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特開2024-52414インダクタ素子、インダクタ素子を作製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052414
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】インダクタ素子、インダクタ素子を作製する方法
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/04 20060101AFI20240404BHJP
   H01F 17/00 20060101ALI20240404BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20240404BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01F17/04 F
H01F17/00 B
H01F27/29 123
H01F41/04 C
H01F27/29 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159112
(22)【出願日】2022-09-30
(71)【出願人】
【識別番号】308033711
【氏名又は名称】ラピスセミコンダクタ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】黒木 康平
【テーマコード(参考)】
5E062
5E070
【Fターム(参考)】
5E062DD01
5E062FF01
5E070AA01
5E070AB01
5E070CB12
(57)【要約】
【課題】反りを低減できる構造を有するインダクタンス素子を提供する。
【解決手段】インダクタ素子11は、第1エリア13b及び第1エリア13bを囲む第2エリア13cを有する主面を有する支持体13と、主面の第1エリア13bの内に配置された第1樹脂体15と、支持体13の主面の上に位置するインダクタ17と、を備え、第1樹脂体15は、主面の第1エリア13bの内に配置された第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23を含み、インダクタ17は、第1軟磁性体層21と第2軟磁性体層23との間に位置し、第1軟磁性体層21は、第1絶縁性樹脂体21aと、第1絶縁性樹脂体21aに囲まれる複数の第1磁性体21b、21cを含み、第2軟磁性体層23は、第2絶縁性樹脂体23aと、第2絶縁性樹脂体23aに囲まれる複数の第2磁性体23b、23cとを含む。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1エリア及び前記第1エリアを囲む第2エリアを含む主面を有する支持体と、
前記主面の前記第1エリアの内に配置された第1樹脂体と、
前記支持体の前記主面の上に位置するインダクタと、
を備え、
前記第1樹脂体は、前記主面の前記第1エリアの内に配置された第1軟磁性体層及び第2軟磁性体層を含み、
前記インダクタは、前記第1軟磁性体層と前記第2軟磁性体層との間に位置し、
前記第1軟磁性体層は、第1絶縁性樹脂体と、前記第1絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第1磁性体とを含み、
前記第2軟磁性体層は、第2絶縁性樹脂体と、前記第2絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第2磁性体とを含む、
インダクタ素子。
【請求項2】
前記インダクタは、インダクタンスを生成するように構成されたパターンを有すると共に前記主面に沿って延在する導電層を含み、
前記導電層は、前記第1エリアの内に位置する第1部分と、前記第2エリアの内に位置する第2部分とを有し、
前記インダクタ素子は、前記第2部分の上に位置する外端電極を更に備える、
請求項1に記載されたインダクタ素子。
【請求項3】
前記インダクタ素子は、前記第1部分の上に位置する内端電極を更に備え、
前記導電層の前記第1部分は、前記第1軟磁性体層の上に位置し、
前記導電層は、前記主面の前記第1エリアと前記第2エリアとの間に位置する第3部分を更に有し、
前記導電層の前記第3部分は、前記第1エリアと前記第2エリアとの境界を横切って前記第1部分及び前記第2部分を繋ぐ、
請求項2に記載されたインダクタ素子。
【請求項4】
前記第2軟磁性体層は、前記第1部分の上に位置すると共に前記導電層の前記第1部分に到達する開口を有し、
前記内端電極は、前記第2軟磁性体層が前記内端電極の側面の一部分を覆うように、前記第2軟磁性体層の前記開口に位置する、
請求項3に記載されたインダクタ素子。
【請求項5】
前記パターンは、前記第1エリアの上に位置する内端及び前記第2エリアの上に位置する外端を有する渦巻き形状を有する、
請求項2に記載されたインダクタ素子。
【請求項6】
前記第1エリア及び前記第2エリアの上に設けられ、前記外端電極の側面を覆う第2樹脂体を更に備え、
