(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052529
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】エッチングレジスト組成物
(51)【国際特許分類】
G03F 7/027 20060101AFI20240404BHJP
G03F 7/004 20060101ALI20240404BHJP
G03F 7/035 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G03F7/027 513
G03F7/004 501
G03F7/035
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023123082
(22)【出願日】2023-07-28
(31)【優先権主張番号】P 2022157588
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591021305
【氏名又は名称】太陽ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【弁理士】
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【弁理士】
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【弁理士】
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】西尾 一則
【テーマコード(参考)】
2H225
【Fターム(参考)】
2H225AC23
2H225AC36
2H225AC54
2H225AC57
2H225AC72
2H225AD02
2H225AM64P
2H225AM70P
2H225AM92P
2H225AN36P
2H225AN72P
2H225AN94P
2H225AP09P
2H225AP15P
2H225BA05P
2H225BA13P
2H225BA16P
2H225BA20P
2H225BA33P
2H225CA15
2H225CA30
2H225CB02
2H225CC01
2H225CC13
(57)【要約】 (修正有)
【課題】ガラスなどの基板にエッチングを行う際のフッ酸エッチング耐性に優れるだけでなく、かつ短時間での剥離が可能である、製造効率に優れたエッチングレジスト膜を形成できるエッチングレジスト組成物を提供する。
【解決手段】カルボキシル基含有ウレタン樹脂、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂、光重合開始剤、光重合性化合物、および無機フィラーを含み、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、15:85~50:50の範囲にある、エッチングレジスト組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂、
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂、
光重合開始剤、
光重合性化合物、および
無機フィラー、
を含み、
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、15:85~50:50の範囲にある、
エッチングレジスト組成物。
【請求項2】
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂が感光性である、請求項1に記載のエッチングレジスト組成物。
【請求項3】
さらにフェノキシ樹脂を含み、かつ、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、40:60~50:50の範囲にある、請求項1に記載のエッチングレジスト組成物。
【請求項4】
前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)が、20,000~50,000である、請求項3に記載のエッチングレジスト組成物。
【請求項5】
前記無機フィラーとして、タルクおよび硫酸バリウムを含む、請求項1に記載のエッチングレジスト組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エッチング、例えばガラスの微細加工におけるガラスエッチングにおいて用いられるエッチングレジスト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガラス製品の加工は、ガラス表面の微細加工や滑らかさがより必要とされること、あるいは、ドリルなどの切削工具を用いた機械加工ではガラスにクラックが生じ易くなることから、ガラスエッチングによる加工が主流になってきている。
【0003】
ガラスエッチングは、電子材料、光学材料、および計測器等のガラス躯体に対して、従来適用されている手法である。ガラスエッチングの方法としては、例えば、エッチング対象とされるガラス基板の表面に、アルカリ可溶性の樹脂組成物を塗布し、これを熱乾燥、光硬化させてエッチングレジスト膜を形成する。その後、アルカリ水溶液により現像、パターニング、および加熱処理した後、ガラス基板をフッ酸系などのエッチング液に浸漬して、エッチングレジスト膜に被覆されていない部分を除去することによって、所望のパターンをガラス基板に形成する方法が挙げられる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、フッ酸エッチングによるガラス製品の加工においては、ガラス加工製品を様々な用途で活用するため、より深いエッチングが望まれる場合もある。この要望に応えるべく、本発明者が実験を行ったところ、現像後の加熱処理をより高温で行うことによって、エッチングレジスト膜のエッチング耐性が向上し、フッ酸エッチング液により剥離されるまでの時間が伸び、これによってより深いエッチングが可能となることが明らかとなった。
