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特開2024-53370ヘッドユニット、液体吐出装置、塗布装置、駆動装置および駆動方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024053370
(43)【公開日】2024-04-15
(54)【発明の名称】ヘッドユニット、液体吐出装置、塗布装置、駆動装置および駆動方法
(51)【国際特許分類】
   B05C 11/10 20060101AFI20240408BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20240408BHJP
   B41J 2/14 20060101ALI20240408BHJP
   B05C 5/00 20060101ALI20240408BHJP
   B05D 1/26 20060101ALI20240408BHJP
   B05B 12/00 20180101ALN20240408BHJP
   B05B 13/04 20060101ALN20240408BHJP
【FI】
B05C11/10
B41J2/015 101
B41J2/14 301
B05C5/00 101
B05D1/26 Z
B05B12/00 A
B05B13/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022159596
(22)【出願日】2022-10-03
(71)【出願人】
【識別番号】000006747
【氏名又は名称】株式会社リコー
(74)【代理人】
【識別番号】100098626
【弁理士】
【氏名又は名称】黒田 壽
(72)【発明者】
【氏名】紀伊國 敬
【テーマコード(参考)】
2C057
4D075
4F035
4F041
4F042
【Fターム(参考)】
2C057AF77
2C057AG44
2C057AJ05
2C057AM15
2C057AM16
2C057AM21
2C057AN01
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA08
2C057BA14
4D075AC06
4D075AC84
4D075AC88
4D075AC91
4D075EA05
4D075EA33
4F035AA03
4F035BA03
4F035BA05
4F035BA22
4F035BB02
4F035BC02
4F035CA02
4F035CA04
4F035CA05
4F035CD06
4F035CD08
4F035CD12
4F035CD18
4F035CD19
4F041AA07
4F041AA12
4F041AB01
4F041BA05
4F041BA12
4F041BA13
4F041BA22
4F041BA32
4F041BA36
4F042AA09
4F042AA22
4F042BA06
4F042BA08
4F042BA12
4F042BA21
4F042CA01
4F042CA09
4F042CB03
4F042CB08
4F042CB10
4F042CB19
4F042DH09
(57)【要約】
【課題】液体を吐出するノズル孔に気泡が巻き込まれることによる液体の吐出不良を低減する。
【解決手段】
加圧された液体を収容する液室と、前記液体を吐出するノズル孔と、前記液室内に設けられる弁体と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体と、を有する液体吐出ヘッドと、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる開放電圧および前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加する駆動制御部と、を備えるヘッドユニットであって、前記開放電圧の信号波形は、第1電圧を印加する第1期間と、前記第1期間より後に前記第1電圧と異なる第2電圧を印加する第2期間と、を有する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
加圧された液体を収容する液室と、前記液体を吐出するノズル孔と、前記液室内に設けられる弁体と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体と、を有する液体吐出ヘッドと、
前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる開放電圧および前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加する駆動制御部と、
を備えるヘッドユニットであって、
前記開放電圧の信号波形は、
第1電圧を印加する第1期間と、
前記第1期間より後に前記第1電圧と異なる第2電圧を印加する第2期間と、
を有することを特徴とするヘッドユニット。
【請求項2】
前記第2電圧は、前記閉鎖電圧と前記第1電圧の間の電圧であることを特徴とする請求項1記載のヘッドユニット。
【請求項3】
前記弁体は、前記ノズル孔を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期で振動し、前記第2期間は、前記固有振動周期の半分より短いことを特徴とする請求項2記載のヘッドユニット。
【請求項4】
前記弁体は、前記ノズル孔を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期で振動し、前記第1期間は、前記固有振動周期より長く、前記固有振動周期の3/2より短いことを特徴とする請求項2記載のヘッドユニット。
【請求項5】
前記第1電圧は、前記閉鎖電圧と前記第2電圧の間の電圧であることを特徴とする請求項1記載のヘッドユニット。
【請求項6】
前記弁体は、前記ノズル孔を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期で振動し、前記第1期間は、前記固有振動周期の半分より長く、前記固有振動周期より短いことを特徴とする請求項5記載のヘッドユニット。
【請求項7】
前記弁体は、前記ノズル孔を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期で振動し、前記第1期間は、前記固有振動周期の半分より短いことを特徴とする請求項5記載のヘッドユニット。
【請求項8】
前記第2期間は、前記固有振動周期の半分より短いことを特徴とする請求項7記載のヘッドユニット。
【請求項9】
前記液体吐出ヘッドは、前記ノズル孔が形成されたノズル板を備え、前記弁体は、前記ノズル板に当接することで前記ノズル孔を閉鎖し、前記ノズル板から離間することで前記ノズルを開放することを特徴とする請求項1記載のヘッドユニット。
【請求項10】
前記弁体と前記駆動体との間に、前記駆動体の伸びる力を、前記弁体を引き込む力に変換して前記弁体へ伝達する伝達機構を備えることを特徴とする請求項1記載のヘッドユニット。
【請求項11】
請求項1乃至10のいずれか一項に記載のヘッドユニットと、
前記ヘッドユニットが備える液体吐出ヘッドに対して、加圧した液体を供給する加圧手段と、
を備えることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項12】
前記液体吐出ヘッドを対象物に対して移動させる移動手段を備えることを特徴とする請求項11記載の液体吐出装置。
【請求項13】
請求項11に記載の液体吐出装置を備え、対象物に対して前記液体を塗布することを特徴とする塗布装置。
【請求項14】
加圧された液体を収容する液室と、前記液体を吐出するノズル孔と、前記液室内に設けられる弁体と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体と、を有する液体吐出ヘッドを駆動する駆動装置であって、
前記駆動装置は、
前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる開放電圧を印加し、前記ノズル孔から前記液体が吐出するように制御し、
前記駆動体に、前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加し、前記ノズル孔から前記液体が吐出しないように制御し、
前記開放電圧の信号波形は、第1電圧を印加する第1期間と、前記第1期間より後に前記第1電圧と異なる第2電圧を印加する第2期間とを有することを特徴とする駆動装置。
【請求項15】
加圧された液体を収容する液室と、前記液体を吐出するノズル孔と、前記液室内に設けられる弁体と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体と、を有する液体吐出ヘッドを駆動するための駆動方法であって、
前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる第1電圧を印加する第1ステップと、
