(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053315
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システム
(51)【国際特許分類】
B65H 29/66 20060101AFI20240408BHJP
B65H 37/04 20060101ALI20240408BHJP
B65H 7/06 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
B65H29/66
B65H37/04 D
B65H7/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159498
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100186853
【弁理士】
【氏名又は名称】宗像 孝志
(72)【発明者】
【氏名】栗山 敦志
【テーマコード(参考)】
3F048
3F053
3F108
【Fターム(参考)】
3F048AA01
3F048AB01
3F048BA08
3F048BB02
3F048DA08
3F048DB18
3F048EB22
3F053GB01
3F053GB14
3F053LA01
3F053LA14
3F053LB03
3F108GA01
3F108HA02
3F108HA32
(57)【要約】
【課題】循環搬送路を用いて複数のシートを重ね合わせた後に、シート束に綴じ処理を行うときに端部の整合性を向上できるシート処理装置を提供する。
【解決手段】複数のシートを搬送しながら重ね合わせてシート束として搬送可能にする循環搬送路を備えるシート処理装置において、シートの搬入搬送路とシート束の搬出搬送路との途中に設けられた循環搬送路と、シート及びシート束への搬送動作を制御する制御部と、を備え、制御部は、搬出搬送路を介してシート束を搬出するとき、当該シート束を形成するシートのうち、搬入搬送路から先に搬入された先行シートの搬送方向先端を、当該先行シートの後に搬入された後続シートの搬送方向先端よりも先行するように、複数のシートの搬送動作を制御する、シート処理装置による。
【選択図】
図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシートを搬送しながら重ね合わせてシート束として搬送可能にする循環搬送路を備えるシート処理装置であって、
前記シートの搬入搬送路と前記シート束の搬出搬送路との途中に設けられた前記循環搬送路と、
前記シート及び前記シート束への搬送動作を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記搬出搬送路を介して前記シート束を搬出するとき、当該シート束を形成する前記シートのうち、前記搬入搬送路から先に搬入された先行シートの搬送方向先端を、当該先行シートの後に搬入された後続シートの搬送方向先端よりも先行するように、複数の前記シートの搬送動作を制御する、
ことを特徴とするシート処理装置。
【請求項2】
前記搬出搬送路における搬送不良を検知するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサが前記シートまたは前記シート束が検知している時間に基づいて前記搬出搬送路の通過時間を検知し、当該通過時間が所定の閾値時間を超えてるときに搬送異常が発生していると判定し、
前記搬出搬送路を介して前記シートを搬送するときの閾値時間よりも、前記シート束を搬送するときの閾値時間を長く設定する、
請求項1に記載のシート処理装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記シート束を形成する前記シートの枚数に応じて前記閾値時間を変更する、
請求項2に記載のシート処理装置。
【請求項4】
シートに画像を形成する画像形成部と、前記シートに対し後処理を行うシート処理部と、を備える画像形成装置であって、
前記シート処理部は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート処理装置であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
シートに画像を形成する画像形成部を備える画像形成装置と、請求項1乃至3のいずれか一項に記載のシート処理装置と、連結して構成されることを特徴とする画像形成システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート処理装置、画像形成装置及び画像形成システムに関する。
【背景技術】
【0002】
シート状の媒体(以下、「シート」と表記する。)を重ねたシート束を形成する整合処理や、シートを折る折り処理などの、いわゆる後処理を行うシート処理装置が知られている。また、上記のシート処理装置に相当する機能とシートに画像を形成する機能とを備える画像形成装置や、シート処理装置と画像形成装置と別の筐体とし、これらを連携させて動作する画像形成システムも知られている。
【0003】
シート処理装置において、複数のシートを重ねたシート束に対して折り処理を行うために、各シートを循環搬送させて重ね合わせる技術が開示されている(特許文献1を参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示されている技術を用いると、循環搬送路を使用して複数のシートを重ね合わせることはできるが、重ね合わせられたシートを綴じ処理ユニット300において綴じ処理を行う際に、シートの端部の整合状態がずれる課題を解消できない。
【0005】
本発明は、循環搬送路を用いて複数のシートを重ね合わせた後に、シート束に綴じ処理を行うときに端部の整合性を向上できるシート処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記技術的課題を解決するため、本発明の一態様は、複数のシートを搬送しながら重ね合わせてシート束として搬送可能にする循環搬送路を備えるシート処理装置であって、前記シートの搬入搬送路と前記シート束の搬出搬送路との途中に設けられた前記循環搬送路と、前記シート及び前記シート束への搬送動作を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記搬出搬送路を介して前記シート束を搬出するとき、当該シート束を形成する前記シートのうち、前記搬入搬送路から先に搬入された先行シートの搬送方向先端を、当該先行シートの後に搬入された後続シートの搬送方向先端よりも先行するように、複数の前記シートの搬送動作を制御する、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、循環搬送路を用いて複数のシートを重ね合わせた後に、シート束に綴じ処理を行うときに端部の整合性を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明に係るシート処理装置を含む画像形成装置の実施形態を示す側面図。
