(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052476
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用正極活物質、その製造方法およびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
H01M 4/525 20100101AFI20240404BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240404BHJP
H01M 4/505 20100101ALI20240404BHJP
C01G 53/00 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/36 C
H01M4/505
C01G53/00 A
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023016901
(22)【出願日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】17/958,203
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
【住所又は居所原語表記】150-20 Gongse-ro,Giheung-gu,Yongin-si, Gyeonggi-do, 446-902 Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500039463
【氏名又は名称】ボード オブ リージェンツ,ザ ユニバーシティ オブ テキサス システム
【氏名又は名称原語表記】BOARD OF REGENTS,THE UNIVERSITY OF TEXAS SYSTEM
【住所又は居所原語表記】210 West 7th Street Austin,Texas 78701 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】アルムガム・マンティラム
(72)【発明者】
【氏名】金 映辰
(72)【発明者】
【氏名】金 ハンスル
(72)【発明者】
【氏名】成 原模
(72)【発明者】
【氏名】孔 泳善
【テーマコード(参考)】
4G048
5H050
【Fターム(参考)】
4G048AA04
4G048AB02
4G048AB04
4G048AC06
4G048AD04
4G048AE05
4G048AE07
5H050AA02
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB12
5H050GA02
5H050GA10
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA12
5H050HA14
(57)【要約】
【課題】4.35V以上の高電圧で初期充放電効率と電池安全性が両方とも向上した高ニッケル系正極活物質とその製造方法およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【解決手段】一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、ニッケルのモル含量がリチウムと酸素を除いた元素全体に対して80モル%以上であり、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有するリチウムニッケル系複合酸化物粒子、前記粒子の表面に位置しB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し金属ホスフェートを含有する第2コーティング層を含む。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニッケルのモル含量がリチウムと酸素を除いた元素全体に対して80モル%以上であり、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有するリチウムニッケル系複合酸化物粒子、
前記粒子の表面に位置し、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する第1コーティング層、および
前記第1コーティング層上に位置し、金属ホスフェートを含有する第2コーティング層を含む、リチウム二次電池用正極活物質。
【請求項2】
前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子は層状型のコバルトフリーリチウムニッケル系複合酸化物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項3】
前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子は複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり、
前記1次粒子の平均粒径は200nm未満である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項4】
前記2次粒子の平均粒径は5μm~25μmである、請求項3に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項5】
前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子は複数の1次粒子が凝集してなり、前記1次粒子の少なくとも一部分が放射形配列構造を有する2次粒子形態である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項6】
前記2次粒子は、不規則多孔性構造を有する内部と、前記内部を囲む領域であって放射形配列構造を有する外部を含むものである、請求項5に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項7】
前記1次粒子のうちの少なくとも一部はプレート形状を有し、前記2次粒子は表面に開気孔を含み、前記開気孔は放射形に配列されたプレート形状の1次粒子の間の空間によって形成されたものであって、2次粒子の表面で中心方向に連結された気孔である、請求項5に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項8】
前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子は下記化学式1で表される化合物を含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質:
[化学式1]
Lix1Nia1M1
b1M2
(1-a1-b1)O2
上記化学式1中、M1はB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素であり、M2はAl、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素であり、0.9≦x1≦1.2、0.8≦a1<1、および0<b1≦0.2である。
【請求項9】
前記B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素の含量は、前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子においてリチウムを除いた全体金属100重量%に対して、0.01重量%~5重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項10】
前記第1コーティング層の厚さは1nm~10nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項11】
前記第1コーティング層は、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素の酸化物;B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素とリチウムを含有する酸化物;またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項12】
前記第2コーティング層の厚さは1nm~20nmである、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項13】
前記第2コーティング層の金属ホスフェートにおいて、前記金属はAl、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、Sr、Ti、V、W、Zn、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項14】
前記金属は、AlおよびMgからなる群より選択される一つ以上の元素である、請求項13に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項15】
前記金属ホスフェートの含量は、前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子においてリチウムを除いた全体金属100重量%に対して0.1重量%~3重量%である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項16】
前記リチウム二次電池用正極活物質100重量%に対してその表面での残留リチウムの含量は0.2重量%未満である、請求項1に記載のリチウム二次電池用正極活物質。
【請求項17】
ニッケルのモル含量が酸素と水素を除いた元素全体に対して80モル%以上であるニッケル系複合水酸化物と、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料、そしてリチウム原料を混合し第1熱処理してリチウムニッケル系複合酸化物粒子を得て、
得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子と金属原料およびリン系原料を混合し第2熱処理することを含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項18】
