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特開2024-52567光配向用液晶配向剤、液晶配向膜、およびこれを用いた液晶素子
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024052567
(43)【公開日】2024-04-11
(54)【発明の名称】光配向用液晶配向剤、液晶配向膜、およびこれを用いた液晶素子
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/1337 20060101AFI20240404BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20240404BHJP
【FI】
G02F1/1337 525
C08G73/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023147485
(22)【出願日】2023-09-12
(31)【優先権主張番号】P 2022158530
(32)【優先日】2022-09-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小口 雄二郎
【テーマコード(参考)】
2H290
4J043
【Fターム(参考)】
2H290AA73
2H290BD01
2H290BF13
2H290BF24
2H290DA01
2H290DA03
4J043PA01
4J043PA04
4J043PB13
4J043QB31
4J043RA05
4J043RA34
4J043SA06
4J043SB02
4J043SB04
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA022
4J043UA121
4J043UA131
4J043UA381
4J043UB011
4J043VA011
4J043VA012
4J043XA16
4J043XB09
4J043YA06
4J043ZB23
(57)【要約】      (修正有)
【課題】表示不良の原因となる膜剥がれや削れが少なく、シール剤との密着性に優れ、かつ、光配向処理の露光エネルギーが少ない場合でも良好なコントラストを有する液晶表示素子を形成できる液晶配向膜および液晶配向剤を提供すること。
【解決手段】テトラカルボン酸誘導体とジアミン類と水酸基を2つ以上有するモノアミンとを反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤であり、テトラカルボン酸誘導体として式(I)で表される化合物を含む液晶配向剤。

式(I)において、*1、*1′、*2および*2′は結合手であり、それぞれ独立に水酸基等と結合し、*1と*1′の組および*2と*2′の組の少なくとも1つの組は同一の酸素原子と結合してもよく;Rb1、Rb2、Rb3、およびRb4は独立して水素原子またはメチル基であり、少なくとも1つはメチル基である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
テトラカルボン酸誘導体とジアミン類と水酸基を2つ以上有するモノアミンとを反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤であって、前記テトラカルボン酸誘導体として式(I)で表される化合物を含む液晶配向剤。

式(I)において、*1、*1′、*2および*2′は結合手であり、それぞれ独立に水酸基、塩素原子または炭素数1~6のアルコキシ基と結合し、*1と*1′の組および*2と*2′の組の少なくとも1つの組は同一の酸素原子と結合してもよく;
b1、Rb2、Rb3、およびRb4はそれぞれ独立して、水素原子、またはメチル基であり、少なくとも1つはメチル基である。
【請求項2】
水酸基を2つ以上有するモノアミンが下記式(Xa)~(Xf)から選ばれる少なくとも一つである、請求項1に記載の液晶配向剤。
式(Xa)、(Xb)において、Rは独立して、水素原子またはメチル基である。
【請求項3】
水酸基を2つ以上有するモノアミンが下記式(Xa-1)、(Xa-2)、(Xb-1)、(Xb-2)、(Xc-1)、(Xc-2)、(Xe)から選ばれる少なくとも一つである、請求項2に記載の液晶配向剤。

【請求項4】
さらに、添加剤を含む、請求項1に記載の液晶配向剤。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
【請求項6】
請求項5に記載の液晶配向膜を有する液晶素子。
【請求項7】
請求項1~4のいずれか1項に記載の液晶配向剤を基板に塗布する工程と、その基板を焼成する工程と、その基板に偏光紫外線を照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶配向剤、液晶配向膜およびこれを用いた液晶素子に関する。詳しくは、光配向方式の液晶配向膜(以降、光配向膜と略記することがある)を形成するための光配向用液晶配向剤(以降、液晶配向剤と略記することがある)、この液晶配向剤を用いて形成される光配向方式の液晶配向膜、そして、この液晶配向膜を有する液晶表示素子(以降、液晶素子と略記することがある)に関する。
【背景技術】
【0002】
素子内の液晶層の配向状態を制御または変調することで、素子内に入射した電磁波に屈折、散乱、反射等の光学現象を起こさせることができる液晶素子が知られている。具体的には、下記液晶表示素子の他に、液晶アンテナ、調光窓、光学補償材、可変移相器が知られている。
【0003】
液晶表示素子として、TN(Twisted Nematic)モード、STN(Super Twisted Nematic)モード、IPS(In-Plane Switching)モード、FFS(Fringe Field Switching)モード、垂直配向型のVA(Multi-domain Vertical Alignment)モード等、様々な駆動方式のものが知られている。これらの液晶表示素子は、テレビ、携帯電話等、各種電子機器の画像表示装置に応用されており、さらなる表示品位の向上を目指して開発が進められている。具体的には、液晶表示素子の性能の向上は、駆動方式、素子構造の改良のみならず、素子に使用される構成部材によっても達成される。そして、液晶表示素子に使用される構成部材のなかでも、特に液晶配向膜は表示品位に係わる重要な材料の1つであり、液晶表示素子の高品位化の要求に応えるべく、この液晶配向膜についても盛んに研究が進められている。
【0004】
ここで、液晶配向膜は、液晶表示素子の液晶層の両側に設けられた一対の基板上に、該液晶層に接して設けられ、液晶層を構成する液晶分子を、基板に対して一定の規則性を持って配向させる機能を有する。液晶配向性の高い液晶配向膜を用いることにより、コントラストが高く、残像特性が改善された液晶表示素子を実現することができる(例えば、特許文献1および2参照)。
【0005】
こうした液晶配向膜の形成には、現在、ポリアミック酸、可溶性のポリイミドまたはポリアミック酸エステルを有機溶剤に溶解させた溶液(ワニス)が主に用いられている。これらのワニスにより液晶配向膜を形成するには、ワニスを基板に塗布した後、加熱等により塗膜を固化してポリイミド系液晶配向膜を形成し、必要に応じて前述の表示モードに適する配向処理を施す。配向処理方法としては、布などで配向膜の表面を擦ってポリマー分子の方向を整えるラビング法と、配向膜に直線偏光の紫外線を照射することにより、ポリマー分子に光異性化や二量化等の光化学変化を起こさせて膜に異方性を付与する光配向法が知られており、このうち光配向法は、ラビング法に比べて配向の均一性が高く、また、非接触の配向処理法であるため膜に傷が付かないことや、発塵や静電気等の液晶表示素子の表示不良を発生させる原因を低減できる等の利点がある。
【0006】
こうした光配向法を用いた液晶配向膜として、例えば、特許文献1~5には、原料としてジアミノアゾベンゼン等を用い、光異性化の技術を応用することで、アンカリングエネルギーが大きく、液晶配向性が良好な光配向膜を得たことが記載されている。特許文献6には、光分解型の技術を応用することで、透明性が高く、液晶配向性が良好な光配向膜を得たことが記載されている。しかしながら、このような技術を適用された液晶配向膜は、パネル作成時に膜剥がれや削れが発生しやすく、生じた異物がパネルの表示品位を低下させるという問題があった。
【0007】
また、光配向法を用いた液晶配向膜を使用する液晶表示素子においては、液晶表示素子製造の能率を向上させるために、短い光配向処理時間でも、すなわち露光エネルギーが少ない光配向処理でも良好なコントラストを発現できる液晶配向膜を使用することが求められている。
【0008】
また、液晶表示素子においては、表示画面を大きくするために狭額縁化が進んでいる。狭額縁とするためには基板の端まで液晶配向膜を印刷して、その液晶配向膜上にシール剤を塗布する必要があり、シール剤との密着性が高い液晶配向膜が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010-197999号公報
【特許文献2】国際公開第2013/157463号
【特許文献3】特開2005-275364号公報
【特許文献4】特開2007-248637号公報
【特許文献5】国際公開第2015/016118号
【特許文献6】特開2012-155311号公報
【特許文献7】特開2013-235130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の課題は、液晶表示素子における表示不良の原因となる膜剥がれや削れが少なく、シール剤との密着性に優れ、かつ、光配向処理の露光エネルギーが従来よりも少ない場合でも良好なコントラストを有する液晶表示素子を形成できる液晶配向膜を提供すること、そのような液晶配向膜を形成できる液晶配向剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の末、式(I)で示される化合物と、水酸基を2つ以上有するモノアミンを光配向用液晶配向剤の原料として使用することにより、露光エネルギーに対する感度が高く、膜剥がれや削れが抑制され、シール剤との密着性に優れた、表示品位の高い液晶表示素子を与える液晶配向膜を形成できることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
[1] テトラカルボン酸誘導体とジアミン類と水酸基を2つ以上有するモノアミンとを反応させて得られるポリアミック酸またはその誘導体を含有する液晶配向剤であって、前記テトラカルボン酸誘導体として式(I)で表される化合物を含む光配向用液晶配向剤。

