IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社日立ハイテクサイエンスの特許一覧

<>
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図1
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図2
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図3
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図4
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図5
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図6
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図7
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図8
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図9
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図10
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図11
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図12
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図13
  • 特開-偏光画像取得装置及び熱分析装置 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052449
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】偏光画像取得装置及び熱分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 25/20 20060101AFI20240404BHJP
   G02B 21/30 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G01N25/20 F
G02B21/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159164
(22)【出願日】2022-10-01
(71)【出願人】
【識別番号】503460323
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテクサイエンス
(74)【代理人】
【識別番号】100113022
【弁理士】
【氏名又は名称】赤尾 謙一郎
(74)【代理人】
【氏名又は名称】下田 昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 寛仁
(72)【発明者】
【氏名】山崎 緑平
【テーマコード(参考)】
2G040
2H052
【Fターム(参考)】
2G040AA02
2G040AB12
2G040BA02
2G040BA25
2G040CA02
2G040CA05
2G040CA12
2G040CA23
2G040DA03
2G040EA02
2G040FA10
2G040HA01
2G040ZA01
2H052AA01
2H052AC04
2H052AE13
2H052AF14
(57)【要約】
【課題】熱分析装置内の測定試料又は参照試料の偏光画像を取得できる偏光画像取得装置を提供する。
【解決手段】一対の試料容器と加熱炉とを備え、加熱炉は窓又は開口部を有し、該窓又は開口部を介して少なくとも測定試料を観察可能な熱分析装置に取り付けられる偏光画像取得装置であって、取付部と、光源と、光源からの照射光を偏光する偏光フィルタをなすポラライザと、カメラと、ハーフミラーと、前記ポラライザを透過した偏光が前記ハーフミラーから前記窓又は開口部を介して前記測定試料又は前記参照試料を照射し、その反射光を前記ハーフミラーを介して偏光して前記カメラに入光させる偏光フィルタをなすアナライザと、を有し、前記ポラライザ、前記アナライザ、前記ハーフミラー及び前記光源が固定部材に固定されて光学ユニットを構成し、前記アナライザを偏光させる向きに前記固定部材を回転させる回転機構をさらに有することを特徴とする。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定試料及び参照試料をそれぞれ収容する一対の試料容器と、前記試料容器を外側から取り囲む加熱炉とを備え、前記加熱炉は窓又は開口部を有し、該窓又は開口部を介して少なくとも前記測定試料を観察可能な熱分析装置に取り付けられる偏光画像取得装置であって、
