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特開2024-531ICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーおよびICP発光分光分析装置への試料導入操作
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  • 特開-ICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーおよびICP発光分光分析装置への試料導入操作 図1
  • 特開-ICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーおよびICP発光分光分析装置への試料導入操作 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024000531
(43)【公開日】2024-01-05
(54)【発明の名称】ICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーおよびICP発光分光分析装置への試料導入操作
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/73 20060101AFI20231225BHJP
【FI】
G01N21/73
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023098893
(22)【出願日】2023-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2022098727
(32)【優先日】2022-06-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000183303
【氏名又は名称】住友金属鉱山株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】菅 寿夫
【テーマコード(参考)】
2G043
【Fターム(参考)】
2G043AA01
2G043CA03
2G043DA05
2G043DA08
2G043EA08
2G043MA16
(57)【要約】
【課題】ICP発光分光分析装置の試料導入部内で液体試料が飛散し漏洩した場合に、飛散した液体試料が作業者に付着して薬傷を負わせたり、作業者がポンプの可動部に手指等を巻き込まれて負傷したり、ポンプに液体試料が付着して故障するといった事態を回避する手段を提供する。
【解決手段】試料導入部内に設置される底面部と、試料導入部の外部へ開放されている前面を遮蔽する正面立面部と、試料導入部の外部へ開放されている側面を遮蔽する側面立面部と、ペリスタリックポンプの可動部分を送液用チューブとネブライザ導入用チューブとの接続部分から遮蔽するポンプカバー部とを有する、試料導入部の保護カバーを提供する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ICP発光分光分析装置における試料導入部へ設置する保護カバーであって、
前記試料導入部内に設置される底面部と、
前記試料導入部の外部へ開放されている前面を遮蔽する、前記底面部から立ち上がる正面立面部と、
前記試料導入部の外部へ開放されている側面を遮蔽する、前記底面部から立ち上がる側面立面部と、
前記試料導入部内に設置されたペリスタリックポンプの可動部分を、前記試料導入部内に設置された送液用チューブとネブライザ導入用チューブとの接続部分から遮蔽する、前記底面部から前記正面立面部に沿って立ち上がるポンプカバー部とを、有することを特徴とするICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバー。
【請求項2】
前記試料導入部内に設置された送液用チューブとネブライザ導入用チューブとの接続部分から、液体試料が飛散し漏洩した場合、前記飛散し漏洩した液体試料を前記試料導入部内の装置本体トレイの上面に滞留させる、または、廃液容器に収容することで、回収することを特徴とする請求項1に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバー。
【請求項3】
前記正面立面部は透明であることを特徴とする請求項1または2に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバー。
【請求項4】
前記ICP発光分光分析装置における試料導入部へ設置することで、前記試料導入部内に、前記底面部の上面であって且つ前記正面立面部より手前側の部分に作業スペースを創出することを特徴とする請求項1または2に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバー。
【請求項5】
請求項1または2に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部へ設置する保護カバーを、ICP発光分光分析装置の試料導入部に設置し、ICP発光分光分析装置へ試料導入することを特徴とするICP発光分光分析装置への試料導入操作。
【請求項6】
前記ICP発光分光分析装置への試料導入を、オートサンプラー装置を用いて行うことを特徴とする請求項5に記載のICP発光分光分析装置への試料導入操作。
【請求項7】
前記送液用チューブへ、前記ネブライザ導入用チューブが差し込まれている接続部分、
液跳ね防止用チューブのチューブ内において、前記送液用チューブへ、前記ネブライザ導入用チューブが差し込まれている接続部分、
