(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053283
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェア
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20240408BHJP
G07D 7/00 20160101ALI20240408BHJP
G07D 7/12 20160101ALI20240408BHJP
B42D 25/382 20140101ALI20240408BHJP
【FI】
B41M3/14
G07D7/00
G07D7/12
B42D25/382
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159428
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】303017679
【氏名又は名称】独立行政法人 国立印刷局
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 加代子
(72)【発明者】
【氏名】木内 正人
【テーマコード(参考)】
2C005
2H113
3E041
【Fターム(参考)】
2C005HA02
2C005HA03
2C005HA04
2C005HB01
2C005HB02
2C005HB03
2C005HB10
2C005JB02
2C005JB12
2C005LA23
2C005LA32
2C005LB12
2C005LB16
2C005LB60
2H113AA04
2H113AA06
2H113BB22
2H113CA34
2H113CA39
2H113CA42
2H113CA44
2H113CA46
2H113FA24
3E041AA10
3E041BA09
3E041BA12
3E041BA20
3E041BB06
3E041BC06
3E041CA01
3E041DB01
(57)【要約】
【課題】生産用、一般家庭用のいずれのプリンタでも印刷出力が可能であるとともに可視画像で必要十分な濃度が得られ顔写真等の階調を有する画像の実用化が可能な偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアを提供する。
【解決手段】
偽造防止印刷物であって、赤外線吸収性色素を含まないインキで形成された可視画像と、赤外線吸収性色素を含むインキで形成された不可視画像と、赤外線吸収性色素を含まないインキで形成された、不可視画像をカモフラージュするためのカモフラージュ画像とを備え、可視画像及びカモフラージュ画像には、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域が存在しないことを特徴とする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成領域を有する偽造防止印刷物であって、
前記画像形成領域において、赤外線吸収性色素を含まないインキで形成された可視画像と、
前記画像形成領域において、赤外線吸収性色素を含むインキで形成された不可視画像と、
前記画像形成領域において、赤外線吸収性色素を含まないインキで形成された、前記不可視画像とネガポジの関係を有し、前記不可視画像をカモフラージュするためのカモフラージュ画像と、
を備え、
前記可視画像及び前記カモフラージュ画像には、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域が存在しないことを特徴とする偽造防止印刷物。
【請求項2】
前記可視画像は、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色又は無色(W)のいずれかを有する複数の画素で形成され、
前記不可視画像は、赤外線吸収性色素を含むブラック(K)の単色を有する複数の画素で形成され、所定の濃度を有し、
前記カモフラージュ画像は、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色のいずれかを有する複数の画素で形成され、かつ、前記所定の濃度を有することを特徴とする請求項1に記載の偽造防止印刷物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の偽造防止印刷物のデータの作成方法であって、
前記可視画像の基画像となる第1の画像データと、前記不可視画像の基画像となる第2の画像データと、を入力するステップと、
前記第2の画像データを用いて、赤外線吸収性色素を含む、前記不可視画像の画像データを取得するステップと、
前記第1の画像データを用いて、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の前記可視画像の画像データと、前記不可視画像の画像データとネガポジ反転の関係にあるカモフラージュ画像を取得するステップと、
前記可視画像の画像データと前記不可視画像の画像データと前記カモフラージュ画像の画像データとを合成するステップと、
を備え、
前記可視画像の画像データと前記カモフラージュ画像の画像データとに対し、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合する領域において、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色のいずれかに置き換えることを特徴とする偽造防止印刷物用データの作成方法。
【請求項4】
シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合する領域において、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色のいずれかに置き換える際に、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色を有する画素、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色を有する画素、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色を有する画素のそれぞれの数が均一となるように、偏りがなく分散して配置されるように置き換えることを特徴とする請求項3に記載の偽造防止印刷物用データの作成方法。
【請求項5】
前記第2の画像データに対し、前記不可視画像が所定の濃度を有するように、出力レベルの調整を行うことを特徴とする請求項3に記載の偽造防止印刷物用データの作成方法。
【請求項6】
偽造防止印刷物用データの作成用ソフトウェアであって、