前記熱分析装置に取り付けられる取付部と、
光源と、
前記光源からの照射光を偏光する偏光フィルタをなすポラライザと、
カメラと、
ハーフミラーと、
前記ポラライザを透過した偏光が前記ハーフミラーから前記窓又は開口部を介して前記測定試料又は前記参照試料を照射し、その反射光を前記ハーフミラーを介して偏光して前記カメラに入光させる偏光フィルタをなすアナライザと、
を有し、
前記ポラライザ、前記アナライザ、前記ハーフミラー及び前記光源が固定部材に固定されて光学ユニットを構成し、
前記アナライザを偏光させる向きに前記固定部材を回転させる回転機構をさらに有することを特徴とする偏光画像取得装置。
【請求項2】
前記ハーフミラーがキューブ型ビームスプリッタであることを特徴とする請求項1記載の偏光画像取得装置。
【請求項3】
前記固定部材は、少なくとも前記ハーフミラーの光軸を調整する調整部材を有することを特徴とする請求項1又は2記載の偏光画像取得装置。
【請求項4】
前記ポラライザ及び前記アナライザを相対的に回転可能であることを特徴とする請求項1又は2記載の偏光画像取得装置。
【請求項5】
請求項1又2は記載の偏光画像取得装置を有することを特徴とする熱分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料の熱的挙動の測定を行う熱分析装置に取り付けられ、試料の偏光画像を取得する偏光画像取得装置、及び熱分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、試料の温度特性を評価する手法として、試料を加熱し、温度変化に伴う測定試料の熱的挙動(物理的変化)を測定する熱分析といわれる手法が行われている。熱分析は、JIS K 0129:2005 "熱分析通則"に定義されており、測定対象(測定試料)の温度をプログラム制御させた時の、測定試料の物理的性質を測定する手法が全て熱分析とされる。一般的に用いられる熱分析は、(1)温度(温度差)を検出する示差熱分析(DTA)、(2)熱流差を検出する示差走査熱量測定(DSC)、(3)質量(重量変化)を検出する熱重量測定(TG)、(4)力学的特性を検出する熱機械分析(TMA)、及び(5)動的粘弾性測定(DMA)の5つの方法がある。
【0003】
又、近年、熱分析の際の試料の状態を観察したいという要望があり、試料を覆うカバーや加熱炉に窓や開口部を設け、この窓や開口部を介して試料を観察可能とした熱分析装置が知られている(例えば、特許文献1~3参照)。
特許文献1の熱分析装置は熱流束型の示差走査熱量計(DSC)であり、測定試料及び基準物質のホルダーを、熱抵抗を介してヒートシンクに設置し、測定試料と基準物質との温度差を温度の関数として測定するものである。ヒートシンクと各ホルダー間には熱抵抗を介して熱流が生じ、これらの熱流差が上記した温度差に比例することになる。そして、この温度差を熱電対等で検出することにより、DSC信号として出力する。
この示差走査熱量計は、加熱炉の開口部分を覆うカバーの一部に透明材料からなる窓を設けるタイプである。
【0004】
特許文献2、3の熱分析装置は透明材料からなるファーナスチューブに一対の試料ホルダを内包し、加熱炉を前進させてファーナスチューブを露出させた部分を開口部としたり、加熱炉自体に開口部を設けるタイプである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8-327573号公報
【特許文献2】特許5792660号公報
【特許文献3】特許6061836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した窓や開口部を介して、熱分析中の試料を観察、撮像する場合に偏光画像を取得したい場合がある。このような偏光画像を観察するものとしてはいわゆる偏光顕微鏡が知られている。この偏光顕微鏡による観察法として、光源からの光をポラライザで直線偏光して試料に照射し、その反射光をアナライザを通して観察するクロスニコルが使用されている。
そして、偏光顕微鏡を使用する際には、ポラライザの回転位置を所定の位置に合わせ、試料ステージを回転させながら観察することで、試料の偏光画像が得られる。なお、アナライザは抜き差し式で回転できない。