液跳ね防止用カプラー内において、前記送液用チューブへ、前記ネブライザ導入用チューブが差し込まれている接続部分、
から選択されるいずれかの接続部分が、送液用チューブガイド内に収容され、前記送液用チューブガイドが、前記ポンプカバー部に設置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバー。
但し、前記液跳ね防止用チューブは、前記送液用チューブおよび前記ネブライザ導入用チューブの接続が外れても、前記送液用チューブと前記ネブライザ導入用チューブとの機械的接続を担保するチューブであり、前記液跳ね防止用カプラーは、前記送液用チューブおよび前記ネブライザ導入用チューブの接続が外れても、前記送液用チューブと前記ネブライザ導入用チューブとの機械的接続を担保するカプラーである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーおよびICP発光分光分析装置への試料導入操作に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波誘導結合プラズマ(ICP;Inductively Coupled Plasma)を用いて元素分析を行う分析装置の一つとして、ICP発光分光分析装置(本発明において「ICP装置」と記載する場合がある。)が公知である。ICP装置は、プラズマの熱エネルギーによって元素が発する光を、プリズムなどを用いて分光し、光の波長および強度などを測定することで元素分析を行う装置である。
【0003】
ICP装置では、液体試料を霧状にしてプラズマに導入する必要がある。このため、ICP装置における試料導入部には、試料導入のためのペリスタリックポンプ、ネブライザおよびサイクロンチャンバが備えられており、これらは、後述する送液用チューブおよびネブライザ導入用チューブで結ばれている。
当該試料導入部に関する文献として、例えば特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特開2006-66312号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ICP装置を用いた分析操作を行っている際、液体試料である溶液の状態によっては、ネブライザが詰まる場合がある。ネブライザが詰まってくると液体試料の噴霧状態が悪くなり、送液系列のペリスタリックポンプと協働する軟質性の送液用チューブと、ネブライザに接続された半硬質性チューブであるネブライザ導入用チューブとの接続部分に圧力がかかる。すると、送液用チューブとネブライザ導入用チューブとの接続が外れて、液体試料が飛散し漏洩する場合がある。ここで、液体試料は、塩酸溶液、硫酸溶液、硝酸溶液、フッ酸溶液、等の強酸性で腐食性の高い液体である場合が多い。
【0006】
液体試料が飛散し漏洩する状態になった時、飛散した液体試料が作業者に付着して薬傷を負わせたり、作業者が慌てて対応しようとしてペリスタリックポンプの可動部に手指等を巻き込まれたり、ネブライザやサイクロンチャンバが石英製の場合、作業者の手が当たって割れ、負傷させてしまう危険性もある。また、ペリスタリックポンプの高速回転時に液体試料が付着すると、付着範囲が拡散され腐食し回転部分が固着して故障する場合がある。さらに、ICP装置周辺にも液体試料が飛散漏洩してしまうこととなる。
【0007】
このような事態を回避するために、送液用チューブとネブライザ導入用チューブとを強固に接続することも考えられる。しかしながら、送液用チューブとネブライザ導入用チューブとを強固に接続すると、圧力がネブライザに掛かることとなり、ガラス製で高価なネブライザが破損することが考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の課題を解決するため、本発明者らは研究を行った。そして、チューブの接続部分が外れた時に、液体試料である溶液(本発明において、単に「溶液」と記載する場合がある。)が飛散して作業者に付着しないよう、また、作業者が慌てて対応しようとして可動部に触れることがないよう、さらに、チューブの接続部分が外れた時に飛散した溶液がペリスタリックポンプに付着しないように、ICP装置の試料導入部へ所定の保護カバーを設置する構成に想到し、本発明を完成した。
【0009】
即ち、前記課題を解決するための第1の発明は、
ICP発光分光分析装置における試料導入部へ設置する保護カバーであって、
前記試料導入部内に設置される底面部と、
前記試料導入部の外部へ開放されている前面を遮蔽する、前記底面部から立ち上がる正面立面部と、
前記試料導入部の外部へ開放されている側面を遮蔽する、前記底面部から立ち上がる側面立面部と、
前記試料導入部内に設置されたペリスタリックポンプの可動部分を、前記試料導入部内に設置された送液用チューブとネブライザ導入用チューブとの接続部分から遮蔽する、前記底面部から前記正面立面部に沿って立ち上がるポンプカバー部とを、有することを特徴とするICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーである。
第2の発明は、
前記試料導入部内に設置された送液用チューブとネブライザ導入用チューブとの接続部分から、液体試料が飛散し漏洩した場合、前記飛散し漏洩した液体試料を前記試料導入部内の装置本体トレイの上面に滞留させる、または、廃液容器に収容することで、回収することを特徴とする第1の発明に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーである。
第3の発明は、
前記正面立面部は透明であることを特徴とする第1または第2の発明に記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーである。