前記第1ステップより後に、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる電圧であり、前記第1電圧と異なる第2電圧を印加する第2ステップと、
前記第2ステップより後に、前記駆動体に、前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加する第3ステップと、
を有することを特徴とする駆動方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヘッドユニット、液体吐出装置、塗布装置、駆動装置および駆動方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、塗料が噴射されるノズル孔と、ノズル孔に塗料を供給する塗料室と、塗料室の中にあって、先端にてノズル孔を閉鎖または開放するニードル弁と、ニードル弁を進退動作させる駆動機構とを備えた塗料噴射ノズルにおいて、ニードル弁がノズル孔を開放する際、ニードル弁をニードル弁の先端部に形成される合成樹脂層の変形戻り速度より速い速度で後退させる塗料噴射ノズルが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2022-064482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ニードル弁の後退速度を速くすると、ニードル弁の開放によるニードル弁の振動が大きくなり、その振動によりノズル孔から気泡が巻き込まれ、液体の吐出不良が生じるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、加圧された液体を収容する液室と、前記液体を吐出するノズル孔と、前記液室内に設けられる弁体と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体と、を有する液体吐出ヘッドと、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる開放電圧および前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加する駆動制御部と、を備えるヘッドユニットであって、前記開放電圧の信号波形は、第1電圧を印加する第1期間と、前記第1期間より後に前記第1電圧と異なる第2電圧を印加する第2期間とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、液体を吐出するノズル孔への気泡の巻き込みによる液体の吐出不良を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態に係るヘッドユニットの一例を示す断面図。
図2】加圧機構および移動機構の一例を示す説明図。
図3】ヘッドユニット、加圧機構および移動機構の制御系の一例を示すブロック図。
図4】ノズル孔の開閉動作の説明図。
図5】比較例における駆動信号とニードルの変位との関係を示す説明図。
図6】第1実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示す説明図。
図7】第2実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示す説明図。
図8】第3実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示す説明図。
図9】第4実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示す説明図。
図10】第5実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示す説明図。
図11】実施形態に係るヘッドユニットの別の構成例を示す断面図。
図12】固有振動周期の測定方法の一例を示す説明図。
図13】塗布装置の一例を示す説明図。
図14】塗布装置の使用例を示す説明図。
図15】電極製造装置の一例を示す説明図。
図16】応用例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図面を参照しながら、発明を実施するための形態を説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0009】
[ヘッドユニットの構成]
はじめに図1を参照しながら実施形態に係るヘッドユニットの構成について説明する。図1は、実施形態に係るヘッドユニットの一例を示す断面図である。
【0010】
図1に例示されたヘッドユニットは、液体の一例であるインクを吐出するインクジェットヘッドユニットである。インクジェットヘッドユニットHU(以下、ヘッドユニットと称する)は、液体吐出ヘッドの一例であるインクジェットヘッド100(以下、ヘッドと称する)と、ヘッド100の駆動を制御する駆動制御部500とから構成される。駆動制御部500は駆動装置の一例でもある。ヘッド100は、中空状に形成された筐体110と、筐体110の一端部に設けられたノズル板101を備える。ノズル板101は、インク10を吐出するノズル孔102が形成された板状の部材である。
【0011】
筐体110は、ノズル孔102に近い側面に、インク10を注入する注入口113を備える。注入口113から注入されたインク10は、筐体110内の液室114に収容される。液室114は、概略としてノズル板101と、筐体110内に設けた封止部材135との間に形成される空間によって形成される。
【0012】
液室114内には、弁体の一例であるニードル131が設けられる。ニードル131は、ノズル板101が位置する側の先端部に、ノズル孔102と対向するように弁部材130が接合されている。弁部材130は、例えばゴム等の弾性体からなる。ニードル131の先端部に弁部材130を設けることによりノズル孔102に対する密着性がよくなり、ノズル孔102をより確実に閉鎖することができるようになる。なお、ニードル131の構成は上記に限るものではない。例えば、弁部材130を設けずに、ニードル131の先端部でノズル孔102を直接閉鎖する構成であってもよい。
【0013】
封止部材135は、例えばゴム等の弾性体からなる。本実施形態では、封止部材135としてゴム製のOリングが用いられ、筐体110の内面とニードル131の外周面との間の隙間を封止するように、ニードル131にOリングが嵌められている。これにより、封止部材135は液室114のインク10が圧電素子132側へ流入することを防止する。
【0014】
駆動体の一例である圧電素子132は、封止部材135を境に液室114の隣(図1では上方)に形成された空間内に設けられる。圧電素子132は、駆動制御部500からの駆動信号に応じて、ノズル孔102を閉鎖する位置と、ノズル孔102を開放する位置との間でニードル131を移動させる。ノズル孔102を閉鎖する位置では、弁部材130がノズル板101に当接した状態となり、ノズル孔102を開放する位置では、弁部材130がノズル板101から離間した状態となる。なお、弁部材130を設けない構成の場合は、ノズル孔102を閉鎖する位置では、ニードル131がノズル板101に当接した状態となり、ノズル孔102を開放する位置では、ニードル131がノズル板101から離間した状態となる。
【0015】
圧電素子132は、ジルコニアセラミックス等を用いて形成されたピエゾ素子であり、圧電素子132の形状等は、吐出されるインク滴の量などに応じて適宜設定される。
【0016】
駆動制御部500は、圧電素子132に対して電気的に接続されており、圧電素子132の駆動を制御する。
【0017】
[加圧機構および移動機構の構成]
次に、図2および図3を用いてヘッド100にインク10を加圧供給する加圧機構、およびヘッド100を対象物に対して移動させる移動機構について説明する。図2は、加圧機構および移動機構の一例を示す説明図、図3はヘッドユニット、加圧機構および移動機構の制御系の一例を示すブロック図である。
【0018】
図2において、ヘッド100から吐出するインク10は、密閉されたインクタンク202に収容されている。インクタンク202とヘッド100の注入口113とはチューブ201によって接続されている。
【0019】
インクタンク202は、エアレギュレータ204を含むパイプ203を介してコンプレッサ205と接続されている。エアレギュレータ204は、コンプレッサ205で作成した圧縮空気の圧力を、必要とするエア圧力に調節し、コンプレッサ205からの加圧空気をインクタンク202へ供給する。これにより、ヘッド100の液室114には加圧されたインク10が供給されるとともに、弁部材130がノズル板101から離間することで液室114とノズル孔102とが連通し、ノズル孔102からインク10が吐出される。ここで、チューブ201、インクタンク202、パイプ203、エアレギュレータ204およびコンプレッサ205は、ヘッド100の液室114に対して加圧したインク10を供給するための加圧機構200を構成する。加圧機構200は加圧手段の一例である。