その反面、エッチング後のエッチングレジストの剥離により長い時間を要することとなり、製造効率の点で課題を残すことも明らかとなった。
【0006】
そこで本発明は、フッ酸エッチング耐性に優れるだけでなく、かつ短時間での剥離が可能である、製造効率に優れたエッチングレジスト膜を形成できるエッチングレジスト組成物を提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は上記課題に鑑み鋭意検討した結果、エッチングレジスト組成物において、カルボキシル基含有ウレタン樹脂と、当該樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂とを、特定の含有比率で併用することによって、上記課題を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明の上記課題は、
カルボキシル基含有ウレタン樹脂、
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂、
光重合開始剤、
光重合性化合物、および
無機フィラー
を含み、
前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、15:85~50:50の範囲にある、
エッチングレジスト組成物
によって解決され得る。
また、本発明の好ましい態様は前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂が感光性である、エッチングレジスト組成物に関する。
また別の本発明の好ましい態様は、さらにフェノキシ樹脂を含み、かつ、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、40:60~50:50の範囲にある、エッチングレジスト組成物に関する。
さらに本発明の別の好ましい態様は、前記フェノキシ樹脂の重量平均分子量(Mw)が、20,000~50,000である、エッチングレジスト組成物に関する。
また、さらに本発明の別の好ましい態様は、前記無機フィラーとして、タルクおよび硫酸バリウムを含む、エッチングレジスト組成物にも関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明のエッチングレジスト組成物より得られるエッチングレジストは、現像後の高温の加熱処理を経た後であっても、エッチング耐性に優れるだけでなく、短時間での剥離もまた良好である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明においては、原則として、エッチングレジスト組成物を現像することを想定している。そのため、エッチングレジストを構成する樹脂は、アルカリ可溶性であることが好ましい。
例えば、本発明のエッチングレジスト組成物においては、好ましくはその分子構造中にカルボキシル基を含有する樹脂が用いられる。また他方で、本発明においては、エッチングレジストがフッ酸によるエッチング耐性に優れ、かつまた、より短時間で剥離する、という特性が必要とされる。
そのため、本発明においては、エッチングレジストを構成する樹脂としては、分子構造中にカルボキシル基およびウレタン構造を有する樹脂、即ち、カルボキシル基含有ウレタン樹脂が用いられる。そしてまた、本発明においては、エッチングレジストのエッチング耐性および剥離時間を調整するために、さらにカルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂、つまりウレタン構造を有していないカルボキシル基含有樹脂が併用される。
【0011】
[カルボキシル基含有ウレタン樹脂]
カルボキシル基含有ウレタン樹脂としては、例えば、下記(1)~(4)に挙げられるような化合物(オリゴマーまたはポリマーのいずれでもよい)が好ましい。
【0012】
(1)脂肪族ジイソシアネート、分岐脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネート等のジイソシアネートと、ジメチロールプロピオン酸、ジメチロールブタン酸等のカルボキシル基含有ジアルコール化合物およびポリカーボネート系ポリオール、ポリエーテル系ポリオール、ポリエステル系ポリオール、ポリオレフィン系ポリオール、アクリル系ポリオール、ビスフェノールA系アルキレンオキシド付加体ジオール、フェノール性水酸基およびアルコール性水酸基を有する化合物等のジオール化合物の重付加反応によるカルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0013】
(2)ジイソシアネートと、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂等の2官能エポキシ樹脂の(メタ)アクリレートもしくはその部分酸無水物変性物、カルボキシル基含有ジアルコール化合物およびジオール化合物の重付加反応による感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0014】
(3)上記(1)または(2)の樹脂の合成中に、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート等の分子内に1つの水酸基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化した感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0015】
