(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053303
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】水力発電装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
F03B 11/00 20060101AFI20240408BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20240408BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20240408BHJP
B33Y 50/00 20150101ALI20240408BHJP
H02K 7/18 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
F03B11/00 A
B33Y80/00
B33Y70/00
B33Y50/00
H02K7/18 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159470
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 啓
(72)【発明者】
【氏名】三宅 啓一
【テーマコード(参考)】
3H072
5H607
【Fターム(参考)】
3H072AA02
3H072BB01
3H072BB02
3H072BB06
3H072CC42
3H072CC92
5H607BB02
5H607BB26
5H607CC05
5H607CC09
5H607DD19
5H607FF27
(57)【要約】
【課題】容易に組み立てることができ、新興国等の現地での部品交換、修理、及びメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる水力発電装置の製造方法の提供。
【解決手段】発電機の形状に対応した形状の部品を三次元プリンタにより造形する造形工程と、前記発電機の形状に対応した形状の部品を用いて水力発電装置を組立てる組立工程と、を含む水力発電装置の製造方法である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発電部の形状に対応した形状の部品を三次元プリンタにより造形する造形工程と、
前記発電部の形状に対応した形状の部品を用いて水力発電装置を組立てる組立工程と、
を含むことを特徴とする水力発電装置の製造方法。
【請求項2】
前記発電部の形状情報を取得し、造形データを作成する造形データ作成工程、
を含む、請求項1に記載の水力発電装置の製造方法。
【請求項3】
前記発電部の形状に対応した形状の部品が、回転軸に回転可能に接続された回転体と、前記発電部とを接続する接続部材である、請求項1から2のいずれかに記載の水力発電装置の製造方法。
【請求項4】
前記回転体の少なくとも一部が再生プラスチック及びバイオプラスチックの少なくともいずれかを含む、請求項3に記載の水力発電装置の製造方法。
【請求項5】
前記発電部がハブダイナモである、請求項1から2のいずれかに記載の水力発電装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水力発電装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、欧州、及びアジア等の新興国において、環境性、及び再生エネルギーの有効活用の観点から、出力100kW以下のピコ水力発電又はマイクロ水力発電が普及し始めてきているが、メンテナンス性又は低コストなどを満足できるものは提供されていない。
【0003】
農業用水路等の比較的流量の少ない水路に設置される小型の水力発電装置として、例えば、中心軸が垂直に設けられ内側を水が下に向かって通過する円筒形の取水胴と、前記取水胴の内側に設けられ水を一定の方向に流すガイド部材と、前記ガイド部材の下方に設けられ前記ガイド部材から流される水を受けて回転する回転スクリュウと、前記回転スクリュウの軸部に連結された発電機が設けられている水力発電装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この提案の水力発電装置は、組立容易性、修理容易性、メンテナンス性、及びコストの点などから満足できるものではなかった。
【0004】
農業用水路等の用水路は様々な国に数多く存在しており、用水路の大きさ及び流量についても様々である。このような用水路に設けられるピコ水力発電又はマイクロ水力発電は、用水路の大幅な改良が不要である点がメリットである。しかし、既存の用水路をそのまま使用すると、小枝、流木、落葉等の異物が流れてくるため、ピコ水力発電装置又はマイクロ水力発電装置における回転体又は羽根構造体が破損したり、故障するリスクがある。そのため、故障時の非発電時間を短くする観点から、現地での水力発電装置の組立、部品交換、及び修理などを迅速に行えることが求められている。このような観点から、例えば、ハブダイナモは、自転車の照明用の汎用品を転用することにより安価に発電部を構成できることから好適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ハブダイナモの形状、大きさ、種類が多岐にわたるため、ハブダイナモと接続する部品を迅速に調達することが困難であり、ピコ水力発電又はマイクロ水力発電の普及を妨げているという課題がある。