【0020】
また、ヘッド100の筐体110の一部(図2では上部)は、ヘッド保持部材301によって保持されている。ヘッド保持部材301は、駆動装置302に接続されており、駆動装置302を駆動させることでヘッド保持部材301はレール部材303に沿って矢印A方向および矢印B方向へ移動することができる。これにより、ヘッド保持部材301に保持されたヘッド100もレール部材303に沿って矢印A方向および矢印B方向へ移動する。ここで、ヘッド保持部材301、駆動装置302およびレール部材303は、ヘッド100を対象物に対して移動させるためのヘッド移動機構300を構成する。ヘッド移動機構300は移動手段の一例である。
【0021】
なお、駆動装置302およびレール部材303の部位は、例えば、ボールネジを用いた送りネジ機構、ラックアンドピニオンによる送り機構、動力伝達ベルトとプーリによる送り機構等、周知の機構を用いて適宜構成してよい。
【0022】
ここで、加圧機構200およびヘッド移動機構300と接続されたヘッドユニットHU(ヘッド100,駆動制御部500)は、液体吐出装置の一例である。
【0023】
図3に示すように、ヘッドユニットHU、加圧機構200およびヘッド移動機構300は、制御部600に電気的に接続されている。制御部600は、例えば、後述する塗布装置の全体動作を制御するものであってもよく、図3に示された構成要素以外にも、必要に応じて構成要素が追加されてもよい。
【0024】
制御部600は、例えば、画像データに基づいたインク吐出周期信号を、ヘッドユニットHUの駆動制御部500に対して送信する。制御部600は、ヘッド100の状態情報等を駆動制御部500を介して受信する。また、制御部600は、加圧機構200に対して加圧のオンオフを切り替えるための切替信号を送信する。さらに、制御部600は、ヘッド移動機構300に対してヘッド100を移動させるための移動信号を送信する。
【0025】
ヘッドユニットHUの駆動制御部500は、入力部501、駆動電圧生成部502、増幅部503および出力部504を備える。
【0026】
入力部501は、制御部600から画像データに基づいたインク吐出周期信号等を受信する。
【0027】
駆動電圧生成部502は、入力部501が受信したインク吐出周期信号等の情報に応じて、ヘッド100の圧電素子132を駆動させるための駆動電圧を生成する。
【0028】
増幅部503は、駆動電圧生成部502により生成された駆動電圧を増幅し、増幅後の信号を出力部504に出力する。
【0029】
出力部504は、増幅部503により増幅された信号に基づき、圧電素子132に対して駆動電圧を印加する。
【0030】
入力部501、駆動電圧生成部502、増幅部503および出力部504等の各機能は、電気回路で実現される他、これらの機能の一部をソフトウェア(CPU:Central Processing Unit)によって実現することもできる。また、上記各機能は、複数の回路または複数のソフトウェアによって実現されてもよい。
【0031】
以上のように駆動制御部500は、制御部600から受信するインク吐出周期信号に基づき駆動信号を生成し、生成した駆動信号を用いてヘッド100を駆動する。ヘッド100は、駆動制御部500からの駆動信号に応じてノズル孔102を開閉し、インクを吐出する。
【0032】
加圧機構200は、制御部600から受信する切替信号に基づき、コンプレッサ205(またはエアレギュレータ204)のオンオフ切替を行い、液室114へ送るインク10に対して加圧状態と非加圧状態とを切り替える。
【0033】
ヘッド移動機構300は、制御部600から受信する移動信号に基づき、駆動装置302を所定の方向へ所定の距離だけ駆動し、ヘッド保持部材301を介してヘッド100を所望の位置へ移動させる。
【0034】
[ノズル孔の開閉動作について]
次に、図4を用いてノズル孔の開閉動作について説明する。
【0035】
駆動制御部500から圧電素子132に対して駆動電圧が印加された場合、圧電素子132に閉鎖電圧が印加された状態では図4(a)に示すように、弁部材130はノズル板101に当接した位置にあり、弁部材130はノズル孔102を閉鎖する。このため、液室114内のインク10はノズル孔102から吐出されない。
【0036】
圧電素子132に開放電圧が印加された状態では図4(b)に示すように、圧電素子132は収縮し、圧電素子132はニードル131を図において上方へ動かす。このニードル131の移動により、ニードル131に接合された弁部材130はノズル板101から離間する位置に移動し、弁部材130の先端部とノズル孔102との間に隙間Gが形成される。液室114内のインク10は、加圧機構200によって所定の圧力で加圧供給されているため、隙間Gの形成とともに液室114内のインク10はノズル孔102からインク滴10´となって吐出される。
【0037】
このように弁部材130は、圧電素子132に駆動電圧(閉鎖電圧、開放電圧)が印加された場合、ノズル板101に当接する位置と離間する位置との間(図4(b)の矢印C方向)で移動し、弁部材130はノズル孔102を開閉する。
【0038】
[駆動信号]
以下、駆動制御部500より出力される駆動信号と、ヘッド100が備えるニードル131の動作との関係について、図5図10を参照しながら説明する。図5図10は駆動信号とニードルの変位との関係を示した説明図であり、図5は比較例、図6図10は本発明に基づく実施形態である。
【0039】
<比較例>
比較例において駆動信号は、図5(a)に示されるように閉鎖電圧E1および開放電圧E2によって規定された矩形波である。ここで、閉鎖電圧とは、ノズル孔102を閉鎖する位置にニードル131を移動させる際に圧電素子132に印加される駆動電圧を意味するものとする。また、開放電圧とは、ノズル孔102を開放する位置にニードル131を移動させる際に圧電素子132に印加される駆動電圧を意味するものとする。
【0040】
圧電素子132に開放電圧E2が印加されると圧電素子132は収縮し、その収縮に伴いニードル131は図5(b)に示されるように位置P1から位置P2へ変位する。すなわちニードル131は、駆動信号に基づき弁部材130をノズル板101から離間させる方向に移動する。弁部材130がノズル板101から離間し、弁部材130とノズル孔102との間に図4(b)に示したように隙間Gが形成されると、液室114内のインク10はノズル孔102から吐出可能な状態となる。しかし、実際は図5に示すように、圧電素子132に開放電圧E2が印加されると、ニードル131が自身の固有振動周期Tで振動し、以下のような吐出不良を招く。
【0041】
つまり、圧電素子132への開放電圧E2の印加に基づくニードル131の位置P1から位置P2への変位は急峻のため、加圧機構200から液室114への圧力付与が間に合わない場合などには、ニードル131の変位とともに液室114内の圧力が変動する。その結果、ニードル131が位置P1から位置P2に到達するまでの過程(図5(b)の「気泡巻込1」の区間)で、ノズル孔102から液室114内に気泡の巻き込み(吸い込み)が発生してしまう。
【0042】
液室114に巻き込まれた気泡は、加圧機構200から液室114への圧力付与が開始されることで押し出され、ノズル孔102から液室114の外へ徐々に排出される(図5(b)の「気泡排出」の区間が相当する)。
【0043】
ところが、圧電素子132に開放電圧E2が印加されているt1の期間においては、ニードル131が自身の固有振動周期Tで振動するため、液室114内の圧力がニードル131の固有振動周期Tに同調するようにして変動する。そのため、図5(b)の「気泡巻込2」の区間で示すように、ニードル131が再び位置P2側へ変位した際に、ノズル孔102から液室114内に気泡を再び巻き込んでしまう。
【0044】
時間t1後、圧電素子132に閉鎖電圧E1が印加されると、圧電素子132は伸長し、その伸長に伴いニードル131は図5(b)の「液滴吐出」の区間で示すように、位置P1へ変位する。すなわちニードル131は、駆動信号に基づき弁部材130をノズル板101に当接させる方向に移動する。そして、ニードル131が位置P1に到達するまでの過程(図5(b)の「液滴吐出」の区間)で、液室114内のインク10はノズル孔102からインク滴10´となって吐出される。
【0045】
上記のように比較例は、液室から一度排出した気泡を再び液室内に巻き込んでしまい、気泡を含んだ状態で液滴がノズル孔から吐出されてしまうため、所望の液体吐出を実現できない。
【0046】
<第1実施形態>
次に、図6を用いて第1実施形態を説明する。図6は、第1実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示した説明図である。
【0047】