前記ニッケル系複合水酸化物は、下記化学式11で表されるものである、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法:
[化学式11]
Nia11M11
b11(OH)2
上記化学式11中、M11はAl、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素であり、0.8≦a11≦1、および0≦b11≦0.2である。
【請求項19】
前記ニッケル系複合水酸化物の全体金属100モル部に対して、
前記B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料は0.01モル部~3モル部混合され、
前記リチウム原料は90モル部~120モル部混合されるものである、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項20】
第1熱処理は、600℃~1000℃の温度範囲で行われる、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項21】
第1熱処理後得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子は複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり、前記1次粒子の平均粒径は200nm未満である、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項22】
第1熱処理後得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子は、
前記粒子の表面に位置し、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する第1コーティング層を含み、
前記第1コーティング層の厚さは1nm~10nmである、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項23】
前記第1コーティング層は、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素の酸化物;B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素とリチウムを含有する酸化物;またはこれらの組み合わせを含む、請求項22に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項24】
前記リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムを除いた金属全体100モル部に対して、
前記金属原料と前記リン系原料はそれぞれ0.1モル部~3モル部混合されるものである、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項25】
前記金属原料は、Al、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、Sr、Ti、V、W、Zn、およびZrからなる群より選択される一つ以上の金属元素を含有する化合物である、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項26】
第2熱処理は、500℃~700℃の温度範囲で行われる、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項27】
第2熱処理を通じて、第1熱処理で得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子および前記粒子の表面に位置し金属ホスフェートを含有する第2コーティング層を含むリチウム二次電池用正極活物質が得られ、
前記第2コーティング層の厚さは1nm~20nmである、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項28】
第1熱処理後得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面での残留リチウム含量は、前記リチウムニッケル系複合酸化物100重量%に対して0.9重量%以上であり、
第2熱処理後得られた正極活物質粒子の表面での残留リチウム含量は、正極活物質100重量%に対して0.2重量%未満である、請求項17に記載のリチウム二次電池用正極活物質の製造方法。
【請求項29】
請求項1~16のうちのいずれか一項による正極活物質を含む正極、
負極、および
電解質を含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
リチウム二次電池用正極活物質とその製造方法およびこれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノートパソコン、スマートフォンなどの移動情報端末器の駆動電源として高いエネルギー密度を有しながら携帯が容易なリチウム二次電池が主に使用されている。最近はエネルギー密度の高いリチウム二次電池をハイブリッド自動車や電気自動車の駆動用電源または電力貯蔵用電源として使用するための研究が活発に行われている。
【0003】
このような用途に符合するために、高容量、高安定性、長寿命性能を実現することができる正極活物質が検討されており、一般にNi、Co、MnあるいはNi、Co、Alの三元系正極活物質が使用されている。しかし、最近、さらに高いエネルギー密度を有する活物質が要求され希少金属の供給量が減少するにつれて、正極活物質においてコバルトの比重を減らしニッケルの比重を高めた高ニッケル系(High-Ni;Ni-rich)正極活物質、またはコバルトフリー高ニッケル系正極活物質が提案された。
【0004】
しかし、正極活物質においてニッケルの比重が増加することによって結晶構造の安定性が低下し正極活物質表面の残留リチウムが増加する問題がある。これにより、電池の初期充放電効率が減少し電池内副反応増加によってガス発生量が増加し、工程性が悪化する問題が発生する。特に、高ニッケル系正極活物質のエネルギー密度を増加させるために高電圧条件で電池を駆動するようになり、この場合、正極の残留リチウム化合物と電解液間の副反応によって電池の安全性が急激に低下する。これは高エネルギーおよび高安全性を全て備えた電池の製造を難しくする。
【0005】
このような問題を解決するために、正極活物質に異種の元素をドーピングする技術が提案された。しかし、ドーピング元素によって残留リチウム含量がさらに増加して高電圧のような苛酷な条件では副反応によって電池の安全性が急激に低下する問題があり、正極の抵抗が増加してむしろ初期充放電効率が減少する問題がある。
【0006】
また、高電圧駆動時、電池の安全性のために正極活物質にコーティング材を適用して正極活物質を保護する技術も提案されてきた。しかし、この場合、寿命特性は向上できるが、正極表面の抵抗増加によって初期効率が減少する問題が頻繁に発生する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
4.35V以上の高電圧で初期充放電効率と電池安全性が両方とも向上した高ニッケル系正極活物質とその製造方法およびこれを含むリチウム二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一実施形態では、ニッケルのモル含量がリチウムと酸素を除いた元素全体に対して80モル%以上であり、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有するリチウムニッケル系複合酸化物粒子、前記粒子の表面に位置しB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し金属ホスフェートを含有する第2コーティング層を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0009】
他の一実施形態では、(i)ニッケルのモル含量が酸素と水素を除いた元素全体に対して80モル%以上であるニッケル系複合水酸化物と、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料、そしてリチウム原料を混合し第1熱処理してリチウムニッケル系複合酸化物粒子を得て、(ii)得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子と金属原料およびリン系原料を混合し第2熱処理することを含むリチウム二次電池用正極活物質の製造方法を提供する。
【0010】
他の一実施形態では、前記正極活物質を含む正極、負極および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によるリチウム二次電池用正極活物質は、高ニッケル系層状型正極活物質であって高電圧条件で初期充放電効率と電池の安全性が全て向上する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】一実施形態によるプレート型1次粒子の形状を示した模式図である。
【
図2】一実施形態による2次粒子で放射形の定義を説明するための図である。
【
図3】一実施形態による2次粒子の断面構造を示した模式図である。
【
図4】一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
【
図5】実施例1の正極活物質中間体に対するTOF-SIMS深さプロファイル分析グラフである。
【
図6】
図5の分析を通じてBO
2
-イオンの分布をマッピングしたイメージである。
【
図7】実施例1の正極活物質に対するSEM-EDS分析イメージである。
【
図8】
図7で矢印方向にラインスキャニングしてAl、P、およびNi含量を分析したグラフである。
【
図9】比較例1の正極活物質表面に対するSEMイメージである。
【
図10】比較例1の正極活物質断面に対するSEMイメージである。
【
図11】比較例4の正極活物質表面に対するSEMイメージである。
【
図12】比較例4の正極活物質断面に対するSEMイメージである。
【
図13】実施例1の正極活物質中間体の表面に対するSEMイメージである。
【
図14】実施例1の正極活物質中間体の断面に対するSEMイメージである。
【
図15】実施例2の正極活物質中間体の表面に対するSEMイメージである。
【