【0007】
しかしながら、熱分析装置の試料の偏光画像を観察したい場合に、試料、ひいては試料ホルダを回転させることは原理上及び装置の制約上、極めて困難であり、偏光顕微鏡をそのまま利用して試料の偏光画像を観察することができなかった。
【0008】
本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、熱分析装置内の測定試料又は参照試料の偏光画像を取得できる偏光画像取得装置及び熱分析装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するために、本発明の偏光画像取得装置は、測定試料及び参照試料をそれぞれ収容する一対の試料容器と、前記試料容器を外側から取り囲む加熱炉とを備え、前記加熱炉は窓又は開口部を有し、該窓又は開口部を介して少なくとも前記測定試料を観察可能な熱分析装置に取り付けられる偏光画像取得装置であって、前記熱分析装置に取り付けられる取付部と、光源と、前記光源からの照射光を偏光する偏光フィルタをなすポラライザと、カメラと、ハーフミラーと、前記ポラライザを透過した偏光が前記ハーフミラーから前記窓又は開口部を介して前記測定試料又は前記参照試料を照射し、その反射光を前記ハーフミラーを介して偏光して前記カメラに入光させる偏光フィルタをなすアナライザと、を有し、前記ポラライザ、前記アナライザ、前記ハーフミラー及び前記光源が固定部材に固定されて光学ユニットを構成し、前記アナライザを偏光させる向きに前記固定部材を回転させる回転機構をさらに有することを特徴とする。
【0010】
この偏光画像取得装置によれば、ポラライザの第1光路とアナライザの第2光路とがハーフミラーを介して平行でないので、ポラライザ及びアナライザを含む偏光画像取得装置を熱分析装置の窓又は開口部の外側に配置して、窓又は開口部の内部をカメラにて観察、撮像することができる。これに対し、第1光路と第2光路とが平行であると、熱分析装置の窓又は開口部の外側に配置して窓又は開口部の内部を観察することが不可能となる。
又、固定部材を回転させることでアナライザが回転可能であるので、熱分析装置の試料(試料ホルダ)を回転させることが原理上困難であっても、アナライザを適宜回転させることにより、窓又は開口部を介して熱分析装置内の測定試料又は参照試料の偏光画像を取得できる。
【0011】
さらに、アナライザのみを回転させて偏光させ、ポラライザ、ハーフミラー及び光源の相対位置を変化させない(これらは固定部材上で相対位置を保ったまま一体として回転する)ことで、観察画像の光量の変動を抑制できる。
これは、入射光に対し、仮にポラライザを回転させて偏光させて(偏光方向を変えて)ハーフミラーに導入すると、ハーフミラーに導入される光の偏光方向によって、ハーフミラーからの透過率が変化する特性があるためである。そして、入射光の偏光方向に対して透過率/反射率が変動すると、最終的にカメラで観察する偏光画像の光量が変動することになるからである。
【0012】
本発明の偏光画像取得装置において、前記ハーフミラーがキューブ型ビームスプリッタであってもよい。
ハーフミラーとしてプレート型ビームスプリッタを用いると、厚みがあるために透過光が屈折し、光路(位置)がズレてしまう。このため、固定部材の回転に伴ってプレート型ビームスプリッタが回転するにつれ、観察像M1が円を描くように偏心して移動してしまい、観察し難い場合がある。
そこで2個のプリズムの一方の斜面に光学薄膜を蒸着して合わせた構造であるキューブ型ビームスプリッタを用いると、ビームスプリッタとして機能する薄膜の厚みが極めて薄くなり、上述のプレート型ビームスプリッタのような透過光の屈折を防止し、光路(位置)のズレをほぼ無くすことができる。これにより、ポラライザを回転させて偏光させた際、観察像が偏心して移動してすることを抑制し、観察し易くなる。
【0013】
本発明の偏光画像取得装置において、前記固定部材は、少なくとも前記ハーフミラーの光軸を調整する調整部材を有してもよい。
この偏光画像取得装置によれば、固定部材を回転させたときのアナライザの光軸のズレ(傾き)、ひいては光軸の傾きによって生じる偏心移動を補正できる。
なお、ハーフミラーに加え、アナライザおよびこれらをマウントする固定部材の光軸(の傾き)を調整してもよい。
【0014】
本発明の偏光画像取得装置において、前記ポラライザ及び前記アナライザを相対的に回転可能であってもよい。
この偏光画像取得装置によれば、ポラライザ及びアナライザの面方向の相対的な角度を調整し、偏光の効き具合を調整することができる。
【0015】