第1実施形態における駆動信号は、図6(a)に示されるように閉鎖電圧E1および2種類の開放電圧E2,E3によって規定された階段形状の波形である。閉鎖電圧とは、ノズル孔102を閉鎖する位置にニードル131を移動させる際に圧電素子132に印加される駆動電圧を意味するものとする。また、開放電圧とは、ノズル孔102を開放する位置にニードル131を移動させる際に圧電素子132に印加される駆動電圧を意味するものとする。
【0048】
開放電圧E2は、開放電圧E3と異なる値(本実施形態では開放電圧E3よりも小さい値)で設定され、はじめに開放電圧E3が時間t1の期間で圧電素子132に印加され、その後に開放電圧E2が時間t2の期間で圧電素子132に印加される。第1実施形態において、開放電圧E3は「第1電圧」の一例であり、開放電圧E2は「第2電圧」の一例である。また、開放電圧E3が印加される時間t1の期間は「第1期間」の一例であり、開放電圧E2が印加される時間t2の期間は「第2期間」の一例である。
【0049】
第1実施形態において、圧電素子132に第1電圧である開放電圧E3が印加されると圧電素子132は収縮し、その収縮に伴いニードル131は図6(b)に示されるように位置P1から位置P2へ変位する。すなわちニードル131は、駆動信号に基づき弁部材130をノズル板101から離間させる方向に移動する。比較例と同様、このときのニードル131の位置P1から位置P2への変位は急峻のため、加圧機構200から液室114への圧力付与が間に合わない場合などには、ニードル131の変位とともに液室114内の圧力が変動する。その結果、ニードル131が位置P1から位置P2に到達するまでの過程(図6(b)の「気泡巻込」の区間)で、ノズル孔102から液室114内に気泡の巻き込み(吸い込み)が発生してしまう。
【0050】
液室114に巻き込まれた気泡は、加圧機構200から液室114への圧力付与が開始されることで押し出され、ノズル孔102から液室114の外へ徐々に排出される(図6(b)の「気泡排出1」の区間が相当する)。
【0051】
次に、ニードル131が自身の固有振動周期Tによって再び位置P2側へ変位し始めるタイミングで、駆動制御部500は圧電素子132に第2電圧である開放電圧E2を印加する。開放電圧E2の印加によって圧電素子132は伸長し、その伸長に伴いニードル131は、弁部材130をノズル板101側へ移動させる方向に動き、図6(b)の「気泡排出2」の区間が示すようにニードル131の位置P2側への変位は抑制される。
【0052】
時間t2後、圧電素子132に閉鎖電圧E1が印加されると、圧電素子132は伸長し、その伸長に伴いニードル131は図6(b)の「液滴吐出」の区間で示すように、位置P1へ変位する。すなわちニードル131は、駆動信号に基づき弁部材130をノズル板101に当接させる方向に移動する。そして、ニードル131が位置P1に到達するまでの過程(図6(b)の「液滴吐出」の区間)で、液室114内のインク10はノズル孔102からインク滴10´となって吐出される。
【0053】
以上のように第1実施形態によれば、ノズル孔からの気泡の再度の巻き込みを防ぐことができる。第1実施形態の場合、図6(b)に示されるように「気泡排出2」以降の波高値は低い値に抑えられ、ニードル131(弁部材130)はノズル板101に近い側に位置することになるが、液室114内に気泡を含まない分、液体の吐出量は確保することができる。
【0054】
第1実施形態の一例としてニードル131の固有振動周期をTとした場合、時間t1はT<t1<3/2T、時間t2はt2<1/2Tの関係を満足するように規定する。これにより、図6(b)の「気泡排出1」から「気泡排出2」へ移行し始めてから少し遅れたタイミングで効率的にニードル131の振動を抑えることができ、「気泡排出2」が終了するタイミングで効率的に液体を吐出することができる。また、開放電圧E3に対して開放電圧E2は、1/2E3<E2<E3の関係を満足するように規定する。
【0055】
上述のように、本実施形態は、加圧されたインク10を収容する液室114と、インク10を吐出するノズル孔102と、液室114内に設けられるニードル131と、ニードル131を、ニードル131がノズル孔102を閉鎖する位置およびニードル131がノズル孔102を開放する位置に移動させる圧電素子132と、を有するヘッド100と、圧電素子132に、ノズル孔102を開放する位置にニードル131を移動させる開放電圧およびノズル孔102を閉鎖する位置にニードル131を移動させる閉鎖電圧を印加する駆動制御部500と、を備えるヘッドユニットHUであって、開放電圧の信号波形は、開放電圧E3を印加する時間t1と、時間t1より後に開放電圧E3と異なる開放電圧E2を印加する時間t2と、を有する。
【0056】
また、上述のように、開放電圧E2は、閉鎖電圧E1と開放電圧E3の間の電圧であるように設けられる。
【0057】
また、上述のように、ニードル131は、ノズル孔102を開放した位置において、ニードル131の移動する方向における固有振動周期Tで振動し、時間t2は、固有振動周期Tの半分より短い。
【0058】
さらに、ニードル131は、ノズル孔102を開放した位置において、ニードル131の移動する方向における固有振動周期Tで振動し、時間t1は、固有振動周期Tより長く、固有振動周期Tの3/2より短い。
【0059】
これにより、圧電素子132に開放電圧E2が印加された際は、気泡を巻き込まず、また意図しない吐出を防ぐことができる。
【0060】
<第2実施形態>
次に、図7を用いて第2実施形態を説明する。図7は、第2実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示した説明図である。
【0061】
第2実施形態における駆動信号は、図7(a)に示されるように閉鎖電圧E1および2種類の開放電圧E2,E3によって規定された階段形状の波形である。閉鎖電圧および開放電圧の定義については第1実施形態と同じである。
【0062】
開放電圧E2は、開放電圧E3と異なる値(本実施形態では開放電圧E3よりも小さい値)で設定され、はじめに開放電圧E2が時間t1の期間で圧電素子132に印加され、その後に開放電圧E3が時間t2の期間で圧電素子132に印加される。第2実施形態においては、開放電圧E2が「第1電圧」の一例であり、開放電圧E3は「第2電圧」の一例である。また、開放電圧E2が印加される時間t1の期間は「第1期間」の一例であり、開放電圧E3が印加される時間t2の期間は「第2期間」の一例である。
【0063】
第2実施形態において、圧電素子132に第1電圧である開放電圧E2が印加されると圧電素子132は収縮し、その収縮に伴いニードル131は図7(b)に示されるように位置P1から位置P2へ変位する。すなわちニードル131は、駆動信号に基づき弁部材130をノズル板101から離間させる方向に移動する。比較例や第1実施形態の場合と同様の理由から、ニードル131が位置P1から位置P2に到達するまでの過程(図7(b)の「気泡巻込」の区間)では、ノズル孔102から液室114内に気泡の巻き込みが発生する。
【0064】
次に、ニードル131が自身の固有振動周期Tによって位置P2から位置P1側へ変位し始めたタイミングで、駆動制御部500は圧電素子132に第2電圧である開放電圧E3を印加する。圧電素子132への開放電圧E3の印加は、圧電素子132をより収縮させるため、その収縮に伴いニードル131も、ノズル板101からより離間する側の位置P3へ移動する。これにより、吐出液滴の体積を大きくすることができる。
【0065】
以上のように第2実施形態では、ニードル131が位置P2から位置P1側へ変位し始めたタイミングで、ニードル131をノズル板101からさらに離す方向へ動かすことで、ニードル131をほぼP2の位置に維持することが可能になる。そして、図7(b)の「気泡排出」の区間では、ニードル131は位置P3付近でほぼ静止した状態となるため、液室114に巻き込んだ気泡は加圧機構200から液室114に付与される圧力によって徐々に排出される。
【0066】
また、第2実施形態では液滴吐出直前のニードル131の変位量が大きいため、液滴の体積を大きくすることができる。
【0067】
第2実施形態の一例としてニードル131の固有振動周期をTとした場合、時間t1は1/2T<t1<T、時間t2は1/2T<t2<Tの関係を満足するように規定する。これにより、ニードル131が位置P2から位置P1側へ変位し始めたタイミングで効率的にニードル131の振動を抑えることができ、「気泡排出」が終了するタイミングで効率的に液体を吐出することができる。また、開放電圧E2に対して開放電圧E3はE2<E3<4/3E2の関係を満足するように規定する。これにより、圧電素子132に開放電圧E3が印加された際は、気泡を巻き込まず、また意図しない吐出を防ぎつつ、液滴の体積を大きくすることができる。
【0068】
上述のように、本実施形態において、開放電圧E2は、閉鎖電圧E1と開放電圧E3の間の電圧である。
【0069】
また、上述のように、ニードル131は、ノズル孔102を開放した位置において、ニードル131の移動する方向における固有振動周期Tで振動し、時間t1は、固有振動周期Tの半分より長く、固有振動周期Tより短い。