【0006】
本発明は、容易に組み立てることができ、新興国等の現地での部品交換、修理、及びメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる水力発電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するための手段としての本発明の水力発電装置の製造方法は、発電部の形状に対応した形状の部品を三次元プリンタにより造形する造形工程と、前記発電部の形状に対応した形状の部品を用いて水力発電装置を組立てる組立工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、容易に組み立てることができ、新興国等の現地での部品交換、修理、及びメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる水力発電装置の製造方法を提供することを目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本発明の水力発電装置の製造方法で製造された水力発電装置の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、水力発電装置の一例を示す側面から見た斜視図である。
【
図3】
図3は、水力発電装置の一例を示す分解斜視図である。
【
図4】
図4は、水力発電装置における発電部の一例を示す斜視図である。
【
図5】
図5は、水力発電装置における接続部材の一例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
(水力発電装置の製造方法)
本発明の水力発電装置の製造方法は、造形工程と、組立工程とを含み、造形データ作成工程を含むことが好ましく、更に必要に応じてその他の工程を含む。
【0011】
本発明においては、発電部の形状に対応した形状の部品を三次元プリンタにより造形する造形工程と、前記発電部の形状に対応した形状の部品を用いて水力発電装置を組立てる組立工程とを含む水力発電装置の製造方法によると、水力発電装置を現場で容易に組み立てることができ、新興国等の現地での部品交換、修理、及びメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる。例えば、発電部としてのハブダイナモの形状、大きさ、種類が多岐に亘っており、それに合わせてハブダイナモと接続する部品を作製しなければならないが、三次元プリンタを用いることによって、低コストで迅速に作製することができる。また、水力発電装置は部品点数が少なく、ネジ止めによって、現場で容易に組み立てることができる。
【0012】
<水力発電装置>
本発明の水力発電装置の製造方法により製造される水力発電装置は、例えば、回転軸と、該回転軸と共に回転可能であって回転軸に貫通され、かつ、互いに対向して配置された第1の基材と第2の基材と、水圧を受けて第1の基材と第2の基材を、回転軸を中心にして回転軸と共に回転させる羽根構造体と、回転軸の回転によって発電を行う発電部とを有し、更に必要に応じて、その他の部材を有する。なお、第1の基材と第2の基材と羽根構造体とを組み立てたものを回転体と称することがある。
【0013】
-回転軸-
回転軸は、その形状、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
回転軸の材質としては、例えば、金属、樹脂などが挙げられる。
金属としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ステンレス鋼、鉄、アルミニウム、チタン、ニッケル合金、炭素鋼、クロム鋼、マンガン鋼などが挙げられる。
【0014】
樹脂としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂、テフロン(登録商標)、MCナイロン樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリスチレン樹脂、スチレン-アクリロニトリル共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-無水マレイン酸共重合体、ポリエステル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、塩化ビニル-酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアリレート樹脂、フェノキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルホルマール樹脂、ポリビニルトルエン樹脂、ポリ-N-ビニルカルバゾール、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0015】
-第1の基材及び第2の基材-
第1の基材と第2の基材は、回転軸と共に回転可能であって回転軸に貫通され、かつ、互いに対向して配置された部材であり、その形状、大きさ、材質、構造などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
第1の基材及び第2の基材の材質としては、例えば、再生プラスチック及びバイオプラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