第4の発明は、
前記ICP発光分光分析装置における試料導入部へ設置することで、前記試料導入部内に、前記底面部の上面であって且つ前記正面立面部より手前側の部分に作業スペースを創出することを特徴とする第1から第3の発明のいずれかに記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーである。
第5の発明は、
第1から第4の発明のいずれかに記載のICP発光分光分析装置における試料導入部へ設置する保護カバーを、ICP発光分光分析装置の試料導入部に設置し、ICP発光分光分析装置へ試料導入することを特徴とするICP発光分光分析装置への試料導入操作である。
第6の発明は、
前記ICP発光分光分析装置への試料導入を、オートサンプラー装置を用いて行うことを特徴とする第5の発明に記載のICP発光分光分析装置への試料導入操作である。
第7の発明は、
前記送液用チューブへ、前記ネブライザ導入用チューブが差し込まれている接続部分、
液跳ね防止用チューブのチューブ内において、前記送液用チューブへ、前記ネブライザ導入用チューブが差し込まれている接続部分、
液跳ね防止用カプラー内において、前記送液用チューブへ、前記ネブライザ導入用チューブが差し込まれている接続部分、
から選択されるいずれかの接続部分が、送液用チューブガイド内に収容され、前記送液用チューブガイドが、前記ポンプカバー部に設置されていることを特徴とする第1から第6の発明のいずれかに記載のICP発光分光分析装置における試料導入部の保護カバーである。
但し、前記液跳ね防止用チューブは、前記送液用チューブおよび前記ネブライザ導入用チューブの接続が外れても、前記送液用チューブと前記ネブライザ導入用チューブとの機械的接続を担保するチューブであり、前記液跳ね防止用カプラーは、前記送液用チューブおよび前記ネブライザ導入用チューブの接続が外れても、前記送液用チューブと前記ネブライザ導入用チューブとの機械的接続を担保するカプラーである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、前記チューブの接続部分が外れて、液体試料が飛散した場合であっても、作業者には飛散付着しなくなり、ペリスタリックポンプへも付着しないので、作業の安全性が担保され、ペリスタリックポンプの故障を防止することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】ICP装置の一例の外観である。
図2】ICP装置の試料導入部を拡大した外観である。
図3】正面から見た保護カバーの斜視図である。
図4】背面から見た保護カバーの斜視図である。
図5】ICP装置の試料導入部へ保護カバーを設置した際の正面図である。
図6】ICP装置の試料導入部へ保護カバーを設置した際の側面図である。
図7】ICP装置の試料導入部へ保護カバーを設置し、さらにラックを置いた際の正面図である。
図8】第2の接続部分の断面図である。
図9】液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分の断面図である。
図10】液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分の断面図である。
図11】保護カバーへ設けた送液用チューブガイドの斜視図である。
図12】送液用チューブガイド内の断面図である。
図13】正面から見た保護カバーの斜視図において、送液用チューブガイドの設置位置の一例を示した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
ICP装置における試料導入部には、試料導入のためのペリスタリックポンプ、ネブライザおよびサイクロンチャンバが備えられている。
当該ICP装置および試料導入部について、図面を参照しながら説明する。なお、異なる図面においても、同一の番号を付された部分は同一の部分である。
図1は、ICP装置の一例の外観である。
図1において、符号1はICP装置の本体であり、符号2はICP装置の試料導入部であり、符号4はICP装置の操作用PCであり、符号5はオートサンプラーであり、符号6は廃液容器である。符号42は後述するICP装置の装置本体トレイに設けられた漏洩対応排水孔からの廃液を、廃液容器6へ排出するドレーンチューブである。
【0013】
図2は、ICP装置の試料導入部を拡大した外観である。
図2において、符号10はペリスタリックポンプ(本発明において「ポンプ」と記載する場合がある。)であり、符号20はネブライザであり、符号30はサイクロンチャンバであり、符号40はICP装置の装置本体トレイであり、符号50はネブライザへキャリアガス(加湿されたArガス)を供給するためのAr加湿器である。
【0014】
ポンプ10は試料容器から溶液をネブライザへ送液し、同時にサイクロンチャンバ(スプレーチャンバと記載される場合もある。)から出る廃液を排出している。ポンプの形式には各種あるがペリスタリックポンプを用いる場合が多い。
【0015】
ネブライザ20は噴霧装置で、サイクロンチャンバ30に接続されており、ポンプ10によって送られてきた溶液をキャリアガスと混合し、サイクロンチャンバ30内に溶液を噴霧する。
【0016】
サイクロンチャンバ30は気液分離装置で、ネブライザ20でキャリアガスと混合噴霧された溶液の一部をプラズマに導入し、プラズマに導入しなかった噴霧溶液はサイクロンチャンバ30の下部に落液させる。落液した溶液は滞留しないように排出される。
【0017】
次に、溶液を送液するチューブについて説明する。
