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特開2024-52341内視鏡用ホワイトバランス調整治具及び内視鏡のホワイトバランス調整方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052341
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】内視鏡用ホワイトバランス調整治具及び内視鏡のホワイトバランス調整方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 1/045 20060101AFI20240404BHJP
   G02B 23/24 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
A61B1/045 610
G02B23/24 A
G02B23/24 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】23
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159000
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001988
【氏名又は名称】弁理士法人小林国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 裕章
(72)【発明者】
【氏名】大谷 健一
(72)【発明者】
【氏名】吉森 悠
(72)【発明者】
【氏名】服部 慎太郎
【テーマコード(参考)】
2H040
4C161
【Fターム(参考)】
2H040DA51
2H040GA02
2H040GA06
4C161JJ11
4C161NN01
4C161NN05
4C161SS07
4C161SS09
4C161TT04
(57)【要約】
【課題】複数種類の内視鏡のいずれに対しても適切なホワイトバランス調整を可能とする内視鏡用ホワイトバランス調整治具及び内視鏡のホワイトバランス調整方法を提供する。
【解決手段】内視鏡用ホワイトバランス調整治具は、内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、挿入部と対向して配置される蓋部と、挿入部及び蓋部と接することにより内部空間を形成する外周部とを備える。蓋部は、挿入部側の表面において、複数のマークを有するチャートを備え、チャートは、先端部の挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、
前記先端部の挿入方向において、前記挿入部と対向して配置される蓋部と、
前記挿入部及び前記蓋部と接することにより、これらと内部空間を形成する外周部とを備え、
前記蓋部は、前記内部空間に面する内面において、複数のマークを有するチャートを備え、
前記チャートは、前記挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項2】
前記チャートは、前記垂直面に対し5°以上40°以下の範囲内の角度で傾斜する請求項1に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項3】
前記チャートは、前記垂直面に対し15°以上30°以下の範囲内の角度で傾斜する請求項1に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項4】
前記チャートは、前記挿入部側に傾斜している請求項1に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項5】
前記角度は、使用の際の前記チャートの下部を軸として、前記挿入部側の傾斜を正とした場合の角度である請求項2または3に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項6】
前記チャートは、使用の際の前記チャートの下部を軸として、前記挿入部側の傾斜を正とした場合に、前記内視鏡の光軸に垂直な垂直面に対し5°以上40°以下の範囲内の角度で傾斜する請求項1に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項7】
前記チャートは、使用の際の前記チャート下部を軸として、前記挿入部側の傾斜を正とした場合に、前記垂直面に対し15°以上30°以下の範囲内の角度で傾斜する請求項1に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項8】
複数の前記マークは、前記チャートにおいて、前記挿入方向に沿って配置されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項9】
前記挿入部は、前記挿入孔を複数備え、
複数の前記マークのうちの1つは、前記チャートと前記挿入孔に挿入する前記内視鏡の光軸方向とが交わる位置に配置されている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項10】
前記挿入部は、前記挿入孔を複数備え、
複数の前記挿入孔は、それぞれ互いに異なる内径を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項11】
前記挿入部は、前記挿入孔を複数備え、
前記内部空間は、それぞれの前記挿入孔に応じて仕切られている請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項12】
前記蓋部と前記外周部とは、分離可能に連結する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項13】
前記蓋部及び前記外周部は、磁力及び/又は嵌合により分離可能に連結する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項14】
前記蓋部は、前記チャートと遮光部材とを有し、
前記蓋部を前記挿入部と対向して配置する場合、前記挿入部側から、前記チャートと遮光部材とをこの順で備える請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項15】
前記蓋部は、前記チャートと前記遮光部材とを分離可能に構成される請求項14に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項16】
前記蓋部は、蓋部基材と前記チャートとを有し、
前記遮光部材は、前記蓋部基材である請求項15に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項17】
前記内視鏡は、硬性鏡である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項18】
前記内視鏡は、直視鏡又は斜視鏡である請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項19】
前記マークは、基準色を有する請求項1ないし4のいずれか1項に記載の内視鏡用ホワイトバランス調整治具。
【請求項20】
内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、
前記先端部の挿入方向において、前記挿入部と対向して配置される蓋部と、
前記挿入部及び前記蓋部と接することにより、これらと内部空間を形成する外周部とを備え、
前記蓋部は、前記内部空間に面する内面において、複数のマークを有するチャートを備え、
前記チャートは、前記挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している内視鏡用ホワイトバランス調整治具を用いた内視鏡のホワイトバランス調整方法であって、
前記挿入孔に、被写体を撮影する撮影部を備える前記内視鏡の前記先端部を挿入し、
前記マークを、前記撮影部により撮影し、
撮影により得られた前記マークを写す画像により前記内視鏡のホワイトバランスを調整する内視鏡のホワイトバランス調整方法。
【請求項21】
前記内視鏡は、直視鏡または斜視鏡である請求項20に記載の内視鏡のホワイトバランス調整方法。
【請求項22】
前記内視鏡用ホワイトバランス調整治具は、複数の前記挿入孔を備え、
前記先端部の外径に応じて、複数の前記挿入孔から選択した前記挿入孔に、前記先端部を挿入する請求項20または21に記載の内視鏡のホワイトバランス調整方法。
【請求項23】
前記マークを、前記画像に写る位置及び形状を調整した上で撮影する請求項20または21に記載の内視鏡のホワイトバランス調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡用ホワイトバランス調整治具及び内視鏡のホワイトバランス調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野においては、内視鏡を用いて、体内の観察、内視鏡下外科手術等が行われている。内視鏡には、観察対象を撮影するための撮像素子をはじめ、撮影により画像を生成するための各種の電子部品等が用いられる。これらの部品等については、個体差、経年劣化等を有するものがあり、そのままでは適切な画像が得られない場合がある。また、観察対象を撮影するために用いられる光源にも、個体差、経年劣化等が生じる場合がある。これらを解消して適切な画像を得るために、内視鏡に対してホワイトバランスなどのキャリブレーションが行われる。
【0003】
ホワイトバランスの調整に際しては、例えば、内視鏡下外科手術に用いられる硬性鏡等では、白色の滅菌ガーゼを撮影することにより行われる場合がある。また、内視鏡の先端部に白色のキャップを備えることにより行われる方法が知られている(特許文献1及び特許文献2)。また、キャップ状のホワイトバランス調整具を用いて行われることが知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-032201号公報
【特許文献2】特開2010-200880号公報
【特許文献3】特開平05-076483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
医療分野に用いられる内視鏡には、用途、目的等により様々な種類がある。したがって、例えば、内視鏡により撮影された画像(以下、内視鏡画像という)において、より精密に調整された色温度での内視鏡画像が必要な場合は、白色の滅菌ガーゼを用いたホワイトバランスの調整では不十分な場合がある。また、内視鏡の形態の面でも様々な種類があり、大きくは硬性鏡と軟性鏡とに分類される。そして、硬性鏡及び軟性鏡のそれぞれにおいても様々な種類の内視鏡が用いられている。しかしながら、従来用いられているホワイトバランス調整具では、各種の内視鏡に共通して適切に用いることができない場合があった。
【0006】