(4)上記(1)または(2)の樹脂の合成中に、イソホロンジイソシアネートとペンタエリスリトールトリアクリレートの等モル反応物等、分子内に1つのイソシアネート基と1つ以上の(メタ)アクリル基を有する化合物を加え、末端(メタ)アクリル化した感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂。
【0016】
本発明においては、カルボキシル基含有ウレタン樹脂として上記(2)~(4)の感光性のものが好ましく用いられ得る。それによって、露光の際により硬い塗膜が形成されるため、得られるエッチングレジストのエッチング耐性を、より高める方向に調整することができる。
【0017】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂の重量平均分子量は、樹脂骨格により異なるが、1,000~150,000の範囲内にあることが好ましく、5,000~100,000にあることがより好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、エッチング耐性が向上し、重量平均分子量が150,000以下であると、現像性が良好となる。
【0018】
このようなカルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量は、後述するカルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が特定の範囲内となるように決定されるが、エッチングレジスト組成物の全固形分の質量を基準として、好ましくは5質量%~35質量%であり、より好ましくは、6質量%~30質量%である。
【0019】
[カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂]
ここで、エッチングレジストを構成する樹脂としては、本発明においては、エッチングレジストを構成する主成分として、上記カルボキシル基含有ウレタン樹脂のほか、それ以外のカルボキシル基含有樹脂をも併用される。これによって、アルカリ現像における精密なパターンの形成が可能となる。そのような樹脂としてのカルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂は、下記のようなものである。
【0020】
例えば、水酸基を有する2官能またはそれ以上の多官能ビスフェノール型エポキシ樹脂の水酸基にエピクロルヒドリン等でエポキシ基を付加した後、不飽和基含有モノカルボン酸および2塩基酸無水物をさらに反応させて得られるカルボキシル基含有樹脂、および、当該樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂が挙げられる。
前記水酸基を有する2官能またはそれ以上の多官能ビスフェノール型エポキシ樹脂としては、例えば、下記一般式(I)で表されるビスフェノールF型エポキシ樹脂およびビスフェノールA型エポキシ樹脂が挙げられる。
【0021】
【化1】
(式中、XはCH
2またはC(CH
3)
2を表し、nは1~12である)
【0022】
また、例えば、ビフェニル型エポキシ樹脂等のビフェニル構造を有する2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂に、不飽和基含有モノカルボン酸を反応させ、側鎖に存在する水酸基に2塩基酸無水物を付加させた、カルボキシル基含有樹脂、および、該樹脂にさらに1分子内に1つのエポキシ基と1つ以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物を付加してなるカルボキシル基を有する(メタ)アクリレート変性樹脂が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
前記ビフェニル構造を有する2官能またはそれ以上の多官能エポキシ樹脂としては、例えば下記一般式(II)に示すビフェニル型エポキシ樹脂が挙げられる。
【化2】
(式中、n1は平均値を表し1.01~5である)
【0024】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂としては、市販品を用いることもまた、もちろん可能である。
例えば、酸変性エポキシアクリレート樹脂として、ZCR-1569H、ZCR-1601H、ZCR-1797およびZCR-1798Hなどのビフェニル型;ZFR-1401HおよびZFR-1491HなどのビスフェノールF型;ZAR-1035およびZAR-2000などのビスフェノールA型(いずれも日本化薬社製)が挙げられる。
【0025】
カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の重量平均分子量は、カルボキシル基含有ウレタン樹脂と同様、樹脂骨格により異なるが、1,000~150,000の範囲内にあることが好ましく、5,000~100,000にあることがより好ましい。重量平均分子量が1,000以上であると、エッチング耐性が向上し、重量平均分子量が150,000以下であると、現像性が良好となる。
【0026】
本発明のエッチングレジスト組成物中における、上記のとおりのカルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、15:85~50:50の範囲にあることが好ましく、この範囲内にあることによって、得られるエッチングレジストのエッチング耐性および剥離性が本発明の課題を有効に解決し得る結果となる。
