(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053124
(43)【公開日】2024-04-12
(54)【発明の名称】外用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/68 20060101AFI20240405BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20240405BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20240405BHJP
【FI】
A61K8/68
A61K8/67
A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2024037660
(22)【出願日】2024-03-11
(62)【分割の表示】P 2019113064の分割
【原出願日】2019-06-18
(71)【出願人】
【識別番号】000186588
【氏名又は名称】小林製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(74)【代理人】
【識別番号】100175651
【弁理士】
【氏名又は名称】迫田 恭子
(72)【発明者】
【氏名】浅田 尚紀
(57)【要約】
【課題】本発明の目的は、皮膚バリア機能を改善できる外用組成物を提供することである。
【解決手段】(A)セラミドと、(B)カルニチン、その塩、及び/又はそれらの誘導体とを含む外用組成物は、CEの成熟を効果的に促進でき、皮膚バリア機能を改善効果に優れている。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セラミド、並びに(B)カルニチン、その塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、外用組成物。
【請求項2】
(A)成分として、2種以上のセラミドを含む、請求項1に記載の外用組成物。
【請求項3】
(A)成分が、セラミド1、セラミド2、及びセラミド3からなる群より選択される2種
以上である、請求項1又は2に記載の外用組成物。
【請求項4】
(B)成分が、L-カルニチンである、請求項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
【請求項5】
更に界面活性剤を含む、請求項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚バリア機能を改善できる外用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
表皮は、基底層、有棘層、顆粒層、及び角質層の4層から構成されている。角層は、角層細胞とそれらの隙間を埋める細胞間脂質から構成され、体内の生きた細胞を保護する皮膚バリアとして重要な役割を果たしている。角層細胞は、基底層から徐々に分化しながら皮膚表面側に移動し、最終的に角質細胞となって角質層を形成する。角層細胞に分化する過程において、有棘層ではコーニファイドエンベロープ(Cornified Enve
lope)の前駆体タンパク質(インボルクリン、ロリクリン等)の生成が始まり、当該前駆体タンパク質が顆粒層の上層部でCEになる。CEは、トランスグルタミナーゼにより架橋され不溶化することにより、細胞膜の内張構造を形成し、徐々に成熟しながら角層に至ると、消失する細胞膜に置き換わり、角質細胞の外壁になる。更に、CEは、角層内で十分に成熟することで角層細胞を包み込む丈夫なタンパク質の袋になる。
【0003】
CEは、角層が正常に機能する役割を担っており、CEの成熟促進は、正常な皮膚バリア機能を備えさせる上で重要になっている。そこで、従来、CEの成熟促進に着目して皮膚バリア機能を改善できる外用組成物について検討されている。例えば、特許文献1には、アスタキサンチン及びヘマトコッカス藻抽出物は、CE成熟促進作用があることが開示されている。また、特許文献2には、特定のピロリドン誘導体及び/又はその塩には、CEの形成又は成熟を促進する作用があることが報告されている。また、特許文献3には、酸性キシロオリゴ糖には、CEの構成タンパク質であるインボルクリン及びケラチン10の発現を促進する作用があり、表皮角化正常化剤として使用できることが報告されている。
【0004】
一方、従来、セラミドは、角質層の細胞間脂質における保湿機能成分として知られており、セラミドを含む外用組成物についても種々製品化されている。しかしながら、外部からセラミドを補給するだけでは、CEの成熟促進を十分に図ることができず、皮膚バリア機能を改善する効果は限定的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012-153637号公報
【特許文献2】特開2008-303185号公報