【0070】
これにより、圧電素子132に開放電圧E3が印加された際は、気泡を巻き込まず、また意図しない吐出を防ぐことができる。
【0071】
<第3実施形態>
次に、図8を用いて第3実施形態を説明する。図8は、第3実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示した説明図である。
【0072】
第3実施形態における駆動信号は、図8(a)に示されるように閉鎖電圧E1および2種類の開放電圧E2,E3によって規定された階段形状の波形である。閉鎖電圧および開放電圧の定義については第1実施形態と同じである。
【0073】
開放電圧E2は、開放電圧E3と異なる値(本実施形態では開放電圧E3よりも小さい値)で設定され、はじめに開放電圧E2が時間t1の期間で圧電素子132に印加され、その後に開放電圧E3が時間t2の期間で圧電素子132に印加される。第3実施形態において、開放電圧E2は「第1電圧」の一例であり、開放電圧E3は「第2電圧」の一例である。また、開放電圧E2が印加される時間t1の期間は「第1期間」の一例であり、開放電圧E3が印加される時間t2の期間は「第2期間」の一例である。
【0074】
第3実施形態において、圧電素子132に第1電圧である開放電圧E2が印加されると圧電素子132は収縮し、その収縮に伴いニードル131は図8(b)に示されるように位置P1から位置P2へ変位する。すなわちニードル131は、駆動信号に基づき弁部材130をノズル板101から離間させる方向に移動する。比較例や第1実施形態の場合と同様の理由から、ニードル131が位置P1から位置P2に到達するまでの過程(図8(b)の「気泡巻込1」の区間)では、ノズル孔102から液室114内に気泡の巻き込みが発生する。
【0075】
次に、ニードル131が位置P2から位置P1側へ変位し始めたタイミング(図8(b)の「気泡排出1」の区間に移行し始めたタイミング)で、圧電素子132に第2電圧である開放電圧E3を印加する。開放電圧E3は、第2実施形態の場合の開放電圧E3よりも、より大きい値であるため、ニードル131をノズル板101からより離れた位置P3へ移動させる。これにより、吐出液滴の体積を、第2実施形態に比べてより大きくすることができる。
【0076】
ニードル131が位置P2から位置P3に到達するまでの過程(図8(b)の「気泡巻込2」の区間)では、ノズル孔102から液室114内に気泡の巻き込みが発生するが、次の「気泡排出2」の区間において気泡は排出される。時間t2は、加圧機構200から付与させる圧力によって液室114から気泡を排出するために十分な時間で設定される。
【0077】
第3実施形態の一例としてニードル131の固有振動周期をTとした場合、時間t1は1/2T<t1<T、時間t2はT<t2の関係を満足するように規定する。これにより、ニードル131が位置P2から位置P1側へ変位し始めたタイミングで効率的にニードル131の振動を抑えることができ、「気泡排出2」が終了するタイミングにおいて気泡が排出された状態で液体を吐出することができる。また、開放電圧E2に対して開放電圧E3は4/3E2<E3<3/2E2の関係を満足するように規定する。これにより、意図しない吐出を防ぎつつ、液滴の体積をさらに大きくすることができる。
【0078】
以上、第1~第3実施形態では、開放電圧に基づき位置P2に変位したニードル131が、自身の固有振動周期によって位置P1側へ変位し始めたタイミングでニードル131の振動を抑制もしくは増幅し、気泡を排出する構成について述べてきた。
【0079】
以下に説明する第4および第5実施形態は、圧電素子132に開放電圧が印加された際のニードル131の立ち上がり時の振動を抑制し、立ち上がり時の気泡の吸い込み低減を図るものである。
【0080】
<第4実施形態>
図9を用いて第4実施形態を説明する。図9は、第4実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示した説明図である。
【0081】
第4実施形態における駆動信号は、図9(a)に示されるように閉鎖電圧E1および2種類の開放電圧Em,E2によって規定された階段形状の波形である。閉鎖電圧および開放電圧の定義については、上述の実施形態と同じである。
【0082】
開放電圧Emは、開放電圧E2と異なる値(本実施形態では開放電圧E2よりも小さい値)で設定され、はじめに開放電圧Emが時間t1の期間で圧電素子132に印加され、その後に開放電圧E2が時間t2の期間で圧電素子132に印加される。第4実施形態において、開放電圧Emは「第1電圧」の一例であり、開放電圧E2は「第2電圧」の一例である。また、開放電圧Emが印加される時間t1の期間は「第1期間」の一例であり、開放電圧E2が印加される時間t2の期間は「第2期間」の一例である。
【0083】
第4実施形態は、ニードル131を位置P1から位置P2に一気に変位させるのではなく、途中に図9(b)に示すように位置Pmを維持するような期間を設けている。これにより、液室114内の急激な圧力変動を抑えることができる。また、ニードル131の振動が緩やかになるため液室114内への気泡の巻き込みを低減できるとともに、圧電素子132の発熱を低減することができる。
【0084】
なお、位置P2に到達以降のニードル131においては、ニードル131の固有振動周期Tの振動によって再び気泡を巻き込む可能性があるが、自由振動の振幅が小さいニードルを用いる場合であれば、再び気泡を巻き込む量は少なく、本構成は有効である。
【0085】
第4実施形態の一例としてニードル131の固有振動周期をTとした場合、時間t1はt1<1/2T、時間t2はT<t2<3/2Tの関係を満足するように規定する。これにより、ニードル131を、位置P2に向けて変位させる途中で一旦、位置Pm付近で停滞させ、気泡の巻き込みを抑制することができるとともに、「気泡排出2」が終了するタイミングでは、気泡が排出された状態で液体を吐出することができる。また、開放電圧E2に対して開放電圧Emは2/3E2<Em<E2の関係を満足するように規定する。
【0086】
上述のように、本実施形態において、ニードル131は、ノズル孔102を開放した位置において、ニードル131の移動する方向における固有振動周期Tで振動し、時間t1は、固有振動周期Tの半分より短い。
【0087】
また、上述のように、ニードル131は、ノズル孔102を開放した位置において、ニードル131の移動する方向における固有振動周期Tで振動し、時間t2は、固有振動周期Tの半分より長い。
【0088】
また、上述のように、開放電圧Emは、閉鎖電圧E1と開放電圧E2の間の電圧であるように設けられる。
【0089】
これにより、初期の短時間でニードル131の変位と気泡の巻き込みをほぼ完了させることができ、以降の気泡の巻き込みを抑えることができる。また、圧電素子132の発熱も抑えられる。
【0090】
<第5実施形態>
次に、図10を用いて第5実施形態を説明する。図10は、第5実施形態における駆動信号とニードルの変位との関係を示した説明図である。
【0091】
第5実施形態における駆動信号は、図10(a)に示されるように閉鎖電圧E1および2種類の開放電圧Em,E2によって規定された階段形状の波形である。閉鎖電圧および開放電圧の定義については、上述の実施形態と同じである。
【0092】
開放電圧Emは、開放電圧E2と異なる値(本実施形態では開放電圧E2よりも小さい値)で設定され、はじめに開放電圧Emが時間t1の期間で圧電素子132に印加され、その後に開放電圧E2が時間t2の期間で圧電素子132に印加される。第5実施形態において、開放電圧Emは「第1電圧」の一例であり、開放電圧E2は「第2電圧」の一例である。また、開放電圧Emが印加される時間t1の期間は「第1期間」の一例であり、開放電圧E2が印加される時間t2の期間は「第2期間」の一例である。
【0093】
第5実施形態においても、第4実施形態と同様、ニードル131を位置P1から位置P2に一気に変位させるのではなく、途中に図10(b)に示すように位置Pmを維持するような期間を設けている。これにより、液室114内の急激な圧力変動を抑えることができる。また、ニードル131の振動が緩やかになるため液室114内への気泡の巻き込みを低減できるとともに、圧電素子132の発熱を低減することができる。
【0094】
高速周期で液滴を吐出する場合、吐出までに費やす時間は、ニードル131の振幅の一山分とすることができる。この場合、図10(b)に示されるように、位置P1から位置P2に到達するまでの急峻さ(曲線の傾き)を抑えることで、気泡の巻き込みを低減することができる。
【0095】