さらに好ましいのは、エッチンングレジスト組成物が、後述するフェノキシ樹脂を含み、かつ、当該組成物中における、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂の含有量と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の含有量との比率が、質量に基づき、40:60~50:50の範囲にある態様である。当該態様が、エッチングレジストのエッチング耐性および剥離性の点で、最も良好な結果を示す。さらにこの場合であって、用いるフェノキシ樹脂の重量平均分子量Mwが20,000~50,000の範囲であると、得られるエッチングレジストのエッチング耐性がさらに高く、かつ、剥離性の低下もさらに良く抑えられる。
なお、カルボキシル基含有ウレタン樹脂と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の比率とは、エッチングレジスト組成物中に含有されたカルボキシル基含有ウレタン樹脂の全質量部と、前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の全質量部との比率を意味する。
【0027】
[光重合開始剤]
本発明のエッチングレジスト組成物は、光重合開始剤を含有する。
このような光重合開始剤としては、例えば、α-アミノアセトフェノン系化合物、オキシムエステル系化合物、および、アシルオキシイミノ基、N-ホルミル化芳香族アミノ基、N-アシル化芳香族アミノ基、ニトロベンジルカーバメイト基またはアルコオキシベンジルカーバメート基等の置換基を有する化合物等が挙げられる。このうち、オキシムエステル系化合物およびα-アミノアセトフェノン系化合物が好ましい。α-アミノアセトフェノン系化合物としては、特に、2つ以上の窒素原子を有するものが好ましい。
【0028】
α-アミノアセトフェノン系化合物は、分子中にベンゾインエーテル結合を有し、光照射を受けると分子内で開裂が起こり、硬化触媒作用を奏する塩基性物質(アミン)が生成するものであればよい。
このようなα-アミノアセトフェノン系化合物の市販品としては、オムニラッド(Omnirad)907、オムニラッド369およびオムニラッド379(いずれもIGM RESINS社製)などが挙げられる。
【0029】
またオキシムエステル系化合物としては、光照射により塩基性物質を生成する化合物であれば、いずれをも使用することができる。このようなオキシムエステル系化合物の市販品としては、イルガキュアーOXE01およびイルガキュアーOXE02(いずれもBASFジャパン社製)、ならびに、N-1919およびNCI-831(ADEKA社製)などが挙げられる。また、分子内に2個のオキシムエステル基を有する光重合開始剤も好適に用いることができる。
これら光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0030】
また、本発明のエッチングレジスト組成物中の光重合開始剤の含有量は、固形分換算で、カルボキシル基含有ウレタン樹脂とカルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の合計100質量部に対して、0.1~20質量部が好ましく、3~10質量部がより好ましい。
【0031】
[光重合性化合物]
本発明のエッチングレジスト組成物においては、その硬化性をより高めるために、光重合性化合物を含有する。このような光重合性化合物としては、活性光線照射により硬化する樹脂であればよく、例えば、分子中に1個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物が好ましく用いられる。
エチレン性不飽和結合を有する化合物としては、公知慣用の感光性モノマーである光重合性オリゴマー、光重合性ビニルモノマー等を用いることができる。また、光硬化性樹脂として、エチレン性不飽和結合を有するカルボキシル基含有樹脂等のポリマーを用いることができる。
【0032】
感光性モノマーとしては、分子中に1個以上の(メタ)アクリロイル基を有する室温で液体、固体または半固形の感光性(メタ)アクリレート化合物が使用できる。室温で液状の感光性(メタ)アクリレート化合物は、本発明のエッチングレジスト組成物の光反応性を向上させる目的の他、当該組成物を適切な粘度に調整する役割、あるいは、現像液(アルカリ水溶液)への溶解性を助ける役割も果たす。
【0033】
感光性(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートなどの水酸基含有のアクリレート類;ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレートなどの水溶性のアクリレート類;トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレートなどの多官能アルコールのアクリレートエステル類;トリメチロールプロパン、水添ビスフェノールA等の多官能アルコールもしくはビスフェノールA、ビフェノールなどの多官能フェノールのエチレンオキサイド付加物、プロピレンオキサイド付加物のアクリレート類;上記水酸基含有アクリレートのイソシアネート変成物である多官能もしくは単官能ポリウレタンアクリレート;ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテルまたはフェノールノボラックエポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸付加物であるエポキシアクリレート類、および上記アクリレート類に対応するメタクリレート類などが挙げられる。
これらは単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて使用され得る。
なお、本願明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレート、メタクリレートおよびそれらの混合物を総称する用語で、他の類似の表現についても同様である。
【0034】