【特許文献3】特開2009-143832号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、皮膚バリア機能を改善できる外用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決すべく鋭意検討を行ったところ、(A)セラミドと、(B)カルニチン、その塩、及び/又はそれらの誘導体とを含む外用組成物は、CEの成熟を促進し、効果的にCEと細胞間脂質によるバリア構造を構築することができ、皮膚バリア機能を改善する効果に優れていることを見出した。本発明は、かかる知見に基づいて、更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. (A)セラミド、並びに(B)カルニチン、その塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種を含有する、外用組成物。
項2. (A)成分として、2種以上のセラミドを含む、項1に記載の外用組成物。
項3. (A)成分が、セラミド1、セラミド2、及びセラミド3からなる群より選択され
る2種以上である、項1又は2に記載の外用組成物。
項4. (B)成分が、L-カルニチンである、項1~3のいずれかに記載の外用組成物。
項5. 更に界面活性剤を含む、項1~4のいずれかに記載の外用組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明の外用組成物によれば、低下した皮膚バリア機能の向上、健全な状態にある皮膚バリア機能の維持、皮膚バリア機能の低下抑制等を図ることができ、更に皮膚バリア機能の低下により引き起こされるアトピー性皮膚炎、乾皮症、老人性乾皮症等の皮膚疾患を予防又は治療することもできる。更に、本発明の外用組成物によれば、CEの成熟を促進することにより、肌の状態の改善又は正常化、肌荒れ改善、敏感肌の改善、皮膚老化の防止等も可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】ヒト表皮モデルを用いて試験前後での経皮水分蒸散量(TEWL)の差(ΔTEWL)を求めた結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の外用組成物は、セラミド((A)成分と表記することもある)、並びにカルニチン、その塩、及びそれらの誘導体からなる群より選択される少なくとも1種((B)成分と表記することもある)を含有することを特徴とする。以下、本発明の外用組成物について詳述する。
【0012】
[(A)セラミド]
本発明の外用組成物はセラミドを含有する。セラミドとは、スフィンゴシン又はフィトスフィンゴシンのアミノ基に脂肪酸がアミド結合により結合している化合物である。
【0013】
本発明で使用されるセラミドにおいて、スフィンゴシン又はフィトスフィンゴシンのアミノ基に結合している脂肪酸の種類については、特に制限されず、水酸基をもたない脂肪酸、α-ヒドロキシ脂肪酸、ω-ヒドロキシ脂肪酸等のいずれであってもよい。
【0014】
本発明で使用されるセラミドの種類としては、具体的には、セラミド1、セラミド2、セラミド3、セラミド4、セラミド5、セラミド6I、セラミド6II、セラミド7、セラミド8、セラミド9、セラミド10等が挙げられる。
【0015】
本発明の外用組成物において、(A)成分として、1種のセラミドを単独で使用してもよく、また2種以上のセラミドを組み合わせて使用してもよい。特に、本発明の外用組成物において、2種以上のセラミドを組み合わせて使用すると、皮膚バリア機能の改善効果をより一層向上させることが可能になる。
【0016】
2種以上のセラミドを使用する場合、セラミドの組み合わせ態様については、特に制限されないが、皮膚バリア機能の改善効果をより一層向上させるという観点から、好ましくは、セラミド1、セラミド2、及びセラミド3の内の2種以上の組み合わせ、より好ましくはセラミド1、セラミド2、及びセラミド3の3種の組み合わせが挙げられる。
【0017】
(A)成分として、セラミド1及びセラミド2の2種を組み合わせて使用する場合、これらのセラミドの比率については、特に制限されないが、例えば、セラミド2:セラミド1の重量比で、1:0.00000002~10000、好ましくは1:0.00000003~10000、より好ましくは1:0.00000003~1、更に好ましくは1:0.0001~0.01が挙げられる。
【0018】
(A)成分として、セラミド1及びセラミド3の2種を組み合わせて使用する場合、これらのセラミドの比率については、特に制限されないが、例えば、セラミド3:セラミド1の重量比で、1:0.0000001~10000、好ましくは1:0.0000002~10000、より好ましくは1:0.0000002~10、更に好ましくは1:0.0001~0.01が挙げられる。
【0019】
(A)成分として、セラミド2及びセラミド3の2種を組み合わせて使用する場合、これらのセラミドの比率については、特に制限されないが、例えば、セラミド3:セラミド2の重量比で、1:0.00001~400000、好ましくは1:0.02~400000、より好ましくは1:0.02~40000、更に好ましくは1:0.1~10が挙げられる。
【0020】
(A)成分として、セラミド1、セラミド2、及びセラミド3の3種を組み合わせて使用する場合、これらのセラミドの比率については、特に制限されないが、例えば、セラミド1:セラミド2:セラミド3の重量比で、0.0000001~10000:0.00001~400000:1、好ましくは0.0000002~10000:0.02~400000:1、より好ましくは0.0000002~10:0.02~40000:1、更に好ましくは0.1~10:100~10000:1が挙げられる。