式(I)において、*1、*1′、*2および*2′は結合手であり、それぞれ独立に水酸基、塩素原子または炭素数1~6のアルコキシ基と結合し、*1と*1′の組および*2と*2′の組の少なくとも1つの組は同一の酸素原子と結合してもよく;
b1、Rb2、Rb3、およびRb4はそれぞれ独立して、水素原子、またはメチル基であり、少なくとも1つはメチル基である。
[2] 水酸基を2つ以上有するモノアミンが下記式(Xa)~(Xf)から選ばれる少なくとも一つである、[1]に記載の光配向用液晶配向剤。

式(Xa)、(Xb)において、Rは独立して、水素原子またはメチル基である。
[3] 水酸基を2つ以上有するモノアミンが下記式(Xa-1)、(Xa-2)、(Xb-1)、(Xb-2)、(Xc-1)、(Xc-2)、(Xe)から選ばれる少なくとも一つである、[2]に記載の光配向用液晶配向剤。

[4] さらに、添加剤を含む、[1]~[3]のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤。
[5] [1]~[4]のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤から形成される液晶配向膜。
[6] [5]に記載の液晶配向膜を有する液晶素子。
[7] [1]~[4]のいずれか1項に記載の光配向用液晶配向剤を基板に塗布する工程と、その基板を焼成する工程と、その基板に偏光紫外線を照射する工程とを含む、液晶配向膜の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明の光配向用液晶配向剤を使用することにより、露光エネルギーに対する感度が高く、膜剥がれや削れが生じにくく、高いシール密着性を示す液晶配向膜を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下において、本発明について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態や具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。本発明における「液晶配向剤」は、その膜を基板上に形成したとき、偏光紫外線を照射することで異方性を付与することができる液晶配向剤であり、本明細書中では単に「液晶配向剤」ということもあれば、「光配向用液晶配向剤」ということもある。また、本発明において「テトラカルボン酸誘導体」とは、テトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸ジエステルまたはテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物を指す。テトラカルボン酸ジエステルとテトラカルボン酸ジエステルジハロゲン化物をまとめて、テトラカルボン酸二無水物の誘導体と称することもある。また本発明においては、ジアミンおよびジヒドラジドを「ジアミン類」と称することもある。本明細書の化学式における*は結合手を表す。
【0015】
<本発明の光配向用液晶配向剤>
本発明の光配向用液晶配向剤は、式(I)で表される化合物の少なくとも1つを含むテトラカルボン酸誘導体とジアミン類と水酸基を2つ以上有するモノアミンとを反応させてなる、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体からなる群から選ばれる少なくとも1つのポリマーを含むことを特徴とする。該ポリマーのことを、本発明のポリマーということがある。本発明においてポリアミック酸誘導体とはポリイミド、部分ポリイミド、ポリアミック酸エステル、ポリアミック酸-ポリアミドコポリマー、およびポリアミドイミドを指す。

式(I)において、*1、*1′、*2および*2′は結合手であり、それぞれ独立に水酸基、塩素原子または炭素数1~6のアルコキシ基と結合し、*1と*1′の組および*2と*2′の組の少なくとも1つの組は同一の酸素原子と結合してもよく;
b1、Rb2、Rb3、およびRb4はそれぞれ独立して、水素原子、またはメチル基であり、少なくとも1つはメチル基である。
【0016】
<ポリマーの種類>
以下に、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体について詳細を説明する。
【0017】
ここで、ポリアミック酸は、式(AN)で表されるテトラカルボン酸二無水物と式(DI)で表されるジアミン類との重合反応により合成されるポリマーであり、式(PAA)で表される構成単位を有する。ポリアミック酸を含む液晶配向剤は、液晶配向膜を形成させる工程で加熱焼成すると、ポリアミック酸がイミド化され、式(PI)で表される構成単位を有するポリイミド液晶配向膜を形成することができる。


【0018】
式(AN)、式(PAA)、および式(PI)において、Xは4価の有機基である。式(DI)、式(PAA)、および式(PI)において、Xは2価の有機基である。Xにおける4価の有機基の好ましい範囲と具体例については、本明細書に記載のテトラカルボン酸二無水物の対応する構造を参照することができる。Xにおける2価の有機基の好ましい範囲と具体例については、本明細書に記載のジアミンまたはジヒドラジドの対応する構造を参照することができる。
【0019】
ポリアミック酸誘導体は、ポリアミック酸の一部分を他の原子または原子団に置き換えて特性を改変した化合物であり、特に液晶配向剤に用いる溶剤への溶解性を高くしたものであることが好ましい。このようなポリアミック酸誘導体としては、具体的には1)ポリアミック酸のすべてのアミノ基とカルボキシル基とが脱水閉環反応したポリイミド、2)部分的に脱水閉環反応した部分ポリイミド、3)ポリアミック酸のカルボキシル基がエステルに変換されたポリアミック酸エステル、4)テトラカルボン酸二無水物化合物に含まれる酸二無水物の一部を有機ジカルボン酸に置き換えて反応させて得られたポリアミック酸-ポリアミドコポリマー、さらに5)該ポリアミック酸-ポリアミドコポリマーの一部または全部を脱水閉環反応させたポリアミドイミドが挙げられる。これらの誘導体のうち、例えばポリイミドとしては、上記式(PI)で表される構成単位を有するものを挙げることができ、ポリアミック酸エステルとしては、下記式(PAE)で表される構成単位を有するものを挙げることができる。


式(PAE)において、Xは4価の有機基であり、Xは2価の有機基であり、Yは独立してアルキル基である。X、Xの好ましい範囲と具体例については、式(PAA)におけるX、Xについての記載を参照することができる。Yにおいては、炭素数1~6の直鎖または分岐鎖のアルキル基が好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、またはターシャリーブチル基がより好ましい。
【0020】
ポリアミック酸の合成に用いる、テトラカルボン酸二無水物およびジアミン類は、それぞれ1種類であっても2種類以上であってもよい。
【0021】
ポリアミック酸を、ポリアミック酸誘導体であるポリイミドとする場合には、得られたポリアミック酸溶液を、脱水剤である無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸などの酸無水物、および脱水閉環触媒であるトリエチルアミン、ピリジン、コリジンなどの三級アミンとともに、温度20~150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることができる。または、得られたポリアミック酸溶液から多量の貧溶剤(メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤やグリコール系溶剤)を用いてポリアミック酸を析出させ、析出させたポリアミック酸を、トルエン、キシレン等の溶剤中で、上記の脱水剤および脱水閉環触媒とともに、温度20~150℃でイミド化反応させることにより、ポリイミドを得ることもできる。
【0022】
前記イミド化反応において、脱水剤と脱水閉環触媒の割合は、0.1~10(モル比)であることが好ましい。脱水剤と脱水閉環触媒の合計使用量は、当該ポリアミック酸の合成に使用したテトラカルボン酸二無水物のモル量の合計に対して1.5~10倍モルであることが好ましい。このイミド化反応に用いる脱水剤、触媒量、反応温度および反応時間を調整することによって、イミド化の程度を制御することができ、これによりポリアミック酸の一部のみがイミド化した部分ポリイミドを得ることができる。得られたポリイミドは、反応に用いた溶剤と分離し、他の溶剤に再溶解させて液晶配向剤として使用することもできるし、または溶剤と分離することなく液晶配向剤として使用することもできる。
【0023】
ポリアミック酸エステルは、ポリアミック酸と水酸基含有化合物、ハロゲン化物、エポキシ基含有化合物等とを反応させることにより合成する方法や、テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルまたはテトラカルボン酸ジエステルジクロライドと、ジアミン類とを反応させることにより合成する方法により得ることができる。テトラカルボン酸二無水物から誘導されるテトラカルボン酸ジエステルは、例えばテトラカルボン酸二無水物を2当量のアルコールと反応させ開環させて得ることができ、テトラカルボン酸ジエステルジクロライドは、テトラカルボン酸ジエステルを2当量の塩素化剤(例えば塩化チオニルなど)と反応させることで得ることができる。なお、ポリアミック酸エステルは、アミック酸エステル構造のみを有していてもよく、アミック酸構造とアミック酸エステル構造とが併存する部分エステル化物であってもよい。
【0024】
本発明の光配向用液晶配向剤に用いられるポリアミック酸またはその誘導体は、ポリイミドの膜の形成に用いられる公知のポリアミック酸またはその誘導体と同様に製造することができる。
【0025】
本発明の光配向用液晶配向剤はこれらのポリアミック酸、ポリアミック酸エステルおよびこれらをイミド化して得られるポリイミドのうちの1種類のみを含んでいてもよいし、2種類以上含んでいてもよい。
【0026】
ポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)で、5,000~500,000であることが好ましく、5,000~50,000であることがより好ましい。ポリアミック酸またはその誘導体の分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法による測定から求めることができる。
【0027】
ポリアミック酸またはその誘導体は、多量の貧溶剤で沈殿させて得られる固形分をIR(赤外分光法)、NMR(核磁気共鳴分析)で分析することによりその存在を確認することができる。またKOHやNaOH等の強アルカリの水溶液による前記ポリアミック酸またはその誘導体の分解物の有機溶剤による抽出物をGC(ガスクロマトグラフィ)、HPLC(高速液体クロマトグラフィ)またはGC-MS(ガスクロマトグラフィ質量分析法)で分析することにより、使用されているモノマーを確認することができる。
【0028】
<水酸基を2つ以上有するモノアミン>
本発明に使用する水酸基を2つ以上有するモノアミンについて説明する。
本発明に使用する水酸基を2つ以上有するモノアミンは1種類であっても2種類以上混合して用いてもよい。
【0029】
水酸基を2つ以上有するモノアミンとしては、例えば下記式(Xa)~(Xf)で表されるモノアミンが挙げられる。
式(Xa)、(Xb)において、Rは独立して水素原子またはメチル基である。
【0030】
式(Xa)~(Xf)で表されるモノアミンについて詳しくは、下記式(Xa-1)、(Xa-2)、(Xb-1)、(Xb-2)、(Xc-1)、(Xc-2)が挙げられる。

