることが好ましく、中でも、3~8であることが好ましく、特に、4~6であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0065】
n2の好ましいものとしては、上述した多官能アルコール化合物(C)の水酸基数の好ましいものが挙げられる。
【0066】
n3としては、0又は1以上であればよく、その上限は、30以下とすることができる。一分子中に複数存在するn3は同一であっても異なっていてもよい。
【0067】
一般式(3-1)で表される化合物としては、(株)ダイセル社のPCL-205Hを挙げることができる。なお、一般式(3-1)で表される化合物を含め、ポリエステルポリオールの例としては、ポリオールと、ポリカルボン酸又はヒドロキシカルボン酸との縮合重合体;ポリオールとラクトン類の開環重合体等が挙げられる。
このようなポリエステルポリオールの合成に用いることができるポリオールとしては、例えば、ポリオール単量体が挙げられる。ポリオール単量体としては、後述するもののほか、ポリエチレングリコール、プラクセル303等が挙げられる。
ポリエステルポリオールの合成に用いることができるポリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、特開2019-052231号公報に記載の化合物が挙げられる。
ポリエステルポリオールの合成に用いることができるラクトン類についても、特開2019-052231号公報に記載の化合物が挙げられ、具体的には、ε-カプロラクトン、δ-バレロラクトン、及びγ-ブチロラクトンが挙げられ、中でも、ε-カプロラクトンを好ましく用いることができる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0068】
ポリエーテルポリオールの好適な例の一つとして、以下の式(3-2)で表される化合物が好ましく挙げられる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0069】
【0070】
(式中、R203は、n4価の炭素原子数1~30の炭化水素基を表し、
n4は、2以上の整数を表し、
X203は、それぞれ独立に、下記式(3-2-1)で表される基であり、
X203の少なくとも1つは、式(3-2-1)中のsが1以上の整数である。)
【0071】
*-O(-R204-O)s-H (3-2-1)
【0072】
(式中、R204は、二価の炭素原子数2~4の炭化水素基を表し、
sは、0又は1以上の整数を表し、*は結合手を表す。)
【0073】
R203に用いられるn4価の炭素原子数1~30の炭化水素基としては、一価の炭素原子数1~30の炭化水素基からn4-1個の水素原子を除いた基を用いることができる。一価の炭素原子数1~30の炭化水素基については、上述の一般式(3-1)中のR201で説明したものやそれに類する基を用いることができる。
【0074】
R203に用いられる炭化水素基は、芳香族炭化水素環含有基であることが好ましく、中でも、2つ以上のベンゼン環が連結基にて連結した基であることがより好ましく、2つのベンゼン環がアルキレン基で連結された基であることが特に好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
R203に用いられる炭化水素基の炭素原子数は、6~25であることが好ましく、中でも、6~20であることが好ましく、特に、13~16であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0075】
n4の好ましいものとしては、上述した多官能アルコール化合物(C)の水酸基数の好ましいものが挙げられる。
【0076】
(3-2)に表される化合物において、式(3-2-1)で表される基が複数存在するところ、複数存在するR204及びsはそれぞれ同一であっても異なっていてもよい。
【0077】
R204としては、炭素原子数が2~4のアルキレン基が好適に挙げられ、炭素原子数が2~3のアルキレン基がより好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0078】
本開示においては、式(3-2-1)中のsの値が、2~15であることが好ましく、中でも3~10であることが好ましく、4~7であることが特に好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0079】
式(3-2)で表される化合物の例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ビスフェノール類などのポリオール単量体にプロピレンオキサイド及び/又はエチレンオキサイドを付加して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。例えば、ADEKA社のBPX-55等があげられる。
ポリエーテルポリオールとしては、ポリオール単量体の多量体;ポリオール単量体と、エチレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加反応体;テトラヒドロフランなどの環状エーテルの開環重合体も挙げられる。
【0080】
ポリカーボネートポリオールの好適な例としては、以下の式(3-3)で表される構造単位を有する化合物が好ましく挙げられる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0081】
【0082】
(式中、R206は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は複素環を含有する炭素原子数2~20の基を表す)
【0083】
R206に用いられる炭素原子数1~20の炭化水素基としては、一価の炭素原子数1~20の炭化水素基から1個の水素原子を除いた基を用いることができる。一価の炭素原子数1~20の炭化水素基については、上述の一般式(3-1)中のR201で説明したものを用いることができる。
【0084】
R206に用いられる炭化水素基は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、中でも、アルキル基から1個の水素原子を除いた基であることが好ましく、分岐状アルキル基から1個の水素原子を除いた基であることが特に好ましい。
R206に用いられる炭化水素基の炭素原子数は、1~20であればよいが、2~15であることが好ましく、中でも、3~10であることが好ましく、特に、3~8であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0085】
R206に用いられる複素環を含有する炭素原子数2~20の基としては、例えば、下記(3-3-1)で表される基が挙げられるほか、ピロリル、ピリジル、ピリジルエチル、ピリミジル、ピリダジル、ピペラジル、ピペリジル、ピラニル、ピラニルエチル、ピラゾリル、トリアジニル、トリアジニルメチル、ピロリジル、キノリル、イソキノリル、キノキサリル、キナゾリル、シンノリル、フタラジル、プリル、イミダゾリル、ベンゾイミダゾリル、トリアゾリル、フリル、フラニル、ベンゾフラニル、チエニル、チオフェニル、ベンゾチオフェニル、チアジアゾリル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾトリアゾリル、イソチアゾリル、イソオキサゾリル、インドリル、モルフォリニル、チオモルフォリニル、2-ピロリジノン-1-イル、2-ピペリドン-1-イル、2,4-ジオキシイミダゾリジン-3-イル及び2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イルや、2,4-ジオキシオキサゾリジン-3-イル、イソシアヌル、1、3-ジオキソラニルといった複素環からなる基から水素原子を一つ除いた二価の基、及び、これら複素環からなる基と炭化水素基が結合した二価の基が挙げられる。複素環からなる基と炭化水素基とが結合した基において結合手は複素環上に存在してもよく、炭化水素基上に存在してもよい。当該炭化水素基としては、上述の一般式(3-1)中のR201で説明したものを用いることができる。