図16】実施例3の正極活物質中間体の表面に対するSEMイメージである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、具体的な実施形態についてこの技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施することができるように詳しく説明する。しかし、本発明は様々の異なる形態に実現でき、ここで説明する実施形態に限定されない。
【0014】
ここで使用される用語はただ例示的な実施形態を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なって意味しない限り、複数の表現を含む。
【0015】
ここで“これらの組み合わせ”とは、構成物の混合物、積層物、複合体、共重合体、合金、ブレンド、反応生成物などを意味する。
【0016】
ここで“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、数字、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在することを指定しようとするのであり、一つまたはそれ以上の他の特徴や数字、段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないと理解されなければならない。
【0017】
図面で様々の層および領域を明確に表現するために厚さを拡大して示し、明細書全体にわたって類似の部分については同一図面符号を付けた。層、膜、領域、板などの部分が他の部分“の上に”または“上に”あるという時、これは他の部分“の直上に”ある場合だけでなくその中間にまた他の部分がある場合も含む。逆に、ある部分が他の部分“の直上に”あるという時には中間に他の部分がないことを意味する。
【0018】
また“層”は、平面図で観察した時、全体面に形成されている形状だけでなく一部面に形成されている形状も含む。
【0019】
また、平均粒径は当業者に広く公知された方法で測定することができ、例えば、粒度分析器で測定するか、または透過電子顕微鏡、走査電子顕微鏡などの光学顕微鏡写真で測定することもできる。他の方法としては、動的光散乱法を用いて測定しデータ分析を実施してそれぞれの粒子サイズ範囲に対して粒子数をカウンティングした後、これから計算して平均粒径値を得ることができる。別途の定義がない限り、平均粒径は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を意味することができる。また、平均粒径は走査電子顕微鏡などの電子顕微鏡の写真で無作為に20個余りの粒子の大きさ(直径または長軸の長さ)を測定して粒度分布を得て、上記粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径(D50)を平均粒径として取ったものであり得る。
【0020】
ここで“または”は排除的な(exclusive)意味に解釈されず、例えば“AまたはB”はA、B、A+Bなどを含むと解釈される。“金属”は一般金属、遷移金属、および準金属(半金属)を含む概念である。
【0021】
正極活物質
一実施形態では、ニッケルのモル含量がリチウムと酸素を除いた元素全体に対して80モル%以上であり、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有するリチウムニッケル系複合酸化物粒子、前記粒子の表面に位置しB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する第1コーティング層、および第1コーティング層上に位置し金属ホスフェートを含有する第2コーティング層を含むリチウム二次電池用正極活物質を提供する。
【0022】
正極活物質は、高ニッケル系層状型正極活物質と言える。ニッケルのモル含量は、例えば、前記リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムと酸素を除いた元素全体に対して85モル%以上であってもよく、88モル%以上、90モル%以上、92モル%以上であってもよく、100モル%以下、または99モル%以下であってもよい。一実施形態による正極活物質を高ニッケル系でありながら、結晶構造の安定性を改善して初期効率を高め、残留リチウムなどによる電池の安全性の問題を改善した発明であると言える。
【0023】
また、正極活物質は、コバルトを含有しないか極少量のコバルトを含有するコバルトフリー(cobalt-free)層状型正極活物質であってもよい。希少金属であるコバルトは埋蔵量が多くなくて供給量が不足し高価であるという問題がある。しかし、コバルトは正極活物質構造形成に核心的な役割を果たすため、コバルトを除去する場合、構造的欠陥が発生して抵抗が増加し長寿命確保が難しくなり全般的な電池性能が劣化することがある。また、従来提案されたオリビン系またはスピネル結晶構造を有するコバルトフリー正極活物質は、リチウム可溶量が少なくて高エネルギーを実現するのに限界がある。一実施形態では、高容量を実現することができる層状型の高ニッケル系コバルトフリー正極活物質でありながら構造的安定性が向上して高電圧条件でも優れた電池性能を実現することができる正極活物質を提供する。
【0024】
正極活物質は、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有することを特徴とする。B、Sb、およびNbは、一種のドーピング元素と言える。これら元素は正極活物質の結晶構造の安定性を向上させる役割を果たしながら、他のドーピング元素に比べて高温焼成時に粒成長速度を遅くする元素と言える。これにより、同一の合成条件で前記元素は2次粒子を成す1次粒子の大きさをさらに小さくすることができる。1次粒子の大きさが小さいほどリチウムの挿入と脱離に必要なリチウム拡散距離が短くなって電池の初期充放電効率が上昇し寿命特性が改善できる。しかし、このような長所とは反対に、前記元素はリチウムと反応して酸化物形態で正極活物質粒子表面に存在するようになり、これが残留リチウムとして作用して、高電圧のような苛酷な条件では表面副反応によって電池の安全性が急激に低下し、正極抵抗が増加し、これにより、むしろ初期充放電効率が低下する問題が引き起こされる。即ち、初期充放電効率を改善するために、B、Sb、Nbなどのドーピング元素を導入して大きさが減少した複数の1次粒子が凝集した2次粒子を合成することができるが、表面の残留リチウムが増加する問題が発生する。
【0025】
一実施形態では、前記問題を解決するために、B、Sb、Nbなどのドーピング元素を導入し正極活物質の表面を金属ホスフェートでコーティングすることによって、残留リチウムが表面に露出しないようにして正極と電解液の副反応を抑制して高電圧電池の安全性を向上させ、これと同時に、前記コーティングが抵抗として作用するか容量を減少させず電池の性能を向上させようとする。
【0026】
これにより、一実施形態による正極活物質は初期充放電効率と寿命特性が向上し、同時に高電圧安全性が確保された、高ニッケル系コバルトフリー層状型正極活物質であると言え、2次粒子を構成する1次粒子の大きさが比較的に小さく、表面に金属ホスフェートがコーティングされた正極材と言える。
【0027】
リチウムニッケル系複合酸化物粒子
リチウムニッケル系複合酸化物粒子は一種のコアに該当するものであって、リチウムニッケル系複合酸化物を含みながら粒子形態をしたものであると言える。
【0028】
粒子は、複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態と言える。2次粒子は、球形、楕円球形、多角形、無定形などであってもよい。一実施形態は、1次粒子の大きさが比較的に小さいことを特徴とする。これはB、Sb、Nbなどのドーピング元素の導入により高温焼成時に粒成長速度が遅くなって1次粒子の成長が制御されたためであると理解され、ドーピング元素を導入しないかあるいは他のドーピング元素を導入した場合に比べて、同一の合成条件で、さらに小さな1次粒子を有する2次粒子を合成することができる。
【0029】
1次粒子の平均粒径は200nm未満であってもよく、例えば、50nm以上200nm未満、100nm以上200nm未満、50nm以上190nm以下、または50nm以上180nm以下であってもよい。1次粒子の平均粒径が前記範囲を満足する場合、リチウム拡散経路が短縮されて抵抗が減少し充放電効率が向上できる。ここで、1次粒子の平均粒径は2次粒子の表面で観察された1次粒子の大きさを意味し、2次粒子の表面に対する電子顕微鏡写真で任意の20個余りの1次粒子を選択し粒径(あるいは長径、あるいは長軸の長さ)を測定した後、これらの算術平均を計算することによって得ることができる。
【0030】
2次粒子の平均粒径は5μm~25μmであってもよく、例えば、5μm~20μm、7μm~20μm、10μm~20μm、または12μm~18μmであってもよい。ここで、2次粒子の平均粒径は正極活物質に対する電子顕微鏡写真で任意の20個余りの2次粒子を選択し粒径(あるいは長径、あるいは長軸の長さ)を測定した後、算術平均を計算することによって得られた値であってもよい。
【0031】
一例で、リチウムニッケル系複合酸化物粒子は複数の1次粒子が凝集した2次粒子形態であって、1次粒子の少なくとも一部分が放射形に配列されたものであってもよい。この場合、リチウムの拡散度が増加して初期充放電効率が向上し高い容量の確保が可能である。また、リチウムの挿入と脱離過程で均一な膨張と収縮が可能で、充放電により正極活物質が壊れる問題が改善されて電池の寿命特性と安全性が向上する。以下、放射形構造を具体的に説明する。
【0032】
1次粒子のうちの少なくとも一部はプレート形状を有することができる。
図1は1次粒子のプレート形状を示した模式図である。
図1を参照すれば、1次粒子は、(A)六角形などの多角形ナノ板形状、(B)ナノディスク形状、(C)直六面体形状など、基本的にプレート構造を有しながらも多様な細部形状を有することができる。
【0033】
図1で“a”は1次粒子の長軸の長さを意味し、“b”は短軸の長さを意味し、“t”は厚さを意味する。ここで、長軸の長さ(a)は、1次粒子の最も広い面を基準にして最大長さを意味する。厚さ(t)は、1次粒子の最も広い面に対して大略垂直方向をなしている面の最大長さと言える。長軸の長さ(a)および短軸の長さ(b)が含まれている方向を面方向と定義し、厚さ(t)が含まれている方向を厚さ方向と定義する。