【0031】
式(Xa)~(Xf)で表されるモノアミンを用いることで、液晶表示素子として良好なコントラストを維持し、かつ膜の硬度およびシール密着性が良好な配向膜を得ることができる。これらの中でも、式(Xd)または式(Xe)が好ましく、式(Xe)が特に好ましい。
【0032】
本発明のポリマーは、式(I)で表される化合物の少なくとも1つを含むテトラカルボン酸誘導体とジアミン類と水酸基を2つ以上有するモノアミンとを反応させて得られた、ポリアミック酸およびその誘導体である。水酸基を2つ以上有するモノアミンは、末端停止剤として使用する。
本発明のポリマーは、例えば以下の手順により得ることができる。初めにテトラカルボン酸誘導体とジアミン類を反応させる。その後、水酸基を2つ以上有するモノアミンを加えてテトラカルボン酸誘導体の未反応箇所と反応させることにより末端封止を形成させる。他にも、テトラカルボン酸誘導体とジアミン類と水酸基を2つ以上有するモノアミンを同時に反応させて製造してもよいし、初めにテトラカルボン酸誘導体と水酸基を2つ以上有するモノアミンとを反応させ、その後ジアミン類を反応させて製造してもよい。
ジアミン類の総仕込み量はテトラカルボン酸誘導体の合計1モルに対して、0.80~0.99モルとすることが好ましい。水酸基を2つ以上有するモノアミンの総仕込み量はテトラカルボン酸誘導体の合計1モルに対して、0.02~0.40とすることが好ましい。
【0033】
<式(I)で表される化合物>
本発明のポリマーの原料に使用される、式(I)で表される化合物について説明する。
式(I)において、*1、*1′、*2および*2′は結合手であり、それぞれ独立に水酸基、塩素原子または炭素数1~6のアルコキシ基と結合し、*1と*1′の組および*2と*2′の組の少なくとも1つの組は同一の酸素原子と結合してもよく;
b1、Rb2、Rb3、およびRb4はそれぞれ独立して、水素原子、またはメチル基であり、少なくとも1つはメチル基である。
【0034】
炭素数1~6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、またはターシャリーブトキシ基が挙げられる。イミド化のしやすさから、メトキシ基が好ましい。
【0035】
式(I)には、4つの結合手全てが水酸基、塩素原子、炭素数1~6のアルコキシ基のいずれかと結合する形態、*1と*1′の組および*2と*2′の組のどちらか一方は同一の酸素原子と結合し、残りの組の2つの結合手は水酸基、塩素原子、炭素数1~6のアルコキシ基のいずれかと結合する形態、ならびに、*1と*1′の組および*2と*2′の組の両方が、それぞれ同一の酸素原子と結合する形態が含まれる。この中で、4つの結合手全てが水酸基、塩素原子、炭素数1~6のアルコキシ基のいずれかと結合する形態、ならびに、*1と*1′の組および*2と*2′の組の両方が、それぞれ同一の酸素原子と結合する形態が好ましい。
【0036】
露光エネルギーに対する感度の高い液晶配向膜を得る観点から、Rb1およびRb4がメチル基であり、Rb2およびRb3が水素原子であることが好ましい。好ましい例を以下に挙げる。
【0037】
【0038】
本発明のポリマーにおいて、式(I)で表される化合物は使用されるテトラカルボン酸誘導体全量中50モル%以上使用することが好ましい。
【0039】
<その他のテトラカルボン酸誘導体>
【0040】
本発明のポリマーには、式(I)で表される化合物以外のテトラカルボン酸誘導体を使用してもよい。以下に、式(I)で表される化合物と併用してもよいテトラカルボン酸二無水物の例を挙げる。これらのテトラカルボン酸二無水物をテトラカルボン酸ジエステルやテトラカルボン酸ジエステルジクロライドに誘導して、ポリマーの原料に用いてもよい。
【0041】
[式(AN-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-1)において、G11は単結合、炭素数1~12のアルキレン基、1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、または式(G11-1)である。R11は独立して、水素原子またはメチル基である。


式(G11-1)において、Xは独立して、単結合、-O-、-S-、または-NR-であり、Rは水素原子、または炭素数1~4のアルキル基であり、nは独立して1~5の整数であり、mは1~3の整数であり、環を構成するいずれかの炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合可能な炭素のいずれかと結合できることを示す。
【0042】
式(AN-1)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例を下記に挙げる。


式(AN-1-2)および(AN-1-5)において、mはそれぞれ独立して、1~12の整数である。
【0043】
[式(AN-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-2)において、G11は単結合、炭素数1~12のアルキレン基、1,4-フェニレン基、または1,4-シクロヘキシレン基である。X11は単結合または-CH-である。G12は独立して、下記の3価の基のいずれかである。


12が>N-であるとき、G11は単結合および-CH-であることはなく、X11は単結合であることはない。
【0044】
式(AN-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例を下記に挙げる。


式(AN-2-2)において、mは1~12の整数である。
【0045】
[式(AN-3)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-3)において、環A11はシクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0046】
式(AN-3)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-3-1)、式(AN-3-2)で表される化合物を挙げることができる。

【0047】
[式(AN-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-4)において、G13は単結合、-(CH-、-O-、-S-、-C(CH-、-SO-、-CO-、-C(CF-、または下記式(G13-1)で表される2価の基であり、mは1~12の整数である。環A11はそれぞれ独立してシクロヘキサン環またはベンゼン環である。G13は環A11の任意の位置に結合してよい。


式(G13-1)において、G13aおよびG13bはそれぞれ独立して、単結合、-O-、-CONH-、または-NHCO-で表される2価の基である。フェニレン基は、1,4-フェニレン基または1,3-フェニレン基であることが好ましい。
【0048】
式(AN-4)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-4-1)~式(AN-4-31)で表される化合物を挙げることができる。



式(AN-4-17)において、mは1~12の整数である。
【0049】


【0050】
[式(AN-5)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-5)において、R11は独立して水素原子またはメチル基である。2つのR11のうちベンゼン環におけるR11は、ベンゼン環の置換可能な位置のいずれかに結合する。
【0051】
式(AN-5)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-5-1)~式(AN-5-3)で表される化合物を挙げることができる。

【0052】
[式(AN-6)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-6)において、X11は独立して単結合または-CH-である。X12は-CH-、-CHCH-または-CH=CH-である。nは1または2である。nが2であるとき、2つのX12は互いに同一であっても異なっていてもよい。
【0053】
式(AN-6)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-6-1)~式(AN-6-12)で表される化合物を挙げることができる。

【0054】
[式(AN-7)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-7)において、X11は単結合または-CH-である。
【0055】
式(AN-7)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-7-1)、式(AN-7-2)で表される化合物を挙げることができる。

【0056】
[式(AN-8)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-8)において、X11は単結合または-CH-である。R12は水素原子、メチル基、エチル基、またはフェニル基である。環A12はシクロヘキサン環またはシクロヘキセン環である。
【0057】
式(AN-8)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-8-1)、式(AN-8-2)で表される化合物を挙げることができる。

【0058】
[式(AN-9)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-9)において、rはそれぞれ独立して、0または1である。
【0059】
式(AN-9)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-9-1)~式(AN-9-3)で表される化合物を挙げることができる。

【0060】
[式(AN-10-1)および式(AN-10-2)で表されるテトラカルボン酸二無水物]

【0061】
[式(AN-11)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-11)において、環A11は独立して、シクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0062】
式(AN-11)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-11-1)~式(AN-11-3)で表される化合物を挙げることができる。