本発明は、複数種類の内視鏡のいずれに対しても適切なホワイトバランス調整を可能とする内視鏡用ホワイトバランス調整治具及び内視鏡のホワイトバランス調整方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の内視鏡用ホワイトバランス調整治具は、内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、先端部の挿入方向において、挿入部と対向して配置される蓋部と、挿入部及び蓋部と接することにより、これらと内部空間を形成する外周部とを備え、蓋部は、内部空間に面する内面において、複数のマークを有するチャートを備え、チャートは、挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している。
【0008】
チャートは、垂直面に対し5°以上40°以下の範囲内の角度で傾斜することが好ましい。
【0009】
チャートは、垂直面に対し15°以上30°以下の範囲内の角度で傾斜することが好ましい。
【0010】
チャートは、挿入部側に傾斜していることが好ましい。
【0011】
角度は、使用の際のチャートの下部を軸として、挿入部側の傾斜を正とした場合の角度であることが好ましい。
【0012】
チャートは、使用の際のチャートの下部を軸として、挿入部側の傾斜を正とした場合に、内視鏡の光軸に垂直な垂直面に対し5°以上40°以下の範囲内の角度で傾斜することが好ましい。
【0013】
チャートは、使用の際のチャート下部を軸として、挿入部側の傾斜を正とした場合に、垂直面に対し15°以上30°以下の範囲内の角度で傾斜することが好ましい。
【0014】
複数のマークは、チャートにおいて、挿入方向に沿って配置されていることが好ましい。
【0015】
挿入部は、挿入孔を複数備え、複数のマークのうちの1つは、チャートと挿入孔に挿入する内視鏡の光軸方向とが交わる位置に配置されていることが好ましい。
【0016】
挿入部は、挿入孔を複数備え、複数の挿入孔は、それぞれ互いに異なる内径を有することが好ましい。
【0017】
挿入部は、挿入孔を複数備え、内部空間は、それぞれの挿入孔に応じて仕切られていることが好ましい。
【0018】
蓋部と外周部とは、分離可能に連結することが好ましい。
【0019】
蓋部及び外周部は、磁力及び/又は嵌合により分離可能に連結することが好ましい。
【0020】
蓋部は、チャートと遮光部材とを有し、蓋部を挿入部と対向して配置する場合、挿入部側から、チャートと遮光部材とをこの順で備えることが好ましい。
【0021】
蓋部は、チャートと遮光部材とを分離可能に構成されることが好ましい。
【0022】
蓋部は、蓋部基材とチャートとを有し、遮光部材は、蓋部基材であることが好ましい。
【0023】
内視鏡は、硬性鏡であることが好ましい。
【0024】
内視鏡は、直視鏡又は斜視鏡であることが好ましい。
【0025】
マークは、基準色を有することが好ましい。
【0026】
また、本発明の内視鏡のホワイトバランス調整方法は、内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、先端部の挿入方向において、挿入部と対向して配置される蓋部と、挿入部及び蓋部と接することにより、これらと内部空間を形成する外周部とを備え、蓋部は、内部空間に面する内面において、複数のマークを有するチャートを備え、チャートは、挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している内視鏡用ホワイトバランス調整治具を用いた内視鏡のホワイトバランス調整方法であって、挿入孔に、被写体を撮影する撮影部を備える内視鏡の先端部を挿入し、マークを、撮影部により撮影し、撮影により得られたマークを写す画像により内視鏡のホワイトバランスを調整する。
【0027】
内視鏡は、直視鏡または斜視鏡であることが好ましい。
【0028】
内視鏡用ホワイトバランス調整治具は、複数の挿入孔を備え、先端部の外径に応じて、複数の挿入孔から選択した挿入孔に、先端部を挿入することが好ましい。
【0029】
マークを、画像に写る位置及び形状を調整した上で撮影することが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、複数種類の内視鏡のいずれに対しても適切なホワイトバランス調整を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】蓋部を表示した内視鏡用ホワイトバランス調整治具の斜視図である。
図2】挿入孔を表示した内視鏡用ホワイトバランス調整治具の斜視図である。
図3】内径が大きい方の挿入孔に内視鏡の先端部を挿入する場合の説明図である。
図4】内径が小さい方の挿入孔に内視鏡の先端部を挿入する場合の説明図である。
図5図4のI-I線に沿って切断した断面図である。
図6図4のII-II線に沿って切断した断面図である。
図7】蓋部の分離について説明する説明図である。
図8図8(a)は、蓋部の外面を説明する説明図であり、図8(b)は、蓋部の内面を説明する説明図である。
図9図9(a)は、斜視鏡を説明する説明図であり、図9(b)は、直視鏡を説明する説明図である。
図10図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、直視鏡を用いる場合の傾斜角を説明する説明図である。
図11図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、斜視鏡を用いる場合の傾斜角を説明する説明図である。
図12】複数のマークの配置を説明する説明図である。
図13】別の例の調整治具の断面図であり、直視鏡を用いる場合の傾斜角を説明する説明図である。
図14】別の例の調整治具の断面図であり、斜視鏡を用いる場合の傾斜角を説明する説明図である。
図15図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、マークの配置の方向を説明する説明図である。
図16図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、挿入孔とマークの配置とを説明する説明図である。
図17】傾斜角βと信号比ずれとの関係を示すグラフである。
図18図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、先端部の挿入方向に垂直な垂直jに対するチャートの表面の傾斜角を説明する説明図である。
図19図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、直視鏡における先端面とチャートとの距離を説明する説明図である。
図20図4のI-I線に沿って切断した断面図であり、斜視鏡における先端面とチャートとの距離を説明する説明図である。
図21】先端面とチャートとの距離と、信号比ずれとの関係を示すグラフである。
図22図4のI-I線に沿って切断した断面図のうち、蓋部の部分を示すことにより蓋部の構成を説明する説明図である。
図23図23(a)は、チャートを分離した遮光部材を説明する説明図であり、図23(b)は、遮光部材から分離されたチャートを説明する説明図である。
図24】内視鏡システムの構成を説明する説明図である。
図25】内視鏡用ホワイトバランス調整治具を用いて内視鏡のホワイトバランス調整を行う流れを説明するフローチャートである。
図26】内部空間における先端部の位置の違いに応じた、ディスプレイに表示されるマークの画像図であり、図26(a)は先端部とチャートが遠い場合、図26(b)は先端部とチャートが少し遠い場合、図26(c)は先端部とチャートとの距離が適切である場合である。
図27】蓋部を分離した第2実施形態の内視鏡用ホワイトバランス調整治具の斜視図である。
図28】第2実施形態の内視鏡用ホワイトバランス調整治具の蓋部であり、図28(a)は、蓋部の外面を説明する蓋部の正面図、図28(b)は、図28(a)のIII-III線に沿って切断した断面図、図28(c)は蓋部の内面を説明する蓋部の背面図である。
図29】第2実施形態の蓋部と外周部との連結を説明する説明図であり、図29(a)は蓋部と外周部との連結途中を表し、図29(b)は蓋部と外周部との連結完了を表す。
図30】内視鏡用ホワイトバランス調整治具を設置する場合の設置例の一例を説明する説明図である。
図31】内視鏡用ホワイトバランス調整治具を設置する場合の設置例の一例を説明する説明図である。
図32】ディスプレイに判定表示を表示する場合を説明する画像図であり、図32(a)は先端部の配置が適切な場合、図32(b)は先端部とチャートが遠い場合、図32(c)は先端部とチャートとが近い場合、図32(d)は先端部とチャートとの距離は適切だが先端部の向きがずれている場合である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、適宜図面を参照しながら、実施形態を説明する。まず、以下の実施形態の一形態を得るに至った経緯を説明する。近年、内視鏡画像に対して画像処理を行うことにより、被写体の生体情報、病変部の抽出、抽出した病変部の鑑別情報等、診断等に役立てるための様々な情報を取得することが行われている。例えば、特開2015-091467号公報等の開示のように、内視鏡画像を用いて、被写体において酸素飽和度が低い低酸素部を抽出して内視鏡画像上に表示する技術が知られている。
【0033】
被写体における低酸素部の画像抽出に用いられる内視鏡画像では、ホワイトバランス調整を色にシビアに行う、すなわち、色温度における発色の調整を精密に行う必要がある。内視鏡画像が有する色の違いにより酸素飽和度の数値が変動するためである。したがって、精密なホワイトバランス調整を行うために、各種の内視鏡ごとに専用のチャートを用いることが好ましいとされていた。
【0034】
そこで、複数種類の内視鏡のそれぞれに対し、専用のチャートによりホワイトバランスを行った場合、内視鏡の種類に応じてそれぞれチャートが必要となり、各種の内視鏡に対応した専用のチャートを取り扱わねばならず、運用が煩雑になるおそれがあった。また、複数のチャートを用いることにより、特定の内視鏡に対応しないチャートを用いるといった過誤の発生も考えられ、誤った内容でホワイトバランス調整を行うおそれがあった。
【0035】
さらに、ホワイトバランス調整を精密に行うためには、ホワイトバランス調整の際の撮影において、内視鏡の対物レンズが備えられる内視鏡の先端面とチャートとの距離、角度等の撮影条件を適切に調整することが重要である。上記したとおり、各種の内視鏡において、ホワイトバランス調整の際に内視鏡のそれぞれの種類に応じてチャートを用意し、適切な撮影条件に調整してチャートを撮影することは、手間がかかり調整が煩雑になるおそれがあった。
【0036】
内視鏡の各種類のうち、特にカメラヘッドシステムの硬性鏡は、使用直前にスコープである硬性鏡、カメラヘッド、及び光源の組み合わせが決まり、軟性鏡のように、出荷又は設置時の事前のホワイトバランスの調整(キャリブレーション)ができず、各手技の前に、使用する複数の硬性鏡のそれぞれに対して、使用者である医師等がホワイトバランスの調整を実施する必要があった。したがって、硬性鏡におけるホワイトバランス調整、特に、低酸素部の画像抽出が可能な硬性鏡のホワイトバランス調整においては、上記したように、各種内視鏡に対応したチャートの準備、及び、適切な撮影条件によるチャートの撮影を内視鏡毎に個別に行う必要があり、手間がかかっていた。