本発明の熱分析装置は、前記偏光画像取得装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、熱分析装置内の測定試料又は参照試料の偏光画像を取得できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る偏光画像取得装置が取付けられる熱分析装置の一例の構成を示す斜視図である。
図2図1において、測定位置での偏光画像取得装置の位置を示す斜視図である。
図3】本発明の実施形態に係る偏光画像取得装置が取り付けられる熱分析装置である、示差走査熱量計(DSC)を示す斜視図である。
図4図2のA―A線に沿う断面図である。
図5】偏光画像取得装置における光学ユニットを示す正面図である。
図6】固定部材及び回転機構を示す上面斜視図である。
図7】入射光に対してポラライザを回転させて偏光させ、ハーフミラーに導入したと仮定したときの構成を示す模式図である。
図8】ハーフミラーに導入される光の偏光方向によって、ハーフミラーからの透過率が変化することを示す模式図である。
図9】ハーフミラーとしてプレート型ビームスプリッタを用いたときの固定部材の回転による光路のズレを示す模式図である。
図10】プレート型ビームスプリッタを回転させて偏光させたとき、観察像が偏心して移動する状態を示す模式図である。
図11】本発明の実施形態に係る偏光画像取得装置が取付けられる熱分析装置である、熱重量測定(TG)装置の構成を示す断面図である。
図12図11の熱分析装置の軸方向に沿う断面図である。
図13】ハーフミラーと光源の相対位置を定める方法を示す模式図である。
図14】ハーフミラーと光源の相対位置が不適切な場合の不具合を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
まず、図3図4を参照し、熱分析装置100である示差走査熱量計(DSC)について説明する。
熱分析装置100は、加熱炉101の上蓋111全体を透明部材として窓としたこと以外は、従来の示差走査熱量計と同様の構成を有する。
具体的には、熱分析装置100は、加熱炉101の内部に配置されて測定試料S、参照試料Sをそれぞれ収納する試料容器51、52と、試料容器51、52と加熱炉101との間に接続されてこれらの間に熱流路を形成する熱抵抗体114と、測定試料側熱電対107と、参照試料側熱電対108と、を備えている。
加熱炉101の外周には巻線状のヒータ103が巻回されて加熱炉101を加熱する。
【0019】
加熱炉101は円筒状に形成され、軸方向に沿う断面がH字状になっている。そして、軸方向の中央から径方向内側に突出する環状突起の上方に略二重円板状の熱プレート105が載置されている。
さらに、熱プレート105の上面に、2つの熱抵抗体114を介してそれぞれ試料容器51、52が載置されている。
【0020】
又、加熱炉101の上端開口には上蓋111が着脱可能に載置され、加熱炉101内部を外気から遮断している。
さらに、上蓋111全体が石英ガラス製の透明部材であるので、上蓋111が窓を形成し、この窓を通して加熱炉101内の試料容器51、52、ひいては測定試料S、参照試料Sを観察可能である。
【0021】
測定試料側熱電対107と、参照試料側熱電対108は熱抵抗体114、熱プレート105を貫通し、それぞれの先端が試料容器51、52の下面にロウ付け等によって接続されている。一方、測定試料側熱電対107と参照試料側熱電対108の他端が加熱炉101の下方に引き出され、信号処理回路をなす増幅器124に接続されている。
このようにして、測定試料側熱電対107と、参照試料側熱電対108は、いわゆる示差熱電対を形成し、測定試料S、参照試料Sの温度差を検知できるようになっている。この温度差が熱流差信号として記録される。一方、測定試料側熱電対107から測定試料の温度が記録される。
【0022】
そして、図1に示すように、熱分析装置100の全体がケーシング102の内部に設置されている。さらに、ケーシング102のうち、窓(上蓋)111の直上位置が矩形に開口しており、そのケーシング開口104における図1の左右方向の2辺には、偏光画像取得装置200を設置及び移動させるためのレール161が取り付けられている。
【0023】
次に、図2図4を参照し、本発明の実施形態に係る偏光画像取得装置200について説明する。
図2に示すように、偏光画像取得装置200は、熱分析装置100に取り付けられる取付部202と、カバー204、206と、後述する回転ツマミ230とを有する。取付部202の全体は矩形の箱状になっており、図4に示すように、取付部202の裏面には、レール161と共にリニアガイド160を構成するブロック162が設置されている。従って、熱分析装置100側のレール161に沿って、ブロック162が移動することで偏光画像取得装置200が進退可能になっている。