前記内端電極は、前記第1樹脂体内によって覆われる下部分と前記第1樹脂体の外側に位置する上部分とを有し、
前記第2樹脂体は、前記外端電極の前記上部分を覆う、
請求項3に記載されたインダクタ素子。
【請求項7】
インダクタ素子を形成する方法であって、
第1エリアと前記第1エリアを囲む第2エリアを有する主面を含む基板を準備することと、
前記基板の前記第1エリアの上に第1軟磁性体層を形成することと、
前記第1軟磁性体層を形成した後に、前記第1エリアの上に位置する第1部分及び前記第2エリアの上に位置する第2部分を有すると共に前記基板の前記第1エリア及び前記第2エリアにわたって延在する導電層を形成することと、
前記導電層の前記第2部分の上に外端電極を形成することと、
前記導電層を形成した後に、前記基板の前記第1エリアに第2軟磁性体層を形成することと、
を備え、
前記第1軟磁性体層は、第1絶縁性樹脂体と、前記第1絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第1軟磁性体とを含み、
前記第2軟磁性体層は、第2絶縁性樹脂体と、前記第2絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第2軟磁性体とを含む、
インダクタ素子を作製する方法。
【請求項8】
前記導電層を形成した後であって前記基板の前記第2エリアに前記第2軟磁性体層を形成するに先立って、前記導電層の前記第1部分の上に内端電極を形成することを更に備え、
前記第2軟磁性体層は、前記内端電極の側面を部分的に覆う、
請求項7に記載されたインダクタ素子を作製する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクタ素子、及びインダクタ素子を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、ウェハレベルパッケージ(WLP:Wafer Level Package)を開示する。具体的には、特許文献1は、樹脂多層デバイスを開示し、樹脂多層デバイスは、キャパシタとインダクタまたは/およびバランとを有する。樹脂多層デバイスは、例えば無線通信機器の高周波回路に用いられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-268304号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体基板といった支持体の上に多層の又は厚膜の樹脂層を形成することは、製造プロセスにおいては、ウエハの反りの原因になる可能性があり、また半導体チップにおいては、半導体チップを薄くすることに伴って反りの原因になる可能性がある。
【0005】
本発明は、反りを低減できる構造を有するインダクタンス素子、及び反りを低減できるインダクタンス素子を作製する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1側面に係るインダクタ素子は、第1エリア及び前記第1エリアを囲む第2エリアを含む主面を有する支持体と、前記主面の前記第1エリアの内に配置された第1樹脂体と、
前記支持体の前記主面の上に位置するインダクタと、を備え、前記第1樹脂体は、前記主面の前記第1エリアの内に配置された第1軟磁性体層及び第2軟磁性体層を含み、前記インダクタは、前記第1軟磁性体層と前記第2軟磁性体層との間に位置し、前記第1軟磁性体層は、第1絶縁性樹脂体と、前記第1絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第1磁性体とを含み、前記第2軟磁性体層は、第2絶縁性樹脂体と、前記第2絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第2磁性体とを含む。
【0007】
本発明の第2側面に係るインダクタ素子を作製する方法は、第1エリアと前記第1エリアを囲む第2エリアを有する主面を含む基板を準備することと、前記基板の前記第1エリアの上に第1軟磁性体層を形成することと、前記第1軟磁性体層を形成した後に、前記第1エリアの上に位置する第1部分及び前記第2エリアの上に位置する第2部分を有すると共に前記基板の前記第1エリア及び前記第2エリアにわたって延在する導電層を形成することと、前記導電層の前記第2部分の上に外端電極を形成することと、前記導電層を形成した後に、前記基板の前記第1エリアに第2軟磁性体層を形成することと、を備え、前記第1軟磁性体層は、第1絶縁性樹脂体と、前記第1絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第1軟磁性体とを含み、前記第2軟磁性体層は、第2絶縁性樹脂体と、前記第2絶縁性樹脂体に囲まれる複数の第2軟磁性体とを含む。
【発明の効果】
【0008】