【0086】
【0087】
R206に用いられる複素環を含有する炭素原子数2~20の基としては、複素環が非芳香族性酸素含有複素環であるものが好ましく、なかでも非芳香族性酸素含有複素環を含有する炭素原子数が4~12である基が好ましく、とりわけ、上記(3-3-1)を含有する炭素原子数が6~10である基が好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0088】
式(3-3)で表される構造単位を有する化合物としては、例えば下記式(3-3-2)で表される化合物や、当該化合物にポリオキシアルキレンを付加した化合物等を好適に用いることができる。
【0089】
【化7】
(式中、nは1以上の数であり、R
206は(3-3)と同様である。)
【0090】
式(3-3)で表される構造単位を有する化合物としては、上述のポリオール単量体を用い、ホスゲン法、カーボネート交換反応等を用いて得られるものが挙げられる。例えば、三菱ケミカル社のNL2030B、HS0840B、HS0850H等があげられる。
【0091】
本開示において、多官能アルコール化合物(C)として、特にポリエステルポリオール又はポリカーボネートポリオールを含有することが、硬化物の柔軟性付与力が高く接着力向上の点で好ましく、なかでもポリカーボネートポリオールを含有することが好ましく、とりわけ、とりわけ柔軟性付与の効果が大きい点からポリカーボネートジオールを含有することが好ましく、特に上記式(3-3)の構造単位を有する化合物を用いることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0092】
本開示においては、多官能アルコール化合物(C)の含有量が、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量100質量部に対して3~25質量部で、あることが好ましく、なかでも5~20質量部であることが好ましく、特に10~15質量部であることが好ましい。多官能アルコール化合物(C)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0093】
多官能アルコール化合物(C)の含有量は、組成物中、0.5質量%以上25質量%以下であることが好ましく、1質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上15質量%以下であることが特に好ましい。多官能アルコール化合物(C)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0094】
多官能アルコール化合物(C)の含有量は、組成物の固形分中、1質量%以上25質量%以下であることが好ましく、2質量%以上20質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上17質量%以下であることが特に好ましい。多官能アルコール化合物(C)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0095】
<オキセタン化合物(D)>
本開示においては、オキセタン化合物(D)とは、オキセタニル基を有し、エポキシ基を含まず、アルコール性水酸基を2つ以上有さない化合物である。
【0096】
オキセタン化合物(D)を含有する組成物は好ましく、なかでもオキセタニル基以外の反応性基、特に水酸基を有するオキセタン化合物又はオキセタニル基を1~4つ有するオキセタン化合物が特に好ましく、オキセタニル基を1~3つ、特に1~2つ有するオキセタン化合物が好ましい。また、水酸基及びオキセタニル基をそれぞれ有するオキセタン化合物が好ましく、特に水酸基及びオキセタニル基を1つずつ有するオキセタン化合物が好ましい。これらのオキセタン化合物(D)を含有する場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0097】
オキセタン化合物(D)を用いる場合、オキセタン化合物(D)のオキセタニル当量が、100~300g/eq.で、あることが好ましく、なかでも105~250g/eq.であることが好ましく、特に110~230g/eq.であることが好ましい。オキセタン化合物(D)のオキセタニル当量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0098】
本開示においては、オキセタン化合物(D)の分子量が、100~2,000で、あることが好ましく、なかでも105~1,000であることが好ましく、特に110~500であることが好ましい。オキセタン化合物(D)の分子量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0099】
本開示においては、オキセタン化合物(D)の反応性基の数が、1~12で、あることが好ましく、なかでも1~4であることが好ましく、1~3であることが好ましく、特に1~2であることが好ましい。オキセタン化合物(D)の反応性基の数が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0100】
上記オキセタン化合物としては、下記式(4-1)で表される化合物が好ましく挙げられる。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0101】
【0102】
上記式(4-1)中、RA2は、水素原子又は炭素原子数1~10のアルキル基を表し、RA3は、水素原子又は反応性基を有する炭素原子数1~20の基を表すか、或いは、基中のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよく、基中の水素原子がオキセタニル基で置換されていてもよい炭素原子数1~20の炭化水素基を表す。
【0103】
上記式(4-1)中のRA2で表されるアルキル基の例は、上記式(1-1)中のR1等に用いられる炭素原子数1~20のアルキル基において、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。RA3で表される炭化水素基としては、式(3-1)で表されるR201等に用いられる炭化水素基と同様のものが挙げられる。RA3で表される炭化水素基の基中のメチレン基が酸素原子に置換された場合、酸素原子同士は隣り合わないものとする。RA3が基中の水素原子がオキセタニル基で置換されている場合、RA3の炭素原子数は当該オキセタニル基も含めて炭素原子数20以下とする。
【0104】
上記RA2は、炭素原子数1~10のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~5のアルキル基であることがより好ましく、特に、炭素原子数1~3のアルキル基であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
A3で表される反応性基を有する炭素原子数1~20の基としては、Z1で挙げた、炭素原子数1~16のアルキレン基又は炭素原子数1~16のオキシアルキレン基に対応する炭素原子数1~16のアルキル基若しくはアルキレン基に反応性基が結合した基が挙げられる。反応性基としてはエポキシ基が好ましい。
【0105】
上記RA3は、水素原子であるか、又は、オキセタニル基を有していてもよく、基中のメチレン基が酸素原子で置換されていてもよい脂肪族炭化水素基であることが好ましく、
なかでも、水素原子であるか、又は、オキセタニル基を有しないアルキル基であることが好ましく、
特に、水素原子であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
また、RA3が水素原子以外の基である場合、RA3の炭素原子数は1~10であることが好ましく、5~10であることがより好ましく、特に、6~9であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0106】