また、本発明のエッチングレジスト組成物中の光重合性化合物の含有量は、固形分換算で、カルボキシル基含有ウレタン樹脂と前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の合計100質量部に対して、5~50質量部が好ましく、15~40質量部がより好ましい。
【0035】
[無機フィラー]
本発明のエッチングレジスト組成物は、タックフリーの塗膜を形成し、基材との密着性の向上のために、無機フィラーを含有する。
無機フィラーとしては、公知のものをいずれも用いることがで、例えば、非晶質シリカ、結晶質シリカ、溶融シリカ、球状シリカなどのシリカ、タルク、ベーマイト、ハイドロタルサイト、消石灰、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム、炭酸カリウム、炭酸マグネシウム、クレー、雲母粉、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、硫酸バリウム、硫化銅、アルミナ、酸化亜鉛、鉄、硫化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化クロム、酸化カドミウム、硫化カドミウム、酸化銅等が挙げられる。
この中でも、タルクまたは硫酸バリウムが好ましい。
エッチングレジストのエッチング耐性をより高めるという観点から、無機フィラーは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を併用してもよい。本発明のエッチングレジスト組成物においては、現像後の高温の加熱処理を経た後のエッチング耐性向上のため、特に、タルクと硫酸バリウムとを併用することが好ましい。
【0036】
無機フィラーには、分散性を高めるための表面処理がされていてもよい。表面処理がされている無機フィラーを使用することにより、エッチング組成物中での凝集を抑制することができる。
この場合、無機フィラーの表面処理方法は特に限定されず、公知慣用の方法を用いればよいが、例えば、硬化性反応基を有する表面処理剤、例えば、硬化性反応基を有機基として有するカップリング剤等で無機のフィラーの表面を処理することが挙げられる。
硫酸バリウムは、耐酸性、基材への密着性が良いことから、表面未処理品が好ましい。
【0037】
また、無機フィラーの平均粒子径は、10μm以下のものを好ましく用いることができるが、分散性の観点より、より好ましくは0.1~5.0μmであり、さらに好ましくは0.2~3.0μmである。
なお、平均粒子径とは、体積累積50%粒子径(D50体積%)の値のことをいい、レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置と動的光散乱式粒子径分布測定装置により測定することができる。レーザー回折・散乱式粒子径分布測定装置としてはマイクロトラック・ベル社製のMicrotrac MT3300EXII、動的光散乱式粒子径分布測定装置としては、マイクロトラック・ベル社製のNanotrac Wave II UT151が挙げられる。
【0038】
無機フィラーは、取り扱いの観点から、溶剤や分散剤と混合したスラリーの形態で用いてもよい。そのようなスラリーは例えば、フィラー、必要に応じてカップリング剤および溶剤を混合攪拌し、ビーズミルを用いて分散処理を行うことにより、得ることができる。
【0039】
このような無機フィラーの含有量は、固形分換算で、カルボキシル基含有ウレタン樹脂と前記カルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の合計100質量部に対して、好ましくは5~200質量部であり、より好ましくは20~100質量部である。
含有量が5~200質量部であれば、得られたエッチングレジストのエッチング耐性を担保できるとともに、エッチングレジスト組成物を液状ペースト化することが容易となる。
本発明で使用されるフィラーは、好ましくは上記のとおりの無機フィラーであるが、当本発明の効果を担保できる範囲内で、当該無機フィラーに替えて有機フィラーを用いても良いし、無機フィラーと有機フィラーとを併用してもよい。
【0040】
[フェノキシ樹脂]
本発明のエッチングレジスト組成物は、得られるエッチングレジストのエッチング耐性をさらに高めるために、フェノキシ樹脂をさらに含有していてもよい。
但し、フェノキシ樹脂は通常、アルカリ水溶液に難溶であることから、組成物に含有させることによって、エッチングレジストの剥離性が低下する懸念もある。また、フェノキシ樹脂の分子量が大き過ぎると、レジストの剥離性が低下してしまう。
よって、エッチング耐性の向上および剥離性の低下の抑制のバランスの観点から、フェノキシ樹脂の含有量は、カルボキシル基含有ウレタン樹脂とカルボキシル基含有ウレタン樹脂以外のカルボキシル基含有樹脂の合計100質量部に対して、1質量部~50質量部が好ましく、3質量部~20質量部がより好ましい。
また、同様の観点から、フェノキシ樹脂の重量平均分子量Mwは、5,000~100,000が好ましく、10,000~80,000がより好ましく、20,000~50,000が最も好ましい。
【0041】
フェノキシ樹脂としては、例えば、2官能フェノール類、例えば芳香族ジオール(ビスフェノールA、ビスフェノールF等)とエピクロルヒドリンとを重合して得られたものを用いることができる。
このようなフェノキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA骨格、ビスフェノールF骨格、ビスフェノールS骨格、ビスフェノールアセトフェノン骨格、ノボラック骨格、ビフェニル骨格、フルオレン骨格、ジシクロペンタジエン骨格、ノルボルネン骨格、ナフタレン骨格、アントラセン骨格、アダマンタン骨格、テルペン骨格およびトリメチルシクロヘキサン骨格からなる群から選択される1種類以上の骨格を有するフェノキシ樹脂が挙げられる。
フェノキシ樹脂としては、下記一般式(III)に示すフェノキシ樹脂が好ましい。