第1の基材及び第2の基材の形状としては、例えば、円盤状などが挙げられる。
第1の基材及び第2の基材の大きさとしては、水力発電装置の大きさに応じて適宜選択することができる。
第1の基材及び第2の基材の構造としては、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。
第1の基材は羽根構造体の第1の取付孔と対応した第1の孔を有し、第2の基材は羽根構造体の第2の取付孔と対応した第2の孔を有している。
第1の基材1a及び第2の基材は、接続部材と連結するための第4の連結孔を有している。
【0016】
-羽根構造体-
羽根構造体は、水圧を受けて第1の基材と第2の基材を回転軸を中心にして回転軸と共に回転させる部材であり、その形状、大きさ、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
羽根構造体の材質としては、例えば、再生プラスチック及びバイオプラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。
羽根構造体の形状としては、例えば、水を貯めることができる箱形状などが挙げられる。
羽根構造体の大きさとしては、水力発電装置の大きさに応じて適宜選択することができる。
羽根構造体の構造としては、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。
羽根構造体は、第1の基材と第2の基材の間に羽根構造体を取り付けるための第1の取付孔及び第2の取付孔を複数有している。
【0017】
-回転体-
回転体は、第1の基材と第2の基材と羽根構造体とを組み立てたものである。
回転体の材質としては、再生プラスチック及びバイオプラスチックの少なくともいずれかを含むことが好ましい。再生プラスチック及びバイオプラスチックの少なくともいずれかを用いることにより、軽量化を図れると共に、CO2削減量に貢献することができ、環境負荷を低減することができる。特に再生プラスチックを用いた場合は、普段使われている材料のリサイクルを通じて、現地で材料を入手することができるため、より入手性が向上するためより好ましい。上記材料が三次元(3D)の製造装置を用いて作られる、3Dプリンタ材料であれば、製造設備の導入負荷も減るため、更に好ましい。
【0018】
-再生プラスチック-
再生プラスチックとは、一度使用して廃棄されたプラスチックを再利用して作られたプラスチックのことです。環境配慮型プラスチックの中では最も歴史が古く、既に多くの製品が再生プラスチックから作られている。 再生プラスチックを作る技術としては、「マテリアルリサイクル」と「ケミカルリサイクル」の2つが主流である。
【0019】
マテリアルリサイクルは、使用済みのプラスチックをそのまま原料にして新しい製品を作る技術です。例えば、使用済みのペットボトルは分別回収された後に選別され、粉砕、洗浄、異物除去などの工程を経てフレーク又はペレットと呼ばれる再生プラスチックの形になる。この再生プラスチックから、トレイ又はフィルム等の別のプラスチック製品が作られたり、繊維の形に変えて衣類が作られる。ただし、マテリアルリサイクルで作られた再生プラスチックは新品に比べると品質が低下する傾向にあり、用途が限定されるというデメリットもある。
【0020】
ケミカルリサイクルは、使用済みのプラスチックを化学的に分解して石油原料やモノマーまで戻し、新品と同等のプラスチック原料にする技術である。マテリアルリサイクルよりも新しい技術であり、種類の異なるプラスチックが混在していたり、異物や汚れがあったりしてもリサイクルできるという優れた特徴を持っている。ケミカルリサイクルの技術が発達したことで、使用済みペットボトルからペットボトルを作製する「ボトルtoボトル」が実現できる。
【0021】
再生プラスチックとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン-プロピレン共重合体、ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)、ポリスチレン(PS)、アクリロニトリル-塩素化ポリエチレン-スチレン共重合体樹脂(ACS)、アクリロニトリル-スチレン共重合体樹脂(AS)、ポリブテン樹脂、アルキド樹脂、アミノ樹脂、アクリロニトリル-アクリルゴム-スチレン共重合体樹脂(ASA)、ビスマレイミドトリアジン樹脂、塩素化ポリエーテル、塩素化ポリエチレン、アリル樹脂、エポキシ樹脂、エチレン-α-オレフィン共重合体、エチレン-酢酸ビニル-塩化ビニル共重合体、エチレン-塩化ビニル共重合体、エチレンビニルアルコール樹脂(EVA)、アイオノマー、メタクリル-スチレン共重合体、ニトリル樹脂、ポリエステル〔ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)など〕、オレフィンビニルアルコール共重合体、石油樹脂、フェノール樹脂、ポリアセタール、ポリアクリレート、ポリアミド、ポリアリルスルフォン、ポリベンゾイミダゾール、ポリブチレン、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルニトリル、ポリエーテルスルフォン、ポリケトン、メタクリル樹脂、ポリメチルペンテン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルフォン、ブタジエン-スチレン樹脂、ポリウレタン、ポリビニルアセタール、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、シリコーン樹脂、ポリ酢酸ビニル、キシレン樹脂、架橋ポリエチレン等の架橋ポリオレフィン、架橋ポリスチレン、不飽和ポリエステル樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フッ素樹脂、生分解性樹脂、熱可塑性エラストマー、エチレン-プロピレン-ジエン共重合体(EPDM)などが挙げられる。