上記の側面によれば、反りを低減できる構造を有するインダクタンス素子、及び反りを低減できるインダクタンス素子を作製する方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1(a)は、本実施の形態に係るインダクタ素子を概略的に示す図面である。図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線に沿って取られた断面において、本実施の形態に係るインダクタ素子を概略的に示す図面である。
図2図2は、本実施の形態に係るインダクタ素子の導電層及び第1軟磁性体層を図1(a)のIb-Ib線に沿ってとられた断面において示す図面である。
図3図3は、本実施の形態に係るインダクタ素子の導電層及び軟磁性体層を図1(a)のIb-Ib線に沿ってとられた断面において示す図面である。
図4図4(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図4(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図5図5(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図5(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図6図6(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図6(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図7図7(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図7(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図8図8(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図8(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図9図9(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図9(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図10図10(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図10(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図11図11(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図11(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図12図12(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図12(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
図13図13(a)は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける一素子区画を示す平面図である。図13(b)は、製造プロセスにおける図1(a)のIb-Ib線に対応する断面を示す図面である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明を実施するための各実施の形態について説明する。同一又は類似の部分には、同一又は類似の符号を付して重複する説明を省略する。
【0011】
図1(a)は、本実施の形態に係るインダクタ素子を概略的に示す図面である。図1(b)は、図1(a)のIb-Ib線に沿って取られた断面において、本実施の形態に係るインダクタ素子を概略的に示す図面である。
【0012】
インダクタ素子11は、支持体13、第1樹脂体15、及びインダクタ17を備える。
【0013】
支持体13は、主面13a及び裏面13dを有し、主面13aは、主面13aの反対側に位置する。主面13aは、第1エリア13b及び第2エリア13cを有し、第2エリア13cは、第1エリアを囲む。第1樹脂体15は、主面13aの第1エリア13bの内に位置する。インダクタ17は、導電体からなり、また支持体13の主面13aの上に位置する。第1樹脂体15は、少なくとも第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23を含むことができ、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23は、主面13aの第1エリア13bの内に少なくとも一部が重なって配置される。
【0014】
インダクタ17は、第1軟磁性体層21と第2軟磁性体層23との間に設けられる。第1軟磁性体層21は、第1絶縁性樹脂体21aと、第1絶縁性樹脂体21aに囲まれる複数の第1磁性体21b、21cとを含み、第1磁性体21b、21cは、第1絶縁性樹脂体21aによって分散配置されている。第2軟磁性体層23は、第2絶縁性樹脂体23aと、第2絶縁性樹脂体23aに囲まれる複数の第2磁性体23b、23cとを含み、第2磁性体23b、23cは、第2絶縁性樹脂体23aによって分散配置されている。
