(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053355
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、及び半導体パッケージ
(51)【国際特許分類】
C08F 32/08 20060101AFI20240408BHJP
C08F 4/04 20060101ALI20240408BHJP
B32B 15/04 20060101ALI20240408BHJP
H05K 1/03 20060101ALI20240408BHJP
H01L 23/14 20060101ALI20240408BHJP
【FI】
C08F32/08
C08F4/04
B32B15/04 A
H05K1/03 610H
H01L23/14 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159567
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000004455
【氏名又は名称】株式会社レゾナック
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】福井 将人
(72)【発明者】
【氏名】春日 圭一
(72)【発明者】
【氏名】畠山 寧々
(72)【発明者】
【氏名】安部 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】瀬良 祐介
【テーマコード(参考)】
4F100
4J015
4J100
【Fターム(参考)】
4F100AB33A
4F100AB33C
4F100AK11B
4F100AK11G
4F100AT00
4F100BA03
4F100CA02B
4F100DH01B
4F100DH01G
4F100GB43
4F100JG05B
4F100JK06B
4F100JK06G
4F100JL02
4J015AA02
4J100AR10P
4J100CA01
4J100FA08
4J100FA18
4J100FA19
4J100FA28
4J100JA44
(57)【要約】
【課題】銅箔引きはがし強度、及び、経時安定性に優れる樹脂組成物、並びに、この樹脂組成物を用いたプリプレグ、樹脂フィルム、積層板、プリント配線板及び半導体パッケージを提供する。
【解決手段】(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物と、(B)アゾ化合物とを含む、樹脂組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物と、(B)アゾ化合物とを含む、樹脂組成物。
【請求項2】
前記(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物のビニルベンジル基の数が、4個以下である、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物が、インデン環を含む、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、プリプレグ。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含む、積層板。
【請求項6】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、樹脂フィルム。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
【請求項8】
請求項7に記載のプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、樹脂組成物、プリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、及び半導体パッケージに関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話に代表される移動体通信機器、その基地局装置、サーバー、ルーター等のネットワークインフラ機器、大型コンピュータなどの電子機器では、使用する信号の高速化及び大容量化が年々進んでいる。これに伴い、これらの電子機器に搭載されるプリント配線板には高周波化対応が必要となり、伝送損失を低減できる低比誘電率及び低誘電正接の基板材料等が求められている。
【0003】
高周波帯域での使用のための電子部品の材料として、特許文献1には、ビニルベンジル系化合物を含有する熱硬化性樹脂組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
低誘電樹脂は、一般的に極性基が少ない傾向があり、銅箔との密着力が一般材と比較して低い場合がある。一方、架橋密度を上げるため、ラジカル重合開始剤を用いると、プリプレグを保管したときの経時安定性が低下する場合があることがわかった。
本開示は、銅箔引きはがし強度、及び、経時安定性に優れる樹脂組成物、並びに、これを用いたプリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
実施形態の例を以下に列挙する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
<1> (A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物と、(B)アゾ化合物とを含む、樹脂組成物。
<2> 前記(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物のビニルベンジル基の数が、4個以下である、<1>に記載の樹脂組成物。
<3> 前記(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物が、インデン環を含む、<1>又は<2>に記載の樹脂組成物。
<4> <1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、プリプレグ。
<5> <1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含む、積層板。