【
図2】本発明に係る画像形成システムの実施形態の概略構成を示す図。
【
図3】上記実施形態に係る制御構成の例を示すブロック図。
【
図4】本発明に係るシート処理装置の実施形態としての折り処理ユニットの内部構成図。
【
図5】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図6】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図7】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図8】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図9】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図10】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図11】上記折り処理ユニットにおける折り搬送動作の一工程を示す内部構成拡大図。
【
図12】本発明に係るシート処理装置の実施形態としての綴じ処理ユニットの内部構成図。
【
図13】上記綴じ処理ユニットにおけるシート束Qの搬送態様を説明する図。
【
図14】上記シート束Qの搬送態様に対する綴じ処理の関係を説明する図。
【
図15】上記折り処理ユニットにおけるジャム検知時間の変更制御を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[画像形成装置の実施形態]
まず、本発明に係る画像形成装置の実施形態について説明する。
図1は、画像形成装置の実施形態としてのプリンタ10の外観図である。プリンタ10は、画像形成部としてのプリンタユニット100と、シート処理部として機能する折り処理ユニット200と、シート処理部として機能し、折り処理ユニット200を中継して搬送されてくる媒体に対して綴じ処理を行う綴じ処理ユニット300と、を備えている。折り処理ユニット200及び綴じ処理ユニット300はいずれも、プリンタユニット100と連携するユニットである。なお、
図1では、胴内排出型のプリンタ10を例示していて、画像が形成された記録媒体(シートP)の排出先として、プリンタユニット100は胴内に配置されている折り処理ユニット200を選択可能にする機能を備えている。また、プリンタ10は、折り処理ユニット200を中継して綴じ処理ユニット300へと搬送するように搬送制御を切り替える機能を備えている。
【0010】
本発明に係るシート処理装置の実施形態としての綴じ処理ユニット300は、折り処理ユニット200において、複数のシートPを重ね合わせたものの端部を綴じてシート束Qを形成する機能を有する。そして、綴じ処理ユニット300において綴じ処理の対象となる複数のシートPを重ねた状態にする機能は、折り処理ユニット200が有する。折り処理ユニット200は、後述するように、シート束Qを形成するにあたり、シートPを循環搬送させて重ね合わせる循環搬送機構を有する。これら機能を実行するための折り処理ユニット200の内部構成及び、綴じ処理ユニット300の内部構成については、後述する。
【0011】
[画像形成システムの実施形態]
図2は、本発明に係る画像形成システムの実施形態としてのプリンタシステム1の概略構成を示す図である。プリンタシステム1は、プリンタ100a、シート処理装置としての折り処理装置200aと、シート処理装置としての綴じ処理装置300aと、を連結して構成されている。プリンタシステム1は、プリンタ100aによって画像形成されたシートPを折り処理装置200aに搬送し、折り処理装置200aにおいて所定の重ね折り処理を実行するように動作する。また、プリンタシステム1は、プリンタ100aによって画像形成されたシートPを折り処理装置200aにおいて、複数枚のシートPを重ね合わせた状態にし、綴じ処理装置300aに搬送し、シートPの端部を綴じす綴じ処理装置を実行するように動作する。
【0012】
[制御ブロックの機能構成]
次に、本実施形態に係るプリンタユニット100及び、シート処理装置としての折り処理ユニット200、シート処理装置としての綴じ処理ユニット300の動作を制御する制御ブロックの実施形態について
図3を用いて説明する。
【0013】
[プリンタユニット100の制御ブロック]
図3に示すように、プリンタユニット100は、制御ブロックとしてのプリンタ制御部110を備える。プリンタ制御部110は、CPU(Central Processing Unit)111と、ROM(Read Only Memory)112と、RAM(Random Access Memory)113と、シリアルI/F114と、を備える。
【0014】
プリンタ制御部110には、画像作成部120、画像読取部130、及び操作表示部140が接続されている。画像作成部120、画像読取部130、及び操作表示部140には、それぞれの機能を発揮するための構成が含まれている。画像作成部120、画像読取部130、及び操作表示部140が備える各構成は、プリンタ制御部110からの制御信号に基づいて動作する。
【0015】
画像作成部120は、シート状の記録媒体としてのシートPに対して画像データに基づく画像形成処理を行う構成である。画像読取部130は、シートPに形成されている画像を読み取って画像データを取得する構成である。操作表示部140は、画像作成部120や画像読取部130における動作条件を入力する入力部と、動作結果等を表示する表示部を兼ねる機能を備えている。
【0016】
また、操作表示部140は、シート処理制御部210における処理内容に関する表示部と、折り処理ユニット200の動作(挙動)を制御するための設定情報の入力を受け付ける入力部と、を兼ねる機能も備えている。
【0017】
画像作成部120、画像読取部130、及び操作表示部140を制御するための制御プログラムは、ROM112に格納されている。CPU111は、ROM112に格納された制御プログラムを読み出してRAM113に展開する。そして、CPU111は、制御に必要なデータをRAM113に記憶させて、当該RAM113をワークエリアとして使用しながら制御プログラムによって定義されている制御を実行する。