【0063】
[式(AN-12)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-12)において、環A11はそれぞれ独立して、シクロヘキサン環またはベンゼン環である。
【0064】
式(AN-12)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-12-1)~式(AN-12-3)で表される化合物を挙げることができる。

【0065】
[式(AN-15)で表されるテトラカルボン酸二無水物]


式(AN-15)において、wは1~10の整数である。
【0066】
式(AN-15)で表されるテトラカルボン酸二無水物の例としては、下記の式(AN-15-1)~式(AN-15-3)で表される化合物を挙げることができる。

【0067】
[式(AN-16-1)~式(AN-16-19)で表されるテトラカルボン酸二無水物]
上記以外のテトラカルボン酸二無水物として、下記の式(AN-16-1)~式(AN-16-19)で表される化合物が挙げられる。


【0068】
<式(DI-1)~式(DI-17)、式(DIH-1)~式(DIH-3)で表されるジアミン類>
本発明のポリマーの原料に使用される、ジアミン類は公知のジアミン類を使用することができる。具体的な例として、式(DI-1)~式(DI-17)、式(DIH-1)~式(DIH-3)で表されるジアミン類について説明する。
【0069】

【0070】
式(DI-1)において、G20は、炭素数1~12のアルキレンまたは式(DI-1-a)で表される基である。G20が炭素数1~12のアルキレンであるとき、-CH-の少なくとも1つは-NH-または-O-に置き換えられてもよいがこれらが隣り合うことはなく、-CH-の少なくとも1つの水素原子は水酸基またはメチル基で置換されてもよい。


式(DI-1-a)において、vはそれぞれ独立して、1~6の整数である。
【0071】
式(DI-3)、式(DI-6)および式(DI-7)において、G21は独立して、単結合、-NH-、-NCH-、-O-、-S-、-S-S-、-SO-、-CO-、-COO-、-CONCH-、-CONH-、-C(CH-、-C(CF-、-(CH-、-O-(CH-O-、-N(CH)-(CH-N(CH)-、-(O-C-O-、-O-CH-C(CF-CH-O-、-O-CO-(CH-CO-O-、-CO-O-(CH-O-CO-、-(CH-NH-(CH-、-CO-(CH-NH-(CH-、-(NH-(CH-NH-、-CO-C-(NH-C-CO-、または-S-(CH-S-であり、mは独立して、1~12の整数であり、kは1~5の整数であり、nは1または2である。
【0072】
式(DI-4)において、sは独立して、0~2の整数である。
【0073】
式(DI-5)において、G33は単結合、-NH-、-NCH-、-O-、-S-、-S-S-、-SO-、-CO-、-COO-、-CONCH-、-CONH-、-C(CH-、-C(CF-、-(CH-、-O-(CH-O-、-(O-C-O-、-O-CH-C(CF-CH-O-、-O-CO-(CH-CO-O-、-CO-O-(CH-O-CO-、-(CH-NH-(CH-、-CO-(CH-NH-(CH-、-CO-C-(NH-C-CO-、または-S-(CH-S-、-N(Boc)-(CH-、-(CH-N(Boc)-CONH-(CH-、-(CH-N(Boc)-(CH-、または下記式(DI-5-a)もしくは下記式(DI-5-b)で表される基であり、mは独立して、1~12の整数であり、kは1~5の整数であり、eは2~10の整数であり、nは1または2である。Bocはターシャリーブトキシカルボニル基である。
【0074】
式(DI-5-a)において、qはそれぞれ独立して、0~6の整数である。R44は水素原子、水酸基、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数1~6のアルコキシ基である。
【0075】
式(DI-6)および式(DI-7)において、G22は独立して、単結合、-O-、-S-、-CO-、-C(CH-、-C(CF-、または炭素数1~10のアルキレン基である。
【0076】
式(DI-2)~式(DI-7)中のシクロヘキサン環およびベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~3のアルキル基、メトキシ基、水酸基、トリフルオロメチル基、カルボキシ基、カルバモイル基、フェニルアミノ基、フェニル基、またはベンジル基で置換されてもよく、加えて式(DI-4)においては、ベンゼン環の少なくとも1つの水素原子は、下記式(DI-4-a)~式(DI-4-i)のいずれかで表される基の群から選ばれる1つで置換されてもよく、式(DI-5)においては、G33が単結合の時にはベンゼン環の少なくとも1つの水素原子はNHBocまたはN(Boc)で置換されてもよい。
【0077】


式(DI-4-a)および式(DI-4-b)において、R20は独立して、水素原子またはメチル基である。式(DI-4-f)および式(DI-4-g)において、mはそれぞれ独立して、0~12の整数であり、Bocはターシャリーブトキシカルボニル基である。
【0078】
式(DI-2)~式(DI-7)において環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。


式(DI-11)において、rは0または1である。式(DI-8)~式(DI-11)において、環に結合するアミノ基の結合位置は、任意の位置である。
【0079】


式(DI-12)において、R21およびR22は、それぞれ独立して、炭素数1~3のアルキル基またはフェニル基であり、G23は独立して、炭素数1~6のアルキレン基、フェニレン基またはアルキル基で置換されたフェニレン基であり、wは1~10の整数である。
【0080】
式(DI-13)において、R23は独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基または塩素原子であり、pおよびqはそれぞれ独立して、0~4の整数である。
【0081】
式(DI-14)において、環Bは単環の複素環式芳香族基であり、R24は水素原子、フッ素原子、塩素原子、炭素数1~6のアルキル基、アルコキシ基、アルケニル基、またはアルキニル基であり、qは0~4の整数である。qが2以上であるとき、複数のR24は互いに同一であっても異なっていてもよい。式(DI-15)において、環Cは複素環式芳香族基または複素環式脂肪族基である。式(DI-16)において、G24は単結合、炭素数2~6のアルキレン基または1,4-フェニレン基であり、rは0または1である。
【0082】
式(DI-17)において、R23は独立して、炭素数1~5のアルキル基、炭素数1~5のアルコキシ基または塩素原子であり、pは独立して、0~4の整数であり、R25は独立して、水素原子、炭素数1~4のアルキル基またはターシャリーブトキシカルボニル基であり、Zは炭素数1~5のアルキレンを含む2価の基である。炭素数1~5のアルキレンにおいて任意の位置、任意の数のCHは、NHに置き換えられてもよいが、NHが隣り合うことはない。
【0083】
25における炭素数1~4のアルキル基の好ましい例はメチルである。Zにおける炭素数1~5のアルキレンを含む2価の基の好ましい例は、-(CH-、-Ph-(CH-Ph-であり、mは1~5の整数である。これらの中でも-(CH-が好ましく、-(CH2-(エチレン)がさらに好ましい。ここで、Phは1,4-フェニレンである。
【0084】
式(DI-13)~式(DI-17)において、環を構成する炭素原子に結合位置が固定されていない基は、その環における結合位置が任意であることを示す。両末端の環におけるアミノ基の結合位置は任意でよいが、パラ位およびメタ位が好ましく、パラ位がより好ましい。
【0085】


式(DIH-1)において、G25は単結合、炭素数1~20のアルキレン基、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-C(CH-、または-C(CF-である。
【0086】
式(DIH-2)において、環Dはシクロヘキシレン基、フェニレン基またはナフチレン基であり、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基、またはフェニル基で置換されてもよい。
【0087】
式(DIH-3)において、環Eはそれぞれ独立して、シクロヘキシレン基またはフェニレン基であり、この基の少なくとも1つの水素原子はメチル基、エチル基、またはフェニル基で置換されてもよい。2つの環Eは互いに同一であっても異なっていてもよい。Yは単結合、炭素数1~20のアルキレン基、-CO-、-O-、-S-、-SO-、-C(CH-、または-C(CF-である。式(DIH-2)および式(DIH-3)において、環に結合する-ヒドラジド基の結合位置は、任意の位置である。
【0088】
式(DI-1)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-1-1)~式(DI-1-9)に示す。


式(DI-1-7)および式(DI-1-8)において、kはそれぞれ独立して、1~3の整数である。式(DI-1-9)において、vはそれぞれ独立して、1~6の整数である。
【0089】
式(DI-2)~式(DI-3)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-2-1)、式(DI-2-2)、式(DI-3-1)~式(DI-3-3)に示す。

【0090】
式(DI-4)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-4-1)~式(DI-4-27)に示す。




【0091】


式(DI-4-20)および(DI-4-21)において、mはそれぞれ独立して、1~12の整数である。
【0092】
【0093】
式(DI-5)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-5-1)~式(DI-5-29)、式(DI-5-31)~式(DI-5-38)、式(DI-5-40)、式(DI-5-41)、および式(DI-5-44)~式(DI-5-50)に示す。