<6> <1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含む、樹脂フィルム。
<7> <1>~<3>のいずれか1項に記載の樹脂組成物の硬化物を含む、プリント配線板。
<8> <7>に記載のプリント配線板と、半導体素子とを含む、半導体パッケージ。
【発明の効果】
【0007】
本開示により、銅箔引きはがし強度、及び、経時安定性に優れる樹脂組成物、並びに、この樹脂組成物を用いたプリプレグ、積層板、樹脂フィルム、プリント配線板、及び半導体パッケージを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施形態に限定されない。
【0009】
本開示において、「~」を用いて示された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本開示中に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲の上限値又は下限値は、別の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本開示中に記載されている数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
本開示において、各成分には、特に断らない限り、該当する物質が、1種又は2種以上含まれていてもよい。
本開示において、樹脂組成物中の各成分の含有量は、樹脂組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、樹脂組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0010】
[樹脂組成物]
本発明の一実施形態の樹脂組成物は、(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物と、(B)アゾ化合物とを含む。以下、「(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物」を「(A)ビニルベンジル化合物」又は「(A)成分」という場合がある。また、(B)アゾ化合物を「(B)成分」という場合がある。
【0011】
一実施形態の樹脂組成物は、(B)アゾ化合物がラジカル重合開始剤として作用することで、過酸化物系ラジカル重合開始剤等を用いた樹脂組成物に比べ、銅箔引きはがし強度を向上させることができ、かつ、プリプレグを保管したときの経時安定性を向上させることができると推測される。(B)アゾ化合物は、例えば、過酸化物系ラジカル重合開始剤と比較して直鎖ポリマーを生じやすく、このため、硬化物の靭性が向上し、銅箔引きはがし強度が向上すると推測される。また、プリプレグを保管した際の溶融粘度の上昇が小さく、経時安定性を向上させ得ると推測される。しかし、特定の理論に拘束されることはない。
【0012】
<(A)ビニルベンジル基を2個以上有し、分子量が1000以下である化合物>
(A)ビニルベンジル化合物は、ビニルベンジル基を2個以上有することが好ましい。一方、(A)ビニルベンジル化合物が1分子中に有するビニルベンジル基の数は、4個以下又は3個以下であってよい。(A)ビニルベンジル化合物が1分子中に有するビニルベンジル基の数は、例えば、2~4個又は2~3個であってよい。
【0013】
(A)ビニルベンジル化合物が有するビニルベンジル基は、o-ビニルベンジル基、m-ビニルベンジル基又はp-ビニルベンジル基のいずれであってもよいが、誘電特性の観点から、p-ビニルベンジル基が好ましい。
【0014】
(A)ビニルベンジル化合物が有する全ビニルベンジル基中、p-ビニルベンジル基の含有量は、特に限定されないが、低誘電正接性の観点から、10~100質量%が好ましく、15~95質量%がより好ましく、20~90質量%がさらに好ましく、25~85質量%がさらに好ましい。
【0015】
(A)ビニルベンジル化合物は、例えば、炭素原子に結合するビニルベンジル基を有する化合物であってよい。
【0016】
例えば、(A)ビニルベンジル化合物は、炭素原子に直接結合するビニルベンジル基を2個以上有していてよい。(A)ビニルベンジル化合物が1分子中に有する炭素原子に結合するビニルベンジル基の数は、例えば、2~4個又は2~3個であってよい。
【0017】
(A)ビニルベンジル化合物の分子量は、より良好な効果の得やすさの観点から、1000以下であることが好ましい。(A)ビニルベンジル化合物の分子量は、例えば、800以下であることが好ましく、750以下であることがより好ましく、700以下であることがさらに好ましい。一方、ビニルベンジル化合物の分子量は、200以上であることが好ましく、250以上であることがより好ましく、300以上であることがさらに好ましい。(A)ビニルベンジル化合物の分子量は、例えば、200~1000が好ましく、200~800がより好ましく、250~750がさらに好ましく、300~700がさらに好ましい。
【0018】
(A)ビニルベンジル化合物の分子量は、複数のビニルベンジル化合物の混合物の場合は、重量平均分子量(Mw)とする。本開示において、重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリスチレン換算によって測定される値とする。以下重量平均分子量について同じである。
【0019】
(A)ビニルベンジル化合物は、芳香族環と非芳香族環とを含む縮合多環構造を含む化合物であってよい。例えば、(A)ビニルベンジル化合物は、炭素原子に結合するビニルベンジル基を2個以上有し、芳香族環と非芳香族環とを含む縮合多環構造を含む化合物であることが好ましい。
【0020】
芳香族環と非芳香族環とを含む縮合多環構造としては、例えば、フルオレン環、インデン環、インダン環、フェナントレン環、アセナフチレン環等が挙げられる。これらの中でも、誘電特性の観点から、フルオレン環、インデン環が好ましい。
【0021】
(A)ビニルベンジル化合物は、例えばインデン環を含む化合物であってよい。
【0022】
(A)ビニルベンジル化合物の例としては、例えば、下記式(A-1)で表される化合物が挙げられる。