【0022】
-バイオプラスチック-
バイオプラスチックとは、バイオマスを原料としたプラスチック(バイオマスプラスチック)と生分解性を持つプラスチック(生分解性プラスチック)の総称である。ただし、バイオマス由来であるからと言って生分解性があるとは限らず、逆に生分解性があるからといって原料がバイオマスであるとも限らない。
【0023】
--バイオマスプラスチック--
バイオマスプラスチックは、再生可能資源である生物資源(バイオマス)を原料とするプラスチックである。合成方法は、大きく2つの種類に大別される。1つ目は、トウモロコシやサトウキビ由来のデンプンや糖を原料にして、それらを発酵等によって異なる物質に転移させ、モノマーを合成した後、それを重合したポリマーである。例えば、乳酸の重合体であるポリ乳酸(PLA)、微生物が産生するポリヒドロキシアルカノエート(PHA)などが挙げられる。2つ目は、植物等から、セルロース等の多糖類を抽出し、そのポリマー骨格の構造を活かしながら誘導体化することによって、熱可塑性を付与したもの(セルロースアセテート等)である。
バイオマスを原料としたポリマーは、化石資源由来のポリマーが合成される以前から、広く研究されていた(主にニトロセルロース等のセルロース誘導体)。しかし、20世紀前半からは、化石資源由来の高性能なポリマーが、安価かつ大量に作製されるようになり(ナイロン、ポリプロピレン等)、その研究は下火となった。20世紀後半からは、社会的な環境意識の高まりによって、再びバイオマスを原料とした材料に注目が集まっている。
【0024】
--生分解性プラスチック--
生分解性プラスチックとは、通常のプラスチックと同様に使うことができ、使用後は自然界に存在する微生物の働きで、最終的に水と二酸化炭素に分解されるプラスチックのことを意味する。
生分解性プラスチックには、生物資源(バイオマス)由来のもの(バイオマスプラスチック)と、石油由来のもの(石油合成プラスチック)とがある。生分解性があれば、原料が何であるかは問わない。主流は、生物資源(バイオマス)を原料としたバイオマスプラスチックであり、でんぷんや糖を原料とするものが多い。ただし、バイオマスを原料にするプラスチックの全てが、生分解性を持つわけではない。例えば、バイオPETやバイオPEは、バイオマスを原料にするが、生分解性を持たない。
主な生分解性プラスチックとして、バイオマスを原料とするものは、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシアルカノエート(PHA、微生物産生ポリエステル)、ポリグリコール酸、変性ポリビニルアルコール、カゼイン、変性澱粉、低置換度多糖誘導体(低置換度セルロースアセテートなど)などが挙げられる。石油由来ではPET共重合体などが挙げられる。
【0025】
-発電部-
発電部は、回転軸の回転によって発電を行うことができるものであれば特に制限はなく、目的に応じて適宜、公知の発電部を選択することができ、交流発電機であってもよく、直流発電機であってもよく、例えば、回転磁石式の交流発電機、整流子付直流発電機、マグネットポンプなどが挙げられる。
【0026】
回転磁石式の交流発電機としては、特に制限はないが、例えば、自転車の照明などに用いられているハブダイナモなどが挙げられる。ハブダイナモは、円筒状のハウジング部及び回転軸から構成され、ハウジング部の内周面に複数個の磁石が固定されコイル部が設けられ、磁石を有するハウジング部の回転によりコイル部との電磁誘導により発電するように構成されている。ハブダイナモは安価であり新興国での使用に適している。
【0027】
マグネットポンプは、ローターに内蔵された従動マグネットが、該マグネットと磁石結合された駆動マグネットの回転により同期回転して流体を吸入圧送することができるものであり、回転磁石が磁力により回転体の回転と連動して回転可能であり、該回転磁石と該回転体とが、流体の流通が不能に隔離されて配置されている。マグネットポンプは、メカニカルシール部などの軸封装置を用いていないため、長期間使用してもポンプの腐食やポンプ回りの汚れがなく、メカニカルシール部の劣化などによる水漏れが生じない点で有利である。
【0028】
-その他の部材-
その他の部材としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、蓄電手段、異物分離手段などが挙げられる。
【0029】
蓄電手段は、発電した電力を蓄電する手段であり、発電した電力を送電可能としてもよい。蓄電手段は水力発電装置に着脱可能に有することが好ましい。送電するだけではなく、発電した電力を蓄電することにより、簡便に利用することができ、水力発電装置自身での電力の利用もできる。
【0030】
<造形工程>
造形工程は、発電部の形状に対応した形状の部品を三次元プリンタにより造形する工程である。