【0018】
[折り処理ユニット200の制御ブロック]
また、折り処理ユニット200は、制御ブロックとしてのシート処理制御部210を備える。シート処理制御部210は、CPU211と、ROM212と、RAM213と、シリアルI/F214と、を備える。
【0019】
シート処理制御部210には、各種負荷220や各種センサ240が接続されている。各種負荷220は、後述するローラ及びローラ対などである。各種負荷220に相当するローラ及びローラ対は、それぞれ搬送ローラ対や折りローラ対を構成する。各種負荷220は、各ローラ及び各ローラ対を回転駆動させる駆動モータによって動作する。各種負荷220を構成する駆動モータは、シート処理制御部210から指示を受けたドライバ230によって動作する。各種負荷220は、記録媒体としてのシートPの搬送制御、及びシートPに対する折り処理を含む動作を行う構成である。
【0020】
各種センサ240は、シートPの搬送路内の位置を検知する複数のシート検知手段であって、後述する搬送路内に複数配置される。後処理の対象物となるシートP及びシート束Qの搬送量及び位置は、各種センサ240がシート処理制御部210に向けて出力する検知信号に基づきシート処理制御部210が実行する所定の制御プログラムにおいて判定される。なお、シートPの位置は、シート検知手段においてシートPの先端が検知されてからの当該シートPの搬送量(搬送距離)を各種負荷220の動作量に基づき、シート処理制御部210によって算出される。
【0021】
シート処理制御部210が所定の処理機能を実行するための制御プログラムは、ROM212に格納されている。CPU211は、ROM212に格納された制御プログラムを読み出してRAM213に展開する。そして、CPU211は、制御に必要なデータをRAM213に記憶させて、当該RAM213をワークエリアとして使用しながら制御プログラムによって定義されている折り動作の制御を実行する。以上のように、ROM212に格納された制御プログラムをシート処理制御部210が実行することによって、後述するシートPの検出及びシートPの搬送制御を行うことができる。
【0022】
[綴じ処理ユニット300の制御ブロック]
図3に示すように、綴じ処理ユニット300は、制御ブロックとしての綴じ処理制御部310を備える。綴じ処理制御部310は、CPU231と、ROM312と、RAM313と、シリアルI/F314と、を備える。
【0023】
綴じ処理制御部310には、各種負荷320としての搬送ローラや、叩きコロR12、及び戻しコロR13を動作させるドライバ330が接続されている。各種負荷320としてのローラには、後述する第九搬送手段R9、第十搬送手段R10、第十一搬送手段R11、及び、綴じ処理を行うユニットが含まれる。
【0024】
各種負荷320は、各ローラ及び各ローラ対を回転駆動させる駆動モータによって動作する。各種負荷320を構成する駆動モータは、綴じ処理制御部310から指示を受けたドライバ330によって動作する。各種負荷320は、記録媒体としてのシートPの搬送制御、及びシートPに対する綴じ処理を含む動作を行う構成である。
【0025】
綴じ処理制御部310が所定の処理機能を実行するための制御プログラムは、ROM212に格納されている。CPU211は、ROM212に格納された制御プログラムを読み出してRAM213に展開する。そして、CPU211は、制御に必要なデータをRAM213に記憶させて、当該RAM213をワークエリアとして使用しながら制御プログラムによって定義されている綴じ動作の制御を実行する。以上のように、ROM212に格納された制御プログラムを綴じ処理制御部310が実行することによって、後述するシートPの検出及びシートPの搬送制御を行うことができる。
【0026】
プリンタユニット100が備えるプリンタ制御部110と折り処理ユニット200が備えるシート処理制御部210と綴じ処理ユニット300が備える綴じ処理制御部310は、シリアルI/F114とシリアルI/F214とシリアルI/F314を介して、相互に通信可能に接続されている。この通信経路を利用して、記録媒体の搬送制御等に必要な制御コマンドや情報のやり取りが行われる。折り処理ユニット200は、プリンタユニット100から送られてくる制御コマンド及びシートPに関する情報に基づいて、折り処理の有無を切り替える。また、折り処理ユニット200は、プリンタユニット100からの制御コマンドと、各種センサ240から得られる記録媒体の位置に関する情報に基づいて、記録媒体の搬送制御や折り処理の種類を切り替える。
【0027】
なお、プリンタユニット100(プリンタ制御部110)から、折り処理ユニット200(シート処理制御部210)に対して送られるシートPに関する情報には、複数の情報が含まれる。例えば、プリンタユニット100から折り処理ユニット200に受け渡されるシートPの種類、シートPの厚さ、シートPの大きさ等を示す複数のシート種別情報が含まれる。また、シートPに関する情報には、後処理の種類を示す情報(折り処理、重ね折り処理の区別など)、重ね折りにおける一束を構成するシートPの枚数を示す情報、折り処理を行う際の折り位置を示す情報等も含まれる。そして、プリンタ制御部110からシート処理制御部210に通知される制御コマンドには、受け渡されるシートPがまとまりを持って処理される単位の最後のページ(最終シート)に相当するものか否か、すなわち、「重ね折り開始通知」に相当するコマンドなども含まれる。
【0028】
[折り処理ユニット200の内部構成]
次に、本発明に係るシート処理装置の一部を構成する折り処理ユニット200の内部構成について説明する。
図4は、折り処理ユニット200の内部の構成を概略的に示す構成図である。折り処理ユニット200は、上流に配置されるプリンタユニット100が排出するシート状の媒体であって画像形成対象物としてのシートPを複数枚重ね合わせたシート束Qを、搬送しながら形成する機能を備える。
【0029】
すなわち、折り処理ユニット200は、シート束Qを形成するための循環搬送を行う複数の搬送手段と、当該搬送手段によるシートP及びシート束Qの搬送空間を構成する複数の搬送路と、を備えている。また、各搬送路においてシートPの搬送位置を検出するためのシート検出センサが、複数設置されている。各シート検出センサは、後述するシートP及びシート束Qの搬送を制御するための所定の位置に設置されている。なお、各搬送手段は搬送ローラ対によって構成されている。すなわち、各搬送ローラ対のニップによってシートP及びシート束Qが所定の方向に搬送される。また、各搬送ローラ対のニップに対するシートP及びシート束Qの送り込み方によって、これらに対する折り処理が実行される。したがって、複数の搬送手段は折り手段も構成する。