【0023】
【0024】
式(A-1)中、RB2は、各々独立に、ビニルベンジル基であり、nb2は、2又は3である。
【0025】
式(A-1)で表される化合物は、例えば、ビニルベンジル基を2個有する化合物及びビニルベンジル基を3個有する化合物のいずれあってもよく、これらの混合物であってもよい。ビニルベンジル基を2個有する化合物及びビニルベンジル基を3個有する化合物の混合物である場合、式(A-1)で表される化合物1分子が有するビニルベンジル基の平均個数は、例えば、2~2.8個が好ましく、2~2.7個がより好ましく、2~2.6個がさらに好ましい。また、ビニルベンジル基を2個有する化合物及びビニルベンジル基を3個有する化合物の混合物である場合、重量平均分子量(Mw)は、1000以下が好ましく、例えば、200~1000、200~800、250~750、又は300~700であってよい。
【0026】
(A)ビニルベンジル化合物は、例えば、公知の方法によって合成したものを用いてもよい。
【0027】
(A)ビニルベンジル化合物を合成する方法としては、特に限定されないが、例えば、フルオレン、インデン等の所望する構造を有するベース化合物と、ハロゲン化メチル基を有するスチレンとを、塩基性化合物の存在下で反応させる方法が挙げられる。ハロゲン化メチル基を有するスチレンとしては、例えば、o-クロロメチルスチレン、m-クロロメチルスチレン、p-クロロメチルスチレン、これらの混合物等が挙げられる。塩基性化合物としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ金属アルコキシド等が挙げられる。
上記反応には、相間移動触媒を用いてもよい。相間移動触媒としては、例えば、テトラブチルアンモニウムブロマイド等が挙げられる。
反応は、例えば、加熱及び撹拌下で行ってよい。得られた生成物は、必要に応じて、濃縮、再沈殿、洗浄等の公知の方法によって精製してもよい。
【0028】
(A)ビニルベンジル化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中における(A)ビニルベンジル化合物の含有量は、特に限定されないが、(A)ビニルベンジル化合物は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、例えば、30~90質量部が好ましく、35~85質量部がより好ましく、40~80質量部がさらに好ましい。なお、本開示において、「樹脂成分」とは、樹脂、及び硬化反応によって樹脂を形成する化合物を意味する。
【0029】
より良好な誘電特性の得やすさの観点から、(A)ビニルベンジル化合物は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、30質量部以上が好ましく、35質量部以上がより好ましく、40質量部以上がさらに好ましい。一方、より良好な銅箔引きはがし強度の得やすさの観点から、(A)ビニルベンジル化合物は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、90質量部以下が好ましく、85質量部以下がより好ましく、80質量部以下がさらに好ましい。
【0030】
<(B)アゾ化合物>
(B)アゾ化合物としては、アゾ基を有する化合物を用いることができる。
(B)アゾ化合物としては、例えば、下記式(B-1)で表される化合物を用いることができる。
【0031】
【0032】
式(B-1)において、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又は置換基である。
置換基は、特に限定されない。置換基は、例えば、炭化水素基であってよい。置換基は、例えば、置換又は非置換のアルキル基であってもよい。
【0033】
R1及びR2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
例えば、R1及びR2の少なくとも一方が、置換基であってよい。例えば、R1及びR2は、それぞれ独立に置換基であってよい。例えば、R1及びR2の少なくとも一方が、置換又は非置換のアルキル基であってよい。例えば、R1及びR2がそれぞれ独立に置換又は非置換のアルキル基であってもよい。
【0034】
アルキル基としては、直鎖状アルキル基、環状アルキル基、分岐状アルキル基のいずれであってもよい。アルキル基は、例えば、炭素数1~10、炭素数3~8、又は炭素数4~8のアルキル基であってよい。炭素数1~10のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、s-ブチル基、t-ブチル基、n-ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、t-ペンチル基、ヘキシル基、イソへキシル基、シクロヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、ノニル基、デシル基、1,1’,3,3’-テトラメチルブチル基、2,2’,4,4’-テトラメチルブチル基等が挙げられる。これは、さらに置換基を有してもよい。
【0035】
アルキル基が置換基を有する場合、アルキル基が有する置換基の数は、1つ又は2つ以上であってよい。アルキル基が2つ以上の置換基を有する場合、それらは互いに同一であっても異なってもよい。アルキル基が置換基を有する場合の置換基の例としては、例えば、アルコキシ基、シアノ基、-COOR3、-(C=O)NR4R5等が挙げられる。R3、R4及びR5は、それぞれ独立に水素原子、又は置換基である。R3、R4及びR5の例として、水素原子、置換又は非置換のアルキル基、置換又は非置換のアルケニル基等が挙げられる。R3、R4及びR5のアルキル基は、直鎖状アルキル基、環状アルキル基、分岐状アルキル基のいずれであってもよい。R3、R4及びR5のアルキル基は、例えば、炭素数1~10のアルキル基であってよい。炭素数1~10のアルキル基としては、上述したものが挙げられる。R3、R4及びR5のアルケニル基は、例えば、炭素数1~10のアルケニル基であってよい。
【0036】
誘電特性の観点から、(B)アゾ化合物として、例えば、アゾ基の窒素原子以外のヘテロ原子を含まない化合物を用いてもよい。