なお、リニアガイド160は公知であり、ブロック162に設けられた転がり軸受がレール161に対して滑らかに動く。リニアガイド160としては、例えばLMガイド(登録商標)が挙げられる。又、偏光画像取得装置200を進退させる機構はリニアガイドに限定されず、公知の種々のアクチュエータを使用できる。
【0024】
そして、図1の退避位置では、熱分析装置100に対して偏光画像取得装置200が最も離間し、ケーシング開口104及びケーシング開口104の内側の熱分析装置100の上蓋(窓)111が露出している。
一方、図2の測定位置では、熱分析装置100に対して偏光画像取得装置200が近接し、上蓋(窓)111の直上に偏光画像取得装置200が配置される。
【0025】
図4に示すように、偏光画像取得装置200はさらに、LED等の光源210と、光源からの照射光を偏光する偏光フィルタをなすポラライザ212と、ハーフミラー(キューブ型ビームスプリッタ)215と、CCDカメラ等のカメラ220と、ポラライザ212を透過した偏光がハーフミラー215から上蓋(窓)111を介して測定試料S又は参照試料Sを照射し、その反射光をハーフミラー215を介して偏光してカメラ220に入光させる偏光フィルタをなすアナライザ222と、を有する。
さらに、取付部202の上面にはプーリー242が配置されプーリー242の上側に固定部材260が取り付けられている。
【0026】
また、カメラ220はアナライザ222を上面から覆うようにベース208上に垂直方向に取り付けられている。なお、カメラ220とアナライザ222との間にはレンズ群219が配置され、アナライザ222から上方に出射された偏光がレンズ群219で適切にピント等を合わされてカメラ220に収束するようになっている。
また、固定部材260を囲むように4本の支柱270が取付部202の上面に取り付けられ、支柱270の上にはベース208が固定されている。さらに、4本の支柱272がベース208の上面に取り付けられ、支柱272の上にはレンズ群219及びカメラ220が固定されている。
【0027】
図5に示すように、ポラライザ212、アナライザ222、ハーフミラー215及び光源210は固定部材260の上に固定されており、これらの間の相対位置が一定に保たれた光学ユニットを構成する。
なお、「相対位置が一定に保たれる」とは、上記した光学ユニットの物理的な位置が変化しないという意味であり、ポラライザ212及びアナライザ222を面方向に回転させて偏光状態を変化させる場合も「相対位置が一定に保たれる」に含む。
また、ポラライザ212とアナライザ222の相対位置は一定に保たれるが、アナライザとポラライザの相対角度を調整することができる。このポラライザ212及びアナライザ222の回転については後述する。
【0028】
固定部材260は、2枚の回転盤261、262、調整ネジ263、固定パネル265及び回転軸267を有している。
2枚の回転盤261、262は軸心AXと同軸に配置され、回転盤261が上面側に位置する。そして回転盤261、262の軸方向に平行に、かつ回転盤261、262の周縁に沿って複数の調整ネジ263がネジ止めされている。一方、回転盤262の下方には回転軸267が軸心AXと同軸に取り付けられ、回転軸267の外周に沿ってプーリー242が配置されている。
そして、調整ネジ263の締め付け深さを調整することで、回転盤262に対して回転盤261が面方向に傾き、回転盤261の回転軸267からの傾き(ズレ)を補正できるようになっている。これにより、固定部材260を回転させたときのハーフミラー215の光軸のズレを少なくとも補正できる。調整ネジ263が特許請求の範囲の「調整部材」に相当する。
【0029】
これにより、固定部材を回転させたときのアナライザの光軸のズレ(傾き)、ひいては光軸の傾きによって生じる偏心移動を補正できる。
【0030】
光源210は回転盤261の右側上面に固定され、側方に光を照射するようになっている。又、ポラライザ212は光源210の照射側における回転盤261の上面に取り付けられている。そして、ハーフミラー215が回転盤261の上面に取り付けられ、ポラライザ212からの偏光を下方に向けて測定試料S又は参照試料Sを照射する。
回転盤261の上面には固定パネル265が立設され、アナライザ222は固定パネル265に取り付けられ、ハーフミラー215の上方に配置される。アナライザ222の光軸が固定部材260の軸心AXに合わせて配置されている。
【0031】