【0037】
以下では、複数種類の内視鏡のいずれに対しても適切なホワイトバランス調整を可能とする内視鏡用ホワイトバランス調整治具、及び内視鏡のホワイトバランス調整方法に関する実施形態について説明する。
【0038】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡用ホワイトバランス調整治具(以下、調整治具という)10は、複数種類の内視鏡のホワイトバランス調整のために使用する用具であり、挿入部11と、蓋部12と、外周部13とを備える。外周部13は、左側面部13d、上面部13a、底面部13b(図5参照)、及び右側面部13c(図6参照)を有する。調整治具10は、挿入部11、蓋部12、及び外周部13から構成される箱型となっており、内部に内部空間16(図5参照)を有する。なお、内部空間16は、内部空間16a及び16bからなる場合があり(図6参照)、これらを区別しない場合に内部空間16という。
【0039】
図2に示すように、挿入部11は、内視鏡14の先端部(図3参照、以下、先端部という。)14aを挿入する挿入孔15を少なくとも1つ備える。なお、挿入孔15は、挿入孔15a及び15bからなる場合があり、これらを区別しない場合に挿入孔15という。挿入孔15から挿入方向Xで挿入された先端部14aは、内部空間16の適切な位置まで挿入を進められ、蓋部12の内部空間16側に備えられるチャート18(図5参照)を撮影する。チャート18を撮影した内視鏡画像により内視鏡のホワイトバランス調整を行う。
【0040】
挿入部11は、挿入孔15を複数備えてもよい。複数の挿入孔15は、挿入する内視鏡14の種類により異なる先端部14aの外径に応じて、それぞれ互いに異なる内径を有することが好ましい。これにより、複数の種類の内視鏡14のそれぞれがホワイトバランス調整を行う場合に、挿入孔15から内部空間16に光が入るのを防ぎ、また、先端部14aを適切な位置に進めるガイドの機能が発揮され、チャート18を適切に撮影可能となり、ホワイトバランスを適切に調整することが可能となる。ここでいう複数の種類の内視鏡14とは、先端部14aの外径により区別される種類である。具体的には、先端部14aの外径が比較的太い太径内視鏡14c、先端部14aの外径が比較的細い細径内視鏡14d等(図9参照)が挙げられる。
【0041】
また、挿入孔15の内径は、挿入のしやすさ、チャート18を撮影する際の先端面14b(図3参照)の位置調節のための可動域を確保するため等に、先端部14aを挿入孔15に挿入した際に、先端部14aと挿入孔15との間に適度な隙間が生じるようにした上で、なるべく小さくすることが好ましい。これにより、挿入部11が先端部14aの挿入をガイドし先端面14bの位置調節する機能を担保すること、及び、先端部14aと挿入孔15との隙間から内部空間16に入る光を抑えることが両立可能となる。
【0042】
挿入部11は、互いに内径が異なる第1挿入孔15aと第2挿入孔15bとの2つの挿入孔15を備え、挿入孔15aは挿入孔15bよりも内径が大きい。例えば、第1挿入孔15aの内径が入り口において11mmであり、第2挿入孔15bの内径が入り口において6mmである。
【0043】
挿入する先端部14aの外径に応じて選択した挿入孔15に、先端部14aを挿入する。図3に示すように、先端部14aの外径d1(図9(a)参照)が5mmより大きく15mm以下の範囲内の太径内視鏡14cであれば、第1挿入孔15aに先端部14aを挿入する。また、図4に示すように、先端部14aの外径d2(図9(b)参照)が5mm以下の細径内視鏡14dであれば、第2挿入孔15bに先端部14aを挿入する。
【0044】
図5に示すように、挿入部11は、ガイド部11aにより構成してもよい。ガイド部11aは、使用者が先端部14aを挿入孔15に挿入する際のガイドの機能を有する。ガイド部11aは、長手方向が挿入方向Xとなっている筒状とすることができる。筒状のガイド部11aを形成することにより、使用者による先端部14aの挿入の際に、自然に先端部14aの底部、外面等の一部が、筒状の挿入孔15の底部、内面等との一部と接しながら挿入することとなり、先端部14aを蓋部12に向かってより適切に挿入することが容易となる。また、使用者が内部空間16における内視鏡14の先端面14bをより容易に適切な位置に配置することが用意となる。
【0045】
図6に示すように、ガイド部11a及びガイド部11bは、挿入孔15の入り口から挿入方向Xに沿って蓋部12に向かうにつれて、わずかに内径が大きくなるテーパ状としてもよい。挿入孔15aにおいて、入り口の内径は11mmであるが、ガイド部11aにおいて挿入方向Xに沿って最も蓋部12に近い位置である挿入孔15aの出口では12mmとする。同様に、挿入孔15bにおいて、入り口の内径は6mmであるが、ガイド部11bにおいて挿入方向Xに沿って最も蓋部12に近い位置である挿入孔15bの出口では7mmとする。挿入方向Xに沿ってテーパを形成したガイド部11a及びガイド部11bを設けることにより、使用者が挿入孔15に先端部14aを挿入した場合、マーク17(図8(b)参照)を適切に撮影できる位置に先端部14aを調節して配置することが容易となり、また、先端部14aがチャート18を撮影する際の内視鏡14の先端面14bの位置調節のための可動域を確保することができる。
【0046】
また、挿入部11が挿入孔15を複数備える場合、内部空間16は、挿入孔15のそれぞれに応じて仕切られていてもよい。複数の挿入孔15を備える場合に、仕切り13eにより、挿入孔15aに連なる内部空間16aと挿入孔15bに連なる内部空間16bとに内部空間16が仕切られる。これにより、先端部14aを挿入しない方の挿入孔15から内部空間16に光が入ることを防ぐことができる。したがって、外部の光の侵入を抑えた内部空間16により、ホワイトバランス調整に適切な撮影条件にてチャート18を撮影することができる。
【0047】
また、仕切り13eの形状は、先端部14aを挿入している方の挿入孔15への光の侵入をより良く遮断できる形状であることが好ましい。したがって、仕切り13eは、蓋部12の内部空間に面する内面に接することが好ましい。また、ガイド部11aを延長した各挿入孔15に応じた筒状の形状に構成することにより仕切り13eを構成してもよい。
【0048】
蓋部12は、挿入孔15における先端部14aの挿入方向Xにおいて、挿入部11と対向して配置される。蓋部12は、調整治具10の筐体の一部を構成する構成部として、かつ、チャート18を保持するチャート保持部として機能する。蓋部12は、蓋部基材12eとチャート18とを備える。蓋部基材12eにおいて、調整治具10を構成する際に内部空間16側に位置する面を内面12bとし、内面12bの反対側の面を外面12aとする(図5参照)。内面12bにはチャート18が備えられている。本実施形態では、蓋部12は、厚みが均一な板状であり、両面を平面状に構成する。蓋部基材12eが備えるチャート18が先端部14aの挿入方向Xに垂直な垂直面に対し傾斜してチャート18を保持可能な限り、蓋部基材12e又は蓋部12の形状は問わない。したがって、蓋部基材12e又は蓋部12は、厚みが均一でない板状であってもよいし、板状でなくてもよい。
【0049】
蓋部12と外周部13とは、分離可能に連結することが好ましい。図7に示すように、蓋部12と外周部13との連結を解除することにより、蓋部12のみを調整治具10から取り外すことができる。したがって、調整治具10の内部を洗浄、消毒等することが可能となる。また、蓋部12のみを洗浄、交換等することが可能であり、複数の蓋部12から、ホワイトバランス調整を行いたい内視鏡14の種類に対応したチャート18を備える蓋部12を選択し、それまで用いていた蓋部12と交換した上で用いることができる。なお、挿入部11は、外周部13と分離不可能に一体化していてもよいし、分離可能に連結してもよい。
【0050】
蓋部12と外周部13とが分離可能である場合、蓋部12と外周部13とは、分離及び連結が容易に行えるように構成することが好ましい。蓋部12と外周部13とは磁力及び/又は嵌合により分離可能に連結してもよい。すなわち、蓋部12と外周部13とが、磁石を用いることにより連結してもよいし、蓋部12及び外周部13のそれぞれの少なくとも一部が、凸部と凹部との嵌め込みにより連結してもよいし、磁石を用い、かつ、凸部と凹部との嵌め込みにより連結してもよい。
【0051】
本実施形態では、外周部13が磁石挿入部13fを備え、磁石挿入部13fの内部には磁石(図示せず)が嵌め込まれている。そして、蓋部12は、少なくとも磁石挿入部13fに対応する凸部12cが、磁石挿入部13fの内部に対応する外周部13の凹部13gの一部に、磁力により吸着する性質を有する。したがって、蓋部12と外周部13とは、蓋部12を外周部13に近づけることにより容易に連結し、蓋部12を外周部13から引き剥がすことにより容易に分離する。また、蓋部12には凸部12cが形成され、外周部13には、凸部12cに対応する凹部13gが形成されるため、蓋部12と外周部13とは、容易に適切な位置で連結する。したがって、蓋部12が有するチャート18の位置も、容易に適切な位置に配置することができる。
【0052】
図8(a)に示すように、分離された蓋部12において、外面12aは、調整治具10の外面を構成する。図8(b)に示すように、蓋部12の内部空間16に面する部分にはチャート18が備えられ、チャート18の表面は調整治具10の内面を構成する。また、チャート18の表面は、複数のマーク17を有する。複数のマーク17は、マーク17a、マーク17b、マーク17c、及びマーク17dからなる。これらのマークを区別しない場合にマーク17という。マーク17は、蓋部基材12eの内面12b上に直接形成されてもよいし、チャート18を構成する基材上にマーク17が形成され、マーク17を有するチャート18を内面12b上に配置してもよい。この場合、チャート18の形状は、蓋部12と同じでもよく、異なっていても良い。本実施形態では、チャート18は蓋部12とほぼ同一の形状であり、凸部12cのような凸部を備える矩形状である。
【0053】
チャート18は、内視鏡14がホワイトバランス調整を行う場合に、これを撮影することによりホワイトバランスを適切に調整できるように構成される。したがって、先端部14aを挿入孔15から挿入した場合に、先端部14aが有する先端面14bが備える対物レンズ(図示せず)によりチャート18を撮影した場合に、内視鏡14のホワイトバランス調整に適切な状態でマーク17を撮影することができるようチャート18及びマーク17を構成する。なお、対物レンズは、内視鏡14の撮像光学系を構成する一部である。
【0054】