【0030】
折り処理ユニット200が備える搬送路は、大まかに七つに区別される。
図4に示すように、搬入搬送路としての第一搬送路W1、第二搬送路W2、第三搬送路W3、第四搬送路W4、第五搬送路W5、第六搬送路W6、第七搬送路W7、を備えている。
【0031】
そして、第一搬送路W1、第二搬送路W2、第三搬送路W3、第四搬送路W4、第五搬送路W5、第六搬送路W6、第七搬送路W7のそれぞれに沿うように、複数のローラ対が配置されている。すなわち、シートPを搬送するための搬送路には、第零搬送手段R0、第一搬送手段R1、第二搬送手段R2、第三搬送手段R3、第四搬送手段R4、第五搬送手段R5、第六搬送手段R6を構成するローラ対が、各々の所定の位置に配置されている。これら搬送手段としての各搬送ローラ対は、シート処理制御部210が実行する制御プログラムによって回転開始及び回転停止が制御される。この制御により、シートPの搬送開始と搬送停止が実行される。
【0032】
また、折り処理ユニット200は、シートPの搬送方向を切り替える搬送分岐手段を備えている。当該搬送分岐手段によって、本実施形態に係る折り処理ユニット200は、上流から搬入され、ユニット内で保持するシートPに対して複数の搬送処理を実行することができる。以下に説明する搬送処理(搬送モード)は、シートPの搬入処理に連動して切り替えられる処理である。
【0033】
折り処理ユニット200は、「排出搬送」と「循環搬送」と「折り搬送」を実行する制御機能を備える。「排出搬送」、「循環搬送」、「折り搬送」はそれぞれ、折り処理ユニット200において実行されるシートPなどの搬送処理であって、いずれも、各搬送ローラ対の動作及び搬送分岐手段の動作によって実行される。すなわち、「排出搬送」に係る制御動作、「循環搬送」に係る制御動作、「折り搬送」に係る制御動作はいずれも、シート処理制御部210の制御によって実行される。また、当該各制御は、プリンタ制御部110からの制御コマンドに基づいて実行の有無が切り替えられることもある。
【0034】
排出搬送は、上流(プリンタユニット100)から搬入されたシートPや、すでに搬入されていたシートPを循環搬送させて後続のシートPと重ね合わせたシート束Qを、下流側(綴じ処理ユニット300)へと搬送する搬送処理である。この際、シートP及びシート束Qに対する折り処理は行われない。すなわち、「排出搬送」は、第一搬送手段R1による搬送方向と同様の方向に、シートP又はシート束Qを搬送し、第四搬送手段R4、第六搬送手段R6、第八搬送手段R8を介して出口22から綴じ処理ユニット300へ排出することをいう。
【0035】
循環搬送は、第一搬送路W1に沿って搬送されるときのシートPの搬送方向の先端を変えず、つまり第一搬送手段R1による搬送方向の先端を変えずに、シートP又はシート束Qを第一搬送手段R1の上流側(第一搬送路W1)に循環させて搬送する搬送処理である。つまり、シートP又はシート束Qを第一搬送路W1から搬送方向下流の第二搬送路W2へと送り込むように搬送をすることをいう。なお、「循環搬送」では、第二搬送路W2へ送り込まれたシートPを第一搬送路W1の上流へと戻すために、当該シートPを第二搬送路W2から第三搬送路W3へと搬送し、第三搬送路W3から第一搬送路W1へと循環させる。このシートPを循環させる搬送路を「循環搬送路」とする。循環搬送は、シート束Qを構成するシートPの枚数が所定の枚数に到達していないときに実行される。また、循環搬送は、シート束Qを構成するシートPの枚数が、重ね折り処理の上限枚数に到達し、かつ、重ね折り開始通知の制御コマンドがシート処理制御部210において認識されるまで実行される。
【0036】
「折り搬送」は、シートP又はシート束Qの所定の折り位置を第一折り手段F1のニップへと送り込む搬送処理である。つまり、「折り搬送」は、第一搬送手段R1による搬送方向の先端を変えて、シートP又はシート束Qを第一搬送路W1から搬送方向下流の第二搬送路W2へとシートP又はシート束Qを送り込むような搬送に相当する。したがって、折り搬送では、第一搬送手段R1のニップを通過するときのシートP又はシート束Qの搬送方向の先端ではない部分を、搬送方向の先端として第二搬送路W2へとシートP又はシート束Qを送り込むことで、その変更後の搬送方向先端が第一折り手段F1のニップを通過して折り目が形成される。つまり、変更された搬送方向の先端(第二搬送路W2に送り込まれたときの搬送方向の先端)が折り目になる。なお、第二の折り目を形成するときも、それまでの搬送方向の先端とは異なる部分を新たな搬送方向先端として、さらに別の搬送路へと送り込む。本実施形態では、第五搬送路W5へ送り込むことで第二の折り目を形成する。以上のように「折り搬送」とは、シートP又はシート束Qに折り目を形成するために搬送をすることをいう。
【0037】
なお、搬送分岐手段は、第一搬送路W1から第二搬送路W2及び第三搬送路W3を介して、第五搬送路W5へと搬送させるように切り替えを実行することもある。この場合の搬送制御も「折り搬送」に含まれる。以上のように、シートP又はシート束Qの搬送方向先端を変える搬送、搬送方向先端を変えない搬送を切替可能にするように、折り処理ユニット200は複数の搬送路を備えている。そして、折り処理ユニット200には、これら搬送路の切り替えを実行するように、複数の搬送分岐手段が配置されている。
【0038】
[搬送分岐手段の説明]
複数の搬送分岐手段は、第一搬送手段R1、第四搬送手段R4、第一折り手段F1、第五搬送手段R5等の組み合わせによって構成される。例えば、複数の搬送分岐手段は、
図5に示すように、第一搬送分岐手段J1、第二搬送分岐手段J2、第三搬送分岐手段J3として構成される。これら複数の搬送分岐手段は、シート処理制御部210によって動作が制御される各種負荷220に含まれる構成である。したがって、シート処理制御部210は、複数の搬送分岐手段の動作を制御することによってシートP及びシート束Qを搬送する搬送手段の動作を制御し、複数の搬送路を選択的に切り替える制御をする。なお、循環搬送路の途中には、シートP及びシート束Qに対して折り処理を行うための第一折り手段F1及び第二折り手段F2も配置されている。
【0039】
以下の説明において、プリンタユニット100から折り処理ユニット200へ先に搬入されたシートP(先行するシートP)を「先行シートP1」と表記する。また、先行シートP1の後に続いて搬入されるシートPを「後続シートP2」と表記する。さらに、後続シートP2の後に続いて搬入されるシートPを「次シートP3」と表記する。したがって、循環搬送によって形成されるシート束Qは、複数のシートPが重ね合わせられたときの最下位が先行シートP1である。最上位面は、後続シートP2や次シートP3または、これら以降の後シートPnである。