上記式(4-1)で表される化合物の具体例としては、3-エチル-3-(メトキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(2-エチルヘキシロキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(シクロヘキシルオキシメチル)オキセタン、3-エチル-3-(ブチロキシメチル)オキセタン、3,7-ビス(3-オキセタニル)-5-オキサ-ノナン、1,4-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、1,2-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]エタン、1,3-ビス[(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)メチル]プロパン、エチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、トリエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、テトラエチレングリコールビス(3-エチル-3-オキセタニルメチル)エーテル、1,4-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ブタン、1,6-ビス(3-エチル-3-オキセタニルメトキシ)ヘキサン、3-エチル-3-(3-エチル-3-オキセタニルメチルオキシメチル)オキセタン、キシリレンビスオキセタン等が挙げられる。
【0107】
上記オキセタン化合物の市販品としては、例えば、アロンオキセタンOXT-101、アロンオキセタンOXT-212、OXT-121、OXT-221(東亜合成(株)製)、HBOX、OXBP、OXIPA(宇部興産(株)製)等が挙げられる。
【0108】
本開示においては、オキセタン化合物(D)を含む場合、その含有量が、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量100質量部に対して0.5~40質量部で、あることが好ましく、なかでも1~35質量部であることが好ましく、特に5~30質量部であることが好ましい。オキセタン化合物(D)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0109】
本開示において、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)、多官能アルコール化合物(C)、オキセタン化合物(D)、脂肪族エポキシ化合物(E)及び芳香族多官能エポキシ化合物(F)の合計量100質量部に対する、脂環エポキシ化合物(A)及びオキセタン化合物(D)の合計量の割合は、15質量部以上75質量部以下が好ましく、32質量部以上65質量部以下がより好ましく、37質量部以上60質量部以下が好ましく、41質量部以上60質量部以下が最も好ましい。脂環エポキシ化合物(A)及びオキセタン化合物(D)の合計量が上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0110】
オキセタン化合物(D)の含有量は、組成物中、0.5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。オキセタン化合物(D)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0111】
オキセタン化合物(D)の含有量は、組成物の固形分中、0.5質量%以上40質量%以下であることが好ましく、1質量%以上35質量%以下であることがより好ましく、3質量%以上30質量%以下であることが特に好ましい。オキセタン化合物(D)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0112】
<脂肪族エポキシ化合物(E)>
本開示においては、脂肪族エポキシ化合物(E)とは、脂環エポキシ基以外のエポキシ基を有し、脂環エポキシ基及び芳香族環を含まない化合物である。
脂肪族エポキシ化合物(E)を有する組成物は、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるから好ましい。
【0113】
本開示においては、脂肪族エポキシ化合物(E)のエポキシ当量が、100~400g/eq.で、あることが好ましく、なかでも110~300g/eq.であることが好ましく、特に120~250g/eq.であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)のエポキシ当量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0114】
本開示においては、脂肪族エポキシ化合物(E)の分子量が、180~1,000で、あることが好ましく、なかでも220~600であることが好ましく、特に240~500であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)の分子量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0115】
本開示においては、脂肪族エポキシ化合物(E)の反応性基の数が、1~4で、あることが好ましく、なかでも1~3であることが好ましく、特に1~2であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)の反応性基が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0116】
本開示においては、脂肪族エポキシ化合物(E)の反応性基におけるエポキシ基の数が、1~4で、あることが好ましく、なかでも1~3であることが好ましく、特に1~2であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)の反応性基が、上述の範囲内である場合、低粘度でハンドリング性に優れ、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られ、得られる硬化物の耐久性が優れるからである。
【0117】
脂肪族エポキシ化合物(E)の好ましい例として、下記式(5-1)で表される化合物が挙げられる多官能脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。
【0118】
【化9】
上記式(5-1)中、Y
1は、炭素原子数1~20のアルキレン基、下記式(5-1-1)で表される炭素原子数4~20の基、式(5-1-1)に該当せず且つ炭素原子数1~20のアルキレン基中のメチレン基が酸素原子に置換された基(以下「炭素原子数1~20の酸素含有アルキレン基」ともいう)、シクロアルキル環を有する炭素原子数6~20の二価の脂肪族炭化水素基、又は該脂肪族炭化水素基中のメチレン基を酸素原子で置換した基を表す。
【0119】
*-(Y2-O)j-Y2-* (5-1-1)
(式中、*は結合手である。Y2は炭素原子数2~4のアルキレン基である。jは1以上の数である)
【0120】
上記式(5-1)中のY1に用いられる炭素原子数1~30のアルキレン基としては、上記式(1-1)中のR1等で用いられる炭素原子数1~20のアルキル基として挙げた基から水素原子を1つ除いた基が挙げられる。
上記(5-1)中のY1に用いられるシクロアルキル環を有する炭素原子数6~20の二価の脂肪族炭化水素基としては、シクロアルキル基から水素原子を1つ除いたシクロアルキレン基、シクロアルキレン基とアルキレン基とを組み合わせた基が挙げられる。
上記シクロアルキル基としては、上記式(3-1)中のR201の説明で用いたシクロアルキル基と同様のものが挙げられる。