請求項3に記載の偽造防止印刷物用データの作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする偽造防止印刷物用データの作成用ソフトウェア。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、旅券、各種証明書、重要書類等の偽造及び改ざんの防止が求められる印刷物において、判別具を用いて容易に真偽判別することができる偽造防止印刷物であって、カード型、旅券型及び証明書型に適用可能なもの、またこのような偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアに関するものである。
【背景技術】
【0002】
旅券、各種証明書、重要書類等の印刷物において、偽造及び改ざん防止効果を印刷物に付与し、高いセキュリティ性を持たせることは重要である。これらの印刷物の偽造及び改ざん防止効果を付与する一般的な方法として、印刷物に対して何等かの手段と作用を加えることで、目視では認識することができない不可視画像を出現させるものがある。代表的な例としては、カラー複写機で色が正常に再現されないような機能性インキの付与や、複写では再現が不可能な画線によって構成されたコピー防止画線等を印刷物に付与する方法がある。
【0003】
しかし、近年カラー複写機が高性能となり、複写の解像度や画像の再現性が向上したことにより、コピー防止画線による複写防止効果は陳腐化している。また、通常光下において肉眼では不可視である蛍光インキ等の機能性インキを印刷物に用いることに関しても、蛍光インキの材料等が市販され、誰でも容易に手に入るようになったことで偽造防止効果が低下している。
【0004】
本願出願人は、このような問題を解決すべく、特殊なインキを用いることなく、高解像度な複写機を用いた複写による偽造防止策として、通常光下において肉眼で観察した場合に階調画像が視認され、赤外線カメラ、IR(Infrared)ビューア等の判別具を用いて観察すると異なる階調画像を視認することが可能となる画線印刷物を出願している(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
これは、高解像度なハードコピーにおける偽造防止策として、1つの可視画像領域と、可視画像領域に隣接する1つの不可視画像領域とが複数組配置され、各々の不可視画像領域の周囲が、複数の可視画像領域に囲まれ、可視画像領域は、不可視画像領域より面積が大きく、不可視画像領域は赤外線吸収色素を含むブラックインキを用いて構成された第2aの領域と赤外線吸収色素を含まないインキを用いて構成された黒色系である第2bの領域とを有し、各々の不可視画像領域における第2aの領域と第2bの領域との比率に応じて、複数の不可視画像領域における第2aの領域により階調画像が形成されていることを特徴とする画線印刷物であり、
図1を用いて説明する。
図1(a)は偽造防止画像(3a)の拡大図に相当し、
図1(b)は偽造防止画像(3a)を通常光において肉眼で観察した場合に視認される可視画像を示し、
図1(c)は偽造防止画像(3a)を構成する赤外吸収色素を含むインキで形成された不可視画像を示している。
【0006】
図1(a)に示されるように、偽造防止画像(3a)は、1つの可視画像領域(101a)と、可視画像領域に隣接する1つの不可視画像領域(101b)とを備えたユニットが複数組配置され、各々の不可視画像領域(101b)の周囲が、複数の可視画像領域(101a)に囲まれるように配置されている。
【0007】
そして可視画像領域(101a)は、不可視画像領域(101b)より大きい面積を有する。不可視画像領域(101b)は、赤外線吸収色素を含むブラック(K)のインキを用いて階調を再現する画線と、この画線を隠蔽するため、赤外線吸収色素をそれぞれ含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の合成色によるインキを用いて階調を再現するスクエア形状の画線で構成されている。
【0008】
赤外線カメラ等の判別具で観察すると、ブラックインキで形成された画線によって構成された階調を有する画像(例えば、
図1(c)で示された「NPB」の文字)が視認される。可視画像領域(101a)には、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインキを用いて階調画像が形成されており、通常光下において肉眼視では可視画像のようなカラーの階調画像が視認される。
【0009】
しかしながら、特許文献1に記載された発明では、
図1(c)に示された連続階調を成す不可視画像の解像度を確保するためには、不可視画像領域は必要最低限度の画素数を有する必要があった。しかしながら、解像度の低い出力デバイスでは、連続階調を設けるために必要な画素数を設定することができず、偽造防止画像(3a)の色再現性は極めて低いものであった。
【0010】
例えば、出力解像度が600dpiのカラープリンタにおいては、16階調の不可視画像を形成するためには不可視画像領域(101b)には少なくとも縦横4画素が必要であり、可視画像領域(101a)では少なくとも縦横8画素が必要となる。そこから換算される画線の線数は70線/インチ相当の画像分解能となってしまい、解像度の低い不鮮明な画像として観察者に視認されていた。
【0011】
また、特許文献1に記載された印刷物における画線形状は、
図1(a)に示されるように、可視画像領域(101a)を形成する画線と不可視画像領域(101b)を形成する画線とで形状が異なっていた。したがって、この印刷物は通常の印刷で用いられるような一般的なスクリーン(円ドットや、スクエアドットといった振幅変調(AM)スクリーン、周波数変調(FM)スクリーン等)では作成することができず、特殊なスクリーンを用いなければならないため偽造抑止力があった。しかしながらその一方で、一般的なスクリーンでは形成することができないという作成上の制約があった。
【0012】
また、本願出願人は、特殊なスクリーンを用いることなく、可視画像領域と不可視画像領域とを分けずに形成する発明を出願(例えば、特許文献2参照)している。
【0013】
より具体的には、赤外線吸収色素を含むブラック(K)のインキを用いて形成された不可視画像が形成されている領域において、赤外線吸収色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインキを用いて形成された可視画像から不可視画像の濃度を差し引くことで、不可視画像の不可視化を実現している。
【0014】
この発明では、高価格の生産用プリンタを用いた場合には、可視画像を構成するシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の画像信号、並びに不可視画像を構成するブラック(K)の画像信号をプリンタに入力した場合に、直接シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のインキを用いて可視画像を印刷し、さらにブラック(K)のインキを用いて不可視画像を印刷するため、偽造防止印刷物の印刷出力が可能であった。
【0015】