【0015】
インダクタ素子11によれば、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23は、インダクタ17の両側からインダクタ17を挟んで、大気より大きな透磁率をインダクタ17の周囲に提供する。第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の各々における絶縁性樹脂体(21a、23a)は、該樹脂体内において磁性体(例えば、磁性体片、磁性体粒、磁性粉又は磁性フィラー)を分散配置することを可能にして、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の各々における透磁率の不均一性を低減できる。また、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の各々は、インダクタ17の周囲に絶縁領域(21a、23b)を形成する。さらに、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の各々において磁性体(21b、23b)の密度は、該軟磁性体層内の磁性体の数珠つなぎによりインダクタ17の短絡が生じない程度の値であることができる。磁性体(21b、23b)のサイズの上限は、該軟磁性体層内の磁性体を介するインダクタ17の短絡が生じない程度の値であることができ、例えば100マイクロメートル以下であることができる。第1軟磁性体層21の厚さを大きくすることは、磁性体(21b、23b)のサイズの上限を緩和することを可能にする。
【0016】
絶縁性樹脂体(21a、23a)は、例えばディスペンサーによって基板上に供給できる樹脂の硬化物からなることができ、このような樹脂は、熱硬化剤を含む。必要な場合には、熱硬化剤に替えて、又は熱硬化剤に加えて紫外線硬化剤を含むことができる。
【0017】
第1磁性体21b、21c及び第2磁性体23b、23cは、磁性材を含むことができる。具体的には、第1磁性体21b、21c及び第2磁性体23b、23cは、磁性金属元素を含むことができ、或いはフェライトといった磁性酸化物を含むことができる。
【0018】
支持体13は、例えば半導体領域14aを含むことができ、また半導体領域14aの上に位置する絶縁性の無機物又は有機物の絶縁体領域14bを含むことができる。半導体領域14aは、例えばシリコン、炭化シリコン、ゲルマニウム、及びシリコンゲルマニウムであることができる。本実施例では、支持体13の主面13aは、絶縁体領域14bによって提供されることができる。半導体領域14aは、例えば一又は複数の半導体装置14cを含むことができる。
【0019】
インダクタ17は、主面13aに沿って延在する導電層18を含み、導電層18は、インダクタンスを生成するように構成されたパターンを有する。導電層18は、例えば銅を含むことができる。インダクタ素子11によれば、インダクタンスは、導電層18のパターンによって生成されて、例えば二次元のインダクタ17が提供される。インダクタ17のインダクタンスは、導電層18のインダクタ主要部18aによって提供される。図1(a)に示されるように、インダクタ主要部18aは、例えば二次元の渦巻き形状を有する。導電層18は、第1エリア13b上に位置する第1部分18bと第2エリア13c上に位置する第2部分18cとを有する。
【0020】
インダクタ素子11は、外端電極25を更に備えることができ、外端電極25は、本実施例では、第2エリア13c内(第2部分18c上)に位置する。また、外端電極25は、第1樹脂体15から離れている。外端電極25が導電層18の第2部分18c上に位置すると、外端電極25を形成するために第1軟磁性体層21及び第1軟磁性体層23の加工が行われない。
【0021】
インダクタ素子11は、内端電極27を更に備えることができ、内端電極27は、本実施例では、導電層18の第1部分18b上に位置する。導電層18の第1部分18bは、第1軟磁性体層21上に位置し、また第2軟磁性体層23の下に位置する。
【0022】
図2は、本実施の形態に係るインダクタ素子11の導電層18及び第1軟磁性体層21をIb-Ib線に沿ってとられた断面において示す図面である。
【0023】
図2では、理解を容易にするために、支持体13上に設けられた導電層18及び第1軟磁性体層21が描かれている。第1軟磁性体層21は、主面13aの第1エリア13bにおいて、裾部22aと、裾部22aに囲まれた中央部22bを含む。裾部22aは、中央部22bの上面22cに比べて傾斜しており、これによって第1軟磁性体層21の厚さが裾部22aにおいて徐々に薄くなることを可能にする。裾部22aの側面22sは、中央部22bの上面22cに対してなめらかに傾斜しており、第1軟磁性体層21を第1エリア13b内に配置するために、第1軟磁性体層21の厚さの変化は、裾部22aにおいて引き起こされる。中央部22bの上面22cは、裾部22aの側面22sに比べて実質的に平坦になっている。図2に示される断面において、中央部22bの上面22cのサイズは、中央部22bから主面13aに沿って延出する裾部22aのサイズに比べて5倍以上又は10倍以上であることができる。このようなサイズの比率であれば、中央部22bには、インダクタ素子11の導電層18の配置に適切なサイズが提供される。