第5実施形態の一例としてニードル131の固有振動周期をTとした場合、時間t1はt1<1/2T、時間t2はt2<1/2Tの関係を満足するように規定する。これにより、ニードル131を、位置P2に向けて変位させる途中で一旦、位置Pm付近で停滞させ、気泡の巻き込みを抑制することができるとともに、「気泡排出」が終了するタイミングでは、気泡が排出された状態で液体を吐出することができる。また、開放電圧E2に対して開放電圧Emは2/3E2<Em<E2の関係を満足するように規定する。電圧のスルーレートは、波形の立ち上がり時間を1/8T以下にすることが望ましい。例えば、駆動信号の波形が図10に示したような駆動波形であると、1/2Tの時間を経過する過程で、2度の立ち上がりが発生しているので、個々の立ち上がりは2分割の1/4Tが割り振られる。さらに、それぞれの時間は均等ではないことを考えると、1/8Tとすることが望ましい。
【0096】
上述のように、本実施形態において、ニードル131は、ノズル孔102を開放した位置において、ニードル131の移動する方向における固有振動周期Tで振動し、時間t1は、固有振動周期Tの半分より短い。
【0097】
また、上述のように、時間t2は、固有振動周期Tの半分より短い。
【0098】
これにより、気泡の巻き込みを抑制するとともに、気泡が排出された状態で液体を吐出することができる。
【0099】
なお、第1~第5実施形態に示された駆動信号は、完全な矩形波ではなく、所定の傾きを持たせたつなぎ部分(スルーレート)を有する波形としてもよい。つまり、閉鎖電圧、第1電圧、第2電圧のそれぞれの電圧間を所定のスルーレートにより切り替えてもよい。その場合、スルーレートはニードル131の固有振動周期Tに対して十分に短いことが好ましく、例えば1/8T以下とすることが好ましい。
【0100】
[ヘッドユニットの別の構成例]
図11を参照しながらヘッドユニットの別の構成例について説明する。図11は、実施形態に係るヘッドユニットの別の構成例を示す断面図であり、図11(a)はノズル孔を閉じた状態を示す断面図、図11(b)はノズル孔を開いた状態を示す断面図である。
【0101】
本構成例は、ニードル131と圧電素子132との間に、伝達機構の一例としての逆バネ機構134を備える点が図1などに示したヘッドユニットの構成と異なる。従って、ここでは逆バネ機構134の構成および動作を中心に説明し、図1のヘッドユニットと同等の構成および機能を有する部材には同一符号を付し、説明は省略する。なお、本構成例では、圧電素子132として、電圧を印加するとノズル板101側へ伸長する伸縮特性を有するものを用いる。
【0102】
逆バネ機構134は、適宜に変形可能なゴムや軟質樹脂等または薄い金属板等を成形加工することによって形成された弾性部材である。逆バネ機構134は、変形部134a、固定部134b、ガイド部134cおよび屈曲辺134dを備える。
【0103】
変形部134aは、ニードル131の基端側の面(図11(a)ではニードル131の上側端面)に当接するようにして形成された断面略台形状を有する。
【0104】
固定部134bは、変形部134aと、筐体110の内壁面に固定される。
【0105】
ガイド部134cは、固定部134bと、圧電素子132とを連結する。
【0106】
屈曲辺134dは、台形状の変形部134aの長辺(台形の下底に相当)と固定部134bとを連結する。
【0107】
上記のような構成された逆バネ機構134は、圧電素子132に所定の電圧が印加されて圧電素子132が伸長すると、圧電素子132の伸長により、ガイド部134cがノズル孔102側(図11(b)の矢印a方向)に押される。
【0108】
この押される力に伴い、変形部134aをノズル孔102から遠ざかる方向(図11(b)の矢印b方向)に引き込む。すなわち、逆バネ機構134は、圧電素子132の伸びる力を、ニードル131を引き込む力に変換した上で、ニードル131へ伝達する。
【0109】
本構成例に係るヘッド100は、圧電素子132へ電圧印加することにより、圧電素子132が伸び、それに伴い弁部材130がノズル孔102を開放し、ノズル孔102から液滴10´を吐出する。
【0110】
上述のように、本構成例は、ニードル131と圧電素子132との間に、圧電素子132の伸びる力を、ニードル131を引き込む力、すなわち圧電素子132の伸びる力と相反する力に変換した上で、ニードル131へ伝達する逆バネ機構134を備える。
【0111】
本構成例のヘッドユニットHUにおいても、第1~第5実施形態で述べた駆動信号を用いることにより、ノズル孔102への気泡の巻き込みによる液体の吐出不良を低減することができる。ただし、図4に示されたヘッドユニットの場合は、圧電素子132が伸長する動作でノズル孔102が閉じ、圧電素子132が収縮する動作でノズル孔102が開くが、逆バネ機構134を備えたヘッドユニットの場合は、この関係が逆転する。
【0112】
つまり、逆バネ機構134を備えたヘッドユニットの場合は、圧電素子132が伸長したときは図11(b)のごとくノズル孔102が開き、圧電素子132が収縮したときは図11(a)のごとくノズル孔102は閉じる。従って、逆バネ機構134を備えたヘッドユニットにおいては、圧電素子132の伸縮とノズル孔102の開閉の関係が逆転することを踏まえた上で、第1~第5実施形態に示した駆動信号を用いればよい。
【0113】
逆バネ機構134を備えたヘッド100は、逆バネ機構を備えないヘッドに比べて圧電素子132の少ない変位で大きな変位を得ることが可能となる。また、逆バネ機構134をニードル131と圧電素子132との間に設けることで、固有振動周期を長くすることができるので、第1期間または第2期間でのニードル131の固有振動の速度が抑えられ、気泡の巻き込みを低減することができる。
【0114】
また、本発明は、逆バネ機構を備えたヘッドの他にも、剛性が低いヘッド、液体吐出装置由来の振動を拾いやすいヘッド等にも適用することが可能である。
【0115】
また、上記の説明では、電圧E1印加時は伸長し、電圧E1よりも大きい電圧の印加時に収縮する伸縮特性を有する圧電素子を前提としたが、本発明はこれに限るものではない。例えば、圧電素子は、電圧E1印加時は収縮し、電圧E1よりも大きい電圧の印加時に伸長する伸縮特性を有するものを用いてもよい。
【0116】
[固有振動周期の測定方法]
図12は、固有振動周期の測定方法の一例を説明する説明図である。
【0117】
ニードル131の固有振動周期Tは、ニードル131の、ノズル板101´と当接する面(本実施形態ではニードル131に接合された弁部材130の端面)を測定して求める。
【0118】
測定にはレーザドップラー変位計901が用いられる。レーザドップラー変位計901から発したレーザ光902は、測定対象である弁部材130の端面に照射される。得られた測定値をフーリエ解析することで固有振動周期Tは求めることができる。
【0119】
測定は実際の液体吐出動作と同じ駆動条件下で実施されることが望ましく、ヘッドに対しては実際の駆動波形を連続で印加するとともに、インクが液室に加圧供給される構成のヘッドである場合は、インクを加圧供給しながら測定することが望ましい。
【0120】
レーザ光902は、ノズル孔102´に向けてレーザ光902を照射すると、測定中にノズル孔102´から吐出されるインク滴10A´によって阻害され、測定対象を正しく測定できない場合がある。そのため、レーザ光902はノズル孔102´の位置から外した位置に向けて照射される。ここで、実際に使用するノズル板101は、レーザ光902が透過可能な材質で形成されていない。このため上述のようにレーザ光902をノズル孔102´の位置から外した位置に向けて照射させた場合、レーザ光902が測定対象に届かないという問題も生じる。
【0121】
そこで本実施形態では、測定の際はノズル板101´をレーザ光902が透過可能な材質からなるものに置き換えて、レーザ光902が測定対象に届くようにしている。ノズル板101´はレーザ光902が透過可能な材質であればよく、特に材質は限定されないが、レーザ光902の透過性および部品剛性の観点からガラス製が好ましい。
【0122】
測定に用いるインク10Aは、実際のインク10であると例えばインク10に含まれるフィラー成分等がレーザ光902の透過を妨げるため、透過可能な透明インクが使用される。ただし、測定に使用するインク10Aは、実際のインク10と同等の動粘度特性を有するインクを使用することが望ましい。
【0123】
レーザドップラー変位計901とヘッド100との間には、インク滴10A´の方向を変化させる偏向装置903を設置してもよい。偏向装置903は例えば送風ファンからなり、送風ファンはインク滴10A´に対して、インク滴10A´をレーザ光902の光路から遠ざける方向へ送風する。これにより、インク滴10A´による測定の阻害やレーザドップラー変位計901の汚染等を回避することができる。
【0124】
[塗布装置]
次に、上述のヘッドユニットを適用した塗布装置について説明する。
【0125】
<車体塗装システムへの適用例>
塗布装置の一例として、図13および図14を用いて車体塗装システムへの適用例を説明する。図13は、塗布装置の一例を示す説明図である。図14は、塗布装置の使用例を示す説明図であり、図14(a)は塗布装置の対象物への配置の第1例を示す図であり、図14(b)は塗布装置の対象物への配置の第2例を示す図である。