式(DI-5-1)において、mは1~12の整数である。
【0094】


式(DI-5-12)および式(DI-5-13)において、mはそれぞれ独立して、1~12の整数である。
【0095】


式(DI-5-16)において、vは1~6の整数である。
【0096】

【0097】


式(DI-5-35)~式(DI-5-37)において、mはそれぞれ独立して1~12の整数であり、式(DI-5-38)において、kはそれぞれ独立して1~5の整数であり、式(DI-5-40)において、nは1または2である。
【0098】

式(DI-5-44)において、eは2~10の整数であり、式(DI-5-45)においてR43は独立して、水素原子、(ターシャリーブトキシカルボニル)アミノ基、またはビス(ターシャリーブトキシカルボニル)アミノ基である。
【0099】



【0100】
式(DI-6)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-6-1)~式(DI-6-7)に示す。

【0101】
式(DI-7)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-7-1)~式(DI-7-11)に示す。


式(DI-7-3)および式(DI-7-4)において、mはそれぞれ独立して、1~12の整数であり、nは独立して、1または2である。
【0102】


【0103】
式(DI-8)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-8-1)~式(DI-8-4)に示す。

【0104】
式(DI-9)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-9-1)~式(DI-9-3)に示す。

【0105】
式(DI-10)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-10-1)、式(DI-10-2)に示す。

【0106】
式(DI-11)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-11-1)~式(DI-11-3)に示す。

【0107】
式(DI-12)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-12-1)に示す。

【0108】
式(DI-13)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-13-1)~式(DI-13-13)に示す。



【0109】
式(DI-14)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-14-1)~式(DI-14-9)に示す。

【0110】
式(DI-15)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-15-1)~式(DI-15-12)に示す。


【0111】
式(DI-16)で表されるジアミンの例を以下の式(DI-16-1)に示す。

【0112】
式(DI-17)で表されるジアミンの例を以下式(DI-17-1)~式(DI-17-4)に示す。


式(DI-17-1)において、kは1~5の整数である。式(DI-17-2)~式(DI-17-3)において、eはそれぞれ独立して、1~10の整数であり、Bocはターシャリーブトキシカルボニル基である。式(DI-17-4)において、mはそれぞれ独立して1~5の整数であり、kは、1または2である。
【0113】
式(DIH-1)~式(DIH-3)のいずれかで表される化合物の例を以下の式(DIH-1-1)、式(DIH-1-2)、式(DIH-2-1)~式(DIH-2-3)、式(DIH-3-1)~式(DIH-3-6)に示す。


式(DIH-1-2)において、mは1~12の整数である。
【0114】


【0115】
上記ジアミン類において、後述する液晶配向膜の各特性を向上させる好適な材料について述べる。残像特性を向上させることを重視する場合には、式(DI-5)、式(DI-13)、式(DI-17)で表される化合物を用いるのが好ましい。式(DI-5)で表される化合物の中でも、m=2で表される化合物がより好ましい。式(DI-13)で表される化合物の中でも、式(DI-13-1)で表される化合物を用いるのが好ましい。式(DI-17)で表される化合物の中でも、式(DI-17-1)で表される化合物を用いるのが好ましく、k=2がより好ましい。
【0116】
本発明の光配向用液晶配向剤は、本発明のポリマー1種類で構成されていてもよく、本発明のポリマーおよび、本発明以外のポリマーが混合されていてもよい。なお、本明細書において、前記のポリマー1種類で構成された液晶配向剤を単層型液晶配向剤と称することがある。前記のポリマーを2種以上混合する液晶配向剤をブレンド型液晶配向剤と称することがある。ブレンド型液晶配向剤は、特にVHR信頼性やその他の電気的特性を重視する場合に用いられる。
【0117】
ブレンド型液晶配向剤に用いる本発明以外のポリマーとしては、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体のいずれか1つ以上が好ましい。本発明以外のポリマーとしては、ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体に関しては、原料組成物として式(I)で表される化合物を含まないこと以外は、上記の本発明のポリマーの説明を参照することができる。
【0118】
2成分のポリマーを用いる場合、例えば、一方には液晶配向能に優れた性能を有するポリマーを選択し、他方には液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマーを選択する態様があり、液晶配向性と電気特性のバランスの良好な液晶配向剤を得るために好適である。
【0119】
この場合、それぞれのポリマーの構造や分子量を制御することにより、これらのポリマーを溶剤に溶解した液晶配向剤を、後述するように、基板に塗布し、予備乾燥を行って薄膜を形成する過程で、液晶配向能に優れた性能を有するポリマーを薄膜の上層に、液晶表示素子の電気的特性を改善するのに優れた性能を有するポリマーを薄膜の下層に偏析させることができる。これには、混在するポリマーにおいて、表面エネルギーの小さなポリマーが上層に、表面エネルギーの大きなポリマーが下層に分離する現象を応用することができる。このような層分離の確認は、形成された液晶配向膜の表面エネルギーが、上層に偏析させることを意図したポリマーのみを含有する液晶配向剤によって形成された膜の表面エネルギーと同じか、または近い値であることで確認することができる。
【0120】
層分離を発現させる方法として、上層に偏析させたいポリマーの分子量を小さくすることも挙げられる。
【0121】
ポリアミック酸およびポリアミック酸誘導体の混合物からなる液晶配向剤では、上層に偏析させたいポリマーをポリアミック酸エステルまたはポリイミドとすることで層分離を発現させることもできる。
【0122】
本発明のポリマーは、前記薄膜の上層に偏析するポリマーの原料として用いられてもよく、薄膜の下層に偏析するポリマーの原料として用いられてもよくまた、両方のポリマーの原料として用いられてもよいが、薄膜の上層に偏析するポリマーの原料として用いることがより好ましい。
【0123】
薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体、および薄膜の下層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体の合計量に対する薄膜の上層に偏析するポリアミック酸またはその誘導体の割合としては、5重量%~80重量%が好ましく、20重量%~80重量%がさらに好ましい。
【0124】
また、本発明の光配向用液晶配向剤は、液晶配向剤の塗布性や前記ポリアミック酸またはその誘導体の濃度の調整の観点から、溶剤をさらに含有していてもよい。前記溶剤は、高分子成分を溶解する能力を持った溶剤であれば格別制限なく適用可能である。前記溶剤は、ポリアミック酸、可溶性ポリイミド等の高分子成分の製造工程や用途面で通常使用されている溶剤を広く含み、使用目的に応じて、適宜選択できる。前記溶剤は1種でも2種以上の混合溶剤であってもよい。
【0125】
溶剤としては、前記ポリアミック酸またはその誘導体の親溶剤や、塗布性改善を目的とした他の溶剤が挙げられる。
【0126】
ポリアミック酸またはその誘導体に対し親溶剤である非プロトン性極性有機溶剤としては、N-メチル-2-ピロリドン、N-エチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、N-メチルカプロラクタム、N-メチルプロピオンアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジエチルホルムアミド、ジエチルアセトアミド、N,N-ジメチルイソブチルアミド、γ-ブチロラクトン、およびγ-バレロラクトン等が挙げられる。これらの中で、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルイミダゾリジノン、γ-ブチロラクトン、またはγ-バレロラクトンが好ましい。
【0127】
塗布性改善等を目的とした他の溶剤の例としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル等のエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル等のジエチレングリコールジアルキルエーテルが挙げられる。また、プロピレングリコールモノメチルエーテル、1-ブトキシ-2-プロパノール等のプロピレングリコールモノアルキルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のジプロピレングリコールモノアルキルエーテル、トリエチレングリコールモノアルキルエーテル、ブチルセロソルブアセテート、フェニルアセテート、およびこれらアセテート類等のエステル化合物が挙げられる。さらにマロン酸ジエチル等のマロン酸ジアルキル、乳酸アルキル、ジイソブチルケトン、ジアセトンアルコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、4-メチル-2-ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、テトラリン、およびイソホロンが挙げられる。
【0128】
これらの中で、ジイソブチルケトン、4-メチル-2-ペンタノール、ジイソブチルカルビノール、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、1-ブトキシ-2-プロパノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、またはブチルセロソルブアセテートが好ましい。
【0129】
本発明の光配向用液晶配向剤における固形分濃度は特に限定されるものではなく、下記の種々の塗布法に合わせ最適な値を選べばよい。通常、塗布時のムラやピンホール等を抑えるため、ワニス重量に対し、好ましくは0.1~30重量%、より好ましくは1~10重量%である。
【0130】
本発明の光配向用液晶配向剤の粘度は、塗布する方法、ポリアミック酸またはその誘導体の濃度、使用するポリアミック酸またはその誘導体の種類、溶剤の種類と割合によって好ましい範囲が異なる。例えば、印刷機による塗布の場合は5~100mPa・s(より好ましくは10~80mPa・s)である。5mPa・s以上であれば十分な膜厚が得られやすくなり、100mPa・s以下であれば印刷ムラを抑えやすくなる。スピンコートによる塗布の場合は5~200mPa・s(より好ましくは10~100mPa・s)が適している。インクジェット塗布装置を用いて塗布する場合は5~50mPa・s(より好ましくは5~20mPa・s)が適している。液晶配向剤の粘度は回転粘度測定法により測定され、例えば回転粘度計(東機産業(株)製TVE-20L形粘度計)を用いて測定(測定温度:25℃)される。
【0131】
本発明の光配向用液晶配向剤は各種添加剤をさらに含有していてもよい。各種添加剤は、液晶配向膜の各種特性を向上させるために、それぞれの目的に応じて選択して使用することができる。以下に例を示す。
【0132】
<アルケニル置換ナジイミド化合物>
例えば、本発明の光配向用液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、アルケニル置換ナジイミド化合物をさらに含有していてもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物は1種で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。アルケニル置換ナジイミド化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して1~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましい。アルケニル置換ナジイミド化合物は、本発明で用いられるポリアミック酸またはその誘導体を溶解する溶剤に溶解させることができる化合物であることが好ましい。好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物には、特開2008-096979号公報、特開2009-109987号公報、特開2013-242526号公報に開示されているアルケニル置換ナジイミド化合物が挙げられる。特に好ましいアルケニル置換ナジイミド化合物としては、ビス{4-(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)フェニル}メタン、N,N’-m-キシリレン-ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)、またはN,N’-ヘキサメチレン-ビス(アリルビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2,3-ジカルボキシイミド)が挙げられる。
【0133】
<ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物>
例えば、本発明の光配向用液晶配向剤は、液晶表示素子の電気特性を長期に安定させる目的から、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物をさらに含有していてもよい。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。なお、ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物にはアルケニル置換ナジイミド化合物は含まれない。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物には、好ましいものとして、N,N’-メチレンビスアクリルアミド、N,N’-ジヒドロキシエチレン-ビスアクリルアミド、エチレンビスアクリレート、4,4’-メチレンビス(N,N-ジヒドロキシエチレンアクリレートアニリン)、シアヌル酸トリアリル、他に、特開2009-109987号公報、特開2013-242526号公報、国際公開第2014/119682号、国際公開第2015/152014号に開示されているラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物が挙げられる。ラジカル重合性不飽和二重結合を有する化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して1~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましい。
【0134】
<オキサジン化合物>
例えば、本発明の光配向用液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサジン化合物をさらに含有していてもよい。オキサジン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサジン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1~50重量%であることが好ましく、1~40重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましい。
【0135】
オキサジン化合物は、ポリアミック酸またはその誘導体を溶解させる溶剤に可溶であり、加えて、開環重合性を有するオキサジン化合物が好ましい。好ましいオキサジン化合物には、式(OX-3-1)、式(OX-3-9)、または式(OX-3-10)で表されるオキサジン化合物、他に、特開2007-286597号公報、特開2013-242526号公報に開示されているオキサジン化合物が挙げられる。