前記発電部の形状に対応した形状の部品が、回転軸に回転可能に接続された回転体と発電機とを接続する接続部材であることが好ましい。接続部材を有することにより、発電部としてのハブダイナモと回転体とを安定かつ確実に接続し、固定することができる。
発電部としてのハブダイナモの形状、大きさ、種類が多岐に亘っており、それに合わせてハブダイナモと接続する部品である接続部材を作製しなければならないが、三次元プリンタを用いることによって、迅速に作製することができる。
ハブダイナモと接続部材とを接続する際に、取付ネジの大きさに合わせて接続部材の取付孔の大きさの調整が必要となり、接続部材の取付孔の位置がハブダイナモに応じて異なることから、ハブダイナモ毎に接続部材を作製することが必要となる。
【0031】
接続部材としては、その形状、大きさ、構造、材質などについては特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
接続部材の形状としては、例えば、シート状、板状などが挙げられる。
接続部材の材質としては、例えば、樹脂、ゴム、金属などが挙げられる。
接続部材の大きさとしては、使用するハブダイナモに応じて適宜選択することができる。
接続部材の構造としては、単層構造であってもよく、複数層構造であってもよい。
接続部材は、中心孔と、内周部にハブダイナモと連結するための第2の連結孔と、外側に第1の基材及び第2の基材と連結するための第3の連結孔とを有している。
【0032】
三次元プリンタとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、熱溶解積層方式(FDM)、光造形方式、マテリアルジェット方式、バインダージェット方式、粉末積層方式、粉末固着(接着)方式などが挙げられる。三次元プリンタで発電部の形状に対応した形状の部品を造形することにより、水力発電装置の組立、保守、点検、破損した部品の交換などに迅速に対応することができる。
【0033】
ここで、実際に、欧州(イギリス)及び日本からフィリピンに水力発電装置の接続部材を輸送した場合にかかった期間について表1に示した。比較のために、欧州から日本に水力発電装置の接続部材を輸送した場合にかかった期間についても示した。
【0034】
【表1】
表1に示したように、欧州及び日本からフィリピンに水力発電装置の接続部材を輸送する場合には、欧州から日本に水力発電装置の接続部材を輸送する場合よりも多くの期間を要することがわかる。更に、輸送費用及び関税もかかってしまう。これに対して、水力発電装置の破損した部品を、自国内で三次元プリンタにより作製すると、低コストで迅速に対応することができる。
【0035】
<組立工程>
組立工程は、前記発電部の形状に対応した形状の部品を用いて水力発電装置を組立てる工程である。
前記発電部の形状に対応した形状の部品としては、回転軸に回転可能に接続された回転体と発電部とを接続する接続部材などが挙げられる。
水力発電装置の組立て方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ネジ止め、ボルトとナットなどが挙げられる。
【0036】
<造形データ作成工程>
造形データ作成工程は、前記発電部の形状情報を取得し、造形データを作成する工程である。
発電部の形状情報は、例えば、発電部の設計図、発電部の写真、発電部のスキャンデータ、発電部のCADデータなどから取得することができる。発電部の形状情報に基づき造形データを作成する。
造形データとは、三次元スキャン等により所得したデータであって、三次元プリンタに入力できるデータを意味する。造形データは1つのデータから構成されてもよいし、複数のデータから構成されていてもよい。
【0037】
造形データの作成方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、三次元スキャンで造形対象の実物をスキャンする方法、三次元(3D)CADソフトウェアを使用してデータをモデリングする方法、三次元(3D)CGツールを使用してデータを作成する方法などが挙げられる。なお、三次元スキャンは三次元プリンタに付属のスキャナを用いることもできる。
造形データに対し、サーフェースモデル変換を行うことによりSTL(Standard Triangulated Language)形式のデータを作成する。
STL形式のデータが三次元プリンタに入力されると、三次元プリンタは、入力されたSTL形式のデータを印刷用2D画像データセットに変換する。
前記印刷用2D画像データセットとは、複数の印刷用2D画像データを含むデータセットであり、印刷用2D画像データとは、Z軸方向における三次元プリンタの解像度に合わせてSTL形式のデータをスライスすることで得られる二次元のスライスデータである。この印刷用2D画像データに基づき、三次元プリンタにより、造形対象物を造形することができる。
【0038】
<その他の工程>
その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、制御工程、洗浄工程、検査工程などが挙げられる。
【0039】
本発明の水力発電装置の製造方法によると、水力発電装置を現場で容易に組み立てることができ、新興国等の現地での部品交換、修理、及びメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる。