【0040】
[各搬送手段の説明]
折り処理ユニット200は、プリンタユニット100からシートPを受け入れる入口21の近傍に、入口搬送ローラ対としての第零搬送手段R0が配置されている。第零搬送手段R0は、プリンタユニット100から先行シートP1を排出したことを知らせる情報を受けたシート処理制御部210の制御によって、第零搬送手段R0を回転駆動させる駆動モータが回転を開始する。その後、先行シートP1の先頭が第零搬送手段R0のローラ対のニップに到達すると、第零搬送手段R0が先行シートP1を下流側に搬送する。
【0041】
第一搬送手段R1は、第零搬送手段R0の下流に設けられた第一搬送路W1に沿って配置されていて、搬送されてきた先行シートP1を挟持するニップを有するローラ対からなり、下流に先行シートP1を搬送する。
【0042】
また、第一搬送手段R1は、上流から搬送されてきた先行シートP1の先端をニップに当接させて、当該先行シートP1の搬送方向の姿勢の傾きを補正するスキュー補正手段を兼ねる。第一搬送手段R1は、第零搬送手段R0から第一搬送手段R1へと搬送されてくるシートP(先行シートP1)の搬送姿勢の乱れを補正するためのスキュー補正を行う。このスキュー補正を行うときには、一時的に、搬送動作として行われる搬送ローラ対の回転を停止するか、又は、通常の搬送動作とは逆動作となる逆回転するように制御される。仮に、スキュー補正を行うときに、第一搬送手段R1を構成する搬送ローラ対を逆回転させていたときは、先行シートP1がニップに当接した時に、搬送ローラ対の逆回転を停止する。その後、所定のタイミングで搬送ローラ対の回転(正転)を開始して、先行シートP1を下流へと搬送する。
【0043】
なお、スキュー補正は、シートPを重ね合わせたシート束Qに対し、折り処理を行うときのみ実行する。そして、折り処理ではない後処理、すなわち、シート束Qを折り処理ユニット200から搬出した下流において実行される綴じ処理を行うときは、シートPの循環搬送によるシート束Qを形成する搬送制御において、上記のようなスキュー補正は行わないものとする。
【0044】
第一折り手段F1は、第一搬送路W1と第二搬送路W2との間に対向して配置され、両者間にニップを形成している。このニップによって案内される搬送経路を通って、先行シートP1が第一搬送路W1から第二搬送路W2へと導かれる。なお、第一折り手段F1と通過するときに、先行シートP1が、第一搬送手段R1における搬送方向の先端を変えずに、通過するような搬送制御が「循環搬送」に相当する。また、第一折り手段F1のニップによって案内されて搬送経路と通るときの先行シートP1の搬送方向の先端が、第一搬送手段R1における搬送方向の先端とは異なる部分になるような搬送制御が「折り搬送」に相当する。折り処理ユニット200は、第一折り手段F1を通過するときの先行シートP1の搬送方向の先端を、第一搬送手段R1のニップを通過するときの部分と同じにするか、異なる部分にするかを、複数の搬送ローラ対の動作によって切り替える。
【0045】
さらに、第二搬送路W2に導かれた先行シートP1を第三搬送手段R3が第三搬送路W3へ導いて循環搬送をし、第三搬送路W3上で先行シートP1の搬送を一時停止させる。第三搬送路W3で一時停止した先行シートP1は、プリンタユニット100から後続シートP2を受け入れたときに搬送が再開させる。これによって、第一搬送路W1の第一搬送手段R1の上流側に先行シートP1が戻って、第一搬送路の所定の位置で後続シートP2と合流して重ね合わせることができる。以上のように循環搬送路が構成される。
【0046】
上記にて説明した循環搬送路において、先行シートP1と後続シートP2は重ねられてシート束Qが形成される。続いて、シート束Qに対する折り処理(重ね折り処理)を実行する場合の流れについて
図4及び
図5を参照しながら説明する。
【0047】
シート束Qに対する折り処理は、主に、プリンタ制御部110から通知される「重ね折り処理開始指示」をシート処理制御部210が取得した後の制御により動作する第一折り手段F1によって行われる。そして、第一折り手段F1によって折り処理(重ね折り処理)が行われたシート束Qは、第二搬送路W2から第五搬送路W5に受け渡されて排出される。第四搬送手段R4、第五搬送手段R5および第一折り手段F1は、同一の駆動モータにより駆動される。駆動モータは正方向と逆方向に回転可能である。駆動モータの回転方向を切り替えることで、先行シートP1と後続シートP2を重ねたシート束Qを循環搬送するか、また折り搬送するかの切り替えが行われる。
【0048】
また、第六搬送手段R6の搬送方向の下流には分岐爪23が配置されている。分岐爪23は、第六搬送路W6側にシートP(シート束Q)を案内する場合と、第七搬送路W7側にシートP(シート束Q)を案内する場合を適宜切り替える。これら搬送方向の切り替えは、分岐爪23の位置の切り替えによって実現される。分岐爪23は、例えばソレノイドによって位置を切り替えることができる。なお、ソレノイドに代えてモータ、ギヤ、カムなどを含む駆動機構を使用することもできる。
【0049】
第四搬送路W4又は第五搬送路W5を通過したシートPは、折り処理ユニット200の排出トレイ24に排出されて積載される。第七搬送路W7は、画像形成システムとして折り処理ユニット200の下流に後処理装置を設けた場合に、後処理装置へシートPを受け渡す経路である。後処理装置では、折り処理をしたシートP、あるいは折り処理をしないシートPに対して例えば整合処理、綴じ処理などの後処理を実行する。
【0050】
第一搬送路W1において第零搬送手段R0の下流側には、第一シート検出センサSN1が配置されている。また、第一搬送路W1において第一搬送手段R1の上流側には、第二シート検出センサSN2が配置されている。第二シート検出センサSN2は第一シート検出センサSN1よりも、第一搬送路W1において下流側に配置されている。
【0051】
循環搬送路を構成する第三搬送路W3において、第二搬送手段R2の下流側(循環搬送時の搬送方向下流側)には、第三シート検出センサSN3が配置されている。また、第三搬送路W3において、第三搬送手段R3の下流側(循環搬送時の搬送方向下流側)には、第四シート検出センサSN4が配置されている。
【0052】
排出搬送時にシートPの搬送路を構成する第四搬送路W4において、第四搬送手段R4の下流側(排出搬送時の搬送方向下流側)には、第五シート検出センサSN5が配置されている。第五搬送路W5において、第五搬送手段R5の下流側(排出搬送時の搬送方向下流側)には、第六シート検出センサSN6が配置されている。第六搬送路W6において、第六搬送手段R6の下流側(排出搬送時の搬送方向下流側)には、第七シート検出センサSN7が配置されている。