【0136】
<オキサゾリン化合物>
例えば、本発明の液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、オキサゾリン化合物をさらに含有していてもよい。オキサゾリン化合物はオキサゾリン構造を有する化合物である。オキサゾリン化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。オキサゾリン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1~50重量%であることが好ましく、1~40重量%であることがより好ましく、1~20重量%であることがさらに好ましい。好ましいオキサゾリン化合物には、特開2010-054872号公報、特開2013-242526号公報に開示されているオキサゾリン化合物が挙げられる。より好ましくは、1,3-ビス(4,5-ジヒドロ-2-オキサゾリル)ベンゼンが挙げられる。
【0137】
<エポキシ化合物>
例えば、本発明の光配向用液晶配向剤は、液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的、膜の硬度を向上させる目的、またはシール剤との密着性を向上させる目的から、エポキシ化合物をさらに含有していてもよい。エポキシ化合物は1種の化合物であってもよいし、2種以上の化合物であってもよい。エポキシ化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1~50重量%であることが好ましく、1~20重量%であることがより好ましく、1~10重量%であることがさらに好ましい。
【0138】
エポキシ化合物としては、分子内にエポキシ環を1つまたは2つ以上有する種々の化合物を用いることができる。
膜の硬度を向上させる目的、またはシール剤との密着性を向上させる目的のためには、分子内にエポキシ環を2つ以上有する化合物が好ましく、3つもしくは4つ有する化合物がより好ましい。
【0139】
エポキシ化合物としては、特開2009-175715号公報、特開2013-242526号公報、特開2016-170409号公報、国際公開第2017/217413号に開示されているエポキシ化合物が挙げられる。好ましいエポキシ化合物としては、N,N,N’,N’-テトラグリシジル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、(3,3‘,4,4’-ジエポキシ)ビシクロヘキシル、1,4-ブタンジオールグリシジルエーテル、イソシアヌル酸トリス(2,3-エポキシプロピル)、1,3-ビス(N,N-ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、またはN,N,N’,N‘-テトラグリシジル-m-キシレンジアミンが挙げられる。より好ましくは、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランが挙げられる。上記の他、エポキシ環を有するオリゴマーや重合体を添加することもできる。エポキシ環を有するオリゴマーや重合体は特開2013-242526号公報に開示されているオリゴマーや重合体を使用することができる。
【0140】
<シラン化合物>
例えば、本発明の光配向用液晶配向剤は、基板およびシール剤との密着性を向上させる目的から、シラン化合物をさらに含有していてもよい。シラン化合物の含有量は、上記の目的から、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.1~30重量%であることが好ましく、0.5~20重量%であることがより好ましく、0.5~10重量%であることがさらに好ましい。
【0141】
シラン化合物としては、特開2013-242526号公報、特開2015-212807号公報、特開2018-173545号公報、国際公開第2018/181566号に開示されているシランカップリング剤を使用することができる。好ましいシランカップリング剤として、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、パラアミノフェニルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、または3-ウレイドプロピルトリエトキシシランが挙げられる。
【0142】
上記記載の添加剤の他、液晶配向膜の強度を上げる目的、または液晶表示素子における電気特性を長期に安定させる目的から、シクロカーボネート基を持つ化合物、ヒドロキシアルキルアミド部位や水酸基を持つ化合物を添加することもできる。具体的化合物としては、特開2016-118753号公報、国際公開第2017/110976号に開示されている化合物が挙げられる。好ましい化合物としては、以下の式(HD-1)~式(HD-4)が挙げられる。これらの化合物は、ポリアミック酸またはその誘導体に対して0.5~50重量%であることが好ましく、1~30重量%であることがより好ましく、1~10重量%であることがさらに好ましい。