溶液導入口からポンプ部入口迄には、溶液導入用チューブ12を使用する。そして、溶液導入用チューブ12と送液用チューブ11とが第1の接続部分14において接続され、ポンプ10を経て、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが第2の接続部分15において接続される。この後、ネブライザ導入用チューブ13はネブライザ20に接続される。サイクロンチャンバ30を経て、サイクロンチャンバ30の下部から、第1の排出用チューブ35が接続する。そして、その先の第3の接続部分38において、第1の排出用チューブ35から第2の排出用チューブ36に接続し、ポンプ10を経て、第4の接続部分39において、第2の排出用チューブ36と第3の排出用チューブ37とが接続されている。
なお、図2においては、溶液導入用チューブ12の溶液導入口は純水容器151中の純水に浸漬している。
【0018】
ここで、ポンプ10を経由する送液用チューブ11は軟質性のチューブである。一方、溶液導入用チューブ12とネブライザ導入用チューブ13とは、送液用チューブ11より、僅かに内外径の細い専用の半硬質性チューブである。
なお、本発明において軟質性のチューブとは、当該軟質性のチューブがペリスタリックポンプを経由した際に、当該ペリスタリックポンプのローラーが当該軟質性チューブを押し潰しながら回転することで、連続的な送液を行うことができるチューブのことをいう。一方、本発明において半硬質性チューブとは、容易に湾曲させることが可能であるが、前記軟質性チューブよりも硬質であるチューブのことをいう。
また、ポンプ10を経由する第2の排出用チューブ36は軟質性のチューブである。一方、第1の排出用チューブ35は、第2の排出用チューブ36より、僅かに内外径の細い専用の半硬質性チューブであり、第3の排出用チューブ37は、第2の排出用チューブ36より、僅かに内外径の太い半硬質性チューブであって、廃液容器6に接続している。
そして、第1から第3の接続部分においては、それぞれ軟質性チューブへ半硬質性チューブを差し込むことにより、両チューブが接続されている。第4の接続部分においては、第2の排出用チューブ36と第3の排出用チューブ37とが、それぞれのチューブの内径に合わせた外径を有する専用の配管接手により接続されている。
一方、ICP装置の試料導入部内にて溶液の漏洩があった場合に備えて、装置本体トレイ40に設けられた漏洩対応排水孔41から、ICP装置1の下方に設けられた廃液容器6へドレーンチューブ42が設けられている。
【0019】
上述したネブライザ20、サイクロンチャンバ30、送液用チューブ11、溶液導入用チューブ12、ネブライザ導入用チューブ13、第1の排出用チューブ35、第2の排出用チューブ36、第3の排出用チューブ37の設備は、試料導入によって汚染するので、必要に応じて分解洗浄や交換を行い流量調整等も行う。この為、整備の関係上、これらの設備はICP装置の試料導入部2内に、むき出しで設置されている。そして、測定時にはポンプ10が高速回転して、溶液をネブライザ20に送り込み、サイクロンチャンバ30内に噴霧させプラズマに導入する。
【0020】
このとき、溶液導入用チューブ12、送液用チューブ11、ネブライザ導入用チューブ13は、できるだけ短いことが好ましい。これは液体試料の交換の際、これらのチューブ内に滞留して無駄になる溶液の削減、および、これら滞留する溶液を除去するための洗浄操作の負担を削減するためである。特に、溶液が貴少試料である場合や、例えばオートサンプラー5を用いて、多種の溶液を順次交換しながら測定をおこなう場合には、チューブ内に滞留する溶液量の削減を図ることが肝要になると考えられる。
この結果、溶液導入用チューブ12、送液用チューブ11、ネブライザ導入用チューブ13の短縮化に伴い、第2の接続部分15は試料導入部2内の高い位置であって、ポンプ10の上方に位置することとなる。
【0021】
ところが、溶液中に微粒子やゴミが存在していたり、結晶等が発生しやすい状態であるとネブライザ20が詰まり易くなる。ネブライザ20が詰まってくると溶液の噴霧状態が悪くなり、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との第2の接続部分15に圧力がかかり、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れて、溶液が飛散し漏洩する場合がある。ここで、溶液は、塩酸溶液、硫酸溶液、硝酸溶液、フッ酸溶液、等の強酸性で腐食性の高い液体である場合が多い。
【0022】
試料導入部2内の高い位置であって、ポンプ10の上方において溶液が飛散し漏洩する状態になった時、飛散した溶液が作業者に付着して薬傷を負わせたり、作業者が慌てて対応しようとしてポンプ10の可動部に手指等を巻き込まれたり、ネブライザ20やサイクロンチャンバ30が石英製の場合、作業者の手が当たって割れ、負傷させてしまうといった危険性がある。また、第2の接続部分15が、ポンプ10の上方の近接場所にあることから、ポンプ10の高速回転時に溶液が付着すると、付着範囲が拡散されて腐食し、回転部分が固着して故障する場合がある。さらに、オートサンプラー5を用いて無人で夜間測定等をしている時にこの様な事態が発生すると、ICP装置1周辺にも溶液が飛散漏洩してしまうこととなる。
【0023】
従って、以下4点の回避対策をとる必要がある。
1)送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との第2の接続部分15が外れて、溶液が飛散した際であっても、当該溶液が作業者に飛散付着するのを回避すること。
2)上述した1)の際に、作業者が急いで対応しようとした場合であっても、作業者の手指がポンプ10に巻き込まれるのを回避すること。
3)上述した1)の際に、溶液がポンプ10へ付着して、ポンプ10へが故障するのを回避すること。