【0053】
[重ね合わせ動作の例]
次に、
図5から
図10を用いて、折り処理ユニット200による循環搬送を利用したシート束Qの形成プロセスについて説明する。
【0054】
まず、
図5はシートPがプリンタユニット100側から搬送される前の初期状態を示す。
図5の状態において、プリンタユニット100側から搬送されてきた先行シートP1の先端がプリンタユニット100の排紙口に到達した地点で、シート処理制御部210の制御により、第零搬送手段R0が回転を開始する。
【0055】
次に、
図6に示すように、第零搬送手段R0の回転によって、第一搬送路W1へと先行シートP1が搬送されてくる。また先行シートP1を第四搬送路W4に案内する「排出搬送」ではなく、第二搬送路W2へ搬送して循環搬送路へと案内する「循環搬送」を行うために、シート処理制御部210は第一搬送分岐手段J1を
図6の位置に移動させる。
【0056】
第零搬送手段R0にて搬送された先行シートP1の先端が、第一搬送手段R1の上流に配置されている第一シート検出センサSN1によって検知されると、その検知信号がシート処理制御部210に通知される。そして、シート処理制御部210は、シートPの検知信号を受けてからシートPの先端の位置が、第一搬送手段R1のニップ位置から突出した量(突出量)が所定の量に達するタイミングを算出する。なお、第一搬送手段R1のニップ位置からのシートPの先端の突当量(第一突当量Δ1)に達するタイミングで、第一搬送手段R1の回転を開始させる。
【0057】
先行シートP1の先端が第一搬送手段R1のニップに進入した時点で、シート処理制御部210は、第一折り手段F1、第二搬送手段R2、第三搬送手段R3を回転させる。
【0058】
そうすると、
図7に示すように、先行シートP1は第一搬送手段R1と第一折り手段F1、の動作により第二搬送路W2へ搬送され、また、第二搬送路W2の下り勾配の傾斜に沿って第二搬送手段R2へ搬送される。そして、第二搬送手段R2の動作により第三搬送路W3へ搬送される。第三搬送路W3へ搬送された先行シートP1が第三搬送手段R3によってさらに搬送される。第三搬送手段R3によって搬送された先行シートP1の先端を第四シート検出センサSN4が検知すると、第四シート検出センサSN4から検知信号がシート処理制御部210に通知される。そこで、シート処理制御部210は、第四シート検出センサSN4からの検知信号を受けた後に、第三搬送手段R3によって先行シートP1の先端が、第四シート検出センサSN4の位置から第二突出量Δ2に相当する位置に至るまでのタイミングを算出する。
【0059】
すなわち、第一搬送分岐手段J1の位置を
図6で例示した位置にすることで、第一搬送手段R1を通過するときの先行シートP1の搬送方向先端を変えずに下流方向へと搬送することができる。この搬送制御によって、先行シートP1の循環搬送が実行される。
【0060】
図8に示すように、先行シートP1の先頭が第二突出量Δ2に相当する位置に至ったと判定したときに、第一折り手段F1、第二搬送手段R2、第三搬送手段R3の回転を停止して、先行シートP1の循環搬送を一時的に停止する。
【0061】
なお、先行シートP1の搬送を停止したときでも、プリンタユニット100から次に搬送されてきた後続シートP2を受け入れるために、第一搬送手段R1の回転は継続したままにする。
【0062】
続いて、シート処理制御部210は、
図9に示すように、後続シートP2の先端が第一シート検出センサSN1で検知されたことを示す検知信号がシート処理制御部210に通知された後、後続シートP2を搬送しつつ、第一シート検出センサSN1の検知タイミングに基づいて算出される所定のタイミングをもって、先行シートP1の搬送を再開する。これによって、後続シートP2と先行シートP1を第一搬送路W1内の所定の位置(重合位置)において重ね合わせる。このときの重ね合わせ状態は、後続シートP2の搬送方向先端が、先行シートP1の搬送方向先端より少し先行させた状態で重ね合わせられる。
【0063】
後続シートP2と先行シートP1とを重ね合わせたシート束Qは、第一搬送手段R1のニップへと搬送される。このタイミングは、後続シートP2の先端が先行シートP1と合流した際に後続シートP2が第三突出量Δ3に相当する位置まで至るまでのタイミングに相当する。すなわち、シート処理制御部210は、後続シートP2の先端が第三突出量Δ3に相当する位置に至ったときに、第二搬送手段R2、第三搬送手段R3の回転を再開する。これによって、
図9に示すように、搬送を停止していた先行シートP1の搬送が再開される。
【0064】
この場合、シート処理制御部210は、後続シートP2の搬送を停止させずに、第一シート検出センサSN1の検知から先行シートP1の搬送再開タイミングを算出する。そして、搬送再開タイミングが到来したときに先行シートP1の搬送を再開する。この制御によって、後続シートP2と先行シートP1は重ね合わせた状態で搬送される状態になる。この重ね合わせ搬送状態では、後続シートP2の先端が先行シートP1の先端よりも、第一搬送手段R1へ向かう搬送方向において、少し先行した状態である。
【0065】
なお、第三突出量Δ3は、第零搬送手段R0を駆動するモータの速度(モータ速度)と、第三搬送手段R3を駆動するモータのモータ速度、第一シート検出センサSN1と第二シート検出センサSN2と第四シート検出センサSN4との位置関係(相互の距離)に基づいて算出される。第三突出量Δ3は、第一搬送手段R1の手前で先行シートP1と後続シートP2の先端同士が合流するときに、後続シートP2の搬送方向先端が、先行シートP1の搬送方向先端に対して先行する量(先行量)に相当する。
【0066】
そして、先行シートP1の先端と後続シートP2の先端が合流し、シート束Qが生成されて、
図10に示すように、第一搬送手段R1のニップを通過して下流に搬送される状態になる。以上のように、後続シートP2が先に第一搬送手段R1のニップに突き当たり、その後、先行シートP1が第一搬送手段R1のニップに突き当たるように制御する。これによって、第三突出量Δ3が大きいときに、第二シート検出センサSN2の手前ではまだ合流していない場合でも、合流するタイミングを調整できる。
【0067】
その後、シート処理制御部210は、プリンタユニット100から通知された重ね折り枚数設定と受入れ枚数が一致しているか否かを判定し、一致している場合は、後述する折り処理を行う。一致してない場合、
図7から