しかしながら、広く普及している一般家庭用のプリンタでは、製造者ごとにインキの色相等が大きく異なることに対応するため、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の画像信号、並びに不可視画像を構成するブラック(K)の画像信号をプリンタに入力すると、内蔵されているプリンタドライバによってより色の再現領域が広いレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の画像信号に一旦変換され、この後シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の画像信号に再度変換されて印刷される。
【0016】
ここで、入力したシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の画像信号がレッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の画像信号に変換される過程で、潜像画像を構成する赤外線吸収性色素を含むブラック(K)の画像信号が消失した状態となり、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の画像信号からシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の画像信号に変換される過程で、3色が重なった領域ではプリンタドライバの判断によりブラック(K)のインキが用いられることが多い。このため、可視画像と不可視画像とを意図した通りに正確に区別して印刷することができなかった。この結果、一般家庭用のプリンタでは偽造防止印刷物の印刷出力は不可能という課題があった。
【0017】
そこで本願出願人は、生産用プリンタのみならず一般家庭用のプリンタでも印刷出力が可能な偽造防止印刷物の発明を出願(特願2021-48023号)している。
【0018】
この発明では、レッド(R)、グリーン(G)及びブルー(B)の画像信号を用いて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)の4色のうちのいずれか1色のみを有する画素により可視画像を形成し、ブラック(K)の画素により不可視画像を形成することにより、可視画像領域においてシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が同一領域において重なって存在しプリンタドライバによりブラック(K)に変換される事態を回避していた。
【0019】
しかしながら、この発明によれば各画素は1色しか有していないため、最大濃度が基画像の約25%しか得られず、可視画像のコントラストが極めて低いという課題があった。このため、可視画像では顔写真等の階調を有する画像を実用化することが困難であるという課題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特許第3544536号公報
【特許文献2】特開2022-123294号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
本発明は上記事情に鑑み、生産用プリンタのみならず一般家庭用のプリンタによっても可視画像と不可視画像とを意図した通りに正確に印刷出力することが可能であるとともに、可視画像において必要十分な濃度が得られ、顔写真等の階調を有する画像の実用化が可能な偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明の偽造防止印刷物は、画像形成領域を有する偽造防止印刷物であって、画像形成領域において、赤外線吸収性色素を含まないインキで形成された可視画像と、画像形成領域において、赤外線吸収性色素を含むインキで形成された不可視画像と、画像形成領域において、赤外線吸収性色素を含まないインキで形成された、不可視画像をカモフラージュするためのカモフラージュ画像と、を備え、可視画像及びカモフラージュ画像には、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域が存在しないことを特徴とする。
【0023】
可視画像は、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色、又は無色(W)のいずれかを有する複数の画素で形成され、不可視画像は、赤外線吸収性色素を含むブラック(K)の単色を有する複数の画素で形成され、所定の濃度を有し、カモフラージュ画像は、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色のいずれかを有する複数の画素で形成され、かつ所定の濃度を有するものであってもよい。
【0024】
カモフラージュ画像は、画像形成領域において、不可視画像が形成されていない領域の少なくとも一部に形成されているものであってもよい。
【0025】
カモフラージュ画像は、画像形成領域において、不可視画像が形成された領域の周辺部分の少なくとも一部に形成されているものであってもよい。
【0026】
カモフラージュ画像は、画像形成領域において、不可視画像が形成されていない領域全体を覆うように形成されているものであってもよい。
【0027】
画像形成領域において、可視画像の少なくとも一部と不可視画像の少なくとも一部とが同じ領域を共有するように形成され、可視画像の少なくとも一部とカモフラージュ画像の少なくとも一部とが同じ領域を共有するように形成されていてもよい。
【0028】
画像形成領域の濃度は、全ての領域において所定の濃度以上であってもよい。
【0029】
本発明の上記偽造防止印刷物のデータの作成方法は、可視画像の基画像となる第1の画像データと、不可視画像の基画像となる第2の画像データとを入力するステップと、第1の画像データを用いて、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の可視画像の画像データを取得するステップと、第2の画像データを用いて、赤外線吸収性色素を含む、不可視画像の画像データを取得するステップと、不可視画像の画像データに基づいて、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のカモフラージュ画像の画像データを取得するステップと、可視画像の画像データと不可視画像の画像データとカモフラージュ画像の画像データとを合成するステップと、を備え、可視画像の画像データとカモフラージュ画像の画像データとに対し、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合する領域において、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色のいずれかに置き換えることを特徴とする。
【0030】
シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合する領域において、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色のいずれかに置き換える際に、シアン(C)及びマゼンタ(M)の2色混色を有する画素、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の2色混色を有する画素、シアン(C)及びイエロー(Y)の2色混色を有する画素のそれぞれの数が均一となるように、偏りがなく分散して配置されるように置き換えてもよい。