このようなフェノキシ樹脂の市販品としては、PKHA、PKHB、PKHC、PKHJ、PKHH、PKFE、PKCP-80(以上、いずれもハンツマン社製)が挙げられる。
【化3】
(III)
【0042】
またフェノキシ樹脂としては、他の市販品を用いることももちろん可能である。そのようなものとしては、例えば、JER1256、JER4250、JER4275(以上、いずれも三菱化学社製)、YP-50、YP-55U、YP-50S、YP-70、FX-293、FX-280S、FX-310(以上、いずれも新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
これらフェノキシ樹脂は、1種類を単独で、または2種類以上を併用することももちろんできる。
【0043】
[溶剤]
本発明においては、エッチングレジスト組成物を、基材に塗布するのに適した粘度とするために、溶剤を用いることがもちろん可能である。このような溶剤としては、主に有機溶剤が使用され、その具体例としては、ケトン類、芳香族炭化水素類、グリコールエーテル類、グリコールエーテルアセテート類、エステル類、アルコール類、脂肪族炭化水素、石油系溶剤等を挙げることができる。
【0044】
より具体的には、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールブチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、プロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類;オクタン、デカン等の脂肪族炭化水素;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤等である。このような有機溶剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0045】
溶剤の含有量は、目的に応じた任意の量とすることができるが、本発明のエッチングレジスト組成物の全固形分100質量部に対して、15質量部~80質量部、特に18質量部~60質量部が好ましい。
【0046】
[その他の成分]
本発明のエッチングレジスト組成物は、さらに必要とされる特性に応じて、上記成分以外のその他の成分、例えば、増粘剤、流動性改質剤、表面張力調整剤、密着性付与剤またはカップリング剤、界面活性剤、着色剤(有機顔料または無機顔料を含む)、消泡剤またはレベリング剤、またはマット剤を含有することもできる。
【0047】
このうち、着色剤としては、例えば、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、アイオジングリーン、ジスアゾイエロー、クリスタルバイオレット、酸化チタン、カーボンブラック、またはナフタレンブラックを挙げることができる。
【0048】
また、消泡剤としては、例えば、シリコーン系消泡剤、フッ素系消泡剤およびアクリル系消泡剤が挙げられる。シリコーン系の消泡剤としては、BYK(登録商標)-063、-065、-066N、-081、-141および-323(以上、いずれもビックケミー・ジャパン社製)、KS-66、KS-69およびX-50-1105G等(以上、いずれも信越化学工業社製)、フッ素系消泡剤としては、メガファックRS、F-554およびF-557等(DIC株式会社製)、アクリル系消泡剤としては、ディスパロンOX-880EFおよびOX-70(楠本化成株式会社製)などが挙げられる。
【0049】
その他の成分は、上記カルボキシル基含有ウレタン樹脂等の各成分の特性を損なわず、かつ添加による所望の効果が得られる範囲で、適宜使用量を調節して使用される。
着色剤が用いられる場合、エッチングレジスト組成物の全固形分の質量を基準として、10質量部以下の割合で用いることが好ましい。
【0050】
本発明のエッチングレジスト組成物の25℃における粘度は、1~1,500dPa・sの範囲にあることが好ましく、10~1,000dPa・sの範囲にあることがより好ましい。
エッチングレジスト組成物の粘度が1~1,500dPa・sの範囲にあることによって、エッチングレジストとして基板を良好に保護することが可能な膜厚を有する塗膜が得られる一方で、取り扱いが容易であり、そのためスクリーン印刷等による印刷に適する。
【0051】
[基板の製造]
本発明のエッチングレジスト組成物を用いた基板の製造方法は、例えば下記のとおりである。
上記説明した各成分を、必要に応じて攪拌機を用いて予備攪拌した後、ロールミルなどで分散および混錬して、均一な溶液又は分散液を調製して、本発明のエッチングレジスト組成物とする。
【0052】
次に、基板、例えばガラス基板に対して、スクリーン印刷、グラビア印刷またはグラビアオフセット印刷などによって、乾燥後の塗膜の膜厚が、5~100μm、好ましくは30~90μm、より好ましくは40~50μmとなるように、印刷を行う。なお、これら印刷法以外にも、カーテンコート法またはスプレー法による塗布も可能である。
【0053】
さらに、タックフリーの塗膜を形成するために、60~120℃にて、5~90分間、好ましくは70~100℃にて、10~50分間、乾燥炉等において基板を加熱することにより乾燥させる。
【0054】
その後、こうして得られた乾燥塗膜に対して、フォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光して、塗膜の露光部分を硬化させる。さらに、例えば、炭酸ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸カリウム、リン酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、アンモニア、アミン類等のアルカリ水溶液を用いて現像することにより、エッチングレジストパターンを形成させる。
【0055】