例えば、(B)アゾ化合物として式(B-1)で表されるアゾ化合物を用いる場合、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又は炭化水素基であってよい。例えば、R1及びR2は、それぞれ独立に水素原子又は非置換のアルキル基であってよい。
【0037】
(B)アゾ化合物としては、例えば、2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)、2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)、2,2’-アゾビス(4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、2,2’-アゾビス(2-メチルブチロニトリル)、2,2’-アゾビス[N-(2-プロペニル)-2-メチルプロピオンアミド]、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオン酸)ジメチル、4,4’-アゾビス(3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8-トリデカフルオロオクチル 4-シアノペンタノアート)、1,1’-アゾビス(シクロヘキシルカルボン酸メチル)、2,2’-アゾビスイソブチロニトリル、1,1’-アゾビス(シクロヘキサン-1-カルボニトリル)等が挙げられる。
【0038】
(B)アゾ化合物は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0039】
(B)アゾ化合物は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、0.01質量部以上、0.1質量部以上、又は0.5質量部以上であってよい。一方、(B)アゾ化合物は、樹脂組成物中の樹脂成分総量100質量部に対して、5質量部以下、4質量部以下、又は2質量部以下であってよい。例えば、(B)アゾ化合物は、樹脂組成物中の樹脂成分総量100質量部に対して、0.01~5質量部、0.1~4質量部、又は0.5~2質量部であってよい。
【0040】
<熱硬化性樹脂>
樹脂組成物は、(A)ビニルベンジル化合物に加え、さらに熱硬化性樹脂を含んでもよい。そのような熱硬化性樹脂としては、例えば、マレイミド化合物、エポキシ樹脂、シアネート樹脂等が挙げられる。これらは、1種単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0041】
樹脂組成物は、例えば、マレイミド化合物を含んでもよい。マレイミド化合物としては、N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種が好ましく、N-置換マレイミド基を2個以上有する化合物及びその誘導体からなる群から選択される少なくとも1種がより好ましい。
【0042】
N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物としては、例えば、芳香族マレイミド化合物、芳香族ビスマレイミド化合物、芳香族ポリマレイミド化合物、脂肪族マレイミド化合物等が挙げられる。本開示において、「芳香族マレイミド化合物」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物を意味する。本開示において、「芳香族ビスマレイミド化合物」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を2個有する化合物を意味する。本開示において、「芳香族ポリマレイミド化合物」とは、芳香環に直接結合するN-置換マレイミド基を3個以上有する化合物を意味する。また、本開示において、「脂肪族マレイミド化合物」とは、脂肪族炭化水素に直接結合するN-置換マレイミド基を有する化合物を意味する。
【0043】
N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物の具体例としては、N,N’-エチレンビスマレイミド、N,N’-ヘキサメチレンビスマレイミド、N,N’-(1,3-フェニレン)ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(2-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-[1,3-(4-メチルフェニレン)]ビスマレイミド、N,N’-(1,4-フェニレン)ビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)メタン、ビス(3-メチル-4-マレイミドフェニル)メタン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ビス(4-マレイミドフェニル)エーテル、ビス(4-マレイミドフェニル)スルホン、ビス(4-マレイミドフェニル)スルフィド、ビス(4-マレイミドフェニル)ケトン、ビス(4-マレイミドシクロヘキシル)メタン、1,4-ビス(4-マレイミドフェニル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(マレイミドメチル)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]メタン、1,1-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,1-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、1,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ブタン、2,2-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、2,2-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン、4,4-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