4)ICP装置1の無人運転時に上述した1)の状態になった際、ICP装置1の周辺への溶液の飛散漏洩を回避し、飛散した溶液を試料導入部2内で回収すること。
【0024】
上述した回避対策を検討した結果、本発明者らは、試料導入部2へ本発明に係る保護カバー100を設置する構成に想到した。
当該本発明に係る保護カバー100について、図3~7を参照しながら説明する。
【0025】
図3は、正面から見た保護カバー100の斜視図であり、図4は、背面から見た保護カバーの斜視図である。
図3、4に示すように保護カバー100は透明な樹脂板を接着して組立てたものである。透明な樹脂材料には特に制限はないが、耐薬品性および透明性が高い観点からアクリル樹脂が好ましい。
【0026】
図3、4に示すように保護カバー100は、底面部110と正面立面部120と側面立面部130とポンプカバー部140とを有している。
底面部110は、試料導入部2内の装置本体トレイ40に収まる大きさと形状とを有している。本発明において底面部110は、試料導入部2内のAr加湿器50を回避するため第1の切り欠き部111が設けられている。尤も、底面部110は、後述する作業スペース114を十分に確保するため、装置本体トレイ40から前方に向かって5cm程度のはみ出し部112があっても良い。そして、底面部110には複数個の台座113が設けられ、底面部110の下面と装置本体トレイ40の上面とが直接接触しないようにし、漏洩した溶液を装置本体トレイ40の上面に滞留させながらも、底面部110の下面に接触する事態を回避している。台座113の位置、個数は、保護カバー100が安定的に設置される範囲で適宜設定すれば良く、装置本体トレイ40上面からの底面部110の下面の高さは3~10mmで良い。
【0027】
正面立面部120は、底面部110から立ち上がって、ICP装置1の前面にいる操作者から、ポンプ10、第2の接続部分15、ネブライザ20、サイクロンチャンバ30を遮蔽する機能を発揮するものである。また、第2の接続部分15が外れて溶液が飛散した際、当該飛散する溶液を受け止めて下方へ流下させるものである。
【0028】
側面立面部130も、底面部110から立ち上がって、上述した正面立面部120では遮蔽できない試料導入部2の開放された後方側面を遮蔽するものであり、その機能も正面立面部120と同様である。但し、側面立面部130には、操作者が、ポンプ10に設けられたチューブ押さえ部16を調整するための第2の切り欠き部131が設けられている。なお、第2の切り欠き部131は、操作者が、チューブ押さえ部16を調整するための操作性を担保した上で、必要最小限の大きさであることが好ましく、切り欠き部ではなく窓部であっても良い。
【0029】
ポンプカバー部140は、底面部110から正面立面部120に沿って立ち上がり、第2の接続部分15からポンプ10を遮蔽する機能を発揮するものである。当該機能により、第2の接続部分15が外れて、溶液が飛散した際、当該飛散する溶液がポンプ10に付着するのを回避するとともに、当該飛散する溶液を受け止めて下方へ流下させるものである。
【0030】
ポンプカバー部140は、上述の機能を有するものであればその形状に制限はない。尤も、作製上の便宜を考えれば、図3、4に示すように、底面部110から正面立面部120に沿って垂直に立ち上がる垂直部141と、当該垂直部141に続いてポンプ10を覆うように、正面立面部120に沿って傾斜した傾斜部142を有する形状が好ましい。
【0031】
ポンプカバー部140における、垂直部141と傾斜部142との接続部分におけるポンプ10側近傍の正面立面部120に貫通孔121を設け、送液用チューブ11を貫通させるのも好ましい構成である。当該構成により、正面立面部120の手前側に置かれた試料容器中の溶液や純水容器151中の純水を、送液用チューブ11を用いて短い距離でポンプ10へ送液することができる。また、溶液が飛散した際、飛散した溶液はポンプカバー部140が受け止めるので、当該飛散した溶液が貫通孔121に到達することを回避できる。
【0032】
底面部110における、正面立面部120、側面立面部130、ポンプカバー部140が立ち上がる部分には、これらが受け止めた飛散した溶液を装置本体トレイ40へ落下させるドレーン孔115を設けておくことが好ましい。図3、4においてはドレーン孔115が40個設けられているが、1個以上の適宜個数で良い。
【0033】
次に、図5~7を用いて、ICP装置1の試料導入部2へ保護カバー100を設置した際の効果について説明する。
図5はICP装置の試料導入部へ保護カバーを設置した際の正面図であり、図6はICP装置の試料導入部へ保護カバーを設置した際の側面図であり、図7はICP装置の試料導入部へ保護カバーを設置し、さらにラックを置いた際の正面図である。
【0034】
図5に示すように、ICP装置1の試料導入部2へ保護カバー100を設置することで、有人測定時においては、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との第2の接続部分15と、作業者との間は、保護カバー100の正面立面部120により遮蔽される。この結果、第2の接続部分15において、ネブライザ導入用チューブ13から送液用チューブ11が外れて、溶液が飛散した際であっても、当該溶液が作業者に飛散付着しないこととなる。
【0035】
さらに、第2の接続部分15において外れた送液用チューブ11の先端部は、ポンプカバー部140における傾斜部142によって下向きに支えられるので、当該先端部から漏洩する溶液は下向きに飛散することとなり、飛散の範囲は最小限に抑制される。
【0036】
一方、保護カバー100をICP装置1の試料導入部2から撤去しない限り、作業者はポンプ10、ネブライザ20、サイクロンチャンバ30に手を触れることができないので、慌てた作業者の手指が、ポンプ10に巻き込まれたり、ネブライザ20、サイクロンチャンバ30を破損して負傷するといった事態を回避できる。