活性エネルギー線照射に用いられる露光機としては、高圧水銀灯ランプ、超高圧水銀灯ランプ、メタルハライドランプ、水銀ショートアークランプ等を搭載し、350~450nmの範囲で紫外線を照射する装置であればよく、さらに、直接描画装置(例えば、コンピューターからのCADデータにより直接レーザーで画像を描くレーザーダイレクトイメージング装置)も用いることができる。直描機のランプ光源またはレーザー光源としては、最大波長が350~410nmの範囲にあるものでよい。画像形成のための露光量は膜厚等によって異なるが、一般には20~2000mJ/cm2、好ましくは20~1500mJ/cm2の範囲内とすることができる。
【0056】
さらに現像後、例えば熱風循環式乾燥炉を用いて、60℃~200℃の温度にて1分~1時間、基板の加熱処理(後熱処理;ポストベーキング)を行う。このとき、加熱処理の温度がより高いほど、かつ、その時間が長いほど、得られるエッチングレジストのエッチング耐性が高まるため、基板に対するより深いエッチングが可能となる。さらに、本発明においては、そのような条件下で基板を加熱処理したとしても、エッチングレジストの剥離に時間を要するという従来の課題が解決されているため、製造効率の点でも有利である。
【0057】
そして、上記のような加熱処理の後、基板をフッ酸水溶液に浸漬して、エッチングを行う。
エッチング液としては、基板がガラス製の場合には、通常、フッ化水素酸単独若しくはフッ化水素酸を含むエッチング液(例えば、フッ化水素酸と、鉱酸(硝酸、リン酸等)との混合物、場合により酢酸等の弱酸のいずれか1種類以上を含む)が用いられる。
例えば、ガラス基板の場合、濃度5~15質量%のフッ酸水溶液を用いた、液温25~35℃、100分間のエッチング処理で、100~200μmまでの深さのエッチングが可能であり、かつ、この条件であっても良好なエッチング耐性を得る事ができる。
【0058】
基板のエッチング後に、残存したエッチングレジストの剥離を行う。剥離は、例えば濃度1~5質量%の、水酸化ナトリウム水溶液、または水酸化カリウム水溶液等の公知の剥離液にて行われ得る。
【0059】
[ドライフィルム]
本発明のエッチングレジスト組成物は、第1のフィルム上に塗布した当該組成物を乾燥させて得られる、ドライフィルムとしても使用され得る。このようなドライフィルムは、例えば、本発明のエッチングレジスト組成物を、有機溶剤で希釈して適切な粘度に調整し、コンマコーター等の公知の手法で、第1のフィルム上に均一な厚さに塗布し、その後、塗布された組成物を通常、40~130℃の温度で1~30分間乾燥することにより、第1のフィルム上に組成物の樹脂層を形成することによって、得られる。
【0060】
第1のフィルムとしては、従来公知のプラスチックフィルムを適宜用いることができ、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム、ポリアミドイミドフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等を用いることができる。キャリアフィルムの厚さについては特に制限はないが、一般に、10~150μmの範囲で適宜選択される。
【0061】
第1のフィルム上に本発明のエッチングレジスト組成物の樹脂層を形成した後、樹脂層の表面に塵が付着することを防ぐ等の目的で、さらに、樹脂層の表面に、剥離可能な第2のフィルムを積層することもできる。剥離可能な第2のフィルムとしては、例えば、ポリエチレンフィルムやポリテトラフルオロエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、表面処理した紙等を用いることができる。第2のフィルムとしては、第2のフィルムを剥離するときに、樹脂層と第1のフィルムとの接着力よりも小さいものであればよい。
【0062】
以下、実施例および比較例を示して本発明について具体的に説明するが、本発明が以下の実施例に限定されるものでないことは言うまでもない。
なお、他に特に但書が無い限り、示される「部」および「%」は質量に基づくものとする。
【実施例0063】
各種のエッチングレジスト組成物を調製するに先立ち、下記合成例1および2に示すとおりカルボキシル基含有ウレタン樹脂(1)および(2)を合成した。
【0064】
[合成例1]
感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂(1)の合成
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(T5650J;数平均分子量800;旭化成ケミカルズ社製)を2400g(3.0モル)、ジメチロールブタン酸を603g(4.5モル)、およびモノヒドロキシル化合物として2-ヒドロキシエチルアクリレートを238g(2.6モル)投入した。次に、芳香族系でないイソシアネート基を有する化合物としてイソホロンジイソシアネート1887g(8.5モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が50wt%となるようにカルビトールアセテートを添加して、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(1)の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分の酸価は51.0mgKOH/gであった。
【0065】
[合成例2]
非感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂(2)の合成