チャート18は、先端部14aの挿入方向Xに垂直な垂直面に対し、傾斜するように配置する。なお、垂直面は仮想の面である。これにより、複数の種類の内視鏡14のそれぞれがホワイトバランス調整を行う場合に、チャート18を適切に撮影可能となり、ホワイトバランスを適切に調整することが可能となる。なお、ここでいう複数種類の内視鏡14とは、先端部14aの軸方向に対する撮像光学系の光軸方向の角度により区別される種類である。
【0055】
複数種類の内視鏡14としては、先端部14aの軸方向に対する撮像光学系の光軸方向とが平行となる直視鏡と、先端部14aの軸方向に対する撮像光学系の光軸方向とが角度を有する斜視鏡とが挙げられる。内視鏡14が硬性鏡でありスコープが直線状である場合、先端部14aの軸方向はスコープの軸方向と同じである。内視鏡14が軟性鏡であってもスコープの先端部14aが湾曲しない場合、先端部14aの先端部14aの軸方向に対する撮像光学系の光軸方向とにより、内視鏡14の種類を区別することができる。なお、斜視鏡は、側視鏡等と呼ばれる場合がある。
【0056】
図9(a)に示すように、斜視鏡21では、撮像光学系の光軸方向mと先端部14aの軸方向nとがなす角である斜視角αが、例えば、30°、45°等である。図9(b)に示すように、直視鏡22では、撮像光学系の光軸方向mと先端部14aの軸方向nと平行である。直視鏡22は、先端部14aの軸方向前方にある被写体の内視鏡画像を得ることができ、斜視鏡21は、先端部14aの軸方向からみてやや側面の前方にある被写体の内視鏡画像を得ることができる。なお、撮像光学系の光軸方向mと先端部14aの軸方向nと平行である直視鏡22の場合は、斜視角αが0°ということができる。
【0057】
調整治具10において、マーク17を適切に配置したチャート18を、挿入方向Xに垂直な垂直面に対し適切な程度で傾斜するように配置することにより、斜視角αが0°である直視鏡22の場合を含め、斜視角αが様々である複数種類の内視鏡14のいずれにおいても、マーク17を撮影した際に、対物レンズを備える内視鏡の先端面14bとマーク17との距離及び角度が所定範囲内となる。したがって、このチャート18を撮影した内視鏡画像をホワイトバランスの調整に用いた際に、適切にホワイトバランスの調整を行うことが可能となる。
【0058】
チャート18の傾斜の程度は、複数の内視鏡14のそれぞれがチャート18を撮影して得た内視鏡画像をホワイトバランス調整に用いた際に、先端面14bとマーク17との距離及び角度が所定範囲内であり、チャート18が傾斜することによるマーク17の色、明るさ、歪み等がホワイトバランス調整において問題とならない程度とすればよい。チャート18の傾斜の程度は、直視鏡又は斜視鏡の光軸に垂直な垂直面に対するチャート18の傾斜により示すことができる。なお、チャート18の傾斜の角度は、調整治具10の使用の際、チャート18下部を軸とした場合の角度である。すなわち、調整治具10を使用する際は外周部13の底面部13bを鉛直下方に配置するため、調整治具10の底面部13bが下方にある状態での角度である。また、チャート18が挿入部11側に傾斜する場合に傾斜の角度を正とし、チャート18が挿入部18と反対側に傾斜する場合の傾斜の角度を負とする。
【0059】
図10に示すように、直視鏡22では、チャート18の表面を含む面kを、直視鏡22の撮像光学系の光軸方向m1に垂直な垂直面lに対して傾斜角β1となるように配置する。直視鏡22の光軸方向m1は挿入方向と同じであるため、直視鏡22の光軸方向m1と垂直な垂直面lは、挿入方向に垂直な垂直面とすることができる。また、図11に示すように、斜視鏡21では、チャート18の表面kを、斜視鏡21の撮像光学系の光軸方向m2に垂直な垂直面lに対して傾斜角β2となるように配置する。なお、図の一部において、図が煩雑になるのを防ぐため、断面を示すハッチング等を省略する場合がある。
【0060】
傾斜角β1又は傾斜角β2は、直視鏡22によりチャート18を撮影した内視鏡画像を得てホワイトバランス調整を行う場合、マーク17が適切に撮影可能であり、そのためホワイトバランス調整が適切に行える角度である。傾斜角β1により、直視鏡22はマーク17bを適切に撮影する。同様に、傾斜角β2により、斜視鏡21はマーク17aを適切に撮影する。傾斜角β1及び傾斜角β2は、斜視鏡21及び直視鏡22がホワイトバランス調整が適切に行える角度の範囲を有する。したがって、挿入方向に垂直な垂直面に対するチャート18の傾斜について、傾斜角β1及び傾斜角β2をともに満たすように設定することができる。
【0061】
図12に示すように、チャート18は、4つのマーク17a、17b、17c、及び17dを縦(鉛直方向Y)、横(幅方向Z)に2つずつ並べた配置により含む。4つのマーク17a、17b、17c、及び17dは、いずれも形状は円であり、チャート18において、それぞれ上下左右に配置される。マーク17a及び17bは、図12において紙面に向かって左側に配置され、第1挿入孔15aから先端部14aを挿入した場合に撮影する。マーク17c及び17dは、第2挿入孔15bから先端部14aを挿入した場合に撮影する。
【0062】
また、マーク17a又はマーク17cからなる領域31が、マーク17b又は17dからなる領域32より鉛直方向Yで上にある場合、直視鏡22は、マーク17b又は17dからなる領域32が含むマーク17を撮影し、斜視鏡21は、マーク17a又はマーク17cからなる領域31が含むマーク17を撮影する。また、領域33が含むマーク17a及び17bは、外径が15mmまでの直視鏡22又は斜視鏡21が撮影し、領域34が含むマーク17c及び17dは、外径が5mmまでの直視鏡22又は斜視鏡21が撮影する。したがって、この場合、斜視鏡21を挿入孔15に挿入する場合、光軸方向m2が鉛直上方向を向くように挿入する。
【0063】
本実施形態では、第1挿入孔15aの入り口の内径が11mmであり、第2挿入孔15bの入り口の内径が6mmであるから、第1挿入孔15aから挿入した先端部14aが外径10mmの直視鏡22はマーク17aを撮影し、先端部14aが外径10mmの斜視鏡21はマーク17bを撮影する。また、第2挿入孔15bから挿入した先端部14aが外径5mmの直視鏡22はマーク17cを撮影し、先端部14aが外径5mmの斜視鏡21はマーク17dを撮影する。
【0064】
以上のように、チャート18が傾斜することにより、内視鏡14の種類が、斜視鏡21及び直視鏡22のいずれであっても、ホワイトバランス調整を適切に行うことができる。本実施形態では、チャート18がチャート18の下部を軸として挿入部側に傾斜している。さらに、上記したように、挿入孔15が内視鏡の径に応じて複数設けられる場合は、内視鏡14の種類が、太径内視鏡14a及び細径内視鏡14bのいずれであっても、ホワイトバランス調整を行うことができる。
【0065】
すなわち、調整治具10は、チャート18が挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜し、上記のように構成したことから、斜視鏡21である太径内視鏡14a、斜視鏡21である細径内視鏡14b、直視鏡22である太径内視鏡14a、及び、直視鏡22である細径内視鏡14bの4種類の内視鏡14のいずれに対しても、適切なホワイトバランス調整を行うことができる。
【0066】
チャート18においては、挿入項15の数と、撮像光学系の光軸方向mと先端部14aの軸方向nとがなす斜視角αの種類とをかけ合わせた数のマーク17をチャート18に設けることにより、調整治具10は、調整治具10が有するマーク17の数の種類の内視鏡14のいずれに対しても適切なホワイトバランス調整を行うことができる。
【0067】
上記したように、挿入孔15の数は2つには限らない。例えば、挿入孔15を内視鏡の径に応じて、太径内視鏡14a、太径と細径との中間の径の内視鏡14に適切な中径内視鏡、及び、細径内視鏡14bの3つを設置した場合は、それぞれの径について、斜視鏡21及び直視鏡22をの2種類を採用でき、この場合、チャート18に6個のマーク17を設定することにより、6種類の内視鏡14のいずれに対しても、適切なホワイトバランス調整を行うことができる。
【0068】
チャート18が挿入部側と反対側に傾斜してもよい。図13に示すように、この場合は、直視鏡22がチャート18の上部に配置したマーク17bを撮影する。直視鏡22の光軸方向m1は挿入方向と同じであるため、直視鏡22の光軸方向m1と垂直な垂直面lは、挿入方向に垂直な垂直面とすることができる。また、図14に示すように、斜視鏡21がチャート18の下部に配置したマーク17aを撮影する。以上のように、対応するマーク17を配置したチャート18を挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜させて配置することにより、直視鏡22及び斜視鏡21のいずれに対しても、適切にマーク17を撮影させることができる。また、挿入孔15の形状、マーク17の配置等により、挿入した内視鏡14に対して適切ではないマーク17が写らないようにしてもよい。
【0069】
チャート18が有するマーク17は、ホワイトバランス調整を行う内視鏡14の種類に応じて、色、形状、配置等を予め設定する。したがって、マークは、各内視鏡14においてホワイトバランスを調整するのに適した基準色を有することが好ましい。基準色とは、内視鏡画像において白を作成するための色である。チャート18において、マーク17以外の部分は、マーク17が認識しやすい色とすることが好ましい。例えば、チャート18において、マーク17以外の部分は、マーク17を識別しやすいように、マーク17と異なる色であることが好ましい。
【0070】
また、マーク17の形状は、内視鏡14のホワイトバランス調整に適切な状態、すなわち、先端面14bとチャート18との距離が適切となった状態でマーク17を撮影した場合に、マーク17の形状が把握しやすい形状とすることが好ましい。例えば、マーク17の形状は、円、楕円、三角形、四角形、多角形等、形状が容易に認識できる形状としてもよい。形状には、マーク17の大きさも含む。また、形状は、ホワイトバランスの調整が適切に行えるものであればよく、塗りつぶしによる形状の他、塗りつぶさず、ある程度の幅を有する輪郭による形状であってもよい。
【0071】
マーク17が特定の形状であることにより、使用者は、先端部14aを挿入孔15に挿入してチャート18を撮影した場合に、内視鏡画像が表示されたディスプレイ55を見ることにより、マーク17の形状又は輪郭により、適切な状態でマーク17を撮影しているか否かを判定することができる。使用者は、マーク17の形状又は輪郭が適切となるように先端面14bとチャート18との距離を調整することができる。
【0072】
このようにして、先端面14bとチャート18との距離等が適切となった場合、動画のままでホワイトバランス調整を行っても良いし、静止画を取得してから、この静止画を用いてホワイトバランス調整を行っても良い。なお、チャート18は、マーク17を少なくとも2つ有する。
【0073】