図9まで処理を再度行い、プリンタユニット100側から搬送された次シートP3(後続シートP2の次のシートP)とシート束Qを合流させて重ね合わせる。なお、シートPが第二搬送手段R2のニップの直前まで搬送されたか否かは、例えば、第一搬送手段R1を駆動するモータの駆動ステップ数から判断できる。したがって、各搬送手段を回転駆動させる駆動モータは、ステッピングモータなどを用いればよい。なお、各センサの検知により算出されるタイミングに基づいて制御すれば、DCモータを適用することもできる。
【0068】
[綴じ処理の第一実施形態]
次に、本発明に係るシート処理装置としての折り処理ユニット200と綴じ処理ユニット300において実行される綴じ処理の第一実施形態について説明する。本実施形態は、複数のシートPを折り処理ユニット200が備える循環搬送路を用いて重ね合わせてシート束Qを形成し、このシート束Qに対し綴じ処理ユニット300において綴じ処理を行う。本実施形態に係る綴じ処理では、循環搬送で形成されるシート束Qの端部の整合性を向上できる。以下、
図12以降を用いて説明する。なお、以降の説明において、シート束Qは、先行シートP1と後続シートP2によって構成されるものを例に用いている。そして、各図において、先行シートP1を破線で示し、後続シートP2を点線で示している。シート束Qは、後続シートP2が先行シートP1の上に重ね合わせられているものとする。
【0069】
図12は、すでに説明した折り処理ユニット200と、これの下流側に設けられている綴じ処理ユニット300の内部構成である。折り処理ユニット200の詳細は省略する。
【0070】
綴じ処理ユニット300は、折り処理ユニット200の出口22(
図4参照)を介して排出されたシート束Qを、第九搬送手段R9、第十搬送手段R10、第十一搬送手段R11を介して、ステイプルトレイ31へと搬送するように構成されている。
【0071】
第十一搬送手段R11によって、ステイプルトレイ31へと搬送されたシート束Qは、搬送方向の後端側から基準フェンス32へと向かい、基準フェンス32において端部の整合が行われる。このとき、ステイプルトレイ31へと搬送されたシート束Qの最上位面に叩きコロ33が接触した状態で回転し、シート束Qが基準フェンス32の方に移動するように付勢する。そして、基準フェンス32の近傍に配置されている戻しコロ34がシート束Qを基準フェンス32に向けて押すことで、端部を整合するようにする。
【0072】
ステイプルトレイ31に向かって搬送されるシート束Qの最上位は後シートPnである。以下、説明を簡略化するために、先行シートP1と後続シートP2によるシート束Qを例にする。シート束Qが第十一搬送手段R11を通過するときの搬送方向先端となるのは、
図13(a)に示すように先行シートP1の端部の場合と、
図13(b)に示すように後続シートP2の端部の場合が想定される。
【0073】
図13(a)の状態で搬送されたシート束Qがステイプルトレイ31に搬送されたとき、
図14(a)に示すように、最上位にある後続シートP2が、叩きコロ33と戻しコロ34と接触して、基準フェンス32へと突き当てられる。ステイプルトレイ31に搬送されてくるときに、先行シートP1の搬送方向の端部が後続シートP2の搬送方向の端部よりも搬送方向側に先行している状態のとき、叩きコロ33と戻しコロ34の作用で、後続シートP2が先に、基準フェンス32へ突き当ることになる。そうすると、叩きコロ33と戻しコロ34によって、後続シートP2に対し、基準フェンス32の方向へ移動するような付勢を続けても、後続シートP2は移動しない。その結果、先行シートP1も基準フェンス32へと移動する力を得ることができずに、先行シートP1と後続シートP2の搬送方向端部の整合がされない状態になる。
【0074】
一方、
図13(b)の状態で搬送されたシート束Qがステイプルトレイ31に搬送されるときは、上記のような整合の乱れを抑制することができる。すなわち、後続シートP2の搬送方向の端部が先行シートP1の搬送方向の端部よりも搬送方向側に先行している状態でステイプルトレイ31に搬送された状態であれば、
図14(b)に示すように、叩きコロ33と戻しコロ34の作用で、後続シートP2が基準フェンス32へ突き当る前に先行シートP1が基準フェンス32に突き当たる。その結果、シート束Qを構成する各シートP(先行シートP1と後続シートP2)を基準フェンス32に突き当てることができるので、搬送方向端部の整合がなされる。
【0075】
上記を踏まえ、従来技術における課題を説明する。従来技術では、シートPの端部を揃えるように制御して、ステイプルトレイ31などの後処理を実行する位置に搬送する。しかし、循環搬送経路を用いてシートPを重ね合わせる場合、重ね合わせ時のズレにより先行シートP1が先頭になって搬送されることもある。そうすると、
図13(a)及び
図14(a)に例示したように、ステイプルトレイ31での整合が不完全になることが懸念される。
【0076】
なお、シートPの端部のズレの量は、重ね合わせ時の各シートPの端部の曲がり度合いによる搬送タイミングのズレや、各種センサ240による検知のばらつきなどのよって変動する。また、3枚以上のシートPを循環搬送によって重ね合わせる場合、循環搬送経路における搬送経路の内輪差(内側のシートPが先行する)によっても変動する。またシート束Qを、折り処理ユニット200から綴じ処理ユニット300のステイプルトレイ31へ搬送する途中でシートPの間にずれが生ずることもある。
【0077】
そこで、本実施形態に係る折り処理ユニット200及び綴じ処理ユニット300では、複数枚のシートPの間の摩擦(シート間摩擦)、各搬送手段の駆動ローラと従動ローラの搬送力の差によるスリップ等を考慮する。これらを考慮して、循環搬送経路において、シートPを重ね合わせるときに、後続シートP2が先行シートP1に対して、搬送方向において先行するように重ね合わせるように搬送制御をする。
【0078】
具体的には、
図8にて説明したように、重ね合わせのため、先行シートP1の搬送方向先端が第四シート検出センサSN4で検知された後、先行シートP1の先頭が第二突出量Δ2に相当する位置に至ったら搬送を停止する。
【0079】
続いて、
図9にて説明したように、後続シートP2の先端が第一シート検出センサSN1で検知されたことを示す検知信号がシート処理制御部210に通知された後、後続シートP2を搬送しつつ、第一シート検出センサSN1の検知タイミングに基づいて算出される所定のタイミングをもって、先行シートP1の搬送を再開する。
【0080】
そして、後続シートP2と先行シートP1が重ね合わせられたシート束Qは、第一搬送手段R1のニップへと搬送されるが、この搬送タイミングは、後続シートP2の先端が先行シートP1と合流した際に後続シートP2が第三突出量Δ3に相当する位置まで至るタイミングに相当する。すなわち、シート処理制御部210は、後続シートP2の先端が第三突出量Δ3に相当する位置に至ったときに、第二搬送手段R2、第三搬送手段R3の回転を再開させる。これによって、