撹拌装置、温度計、コンデンサーを備えた反応容器に、2つ以上のアルコール性ヒドロキシル基を有する化合物として1,5-ペンタンジオールと1,6-ヘキサンジオールから誘導されるポリカーボネートジオール(旭化成ケミカルズ社製TJ5650J、数平均分子量800)を3600g(4.5モル)、ジメチロールブタン酸を814g(5.5モル)、および分子量調整剤(反応停止剤)としてn-ブタノールを118g(1.6モル)投入した。次に、芳香環を有しないイソシアネート化合物としてトリメチルヘキサメチレンジイソシアネート2009g(10.8モル)を投入し、撹拌しながら60℃まで加熱して停止し、反応容器内の温度が低下し始めた時点で再度加熱して80℃で撹拌を続け、赤外線吸収スペクトルでイソシアネート基の吸収スペクトル(2280cm-1)が消失したことを確認して反応を終了した。次いで、固形分が60wt%となるようにカルビトールアセテートを添加し、カルボキシル基含有ウレタン樹脂(2)の樹脂溶液を得た。得られた樹脂溶液の固形分の酸価は49.8mgKOH/gであった。
【0066】
次に、下記表1および2に記載の含有量に従って、各成分をそれぞれ含有し、攪拌機にて予備混合を行った後、3本ロールミルを用いて分散および混錬して、実施例1~15および比較例1~4のエッチングレジスト組成物をそれぞれ調製した。
【0067】
【0068】
【0069】
なお、上記表1および2中の各番号に対応する成分は下記のとおりである。
1)合成例1(表中は固形分表記)
2)KAYARAD UXE-3000;日本化薬社製(感光性カルボキシル基含有ウレタン樹脂)(表中は固形分表記)
3)合成例2(表中は固形分表記)
4)KAYARAD ZCR-1601H(ビフェニル型酸変性エポキシアクリレート樹脂(カルボキシル基含有樹脂);日本化薬社製(表中は固形分表記)
5)KAYARAD ZFR-1401H(ビスフェノールF型酸変性エポキシアクリレート樹脂(カルボキシル基含有樹脂));日本化薬社製(表中は固形分表記)
6)KAYARAD ZAR-2023H(ビスフェノールA型酸変性エポキシアクリレート樹脂(カルボキシル基含有樹脂);日本化薬社製(表中は固形分表記)
7)Omnirad 369;IGM RESINS社製
8)DPHA(ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート);東亞合成社製
9)LMP-100;富士タルク工業社製 5μm(D50体積%)
10)沈降性硫酸バリウム110;堺化学工業社製 0.6μm(D50体積%)、表面未処理品
11)PKHA(軟化点81℃;重量平均分子量(Mw)25,000);ハンツマン社製
12)PKHC(軟化点89℃;重量平均分子量(Mw)43,000);ハンツマン社製
13)PKFE(軟化点98℃;重量平均分子量(Mw)60,000);ハンツマン社製
14)カレンズMTPE1;昭和電工社製
15)KBM-503;信越化学工業社製
16)FASTOGEN BLUE FA5380(フタロシアニンブルー、C.I.Pigment Blue 15:3);DIC社製
17)KS-66;信越化学工業社製
18)有機溶剤(ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート);ダイセル社製
【0070】
[試験基板の作製]
以下の手順で試験基板を作製した。
得られた実施例1~15および比較例1~4のエッチングレジスト組成物を、スクリーン印刷法によって、大きさ110mm×160mm、厚さ1.8mmのソーダライムガラス基板上に、100mm×150mmの大きさで、かつ乾燥後の膜厚が40~50μmとなるように印刷した。
その後、80℃で30分間乾燥させて有機溶剤を蒸発させ、タックフリーの塗膜を形成させた。
次に、フォトマスクを通して選択的に活性エネルギー線により露光し、未露光部をアルカリ水溶液により現像してレジストパターンを形成し、熱処理を行った。現像液は、1%の炭酸ナトリウム水溶液で行った。
現像後、熱風循環式乾燥炉を用いて後熱処理を行うことにより、試験基板を作製した。なお、後のフッ酸エッチング耐性試験および剥離試験のため、この後熱処理は、各実施例および比較例の試験基板につき、120℃にて30分間処理したもの、および160℃にて60分間処理したもの、をそれぞれ作製した。
【0071】
[フッ酸エッチング耐性試験および剥離試験]
上記のとおり作製した各々の試験基板のフッ酸エッチング耐性を試験するために、これらを10%フッ酸エッチング液に浸漬して、それ以降10分ごとに塗膜の状態を観察し、塗膜へのエッチング液の染み込みにより、塗膜の一部に剥がれが見られるまでの時間を測定した。
次に、各々の試験基板の剥離性を試験するために、これらを液温50℃の2%苛性ソーダ水溶液に浸漬して、基材から塗膜が全て剥がれるまでの時間を測定した。
試験結果を下記表3および4に示す。また、評価基準の分類と、これを表す評価記号を、下記表5に示す。下記表3および4の総合評価に記載の評価記号は、フッ酸エッチング耐性試験と剥離試験で、各々、後熱処理120℃分にて30分間処理した場合、後熱処理160℃にて60分間処理した場合の4つの評価基準の内、該当する試験結果で、最も良くないものを示すものである。例えば、実施例1では、フッ酸エッチング耐性試験において、後熱処理条件が120℃30分の場合、試験結果は50分のため、評価記号は、「◎」または「〇」に該当し、後熱処理条件が160℃60分の場合、試験結果は120分のため、評価記号は、「◎◎」に該当する。この実施例1では、フッ酸エッチング耐性試験では、評価記号は、良くない試験結果であった後熱処理条件が120℃30分の場合の「◎」または「〇」となるが、最終的な評価記号は、剥離時間の結果と併せて決定する。実施例1の剥離試験は、後熱処理条件が120℃30分の場合、試験結果は3分のため、評価記号は、「〇」に該当し、後熱処理条件が160℃60分の場合、試験結果は10分のため、評価記号は、「〇」に該当する。以上、全ての試験結果(表3、実施例1の試験結果参照)から、実施例1の総合評価は、4つの評価基準の内、最も良くない「〇」となる。
【0072】
【0073】
【0074】