【0126】
塗布装置1001は、少なくとも1つのヘッド100と、ヘッド100の近傍に配設されたカメラ1004と、ヘッド100およびカメラ1004をX方向およびY方向へ移動させるX-Yテーブル1003と、カメラ1004で撮影した画像を編集する画像編集ソフトウェアSと、編集する画像等を表示するモニタ1010と、制御部600等を備える。制御部600は、所定の制御プログラムに基づいて、X-Yテーブル1003を動作させるとともに、ヘッド100から液体を吐出させる。
【0127】
塗布装置1001は、ヘッド100により吐出された液体(例えばインク10)を対象物Uに塗布することができる。
【0128】
ヘッド100は、ノズル孔102から対象物Uの被塗布面に向けてインク10を吐出する。ノズル孔102から吐出されるインク10はX-Y平面に対して略直交する方向に吐出される。ノズル孔102と対象物Uの被塗布面との距離は、例えば20cm程度である。
【0129】
X-Yテーブル1003は、直線移動機構を備えて形成されたX軸1005と、X軸1005を2つのアームで保持しつつX軸1005をY方向へ移動するY軸1006とを有する。X軸1005は、図2のレール部材303に相当し、また、ヘッド100およびカメラ1004は、図2のヘッド保持部材301に取り付けられる。Y軸1006にはシャフト1007が設けられている。このシャフト1007をロボットアーム1008により保持することで、対象物Uに対してヘッド100およびカメラ1004を自由に配置できるようになっている。
【0130】
例えば、対象物Uが自動車である場合には、図14(a)に示すように対象物Uの上部に配置したり、図14(b)に示すように対象物Uの横位置に配置したりすることができる。なお、制御部600は、所定のプログラムに基づいて、ロボットアーム1008の動作を制御する。
【0131】
カメラ1004は、ヘッド100とともにX-Y方向に移動しながら対象物Uの被塗布面における所定範囲を一定の微小な間隔により撮影する。カメラ1004は例えばデジタルカメラである。カメラ1004においては、被塗布面の所定範囲を分割した複数の細分割画像の撮影が可能なレンズの仕様または解像度等の仕様が適宜選択される。カメラ1004による被塗布面の複数の細分割画像の撮影は、制御部600に予め設けられたプログラムに従って連続的、且つ自動的に行われる。
【0132】
以上説明したように、塗布装置1001は、ヘッド100を有することにより、対象物Uとノズル孔102との間の距離が長い場合等においても、対象物Uの所望の位置に高精度にインク10を塗布することができる。また、ヘッド100は、インク10を安定して吐出できるため、塗布装置1001は、対象物Uに対してインク10を高精度に塗布することができる。
【0133】
<電極製造装置への適用例>
次に、塗布装置の別の例として、図15を用いて電極製造装置への適用例を説明する。図15は、電極製造装置の一例を示す説明図である。
【0134】
電極製造装置800は、上述のヘッド100を用いて液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を有する電極を製造する装置である。
【0135】
ヘッド100からの液体組成物の吐出により、対象物上に液体組成物を付与して、液体組成物層を形成することができる。この場合の対象物としては、電極材料を有する層を形成する対象であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、電極基体(集電体)や活物質層、固体電極材料を有する層などが挙げられる。また、対象物への液体組成物の付与は、対象物に対して電極材料を有する層を形成することが可能であれば、直接液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよく、間接的に液体組成物を吐出することで電極材料を有する層を形成する構成であってもよい。
【0136】
電極製造装置におけるその他の構成としては、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、加熱手段などが挙げられる。加熱手段は、ヘッド100により吐出された液体組成物を加熱する手段である。加熱により液体組成物層を乾燥させることができる。
【0137】
図15は、電極製造装置の一例として、電極基体(集電体)上に活物質を含む電極合材層を形成する構成を示している。
【0138】
電極製造装置800は、対象物を有する印刷基材W上に、液体組成物を付与して液体組成物層を形成する工程を含む吐出工程部801と、液体組成物層を加熱して電極合材層を得る加熱工程を含む加熱工程部802を備える。
【0139】
電極製造装置800は、印刷基材Wを搬送する搬送部803,804を備え、搬送部803,804は、吐出工程部801、加熱工程部802の順に印刷基材Wをあらかじめ設定された速度で搬送する。活物質層などの対象物を有する印刷基材Wの製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0140】
吐出工程部801は、印刷基材W上に液体組成物を付与する付与工程を実現する印刷装置811と、液体組成物を収容する収容容器812と、収容容器812に貯留された液体組成物を印刷装置811に供給する供給チューブ813を備える。印刷装置811は、上述のヘッド100を少なくとも1つ備えている。
【0141】
収容容器812は、液体組成物10Bを収容し、吐出工程部801は、印刷装置811に備えたヘッド100から液体組成物7を吐出して、印刷基材W上に液体組成物10Bを付与して液体組成物層を薄膜状に形成する。なお、収容容器812は、電極製造装置800と一体化した構成であってもよいが、電極製造装置800から取り外し可能な構成であってもよい。また、電極製造装置800と一体化した収容容器812や電極製造装置800から取り外し可能な収容容器812に添加するために用いられる容器であってもよい。
【0142】
収容容器812や供給チューブ813は、液体組成物10Bを安定して貯蔵および供給できるものであれば任意に選択可能である。
【0143】
加熱工程部802は、加熱装置821を備え、液体組成物層に残存する溶媒を、加熱装置821により加熱して乾燥させて除去する溶媒除去工程を含む。これにより電極合材層を形成することができる。加熱工程部802は、溶媒除去工程を減圧下で実施してもよい。
【0144】
加熱装置821としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、基板加熱、IRヒータ、温風ヒータなどが挙げられ、これらを組み合わせてもよい。また、加熱温度や時間に関しては、液体組成物10Bに含まれる溶媒の沸点や形成膜厚に応じて適宜選択可能である。
【0145】
上記のようにして形成される電極合材層は、例えば、電気化学素子の構成の一部として、好適に用いることができる。電気化学素子における電極合材層以外の構成としては、特に制限はなく、公知のものを適宜選択することができ、例えば、正極、負極、セパレータなどが挙げられる。
【0146】
なお、実施形態に係るヘッドユニットは、車体塗装システムや電極製造装置に限定されるものではなく、用紙等の記録媒体に画像を形成する画像形成装置等であってもよい。
【0147】
[応用例]
次に、図16を参照しながら応用例について説明する。図16は、応用例を示す説明図である。
【0148】
図16に示すように、ヘッドモジュール700は、筐体710に複数(図16の例では8個)のヘッド100を備える。筐体710は、筐体710内にインク10を供給する供給口711と、供給口711と注入口713とをつなぐ供給路712と、液室714を挟んで注入口713の反対側に設けられた排出口715を有する。また、筐体710は、筐体710内のインク10を回収する回収口717と、回収口717と排出口715とをつなぐ回収路716を有する。
【0149】
複数のヘッド100の基本的な構成は、図1および図4で説明したものと同様であり、図16では対応する要素について700番台の符号を用いている。また。複数のヘッド100は、図11に示した逆バネ機構を備えるヘッドによって構成してもよい。
【0150】
本応用例では、8個のヘッド100が、それぞれのノズル孔702が一方向(図16では左右方向)に略等間隔で配列されるように設けられている。ヘッド100のそれぞれは、図中下部のノズル孔702からインク10を下方に吐出するように上下方向に延在して設けられている。
【0151】
8個のヘッド100の配列方向の一方側(図16では左側)から他方側(図16では右側)にインク10が流れるように、各ヘッド100の液室714は、貫通して設けられている。つまり、個々のヘッド100では、注入口713の反対側に排出口715が設けられる点が、上述の実施形態の構成と異なる。
【0152】
以上の構成において、各ヘッド100の圧電素子732に対して、第1~第5実施形態で説明した駆動信号を印加することにより、それぞれのノズル孔702への気泡の巻き込みによる液体の吐出不良を低減することができる。