図9にて説明したように、搬送を停止していた先行シートP1の搬送が再開される。
【0081】
なお、第二突出量Δ2と、搬送再開のトリガとなる第三突出量Δ3は、第二突出量Δ2の方が第三突出量Δ3よりも大きいものとする(第三突出量Δ3<第二突出量Δ2)。
【0082】
先行シートP1の再搬送タイミングを遅らせることで、後続シートP2と重ね合わせたときに、確実に、後続シートP2が先行シートP1に対して先行する状態になるように制御する。これによって、循環搬送による重ね合わせ処理によって形成されたシート束Qの綴じ処理を行うときに、後続シートP2を先行させた状態でステイプルトレイ31へと搬送することができる。その結果、上述したように、叩きコロ33と戻しコロ34による整合動作によって、シート束Qを構成するシートPの各端部を基準フェンス32に突き当てることができるので、整合性の高い綴じ処理を行うことができる。
【0083】
[綴じ処理の第二実施形態]
次に、本発明に係るシート処理装置としての折り処理ユニット200と綴じ処理ユニット300において実行される綴じ処理の第二実施形態について説明する。本実施形態でも、複数のシートPを折り処理ユニット200が備える循環搬送路を用いて重ね合わせてシート束Qを形成し、このシート束Qに対し綴じ処理ユニット300において綴じ処理を行う。
【0084】
循環搬送によってシート束Qを形成し、綴じ処理ユニット300に搬送するとき、既に説明をしたように、先行シートP1の搬送方向先端が後続シートP2の搬送方向先端よりも、搬送方向において先行する状態でシート束Qを形成するように搬送を制御する。この場合、綴じ処理ユニット300に搬送される途中におけるシート束Qの搬送方向の長さ(搬送長)は、シートPの搬送長よりも見かけ上は長くなる。
【0085】
例えば、シートPの搬送長に対し、シート束Qの見かけの搬送長「Lm」は、先行シートP1と後続シートP2の先端位置の隔たり(ギャップ)である「Lg」をシートPの一枚当たりの搬送長さを加算した値になる。この見かけの搬送長Lmに対し第五シート検出センサSN5によるジャム検知を通常の時間(シートP一枚を検知する時間)で動作させると、スリップに対する余裕度が少なくなってしまう。
【0086】
第五シート検出センサSN5の設置位置をシートPまたはシート束Qが通過する間、これらを検出し続けて、検出信号をシート処理制御部210が、シートPまたはシート束Qの通過時間を判定する。この通過時間が所定の閾値時間を超えていなければ、搬送は正常に行われているものと判定される。また、通過時間が閾値時間を超えるときは、ジャムなどの搬送異常が発生しているものと判定される。このジャム検知のための閾値時間を、シート処理制御部210はシート束Qに応じて変更する。
【0087】
そこで、
図15に示すように、搬出搬送路としての第四搬送路W4及び第七搬送路W7において、シート束Qを搬送しているとき、第五シート検出センサSN5や第八シート検出センサSN8においてシート束Qを検出しなくなるまでの時間に基づいて搬送不良を検知するための判定条件を変更する。
【0088】
例えば、一枚のシートPの搬送異常を検知するための判定条件(ジャム検知時間)を、シートPの搬送長に基づく検知時間に係数(例えば1.2)を乗じた値とする。すなわち、「一枚のシートP搬送時のジャム検知時間=シートPの搬送長に基づく搬送時間×1.2」とする。ここで“シートPの搬送長に基づく搬送時間”とは、例えば、第五シート検出センサSN5でシートPの先端が検知されてからシートPを検知しなくなるまでの時間をいう。すなわち、搬送方向における搬送長に基づいて搬送異常を検知している。
【0089】
そして、複数枚のシートPを重ねたシート束Qの搬送時のジャム検知時間は、シートPの一枚当たりの搬送長+ズレ量Lgの搬送時間に係数(1.2)を乗じた値とするように搬送を制御する。すなわち、「一枚束のシートQ搬送時のジャム検知時間=(シートPの搬送長+ズレ分のマージンBに基づく搬送時間)×1.2」とする。ここで“ズレ分のマージンB”は、ズレ量Lgの2倍となる。なお、ズレ量Lgは、シートPの種類に応じて予め設定された値となる。
【0090】
したがって、マージンBは、シート束Qを形成するシートPの枚数、すなわち、重ね合わせの数に応じて増加させればよい。例えば、2枚のシートPで形成されるシート束Qのジャム検知時間を設定するときのマージンBは、ズレ量Lgの2倍とするが、3枚のシートPで形成されるシート束Qのジャム検知時間を設定するときのマージンBは、ズレ量Lgの3倍とする。
【0091】
これによって、シート束Qの構成に応じて、最適なジャム検知時間を設定することができることで、無用なジャムの発生によるジャム処理の手間を省くことができる。
【0092】
以上説明したとおり、本実施形態に係る折り処理ユニット200及び綴じ処理ユニット300によって構成されるシート処理装置では、循環搬送路を用いて複数枚のシートPを重ね合わせたシート束Qに対する綴じ処理を行うときに、後続シートP2を先行させる。これによって、ステイプルトレイ31において端部を整合させるときに、最上位のシートP(後続シートP2)が最後に基準フェンス32に突き当たるようになる。すなわち、後続シートP2の基準フェンス32までの突き当て移動量が多くなることで、シート束Qを構成する他のシートPが先に基準フェンス32に到達し、シート束Qの整合度合いを向上できる。
【0093】
なお、本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、その技術的要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であり、特許請求の範囲に記載された技術思想に含まれる技術的事項の全てが本発明の対象となる。上記実施形態は、好適な例を示したものであるが、当業者であれば、開示した内容から様々な変形例を実現することが可能である。そのような変形例も、特許請求の範囲に記載された技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0094】
1 :プリンタシステム
10 :プリンタ
31 :ステイプルトレイ
32 :基準フェンス
33 :叩きコロ
34 :戻しコロ
100 :プリンタユニット
100a :プリンタ
110 :プリンタ制御部
200 :折り処理ユニット
200a :折り処理装置
210 :シート処理制御部
300 :綴じ処理ユニット
300a :綴じ処理装置
310 :綴じ処理制御部
【先行技術文献】
【特許文献】
【0095】