本発明の水力発電装置の製造方法により製造された水力発電装置は、従来導入することが困難であった、小さな用水路に導入することができ、例えば、河川、農業用水、農業用水路、工業用水、工場、ビル、下水処理場等の排水路、プラント内の導水路などに設置することができる。
【0040】
ここで、本発明の水力発電装置の製造方法の実施形態について、図面を参照して説明する。
【0041】
<第1の実施形態>
図1は本発明の水力発電装置の製造方法で製造された水力発電装置の一例を示す斜視図、
図2は水力発電装置の一例を示す側面から見た斜視図、
図3は水力発電装置の一例を示す分解斜視図である。
【0042】
この
図1の水力発電装置20は、回転軸4と、該回転軸4と共に回転可能であって回転軸4に貫通され、かつ、互いに対向して配置された第1の基材1aと第2の基材1bと、水圧を受けて第1の基材1aと第2の基材1bを回転軸4を中心にして回転軸4と共に回転させる羽根構造体2と、回転軸4の回転によって発電を行う発電部6とを有する。なお、
図1中10は回転体(第1の基材1aと第2の基材1bと羽根構造体2とを組み合わせたもの)、3は回転体保持部材、5は回転軸支持部材、12は羽根構造体取付ネジ、13は発電部取付ネジをそれぞれ表す。
【0043】
第1の基材1aと第2の基材1bは、回転軸4と共に回転可能であって回転軸4に貫通され、かつ、互いに対向して配置されており、略円盤形状である。第1の基材1aと第2の基材1bは接続部材7と連結するための第4の連結孔16を有している。
発電部6としては、自転車の照明などに使用されるハブダイナモが用いられる。発電部6としてのハブダイナモは、
図4に示すように円筒状本体の両端にフランジ部8a,8bを有し、各フランジ部には接続部材7と連結するための第1の連結孔9を複数有している。
図4中4は回転軸であり、回転軸4の回転によって発電が行われる。
【0044】
発電部6としてのハブダイナモは接続部材7を介して第1の基材1aと第2の基材1bに連結される。接続部材7を介することにより、発電部6としてのハブダイナモと第1の基材1a及び第2の基材1bとを安定かつ確実に接続し、固定することができる。
接続部材7は、
図5に示すような形状の板状部材であり、中心孔と、内周部にハブダイナモと連結するための第2の連結孔18と、外側に第1の基材1a及び第2の基材1bと連結するための第3の連結孔17とを有している。
第1の基材1a及び第2の基材1bと発電部6としてのハブダイナモとを接続部材7を介して取り付ける方法としては、まず、発電部6としてのハブダイナモの各フランジ部の第1の連結孔9と接続部材7の第2の連結孔18を位置合わせし、ネジ止めする。次に、接続部材7の第3の連結孔17と第1の基材1a及び第2の基材1bの第4の連結孔16とを位置合わせし、ネジ止めする。
【0045】
羽根構造体2は、水圧を受けて第1の基材1aと第2の基材1bを回転軸4を中心にして回転軸4と共に回転させる箱状の部材である。羽根構造体2には、第1の基材1aと第2の基材1bに羽根構造体2を取り付けるための第1の取付孔と第2の取付孔を複数有している(図示を省略)。
図3に示すように、第1の基材1aは羽根構造体2の第1の取付孔と対応した第1の孔14を有し、第2の基材1bは羽根構造体2の第2の取付孔と対応した第2の孔15を有している。
第1の基材1aと第2の基材1bとの間に、羽根構造体2を取り付ける方法としては、羽根構造体取付ネジ12により、羽根構造体2の第1の取付孔と第1の基材1aの第1の孔14とが、及び、羽根構造体2の第2の取付孔と第2の基材1bの第2の孔15とが貫通され、羽根構造体2が第1の基材1aと第2の基材1bの間に取り付けられる。
【0046】
第1の実施形態に係る水力発電装置の製造方法においては、水力発電装置を構成する部品点数が少なく、ネジ止めによって水力発電装置を容易に組み立てることができる。また、部品交換、修理、及びメンテナンスを迅速かつ容易に行うことができる。
【0047】
本発明の態様としては、例えば、以下のとおりである。
<1> 発電部の形状に対応した形状の部品を三次元プリンタにより造形する造形工程と、
前記発電部の形状に対応した形状の部品を用いて水力発電装置を組立てる組立工程と、
を含むことを特徴とする水力発電装置の製造方法である。
<2> 前記発電部の形状情報を取得し、造形データを作成する造形データ作成工程、
を含む、前記<1>に記載の水力発電装置の製造方法である。
<3> 前記発電部の形状に対応した形状の部品が、回転軸に回転可能に接続された回転体と、前記発電部とを接続する接続部材である、前記<1>から<2>のいずれかに記載の水力発電装置の製造方法である。
<4> 前記回転体の少なくとも一部が再生プラスチック及びバイオプラスチックの少なくともいずれかを含む、前記<3>に記載の水力発電装置の製造方法である。
<5> 前記発電部がハブダイナモである、前記<1>から<2>のいずれかに記載の水力発電装置の製造方法である。
【0048】
前記<1>から<5>のいずれかに記載の水力発電装置の製造方法によると、従来における諸問題を解決し、本発明の目的を達成することができる。
【符号の説明】
【0049】
1a 第1の基材
1b 第2の基材
2 羽根構造体
3 回転体保持部材
4 回転軸
5 回転軸支持部材
6 発電部
7 接続部材
8a、8b フランジ部
9 第1の連結孔
10 回転体
20 水力発電装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0050】