アルキレン基又は脂肪族炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が酸素原子で置換された構造の基において、酸素原子同士は隣り合わないものとする。
【0121】
上記Y1としては、炭素原子数1~20のアルキレン基、炭素原子数1~20の酸素含有アルキレン基又は式(5-1-1)で表される炭素原子数4~20の基であることが好ましく、炭素原子数1~20のアルキレン基又は式(5-1-1)で表される炭素原子数4~20の基であることが好ましく、なかでも、炭素原子数2~10のアルキレン基又は式(5-1-1)で表される炭素原子数8~20の基であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
上記Y1に用いられるアルキレン基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。
【0122】
上述のような多官能脂肪族エポキシ化合物としては、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンのトリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンのトリグリシジルエーテル、ソルビトールのテトラグリシジルエーテル、ジペンタエリスリトールのヘキサグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールのジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル等の多価アルコールのグリシジルエーテル、またプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種又は2種以上のアルキレンオキサイドを付加することによって得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル化物、脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステルが挙げられる。さらに、エポキシ化大豆油、エポキシ化ポリブタジエン等が挙げられる。製品名としてはデナコールEX-212、EX-830(ナガセケムテックス社製)、ED-523T(ADEKA社製)等が挙げられる。
【0123】
脂肪族エポキシ化合物(E)の別の例として、単官能脂肪族エポキシ化合物が挙げられる。単官能脂肪族エポキシ化合物は分子中に1個のエポキシ基を有する。上記単官能エポキシ化合物としては、例えば、下記式(5-2)で表される化合物が好ましく挙げられる。
【0124】
【0125】
式(5-2)中、RA1は、炭素原子数1~20のアルキル基を表し、Y3は、エーテル結合又はエステル結合を表す。
【0126】
上記一般式(5-2)中のRA1に用いられるアルキル基としては、上記式(1-1)中のR1等に用いられる炭素原子数1~20のアルキル基の例として挙げた基と同様の基を用いることができる。
本開示においては、RA1が、炭素原子数4~20のアルキル基であることが好ましく、炭素原子数6~18のアルキル基であることがより好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0127】
上記単官能脂肪族エポキシ化合物としては、ブチルグリシジルエーテル、2-エチルヘキシルグリシジルエーテル、2-メチルオクチルグリシジルエーテル等が挙げられる。
上記単官能脂肪族エポキシ化合物の市販品としては、アデカグリシロールED-502(ADEKA社製)、デナコールEY3113(ナガセケムテックス社製)、エポゴーセーEN、エポゴーセーEH(四日市合成社)が挙げられる。
【0128】
本開示においては、脂肪族エポキシ化合物(E)の含有量は、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量100質量部に対して30質量部以下で、あることが好ましく、なかでも20質量部以下であることが好ましく、特に15質量部以下であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)を含む場合、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量に対して、例えば、0.1質量部以上、中でも1質量部以上、特に5質量部以上とすることができる。脂肪族エポキシ化合物(E)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0129】
脂肪族エポキシ化合物(E)の含有量は、組成物中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)を含む場合、その含有量は、組成物中、0.05質量%以上、中でも0.3質量%以上、特に1質量%以上とすることができる。脂肪族エポキシ化合物(E)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0130】
脂肪族エポキシ化合物(E)の含有量は、組成物の固形分中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)を含む場合、その含有量は、組成物の固形分中、0.1質量%以上、中でも0.5質量%以上、特に2質量%以上とすることができる。脂肪族エポキシ化合物(E)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0131】
<芳香族多官能エポキシ化合物(F)>
本開示においては、芳香族多官能エポキシ化合物(F)とは、分子内に脂環エポキシ基を含まず、芳香族環を1つ以上含有し、脂環エポキシ基以外のエポキシ基を2つ以上有する化合物である。
芳香族多官能エポキシ化合物(F)を有する組成物は、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるため好ましい。
【0132】
本開示においては、芳香族多官能エポキシ化合物(F)のエポキシ当量が、150~450g/eq.で、あることが好ましく、なかでも170~350g/eq.であることが好ましく、特に180~300g/eq.であることが好ましい。芳香族多官能エポキシ化合物(F)のエポキシ当量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0133】
本開示においては、芳香族多官能エポキシ化合物(F)の反応性基の数が、2~6で、あることが好ましく、なかでも2~4であることが好ましく、更に2つであることがより好ましく、特にエポキシ基が2つであることが好ましい。芳香族多官能エポキシ化合物(F)の反応性基が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである。
【0134】
芳香族多官能エポキシ化合物(F)としては、2個以上の芳香族環を有する多価フェノール、及びそのアルキレンオキサイド付加物等の多価フェノール類のポリグリシジルエーテル、フェノールノボラック型エポキシ化合物;レゾルシノール、ハイドロキノン及びカテコール等の2個以上のフェノール性水酸基を有するフェノール類のグリシジルエーテル;ベンゼンジメタノール、ベンゼンジエタノール及びベンゼンジブタノール等のアルコール性水酸基を2個以上有する芳香族化合物のポリグリシジルエーテル;フタル酸、テレフタル酸及びトリメリット酸等の2個以上のカルボン酸を有する多塩基酸芳香族化合物のポリグリシジルエステル;等が挙げられる。
【0135】
芳香族多官能エポキシ化合物(F)としては、例えば、下記式(6-1)で表される化合物、又は下記式(6-2)で表される化合物、を使用することが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0136】
GF-O-A1-Y601-A2-O-GF (6-1)
(式中、GFはグリシジル基であり、Y601は、非置換又はハロゲン原子に置換された2価の炭化水素基を示すか、或いは、-O-、-S-、又は単結合を示し、A1及びA2はそれぞれ独立して、非置換若しくはその環上の水素原子の1~4個が炭素原子数1~4のアルキル基で置換されているフェニレン基である。)