【0031】
第2の画像データに対し、不可視画像が所定の濃度を有するように、出力レベルの調整を行ってもよい。
【0032】
本発明の偽造防止印刷物用データの作成用ソフトウェアは、上記偽造防止印刷物用データの作成方法をコンピュータに実行させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、生産用プリンタのみならず一般家庭用のプリンタを用いた場合にも可視画像と不可視画像とを意図したとおりに正確に区別して印刷出力が可能であるとともに、可視画像において必要十分な濃度が得られ、顔写真等の階調を有する画像の実用化が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【
図1】従来技術による偽造防止印刷物の構成を示した部分拡大図、通常の可視光下で肉眼により視認される可視画像及び赤外線照射下で視認される不可視画像を示した説明図。
【
図2】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物が、濃度20%以上の領域で、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びマゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)により可視画像が形成され、濃度20%未満の領域でブラック(K)により不可視画像が形成され、濃度20%未満の領域でシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)によりカモフラージュ画像が形成されていることを示した説明図。
【
図3】同実施の形態による偽造防止印刷物が、可視画像、不可視画像が形成されていない領域に形成されたカモフラージュ画像、不可視画像を重ね合わせて作成されることを示した説明図。
【
図4】同実施の形態による偽造防止印刷物における可視画像において、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域に用いられる、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)を示した説明図。
【
図5】同実施の形態による偽造防止印刷物における可視画像において、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を有する可視画像が、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びシアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)のいずれかに着色された画素で形成されることを示した説明図。
【
図6】同実施の形態による偽造防止印刷物が、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色又はシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)3色が混合した領域がマゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びシアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)のパターンに置き換えられた可視画像、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)3色が混合した領域がマゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びシアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)のパターンに置き換えられたカモフラージュ画像、ブラック(K)で形成された不可視画像とを重ね合わせて形成されることを示した説明図。
【
図7】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置の構成を示したブロック図。
【
図8】本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成方法の手順を示すフローチャート。
【
図9】同実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成方法において、可視画像でシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した画素が存在する場合に、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布された画素に置き換える一例を示した説明図。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態による偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアについて、図面を参照して説明する。
【0036】
本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物は、図示しない画像形成領域を有しており、画像形成領域は、通常の可視光下において肉眼で視認可能な可視画像と、通常の可視光下において肉眼では視認が困難であり赤外線カメラやIRビューア等により赤外線が照射された状態で視認が可能な不可視画像と、通常の可視光下で肉眼によりカモフラージュ画像の視認が困難になるように不可視画像をカモフラージュするためのカモフラージュ画像とを備えている。
【0037】
可視画像、不可視画像及びカモフラージュ画像は、
図2に示されたように濃度領域において区別して形成される。
【0038】
所定の濃度以上、例えば濃度20%以上の領域において、赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色及びイエロー(Y)の単色に加えて、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のトナーまたは顔料インク等により可視画像が形成されている。
【0039】
そして、濃度20%未満の領域で、赤外線吸収性色素を含むブラック(K)のトナー、顔料インク等により不可視画像が形成され、濃度20%未満の領域で赤外線吸収性色素を含まない、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びマゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)によりカモフラージュ画像が形成されている。
【0040】
本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物における可視画像11、不可視画像12、カモフラージュ画像13の相互関係について