【0024】
図1(a)、図1(b)及び図2を参照すると、本実施例では、導電層18のインダクタ主要部18aは、中央部22bの上面22c内に配置されることができる。裾部22aの側面22sは、導電層18の厚さを超える程度の急激な段差、例えば切り立った崖形状を含まず、また、第1軟磁性体層21内の第1磁性体21b、21cは、第1軟磁性体層21の上側表面に実質的に現れることなく、第1絶縁性樹脂体21aに覆われていることがよい。
【0025】
導電層18は、第1エリア13b及び第2エリア13cの上に位置する第3部分18dを更に備え、第3部分18dは、第1エリア13b及び第2エリア13cの境界を横切って第1部分18b及び第2部分18cを繋ぐ。外端電極25及び内端電極27は、それぞれ、外端20b及び内端20aに接続される。
【0026】
インダクタ素子11によれば、渦巻き形状の導電層18、並びにこの導電層18のインダクタ主要部18aを挟む第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の組み合わせは、大きなインダクタンスを提供できる。
【0027】
具体的には、導電層18は、第1エリア13bの内に位置する第1部分18b(図2参照)と、第2エリア13cの内に位置する第2部分18c(図2参照)とを有する。また、導電層18のパターンは、第1エリア13bの上に位置する内端20a(図1参照)及び第2エリア13cの上に位置する外端20b(図1参照)を有する。
【0028】
本実施例は、インダクタ主要部18aは、渦巻き形状を有しており、導電層18は、渦巻き形状の内端20aから内端20aを囲むように右回り及び左回りのいずれか一方で延在している。インダクタ主要部18aは、内端20aを囲むように周回する複数の周回部分を有する。導電層18における複数の周回部分は、渦巻き形状における最も内側の内側部分と最も外側の外側部分とを有する。第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の少なくとも一方が、周回部分の間に位置して、磁束の閉じ込めに寄与する。導電層18が、内側部分と外側部分との間に一又は複数の中間の周回部分を有する。
【0029】
図3は、本実施の形態に係るインダクタ素子の導電層18及び軟磁性体層21、23をIb-Ib線に沿ってとられた断面において示す図面である。図2では、理解を容易にするために、支持体13上に設けられた導電層18、第1軟磁性体層21、第2軟磁性体層23及び内端電極27が描かれている。第2軟磁性体層23は、主面13aの第1エリア13bにおいて、裾部24aと、裾部24aに囲まれた中央部24bを含む。裾部24aは、中央部24bの上面24cに比べて傾斜しており、これによって第2軟磁性体層23の厚さが裾部24aにおいて徐々に薄くなることを可能にする。裾部24aの側面24sは、中央部24bの上面24cに対してなめらかに傾斜しており、第2軟磁性体層23を第1エリア13b内に配置するために、第2軟磁性体層23の厚さの変化は、裾部24aにおいて引き起こされる。中央部24bの上面24cは、裾部24aの側面24sに比べて実質的に平坦になっている。図3に示される断面において、中央部22bの上面22cのサイズは、中央部24bから第1軟磁性体層21の表面に沿って延在する裾部24aのサイズに比べて5倍以上又は10倍以上であることができる。このようなサイズの比率であれば、中央部24bには、インダクタ素子11の導電層18の被覆に適切なサイズが提供される。
【0030】
第2軟磁性体層23は、開口23hを有し、開口23hは、導電層18の第1部分18b上に位置する。また、開口23hは、導電層18の第1部分18bに到達する。内端電極27は、第2軟磁性体層23が内端電極27の側面27sの一部分を覆うように、第2軟磁性体層23の開口23h内を延在して、導電層18に到達する。具体的には、第2軟磁性体層23が内端電極27の形成の後に形成されるので、第2軟磁性体層23の開口23hは内端電極27の形状に一致するように形作られる。これ故に、開口23hのサイズは、導電層18の断面形状に合わされて、内端電極27の側面27sの下部分は、開口23hの側面23sに密着する。内端電極27の側面27sの上部分は、第2軟磁性体層23に覆われていない。インダクタ素子11によれば、内端電極27は、第2軟磁性体層23の開口23hを介して導電層18に導通する。
【0031】
一方、外端電極25が第1樹脂体15から離れているので、第1樹脂体15を加工を行うことなく外端電極25を形成できる。
【0032】