【0137】
【化11】
(式中、G
Fはグリシジル基であり、m
600は1以上の整数であり、Y
602及びY
603は、それぞれ独立して、-S-を示すか、或いは、非置換又はハロゲン原子に置換された2価の炭化水素基を示す。R
601、R
602、R
603、R
604、R
605及びR
606は、それぞれ独立して、水素原子又は炭素原子数1~4のアルキル基である。)
【0138】
R601、R602、R603、R604、R605及びR606で表される炭素数1~4のアルキル基及びA1、A2のフェニレン基を置換してもよい炭素数1~4のアルキル基としては、式(1-1)においてR1の例として挙げたもののうち、所定の炭素原子数を満たすものが挙げられる。
【0139】
前記式(6-1)におけるY601並びに前記式(6-2)におけるY602及びY603で表される非置換又はフッ素原子で置換された2価の炭化水素基としては、炭素原子数1~20のものが好適に挙げられる。具体的には前記式(6-1)におけるY601並びに前記式(6-2)におけるY602及びY603としては、それぞれ独立に、下記式(Y-1)~(Y-9)の何れかで表される構造が挙げられる。
【0140】
【化12】
ここで、n600は4~12の整数であり、R
607及びR
608は、それぞれ独立して、水素原子又は非置換若しくはハロゲン原子で置換されたメチル基である。*は結合手を表す。
【0141】
中でも、芳香族多官能エポキシ化合物(F)が、式(6-1)で表されY601が、炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表すか、又は式(6-2)で表されY602及びY603が炭素原子数1~20の2価の炭化水素基を表すものが好ましく、
なかでも、式(6-1)で表されY601が、(Y-1)で表される基であるか、又は式(6-2)で表されY602及びY603が(Y-1)で表される基であることが好ましく、
特に、式(6-1)で表されY601が、(Y-1)で表されてY607及びY608がメチル基であるか、又は式(6-2)で表されY602及びY603が(Y-1)で表される基であってY607及びY608が水素原子であることが特に好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0142】
式(6-1)におけるA1及びA2は、非置換又は炭素原子数1~2のアルキル基で置換されたフェニレン基であることが好ましく、非置換又はメチルで置換されたフェニレン基であることが好ましく、非置換のフェニレン基であることが最も好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0143】
本開示においては、芳香族多官能エポキシ化合物(F)を含む場合、その含有量が、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量100質量部に対して40質量部以下で、あることが好ましく、なかでも30質量部以下であることが好ましく、特に25質量部以下であることが好ましい。脂肪族エポキシ化合物(E)を含む場合、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)及び多官能アルコール化合物(C)の総量に対して、例えば、0.1質量部以上、中でも1質量部以上、特に5質量部以上とすることが好適である。芳香族多官能エポキシ化合物(F)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得られるからである
【0144】
芳香族多官能エポキシ化合物(F)の含有量は、組成物中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、15質量%以下であることが特に好ましい。芳香族多官能エポキシ化合物(F)を含む場合、その含有量は、組成物中、0.2質量%以上、中でも2質量%以上、特に4質量%以上とすることが好適である。芳香族多官能エポキシ化合物(F)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0145】
芳香族多官能エポキシ化合物(F)の含有量は、組成物の固形分中、25質量%以下であることが好ましく、20質量%以下であることがより好ましく、10質量%以下であることが特に好ましい。芳香族多官能エポキシ化合物(F)を含む場合、その含有量は、組成物の固形分中、0.5質量%以上、中でも2質量%以上、特に4質量%以上とすることが好適である。芳香族多官能エポキシ化合物(F)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0146】
<重合開始剤(G)>
本開示においては、重合開始剤(G)とは、光、熱などの刺激によって、ラジカル、酸、塩基などの活性種を発生させることにより、重合性組成物の重合反応を開始する材料である。
【0147】
重合開始剤(G)を含有する組成物は、速やかに重合反応が開始することにより、硬化性が高くなることから好ましい。
【0148】
上記、重合開始剤(G)としては、反応性に優れることから、光重合開始剤が好ましく、接着性に優れることから光カチオン重合開始剤が好ましい。
【0149】
光カチオン重合開始剤としては、可視光線、紫外線、X線、電子線、高周波のような活性エネルギー線(以下、単に「エネルギー線」と称する場合がある。)照射により酸を発生させる重合開始剤が感度が高いため好ましく、スルホニウム塩系の重合開始剤が、反応性および接着性に優れることから好ましい。
【0150】
スルホニウム塩系としては、以下のものが挙げられる。
(ハ)下記群I又は群IIで表されるスルホニウムカチオンとヘキサフルオロアンチモンイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン等のスルホニウム塩
【0151】
【0152】
【0153】
これらの中でも、実用面と光感度の観点から、芳香族スルホニウム塩であることが好ましく、硫黄原子(S)に芳香族環が3つ結合した構造を有するトリアリールスルホニウム塩であることがより好ましく、特に、下記式(7)で表されるトリアリールスルホニウム塩であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0154】
【0155】
上記式(7)中、R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113及びR114は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基を表し、
R115は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は下記式(7a)~(7c)より選択されるいずれかの置換基を表し、
Anq-はq価の陰イオンを表し、
pは電荷を中性にする係数を表す。
【0156】
【0157】
上記式(7a)~(7c)中、R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142及びR143は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基を表し、
*は、Sとの結合位置を表す。
【0158】
上記式(7)中のR101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114及びR115並びに上記式(4a)~(4c)中のR116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142及びR143で表されるハロゲン原子は、上記に記載した、式(1-1)中の「ハロゲン原子」と同様である。
【0159】