【0034】
1次粒子の厚さ(t)は、面方向の長さである長軸の長さ(a)および短軸の長さ(b)に比べて小さくてもよい。面方向の長さのうちの長軸の長さ(a)は短軸の長さ(b)に比べて長いかまたは同一であってもよい。
【0035】
正極活物質で、1次粒子の少なくとも一部は放射形配列構造を有することができ、例えば、1次粒子の長軸が放射形方向に配列されていてもよい。
図2は放射形の定義を説明するための図である。一実施形態で放射形配列構造とは、
図2に示されているように1次粒子の厚さ(t)方向が2次粒子の中心から表面に向かう方向(R)と垂直または垂直方向と±5°の角を成すように配列されることを意味する。
【0036】
このように1次粒子の少なくとも一部が放射形に配列される場合、2次粒子の表面側に1次粒子の間のリチウム拡散通路を相対的に多く有することができ、リチウム伝達の可能な結晶面が外部に多く露出されて、リチウム拡散度が向上して高い初期効率および高い容量の確保が可能である。また、1次粒子が放射形に配列されていると、2次粒子の表面に露出された気孔が2次粒子の中心方向へ向かうようになってリチウムの拡散をさらに促進することができる。そして、放射形に配列された1次粒子によってリチウムの挿入と脱離時に均一な膨張と収縮が可能であり、リチウム脱離時に粒子が膨張する方向であるミラー指数(001)面方向側に気孔が存在してこれが緩衝作用を果たす。これにより、正極活物質の収縮膨張時、クラックが起こる確率が低下し、内部の気孔が追加的に体積変化を緩和させて、充放電時1次粒子間に発生するクラックが減少し、結局、リチウム二次電池の寿命特性が向上し抵抗増加現象が減少することになる。
【0037】
一例で、2次粒子は、不規則多孔性構造(irregular porous structure)を有する内部と、内部を囲む領域であって放射形配列構造(radially oriented structure)を有する外部を含むことができる。
【0038】
不規則多孔性構造は、1次粒子と気孔を有する構造であり、気孔大きさ、形態、位置などが規則的でないことを意味する。即ち、内部に配置される1次粒子は、外部に配置される1次粒子とは異なり規則性なく配列されていてもよい。ここで、“外部”とは、例えば、2次粒子の中心から表面までの総距離中、最表面から30長さ%~50長さ%、例えば最表面から40長さ%までの領域を意味することができ、または2次粒子の最外殻から大略3μm深さまでの領域を意味することができる。また、“内部”とは、2次粒子の中心から表面までの総距離中、中心から50長さ%~70長さ%、例えば中心から60長さ%までの領域を意味することができ、または2次粒子の最外殻から大略3μm深さまでの領域を除いた残り領域を意味することができる。
【0039】
また、2次粒子の内部に存在する気孔は、外部に存在する気孔よりその大きさがさらに大きくてもよい。例えば、内部に存在する気孔の大きさは150nm~1μmであり、外部に存在する気孔の大きさは150nm未満であってもよい。このように内部の気孔大きさが外部に比べてさらに大きい場合、内部と外部の気孔大きさが同一な2次粒子に比べて、正極活物質内部でリチウム拡散距離が短くなる長所があり、外部でリチウムの挿入は容易であり、充放電の時に起こる体積変化が緩和される効果がある。ここで、気孔の大きさは、気孔が球形または円形である場合、直径を意味し、気孔が楕円形などである場合、長軸の長さを意味することができ、2次粒子の断面に対する電子顕微鏡写真を通じて測定したものであってもよい。
【0040】
2次粒子は、表面に開気孔(open pore)を有することができる。開気孔の大きさは、約150nm未満、例えば10nm~148nmであってもよい。開気孔は気孔の壁面中の一部が閉じられていない気孔であって、放射形に配列された板状型の1次粒子の間の空間によって形成されたものであり、2次粒子の表面から中心方向に深く連結された気孔である。このような開気孔は外部と連結されて物質が出入り可能な通路になり得る。開気孔は2次粒子の表面から中心に向かっている形態であってもよく、2次粒子の表面から平均的に150nm以下、例えば0.001nm~100nm、例えば1nm~50nmの深さまで形成できる。開気孔の大きさと深さは、窒素の吸着または脱着含量を通じて導出する方法であるBJH(Barrett、Joyner and Halenda)法で測定したものであってもよい。
【0041】
図3は、正極活物質2次粒子の断面構造を示した模式図である。
図3を参照すれば、2次粒子11は、プレート形状を有する1次粒子13が放射形方向に配列された構造を有する外部14と、1次粒子13が不規則的に配列された内部12を含む。内部12には1次粒子の間の空の空間が外部に比べてさらに存在し得る。そして、内部での気孔大きさおよび気孔度は外部での気孔大きさおよび気孔度に比べて大きく、形状などが不規則的である。
図3で矢印はリチウムイオンの移動方向を示したものである。
【0042】
2次粒子において、内部は多孔性構造を有して内部までのリチウムイオンの拡散距離が減る効果があり、外部は1次粒子が放射形に配列されていて表面にリチウムイオンが挿入されるのが容易である。そして、1次粒子の大きさが小さくて結晶粒の間のリチウム伝達経路を確保しやすくなる。そして、1次粒子の大きさが小さく1次粒子の間の気孔が充放電時に起こる体積変化を緩和させて、充放電時体積変化によるストレスが最小化される。このような正極活物質は、リチウム二次電池の抵抗を減少させ容量特性および寿命特性を改善することができる。
【0043】
リチウムニッケル系複合酸化物は、高濃度のニッケルを含有しながら、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有することを特徴とする。例えば、リチウムニッケル系複合酸化物は、下記化学式1で表すことができる。
[化学式1]
Lix1Nia1M1
b1M2
(1-a1-b1)O2
【0044】
上記化学式1中、M1はB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素であり、M2はAl、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素であり、0.9≦x1≦1.2、0.8≦a1<1、および0<b1≦0.2である。
【0045】
前記化学式1中、0.8≦a1<1、0.85≦a1<1、0.9≦a1<1、0.91≦a1<1、または0.92≦a1≦0.999であってもよく、0<b1≦0.1、0<b1≦0.05、または0.001≦b1≦0.05であってもよい。
【0046】
B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素の含量は、リチウムニッケル系複合酸化物粒子においてリチウムを除いた全体金属100重量%に対して、0.01重量%~5重量%であってもよく、例えば0.1重量%~4重量%、0.1重量%~3重量%、0.1重量%~2重量%、または0.5重量%~1.5重量%であってもよい。また、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素の含量は、リチウムニッケル系複合酸化物粒子においてリチウムを除いた全体金属100モル%に対して、0.01モル%~3モル%であってもよく、例えば0.1モル%~2.5モル%、または0.1モル%~2モル%であってもよい。前記含量範囲を満足する場合、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素は高ニッケル系正極活物質の構造的安定性を向上させながら、高温焼成過程で2次粒子を成す1次粒子の大きさを減少させてリチウム拡散度を高めて初期充放電効率を改善することができる。
【0047】
第1コーティング層
第1コーティング層は前記リチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面に位置するものであって、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する層である。
【0048】
第1コーティング層の厚さは10nm以下あるいは5nm以下であってもよく、例えば1nm~10nm、1nm~7nm、または2nm~5nmであってもよい。前記のように薄い厚さで形成されることによって第1コーティング層は抵抗として作用せず1次粒子の成長を適切に制御して正極活物質の構造的安定性を向上させながらリチウム拡散度を改善することができる。
【0049】
第1コーティング層は、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素の酸化物;B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素とリチウムを含有する酸化物;またはこれらの組み合わせを含むことができる。例えば、第1コーティング層は、ボロン酸化物、リチウムボロン酸化物、アンチモン酸化物、リチウムアンチモン酸化物、ニオブ酸化物、リチウムニオブ酸化物、またはこれらの組み合わせを含むことができる。
【0050】
第1コーティング層は、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素をドーピングする過程で形成される層と言える。具体的に、正極活物質前駆体であるニッケル系複合水酸化物と;リチウム原料;そしてB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料を混合して熱処理を行うことによってリチウムニッケル系複合酸化物を製造することができ、この過程で第1コーティング層を形成することができる。
【0051】
第2コーティング層
第2コーティング層は前記第1コーティング層上に位置するものであって、金属ホスフェートを含有する層である。第2コーティング層は一種の残留リチウムになって副反応を起こすことがある第1コーティング層が正極活物質の最外殻に露出されないようにする役割を果たすことができる。
【0052】
第2コーティング層の厚さは20nm以下であってもよく、例えば1nm~20nm、1nm~18nm、1nm~15nm、1nm~10nm、1nm~7nm、または2nm~5nmであってもよい。前記のように薄い厚さで形成されることによって第2コーティング層は抵抗として作用せず表面の残留リチウム含量を低めることができ、電池の全般的な性能を向上させることができる。