図1を参照すると、インダクタ素子11は、第2樹脂体29を更に備えることができ、第2樹脂体29は、第1エリア13b及び第2エリア13c上に設けられ、具体的には支持体13の全面に設けられることができる。第2樹脂体29は、第1樹脂体15を覆う。第2樹脂体29は、外端電極25の側面25sを覆い、また内端電極27の側面27sの上側部分を覆う。第2樹脂体29は、例えばエポキシ、ポリイミドとった被覆樹脂を備える被覆体であることができる。外端電極25及び内端電極27の上面は、第2樹脂体29に覆われることがなく、露出される。
【0033】
インダクタ素子11によれば、軟磁性体層を含む第1樹脂体15が第2エリア13c上に設けられることを避けながら、主面13aの第1エリア13b及び第2エリア13cの上に第2樹脂体29を設けることができる。第2樹脂体29が、軟磁性体を含む第1樹脂体15の全体を覆って、第1樹脂体15を保護できる。
【0034】
本実施例では、インダクタ素子11は、外端電極25及び内端電極27の各々の上端に位置する半田ボール(例えばAuSn)といった接続電極30を備えることができる。
【0035】
図4(a)から図13(b)は、本実施の形態に係るインダクタ素子を作製する方法における主要な工程を示す図面である。引き続く説明において、インダクタ素子11の製造には、支持体13ではなくウエハサイズの基板を用いるけれども、簡単のための支持体13を参照して説明する。これ故に、図4(a)から図13(b)の各々は、一素子区画を示す。図4(a)から図13(a)の各々は、図1(a)に従う素子の製造プロセスにおける平面図を示し、図4(b)から図13(b)の各々は、図1(b)に従う素子の製造プロセスにおける断面図を示す。
【0036】
図4(a)及び図4(b)を参照すると、主面13aを含む支持体13(基板)を準備する。主面13aは、第1エリア13bと第2エリアを有する。準備の後に、支持体13の第1エリア13b上に第1軟磁性体層21を形成する。第1軟磁性体層21の形成は、以下の手順に従う。
【0037】
まず、第1軟磁性体層21のための未硬化の第1軟磁性体樹脂液31を準備すると共に、支持体13の第1エリア13b内に限定して、第1軟磁性体樹脂液31を配置する。この配置は、第1エリア13b内に、例えば第1軟磁性体樹脂液31を滴下すること、印刷すること、又は塗布することといった様々な方法によって可能になる。本実施例では、ディスペンサー33aを用いて第1軟磁性体樹脂液31を第1エリア13b内に配置する。
【0038】
図5(a)及び図5(b)を参照すると、第1軟磁性体樹脂液31を第1エリア13b内に配置した後に、次いで、第1軟磁性体樹脂液31を硬化させて第1軟磁性体層21を得る。硬化には、本実施例では、熱処理を用いられる。具体的には、熱処理装置33b(例えばベーク装置)内に、第1軟磁性体樹脂液31を備える支持体13を配置して、熱処理により第1軟磁性体樹脂液31から第1軟磁性体層21を生成する。
【0039】
図6(a)及び図6(b)を参照すると、第1軟磁性体層21を形成した後に、インダクタ17のためのパターンを有する導電層18を形成する。導電層18は、支持体13の第1エリア13bの上に位置する第1部分18b及び第2エリア13cの上に位置する支持体13の第2部分18cを有する。また、導電層18は、第1エリア13b及び第2エリア13cの境界を横切って延在する。導電層18のパターン形成は、例えば導電膜の堆積及びパターン形成によって行われる。導電膜の堆積は、例えばスパッタリング法によって金属、例えばチタンを堆積することによって行われる。パターン形成は、例えばフォトリソグラフィ及びエッチングによって行われることができ、或いはリフトオフ法を用いることができる。
【0040】
図7(a)及び図7(b)を参照すると、本実施例では、導電層18上に外端電極25及び内端電極27を形成する。外端電極25及び内端電極27は、それぞれの工程において別々に形成されることが出来るけれども、ここでは、単一の工程において外端電極25及び内端電極27が一緒に形成される。外端電極25及び内端電極27は、それぞれ、導電層18の第1部分18b及び第2部分18bの上に形成される。外端電極25及び内端電極27の形成は、例えば電解メッキ法によって行われる。具体的には、支持体13の全面にシード層SDを形成した後に、外端電極25及び内端電極27のためのパターンを有するレジスト膜を形成する。支持体13及びレジスト膜を電解メッキ液に浸漬して、電流を流しながら金属の析出を引き起こす。本実施例では、電解メッキ法により、銅ポストPTを形成する。
【0041】
図8(a)及び図8(b)を参照すると、外端電極25及び内端電極27を形成した後に、支持体13の第1エリア13bに第2軟磁性体層23を形成する。第2軟磁性体層23の形成は、以下の手順に従う。
【0042】
まず、第2軟磁性体層23のための未硬化の第1軟磁性体樹脂液35を準備すると共に、支持体13の第1エリア13b内に限定して、第2軟磁性体樹脂液35を配置する。この配置は、第1エリア13b内に、例えば第2軟磁性体35を滴下すること、印刷すること、又は塗布することといった様々な方法によって可能になる。本実施例では、ディスペンサー33cを用いて第2軟磁性体樹脂液35を第1エリア13b内に配置する。
【0043】