図3を用いて説明する。
【0041】
偽造防止印刷物は、図示されていない基材上の少なくとも一部の印刷領域に、可視画像11、不可視画像12、カモフラージュ画像13が形成されている。
【0042】
可視画像11は、例えば顔画像等に好適な連続階調を有することが可能なカラー画像であり、顔画像には限られず、例えば文字、数字、記号、図形、マーク、図柄、模様、顔画像、風景画像等の任意の画像であって、印刷領域の少なくとも一部に形成されている。
【0043】
不可視画像12は赤外線を照射した状態で視認されることを意図した画像であって、例えば文字、数字、記号、図形、マーク、図柄、模様、顔画像、風景画像等の任意の画像を有し、印刷領域の少なくとも一部に形成されている。不可視画像12の少なくとも一部と可視画像11の少なくとも一部とは、同じ領域を共有するように形成されていてもよく、あるいは共有しなくともよい。
【0044】
カモフラージュ画像13は、印刷領域において、不可視画像12が形成されていない領域の少なくとも一部に形成されていてもよい。例えば、不可視画像12が形成された領域の周辺部分の少なくとも一部に形成されており、あるいは不可視画像12の周辺部分を覆うように形成されており、あるいは印刷領域における不可視画像12が形成されていない部分全体を覆うように形成されていてもよい。カモフラージュ画像13の少なくとも一部と可視画像11の少なくとも一部とは、同じ領域を共有するように形成されていてもよく、あるいは共有しなくともよい。
【0045】
このような可視画像11、不可視画像12、カモフラージュ画像13が、印刷領域において重ね合わされて合成画像21として形成されている。
【0046】
この結果、偽造防止印刷物としては、全体の濃度が所定の濃度、例えば20%以上を有する。また、20%未満の濃度のブラック(K)で形成された不可視画像12、20%未満の濃度の、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びマゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)で形成されたカモフラージュ画像13が可視画像11に重ね合わされて合成されていることにより、合成画像21は、通常の可視光下において肉眼ではややグレーを帯びた濃度が高い色調を有する。
【0047】
ここでいう所定の濃度は、適宜設定するものとし、偽造防止印刷物を通常の可視光下において肉眼で視認した場合の不可視画像の隠蔽性に必要な濃度や、可視画像として顔写真等の階調を表現したい場合に必要な濃度によって決定する。
【0048】
なお、カモフラージュ画像13は不可視画像12と等色に視認されるものであって、カモフラージュ画像13の最大濃度が不可視画像12の最大濃度と同じであり、カモフラージュ画像13の最小濃度が不可視画像12の最小濃度と肉眼で観察されるように、カモフラージュ画像13と不可視画像12はネガポジ反転された関係にある。
【0049】
図4に、可視画像11で用いられる、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色及びイエロー(Y)の単色をそれぞれ示す。可視画像11の基画像において、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域において、この3色に置き換えられて用いられる、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)を示す。
【0050】
図5に、規則的にマトリクス状に配置された複数の画素パターンにおいて、シアン(C)の単色が塗布された画素及び塗布されていない無色(W)の画素を含む画素パターン31、マゼンタ(M)の単色が塗布された画素及び塗布されていない無色(W)の画素を含む画素パターン32、イエロー(Y)の単色が塗布された画素及び塗布されていない無色(W)の画素を含む画素パターン33を示す。
【0051】
画素パターン31、32、33を重ね合わせた合成画像41は、無色(W)の画素、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のいずれか1色が塗布された画素、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布された画素の他に、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した画素は、後述するようにいずれか2色の混色、すなわち、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに置き換えられた画素が存在する。
【0052】
図6に、偽造防止印刷物における可視画像11、不可視画像12、カモフラージュ画像13のそれぞれの具体的な一例を示す。
【0053】
シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色及びイエロー(Y)の単色のそれぞれで顔画像が表されており、これらの3色の画像が重ね合わされて可視画像11となる。
【0054】
ブラック(K)の単色(濃度が例えば20%未満)で不可視画像12が形成されている。シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色及びイエロー(Y)の単色のそれぞれでカモフラージュ画像13が表され、これらの3色の画像が重ね合わされてカモフラージュ画像13となる。
【0055】
ここで上述したように、可視画像11、カモフラージュ画像13では、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域が、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに置き換えられる。
【0056】
これにより、可視画像11、カモフラージュ画像13を構成する画素は、無色(W)、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)及びマゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布され、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合して塗布された画素は存在しないことになる。
【0057】
本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置、作成方法及び作成用ソフトウェアについて説明する。
【0058】
このデータの作成装置、作成方法及び作成用ソフトウェアは、基画像となる顔画像等の連続階調を有するカラー画像を基画像として可視画像11を作成し、例えば顔画像等の可視画像11と、例えば個人情報等として何らかの関連のある文字、数字、記号、図形、マーク、図柄、模様、顔画像、風景画像等の任意の画像を基画像として不可視画像12を作成し、この不可視画像12をカモフラージュするカモフラージュ画像13を作成して3つの画像を合成する偽造防止印刷物のデータを作成するものである。