なお、図13に示すように、光源210からポラライザ212を通った光L1がハーフミラー215を介して下方に反射した反射光L2の光中心CXが、回転盤261の軸心AXに一致するよう、回転盤261上のハーフミラー215と光源210の相対位置を定める必要がある。
例えば、図13の左と右は光中心CXが軸心AXに一致するが(完全一致とするとCXとAXが区別できないので、作図上CXを少しずらしている)、中央は両者が一致しない。なお、図13の右は、左に比べて光源210が上の位置にある場合を示す。
また、光中心とは、大きさのある光源の中心とみなせる点である。
【0032】
図13のように定める理由は、仮に図13の中央のようにCXとAXがズレていると、図14に示すように、回転盤261を回転させた時にサンプルへの光の照射密度が変動するからである。例えば図14の左側の回転前はサンプルの右側が明るくなるのに対し、図14の右側の回転後はサンプルの左側が明るくなり、観察がしにくくなる。
【0033】
ここで、ポラライザ212の第1光路(光軸)C1は水平方向であり、アナライザ222の第2光路(光軸)C2は垂直方向であり、C1とC2は平行でなく所定の角度θ(図5ではθ=90度)をなしている。
そして、ポラライザ212を透過して第1光路(光軸)C1に沿って側方に進んだ偏光は、ハーフミラー215により反射して90度下方に進んで測定試料S又は参照試料Sを照射し、その反射光がハーフミラー215を透過して第2光路(光軸)C2に沿って上方に進んでアナライザ222に入光し、アナライザ222で偏光されてカメラ220に入射するようになっている。
【0034】
一方、プーリー242を介して回転軸267及び固定部材260を回転させると、光学ユニット毎アナライザ222を偏光させることができる。
具体的には、図6に示すように、取付部202の上面には、プーリー242,244が配置され、各プーリー242,244の間にはベルト246が掛け渡されている。
プーリー242は取付部202の中央にて、固定部材260の下側(回転軸267)に取り付けられ、回転軸267とともに取付部202に軸支されている。そして、プーリー242が回転すると、回転軸267を介して固定部材260も同調して回転するようになっている。
なお、図6において、カバー204、206を外した状態としている。
【0035】
プーリー244は取付部202の前側にて、回転ツマミ230に直結している。そして、ユーザが回転ツマミ230を回すと、プーリー244からベルト246を介して他のプーリー242も連動するようになっている。
また、回転ツマミ230には適宜基準位置が記され、回転ツマミ230の外周側にはドーナツ状の角度盤248が取り付けられている。そして、角度盤248と基準位置との間の位置関係を視認することで、回転ツマミ230の回転角度を認識可能になっている。
なお、ツマミ230、プーリー242,244、ベルト246が特許請求の範囲の「回転機構」に相当する。
【0036】
そして、ツマミ230を回すと、プーリー242を介して上述のようにポラライザ212、アナライザ222、ハーフミラー215及び光源210が固定部材260と一体として回転する。
このとき、アナライザ222の光軸が固定部材260の軸心AXに合わせて配置されている。このため、アナライザ222を偏光させる向きに固定部材260が回転することになる。
なお、ポラライザ212、アナライザ222、ハーフミラー215及び光源210の相対位置(光学ユニット)は回転によっても変わらない。
【0037】
以上のように、ポラライザ212からの光をハーフミラー215を通すことで、ポラライザ212の第1光路(光軸)C1とアナライザ222の第2光路(光軸)C2とが平行でないので、ポラライザ212及びアナライザ222を含む偏光画像取得装置200を熱分析装置100の上蓋(窓)111の外側に配置して、上蓋(窓)111の内部をカメラ220にて観察、撮像することができる。
これに対し、C1とC2が平行であると、熱分析装置100の上蓋(窓)111の外側に配置して上蓋(窓)111の内部を観察することが不可能となる。
【0038】
又、固定部材260を回転させることでアナライザ222を偏光させることができ、熱分析装置100の試料(試料ホルダ41、42)を回転させることが原理上困難であっても、アナライザ222を適宜回転させることにより、上蓋(窓)111を介して熱分析装置100内の測定試料S又は参照試料Sの偏光画像を取得できる。
【0039】
ここで、本発明において、アナライザ222のみを回転させて偏光させ、ポラライザ212、ハーフミラー215及び光源210の相対位置を変化させない(これらは固定部材260上で相対位置を保ったまま一体として回転する)理由について説明する。