上記式(7)中のR101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113、R114及びR115、並びに上記式(7a)~(7c)中のR116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142及びR143で表される炭素原子数1~10のアルキル基としては、式(1-1)中の「炭素原子数1~20のアルキル基」として挙げたもののうち、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0160】
上記式(7)中のR101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113及びR114、並びに上記式(4a)~(4c)中のR116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142及びR143で表される炭素原子数1~10のアルコキシ基は、上記「1.カチオン重合性成分」の項に記載した、式(1-1)中の「炭素原子数1~20のアルコキシ基」として挙げたもののうち、所定の炭素原子数を有する基が挙げられる。
【0161】
上記式(7)中のpAnq-で表されるq価のアニオンとしては、上述の陰イオン[B]m-として挙げたもののうち、所定の価数のアニオンが挙げられる。
pAnq-で表されるq価のアニオンとしては、例えば、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート[(C6F5)4B]-、テトラフルオロボレート(BF4)-、ヘキサフルオロホスフェート(PF6)-、ヘキサフルオロアンチモネート(SbF6)-、ヘキサフルオロアルセネート(AsF6)-、ヘキサクロロアンチモネート(SbCl6)-、トリス(ペンタフルオロメチル)トリフルオロリン酸イオン(FAPアニオン)、過塩素酸イオン(ClO4)-、トリフルオロメチル亜硫酸イオン(CF3SO3)-、フルオロスルホン酸イオン(FSO3)-、トルエンスルホン酸陰イオン、トリニトロベンゼンスルホン酸陰イオン、カンファースルフォネート、ノナフロロブタンスルフォネート、ヘキサデカフロロオクタンスルフォネート、テトラアリールボレート、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート等が挙げられる。
【0162】
本開示においては、R115が、上記式(4a)~(4c)より選択されるものであることが好ましく、上記式(4a)又は(4c)であることがより好ましい。R115が上述の構造を有することにより、上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0163】
R101、R102、R103、R104、R105、R106、R107、R108、R109、R110、R111、R112、R113及びR114は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、特に、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0164】
R116、R117、R118、R119、R120、R121、R122、R123、R124、R125、R126、R127、R128、R129、R130、R131、R132、R133、R134、R135、R136、R137、R138、R139、R140、R141、R142及びR143は、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1~10のアルキル基又は炭素原子数1~10のアルコキシ基であることが好ましく、特に、水素原子又はハロゲン原子であることが好ましい。上記組成物は、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができるからである。
【0165】
なお、本発明においては、熱カチオン重合開始剤として、加熱によりカチオン種又はルイス酸を発生する化合物を特に制限なく用いることができる。具体的には、スルホニウム塩、チオフェニウム塩、チオラニウム塩、ベンジルアンモニウム、ピリジニウム塩、ヒドラジニウム塩等の塩;ジエチレントリアミン、トリエチレントリアミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアルキルポリアミン類;1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノ-3,6-ジエチルシクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ポリアミン類;m-キシリレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン等の芳香族ポリアミン類;前記ポリアミン類と、フェニルグリシジルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、ビスフェノールA-ジグリシジルエーテル、ビスフェノールF-ジグリシジルエーテル等のグリシジルエーテル類又はカルボン酸のグリシジルエステル類等の各種エポキシ樹脂とを常法によって反応させることによって製造されるポリエポキシ付加変性物;前記有機ポリアミン類と、フタル酸、イソフタル酸、ダイマー酸などのカルボン酸類とを常法によって反応させることによって製造されるアミド化変性物;前記ポリアミン類とホルムアルデヒド等のアルデヒド類及びフェノール、クレゾール、キシレノール、第三ブチルフェノール、レゾルシン等の核に少なくとも1個のアルデヒド化反応性場所を有するフェノール類とを常法によって反応させることによって製造されるマンニッヒ化変性物;多価カルボン酸(シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、2-メチルコハク酸、2-メチルアジピン酸、3-メチルアジピン酸、3-メチルペンタン二酸、2-メチルオクタン二酸、3,8-ジメチルデカン二酸、3,7-ジメチルデカン二酸、水添ダイマー酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸類;フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸類;シクロヘキサンジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸類;トリメリト酸、トリメシン酸、ひまし油脂肪酸の三量体等のトリカルボン酸類;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸類等)の酸無水物;ジシアンジアミド、イミダゾール類、カルボン酸エステル、スルホン酸エステル、アミンイミド等を用いることができる。
【0166】
重合開始剤(G)の含有量は、組成物中、0.5~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、2~15質量%であることが特に好ましい。重合開始剤(G)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0167】
重合開始剤(G)の含有量は、組成物の固形分中、0.5~30質量%であることが好ましく、1~20質量%であることがより好ましく、3~15質量%であることが特に好ましい。重合開始剤(G)の含有量が、上述の範囲内である場合、接着性および耐湿熱性に優れた組成物が得やすいからである。
【0168】
<その他>
本発明の組成物は、必要に応じて溶剤、他のモノマー、他の重合開始剤、無機フィラー、有機フィラー、顔料、染料などの着色剤、光増感剤、消泡剤、増粘剤、界面活性剤、レベリング剤、難燃剤、チクソ剤、希釈剤、可塑剤、安定剤、重合禁止剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、静電防止剤、流動調整剤、接着促進剤等の各種樹脂添加物等を添加することができる。
【0169】