、4,4-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ビフェニル、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]ケトン、ビス(4-マレイミドフェニル)ジスルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルフィド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホキシド、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル]エーテル、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(4-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,4-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、1,3-ビス[4-(3-マレイミドフェノキシ)-3,5-ジメチル-α,α-ジメチルベンジル]ベンゼン、ポリフェニルメタンマレイミド、インダン骨格を有する芳香族ビスマレイミド化合物、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物等が挙げられる。
【0044】
N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物の誘導体としては、例えば、上記したN-置換マレイミド基を1個以上有する化合物由来の構造単位とジアミン化合物由来の構造単位とを含有するアミノマレイミド化合物が挙げられる。
【0045】
アミノマレイミド化合物が含有するN-置換マレイミド基を1個以上有する化合物由来の構造単位としては、例えば、N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物が有するN-置換マレイミド基のうち、少なくとも1つのN-置換マレイミド基が、ジアミン化合物が有するアミノ基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド化合物中に含まれるN-置換マレイミド基を1個以上有する化合物由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0046】
アミノマレイミド化合物が含有するジアミン化合物由来の構造単位としては、例えば、ジアミン化合物が有する2個のアミノ基のうち、一方又は両方のアミノ基が、N-置換マレイミド基を1個以上有する化合物が有するN-置換マレイミド基とマイケル付加反応してなる構造単位が挙げられる。
アミノマレイミド化合物中に含まれるジアミン化合物由来の構造単位は、1種単独であってもよく、2種以上であってもよい。
【0047】
ジアミン化合物としては、例えば、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、3,3’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルケトン、4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、2,2’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジヒドロキシベンジジン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジアミノジフェニルメタン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)プロパン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、1,3-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、1,4-ビス〔1-[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]-1-メチルエチル〕ベンゼン、4,4’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、4,4’-[1,4-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、3,3’-[1,3-フェニレンビス(1-メチルエチリデン)]ビスアニリン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン等の芳香族ジアミン化合物;第1級アミノ基を2個有するシリコーン化合物などが挙げられる。本開示において、「芳香族ジアミン化合物」とは、芳香環に直接結合するアミノ基を2個有する化合物を意味する。
【0048】
マレイミド化合物の市販品の例としては、例えば、日本化薬株式会社製「MIR-3000」(商品名)等が挙げられる。
【0049】
マレイミド化合物は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
樹脂組成物中におけるマレイミド化合物の含有量は、特に限定されない。樹脂組成物がマレイミド化合物を含む場合、マレイミド化合物は、例えば、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、1~50質量部、10~40質量部、又は20~30質量部であってよい。
マレイミド化合物の量は、より良好な耐熱性、成形性、加工性及び導体接着性の得やすさの観点から、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましい。一方、マレイミド化合物は、より良好な誘電特性の得やすさの観点から、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、50質量部以下が好ましく、40質量部以下がより好ましく、30質量部以下がさらに好ましい。
【0050】