複数のマーク17は、チャート18において、先端部14aの挿入方向Xに沿って配置されていることが好ましい。図15に示すように、チャート18は、挿入方向Xに垂直な垂直面lに対し傾斜しているため、チャート18において、挿入孔15aに挿入する内視鏡14の挿入方向Xに沿って配置されている複数のマーク17は、領域33に配置されたマーク17a及びマーク17bである(図12参照)。同様に、挿入孔15bに挿入する内視鏡14の挿入方向Xに沿って配置されている複数のマーク17は、領域34に配置されたマーク17c及びマーク17dである(図12参照)。複数のマーク17が、挿入方向Xに沿って配置されることにより、同じ挿入孔15を用いた場合、直視鏡22及び斜視鏡21のいずれを用いても、適切にマーク17を撮影することができる。
【0074】
図16に示すように、複数のマーク17のうちの1つは、チャート18と挿入孔15に挿入する内視鏡14の光軸方向mとが交わる位置に配置されていることが好ましい。図16では、挿入孔15aに対応して、マーク17bが配置される。マーク17bは、チャート18の表面kと挿入孔15aに挿入する直視鏡22の光軸方向m1とが交わる位置に配置されている。同様に、挿入孔15aに対応して、マーク17aが配置される。マーク17aは、チャート18の表面kと挿入孔15aに挿入する斜視鏡21の光軸方向m2とが交わる位置に配置されている。また、同様に、挿入孔15bに対応して、マーク17d及びマーク17cが配置される。マーク17dは、チャート18の表面kと挿入孔15bに挿入する直視鏡22の光軸方向m1とが交わる位置に配置され、マーク17cは、チャート18の表面kと挿入孔15bに挿入する斜視鏡21の光軸方向m2とが交わる位置に配置される。これにより、直視鏡22及び斜視鏡21のいずれであっても、また、複数の挿入孔15のいずれに挿入する場合であっても、ホワイトバランス調整を行うために適切にマーク17を撮影した内視鏡画像を得ることができる。
【0075】
以上のように、内視鏡14の種類が直視鏡22であっても斜視鏡21であっても、チャート18が光軸方向mに垂直な垂直面lに対して適度に傾斜しているから、それぞれの内視鏡14の光軸方向mとチャート18との角度をホワイトバランス調整において問題のない範囲内として、適切にマーク17を撮影することができる。したがって、挿入孔15に挿入する先端部14aを有する内視鏡14は、直視鏡22又は斜視鏡21であってよい。
【0076】
また、調整治具10に挿入する先端部14aは、湾曲しないことが好ましい。したがって、挿入孔15に挿入する先端部14aを有する内視鏡14は、硬性鏡であることが好ましい。内視鏡14が軟性鏡である場合は、少なくともスコープの先端部14aが湾曲しないことが好ましい。
【0077】
ここで、傾斜角β1及び傾斜角β2の具体例について説明する。傾斜角β1及び傾斜角β2は、直視鏡22及び斜視鏡21を含む複数種類の内視鏡14を用いた実測値により決定してもよい。調整治具10と同様の装置を用い、直視鏡22及び斜視鏡21を含む複数種類の硬性鏡の内視鏡14について、傾斜角β1又は傾斜角β2を予め設定した角度として撮影した内視鏡画像によりホワイトバランス調整を行い、内視鏡画像における信号比ずれを実測した。具体的には、直視鏡22と斜視鏡21とを含む複数種類の内視鏡14について実測した信号比ずれを百分率で表し、傾斜角βと信号比ずれとを複数の内視鏡14における実測値の平均値としてプロットしたグラフ35とし、信号比ずれがホワイトバランス調整のために問題がない範囲R1及び範囲R2を決定した。なお、信号比ずれとは、得られた内視鏡画像全体の各色の画素を平均して無彩色となる場合を0%、各色の画素を平均して最も色を有する場合を100%とした値である。グラフ35では、縦軸が信号比ずれでありを、横軸が傾斜角βの絶対値である。なお、傾斜角β1と傾斜角β2とを区別しない場合に傾斜角βとする。
【0078】
図17に示すように、グラフ35から、傾斜角βについては、信号比ずれが少なく、ホワイトバランス調整に問題がないことから、範囲R1であることが好ましく、範囲R2であることがさらに好ましい。したがって、直視鏡22における傾斜角β1は40°以内であることが好ましく、30°以内であることがさらに好ましい。また、斜視鏡21における傾斜角β2は、挿入部11側を正として、垂直面lを基準として、負の方向及び正の方向に40°以内であることが好ましく、同様の方向に30°以内であることがより好ましい。また、傾斜角β1又は傾斜角β2は、5°以上であることが好ましい。傾斜角β1は0°とはしない。また、グラフ35の範囲R2により、傾斜角β1又は傾斜角β2は、15°以上であることがさらに好ましい。
【0079】
以上より、内視鏡が、直視鏡21である場合、チャート18は、調整治具10の使用の際のチャート18の下部を軸として、挿入部11側の傾斜を正とした際に、内視鏡の光軸に垂直な垂直面に対し、5°以上40°以下の範囲内の傾斜角β1で傾斜することが好ましく、15°以上30°以下の範囲内の傾斜角β1で傾斜することがさらに好ましい。同様に、内視鏡が、斜視鏡22である場合、チャート18は、チャート18は、調整治具10の使用の際のチャート18の下部を軸として、挿入部11側の傾斜を正とした際に、内視鏡の光軸に垂直な垂直面に対し-40°以上40°以下の範囲内の傾斜角β2で傾斜することが好ましく、-30°以上30°以下の範囲内の傾斜角β2で傾斜することがさらに好ましい。さらに、以上のように、傾斜角β1及び傾斜角β2を設定することにより、直視鏡22又は斜視鏡21において、ホワイトバランス調整に適切な内視鏡画像を撮影することができる。
【0080】
本実施形態の調整治具10は、右利きの使用者である場合、例えば、左手に底面部13bを載せて調整治具10を左手で把持し、右手で内視鏡14を持って、内視鏡先端部14aを挿入項15に挿入するように使用する場合が多い。このような態様で調整治具10を使用する場合、調整治具10の形状、挿入方向、調整治具10の使用方法等にもよるが、チャート18は、チャート18の下部を軸として、挿入部11側に傾斜していることが好ましい(図10図11参照)。この場合、上記に記載した角度は、挿入部11側を正とした場合の角度である。チャート18が、挿入部11側に傾斜することにより、上記したように、左手に底面部13bを載せて調整治具10を左手で把持し、右手で内視鏡14を持って、内視鏡先端部14aを挿入項15に挿入するように使用する場合等、直視鏡22及び斜視鏡21のどちらにおいても、適切にホワイトバランス調整のための適切な態様で、安定的に、撮影をすることができる。
【0081】
なお、調整治具10の形態としては、本実施形態のように、底面部13bを下部にして使用するための形態のみならず(図1参照)、左側面部13dを最も低い位置とし、チャート18が、チャート18の右部を軸として挿入部11側に傾斜したような形状のものであってもよく、同様に、右側面部13cを最も低い位置とし、チャート18が、チャート18の左部を軸として挿入部11側に傾斜したような形状のものであってもよい。すなわち、本実施形態の調整治具10をZ方向に回転させた形態の調整治具であっても、チャート18がチャート18のいずれかの部分を軸として、挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜するものであればよい。
【0082】
また、直視鏡22における傾斜角β1と斜視鏡21における傾斜角β2との好ましい範囲により、図18に示すように、チャート18の傾斜の程度を、先端部14aの挿入方向Xに垂直な垂直面jに対するチャート18の表面kの傾斜角β3によって示してもよい。斜視鏡21の斜視角αが最大で45°であるとすると、直視鏡22と45°までの斜視角αを有する斜視鏡21とにおいて適切なホワイトバランス調整を行うためには、傾斜角β3は、下限で、5°以上であることが好ましく、より好ましくは15°以上である。また、傾斜角β3は、上限で、40°以下であることが好ましく、より好ましくは30°以下であることが好ましい。
【0083】
傾斜角β3が5°以上40°以下の範囲内であることにより、直視鏡22及び斜視角αが45°までの斜視鏡21において、傾斜角β1及び傾斜角β2の両者を満たし、直視鏡22及び斜視角αが様々である斜視鏡21のいずれに対しても、適切なホワイトバランス調整を行うことができる。傾斜角β3が15°以上30°以下の範囲内であることにより、直視鏡22及び斜視角αが様々である斜視鏡21のいずれに対しても、より確実に適切なホワイトバランス調整を行うことができる。本実施形態では、傾斜角β3は25°としている。
【0084】
また、信号比ずれを生じることなく、適切にホワイトバランス調整を行うためには、内視鏡14とチャート18とを適切な距離となるように先端部14aを配置することが好ましい。内視鏡14とチャート18との距離は、内視鏡14の先端面14bとチャート18との距離である。図19に示すように、直視鏡22における先端面14bとチャート18との距離は距離d3である。図20に示すように、斜視鏡21における先端面14bとチャート18との距離は距離d4である。
【0085】
内視鏡14とチャート18との適切な距離は、直視鏡22及び斜視鏡21を含む複数種類の内視鏡14を用いた実測値を用いて決定することができる。図21に示すように、直視鏡22及び斜視鏡21を含む複数種類の内視鏡14について、内視鏡14の先端面14bとチャート18の表面kとの距離d3又は距離d4を予め設定した距離として撮影した内視鏡画像を用いてホワイトバランス調整を行った。その際の内視鏡画像の信号比ずれを百分率で表し、距離d3又はd4と信号比ずれとを複数の内視鏡14における実測値の平均値としてプロットしたグラフ36を作成し、信号比ずれがホワイトバランス調整のために問題がない範囲R1及び範囲R2を決定した。
【0086】
グラフ36により、距離d3及び距離d4については、信号比ずれが少なく、ホワイトバランス調整に問題がないことから、範囲R1であることが好ましく、範囲R2であることがさらに好ましい。したがって、内視鏡14の先端面14bとチャート18の表面kとの距離d3又は距離d4は、5mm以上55mm以下の範囲内であることが好ましく、20mm以上45mm以下の範囲内であることがより好ましい。また、距離d3又は距離d4は、5mm以上であることが好ましい。一般的な内視鏡14の撮像光学系の場合、距離d3又は距離d4が5mm以下であると、その特性上ホワイトバランス調整のために好ましい内視鏡画像を撮影できない可能性がある。以上により、内視鏡14の先端面14bとチャート18の表面kとの距離は、5mm以上55mm以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内であると、信号比ずれが抑えられ、適切なホワイトバランス調整を行うことができる内視鏡画像を取得することが可能となる。
【0087】
外周部13(図1参照)は、調整治具10を構成する部分のうち、挿入部11及び蓋部12以外の部分であり、挿入部11及び蓋部12とそれぞれ接することにより調整治具10を構成し、かつ、調整治具10の内部空間16を形成する。外周部13は、上面部13a、底面部13b、右側面部13c、及び左側面部13dからなる(図5及び図6参照)。調整治具10の内部空間16は、内視鏡14のホワイトバランスを調整する際に暗い状態に保たれることが好ましいため、外周部13は、外部の光が内部空間16に入らないように、挿入部11及び蓋部12と連結することが好ましい。また、調整治具10を、遮光部材を用いて構成してもよい。調整治具10を、遮光部材を用いて構成する場合は、調整治具10自体を遮光する材料を用いて作成してもよいし、調整治具10を構成する基材に遮光部材を塗布、添付等により積層してもよい。