図9(a)及び図9(b)を参照すると、第2軟磁性体樹脂液35を第1エリア13b内に配置した後に、次いで、第2軟磁性体樹脂液35を硬化させて第2軟磁性体層23を得る。硬化には、本実施例では、熱処理を用いられる。具体的には、熱処理装置33d(例えばベーク装置)内に、第2軟磁性体樹脂液35を備える支持体13を配置して、熱処理により第2軟磁性体樹脂液35から第2軟磁性体層23を生成する。
【0044】
図10(a)及び図10(b)を参照すると、第1樹脂体15を形成した後に、支持体13の全面に厚膜の封止膜37を形成する。封止膜37は、例えばエポキシ樹脂であることができる。封止膜37は、例えばスピン塗布により形成されることができる。封止膜37は、熱処理により硬化される。引き続く説明において、硬化された封止膜に参照符号「37」を付する。厚膜の封止膜37は、外端電極25及び内端電極27を埋め込むような厚さを有する。
【0045】
図11(a)及び図11(b)を参照すると、厚膜の封止膜37を研磨して、外端電極25及び内端電極27の上端を露出させる。研磨により、厚膜の封止膜37は封止体39になる。封止体39は、例えば300マイクロメートル程度以下の厚さを有することができる。第1軟磁性体層21は、例えば100マイクロメートル程度以下の厚さを有することができる。第2軟磁性体層23は、例えば100マイクロメートル程度以下の厚さを有することができる。また、第1軟磁性体層21は、例えば40マイクロメートル程度以上の厚さを有することができる。第2軟磁性体層23は、例えば40マイクロメートル程度以上の厚さを有することができる。第2軟磁性体層23は、インダクタを封止体39から隔置することを可能にする。
【0046】
図12(a)及び図12(b)を参照すると、封止体39を形成した後に、外端電極25及び内端電極27の露出された上端に電極41を形成する。電極41は、例えば半田ボールを含むことができる。
【0047】
図13(a)及び図13(b)を参照すると、封止体39を形成した後に、支持体13(基板)の裏面を研磨して、支持体13に所望の厚さを提供する。外端電極25及び内端電極27の側面は、封止体39によって覆われている。製造に用いるウエハは、例えば700マイクロメートル程度の厚さを有することができる。支持体13は、例えば200マイクロメートル程度以下の厚さを有することができる。
【0048】
この作製方法によれば、第1軟磁性体層21を第1エリア13bに形成した後に、インダクタ17の導電層18を形成すると共に、インダクタ17の導電層18を形成した後に、第2軟磁性体層23を第1エリア13bに形成する。導電層18のうちの少なくともインダクタ主要部18aが、第1軟磁性体層21と第2軟磁性体層23との間に設けられる。外端電極25は、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23から離れている。第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23が形成される領域が主面13aの全面に比べて少ないので、支持体13(基板、ウエハ)の反りが低減される。
【0049】
外端電極25は、第1軟磁性体層21及び第2軟磁性体層23の加工無しに形成される。この作製方法によれば、内端電極27は、第1軟磁性体層及び第2軟磁性体層の加工無しに形成される。
【0050】
以上説明したように、本実施の形態によれば、反りを低減できる構造を有するインダクタンス素子、及び反りを低減できるインダクタンス素子を作製する方法が提供される。
【0051】
本発明は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本発明の技術思想に含まれるものである。
【符号の説明】
【0052】
11・・・インダクタ素子、13・・・支持体、13a・・・主面、13b・・・エリア、13b・・・第1エリア、13c・・・第2エリア、13d・・・裏面、14a・・・半導体領域、14b・・・絶縁性無機物領域、14c・・・半導体装置、15・・・樹脂体、17・・・インダクタ、18・・・導電層、18a・・・インダクタ主要部、18b・・・第1部分、18c・・・第2部分、18d・・・第3部分、20a・・・内端、20b・・・外端、21・・・第1軟磁性体層、21a・・・第1絶縁性樹脂体、21b、21c・・・第1磁性体、22a・・・裾部、22b・・・中央部、22c・・・上面、22s・・・側面、23・・・第2軟磁性体層、23a・・・第2絶縁性樹脂体、23b、23c・・・第2磁性体、23h・・・開口、24a・・・裾部、24b・・・中央部、24c・・・上面、24s・・・側面、25・・・外端電極、25s・・・側面、27・・・内端電極、27s・・・側面、29・・・被覆体、31・・・第1軟磁性体樹脂液、31・・・第2軟磁性体、33a、33c・・・ディスペンサー、33b、33d・・・熱処理装置、35・・・第2軟磁性体、35・・・第2軟磁性体樹脂液、37・・・封止膜、39・・・封止体、30、41・・・電極
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13