【0037】
さらに、第2の接続部分15から飛散した溶液は、保護カバー100の正面立面部120、ポンプカバー部140、側面立面部130からドレーン孔115を通り、或いは、試料導入部2の壁に衝突して落下し、装置本体トレイ40に集まることとなる。この結果、ICP装置1の周辺への溶液の飛散漏洩は回避され、飛散した溶液は試料導入部2内で回収されることなる。この際、ポンプ10は、ポンプカバー部140によって第2の接続部分15から遮蔽されているので、溶液がポンプ10へ付着して、ポンプ10へが故障する事態を回避できる。
【0038】
一方、オートサンプラー5等を使用した無人測定時においても、ICP装置1の試料導入部2へ保護カバー100を設置することで、送液用チューブ11が外れて、溶液が飛散、漏洩した際であっても、有人測定時の場合と同様に、飛散の範囲は最小限に抑制される。そして、第2の接続部分15から飛散した溶液は、装置本体トレイ40に集まることとなり、溶液がポンプ10へ付着して、ポンプ10へが故障する事態を回避できる。そして、さらに漏洩が継続する場合、溶液は、装置本体トレイ40に設けられた漏洩対応排水孔41からドレーンチューブ42を介して、ICP装置1の下方に設けられた廃液容器6に収容される。
【0039】
一方、図6に示すように保護カバー100の側面立面部130には、ポンプ10に設けられたチューブ押さえ部16を調整するための第2の切り欠き部131が設けられているので、ICP装置の試料導入部2へ保護カバー100を設置した後であっても、任意にチューブ押さえ部16を調整することができる。
【0040】
さらに、図6より、送液用チューブ11を、正面立面部120に設けられた貫通孔121を経由させることにより、正面立面部120の手前側に置かれた試料容器中の溶液や純水容器151中の純水を、ほぼ最短の距離でポンプ10へ送液できることが理解できる。
【0041】
以上、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とに係る第2の接続部分15が外れて、溶液が飛散し漏洩した場合における、本発明に係る保護カバー100を用いた対策について説明した。
但し、上述した対策を行った場合でもネブライザ20が詰まり、第2の接続部分15が外れた後に、ネブライザ導入用チューブ13が揺動して溶液が振り撒かれたり、外れた送液用チューブ11がポンプ10へ巻き込まれるといった事態が発生することも考えられる。
このような事態を回避するため、実施しておくことが好ましい対策について、図8図12を用いて説明する。
【0042】
上述した状況では、第2の接続部分の断面図である図8に示すように、軟質で伸縮性を有する送液用チューブ11へ半硬質性のネブライザ導入用チューブ13が差し込まれ、第2の接続部分15となって接続されている。この状態では、ネブライザ20が詰まった際には、送液用チューブ11およびネブライザ導入用チューブ13内の液圧が上がり、第2の接続部分15が外れる。そこで、第2の接続部分15において、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とを強固に係合すれば良いとも考えられる。しかしながら、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れないように強固に接続すると、ネブライザ20の詰まりによって増加した液圧がネブライザ20に掛かることとなり、ガラス製で高価なネブライザ20が破損することが考えられる。
【0043】
ネブライザ20が破損することを回避するためには、第2の接続部分15を、液圧を逃がすための安全弁として用いることが好ましい。ここで、第2の接続部分15を安全弁として用いながら、ネブライザ導入用チューブ13および送液用チューブ11の揺動や、送液用チューブ11のポンプ10への巻き込みを回避することを目的とした、第2の接続部分15の異なる実施形態について説明する。
【0044】
図9は、液跳ね防止用チューブ17のチューブ内に第2の接続部分15を納めた、跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分15(2)の模式的な断面図である。
液跳ね防止用チューブ17が設けられた第2の接続部分15(2)は、上述した第2の接続部分15の送液用チューブ11が隙間なく納まる内径を有する液跳ね防止用チューブ17のチューブ内に、第2の接続部分15(2)が納められているものである。
そして、液跳ね防止用チューブ17のチューブ内に第2の接続部分15(2)が納められていることで、液圧の増加によって、送液用チューブ11およびネブライザ導入用チューブ13の接続が外れても、ネブライザ導入用チューブ13の端末は液跳ね防止用チューブ17内に担保されることで、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との機械的接続が担保されるものである。
【0045】
このとき、液跳ね防止用チューブ17と送液用チューブ11との重なり部分の長さ、および、液跳ね防止用チューブ17とネブライザ導入用チューブ13との重なり部分の長さは、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れた際にも、ネブライザ導入用チューブ13の端末が液跳ね防止用チューブ17内に担保されることで、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との機械的な接続が保たれる長さであれば良い。具体的には30mm以上あれば良い。尤も、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との重なり部分が余りに長いと、ネブライザ導入用チューブ13を送液用チューブ11へ差し込む操作が困難になるので、この部分は100mm以下であることが好ましい。