【0088】
遮光部材について、蓋部12は、チャート18と遮光部材41とを有してもよい。蓋部12を挿入部11と対向して配置する場合に、挿入部11側から、チャート18と遮光部材41とを、この順で備える。これにより、蓋部12を通って侵入する光をより確実に遮断することができ、適切なホワイトバランス調整が可能となる。
【0089】
この場合、蓋部12自体を遮光する材料を用いて作成してもよい。蓋部12は、蓋部基材12eとチャート18とを有し、蓋部基材12e及び/又はチャート18が遮光部材41であってもよい(図5参照)。蓋部基材12eは、チャート18の保持部として機能し、蓋部基材12eにチャート18を配置することにより蓋部12とする。また、蓋部基材12e及び/又はチャート18が遮光部材41であるから、蓋部基材12e又はチャート18以外に遮光部材41を設けなくてもよい。
【0090】
図22に示すように、蓋部12が遮光部材41を有する場合、蓋部12を、蓋部基材12eと遮光部材41とチャート18とから構成してもよい。この場合、蓋部基材12eと遮光部材41とを積層した連結部材12dにおいて、遮光部材41側にチャート18を配置する。蓋部基材12eと遮光部材41との連結部材12dは、それぞれ板状の部材を結合したものであってもよいし、遮光部材41を形成する材料を蓋部基材12eに塗布、貼付等したものでもよい。
【0091】
蓋部12は、チャート18と遮光部材41とを分離可能に構成されることが好ましい。これにより、チャート18と遮光部材41とを、それぞれ組み合わせて用いることができる。遮光部材41が蓋部基材12eと積層した連結部材12dである場合は、連結部材12dとチャート18とが連結した蓋部12から、チャート18を分離可能に構成する。これにより、滅菌、消毒等されたチャート18を複数種類から目的に応じて選択して使用することが可能であり、複数種類の内視鏡のホワイトバランス調整を迅速に行う事が可能となる。チャート18と遮光部材41との連結方法は、チャート18が遮光部材41における適切な位置に、浮き等が生じることなく連結することができ、かつ、容易に分離可能となる方法であることが好ましい。例えば、蓋部12において、チャート18と遮光部材41とを磁力、粘着力、連結する表面の特性による物理的な吸着力、嵌合等により連結可能に構成することができる。なお、本実施形態では、チャート18において、遮光部材41と連結する部分が粘着可能なシリコン等の材料で構成されており、チャート18は、物理的な吸着により遮光部材41と連結する。
【0092】
チャート18と遮光部材41とを分離可能に構成する場合、チャート18と遮光部材41とは、遮光部材41においてチャート18の位置を適切に配置できることが好ましい。したがって、遮光部材41のチャート18を連結する面において、チャート18の位置をマーク等により表示することが好ましい。
【0093】
図23に示すように、図23(a)に示す蓋部基材12eと遮光部材41とを連結した連結部材12dと、図23(b)に示すチャート18とは分離可能である。連結部材12dと、連結部材12と異なる形状のチャート18とを再度連結する場合のために、連結部材12dの遮光部材41側のチャート18を配置する側の表面において、チャート位置マーク42を備えてもよい。これにより、分離された遮光部材41とチャート18とを連結する場合に、チャート18をチャート位置マーク42に合わせて連結することにより、チャート18を適切な位置に配置できる。なお、蓋部基材12e及び/又はチャート18が遮光部材41である場合は、蓋部基材12eのチャート18を配置する側の表面において、チャート位置マーク42を備えてもよい。
【0094】
次に、調整治具10及び調整治具10を用いた内視鏡のホワイトバランス調整方法等について、実施形態の例を説明する。図24に示すように、本実施形態の内視鏡は、内視鏡下手術(腹腔鏡下手術)に用いられる硬性鏡(腹腔鏡)である腹腔用内視鏡であり、腹腔用内視鏡システム50(以下、内視鏡システム50という)の一部である。
【0095】
内視鏡システム50は、内視鏡51a及び内視鏡51b、カメラヘッド52、光源装置53、プロセッサ装置54、ディスプレイ55、及び、入力装置56を備える。内視鏡システム50は、カメラヘッド52を用いるシステムである。手技において、用途等に応じて、内視鏡51a及び内視鏡51bのそれぞれが有する光源装置用コネクタ57及びカメラヘッド用コネクタ58により、内視鏡51a及び内視鏡51bのいずれか一方を、光源装置53及びカメラヘッド52に連結して用いる。
【0096】
内視鏡51aは、先端部14aの軸方向mと光軸nとが平行する直視鏡であり(図9(b)参照)、内視鏡51bは、先端部14aの軸方向mと光軸nとがなす斜視角αが30°である斜視鏡である(図9(a)参照)。また、内視鏡51aの先端部14aの外径d2は5mmであり(図9(b)参照)、内視鏡51bの先端部14aの外径d1は10mmである(図9(a)参照)。なお、内視鏡51a及び内視鏡51bを区別しない場合は、内視鏡51という。
【0097】
内視鏡51は、硬性鏡であり、硬質で細長く形成され、被検体内に挿入され、内視鏡下手術等に用いる。被検体内に挿入する前に、硬性鏡である内視鏡51aと内視鏡51bに対してホワイトバランス調整を行う。内視鏡51の先端部14aは、ホワイトバランス調整の際に、挿入孔15から調整治具10に挿入され、調整治具10の内部空間16を通り、適切な位置まで進められ、蓋部12の内面12bに備えられるチャート18のマーク17を撮影する。具体的には、内視鏡51aは、挿入孔15bに挿入し、内視鏡51bは、挿入孔15aを選択して挿入する。
【0098】
内視鏡51の内部には、被写体像を結像するための撮影光学系、及び、被写体に照明光を照射するための照明光学系が設けられる。光源装置53は、撮影の際に被写体に向けて照明光を発生する。照明光には励起光等を含む。光源装置53は、例えば、レーザーダイオード、LED(Light Emitting Diode)、キセノンランプ、または、ハロゲンランプの光源からなる光源部(図示せず)を含み、少なくとも、白色の照明光、または、白色の照明光を発光するために使用する励起光を発光する。また、光源部は、必要に応じて、励起光の照射を受けて発光する蛍光体、または、照明光もしくは励起光の波長帯域、スペクトル、光量等を調節する光学フィルタ等を含む。この他、光源部は、被写体が含むヘモグロビンの酸素飽和度等の生体情報を算出するため、特定の組織等を強調するため等に使用する画像の撮像に必要な光、スペクトルが調整された光等を発光する。
【0099】
カメラヘッド52は、撮像センサ等を備え、被写体の撮像を行う。プロセッサ装置54は、中央制御部54a、画像処理部54b、及び表示制御部54cを備え、内視鏡システム50のシステム制御及び画像処理等を行う。中央制御部54aは、内視鏡システム50のシステム制御を統合的に行う。画像処理部54bは、カメラヘッド52の撮像センサが取得した内視鏡画像を取得し各種の画像を生成する。画像処理部54bは、また、ホワイトバランス調整及びホワイトバランス調整に関する各種処理を行う。表示制御部54cは、画像処理部54bが生成した画像をディスプレイ55等に表示する制御を行う。ディスプレイ55は、内視鏡51で撮像した画像を表示する表示部である。入力装置56は、コンソール等であり、プロセッサ装置54等へ設定入力等を行う入力デバイスである。
【0100】
次に、図25に示すフローチャートを用いて、内視鏡システム50において、本発明の調整治具10を用いた内視鏡51のホワイトバランス調整を行う流れの一例を説明する。内視鏡システム50を手技のために用いる際に、使用者は、実際に内視鏡51を用いる前に、調整治具10を用いて内視鏡51のそれぞれについてホワイトバランス調整を行う。ホワイトバランス調整を行う内視鏡51に対応する適切なチャート18と、遮光部材41からなる蓋部基材12eとを有する蓋部12を準備する(ステップST110)。複数種類の内視鏡51に対してホワイトバランス調整を行う場合は、複数種類の内視鏡51のそれぞれに対応するマーク17をすべて有するチャート18を準備する。蓋部基材12e及びチャート18は、予め滅菌等の処理を行っておく。遮光部材41である蓋部基材12eとチャート18とを連結させ、蓋部12とする。次に、蓋部12を外周部13に連結して、調整治具10とする(ステップST120)。
【0101】
調整治具10において、挿入孔15が複数設けられる場合は、先端部14aの外径に対応した挿入孔15を選択し、選択した挿入孔15に先端部14aを挿入する。ここでは、はじめに直視鏡22である内視鏡51aについて、次に斜視鏡21である内視鏡51bについてホワイトバランス調整を行う。
【0102】
まず、内視鏡51bの先端部14aの外径に基づき、調整治具10の挿入孔15bを選択し、内視鏡51aの先端部14aを挿入する(ステップST130)。使用者は、片手に調整治具10を載せるように持ち、もう一方の手で先端部14aを調整治具10の挿入孔15に挿入してもよいし、調整治具10を机上等に置いた状態で、先端部14aを調整治具10の挿入孔15に挿入してもよい。挿入は、蓋部12の内面12bに備えられるチャート18のマーク17を撮影しながら行う。使用者は、ディスプレイ55を見ながら、先端部14aを少しずつ調整治具10の奥に挿入していくことにより、先端部14aとチャート18との適切な距離まで先端部14aを進める。マーク17を撮影して得られる内視鏡画像は、プロセッサ装置54に送られ、表示制御部54cにより、ディスプレイ55に表示するよう制御される。使用者は、ディスプレイ55に写る内視鏡画像を観察しながら、内視鏡画像においてマーク17の位置及び大きさが適切に写る位置まで、先端部14aの挿入を行う(ステップST140)。
【0103】
本実施形態では、マーク17は基準色を塗りつぶして描かれた円形である。図26に示すように、内部空間16における先端部14aの位置に応じて、ディスプレイ55に表示される内視鏡画像に写るマーク17の色、形状等は異なる。図26(a)に示すように、先端部14aの挿入により、ディスプレイ55には内視鏡51が取得した内視鏡画像が動画として表示され始める。内視鏡画像におけるマーク17dは、小さく、かつ、暗い色により表示され始める。次に、先端部14aを進めていくと、図26(b)に示すように、マーク17dが図26(a)の場合よりも大きく、かつ、明るく写ってくる。先端面14bの位置が、ホワイトバランス調整を行う場合にチャート18と適切な距離である場合に、マーク17がどの程度の大きさで内視鏡画像で写るのかは予め設定されるから、使用者はその大きさを予め把握しておく。そして、さらに先端部14aを進め、図26(c)に示すように、ほぼ設定された大きさでマーク17dが写る。この場合、ディスプレイ55に示しされた内視鏡画像において、マーク17dは、明るい基準色である白色で表示される。