図7に示すように、入射光に対してポラライザ212を回転させて偏光させ(偏光方向を変えて)、その偏光光をハーフミラー(ビームスプリッタ)215に導入したとする。
【0040】
この場合、図8に示すように、ハーフミラー215に導入される光の偏光方向によって、ハーフミラー215からの透過率が変化してしまう。図8では、無偏光に対し、s偏光では透過率が低下し、p偏光では透過率が高くなる。
このように、入射光の偏光方向に対して透過率/反射率が変動すると、最終的にカメラ220で観察する測定試料S又は参照試料Sの偏光画像の光量が変動してしまう。
そこで、ポラライザ212とハーフミラー215の相対位置を保つことで、観察画像の光量の変動を抑制できる。
【0041】
具体的に、本発明者がポラライザ212を回転させたときのカメラ220に入る光の輝度の最小値と最大値を測定したところ、最小値14、最大値62であり、その差は342%であった。一方、図4の本発明の装置にてアナライザ222のみを回転させたときのカメラ220に入る光の輝度の最小値と最大値を測定したところ、最小値36、最大値41であり、その差は14%に低減した。
なお、輝度は0~255の諧調である。
【0042】
また、本発明において、ハーフミラーがキューブ型ビームスプリッタであることが好ましい。
図9は、ハーフミラーとしてプレート型ビームスプリッタ1000を用いたときの固定部材260の回転による光路のズレを示す模式図である。
プレート型ビームスプリッタ1000は厚みがあるため、図9に示すように、入射光である測定試料S又は参照試料Sからの反射光R1がプレート型ビームスプリッタ1000内で屈折し、透過光の光路(位置)がズレて第2光路C2としてカメラ220に入射する。
このため、図10に示すように、固定部材260の回転に伴ってプレート型ビームスプリッタ1000が回転するにつれ、観察像M1がM2、M3・・・と円を描くように偏心して移動してしまい、観察しずらい場合がある。
【0043】
一方、キューブ型ビームスプリッターは、2個のプリズム(通常は直角プリズム)により構成され、一方のプリズムの斜面に光学薄膜を蒸着して2個のプリズムを合わせた構造である。このため、ビームスプリッターとして機能する薄膜の厚みが極めて薄くなり、上述のプレート型ビームスプリッタのような透過光の屈折を防止し、光路(位置)のズレをほぼ無くすことができる。
これにより、ポラライザ212を回転させて偏光させた際、観察像が偏心して移動してすることを抑制し、観察し易くなる。
【0044】
本発明において、ポラライザ212及びアナライザ222を相対的に回転可能であってもよい。
この偏光画像取得装置によれば、ポラライザ212及びアナライザ222の面方向の相対的な角度を調整し、偏光の効き具合を調整することができる。
なお、固定部材260の回転に伴ってアナライザ222が回転する場合は、サンプルの偏光特性をスキャン、調整することになる。一方、アナライザ222のみの回転は、ポラライザ212とアナライザ222の相対角度をずらすことで、クロスニコル以外の偏光状態を観察する(偏光の効き具合を調整する)ために使う。
【0045】
本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の思想と範囲に含まれる様々な変形及び均等物に及ぶことはいうまでもない。
【0046】
熱分析装置は測定対象の加熱又は冷却による温度変化に伴う熱的挙動の測定を行う原理であればよく、上記した熱重量測定(TG)装置の他、JIS K 0129:2005 "熱分析通則"に定義され、測定対象(試料)の温度をプログラム制御させた時の、試料の物理的性質を測定する全ての熱分析に適用可能である。具体的には、 (1)温度(温度差)を検出する示差熱分析(DTA)、(2)熱流差を検出する示差走査熱量測定(DSC)、(3)質量(重量変化)を検出する熱重量測定(TG)、等が挙げられる。
【0047】
例えば図11図12に示すように、熱分析装置100Bは熱重量測定(TG)装置であってもよい。
なお、軸方向Oに沿ってファーナスチューブ9の先端部9a側を「先端(側)」とし、その反対側を「後端(側)」とする。又、図11の熱分析装置100Bは、上述の特許文献2、3の熱分析装置に対応する。
【0048】