【0021】
本発明の外用組成物における(A)成分の含有量については、外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量で、0.0000001~5.5重量%、好ましくは0.001~4.5重量%、より好ましくは0.01~4.5重量%が挙げられる。
【0022】
[(B)カルニチン、その塩、及び/又はそれらの誘導体]
本発明の外用組成物は、前記セラミドに加えて、カルニチン、その塩、及び/又はそれらの誘導体を含有する。このようにセラミドとカルニチン等とを併用することにより、CEの成熟を効果的に促進でき、優れた皮膚バリア機能の改善効果を奏することが可能になる。
【0023】
カルニチンとは、リジンとメチオニンから合成されるビタミン様物質である。本発明では、カルニチンとして、L-カルニチン、D-カルニチン、レボカルニチン、及びDL-カルニチンのいずれを使用してもよいが、好ましくはL-カルニチン、DL-カルニチ、より好ましくはL-カルニチンが挙げられる。
【0024】
カルニチンの塩としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、ハロゲン化物塩、金属塩、アンモニウム塩、有機酸塩、無機酸塩等が挙げられる。より具体的には、カルニチンの塩として、塩化物塩;ナトリウム塩、カリウム塩、カルシウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩等の金属塩;アンモニウム塩;酢酸塩、プロピオン酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、コハク酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩等の有機酸塩;塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩等が挙げられる。
【0025】
カルニチンの誘導体としては、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されないが、例えば、アセチルカルニチン、ブチリルカルニチン、バレリルカルニチン、イソバレリルカルニチン、プロピルカルニチン、プロプリオニルカルニチン等のカルニチンのエステル体等が挙げられる。
【0026】
本発明の外用組成物において、(B)成分として、カルニチン、その塩、及びそれらの誘導体の中から1種を選択して単独で使用してもよく、またこれらの中から2種以上を組み合わせて使用してもよい。(B)成分として、皮膚バリア機能の改善効果をより一層向上させるという観点から、好ましくはカルニチン、より好ましくはL-カルニチンが挙げられる。
【0027】
本発明の外用組成物における(B)成分の含有量については、外用組成物の製剤形態等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、(B)成分の総量で、0.00001~10重量%、好ましくは0.0001~10重量%、より好ましくは0.001~10重量%が挙げられる。
【0028】
本発明の外用組成物において、(A)成分に対する(B)成分の比率については、前述する両成分の含有量を満たす範囲内で適宜設定すればよいが、例えば、(A)成分の総量1重量部当たり、(B)成分が総量で0.000001~500000重量部、好ましくは0.000002~50000重量部、より好ましくは0.00002~5000重量部、更に好ましくは1~100重量部が挙げられる。
【0029】
[界面活性剤]
本発明の外用組成物は、界面活性剤を含んでいてもよい。従来、外用組成物には、含有成分の乳化や可溶化のために界面活性剤が配合されることが多いが、外用組成物に配合された界面活性剤は、CEの成熟を遅延させたり、皮膚バリア機能を低下させたりする要因になっている。これに対して、本発明の外用組成物では、界面活性剤を含んでいても、前記(A)成分及び(B)成分による作用が、界面活性剤の前記欠点を凌駕して、優れた皮膚バリア機能の改善効果を奏することができる。
【0030】
本発明で使用される界面活性剤は、薬学的又は香粧学的に許容されることを限度として特に制限されず、非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤、両性界面活性剤のいずれであってもよい。
【0031】
非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグセリン脂肪酸エステル、ソショ糖脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、レシチン誘導体等が挙げられる。
【0032】
また、アニオン性界面活性剤としては、具体的には、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、N-ラウロイルサルコシン酸ナトリウム、N-ミリストリルサルコシン酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、水素添加ココナッツ脂肪酸モノグリセリドモノ硫酸ナトリウム、ラウリルスルホ酢酸ナトリウム、α-オレフィンスルホン酸ナトリウム、N-パルミトイルグルタルミン酸ナトリウム、N-メチル-N-アシルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0033】