【0143】
また、帯電防止の向上を必要とするときは帯電防止剤、低温でイミド化を進行させる場合はイミド化触媒を使用することもできる。イミド化触媒としては、特開2013-242526号公報に開示されているイミド化触媒が挙げられる。
【0144】
<液晶配向膜>
【0145】
本発明の液晶配向膜は、前述した本発明の光配向用液晶配向剤の塗膜を加熱することによって形成される膜である。本発明の液晶配向膜は、液晶配向剤から液晶配向膜を作製する通常の方法によって得ることができる。例えば本発明の液晶配向膜は、本発明の光配向用液晶配向剤の塗膜を形成する工程と、加熱乾燥する工程と、加熱焼成する工程を経ることによって得ることができる。本発明の液晶配向膜については、異方性を付与するための処理が行われる。処理としてはラビング処理して異方性を付与することも可能であるが、光照射により異方性を付与することが好ましい。
【0146】
以下において、本発明の光配向用液晶配向剤による液晶配向膜の形成方法について説明する。
【0147】
塗膜は、通常の液晶配向膜の作製と同様に、液晶表示素子における基板に本発明の光配向用液晶配向剤を塗布することによって形成することができる。基板には、ITO(IndiumTinOxide)、IZO(In-ZnO)、IGZO(In-Ga-ZnO)電極等の電極やカラーフィルタ等が設けられていてもよいガラス製、窒化ケイ素製、アクリル製、ポリカーボネイト製、ポリイミド製等の基板が挙げられる。
【0148】
液晶配向剤を基板に塗布する方法としてはスピンナー法、印刷法、ディッピング法、滴下法、インクジェット法等が一般に知られている。これらの方法は本発明においても同様に適用可能である。
【0149】
加熱乾燥工程は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。加熱乾燥工程は溶剤の蒸発が可能な範囲内の温度で実施することが好ましく、加熱焼成工程における温度に対して比較的低い温度で実施することがより好ましい。具体的には加熱乾燥温度は30℃~150℃の範囲であること、さらには50℃~120℃の範囲であることが好ましい。
【0150】
加熱焼成工程は、ポリアミック酸またはその誘導体がイミド化反応を呈するのに必要な条件で行うことができる。塗膜の焼成は、オーブンまたは赤外炉の中で加熱処理する方法、ホットプレート上で加熱処理する方法等が一般に知られている。これらの方法も本発明において同様に適用可能である。一般に90~300℃程度の温度で行うことが好ましく、120~280℃がより好ましく、150~250℃がさらに好ましい。焼成時間は特に限定されないが、1分~2時間が好ましく、10分~40分がより好ましい。
【0151】
加熱は、複数回に分けて行ってもよく、その際に温度を変えて行ってもよい。
【0152】
液晶を水平および/または垂直方向に対して一方向に配向させるために、液晶配向膜へ異方性を付与する手段として、公知の光配向法を好適に用いることができる。
【0153】
光配向法における光照射工程に用いる光としては、例えば150~800nmの波長の光を含む紫外線または可視光を用いることができる。これらの光は、前記薄膜に液晶配向能を付与することができる光であれば特に限定されないが、液晶に対して強い配向規制力を発現させたい場合、偏光が好ましく、直線偏光がさらに好ましい。
【0154】
前記光照射工程における偏光の波長は150~400nmが好ましく、200~400nmがより好ましく、200~300nmがさらに好ましい。偏光の照射量は0.001~10J/cmであることが好ましく、0.1~5J/cmがより好ましい。偏光の膜表面に対する照射角度は特に限定されないが、液晶に対する強い配向規制力を発現させたい場合、膜表面に対してなるべく垂直であることが配向処理時間短縮の観点から好ましい。また、本発明の液晶配向膜は、直線偏光を照射することにより、直線偏光の偏光方向に対して直角方向に液晶を配向させることができる。
【0155】
光を照射する工程に使用する光源には、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、Deep UVランプ、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、ハイパワーメタルハライドランプ、キセノンランプ、水銀キセノンランプ、エキシマランプ、KrFエキシマレーザー、蛍光ランプ、LEDランプ、ナトリウムランプ、マイクロウェーブ励起無電極ランプ、などを制限なく用いることができる。
【0156】
液晶配向膜の液晶配向能を上げるために、液晶配向膜を加熱しながら光照射してもよい。この場合、加熱温度は50℃~250℃の範囲であることが好ましい。
【0157】
光照射工程は、加熱乾燥工程の後または加熱焼成工程の後に行うことができ、加熱焼成工程の後に行うことが好ましい。また、加熱乾燥工程と同時に行うこともできる。
【0158】
本発明の液晶配向膜は、光照射工程の後に、追加加熱を行うことが好ましい。加熱温度は加熱焼成工程の温度と同じ、または高い温度で行い、150~300℃が好ましく、150~250℃がより好ましく、200~250℃がさらに好ましい。追加加熱の時間は、5分~2時間が好ましく、5~60分がより好ましく、5~30分がさらに好ましい。
【0159】
また、光照射工程の後または追加加熱工程の後に、洗浄工程を設けることもできる。具体的には、液晶配向膜を溶剤に浸漬させる。浸漬時の温度は10~80℃が好ましく、20~50℃がより好ましい。また、超音波処理を行うことも好ましい。処理時間は1分~1時間が好ましく、1分~30分がより好ましい。使用する溶剤は、紫外線の照射によって液晶配向膜から生成した分解物を溶解する溶剤であれば、特に限定されないが、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、1-メトキシ-2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノールアセテート、ブチルセロソルブ、乳酸エチル、乳酸メチル、ジアセトンアルコール、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル又は酢酸シクロヘキシルなどが挙げられる。なかでも、汎用性および安全性の点から、水、2-プロパノール、1-メトキシ-2-プロパノール又は乳酸エチルが好ましい。浸漬の後は、加熱またはリンスを行うことが好ましい。またはその両方を行ってもよい。加熱温度は150~300℃であることが好ましく、200~230℃がより好ましい。加熱時間は、10秒~30分が好ましく、1~10分がより好ましい。リンスに用いるのは、水、メタノール、エタノール、2-プロパノール、アセトン又はメチルエチルケトンなどの低沸点溶剤が好ましい。
【0160】
本発明の液晶配向膜の膜厚は、特に限定されないが、10~300nmであることが好ましく、30~150nmであることがより好ましい。本発明の液晶配向膜の膜厚は、段差計やエリプソメータ等の公知の膜厚測定装置によって測定することができる。
【0161】
本発明の液晶配向膜は、液晶表示素子における液晶組成物の配向制御に好適に用いることができる。液晶表示素子の液晶組成物の配向用途以外に、液晶アンテナ、調光窓、光学補償材、可変移相器等、その他すべての液晶素子における液晶材料の配向制御に用いることができる。
【0162】
<液晶表示素子>
次に、本発明の液晶表示素子について説明する。本発明の液晶表示素子は、本発明の液晶配向膜を有する点に特徴があり、そのコントラストの良さから、高い表示品位を実現することができる。
【0163】
本発明の液晶表示素子について詳細に説明する。本発明は、対向配置されている一対の基板と、前記一対の基板それぞれの対向している面の一方または両方に形成されている電極と、前記一対の基板それぞれの対向している面に形成された液晶配向膜と、前記一対の基板間に形成された液晶層と、前記対向基板を挟むように設置されている一対の偏光フィルムとバックライトと駆動装置とを有する液晶表示素子において、前記液晶配向膜が本発明の液晶配向膜により構成されている。
【0164】
電極は、基板の一面に形成される電極であれば特に限定されない。このような電極には、例えばITOや金属の蒸着膜等が挙げられる。また電極は、基板の一方の面の全面に形成されていてもよいし、例えばパターン化されている所望の形状に形成されていてもよい。電極の前記所望の形状には、例えば櫛型またはジグザグ構造等が挙げられる。電極は、一対の基板のうちの一方の基板に形成されていてもよいし、両方の基板に形成されていてもよい。電極の形成の形態は液晶表示素子の種類に応じて異なり、例えばIPS型液晶表示素子(横電界型液晶表示素子)の場合は前記一対の基板の一方に電極が配置され、その他の液晶表示素子の場合は前記一対の基板の双方に電極が配置される。前記基板または電極の上に前記液晶配向膜が形成される。
【0165】
前記液晶層は、液晶配向膜が形成された面が対向している前記一対の基板によって液晶組成物が挟持される形で形成される。液晶層の形成では、微粒子や樹脂シート等の、前記一対の基板の間に介在して適当な間隔を形成するスペーサーを必要に応じて用いることができる。
【0166】
液晶層の形成方法としては、真空注入法とODF(One Drop Fill)法が知られている。
【0167】
真空注入法では、液晶配向膜面が対向するように、空隙(セルギャップ)を設けて、かつ液晶の注入口を残して、シール剤を印刷し、基板を張り合わせる。基板表面およびシール剤により区画されたセルギャップ内に、真空差圧を利用して液晶を注入充填した後、注入口を封止し、液晶表示素子を製造する。
【0168】
ODF法では、一対の基板のうちの一方の液晶配向膜面の外周にシール剤を印刷し、シール剤の内側の領域に液晶を滴下した後、液晶配向膜面が対向するように他方の基板を張り合わせる。そして、液晶を基板の全面に押し広げ、次いで基板の全面に紫外光を照射してシール剤を硬化し、液晶表示素子を製造する。
【0169】
基板の張り合わせに用いられるシール剤には、UV硬化型以外に熱硬化型も知られている。シール剤の印刷は、例えばスクリーン印刷法により行なうことができる。
【0170】