樹脂組成物において、ビニルベンジル化合物を含む熱硬化性樹脂の総量は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、例えば、40~90質量部、50~85質量部、又は60~80質量部であってよい。
樹脂組成物において、ビニルベンジル化合物は、熱硬化性樹脂の総量100質量部に対して、50質量部以上が好ましく、60質量部以上がより好ましく、たとば、70質量部以上、80質量部以上、90質量部以上、又は100質量部であってよい。
【0051】
<エラストマー>
樹脂組成物は、必要に応じて、エラストマーを含んでよい。
エラストマーとしては、例えば、スチレン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、ウレタン系エラストマー、ポリエステル系エラストマー、ポリアミド系エラストマー、アクリル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、これらの誘導体等が挙げられる。
【0052】
スチレン系エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体(SBS)等のスチレン-ブタジエン共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体等のスチレン-イソプレン共重合体、スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物、スチレン-イソプレン共重合体の水素添加物、スチレン-無水マレイン酸共重合体等が挙げられる。
スチレン系エラストマーにおいて、スチレン由来の構造単位の含有量(「スチレン含有量」という場合がある)は、特に限定されないが、誘電正接及び導体との接着性の観点から、5~80質量%であることが好ましく、10~75質量%であることがより好ましく、15~60質量%であることがさらに好ましく、20~45質量%であることが特に好ましい。
【0053】
エラストマーは、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
エラストマーの量は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、例えば、1~50質量部、10~45質量%、又は15~40質量%であってよい。
【0054】
<無機充填材>
樹脂組成物は、必要に応じて、無機充填材を含んでよい。
無機充填材としては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、マイカ、ベリリア、チタン酸バリウム、チタン酸カリウム、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、炭酸アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素、クレー、タルク、ホウ酸アルミニウム、炭化ケイ素等が挙げられる。
【0055】
無機充填材は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
無機充填材の量は、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、40~90質量部、45~85質量部、又は50~80質量部であってよい。
【0056】
<難燃剤>
樹脂組成物は、必要に応じて、難燃剤を含んでよい。
難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、リン系難燃剤等が挙げられる。
難燃剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
難燃剤の量は、例えば、樹脂組成物中の樹脂成分の総量100質量部に対して、1~50質量部、10~40質量部が、又は20~30質量部であってよい。
【0057】
<有機溶剤>
樹脂組成物は、必要に応じて、有機溶剤を含んでよい。
有機溶剤としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤;テトラヒドロフラン等のエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、メシチレン等の芳香族炭化水素系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の窒素原子含有溶剤;ジメチルスルホキシド等の硫黄原子含有溶剤;γ-ブチロラクトン等のエステル系溶剤などが挙げられる。
有機溶剤は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてよい。
【0058】
<その他の添加剤>
樹脂組成物は、必要に応じてその他の添加剤を含んでよい。その他の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、紫外線吸収剤、顔料、着色剤、滑剤等が挙げられる。
【0059】
<樹脂組成物の製造方法>
樹脂組成物は、(A)ビニルベンジル化合物、(B)アゾ化合物、及び、必要に応じて用いるその他の成分等を公知の方法で混合することで製造することができる。この際、各成分は撹拌しながら溶解又は分散させてもよい。混合順序、温度、時間等の条件は、特に限定されず、原料の種類等に応じて任意に選択することができる。
【0060】
<硬化物の誘電特性>
樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(Dk)は、特に限定されないが、4.0以下が好ましく、3.5以下がより好ましく、3.2以下がさらに好ましい。樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける比誘電率(Dk)は小さい程好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、2.3以上であってもよく、2.4以上であってもよい。
10GHzにおける比誘電率(Dk)は、空洞共振器摂動法に準拠した値である。
本開示において、「硬化物」とは、JIS K 6800(1985)におけるC-ステージの状態にある樹脂組成物と同義である。
【0061】
樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける誘電正接(Df)は、特に限定されないが、0.0080以下が好ましく、0.0070以下がより好ましく、0.0060以下がさらに好ましい。樹脂組成物の硬化物の10GHzにおける誘電正接(Df)は小さい程好ましく、その下限値に特に制限はないが、他の物性とのバランスを考慮して、例えば、0.0010以上であってよい。
10GHzにおける誘電正接(Df)は、空洞共振器摂動法に準拠した値である。
【0062】
[プリプレグ]
プリプレグは、前記樹脂組成物又は前記の樹脂組成物の半硬化物を含むことができる。本開示において、「半硬化物」とは、JIS K 6800(1985)におけるB-ステージの状態にある樹脂組成物と同義である。
プリプレグは、例えば、前記の樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物と、シート状繊維基材と、を含有するものであってよい。
【0063】
シート状繊維基材としては、例えば、各種の電気絶縁材料用積層板に用いられている公知のシート状繊維基材を使用することができる。
シート状繊維基材の材質としては、例えば、Eガラス、NEガラス、Dガラス、Sガラス、Qガラス等の無機物繊維;ポリイミド、ポリエステル、テトラフルオロエチレン等の有機繊維;これらの混合物などが挙げられる。これらのシート状繊維基材は、例えば、織布、不織布、ロービンク、チョップドストランドマット、サーフェシングマット等の形状を有する。
【0064】
プリプレグは、例えば、樹脂組成物を、シート状繊維基材に含浸又は塗布してから、加熱乾燥してB-ステージ化することによって製造することができる。
加熱乾燥の温度及び時間は、特に限定されないが、生産性及び本実施形態の樹脂組成物を適度にB-ステージ化させるという観点から、例えば、50~200℃、1~30分間とすることができる。
【0065】
プリプレグ中の樹脂組成物由来の固形分濃度は、特に限定されないが、積層板とした際に、より良好な成形性が得られ易いという観点から、好ましくは20~90質量%、より好ましくは25~80質量%、さらに好ましくは30~75質量%である。本開示において、「固形分」とは、溶媒等の揮発する物質を除いた不揮発分のことを意味する。
【0066】
[樹脂フィルム]
樹脂フィルムは、前記樹脂組成物又は前記樹脂組成物の半硬化物を含むことができる。
樹脂フィルムは、例えば、有機溶媒を含有する樹脂組成物、つまり樹脂ワニスを支持体に塗布してから、加熱乾燥させることによって製造することができる。
支持体としては、例えば、プラスチックフィルム、金属箔、離型紙等が挙げられる。
加熱乾燥の温度及び時間は、特に限定されないが、生産性及び本実施形態の樹脂組成物を適度にB-ステージ化させるという観点から、50~200℃、1~30分間とすることができる。
【0067】
樹脂フィルムは、プリント配線板を製造する場合において、絶縁層を形成するために用いられることが好ましい。
【0068】
[積層板]
積層板は、前記樹脂組成物の硬化物と、金属箔とを含むことができる。
なお、金属箔を有する積層板は、金属張積層板と称されることもある。
【0069】
金属箔の金属としては、特に限定されず、例えば、銅、金、銀、ニッケル、白金、モリブデン、ルテニウム、アルミニウム、タングステン、鉄、チタン、クロム、これらの金属元素を1種以上含有する合金等が挙げられる。
【0070】
積層板は、例えば、プリプレグの片面又は両面に金属箔を配置してから、加熱加圧成形することによって製造することができる。
通常、この加熱加圧成形によって、B-ステージ化されたプリプレグを硬化させて本実施形態の積層板が得られる。
加熱加圧成形する際、プリプレグは1枚のみを用いてもよいし、2枚以上のプリプレグを積層させてもよい。
加熱加圧成形は、例えば、多段プレス、多段真空プレス、連続成形、オートクレーブ成形機等を使用することができる。
加熱加圧成形の条件は、特に限定されないが、例えば、温度100~300℃、時間10~300分間、圧力1.5~5MPaとすることができる。
【0071】
[プリント配線板]
プリント配線板は、前記樹脂組成物の硬化物を含むことができる。
配線板は、例えば、本実施形態のプリプレグの硬化物、本実施形態の樹脂フィルムの硬化物及び積層板からなる群から選択される1種以上に対して、公知の方法によって、導体回路形成を行うことによって製造することができる。また、さらに必要に応じて多層化接着加工を施すことによって多層プリント配線板を製造することもできる。導体回路は、例えば、穴開け加工、金属めっき加工、金属箔のエッチング等を適宜施すことで形成することができる。
【0072】
[半導体パッケージ]
半導体パッケージは、前記プリント配線板と、半導体素子と、を有することができる。
半導体パッケージは、例えば、プリント配線板に、公知の方法によって、半導体素子、メモリ等を搭載することによって製造することができる。
【実施例0073】
以下に、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない
【0074】
[ビニルベンジル化合物Aの製造]
撹拌装置、温度計、還流管及び窒素吹き込み口を備えた500mLの容積の反応容器に、下記のベース化合物35.6質量部、下記のクロロメチルスチレン101.2質量部、下記の相間移動触媒7.1質量部、下記の重合禁止剤0.1質量部、下記の溶媒77.6質量部を仕込み、流量50ml/分で窒素を吹き込みながら、40℃で加熱撹拌した。
次いで、下記の塩基性化合物の水溶液46.5質量部を20分間で滴下し、更に60℃で9時間撹拌した。なお反応中は窒素の吹込みを継続させた。室温(25℃)に冷却し10%塩酸水溶液で中和した後、純水で2回洗浄し、トルエンを減圧留去後、得られた粘稠液体をメタノールで洗浄した後に真空乾燥することでビニルベンジル化合物Aを得た。ビニルベンジル化合物Aは、1H-NMR分析によって、下記式(A-2)で表されるインデンの1位の炭素原子に直接結合する2個の水素原子が実質的に全てビニルベンジル基に置換された構造を有することが確認された。また、GPC分析によって、ビニルベンジル化合物Aは、ビニルベンジル基が2個導入されたものと、3個導入されたものとの混合物であった。ビニルベンジル化合物Aの重量平均分子量(Mw)は、500であった。重量平均分子量は、下記の方法で測定した。