本発明の組成物における、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)、多官能アルコール化合物(C)、オキセタン化合物(D)、脂肪族エポキシ化合物(E)、芳香族多官能エポキシ化合物(F)及び重合開始剤(G)以外の任意成分の合計量は、本発明の用途等にもよるが、本発明の効果を一層高める観点から、脂環エポキシ化合物(A)、芳香族単官能エポキシ化合物(B)、多官能アルコール化合物(C)の合計量100質量部に対して50質量部以下、なかでも30質量部以下、特に10質量%以下とすることが好ましい。
【0170】
本発明の組成物は25℃にてE型粘度計で測定した粘度が100mPa・s未満であることが、取り扱い性、塗工性の点で好ましい。本発明の組成物はこのような低粘度であっても、接着性がより優れ、耐湿熱性がより優れる硬化物を形成することができる。
【0171】
本発明の組成物の具体的な用途としては、メガネ、撮像用レンズに代表される光学材料、塗料、コーティング剤、ライニング剤、インキ、レジスト、液状レジスト、接着剤、印刷版、絶縁ワニス、絶縁シート、積層板、プリント基盤、半導体装置用・LEDパッケージ用・液晶注入口用・有機EL用・光素子用・電気絶縁用・電子部品用・分離膜用等の封止剤、成形材料、パテ、ガラス繊維含浸剤、目止め剤、半導体用・太陽池用等のパッシベーション膜、層間絶縁膜、保護膜、液晶表示装置のバックライトに使用されるプリズムレンズシート、プロジェクションテレビ等のスクリーンに使用されるフレネルレンズシート、レンチキュラーレンズシート等のレンズシートのレンズ部、又はこのようなシートを用いたバックライト等、マイクロレンズ等の光学レンズ、光学素子、光コネクター、光導波路、光学的造形用注型剤等を挙げることができ、例えばコーティング剤として適用できる基材としては金属、木材、ゴム、プラスチック、ガラス、セラミック製品等を挙げることができる。
【0172】
2.接着剤
本発明の組成物は、接着力に優れ、その硬化物が、耐湿熱性に優れたものとなる。更に本発明の組成物は、硬化物の光学特性及び耐熱性にも優れたものとなる。したがって本発明の組成物は接着剤として特に有用である。
本発明の接着剤は本発明の組成物からなる。本発明の接着剤は、本発明の組成物を含有するので、接着力に優れ、且つ得られる硬化物が耐湿熱性に優れたものとなる。これに加えて本発明の接着剤は、耐熱性、及び全光線透過率などの光学特性にも優れたものとなる。
【0173】
接着剤としては、積層フィルムを形成するためのラミネート用接着剤が好適である。接着剤が光硬化性接着剤である場合、使用するフィルムは、少なくとも1つのフィルムが光透過性フィルムであることが望ましい。このような光透過性フィルムとして、ポリエステル系フィルム、ポリカーボネート系フィルム、アクリル系フィルム、ポリアミド系フィルム、ポリイミド系フィルム、非結晶性ポリオレフィン系フィルム、シクロオレフィン系フィルム、PVA系フィルム、セルロース系フィルム等が挙げられる。
【0174】
光を透過しないフィルムと組み合わせて、光非透過性又は難透過性フィルムも、例えば積層フィルムの基材フィルムとして使用できる。このようないフィルムとして、例えば着色や遮光のために、着色顔料、着色染料、カーボンブラック、無機粒子又は高分子微粒子を含有しているような樹脂、450nm以下の波長領域で光透過性のないポリイミドフィルムなどが挙げられる。
積層フィルムが偏光板の場合、PVA系の偏光子フィルムや、トリアセチルセルロース等のセルロース系フィルム、シクロオレフィン系フィルムなど保護フィルム又は光学補償フィルムが使用できる。
【0175】
3.硬化物の製造方法
本発明の硬化物の製造方法は、本発明の組成物に対して、活性エネルギー線を照射する工程、又は加熱する工程を含む。活性エネルギー線を照射する工程を含むことが好ましい。
【0176】
本工程において、組成物の硬化に用いられるエネルギー線の光源としては、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、メタルハライドランプ、蛍光灯、タングステンランプ、エキシマーランプ、殺菌灯、発光ダイオード、CRT光源等から得られる2000オングストローム~7000オングストロームの波長を有する電磁波エネルギーや電子線、X線、放射線等の高エネルギー線を利用することができる。好ましくは、波長300~450nmの光を発光する超高圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、カーボンアーク灯、キセノンアーク灯、発光ダイオード等が用いられる。カチオン重合性成分の重合が容易だからである。
【0177】
エネルギー線の照射量に特に制限はなく、組成物の組成によって適宜決定することができる。上記照射量は、組成物中の成分の劣化防止の観点から、照射量は365nmにおいて、100mJ/cm2~2000mJ/cm2が好ましい。
【0178】
本工程において、上記硬化方法が、加熱する方法を用いてもよい。例えば、エネルギー線を照射する方法及び加熱する方法を併用してもよく、2つの方法をこの順でおこなってもよい。組成物の硬化を効率的に進めることができるからである。
【0179】
本工程における組成物の塗膜を加熱する方法としては、ホットプレート等の熱板や、大気オーブン、イナートガスオーブン、真空オーブン、熱風循環式オーブン等を用いる方法が挙げられる。
塗膜を加熱する際の加熱温度としては、特に限定されないが、70℃以上200℃以下であることが好ましく、90℃以上180℃以下であることが好ましい。
【0180】
4.硬化物
本発明の硬化物は、本発明の組成物の硬化物であり、該組成物に対して、活性エネルギー線を照射するか、或いは該組成物を加熱することによって製造することができる。活性エネルギー線を照射条件及び加熱条件に制限はなく、公知の条件を採用することができる。
【実施例0181】
以下、本発明を更に実施例に基づき詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0182】
[実施例及び比較例]
下記の表1~表3に示す配合で各成分を十分に混合して、実施例1~12及び比較例1~5の組成物を調製した。表中の符号は下記の成分を意味する。また、表中の数値は質量部を表す。
【0183】
・脂環エポキシ化合物(A)
A-1:下記の式(A-1)で表される化合物(式(1-5)で表される化合物)
A-2:下記の式(A-2)で表される化合物(式(1-6)で表される化合物)
A-3:下記の式(A-3)で表される化合物(式(1-1)で表される化合物)
A-4:下記の式(A-4)で表される化合物(式(1-6)で表される化合物)
・芳香族単官能エポキシ化合物(B)
B-1:下記の式(B-1)で表される化合物(式(2-1)で表される化合物、エポキシ当量206g/eq.)
B-2:下記の式(B-2)で表される化合物(式(2-1)で表される化合物、エポキシ当量210g/eq.)
B-3:下記の式(B-3)で表される化合物(式(2-1)で表される化合物、エポキシ当量180g/eq.)
【0184】
【0185】
・多官能アルコール化合物(C)
C-1:NL2030B(三菱ケミカル社)、下記の式(C-1)で表される化合物(ポリカーボネートジオール、式(3-3)で表される構造単位を有する。水酸基価から求められる数平均分子量は1000、アルコール当量は500m/eq.)
C-2:HS0840B(三菱ケミカル社)、下記の式(C-2)で表される化合物(ポリカーボネートジオール、式(3-3)で表される構造単位を有する。水酸基価から求められる数平均分子量は800、アルコール当量は400m/eq.)
C-3:下記の式(C-3)で表される化合物(水酸基価から求められる数平均分子量は767~823、アルコール当量は383~411m/eq.ポリエーテルジオール、式(3-2)で表される化合物))
C-4:PCL205H(ダイセル化学工業社)、下記の式(C-4)で表される化合物、(水酸基価から求められる数平均分子量は516~541,アルコール当量は258~270m/eq.)