【0059】
(データの作成装置)
図7に示されたように、本実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成装置は、入力手段M1、編集手段M2、表示手段M3、出力手段M4、通信インターフェースM5、データベースM6、記憶手段M7を備えている。
【0060】
通信インターフェースM5は、図示されていないネットワークに接続されたコンピュータ端末と、当該偽造防止印刷物用データの作成装置とを接続する。
【0061】
データベースM6は、可視画像11、不可視画像12のそれぞれの基画像に相当する画像データを予め格納する。
【0062】
入力手段M1は、可視画像入力手段M1a、不可視画像入力手段M1bを備えている。
【0063】
可視画像入力手段M1aは、通信インターフェースM5を介して所望の画像データを入力し、あるいはデータベースM6に予め格納されていた画像データを入力することにより、可視画像11の基画像を取得する。
【0064】
不可視画像入力手段M1bは、可視画像入力手段M1aと同様に通信インターフェースM5を介して所望の画像データを入力し、あるいはデータベースM6に予め格納されていた画像データを入力することにより、不可視画像12の基画像を取得する。なお、カモフラージュ画像13は、不可視画像12の基画像を用いて不可視画像12が形成されていない領域に形成することで画像データを取得することができる。
【0065】
編集手段M2は、出力レベル調整手段M2a、CMYK画像及びグレースケール画像変換手段M2b、合成手段M2c、パターン置き換え手段M2dを備えている。
【0066】
出力レベル調整手段M2aは、入力手段M1が取得した可視画像11の基画像、不可視画像12の基画像に相当する画像データ、カモフラージュ画像13の画像データに対して出力レベルの調整を行う。出力レベルの調整方法については、後述するデータの作成方法で説明する。
【0067】
CMYK画像及びグレースケール画像変換手段M2bは、出力レベルが調整された可視画像11の画像データ、不可視画像12の画像データに対して、必要に応じて、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のカラーの連続階調を有するCMYK画像と白黒の連続階調を有するグレースケール画像との間で変換処理を行う。
【0068】
可視画像11の基画像となる画像データの多くは、顔写真等のようにRGB形式である。よって、RGB画像データをCMYK形式の画像データに変換する必要がある。また、可視画像11の基画像の画像データがCMYK形式である場合も、後述するようにブラック(K)の絵柄を含まないCMYK形式の画像データとする必要があるため、このCMYK画像・グレースケール画像変換手段M2bによる処理が必要である。不可視画像12の基画像がカラー画像の場合には、このCMYK画像・グレースケール画像変換手段M2bにより、白黒の連続階調を有するグレースケール画像に変換する必要があり、基画像がグレースケール画像である場合は変換処理を行わない。
【0069】
合成手段M2cは、CMYK画像とグレースケール画像との間で変換処理が行われた可視画像11の画像データと不可視画像12の画像データと、不可視画像12が形成されていない領域に形成するカモフラージュ画像13の画像データとを合成する。
【0070】
パターン置き換え手段M2dは、可視画像11及びカモフラージュ画像13のCMYK画像において、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が重なり合った領域を、後述するように、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のパターンに置き換える処理を行う。
【0071】
表示手段M3は、入力手段M1が入力した画像、編集手段M2が編集処理を行った画像をモニタとして表示する。
【0072】
出力手段M4は、カラーレーザプリンタ等の生産用プリンタ、カラーインクジェットプリンタ等の一般家庭用のプリンタであって、編集手段M2から画像データを与えられて印刷出力する。
【0073】
記憶手段M7は、入力手段M1、通信インターフェースM5、データベースM6によって入力された画像データを格納し、編集手段M2の処理に必要なデータ、処理されたデータ等を記憶する。
【0074】
(データの作成方法)
図8に、本発明の一実施の形態による偽造防止印刷物用データの作成方法の手順を示す。なお、説明はステップ1から順に行うが、
図8に示すとおりデータ作成の開始後、ステップ1とステップ4は同時に実行してもよい。
【0075】
ステップS1として、可視画像入力手段M1aにより、可視画像11の基画像となる画像データを取得する。
【0076】
ステップS2として、出力レベル調整手段M2aにより、取得した可視画像11の基画像となる画像データの出力レベルの調整を行う。
【0077】
ステップS3として、CMYK画像・グレースケール画像変換手段M2bにより、出力レベルが調整された可視画像11の画像データを、CMYK画像データV(x,y)(=Cv(x,y)+Mv(x,y)+Yv(x,y)+Kv(x,y))に変換する。ここで、Kv(x,y)は白画像である。
【0078】
上述したように、可視画像11の基画像となる画像データの多くはRGB形式であるため、RGB画像データをCMYK形式の画像データに変換する。可視画像11の基画像の画像データがCMYK形式である場合も、後述するようにブラック(K)の絵柄を含まないCMYK形式の画像データとする必要がある。
【0079】
なお、RGB形式の画像データをCMYK形式の画像データに変換する際に、プロファイルと称される色変換テーブルが用いられる。どのような色変換テーブルが用いられるかによって変換結果が異なる。ここでは、可視画像11をシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のみで構成しブラック(K)の絵柄を含まない白画像とするように変換する必要があるため、専用の色変換テーブルを用いる必要がある。
【0080】
また、ステップS4として、不可視画像入力手段M1bにより、不可視画像12の基画像となる画像データを取得する。なお、カモフラージュ画像13は、上述したように、不可視画像12の基画像を用いて不可視画像12が形成されていない領域に形成することで画像データを取得することができる。つまり、当該ステップによってカモフラージュ画像13が取得され、可視画像11の基画像を取得するステップ1に含まれる。その後、カモフラージュ画像13を可視画像11に含んだ構成としてステップ2の出力レベルの調整を行うこととなる。
【0081】
ステップS5として、出力レベル調整手段M2aにより、取得した不可視画像12の基画像となる画像データの出力レベルの調整を行う。カモフラージュ画像13の出力レベルは、不可視画像12の出力レベルと同一とする。
【0082】