【0104】
ほぼ設定された大きさでマーク17dが写った場合、ここでの先端面14bの位置は、ホワイトバランス調整を行う場合にチャート18と適切な距離である。したがって、内視鏡画像に写るマーク17の位置が内視鏡画像のほぼ中心部に写り、図26(c)のような状態になった際に、先端部14aを進めるのをやめる。なお、先端部14aを進めすぎた場合は、先端部14aを戻し、戻し過ぎた場合は進め、先端部14aを抜き差しするように移動させ、ディスプレイ55を見ながらこれらを繰り返すことにより、内視先端部14aとチャート18との適切な距離を調整することができる。また、水平方向の位置についても、先端部14aの向きを左右に調整し、マーク17が内視鏡画面の中央付近に写るように調整することができる。以上のように、マーク17が適切に写るとは、内視鏡画像に写るマーク17の位置及び大きさが適切である状態であり、例えば、内視鏡画像の中央にマーク17の中央が合わせられ、内視鏡画像内にマーク17の全体がちょうど収まるように写る場合をいう。
【0105】
マーク17の形状が適切に写った位置で、先端部14aの進行、後退、水平方向等の移動を止めて、しばらくそのままとする。先端部14aがこの位置である場合に、チャート18を適切に撮影でき、適切なホワイトバランス調整が可能となるため、ここでホワイトバランス(WB、White Balance)調整を実施する(ステップST150)。
【0106】
ホワイトバランス調整は、画像処理部54bにより行われる。ホワイトバランス調整が終了した場合、画像処理部54bからの信号により、表示制御部54cがディスプレイ55に終了した旨を表示する。ホワイトバランス調整が終了した場合、使用者は、先端部14aを挿入孔15bから抜く(ステップST160)。続けて別の内視鏡のホワイトバランス調整を行う場合(ステップST170でY)、カメラヘッド52及び光源装置53から内視鏡51aを外し、代わりに内視鏡51bを付け替える(ステップST180)。
【0107】
次に斜視鏡21である内視鏡51bについてホワイトバランス調整を行うため、内視鏡51bの先端部14aの外径に基づき、調整治具10の挿入孔15aを選択し、内視鏡51bの先端部14aを挿入して(ステップST130)、内視鏡51aの場合と同様に、ホワイトバランス調整を進める。内視鏡51が複数ある場合は、ホワイトバランス調整が必要な内視鏡51全てに対して行うことにより、ホワイトバランス調整が完了する。続けて別の内視鏡のホワイトバランス調整を行なわない場合は(ステップST170でN)、ホワイトバランス調整は完了となる。
【0108】
上記のように構成した調整治具10では、チャート18が、先端部14aの挿入方向Xに垂直な垂直面jに対し傾斜しているため、また、チャート18はマーク17を複数備えるため、内視鏡が直視鏡又は斜視鏡のどちらであっても、適切な撮影条件によりチャート18を撮影することができる。
【0109】
以上のように、調整治具10によれば、直視鏡22又は斜視鏡21の違い、及び、先端部14aの外径d1又は外径d2の違いに関わらず、それぞれの内視鏡に適切な挿入孔及びマーク17を用いることが可能であり、内視鏡の撮像レンズを適切な位置に容易に配置してマーク17を撮影することができる。したがって、調整治具10は、直視鏡22と斜視鏡21と違い、及び、先端部14aの外径d1と外径d2との違いにより区別される複数種類の内視鏡のいずれに対しても、適切なホワイトバランス調整を容易に行うことを可能とする。
【0110】
また、それぞれ互いに内径が異なる挿入孔15を2つ以上備える場合は、外径が互いに異なる複数種類の内視鏡であっても、適切な内径の挿入孔15を選択して先端部14aを挿入することにより、内視鏡の先端面14bとチャート18との距離及び先端面bの位置を精密に調整した上でチャート18を撮影することができる。なお、この場合、チャート18は、それぞれの挿入孔15に対応する位置のそれぞれにマーク17を備えるため、いずれの挿入孔15を用いた場合でも、対応するマークを17を撮影することにより、ホワイトバランス調整を適切に行うためのマーク17の撮影を行うことができる。したがって、例えば、それぞれ外径が異なる複数種類の直視鏡22及び斜視鏡21をセットで用いる各症例に対する手技の直前にホワイトバランス調整を行う場合、このセットに含まれるそれぞれの内視鏡の全てに適切な複数のマーク17を含むチャート18を付した調整治具10を用い、ディスプレイに写るマーク17の形状を適切に写す距離まで先端部14aを差し込むといった容易な方法により、先端部14aの位置を適切にした上で、次々に複数の内視鏡14のホワイトバランス調整を精度良く完了することができる。
【0111】
チャート18は、マーク17を備えるため、ホワイトバランス調整の際に、先端面14bとチャート18との距離を最適なものとすることができる。マーク17は、ホワイトバランス調整のために撮影されるものであるから、ホワイトバランス調整に必要な基準色を有する。したがって、チャート18全体を基準色で構成することも考えられる。しかしながら、チャート18が特定の形状からなるマーク17を有する構成としたことにより、内視鏡画像におけるマーク17の大きさ、形等の形状により、先端面14bとチャート18との距離をより精密に調整することができ、精密なホワイトバランス調整が可能である。
【0112】
蓋部12と外周部13とを、分離可能に連結する場合は、内視鏡の種類、ホワイトバランス調整の精度、ホワイトバランス調整の目的等に応じ、複数のチャート18を準備しておくことにより、所望のチャート18を有する蓋部12を連結するのみで、各種の場面に対応した調整治具10をすぐに用意することができる。したがって、挿入孔15に挿入する先端部14aは、硬性鏡の先端部14aであってよい。また、特定の手技に用いる硬性鏡のセット毎に準備したチャート18とすることもでき、特定の手技の前に、用いる複数の硬性鏡のそれぞれに対して適切なホワイトバランス調整を素早く行うことができる。
【0113】
また、蓋部12と外周部13とを、分離可能に連結する場合は、蓋部12を分離することにより、蓋部12に備えるチャート18を変更することが容易となる。また、蓋部12、調整治具10の内部の消毒、滅菌等を適切に行うことができる。
【0114】
以上のように、調整治具10は、複数種類の内視鏡のいずれに対しても適切なホワイトバランス調整を容易に可能とする内視鏡用ホワイトバランス調整治具である。
【0115】
[第2実施形態]
第1実施形態では、調整治具10において、蓋部12と外周部13とが磁力により連結していたが、第2実施形態の調整治具60では、蓋部62と外周部63とが、嵌合により連結する。第2実施形態の調整治具60は、蓋部62と外周部63とが嵌合により連結する点以外は第1実施形態と同様であるため、同様の部分については説明を省略する。蓋部62と外周部63とは、それぞれがお互いが嵌合するための構成を有する。本実施形態は、蓋部62と外周部63との嵌合はスリット式を用いる。外周部63の蓋部62と接する部分に蓋部62をスライドさせることにより、スリットを用いて連結する。
【0116】
図27に示すように、外周部63は、蓋部62と接する位置において、スリット用突起71を鉛直方向Yの両端部である上端部と下端部とに有する。また、ガイド凸部72を幅方向Zの両端部である左端部とに有する。また、蓋部62が備えるストップ部材74(図28(c)参照)に対応して、蓋部62のスライドを制止するストッパ73を上端部と下端部とに有する。
【0117】
図28に示すように、蓋部62は、スリット形成部75により形成されるスリット76を有する。スリット76には、外周部63のスリット用突起71をスライドさせながら嵌め込む。また、蓋部62の内部空間16に面する側に、ガイド凹部77を有する(図28(b)又は図28(c)参照)。ガイド凹部77は、外周部63のガイド凸部72と形状が対応するように構成する。また、蓋部62は、スライドの方向を示す方向表示78を有する。蓋部62の外面62aを見ながら、方向表示78に示される向きに、スリット用突起71をスリット76に入れてスライドさせることにより、蓋部62と外周部63とを容易に連結することができる。
【0118】
図28(b)及び図28(c)に示すように、蓋部62は、内部空間16に面する内面62bにチャート18を有する。図28(c)に示すように、チャート18は、基準色により円形の形状で形成されたマーク17a、17b、17c及び17dを有する。第1実施例と同様に、チャート18は、蓋部62から分離可能であること等が好ましい。
【0119】
図29(a)に示すように、分離していた蓋部62と外周部63を連結する場合、蓋部62のスリット76に外周部63のスリット用突起71を嵌め込んで、また、蓋部62のガイド凹部77に外周部63のガイド凸部72が合うように、蓋部62と外周部63とを合わせて、蓋部62の方向表示78に示される方向に蓋部62をスライドさせていく。具体的には、蓋部62を、蓋部62の外面62aからみて左側から、外周部63にスライドさせて両者を嵌合する。なお、図29(b)に示すように、蓋部62をスライドさせる際、蓋部62が備えるストップ部材74が外周部63が備えるストッパ73により制限されるまでスライドさせることにより、蓋部62を適切な位置に配置することができる。
【0120】
以上のように、蓋部62と外周部63とが嵌合により連結することにより、蓋部62と外周部63との隙間がなるべくできないように連結することができる。また、ストッパ73とストップ部材74とを設けたことにより蓋部62の差し込み方向である幅方向Zにおける位置を適切に配置して連結させることが容易であり、また、ガイド凸部72とガイド凹部77とを設けたことにより、蓋部62を差し込む際に鉛直方向Yにおける位置を適切に配置して連結させることが容易である。このように、分離した蓋部62は、外周部63の正しい位置に配置して調整治具60とすることが容易である。
【0121】
[第3実施形態]
第1実施形態及び第2実施形態では、蓋部12及び蓋部62の形状が板状であったが、第3実施形態の調整治具80では、蓋部82は三角柱形状であり、板状ではない。第3実施形態の調整治具80は、蓋部82が板状でない点以外は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0122】
調整治具80における蓋部82は、調整治具80を壁、ワゴン、棚、床等に固定するために三角柱形状となっている。第1実施形態における調整治具10及び第2実施形態における調整治具60は、例えば、調整治具10又は60を左手に、内視鏡14を右手に持つことにより先端部14aを挿入孔15に挿入するが、調整治具80では、必ずしも調整治具80を手に持つ必要がない。したがって、例えば、内視鏡14を右手に持ち、左手では入力装置56を操作する等、別の作業をすることができる。なお、調整治具80等の固定は、蓋部62以外で行ってもよく、例えば底面部13b等を固定してもよい。
【0123】