【0046】
図10は、液跳ね防止用カプラー18を設けた第2の接続部分15(3)の模式的な断面図である。
液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分15(3)は、上述した第2の接続部分15を、液跳ね防止用カプラー18内に納めたものである。
【0047】
液跳ね防止用カプラー18は、適宜な樹脂で成形され、両端に送液用チューブ側開口部31とネブライザ導入用チューブ側開口部32が設けられ、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との第2の接続部分15を覆う筒状を有している。筒状を有している液跳ね防止用カプラー18の対向する両端には、それぞれ送液用チューブ11、ネブライザ導入用チューブ13が水密性を保ってカプラー内に導入される。そして、液跳ね防止用カプラー18内において、ネブライザ導入用チューブ13は送液用チューブ11へ差し込まれて接続され、第2の接続部分15を形成している。
【0048】
そして、液圧の増加によって、第2の接続部分15において送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れた際であっても、送液用チューブ11やネブライザ導入用チューブ13が液跳ね防止用カプラー18から外れないように、送液用チューブ11は送液用チューブ側開口部31と、ネブライザ導入用チューブ13はネブライザ導入用チューブ側開口部32と、それぞれ固定されている。この結果、液圧の増加によって、送液用チューブ11およびネブライザ導入用チューブ13の接続が外れても、送液用チューブ11の端末およびネブライザ導入用チューブ13の端末が、液跳ね防止用カプラー18内に担保されることで、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との機械的接続が担保されるものである。
【0049】
また液圧の増加によって、第2の接続部分15において送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れた際には、液跳ね防止用カプラー18内に溶液が漏出するので、液跳ね防止用カプラー18の適宜な場所に液跳ね防止用カプラーのドレーン43を設け、さらに、液跳ね防止用カプラー用ドレーンチューブ44を設けることが好ましい。これによって、漏出した溶液をドレーン孔115へ誘導する。
【0050】
また、第2の接続部分15において送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れた際に、送液用チューブ11やネブライザ導入用チューブ13が液跳ね防止用カプラー18から外れないことのため、および、漏出した液を、液跳ね防止用カプラー用ドレーンチューブ44以外から流れ出させない水密性を保つために、送液用チューブ側開口部31へ送液用チューブ側Oリング33、ネブライザ導入用チューブ側開口部32へネブライザ導入用チューブ側Oリング34をそれぞれ設けておくことが好ましい。
【0051】
以上、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とに係る第2の接続部分15、液跳ね防止用チューブが設けた第2の接続部分15(2)、さらに、液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分15(3)について説明した。
【0052】
一方、例えば、夜間の無人運転時に第2の接続部分15が外れる場合があることを考えると、第2の接続部分15、液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分15(2)、さらに、液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分15(3)は、本発明に係る保護カバー100と遊びを設けて一体化していることが好ましい(以下、「第2の接続部分15、液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分15(2)、さらに、液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分(3)」をまとめて、「第2の接続部分15等」と記載する場合がある)。
【0053】
本発明者らは、第2の接続部分15等を、保護カバー100と遊びを設けて一体化するための構成として、送液用チューブガイドに想到した。以下、保護カバーへ設けた送液用チューブガイドの斜視図である図11、送液用チューブガイド内の断面図である図12、正面から見た保護カバーの斜視図において、送液用チューブガイドの設置位置の一例を示した斜視図である図13を参照しながら、送液用チューブガイド143および、送液用チューブガイド143を用いた第2の接続部分15等と、保護カバー100との遊びを設けた一体化について説明する。
【0054】
尚、送液用チューブガイド143を用いた場合、第2の接続部分15等は、第2の接続部分15、液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分15(2)、さらに、液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分15(3)のいずれであっても良いが、液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分15(2)、さらに、液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分15(3)のいずれであることがより好ましい。そこで、以後の説明においては、液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分15(2)を用いた場合を例として、送液用チューブガイド143について説明する。