【0153】
なお、本発明において、液体は、水や有機溶媒等の溶媒、染料や顔料等の着色剤、重合性化合物、樹脂、界面活性剤等の機能性付与材料、DNA、アミノ酸やたんぱく質、カルシウム等の生体適合材料、天然色素等の可食材料、などを含む溶液、懸濁液、エマルジョンなどが挙げられる。
【0154】
これらは例えば、インクジェット用インク、塗装用塗料、表面処理液、電子素子や発光素子の構成要素や電子回路レジストパターンの形成用液、3次元造形用材料液等の用途で用いることができる。
【0155】
以上説明したものは一例であり、本発明は、次の態様毎に特有の効果を奏する。
【0156】
[第1態様]
第1態様は、加圧された液体(例えばインク10)を収容する液室(例えば液室114)と、前記液体を吐出するノズル孔(例えばノズル孔102)と、前記液室内に設けられる弁体(例えばニードル131)と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体(例えば圧電素子132)と、を有する液体吐出ヘッド(例えばヘッド100)と、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる開放電圧および前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加する駆動制御部(例えば駆動制御部500)と、を備えるヘッドユニット(例えばヘッドユニットHU)であって、前記開放電圧の信号波形は、第1電圧(例えば図6の開放電圧E3)を印加する第1期間(例えば図6の時間t1)と、前記第1期間より後に前記第1電圧と異なる第2電圧(例えば図6の開放電圧E2)を印加する第2期間(例えば図6の時間t2)と、を有することを特徴とするものである。
【0157】
[第2態様]
第2態様は、第1態様において、前記第2電圧(例えば図6の開放電圧E2)は、前記閉鎖電圧(例えば図6の閉鎖電圧E1)と前記第1電圧(例えば図6の開放電圧E3)の間の電圧であることを特徴とするものである。
【0158】
[第3態様]
第3態様は、第2態様において、前記弁体(例えばニードル131)は、前記ノズル孔(例えばノズル孔102)を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期(例えば図6の固有振動周期T)で振動し、前記第2期間(例えば図6の時間t2)は、前記固有振動周期の半分より短いことを特徴とするものである。
【0159】
[第4態様]
第4態様は、第2態様において、前記弁体(例えばニードル131)は、前記ノズル孔(例えばノズル孔102)を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期(例えば図6の固有振動周期T)で振動し、前記第1期間(例えば図6の時間t1)は、前記固有振動周期より長く、前記固有振動周期の3/2より短いことを特徴とするものである。
【0160】
[第5態様]
第5態様は、第1態様において、前記第1電圧(例えば図7および図8の開放電圧E2、図9および図10の開放電圧Em)は、前記閉鎖電圧(例えば図7図8図9および図10の閉鎖電圧E1)と前記第2電圧(例えば図7および図8の開放電圧E3、図9および図10の開放電圧E2)の間の電圧であることを特徴とするものである。
【0161】
[第6態様]
第6態様は、第1態様または第5態様において、前記弁体(例えばニードル131)は、前記ノズル孔(例えばノズル孔102)を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期(例えば図7図8の固有振動周期T)で振動し、前記第1期間(例えば図7図8の時間t1)は、前記固有振動周期の半分より長く、前記固有振動周期より短いことを特徴とするものである。
【0162】
[第7態様]
第7態様は、第1態様、第5態様または第6態様において、前記弁体(例えばニードル131)は、前記ノズル孔(例えばノズル孔102)を開放した位置において、前記弁体の移動する方向における固有振動周期(例えば図9図10の固有振動周期T)で振動し、前記第1期間(例えば図9図10の時間t1)は、前記固有振動周期の半分より短いことを特徴とするものである。
【0163】
[第8態様]
第8態様は、第7態様において、前記第2期間(例えば図10の時間t2)は、前記固有振動周期(例えば図10の固有振動周期T)の半分より短いことを特徴とするものである。
【0164】
[第9態様]
第9態様は、第1態様乃至第8態様のいずれかにおいて、前記液体吐出ヘッド(例えばヘッド100)は、前記ノズル孔(例えばノズル孔102)が形成されたノズル板(例えばノズル板101)を備え、前記弁体(例えばニードル131)は、前記ノズル板に当接することで前記ノズル孔を閉鎖し、前記ノズル板から離間することで前記ノズルを開放することを特徴とするものである。
【0165】
[第10態様]
第10態様は、第1態様乃至第9態様のいずれかにおいて、前記弁体(例えばニードル131)と前記駆動体(例えば圧電素子132)との間に、前記駆動体の伸びる力を、前記弁体を引き込む力に変換して前記弁体へ伝達する伝達機構(例えば逆バネ機構134)を備えることを特徴とするものである。
【0166】
[第11態様]
第11態様は、第1態様乃至第10態様のいずれかのヘッドユニット(例えばヘッドユニットHU)と、前記ヘッドユニットが備える液体吐出ヘッド(例えばヘッド100)に対して、加圧した液体を供給する加圧手段(例えば加圧機構200)と、を備えることを特徴とする液体吐出装置である。
【0167】
[第12態様]
第12態様は、第11態様において、前記液体吐出ヘッド(例えばヘッド100)を対象物に対して移動させる移動手段(例えばヘッド移動機構300)を備えることを特徴とするものである。
【0168】
[第13態様]
第13態様は、第11態様または第12態様の液体吐出装置を備え、対象物(例えば図14の対象物U、図15の印刷基材W)に対して前記液体を塗布することを特徴とする塗布装置である。
【0169】
[第14態様]
第14態様は、加圧された液体(例えばインク10)を収容する液室(例えば液室114)と、前記液体を吐出するノズル孔(例えばノズル孔102)と、前記液室内に設けられる弁体(例えばニードル131)と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体(例えば圧電素子132)と、を有する液体吐出ヘッド(例えばヘッド100)を駆動する駆動装置(例えば駆動制御部500)であって、前記駆動装置は、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる開放電圧を印加し、前記ノズル孔から前記液体が吐出するように制御し、前記駆動体に、前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧を印加し、前記ノズル孔から前記液体が吐出しないように制御し、前記開放電圧の信号波形は、第1電圧(例えば図6の開放電圧E3)を印加する第1期間(例えば図6の時間t1)と、前記第1期間より後に前記第1電圧と異なる第2電圧(例えば図6の開放電圧E2)を印加する第2期間(例えば図6の時間t2)とを有することを特徴とするものである。
【0170】
[第15態様]
第15態様は、加圧された液体(例えばインク10)を収容する液室(例えば液室114)と、前記液体を吐出するノズル孔(例えばノズル孔102)と、前記液室内に設けられる弁体(例えばニードル131)と、前記弁体を、前記弁体が前記ノズル孔を閉鎖する位置および前記弁体が前記ノズル孔を開放する位置に移動させる駆動体(例えば圧電素子132)と、を有する液体吐出ヘッド(例えばヘッド100)を駆動するための駆動方法であって、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる第1電圧(例えば図6の開放電圧E3)を印加する第1ステップと、前記第1ステップより後に、前記駆動体に、前記ノズル孔を開放する位置に前記弁体を移動させる電圧であり、前記第1電圧と異なる第2電圧(例えば図6の開放電圧E2)を印加する第2ステップと、前記第2ステップより後に、前記駆動体に、前記ノズル孔を閉鎖する位置に前記弁体を移動させる閉鎖電圧(例えば図6の閉鎖電圧E1)を印加する第3ステップと、を有することを特徴とするものである。
【符号の説明】
【0171】
10 インク
100 ヘッド
101 ノズル板
102 ノズル孔
113 注入口
114 液室
130 弁部材
131 ニードル(弁体の一例)
132 圧電素子(駆動体の一例)
134 逆バネ機構(伝達機構の一例)
500 駆動制御部(駆動装置の一例)
200 加圧機構(加圧手段の一例)
300 ヘッド移動機構(移動手段の一例)
600 制御部
HU ヘッドユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16