【0053】
第2コーティング層の金属ホスフェートにおいて、金属は一般金属、遷移金属、半金属を含む概念であり、例えば、Al、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、Sr、Ti、V、W、Zn、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素であってもよい。一例で、金属はAlおよびMgからなる群より選択される一つ以上の元素であってもよく、この場合、電池性能の低下なく残留リチウムを効果的に低減することができる。
【0054】
金属ホスフェートはリチウム元素をさらに含有することができ、この場合、金属ホスフェートはリチウム-金属-ホスフェートと表現することができる。第2コーティング層で金属ホスフェートとリチウム-金属-ホスフェートが混在された状態であってもよい。
【0055】
金属ホスフェートの含量は、リチウムニッケル系複合酸化物粒子においてリチウムを除いた全体金属100重量%に対して0.1重量%~3重量%であってもよく、例えば、0.1重量%~2重量%、または0.5重量%~1.5重量%であってもよい。また、金属ホスフェートの含量は、リチウムニッケル系複合酸化物粒子においてリチウムを除いた全体金属100モル%に対して0.1モル%~3モル%であってもよく、例えば、0.1モル%~2モル%、または0.5モル%~1.5モル%であってもよい。前記含量範囲を満足する場合、金属ホスフェートは抵抗として作用せず表面に非常に薄い厚さで存在して一種の保護層役割を果たすことができる。
【0056】
正極活物質は第2コーティング層によって表面の残留リチウムが低減され、例えば、正極活物質表面での残留リチウムの含量は正極活物質100重量%に対して0.2重量%未満であってもよく、具体的に0.001重量%以上0.2重量%未満、あるいは0.001重量%以上0.19重量%以下であってもよい。高ニッケル系正極活物質において残留リチウムの含量範囲が前記範囲である場合、正極と電解質の界面での副反応が抑制されて電池の安全性が改善できる。
【0057】
正極活物質の製造方法
一実施形態では前述の正極活物質を製造する方法を提供する。具体的に、一実施形態による正極活物質の製造方法は、(i)ニッケルのモル含量が酸素と水素を除いた元素全体に対して80モル%以上であるニッケル系複合水酸化物と、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料、そしてリチウム原料を混合し第1熱処理してリチウムニッケル系複合酸化物粒子を得て、(ii)得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子と金属原料およびリン系原料を混合し第2熱処理することを含む。
【0058】
ニッケル系複合水酸化物は高ニッケル系複合水酸化物であってもよく、ニッケルのモル含量は酸素と水素を除いた元素全体に対して85モル%以上、88モル%以上、90モル%以上、92モル%以上であってもよく、100モル%以下または99モル%以下であってもよい。
【0059】
ニッケル系複合水酸化物は、例えば、下記化学式11で表すことができる。
[化学式11]
Nia11M11
b11(OH)2
【0060】
上記化学式11中、M11はAl、Ba、Ca、Ce、Cr、Cu、F、Fe、Mg、Mn、Mo、P、S、Si、Sr、Ti、V、W、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素であり、0.8≦a11≦1、および0≦b11≦0.2である。
【0061】
前記化学式11中、0.8≦a11<1、0.85≦a11≦1、0.9≦a11≦1、0.91≦a11≦1、または0.92≦a11≦0.999であってもよく、0≦b11≦0.1、0≦b11≦0.05、または0.001≦b11≦0.05であってもよい。
【0062】
ニッケル系複合水酸化物の全体金属100モル部に対して、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料は0.01モル部~3モル部混合され、リチウム原料は90モル部~120モル部混合されるものであってもよい。前記投入含量範囲を満足する場合、構造的に安定的でありながら2次粒子を成す1次粒子の大きさが適切に減少したリチウムニッケル系複合水酸化物粒子を合成することができる。ここで、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料の含量は、B、Sb、またはNb元素の含量がニッケル系複合水酸化物の全体金属100モル部に対して0.01モル部~3モル部になるようにその原料を投入するものであってもよく、例えば0.01モル部~2モル部、0.1モル部~1.5モル部になるように原料を投入するものであってもよい。B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する原料は、B、Sb、またはNbを含有する酸化物であってもよく、例えば、B2O3、Sb2O3、またはNb2O5であってもよいが、これに制限されない。
【0063】
第1熱処理は実質的に正極活物質を合成するための高温焼成過程であって、600℃~1000℃の温度範囲で行うことができ、例えば、600℃~900℃、あるいは650℃~800℃で行うことができ、5時間~25時間行うことができる。
【0064】
第1熱処理後に得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子は複数の1次粒子が凝集してなる2次粒子形態であり、1次粒子の平均粒径は200nm未満であることを特徴とすることができる。前述のように、B、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素をドーピング元素として導入することによって、第1熱処理過程で粒成長速度が遅くなり、これにより1次粒子の大きさが小さくなって約200nm未満の大きさを示すことができる。1次粒子と2次粒子に関する内容は前述のとおりであるので詳しい説明は省略する。
【0065】
第1熱処理後に得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子は、リチウムニッケル系複合酸化物を含むものであって粒子形態のものを言う。粒子は、粒子の表面に位置しB、Sb、およびNbからなる群より選択される一つ以上の元素を含有する第1コーティング層を含むことができる。リチウムニッケル系複合酸化物は前述のように化学式1などで表すことができる。第1コーティング層に関する内容も前述のとおりである。
【0066】
第1熱処理以後(ii)番段階は金属ホスフェートを含有する第2コーティング層を形成するための過程である。前記リチウムニッケル系複合酸化物においてリチウムを除いた金属全体100モル部に対して、前記金属原料と前記リン系原料はそれぞれ0.1モル部~3モル部混合することができ、例えば0.1モル部~2モル部、あるいは0.5モル部~1.5モル部混合することができる。
【0067】
金属原料は金属ホスフェートを形成するための金属原料を意味し、ここで金属は前述のようにAl、Ba、Ca、Ce、Co、Cr、Cu、Fe、Mg、Mn、Mo、Ni、Si、Sr、Ti、V、W、Zn、およびZrからなる群より選択される一つ以上の元素であってもよい。
【0068】
第2熱処理は例えば500℃~700℃の温度範囲で行うことができ、例えば550℃~650℃で行うことができる。前記温度範囲で熱処理されて非常に薄い厚さの第2コーティング層が安定的に形成できる。第2コーティング層に関する内容は前述のとおりである。
【0069】
第1熱処理後に得られたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面での残留リチウム含量は、ドーピング元素の導入によって高まる傾向があり、例えば、リチウムニッケル系複合酸化物100重量%に対して0.9重量%以上であってもよい。その後、第2熱処理後に得られた正極活物質粒子の表面での残留リチウム含量は、第2コーティング層形成によって効果的に減少し、例えば、正極活物質100重量%に対して0.2重量%未満であってもよい。
【0070】
正極
一実施形態では、前述の正極活物質を含むリチウム二次電池用正極を提供する。リチウム二次電池用正極は集電体およびこの集電体上に位置する正極活物質層を含み、正極活物質層は前述の正極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0071】
バインダーは正極活物質粒子を互いによく付着させ、また正極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たし、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0072】
正極活物質層においてバインダーの含量は、正極活物質層全体重量に対して大略1重量%~5重量%であってもよい。
【0073】
導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含有し金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0074】
正極活物質層において導電材の含量は正極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。
【0075】
正極集電体としてはアルミニウム箔を使用することができるが、これに限定されるのではない。
【0076】
リチウム二次電池
一実施形態では、前述の正極活物質を含む正極と負極、正極と正極の間に位置する分離膜および電解質を含むリチウム二次電池を提供する。
【0077】
図4は、一実施形態によるリチウム二次電池を示した概略図である。
図4を参照すれば、一実施形態によるリチウム二次電池100は、正極114、正極114と対向して位置する負極112、正極114と負極112の間に配置されているセパレータ113および正極114、負極112およびセパレータ113を含浸するリチウム二次電池用電解質を含む電池セルと、前記電池セルが収納されている電池容器120、および前記電池容器120を密封する密封部材140を含む。
【0078】
負極
リチウム二次電池用負極は、集電体、およびこの集電体上に位置する負極活物質層を含む。負極活物質層は負極活物質を含み、バインダーおよび/または導電材をさらに含むことができる。