【0075】
【0076】
(ベース化合物)
・インデン
【0077】
(クロロメチルスチレン)
・CMS-P:AGCセイミケミカル株式会社製、m体とp体の混合物、m体含有量が50質量%、p体含有量が50質量%
【0078】
(相間移動触媒)
・臭化テトラ-n-ブチルアンモニウム:関東化学株式会社製
(重合禁止剤)
・フェノチアジン
【0079】
(溶媒)
・トルエン
【0080】
(塩基性化合物の水溶液)
・48%水酸化ナトリウム溶液:関東化学株式会社製、濃度48質量%の水酸化ナトリウムの水溶液
【0081】
[重量平均分子量(Mw)の測定方法]
重量平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、標準ポリスチレンを用いた検量線から換算した。検量線は、標準ポリスチレン:TSKstandard POLYSTYRENE(Type;A-2500、A-5000、F-20、F-80)(東ソー株式会社製、商品名)を用いて3次式で近似した。GPCの測定条件を、以下に示す。
装置:高速GPC装置 HLC-8320GPC
検出器:紫外吸光検出器 UV-8320(東ソー株式会社製)
カラム:ガードカラム;TSKgel guardcolumn Super(HZ)-M+カラム;TSKgel SuperMultipore HZ-M(2本)、リファレンスカラム;TSKgel SuperH-RC(2本)(すべて東ソー株式会社製、商品名)
カラムサイズ:4.6×20mm(ガードカラム)、4.6×150mm(カラム)、6.0×150mm(リファレンスカラム)
溶離液:テトラヒドロフラン
試料濃度:10mg/1mL
注入量:20μL又は2μL
流量:0.35mL/分
測定温度:40℃
【0082】
[樹脂組成物の製造]
表1に記載の各成分を、トルエンと共に表1に記載の配合量に従って配合し、25℃で撹拌及び混合して、固形分濃度が約60質量%の実施例1~4及び比較例1~2の樹脂組成物(ワニス)を調製した。表1中、各成分の配合量の単位は質量部であり、溶液の場合は、固形分換算の質量部を意味する。
【0083】
表1に記載の各材料の詳細は下記の通りである。
ビニルベンジル化合物A:上記で製造
スチレン系エラストマー1:スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物(スチレン量:42質量%)
スチレン系エラストマー2:スチレン-ブタジエン共重合体の水素添加物(スチレン量:30質量%)
マレイミド化合物:ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物(日本化薬株式会社製「MIR-3000」(商品名))
臭素系難燃剤:デカブロモジフェニルエタン(アルベマール日本株式会社製「Saytex8010」(商品名)
無機充填材:溶融シリカ、平均粒子径:0.5μm
アゾ化合物1:2,2’-アゾビス(2,4,4-トリメチルペンタン)(富士フイルム和光純薬株式会社製「VR-110」(商品名))(10時間半減期温度110℃)
アゾ化合物2:2,2’-アゾビス(N-ブチル-2-メチルプロピオンアミド)(富士フイルム和光純薬株式会社製「VAm-110」(商品名))(10時間半減期温度110℃)
過酸化物系開始剤:α,α’-ビス(t-ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン(日油株式会社製「パーブチル-P」(商品名))(10時間半減期温度119℃)
【0084】
[プリプレグの作製]
上記のようにして得られた樹脂組成物(ワニス)を、厚さ0.5mmのNEガラスクロス(日東紡績株式会社製)に含浸塗工し、130℃で4分間加熱乾燥し、樹脂組成物由来の固形分の含有量が70質量%のプリプレグを得た。
【0085】
[両面銅張積層板の作製]
得られたプリプレグの両側に、厚さ18μmの電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製「3EC-M3-VLP-18」(商品名))を、マット面がプリプレグと合わさるように重ね、230℃にて80分間、3MPaの真空プレス条件で加熱加圧することによって、両面銅張積層板を作製した。
【0086】
[評価方法及び測定方法]
(銅箔引きはがし強度)
上記で得られた両面銅張積層板を銅エッチング液に浸漬することにより、幅3mmの帯部分を残して銅箔を取り除いた評価用基板を作製した。次いで、引張り試験機(株式会社島津製作所製「AG-100」(商品名))を用いて帯部分を90°方向に引き剥がし、引き剥がし強度を測定した。なお、50mm/minの速度で引き剥がした。結果を表1に示す。
【0087】
(経時安定性)
プリプレグの保管を想定して、プリプレグを40℃の乾燥機に投入し、14日間保管した。40℃14日間の保管(エージング)後のプリプレグに、厚さ18μmの電解銅箔(三井金属鉱業株式会社製「3EC-M3-VLP-18」(商品名))を、マット面がプリプレグと合わさるように重ね、230℃にて80分間、3MPaの真空プレス条件で加熱加圧することによって、両面銅張積層板を作製した。この両面の銅箔をエッチングして除去した。このようにして得られた評価用基板において、表面にボイドが見られるかどうかを、目視により、下記の評価基準で判断した。結果を表1に示す。
A:表面にボイドがない
B:表面にボイドが発生している
【0088】
【0089】
表1に示された結果から、アゾ化合物が用いられた実施例1~4では、いずれも0.6kN/m以上の良好な銅箔引きはがし強度が示され、開始剤を加えていない比較例1、及び過酸化物系重合開始剤が用いられた比較例2のいずれに対しても、銅箔引きはがし強度に優れていた。
【0090】
アゾ化合物が用いられた実施例1~4では、40℃14日間の保管(エージング)後のプリプレグの成形性も良好であり、経時安定性に優れていることがわかる。一方、過酸化物系開始剤が用いられた比較例2では、40℃14日間保管後のプリプレグの成形性に問題があり、経時安定性に劣ることがわかる。