熱分析装置100は熱重量測定(TG)装置を構成し、透明材料により形成されて筒状のファーナスチューブ9と、ファーナスチューブ9を外側から取り囲む筒状の加熱炉3と、ファーナスチューブ9の内部に配置される一対の試料ホルダ41,42と、支持台20と、ファーナスチューブ9の軸方向Oの後端部9dに接続される測定室30と、測定室30内に配置されて試料S、Sの重量変化を測定する重量検出器32と、測定室30を自身の上面に載置する基台10と、を備えている。ここで、測定試料(サンプル)S、参照試料Sは一対の試料容器151、152にそれぞれ収容され、各試料容器151、152が一対の試料ホルダ41,42上にそれぞれ載置されている。又、参照試料Sは、測定試料に対する基準物質(リファレンス)である。
【0049】
又、加熱炉3の下方を2つの支柱18が支え、各支柱18は支持台20の上面に接続されている。又、ファーナスチューブ9の後端部9dの外側にフランジ部7が固定され、フランジ部7の下方を支柱16が支え、支柱16は支持台20の上面に接続されている。
さらに、基台10の軸方向Oに沿って形成された溝に、リニア(線形)アクチュエータ22が配置され、リニアアクチュエータ22により、支持台20が上記溝に沿って軸方向Oに進退可能になっている。
加熱炉3は、加熱炉3の内面を形成する円筒状の炉心管3cと、炉心管3cに外嵌されたヒータ3bと、両端に側壁を有する円筒状の外筒3aとを有する。そして、加熱炉3はファーナスチューブ9(及びその内部の試料S、S)を非接触で加熱するようになっている。
【0050】
さらに、加熱炉3の上面には、外筒3aから炉心管3cへ向かって貫通する略矩形の開口部Wが形成されている。
ここで、測定試料Sを保持する試料容器151は、測定試料Sを観察できるよう、上面が開口するオープン型の有底円筒の容器になっている。一方、参照試料Sを保持する試料容器152は観察できなくてもよいので、オープン型の有底容器でなく密閉型の容器を用いてもよい。但し、各試料S、Sがファーナスチューブ9内で同一の条件で確実に加熱されるためには、試料容器152は試料容器151と同一形状であることが好ましい。
そして、開口部Wを介し、透明なファーナスチューブ9に収容された試料S、Sを外側から観察可能である。
【0051】
ファーナスチューブ9は先端部9aに向かってテーパ状に縮径し、先端部9aは細長いキャピラリ状に形成されてその先端に排気口9bが開口している。そして、ファーナスチューブ9には適宜パージガスが後端側から導入され、このパージガスや、加熱による試料の分解生成物等が排気口9bを通じて外部に排気される。
又、ファーナスチューブ9を構成する透明材料とは、可視光を所定の光透過率で透過する材料であり、半透明材料も含む。又、透明材料としては石英ガラス、サファイアガラス、又はYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット)セラミックスを好適に用いることができる。
【0052】
試料ホルダ41、42には、軸方向O後端側に延びる天秤アーム43、44がそれぞれ接続されている。又、試料ホルダ41、42の直下には熱電対が設置され、試料温度を計測可能になっている。
測定室30はファーナスチューブ9の後端に配置され、測定室30とファーナスチューブ9は管状のベローズ34で内部が連通している。
測定室30内には、コイル、磁石及び位置検出部を備えた公知の重量検出器32が配置されている。そして、天秤アーム43、44が水平になるように流した電流を測定することにより、天秤アーム43、44先端の各試料S、Sの重量を測定するようになっている。
なお、試料S、Sをセット(配置)又は交換する場合には、支持台20をファーナスチューブ9の先端側に前進させ、各試料ホルダ41、42をファーナスチューブ9及び加熱炉3より後端側に露出させて行う。
【0053】
そして、図12に示すように、ポラライザ212を透過して第1光路(光軸)C1に沿って側方に進んだ偏光は、ハーフミラー215により反射して90度下方に進んで光P1として測定試料S又は参照試料Sを照射し、その反射光R1がハーフミラー215を透過して第2光路(光軸)C2に沿って上方に進んでアナライザ222に入光するのは図4と同様である。
なお、図12では、偏光画像取得装置200を省略し、偏光画像取得装置100Bの軸方向断面のみ示している。
【符号の説明】
【0054】
3、101 加熱炉
51、52、151、152 試料容器
測定試料
参照試料
W 開口部
111W 窓
100、100B 熱分析装置
200 偏光画像取得装置
202 取付部
210 光源
212 ポラライザ
215 ハーフミラー
220 カメラ
222 アナライザ
230、242、244、246 回転機構
260 固定部材
263 調整部材
C1 第1光路
C2 第2光路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14