カチオン性界面活性剤としては、具体的には、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化ステアリルトリメチルアンモニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ベンザルコニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム等が挙げられる。
【0034】
両性界面活性剤としては、具体的には、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ラウリルジメチルアミンオキシド、2-アルキル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、N-ラウリルジアミノエチルグリシン、N-ミリスチルジアミノエチルグリシン、N-アルキル-1-ヒドロキシエチルイミダゾリンベタインナトリウム、レシチン等が挙げられる。
【0035】
これらの界面活性剤は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0036】
従来技術では、界面活性剤の中でも非イオン性界面活性剤(特に、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)は、CEの成熟を遅延させたり、皮膚バリア機能を低下させたりする作用が強くなる傾向が認められることがあるが、本発明の外用組成物では、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤を含んでいても、優れた皮膚バリア機能の改善効果を奏することができる。このような本発明の効果を鑑みると、界面活性剤の好適な例として、非イオン性界面活性剤、特にポリオキシエチレン硬化ヒマシ油が挙げられる。
【0037】
本発明の外用組成物に界面活性剤を含有させる場合、その含有量については、外用組成物の製剤形態、使用する界面活性剤の種類等に応じて適宜設定すればよいが、例えば、0.0001~30重量%、好ましくは0.0001~10重量%、より好ましくは0.001~10重量%が挙げられる。
【0038】
特に、前述するように、非イオン性界面活性剤は、CEの成熟を遅延させたり、皮膚バリア機能を低下させたりする傾向があり、その含有量が高くなる程(特に、0.5重量%以上、好ましくは1~10重量%)、当該傾向が強く現れ易いが、本発明の外用組成物は、このような含有量で非イオン性界面活性剤を含んでいても、優れた皮膚バリア機能の改善効果を奏することができる。
【0039】
[その他の成分]
本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、薬学的又は香粧学的な生理機能を発揮できる薬効成分が、必要に応じて、含まれていてもよい。このような薬効成分としては、例えば、ステロイド剤、抗ヒスタミン剤、局所麻酔剤、抗炎症剤、殺菌剤、抗菌剤、鎮痒剤、皮膚保護剤、血行促進成分、ビタミン類、ムコ多糖類等が挙げられる。これらの薬効成分は、1種単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、本発明の外用組成物において、これらの薬効成分を含有させる場合、その濃度については、使用する薬効成分の種類、期待する効果等に応じて適宜設定すればよい。
【0040】
また、本発明の外用組成物は、前述する成分の他に、必要に応じて、外用組成物に通常使用される他の添加剤が含まれていてもよい。このような添加剤としては、例えば、水性基剤(水、緩衝液、1価低級アルコール、多価アルコール等)、可溶化剤、油性基剤、油分(動物油、植物油、鉱物油、ワックス、ロウ、エステル油、脂肪酸アルキルエステル、高級脂肪酸、1価高級アルコール、シリコーンオイル、コレステロール等)、増粘剤、キレート剤、防腐剤、保存剤、酸化防止剤、安定化剤、キレート剤、香料、着色料等が挙げられる。本発明の外用組成物において、これらの添加剤を含有させる場合、その含有量については、使用する添加剤の種類等に応じて適宜設定すればよい。
【0041】
[剤型・製剤形態]
本発明の外用組成物の剤型については、経皮適用可能であることを限度として特に制限されず、液状、固形状、半固形状(クリーム状、ゲル状、軟膏状、ペースト状)等のいずれであってもよい。また、本発明の外用組成物は、水中油型乳化製剤、油中水型乳化製剤等の乳化製剤であってもよく、また可溶化型製剤、水性軟膏等の非乳化製剤であってもよい。
【0042】
また、本発明の外用組成物は、皮膚に適用されるものである限り、皮膚外用医薬品、化粧料、皮膚洗浄料等のいずれの製剤形態であってもよい。
【0043】
本発明の外用組成物の製剤形態として、具体的には、クリーム剤、ローション剤、ジェル剤、乳液剤、液剤、パップ剤、貼付剤、リニメント剤、エアゾール剤、軟膏剤、パック剤等の皮膚外用医薬品;軟膏、クリーム、乳液、化粧水、ローション、パック、ゲル等の化粧料;ボディーシャンプー、ヘアシャンプー、リンス等の皮膚洗浄料等が挙げられる。