図30に示すように、調整治具80は、蓋部82が三角柱形状となっているために、机の壁81に固定してもよい。これにより、片手を机上83に置きながら内視鏡14を持って、先端部14aを挿入孔15に挿入することができる。また、図31に示すように、机もしくは棚、又は床に、蓋部82を固定してもよい。この場合、調整治具80の内部空間16に挿入孔15からなるべく光が入らないように、挿入孔15は鉛直方向以外の方向に開口することが好ましい。
【0124】
[第4実施形態]
第1実施形態では、ディスプレイ55に写るマーク17の位置及び大きさを、使用者が予め把握しておくことにより調整又は判定を行っていたが、第4実施形態では、ディスプレイ55に表示される判定表示91により、ディスプレイ55に写るマーク17の位置及び大きさを判定する。第4実施形態のディスプレイ55には、判定表示91が表示される点以外は、第1実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0125】
ディスプレイ55に表示される判定表示91は、マーク17の形状に対応させることが好ましい。マーク17が円形である場合は、判定表示91も円形とする。使用者は、ホワイトバランス調整の際に、マーク17が判定表示91内に適切に入るように、調整治具10内の先端部14aの位置を調整することにより、先端部14aの位置をどのように調整するかが容易に把握でき、先端部14aを内部空間16に適切に配置することが容易となり、適切なホワイトバランス調整が容易に可能となる。
【0126】
図32に示すように、本実施形態では、マーク17が円形であるため、判定表示91は、二重円の内部が色で表示されるドーナツ型の形状である。内視鏡画像において、判定表示91を基準として、マーク17の位置及び大きさを調整することにより、調整治具10内の先端部14aの位置を適切に配置することができる。図32(a)に示すように、調整治具10内に先端部14aを挿入した際に、ディスプレイ55に写る判定表示91内にマーク17が同心円状にすっぽりと入るように先端部14aの位置を調整した場合、調整治具10内の先端部14aの位置が適切であるとする。
【0127】
図32(b)に示すように、マーク17が、判定表示91より小さく写り、適切に重ならない場合、使用者は、先端部14aの挿入を進めて、マーク17がより大きく写るように調整すればよいとわかる。図32(c)に示すように、マーク17が、判定表示91を超えて大きく写り、適切に重ならない場合、使用者は、先端部14aを抜去し、マーク17がより小さく写るように調整すればよいとわかる。図32(d)に示すように、マーク17が、判定表示91とずれて適切に重ならない場合、使用者は、先端部14aの向きを調整し、マーク17が正しく判定表示91に重なるように調整すればよいとわかる。より詳しくは、この場合は、マーク17の大きさは適切であり、先端部14aとチャート18との距離は適切であるから、先端部14aとチャート18との距離は適切であるから、使用者は、先端部14aの挿入方向Xにおける位置は動かさずに、先端部14aの向きだけを調整すればよいとわかる。
【0128】
なお、本実施形態では、内視鏡システム50において、判定表示91を基準としたマーク17の位置及び大きさに問題がある場合、使用者がマーク17との位置及び大きさに問題があると判定するが、使用者以外が判定してもよい。すなわち、内視鏡システム50により、判定表示91を基準としたマーク17の位置及び大きさに問題がある場合に報知を行うように構成してもよい。報知は、使用者が認識できる形態であればよく、例えば、音、ディスプレイ55への表示等とすることができる。また、報知は、マーク17の位置及び大きさに問題がない場合に行ってもよい。例えば、マーク17の位置関係が適切になった場合に第1の報知を行い、使用者がそのまま先端部14aを固定してホワイトバランス調整が完了するのを待ち、ホワイトバランス調整が完了した際に第2の報知を行う等としてもよい。なお、第1の報知と第2の報知とは、音色を変える、音の鳴らし方を変える等、使用者が違いを認識できるようにすることが好ましい。
【0129】
なお、報知を行う場合、判定表示91は表示してもしなくてもよい。すなわち、先端部14aの位置は、内視鏡画像に写るマーク17の位置及び大きさに基づいて画像処理部54bが判定してもよい。画像処理部54bの判定により、先端部14aをどのように動かせばよいかの指示を報知としてもよい。画像処理部54bによる判定は、公知の画像処理技術により行うことができ、内視鏡画像に写るマーク17の位置及び大きさを学習させた機械学習技術における学習モデルにより判定してもよい。。
【0130】
また、内視鏡システム50において、内視鏡に対し、調整治具10を用いたホワイトバランス調整の際、調整治具10に挿入した先端部14aの位置が適切となった場合に、プロセッサ装置54が備える記録部(図示せず)等に内視鏡画像を自動的に記録するように構成してもよい。これにより、使用者は、先端部14aの位置が適切になった際に、先端部14aの位置を保持し、ホワイトバランス調整が完了するのを待つ必要がなくなる。すなわち、記録された内視鏡画像を用いて、画像処理部54bがホワイトバランス調整を内視鏡画像取得の後等に適宜行うことができる。特に、内視鏡画像に、用いた内視鏡14の個体識別番号が記録されている場合、ホワイトバランス調整は後で行い、複数種類の内視鏡14のそれぞれと調整治具10を用いて、適切な内視鏡画像を次々に記録することで、複数種類の内視鏡のそれぞれに対する適切なホワイトバランス調整が自動的に行われる。したがって、複数種類の多数の内視鏡14においてホワイトバランス調整を行う場合であっても、迅速にかつ適切なホワイトバランス調整を行うことができる。
【0131】
上記実施形態において、中央制御部54a、画像処理部54b、表示制御部54cといった各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウエア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphical Processing Unit)、FPGA (Field Programmable Gate Array) などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、各種の処理を実行するために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0132】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサの組み合せ(例えば、複数のFPGA、CPUとFPGAの組み合わせ、またはCPUとGPUの組み合わせ等)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウエアの組み合わせで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0133】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた形態の電気回路(circuitry)である。また、記憶部のハードウェア的な構造はHDD(hard disc drive)やSSD(solid state drive)等の記憶装置である。
【0134】
上記記載から、以下の付記1又は付記2に記載の内視鏡システムを把握することができる。
【0135】
[付記1]
被写体を撮影する内視鏡と、
前記内視鏡が撮影した内視鏡画像を取得するプロセッサ装置と、
前記内視鏡画像を表示するディスプレイとを備え、
前記プロセッサ装置は、内視鏡用ホワイトバランス調整治具が備えるチャートが有するマークを前記被写体として撮影した前記内視鏡画像を前記ディスプレイに表示する際に、前記内視鏡画像における前記マークの位置及び大きさを判定するための判定表示を前記内視鏡画像に重畳して表示する制御を行い、
前記内視鏡用ホワイトバランス調整治具は、
内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、
前記先端部の挿入方向において、前記挿入部と対向して配置される蓋部と、
前記挿入部及び前記蓋部と接することにより、これらと内部空間を形成する外周部とを備え、
前記蓋部は、前記内部空間に面する内面において、複数の前記マークを有する前記チャートを備え、
前記チャートは、前記挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している、
内視鏡システム。
【0136】
[付記2]
被写体を撮影する内視鏡と、
前記内視鏡が撮影した内視鏡画像を取得するプロセッサ装置と、
前記内視鏡画像を表示するディスプレイとを備え、
前記プロセッサ装置は、内視鏡用ホワイトバランス調整治具が備えるチャートが有するマークを前記被写体として撮影した前記内視鏡画像に基づいてホワイトバランス調整に適切な前記内視鏡画像であるかを判定し、
前記内視鏡用ホワイトバランス調整治具は、
内視鏡の先端部を挿入する挿入孔を少なくとも1つ備える挿入部と、
前記先端部の挿入方向において、前記挿入部と対向して配置される蓋部と、
前記挿入部及び前記蓋部と接することにより、これらと内部空間を形成する外周部とを備え、
前記蓋部は、前記内部空間に面する内面において、複数の前記マークを有する前記チャートを備え、
前記チャートは、前記挿入方向に垂直な垂直面に対し傾斜している、
内視鏡システム。
【符号の説明】
【0137】
10、20、60、80 調整治具
11 挿入部
11a、11b ガイド部
12、62、82 蓋部
12a、62a 外面
12b、62b 内面
12c 凸部
12d 連結部材
12e 蓋部基材
13、63 外周部
13a 上面部
13b 底面部
13c 右側面部
13d 左側面部
13e 仕切り
13f 磁石挿入部
13g 凹部
14a 先端部
14b 先端面
14c 太径内視鏡
14d 細径内視鏡
15a 第1挿入孔
15b 第2挿入孔
16a、16b 内部空間
17a、17b、17c、17d マーク
18 チャート
21 斜視鏡
22 直視鏡
31、32、33、34 領域
35、36 グラフ
41 遮光部材
42 チャート位置マーク
50 内視鏡システム
51a、51b 内視鏡
52 カメラヘッド
53 光源装置
54 プロセッサ装置
54a 中央制御部
54b 画像処理部
54c 表示制御部
55 ディスプレイ
56 入力装置
57 光源装置用コネクタ
58 カメラヘッド用コネクタ
71 スリット用突起
72 ガイド凸部
73 ストッパ
74 ストップ部材
75 スリット形成部
76 スリット
77 ガイド凹部
78 方向表示
81 壁
83 机上
91 判定表示
d1、d2 外径
α 斜視角
β、β1、β2 斜視角
d3、d4 距離
m、m1、m2 光軸方向
n 先端部の軸方向
k 表面を含む面
l 光軸方向に垂直な垂直面
j 挿入方向に垂直な垂直面
R1、R2 範囲
Y 鉛直方向
Z 幅方向
ST110~ST180 ステップ
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