液晶組成物には、特に制限はなく、誘電率異方性が正または負の各種の液晶組成物を用いることができる。誘電率異方性が正の好ましい液晶組成物には、特許第3086228号公報、特許第2635435号公報、特表平5-501735号公報、特開平8-157826号公報、特開平8-231960号公報、特開平9-241644号公報(EP885272A1)、特開平9-302346号公報(EP806466A2)、特開平8-199168号公報(EP722998A1)、特開平9-235552号公報、特開平9-255956号公報、特開平9-241643号公報(EP885271A1)、特開平10-204016号公報(EP844229A1)、特開平10-204436号公報、特開平10-231482号公報、特開2000-087040号公報、特開2001-48822号公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0171】
前記負の誘電率異方性を有する液晶組成物の好ましい例として、特開昭57-114532号公報、特開平2-4725号公報、特開平4-224885号公報、特開平8-40953号公報、特開平8-104869号公報、特開平10-168076号公報、特開平10-168453号公報、特開平10-236989号公報、特開平10-236990号公報、特開平10-236992号公報、特開平10-236993号公報、特開平10-236994号公報、特開平10-237000号公報、特開平10-237004号公報、特開平10-237024号公報、特開平10-237035号公報、特開平10-237075号公報、特開平10-237076号公報、特開平10-237448号公報(EP967261A1)、特開平10-287874号公報、特開平10-287875号公報、特開平10-291945号公報、特開平11-029581号公報、特開平11-080049号公報、特開2000-256307号公報、特開2001-019965号公報、特開2001-072626号公報、特開2001-192657号公報、特開2010-037428号公報、国際公開第2011/024666号、国際公開第2010/072370号、特表2010-537010号公報、特開2012-077201号公報、特開2009-084362号公報等に開示されている液晶組成物が挙げられる。
【0172】
誘電率異方性が正または負の液晶組成物に1種以上の光学活性化合物を添加して使用することも何ら差し支えない。
【0173】
また例えば、本発明の液晶表示素子に用いる液晶組成物は、例えば配向性を向上させる観点から、添加物をさらに添加してもよい。このような添加物は、光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤などである。好ましい光重合性モノマー、光学活性な化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、色素、消泡剤、重合開始剤、重合禁止剤には、国際公開第2015/146330号等に開示されている化合物が挙げられる。
【0174】
PSA(polymer sustained alignment)モードの液晶表示素子に適合させるために重合可能な化合物を液晶組成物に混合することができる。重合可能な化合物の好ましい例はアクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、ビニルケトンなどの重合可能な基を有する化合物である。好ましい化合物には、国際公開第2015/146330号等に開示されている化合物が挙げられる。
【実施例0175】
以下、本発明を実施例により説明する。なお、実施例において用いる測定法および化合物は次の通りである。
【0176】
<重量平均分子量(Mw)>
ポリアミック酸の重量平均分子量は、2695セパレーションモジュール・2414示差屈折計(Waters社製)を用いてGPC法により測定し、ポリスチレン換算することにより求めた。得られたポリアミック酸をリン酸-DMF混合溶液(リン酸/DMF=0.6/100:重量比)で、ポリアミック酸濃度が約2重量%になるように希釈した。カラムはHSPgel RT MB-M(Waters社製)を使用し、前記混合溶液を展開剤として、カラム温度50℃、流速0.40mL/minの条件で測定を行った。標準ポリスチレンは東ソー(株)製TSK標準ポリスチレンを用いた。
【0177】
<鉛筆硬度>
JIS規格「JIS-K-5600、5.4、引っかき硬度(鉛筆法)」の方法に従った。結果を鉛筆の芯の硬さで表した。鉛筆硬度が低いと剥がれや削れが発生しやすく、この値が2Hよりも大きいと、削れ等が発生しにくい配向膜が得られる。
【0178】
<シール密着性>
後述するシール密着性測定用サンプルの上下基板の端を、株式会社イマダ製の電動計測スタンド MX2-500Nに固定し、基板中央の上部から株式会社イマダ製のデジタルフォースゲージZTS-100Nにて押し込みを行い、剥離する際の圧力(N)を測定した。そして、計測したシール剤の直径より見積もった面積(cm)で圧力(N)を除して、密着強度(N/cm)を算出した。密着強度の数値が大きい程、高いシール剤との密着性を有していると言える。算出した密着強度を、基準となる液晶配向膜の密着強度で除して、各液晶配向膜のシール密着性を比較した。
【0179】
<テトラカルボン酸二無水物>
【0180】
<ジアミン>
【0181】
<モノアミン>
【0182】
<溶剤>
NMP: N-メチル-2-ピロリドン
BC: ブチルセロソルブ(エチレングリコールモノブチルエーテル)
【0183】
ワニスの調製
【0184】
[ワニスの調製例1] ワニスA1の調製
攪拌翼、窒素導入管を装着した100mL3つ口フラスコに、式(DI-4-1)で表される化合物0.268gおよび式(DI-5-1),m=2で表される化合物1.052g、式(DI-13-1)で表される化合物1.330gを入れ、NMPを74.0g加え撹拌した。窒素雰囲気下にし、この溶液に、式(I-1)で表される化合物3.058gを加え12時間室温で攪拌した。そこに式(Xe)で表される化合物0.297gを加え12時間室温で撹拌した。そこにBC20.0gを加え、溶質のポリマーの重量平均分子量が所望する重量平均分子量になるまで、その溶液を70℃で加熱攪拌して、溶質の重量平均分子量がおよそ25,100であり、樹脂分濃度(固形分濃度)が6重量%であるワニスA1を得た。
【0185】
[調製例2~4] ワニスA2~A4の調製
ジアミン、テトラカルボン酸二無水物およびモノアミンとして用いる化合物を、表1に示すように変更したこと以外は、調製例1と同様にして固形分濃度が6重量%のワニスA2~A4を調製した。なお、表1において、ジアミンとして2以上の化合物が掲載されている調製例では、その全ての化合物を合わせてジアミンとして使用したことを意味する。角括弧内の数値は、配合比(モル%)を表し、空欄はその欄に対応する化合物を使用していないことを意味する。
【0186】
表1
【0187】
[実施例1]
ワニスA1を、固形分濃度が4重量%になるようにNMP・BC混合溶液(NMP/BC=7/3重量比)で希釈、撹拌し液晶配向剤1を調製した。ガラス基板に、調製した液晶配向剤1をスピンナー法により塗布した。塗布後、基板を60℃で80秒間加熱し、溶剤を蒸発させた後、230℃にて30分間焼成処理を行い、液晶配向膜を形成した。ウシオ電機(株)製マルチライトML-501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光波長域230nm~310nmの偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時露光エネルギーはウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT-150(受光器:UVD-S254)を用いて光量を測定し、波長254nmで0.3±0.03J/cmになるよう、直線偏光の露光時間を調整した。その後230℃にて30分間追加加熱を行った。得られた基板の鉛筆硬度を測定したところ、2Hであった。
【0188】
同じ大きさのガラス基板を2枚用意した。1枚のガラス基板に、液晶配向剤1をスピンナー法により塗布した。塗布後、基板を60℃で80秒間加熱し、溶剤を蒸発させた後、230℃にて30分間焼成処理を行い、液晶配向膜を形成した。ウシオ電機(株)製マルチライトML-501C/Bを用い、基板に対して鉛直方向から、偏光波長域230nm~310nmの偏光板を介して紫外線の直線偏光を照射した。この時露光エネルギーはウシオ電機(株)製紫外線積算光量計UIT-150(受光器:UVD-S254)を用いて光量を測定し、波長254nmで0.3±0.03J/cmになるよう、直線偏光の露光時間を調整した。その後230℃にて30分間追加加熱を行った。この基板の配向膜が形成している面に、5μmのビーズスペーサーを分散させたシール剤(協立化学産業(株)製XN-1500T)を滴下した。次いで、配向剤を塗布していないガラス基板を用いて、基板の重なり幅が1cmになるようにかつシール剤を挟むように貼り合わせを行った。その際、貼り合わせ後のシール剤の直径が約3mmとなるようにシール剤滴下量を調整した。貼り合わせた2枚の基板をクリップにて固定した後、3J/cmのUV照射、続いて120℃で1時間の加熱を行い、シール剤を硬化させて、シール密着性測定用のサンプルを作製した。上記記載の測定方法にて密着強度を算出した。
ワニスA1の代わりにワニスA4を用いて比較配向剤1を調製し、同様の操作を行い、シール密着性測定用のサンプルを作製した。上記記載の測定方法にて密着強度を算出した。
ワニスA1から調製した液晶配向剤1の密着強度を、ワニスA4から調製した比較配向剤1の密着強度で割り、比較配向剤1に対する密着強度の比率を算出した結果、比率は2.3であった。
【0189】
[実施例2、3、比較例1]
ワニスA2~A4をそれぞれ固形分濃度が4重量%になるようにNMP・BC混合溶液(NMP/BC=7/3重量比)で希釈、撹拌し液晶配向剤2、3、比較配向剤1を調製した。液晶配向剤1の代わりに表2に示す液晶配向剤を用いたこと以外は実施例1と同様にして、鉛筆硬度、シール剤に対する密着強度の測定を行った。使用したワニスと鉛筆硬度、密着強度(比率)の測定結果を表2に示す。
【0190】
表2
【0191】
表2に示したように、実施例1~3では鉛筆硬度2H、密着強度(比率)が1.5~2.3であったのに対して、式(Xe)を用いていない比較例1では鉛筆硬度HBであった。
式(Xe)で表される化合物を用いることで、高い鉛筆硬度とシール密着性を有する液晶配向膜を製造できることがわかった。
【産業上の利用可能性】
【0192】
本発明の光配向用液晶配向剤を使用すれば、露光エネルギーに対する感度が高く、膜剥がれや削れが生じにくく、高いシール密着性を示す液晶配向膜を製造することができる。本発明の光配向用液晶配向剤は、横電界型液晶表示素子に好適に適用することができる。