・オキセタン化合物(D)
D-1:OXT-101(東亞合成社)、下記の式(D-1)で表される化合物
D-2:OXT-212(東亞合成社)、下記の式(D-2)で表される化合物
【0186】
【0187】
・脂肪族エポキシ化合物(E)
E-1:下記の式(E-1)で表される化合物、式(4-1)で表される化合物
E-2:下記の式(E-2)で表される化合物、式(4-1)で表される化合物
E-3:下記の式(E-3)で表される化合物、式(4-1)で表される化合物
E-4:下記の式(E-4)で表される化合物、式(4-2)で表される化合物
E-5:下記の式(E-5)で表される化合物、式(4-2)で表される化合物
【0188】
・芳香族多官能エポキシ化合物(F)
F-1:下記の式(F-1)で表される化合物、式(6-1)で表される化合物
F-2:下記の式(F-2)で表される化合物、式(6-2)で表される化合物(n≒5)
【0189】
・重合開始剤(G)
G-1:下記式(G-1)で表される化合物の50質量%プロピレンカーボネート溶液
【0190】
【0191】
<評価方法>
実施例及び比較例で得られた組成物を以下方法にて評価した。結果を表1~3に示す。
【0192】
(接着試験用試験片の作成)
実施例及び比較例で得られた組成物を、硬化後の膜厚が3μmになるように、一枚のトリアセチルセルロース(TAC)フィルム(富士フイルム(株)製フジタックTD80)にそれぞれ塗布した後、もう一枚のコロナ放電処理を施したシクロオレフィンポリマー(COP)フィルム(日本ゼオン(株)製:品番ゼオノアフィルム14-060)とラミネーターを用いて貼り合わせ、無電極紫外光ランプを用いて1000mJ/cm2に相当する光をCOPフィルム越しに照射して接着して接着試験用試験片を得た。
【0193】
(初期接着性)
得られた接着試験用試験片について、30℃、50%RH、大気圧条件下で露光から5分後に、20cm幅に切り出して接着力評価用サンプルを得た。得られたサンプルについて、試験機としてアイコーエンジニアリング社製FTN3000を用い、300mm/minの負荷速度で90度ピール試験を行い、引き剥がし接着力を測定した。評価は下記基準に従って行った。
S:0.8N/2cm以上又は基材破壊
A:0.3N/2cm超、0.8N/2cm以下
B:0.1N/2cm超、0.3N/2cm以下、
C:0.1N/2cm以下
引き剥がし粘着力の値が高いほど、初期接着性が優れることを意味する。
(接着性)
上記の(接着性試験片作成)にて得られた接着性試験片について、上記(初期接着性)において、30℃、50%RH条件下での静置時間を12時間とした以外は、(初期接着性)と同様にして90度ピール試験を行い、引き剥がし粘着力を測定した。評価は下記基準に従って行った。
S:2.5N/2cm超又は基材破壊
A:1.5N/2cm超2.5N/2cm以下
B:0.5N/2cm超、1.5N/2cm以下
C:0.5N/2cm以下
引き剥がし粘着力の値が高いほど、接着性が優れることを意味する。
【0194】
(耐湿熱性試験)
上記の(接着性試験片作成)にて得られた接着性試験片について、85℃、85%Rhの環境に500時間静置させた。その後、試験片の温度を室温に下げた後、上記(接着性)評価と同じ条件の90度ピール試験を行った。評価は下記基準に従って行った。
S:1.5N/2cm超
A:1.0N/2cm超、1.5N/2cm以下、
B:0.5N/2cm超1.0N/2cm以下、
C:0.5N/2cm以下とし、
引き剥がし粘着力の値が高いほど、耐湿熱性に優れることを意味する。
【0195】
(耐熱性)
実施例及び比較例で得られた組成物をそれぞれ、ガラス板(厚さ1.2mm)に厚さ50μmで塗布し、もう一枚の同じ厚さのガラス板を貼り合わせて高圧Hgランプで1000mJ/cm2のエネルギーを照射し、150℃で1時間加熱して試験片を得た。得られた試験片についてL*a*b*表色系におけるb*値(以下「b*S」と記載する。)を紫外可視近赤外分光光度計V-670(日本分光社製)を用いて測定した。その後、得られた試験片を100℃、85%Rhの環境に500時間入れた後にb*値(以下「b*H」と記載する。)の測定を行い、△b*(=|b*H-b*S|)の値を求め、以下の評価基準で評価した。
A:△b*が3以下
B:△b*が3超6以下
C:△b*が6超
△b*が小さいほど耐熱性に優れる。
【0196】
(光学特性)
上記(耐熱性)評価で測定したb*S値に基づき、以下の評価基準で評価した。
A:硬化物のb*Sが、5以下、
B:硬化物のb*Sが、5超10以下、
C:硬化物のb*Sが、10超、
b*Sが小さいほど光学特性に優れる。
【0197】
(粘度)
実施例及び比較例で得られた組成物について以下の方法で粘度を測定した。
使用機器:東機産業株式会社製TVE-25L
測定温度:25℃
測定方法:試料約1.1mLをE型粘度計付属のカップに入れ、このカップを温度25℃に設定した恒温槽兼送液装置にセットする。E型粘度計で上記試料の回転粘度の計測を開始し、回転粘度の指示値が安定した点での回転粘度の数値を読み取る。
上記方法にて以下評価基準にて評価した。
A:<100mPa・s
B:≧100mPa・s
粘度は100mPa・s未満である方が取り扱い性に優れる。
【0198】
【0199】
【0200】
【0201】
表1~3に示す通り、各実施例は、初期接着性、接着性、耐湿熱性の評価がA以上であった。これに対し、芳香族単官能エポキシ化合物(B)成分を含有しない比較例1及び2は耐湿熱性に劣り、脂環エポキシ化合物(A)を含有しない比較例3及び4は初期接着性及び耐湿熱性に劣り、多官能アルコール化合物(C)を含有しない比較例5は、初期接着性及び接着性に劣る結果となった。なお、比較例5は、耐湿熱性がAの評価であったが、各実施例に比べれば劣る結果となった。