【0079】
負極活物質は、リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質または遷移金属酸化物を含む。
【0080】
リチウムイオンを可逆的にインターカレーション/デインターカレーションすることができる物質としては、炭素系負極活物質であって、例えば、結晶質炭素、非晶質炭素またはこれらの組み合わせを含むことができる。結晶質炭素の例としては無定形、板状型、鱗片状(flake)、球状または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられ、非晶質炭素の例としてはソフトカーボンまたはハードカーボン、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられる。
【0081】
リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、AlおよびSnからなる群より選択される金属の合金を使用することができる。
【0082】
リチウムにドープおよび脱ドープ可能な物質としてはSi系負極活物質またはSn系負極活物質を使用することができ、Si系負極活物質としてはシリコン、シリコン-炭素複合体、SiOx(0<x<2)、Si-Q合金(Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Siではない)、Sn系負極活物質としてはSn、SnO2、Sn-R合金(Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族元素、14族元素、15族元素、16族元素、遷移金属、希土類元素およびこれらの組み合わせからなる群より選択される元素であり、Snではない)などが挙げられ、またこれらのうちの少なくとも一つとSiO2を混合して使用することもできる。元素QおよびRとしてはMg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Tl、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0083】
シリコン-炭素複合体は、例えば、結晶質炭素およびシリコン粒子を含むコア、およびこのコア表面に位置する非晶質炭素コーティング層を含むシリコン-炭素複合体であってもよい。結晶質炭素は、人造黒鉛、天然黒鉛またはこれらの組み合わせであってもよい。非晶質炭素前駆体としては、石炭系ピッチ、メソフェーズピッチ、石油系ピッチ、石炭系オイル、石油系重質油またはフェノール樹脂、フラン樹脂、ポリイミド樹脂などの高分子樹脂を使用することができる。この時、シリコンの含量は、シリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~50重量%であってもよい。また、結晶質炭素の含量はシリコン-炭素複合体全体重量に対して10重量%~70重量%であってもよく、非晶質炭素の含量はシリコン-炭素複合体全体重量に対して20重量%~40重量%であってもよい。また、非晶質炭素コーティング層の厚さは5nm~100nmであってもよい。シリコン粒子の平均粒径(D50)は10nm~20μmであってもよい。シリコン粒子の平均粒径(D50)は好ましく10nm~200nmであってもよい。シリコン粒子は酸化された形態で存在し、この時、酸化程度を示すシリコン粒子内Si:Oの原子含量比率は99:1~33:67であってもよい。シリコン粒子はSiOx粒子であってもよく、この時、SiOx中、x範囲は0超過、2未満であってもよい。本明細書で、別途の定義がない限り、平均粒径(D50)は粒度分布で累積体積が50体積%である粒子の直径を意味する。
【0084】
Si系負極活物質またはSn系負極活物質は炭素系負極活物質と混合して使用することができる。Si系負極活物質またはSn系負極活物質と炭素系負極活物質を混合使用時、その混合比は重量比として1:99~90:10であってもよい。
【0085】
負極活物質層において負極活物質の含量は負極活物質層全体重量に対して95重量%~99重量%であってもよい。
【0086】
一実施形態で、負極活物質層はバインダーをさらに含み、選択的に導電材をさらに含むことができる。負極活物質層で、バインダーの含量は負極活物質層全体重量に対して1重量%~5重量%であってもよい。また、導電材をさらに含む場合、負極活物質層は負極活物質を90重量%~98重量%、バインダーを1重量%~5重量%、導電材を1重量%~5重量%含むことができる。
【0087】
バインダーは負極活物質粒子を互いによく付着させ、また負極活物質を電流集電体によく付着させる役割を果たす。バインダーとしては非水溶性バインダー、水溶性バインダーまたはこれらの組み合わせを使用することができる。
【0088】
非水溶性バインダーとしては、ポリビニルクロリド、カルボキシル化されたポリビニルクロリド、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、エチレンプロピレン共重合体、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリビニリデンフルオライド、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミドまたはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0089】
水溶性バインダーとしては、ゴム系バインダーまたは高分子樹脂バインダーが挙げられる。ゴム系バインダーはスチレンブタジエンゴム、アクリレーテッドスチレンブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、およびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。高分子樹脂バインダーは、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリロニトリル、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコールおよびこれらの組み合わせから選択されるものであってもよい。
【0090】
負極バインダーとして水溶性バインダーを使用する場合、一種の増粘剤として粘性を付与することができるセルロース系列化合物をさらに含むことができる。このセルロース系列化合物としてはカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用することができる。アルカリ金属としてはNa、KまたはLiを使用することができる。このような増粘剤使用含量は負極活物質100重量部に対して0.1重量部~3重量部であってもよい。
【0091】
導電材は電極に導電性を付与するために使用されるものであって、構成される電池において、化学変化を引き起こさず電子伝導性材料であればいずれのものでも使用可能であり、その例として天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、炭素ナノ繊維、炭素ナノチューブなどの炭素系物質;銅、ニッケル、アルミニウム、銀などを含み、金属粉末または金属繊維形態の金属系物質;ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー;またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用することができる。
【0092】
負極集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステンレス鋼箔、チタン箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものを使用することができる。
【0093】
電解質
電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動できる媒質役割を果たす。非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用することができる。カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などを使用することができる。エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n-プロピルアセテート、ジメチルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、γ-ブチロラクトン、デカノリド(decanolide)、バレロラクトン、メバロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などを使用することができる。エーテル系溶媒としてはジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどを使用することができ、ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどを使用することができる。また、アルコール系溶媒としてはエチルアルコール、イソプロピルアルコールなどを使用することができ、非プロトン性溶媒としてはR-CN(ここで、Rは炭素数2~20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合、芳香環またはエーテル結合を含むことができる)などのニトリル類ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3-ジオキソランなどのジオキソラン類スルホラン(sulfolane)類などを使用することができる。
【0094】
非水性有機溶媒は単独でまたは一つ以上混合して使用することができ、一つ以上混合して使用する場合の混合比率は目的とする電池性能によって適切に調節することができ、これは当該分野に従事する者には広く理解されるはずである。
【0095】
また、カーボネート系溶媒の場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを混合して使用することができる。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートは約1:1~約1:9の体積比で混合して使用する場合に電解液の性能が優れることになる。