【0044】
[用途・使用方法]
本発明の外用組成物は、皮膚バリア機能を改善できるので、低下した皮膚バリア機能の向上、健全な状態にある皮膚バリア機能の維持、皮膚バリア機能の低下抑制等の皮膚バリア機能の改善用途に使用される。
【0045】
また、本発明の外用組成物は、皮膚バリア機能を改善することにより、皮膚バリア機能の低下により引き起こされる皮膚疾患を予防又は治療できるので、当該皮膚疾患の予防又は治療剤として使用することもできる。皮膚バリア機能の低下により引き起こされる皮膚疾患としては、具体的には、アトピー性皮膚炎、乾皮症、老人性乾皮症等が挙げられる。
【0046】
更に、本発明の外用組成物は、CEの成熟を促進できるので、CE成熟促進用途に使用することもできる。また、CEの成熟促進は、経皮水分蒸散量(TEWL)を低減させ得るので、本発明の外用組成物は、経皮水分蒸散量の低減用途に使用することもできる。更に、本発明の外用組成物は、CEの成熟を促進することにより、肌の状態の改善又は正常化、肌荒れ改善、敏感肌の改善、皮膚老化の防止等が可能になるので、スキンケア目的で使用することもできる。
【0047】
本発明の外用組成物は、皮膚バリア機能の改善が求められている皮膚に適量塗布又は噴霧することによって使用される。本発明の外用組成物の皮膚への適用量については、剤型、製剤形態、適用する症状の程度等に応じて適宜設定すればよい。例えば、皮膚1cm2当たり、(A)成分量換算で0.00001~10mg程度に該当する外用組成物を適用すればよい。
【実施例0048】
以下に実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0049】
試験例1
ヒト表皮モデルを使用して、TEWLの変化を測定することにより、皮膚バリア機能を評価した。なお、ヒト表皮モデルは、「LabCyte EPI-MODEL24 6D」(株式会社ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング)を使用した。当該ヒト表皮モデルは、底部にメンブランフィルターを有する培養カップにヒト正常表皮細胞を6日間重層培養することにより形成され、初期状態(未熟な状態)の角層を有し、CEが成熟しておらず、TEWL値が高い表皮組織が形成されているヒト3次元培養表皮モデル(24ウェル)である。具体的な試験方法を以下に示す。
【0050】
先ず、「LabCyte EPI-MODEL24 6D」のアッセイプレートの各ウェルに専用のアッセイ培地を0.5ml/ウェルとなるように添加した後に、各ウェルに培養カップを装着して、36℃で24時間培養を行った。培養24時間後に、24ウェルのTEWLを同時に計測できるTEWL測定機器(Tewitro TW24、Courage+Khazaka社製)を用いてウェル毎にTEWLの測定を行った(初期TEWL値)。
【0051】
別途、各種セラミド、L-カルニチン、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油60、オレイン酸、ブチレングリコール、及び精製水を所定量含む混合液を準備し、表1に示す組成となるように専用のアッセイ培地に添加することにより試験培地を作製した。次いで、24時間培養後のアッセイプレートの各ウェルから培養液を除去し、前記で作製した試験培地を0.5ml/ウェルとなるように添加した後に、各ウェルに培養カップを装着して、36℃で120時間培養を行った。培養120時間後に、TEWL測定機器(Tewitro TW24、Courage+Khazaka社製)を用いてウェル毎にTEWLの測定を行った(120時間後の
TEWL値)。初期TEWL値から120時間後のTEWL値を差し引いた値をΔTEWL値として算出した。また、無処置コントロールとして、試験培地の代わりに専用のアッセイ培地(添加成分なし)を使用して同様の試験を行い、ΔTEWL値を求めた。なお、本試験はn=4の条件で行った。
【0052】
【0053】
得られた結果を
図1に示す。セラミド及びL-カルニチンを含まない比較例1では、無処置コントロールに比べて、ΔTEWLが小さくなっていた。これは、比較例1で使用した試験培地に含まれる界面活性剤(ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油)が、CEの成熟を遅延させ、皮膚バリア機能発現を阻害したことに起因していると考えられる。また、セラミド又はL-カルニチンの一方のみを含む比較例2~9では、比較例1よりもΔTEWLが大きくなっているものの、無処置コントロールよりもΔTEWLが小さく、十分な皮膚バリア機能発現は認めらなかった。これに対して、セラミド及びL-カルニチンを含む実施例1~9では、無処置コントロールよりも高いΔTEWLが認められた。即ち、セラミド及びL-カルニチンを併用することによってCEの成熟が促進され、優れたバリア機能を発現させることができていた。特に、2種以上のセラミドとL-カルニチンを組み合わせた場合(特に、セラミド1、2及び3とL-カルニチンを組み合わせた場合)には、ΔTEWLが格段に高く、顕著な皮膚バリア機能の向上が認められた。
【0054】
処方例
表2に示す水中油型乳化状の外用組成物を調製した。これらの外用組成物の使用によって、CEの成熟促進による皮膚バリア機能を改善効果が期待できる。
【0055】