なお、出力レベルの調整とは、不可視画像を正反射光下において視認できないように濃度調整を行うことである。24bitRGB画像のRGBそれぞれのチャンネルのグレーレベルは0~255であり、仮に、不可視画像12の濃度の最大値を20%とすると、対応するグレーレベルは204であることから、基画像の出力レベルを調整することで、グレーレベルを0~204に圧縮する。グレーレベル0~204にのみ画素が存在するように圧縮し調整される。圧縮とは205~255のグレーレベルに存在する画素をなくし、0~204のグレーレベルに振り分けることである。すなわち、基画像データの濃度の最小値は20%となる。
【0083】
出力レベルの調整は一般的な画像処理方法にて実現され、画像のヒストグラムを変更する方法や画像のトーンカーブを変更する方法等により実現される。
【0084】
ステップS6として、CMYK画像・グレースケール画像変換手段M2bにより、出力レベルが調整された不可視画像12の画像データがカラー画像の場合、グレースケール画像データH(x,y)(=Kh(x,y))に変換する。
【0085】
ステップS7として、可視画像11の画像データ(V(x,y)=Cv(x,y)+Mv(x,y)+Yv(x,y)+Kv(x,y))と、不可視画像12の画像データ(H(x,y)=Kh(x,y))とを合成し、合成画像データ(I(x,y)=Cv(x,y)+Mv(x,y)+Yv(x,y)+Kh(x,y))を取得する。さらに、不可視画像12が形成されていない領域に形成するカモフラージュ画像13の画像を合成する。
【0086】
ステップS8として、パターン置き換え手段M2dにより、可視画像11及びカモフラージュ画像13のCMYK画像において、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が重なり合った画素が存在する場合に、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布された画素に置き換える処理を行う。
【0087】
なお、
図8に示されたフローでは、ステップS8における置き換え処理をステップS7の合体処理の後に行っている。しかし、ステップS8の置き換え処理は、ステップS7の前段階で行ってもよい。
【0088】
図9に示されたように、可視画像11のカラーの絵柄が、8×8の画素を有し、無色(W)、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)及びシアン(C)とマゼンタ(M)とイエロー(Y)の3色が重なり赤外線吸収性色素を含まないブラック(C+M+Y)のいずれかで塗布された画素パターン51により構成されているとする。
【0089】
この画素パターン51には、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が重なり赤外線吸収性色素を含まないブラック(C+M+Y)で塗布された画素パターン53と、それ以外の画素パターン52とに分離することができる。
【0090】
一方、画素パターン51と同じ画素数、同じ画素サイズで、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布された画素パターン62を用意する。この画素パターン62は、3×3の画素を有し、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布された画素から成る画素パターン61を繰り返したものに相当する。
【0091】
画素パターン61は、3×3の画素において、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)で塗布された画素と、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)で塗布された画素と、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)で塗布された画素の数がいずれも3個で均一であり、かつ同一色が集中して偏ることがないように分散して配列されている。
【0092】
同一色が集中して偏ることがないように分散して配列とは、本実施の形態の場合、同一色の画素が2個隣接する配列は存在するが、同一色の画素が3個隣接しないよう配列している。したがって、画素パターン61を繰り返して配列した画素パターン61においても、同一色の画素が2個隣接する配列は存在するが、同一色の画素が3個隣接しないよう配列となる。
【0093】
本実施の形態においては、絵柄を8×8の画素、画素パターン61を3×3の画素、画素パターン62を8×8の画素で説明したが、これに限定されるものではなく適宜設定するものである。したがって、画素パターン61においても同一色の画素が3個隣接しないよう配列する形態で説明したが、これに限定されるものではなく、絵柄のサイズ、階調に対応した画素数等によって設定する。
【0094】
画素パターン53において、赤外線吸収性色素を含まないブラック(C+M+Y)で塗布された画素と同一の位置に配列された画素パターン62における画素の色を抽出して置き換えることで、画素パターン54を生成する。生成された画素パターン54は、赤外線吸収性色素を含まないブラック(C+M+Y)に替えて、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布され、かつそれぞれの色の総数がほぼ均一であり、また同一色が偏ることがないように分散して配置されている。
【0095】
この画素パターン54と、分離しておいた、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が重なった画素以外の画素で構成された画素パターン52とを合成し、画素パターン55を取得する。
【0096】
このようにして、可視画像11、カモフラージュ画像13においてシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が重なり合った画素を、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)のいずれかに塗布された画素に置き換えることができる。
【0097】
これにより、一般家庭用のプリンタを用いた場合であっても、可視画像11、カモフラージュ画像13に含まれる画素が、赤外線吸収性色素を含むブラック(K)に変換されて印刷されてしまい、可視画像11とカモフラージュ画像13とを意図した通りに正確に再現することができない事態を回避することができる。
【0098】
本実施の形態による偽造防止印刷物によれば、生産用プリンタ、一般家庭用のプリンタを問わず、あらゆるプリンタにより印刷出力することができる。
【0099】
生産用プリンタでは、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のデータを与えられて、直接基材上にシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を塗布するように指示を出して印刷する。これは、生産用プリンタでは各色のインキの色相等にばらつきが殆どなく色の再現性が高いために可能となる。