【0055】
図11図12図13に示すように、送液用チューブガイド143は、保護カバー100におけるポンプカバー部140の傾斜部142上に設けられたチューブ状の構造で、その内径は第2の接続部分15等における送液用チューブ11の外形より大きい。このため、ポンプ10にて発生する脈動に起因して発生する第2の接続部分15等の振動は、そのまま送液用チューブガイド143の遊びによって受け止められる。
【0056】
一方、送液用チューブガイド143は、適宜な送液用チューブガイド支え部144(図11において薄い灰色で示した)を介して、ポンプカバー部140の傾斜部142上に設置される。この結果、第2の接続部分15等は、保護カバー100と遊びを持った状態で一体化する。
尚、送液用チューブガイド143の設置場所、構造は上述したものに限られるものではなく、本発明の効果を発揮できるものであれば、異なる設置場所、構造としても良い。
【0057】
この結果、第2の接続部分15等内において、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との接続が外れた場合であっても、送液用チューブ11は送液用チューブガイド143内に保持されたままとなり、揺動することが回避される。
この結果、第2の接続部分15において送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13とが外れた状態が長時間継続した場合であっても、送液用チューブ11とネブライザ導入用チューブ13との機械的接続が担保されるものである。
【0058】
従って、送液用チューブ11がポンプ10に巻き込まれるといった事態が十分に回避される。さらに、送液用チューブ11から漏出する溶液も、送液用チューブガイド143または液跳ね防止用カプラー18に受け止められる。そして、漏出する溶液は、ポンプカバー部140を伝うか、さらに、液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分15(3)を用いた場合は液跳ね防止用カプラー用ドレーンチューブ44を通って、ドレーン孔115へ誘導されるので、広範囲の液跳ねが回避される。
これらの効果は、夜間や長期の無人運転のような状況下においては、特に有効である。
【0059】
尚、第2の接続部分15等からネブライザ20へ向かうネブライザ導入用チューブ13は、内外径の細い半硬質性チューブであることから、図10に示す送液用チューブガイドの切り欠き部145を設けることが好ましい。切り欠き部145を設けることにより、ネブライザ導入用チューブ13は、第2の接続部分15等とネブライザ20とを、滑らかに且つ短い距離で結ぶことが出来る。
【0060】
次に、図5~7を用いて、ICP装置の試料導入部2内へ保護カバー100を設置した際に創出される作業スペース114について説明する。
作業スペース114は、底面部110の上面であって且つ正面立面部120より手前側(作業者側)の部分である。作業スペース114はポンプ10に近接したスペースであることから、例えば、液体試料を収納している試料容器の設置場所として最適である。図7に示すように、試料容器の設置方法としては作業スペース114へラック152を置き、ここへ試料容器(例えば、試験管)を所望本数設置することができる。
【0061】
当該構成をとることにより、試料容器とネブライザ20とを結ぶ溶液導入用チューブ12、送液用チューブ11、ネブライザ導入用チューブ13の長さをほぼ最短とすることができ、チューブ内に滞留する溶液量の削減、溶液交換の際の送液系洗浄時間の短縮が図れ、好ましい。
【符号の説明】
【0062】
1.ICP装置
2.試料導入部
4.操作用PC
5.オートサンプラー
6.廃液容器
10.ポンプ
11.送液用チューブ
12.溶液導入用チューブ
13.ネブライザ導入用チューブ
14.第1の接続部分
15.第2の接続部分
15(2).液跳ね防止用チューブを設けた第2の接続部分
15(3).液跳ね防止用カプラーを設けた第2の接続部分
16.チューブ押さえ部
17.液跳ね防止用チューブ
18.液跳ね防止用カプラー
20.ネブライザ
30.サイクロンチャンバ
31.送液用チューブ側開口部
32.ネブライザ導入用チューブ側開口部
33.送液用チューブ側Oリング
34.ネブライザ導入用チューブ側Oリング
35.第1の排出用チューブ
36.第2の排出用チューブ
37.第3の排出用チューブ
38.第3の接続部分
39.第4の接続部分
40.装置本体トレイ
41.漏洩対応排水孔
42.ドレーンチューブ
43.液跳ね防止用カプラーのドレーン
44.液跳ね防止用カプラーのドレーン用チューブ
50.Ar加湿機
100.保護カバー
110.底面部
111.第1の切り欠き部
112.はみ出し部
113.台座
114.作業スペース
115.ドレーン孔
120.正面立面部
121.貫通孔
130.側面立面部
131.第2の切り欠き部
140.ポンプカバー部
141.垂直部
142.傾斜部
143.送液用チューブガイド
144.送液用チューブガイド支え部
145.送液用チューブガイドの切り欠き部
151.純水容器
152.ラック
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13