【0096】
非水性有機溶媒は、カーボネート系溶媒に芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含むこともできる。この時、カーボネート系溶媒と芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1~約30:1の体積比で混合することができる。
【0097】
芳香族炭化水素系溶媒としては、下記化学式Iの芳香族炭化水素系化合物を使用することができる。
【0098】
【0099】
上記化学式I中、R4~R9は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロアルキル基、およびこれらの組み合わせからなる群より選択されるものである。
【0100】
芳香族炭化水素系溶媒の具体的な例としては、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、1,2,3-トリフルオロベンゼン、1,2,4-トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2-ジクロロベンゼン、1,3-ジクロロベンゼン、1,4-ジクロロベンゼン、1,2,3-トリクロロベンゼン、1,2,4-トリクロロベンゼン、ヨードベンゼン、1,2-ジヨードベンゼン、1,3-ジヨードベンゼン、1,4-ジヨードベンゼン、1,2,3-トリヨードベンゼン、1,2,4-トリヨードベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、2,3-ジフルオロトルエン、2,4-ジフルオロトルエン、2,5-ジフルオロトルエン、2,3,4-トリフルオロトルエン、2,3,5-トリフルオロトルエン、クロロトルエン、2,3-ジクロロトルエン、2,4-ジクロロトルエン、2,5-ジクロロトルエン、2,3,4-トリクロロトルエン、2,3,5-トリクロロトルエン、ヨードトルエン、2,3-ジヨードトルエン、2,4-ジヨードトルエン、2,5-ジヨードトルエン、2,3,4-トリヨードトルエン、2,3,5-トリヨードトルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
電解液は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式IIのエチレン系カーボネート系化合物を寿命向上添加剤としてさらに含むこともできる。
【0102】
【0103】
上記化学式II中、R10およびR11は互いに同一であるか異なり、水素、ハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択され、前記R10およびR11のうちの少なくとも一つはハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、およびフッ素化された炭素数1~5のアルキル基からなる群より選択されるが、但しR10およびR11が全て水素ではない。
【0104】
エチレン系カーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネートまたはフルオロエチレンカーボネートなどが挙げられる。このような寿命向上添加剤をさらに使用する場合、その使用量は適切に調節することができる。
【0105】
リチウム塩は、非水性有機溶媒に溶解されて、電池内でリチウムイオンの供給源として作用して基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を果たす物質である。
【0106】
リチウム塩の代表的な例としては、LiPF6、LiBF4、LiSbF6、LiAsF6、LiN(SO2C2F5)2、Li(CF3SO2)2N、LiN(SO3C2F5)2、Li(FSO2)2N(リチウムビスフルオロスルホニルイミド、lithium bis(fluorosulfonyl)imide、LiFSI)、LiC4F9SO3、LiClO4、LiAlO2、LiAlCl4、LiPO2F2、LiN(CxF2x+1SO2)(CyF2y+1SO2)(ここで、xおよびyは自然数であり、例えば1~20の整数である)、リチウムジフルオロビスオキサラトホスフェート(lithium difluoro(bisoxalato)phosphate)、LiCl、LiI、LiB(C2O4)2(リチウムビス(オキサラト)ボレート、lithium bis(oxalato)borate、LiBOB)、およびリチウムジフルオロ(オキサラト)ボレート(LiDFOB)からなる群より選択される一つまたは二つ以上が挙げられる。
【0107】
リチウム塩の濃度は0.1M~2.0M範囲内で使用することがよい。リチウム塩の濃度が前記範囲に含まれれば、電解質が適切な伝導度および粘度を有するので優れた電解質性能を示すことができ、リチウムイオンが効果的に移動可能である。
【0108】
セパレータ
セパレータ113は正極114と負極112を分離しリチウムイオンの移動通路を提供するものであって、リチウムイオン電池で通常使用されるものであれば全て使用することができる。セパレータとしては、電解質のイオン移動に対して低い抵抗を有しながら電解液含湿能力に優れたものを使用することができる。例えば、セパレータはガラス繊維、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリテトラフルオロエチレンまたはこれらの組み合わせを含むことができ、不織布(non-woven)または織布(woven)形態であってもよい。例えば、リチウムイオン電池にはポリエチレン、ポリプロピレンなどのようなポリオレフィン系高分子セパレータが主に使用され、耐熱性または機械的強度確保のためにセラミック成分または高分子物質が含まれているコーティングされたセパレータを使用することもでき、選択的に単層または多層構造で使用することができる。
【0109】
リチウム二次電池は使用するセパレータと電解質の種類によってリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池に分類することができ、形態によって円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類することができ、サイズによってバルクタイプと薄膜タイプに分類することができる。これら電池の構造と製造方法はこの分野に広く知られているので、詳細な説明は省略する。
【0110】
一実施形態によるリチウム二次電池は高容量を実現し、高温で保存安定性、寿命特性および高率特性などに優れて電気車量(electric vehicle、EV)に使用することができ、プラグインハイブリッド車両(plug-in hybrid electric vehicle、PHEV)などのハイブリッド車両に使用することができ、携帯用電子機器などに使用することができる。
【0111】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。下記の実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明が下記の実施例に限定されるのではない。
【実施例0112】
実施例1
1.正極活物質の製造
(1)ニッケル系複合水酸化物の製造
後述の共沈法を通じてニッケル系複合水酸化物Ni(OH)2を合成した。金属原料として硫酸ニッケル(NiSO4・6H2O)を蒸留水溶媒に溶かした金属溶液を準備し、錯化合物形成のためのアンモニア水(NH4OH)と沈殿剤として水酸化ナトリウム(NaOH)を準備する。
【0113】
[第1段階:2.5kW/m3、NH4OH 0.40M、pH10.5~11.5、反応時間6時間]
まず、反応器に濃度が0.40Mであるアンモニア水を入れた。攪拌動力2.5kW/m3、反応温度50℃で金属原料および錯化剤(NH4OH)をそれぞれ85ml/minおよび10ml/minの速度で投入しながら反応を始める。pHを維持するためにNaOHを投入しながら6時間反応を実施した。反応結果、得られたコア粒子の平均サイズが約6.5μm~7.5μm範囲であることを確認し、次の通り第2段階を実施した。
【0114】
[第2段階:2.0kW/m3、NH4OH 0.45M、pH10.5~11.5、反応時間18時間]
反応温度50℃を維持しながら金属原料および錯化剤をそれぞれ85ml/minおよび12ml/minの速度に変更して投入し、錯化剤の濃度が0.45Mが維持されるようにした。pHを維持するためにNaOHを投入しながら18時間反応した。この時、攪拌動力は1段階より低い2.0kW/m3に低めて反応を行った。このような反応を実施して、コアおよび中間層を含む生成物粒子の平均サイズが13.5μm~14μmであることを確認し、次の通り第3段階を実施した。
【0115】
[第3段階:1.5kW/m3、NH4OH 0.45M、pH10.5~11.5、反応時間14時間]
反応温度50℃を維持しながら金属原料および錯化剤の投入速度および錯化剤の濃度は第2段階と同一にした。pHを維持するためにNaOHを投入しながら14時間反応した。この時、攪拌動力は2段階より低い1.5kW/m3に低めて反応を行った。
[後工程]
前記結果物を洗浄した後、約150℃で24時間熱風乾燥して、ニッケル系複合水酸化物(Ni(OH)2)を得た。
【0116】
(2)正極活物質の製造
得られたNi(OH)2のニッケル100モル部に対して、ボロンの含量が1モル部になるようにB2O3、および100モル部の水酸化リチウムを準備して、これらをNi(OH)2と混合して焼成炉に投入し、酸素雰囲気で700℃の温度で10時間第1熱処理を行う。これにより、ボロンがドーピングされたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面にボロンを含有する第1コーティング層が形成された中間体(B-LMO)を得る。
【0117】
前記中間体をエタノールに分散させる。前記中間体のニッケル100モル部に対するAlPO4の含量が1モル部になるようにAl(NO3)3・9H2Oと(NH4)2HPO4を5mlの蒸留水に溶解した後、前記エタノール分散液に投入して混合し溶媒を蒸発させる。その後、600℃で第2熱処理を行う。これにより、第1コーティング層の表面にアルミニウムホスフェートを含有する第2コーティング層を形成する。
【0118】
2.リチウム二次電池の製造