【0100】
一方で、一般家庭用のプリンタでは、製造者ごとに各色のインキの色相等が大きく異なり、色の再現性が極めて低いという実情がある。このため、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のデータを与えられて、直接基材上にシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)を塗布すると、製造者ごとに大きく色相等の異なる印刷物が出力されることとなる。
【0101】
そこで、プリンタ内部に変換用ドライバソフトを備え、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のデータを、より色の再現領域が広いレッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)のデータに一旦変換し、再度、各製造者のインクの色相等を考慮した専用カラープロファイルに基づいてシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)及びブラック(K)のデータに変換した後、印刷出力するという処理が行われている。
【0102】
このような一般家庭用のプリンタに対し、可視画像11を形成する赤外線吸収性色素を含まないシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のデータと、赤外線吸収性色素を含む不可視画像12を形成するブラック(K)のデータとを与えると、上述したようにこれらのデータを一旦レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)のデータに変換し、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)のデータに変換した際に、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した赤外線吸収性色素を含まないブラックを、ドライバソフトが赤外線吸収性色素を含むブラック(K)に変換してしまい、可視画像11と不可視画像12とを意図したように再現することができないという事態が発生する。
【0103】
そこで、本実施の形態による偽造防止印刷物では、上述したように、可視画像11、並びにカモフラージュ画像13に対しては、シアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した画素を用いることなく、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)又は無色(W、基材の色を示す)のいずれかのみを有する画素で形成するようにしている。
【0104】
可視画像11においてシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域がある場合は、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)、のいずれかを有する画素を組み合わせたパターンによって置き換える。
【0105】
これにより、赤外線吸収性色素を含まない可視画像11におけるシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域が、プリンタドライバの判断によって赤外線吸収性色素を含むブラック(K)に置き換えられて出力されるという事態を回避し、可視画像11と不可視画像12とを意図したように再現することが可能となる。
【0106】
ここで、可視画像11を形成する画素が、シアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)又は無色(W)のいずれとなるかは、可視画像11に応じて決定される。
【0107】
さらに、可視画像11をシアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色及びイエロー(Y)の単色のいずれかのみで形成した場合には、可視画像11の最大濃度は基画像の約25%というように極めて濃度が低くコントラストが低くなる。
【0108】
これに対し、本実施の形態によれば、可視画像11をシアン(C)の単色、マゼンタ(M)の単色、イエロー(Y)の単色に加えて、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)を用いて形成することで、濃度が高くなりコントラストを向上させることができる。特に、証明書等において多用される顔画像等の階調を有する可視画像11では視認性が向上し有益である。
【0109】
(データの作成用ソフトウェア)
偽造防止印刷物用データの作成用ソフトウェアについて説明する。
【0110】
本実施の形態によるデータの作成方法をコンピュータに実行させるソフトウェアにより、偽造防止印刷物用データを作成することができる。
【0111】
本発明の実施の形態について説明したが、この実施の形態は例として提示したものであり、発明の技術的範囲を限定することは意図していない。この新規な実施の形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施の形態やその変形は、発明の技術的範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0112】
例えば、上記実施の形態では、赤外線吸収色素を含まない非赤外画像である可視画像は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、シアン(C)とマゼンタ(M)との2色を掛け合わせた擬似ブルー(B)、シアン(C)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似グリーン(G)、マゼンタ(M)とイエロー(Y)との2色を掛け合わせた擬似レッド(R)、無色(W)の7通りの色を全て含んでいる。しかしながら、可視画像はシアン(C)、マゼンタ(M)及びイエロー(Y)の3色が混合した領域が存在しなければよく、必ずしも7通りの色を全て含む必要はない。
【0113】
以上説明した本実施の形態による偽造防止印刷物、偽造防止印刷物用データの作成方法及び作成用ソフトウェアによれば、上述したように生産用プリンタのみならず一般家庭用のプリンタでも印刷出力が可能であるとともに、可視画像において必要十分な濃度が得られ、顔写真等の階調を有する画像の実用化が可能である。
【符号の説明】
【0114】
11 可視画像
12 不可視画像
13 カモフラージュ画像
21 合成画像
31~33、51~55、61~63 画素パターン
41 合成画像
M1 入力手段
M1a 可視画像入力手段
M1b 不可視画像入力手段
M2 編集手段
M2a 出力レベル調整手段
M2b CMYK画像・グレースケール画像変換手段
M2c 合成手段
M2d パターン置き換え手段
M3 表示手段
M4 出力手段
M5 通信インターフェース
M6 データベース
M7 記憶手段