準備した正極活物質95重量%、ポリビニリデンフルオライドバインダー3重量%および炭素ナノチューブ導電材2重量%をN-メチルピロリドン溶媒中で混合して正極活物質スラリーを製造する。アルミニウム集電体に前記正極活物質スラリーを塗布し乾燥した後、圧延して正極を準備する。
【0119】
準備した正極とリチウム金属対極を使用し、その間にポリエチレンポリプロピレン多層構造のセパレータを介在させ、エチレンカーボネートとジエチルカーボネートを50:50体積比で混合した溶媒に1.0MのLiPF6リチウム塩を添加した電解液を注入してコインハーフセルを製造する。
【0120】
実施例2
正極活物質の製造においてB2O3の代わりにSb2O3を使用し、Ni(OH)2のニッケル100モル部に対してアンチモン(Sb)の含量が1モル部になるように添加することによって、Sbがドーピングされたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面にSb含有第1コーティング層が形成された中間体を製造することを除いては、実施例1と同様な方法で正極活物質およびコインハーフセルを製造する。
【0121】
実施例3
正極活物質の製造においてB2O3の代わりにNb2O5を使用し、Ni(OH)2のニッケル100モル部に対してニオブ(Nb)の含量が1モル部になるように添加することによって、Nbがドーピングされたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面にNb含有第1コーティング層が形成された中間体を製造することを除いては、実施例1と同様な方法で正極活物質およびコインハーフセルを製造する。
【0122】
比較例1
正極活物質の製造においてB2O3を投入せずAlPO4コーティングも行わないもの、即ち、LiNiO2を正極活物質として適用したことを除いては、実施例1と同様な方法で正極活物質およびコインハーフセルを製造する。
【0123】
比較例2
正極活物質の製造においてAlPO4コーティングを行わないこと、即ち、ボロンがドーピングされたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面にボロン含有第1コーティング層が形成されたものを正極活物質として適用したことを除いては、実施例1と同様な方法で正極活物質およびコインハーフセルを製造する。
【0124】
比較例3
正極活物質の製造においてB2O3を投入しないもの、即ち、LiNiO2の表面にAlPO4含有第2コーティング層のみ形成させたものを正極活物質として適用したことを除いては、実施例1と同様な方法で正極活物質およびコインハーフセルを製造する。
【0125】
比較例4
正極活物質の製造においてB2O3の代わりに硝酸アルミニウムを投入しAlPO4コーティングを行わないもの、即ち、Alドーピングされたリチウムニッケル系複合酸化物粒子の表面にAl含有第1コーティング層のみ形成されたものを正極活物質として適用したことを除いては、実施例1と同様な方法で正極活物質およびコインハーフセルを製造する。
【0126】
評価例1:第1コーティング層と第2コーティング層の確認
実施例1で製造した中間体(B-LMO)に対してTOF-SIMS(Time-of-flight secondary ion mass spectrometry)深さプロファイル(dept profile)分析を行って、粒子表面から始まって内部に入りながら深さによるNi
-の濃度およびBO
2
-の濃度を分析し、その結果を
図5に示した。また、
図5の分析を通じてBO
2
-イオンの濃度をマッピングしたイメージを
図6に示した。
図5を参照すれば、粒子表面にボロン含有第1コーティング層が約5nm以内の厚さで形成されたのが分かる。
図6は、粒子表面に位置した化合物がBO
2
-イオンを含有しているのを証明している。第1コーティング層はリチウム-ボロン-酸化物(Li
xBO
y)を含むと理解され、これが増加された残留リチウムの原因になると考えられる。
【0127】
実施例1で製造した最終正極活物質に対してSEM-EDS(Scanning Electron Microscope-Energy Dispersive X-ray Spectrometry)分析を行ってAl、P、およびNi元素をマッピングしたイメージを
図7に示した。
図7で矢印方向にラインスキャニング(line scanning)した結果を
図8に示した。
図8を参照すれば、Niは中央部に位置する反面、AlおよびPは外殻表面に位置していて、活物質の最外殻に大略20nm以下の厚さでAlPO
4含有第2コーティング層が形成されたのを確認することができる。
【0128】
評価例2:1次粒子の大きさ変化確認
比較例1で製造した正極活物質の表面に対する走査電子顕微鏡(SEM)イメージを
図9に示し、前記正極活物質の断面に対するSEMイメージを
図10に示した。
【0129】
比較例4で製造した正極活物質の表面に対するSEMイメージを
図11に示し、前記正極活物質の断面に対するSEMイメージを
図12に示した。
【0130】
実施例1で製造した正極活物質の中間体(B-LNO)の表面に対するSEMイメージを
図13に示し、前記正極活物質中間体の断面に対するSEMイメージを
図14に示した。
【0131】
実施例2で製造した正極活物質の中間体(Sb-LNO)の表面に対するSEMイメージを
図15に示した。最後に、実施例3で製造した正極活物質の中間体(Nb-LNO)の表面に対するSEMイメージを
図16に示した。
【0132】
図9および
図10の比較例1のイメージと比較してみれば、
図11と
図12の比較例4の場合、Alをドーピングすることによって1次粒子の粒径がさらに大きくなったのを確認することができる。反面、
図13と
図14の実施例1と、
図15の実施例2、および
図16の実施例3の場合にはそれぞれ、B、Sb、およびNbドーピングによって1次粒子の粒径が比較例1に比べてさらに小さくなったのを確認することができる。前記ドーピング元素は第1熱処理時、1次粒子の成長を適切に抑制すると理解される。このように1次粒子の大きさが減少する場合、リチウム拡散経路が短縮されて抵抗が減少し電池の初期充放電効率が改善され、これは後述の評価例4で分析する。
【0133】
評価例3:残留リチウム評価
比較例1および比較例4の正極活物質と実施例1~3の正極活物質中間体に対して表面の未反応残留リチウムの含量を評価し、その結果を表1に示した。
【0134】
残留リチウム含量の測定方法は次の通りである。正極活物質(または中間体)10gを蒸留水100mlに入れて30分間300rpmの速度で攪拌した後、HClを投入しながらpH変化を測定する。例えば、残留リチウムがLi2CO3、LiOHなどの形態に存在する場合、HCl投入時、H+とCO3
2-が反応するかH+とOH-が反応して滴定(titration)が行われる。滴定完了時まで投入されたHClの量を通じて残留リチウム含量を計算する。単位ppmは重量を基準とし、例えば、4000ppmは正極活物質(あるいは中間体)100重量%に対して0.4重量%を意味する。
【0135】
【0136】
表1を参照すれば、比較例4のようにAlドーピングで1次粒子の大きさが大きくなる場合、残留リチウムは減少し、反面、実施例1~3のようにそれぞれB、Sb、およびNbでドーピングすることによって1次粒子の大きさが減少する場合には残留リチウムが増加する現象を確認することができる。よって、実施例の場合、1次粒子の大きさを減少させて初期充放電効率の改善を図ることができるが、残留リチウムが増加することによって副反応が増加しガス発生量が増加して高電圧での電池安定性が低下する問題があるのを確認することができる。
【0137】
よって、一実施形態ではB、Sb、またはNbをドーピングした後、金属ホスフェートでコーティングすることによって残留リチウムの含量を減少させながら、抵抗増加や容量減少なく電池の性能を改善することに成功した。実施例1~3で最終正極活物質に対して前記と同様な方法で残留リチウム含量を測定し、その結果を下記表2に示した。
【0138】
【0139】
上記表2を参照すれば、実施例1~3の場合、金属ホスフェート含有第2コーティング層形成以後、表面の残留リチウム含量が2000ppm未満に減少したのを確認することができる。これにより、実施例による正極活物質の場合、ドーピングによって1次粒子の大きさが小さくなって電池の初期充放電効率が改善され、これと同時に第2コーティング層で残留リチウム含量を減少させることによって高電圧安定性を向上させることができると理解される。
【0140】
評価例4:電気性能評価
実施例1および比較例1~4で製造したコインハーフセルを常温で0.2C条件で3.0Vから上限4.35V(vs.Li/Li+)まで充電させた後、10分間休止し、0.2C条件で3.0Vになるまで放電させて初期充放電を行う。この時、初期放電容量を測定して下記表3に示し、初期充電容量に対する初期放電容量の比率を初期効率と表記して下記表3に示した。
【0141】
その後、常温で1Cで3.0V~4.35Vの範囲で50回充放電を繰り返す。初期放電容量に対する50サイクルでの放電容量の比率を、50回寿命と表記して下記表3に示した。
【0142】
【0143】
上記表3を参照すれば、ドーピングとコーティングを行わなかった比較例1の場合、寿命特性が顕著に低く示され、ボロンドーピングのみ行った比較例2の場合、初期効率と寿命特性が多少低下することが確認され、前述のように残留リチウムが高く示されて高電圧安全性が問題になると理解される。
【0144】
ボロンなどのドーピングなく金属ホスフェートコーティングのみ行った比較例3の場合、コーティングによって残留リチウムが減少する効果はあったが、ドーピングによる効果がなくて初期効率が低下し、コーティング層が抵抗として作用して寿命特性が低下する結果となった。また、アルミニウムドーピングのみ行った比較例4の場合、前述のように1次粒子の大きさが大きくなりながら、実施例1に比べて初期効率および寿命特性が多少低下することが確認される。
【0145】
反面、実施例1の場合、残留リチウムが2000ppm未満水準で非常に低く高電圧安全性が確保され、初期容量が高く初期充放電効率と寿命特性が全て向上したことが確認される。
【0146】
以上、好ましい実施例について詳細に説明したが、本発明の権利範囲はこれに限定されるのではなく、次の請求範囲で定義している基本概念を用いた当業者の様々の変形および改良形態も本発明の権利範囲に属するのである。